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特開2023-58598多孔質絶縁体、電極および非水系蓄電素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058598
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】多孔質絶縁体、電極および非水系蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/403 20210101AFI20230418BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20230418BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20230418BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20230418BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230418BHJP
【FI】
H01M50/403 F
H01M50/46
H01M50/443 E
H01M50/443 C
H01M50/403 D
H01M50/403 E
H01M50/403 A
H01M50/403 Z
H01M4/04 Z
H01M4/139
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017391
(22)【出願日】2023-02-08
(62)【分割の表示】P 2019003694の分割
【原出願日】2019-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2018048205
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】大木本 美玖
(72)【発明者】
【氏名】柳田 英雄
(72)【発明者】
【氏名】鷹氏 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】升澤 正弘
(72)【発明者】
【氏名】座間 優
(72)【発明者】
【氏名】木村 興利
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 広光
(57)【要約】      (修正有)
【課題】連通性が高く、形状維持機能と、シャットダウン機能を有する多孔質絶縁体の製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】重合性化合物と、ポロジェンと、重合性化合物の重合体よりも融点又はガラス転移点が低い固体12とを含み、かつ樹脂粒子を除くフィラー粒子を含まないインクを、基体上に塗布する塗布手段と、インクが塗布された基体に、非電離放射線、電離放射線、紫外線、及び赤外線のいずれかを照射する照射手段、又は前記インクが塗布された基体を加熱する加熱手段と、ポロジェンを除去する除去手段と、を有する多孔質絶縁体10の製造装置であって、ポロジェンは、重合性化合物を溶解することが可能であり、かつ重合の進行に伴い、重合性化合物の重合体が相分離することが可能な液状物質である、多孔質絶縁体の製造装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と、ポロジェンと、前記重合性化合物の重合体よりも融点又はガラス転移点が低い固体とを含み、かつ樹脂粒子を除くフィラー粒子を含まないインクを、基体上に塗布する塗布手段と、
前記インクが塗布された基体に、非電離放射線、電離放射線、紫外線、及び赤外線のいずれかを照射する照射手段、又は前記インクが塗布された基体を加熱する加熱手段と、
前記ポロジェンを除去する除去手段と、
を有する多孔質絶縁体の製造装置であって、
前記ポロジェンは、前記重合性化合物を溶解することが可能であり、かつ重合の進行に伴い、前記重合性化合物の重合体が相分離することが可能な液状物質であることを特徴とする多孔質絶縁体の製造装置。
【請求項2】
前記塗布手段は、前記インクをインクジェット方式により前記基体上に塗布する、請求項1に記載の多孔質絶縁体の製造装置。
【請求項3】
前記照射手段は、紫外線を照射する、請求項1に記載の多孔質絶縁体の製造装置。
【請求項4】
前記照射手段は、N雰囲気下で紫外線を照射する、請求項1に記載の多孔質絶縁体の製造装置。
【請求項5】
前記除去手段は、加熱によってポロジェンを除去する、請求項1に記載の多孔質絶縁体の製造装置。
【請求項6】
前記基体は、電極基体である、請求項1に記載の多孔質絶縁体の製造装置。
【請求項7】
前記基体は、電極合材が形成された電極基体である、請求項1に記載の多孔質絶縁体の製造装置。
【請求項8】
前記固体は、樹脂粒子である、請求項1に記載の多孔質絶縁体の製造装置。
【請求項9】
重合性化合物と、ポロジェンと、前記重合性化合物の重合体よりも融点又はガラス転移点が低い固体とを含み、かつ樹脂粒子を除くフィラー粒子を含まないインクを、基体上に塗布する塗布工程と、
前記インクが塗布された基体に、非電離放射線、電離放射線、紫外線、及び赤外線のいずれかを照射する照射工程、又は前記インクが塗布された基体を加熱する加熱工程と、
前記ポロジェンを除去する除去工程と、
を有する多孔質絶縁体の製造方法であって、
前記ポロジェンは、前記重合性化合物を溶解することが可能であり、かつ重合の進行に伴い、前記重合性化合物の重合体が相分離することが可能な液状物質であることを特徴とする多孔質絶縁体の製造方法。
【請求項10】
前記塗布工程は、前記インクをインクジェット方式により前記基体上に塗布することによって行われる、請求項9に記載の多孔質絶縁体の製造方法。
【請求項11】
前記照射工程は、紫外線を照射する、請求項9に記載の多孔質絶縁体の製造方法。
【請求項12】
前記照射工程は、N雰囲気下で紫外線を照射する、請求項9に記載の多孔質絶縁体の製造方法。
【請求項13】
前記除去工程は、加熱によってポロジェンを除去する、請求項9に記載の多孔質絶縁体の製造方法。
【請求項14】
前記基体は、電極基体である、請求項9に記載の多孔質絶縁体の製造方法。
【請求項15】
前記基体は、電極合材が形成された電極基体である、請求項9に記載の多孔質絶縁体の製造方法。
【請求項16】
前記固体は、樹脂粒子である、請求項9に記載の多孔質絶縁体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質絶縁体、電極および非水系蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、破損等により、正極と負極が短絡した場合に、熱暴走反応が起こり、異常発熱することがある。このような熱暴走反応を防止するためには、熱収縮を抑制することで正極と負極の短絡を妨げる形状維持機能と、熱変形することで電池反応を妨げるシャットダウン機能を有するセパレータを設けることが効果的である。
【0003】
従来、セパレータとしては、融点が150℃付近であるポリオレフィン微多孔膜が主として使用されている。
【0004】
しかしながら、ポリオレフィン微多孔膜の空孔を形成する時のひずみが原因となって、ポリオレフィン微多孔膜が熱変形する時に熱収縮しやすく、正極と負極が短絡しやすい。
【0005】
特許文献1には、多孔質基体と、樹脂とを含む多孔質膜からなる電気化学素子用セパレータが開示されている。ここで、多孔質基体は、150℃以上の耐熱温度を有し、かつフィラー粒子を含む。また、樹脂は、融点が80~130℃の範囲にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のセパレータは、フィラー粒子と、樹脂を含む。一般的に、最密充填構造をとりやすいフィラー粒子と、空孔を閉塞させる樹脂を使用すると、セパレータの連通性が低下する傾向がある。その結果、セパレータのイオン透過性が低下するため、リチウムイオン二次電池は、入出力特性が低下したり、過電圧等の要因によって耐久性が低下したりする。
【0007】
本発明の一態様は、連通性が高く、形状維持機能と、シャットダウン機能を有する多孔質絶縁体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、多孔質絶縁体であって、高分子化合物によって形成されており、連通している空孔を有する多孔質構造と、前記高分子化合物よりも融点またはガラス転移点が低い固体を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、連通性が高く、形状維持機能と、シャットダウン機能を有する多孔質絶縁体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の多孔質絶縁体の一例を示す断面模式図である。
図2】本実施形態の電極の一例を示す断面模式図である。
図3図1の多孔質絶縁体の形状維持機能とシャットダウン機能を説明する模式図である。
図4】本実施形態の非水系蓄電素子の一例を示す概略図である。
図5】実施例のデバイスAを示す断面模式図である。
図6】実施例1の多孔質絶縁体のSEM写真である。
図7】実施例のデバイスBを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明における好適な実施形態であり、本発明は、実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<多孔質絶縁体および電極>
図1に、本実施形態の多孔質絶縁体の一例を示す。
【0013】
多孔質絶縁体10は、高分子化合物によって形成されており、連通している空孔を有する多孔質構造11と、高分子化合物よりも融点またはガラス転移点が低い固体12を含む。ここで、多孔質構造11は、フィラー粒子を使用せず、高分子化合物によって形成されているため、空隙率が高い構造を形成しやすく、その結果、多孔質絶縁体10は、連通性が高くなる。さらに、多孔質絶縁体10が固体12の融点(またはガラス転移点)まで加熱されると、高分子化合物と固体12の融点またはガラス転移点の差によって、固体12は、液体(またはゴム状態)に変化するが、高分子化合物は、液体(またはゴム状態)に変化せず、多孔質構造11は、形状を維持する。このため、多孔質絶縁体10は、形状維持機能と、シャットダウン機能を有する。ここで、多孔質絶縁体10内に存在する空孔は、連通しているため、液体(またはゴム状態)に変化した固体12が空孔内を移動することができ、多孔質絶縁体10のシャットダウン機能が向上する。
【0014】
なお、多孔質絶縁体10は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池等の非水系蓄電素子、燃料電池、太陽電池等の発電素子等の電極に適用することができる。
【0015】
図2に、本実施形態の電極の一例として、多孔質絶縁体10を有する電極を示す。
【0016】
電極20は、電極基体21上に、活物質22を含む電極合材23が形成されており、電極合材23上に多孔質絶縁体10が形成されている。ここで、多孔質絶縁体10の一部が電極合材23の一部に存在しているため、電極合材23と多孔質絶縁体10の接合強度が向上する。これにより、外部から振動等の衝撃が与えられた際に、活物質22が剥離しにくくなるため、電極20を有する非水系蓄電素子の耐久性が向上する。また、電極20を有する非水系蓄電素子を釘等の導電体が貫通した際に、正極と負極の間の短絡が生じにくくなるため、非水系蓄電素子の安全性が向上する。
【0017】
多孔質絶縁体10が電極合材23に存在している領域(電極合材23の表面からの深さ)は、0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましい。
【0018】
なお、多孔質絶縁体10の一部が電極合材23の一部に存在していなくてもよい。
【0019】
次に、多孔質絶縁体10の形状維持機能とシャットダウン機能を、図3を用いて、説明する。
【0020】
一般に、異常充放電等により、非水系蓄電素子に過剰な電流が流れ、異常発熱する場合がある。このような場合に、電極20を用いると、異常発熱を抑制することができる。
【0021】
具体的には、多孔質構造11の孔径が固体12の粒径よりも小さい場合(図3(a)参照)、加熱により、固体12が液体12'に変化することで、空孔31が閉塞する(図3(b)参照)。その結果、非水電解液内に存在するイオンが、連通している空孔31内を移動することを妨げ、非水系蓄電素子内における電気化学反応の進行が抑制される。これにより、電流の流れが遮断され、温度上昇が抑制される。次に、固体12が液体12'に変化した後も、温度上昇が一定時間緩やかに進行するため、液体12'が連通している空孔31内を移動することで、液体12'が互いに連結し、より効果的なシャットダウン機能を発現することができる。さらに、多孔質絶縁体10内に存在している活物質22の周囲に、液体12'が付着することも考えられる(図3(c)参照)。その結果、非水電解液が活物質22に接触することを妨げ、温度上昇が抑制される。一方、高温環境等の周囲の環境によって、非水系蓄電素子の内部温度が160℃以上の温度になると、SEI被膜の分解に起因する、負極と非水電解液の電気化学反応が進行する。その後、180℃以上の温度になると、正極と非水電解液の電気化学反応が進行する。このような熱暴走反応が進行すると、急激な温度上昇を伴い、200℃以上の温度になる。しかしながら、多孔質構造11は、固体12が液体12'に変化する温度においても、液体に変化せず、即ち、熱収縮せず、形状を維持するため、正極と負極の間の短絡を防止することができる。
【0022】
また、多孔質構造11の孔径が固体12の粒径よりも大きい場合(図3(d)参照)、加熱により、固体12が液体12'に変化して、連通している空孔31内を移動することで、多孔質絶縁体10内に存在している活物質22の周囲に付着する(図3(c)参照)。その結果、非水電解液が活物質22に接触することを妨げ、温度上昇が抑制される。
【0023】
高分子化合物の融点またはガラス転移点は、多孔質絶縁体10の形状維持機能の点で、160℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。
【0024】
多孔質絶縁体10における多孔質構造11と固体12の存在分布としては、特に制限はなく、要求される非水系蓄電素子の特性に応じて適宜設計することができる。例えば、図1に示すように、多孔質構造11中に、固体12が均一に分散していてもよい。また、多孔質構造11中に、固体12が局所的に存在し、固体12の分布が偏っていてもよい。
【0025】
次に、高分子化合物と固体12の融点またはガラス転移点の差に関して記述する。
【0026】
異常充放電等により、過剰な電流が流れることによって、非水系蓄電素子が発熱する場合、多孔質絶縁体10では、固体12が液体12'に変化することで、連通している空孔31が閉塞される。その結果、電流の流れが遮断されることで、温度上昇が抑制される。しかしながら、固体12が液体12'に変化した後、非水系蓄電素子の内部の温度上昇は一定時間緩やかに進行し、その間も多孔質構造11の形状を維持して、正極と負極の間の短絡を防止する必要がある。ここで、高分子化合物と固体12の融点またはガラス転移点の差が小さすぎると、正極と負極の間の短絡を防止することが困難になる。以上のことから、高分子化合物と固体12の融点またはガラス転移点の差は、20℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。
【0027】
多孔質絶縁体10の孔径は、0.1~10μmであることが好ましく、0.1~1.0μmであることがより好ましい。多孔質絶縁体10の孔径が0.1μm以上であると、多孔質絶縁体10の非水電解液の浸透性やイオン透過性が向上し、非水系蓄電素子の内部の反応が効率的に進行する。一方、多孔質絶縁体10の孔径が10μm以下であると、非水系蓄電素子の内部で発生するリチウムデンドライドによる正極と負極の間の短絡を防止することができ、非水系蓄電素子の安全性が向上する。
【0028】
多孔質絶縁体10の空隙率は30~90%であることが好ましく、50~85%であることがより好ましい。多孔質絶縁体10の空隙率が30%以上であると、多孔質絶縁体10の連通性が向上するため、非水電解液の浸透性やイオン透過性が向上し、非水系蓄電素子の内部の反応が効率的に進行する。一方、多孔質絶縁体10の空隙率が85%以下であると、多孔質絶縁体10の強度が向上するため、外部から振動等の衝撃が与えられた際に、多孔質絶縁体10が破断しにくくなる。
【0029】
高分子化合物としては、固体12よりも融点またはガラス転移点が高ければ、特に制限はなく、アラミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、セルロース等が挙げられる。
【0030】
なお、高分子化合物は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0031】
また、高分子化合物は、多孔質絶縁体10の形状維持機能の点で、架橋していることが好ましい。高分子化合物が架橋している場合は、架橋密度を制御することにより、耐薬品性や強度を制御することができる。
【0032】
高分子化合物が架橋している場合の多孔質構造11は、特に制限はなく、シャットダウン機能の点で、高分子化合物の三次元分岐網目構造を骨格とする共連続構造であることが好ましい。
【0033】
このような多孔質構造11としては、例えば、共連続構造において、炭素骨格が三次元網目構造をなす形態をとるモノリス構造が挙げられる。
【0034】
なお、本願明細書および特許請求の範囲において、架橋している高分子化合物が融点またはガラス転移点を有しない場合、固体12よりも融点またはガラス転移点が高いものとする。
【0035】
固体12は、電気的絶縁性を有し、非水電解液に対して安定であり、非水系蓄電素子に組み込んだ際に印加する電圧の範囲で酸化還元されにくい電気化学的に安定な材料で構成されていることが好ましい。
【0036】
固体12としては、高分子化合物よりも融点またはガラス転移点が低ければ、特に制限はなく、高分子化合物および低分子化合物(例えば、エチレンカーボネート)のいずれであってもよい。
【0037】
固体12の融点またはガラス転移点は、80~200℃であることが好ましく、110~160℃であることがより好ましい。固体12の融点またはガラス転移点が80℃以上であると、外部環境によって、非水系蓄電素子の内部が異常温度に達しない限り、シャットダウン機能が発現しないため、使用環境に依存せず、非水系蓄電素子を使用することができる、一方、固体12の融点またはガラス転移点が200℃以下であると、非水系蓄電素子が異常発熱したときの初期段階において、シャットダウン機能を発現することができ、非水系蓄電素子の安全性が向上する。
【0038】
固体12の形状としては、多孔質絶縁体10の空孔31の連通性を著しく妨げるものでなければ、特に制限はない。
【0039】
固体12は、分子構造により、融点またはガラス転移点を制御しやすい点から、樹脂粒子であることが好ましい。これにより、非水系蓄電素子の安全性を考慮して、固体12の融点またはガラス転移点を最適化することができ、多孔質絶縁体10のシャットダウン機能が向上する。
【0040】
樹脂粒子を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、パラフィン、共重合ポリオレフィン、ポリオレフィン誘導体(例えば、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂)、ポリオレフィンワックス、石油ワックス、カルナバワックス等が挙げられる。
【0041】
共重合ポリオレフィンとしては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のエチレン-ビニルモノマー共重合体が挙げられる。
【0042】
なお、樹脂粒子は、単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0043】
また、樹脂粒子は、表面改質されていてもよい。これにより、多孔質絶縁体10に用いられる塗布液中における樹脂粒子の分散性を向上させることができる。その結果、多孔質絶縁体10中における樹脂粒子の分布が均一になり、多孔質絶縁体10の形状維持機能とシャットダウン機能が向上する。
【0044】
樹脂粒子の表面改質方法としては、例えば、エチレン性の不飽和基、エポキシ基等の反応性基を利用して、アルコキシ基、アミド基、カルボキシル基、スルホン酸基等の極性基を表面に導入する方法が挙げられる。
【0045】
樹脂粒子の粒径は、0.01~100μmであることが好ましく、0.1~1μm以下であることがより好ましい。樹脂粒子の粒径が0.01μm以上であると、多孔質絶縁体10のシャットダウン機能が向上し、100μm以下であると、多孔質絶縁体10の空孔31の連通性が向上する。
【0046】
<多孔質絶縁体の製造方法>
高分子化合物が架橋していない場合の多孔質絶縁体10の製造方法としては、例えば、熱誘起相分離法、貧溶媒誘起相分離法等の相分離現象を利用する方法が挙げられる。
【0047】
この場合、多孔質絶縁体10の製造に用いられる塗布液に使用する溶媒としては、特に制限はなく、所定の多孔質構造が形成されるように、溶解度パラメータに着目して、適宜選択することができる。
【0048】
上記以外の多孔質絶縁体10の製造方法としては、例えば、重合開始剤と、重合性化合物と、固体12を含み、重合性化合物が溶解している塗布液を塗布した後に、非電離放射線、電離放射線または赤外線を照射する方法が挙げられる。
【0049】
高分子化合物が架橋している場合、高分子化合物は、一般に、難溶性であるため、多孔質絶縁体10を製造する際に、一種以上の多官能の重合性化合物(例えば、架橋性モノマー、架橋性オリゴマー)を含む塗布液を用いる。
【0050】
なお、多官能の重合性化合物とは、重合性基を2個以上有する化合物を意味する。
【0051】
この場合、重合誘起相分離法等を利用して、多孔質絶縁体10を形成することができる。
【0052】
多官能の重合性化合物としては、非電離放射線、電離放射線または赤外線を照射することによって架橋することが可能であれば、特に制限はなく、例えば、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル、エン-チオール反応を活用した樹脂等が挙げられる。これらの中でも、生産性の観点から、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。
【0053】
ラジカル重合性のモノマーとしては、例えば、ミルセン、カレン、オシメン、ピネン、リモネン、カンフェン、テルピノレン、トリシクレン、テルピネン、フェンチェン、フェランドレン、シルベストレン、サビネン、ジペンテン、ボルネン、イソプレゴール、カルボン等の不飽和結合を有するテルペンの2重結合をエポキシ化し、アクリル酸またはメタクリル酸を付加させたエステル化合物;シトロネロール、ピノカンフェオール、ゲラニオール、フェンチルアルコール、ネロール、ボルネオール、リナロール、メントール、テルピネオール、ツイルアルコール、シトロネラール、ヨノン、イロン、シネロール、シトラール、ピノール、シクロシトラール、カルボメントン、アスカリドール、サフラナール、ピペリトール、メンテンモノオール、ジヒドロカルボン、カルベオール、スクラレオール、マノール、ヒノキオール、フェルギノール、トタロール、スギオール、ファルネソール、パチュリアルコール、ネロリドール、カロトール、カジノール、ランセオール、オイデスモール、フィトール等のテルペン由来のアルコールと、アクリル酸またはメタクリル酸のエステル化合物;シトロネロル酸、ヒノキ酸、サンタル酸、エステル側鎖にメントン、カルボタナセトン、フェランドラール、ピメリテノン、ペリルアルデヒド、ツヨン、カロン、ダゲトン、ショウノウ、ビサボレン、サンタレン、ジンギベレン、カリオフィレン、クルクメン、セドレン、カジネン、ロンギホレン、セスキベニヘン、セドロール、グアヨール、ケッソグリコール、シペロン、エレモフィロン、ゼルンボン、カンホレン、ポドカルプレン、ミレン、フィロクラデン、トタレン、ケトマノイルオキシド、マノイルオキシド、アビエチン酸、ピマル酸、ネオアビエチン酸、レボピマル酸、イソ-d-ピマル酸、アガテンジカルボン酸、ルベニン酸、カロチノイド、ペラリアルデヒド、ピペリトン、アスカリドール、ピメン、フェンケン、セスキテルペン類、ジテルペン類、トリテルペン類等の骨格をエステル側鎖に有するアクリレートまたはメタクリレート化合物等が挙げられる。
【0054】
重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤を用いることができる。
【0055】
光重合開始剤としては、光ラジカル発生剤を用いることができる。
【0056】
光ラジカル発生剤としては、例えば、α-ヒドロキシアセトフェノン、α-アミノアセトフェノン、4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンジルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェン、4,4'-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインn-プロピル等のベンゾインアルキルエ-テルやエステル、(1-ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニル)ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(η-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(ダロキュア1173)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンモノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、チタノセン、フルオレセン、アントラキノン、チオキサントンまたはキサントン、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物またはジハロメチル化合物、活性エステル化合物、有機ホウ素化合物等が挙げられる。
【0057】
なお、ビスアジド化合物等の光架橋型ラジカル発生剤を光ラジカル発生剤と併用してもよい。
【0058】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。
【0059】
重合開始剤として、光酸発生剤を用いてもよい。この場合、塗布された塗布液に光を照射すると、光酸発生剤が酸を発生し、多官能の重合性化合物が架橋する。
【0060】
酸の存在下で架橋する多官能の重合性化合物としては、例えば、エポキシ基、オキセタン基、オキソラン基等の環状エーテル基を有する化合物、上述した置換基を側鎖に有するアクリル化合物またはビニル化合物、カーボネート系化合物、低分子のメラミン化合物、ビニルエーテル類やビニルカルバゾール類、スチレン誘導体、α-メチルスチレン誘導体、ビニルアルコールと、アクリル酸、メタクリル酸等とのエステル化合物等のビニルアルコールエステル類等のカチオン重合することが可能なビニル結合を有するモノマー等が挙げられる。
【0061】
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩、ジアゾニウム塩、キノンジアジド化合物、有機ハロゲン化物、芳香族スルホネート化合物、バイスルホン化合物、スルホニル化合物、スルホネート化合物、スルホニウム化合物、スルファミド化合物、ヨードニウム化合物、スルホニルジアゾメタン化合物等が挙げられる。これらの中でも、オニウム塩が好ましい。
【0062】
オニウム塩としては、例えば、フルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、ヘキサフルオロヒ素酸アニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン、p-トルエンスルホネートアニオン、p-トロトルエンスルホネートアニオンを対イオンとするジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等が挙げられる。
【0063】
上記以外の光酸発生剤としては、ハロゲン化トリアジン化合物も使用することができる。
【0064】
なお、光酸発生剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0065】
光酸発生剤を用いる場合は、増感色素を併用してもよい。
【0066】
増感色素としては、例えば、アクリジン化合物、ベンゾフラビン類、ペリレン、アントラセン、レーザ色素類等が挙げられる。
【0067】
多孔質絶縁体10の製造に用いられる塗布液は、ポロジェンをさらに含むことが好ましい。ここで、ポロジェンは、多孔質絶縁体10中に空孔31を形成するために用いられる。
【0068】
ポロジェンとしては、重合性化合物および重合開始剤を溶解することが可能であり、かつ、重合性化合物が重合の進行に伴い、重合体が相分離することが可能な液状物質であれば、特に制限はなく、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール類、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。
【0069】
また、テトラデカン酸メチル、デカン酸メチル、ミリスチン酸メチル、テトラデカン等の分子量が比較的大きい液状物質も、ポロジェンとして機能する傾向がある。
【0070】
これらの中でも、沸点が高く、多孔質絶縁体10の製造安定性が向上するため、エチレングリコール類が好ましい。
【0071】
なお、ポロジェンは単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0072】
多孔質絶縁体10の製造に用いられる塗布液の25℃における粘度は、1~150mPa・sであることが好ましく、5~20mPa・sであることがより好ましい。これにより、塗布液が活物質22の隙間に浸み込むため、多孔質絶縁体10の一部を電極合材23の一部に存在させることができる。
【0073】
また、塗布液中の重合性化合物の含有量は、10~70質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。塗布液中の重合性化合物の含有量が10質量%以上であると、多孔質絶縁体10の強度が向上し、70質量%以下であると、塗布液が活物質22の隙間に浸み込むため、多孔質絶縁体10の一部を電極合材23の一部に存在させることができる。
【0074】
塗布液に含まれる、重合性化合物と、固体12の体積比は、多孔質絶縁体10に適用することが可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1:1~1:15であることが好ましく、1:1~1:10であることがより好ましい。これにより、多孔質絶縁体10のシャットダウン機能が向上する。
【0075】
塗布液の塗布方法としては、特に制限はなく、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷法を用いることができる。
【0076】
非水系蓄電素子用の電極合材23は、例えば、粉体状の活物質が分散媒中に分散している塗布液を電極基体21上に塗布した後、乾燥させることによって形成することができる。
【0077】
塗布液の塗布方法としては、例えば、スプレー、ディスペンサー、ダイコーター、引き上げ塗工を用いる印刷法を用いることができる。
【0078】
リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵および放出することが可能であれば、特に制限はなく、アルカリ金属含有遷移金属化合物を使用することができる。
【0079】
なお、正極活物質は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0080】
リチウム含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄およびバナジウムからなる群より選択される一種以上の元素と、リチウムを含む複合酸化物が挙げられる。
【0081】
正極活物質の具体例としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム含有遷移金属酸化物、LiFePO等のオリビン型リチウム塩、二硫化チタン、二硫化モリブデン等のカルコゲン化合物、二酸化マンガン等が挙げられる。
【0082】
リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物、または、これらの金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。
【0083】
異種元素としては、例えば、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、B等が挙げられる。これらの中でも、Mn、Al、Co、Ni、Mgが好ましい。
【0084】
なお、異種元素は、単独で使用してもよいしい、二種以上を併用してもよい。
【0085】
リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵および放出することが可能であれば、特に制限はなく、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を使用することができる。
【0086】
上記炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、球状または繊維状の人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)等が挙げられる。
【0087】
上記炭素材料以外の負極活物質としては、チタン酸リチウムが挙げられる。
【0088】
また、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度の点から、シリコン、スズ、シリコン合金、スズ合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化スズ等の高容量材料も、負極活物質として、使用することができる。
【0089】
ニッケル水素二次電池用の正極活物質としては、例えば、水酸化ニッケル等が挙げられる。
【0090】
ニッケル水素二次電池用の負極活物質としては、例えば、Zr-Ti-Mn-Fe-Ag-V-Al-W合金、Ti15Zr2115Ni29CrCoFeMn合金等のAB系あるいはAB系の水素吸蔵合金が挙げられる。
【0091】
電極合材23は、結着剤、導電剤をさらに含んでいてもよい。
【0092】
結着剤としては、例えば、PVDF、PTFE、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0093】
上記以外の結着剤としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンからなる群より選択される二種以上のモノマーの共重合体等が挙げられる。
【0094】
なお、結着剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0095】
導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体、グラフェン誘導体等の導電性材料等を用いることができる。
【0096】
非水系蓄電素子用の電極基体21としては、平面性および導電性を有する基体であれば、特に制限はなく、二次電池、キャパシターで用いられる、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、チタニウム箔、または、これらをエッチングして微細な穴を開けたエッチド箔、リチウムイオンキャパシターで用いられる穴開き電極基体等を用いることができる。
【0097】
燃料電池用の活物質としては、一般に、白金粒子、ルテニウム粒子、白金合金粒子等の触媒粒子を、カーボン等の触媒担体の表面に担持させたものが用いられる。
【0098】
燃料電池用の電極合材23は、例えば、電極基体21上に、触媒粒子の前駆体が担持されている触媒担体を含む塗布液を塗布した後、水素雰囲気下等で還元することによって形成することができる。
【0099】
触媒担体の表面に触媒粒子の前駆体を担持する方法としては、例えば、触媒担体が水中に懸濁している懸濁液に、触媒粒子の前駆体を添加して、溶解させた後、アルカリを加え、金属の水酸化物を生成させると共に、触媒担体の表面に担持させる方法が挙げられる。
【0100】
触媒粒子の前駆体としては、塩化白金酸、ジニトロジアミノ白金、塩化第二白金、塩化第一白金、ビスアセチルアセトナート白金、ジクロロジアンミン白金、ジクロロテトラミン白金、硫酸第二白金塩化ルテニウム酸、塩化イリジウム酸、塩化ロジウム酸、塩化第二鉄、塩化コバルト、塩化クロム、塩化金、硝酸銀、硝酸ロジウム、塩化パラジウム、硝酸ニッケル、硫酸鉄、塩化銅等が挙げられる。
【0101】
燃料電池用の電極基体21としては、燃料電池で用いられる、カーボンペーパーの繊維状の電極を不織状または織状で平面にしたもの、上記穴あき電極基体のうち微細な穴を有するもの等を用いることができる。
【0102】
太陽電池用の活物質としては、例えば、WO粉末、TiO粉末、SnO粉末、ZnO粉末、ZrO粉末、Nb粉末、CeO粉末、SiO粉末、Al粉末等の酸化物半導体粉末が挙げられる。
【0103】
太陽電池用の電極合材23は、例えば、電極基体21上に、色素が担持されている酸化物半導体粉末を含む塗布液を塗布することによって形成することができる。
【0104】
色素としては、例えば、ルテニウム・トリス型の遷移金属錯体、ルテニウム-ビス型の遷移金属錯体、オスミウム-トリス型の遷移金属錯体、オスミウム-ビス型の遷移金属錯体、ルテニウム-シス-ジアクア-ビピリジル錯体、フタロシアニンおよびポルフィリン、有機-無機のペロブスカイト結晶等が挙げられる。
【0105】
太陽電池用の電極基体21としては、太陽電池で用いられる、ガラス、プラスチック等の平面基体上に、インジウム・チタン系の酸化物、酸化亜鉛等の透明半導体膜が形成されているもの、導電性電極膜が蒸着されているもの等を用いることができる。
【0106】
<非水系蓄電素子>
本実施形態の非水系蓄電素子は、本実施形態の電極を有する。このとき、本実施形態の電極は、正極および/または負極である。
【0107】
本実施形態の非水系蓄電素子は、セパレータを介して、正極と負極が配置されているが、セパレータを介して、正極と負極が交互に積層されていることが好ましい。このとき、正極と負極の積層数は、任意に決定することができる。
【0108】
なお、本実施形態の電極は、本実施形態の多孔質絶縁体を有するため、必要に応じて、セパレータを省略することができる。
【0109】
本実施形態の非水系蓄電素子は、非水電解液が注入されており、外装で封止されていることが好ましい。このとき、外装と絶縁するために、両側の電極と外装の間に、セパレータが設けられていることが好ましい。
【0110】
非水系蓄電素子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、非水系二次電池、非水系キャパシタ等が挙げられる。
【0111】
非水系蓄電素子の形状としては、特に制限はなく、公知の形状の中から、その用途に応じて適宜選択することができるが、例えば、ラミネートタイプ、シート電極およびセパレータをスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極およびセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極およびセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。
【0112】
図4に、本実施形態の非水系蓄電素子の一例を示す。
【0113】
非水系蓄電素子40は、正極41と、負極42と、非水電解液を保持しているセパレータ43と、外装缶44と、正極41の引き出し線45と、負極42の引き出し線46とを有する。
【0114】
<セパレータ>
セパレータは、負極と正極の短絡を防ぐために、負極と正極との間に設けられる。
【0115】
セパレータは、イオン透過性を有し、かつ、電子伝導性を有しない。
【0116】
セパレータとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙等の紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリプロピレンメルトフロー不織布等のポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、ポリエチレン系微多孔膜、ポリプロピレン系微多孔膜等が挙げられる。
【0117】
セパレータは、非水電解液を保持する観点から、気孔率が50%以上であることが好ましい。
【0118】
セパレータの平均厚さは、3~50μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましい。セパレータの平均厚さが3μm以上であると、負極と正極び短絡を防止しやすくなり、50μm以下であると、負極と正極の間の電気抵抗が増加しにくくなる。
【0119】
セパレータの形状としては、非水系蓄電素子に適用することが可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、シート状等が挙げられる。
【0120】
セパレータの大きさは、非水系蓄電素子に適用することが可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0121】
セパレータは、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0122】
<非水電解液>
非水電解液は、電解質塩が非水溶媒に溶解している電解液である。
【0123】
<非水溶媒>
非水溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非プロトン性有機溶剤が好ましい。
【0124】
非プロトン性有機溶剤としては、鎖状カーボネート、環状カーボネート等のカーボネート系有機溶剤を用いることができる。
【0125】
鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、メチルプロピオネート(MP)等が挙げられる。
【0126】
環状カーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等が挙げられる。
【0127】
これらの中でも、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)を併用することが好ましい。このとき、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)の比率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0128】
本実施形態においては、必要に応じて、カーボネート系有機溶剤以外の非水溶媒を用いてもよい。
【0129】
カーボネート系有機溶剤以外の非水溶媒としては、環状エステル、鎖状エステル等のエステル系有機溶剤、環状エーテル、鎖状エーテル等のエーテル系有機溶剤等を用いることができる。
【0130】
環状エステルとしては、例えば、γ-ブチロラクトン(γBL)、2-メチル-γ-ブチロラクトン、アセチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等が挙げられる。
【0131】
鎖状エステルとしては、例えば、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル(酢酸メチル(MA)、酢酸エチル等)、ギ酸アルキルエステル(ギ酸メチル(MF)、ギ酸エチル等)等が挙げられる。
【0132】
環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、アルキル-1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソラン等が挙げられる。
【0133】
鎖状エーテルとしては、例えば、1,2-ジメトシキエタン(DME)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
【0134】
<電解質塩>
電解質塩としては、イオン伝導度が高く、非水溶媒に溶解することが可能であれば、特に制限はないが、リチウム塩が好ましい。
【0135】
リチウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、塩化リチウム(LiCl)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiN(CFSO)、リチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(CSO)等が挙げられる。これらの中でも、炭素電極中へのアニオンの吸蔵量の観点から、LiPFが特に好ましい。
【0136】
なお、電解質塩は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0137】
非水電解液中の電解質塩の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.7~4mol/Lであることが好ましく、1.0~3mol/Lであることがより好ましく、1.0~2.5mol/Lであることがさらに好ましい。
【0138】
<非水系蓄電素子の用途>
本実施形態の非水系蓄電素子の用途としては、特に制限はなく、各種用途に用いることができるが、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等が挙げられる。
【実施例0139】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0140】
後述する方法により作製したデバイスA、B(図5図7参照)を用いて、以下の方法により、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した。
【0141】
<加熱時の絶縁性>
デバイスA、Bを用いて、加熱時の絶縁性を評価した。具体的には、デバイスA、Bを200℃に加熱した時の負極基体間の直流抵抗値を測定した。なお、加熱時の絶縁性は、下記の基準で判定した。
【0142】
〇:負極基体間の直流抵抗値が1MΩ以上である場合
△:負極基体間の直流抵抗値が1KΩ以上1MΩ未満である場合
×:負極基体間の直流抵抗値が1KΩ未満である場合
<多孔質絶縁体の空隙率>
デバイスAを用いて、室温(25℃)における多孔質絶縁体の空隙率を評価した。具体的には、まず、デバイスAに不飽和脂肪酸(市販のバター)を充填した後、オスミウム染色を施した。次に、集束イオンビーム(FIB)を用いて、デバイスAの内部の多孔質絶縁体の断面構造を切り出した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、多孔質絶縁体の空隙率を測定した。なお、多孔質絶縁体の空隙率は、下記の基準で判定した。
【0143】
◎:空隙率が50%以上である場合
〇:空隙率が30%以上50%未満である場合
×:空隙率が30%未満である場合
<加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化>
デバイスAを用いて、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した。具体的には、まず、ホットプレートを用いて、デバイスAを200℃で15分間加熱した。次に、デバイスAに不飽和脂肪酸(市販のバター)を充填した後、オスミウム染色を施した。次に、集束イオンビーム(FIB)を用いて、デバイスAの内部の多孔質絶縁体の断面構造を切り出した後、SEMを用いて、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率を測定し、室温における多孔質絶縁体の空隙率との差を求めた。なお、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化は、下記の基準で判定した。
【0144】
◎:空隙率の低下が30%以上である場合
〇:空隙率の低下が5%以上30%未満である場合
△:空隙率の低下が1%以上5%未満である場合
×:空隙率の低下が1%未満である場合
<実施例1>
〔1〕~〔3〕に示す工程により、図5に示すデバイスAを作製した。
【0145】
〔1〕多孔質絶縁体用インクの調製
架橋性モノマーとしての、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス社製)14質量部、ポロジェンとしての、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業社製)32質量部、光重合開始剤としての、Irgacure184(BASF社製)0.7質量部、樹脂粒子としての、融点140℃のポリプロピレン(PP)ワックス粒子(三井化学社製)54質量部を混合し、多孔質絶縁体用インクを調製した。
【0146】
ここで、多孔質絶縁体用インクに含まれる、架橋性モノマーと、樹脂粒子の体積比は、1:4である。
【0147】
〔2〕多孔質絶縁体の形成
ディスペンサーを用いて、負極基体としての、厚さ8μmの銅箔上に、多孔質絶縁体用インクを塗布した後、N雰囲気下でUVを照射することで、架橋性モノマーを架橋した。次に、ホットプレートを用いて、100℃で1分間加熱することで、溶媒を除去し、多孔質絶縁体を形成した。
【0148】
SEMを用いて、多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった(図6参照)。
【0149】
〔3〕デバイスAの作製
多孔質絶縁体が形成されている負極基体の上に、負極基体としての、厚さ8μmの銅箔を重ね合わせて、デバイスAを作製した。
【0150】
次に、デバイスAを用いて、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0151】
なお、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0152】
次に、〔4〕~〔6〕に示す工程により、図7に示すデバイスBを作製した。
【0153】
〔4〕負極合材の形成
負極活物質としての、平均粒径10μmのグラファイト粒子97質量部と、増粘剤としての、セルロース1質量部と、結着剤としての、アクリル樹脂2質量部を、水中に均一に分散させて、負極合材用インクを得た。
【0154】
負極基体としての、厚さ8μmの銅箔上に、負極合材用インクをディスペンサーを用いて塗布した後、120℃で10分間乾燥させ、プレスして、厚さ60μmの負極合材を形成した。
【0155】
最後に、負極合材が形成されている電極基体を50mm×33mmに切り出した。
【0156】
〔5〕多孔質絶縁体の形成
ディスペンサーを用いて、負極合材が形成されている電極基体上に、多孔質絶縁体用インクを塗布した後、N雰囲気下でUVを照射することで、架橋性モノマーを架橋した。次に、ホットプレートを用いて、100℃で1分間加熱することで、溶媒を除去し、多孔質絶縁体を形成した。
【0157】
SEMを用いて、多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0158】
〔6〕デバイスBの作製
多孔質絶縁体が形成されている電極基体の上に、負極基体としての、厚さ8μmの銅箔を重ね合わせて、デバイスBを作製した。
【0159】
次に、デバイスBを用いて、加熱時の絶縁性を評価した(表2参照)。
【0160】
<実施例2>
〔1〕多孔質絶縁体用インクの調製
架橋性モノマーとしての、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス社製)14質量部、ポロジェンとしての、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業社製)32質量部、光重合開始剤としての、Irgacure184(BASF社製)0.7質量部、樹脂粒子としての、融点110℃のポリエチレン(PE)ワックス粒子(三井化学社製)54質量部を混合し、多孔質絶縁体用インクを調製した。
【0161】
ここで、多孔質絶縁体用インクに含まれる、架橋性モノマーと、樹脂粒子の体積比は、1:4である。
【0162】
上記の多孔質絶縁体用インクを用いた以外は、実施例1と同様にして、〔2〕~〔7〕の工程を実施して、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0163】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0164】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0165】
<実施例3>
〔1〕多孔質絶縁体用インクの調製
架橋性モノマーとしての、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス社製)9質量部、ポロジェンとしての、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業社製)20質量部、光重合開始剤としての、Irgacure184(BASF社製)0.4質量部、樹脂粒子としての、融点151℃のポリフッ化ビニリデン(PVDF)粒子トレパール(東レ社製)70質量部を混合し、多孔質絶縁体用インクを調製した。
【0166】
ここで、多孔質絶縁体用インクに含まれる、架橋性モノマーと、樹脂粒子の体積比は、1:4である。
【0167】
上記の多孔質絶縁体用インクを用いた以外は、実施例1と同様にして、〔2〕~〔7〕の工程を実施して、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0168】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0169】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0170】
<実施例4>
〔1〕多孔質絶縁体用インクの調製
架橋性モノマーとしての、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス社製)23質量部、ポロジェンとしての、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業社製)53質量部、光重合開始剤としての、Irgacure184(BASF社製)1.1質量部、樹脂粒子としての、融点140℃のポリプロピレンワックス粒子(三井化学社製)23質量部を混合し、多孔質絶縁体用インクを調製した。
【0171】
ここで、多孔質絶縁体用インクに含まれる、架橋性モノマーと、樹脂粒子の体積比は、1:1である。
【0172】
上記の多孔質絶縁体用インクを用いた以外は、実施例1と同様にして、〔2〕~〔7〕の工程を実施して、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0173】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0174】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0175】
<実施例5>
架橋性モノマーとしての、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス社製)23質量部、ポロジェンとしての、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業社製)53質量部、光重合開始剤としての、Irgacure184(BASF社製)1.1質量部、樹脂粒子としての、融点110℃のポリエチレンワックス粒子(三井化学社製)23質量部を混合し、多孔質絶縁体用インクを調製した。
【0176】
ここで、多孔質絶縁体用インクに含まれる、架橋性モノマーと、樹脂粒子の体積比は、1:1である。
【0177】
上記の多孔質絶縁体用インクを用いた以外は、実施例1と同様にして、〔2〕~〔7〕の工程を実施して、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0178】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0179】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0180】
<実施例6>
架橋性モノマーとしての、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス社製)19質量部、ポロジェンとしての、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業社製)43質量部、光重合開始剤としての、Irgacure184(BASF社製)0.9質量部、樹脂粒子としての、融点151℃のポリフッ化ビニリデン粒子トレパール(東レ社製)37質量部を混合し、多孔質絶縁体用インクを調製した。
【0181】
ここで、多孔質絶縁体用インクに含まれる、架橋性モノマーと、樹脂粒子の体積比は、1:1である。
【0182】
上記の多孔質絶縁体用インクを用いた以外は、実施例1と同様にして、〔2〕~〔7〕の工程を実施して、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0183】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0184】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0185】
<実施例7>
多孔質絶縁体用インクを調製する際に、光重合開始剤の代わりに、熱重合開始剤としての、AIBN(和光純薬工業社製)を用い、多孔質絶縁体を形成する際に、UVを照射する代わりに、70℃に加熱した以外は、実施例1と同様にして、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0186】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0187】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0188】
<実施例8>
多孔質絶縁体用インクを調製する際に、光重合開始剤の代わりに、熱重合開始剤としての、AIBN(和光純薬工業社製)を用い、多孔質絶縁体を形成する際に、UVを照射する代わりに、70℃に加熱した以外は、実施例2と同様にして、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0189】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0190】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0191】
<実施例9>
多孔質絶縁体用インクを調製する際に、光重合開始剤の代わりに、熱重合開始剤としての、AIBN(和光純薬工業社製)を用い、多孔質絶縁体を形成する際に、UVを照射する代わりに、70℃に加熱した以外は、実施例3と同様にして、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0192】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0193】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0194】
<実施例10>
架橋性モノマーとしての、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス社製)26質量部、ポロジェンとしての、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業社製)60質量部、光重合開始剤としての、Irgacure184(BASF社製)1.0質量部、樹脂粒子としての、融点140℃のポリプロピレンワックス粒子(三井化学社製)13質量部を混合し、多孔質絶縁体用インクを調製した。
【0195】
ここで、多孔質絶縁体用インクに含まれる、架橋性モノマーと、樹脂粒子の体積比は、2:1である。
【0196】
上記の多孔質絶縁体用インクを用いた以外は、実施例1と同様にして、〔2〕~〔7〕の工程を実施して、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0197】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0198】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0199】
<実施例11>
架橋性モノマーとしての、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス社製)26質量部、ポロジェンとしての、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業社製)60質量部、光重合開始剤としての、Irgacure184(BASF社製)1.0質量部、樹脂粒子としての、融点110℃のポリエチレンワックス粒子(三井化学社製)13質量部を混合し、多孔質絶縁体用インクを調製した。
【0200】
ここで、多孔質絶縁体用インクに含まれる、架橋性モノマーと、樹脂粒子の体積比は、2:1である。
【0201】
上記の多孔質絶縁体用インクを用いた以外は、実施例1と同様にして、〔2〕~〔7〕の工程を実施して、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0202】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0203】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0204】
<実施例12>
架橋性モノマーとしての、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス社製)23質量部、ポロジェンとしての、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業社製)53質量部、光重合開始剤としての、Irgacure184(BASF社製)1.0質量部、樹脂粒子としての、融点151℃のポリフッ化ビニリデン粒子トレパール(東レ社製)23質量部を混合し、多孔質絶縁体用インクを調製した。
【0205】
ここで、多孔質絶縁体用インクに含まれる、架橋性モノマーと、樹脂粒子の体積比は、2:1である。
【0206】
上記の多孔質絶縁体用インクを用いた以外は、実施例1と同様にして、〔2〕~〔7〕の工程を実施して、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0207】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0208】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0209】
<実施例13>
架橋性モノマーとしての、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス社製)6質量部、ポロジェンとしての、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業社製)13質量部、光重合開始剤としての、Irgacure184(BASF社製)0.3質量部、樹脂粒子としての、融点140℃のポリプロピレンワックス粒子(三井化学社製)81質量部を混合し、多孔質絶縁体用インクを調製した。
【0210】
ここで、多孔質絶縁体用インクに含まれる、架橋性モノマーと、樹脂粒子の体積比は、1:14である。
【0211】
上記の多孔質絶縁体用インクを用いた以外は、実施例1と同様にして、〔2〕~〔7〕の工程を実施して、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0212】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0213】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0214】
<実施例14>
架橋性モノマーとしての、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス社製)6質量部、ポロジェンとしての、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業社製)13質量部、光重合開始剤としての、Irgacure184(BASF社製)0.3質量部、樹脂粒子としての、融点110℃のポリエチレンワックス粒子(三井化学社製)81質量部を混合し、多孔質絶縁体用インクを調製した。
【0215】
ここで、多孔質絶縁体用インクに含まれる、架橋性モノマーと、樹脂粒子の体積比は、1:14である。
【0216】
上記の多孔質絶縁体用インクを用いた以外は、実施例1と同様にして、〔2〕~〔7〕の工程を実施して、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0217】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0218】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0219】
<実施例15>
架橋性モノマーとしての、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス社製)3質量部、ポロジェンとしての、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業社製)7質量部、光重合開始剤としての、Irgacure184(BASF社製)0.2質量部、樹脂粒子としての、融点151℃のポリフッ化ビニリデン粒子トレパール(東レ社製)89質量部を混合し、多孔質絶縁体用インクを調製した。
【0220】
ここで、多孔質絶縁体用インクに含まれる、架橋性モノマーと、樹脂粒子の体積比は、1:14である。
【0221】
上記の多孔質絶縁体用インクを用いた以外は、実施例1と同様にして、〔2〕~〔7〕の工程を実施して、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0222】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0223】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0224】
<比較例1>
〔1〕多孔質絶縁体用インクの調製
樹脂粒子としての、融点140℃のポリプロピレンワックス粒子(三井化学社製)20質量部、バインダーとしての、ポリフッ化ビニリデンW#9100(クレハ社製)1質量部、溶媒としての、シクロヘキサノン(関東化学工業社製)79質量部を混合し、多孔質絶縁体用インクを調製した。
【0225】
多孔質絶縁体を形成する際に、得られた多孔質絶縁体用インクを用い、N雰囲気下でUVを照射することを省略した以外は、実施例1と同様にして、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0226】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0227】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0228】
<比較例2>
多孔質絶縁体用インクを調製する際に、ポリプロピレンワックス粒子の代わりに、融点110℃のポリエチレンワックス粒子(三井化学社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0229】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0230】
<比較例3>
多孔質絶縁体用インクを調製する際に、ポリプロピレンワックス粒子の代わりに、融点151℃のポリフッ化ビニリデン粒子トレパール(東レ社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0231】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0232】
<比較例4>
多孔質絶縁体用インクを調製する際に、ポリプロピレンワックス粒子の代わりに、熱耐性が高いシリカ粒子(日揮触媒化成社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0233】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0234】
<比較例5>
多孔質絶縁体用インクを調製する際に、ポリプロピレンワックス粒子を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0235】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0236】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0237】
<比較例6>
多孔質絶縁体用インクを調製する際に、ポリプロピレンワックス粒子の代わりに、熱耐性が高いシリカ粒子(日揮触媒化成社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0238】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていることがわかった。
【0239】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0240】
<比較例7>
多孔質絶縁体用インクを調製する際に、ポロジェンの代わりに、架橋性モノマーの重合体に対する溶解性が高いシクロヘキサノンを用いた以外は、実施例1と同様にして、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0241】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていないことがわかった。
【0242】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0243】
<比較例8>
多孔質絶縁体用インクを調製する際に、ポロジェンの代わりに、架橋性モノマーに対する溶解性が高いシクロヘキサノンを用いた以外は、比較例5と同様にして、デバイスA、Bを作製し、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0244】
SEMを用いて、デバイスA、Bの多孔質絶縁体の表面を観察した結果、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔が形成されていないことがわかった。
【0245】
また、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0246】
表1に、多孔質絶縁体用インクの構成を示す。
【0247】
【表1】
ここで、体積比は、多孔質絶縁体用インクに含まれる、架橋性モノマーと、樹脂粒子の体積比である。
【0248】
<比較例9>
〔1〕に示す工程により、図5に示すデバイスAを作製した。
【0249】
〔1〕デバイスAの作製
負極基体としての、厚さ8μmの銅箔上に、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔を有するポリオレフィン多孔フィルムのユーポア(宇部興産社製)、厚さ8μmの銅箔を重ね合わせて、デバイスAを作製し、加熱時の絶縁性を評価した(表2参照)。
【0250】
なお、デバイスAの負極基体間の直流抵抗値を室温で測定したところ、20MΩ以上の高い絶縁性を示した。
【0251】
次に、〔2〕に示す工程により、図7に示すデバイスBを作製した。
【0252】
〔2〕デバイスBの作製
負極合材が形成されている電極基体上に、孔径0.1~10μm程度のマクロ孔を有するポリオレフィン多孔フィルムのユーポア(宇部興産社製)、厚さ8μmの銅箔を重ね合わせた以外は、実施例1と同様にして、デバイスBを作製し、加熱時の絶縁性を評価した(表2参照)。
【0253】
デバイスA、Bを用いて、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化を評価した(表2参照)。
【0254】
表2に、加熱時の絶縁性、多孔質絶縁体の空隙率、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化の評価結果を示す。
【0255】
【表2】
表2から、実施例1~15の多孔質絶縁体は、空隙率が高いことがわかる。また、実施例1~15の多孔質絶縁体は、加熱時の絶縁性および加熱時の空隙率の変化が大きいことから、形状維持機能と、シャットダウン機能が高いことがわかる。これは、適切な架橋性モノマーと、ポロジェンと、樹脂粒子を含む多孔質絶縁体用インクを用いることで、熱耐性が高い架橋している高分子化合物によって多孔質構造が形成され、多孔質絶縁体の絶縁性が維持されたためであると考えられる。また、多孔質絶縁体は、高分子化合物よりも融点が低い樹脂粒子を有していることから、加熱時に高分子化合物の形状が変化する前に、樹脂粒子が融解して多孔質構造の空孔を閉塞するため、シャットダウン機能が高いと考えられる。
【0256】
実施例1の多孔質絶縁体は、実施例4の多孔質絶縁体と比べて、樹脂粒子の含有量が多いため、加熱時の多孔質絶縁体の空隙率の変化が大きく、シャットダウン機能が高いと考えられる。
【0257】
実施例2、3、5、6の多孔質絶縁体は、実施例1の多孔質絶縁体とは融点が異なる樹脂粒子を含んでいるが、樹脂粒子は、高分子化合物よりも融点が低いため、実施例1の多孔質絶縁体と同様の効果が得られる。
【0258】
実施例7~9の多孔質絶縁体は、熱重合開始剤を用いて、架橋性モノマーを架橋させているが、実施例1~6の多孔質絶縁体と同様の効果が得られ、適切な架橋性モノマーと、ポロジェンと、樹脂粒子を含む多孔質絶縁体用インクを用いることで、形状維持機能と、シャットダウン機能が高く、空隙率が高い多孔質絶縁体を形成できることを示している。
【0259】
実施例10~12の多孔質絶縁体は、樹脂粒子の含有量が少ないため、実施例1~9の多孔質絶縁体よりも、加熱時の空隙率の変化が小さい。
【0260】
実施例13~15の多孔質絶縁体は、樹脂粒子の含有量が多いため、実施例1~9の多孔質絶縁体よりも、空隙率が低い。
【0261】
比較例1~3の多孔質絶縁体は、樹脂粒子と、バインダーで構成されているため、シャットダウン機能を有するが、空隙率が低い。これは、樹脂粒子が最密充填に近い構造となることが原因であると考えられる。また、比較例1~3の多孔質絶縁体は、所定の温度に達すると、多孔質構造を構成する樹脂粒子が液体に変化し、急激に形状が変化するため、形状維持機能が低い。
【0262】
比較例4の多孔質絶縁体は、熱耐性が高いシリカ粒子を有することから、形状維持機能が高いものの、比較例1~3の多孔質絶縁体と同様の構造を有するため、空隙率が低い。また、シリカ粒子は、200℃に達しても、融解しないため、比較例4の多孔質絶縁体は、加熱時の空隙率の変化が小さく、シャットダウン機能が低い。
【0263】
比較例5、6の多孔質絶縁体は、空隙率が確保されるが、樹脂粒子を含まないため、加熱時の空隙率の変化が小さく、シャットダウン機能が低い。
【0264】
比較例7、8の多孔質絶縁体は、加熱時の絶縁性が高いものの、空隙率が低い。これは、架橋性モノマーの溶媒に対する溶解性が高いため、架橋性モノマーの重合が進行しても、相分離が進行しにくいことが原因であると考えられる。
【0265】
比較例9の多孔質絶縁体は、空隙率が高く、シャットダウン機能を有するが、加熱時の絶縁性が低い。これは、多孔質絶縁体の製造時のひずみが原因で熱収縮したことが原因であると考えられる。
【符号の説明】
【0266】
10 多孔質絶縁体
11 多孔質構造
12 固体
12' 液体
20 電極
21 電極基体
22 活物質
23 電極合材
31 空孔
40 非水系蓄電素子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0267】
【特許文献1】国際公開第2006/062153号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7