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特開2023-58371プラズマ処理を行う装置、及びプラズマ処理を行う方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058371
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】プラズマ処理を行う装置、及びプラズマ処理を行う方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/505 20060101AFI20230418BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230418BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C23C16/505
H01L21/31 C
H01L21/302 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168368
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山涌 純
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA18
4K030BA18
4K030BA38
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA01
4K030GA02
4K030HA01
4K030JA10
4K030KA17
4K030KA23
4K030KA30
4K030KA41
4K030KA46
4K030KA47
4K030LA15
5F004BA03
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB26
5F004BB28
5F004BD04
5F004DA23
5F004DA25
5F045AA08
5F045AA15
5F045AC03
5F045AC15
5F045AC16
5F045DP03
5F045DQ10
5F045EE19
5F045EF05
5F045EF09
5F045EF13
5F045EH04
5F045EH05
5F045EH12
5F045EH18
5F045EK07
(57)【要約】
【課題】プラズマ化した処理ガスから、基板に対して高密度のラジカルを供給してプラズマ処理を行う技術を提供する。
【解決手段】チャンバー内の基板にプラズマ化した処理ガスを供給してプラズマ処理を行う装置は、前記処理ガスをチャンバー内へ向けて共供給するためのリモートプラズマ供給部を備える。リモートプラズマ供給部は、互いに対向するように配置され、一方が高周波電源に接続された上部電極及び下部電極と、チャンバー内の基板に向けて、次第に開口幅が大きくなる開口側壁面を有するプラズマ供給口と、プラズマ供給口に挿入され、開口側壁面との間に、プラズマ化した処理ガスの流路を形成すると共に、プラズマ化した処理ガスに含まれるイオンをトラップするための、トラップ面を有するイオントラップ部材を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー内の基板にプラズマ化した処理ガスを供給してプラズマ処理を行う装置であって、
前記基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内に設けられ、前記基板を支持するステージと、
前記ステージに支持された前記基板と対向する位置に設けられ、プラズマ化した前記処理ガスを前記チャンバー内へ向けて供給するためのリモートプラズマ供給部と、を備え、
前記リモートプラズマ供給部は、
前記処理ガスの容量結合プラズマを形成するためのプラズマ形成空間を介して、互いに対向するように配置された上部電極及び下部電極と、
前記上部電極または前記下部電極に接続された高周波電源と、
前記プラズマ形成空間と、前記基板の処理空間である前記チャンバー内の空間とを連通させるために前記下部電極に形成され、前記下部電極の縦断面を見たとき、前記プラズマ形成空間側から前記処理空間側へ向けて開口幅が次第に大きくなる開口側壁面を有するプラズマ供給口と、
前記プラズマ供給口内に挿入され、前記開口側壁面との間に、前記プラズマ形成空間から流出したプラズマ化した前記処理ガスの流路を形成すると共に、プラズマ化した前記処理ガスに含まれるイオンを衝突させてトラップするために、前記開口側壁面に沿って形成されたトラップ面を有するイオントラップ部材と、を備えた、装置。
【請求項2】
前記処理空間側から見たとき、前記下部電極には、スリット状の複数の前記プラズマ供給口が形成され、各々の前記プラズマ供給口に、前記イオントラップ部材が挿入されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記イオントラップ部材は水晶、または表面が酸化ケイ素皮膜によりコーティングされた金属により構成されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記イオントラップ部材は金属により構成され、接地端に接続されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記イオントラップ部材と、前記接地端との間には、前記イオントラップ部材にバイアス電力を印加するための直流電源が設けられている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記イオントラップ部材の下端面は、前記プラズマ供給口の上端面よりも大きく形成され、前記処理空間側から見たとき、前記イオントラップ部材は、前記プラズマ供給口の全体を覆うように配置されている、請求項1ないし5のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
前記処理ガスの流路の流路の入口の上方側、または前記流路の出口の下方側の少なくとも一方に、プラズマ化した前記処理ガスに含まれるイオンを衝突させてトラップするための衝突板を備える、請求項1ないし6のいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
前記衝突板は、水晶、または表面が酸化ケイ素皮膜によりコーティングされた金属により構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記下部電極は、表面が不動態化処理された金属により構成されている、請求項1ないし8のいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
前記プラズマ処理は、膜原料を含む原料ガスと、プラズマ化した前記処理ガスである反応ガスとを反応させて前記基板に成膜を行う成膜処理であり、
前記処理空間に前記原料ガスを供給するための原料ガス供給部を備える、請求項1ないし9のいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
前記下部電極は、前記原料ガスを拡散させる拡散空間と、前記拡散空間内の前記原料ガスを前記処理空間へ向けて吐出する複数の吐出孔とを備えた前記原料ガス供給部として構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記高周波電源は前記上部電極に接続され、前記下部電極は接地されている、請求項1ないし11のいずれか一つに記載の装置。
【請求項13】
チャンバー内の基板にプラズマ化した処理ガスを供給してプラズマ処理を行う方法であって、
チャンバー内に搬入された前記基板を、当該チャンバー内に設けられたステージに受け渡す工程と、
前記ステージに支持された前記基板と対向する位置に設けられたリモートプラズマ供給部を構成し、互いに対向するように配置された上部電極及び下部電極により形成されたプラズマ形成空間に対し、前記処理ガスを供給すると共に、前記高周波電源から前記上部電極または下部電極に高周波電力を供給して、前記処理ガスの容量結合プラズマを形成する工程と、
前記プラズマ形成空間と、前記基板の処理空間である前記チャンバー内の空間とを連通させるために前記下部電極に形成され、前記下部電極の縦断面を見たとき、前記プラズマ形成空間側から前記処理空間側へ向けて開口幅が次第に大きくなる開口側壁面を有するプラズマ供給口を介し、前記プラズマ化した処理ガスを前記処理空間側へ流出させる工程と、
前記プラズマ供給口に内に挿入され、前記開口側壁面との間に、前記プラズマ形成空間から流出した前記処理ガスの流路を形成すると共に、前記開口側壁面に沿って形成されたトラップ面を有するイオントラップ部材を用い、前記流路を流れるプラズマ化した前記処理ガスに含まれるイオンを前記トラップ面に衝突させてトラップした後、前記チャンバー内へ向けて供給する工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理を行う装置、及びプラズマ処理を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程にて半導体ウエハ(以下、「ウエハ」と記載する)に成膜を行う処理として、ALD(Atomic Layer Deposition)法が知られている。この成膜処理では、膜原料を含む原料ガス、膜原料の酸化や還元などを行う反応ガスを交互にウエハに供給して、成膜が行われる。また、成膜ガスをプラズマ化することにより得られた反応性の高い活性種を利用するプラズマALD(PEALD)を実施する場合もある。
【0003】
例えば特許文献1には、チャンバー内にて、第1の容量結合プラズマと第2の容量結合プラズマを生成して、ステージに支持された基板上にPEALDを実施する成膜装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-203155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、プラズマ化した処理ガスから、基板に対して高密度のラジカルを供給してプラズマ処理を行う技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、チャンバー内の基板にプラズマ化した処理ガスを供給してプラズマ処理を行う装置であって、
前記基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内に設けられ、前記基板を支持するステージと、
前記ステージに支持された前記基板と対向する位置に設けられ、プラズマ化した前記処理ガスを前記チャンバー内へ向けて供給するためのリモートプラズマ供給部と、を備え、
前記リモートプラズマ供給部は、
前記処理ガスの容量結合プラズマを形成するためのプラズマ形成空間を介して、互いに対向するように配置された上部電極及び下部電極と、
前記上部電極または前記下部電極に接続された高周波電源と、
前記プラズマ形成空間と、前記基板の処理空間である前記チャンバー内の空間とを連通させるために前記下部電極に形成され、前記下部電極の縦断面を見たとき、前記プラズマ形成空間側から前記処理空間側へ向けて開口幅が次第に大きくなる開口側壁面を有するプラズマ供給口と、
前記プラズマ供給口内に挿入され、前記開口側壁面との間に、前記プラズマ形成空間から流出したプラズマ化した前記処理ガスの流路を形成すると共に、プラズマ化した前記処理ガスに含まれるイオンを衝突させてトラップするために、前記開口側壁面に沿って形成されたトラップ面を有するイオントラップ部材と、を備えた装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、プラズマ化した処理ガスから、基板に対して高密度のラジカルを供給してプラズマ処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る成膜装置を示す縦断側面図である。
図2】前記成膜装置に設けられているリモートプラズマ供給部の一例を示す縦断側面図である。
図3】下部電極の第1の構成例を示す平面図である。
図4】下部電極の第2の構成例を示す平面図である。
図5】イオントラップ部材の第1の構成例を示す概略斜視図である。
図6】前記第1の構成例の作用を説明する縦断側面図である。
図7】イオントラップ部材の第2の構成例を示す概略斜視図である。
図8】イオントラップ部材の第3の構成例を示す縦断側面図である。
図9】イオントラップ部材の第4の構成例を示す縦断側面図である。
図10】原料ガス供給部の他の例を示す概略斜視図である。
図11】下部電極及びイオントラップ部材の他の構成例を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<成膜装置>
以下、図1図2を参照しながら、本開示に係る「プラズマ処理を行う装置」の実施形態として、プラズマ処理である成膜処理を実施する成膜装置1の構成例について説明する。成膜装置1は、容量結合型のプラズマ処理装置であり、膜原料を含む原料ガスと、プラズマ化した処理ガスである反応ガスとを反応させて、基板であるウエハにPEALDにより成膜を行う装置として構成されている。
【0010】
図1は、成膜装置1の縦断側面図であり、成膜装置1は、接地された金属製の略円筒状のチャンバー11を備えている。チャンバー11の側面には、不図示の真空搬送室との間でウエハWの搬入出を行うための搬入出口12が形成され、この搬入出口12はゲートバルブ13により開閉自在に構成されている。チャンバー11は、排気ライン14を介して、例えばバタフライバルブよりなる圧力調整部や真空ポンプなどを備えた真空排気部141に接続されている。真空排気部141により、予め設定された圧力までチャンバー11内を減圧し、この減圧された空間に原料ガス及び反応ガスを供給してウエハWへの成膜が行われる。
【0011】
チャンバー11内の中央には、処理対象のウエハWを水平に支持するステージ15が設けられている。ステージ15は、柱状の支持部材151により、下面側から支えられた状態で設けられている。ステージ15には不図示のヒーターが埋設され、予め設定された設定温度にウエハWを加熱することができる。さらに、チャンバー11には、ウエハWを保持して昇降させるための図示しない昇降ピンが設けられ、昇降ピンの昇降により、ステージ15と、外部の図示しない搬送機構との間でウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0012】
<リモートプラズマ供給部>
本例の成膜装置1は、ステージ15に支持されたウエハWと対向する位置に、リモートプラズマ供給部2を備えている。リモートプラズマ供給部2は、プラズマ化した反応ガスをチャンバー11内へ向けて供給するように構成されている。図1及び図2に示すように、リモートプラズマ供給部2は、上部電極3と、下部電極4と、プラズマ供給口5と、イオントラップ部材7と、を備えている。
【0013】
この例において、チャンバー11の天井部は開口しており、この天井部にリモートプラズマ供給部2が嵌め込まれている。リモートプラズマ供給部2は略円板状に構成され、チャンバー11の天井面を構成する上部電極3と、上部電極3に対向するように設けられた下部電極4と、を有している。上部電極3の外縁と下部電極4の外縁とは、絶縁部材21及び側壁部材22を介して上下に積み重ねられている。こうして、リモートプラズマ供給部2の内部には、プラズマ形成空間20が構成され、上部電極3と下部電極4とはプラズマ形成空間20を介して互いに対向した状態となる。
【0014】
上部電極3は、ステージ15と対向するように配置され、平面的に見て、ステージ15に支持されたウエハWと同じかウエハWよりも大きい円形状に構成されている。上部電極3は外周囲にフランジ30を備えており、このフランジ30が絶縁部材21にて支持されている。さらに、絶縁部材21が側壁部材22の上に配置されることにより、上部電極3がチャンバー11に設置される。
【0015】
下部電極4は、例えば複数の管体41を配列して平面視円形状に構成されている。後述するように、これらの管体41は、原料ガス供給部としての機能を兼ね備えている。各管体41の上面42は、上部電極3の下面と対向するように平面状に形成されており、これら複数の管体41が下部電極4として機能する。このような下部電極4は、平面で見たときに、ステージ15に支持されたウエハWとほぼ同じかウエハWよりも大きく形成され、下部電極4の中心は、ステージ15に支持されたウエハWの中心と揃うように設けられる。
【0016】
図3及び図4は、下部電極4を上部電極3側から見た平面図であり、下部電極4を構成する管体41の配列例を示している。管体41同士の隙間(スリット)と区別するため、これらの図では、管体41に斜線を付している。先ず、図3に示す第1の構成例について説明する。図1図2は、図3のA-A`線に沿って切断した位置で見た縦断面図である。これらの図に示すように、この例の下部電極4は、平面視したとき、細長い矩形状の複数の管体41を、互いに間隔を開けて配列した構成となっている。
【0017】
図1図3に示すように、複数の管体41は、図中にX軸として示した方向と、各管体41の長辺方向とが揃うように配置されている。またこれらの管体41は、前記X軸方向と同じ平面内で直交するY軸方向に沿って互いに隙間を開けて配置されている。隣り合う管体41の隙間は、後述のプラズマ供給口5を構成している。
これら管体41は、例えば長辺方向の中心近傍の位置にて、Y軸に沿って延在する接続用管体43に接続されている。こうして全ての管体41、43の内部空間は連通し、この内部空間は後述する原料ガスを拡散させるための拡散空間40を構成している。
【0018】
図1図2図5に示すように、短辺方向に沿った縦断面を見たときに、管体41は、下に向けて開口幅が次第に小さくなるテーパー状の側面44を備えている。この例では、管体41は、前記縦断面形状が上底の寸法よりも下底の寸法の方が小さい台形状に形成されている。従って前記側面44は直線的なテーパー状に構成されている。
【0019】
上述の構成の下部電極4において、隣り合う管体41同士の間には、隙間が形成されている。これらの隙間は、プラズマ形成空間20と、プラズマ形成空間20の下方のステージ15が設けられた空間である処理空間10とを連通させるプラズマ供給口5を構成している。
図3に示すように、プラズマ形成空間20から見ると、各プラズマ供給口5は、直線状に延伸するスリット状に形成されている。また、図1図2及び図5に示すように、プラズマ供給口5は、下部電極4の縦断面を見たときに、プラズマ形成空間20側から処理空間10側へ向けて開口幅が直線状に次第に大きくなる、逆テーパー状の開口側壁面51を有している。
【0020】
既述のように、下部電極4は、処理空間10に原料ガスを供給するための原料ガス供給部の機能を兼ね備えており、下部電極4を構成する複数の管体41の内部空間は、原料ガスを拡散させる拡散空間40として構成されている。また、各管体41の下面には、拡散空間40内の原料ガスを処理空間10へ向けて吐出する吐出孔45が形成されている。この吐出孔45は、小孔状の複数の吐出孔を管体41の長辺方向に沿って並べて配置してもよい。また、管体41の長辺方向に沿って延伸するように、スリット状の吐出孔を形成してもよい。
【0021】
下部電極4は、平面視したときに、ステージ15に支持されたウエハWを覆うように配置され、その下面全体に複数の吐出孔45が形成されている。従って、ステージ15に支持されたウエハWから見ると、下部電極4は、ウエハ面内に向けて満遍なく原料ガスを吐出するシャワーヘッドとして機能している。なお、図3図4においては、吐出孔45の記載は省略してある。
【0022】
この下部電極4は、側壁部材22に支持されてチャンバー11に配置される。上部電極3と下部電極4との間には絶縁部材21が介在しているので、互いに絶縁されている。こうして、上部電極3と下部電極4とは、プラズマ形成空間20に容量結合プラズマPを形成するための一対の平行平板電極を構成する。
下部電極4がステージ15に支持されたウエハWと同じか大きく形成されていることから、前記プラズマ形成空間20によりウエハWの全面が覆われる状態となる。また、下部電極4により、チャンバー11内がプラズマ形成空間20と処理空間10とに上下に区画される。
【0023】
上部電極3及び下部電極4は、各々導電性を有する金属により構成される。特に下部電極4は、ラジカル再結合率が低い部材により構成される。ラジカル再結合率が低い部材の例を挙げると、アルミニウム(Al)の無垢材や、表面が不動態化処理された金属例えばアルマイト処理されたアルミニウムを例示することができる。また、下部電極4の表面は、ラジカル再結合率が低いセラミックス被膜によって被覆してもよい。
【0024】
絶縁部材21は例えば酸化アルミニウム(AlO)、側壁部材22は例えばチャンバー11と同じ材質により構成されている。
また、図2に示すように側壁部材22には、ヒーター23が埋め込まれている。このヒーター23は、不図示の電源から給電されることにより、側壁部材22を加熱するとともに、側壁部材22からの熱伝導により下部電極4を加熱する。
【0025】
上部電極3は、整合器31を介して交流の高周波電源32に接続され、高周波電力が供給されるように構成されている。高周波電源32の周波数は400kHz~60MHzである。この際、高周波電源32にDCパルスを印加するように構成し、高周波電源32からの高周波とDCパルスを重畳するように構成してもよい。また、交流の高周波電源32の代わりに、直流の高周波電源を用い、DCパルスを印加する構成であってもよい。
一方、下部電極4を構成する複数の管体41は互いに電気的に接続されており、管体41の一つには、接地線46が接続されている。この接地線46は、例えば側壁部材22及び絶縁部材21を貫通し、上方側に向けて延在するように設けられ、その末端位置にて接地されている。
【0026】
プラズマ形成空間20には、反応ガスの供給路である反応ガス流路61が接続されている。反応ガス流路61は、例えば上部電極3を貫通し、その下流端がプラズマ形成空間20に接続するように設けられる。反応ガス流路61の上流側は、反応ガスの供給源62及び不図示のパージガスの供給源に夫々接続されている。
【0027】
下部電極4には原料ガスの供給路である原料ガス流路63が接続されている。例えば原料ガス流路63は、平面的に見て下部電極4の中心位置に接続されている。原料ガス流路63は、上部電極3及びプラズマ形成空間20を貫通し、その下流端が管体41に接続されている。原料ガス流路63の上流側は、原料ガスの供給源64及び不図示のパージガスの供給源に夫々接続されている。反応ガス流路61や原料ガス流路63の配管には、バルブ類及びマスフローコントローラなどの流量制御器が設けられている。このような反応ガス流路61、原料ガス流路63は、プラズマ形成空間20におけるプラズマの形成を妨げないように、適宜、不図示の絶縁部材等を介して接続される。
【0028】
この成膜装置1において、ウエハに窒化チタン膜(TiN膜)を成膜する場合の各ガスの例を挙げると、原料ガスとしては、四塩化チタン(TiCl)や、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(TDMAT)を供給する場合を例示できる。この場合、反応ガスとしては、窒素ガス(Nガス)と、反応ガスのプラズマ化を補助するための補助ガス例えばアルゴンガス(Arガス)との混合ガスを供給する例が挙げられる。さらにパージガスとしては、不活性ガス例えばNガスやArガス等を用いることができる。
また、他の種類の膜としてチタン膜(Ti膜)を成膜する場合には、原料ガスとしてTiClやTDMATを供給し、反応ガスとして水素ガス(Hガス)とArガスとの混合ガスを供給する場合を例示できる。
【0029】
上述の構成により、リモートプラズマ供給部2において、高周波電源32に接続された上部電極3と、接地端側の下部電極4との間には、容量結合プラズマPを形成する平行平板型のプラズマ形成空間20が構成される。このプラズマ形成空間20に、反応ガスを供給して高周波電力を印加することにより、当該ガスが電離してプラズマが形成され、REALDのためのリモートプラズマ源として機能する。
【0030】
ここでプラズマ化した反応ガス中には、イオンやラジカルなど多種類の活性種が含まれている。これらのうち、高いエネルギーを持つイオンは、ウエハWに成膜される膜の荒れや、下地の損傷を引き起こすおそれがある。この観点で、イオンの含有量を低減し、ラジカルを多く含むプラズマをウエハWに供給することができれば、良質な膜の成膜を実現することができる。
そこで、本例の成膜装置1は、プラズマ形成空間20内で形成されたプラズマ化した反応ガスに含まれるイオンをトラップするためのイオントラップ部材7を備えている。
【0031】
続いて、イオントラップ部材7の第1の構成例について説明する。下部電極4には、既述のように、スリット状の複数のプラズマ供給口5が形成されており、各々のプラズマ供給口5に、イオントラップ部材7が挿入されている。例えば図1図2及び図5に示すように、イオントラップ部材7は、短辺方向に沿った縦断面形状が台形状の柱状体により形成されている。また、イオントラップ部材7は、その長辺方向が管体4の長辺方向に沿うように配置されている。この例のイオントラップ部材7は、プラズマ供給口5の開口側壁面51に沿って形成された直線的なテーパー状のトラップ面71を有している。これらの図には、前記縦断面形状が、上底の長さが下底の長さよりも短い台形状に構成されている場合を示している。この他、イオントラップ部材7は、前記テーパー状のトラップ面71を有する、三角形の縦断面形状を備える構成としてもよい。
【0032】
イオントラップ部材7は、ラジカル再結合率が低い、水晶により構成され、または表面が酸化ケイ素(SiO)皮膜によりコーティングされた金属により構成されている。そして、イオントラップ部材7は、各々のプラズマ供給口5内において、開口側壁面51とトラップ面71との間に、プラズマ化した反応ガスの流路52を形成するように設けられている。即ち、イオントラップ部材7は、開口側壁面51と、トラップ面71との間に前記流路52を成す隙間を形成するように、各々のプラズマ供給口5内に挿入されている。
【0033】
図1及び図2は、スリット状のプラズマ供給口5の短辺方向に沿って切った縦断面図である。これらの図は、下部電極4側の逆テーパー状の開口側壁面51と、イオントラップ部材7側のテーパー状のトラップ面71との間に、流路52が形成されている状態を示している。このように流路52は、プラズマ形成空間20から見ると、下部電極4の上面に形成されたスリット状の開口から下方に向かい、イオントラップ部材7により左右に分岐した後、開口側壁面51とトラップ面52との間を夫々斜め下方に向かうように形成される。
【0034】
図5に示すように、イオントラップ部材7の下端72は、プラズマ供給口5の上端50の隙間寸法(プラズマ供給口5の幅)よりも大きく形成されている。具体的には、プラズマ供給口5の幅L1は、イオントラップ部材7の下端面72の幅L2よりも小さく形成されている。この構成により、処理空間10側から見たとき、イオントラップ部材7は、プラズマ供給口5の全体を覆うように配置された状態となる。イオントラップ部材7は、例えば図2に示すように、支持部材72により側壁部材22に接続され、チャンバー11に設けられている。
【0035】
続いて、下部電極の第2の構成例について、図4を参照して説明する。図4は、下部電極4Aのプラズマ供給口53が、プラズマ形成空間20から見て、円弧状に延伸するスリット状に構成される例を示している。この例では、下部電極4Aは、平面視環状の複数の管体411を同心円状に配列して構成されている。これらの管体411は、前記円の直径方向に延在し、互いに直交するように配置された接続用管体412、413に接続されている。この例の下部電極4Aは、プラズマ供給口53の平面形状が異なる点以外は、図1図2図5に示す下部電極4と同様に形成されている。従って、プラズマ供給口53は逆テーパー状の開口側壁面51を備え、イオントラップ部材7のテーパー状のトラップ面71との間には、処理ガスの流路52が形成されている。
【0036】
また、図1に示すように、成膜装置1は制御部100を備えている。制御部100は、プログラムを記憶した記憶部、メモリ、CPUを含むコンピュータにより構成される。プログラムは、制御部100から成膜装置1の各部に向けて制御信号を出力し、ウエハWの搬入出や処理を実行するための命令(ステップ)が組まれている。プログラムは、コンピュータの記憶部、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)、不揮発性メモリなどに格納され、この記憶部から読み出されて制御部100にインストールされる。
【0037】
<成膜処理>
次いで、以上に説明した構成を備える成膜装置1の作用について、TiN膜の成膜を例にして説明する。
外部の真空搬送室に処理対象のウエハWが搬送されてきたら、ゲートバルブ13を開き、搬入出口12を介して、ウエハWを保持した搬送機構(不図示)をチャンバー11内に進入させる。そして、不図示の昇降ピンとの協働作用により、搬送機構からウエハWを受け取り、ステージ15上に載置する。
【0038】
しかる後、チャンバー11から搬送機構を退出させ、ゲートバルブ13を閉じると共に、チャンバー11内に反応ガス流路61及び原料ガス流路63から夫々パージガスを連続的に供給し、チャンバー11内の圧力調節、ウエハWの温度調節を行う。また、ヒーター23により、側壁部材22からの熱伝導によって下部電極4を原料ガスが分解する温度、例えば原料ガスがTDMATである場合には、200℃以下の温度例えば150℃に加熱する。
【0039】
次いで、チャンバー11内にパージガスを連続的に供給した状態を維持したまま、原料ガス流路63を介して下部電極(原料ガス供給部))4に原料ガスを供給し、複数の吐出孔45を介して処理空間10内に吐出する。原料ガスは、処理空間10内をステージ15に支持された上へ向けて流れて行き、ウエハWの表面に吸着する。こうして、ウエハWに原料ガスを吸着させた後、原料ガスの供給を停止して、チャンバー11内のパージを行う。
【0040】
次いで、プラズマ形成空間20へ向けて、反応ガス流路61を介して反応ガスの供給を行うと共に、高周波電源32から高周波電力を印加する。これにより、上部電極3と下部電極4との間に高周波電界を形成し、プラズマ形成空間20に容量結合プラズマPを生成する。この容量結合プラズマPにより生成された反応ガスの活性種は、プラズマ供給口5を介し、電離した状態のリモートプラズマとして処理空間10に供給される。そして、電離した反応ガスに含まれる活性種がウエハWに吸着した原料と反応して、TiNを形成する。こうして、ウエハW上の原料ガスと反応ガスとを反応させた後、反応ガスの供給を停止して、チャンバー11内のパージを行う。
【0041】
このように、チャンバー11内にパージガスを連続的に供給したまま、原料ガスの供給とプラズマの生成とを交互に繰り返し、「原料ガスの供給→パージガスによるパージ→プラズマ化した反応ガスの供給→パージガスによるパージ」のサイクルを、所定回数繰り返して、設定された膜厚のTiN膜を形成する。プラズマの生成は、原料ガスの供給を停止している期間に行われるが、反応ガスの供給は連続的に行ってもよいし、プラズマを生成するタイミングで行ってもよい。
【0042】
<イオントラップ>
上述したプラズマの形成期間中、プラズマ化により電離した反応ガスには、窒素のラジカル81や、正イオン82、電子などが含まれる。プラズマ化した反応ガスは、図5に白抜きの矢印で示すように、ウエハWが配置されている方向へ向けて、プラズマ形成空間20から、プラズマ供給口5を介して下方側へ向けて流れていく。
【0043】
電離した反応ガスに含まれる各種の活性種のうち、電荷を帯びた正イオンは、他の部材に衝突すると電気的に中和される。従って図6に示すように、プラズマ供給口5の入口を通過した正イオン82が、イオントラップ部材7のトラップ面71に衝突すると失活する。既述のように、トラップ面71はテーパー状に形成されているので、垂直方向に下降してくる正イオン82に対し、トラップ面71は、正イオン82の移動方向を遮るように配置されている。このため、プラズマ供給口5を通過する正イオン82がトラップ面71に衝突しやすい。なお、図6では実線の矢印で原料ガスを示している。
【0044】
また、イオントラップ部材7の下端面72は、プラズマ供給口5の上端50の幅よりも大きく形成され、イオントラップ部材7は、処理空間10側から見てプラズマ供給口5の全体を覆うように配置されている。このように、イオントラップ部材7は、正イオン82がトラップ面71に衝突せずに通過する吹き抜けの形成を避けるように構成されているので、正イオン82が、よりトラップ面71に衝突しやすくなる。
【0045】
さらに、図6に示すように、下部電極4の近傍には、プラズマのバルク領域PBに対して電位差があるシース領域Shが形成される。このシース領域Shは、プラズマのバルク領域PBと比較して相対的に電位が低い。このため、正イオン82は、シース領域Shと下部電極4との間の電位差により引き付けられて加速し、加速した正イオン82は下部電極4やイオントラップ部材7の壁面に衝突して消滅する。また、シース領域Shでは、正イオン82が壁面の電位の低いイオントラップ部材7に捕捉されて電気的に中和され、消滅する。
【0046】
こうして、プラズマに含まれる正イオン82は、下部電極4やイオントラップ部材7に衝突して消滅すると共に、捕捉されて電気的に中和されるため、ウエハWへの到達が抑制される。このため、本例では、正イオン82の含有量が低減された状態のプラズマをウエハWに向けて供給することができる。
【0047】
一方、プラズマに含まれるラジカル81は、プラズマ形成空間20からプラズマ供給口5において、下部電極4とイオントラップ部材7との間に形成された流路52を介して、ガスのように拡散しながら下降していく。ラジカル81も、導電性部材との接触により失活しやすい性質を有するが、下部電極4がアルミニウムの無垢材により構成されている場合には、ラジカル再結合率が低いため、接触しても失活しにくくなる。また、下部電極4がアルマイト処理されたアルミニウムにより構成されている場合においても同様である。
【0048】
その上、ラジカル81は、正イオン82と比較して、シース領域Shの電位差の影響を受けにくいので、シース領域Shへのドリフトに伴うプラズマ中の含有量の減少は生じにくい。さらに、イオントラップ部材7の表面はラジカル再結合率が低い水晶や、酸化ケイ素皮膜により被覆されている。これにより、プラズマ中のラジカル81がイオントラップ部材7の表面と接触したとしても、ラジカルの減少を抑制することができる。このようなことから、窒素のラジカル81のように失活しやすいラジカルを含む反応ガスであっても、比較的多くのラジカル81を含んだ状態で、ウエハWに供給することができる。
【0049】
以上に説明したメカニズムにより、正イオン82の含有量が低減され、ラジカル81を高密度で含有するプラズマがステージ15上のウエハWに供給される。このため、主にプラズマ化された反応ガスに含まれるラジカル81が、ウエハWに吸着している膜原料と反応して、ウエハW上に膜(TiN膜)が成膜される。このようにリモートプラズマ供給部2により、ウエハWから離れた空間でプラズマを形成し、ラジカル密度が高いプラズマを利用することにより、膜の荒れや、下地の損傷の少ない良好な成膜を実現することができる。
【0050】
また、プラズマ化した反応ガスの流路52は、下部電極4とイオントラップ部材7とにより構成されるため、これらの形状や寸法、配置位置の調整により、流路52の形状や位置を調整することができる。このため、プラズマ処理の種別に合わせて、プラズマ化した反応ガス中のラジカルやイオンの通過量を調整することが可能である。
【0051】
さらに、本例の成膜装置1では、下部電極4から原料ガスをウエハWに向けて供給し、プラズマ形成空間20からプラズマ化した反応ガスをウエハWに向けて供給している。このように原料ガスと反応ガスとは異なる空間を介してチャンバー11内に供給されるので、これらのガスの混合が防止され、これらのガスが混合することによって生じるチャンバー11内部への膜の堆積を抑制することができる。
【0052】
このようにして、予め設定された期間、REALD法による成膜を行ったら、下部電極4への原料ガスの供給、プラズマ形成空間20への反応ガスの供給、及び上部電極3への高周波電力の供給を停止する。しかる後、搬入時とは反対の手順にて、成膜が行われたウエハWをチャンバー11から搬出する。
【0053】
本実施形態に係る成膜装置1によれば以下の効果がある。イオントラップ部材7により、処理ガス(反応ガス)のプラズマに含まれる正イオン82をトラップする。この結果、プラズマ化した処理ガスから、ウエハWに対して高密度のラジカルを供給してプラズマ処理を行うことができる。
【0054】
<バリエーション>
図7は、イオントラップ部材7Bの第2の構成例を示している。この例のイオントラップ部材7Bは金属により構成され、複数のイオントラップ部材7Bは、互いに電気的に接続されている。このイオントラップ部材7Bは、接地端に接続されると共に、イオントラップ部材7Bと接地端との間には、イオントラップ部材7Bにバイアス電力を印加するための直流電源73が設けられている。イオントラップ部材7Bが金属製であること以外については、図1図6を用いて説明した第1の実施形態と同様に構成されている。
【0055】
図7に示す構成では、イオントラップ部材7Bにより電気的にイオンをトラップすることもできる。例えばプラズマに含まれるイオンが正イオンである場合には、イオントラップ部材7Bに負のバイアス電力を印加する。これにより、イオントラップ部材7Bにプラズマ中の正イオンを引き寄せて捕捉し、中和することができる。一方、プラズマに含まれるイオンが負イオンである場合には、イオントラップ部材7Bに正のバイアス電力を印加するように構成される。また、プラズマに含まれるイオンが正イオンである場合には、イオントラップ部材7Bを金属により構成すると共に、接地端に接続し、直流電源を設けない構成であっても、正イオンをイオントラップ部材7Bにより捕捉することができる。
【0056】
図8は、イオントラップ部材の第3の構成例を示している。この例は、プラズマ化した反応ガスの流路52の入口53の上方側に、衝突板91を設ける構成である。衝突板91は、プラズマ化した反応ガスに含まれるイオンを衝突させてトラップする機能を備え、水晶または表面が酸化ケイ素皮膜によりコーティングされた金属により形成される。流路52の入口53とは、プラズマ供給口5の上端50であり、例えば衝突板91は、前記入口53の上方側に、下部電極4の上面42と対向するように配置される。また、この例の衝突板91は、プラズマバルク領域PB側から見たときに、前記入口53を覆う形状の板状体により形成される。
【0057】
図9は、イオントラップ部材の第4の構成例を示している。この例は、衝突板91を、前記流路52の入口53の上方側に設ける代わりに、前記流路52の出口54の下方側に設けるように構成している。前記流路52の出口54とは、図9に示すように、隣接するイオントラップ部材7の下端面72同士の間に形成される開口である。衝突板91は、前記出口54の下方側にステージ15と対向するように配置され、この例では、ステージ15側から見たときに、前記出口54を覆う形状の板状体により形成される。
【0058】
これら図8及び図9の構成例では、プラズマ形成部20からプラズマ化した反応ガスがプラズマ供給口5を介して供給される際、流路52に流れ込む、または流路52から流出する正イオン82の移動経路を遮るように衝突板91が配置されている。このため、正イオン82は衝突板91に衝突して消失する。一方、衝突板91の表面は、水晶または酸化ケイ素皮膜により構成されているので、プラズマ中のラジカル81が衝突板91と接触したとしても、ラジカルの減少を抑制することができる。このため、より一層プラズマ中のラジカルの密度を高くすることができる。このような衝突板91は、処理ガスの流路52の入口53の上方側と、出口54の下方側の両方に設けるようにしてもよい。
【0059】
図10は、下部電極とは別個に原料ガス供給部を設ける構成例である。このように、必ずしも原料ガスは下部電極を介して供給する必要はない。この例では、下部電極4Bは複数の柱状体47を配列して構成されている。一方、イオントラップ部材7の下方側には、処理空間10に原料ガスを供給するための、供給管よりなる原料ガス供給部92が設けられている。柱状体47は原料ガスの拡散空間と吐出孔を備えていないこと以外、例えば形状や配置等については、管体41と同様に構成されている。このような構成においても、原料ガスとプラズマ化した反応ガスが、互いに異なる空間からウエハWに交互に供給され、REALDを実施することができる。
【0060】
図11は、下部電極及びイオントラップ部材の他の構成例を示している。この例の下部電極4Cでは、縦断面を見たときに、プラズマ形成空間20から処理空間10に向けて開口幅が次第に大きくなる、逆テーパー状の開口側壁面511が曲面状に構成されている。この例では、イオントラップ部材7Cのトラップ面711も、開口側壁面511に沿って、曲面状に形成されている。従って、トラップ面711の側方に形成される、プラズマ化した反応ガスの流路521も曲線状となっている。図11中、符号451は、下部電極4Cに形成される原料ガスの吐出孔を指しており、下部電極4Cとイオントラップ部材7Cの形状以外については、上述の実施形態と同様に構成されている。
【0061】
この例においても、プラズマ化した反応ガスに含まれる正イオン82が下部電極4Cやイオントラップ部材7Cに衝突したり、捕捉されて消失するため、イオンのエネルギーが低下し、ラジカル密度が高いプラズマを用いてウエハWにプラズマ処理を行うことができる。
この他、プラズマ形成空間20から処理空間10に向けて開口幅が次第に大きくなる開口側壁面511の形状は、縦断面が直線状または曲線状のテーパー面により構成する場合に限定されない。例えば、複数の段差を設けて、次第に開口幅が大きくなる開口側壁面511を構成してもよい。このことは、イオントラップ部材7のトラップ面71についても同様である。
【0062】
本開示の成膜装置では、下部電極に高周波電源を接続してもよい。この場合には、例えばイオントラップ部材7を接地して容量結合プラズマを形成する構成としてもよい。
以上において、リモートプラズマ供給部における下部電極とイオントラップ部材は上述の構成には限らない。例えば、下部電極に、先端が下を向く円錐形状(逆コーン形状)の多数の孔部を分散して設け、これによりプラズマ形成空間側から処理空間側に向けて開口幅が次第に大きくなる、逆テーパー状の開口側壁面を有するプラズマ供給口を形成してもよい。この場合には、イオントラップ部材を、先端が上を向く円錐形状(コーン形状)に構成することにより、開口側壁面に沿って形成されたテーパー状のトラップ面が形成される。
【0063】
以上では、プラズマ処理が成膜処理である場合について説明したが、本例のプラズマ処理は、エッチング処理や改質処理に適用してもよい。プラズマ化した処理ガス(エッチングガス、改質ガス)中のイオンのエネルギーを低下させ、ラジカル反応のみでエッチング処理や改質処理を実施することによって、下地膜へのダメージを抑制しながら、これらの処理を行うことができる。また、本例では、エッチング処理を行うにあたり、ステージにバイアス用の高周波電源等を接続し、プラズマ中のイオンの引き込み量の制御を行うようにしてもよい。
【0064】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0065】
W 半導体ウエハ
1 成膜装置
10 処理空間
11 チャンバー
15 ステージ
2 リモートプラズマ供給部
20 プラズマ形成空間
3 上部電極
32 高周波電源
4 下部電極
5 プラズマ供給口
51 開口側壁面
52 流路
7 イオントラップ部材
71 トラップ面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11