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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058172
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】高周波増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/32 20060101AFI20230418BHJP
   H03F 3/193 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
H03F1/32
H03F3/193
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167992
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】菅 信朗
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AC22
5J500AF17
5J500AH10
5J500AH25
5J500AH29
5J500AH33
5J500AM08
5J500AM13
5J500AT02
5J500NG06
5J500NH16
5J500NM02
5J500NN05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高利得を確保しつつ、3次相互変調ひずみ(IMD3)の確実に低減する高周波増幅器を提供する。
【解決手段】高周波増幅器は、第1のトランジスタ101にゲートバイアスを供給する下段ゲートバイアス回路501と、第2のトランジスタ102にゲートバイアスを供給する上段ゲートバイアス回路502には、第2のトランジスタ102のドレインを介してバイアス電源が供給される。上段ゲートバイアス回路502は、バイアス電源端子14と接地との間に、上段抵抗器201と下段抵抗器202が直列接続されると共に、上段抵抗器201に第1のダイオード接続トランジスタ103が並列接続されてなる。第1のダイオード接続トランジスタ103によりIMD3の低減が図られ、高線形性の高周波増幅器の提供を可能としている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース接地された第1のトランジスタのドレインに第2のトランジスタのゲートがキャパシタを介して接続されると共に、前記第2のトランジスタのソースがインダクタを介して接続され、前記第2のトランジスタのソースは、シャントキャパシタを介して高周波接地されて、前記第2のトランジスタのドレインから高周波出力可能に前記第1及び第2のトランジスタによりスタック構成された高周波増幅器において、
前記第1のトランジスタにゲートバイアスを供給する下段ゲートバイアス回路と、
前記第2のトランジスタにゲートバイアスを供給する上段ゲートバイアス回路が、それぞれ設けられ、
前記上段ゲートバイアス回路は、バイアス電源端子と接地との間に、上段抵抗器と下段抵抗器が直列接続されると共に、前記上段抵抗器に第1のダイオード接続トランジスタが並列接続されてなり、前記上段抵抗器と前記下段抵抗器の相互の接続点の電圧が前記第2のトランジスタにゲートバイアスとして供給可能に構成され、
前記第1のダイオード接続トランジスタは、ドレインとゲートが前記上段抵抗器の一端に接続されると共に、ソースが前記上段抵抗器と前記下段抵抗器の接続点に接続され、
前記下段ゲートバイアス回路及び前記上段ゲートバイアス回路は、前記第2のトランジスタのドレインを介してバイアス電源が供給されることを特徴とする高周波増幅器。
【請求項2】
前記第2のトランジスタのドレインから前記下段ゲートバイアス回路を介して前記第1のトランジスタのゲートへ至る下段フィードバック経路、及び、前記第2のトランジスタのドレインから前記上段ゲートバイアス回路を介して前記第2のトランジスタのゲートへ至る上段フィードバック経路の各々の経路上に、フィルタ回路が設けられてなることを特徴とする請求項1記載の高周波増幅器。
【請求項3】
前記第1のダイオード接続トランジスタと逆向きとなる第2のダイオード接続トランジスタが、前記第1のダイオード接続トランジスタに並列接続されてなることを特徴とする請求項1、又は、請求項2記載の高周波増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機器に用いられる高周波増幅器に係り、特に、線形性の向上等を図った低雑音増幅器MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit:モノリシックマイクロ波集積回路)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話システムは利用周波数帯の増大に加えて、OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing:直交周波数分割多重方式)やMassive MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)などの周波数帯内での信号多重化技術によりデータ通信帯域幅の拡大を実現している。このような状況において、無線デバイスには、より高い線形性が求められると同時に、無線通信のチェーン数増加、すなわち基地局のRF(Radio Frequency:無線周波数)フロントエンド部の数量増加に対応するため、基地局用半導体デバイスにおいても小型化、コストダウンが求められている。
【0003】
RFフロントエンド受信部には、通常、LNA(Low Noise Amplifier:低雑音増幅器)が設けられるが、このLNAの特性の良否を判断する一つの指標として、線形性を評価するIP3もしくはTOI(3rd order Intercept Point)と称される指標がよく使用されているが、その導出は、次述するように行われる。
まず、2トーン入出力電力線形特性グラフ(Pin-Pout)に、基本波であるf1,f2カーブと、IMD3(3rd order Intermodulation distortion:3次相互変調ひずみ)カーブを各々プロットする。小信号時の基本波は、傾き1、IMD3は傾き3の直線近似で表され、この直線をグラフに重ねてプロットする。
【0004】
基本波とIMD3の近似直線が交差する点がIP3であり、これを、入力パワーで読み出す場合はIIP3(Input 3rd order Intercept Point)と、出力パワーで読み出す場合はOIP3(Output 3rd order Intercept Point)と称する。IP3を向上させるには、IMD3レベルを低減する必要がある。
線形性のもう一つの指標に、P-1dB(1dB compression Point:1dB圧縮ポイント)があるが、P-1dBは、大信号時の線形性指標であるのに対して、IP3は、小信号時のIMD3から導出される線形性指標であり、直線性の高いデバイスや小信号デバイスの線形性の評価によく用いられる。一般に、増幅トランジスタのDC静特性カーブを考慮して動作点を最適化することによりIMD3レベルが最小化されることが知られている。
【0005】
さらなる高線形化のため、増幅器のIMD3レベルを低減する方法の一つとして、増幅トランジスタのサイズを拡大することが考えられる。例えば、2つの増幅器を並列動作させれば、増幅器1回路あたりの入力レベルが3dB低下すると共にIMD3レベルが9dB低下する一方、増幅器2回路の出力合成により3dB増加し、最終的なIMD3は6dB低下する。この原則は、増幅器1回路内の増幅トランジスタのサイズ拡大の際にも、適切な回路設計を行うことにより成立するものである。しかしながら、この方法には、トランジスタサイズ拡大によるコストアップとLNAで重要な特性であるNF(Noise Figure:雑音指数)を劣化させる傾向にあるという欠点がある。
【0006】
また、増幅器のIMD3レベルを低減する他の方法として、フィードバックがある。増幅器の入出力端子間を接続する直接フィードバックによって非線形ひずみを低減することは、オーディオ周波数帯でよく用いられる手法である。高周波増幅器は、半導体チップレイアウトやパッケージ組み立て時のボンディングワイヤ等に起因する意図しない帰還経路がよく形成されることに加えて、半導体チップやパッケージ内で高周波の位相を大きく回転させることが容易であるという特徴がある。この手法を高周波増幅器に適用する場合、非線形性ひずみが明らかに大きく低減するほどフィードバック量を大きくすると、予期しない正帰還を発生させ、発振のリスクが高くなる。また、フィードバック量を大きくするには、増幅トランジスタの利得に十分な余裕が必要であるが、高周波増幅器の場合、そのような余裕が無いのが通常である。このため、高周波増幅器における直接フィードバックは、利得安定化のため、フィードバック量を小さくして利用されることが多い。
【0007】
高周波増幅器の非線形ひずみ低減にフィードバックを利用する技術としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
この特許文献1には、高周波増幅器の回路トポロジーとして、ダーリントン接続トランジスタを用いた技術が開示されている。同文献の図2に示された回路においては、ダーリントン接続を構成する入力トランジスタM1と出力トランジスタM2から発生するIMD3を並列フィードバックで高周波入力端子へ帰還させると同時に、入力トランジスタM1のソース出力のIMD3がRCチューニング回路を経てバイアストランジスタM3に入力された位相、振幅を変化させながら高周波入力端子に混合される結果、高周波出力端子のIMD3レベルが低減されるものとなっている。この場合、増幅器の高周波主経路の信号量に対してバイアス回路の高周波経路の信号量が十分小さいため、高周波増幅器の主要特性に影響を与えることなくIMD3レベルを低減することが可能である。
【0008】
図10には、RFフロントエンド受信部に配されるLNAとして使用されているFET増幅器の従来例が示されており、以下、同図を参照しつつ、この従来回路について説明する。
まず、従来、この種の増幅器においては、電流再利用のため、トランジスタを2段縦積みする構成が採られており、下段アンプトランジスタがソース接地(CS:Common Source)、上段アンプトランジスタがゲート接地(CG:Common Gate)となっており、カスコード接続増幅器と称されるものであることは良く知られている通りである。
【0009】
これに対して、図10に示された従来回路では、下段アンプトランジスタ101X、上段アンプトランジスタ102X共にソース接地であり、以下、説明の便宜上、この従来回路の構成を、”CS-CSスタック構成増幅器”と称することとする。同様に、上述のカスコード接続増幅器を”CS-CGスタック構成増幅器”と称することとする。
【0010】
従来回路のアンプトランジスタ101X,102Xのサイズは、上段、下段共に、総ゲート幅1mmで、主要特性は、動作電圧5V、動作電流50mA、動作周波数範囲3.3~5.0GHz、動作周波数3.6GHzにおいて電力利得26dB、雑音指数0.5dB、P-1dB=19dBmが得られるものである。
【0011】
図11には、従来回路における2トーン入出力電力線形特性の実測結果の一例が示されており、以下、同図について説明する。
まず、図11において、実線は基本波出力の変化特性を表す特性線、一点鎖線はIMD3の変化特性を表す特性線である。また、点線はIIP3及びOIP3を導出するための補助線であり、動作周波数4.0GHzにおいてOIP3=35.4dBmと計算される。
【0012】
図10に示された従来回路は、上述のように下段アンプトランジスタ101Xと上段アンプトランジスタ102Xを用いたCS-CSスタック構成増幅器であり、下段アンプトランジスタ101Xは、ゲートバイアス回路501Xにより、上段アンプトランジスタ102Xは、ゲートバイアス回路502Xにより、それぞれのゲートバイアスを受けるものとなっている。
【0013】
また、ゲートバイアス回路501X,502Xの間には、双方を高周波分断するバイパスキャパシタ305Xを用いたフィルタ回路503Xが設けられている。なお、この従来回路において、トランジスタには、電界効果トランジスタの一種であるエンハンスメント型GaAs pHEMT(Pseudomorphic High Electron Mobility Transistor)が用いられている。
【0014】
次に、かかる構成の従来回路の動作について説明する。
最初に、DC動作について説明する。
CS-CSスタック構成増幅器の動作電流IDDは、電源端子VDDからチョークインダクタ401Xを経て上段アンプトランジスタ102Xのドレイン・ソース間を流れた後、チョークインダクタ402Xを経て下段アンプトランジスタ101Xのドレイン・ソース間を流れる。電流再利用により、2段アンプでありながら、アンプ1段分の電流で動作可能となる一方、動作電圧VDDを2段アンプで分圧するため、P-1dBは通常の2段アンプより低下する。
【0015】
また、ゲートバイアス回路は、カスコード接続増幅器と同様で、ゲートバイアス回路501Xは下段アンプトランジスタ101Xとカレントミラー回路を構成してバイアス供給を可能としており、ゲートバイアス回路502Xは、抵抗分割回路による上段アンプトランジスタ102Xへのバイアス供給を可能としている。
【0016】
次に、RF動作について説明する。
CS-CSスタック構成増幅器の高周波信号は、高周波入力端子RFINからDCカットキャパシタ301Xを経て下段アンプトランジスタ101Xのゲートに入力され、さらに同ドレインに出力された後、DCカットキャパシタ304Xを経て上段アンプトランジスタ102Xのゲートに入力される。そして、上段アンプトランジスタ102Xのゲートに入力された高周波信号は、ドレインに出力されると共に、DCカットキャパシタ302Xを経て高周波出力端子RFOUTへ至る。CS-CSスタック構成増幅器は、上段アンプがソース接地であることから、CSーCGスタック構成増幅器と比べて高利得が得られる特徴がある。なお、このようなCS-CSスタック構成増幅器は、例えば、特許文献2に開示されたものなどが従来から良く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第8390380号明細書
【特許文献2】特開平9-102717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したようにCS-CSスタック構成増幅器は、CS-CGスタック構成増幅器より高利得が得られるが、前記2つの構成の共通事項として、LNAの特性の指標となる線形性とNFの改善は、一般的にトレードオフの関係という問題がある。
【0019】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、高利得を確保しつつ、NFを劣化させずに3次相互変調ひずみ(IMD3)の確実な低減を可能とする高周波増幅器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る高周波増幅器は、
ソース接地された第1のトランジスタのドレインに第2のトランジスタのゲートがキャパシタを介して接続されると共に、前記第2のトランジスタのソースがインダクタを介して接続され、前記第2のトランジスタのソースは、シャントキャパシタを介して高周波接地されて、前記第2のトランジスタのドレインから高周波出力可能に前記第1及び第2のトランジスタによりスタック構成された高周波増幅器において、
前記第1のトランジスタにゲートバイアスを供給する下段ゲートバイアス回路と、
前記第2のトランジスタにゲートバイアスを供給する上段ゲートバイアス回路が、それぞれ設けられ、
前記上段ゲートバイアス回路は、バイアス電源端子と接地との間に、上段抵抗器と下段抵抗器が直列接続されると共に、前記上段抵抗器に第1のダイオード接続トランジスタが並列接続されてなり、前記上段抵抗器と前記下段抵抗器の相互の接続点の電圧が前記第2のトランジスタにゲートバイアスとして供給可能に構成され、
前記第1のダイオード接続トランジスタは、ドレインとゲートが前記上段抵抗器の一端に接続されると共に、ソースが前記上段抵抗器と前記下段抵抗器の接続点に接続され、
前記下段ゲートバイアス回路及び前記上段ゲートバイアス回路は、前記第2のトランジスタのドレインを介してバイアス電源が供給されてなるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第2のトランジスタからフィードバックされるIMD3が上段ゲートバイアス回路に設けられたダイオード接続トランジスタを通過することで変調され、第1のトランジスタを通過したIMD3と混合されることでひずみが低減され、IMD3レベルの確実な低減が図られた高周波増幅出力を得ることができるという効果を奏するものである。
また、上段及び下段フィードバック経路のそれぞれにフィルタ回路を設け、フィルタ回路によるフィードバック量を調整可能とすることで、IMD3特性の動作周波数最適化が容易となる。
さらに、上段ゲートバイアス回路に、逆並列接続のダイオード接続トランジスタを設けることで、ダイオード接続トランジスタを一つ設けた場合に比して、ダイオード接続トランジスタのサイズを実質的に縮小したと等価となるため、回路の調整範囲を拡大しつつ、IMD3レベルの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態における高周波増幅器の基本回路構成例を示す回路図である。
図2】本発明の実施の形態における高周波増幅器の2トーン入出力電力線形特性の実測結果を示す特性線図である。
図3】本発明の実施の形態における高周波増幅器のOIP3周波数特性の実測結果を従来回路の特性例と共に示す特性線図である。
図4】本発明の実施の形態における高周波増幅器の第1の具体回路構成例を示す回路図である。
図5】本発明の実施の形態における高周波増幅器の第2の具体回路構成例を示す回路図である。
図6】本発明の実施の形態における高周波増幅器の第3の具体回路構成例を示す回路図である。
図7】本発明の実施の形態における高周波増幅器の第4の具体回路構成例を示す回路図である。
図8】本発明の実施の形態における高周波増幅器の第5の具体回路構成例を示す回路図である。
図9】本発明の実施の形態における高周波増幅器の第6の具体回路構成例を示す回路図である。
図10】従来の高周波増幅器の一例を示す回路図である。
図11図10に示された従来回路の2トーン入出力電力線形特性の実測結果を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図9を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における高周波増幅器の基本回路構成例について、図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における高周波増幅器は、共にソース接地の下段アンプトランジスタ101と上段アンプトランジスタ102とが2段縦積み構成されてなるものである。
本発明の実施の形態において、第1のトランジスタとしての下段アンプトランジスタ101、及び、第2のトランジスタとしての上段アンプトランジスタ102は、共に電界効果トランジスタであって、例えば、エンハンスメント型GaAs pHEMT(Pseudomorphic High Electron Mobility Transistor)が用いられる。
【0024】
下段アンプをなす下段アンプトランジスタ101は、ソースが接地される一方、ゲートはゲート抵抗器205を介して下段ゲートバイアス回路501と接続されると共に、DCカットキャパシタ301を介して高周波入力端子(図1においては「RFIN」と表記)11に接続されている。
下段ゲートバイアス回路501は、特定の回路構成に限定される必要はなく、例えば、後述するカレントミラーや抵抗給電などの従来から良く知られている回路構成のものである。
なお、下段ゲートバイアス回路501によるゲートバイアス動作に必要な電圧は、後述するように上段アンプトランジスタ102のドレインからバイアス電源端子(図1においては「VBIAS」と表記)14を介して供給されるようになっている。従来回路においては、バイアス電源端子に外部からバイアス電源が供給される構成となっていたが、本発明の実施の形態においては、外部からバイアス電源を供給する必要はなく、電源端子(図1においては「VDD」と表記)13からチョークインダクタンス401を介して上段アンプトランジスタ102のドレイン及びバイアス分配抵抗器206にバイアス供給されてバイアス電源端子のバイアス電圧が供給されている。
【0025】
上段アンプをなす上段アンプトランジスタ102は、ソースがシャントキャパシタ303を介して高周波接地されると共に、直流経路としてチョークインダクタ402を介して下段アンプトランジスタ101のドレインと接続されている。
また、下段アンプトランジスタ101のドレインは、DCカットキャパシタ304を介して上段アンプトランジスタ102のゲートに接続されており、下段アンプトランジスタ101のドレイン出力が上段アンプトランジスタ102のゲートに入力されるようになっている。
【0026】
さらに、上段アンプトランジスタ102のドレインは、DCカットキャパシタ302を介して高周波出力端子(図1においては「RFOUT」と表記)12に接続されると共に、チョークインダクタ401を介して電源端子(図1においては「VDD」と表記)13に接続されている。
そして、上段アンプトランジスタ102のゲートは、ゲート抵抗器203を介して上段ゲートバイアス回路502に接続されて、上段ゲートバイアス回路502によるゲートバイアスを受けるようになっている。
【0027】
上段ゲートバイアス回路502は、上段抵抗器201と、下段抵抗器202と、ダイオード接続トランジスタ103とを具備し、抵抗分割回路が構成されたものとなっている。
すなわち、上段抵抗器201の一端は、バイアス電源端子14に接続される一方、上段抵抗器201の他端は、下段抵抗器202の一端と接続され、下段抵抗器202の他端が接地されて、上段抵抗器201と下段抵抗器202が、バイアス電源端子14と接地との間に直列接続で設けられている。そして、上段抵抗器201と下段抵抗器202の相互の接続点に、ゲート抵抗器203の一端が接続されている。
【0028】
また、ダイオード接続トランジスタ103は、ソースが上段抵抗器201と下段抵抗器202の相互の接続点に接続される一方、ドレインとゲートが相互に接続されて、その接続点が上段抵抗器201の一端、すなわち、バイアス電源端子14に接続されている。
【0029】
また、下段ゲートバイアス回路501と上段ゲートバイアス回路502との間には、フィルタ回路503が設けられている。
すなわち、フィルタ回路503は、シャントキャパシタ305を用いて構成されており、シャントキャパシタ305の一端がバイアス電源端子14に接続される一方、他端が接地されたものとなっている。
さらに、バイアス電源端子14には、上段アンプトランジスタ102のドレインがバイアス分配抵抗器206を介して接続されており、電源端子13に接続されたドレインから下段ゲートバイアス回路501と上段ゲートバイアス回路502への電源電圧の供給が行われるようになっている。
【0030】
次に、上記構成における基本回路の動作について説明する。
まず、高周波入力端子11に入力された高周波信号は、下段アンプトランジスタ101、上段アンプトランジスタ102により従来同様に増幅され高周波出力端子12に出力される。
この従来同様の増幅動作と共に、上段アンプトランジスタ102のドレイン出力が、下段ゲートバイアス回路501、上段ゲートバイアス回路502を介して、下段アンプトランジスタ101、上段アンプトランジスタ102各々のゲートへ至るフィードバックループが形成される。
【0031】
上段ゲートバイアス回路502は、上段抵抗器201とダイオード接続トランジスタ103が並列接続されているため、ダイオード接続トランジスタ103の印加電圧と、上段抵抗器201とダイオード接続トランジスタ103の各々に流れる電流の比によって上段フィードバック経路(上段アンプトランジスタ102のドレインから上段ゲートバイアス回路502を経て上段アンプトランジスタ102のゲートへフィードバックされる経路)を通過するIMD3の変調度が調整されることとなる。
【0032】
回路定数の具体例を示せば、例えば、上段抵抗器201が2KΩ、下段抵抗器202が8KΩ、ダイオード接続トランジスタ103がゲート幅5μmである。
この場合、ダイオード接続トランジスタ103のゲート・ソース間電圧Vgsは、下段アンプトランジスタ101、上段アンプトランジスタ102のゲート・ソース間電圧Vgsに近づける必要がある。
上段フィードバック経路と下段フィードバック経路(上段アンプトランジスタ102のドレインから下段ゲートバイアス回路501を経て下段アンプトランジスタ101のゲートへフィードバックされる経路)の経路上にフィルタ回路503を設けることでフィードバック量の調整が可能となる。なお、フィルタとして機能するのは、フィルタ回路503に止まらず、抵抗器203、205、206もフィルタとしての機能を果たすものとなっている。
【0033】
フィルタ回路503を構成するシャントキャパシタ305の影響によりフィードバック量に周波数特性が生じるが、その結果、最終的なIP3特性にも周波数ピークが発現する。下段フィードバック経路を通過するIMD3は、下段アンプで増幅され、上段フィードバック経路を通過するIMD3と混合される。上段フィードバック経路におけるIMD3の変調は、位相の回転を伴っており、下段アンプのIMD3出力とベクトル合成されたIMD3が上段アンプで増幅される。
このように上下のアンプ各段で発生するIMD3とフィードバック経路を経由したIMD3が混合される結果、上段アンプ出力のIMD3レベルが低減されることとなる。
【0034】
図2には、本発明の実施の形態における高周波増幅器における2トーン入出力電力線形特性の実測結果を示す特性線図が示されており、以下、同図について説明する。
同図において、横軸は入力電力PINの変化を示し、縦軸は出力電力POUTの変化及びIMD3の変化を示している。
また、図2において、実線の特性線は基本波出力の変化特性を、一点鎖線の特性線はIMD3の変化特性を、点線の特性線はIIP3及びOIP3を導出するための補助線である。
同図によれば、動作周波数4.0GHzにおいて、OIP3=40.0dBmと計算される。
【0035】
図3には、本発明の実施の形態における高周波増幅器におけるOIP3周波数特性の実測結果を示す特性線が従来回路(図10参照)の同様な特性線と共に示されており、以下、同図について説明する。
図3において、横軸は周波数を、縦軸はOIP3の信号レベルを、それぞれ示している。
また、同図において、実線の特性線は本発明の実施の形態における高周波増幅器の入力周波数の変化に対するOIP3の変化特性を示しており、二点鎖線の特性線は従来回路(図10参照)の同様な変化特性を示している。
同図によれば、本発明の実施の形態における高周波増幅器は、従来回路に比してOIP3が向上されていることが確認できると共に、OIP3特性に従来と異なり周波数ピークが発現することが確認できる。
【0036】
次に、本発明の実施の形態における高周波増幅器の第1の具体回路構成例について、図4を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された回路構成例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第1の具体回路構成例は、カレントミラーで構成された下段ゲートバイアス回路501Aを用いた例であり、残余の部分は、図1に示された基本回路と基本的に同一の構成を有してなるものである。
【0037】
すなわち、下段ゲートバイアス回路501Aは、ミラートランジスタ106とミラー抵抗器204を有して構成されている。
ミラートランジスタ106は、ゲートとドレインが相互に接続されてダイオード接続状態とされると共に、ゲートは、ゲート抵抗器205を介して下段アンプトランジスタ101のゲートに接続されている。
また、ミラートランジスタ106のソースは接地される一方、ドレインは、ミラー抵抗器204を介してバイアス電源端子14に接続されている。
【0038】
かかる構成において、ミラートランジスタ106は入力段となり、カレントミラーの出力段となる下段アンプトランジスタ101に対してバイアス電流をミラーするものとなっている。
このような構成は、スタック構成のLNAにあっては一般的である。
【0039】
次に、本発明の実施の形態における高周波増幅器の第2の具体回路構成例について、図5を参照しつつ説明する。
なお、図1図4に示された回路構成例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の具体回路構成例は、逆並列接続された2つのダイオード接続トランジスタを用いた構成の上段ゲートバイアス回路502Aが設けられたもので、残余の部分は、図4に示された第1の具体回路構成例と基本的に同一の構成を有してなるものである。
【0040】
すなわち、上段ゲートバイアス回路502Aには、ダイオード接続トランジスタ103(以下、説明の便宜上「第1のダイオード接続トランジスタ」と称する)と逆並列接続された第2のダイオード接続トランジスタ104が設けられており、第2のダイオード接続トランジスタ104は、ゲートとドレインが相互に接続されてダイオード接続状態とされると共に、その接続点は、第1のダイオード接続トランジスタ103のソースに接続されている。
【0041】
一方、第2のダイオード接続トランジスタ104のソースは、第1のダイオード接続トランジスタ103のドレインに接続されている。
かかる構成において、第2のダイオード接続トランジスタ104のゲート幅は、先に述べたダイオード接続トランジスタ103同様、5μm程度の小さい値に設定される。
このように第1のダイオード接続トランジスタ103と逆向きの第2のダイオード接続トランジスタ104を並列接続することにより、上段フィードバック経路におけるIMD3の変調に関してダイオード接続トランジスタのサイズが実質的に縮小されたと同様な効果が生ずるため、レイアウトの最小寸法やトランジスタの耐圧といった回路設計上の制約回避が可能となる。
【0042】
次に、本発明の実施の形態における高周波増幅器の第3の具体回路構成例について、図6を参照しつつ説明する。
なお、図1図4に示された回路構成例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第3の具体回路構成例は、RC直列回路を用いたフィルタ回路503Aに加えて、第2及び第3のフィルタ回路503B,503Cが設けられ、残余の部分は、図4に示された第1の具体回路構成例と基本的に同一の構成を有してなるものである。
【0043】
すなわち、まず、フィルタ回路503Aは、シャントキャパシタ305とフィルタ抵抗器209とがバイアス電源端子14と接地との間に、バイアス電源端子14側からシャントキャパシタ305、フィルタ抵抗器209の順で直列接続されて、RC直列回路が構成されたものとなっている。
また、第2のフィルタ回路503Bは、ゲート抵抗器203と、これに並列接続されたフィルタキャパシタ306によるRC並列回路が構成されたものとなっている。
【0044】
なお、ゲート抵抗器203は、本来、動作帯域外の低周波域における発振の防止を目的とするものであるので、フィルタ特性の調整の自由度は低いため、フィルタキャパシタ306でフィードバック量を調整するのが好適である。
【0045】
また、第3のフィルタ回路503Cは、バイアス分配抵抗器206と、これに並列接続されたフィルタキャパシタ307によるRC並列回路が構成されたものとなっている。
なお、バイアス分配抵抗器206は、本来、バイアス電源端子のバイアス電圧供給を目的とするものであるので、フィルタ特性の調整の自由度は低いため、フィルタキャパシタ307でフィードバック量を調整するのが好適である。
なお、NF劣化防止の観点から、下段フィードバック経路には、フィルタキャパシタ306,307のような並列接続のキャパシタを設けないことが望ましい。
【0046】
次に、本発明の実施の形態における高周波増幅器の第4の具体回路構成例について、図7を参照しつつ説明する。
なお、図1図4に示された回路構成例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第4の具体回路構成例は、インダクタを用いたフィルタ回路503D,503Eが設けられたもので、残余の部分は、図4に示された第1の具体回路構成例と基本的に同一の構成を有してなるものである。
具体的には、まず、フィルタ回路503Dは、インダクタ403を用いてなり、ゲート抵抗器203(図4参照)に代えて、上段ゲートバイアス回路502と上段アンプトランジスタ102のゲートとの間に直列接続されて設けられている。ゲート抵抗器203は、本来、動作帯域外の低周波域における発振の防止を目的とするものであるので、それが不要な場合はインダクタを用いてフィードバック量を調整することも可能である。
【0047】
次に、フィルタ回路503Eは、ゲート抵抗器205とインダクタ404とを有して構成されている。
すなわち、ゲート抵抗器205の一端は、下段ゲートバイアス回路501のミラートランジスタ106のゲートに接続される一方、ゲート抵抗器205の他端は、インダクタ404の一端に接続されている。そして、インダクタ404の他端は、下段アンプトランジスタ101のゲートに接続されている。
このように、フィードバック経路にインダクタを追加することで、下段アンプトランジスタ101、上段アンプトランジスタ102のDC動作点を変えることなく、フィードバック量の調整が可能となる。
【0048】
次に、本発明の実施の形態における高周波増幅器の第5の具体回路構成例について、図8を参照しつつ説明する。
なお、図1図4に示された回路構成例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第5の具体回路構成例は、図4に示された構成の上段ゲートバイアス回路502に代えて、次述する構成を有してなる上段ゲートバイアス回路502Bを用いた構成のもので、残余の部分は、図4に示された第1の具体回路構成例と基本的に同一の構成を有してなるものである。
【0049】
すなわち、上段ゲートバイアス回路502Bは、上段抵抗器201と、下段抵抗器202と、2つのダイオード接続トランジスタ103,105とを具備して構成されたものとなっている。
すなわち、上段抵抗器201と下段抵抗器202が直列接続され、上段抵抗器201の一端がバイアス電源端子14に接続される点は、図4に示された構成例と同様であるが、下段抵抗器202と接地との間には、ダイオード接続トランジスタ105が設けられたものとなっている。
ダイオード接続トランジスタ105は、ゲート及びドレインが相互に接続されて、その接続点が下段抵抗器202に接続される一方、ソースが接地された構成となっている。
【0050】
上段抵抗器201と並列接続されたダイオード接続トランジスタ103は、プロセスばらつきによってピンチオフ電圧にばらつきが生ずるが、それによって、上段アンプトランジスタ102のゲート電圧も同様にばらつきを生じてしまう。
この構成例の場合、上段抵抗器201側のダイオード接続トランジスタ103のピンチオフ電圧のばらつきと、下段抵抗器201側のダイオード接続トランジスタ105のピンチオフ電圧のばらつきが連動する結果、下段抵抗器202側のダイオード接続トランジスタ105が無い場合に比して、上段アンプトランジスタ102のゲート電圧が安定して供給されることとなる。
【0051】
次に、本発明の実施の形態における高周波増幅器の第6の具体回路構成例について、図9を参照しつつ説明する。
なお、図1図4に示された回路構成例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第6の具体回路構成例は、図4に示された構成の下段ゲートバイアス回路501Aに代えて、次述する構成を有してなる下段ゲートバイアス回路501Bが用いられている。
【0052】
さらに、バイアス電源端子14と、下段ゲートバイアス回路501Bと上段ゲートバイアス回路502の各々との間に、バッファトランジスタ107が挿入されると共に、バッファトランジスタ107の動作制御のためのロジック回路504が設けられた構成となっており、残余の部分は、図4に示された第1の具体回路構成例と基本的に同一の構成を有してなるものである。
【0053】
まず、下段ゲートバイアス回路501Bは、カレントミラーを用いて構成されたものとなっており、図9におけるカレントミラーの構成は、例えば、特許第6502623号公報に開示されたものと基本的に同一のものである。
すなわち、下段ゲートバイアス回路501Bは、ミラートランジスタ106、ミラー抵抗器204、ゲート抵抗器205、ドレイン・ゲート抵抗器207、及び、シャント抵抗器208を有して構成されている。
【0054】
ミラー抵抗器204の一端は、バッファトランジスタ107のソースに接続され、バッファトランジスタ107のドレインは、バイアス電源端子14に接続されている。
【0055】
また、ミラー抵抗器204の他端は、ミラートランジスタ106のドレインに接続されており、このドレインは、ドレイン・ゲート抵抗器207及びゲート抵抗器205を介してミラートランジスタ106のゲートと接続されている。なお、ドレイン・ゲート抵抗器207とゲート抵抗器205との相互の接続点は、下段アンプトランジスタ101のゲートに接続されている。
そして、ミラートランジスタ106のゲートは、シャント抵抗器208を介して接地されると共に、ミラートランジスタ106のソースは直接接地されている。
かかる構成のカレントミラーを用いることで、動作電流IDDのプロセスばらつきの低減が可能となる。
【0056】
また、バッファトランジスタ107のゲートには、ロジック回路504が接続されている。このロジック回路504は、バッファトランジスタ107をオン・オフ動作させるに必要なゲート電圧を生成、出力するもので、この種の良く知られている従来回路と同様の構成を有してなるものである。
このようにロジック回路504を用いてバッファトランジスタ107の導通・非導通を制御することでLNAにシャットダウン機能を付加することが可能となり、より実用的なLNAを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
高利得、高線形を確保しつつ、3次相互変調ひずみの確実な低減が所望される高周波増幅器に適用できる。
【符号の説明】
【0058】
101…下段アンプトランジスタ
102…上段アンプトランジスタ
103…ダイオード接続トランジスタ
104…ダイオード接続トランジスタ
206…バイアス分配抵抗器
501,501A,501B…下段ゲートバイアス回路
502,502A,502B…上段ゲートバイアス回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11