(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058622
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】加熱調理用でんぷん含有固形状組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20230418BHJP
A23L 7/109 20160101ALN20230418BHJP
【FI】
A23L5/00 N
A23L5/00 A
A23L7/109 J
A23L7/109 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018529
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2022546680の分割
【原出願日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2021031884
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】丹下 裕介
(57)【要約】 (修正有)
【課題】常温保管中に時間が経過してもひび割れが生じにくくなると共に、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくい加熱調理用でんぷん含有固形状組成物を、高温高圧耐性を有する特殊な製造設備を用いることなく、汎用設備で簡便に製造できる方法を提供する。
【解決手段】モーターによって回転するスクリュー300の全長に対して、フライト部200Aの長さの割合が50%以上で、且つ、混練部200Bの長さの割合が50%未満である押出機を用い、下記(i)~(iii)の段階により固形状組成物を製造する。
(i)組成物を調製する段階。
(ii)段階(i)の組成物を、スクリューのフライト部で搬送する段階。
(iii)段階(ii)のフライト部による搬送後の組成物を、スクリューの混練部において、100℃未満の平均温度且つ1.0MPa以上の与圧下で混練する段階。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機を用いて加熱調理用でんぷん含有固形状組成物を製造する方法であって、
前記押出機が、
モーターによって回転するスクリューと、
前記スクリューの外周を包囲するバレルと、
前記バレルの基部側に取付けられた、食品素材を投入するためのフィーダと、
前記バレルの先端側に取付けられた、混練後の食品素材を成形しながら排出するダイ部とを備え、
前記スクリューが、その基部側から先端側にかけて、少なくともフライト部及び混練部を有し、
前記スクリューの全長に対して、前記フライト部の長さの割合が50%以上100%未満で、且つ、前記混練部の長さの割合が0%超50%未満であり、
前記方法が、下記(i)~(iii)の段階を含む製造方法。
(i)下記(1)~(6)を充足する組成物を調製する段階。
(1)食物繊維の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上である。
(2)でんぷんの含有量が湿潤質量換算で10.0質量%以上である。
(3)タンパク質の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上である。
(4)乾量基準含水率が25質量%以上である。
(5)でんぷんの糊化度が40質量%以上である。
(6)超音波処理後の単位体積当たり比表面積が0.10m2/mL以上である。
(ii)段階(i)の組成物を、前記スクリューの前記フライト部で搬送する段階。
(iii)段階(ii)の前記フライト部による搬送後の組成物を、前記スクリューの前記混練部において、100℃未満の平均温度且つ1.0MPa以上の与圧下で混練する段階。
【請求項2】
前記混練部が前記スクリューの先端側終点部に隣接する位置に設置されている、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
段階(iii)の混練が、比力学的エネルギー(SME)値300kJ/kg以上の条件下で行われる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
更に下記(iv)の段階を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の製造方法。
(iv)段階(iii)の混練後組成物の糊化度を、前記混練部以降において6質量%以上低下させる段階。
【請求項5】
段階(iv)の糊化度の低下が、乾量基準含水率が25質量%以上の状態の組成物を、雰囲気温度80℃以下かつ雰囲気湿度(RH%)60RH%以上の環境下で、0.1時間以上処理することにより行われる、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
更に下記(v)の段階を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の製造方法。
(v)段階(iii)の混練後組成物を、処理前後で乾量基準含水率が5%以上低下するまで乾燥処理する段階。
【請求項7】
段階(i)の組成物に含まれるでんぷんが、乾量基準含水率25質量%以上の含水条件下における最高到達温度100℃以上で予め加熱された食用植物に由来するでんぷんである、請求項1~6の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
段階(i)の組成物が、当該組成物に下記処理Aを加えた後に超音波処理をした場合の粒子径分布d90が450μm以下となる組成物である、請求項1~7の何れか一項に記載の製造方法。
[処理A]
組成物6質量%の水懸濁液を、0.4容量%のプロテアーゼ及び0.02質量%のα-アミラーゼによって、20℃で3日間処理する。
【請求項9】
段階(i)の組成物が、当該組成物を40質量倍量の水中で90℃15分間恒温処理後、下記[手順a]により処理して得られた成分を下記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数が5.0以上8.0未満の範囲における分子量分布曲線(以下「MWDC5.0-8.0」という。)において、全曲線下面積に対する分子量対数5.0以上6.5未満の区間における曲線下面積の割合(以下「AUC1」という。)が70%以下となる組成物である、請求項1~8の何れか一項に記載の製造方法。
[手順a]組成物の2.5質量%水分散液を粉砕処理し、タンパク質分解酵素処理を行った後 、エタノール不溶性且つジメチルスルホキシド可溶性の成分を得る。
[条件A]1M水酸化ナトリウム水溶液に、手順aにより処理して得られた成分を0.10質量%溶解し、37℃で30分静置後、等質量倍量の水と等質量倍量の溶離液とを加え、5μmフィルターろ過したろ液5mLをゲルろ過クロマトグラフィーに供し、分子量分布を測定する。
【請求項10】
段階(i)の組成物が、前記分子量分布曲線(MWDC5.0-8.0)において、全曲線下面積に対する分子量対数6.5以上8.0未満の区間における曲線下面積の割合(以下「AUC2」という。)が30%以上となる組成物である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
段階(i)の組成物が、当該組成物を前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数6.5以上9.5未満の範囲における分子量分布曲線(以下「MWDC6.5-9.5」という。)において、全曲線下面積に対する分子量対数が6.5以上8.0未満の区間の曲線下面積の割合(以下「AUC3」という。)が30%以上となる組成物である、請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項12】
段階(i)の組成物が、当該組成物を前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数3.5以上6.5未満の範囲における分子量分布曲線(以下「MWDC3.5-6.5」という。)において、全曲線下面積に対する分子量対数が3.5以上5.0未満の区間の曲線下面積の割合(以下「AUC4」という。)が10%以上となる組成物である、請求項9~11の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
ダイ部による押出前の任意の段階において強制排気処理を行う、請求項1~12の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
段階(i)の組成物が下記(a)及び/又は(b)を充足する、請求項1~13の何れか一項に記載の製造方法。
(a)当該組成物の粉砕物の6質量%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が300個/mm2以下である。
(b)ラピッドビスコアナライザを用いて14質量%の組成物粉砕物水スラリーを50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が120℃未満である。
【請求項15】
段階(iv)における糊化度の低下後における組成物のでんぷん糊化度が99質量%以下である、請求項1~14の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記組成物が食用植物を含有する、請求項1~15の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記組成物中の総でんぷん含量に対する、食用植物に含有された状態のでんぷん含量の比率が乾燥質量換算で30質量%以上である、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記食用植物が豆類及び/又は雑穀類である、請求項16又は17に記載の製造方法。
【請求項19】
豆類が、エンドウ属、インゲンマメ属、キマメ属、ササゲ属、ソラマメ属、ヒヨコマメ属、ダイズ属及びヒラマメ属から選ばれる1種以上の豆類である、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
雑穀類が、あわ、ひえ、きび、もろこし、ライ麦、えん麦、はと麦、とうもろこし、そば、アマランサス、及びキノアから選ばれる1種以上である、請求項18に記載の製造方法。
【請求項21】
製造される組成物が豆類及び/又は雑穀類を乾燥質量換算で10質量%以上含有する、請求項18~20の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項22】
製造される組成物が膨化物ではない、請求項1~21の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項23】
ダイ部流路断面における凹凸度が0.1以上である、請求項1~22の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項24】
下記の段階(vi)を更に含む、請求項1~23の何れか一項に記載の製造方法。
(vi)少なくとも段階(iii)の後、得られた組成物を粉砕し、粉砕組成物とする段階。
【請求項25】
下記の段階(vii)を更に含む、請求項24に記載の製造方法。
(vii)段階(vi)の後、得られた粉砕組成物を凝集し、粉砕組成物凝集体とする段階。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の製造方法における段階(i)の組成物の調製に用いるための、下記(1)~(6)を充足するでんぷん含有食品粉砕物。
(1)食物繊維の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上である。
(2)でんぷんの含有量が湿潤質量換算で10.0質量%以上である。
(3)タンパク質の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上である。
(4)乾量基準含水率が25質量%未満である。
(5)でんぷんの糊化度が40質量%以上である。
(6)超音波処理後の単位体積当たり比表面積が0.10m2/mL以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、でんぷんを含有する加熱調理用の固形状組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
でんぷんを含有する加熱調理用の麺等の固形状組成物は従来公知であるが、常温保管中に時間が経過すると、組成物内部にひび割れが生じやすくなると共に、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しやすくなるという課題を有していた。
【0003】
斯かる課題を解決する技術として、特許文献1には、豆類を含有する原料を高温高圧条件下にて処理することで、加熱調理後、時間が経過しても結着しにくい加熱調理用
固形状組成物を製造する方法が開示されている。
【0004】
この方法は、優れた技術ではあるが、組成物を温度100℃以上の高温条件下で強混練する必要があるところ、斯かる高温下強混練時に生地組成物中の膨化を防止するために、高い密閉性を有し、且つ、高温のみならず高圧条件に絶えうる特殊な製造設備が要求される点で、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、その目的は、常温保管中に時間が経過してもひび割れが生じにくくなると共に、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくい加熱調理用でんぷん含有固形状組成物を、高温高圧耐性を有する特殊な製造設備を用いることなく、汎用設備で簡便に製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記事情に鑑みて鋭意研究した結果、基部側から先端側にかけてフライト部及び混練部を有し、全長に対するフライト部の長さ割合が50%以上であるスクリューを有する押出機を用いると共に、所定の組成を有し、糊化度及び比表面積が所定値以上である組成物を調製し、前記押出機のスクリューのフライト部で搬送した後、スクリューの混練部で100℃未満の平均温度下且つ所定値以上の与圧下で混練することで、100℃未満の低温条件下で混練を行うにもかかわらず強固なでんぷんの連続構造を形成させ、常温保管中にひび割れが生じにくくなると共に、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくい加熱調理用でんぷん含有固形状組成物を製造することが可能となるとの知見を得、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の趣旨は、例えば以下に関する。
[項1]押出機を用いて加熱調理用でんぷん含有固形状組成物を製造する方法であって、前記押出機が、モーターによって回転するスクリューと、前記スクリューの外周を包囲するバレルと、前記バレルの基部側に取付けられた、食品素材を投入するためのフィーダと、前記バレルの先端側に取付けられた、混練後の食品素材を成形しながら排出するダイ部とを備え、前記スクリューが、その基部側から先端側にかけて、少なくともフライト部及び混練部を有し、前記スクリューの全長に対して、前記フライト部の長さの割合が50%以上、又は55%以上、又は60%以上、又は65%以上であり、上限は制限されるものではないが、通常100%未満、又は99%以下、又は98%以下で、且つ、前記混練部の長さの割合が50%未満、又は45%以下、又は40%以下、その下限値は特に制限されないが、通常0%超、1%以上、2%以上、又は4%以上、又は6%以上、又は8%以上、又は10%以上であり、前記方法が、下記(i)~(iii)の段階を含む製造方法。
(i)下記(1)~(6)を充足する組成物を調製する段階。
(1)食物繊維の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上、又は4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、又は10質量%以上、又は特に制限されないが、例えば通常40質量%以下、又は30質量%以下である。
(2)でんぷんの含有量が湿潤質量換算で10.0質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、又は50質量%以上、上限は特に制限されないが、例えば通常80質量%以下、又は75質量%以下、又は70質量%以下である。
(3)タンパク質の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上、又は4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、又は10質量%以上、又は11質量%以上、又は12質量%以上、又は13質量%以上、又は14質量%以上、又は15質量%以上、又は16質量%以上、又は17質量%以上、又は18質量%以上、上限は特に制限されないが、例えば通常40質量%以下、又は30質量%以下である。
(4)乾量基準含水率が25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上、又は65質量%以上、又は70質量%以上、又は75質量%以上、又は80質量%以上、上限は特に制限されないが、例えば通常200質量%以下、又は175質量%以下、又は150質量%以下である。
(5)でんぷんの糊化度が40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、上限は特に制限されないが、通常100質量%以下である。
(6)超音波処理後の単位体積当たり比表面積が0.10m2/mL以上、又は0.15m2/mL以上、又は0.20m2/mL以上、又は0.25m2/mL以上、特に0.30m2/mL以上、上限は特に制限されないが、通常2.5m2/mL以下、又は2.2m2/mL以下、又は2.0m2/mL以下である。
(ii)段階(i)の組成物を、前記スクリューの前記フライト部で搬送する段階であり、任意で段階(ii)におけるフライト部が、フライト部全長に対して50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、その上限は特に制限されないが、通常100%、又は100%以下である段階。
(iii)段階(ii)の前記フライト部による搬送後の組成物を、前記スクリューの前記混練部において、平均温度が100℃未満、又は99℃以下、又は98℃以下、又は97℃以下、又は96℃以下、又は95℃以下、その下限は特に制限されないが、通常40℃以上、中でも45℃以上、又は50℃以上、又は55℃以上、且つ1.0MPa以上の与圧下で混練する段階。
[項2]前記混練部が前記スクリューの先端側終点部に隣接する位置に設置されている、項1に記載の製造方法。
[項3]段階(iii)の混練が、比力学的エネルギー(SME)値300kJ/kg以上、又は320kJ/kg以上、又は330kJ/kg以上、又は340kJ/kg以上又は350kJ/kg以上、又は360kJ/kg以上、又は370kJ/kg以上、又は380kJ/kg以上、又は390kJ/kg以上、又は400kJ/kg以上、その上限は特に制限されないが通常5000kJ/kg以下、又は4000kJ/kg以下、又は3000kJ/kg以下、又は2000kJ/kg以下の条件下で行われる、項1又は2に記載の製造方法。
[項4]更に下記(iv)の段階を含む、項1~3の何れか一項に記載の製造方法。
(iv)段階(iii)の混練後組成物の糊化度を、前記混練部以降における組成物の糊化度低下率が6質量%以上、又は7質量%以上、又は8質量%以上、又は9質量%以上、中でも10質量%以上低下、又は15質量%以上低下、又は20質量%以上低下させ、上限は特に制限されないが、通常90質量%以下、又は80質量%以下、又は70質量%以下となるようにする段階。
[項5]段階(iv)の糊化度の低下が、乾量基準含水率が25質量%以上、任意で組成物温度を100℃未満、又は90℃以下、又は80℃以下、又は70℃以下、又は60℃以下、又は50℃以下、又は40℃以下、又は30℃以下、又は20℃以下、又は10℃以下、当該温度下限は特に限定されないが、通常0℃超、又は4℃以上とした状態の組成物を、雰囲気温度80℃以下、又は70℃以下、又は60℃以下、又は50℃以下、又は40℃以下、又は30℃以下、又は20℃以下、又は10℃以下、当該温度下限は特に限定されないが、通常0℃超、又は4℃以上かつ雰囲気湿度(RH%)60RH%以上、又は70RH%以上、又は80RH%、その上限は特に制限されないが、通常100RH%以下の環境下において、処理時間を0.1時間以上、又は0.2時間以上、又は0.3時間以上、又は0.4時間以上、又は0.5時間以上、又は0.6時間以上、又は0.7時間以上、又は0.8時間以上、又は0.9時間以上、又は1.0時間以上、斯かる時間の上限は特に限定されないが、通常20時間以下、又は15時間以下、又は10時間以下として行われる、項4に記載の製造方法。
[項6]更に下記(v)の段階を含む、項1~5の何れか一項に記載の製造方法。
(v)段階(iii)の混練後組成物を、処理前後で乾量基準含水率における「(乾燥処理前の組成物における乾量基準含水率-乾燥処理後組成物における乾量基準含水率)/乾燥処理前の組成物における乾量基準含水率」で規定される低下割合が5%以上、又は10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上、又は45%以上、特に50%以上、上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下、又は95%以下となるまで乾燥処理する段階。
[項7]段階(i)の組成物に含まれるでんぷんが、乾量基準含水率25質量%以上の含水条件下において最高到達温度100℃以上、又は110℃以上、又は120℃以上、その上限は特に制限されないが、通常200℃以下、又は180℃以下で予め加熱された食用植物に由来するでんぷんである、項1~6の何れか一項に記載の製造方法。
[項8]段階(i)の組成物が、当該組成物に下記処理Aを加えた後に超音波処理をした場合の粒子径分布d90が450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は90μm以下、又は80μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下、その下限は、特に制限されるものではないが、通常1μm以上、より好ましくは3μm以上となる組成物である、項1~7の何れか一項に記載の製造方法。
[処理A]
組成物6質量%の水懸濁液を、0.4容量%のプロテアーゼ及び0.02質量%のα-アミラーゼによって、20℃で3日間処理する。
[項9]段階(i)の組成物が、当該組成物を40質量倍量の水中で90℃15分間恒温処理後、下記[手順a]により処理して得られた成分を下記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数が5.0以上8.0未満の範囲における分子量分布曲線(以下「MWDC5.0-8.0」という。)において、全曲線下面積に対する分子量対数5.0以上6.5未満の区間における曲線下面積の割合(以下「AUC1」という。)が70%以下、又は65%以下、又は65%未満、又は60%以下、その下限は特に制限されないが通常10%以上、又は15%以上となる組成物である、項1~8の何れか一項に記載の製造方法。
[手順a]組成物の2.5質量%水分散液を粉砕処理し、タンパク質分解酵素処理を行った後 、エタノール不溶性且つジメチルスルホキシド可溶性の成分を得る。
[条件A]1M水酸化ナトリウム水溶液に、手順aにより処理して得られた成分を0.10質量%溶解し、37℃で30分静置後、等質量倍量の水と等質量倍量の溶離液とを加え、5μmフィルターろ過したろ液5mLをゲルろ過クロマトグラフィーに供し、分子量分布を測定する。
[項10]段階(i)の組成物が、前記分子量分布曲線(MWDC5.0-8.0)において、全曲線下面積に対する分子量対数6.5以上8.0未満の区間における曲線下面積の割合(以下「AUC2」という。)が30%以上、又は35%以上、又は40%以上、又は45%以上、その上限は特に制限されないが通常90%以下、又は85%以下となる組成物である、項9に記載の製造方法。
[項11]段階(i)の組成物が、当該組成物を前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数6.5以上9.5未満の範囲における分子量分布曲線(以下「MWDC6.5-9.5」という。)において、全曲線下面積に対する分子量対数が6.5以上8.0未満の区間の曲線下面積の割合(以下「AUC3」という。)が30%以上、又は35%以上、更には40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、その上限は特に制限されないが通常100%以下、又は98%以下となる組成物である、項9又は10に記載の組成物。
[項12]段階(i)の組成物が、当該組成物を前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数3.5以上6.5未満の範囲における分子量分布曲線(以下「MWDC3.5-6.5」という。)において、全曲線下面積に対する分子量対数が3.5以上5.0未満の区間の曲線下面積の割合(以下「AUC4」という。)が10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上、上限は特に制限されないが、例えば通常70%以下、又は60%以下、又は50%以下、又は45%以下となる組成物である、項9~11の何れか一項に記載の組成物。
[項13]ダイ部による押出前の任意の段階において強制排気処理を行い、当該処理を行う段階が混練部より前、又はフライト部より前、又はフィード部、又は原料投入前である、項1~12の何れか一項に記載の製造方法。
[項14]段階(i)の組成物が、下記(a)及び/又は(b)を充足する、項1~13の何れか一項に記載の製造方法。
(a)当該組成物の粉砕物の6質量%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が300個/mm2以下、又は250個/mm2以下、又は200個/mm2以下、又は150個/mm2以下、又は100個/mm2以下、又は50個/mm2以下、又は30個/mm2以下、又は10個/mm2以下、特に0個/mm2である。
(b)ラピッドビスコアナライザを用いて14質量%の組成物粉砕物の水スラリーを50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が120℃未満、又は115℃以下、又は110℃以下、又は105℃以下、又は100℃以下、又は95℃以下、又は90℃以下、又は85℃以下、又は80℃以下、その下限は特に制限されないが、通常50℃超、又は55℃以上、又は60℃以上である。
[項15]段階(iv)における糊化度の低下後における組成物のでんぷん糊化度が99質量%以下、又は98質量%以下、又は95質量%以下、又は90質量%以下、又は85質量%以下、又は80質量%以下、又は75質量%以下、又は70質量%以下、下限は特に規定されないが、通常5質量%以上、中でも10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、特に50質量%以上である、項1~14の何れか一項に記載の製造方法。
[項16]前記組成物が食用植物を含有する、項1~15の何れか一項に記載の製造方法。
[項17]前記組成物中の総でんぷん含量に対する、食用植物に含有された状態のでんぷん含量の比率が乾燥質量換算で30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、その上限は特に制限されず通常100質量%以下である、項16に記載の製造方法。
[項18]前記食用植物が豆類及び/又は雑穀類である、項16又は17に記載の製造方法。
[項19]豆類が、エンドウ属、インゲンマメ属、キマメ属、ササゲ属、ソラマメ属、ヒヨコマメ属、ダイズ属及びヒラマメ属から選ばれる1種以上の豆類である、項18に記載の製造方法。
[項20]雑穀類が、あわ、ひえ、きび、もろこし、ライ麦、えん麦、はと麦、とうもろこし、そば、アマランサス、及びキノアから選ばれる1種以上である、項18又は19に記載の製造方法。
[項21]製造される組成物が豆類及び/又は雑穀類を乾燥質量換算で10質量%以上又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上、上限は特に制限されないが100質量%以下、又は95質量%以下含有する項18~20の何れか一項に記載の製造方法。
[項22]製造される組成物が膨化物ではなく、任意で組成物の密度が1.0g/cm3以上、又は1.1g/cm3以上、又は1.2g/cm3以上、上限としては特に限定されるものではないが、通常3.0g/cm3未満、又は2.0g/cm3未満である、項1~21の何れか一項に記載の製造方法。
[項23]ダイ部流路断面における凹凸度が0.1以上である、項1~22の何れか一項に記載の製造方法。
[項24]下記の段階(vi)を更に含む、項1~23の何れか一項に記載の製造方法。
(vi)少なくとも段階(iii)の後、得られた組成物を粉砕し、粉砕組成物とする段階。
[項25]下記の段階(vii)を更に含む、項24に記載の製造方法。
(vii)段階(vi)の後、得られた粉砕組成物を凝集し、粉砕組成物凝集体とする段階。
[項26]
項1~25のいずれか一項に記載の製造方法における段階(i)の組成物の調製に用いるための、下記(1)~(6)を充足するでんぷん含有食品粉砕物、中でも豆類粉砕物及び/又は雑穀類粉砕物。
(1)食物繊維の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上、又は4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、又は10質量%以上、又は特に制限されないが、例えば通常40質量%以下、又は30質量%以下である。
(2)でんぷんの含有量が湿潤質量換算で10.0質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、又は50質量%以上、上限は特に制限されないが、例えば通常80質量%以下、又は75質量%以下、又は70質量%以下である。
(3)タンパク質の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上、又は4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、又は10質量%以上、又は11質量%以上、又は12質量%以上、又は13質量%以上、又は14質量%以上、又は15質量%以上、又は16質量%以上、又は17質量%以上、又は18質量%以上、上限は特に制限されないが、例えば通常40質量%以下、又は30質量%以下である。
(4)乾量基準含水率が25質量%未満、又は20質量%未満、又は15質量%未満、又は10質量%未満、下限は制限されるものではないが、例えば0.5質量%以上、又は1質量%以上、又は2質量%以上である。
(5)でんぷんの糊化度が40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、上限は特に制限されないが、通常100質量%以下である。
(6)超音波処理後の単位体積当たり比表面積が0.10m2/mL以上、又は0.15m2/mL以上、又は0.20m2/mL以上、又は0.25m2/mL以上、特に0.30m2/mL以上、上限は特に制限されないが、通常2.5m2/mL以下、又は2.2m2/mL以下、又は2.0m2/mL以下である。
[項27]
豆類が、エンドウ属、インゲンマメ属、キマメ属、ササゲ属、ソラマメ属、ヒヨコマメ属、ダイズ属及びヒラマメ属から選ばれる1種以上の豆類であり、項26に記載のでんぷん含有食品粉砕物、中でも豆類粉砕物及び/又は雑穀類粉砕物。
[項28]
雑穀類が、あわ、ひえ、きび、もろこし、ライ麦、えん麦、はと麦、とうもろこし、そば、アマランサス、及びキノアから選ばれる1種以上の雑穀類である、項26または項27に記載のでんぷん含有食品粉砕物、中でも豆類粉砕物及び/又は雑穀類粉砕物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、常温保管中にひび割れが生じにくくなると共に、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくい加熱調理用でんぷん含有固形状組成物を、高温高圧耐性を有する特殊な製造設備を用いることなく、汎用設備で簡便に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の態様Aに係る製造方法に使用される押出機の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の態様Aに係る押出機に使用されるスクリューの構成例を模式的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の態様Bに係る製造方法に使用される押出機の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3の態様Bに係る押出機に使用されるスクリューの構成例を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0012】
本発明の一態様は、特定の押出機を用いて、特定の性質を有する加熱調理用でんぷん含有固形状組成物(以下「本発明のでんぷん含有固形状組成物」又は「本発明のでんぷん含有固形状ペースト組成物」又は「本発明の組成物」と称する場合もある。)を製造する方法(以下「本発明の製造方法」と称する場合もある。)に関する。以下、まずは本発明の製造方法に使用される特定の押出機(以下「本発明の押出機」と称する場合もある。)の特徴について説明した上で、斯かる本発明の押出機を用いて実施される本発明の製造方法の特徴について説明する。
【0013】
[I.押出機]
(押出機の構成)
押出機(エクストルーダー)としては、代表的には一軸押出機と二軸押出機とが挙げられるが、本発明の製造方法では、一軸押出機を使用することが好ましい。また、一般に押出機と称される装置(特に英語圏で「extruder」又は「single screw extruder」等と称される装置)には、単なるミキサーやニーダー機能を有するに過ぎない押出装置も含まれるが、斯かる押出装置は、本発明の製造方法の特徴の一つとなる強混練を得られないため、本発明の製造方法によって得られるはずの特徴的な組成物構造を形成することが困難となってしまい、好ましくない。
【0014】
本発明の押出機は、モーターによって回転するスクリューと、前記スクリューの外周を包囲するバレルと、前記バレルの基部側に取付けられた、食品素材を投入するためのフィーダと、前記バレルの先端側に取付けられたダイ部とを備える押出機である。ここで、前記スクリューは、基部側から先端側にかけて(即ち、押し出し方向に向かって)フライト部及び混練部を有する。
【0015】
なお、前述の特許文献1に記載の従来技術では、押出機を用いた段階の多くが高温及び/又は高圧下で実施されるため、十分な温度耐性及び圧力耐性を有する必要があった。しかし本発明の製造方法は、100℃未満という比較的低温で実施され、所要の圧力条件も、上記の本発明の押出機を構成する前記各要素についても、その機能及び使用される段階に必要とされる温度及び圧力に応じて、十分な温度耐性及び圧力耐性を有する必要があることは、言うまでもない。
【0016】
以下、本発明の製造方法に使用される押出機の構成例について、模式図を用いて詳細に説明する。但し、これらの図はあくまでも本発明の理解を容易とする観点から、本発明の製造方法に使用可能な押出機を例示するものに過ぎず、本発明の製造方法に使用される押出機は、何らこれらの図によって限定されるものではない。また、その縮尺や縦横比等も、説明の便宜及び紙面記載上の制約等から適宜特定して示しているに過ぎず、本発明の製造方法に使用される押出機の縮尺や縦横比等は、何らこれらに限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の一態様(以下適宜「態様A」とする。)に係る押出機の構成例を模式的に示す断面図である。
図1に示す態様Aの押出機100は、本発明の製造方法に使用するための構成を有する押出機であって、長尺の円筒形状を有するバレル200と、バレル200内に配置された長尺状の一軸のスクリュー300とを有すると共に、バレル200の各所定位置に配置されたフィーダ400、ダイ部500、及び温度調節機構(ヒーター及び/又はクーラー)600を備える。
【0018】
図2は、
図1に示す態様Aに係る押出機100のスクリュー300の構成例を模式的に示す側面図である。スクリュー300は基部側起点と先端側終点とを有し、基部側起点がモーター(図示せず)の回転軸に連結されて回転駆動されるように構成されると共に、その基部側(モーター側)から先端側(反対側)にかけて(即ち、図中白抜き矢印で示す押し出し方向に向かって)順に、フライト部300A及び混練部300Bを有する。フライト部300Aの円周側面には螺旋状の凸部(フライト又はフライト構造)が設けられ、混練部300Bの円周側面には公知の混練用の構造(例えば後述する溝穴付きスクリューねじ山を有する混合部)が設けられる。
【0019】
なお、
図1に示す態様Aに係る押出機100において、スクリュー300をバレル200内に配置した状態では、スクリュー300のフライト部300A及び混練部300Bに応じて、バレル200も対応する2つの領域200A及び200Bに分けることが可能である。本開示では、バレル200のこれら2つの領域200A及び200Bを、対応するスクリュー300の領域の名前を流用して、フライト部200A及び混練部200Bと呼ぶ場合がある。また、バレル200及びスクリュー300の対応する領域を区別せずに総称する場合、フライト部200A,300A及び混練部200B,300Bのように呼ぶ場合もある。
【0020】
態様Aに係る押出機100のフィーダ400は、バレル200のフライト部200Aの基部側起点付近に取付けられ、フィーダ400を通じてバレル200内(バレル200とスクリュー300との間の空間)に混練対象の食品素材を投入できるように構成される。
【0021】
態様Aに係る押出機100のダイ部500は、バレル200の先端側終点に取り付けられ、スクリュー300により混練された組成物を、その流路から成形しながら排出できるように構成される。
【0022】
態様Aに係る押出機100の温度調節機構(ヒーター及び/又はクーラー)600は、任意で設置される構成要素である。斯かる温度調節機構600は、バレル200のフライト部200A及び/又は混練部200Bの周囲の一部又は全部に取り付けられ、バレル200を加熱することにより、バレル200内(バレル200とスクリュー300との間の空間)の組成物の温度を部位ごとに調整できるように構成される。後述のように、本発明の効果奏功の観点からは、フライト部200Aにおける組成物の搬送及び混練部200Bにおける組成物の混練は、何れも100℃未満の比較的低温下で実施されるが、組成物温度が高くなりすぎる場合(例えば100℃以上に加温処理された組成物を原料として使用する場合や混練に伴って生じる摩擦熱や圧縮熱によって組成物温度が高くなりすぎる場合)や、逆に搬送中に組成物温度が下がりすぎる場合は、100℃未満の所望の温度範囲に加熱・冷却によって温度調整することが所望される場合がある。本温度調節機構600は、そのような場合の温度調整用に用いられる。特に本発明においては、混練部200Bにおける組成物の温度が、所定の温度以上(具体的には、混練部の少なくとも過半における組成物温度が40℃以上、又は50℃以上、又は60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上、又は90℃以上)で混練を行う場合、200A及び/又は200Bに設置する温度調節装置600をヒーターとすることで、組成物温度の低下を防ぐことができるため好ましく、更に混練部における組成物温度が所定温度以上となる範囲が一定以上(具体的には混練部の長さに対して50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、又は100%)であることが好ましい。中でも、少なくとも200Bに設置する温度調節装置600がヒーターであることがより好ましく、200A及び200Bに設置する温度調節装置600が共にヒーターであることが特に好ましい。
【0023】
態様Aに係る押出機100の使用時には、組成物の各原料を基部側のフィーダ400からバレル200内(バレル200とスクリュー300との間の空間)に投入すると共に、スクリュー300をバレル200内で所定の方向に回転駆動する。これにより、当該原料からなる生地組成物が、スクリュー300の回転に伴って基部側から先端側に向かって搬送されながら混練され、混練後の組成物はダイ部500において成形されながらその流路から排出される。
【0024】
図3は、本発明の別の態様(以下適宜「態様B」とする。)に係る押出機の構成例を模式的に示す断面図である。
図3に示す態様Bの押出機102は、
図1に示す態様Aの構成の押出機100に対して、後述の段階(i)で調製される組成物の原料となる豆類及び/又は雑穀類(好ましくは後述するように粉末状の豆類及び/又は雑穀類)を予め組成物温度が100℃以上の高温高圧条件下で加熱処理する構成を更にバレル前半部(204A、204B)に追加した押出機であって、長尺の円筒形状を有するバレル202と、バレル202内に配置されたタンデム型スクリュー302とを有すると共に、バレル202の各所定位置に配置されたフィーダ402、ダイ部502、ヒーター802、任意で設けられるベント部702、及び任意で設けられる温度調節装置(後述する組成物温度範囲に調整するためのヒーター及び/又はクーラー)602を備える。
【0025】
図4は、
図3に示す態様Bに係る押出機のタンデム型スクリュー302の構成例を模式的に示す側面図である。タンデム型スクリュー302は、基部側起点と先端側終点とを有し、基部側起点がモーター(図示せず)の回転軸に連結されて回転駆動されるように構成されると共に、その基部側(モーター側)から先端側(反対側)にかけて(即ち、図中白抜き矢印で示す押し出し方向に向かって)順に、加熱用スクリュー304及び混練用スクリュー306がタンデムに連結されてなる。なお、本発明において「タンデム」型の構成とは、製造フローの上流側から下流側にかけて任意の構造が直列に連結されている構成を表す。例えば、
図3に示す構成のように、機能の異なる2種類のスクリュー(前処理を行う加熱用スクリューと本発明の構成を有する混練用スクリュー)が直列に連結され、前半部で処理された組成物がそのまま本発明の構成を有する後半部に供給されるような構成や、2台の独立の押出機(前処理として加熱処理を行う前段の押出機と本発明の構成を有する後段の押出機)が直列に連結し、前段の押出機で加熱処理された組成物が直接的に接続されたり、コンベア搬送されたり、エアー搬送されるなどして前段の処理完了から後段の処理開始まで一定時間以内(例えば0分間以上60分間以内の範囲とすることができ、その上限は例えば60分間以内、中でも30分間以内、又は10分間以内、特に5分間以内、その下限は特に制限されないが0分間以上、又は0.1分間以上)にそのまま後段の押出機に供給されるような構成も、本発明における「タンデム」型の構成に含まれるものとする。
【0026】
加熱用スクリュー304は、後述の段階(i)で調製される組成物の原料となる豆類及び/又は雑穀類を予め高温高圧条件下で加熱処理する機能を有する。その構成は、斯かる機能を達成可能な限りにおいて特に制限されない。
図4では、その基部側(モーター側)から先端側(反対側)にかけて(即ち、押し出し方向に向かって)順に、フライト部304A及び加熱部304Bを有するスクリュー304を示しているが、本構成に限定されるものではない。
【0027】
混練用スクリュー306は、その基部側(モーター側)から先端側(反対側)にかけて(即ち、押し出し方向に向かって)順に、フライト部306A及び混練部306Bを有する。混練用スクリュー306並びにそのフライト部306A及び混練部306Bの構成及び機能は、
図1及び
図2に示す態様Aに係るスクリュー300並びにそのフライト部300A及び混練部300Bの構成及び機能と同様である。
【0028】
なお、
図3に示す態様Bの押出機の場合も、タンデム型スクリュー302をバレル202内に配置した状態において、加熱用スクリュー304のフライト部304A及び加熱部304B並びに混練用スクリュー306のフライト部306A及び混練部306Bに応じて、バレル202も対応する4つの領域204A、204B、206A、及び206Bに分けることが可能である。本開示では、バレル202のこれら4つの領域204A、204B、206A、及び206Bを、対応するタンデム型スクリュー302の領域の名前を流用して、フライト部204A、加熱部204B、フライト部206A、及び混練部206Bと呼ぶ場合がある。また、バレル202及びタンデム型スクリュー302の対応する領域を区別せずに総称する場合、フライト部204A,304A、加熱部204B,304B、フライト部206A,306A、及び混練部206A,206Bのように呼ぶ場合もある。
【0029】
態様Bの押出機102のバレル202の主要部は、前段のフライト部204A及び加熱部204Bと、後段のフライト部206A及び加熱部206Bとに峻別される。前段に当たるフライト部204A及び加熱部204Bは、加熱用スクリュー304のフライト部304A及び加熱部304Bと協働することにより、原料となる豆類及び/又は雑穀類等をフライト部204A,304Aで搬送し、加熱部204B,304Bにおいて高温(通常100℃以上)・高圧条件下で加熱混練処理する機能を有する。斯かる加熱混練処理を高温(通常100℃以上)・高圧条件下で行うために、バレル202の前段となるフライト部204A及び加熱部204Bは、斯かる高温高圧条件に耐性を有するように構成されると共に、その周囲には任意で温度調節機構602が配置される。斯かる温度調節機構602は、バレル202のフライト部202A及び/又は混練部202Bの周囲の一部又は全部に取り付けられ、バレル202を加熱することにより、バレル202内(バレル202とスクリュー302との間の空間)の組成物の温度を部位ごとに調整できるように構成される。一方、後段に当たるフライト部206A及び混練部206Bは、混練用スクリュー306のフライト部306A及び混練部306Bと協働することにより、前段の加熱部204B,304Bから供給される高温高圧加熱後の豆類及び/又は雑穀類等の組成物をフライト部206A,306Aで搬送し、混練部206B,306Bで混練する機能を有する。斯かるバレル202のフライト部206A及び混練部206Bの機能及び構成は、態様Aの押出機のバレル200のフライト部200A及び混練部200Bと基本的には同様であるが、前段の加熱部204B,304Bから供給される高温高圧の豆類及び/又は雑穀類等の組成物の圧力及び温度を急速低下させるために、加熱部204Bとフライト部206Aとの間にはベント部702が任意で設けられると共に、フライト部206A及び/又は混練部206Bの周囲の一部又は全部に組成物温度を調節するための温度調節機構602が任意で配置される。こうした構成により、フライト部206Aにおける組成物の搬送及び混練部206Bにおける組成物の混練は、比較的低温(100℃未満。下限は特に制限されないが通常0℃超、又は40℃以上、又は50℃以上、より好ましくは60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上、特に90℃以上)・低圧下で実施されることになる。例えば、タンデム型のスクリューを使用する場合、前半の加熱部204Bと後半のフライト部206Aとの間に温度調節機構(クーラー)としての役割を有するベント部702を設置して組成物温度を低下させるとともに、後半の温度調節機構602をヒーターとして組成物の温度低下を抑制することが好ましい。
【0030】
態様Bの押出機102のフィーダ402は、態様Aの押出機100のフィーダ400と同様に、バレル202の基部側起点に取り付けられ、豆類及び/又は雑穀類等の原材料をバレル202内(バレル202とタンデム型スクリュー302との間の空間)に供給できるように構成される。
【0031】
態様Bの押出機102のダイ部502は、態様Aの押出機100のダイ部500と同様に、バレル202の先端側終点に取り付けられ、タンデム型スクリュー302により混練された組成物を、その流路から成形しながら排出できるように構成される。
【0032】
態様Bの押出機102のヒーター802は、バレル202のフライト部204A及び加熱部204Bの周囲の一部又は全部に取り付けられ、フライト部204A及び加熱部204Bを加熱することにより、バレル202のフライト部204A及び加熱部204B内(フライト部204A及び加熱部204Bと加熱用スクリュー304のフライト部304A及び加熱部304Bとの間の空間)の組成物の温度を部位ごとに調整できるように構成される。これにより、豆類及び/又は雑穀類等の原料がフライト部204A,304Aで搬送された後、加熱部204B,304Bにおいて高温(通常100℃以上、又は110℃以上、又は120℃以上。上限は特に制限されないが通常300℃未満、又は200℃未満)・高圧条件下で加熱処理される。特に本発明においては、加熱部204Bにおける組成物の温度が、所定の温度以上(具体的には、混練部の少なくとも過半における組成物温度が100℃以上、又は110℃以上、又は120℃以上。上限は特に制限されないが通常300℃未満、又は200℃未満)で混練を行うことが好ましく、さらに当該混練部における組成物温度が所定温度以上となる範囲が一定以上(具体的には混練部の長さに対して例えば50%以上100%以下の範囲とすることができ、より具体的にその下限は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、又は100%)であることが好ましい。
【0033】
態様Bの押出機102のベント部702は、バレル202の加熱部204Bとフライト部206Aとの間に任意で取り付けられ、前段の加熱部204B,304Bから供給される豆類及び/又は雑穀類等の強制排気を行う。これにより、粉砕部204B,304Bにおいて組成物温度100℃以上で高温高圧加熱処理された豆類粉末及び/又は雑穀類粉末等の原料の圧力及び温度が急速低下され、次段のフライト部206A,306Aでの組成物の搬送以降の工程を比較的低温(組成物温度100℃未満。下限は特に制限されないが通常0℃超、又は40℃以上、又は50℃以上、より好ましくは60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上、特に90℃以上)・低圧下で実施することが可能となる。
【0034】
態様Bの押出機102の温度調節機構602は、フライト部206A及び混練部206Bの周囲の一部又は全部に任意で取り付けられ、フライト部206A及び混練部206Bにおける組成物温度を所定の範囲に調節することにより、バレル202のフライト部206A及び混練部206B内(フライト部206A及び混練部206Bと混練用スクリュー306のフライト部306A及び加熱部306Bとの間の空間)の組成物の温度を部位ごとに調整できるように構成される。これにより、加熱後の豆類及び/又は雑穀類等の原料が、フライト部206A,306Aで比較的低温(100℃未満。下限は特に制限されないが通常0℃超、又は40℃以上、又は50℃以上、より好ましくは60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上、特に90℃以上)・低圧下で搬送された後、混練部206B,306Bで比較的低温(100℃未満。下限は特に制限されないが通常0℃超、又は40℃以上、又は50℃以上、より好ましくは60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上、特に90℃以上)・低圧下で混練される。
【0035】
態様Bの押出機102の使用時には、加熱処理前の豆類及び/又は雑穀類等を含む組成物の各原料を基部側のフィーダ402からバレル202内(バレル202とタンデム型スクリュー302との間の空間)に投入すると共に、タンデム型スクリュー302をバレル202内で所定の方向に回転駆動する。これにより、フィーダ402から投入された豆類及び/又は雑穀類等の原料が、スクリュー300の回転に伴って基部側から先端側に向かって駆動され、任意でヒーター802によって加熱されながら、フライト部204A,304Aで搬送された後、ヒーター802によって加熱されながら、加熱部204B,304Bにおいて高温(通常100℃以上。上限は特に制限されないが通常300℃未満、又は200℃未満)・高圧条件下で加熱処理される。続いて、加熱部204Bとフライト部206Aとの間に任意に設けられるベント部702において、加熱処理された豆類及び/又は雑穀類等の原料の圧力及び温度が急速に低下される。次いで、加熱処理後の豆類及び/又は雑穀類等の原料が、任意で設置される温度調節装置602によって組成物温度が所定範囲内となるように温度調整されながら、フライト部206A,306Aで比較的低温(100℃未満。下限は特に制限されないが通常0℃超、又は40℃以上、又は50℃以上、より好ましくは60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上、特に90℃以上)・低圧下で搬送された後、混練部206B,306Bで比較的低温(100℃未満。下限は特に制限されないが通常0℃超、又は40℃以上、又は50℃以上、より好ましくは60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上、特に90℃以上)・低圧下で混練される。混練後の組成物は、ダイ部500において成形されながらその流路から排出される。この時、フライト部206Aの周囲に設置する温度調節装置602をクーラーとすることで、組成物温度が速やかに100℃未満となるため好ましい。また、混練部206Bにおける組成物温度が所定の温度以上(具体的には混練部206Bの過半において組成物温度が40℃以上、又は50℃以上、より好ましくは60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上、特に90℃以上)で混練を行う場合、206A又は206Bに設置する温度調節装置602をヒーターとすることで組成物温度の低下を防ぐことができるため好ましく、少なくとも206Aに設置する温度調節装置602がヒーターであることがより好ましく、206A及び206Bに設置する温度調節装置602がヒーターであることが特に好ましい。
【0036】
なお、繰り返すが、前記の態様Aの押出機100及び態様Bの押出機102は、何れも本発明の押出機の例に過ぎず、後述する所望の条件を満たしつつ本発明の製造方法を実施可能な押出機であれば、任意の構成の押出機を用いることが可能である。例えば、後述する段階(i)~(iii)に先立ち、組成物の原料となる豆類及び/又は雑穀類等の高温高圧下での加熱処理を行う場合、
図3及び
図4に示す態様Bの押出機102のように、加熱用スクリューと混練用スクリューとをタンデムに連結したタンデム型スクリュー302を採用することで、1台として構成した押出機102を用いてもよいが、別態様として、2台の独立の押出機をタンデムに連結し、前段の押出機で豆類及び/又は雑穀類等の高温高圧加熱処理を行い、加熱処理後の豆類及び/又は雑穀類等をそのまま後段の押出機に供給して、後段の押出機で本発明の製造方法を実施してもよい。
【0037】
以下、本発明の押出機の構成及び動作について、より詳細に説明する。
【0038】
(スクリュー)
本発明の押出機に使用されるスクリューは、前述のように、長尺状のスクリューであって、基部側起点と先端側終点とを有し、基部側起点がモーターの回転軸に連結されて回転駆動されるように構成される。
【0039】
本発明の押出機に使用されるスクリューの形状は、限定されるものではないが、フライトスクリュー又はこれをベースにしたスクリューであることが好ましい。本開示において「フライトスクリュー」とは、略円柱状の基軸の周表面の一部又は全部に螺旋状の山状突起構造(フライト)が形成された構造を有し、当該山状突起構造の部分がねじ山を規定すると共に、当該山状突起構造以外の部分が相対的に谷状構造となってねじ溝を規定するような構成のスクリューを意味する。また、溝底の形状に凹凸を有する構造であってもよく、具体的にはフライトの溝底を溝巾方向で凹凸状にしたウェーブ型であってもよい。また主フライト以外にサブフライトを設けたサブフライト型の形状を採用することができる。
【0040】
具体的に、本発明で使用されるスクリューは、その基部側(モーター側)から先端側(反対側)にかけて順に、少なくともフライト部及び混練部を有する。フライト部はスクリューフライトが形成された構成を有する。
【0041】
本発明で使用されるスクリューの直径(D)は、制限されるものではないが、例えば25mm以上300mm以下の範囲とすることができる。より具体的に、直径(D)の値は、通常25mm以上、中でも30mm以上、又は35mm以上、又は40mm以上、又は45mm以上とすることが好ましく、また、上限は特に制限されないが、通常300mm以下、中でも200mm以下、又は150mm以下とすることが好ましい。なお、スクリューの直径とは、スクリューをその回転軸に垂直に切断して得られる仮想切断面において、スクリュー外周上の任意の2点を繋いで得られる最長の線分の長さ(最大線分長)を指し、ねじ山を含んで測定されたスクリュー全長における当該測定値の算術平均値を表す。なお、本発明における平均値(単に平均又は算術平均値と称する場合もある。)とは、特に指定が無い限り相加平均値を指す。
【0042】
本発明で使用されるスクリューの全長(L)は、制限されるものではないが、通常1000mm以上、中でも1100mm以上、又は1200mm以上、又は1300mm以上、又は1400mm以上とすることが好ましい。また、その上限も特に制限されないが、通常5000mm以下、中でも4000mm以下、又は3000mm以下とすることが好ましい。なお、本明細書において「スクリューの全長」とは、別途記載しない限り、スクリューのうち、押出機内部における組成物温度が連続的に100℃未満(その下限は特に制限されないが通常0℃超)となっている区間に相当する部分の長さを意味するものとする。従って、その内部温度を全て100℃未満に調整して本発明の製造方法の各段階のみを実施する構成(例えば、前記の
図1及び
図2に示した態様Aの押出機100等)であれば、押出機全長(
図1及び
図2の場合であれば、押出機100の全長)とスクリュー全長(
図1及び
図2の場合であれば、スクリュー300の長さ、即ち、フライト部300A及び混練部300Bの合計長さ)が概ね一致するが、例えば前段で100℃以上の高温下で処理を行うことで、原料となる豆類及び/又は雑穀類等の高温高圧加熱を行い、後段で内部温度を100℃未満に調整して本発明の製造方法の各段階を実施する構成(例えば、前記の
図3及び
図4に示す態様Bの押出機102や、2台の独立の押出機をタンデムに連結して用いる場合等)であれば、内部温度が100℃未満に調整された以降の内部温度が連続的に100℃未満となっている後段の区間のスクリュー長(
図3及び
図4の場合であれば、混練用スクリュー306の長さ(即ち、フライト部306A及び混練部306Bの合計長さ)、2台の独立の押出機をタンデムに連結して用いる場合であれば、後段の本発明の製造方法の各段階を実施する押出機のスクリュー全長)が、本明細書における「スクリューの全長」に該当する。ここで「連続的」とは、その区間全長の90%以上(より好ましくは95%以上、さらには実質的に100%又は100%)において押出機内部における組成物温度が100℃未満となっている状態を表し、その区間内部の一部で局所的に組成物温度が100℃以上となることは許容される概念である。もちろん、フィーダにねじ供給機を採用した場合であっても、押出機のフライト部とはスクリューが連続しないため、そのねじ供給機長はスクリュー全長には含まれない。また、本明細書においてスクリュー、フライト部、及び混練部の「長さ」とは、別途記載しない限り、押し出し方向の長さを意味するものとする。
【0043】
本発明で使用されるスクリューのL/D比は、制限されるものではないが、例えば5以上50以下の範囲とすることができる。より具体的に、L/D比は、通常5以上とすることが好ましく、中でも6以上、又は7以上、又は8以上とすることが好ましい。スクリューのL/D比を前記下限値以上とすることで、喫食時の粉っぽさが改善しつつ、表面が滑らかな組成物を安定的に生産できる傾向がある。一方、スクリューのL/D比の上限は特に規定されないが、通常50以下とすることが好ましく、中でも30以下、又は26以下、又は24以下、又は22以下、又は20以下、又は18以下とすることが好ましい。特に、L/D比がこのような好適範囲内にあるスクリューを用いることで生産性が高まるため、より好ましい。なお、本開示におけるスクリューの「L/D比」とは、スクリューの直径(D)に対するスクリューの全長(すなわち押出機内部における組成物温度が連続的に100℃未満となっている区間に相当する部分の長さ)(L)との比として定義される。
【0044】
(フライト部)
本発明で使用されるスクリューにおいて、フライト部とは、混練部に対して基部側に存在する、周表面にスクリューフライトが形成された領域を指す。本発明の製造方法において、フライト部は、スクリューの回転に伴って組成物を先端側に搬送しつつ、混練部における圧力を高める機能を有する。なお、本発明において、このようなスクリュー回転に伴い組成物が先端側に搬送されるフライト構造を「フォワードフライト」と称し、逆に組成物が基部側に搬送されるフライト構造を「リバースフライト」と称する場合がある。また、フライト部において、フォワードフライトが設けられた領域を「フォワードフライト部」、リバースフライトが設けられた領域を「リバースフライト部」と称する場合がある。
【0045】
本発明では、スクリュー全長に対してフライト部の長さが一定以上の割合を占めるスクリューを用いる。具体的に、スクリュー全長に対するフライト部の長さの割合は、下限は例えば通常50%以上、上限は制限されるものではないが、例えば100%未満の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常50%以上、中でも55%以上、又は60%以上、又は65%以上であることが好ましい。スクリュー全長に対するフライト部の長さの割合を前記下限値以上とすることで、後の混練時の圧力が安定すると共に、高温下で混練しなくとも組成物内のでんぷん粒構造の十分な破壊が可能となり、でんぷんマトリクスの一体化が促進され惹いては常温(本発明において、特に指定がない場合20℃を表す)保管中に一定期間(例えば3日以上、又は10日以上、さらには30日以上)が経過してもひび割れ(組成物内部に生じるクラック)を生じにくい組成物の取得が可能となるため好ましい。一方、スクリュー全長に対するフライト部の長さの比率の上限は、制限されるものではないが、他の部位との兼ね合いから、通常100%未満、又は99%以下、又は98%以下、又は95%以下、又は90%以下とすることが好ましい。
【0046】
また、本発明におけるフライト部は、スクリュー全長に対してどの位置に配置されていてもよく、その一部が混練部の途中又はスクリュー先端側に配置されていてもよいが、混練時の圧力を高める観点からフライト部のうち一定割合以上が混練部過半よりも前に配置されていることが好ましい。具体的には、混練部の過半(具体的には50%以上、又は75%以上、又は90%以上、又は100%)よりも前方(基部側方向)に配置されるフライト部長さの合計が、フライト部全長に対して一定割合以上であることで、生地の押し込み圧力が高まり混練部における圧力が安定するため好ましい。具体的に、その下限は特に限定されないが、混練部の過半が配置されるよりも前方に配置されるフライト部長さの合計が、フライト部全長に対して例えば50%以上100%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上であってもよい。また、その上限は特に制限されないが、通常100%、又は100%以下とすることができる。また、後述する段階(ii)における搬送段階において用いられるフライト部が上記規定を充足する態様であってもよい。
【0047】
(混練部)
本発明で使用されるスクリューにおいて、混練部の構成は制限されず、公知の混練用の構造(具体例としては、マドック混合部、イーガン混合部、ブリスターリング混合部、ピン混合部、ダルメージ混合部、サクソン混合部、パイナップル形混合部、溝穴付きスクリュー混合部(後述)、キャビティ移動型混合部、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。)を指す。
【0048】
また、スクリュー上に生地の流れを遮るような1以上の狭隘状構造(スクリュー上において生地の流れを遮って伸長流が生じるような構造)を設けてもよい。本発明における「狭隘状構造」とは、スクリューとバレル内壁との間の空間を当該構造によって基部側と先端側における空間に略画分し、画分された基部側空間内部に生地が充満することで生地内圧が所定割合以上増加することで、狭隘状構造を通過する生地に伸張流を生じさせる構造である。狭隘状構造の例としては、スクリュー表面に相対的に盛り上がった構造(凸状構造と称する場合がある)を設けることでもよく、任意の流路における基部側から先端側にかけての流路断面積が相対的に減少する構造を設けることでもよく、これらを組み合わせた構造であってもよい。凸状構造としては、例えば混練部の生地流路におけるスクリュー表面にバレル内壁付近(具体的にはスクリュー中心からバレル内壁までの距離の80%以上)まで隆起した凸状構造を設け、スクリューとバレル内壁との間の空間を当該凸状構造によって基部側と先端側における空間に略画分する構造であることが好ましい。また、2以上の狭隘状構造が略直列的に配置されることで、複雑な伸張流が生じ、本発明の効果が高まるため好ましい。具体的には略直列的に配置される狭隘状構造の数は通常1以上、又は2以上、又は3以上、又は4以上、又は5以上、又は10以上であってもよい。その上限は特に制限されないが通常50以下である。さらに、2以上の狭隘状構造が略直列的に配置される場合において、1以上の凸状構造が含まれることが好ましい。
また、本発明で使用されるスクリューにおいて、混練部は、ヒーターを用いて組成物を加温することにより、与圧下における高温強混練によってでんぷん粒を損傷できるように、組成物流を分断して混練する機能を有する。
【0049】
混練部の形状は特に限定されるものではないが、多数の溝を持つダルメージスクリュー構造又はバリヤ型スクリュー構造が混練部の周表面に形成されていないか、形成されていてもその斯かる構造の領域の比率が限定されていることが好ましい。具体的には、混練部の全長に対する、ダルメージスクリュー構造又はバリヤ型スクリュー構造が形成された領域の長さの比率が、通常10%以下、中でも5%以下、特に実質的に0%(すなわち当該形状を有さない)であることが好ましい。
【0050】
本発明では、スクリュー全長に対して混練部の長さが一定以下の割合を占めるスクリューを用いる。具体的に、スクリュー全長に対する混練部の長さの割合は、上限は例えば50%未満、下限は制限されるものではないが、例えば通常0%超とすることが好ましい。より具体的に、その下限は通常50%未満、中でも45%以下、又は40%以下であることが好ましい。この割合を前記上限未満又は以下とすることで、フライト部の長さ割合を相対的に大きくすることができ、惹いてはフライト部での搬送時間延長による前述の利点が得られるため好ましい。一方、スクリュー全長に対する混練部の長さの割合の下限値は、通常0%超、又は1%以上、又は2%以上、又は4%以上、又は6%以上、又は8%以上、又は10%以上であるとすることが好ましい。この割合を前記下限以上とすることで、組成物の十分な混練が可能となると共に、混練時の圧力も安定するため好ましい。
【0051】
また、本発明では、後述する段階(iii)における混練時圧力が所定値以上となる範囲において混練部とスクリューの先端側終点部との間に、限定された長さの別の部位(例えば第二のフライト部等)が介在していてもよいが、混練部がスクリューの先端側終点部に隣接する位置に設置されていることが好ましい。
【0052】
(バレル)
バレルは、スクリューの外周を包囲する円筒状の構造体である。本発明に使用されるバレルの構造は、限定されるものではないが、押出し方向に向かうに従って内径が小さくなるテーパ状のバレルよりも、入口の内径と出口の内径が概ね同一径(より好ましくは同一径)であるバレルの方が、洗浄が容易で且つ食品の製造に適した品質となるため好ましい。
【0053】
また、100℃以上の高温加工を行う従来技術の方法では内壁に溝状構造を有するバレルを採用すると焦げなどが発生しやすくなるが、本発明においては100℃未満で組成物を加工するため組成物の焦げなどが発生しにくく、その内壁に溝状構造を有するバレルを使用することができるため好ましい。具体的には、バレルの全長に対するバレル溝構造長の比率が、例えば30%超100%以下の範囲とすることができる。より具体的に、バレルの全長に対するバレル溝構造長の比率は、通常30%超、中でも35%超、又は40%超、又は45%超、又は50%超であることが好ましい。特に、バレルの混練部全長に対するバレル溝構造長の比率が、通常30%超、中でも35%超、又は40%超、又は45%超、又は50%超であることが好ましい。それら上限は特に制限されないが通常100%以下である。
【0054】
また、スクリューの混練部として、溝穴付きスクリュー構造を採用することが好ましく、フォワードフライト部の一部を欠損させた溝穴付きスクリュー構造を採用することがより好ましい。溝穴付きスクリュー構造を採用する場合、当該構造におけるフォワードフライト部の変形部及び/又は欠損部の形状が、フォワードフライト部を連通する通路状構造を形成することが好ましい。斯かる通路状構造の断面は、U字状又はV字状の形状を有することが望ましい。また、フォワードフライト構造のねじ山頂点を連結した曲線がスクリューの回転軸に対して形成する角度(螺旋角)よりも、フォワードフライト部を連通する通路状構造がスクリューの回転軸に対して形成する角度(平均連通角度)の方がより小さい、すなわちフォワードフライト部を連通する通路状構造が螺旋角よりも(スクリューの回転軸に対して)平行に近い角度で形成されていることが好ましい。具体的に、フォワードフライト構造の「螺旋角」は、スクリュー表面におけるねじ山頂点を繋いだ方向とスクリューにおける回転軸方向とが形成する鋭角の算術平均値を意味する。斯かるフォワードフライト構造の螺旋角は、例えば、スクリューが回転軸を中心として30°回転する毎にスクリュー表面におけるフォワードフライト構造と回転軸との角度を測定し、スクリューを360°回転させた場合の全測定値から算術平均値を算出することにより求めることができる。また、通路状構造の「平均連通角度」は、斯かる通路状構造の最深部を繋いだ方向と回転軸方向とが形成する鋭角の算術平均値として求めることが出来る。中でも、フォワードフライト部を連通する通路状構造が、フォワードフライト構造に対して斜め方向(すなわちスクリューの回転軸に対してより平行に近い角度)に連通された構造であることが好ましく、より具体的には、前記通路状構造が前記螺旋角の通常20%以上、中でも30%以上、また、通常80%以下、中でも70%以下であることが好ましい。また、溝穴付きスクリュー構造におけるフォワードフライトの稜線部全長に対する、変形部及び/又は欠損部が形成された部分の合計長さの比率が、50%以下であることが特に好ましい。
【0055】
(フロー遅滞構造)
また、本発明において混練部は、フロー遅滞構造を有することが好ましい。その理由として、前記のような溝穴付きスクリュー構造などの内容物の流動距離を増加させる構造を採用することで、十分に混練処理が行われて組成物内のでんぷんが均質化した構造となり、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくい品質となると考えられる。本発明において「フロー遅滞構造」とは、混練部直前のフライト部における内容物のフロー速度に対して、混練部における内容物のフロー速度を相対的に低くする構造である。例えばフロー遅滞構造部におけるスクリュー溝深やピッチ幅を相対的に大きくすることでフロー速度を低くする構造や、フロー遅滞構造部付近のバレル内径をそれ以前より相対的に大きくすることでフロー速度を低くする構造や、フロー遅滞構造としてフライト構造形成部位のうちフォワードフライト部の一部に穴を開けたり、フォワードフライト部の一部を欠損又は変形させたりする構造(溝穴付きスクリュー構造と称する場合もある)を採用することで、フォワードフライト構造と比してスクリュー回転によって生じるフロー流量を低減させフロー速度を低くする構造を採用することができるが、フロー遅滞構造として溝穴付きスクリュー構造を採用することで混練機能とフロー遅滞構造機能を兼ね備えた構造となるため好ましい。また、混練部の一部としてフロー遅滞構造を配置することで混練部全体をフロー遅滞構造としてもよく、より具体的には公知の混練構造の先端側終点付近の位置もしくは混練構造の基部側起点付近の位置にフロー遅滞構造を隣接して配置してもよい。
【0056】
フロー遅滞構造におけるフロー遅滞割合(すなわち、フライト部におけるフロー流量に対する、フロー遅滞構造におけるフロー流量の割合)は例えば10%以上100%未満の範囲とすることができる。より具体的に、100%未満であればよいが、通常97%以下が好ましく、中でも95%以下、さらには93%以下、又は90%以下であることが好ましい。下限は特に限定されないが、通常10%以上、又は20%以上である。特に混練部におけるフロー遅滞割合が当該割合であることで、混練機能とフロー遅滞構造機能を兼ね備えた構造となるため好ましい。
【0057】
(フィーダ)
フィーダは、バレルのフライト部の前半部に取付けられ、このフィーダを通じて、バレル内(バレルとスクリューとの間の空間)に混練対象の食品素材を投入できるように構成される。フィーダについては特に限定されるものではないが、フィーダの内部にスクリュー等を有し、組成物原料を強制排出する機構を有した強制押出型でも、組成物原料を自然落下で供給する自然落下式などを用いてもよい。
【0058】
(ダイ部)
ダイ部は、バレルの押出し方向の先端側に取付けられた、押出出口の組成物を連続的に賦形するための金型であり、典型的にはバレル内部から外部にかけて貫通する1以上(上限は特に制限されないが通常1000以下)の流路を有する。本発明に使用されるダイ部の流路断面の構造や形状は、特に制限されず任意である。例えば、丸型、四角型、三角型、星型、楕円型、三日月型、半月型等、十字型、卍型やそれらの組み合わせ(例えば十字型の交差点に円の中心点を配置したギリシャ十字型と円型を組み合わせたケルト十字状ダイ穴であって、円の半径が十字型の中心点から先端までの距離の4分3以下の大きさを有する形状)が挙げられるが、何れでもよい。例えば、組成物断面の形状が円型(円状)の組成物は、押出後は円柱状の形状を有する組成物となり、組成物断面の形状が四角型(特に正方形)の組成物は、押出後は四角柱状の形状を有する組成物となり、組成物断面の形状がそれ以外の組成物は、押出後は当該形状を底面とした柱状組成物となる。
【0059】
但し、本発明に使用されるダイ部は、ダイ部を押出方向に対して垂直に切断した場合における各流路断面の平均凹凸度が、所定値以上であることが好ましい。ここで流路断面凹凸度とは、ダイ部を押出方向に垂直に切断した場合の仮想切断面上における流路断面(空洞の外縁部に相当)形状の凹凸の度合いを表す値であって、{(流路断面における角度180度未満の凸部頂点を最短の距離をもって結んだときの周囲の長さ)/(流路断面の輪郭長)}によって求められ、凹凸が大きい断面の方が断面凹凸度の値は小さくなる。平均凹凸度を測定する場合には、例えばスクリューの回転軸に沿って1mm間隔で回転軸に対するダイ部の垂直断面を複数想定し、各垂直断面における流路凹凸度を測定し、得られた値の算術平均値を算出することで各流路断面の平均凹凸度を求めることができる。
【0060】
具体的に、ダイ部の流路断面の凹凸度は、工業上の生産性の観点から例えば0.1以上1.0以下の範囲とすることができる。より具体的に、その凹凸度は通常0.1以上、中でも0.2以上、又は0.3以上であることが好ましい。より具体的には、流路断面の形状として十字型やその変形形状を採用することができる。また、凹凸度が所定の値以下であると老化処理がスムースに進むため、その上限は特に制限されないが通常1.0以下、又は0.9以下、又は0.8以下、又は0.7以下であることが好ましい。
【0061】
また、本発明に使用されるダイ部の流路断面における平均円形度が、所定値以下であることが好ましい。ここで円形度とは、流路断面の形状が真円から離れるほど小さくなっていく値であって、{(流路断面の面積と等しい面積を有する真円の周囲長)/(流路断面の輪郭長)}によって求められ、形状が複雑な断面の方が小さい値が得られる。
【0062】
ダイ部における組成物の押出方向も、特に制限されず任意である。例えば、水平方向でもよいし、鉛直方向でもよいし、その中間方向でもよい。
【0063】
(ベント部・強制排気機構)
本発明に使用される押出機は、更に、排気を行うためのベント部を有していてもよい。ベント部は、大気圧下に開放されることでバレル内部を大気圧まで減圧する構造であってもよいが、当該ベント部に強制排気機構を有する機構であってもよい。
【0064】
また、本発明に使用される押出機は、更に強制排気機構を有していてもよい。強制排気機構を設ける場合、ダイ部による押出前であればその位置は限定されず、任意の段階に設けることができる。強制排気に際しては公知の真空ポンプなどを採用することができるが、例えば液封式ポンプ(水封式ポンプ)を採用することができる。強制排気のための機構(例えば真空ポンプ等)は、組成物又は原料中の気体を除去し、生地中のでんぷんマトリクスに包含される気泡を減少させられる程度の能力があれるものであれば任意の機構を採用することができる、例えば吸込能力(吸込圧力又は吸込気体圧力と称する場合もある)が例えば0.04MPa以上1MPa以下の範囲とすることができる。より具体的に、0.04MPa以上で強制排気する機構を採用することができる。中でも0.06MPa以上、又は0.08MPa以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、強力すぎるポンプを採用すると生地を吸引することがあるため通常1MPa以下、又は0.1MPa以下、又は0.09MPa以下であることが好ましい。なお、膨化物を製造する押出機においては、原理的にその内圧を少なくとも大気圧以上に高めつつ組成物温度を100℃以上に保持した状態で押し出す必要があるため、本発明のような構成を採用することは困難である。
【0065】
本発明でベント部及び/又は強制排気機構を有する押出機を用いる場合、適切に排気することが可能であれば、ベント部及び/又は強制排気機構を設ける位置は限定されず、ダイ部による押出前の任意の部位に設けることが可能である。具体的には、原料投入前に強制排気機構によって予め強制排気を行ってもよく、フィード部に強制排気機構を設けることで、組成物材料の供給時に強制排気を行ってもよい。或いは、バレルの任意の位置、例えばフライト部の途中、フライト部と混練部との間、混練部の途中、又は混練部の直後等にベント部を設けた押出機を用いることで、それぞれフライト部における組成物の搬送中、フライト部による組成物の搬送直後且つ混練部による組成物の混練直前、混練部による組成物の混練中、又は混練部による組成物の混練直後且つダイ部による組成物の押出直前等の段階で、バレル内部を排気することが可能となる。混練部における圧力が低減することから、混練部より前に強制排気機構を設置することが好ましく、フライト部より前に強制排気機構を設置することがさらに好ましく、フィード部又は原料投入前に強制排気機構を設置して強制排気を行うことが特に好ましい。
【0066】
(温度調節機構(ヒーター・クーラー))
本発明においては、バレルの一部又は全部の領域に温度調節機構(ヒーター及び/又はクーラー)を設け、バレル内部の温度を調整できるように構成してもよい。例えば、バレル周囲にヒーター(加熱設備)を設け、バレルを加熱して、バレル内部(バレルとスクリューとの間の空間)の温度を調整できるように構成してもよい。ヒーターの構成や配置は限定されないが、一例として、その内部温度を全て100℃未満(下限は特に制限されないが通常0℃超、又は40℃以上、又は50℃以上、より好ましくは60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上、特に90℃以上)に調整して本発明の製造方法の各段階のみを実施する構成(例えば、前記の
図1及び
図2に示す態様Aの押出機100等)であれば、バレルの一部又は全部に設けたヒーターでバレルを部位毎に加熱することにより、バレルとスクリューとの間の空間の組成物の温度を部位ごとに比較的低温(100℃未満)の所望の温度に調整できるように構成すればよい。これにより、豆類及び/又は雑穀類等の原料をフライト部で比較的低温(100℃未満、下限は特に制限されないが通常0℃超、又は40℃以上、又は50℃以上、より好ましくは60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上、特に90℃以上)の所望の温度で搬送した後、混練部において比較的低温(100℃未満、下限は特に制限されないが通常0℃超、又は40℃以上、又は50℃以上、より好ましくは60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上、特に90℃以上)の所望の温度で混練することが可能となる。斯かる構成例の場合、ヒーターは、バレルのフライト部と混練部とを個別に加熱し、所定の温度に調整できるように構成・配置されることが好ましく、バレルのフライト部及び混練部の各々について、軸方向に沿った複数の領域を個別に加熱し、所定の温度に調整できるように構成・配置されることが好ましい。
【0067】
また、ヒーターを設ける別の例として、押出機の前段で100℃以上の高温下で処理を行うことで原料となる豆類及び/又は雑穀類等の高温高圧加熱を行い、後段で内部温度を100℃未満に調整して本発明の製造方法の各段階を実施する構成(例えば、前記の
図3及び
図4に示す態様Bの押出機102や、2台の独立の押出機をタンデムに連結して用いる場合等)であれば、前段の原料となる豆類及び/又は雑穀類等の高温高圧加熱を行う領域において、バレルの一部又は全部に設けたヒーターでバレルを部位毎に加熱することにより、バレルとスクリューとの間の空間の組成物の温度を部位ごとに高温(100℃以上)を含む所望の温度に調整できるように構成すればよい。これにより、押出機の前段で豆類及び/又は雑穀類等の原料を高温(100℃以上)の所望の温度で加熱処理した後、後段のフライト部で比較的低温(100℃未満、上限は特に制限されないが通常300℃未満、又は200℃未満)で搬送し、混練部において比較的低温(100℃未満、下限は特に制限されないが通常0℃超、又は40℃以上、又は50℃以上、より好ましくは60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上、特に90℃以上)で混練することが可能となる。斯かる構成例の場合、ヒーターは、バレルのフライト部と混練部とを個別に加熱し、所定の温度に調整できるように構成・配置されることが好ましく、バレルのフライト部及び混練部の各々について、軸方向に沿った複数の領域を個別に加熱し、所定の温度に調整できるように構成・配置されることが好ましい。
【0068】
また、後者のような、押出機の前段で100℃以上(上限は特に制限されないが通常300℃未満、又は200℃未満)の高温下で処理を行うことで原料となる豆類及び/又は雑穀類等の高温高圧加熱処理を予め行い、後段で内部温度を100℃未満に調整して本発明の製造方法の各段階を実施する構成(例えば、前記の
図3及び
図4に示す態様Bの押出機102や、2台の独立の押出機をタンデムに連結して用いる場合等)には、後段のバレルの一部又は全部にクーラー(冷却設備)を設けてバレルを冷却し、バレルとスクリューとの間の空間の組成物の温度を部位ごとに比較的低温(100℃未満、下限は特に制限されないが通常0℃超)の所望の温度に調整できるように構成してもよい。これにより、押出機の前段から供給される加熱処理された豆粒粉末等の組成物を、押出機の後段で急速に冷却しながら、後段のフライト部で比較的低温(100℃未満)で搬送し、混練部において比較的低温(100℃未満)で混練することが可能となる。また、100℃以上の高温下で混練処理を行った後のバレルに温度調節機構(クーラー)としての役割を有するベント部又は強制排気機構(バキューム装置)を設け、組成物を大気圧下もしくは陰圧下に開放することで気化熱を利用して組成物を100℃未満(下限は特に制限されないが通常0℃超)まで速やかに冷却する構成であってもよい。また、100℃以上に加温処理された組成物を使用する場合、フライト部基部側起点付近にクーラー(例えばベント部)を設置し組成物温度を速やかに100℃未満(下限は特に制限されないが通常0℃超)に調整した後、それ以降のフライト部(さらには混練部)にヒーターを設けて組成物温度を一定範囲内(例えば50℃超100℃未満、又は70℃超100℃未満)に保持する構成を採用することもできる。
【0069】
斯かるヒーター及びクーラーとしては、押出機用の種々のヒーター及びクーラーが当業者には周知である。ヒーターの例としては、前述するヒーター設置領域に該当するバレル周表面に電熱線やスチーム配管等のヒーターを設置して間接的に作用させるジャケット方式や、バレル内における組成物に加熱水蒸気等を吹き込んで直接的に作用させるスチーム加熱方式等を採用することができるが、組成物中のマトリクス構造保持の観点から間接的に作用させる方式(ジャケット方式等)が好ましい。また、ジャケット方式を採用する場合、速やかに温度の調整ができ、マトリクス構造形成に有利な電熱線を採用することが好ましい。また、クーラーの例としては、前述するクーラー設置領域に該当するバレル周表面に冷却水配管等のクーラーを設置して間接的に作用させるジャケット方式や、バレル内やダイ部流路内における組成物やダイ部から押し出された組成物に気体や液体を直接的に作用させる方式(液体状態の水を投入する方式や、霧状の水を投入する方式や、常温の空気を投入する方式や、冷却された空気を投入する方式や、液体窒素などの不活性化ガスを投入する方式等)や、ベント部などを通じて組成物を大気圧下もしくは陰圧下に開放し気化熱を利用して組成物を冷却する方式などを採用することができるが、組成物中のマトリクス構造保持の観点から間接的に作用させる方式(ジャケット方式等)が好ましい。また、ジャケット方式を採用する場合、速やかに温度の調整ができ、マトリクス構造形成に有利な冷却水配管を採用することが好ましい。
【0070】
これらの任意により設けられるヒーターの加熱能力・加熱温度並びにクーラーの冷却能力・冷却温度は、制限されるものではなく、達成しようとする押出機の構成及び所望の各工程(本発明の製造方法の各段階、並びに任意によりその前段で実施される豆類及び/又は雑穀類等の原料の高温高圧下での加熱処理等)における組成物の目標温度が達成できるように、適宜設定・調整すればよい。これらの各工程に於ける目標温度については後述する。
【0071】
[II.加熱調理用でんぷん含有固形状組成物]
本発明の製造方法により製造される加熱調理用でんぷん含有固形状組成物の組成及び特性は以下のとおりである。
【0072】
(1)組成物の概要:
・用語の定義:
本発明において「加熱調理」とは、一般的に、火やマイクロ波を用いて直接的に、又は、水や空気等の媒体を通じて間接的に、食品に熱を加えることで、食品の温度を上げる調理方法をいう。一般的には、約70℃以上、典型的には80℃~180℃程度の加熱温度で、例えば1分間以上60分間以内の時間に亘って調理することを表す。斯かる加熱調理の方法として、例えば、焼く、煮る、炒める、蒸す等を挙げることができるが、本発明における組成物は液中で加熱調理を行った場合に形状が崩れにくいという特性を有する。本発明においては、加熱調理が特に水を主体(過半含有)とする液中で加熱調理する(例えば90℃以上任意で120℃以下の水中で1分間以上60分間以内の時間に亘って加熱調理してから喫食する)組成物であることが好ましく、ひいては本発明の組成物が液中加熱調理後に喫食する液中加熱調理用組成物であることが特に好ましい。
【0073】
また、本発明において「固形状」とは、支持構造であるでんぷんが強固な連続構造を有し、加熱調理(特に90℃の水中で1分間加熱調理)されてもその形状を保持できる程度の形状保持特性を有することを表す。その性状は食材が水によって一部又は全部が一体化した性状であればよく、ゾル状組成物であってもよく、ゲル状組成物であってもよく、固体状組成物であってもよい。また、生パスタのような可塑性を有する性状を有する組成物であってもよく、乾燥パスタのような可塑性を有さない性状の乾燥組成物であってもよい。
【0074】
本発明の固形状組成物は固形状ペースト状組成物であってもよい。本発明において「ペースト組成物」とは、食用植物由来の食材を混練して製造した食品組成物を表し、練り物やパスタ(小麦を原料としないものも含まれる)が含まれる概念である。
【0075】
・組成物の特徴:
本発明の製造方法にて得られる組成物は、高温高圧耐性を有する特殊な製造設備を用いることなく、汎用設備で簡便に製造できるにもかかわらず、常温保管中に一定期間が経過しても、ひび割れ及び加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくいことを特徴の一つとする。なお、本発明における常温とは、特に指定がない場合20℃を表す。
【0076】
従来公知のでんぷんを含有する加熱調理用固形状組成物は、常温保管中に時間が経過すると、組成物内部にひび割れが生じやすくなると共に、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しやすくなるという課題を有していた。
【0077】
これに対して、本発明者等は、微細化豆類を含有する原料を高温高圧条件下にて処理することで、加熱調理中の形状崩壊をしにくい加熱調理用でんぷん含有固形状固形状組成物を製造する方法を開発している(特許文献1)。しかし、本方法では、組成物を温度100℃以上の高温条件下で強混練する必要があるところ、斯かる高温下強混練時に生地組成物中の水蒸気による膨化を防止するために、高い密閉性を有し、且つ、高温のみならず高圧条件に絶えうる特殊な製造設備が要求される点で、改善の余地があった。
【0078】
これに対して、後述する本発明の製造方法は、高温高圧耐性を有する特殊な製造設備を用いることなく、汎用設備で簡便に実施可能であるにもかかわらず、常温保管中にひび割れが生じにくくなると共に、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくいという、優れた効果を備えた固形状組成物を製造することが可能である。その理由は定かではないが、以下の様に推測される。即ち、予め高温処理を施した原料を用いることで、後工程における加工温度を抑えることができ、さらに押し出し機内で圧力が高まる先端側のダイ部付近に混練部を設置することで原料中のデンプンのマトリクス化が促進され、常温保管中にひび割れが生じにくくなると共に、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくい好ましい品質になると考えられる。
【0079】
・組成物の態様:
本発明の組成物は、水中における成分溶出が抑制された性質を有することから、特に成分が溶出しやすい調理環境である液中(特に水中)での加熱調理に供されることが好ましい。例えば加熱調理用でんぷん含有固形状組成物が麺やパスタ等の麺線又は麺帯状組成物であった場合、喫食のために水中における加熱調理(例えば90℃以上の水中で5分以上)された後においても、喫食が可能な形状が保持されるような性質を有するため、麺やパスタ等の麺線又は麺帯状組成物であることが好ましい。
【0080】
本発明の組成物の例としては、これらに限定されるものではないが、パスタ、中華麺、うどん、稲庭うどん、きしめん、ほうとう、すいとん、ひやむぎ、素麺、蕎麦、蕎麦がき、ビーフン、フォー、冷麺の麺、春雨、オートミール、クスクス、きりたんぽ、トック、ぎょうざの皮等が挙げられる。
【0081】
パスタの例としては、ロングパスタとショートパスタとが挙げられる。
【0082】
ロングパスタとは、通常細長いパスタの総称であるが、本発明においては、うどんやそば等も包含する概念である。具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば、スパゲッティ(直径:1.6mm~1.7mm)、スパゲッティーニ(直径:1.4mm~1.5mm)、ヴァーミセリ(直径:2.0mm~2.2mm)、カッペリーニ(直径:0.8mm~1.0mm)、リングイネ(短径1mmほど、長径3mmほど)、タリアテッレ又はフェットチーネ(幅7mm~8mmほどの平麺)、パッパルデッレ(幅10mm~30mmほどの平麺)等が挙げられる。ロングパスタは加熱料理時に形状崩壊しやすい商品特性を有しやすいため、本発明の組成物とすることが有用であり好ましい。
【0083】
ショートパスタとは、通常短いパスタの総称であるが、本発明においては、フレーゴラ(粒状のパスタ)やクスクス等の成型後更に小サイズに加工されたものも包含する概念である。具体例としては、これらに限定されるものではないが、マカロニ(直径が3mm~5mm前後の円筒状)、ペンネ(円筒状の両端をペン先のように斜めにカットしたもの)、ファルファーレ(蝶のような形状)、コンキリエ(貝殻のような形状)、オレッキエッテ(耳のような形状のドーム型)等が挙げられる。
【0084】
・乾燥状態の組成物:
本発明の組成物が乾量基準含水率25質量%未満である乾燥状態の乾燥組成物である場合、乾燥組成物は常温保管中のひび割れを生じやすい性質を有するため、本発明がより有用であるため本発明の組成物が乾燥組成物であることが好ましい。特に、後述する保水処理を行いつつ乾燥状態の組成物とすることで、常温保管中に一定期間(例えば3日間以上)が経過しても組成物内部にひび割れが生じにくく、また、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくい組成物となるため好ましい。
【0085】
なお、本発明において「乾燥」状態とは、乾量基準含水率25%未満の状態を指す。なお、でんぷん含有固形状組成物中の乾量基準含水率は、後述の減圧加熱乾燥法に供して測定することが可能である。
【0086】
・細長く成型された組成物:
本発明の組成物は、従来の加熱調理用でんぷん含有固形状組成物のうち、特にロングパスタ等の細長く成型された組成物とすることができる。
【0087】
斯かる細長く成型された態様における本発明の組成物は、特に限定されるものではないが、例えば0.1mm以上20mm以下の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は通常20mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは3mm以下、より更に好ましくは2mm以下の直径を有することが好ましい。その下限は特に制限されないが、通常0.1mm以上、又は0.3mm以上とすることができる。なお、でんぷん含有固形状組成物の「直径」とは、でんぷん含有固形状組成物の長手方向に対して垂直に切断した際の切断面の長径(断面中の任意の2点を結ぶ線分の最大長)のことを意味する。ここで、当該切断面が円型(円形又は円状と記載する場合がある)であればその直径、楕円型(楕円形又は楕円状と記載する場合がある)であればその長軸、長方形(例えば板状に成型された組成物等の場合)であればその対角線が、それぞれでんぷん含有固形状組成物の「直径」に該当する。
【0088】
(2)組成物の組成:
本発明の組成物の組成は特に制限されないが、少なくとも1種の食用植物を含むことが好ましい。食用植物の種類は特に制限されないが、少なくとも1種の乾燥食用植物、即ち、乾量基準含水率が25%未満、好ましくは20%未満、更に好ましくは15%未満、その下限は特に制限されないが通常0質量%以上であり、且つ、水分活性値が0.85以下、好ましくは0.80以下、更に好ましくは0.75以下、その下限は特に制限されないが通常0.10以上である食用植物を含むことが好ましい。また、食用植物としては、微細化・粉末化したものを用いることが好ましい。また、具体的な食用植物としては、少なくとも1種の豆類及び/又は雑穀類を含むことが好ましい。豆類及び/又は雑穀類を原料とする場合については後に詳述する。但し、本発明の組成物の組成はこれに制限されるものではなく、後述する各種特性が満たされる限りにおいて、豆類又は雑穀類以外の食用植物や、その他の原料を併用してもよい。本発明の組成物の原料となる豆類及び/又は雑穀類や食用植物等の詳細は別途説明する。
【0089】
・食物繊維:
本発明の組成物は、食物繊維(中でも、限定されるものではないが、好ましくは不溶性食物繊維含量)を含有する。本発明において「食物繊維」とは、人の消化酵素で消化されない食品中の難消化性成分を指し、特に「不溶性食物繊維」は、そのうち水に不溶のもの、「可溶性食物繊維」は水に可溶のものを指す。なお、「食物繊維含量(可溶性食物繊維含量と不溶性食物繊維含量の合算値である「食物繊維総量」」「可溶性食物繊維」「不溶性食物繊維」については、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、プロスキー変法を用いて測定する。本発明の組成物は、食物繊維(特に不溶性食物繊維)の含量が多い場合でも、ボソボソとした食感の組成物とならないため有用である。その原因は定かではないが、高温高圧高混練処理により、組成物中の食物繊維が、でんぷん、タンパク質と相互作用してネットワーク構造を形成することで、食物繊維(特に不溶性食物繊維)の食感が改善されている可能性がある。
【0090】
本発明の組成物における食物繊維(中でも、限定されるものではないが、好ましくは不溶性食物繊維含量)の含有量は例えば乾燥質量換算で2.0質量%以上50質量%以下の範囲とすることができる。より具体的にその下限は、乾燥質量換算で通常2.0質量%以上であることが好ましい。中でも3質量%以上、又は4質量%以上、又は5質量%以上、又は6質量%以上、又は7質量%以上、又は8質量%以上、又は9質量%以上、特に10質量%以上であることが好ましい。また、食物繊維のうち、特に不溶性食物繊維の含有量を前記範囲以上とすることで、本発明の組成物は、マトリクス状に広がったでんぷん中で特に不溶性食物繊維が適当なサイズで均質に分散し、でんぷんがマトリクス状に分布した構造を有しやすくなり、惹いては加熱調理時の形状崩壊性が改善されやすくなる。ここで、本発明において「乾燥質量」とは、下記の「水分含量(乾量基準含水率)」から算出される水分含有量を組成物等全体の質量から除いた残分の質量を表し、「乾燥質量換算」とは組成物の乾燥質量を分母、各成分や対象物の含有量を分子として算出される、各成分の含有割合を表す。また、その含有量の上限は、特に制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点からは、乾燥質量換算で、通常50質量%以下、中でも40質量%以下、又は30質量%以下であることが好ましい。
【0091】
また、上記食物繊維に関する規定が、可溶性食物繊維及び/又は不溶性食物繊維においても充足されることが好ましい。即ち、本発明の組成物における可溶性食物繊維及び/又は不溶性食物繊維の含有量は、乾燥質量換算で例えば2.0質量%以上50質量%以下の範囲とすることができ、より具体的にその下限は、通常2.0質量%以上、中でも3質量%以上、又は4質量%以上、又は5質量%以上、又は6質量%以上、又は7質量%以上、又は8質量%以上、又は9質量%以上、特に10質量%以上であることが好ましい。その上限は特に制限されないが、乾燥質量換算で、通常50質量%以下、中でも40質量%以下、又は30質量%以下とすることができる。
【0092】
本発明の組成物に含まれる食物繊維(中でも、限定されるものではないが、好ましくは不溶性食物繊維含量)の由来は、特に制限されるものではなく、当該成分を含有する各種天然材料に由来するものでもよく、合成されたものでもよい。天然材料に由来する場合、各種材料に含有される当該成分を単離、精製して用いてもよいが、斯かる当該成分を含有する材料をそのまま用いてもよい。例えば穀類(特に雑穀類)由来のもの、豆類由来のもの、芋類由来のもの、野菜類由来のもの、種実類由来のもの、果実類由来のものなどを用いることができるが、穀類(特に雑穀類)由来のもの、豆類由来のものが組成物のテクスチャの観点からより好ましく、豆類及び/又は雑穀類由来のものが更に好ましい。豆類由来のものは、特にエンドウ由来のものが好ましく、黄色エンドウ由来のものが最も好ましい。また、豆類由来である場合、種皮ありの状態で使用しても、皮なしの状態で使用してもよいが、種皮付きの豆類を用いる方が食物繊維を多く含有できるため好ましい。
【0093】
雑穀類由来食物繊維としては、オーツ麦由来のものが好ましい。また、雑穀類由来である場合、ふすま部ありの状態で使用しても、ふすま部なしの状態で使用してもよいが、ふすま部付きの雑穀類を用いる方が食物繊維を多く含有できるため好ましい。さらに、豆類由来と雑穀類由来食物繊維の合計が上記規定を充足することが好ましい。
【0094】
また、雑穀類のうちオーツ麦(食物繊維のうち約30%が可溶性食物繊維)のように不溶性食物繊維と可溶性食物繊維を共に含有する原料を使用してもよい。具体的には組成物全体における、食物繊維の乾燥質量換算含有割合に対する、可溶性食物繊維の乾燥質量換算含有割合が、例えば5質量%以上70質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限が5質量%以上、又は10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上とすることができる。その上限は特に制限されないが通常70質量%以下、又は65質量%以下、又は60質量%以下とすることができる。また、組成物において可溶性食物繊維含有食材(具体的には雑穀類、より具体的にはオーツ麦)について上記規定を充足するように使用してもよく、食品組成物製造における段階(i)で上記規定を充足するように使用してもよい。
【0095】
また、本発明の組成物中の食物繊維(又は不溶性食物繊維)は、単離精製された純品として組成物に配合されたものであってもよいが、食用植物(好ましくは豆類及び/又は雑穀類)に含有された状態で組成物に配合されていることが好ましい。具体的には、組成物全体の総食物繊維含有量に対する、食用植物(好ましくは豆類及び/又は雑穀類)に含有された状態で配合されている食物繊維含有量(又は総不溶性食物繊維含有量に対する、食用植物(好ましくは豆類及び/又は雑穀類)に含有された状態で配合されている不溶性食物繊維含有量)の比率が、乾燥質量換算で例えば50質量%以上100%以下の範囲とすることができる。より具体的に、通常50質量%以上、中でも60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。
【0096】
本発明の組成物に含まれる食物繊維(又は不溶性食物繊維)の組成は、特に制限されるものではない。但し、特に不溶性食物繊維全体に占めるリグニン(中でも酸可溶性リグニン)の比率が一定値以上であると、食感改善効果がより顕著に得られやすくなる。具体的には、不溶性食物繊維全体に占めるリグニン(中でも酸可溶性リグニン)の比率は、乾燥質量換算で、例えば5質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、通常5質量%以上、中でも10質量%以上、又は30質量%以上であることが好ましい。
【0097】
本発明の組成物は、そこに含まれる食物繊維(特に不溶性食物繊維)の粒子径が、一定以下の大きさであることが好ましい。食物繊維の粒子径が大きすぎると、組成物がボソボソとした好ましくない食感となる場合がある。この理由は定かではないが、粗大な不溶性食物繊維がでんぷん等のマトリクス構造形成を阻害し、本発明の効果が奏されにくくなるためと考えられる。ここで、通常漫然と破砕された豆類、雑穀類粉末における不溶性食物繊維サイズは450μm超となる蓋然性が高い(豆類、雑穀類に含有される不溶性食物繊維の形状は通常棒状であり、本発明のレーザー回折式粒度分布測定では大きめの値が得られるため。)。特に原料に種皮付きの豆類やふすま部付きの雑穀類など、硬質組織を含有する食材を用いる場合、その種皮部分の不溶性食物繊維は粗大であり、さらに可食部に比べて破砕されにくいため、このような食材を本発明に用いる場合、斯かる食材に含まれる不溶性食物繊維は、予め特定の破砕処理を行い、そのサイズが特定範囲となっているものを用いることが好ましい。なお、その上限は特に制限されないが通常2000μm以下である。
【0098】
本発明において、組成物中の食物繊維(特に不溶性食物繊維)の粒子径を評価するためには、組成物の水懸濁液をプロテアーゼ及びアミラーゼ処理し、でんぷんとタンパク質を酵素によって分解したでんぷん・タンパク質分解処理後組成物について、超音波処理を加えた後の粒子径分布を測定する方法を用いる。具体的には、組成物の6質量%の水懸濁液を、0.4容量%のプロテアーゼ及び0.02質量%のα-アミラーゼにより20℃で3日間処理する(これを適宜「[手順b]」とする。)ことによりでんぷん・タンパク質分解処理を実施した後、処理後の組成物に超音波処理を加えてから粒子径分布を測定すればよい。
【0099】
具体的に、本発明の組成物は、上記手順により測定される食物繊維(特に不溶性食物繊維)の粒子径分布における粒子径d90が、例えば1μm以上450μm未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限が通常450μm未満、中でも400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は80μm以下、又は60μm以下、特に50μm以下であることが好ましい。一方、斯かる食物繊維(特に不溶性食物繊維)の粒子径d90の下限は、特に制限されるものではないが、通常1μm以上、中でも3μm以上であることが好ましい。
【0100】
同様に、本発明の組成物は、上記手順により測定される食物繊維(特に不溶性食物繊維)の粒子径分布における粒子径d50が、例えば1μm以上450μm未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限が通常450μm未満、中でも400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は80μm以下、又は60μm以下、特に50μm以下であることが好ましい。一方、斯かる食物繊維(特に不溶性食物繊維)の粒子径d50の下限は、特に制限されるものではないが、通常1μm以上、中でも3μm以上であることが好ましい。
【0101】
組成物中の食物繊維(特に不溶性食物繊維)の粒子径分布を測定するためのより具体的な手順としては、例えば以下のとおりである。組成物300mgを5mLの水と共にプラスチックチューブに入れ、20℃で1時間程度膨潤させた後、小型ヒスコトロン(マイクロテックニチオン社製ホモジナイザーNS-310E3)を用いて粥状の物性となるまで処理する(10000rpmで15秒程度)。その後、処理後サンプル2.5mLを分取し、プロテアーゼ(タカラバイオ社製、Proteinase K)10μL、αアミラーゼ(Sigma社製、α-Amylase from Bacillus subtilis)0.5mgを加え、20℃にて3日反応させる。反応終了後、得られたプロテアーゼ、アミラーゼ処理組成物に対して、超音波処理を加えてから、その粒子径分布を測定すればよい。プロテアーゼ、アミラーゼ処理組成物の超音波処理後の粒子径分布の測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、後述する単位体積当たり比表面積と同様の方法で測定することができる。
【0102】
なお、本発明において「粒子径d90」(あるいは「粒子径d50」)とは、測定対象の粒子径分布を体積基準で測定し、ある粒子径から2つに分けたとき、大きい側の粒子頻度%の累積値の割合と、小さい側の粒子頻度%の累積値の割合との比が、10:90(あるいは50:50)となる粒子径として定義される。また、本発明において「超音波処理」とは、特に断りがない限り、周波数40kHzの超音波を出力40Wにて3分間の処理をすることを意味する。
【0103】
・でんぷん:
本発明の組成物は、でんぷんを含有する。特に、本発明の組成物は、でんぷんを所定割合以上含有することで、常温保管中に一定期間(例えば3日間以上、より好ましくは30日間以上、上限は特に制限されないが通常10年間以下)が経過しても組成物内部にひび割れが生じにくく、また、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくいという効果が得られやすくなる。その原因は定かではないが、高温高圧高混練処理により、組成物中のでんぷんのうち、比較的分子量の大きい画分が均質化したマトリクス構造を形成することで、その結果として前記効果を奏している可能性がある。
【0104】
具体的に、本発明の組成物中のでんぷん含有量は例えば20質量%以上85質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は、乾燥質量換算で通常20質量%以上である。中でも25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、特に50質量%以上であることが好ましい。一方、本発明の組成物中のでんぷん含有量の上限は、特に制限されるものではないが、例えば乾燥質量換算で85質量%以下、中でも80質量%以下、又は70質量%以下、又は60質量%以下とすることができる。
【0105】
本発明の組成物中のでんぷんの由来は特に制限されない。例としては、植物由来のものや動物由来のものが挙げられるが、食用植物(好ましくは豆類及び/又は雑穀類)由来でんぷんが好ましい。具体的には、組成物全体の総でんぷん含有量に対する、食用植物(好ましくは豆類及び/又は雑穀類)由来でんぷん含有量の比率が、乾燥質量換算で例えば30質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その比率は通常30質量%以上、中でも40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。その上限は特に制限されず、通常100質量%以下である。豆類由来でんぷんとしては、特にエンドウ由来のものが好ましく、黄色エンドウ由来のものが最も好ましい。雑穀類由来でんぷんとしては、オーツ麦由来のものが好ましい。また、豆類由来でんぷんと雑穀類由来でんぷんの合計が上記規定を充足することが好ましい。豆類、雑穀類については後述する。
【0106】
本発明の組成物中のでんぷんは、単離された純品として組成物に配合されたものであってもよいが、食用植物(好ましくは豆類及び/又は雑穀類)に含有された状態で組成物に配合されていることが好ましい。具体的には、組成物全体の総でんぷん含有量に対する、食用植物(好ましくは豆類及び/又は雑穀類)に含有された状態で配合されているでんぷん含有量の比率が、乾燥質量換算で例えば30質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、通常30質量%以上、中でも40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上であることが好ましい。その上限は特に制限されず、通常100質量%、又は通常100質量%以下とすることができる。
【0107】
なお、本発明において、固形状組成物中のでんぷん含有量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、AOAC996.11の方法に従い、80%エタノール抽出処理により、測定値に影響する可溶性炭水化物(ぶどう糖、麦芽糖、マルトデキストリン等)を除去した方法で測定する。
【0108】
・でんぷん粒構造:
本発明の組成物は、特定の条件下で観察されるでんぷん粒構造の数が所定値以下であることで、常温保管中に一定期間(例えば3日間以上)が経過しても組成物内部にひび割れが生じにくく、また、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくいという効果が得られやすくなる。その原理は不明であるが、でんぷん粒構造が破壊された状態で、後述する高圧強混練条件下で組成物を加工することで、でんぷんがマトリクス状に組成物全体に拡散し、でんぷん中のアミロペクチンが保水時弾性を発現しやすい構造となるためと考えられる。
【0109】
でんぷん粒構造とは、平面画像中で直径1~50μm程度の円状の形状を有する、よう素染色性を有する構造であり、例えば、組成物の粉砕物を水に懸濁してなる6質量%の水懸濁液を調製し、拡大視野の下で観察することができる。具体的には、組成物の粉砕物を目開き150μmの篩で分級し、150μmパスの組成物粉末3mgを水50μLに懸濁することにより、組成物粉末の6質量%懸濁液を調製する。本懸濁液を載置したプレパラートを作製し、位相差顕微鏡にて偏光観察するか、又はよう素染色したものを光学顕微鏡にて観察すればよい。拡大率は制限されないが、例えば拡大倍率100倍又は200倍とすることができる。プレパラートにおけるでんぷん粒構造の分布が一様である場合は、代表視野を観察することでプレパラート全体のでんぷん粒構造の割合を推定することができるが、その分布に偏りが認められる場合は、有限の(例えば2箇所以上、例えば5箇所又は10箇所の)視野を観察し、観察結果を合算することで、プレパラート全体の測定値とすることができる。
【0110】
具体的に、本発明の組成物は、下記のでんぷん粒構造に関する要件(a)及び/又は(b)を充足することが好ましい。
(a)組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が、300個/mm2以下となる。
(b)ラピッドビスコアナライザを用いて14質量%の組成物粉砕物水スラリーを50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が120℃未満となる。
【0111】
前記要件(a)については、具体的に、本発明の組成物は、前記条件下で観察されたでんぷん粒構造の数が、例えば0個/mm2以上300個/mm2以下の範囲とすることができる。より具体的に、本発明の組成物の当該でんぷん粒構造の数は、通常300個/mm2以下、中でも250個/mm2以下、又は200個/mm2以下、又は150個/mm2以下、又は100個/mm2以下、又は50個/mm2以下、又は30個/mm2以下、又は10個/mm2以下、特に0個/mm2であることが好ましい。
【0112】
前記(b)については、本発明の組成物は、後述の条件下でラピッドビスコアナライザ(RVA)により測定された組成物の糊化ピーク温度が、例えば50℃以上120℃未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は、通常120℃未満、中でも115℃以下、又は110℃以下、又は105℃以下、又は100℃以下、又は95℃以下、又は90℃以下、又は85℃以下、又は80℃以下であることが好ましい。一方、その下限は特に制限されないが、通常50℃以上、又は55℃以上、又は60℃以上とすることができる。なお、ラピッドビスコアナライザ(RVA)及びその測定条件については後述する。
【0113】
なお、本発明において「組成物の粉砕物」、「組成物粉砕物」又は「粉砕組成物」とは、特に断りがない限り、後述する単位体積当たり比表面積と同様の方法で測定した場合における超音波処理後の粒子径d50及び/又はd90(好ましくは粒子径d50及びd90の双方)が1000μm以下程度となるように粉砕した組成物を意味する。なお、超音波処理後の粒子径d50及び/又はd90(好ましくは粒子径d50及びd90の双方)の下限は特に限定されないが、通常1μm以上であることが好ましい。
【0114】
・でんぷんの糊化度:
本発明の組成物中のでんぷん糊化度は、所定値以上であることで、常温保管中に一定期間(例えば3日間以上)が経過しても組成物内部にひび割れが生じにくく、また、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくいという効果が得られやすくなることから好ましい。具体的に、本発明の組成物中のでんぷん糊化度は、例えば30質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、通常30質量%以上、中でも40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、特に70質量%以上であることが好ましい。糊化度の上限は特に制限されないが、あまりに高すぎるとでんぷんが分解し、組成物がべたべたした好ましくない品質となる場合がある。よって、糊化度の上限は通常100質量%以下、又は99質量%以下、又は95質量%以下、又は90質量%以下であることが好ましい。
【0115】
なお、本発明において組成物の糊化度は、関税中央分析所報を一部改変したグルコアミラーゼ第2法(Japan Food Research Laboratories社メソッドに従う:https://web.archive.org/web/20200611054551/https://www.jfrl.or.jp/storage/file/221.pdf又はhttps://www.jfrl.or.jp/storage/file/221.pdf)を用いて測定する。
【0116】
・タンパク質:
本発明の組成物は、タンパク質を含有する。特に、本発明の組成物は、タンパク質を所定割合以上含有することで、常温保管中に一定期間(例えば3日間以上)が経過しても組成物内部にひび割れが生じにくく、また、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくいという効果が得られやすくなる。その原因は定かではないが、高温高圧高混練処理により、組成物中にでんぷんがマトリクス状に広がり、その構造中で主にタンパク質から構成されると考えられる凝集構造が好ましい形状、大きさに発達し、食物繊維がその形状、大きさの発達を助けるといった相互作用によって従来知られたグルテンをはじめとするタンパク質ネットワークとは全く異なる構造を形成することで、その結果として本発明の効果を奏している可能性がある。
【0117】
具体的に、本発明の組成物におけるタンパク質含有量の下限は、乾燥質量換算で例えば3.0質量%以上85質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常3.0質量%以上である。中でも4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、又は10質量%以上、又は11質量%以上、又は12質量%以上、又は13質量%以上、又は14質量%以上、又は15質量%以上、又は16質量%以上、又は17質量%以上、又は18質量%以上、又は19質量%以上、又は20質量%以上、又は21質量%以上、特に22質量%以上であることが好ましい。一方、本発明の組成物におけるタンパク質含有量の上限は、特に制限されるものではないが、乾燥質量換算で例えば85質量%以下、又は80質量%以下、又は75質量%以下、又は70質量%以下、又は65質量%以下、又は60質量%以下、又は50質量%以下、又は40質量%以下、又は35質量%以下とすることができる。また、植物(特に豆類及び/又は雑穀類)由来のタンパク質が上記タンパク質に関する規定を充足することが好ましい。
【0118】
本発明の組成物中のタンパク質の由来は特に制限されない。例としては、植物由来のものや動物由来のものが挙げられるが、植物(特に豆類及び/又は雑穀類)由来のタンパク質が好ましい。具体的には、組成物全体の総タンパク質含有量に対する、植物由来タンパク質含有量の比率が、乾燥質量換算で例えば50質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、当該比率は通常50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。植物由来タンパク質の例としては、穀類(特に雑穀類)由来のもの、豆類由来のもの、芋類由来のもの、野菜類由来のもの、種実類由来のもの、果実類由来のもの等が挙げられるが、豆類由来のものを用いることがより好ましく、特にエンドウ由来のものが好ましく、黄色エンドウ由来のものが最も好ましい。雑穀類由来タンパク質としては、オーツ麦由来のものが好ましい。また、豆類由来と雑穀類由来タンパク質の合計が上記規定を充足することが好ましい。
【0119】
本発明の組成物中のタンパク質は、単離精製された純品として組成物に配合されたものであってもよいが、食用植物に含有された状態で組成物に配合されていることが好ましい。具体的には、組成物全体の総タンパク質含有量に対する、食用植物(特に豆類及び/又は雑穀類)に含有された状態で配合されているタンパク質含有量の比率が、乾燥質量換算で例えば50質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、当該比率は通常50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。
【0120】
なお、本発明の組成物中のタンパク質及びでんぷんの、それぞれ乾燥質量換算で例えば50質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%が、共に豆類及び/又は雑穀類に由来することが好ましく、同一種の豆類及び/又は雑穀類に由来することが更に好ましく、同一個体の豆類及び/又は雑穀類に由来することが更に好ましい。また、本発明の組成物中のタンパク質及びでんぷんの、それぞれ乾燥質量換算で50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%が、共に食用植物に含有された状態で配合されることが好ましい。
【0121】
なお、本発明において、でんぷん含有固形状組成物中のタンパク質含有量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、品表示法(「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第139号))に規定された燃焼法(改良デュマ法)を用いて定量した窒素量に、「窒素-タンパク質換算係数」を乗じて算出する方法で測定する。
【0122】
・全油脂分含量:
本発明の組成物中の全油脂分含量は、制限されるものではないが、乾燥質量換算で、例えば0.01質量%以上17質量%未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は通常17質量%未満、中でも15質量%未満、又は13質量%未満、又は10質量%未満、又は8質量%未満、又は7質量%未満、又は6質量%未満、又は5質量%未満、又は4質量%未満、又は3質量%未満、又は2質量%未満、又は1質量%未満、特に0.8質量%未満とすることが好ましい。一方、斯かる全油脂分含量の下限は、特に制限されるものではないが、乾燥質量換算で、通常0.01質量%以上であることが好ましい。なお、本発明において、固形状組成物中の全油脂分含量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、ジエチルエーテルによるソックスレー抽出法で測定する。
【0123】
本発明の組成物中の油脂分の由来は特に制限されない。例としては、植物由来のものや動物由来のものが挙げられるが、植物由来の油脂分が好ましい。具体的には、組成物全体の総油脂分含有量に対する、植物由来(特に豆類及び/又は雑穀類)油脂分含有量の比率が、乾燥質量換算で例えば50質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その比率の下限は通常50質量%以上、中でも60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。植物由来油脂分の例としては、穀類(特に雑穀類)由来のもの、豆類由来のもの、芋類由来のもの、野菜類由来のもの、種実類由来のもの、果実類由来のもの等が挙げられるが、豆類由来のものを用いることがより好ましく、特にエンドウ由来のものが好ましく、黄色エンドウ由来のものが最も好ましい。雑穀類由来油脂としては、オーツ麦由来のものが好ましい。また、豆類由来と雑穀類由来油脂の合計が上記規定を充足することが好ましい。
【0124】
本発明の組成物中の油脂分は、単離された純品として組成物に配合されたものであってもよいが、食用植物(特に豆類及び/又は雑穀類)に含有された状態で組成物に配合されていることが好ましい。具体的には、組成物全体の総油脂分含有量に対する、食用植物(豆類及び/又は雑穀類)に含有された状態で配合されている油脂分含有量の比率が、乾燥質量換算で通常50質量%以上、中でも60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。
【0125】
なお、本発明の組成物中における乾燥質量換算油脂分のうち、通常50質量%以上、中でも60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%が、豆類及び/又は雑穀類に由来することが好ましく、同一種の豆類及び/又は雑穀類に由来することが更に好ましく、同一個体の豆類及び/又は雑穀類に由来することが更に好ましい。また、本発明の組成物中における乾燥質量換算油脂分の、通常50質量%以上、中でも60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%が、豆類及び/又は雑穀類に含有された状態で配合されることが好ましい。
【0126】
・乾量基準含水率:
本発明の組成物は、乾量基準含水率が所定値以下であることで、常温保管中に一定期間(例えば3日間以上)が経過しても組成物内部にひび割れが生じにくく、また、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくいという効果が得られやすくなるので好ましい。具体的に、本発明の組成物中の乾量基準含水率は、制限されるものではないが、例えば0.5質量%以上60質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、例えば60質量%以下、又は55質量%以下、又は50質量%以下、又は45質量%以下、又は40質量%以下、又は35質量%以下、又は30質量%以下、又は25質量%以下、又は20質量%以下、又は15質量%以下であってもよい。一方、本発明の組成物中の乾量基準含水率の下限は、制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点から、例えば0.5質量%以上、或いは1質量%以上、或いは2質量%以上とすることができる。なお、本発明の組成物中の乾量基準含水率は、組成物の各種成分に由来するものであってもよいが、更に添加された水に由来するものであってもよい。また、加工前の生地組成物中に含有される乾量基準含水率が高い場合に、乾燥処理などを採用することで前述の数値に調整する工程を採用することができる。
【0127】
本発明において「乾量基準含水率」とは、本発明の組成物の原料に由来する水分量と別途添加した水分量の合計量の、固形分の合計量に対する割合を意味する。その数値は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、減圧加熱乾燥法で90℃に加温することで測定する。具体的には、予め恒量になったはかり容器(W0)に適量の試料を採取して秤量し(W1)、常圧において、所定の温度(より詳しくは90℃)に調節した減圧電気定温乾燥器中に、はかり容器の蓋をとるか、口を開けた状態で入れ、扉を閉じ、真空ポンプを作動させて、所定の減圧度において一定時間乾燥し、真空ポンプを止め、乾燥空気を送って常圧に戻し、はかり容器を取り出し、蓋をしてデシケーター中で放冷後、質量をはかる。そのようにして恒量になるまで乾燥、放冷、秤量する(W2)ことを繰り返し、次の計算式で水分含量(乾量基準含水率)(質量%)を求める。
【0128】
【0129】
・原料:
本発明の組成物の原料は、本発明において規定する各種の成分組成及び物性を達成しうる限り、特に制限されるものではない。しかし、原料としては、1種又は2種以上の食用植物を用いることが好ましく、食用植物として少なくとも豆類及び/又は雑穀類を含有することが好ましい。なお、原料となる食用植物の形態は制限されないが、例えば粉末状のものを用いることができる。
【0130】
・豆類:
本発明の組成物に豆類を用いる場合、使用する豆類の種類は、限定されるものではないが、例としては、エンドウ属、インゲンマメ属、キマメ属、ササゲ属、ソラマメ属、ヒヨコマメ属、ダイズ属、及びヒラマメ属から選ばれる1種以上の豆類であることが好ましい。具体例としては、これらに限定されるものではないが、エンドウ(特に黄色エンドウ、白エンドウ等。)、インゲン(隠元)、キドニー・ビーン、赤インゲン、白インゲン、ブラック・ビーン、うずら豆、とら豆、ライマメ、ベニバナインゲン、キマメ、緑豆、ササゲ、アズキ、ソラマメ、ダイズ、ヒヨコマメ、レンズマメ、ヒラ豆、ブルーピー、紫花豆、レンティル、ラッカセイ、ルピナス豆、グラスピー、イナゴマメ(キャロブ)、ネジレフサマメノキ、ヒロハフサマメノキ、コーヒー豆、カカオ豆、メキシコトビマメ等が挙げられる。その他例示されていない食材の分類は、その食材や食材の加工品を取り扱う当業者であれば、当然に理解することが可能である。具体的には、一般家庭における日常生活面においても広く利用されている日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載の食品群分類(249頁、表1)を参照することで明確に理解することができる。なお、これらの豆類は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組合せで用いてもよい。尚、一部の可食部(エダマメ、グリーンピースなど)が野菜として取り扱われる食材について、非可食部(鞘など)と合わさった植物全体の状態(ダイズ、エンドウなど)で豆類かどうかを判断することができる。
【0131】
なお、本発明の組成物に豆類を用いる場合、組成物に含有されるでんぷんのうち未熟種子(例えばエンドウ未熟種子であるグリーンピースや、大豆の未熟種子であるエダマメ)ではなく成熟した豆類を用いることが好ましい。また、同様の理由により、成熟に伴って乾量基準含水率が所定値以下となっている状態の豆類であることが好ましい。具体的に、本発明の組成物に使用する豆類の乾量基準含水率は、例えば0.01質量%以上15質量%未満の範囲とすることができる。より具体的に、通常15質量%未満、中でも13質量%未満、又は11質量%未満、又は10質量%未満であることが好ましい。一方、斯かる豆類の乾量基準含水率の下限は、特に制限されるものではないが、通常0.01質量%以上であることが好ましい。
【0132】
本発明の組成物に豆類を用いる場合、本発明の組成物における豆類の含有率は、制限されるものではないが、乾燥質量換算で、例えば10質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的には、例えば10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが100質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。また、上記豆類に関する規定を段階(i)で充足する場合がある。
【0133】
本発明の組成物に豆類を用いる場合、粉末状の豆類を用いることが好ましく、具体的には、後述する単位体積当たり比表面積と同様の方法で測定した場合における超音波処理後の粒子径d90及び/又はd50がそれぞれ所定値以下の豆類粉末を用いることが好ましい。即ち、豆類粉末の超音波処理後の粒子径d90は、例えば0.3μm以上500μm未満の範囲とすることができる。より具体的に、500μm未満が好ましく、中でも450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は90μm以下、又は80μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下がより好ましい。また、同様に、豆類粉末の超音波処理後の粒子径d50は、500μm未満が好ましく、中でも450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は90μm以下、又は80μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下がより好ましい。超音波処理後の粒子径d90及びd50の下限は特に制限されないが、通常0.3μm以上、又は1μm以上、又は5μm以上、又は10μm以上とすることができる。特に押出成形時に組成物が一定以上の大きさであると、成型に際して組成物が脈動しやすくなり生産性が悪化するとともに、組成物表面が不均一になる場合があるため、一定以下の大きさの粉末状の豆類を使用することが好ましい。
【0134】
[雑穀類]
本発明において「雑穀類」とは、後述する穀類のうち、主要な穀類であるコメ、小麦、大麦以外のものを指し、いわゆるイネ科穀類以外の疑似雑穀(アカザ科、ヒユ科)をも含む概念である。本発明の組成物に雑穀類を用いる場合、使用する雑穀類の種類は、限定されるものではないが、例としては、イネ科、アカザ科、ヒユ科から選ばれる1種以上の雑穀類であることが好ましく、イネ科であることがより好ましい。具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えばあわ、ひえ、きび、もろこし、ライ麦、えん麦(オーツ麦)、はと麦、とうもろこし、そば、アマランサス、キノアなどが挙げられ、特にえん麦(オーツ麦)、アマランサス、キノア、きびのいずれか1種類又は2種類以上を用いることが好ましい。また、雑穀類はグルテンを実質的に含有しない(具体的にはグルテン含有量が10質量ppm未満の状態を表す)ことが好ましく、グルテンを含有しないことがより好ましい。
【0135】
本発明の食品組成物に対する雑穀類の含有割合は乾燥質量換算で、例えば10質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的には、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが100質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。また、上記雑穀類に関する規定を段階(i)で充足する場合がある。
【0136】
また、豆類と雑穀類を共に含有する食品組成物において、その合計含有量が前記規定を充足することが好ましい。すなわち、本発明の食品組成物に対する豆類と雑穀類の合計含有割合は乾燥質量換算で、例えば10質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的には、例えば10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば100質量%以下、又は95質量%以下とすることができる。また、上記雑穀類及び豆類に関する規定を段階(i)で充足する場合がある。
【0137】
・その他の食材:
本発明の組成物は、任意の1又は2以上のその他の食材を含んでいてもよい。斯かる食材の例としては、植物性食材(野菜類、芋類、きのこ類、果実類、藻類、穀類(特に雑穀類に含まれない主要な穀類であるコメ、小麦、大麦 )、種実類等)、動物性食材(魚介類、肉類、卵類、乳類等)、微生物性食品等が挙げられる。これら食材の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0138】
・調味料、食品添加物等:
本発明の組成物は、任意の1又は2以上の調味料、食品添加物等を含んでいてもよい。調味料、食品添加物等の例としては、醤油、味噌、アルコール類、糖類(例えばブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)、糖アルコール(例えばキシリトール、エリスリトール、マルチトール等)、人工甘味料(例えばスクラロース、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK等)、ミネラル(例えばカルシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの塩類等)、香料、pH調整剤(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸及び酢酸等)、シクロデキストリン、酸化防止剤(例えばビタミンE、ビタミンC、茶抽出物、生コーヒー豆抽出物、クロロゲン酸、香辛料抽出物、カフェ酸、ローズマリー抽出物、ビタミンCパルミテート、ルチン、ケルセチン、ヤマモモ抽出物、ゴマ抽出物等)、乳化剤(例としてはグリセリン脂肪酸エステル、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リノシール酸エステル、キラヤ抽出物、ダイズサポニン、チャ種子サポニン、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等)、着色料、増粘安定剤等が挙げられる。
【0139】
但し、昨今の自然志向の高まりからは、本発明の組成物は、いわゆる乳化剤、着色料、増粘安定剤(例えば、食品添加物表示ポケットブック(平成23年版)の「表示のための食品添加物物質名表」に「着色料」、「増粘安定剤」、「乳化剤」として記載されているもの)から選ばれる何れか1つを含有しないことが好ましく、何れか2つを含有しないことがより好ましく、3つ全てを含有しないことが更に好ましい。
【0140】
特に、本発明の組成物は、ゲル化剤を含有しなくても組成物に弾性を付与でき、また過度の弾力付与を防止するため、ゲル化剤を含有しないことが好ましい。また、素材の味が感じられやすい品質とする観点からは、本発明の組成物は、乳化剤を含有しないことが好ましい。更には、本発明の組成物は、食品添加物(例えば、食品添加物表示ポケットブック(平成23年版)中の「表示のための食品添加物物質名表」に記載されている物質を食品添加物用途に用いたもの)を含有しないことがとりわけ望ましい。また、食品そのものの甘みが感じられやすくなるという観点からは、本発明の組成物は、糖類(ブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)を添加しない方が好ましい。
【0141】
また、本発明の組成物は、塩化ナトリウムの含有量が少なく、或いは塩化ナトリウムを配合しないことが好ましい。従来の加熱調理用でんぷん含有固形状組成物(特にネットワーク構造のグルテンを含有する組成物)は、塩化ナトリウムを含有させることで組成物弾性を保持しているが、味に影響を与えたり、塩分の過剰摂取の観点から問題があった。特に乾燥状態の組成物(乾燥うどん、乾燥ひやむぎ等)においては、組成物弾性の保持のため、通常3質量%以上の塩化ナトリウムが使用されるため、こうした課題が顕著であった。一方、本発明の組成物では、塩化ナトリウムの使用量が極微量であるか、或いは塩化ナトリウムを添加しなくても、弾性低下が抑制された組成物とすることができ、良好な品質の組成物となるため好ましい。また、通常はネットワーク構造のグルテンと塩化ナトリウムによって粘着力や弾力を有する、パスタ、うどん、パン等の加熱調理用でんぷん含有固形状組成物についても、本発明を適用することで、塩化ナトリウムを添加することなく良好な品質の組成物とすることができるため好ましい。具体的に、本発明の組成物中の塩化ナトリウムの含有量は、乾燥質量換算で、例えば0質量%以上3質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その通常3質量%以下、中でも2質量%以下、又は1質量%以下、又は0.7質量%以下、特に0.5質量%以下であることが好ましい。また、生地組成物における塩化ナトリウムの含有量は、湿潤質量換算で、例えば0質量%以上3質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常3質量%以下、中でも2質量%以下、又は1質量%以下、又は0.7質量%以下、特に0.5質量%以下であることが好ましい。本発明の組成物中の塩化ナトリウムの含有量の下限は特に限定されず、0質量%であっても構わない。なお、本発明において、でんぷん含有固形状組成物中の塩化ナトリウムの定量法としては、例えば日本食品標準成分表2015年版(七訂)の「食塩相当量」に準じ、原子吸光法を用いて測定したナトリウム量に2.54を乗じて算出する手法を用いる。
【0142】
・組成物の凍結切片の平滑部:
本発明の一態様によれば、本発明の組成物は、前記手順で凍結切片化して得られる凍結切片を観察した場合に、切断面における組成物外周の所定割合に沿って、所定値以上の平均厚みを有する平滑部が認められることも好ましい。こうした物性を有する場合、本発明の組成物は、加熱調理時に組成物から成分流出しにくい組成物となる。その理由は定かではないが、組成物の外周付近に組成物の内部と比べて比較的スムースに切断可能な特性を有する構造が存在すると、組成物を凍結切片化する際に平滑部となって観察されるものと考えられる。
【0143】
なお、本発明において「平滑部」とは、組成物凍結切片画像の外周部に観察される、所定値以上の平均厚みを有し、非平滑部と比較して色が薄く凹凸が少ない外観を有する層状構造を意味する。なお、平滑部の「平均厚み」とは、切断面における組成物の外周と直交する方向における平滑部の幅を、組成物の外周に沿って測定した場合における平均値を意味する。
【0144】
具体的に、本発明の組成物は、切断面における組成物の外周の通常30%以上、又は40%以上、又は50%以上、中でも60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、特に100%(すなわち切断面における組成物の外周全て)に、斯かる平滑部が形成されていることが好ましい。また、斯かる平滑部の平均厚みは、通常20μm以上、中でも25μm以上、又は30μm以上、上限は特に制限されないが通常1000μm以下であることが好ましい。
【0145】
なお、平滑部の測定に当たっては、組成物を(加熱水中処理することなく)-25℃で凍結した組成物凍結物について、特定の切断面に沿って厚さ30μmに切断した凍結切片を作製し、これを観察する。斯かる組成物の凍結切片の作製及び観察は、制限されるものではないが、例えば以下の手順で行うことが好ましい。すなわち、組成物を、Kawamoto, "Use of a new adhesive film for the preparation of multi-purpose fresh-frozen sections from hard tissues, whole-animals, insects and plants", Arch. Histol. Cytol., (2003), 66[2]:123-43に記載の川本法に従って、-25℃で厚さ30μmに切断することにより、凍結切片を作製する。こうして得られた組成物の凍結切片を、例えば倍率200倍の顕微鏡の視野下に配置し、例えば画素数1360×1024のカラー写真を撮影して解析に供する。
【0146】
・非膨化(密度):
本発明の組成物は、限定されるものではないが、膨化状態の食品(特に膨化により密度が1.0g/cm3未満となる膨化食品)ではないことが好ましい。すなわち本発明の組成物は、非膨化状態であることによりその密度が所定の値以上であることが好ましい。具体的には、本発明の組成物の密度は、例えば1.0g/cm3以上3.0g/cm3未満の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その下限は1.0g/cm3以上が好ましく、中でも1.1g/cm3以上、さらに1.2g/cm3以上であることがより好ましい。上限としては特に限定されるものではないが、通常3.0g/cm3未満、又は2.0g/cm3未満である。なお、本発明における組成物の密度測定方法としては、当該組成物質量を、当該組成物の見た目体積で割り返すことで求められる。すなわち、組成物重量を、組成物の見た目体積(「組成物自身の体積」と「内部空隙の体積」を合算した体積)によって除することで求められる値である。また、密度の値は、「比重(4℃大気圧下℃における水の密度0.999972g/cm3に対する、ある物質の密度の比)」の値とほぼ一致するため、上記規定における数値を無単位数とした比重によって規定してもよい。さらに、上記密度に関する規定が、組成物重量を、組成物の見た目かさ体積(「組成物自身の体積」「組成物表面における外部と連通した細孔の体積」「内部空隙の体積」「組成物外部において組成物が内接する最小体積の仮想直方体との間に形成される空隙」を合算した体積)によって除することで求められる「かさ密度」又はかさ比重から算出される「見た目かさ比重」で充足されていてもよい。
【0147】
なお、本発明の組成物の製造に際しては、高温高圧化で混練後、通常は圧力を印加したまま膨化を防止しつつ降温してから、圧力を大気圧程度まで減圧することにより、本発明の組成物を得ることができる。
【0148】
[III:加熱調理用でんぷん含有固形状組成物の製造方法]
(1)概要:
本発明の製造方法は、前述した本発明の押出機を用いて、少なくとも下記(i)~(iii)の段階を実施するものである。
(i)特定の組成及び物性を充足する組成物を調製する段階。
(ii)段階(i)の組成物を、前記スクリューの前記フライト部で搬送する段階。
(iii)段階(ii)の前記フライト部による搬送後の組成物を、前記スクリューの前記混練部において、100℃未満の平均温度且つ1.0MPa以上の与圧下で混練する段階。
【0149】
(2)段階(i):生地組成物の調製
本段階(i)では、本発明の組成物の原料となる食材、例えば豆類及び/又は雑穀類と、任意により用いられるその他の食材と水分とを混合することにより、本発明の固形状組成物の元となる組成物(これを「ペースト組成物」加工前の「生地」という意味で適宜「ペースト生地組成物」又は単に「生地組成物」と称する場合がある。)を調製する。なお、生地組成物(すなわち生地)の性状は食材が水によって一部又は全部が一体化した性状であればよく、液体状であってもよく、ゾル状であってもよく、ゲル状であってもよく、固体状であってもよい。また、パン生地のような可塑性を有する性状であってもよく、そぼろ状のような可塑性を有さない性状であってもよい。斯かる生地組成物の調製法は特に制限されないが、前述した本発明の組成物の原料、例えば1種又は2種以上の食用植物(好ましくは少なくとも1種又は2種以上の豆類及び/又は雑穀類と、任意によりその他の1種又は2種以上の食用植物)と、任意により1種又は2種以上のその他の原料とを混合し、これを生地組成物として用いることができる。また、本発明の製造方法には、段階(i)の調製後の組成物を前記押出機に供給する態様に加え、フィードに豆類及び/又は雑穀類を粉末の状態で投入し、フライト部において搬送しながら水分を投入することで生地組成物の状態となる態様(即ち、段階(i)及び段階(ii)を同時に行う態様)も、本発明の製造方法に含まれるものとする。
【0150】
・生地組成物の成分組成:
ここで、生地組成物は、以下に説明する種々の成分組成を満たすように調製することが好ましい。
【0151】
生地組成物のでんぷん含有量は、湿潤質量換算で、下限は例えば通常10.0質量%以上、上限は制限されるものではないが、例えば80質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常10.0質量%以上である。中でも15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、特に50質量%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常80質量%以下、又は75質量%以下、又は70質量%以下とすることができる。また、豆類及び/又は雑穀類由来のでんぷんが上記規定を充足することが好ましい。
【0152】
生地組成物の乾量基準含水率は、下限は例えば通常25質量%以上、上限は制限されるものではないが、例えば200質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常25質量%以上である。中でも30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上、又は65質量%以上、又は70質量%以上、又は75質量%以上、特に80質量%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常200質量%以下、又は175質量%以下、又は150質量%以下とすることができる。
【0153】
また、本発明の押出後の組成物における乾量基準含水率は、上記生地組成物における乾量基準含水率と同様の値であってもよいが、一定以上の水分が含有された状態の生地組成物加工品に乾燥処理を施すことで、組成物中のでんぷんの一部が老化し、加熱調理後に表面の結着を生じにくい組成物となるため好ましい。従って、本発明の組成物における乾量基準含水率は、生地組成物における乾量基準含水率以下であることが好ましい。
【0154】
生地組成物の食物繊維(中でも、限定されるものではないが、好ましくは不溶性食物繊維)の湿潤質量換算割合は、下限は例えば通常3.0質量%以上、上限は制限されるものではないが、例えば40質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常3.0質量%以上である。中でも4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、特に10質量%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常40質量%以下、又は30質量%以下とすることができる。また、上記食物繊維に関する規定が、可溶性食物繊維及び/又は不溶性食物繊維においても充足されることが好ましい。即ち、生地組成物における可溶性食物繊維及び/又は不溶性食物繊維の湿潤質量換算割合は、例えば通常3.0質量%以上40質量%以下の範囲とすることができ、より具体的に、その下限は通常3.0質量%以上、中でも4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、特に10質量%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常40質量%以下、又は30質量%以下とすることができる。また、豆類及び/又は雑穀類由来の食物繊維(又は不溶性食物繊維、又は可溶性食物繊維)が上記規定を充足することが好ましい。
【0155】
生地組成物のタンパク質の湿潤質量換算割合は、下限は例えば通常3.0質量%以上、上限は制限されるものではないが、例えば40質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常3.0質量%以上である。中でも4.0質量%以上、又は5.0質量%以上、又は6.0質量%以上、又は7.0質量%以上、又は8.0質量%以上、又は9.0質量%以上、又は10質量%以上、又は11質量%以上、又は12質量%以上、又は13質量%以上、又は14質量%以上、又は15質量%以上、又は16質量%以上、又は17質量%以上、又は18質量%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常40質量%以下、又は30質量%以下とすることができる。また、豆類及び/又は雑穀類由来のタンパク質が上記規定を充足することが好ましい。
【0156】
ここで、生地組成物における食物繊維(又は不溶性食物繊維)、でんぷん、及びタンパク質の含有量とは、水を含んだ状態の生地組成物全体の質量を分母、各成分の含有量を分子として算出される湿潤質量換算割合であり、原料となる食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)等に由来する各成分が規定の値以上となるように調整することができる。すなわち、本発明において、「湿潤質量換算割合」(単に「湿潤質量基準割合」「湿潤質量基準」「湿潤質量換算」又は「湿量基準」と称する場合もある。)とは、組成物や各画分の水分を含んだ湿潤質量を分母、各対象成分や対象物の含有量を分子として算出される、各成分等の含有割合を表す。
【0157】
また、生地組成物の原料として、食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)を用いる場合、斯かる食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)の湿潤質量換算割合は、例えば30質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常30質量%以上、中でも40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、又は100質量%とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常100質量%以下とすることができる。
【0158】
また、生地組成物の原料として食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)を用いる場合、生地組成物の総でんぷん含量及び/又は総タンパク質含量に対する、食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)に由来するでんぷん含量及び/又はタンパク質含量の比率が、所定値以上であることが好ましい。具体的には、生地組成物の総でんぷん含量に対する、食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)に由来するでんぷん含量の比率が、乾燥質量換算で例えば30質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、30質量%以上、中でも40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、又は100質量%とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常100質量%以下とすることができる。また、生地組成物の総タンパク質含量に対する、食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)に由来するタンパク質含量の比率が、乾燥質量換算で例えば10質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、通常10質量%以上、中でも20質量%以上、又は30質量%以上、又は40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。豆類由来のでんぷん、タンパク質としては、特にエンドウ由来のものが好ましく、黄色エンドウ由来のものが最も好ましい。雑穀類由来のでんぷん、タンパク質としては、オーツ麦由来のものが好ましい。また、豆類由来と雑穀類由来のでんぷん合計が上記規定を充足することが好ましく、豆類由来と雑穀類由来のタンパク質合計が上記規定を充足することが好ましい。
【0159】
・原料の超音波処理後の単位体積当たり比表面積:
本発明の製造方法は、生地組成物として、超音波処理後の単位体積当たり比表面積が所定値以上に調整された原料を用いることを特徴の一つとする。例えば、段階(i)において必要となる加工を予め施されたでんぷん、タンパク質、食物繊維等を含有する食用植物(豆類又は雑穀類)について、比表面積が一定以上となるまで粉砕処理を施した粉砕処理物(ペースト又は粉末)を製造し、任意で水分を含有させて段階(i)の原料として用いることができる。微細化処理は食用植物の加工前に行われてもよく、エクストルーダなどを用いて加工と同時に行われてもよく、食用植物の加工後に粉砕処理を行ってもよい。具体的には、後述する測定対象物の2質量%エタノール分散液を、レーザー回折散乱法を用いて測定する、超音波処理後の単位体積当たり比表面積が所定値以上であることを特徴の一つとする。このような特性を有する原料を用いることにより、100℃以上の高温条件下で混練しなくとも、100℃未満の低温条件下で後述の搬送(段階(ii))及び混練(段階(iii))を行うだけで、強固なでんぷんの連続構造を形成させ、常温保管中に一定期間(例えば3日間以上)が経過しても組成物内部にひび割れが生じにくく、また、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくい加熱調理用の固形状組成物を製造することが可能となる。具体的には、当該原料の超音波処理後の単位体積当たり比表面積は、下限は通常0.10m2/mL以上、上限は制限されるものではないが、例えば2.5m2/mLの範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常0.10m2/mL以上である。中でも0.15m2/mL以上、又は0.20m2/mL以上、又は0.25m2/mL以上、特に0.30m2/mL以上とすることが好ましい。このように、超音波処理後の単位体積当たり比表面積を所定値以上に調整するには、例えば原料となる豆類及び/又は雑穀類等の食用植物を予め適当に粉砕処理によって微細化すればよい。なお、生地組成物の超音波処理後の単位体積当たり比表面積の上限は特に制限されないが、通常2.5m2/mL以下、又は2.2m2/mL以下、又は2.0m2/mL以下とすることができる。
【0160】
また、段階(i)において使用される食用植物の粉砕処理物(すなわち後述の「でんぷん含有食品粉砕物」)としては、水分含有量が一定以上含有される湿潤粉砕処理物(例えばペースト状)を段階(i)の原料として一部又は全部用いてもよく、乾燥粉砕処理物(例えば粉末状)を段階(i)の原料として一部又は全部用いてもよい。
湿潤粉砕処理物を段階(i)の原料として用いる場合、具体的には、でんぷん含有食品粉砕物の乾量基準含水率を25質量%以上、又は30質量%以上、中でも35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上とすることが好ましい。一方、その乾量基準含水率の上限は制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点から、例えば200質量%以下、或いは150質量%以下、或いは100質量%以下とすることができる。
また、乾燥粉砕処理物を段階(i)の原料として用いる場合、具体的には乾量基準含水率を25質量%未満、又は20質量%未満、中でも15質量%未満、又は10質量%未満とすることが好ましい。一方、乾量基準含水率の下限は制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点から、例えば0.5質量%以上、或いは1質量%以上、或いは2質量%以上とすることができる。
【0161】
また、段階(i)に用いる原料に乾燥粉砕処理物及び/又は湿潤粉砕処理物を用いる場合、任意で乾量基準含水率0質量%以上200質量%以下の任意の水分を加水することで、段階(i)の生地組成物とすることができる。一方、段階(i)に用いる原料の一部又は全部に乾燥原料を用いる場合、乾燥原料保管中に糊化度をはじめとするでんぷんの特性が維持されやすいため好ましい。
また、湿潤粉砕処理物として、段階(iii)以降で押し出された後に乾燥状態を施されていない未乾燥組成物を用いることができるが、特に段階(i)のうち、湿潤質量換算で50質量%以下(40質量%以下、又は30質量%以下。その下限は特に制限されないが通常0質量%以上、又は1質量以上)の割合で当該未乾燥組成物を湿潤粉砕処理物として段階(i)に用いることで、製品の廃棄が少なくなるため好ましい。
【0162】
また、乾燥粉砕処理物として、段階(iii)以降で押し出された後に乾燥処理を施された乾燥組成物に対してさらに破砕処理したものを用いることができるが、特に段階(i)のうち、湿潤質量換算で50質量%以下(40質量%以下、又は30質量%以下。その下限は特に制限されないが通常0質量%以上、又は1質量以上)の割合で当該乾燥組成物を乾燥粉砕処理物として段階(i)に用いることで、製品の廃棄が少なくなるため好ましい。
【0163】
従って、本発明には以下の発明Aが含まれる
(発明A)段階(i)における組成物の調製に用いるための、下記(1)~(6)を充足するでんぷん含有食品粉砕物。
(1)食物繊維の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上である。
(2)でんぷんの含有量が湿潤質量換算で10.0質量%以上である。
(3)タンパク質の含有量が湿潤質量換算で3.0質量%以上である。
(4)乾量基準含水率が25質量%未満である。
(5)でんぷんの糊化度が40質量%以上である。
(6)超音波処理後の単位体積当たり比表面積が0.10m2/mL以上である。
【0164】
本発明において、超音波処理後の単位体積当たり比表面積は、生地組成物の分散液を擾乱後、以下の条件で測定するものとする。まず、測定時には、溶媒として生地組成物の測定時の試料の構造に影響を与え難いエタノールを用いる。具体的には、試料1gをエタノール50gに浸漬し、5分程度静置し、その後、スパーテルでよく攪拌、懸濁させ、目開き2.36mm、線径(Wire Dia.)1.0mmの8メッシュ(U.S.A. Standard Testing Sieves ASTM Specifications E 11-04にて、同文献中のNominal Dimensions, Permissible Variation for Wire Cloth of Standard Testing Sieves (U.S.A.) Standard Seriesにおける「Alternative」に規定された「No.8」と対応する篩)を通過した溶液(2質量%エタノール分散液)を用いて測定する。より具体的には、懸濁液(20℃)100gを、篩上に均等に散布し、組成物サイズが変わらない程度の負荷で振動させながら篩上の画分質量が一定となるまで処理した場合に篩を通過した溶液を2質量%エタノール分散液として測定に供する。測定に使用されるレーザー回折式粒度分布測定装置としては、レーザー回折散乱法によって少なくとも0.02μmから2000μmの測定範囲を有するレーザー回折式粒度分布測定装置を用いる。例えばマイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300 EX2システムを使用し、測定アプリケーションソフトウェアとしては、例えばDMSII(Data Management System version 2、マイクロトラック・ベル株式会社)を使用する。前記の測定装置及びソフトウェアを使用する場合、測定に際しては、同ソフトウェアの洗浄ボタンを押下して洗浄を実施したのち、同ソフトウェアのSetzeroボタンを押下してゼロ合わせを実施し、サンプルローディングで試料の濃度が適正範囲内に入るまで試料を直接投入する。擾乱後の試料、即ち超音波処理を行った試料を測定する場合、超音波処理を行っていない試料を投入し、サンプルローディングにて濃度を適正範囲内に調整した後、同ソフトの超音波処理ボタンを押下して超音波処理(周波数40kHzの超音波を出力40Wにて3分間の処理)を行う。その後、3回の脱泡処理を行った上で、再度サンプルローディング処理を行い、濃度が依然として適正範囲であることを確認した後、速やかに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値とする。測定時のパラメータとしては、例えば分布表示:体積、粒子屈折率:1.60、溶媒屈折率:1.36、測定上限(μm)=2000.00μm、測定下限(μm)=0.021μmとする。
【0165】
なお、本発明において単位体積当たり比表面積(m2/mL)とは、前述したレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した、粒子を球状と仮定した場合の単位体積(1mL)当りの比表面積を表す。尚、粒子を球状と仮定した場合の単位体積当りの比表面積は、粒子の成分や表面構造等を反映した測定値(透過法や気体吸着法等で求められる体積当り、質量当り比表面積)とは異なる測定メカニズムに基づく数値である。また、粒子を球状と仮定した場合の単位体積当りの比表面積は、粒子1個当りの表面積をai、粒子径をdiとした場合に、6×Σ(ai)÷Σ(ai・di)によって求められる。
【0166】
また、単位体積当たり比表面積測定等を測定する際には、チャンネル(CH)毎の粒子径分布を測定した上で、後述の表Aに記載した測定チャンネル毎の粒子径を規格として用いて求めることが好ましい。具体的には、後記の表Aの各チャンネルに規定された粒子径以下で、且つ数字が一つ大きいチャンネルに規定された粒子径(測定範囲の最大チャンネルにおいては、測定下限粒子径)よりも大きい粒子の頻度を、後記の表Aのチャンネル毎に測定し、測定範囲内の全チャンネルの合計頻度を分母として、各チャンネルの粒子頻度%を求めることができる(これを「○○チャンネルの粒子頻度%」とも称する)。例えば、1チャンネルの粒子頻度%は、2000.00μm以下かつ1826.00μmより大きい粒子の頻度%を表す。
【0167】
【0168】
・原料のでんぷん糊化度:
本発明の製造方法は、生地組成物の原料となるでんぷんとして、予め高度に糊化されたでんぷんを使用することを特徴の一つとする。これにより、100℃以上の高温条件下で混練しなくとも、100℃未満(下限は特に制限されないが通常0℃超)の低温条件下で後述の搬送(段階(ii))及び混練(段階(iii))を行うだけで、強固なでんぷんの連続構造(マトリクス構造)を形成させ、常温保管中に一定期間(例えば3日間以上)が経過しても組成物内部にひび割れが生じにくく、また、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくい加熱調理用の固形状組成物を製造することが可能となる。具体的には、段階(i)における生地組成物中のでんぷん糊化度は、下限は例えば40質量%以上、上限は制限されるものではないが、例えば100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常40質量%以上である。中でも50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常100質量%以下である。
【0169】
また、同様の理由で、段階(i)における生地組成物中のでんぷんは、予め一定以上の温度で加熱されたでんぷんであることが好ましい。例えば、本発明において、段階(i)の組成物に含まれるでんぷんが、乾量基準含水率25質量%以上(又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上)の含水条件下において最高到達温度100℃以上で予め加熱されたでんぷんであることが好ましい。より具体的には、例えば予め通常100℃以上200℃以下の範囲で加熱されたでんぷんとすることができる。より具体的に、予め通常100℃以上、又は110℃以上、又は120℃以上の最高到達温度で加熱されたでんぷんであることが好ましい。でんぷんの予加熱温度の上限は特に制限されないが、通常200℃以下、又は180℃以下とすることができる。また、当該予加熱に際して乾量基準含水率が一定未満の状態で高温加熱されたでんぷんは、熱分解によって加工性の低い特性を有するため、段階(i)における生地組成物中のでんぷんは、一定以上の乾量基準含水率下で加熱されたでんぷんであることが更に好ましい。具体的には、予加熱時のでんぷんの乾量基準含水率は、例えば40質量%以上200質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常40質量%以上、中でも45質量%以上、又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上、又は65質量%以上、又は70質量%以上、又は75質量%以上、特に80質量%以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常200質量%以下、又は175質量%以下、又は150質量%以下とすることができる。また、当該でんぷんが食用植物に由来するでんぷんであることが好ましく、食用植物に含有された状態のでんぷんであることがさらに好ましい。また、組成物全体の総でんぷん含有量に対する当該食用植物(好ましくは豆類及び/又は雑穀類)由来でんぷん含有量の比率が、乾燥質量換算で例えば30質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限が通常30質量%以上、中でも40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。
【0170】
・原料のでんぷん分解酵素活性:
また、本発明の組成物として、前述したでんぷん分解酵素活性が所定値以下の組成物を得るためには、本段階(i)における生地組成物の原料として、でんぷん分解酵素活性が所定値より低くなるように加工されたでんぷん又はこれを含む食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)を用いることが好ましい。具体的には、でんぷん又はこれを含む食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)を含有する生地組成物のでんぷん分解酵素活性が、乾燥質量換算で例えば0.0U/g以上60.0U/g以下の範囲とすることができる。より具体的に、通常60.0U/g以下となるように、それら原料を使用することができる。中でも50.0U/g以下、又は40.0U/g以下、又は30.0U/g以下とすることが好ましい。一方、斯かる割合の下限は、特に制限されるものではないが、通常0.0U/g以上、又は0.1U/g以上である。食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)におけるでんぷん分解酵素は耐熱性が非常に強いため、でんぷん分解酵素活性が低い食用植物を得るための加工方法としては、乾燥基準含水率50質量%以上の環境下において、所定の温度以上で加熱処理を行うことが好ましい。具体的には、乾燥基準含水率50質量%以上の環境下における加熱温度を、例えば100℃以上200℃未満の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常100℃以上、中でも110℃以上、特に120℃以上であることが望ましい。一方、斯かる温度の上限は、特に制限されるものではないが、通常200℃未満である。加熱時間については、でんぷん分解酵素活性が所定値に調整されるまで任意で設定できるが、通常0.1分以上である。
【0171】
・原料のPDI:
また、本発明の組成物として、本段階(i)における生地組成物の原料として、PDI値が所定値より低くなるように加工されたタンパク質又はこれを含む食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)を用いることが好ましい。具体的には、生地組成物の原料として用いられるタンパク質又はこれを含む食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)のPDI値が、例えば0質量%以上55質量%未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限が55質量%未満であることが好ましい。中でも50質量%未満、更には45質量%未満、とりわけ40質量%未満、又は35質量%未満、又は30質量%未満、又は25質量%未満、又20質量%未満、又15質量%未満、特には10質量%未満であることが望ましい。一方、斯かる割合の下限は、特に制限されるものではないが、通常0質量%以上、更には2質量%以上、中でも4質量%以上である。
【0172】
なお、PDI(protein dispersibility index)値とは、タンパク質の溶解性を表す指標であり、定法に従い組成物全体の全窒素割合に対する水溶性窒素割合の百分率(水溶性窒素割合/組成物全体の全窒素割合×100(%))として求めることができる。具体的には、測定試料に20質量倍量の水を加え、粉砕処理(マイクロテックニチオン社製ホモジナイザーNS-310E3を用いて8500rpmで10分間破砕処理する)し、得られた破砕処理液の全窒素割合に20を乗じた値を組成物全体の全窒素割合として測定する。次に破砕処理液を遠心分離(3000Gで10分間)し、得られた上清の全窒素割合に20を乗じた値を水溶性窒素割合として測定することで、組成物におけるPDI値を算出することができる。全窒素割合の測定方法は、食品表示法(「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第139号))に規定された燃焼法(改良デュマ法)を用いて測定する。
【0173】
また、前述された組成物中の総タンパク質含量に対する、食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)に含有された状態で配合されたタンパク質含量の比率が所定値以上であり、かつPDI値が所定値以下であることで、ゆで汁への成分流出しにくい組成物となるため、より好ましい。PDI値が低いタンパク質、食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)に含有された状態のタンパク質を得るための加工方法としては、乾燥基準含水率30質量%以上の環境下において所定の温度以上で加熱処理を行うことが好ましい。例えば100℃以上200℃未満の範囲とすることができる。より具体的には、100℃以上であることが好ましい。中でも105℃以上、更には110℃以上、特に120℃以上であることが望ましい。一方、斯かる温度の上限は、特に制限されるものではないが、通常200℃未満である。加熱時間についてはPDI値が所定値に調整されるまで任意で設定できるが、通常0.1分以上であり、その上限は特に制限されないが通常60分である。
【0174】
・原料の不溶性食物繊維の粒子径:
また、生地組成物の原料として食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)を用いる場合、混練処理では不溶性食物繊維の形状は大きく変化しないため、斯かる食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)に由来する不溶性食物繊維は、所定のサイズを有することが好ましい。ここで、通常漫然と破砕された豆類及び/又は雑穀類粉末における不溶性食物繊維サイズは450μm超となる蓋然性が高い(豆類及び/又は雑穀類に含有される不溶性食物繊維の形状は通常棒状であり、本発明のレーザー回折式粒度分布測定では大きめの値が得られるため。)。従って、本発明に用いる食材(特に種皮付きの豆類やふすま部付きの雑穀類など、硬質組織を含有する食材)に含まれる不溶性食物繊維は、予め特定の破砕処理を行い、そのサイズが特定範囲となっているものを用いることが好ましい。具体的には、組成物に含まれる不溶性食物繊維について前述したのと同様、食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)の水懸濁液をプロテアーゼ及びアミラーゼ処理し、でんぷんとタンパク質を酵素によって分解したでんぷん・タンパク質分解処理後組成物について、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、前述の単位体積当たり比表面積と同様に超音波処理を加えた後の粒子径分布を測定する方法を用いる。具体的には、食用植物の粉末の6質量%の水懸濁液を、0.4容量%のプロテアーゼ及び0.02質量%のα-アミラーゼにより20℃で3日間処理する(前記[手順b])ことによりでんぷん・タンパク質分解処理を実施した後、得られた処理物に超音波処理を加えてから粒子径分布を測定し、粒子径(d90及び/又はd50)とすればよい。こうした処理によって、食用植物の構成成分のうちでんぷん及びタンパク質が分解され、得られる分解物の粒子径分布は、不溶性食物繊維を主体とする構造の粒子径分布を反映しているものと考えられる。
【0175】
具体的に、前記手順で得られた食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)中の不溶性食物繊維の粒子径d90は、例えば1μm以上450μm以下の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は通常450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は90μm以下、又は80μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下であることが更に好ましい。また同様に、前記手順で得られた食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)中の不溶性食物繊維の粒子径d50は、例えば1μm以上450μm以下の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は通常450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は90μm以下、又は80μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下であることが更に好ましい。食用植物に含まれる不溶性食物繊維の粒子径d90及び/又は粒子径d50が前記範囲を超えると、本発明の効果が奏されにくくなる場合がある。この理由は定かではないが、粗大な不溶性食物繊維がでんぷん等のマトリクス構造形成を阻害し、本発明の効果が奏されにくくなるためと考えられる。一方、食用植物に含まれる不溶性食物繊維の斯かる粒子径d90及び/又は粒子径d50の下限は、特に制限されるものではないが、通常1μm以上、より好ましくは3μm以上であることが好ましい。
【0176】
・原料のCFW被染色部位:
また、生地組成物の原料として食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)を用いる場合、混練処理では食物繊維形状は大きく変化しないため、斯かる食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)に含まれる不溶性食物繊維は、所定の形状を有することが好ましい。具体的には、組成物に含まれる不溶性食物繊維について前述したのと同様、食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)の水懸濁液をプロテアーゼ及びアミラーゼ処理し、でんぷん及びタンパク質を酵素分解したでんぷん・タンパク質分解処理物(具体的には、前記[手順b]によりでんぷん・タンパク質分解処理を施した処理物)をCFW(Calcofluor White)染色し、蛍光顕微鏡観察した場合に、CFW被染色部位の最長径平均値及び/又はアスペクト比平均値が、それぞれ所定値以下であることが好ましい。こうして得られたCFW被染色部位は、食物繊維のうち、特に不溶性食物繊維主体の構造を有しているものと考えられる。具体的に、上記手順で測定された食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)中のCFW被染色部位の最長径の算術平均値は、例えば2μm以上450μm以下の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は通常450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は90μm以下、又は80μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下であることが好ましい。斯かるCFW被染色部位の最長径の平均値が前記範囲を超えると、本発明の効果が奏されにくくなる場合がある。その理由は定かではないが、大きな最長径を有する不溶性食物繊維がでんぷん等のマトリクス構造形成を阻害し、本発明の効果が奏されにくくなるためと考えられる。一方、斯かるCFW被染色部位最長径の算術平均値の下限は、特に制限されるものではないが、通常2μm以上、より好ましくは3μm以上であることが好ましい。
【0177】
また、後の段階(iii)の混練処理では食物繊維の形状は大きく変化しないため、食物繊維(特に不溶性食物繊維)を含む食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)としては、そこに含まれる食物繊維が一定以下のアスペクト比となるように加工された、粉末状のものを用いることが好ましい。ここで、通常漫然と破砕された食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)粉末における食物繊維の前記CFW被染色部位のアスペクト比は5.0超の数値になる蓋然性が高い(特に、豆類及び/又は雑穀類に含有される不溶性食物繊維の形状は通常棒状であるため。)。また、食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)粉末の風力選別などを行うと、特定形状の食用植物粉末が除去され、食物繊維のCFW被染色部位のアスペクト比が高すぎるか低すぎる蓋然性が高い。従って、食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)粉末としては、予め特定の破砕処理を行い、食物繊維を表すCFW被染色部位のアスペクト比の算術平均値が特定範囲となっているものを用いることが好ましい。具体的には、上記手順で測定された食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)粉末中のCFW被染色部位のアスペクト比の算術平均値が、例えば1.1以上5.0以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限が通常5.0以下、中でも4.5以下、又は4.0以下、又は3.5以下、又は3.0以下、又は2.5以下、特に2.0以下であることが好ましい。斯かるCFW被染色部位のアスペクト比の平均値が前記範囲を超えると、本発明の効果が奏されにくくなる場合がある。その理由は定かではないが、大きなアスペクト比を有する食物繊維(特に不溶性食物繊維)がでんぷん等のマトリクス構造形成を阻害し、本発明の効果が奏されにくくなるためと考えられる。一方、斯かるCFW被染色部位アスペクト比の算術平均値の下限は、特に制限されるものではないが、通常1.1以上であることが好ましく、1.3以上であることが更に好ましい。
【0178】
なお、生地組成物の原料となる食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)中の食物繊維に関する各種パラメーターの測定方法、即ち、アミラーゼ及びプロテアーゼ処理、超音波処理、粒子径分布(粒子径d90及びd50)測定、CFW染色、蛍光顕微鏡観察等の具体的な条件及び手順については、前述した組成物中の食物繊維に関する各種パラメーターの測定方法に準じて測定するものとする。
【0179】
・原料の微細化・粉末化:
本発明において、生地組成物の原料として食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)を用いる場合、斯かる食用植物は微細化・粉末化したものを用いることが好ましい。微細化・粉末化処理の手段や条件は特に限定されない。具体的に、微細化・粉末化処理時の温度は特に制限されないが、粉末が高温に曝されると、本発明の組成物の弾性が低下しやすくなるため、例えば200℃以下(下限は特に制限されないが、通常40℃以上)の温度で乾燥されることが好ましい。但し、食用植物として豆類及び/又は雑穀類を用いる場合、豆類及び/又は雑穀類の状態で加温した後に粉砕を行う方法であれば、熱負荷が軽減されるため、その温度は特に制限されない。また、微細化・粉末化処理時の圧力も制限されず、高圧粉砕、常圧粉砕、低圧粉砕の何れであってもよい。斯かる微細化処理のための装置の例としては、ブレンダー、ミキサー、ミル機、混練機、粉砕機、解砕機、磨砕機等の機器類が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、例えば、乾式ビーズミル、ボールミル(転動式、振動式等)等の媒体攪拌ミル、ジェットミル、高速回転型衝撃式ミル(ピンミル等)、ロールミル、ハンマーミル等を用いることができる。
【0180】
・原料の加熱加水処理:
本発明の製造方法では、生地組成物の原料としてでんぷん及び/又はタンパク質を含む食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)を用いる場合、前処理として予め水を含む条件で加熱されたものを用いることが好ましい。このような予め加熱加水処理を行った原料は、でんぷんの熱分解による低分子化が抑制されることから、表面の結着を生じにくい固形状組成物を得ることが容易になる。
【0181】
具体的には、食用植物の加熱加水処理時の乾量基準含水率は、制限されるものではないが、例えば25質量%200質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常25質量%以上、中でも30質量%以上、又は40質量%以上、特に50質量%以上とすることが好ましい。乾量基準含水率の上限は特に制限されないが、例えば通常200質量%以下、中でも175質量%以下とすることができる。また、食用植物の加熱加水処理時の加熱温度は、制限されるものではないが、例えば100℃以上200℃以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常100℃以上、又は110℃以上、又は120℃以上とすることが好ましい。加熱温度の上限は限定されないが、例えば通常200℃以下、中でも190℃以下とすることができる。
【0182】
なお、本発明では、でんぷんを含む食用植物及びタンパク質を含む食用植物を共に予め加水加熱してから用いることがより好ましく、でんぷん及びタンパク質を共に含む食用植物を加水加熱してから用いることが更に好ましい。なお、食用植物の加水加熱は、例えばスチーム加熱などによって加熱することができる。例えば、段階(i)の組成物に含まれるでんぷんが、乾量基準含水率25質量%以上(又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上)の含水条件下において最高到達温度100℃以上で加熱された食用植物に由来するでんぷんであることが好ましく、当該でんぷんが食用植物に含有された状態のでんぷんであることがより好ましい。また、組成物全体の総でんぷん含有量に対する当該食用植物(好ましくは豆類及び/又は雑穀類)由来でんぷん含有量の比率が、乾燥質量換算で通常30質量%以上、中でも40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。
【0183】
一方、特に粉末化(例えばd90及び/又はd50<1000μm)されたでんぷん含有食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)を予め加熱して用いる場合、乾量基準含水率が25%未満の乾燥環境下において加熱(例えば最高到達温度100℃以上)されたものを用いると、でんぷんが局所的に加熱されることで過加熱となり、その構造中のでんぷんの熱分解が促進され、その構造中のアミロースが可溶化し、組成物がべたべたした品質となり好ましくない場合がある。
【0184】
なお、本発明の製造方法に使用する押出機として、押出機の前段で100℃以上の高温下で処理を行うことで原料となる豆類及び/又は雑穀類等の高温高圧加熱処理を行い、後段で内部温度を100℃未満に調整して本発明の製造方法の各段階を実施する構成(例えば、前記の
図3及び
図4に示す態様Bの押出機102や、2台の独立の押出機をタンデムに連結して用いる場合等)を用いる場合には、本項で説明した原料の加熱加水処理を押出機の前段で実施した後、そのまま連続して押出機の後段で本発明の製造方法を実施することが可能となるため、効率面から好ましい場合がある。
【0185】
・押出機の前段部で高温高圧強混練の前処理を行う態様:
また、2台の独立の押出機を使用する態様の変形例として、予め前段の押出機で原料となる豆類及び/又は雑穀類に対して高温高圧強混練処理を行った後の組成物を、任意で乾燥処理を行った後に粉砕処理してでんぷん含有粉砕組成物を製造し、
図1に示す態様の押出機における段階(i)の組成物の製造時に用いる原料(食用植物加工品)の一部又は全部として用いてもよい。即ち、当該態様における前処理に相当する前半部の加工で、後述するでんぷん含有粉砕組成物又は乾燥粉砕でんぷん含有組成物の製造条件を採用することができる。
【0186】
また、
図3に示す態様Bの構成における、前処理に相当する前半部の加工(例えば
図3および
図4に示すタンデム型スクリューを有する押出機の前半部、具体的には
図3の204Aおよび204Bに相当する機能を有する二軸エクストルーダ)においてでんぷん含有食品粉砕物又は乾燥でんぷん含有食品粉砕物を製造する態様であってもよい。即ち、当該態様における前処理に相当する前半部の加工で、後述するでんぷん含有食品粉砕物又は乾燥でんぷん含有食品粉砕物の製造条件を採用することができる。
【0187】
また、原料であるでんぷん含有食品粉砕物の製造時に当該押出機において高温高圧強混練時に配合する水分含有量は、生地組成物の乾量基準含水率(生地組成物から水の重量を除いた固形分重量を分母とした、水を含まない状態の試料の重量を100とする含水率)が所定割合となるように、豆類及び/又は雑穀類などの原料に含有される水分に加えて適宜水を含有させることで、後述するでんぷん粒構造に関する要件(a)及び/又は(b)を充足する食品粉砕物となるため好ましい。例えば乾量基準含水率が3質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的には、生地組成物における乾量基準含水率の下限が3質量%以上、中でも5質量%以上、更には7質量%以上、特に10質量%以上とすることで、生地が一体化し混練強度が高まりやすくなるため好ましい。上限は特に制限されないが、通常100質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、又は50質量%以下、又は50質量%未満、又は40質量%以下、又は40質量%未満、又は30質量%以下、又は30質量%未満、又は25質量%以下、又は25質量%未満であることで、乾燥処理が行いやすいため好ましい。
【0188】
また、特に後述するでんぷん含有食品粉砕物を製造する際には、高温高圧強混練時に配合する水分含有量は比較的少量の方が好ましい。例えば、生地組成物における乾量基準含水率を、3質量%以上60質量%以下の範囲とすることができる。より具体的には、生地組成物における乾量基準含水率の上限が60質量%以下、又は50質量%以下、又は50質量%未満、又は40質量%以下、又は40質量%未満、又は30質量%以下、又は30質量%未満、又は25質量%以下、又は25質量%未満であることで、膨化しやすい品質となるため好ましい。その下限は特に制限されないが、通常3質量%以上、中でも5質量%以上、更には7質量%以上、特に10質量%以上とすることが好ましい。
【0189】
また、当該段階において加工時に配合する水分のうち、配合水分全体の50質量%以上100質量%以下を予め原料である豆類及び/又は雑穀類と混合してから押し出し機に原料投入することが好ましい。
【0190】
また、原料であるでんぷん含有食品粉砕物の製造時に当該押出機において行われる混練時の具体的な条件としては、式Iで求められるSME(specific mechanical energy)値が所定値以上であることで、でんぷん粒が十分に破壊され、後述するでんぷん粒構造に関する要件(a)及び/又は(b)を充足する食品粉砕物となるため好ましい。具体的には、当該SME値が例えば、300kJ/kg以上5000kJ/kg以下の範囲で含有することで、でんぷん粒が十分に破壊されるため好ましい。より具体的には、その下限は通常300kJ/kg以上、中でも320kJ/kg以上、又は330kJ/kg以上、又は340kJ/kg以上、又は350kJ/kg以上、又は360kJ/kg以上、又は370kJ/kg以上、又は380kJ/kg以上、又は390kJ/kg以上、又は400kJ/kg以上となる条件で混練することが好ましい。その上限は特に制限されないが、通常5000kJ/kg以下、又は4000kJ/kg以下、又は3000kJ/kg以下、又は2000kJ/kg以下とすることができる。また、押出機のスクリュー回転数を、通常150rpm超、中でも200rpm超、又は250rpm超とすることが好ましい。
【0191】
また、上記混練を与圧条件下、即ち、大気圧に対する加圧条件下で行う。混練を通常よりも高い圧力を印加する条件で行うことが好ましい。混練時圧力は、押出機の出口圧力を測定することで測定することができる。混練時に大気圧に対して印加すべき圧力の下限は、通常0.01MPa以上、中でも0.03MPa以上、又は0.05MPa以上、又は0.1MPa以上、又は0.2MPa以上、又は0.3MPa以上、又は0.5MPa以上、又は1.0MPa以上、又は2.0MPa以上、又は3.0MPa以上とすることが好ましい。一方、混練時に大気圧に対して印加される圧力の上限は、特に制限はないが、例えば50MPa以下、又は30MPa以下、又は10MPa以下とすることができる。また、混練部先端側終点付近(好ましくは混練部先端側終点直後)にフロー遅滞構造を設置することで、混練部における圧力を高めることができるため好ましい。
【0192】
また、当該押出機における混練温度を100℃以上とすることで、豆類及び/又は雑穀類中のでんぷん粒構造が破壊され、後述するでんぷん粒構造に関する要件(a)及び/又は(b)を充足する食品粉砕物となるため好ましい。具体的には混練時の温度は、例えば100℃以上300℃以下の範囲とすることができる。より具体的に、下限としては、通常100℃以上であるが、中でも105℃以上、又は110℃以上、又は115℃以上とすることが好ましい。押出時の下限温度を前記とすることで、その後の粉砕が行いやすい膨化状態の組成物とすることができる。一方、押出時の温度の上限としては、通常300℃以下、又は250℃以下、又は200℃以下、又は190℃以下、又は180℃以下、又は170℃以下、又は165℃以下、又は160℃以下、又は155℃以下であってもよい。
【0193】
なお、当該温度下で高温高圧強混練処理された組成物を押し出す際の押出時生地温度は、限定されるものではないが、100℃以上であっても、100℃未満であってもよい。この場合、100℃未満で押し出された組成物は押し出し後に非膨化状態(密度1.00g/cm3以上)となり、100℃以上で押し出された組成物は押し出し後に膨化状態(密度1.00g/cm3未満)となる場合がある。押出機における出口温度を所定温度未満(例えば100℃未満)として押出後に非膨化状態とした組成物とする場合、当該押し出し処理を行う際の温度は、例えば0℃以上100℃未満の範囲とすることができる。より具体的に、下限としては通常100℃未満、又は95℃未満、又は90℃未満、又は85℃未満、又は80℃未満、又は75℃未満、又は70℃未満、又は65℃未満、又は60℃未満であることが好ましい。下限は特に制限されないが、通常0℃以上、又は4℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、又は30℃以上、又は40℃以上、特に50℃以上とすることができる。
【0194】
また、押出機における出口温度を所定温度以上(例えば100℃以上)として押出後に膨化状態とした組成物とすることで、支持構造であるでんぷんが破砕しやすい構造となり、その後の粉砕処理を行いやすいため好ましい。その原理は、押出機内部で加圧された生地組成物中の水分が100℃以上にもかかわらず液体状態で保持され、その後速やかに大気圧下に放出されることで当該生地中の水分が圧力低下に伴い急激に気化し、組成内部に空隙を形成するというメカニズムによって、押し出し後に膨化状態の組成物となると考えられる。なお、膨化状態の組成物製造においては降温する前に生地組成物を勢いよく押出す必要があるため、通常は搬送速度を落とすような強混練の工程を採用する動機づけはなく、さらにエクストルーダ内部で生地組成物温度を低下させてしまうとそもそも組成物の膨化が起こらなくなってしまうため、押出時温度を100℃未満とするような工程を採用することには阻害的な要因が存在する。また、膨化状態の組成物製造においては押出機における出口温度を100℃以上とすればよいが、具体的には押出時の温度は、例えば100℃以上300℃以下の範囲とすることができる。より具体的に、下限としては、通常100℃以上であるが、中でも105℃以上、又は110℃以上、又は115℃以上とすることが好ましい。押出時の下限温度を前記とすることで、その後の粉砕が行いやすい膨化状態の組成物とすることができる。一方、押出時の温度の上限としては、通常300℃以下、又は250℃以下、又は200℃以下、又は190℃以下、又は180℃以下、又は170℃以下、又は165℃以下、又は160℃以下、又は155℃以下であってもよい。
【0195】
なお、本発明における「膨化状態」の組成物は、その密度が所定の値未満であることが好ましい。具体的に、本発明における「膨化状態」の組成物の密度は、例えば0.01g/cm3以上1.00g/cm3未満の範囲とすることが好ましい。より具体的に、その上限は1.00g/cm3未満が好ましく、中でも0.90g/cm3未満、又は0.80g/cm3未満であることがより好ましい。下限としては特に限定されるものではないが、通常0.01g/cm3以上、又は0.05g/cm3以上、又は0.10g/cm3以上とすることができる。
【0196】
また、押出後組成物の粉砕処理に際しては、超音波処理後の粒子径d50及び/又はd90(好ましくは粒子径d50及びd90の双方)が1000μm以下程度となるように粉砕する。なお、超音波処理後の粒子径d50及び/又はd90(好ましくは粒子径d50及びd90の双方)の下限は特に限定されないが、通常1μm以上であることが好ましい。斯かる粉砕のための手段は前述した公知の方法を用いることができる。
【0197】
また、押出後の組成物に対して任意で乾燥処理を行うことができる。乾燥処理は粉砕処理の前に行われても、後に行われてもよいが、粉砕処理前に乾燥処理を行うことで粉砕がスムースに行われるため好ましい。乾燥処理を行う場合、乾燥処理の前後で乾量基準含水率が5%以上低下する(すなわち、「(乾燥処理前の組成物における当該比率-乾燥処理後組成物における当該比率)/乾燥処理前の組成物における当該比率」で規定される低下割合が一定以上の数値となる)ことが好ましい。斯かる低下割合は、中でも10%以上、更には15%以上、とりわけ20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上、又は45%以上、特に50%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下、又は95%以下とすることができる。また、乾燥処理後の組成物中の乾量基準含水率を60質量%未満、又は55質量%未満、中でも50質量%未満、又は45質量%未満、又は40質量%未満、又は35質量%未満、又は30質量%未満、又は25質量%未満、又は20質量%未満、又は15質量%未満とすることが好ましい。一方、本発明の組成物中の乾量基準含水率の下限は、制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点から、例えば0.5質量%以上、或いは1質量%以上、或いは2質量%以上とすることができる。なお、本発明の組成物中の乾量基準含水率は、組成物の各種成分に由来するものであってもよいが、本発明における加工に際して更に添加された水に由来するものであってもよい。
【0198】
また、
図3に示す態様Bの構成のように、機能の異なる2種類のスクリューが直列に連結される態様のうち、予め前段の押出機で原料となる豆類及び/又は雑穀類に対して高温高圧強混練処理を行った後の組成物を、
図1に示す態様の押出機における段階(i)製造時に用いる原料(食用植物加工品)の一部又は全部として用いる態様において、でんぷん含有食品粉砕物を常温(20℃)で一定期間(例えば1日間以上10年間以下)保管することができるが、保管中におけるでんぷんの老化を抑制するために、粉砕処理の前後いずれかにおいて乾燥処理を行った乾燥粉砕でんぷん含有組成物とすることが好ましい。
【0199】
また、乾燥後の乾燥粉砕でんぷん含有組成物のでんぷん糊化度は、所定値以上であることで、常温保管中に一定期間(例えば3日間以上)が経過しても組成物内部にひび割れが生じにくく、また、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくいという効果が得られやすくなることから好ましい。具体的に、乾燥粉砕でんぷん含有組成物におけるでんぷん糊化度は、例えば50質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、通常50質量%以上、中でも60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、特に85質量%以上であることが好ましい。糊化度の上限は特に制限されないが、通常100質量%、又は100質量%以下、又は99質量%以下、又は95質量%以下、又は90質量%以下であることが好ましい。
【0200】
従って、本発明には以下の発明B及び発明Cが含まれる。
(発明B)押出機を用いて段階(i)で使用するためのでんぷん含有食品粉砕物を製造する方法であって、下記(I)から(V)の段階を含む、膨化食品組成物の製造方法。
(I)豆類粉末及び/又は雑穀類粉末に加水して乾量基準含水率を3質量%以上、又は5質量%以上、又は7質量%以上、又は10質量%以上、その上限は特に制限されないが、通常100質量%以下、又は80質量%以下、又は60質量%以下、又は40質量%以下、又は30質量%以下に調整する段階。
(II)段階(I)の調製後の組成物を、与圧条件下で温度100℃以上300℃以下とし、SME値300kJ/kg以上、又は320kJ/kg以上、又は330kJ/kg以上、又は340kJ/kg以上、又は350kJ/kg以上、又は360kJ/kg以上、又は370kJ/kg以上、又は380kJ/kg以上、又は390kJ/kg以上、又は400kJ/kg以上、その上限は特に制限されないが、例えば通常5000kJ/kg以下、又は4000kJ/kg以下、又は3000kJ/kg以下、又は2000kJ/kg以下で混練する段階。
(III)段階(II)の混練後組成物を、大気圧下に押し出して膨化させる段階。
(IV)段階(III)の組成物に任意で乾燥処理を行う段階。
(V)段階(III)又は(IV)の組成物を粉砕する段階。
(発明C)発明Bにおいて、段階(III)における組成物温度が100℃以上である、でんぷん含有食品粉砕物の製造方法。
【0201】
また、
図3に示す態様Bの構成のように、機能の異なる2種類のスクリューが直列に連結される態様のうち、2台の独立の押出機が直列に連結し、前段の押出機で加熱処理された組成物が直接的に接続されたり、コンベア搬送されたり、エアー搬送されるなどして前段の処理完了から後段の処理開始まで一定時間以内にそのまま後段の押出機に供給されるような構成において、前処理に相当する前半部の加工で、前述する製造条件を採用することができるが、特に前段の押出機から後段の押出機への搬送過程におけるでんぷんの老化を抑制するために、前処理に相当する前半部の押出機における出口温度を所定温度未満(例えば100℃未満)として押出後に非膨化状態とした組成物とすることが好ましい。当該押し出し処理を行う際の温度は、例えば0℃以上100℃未満の範囲とすることができる。より具体的に、下限としては通常100℃未満、中でも95℃未満、更には90℃未満、又は85℃未満、又は80℃未満、又は75℃未満、又は70℃未満、又は65℃未満、又は60℃未満、又は55℃未満、又は50℃未満、又は45℃未満、特に40℃未満であることが好ましい。下限は特に制限されないが、通常0℃以上、又は4℃以上とすることができる。
【0202】
また、当該態様においては、でんぷんの老化を抑制するために、押出後の組成物に対して乾燥処理を行わないことが好ましい。すなわち、前段の押出機から後段の押出機への搬送過程の前後で乾量基準含水率低下差分が10質量%以下(すなわち、「前段の押出機から押し出された直後の組成物における乾量基準含水率-後段の押出機へ供給される組成物における乾量基準含水率」で規定される低下差分が一定以下の数値となる)ことが好ましい。中でも8質量%以下、更には5質量%以下とすることが好ましい。下限は、制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点から、例えば0質量%以上、或いは0.5質量%以上、或いは1質量%以上、或いは2質量%以上とすることができる。なお、本発明の組成物中の乾量基準含水率は、組成物の各種成分に由来するものであってもよいが、本発明における加工に際して更に添加された水に由来するものであってもよく、例えば当該差分低下を抑制するため、搬送環境を外界から一部密閉することで組成物周辺の相対湿度を外界より高めたり、ミスト状の水分などを噴霧したりする態様であってもよい。
【0203】
・生地組成物の粒子径
生地組成物全体の粒子径は、原料として好ましく用いられる前述の食用植物(例えば豆類及び/又は雑穀類)粉末と同様の大きさであることが好ましい。具体的には、生地組成物全体の粒子径測定時には、溶媒として組成物の測定時の試料の構造に影響を与え難いエタノールを用いる。そして、測定する際には、試料を前もって溶媒で希釈し懸濁された分散液を用い、試料が溶媒に均質に懸濁された状態で測定を行う。具体的には、試料1gをエタノール50gに浸漬し、5分程度静置し、その後、スパーテルでよく攪拌、懸濁させ、目開き2.36mm、線径(Wire Dia.)1.0mmの8メッシュ(U.S.A. Standard Testing Sieves ASTM Specifications E 11-04にて、同文献中のNominal Dimensions, Permissible Variation for Wire Cloth of Standard Testing Sieves (U.S.A.) Standard Seriesにおける「Alternative」に規定された「No.8」と対応する篩)を通過した溶液(2質量%エタノール分散液)を用いて測定する。より具体的には、懸濁液(20℃)100gを、篩上に均等に散布し、組成物サイズが変わらない程度の負荷で振動させながら篩上の画分質量が一定となるまで処理した場合に篩を通過した溶液を2質量%エタノール分散液として測定に供し、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、前述の単位体積当たり比表面積と同様の方法で測定して得られた粒子径分布から、超音波処理後の粒子径を測定する。
【0204】
上記手順により測定された生地組成物全体の超音波処理後の粒子径d90は、例えば0.3μm以上500μm未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は通常500μm未満が好ましく、中でも450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は90μm以下、又は80μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下がより好ましい。また、超音波処理後の粒子径d50も、通常500μm未満が好ましく、中でも450μm以下、又は400μm以下、又は350μm以下、又は300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は90μm以下、又は80μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下、又は50μm以下がより好ましい。d90及びd50の下限は特に制限されないが、何れも通常0.3μm以上、又は1μm以上とすることができる。
【0205】
・生地組成物のゲルろ過クロマトグラフィー測定による特徴:
本発明の製造方法では、段階(i)の生地組成物が、以下に説明する種々の方法でゲルろ過クロマトグラフィー測定に供した場合に、以下の特徴を満たす組成物であることが好ましい。
【0206】
なお、本発明において「分子量分布」又は「分子量分布曲線」とは、横軸(X軸)に分子量対数をプロットし、縦軸(Y軸)に測定範囲全体におけるRIディテクター測定値合計に対する、各分子量対数における測定値の百分率(%)をプロットして得られる分布図を表す。また、組成物を40質量倍量(例えば組成物1gに対して40gの水を加える。)の水中で90℃15分間恒温処理後、下記[手順a]により処理して得られた精製でんぷんを、下記[条件A]の下で分析して得られる分子量分布曲線からの曲線下面積の算出に際しては、測定範囲内の最低値が0となるように曲線全体を数値補正した上で、分子量対数を横軸(X軸)として曲線下面積を算出することで、品質影響が大きいものの分子量換算では過小評価される低分子量画分([値α]付近の画分)について適切に評価することができる。なお、90℃15分間恒温処理は温度が高すぎたり、組成物が熱対流によって動揺したりすると処理が過酷となりすぎるため、エッペンドルフチューブなどの容器に組成物を投入し、さらに温度90℃に調整された40質量倍量の水を加えたのち密閉し、当該容器を沸騰水中にて温度調整しつつ内部温度が均一となるようにゆっくりと攪拌しながら湯浴することで処理温度が上がりすぎないように恒温処理を行うことが好ましい。
【0207】
・[手順a]:
前記[手順a]は、組成物の2.5質量%水分散液(組成物を40質量倍量の水中に投入したもの)を液中の組成物ごと粉砕処理し、タンパク質分解酵素処理を行った後、エタノール不溶性かつジメチルスルホキシド可溶性の成分を精製でんぷんとして得る手順である。斯かる[手順a]の技術的意義は、分子サイズが比較的近いタンパク質などの不純物を取り除くとともに、でんぷんのエタノール不溶性、ジメチルスルホキシド可溶性の性質を利用して精製したでんぷんを得ることで、ゲルろ過クロマトグラフィー実施中のカラム閉塞を防ぎ、分析の精度及び再現性を高めることにある。
【0208】
なお、本[手順a]における恒温処理後の粉砕処理は、組成物を十分に均質化できる方法であればよいが、例えばホモジナイザーNS52(マイクロテックニチオン社製)を用いて、例えば25000rpmで30秒破砕処理することにより行えばよい。
【0209】
また、本[手順a]におけるタンパク質分解酵素処理は、組成物中のタンパク質を十分に酵素分解できる処理であればよいが、粉砕処理を施した組成物に対して、例えば0.5質量%のタンパク質分解酵素(タカラバイオ社製Proteinase K、製品コード9034)を添加して、例えば20℃で16時間反応させることにより行えばよい。
【0210】
また、本[手順a]におけるエタノール不溶性かつジメチルスルホキシド可溶性の成分の抽出は、限定されるものではないが、例えば以下のように行えばよい。即ち、(i)粉砕処理及びタンパク質分解酵素処理を施した組成物に対して、当初使用した組成物を基準として240質量倍量の99.5%エタノール(富士フイルム和光純薬社製)を添加し、混合した後、遠心分離(例えば10000rpmで5分)してエタノール不溶性画分を取得する。次に、(ii)得られたエタノール不溶画分に対して、当初使用した組成物を基準として80質量倍量のジメチルスルホキシド(CAS67-68-5、富士フイルム和光純薬社製)を添加し、攪拌しながら90℃で10分間処理することで溶解させ、溶解液を遠心分離(10000rpm・5分)して上清を回収し、ジメチルスルホキシド可溶性画分を取得する。続いて、(iii)得られたジメチルスルホキシド可溶性画分に対して、当初使用した組成物を基準として240質量倍量の99.5%エタノールを添加し、混合した後、遠心分離(10000rpm、5分)によって沈殿画分を回収する。その後、(iv)前記(iii)を3回繰り返し、最終的に得られた沈殿物を減圧乾燥することで、エタノール不溶性かつジメチルスルホキシド可溶性の成分を精製でんぷんとして取得すればよい。
【0211】
・[条件A]:
前記[条件A]は、1M水酸化ナトリウム水溶液に精製でんぷんを0.10質量%溶解し、37℃で30分静置後、等質量倍量の水と等質量倍量の溶離液(溶離液としては、例えば0.05M NaOH/0.2質量% NaClを用いることができる。)とを加え、5μmフィルターろ過したろ液5mLをゲルろ過クロマトグラフィーに供し、分子量対数が5.0以上9.5未満の範囲における分子量分布を測定するという条件である。
【0212】
斯かる[条件A]の技術的意義は、アルカリ条件下で水に溶解させたでんぷんからフィルターろ過で不溶性の粗い異物を取り除くことで、ゲルろ過クロマトグラフィー実施中のカラム閉塞を防ぎ、分析の精度及び再現性を高めることである。
【0213】
即ち、段階(i)の生地組成物を、そのままの状態で、或いは、特定の40質量倍量の水中で90℃15分間恒温処理後、前記[手順a]により処理して得られた精製でんぷんを、前記[条件A]の下で得られた前記のろ液についてゲルろ過クロマトグラフィーに供し、5.0以上9.5未満の分子量対数範囲内の後述する所定の区間における質量平均分子量分布を測定する。こうして得られた分子量分布曲線を、最低値が0となるようにデータ補正を行った上で分析することにより、質量平均分子量対数と、所定の分子量対数範囲の分子量分布曲線から求められる全曲線下面積全体に対する、所定の分子量対数区間における曲線下面積の割合を取得する。よって、ゲルろ過クロマトグラフィーは、これらの値を得られるように適切に設定することが望ましい。
【0214】
・ゲルろ過クロマトグラフィーの測定条件:
本発明では、ゲルろ過クロマトグラフィーのゲルろ過カラムとしては、測定対象となる5.0以上9.5未満の分子量対数の中でも、特に中間の分子量対数範囲内(6.5以上8.0未満)及びそれ以下(6.5未満)の排除限界分子量(Da)の常用対数値を有するゲルろ過カラムを用いる。しかも、前記範囲内の異なる排除限界分子量を有する複数のゲルろ過カラムを使用し、これらを分析上流側から順に、排除限界分子量の大きいものから小さいものへと直列(タンデム状)に連結する。こうした構成とすることで、中間の区間に相当する分子量対数(6.5以上8.0未満)を有するでんぷんを、より小さな区間に相当する分子量対数(5.0以上6.5未満)を有するでんぷん、及び/又は、より大きな区間に相当する分子量対数(8.0以上9.5未満)を有するでんぷんから分離し、各パラメーターを適切に測定することが可能となる。
【0215】
このようなゲルろ過カラムの組合せの具体例としては、例えば以下の4本のカラムを直列に連結する組合せが挙げられる。
・TOYOPEARL HW-75S(東ソー社製、排除限界分子量(対数):7.7Da、平均細孔径100nm以上、Φ2cm×30cm):2本。
・TOYOPEARL HW-65S(東ソー社製、排除限界分子量(対数):6.6Da、平均細孔径100nm、Φ2cm×30cm);1本。
・TOYOPEARL HW-55S(東ソー社製、排除限界分子量(対数):5.8Da、平均細孔径50nm、Φ2cm×30cm):1本。
【0216】
ゲルろ過クロマトグラフィーの溶離液としては、限定されるものではないが、例えば0.05M NaOH/0.2質量% NaCl等を用いることが出来る。ゲルろ過クロマトグラフィーの条件としては、限定されるものではないが、例えばオーブン温度40℃、流速1mL/分で、単位時間0.5秒毎に分析を行うことができる。ゲルろ過クロマトグラフィーの検出機器としては、限定されるものではないが、例えばRIディテクター(東ソー社製RI-8021)等が挙げられる。ゲルろ過クロマトグラフィーのデータ解析法としては、限定されるものではないが、具体例としては以下が挙げられる。即ち、検出機器から得られた測定値のうち、測定対象の分子量対数範囲(5.0以上9.5未満)内の値について、最低値が0となるようにデータ補正を行った上で、ピークトップ分子量1660000とピークトップ分子量380000のサイズ排除クロマトグラフィー用直鎖型標準プルランマーカー2点(例えば、昭和電工社製のP400(DP2200、MW380000)及びP1600(DP9650、MW1660000)等)のピークトップ溶出時間から較正曲線を用いて、各溶出時間を分子量の常用対数値(分子量対数)に換算する。また、測定対象の分子量対数範囲(5.0以上9.5未満)内の各溶出時間における検出機器の測定値の合計を100とした場合の、各溶出時間(分子量対数)における測定値を百分率で表すことで、測定サンプルの分子量分布(X軸:分子量対数、Y軸:測定範囲全体におけるRIディテクター測定値合計に対する、各分子量対数における測定値の百分率(%))を算出し、分子量分布曲線を作成することができる。
【0217】
・ゲルろ過クロマトグラフィー測定による各パラメーターの数値範囲:
本発明の製造方法では、段階(i)の生地組成物が、当該組成物を40質量倍量の水中で90℃15分間恒温処理後、前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数が5.0以上8.0未満の範囲における分子量分布曲線(以下「MWDC5.0-8.0」という。)において、全曲線下面積に対する分子量対数5.0以上6.5未満の区間における曲線下面積の割合(以下「AUC1」という。)が所定値未満又は以下となる組成物であることが好ましい。具体的に、段階(i)の生地組成物を前記測定に供して得られるAUC1は、例えば10%以上70%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は通常70%以下、更には65%以下、又は65%未満、又は60%以下であることが好ましい。AUC1が前記所定値未満又は以下である生地組成物は、前述の加熱加水処理によってアミロペクチンが主体と考えられる比較的高分子の画分(分子量対数6.5以上8.0未満)を分解する内在性の酵素が失活している蓋然性が高い。その下限は特に制限されないが通常10%以上、又は15%以上である。
【0218】
また、本発明の製造方法では、段階(i)の生地組成物が、前記分子量分布曲線(MWDC5.0-8.0)において、全曲線下面積に対する分子量対数6.5以上8.0未満の区間における曲線下面積の割合(以下「AUC2」という。)が所定値以上となる組成物であることが好ましい。具体的に、段階(i)の生地組成物を前記測定に供して得られるAUC2は、例えば30%以上90%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は通常30%以上、中でも35%以上、更には40%以上、又は45%以上であることが好ましい。AUC2が前記所定値以上である生地組成物は、加熱処理後もでんぷん中のアミロペクチンが適度に残存している蓋然性が高い。その上限は特に制限されないが通常90%以下、又は85%以下である。
【0219】
本発明の製造方法では、段階(i)の生地組成物が、当該組成物を前記[手順a]により処理して得られた成分を前記[条件A]の下で分析して得られる、分子量対数6.5以上9.5未満の範囲における分子量分布曲線(以下「MWDC6.5-9.5」という。)において、全曲線下面積に対する分子量対数が6.5以上8.0未満の区間の曲線下面積の割合(以下「AUC3」という。)が所定値以上となる組成物であることが好ましい。具体的に、段階(i)の生地組成物を前記測定に供して得られるAUC3は、例えば30%以上100%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常30%以上、中でも35%以上、更には40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上であることが好ましい。AUC3が前記所定値以上の生地組成物は乾燥処理を行う場合に結着しにくい品質となり、生産性が高くなるため好ましい。その原理は不明であるが、アミロペクチンが主体と考えられる高分子量のでんぷん画分(分子量対数が6.5以上9.5未満)の中でも、粘着しにくい特性を有する比較的低分子量(分子量対数が6.5以上8.0未満の画分)の画分を多く有するためと考えられる。その上限は特に制限されないが通常100%、又は100%以下、又は98%以下である。
【0220】
また、雑穀類以外の穀類、例えばコメ、コムギ、オオムギなどの穀類には、分子量対数8.0以上9.5未満の画分が多く含まれる傾向があるため、それら雑穀類以外の穀類(例えばコメ、コムギ、及びオオムギ)の合計含有量が所定比率以下であることが好ましい。具体的に、雑穀類以外の穀類(例えばコメ、コムギ、及びオオムギ)の合計含有量は、乾燥基準で0質量%以上50質量%以下(又は40質量%以下、又は30質量%以下、又は20質量%以下、又は10質量%以下、又は実質的に含有しない、又は含有しない)であることが好ましい。或いは、雑穀類以外の穀類(例えばコメ、コムギ、及びオオムギ)に由来する合計でんぷん含有量が乾燥質量換算で0質量%以上50質量%以下(又は40質量%以下、又は30質量%以下、又は20質量%以下、又は10質量%以下、又は実質的に含有しない、又は含有しない)であることが好ましい。或いは、組成物全体の総でんぷん含有量に対する雑穀類以外の穀類(例えばコメ、コムギ、及びオオムギ)に由来する合計でんぷん含有量の比率が乾燥質量換算で0質量%以上50質量%以下(又は40質量%以下、又は30質量%以下、又は20質量%以下、又は10質量%以下、又は実質的に含有しない、又は含有しない)であってもよい。特に指定がない場合、本発明において「実質的に含有しない」とは、その含有量が10質量ppm未満の状態を表す。
【0221】
本発明の組成物は、前記分子量分布曲線MWDC3.5-6.5に対する分子量対数が3.5以上5.0未満の区間の曲線下面積の割合(以下AUC4とする。)が、所定範囲内であることを好ましい特徴とする。具体的に、本発明の組成物の前記AUC4は、例えば10%以上70%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常10%以上であることが好ましい。中でも15%以上、更には20%以上、とりわけ25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上とすることが好ましい。その理由は定かではないが、でんぷんに含まれるアミロース(分子量対数が5.0以上6.5未満の範囲の画分に含有されると考えられる)の一部又は全部が、さらに低分子のデキストリン(分子量対数が3.5以上5.0未満の範囲の画分に含有されると考えられる)に分解した割合が所定の値より大きくなることで、食感が良い組成物となるため好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常70%以下、又は60%以下、又は50%以下、又は45%以下とすることができる。
【0222】
(3)段階(ii):搬送処理
本段階(ii)では、前記段階(i)で調製された生地組成物を、押出機のスクリューのフライト部で搬送する。ここで、スクリュー全長に対するフライト部長さ割合が所定値以上(少なくとも50%以上。その上限は特に制限されないが通常100%未満)に調整されたスクリューを有する前述の本発明の押出機を用いることで、本段階(ii)におけるスクリューのフライト部による搬送時間を比較的長く確保することができる。このことが、その後の段階(iii)において100℃未満(その下限は特に制限されないが通常40℃以上)という比較的低温の条件下で混練を行っても、強固なでんぷんの連続構造が形成され、常温保管中に一定期間(例えば3日間以上)が経過しても組成物内部にひび割れが生じにくい固形状組成物が得られることの一因になっていると推測される。
【0223】
搬送の時間は、搬送時の温度及び圧力、スクリュー全長及びフライト部長さ割合等から適宜定めればよい。特に、組成物に印加される熱量は、主に用いられる装置の特性によって大きく異なることから、処理前後の組成物の物性が所定の範囲に調整されるように加工することが好ましい。但し、一般的に、搬送時間(組成物がフライト部に滞留する時間)は例えば0.1分間以上60分間以内の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は例えば通常0.1分間以上、中でも0.2分間以上、又は0.3分間以上、又は0.4分間以上、又は0.5分間以上、又は0.8分以上、又は1分間以上、特に2分間以上とすることが好ましい。搬送時間の上限は、制限されるものではないが、効率の観点からは、例えば通常60分間以内、中でも30分間以内、又は15分間以内とすることが好ましい。
【0224】
搬送時の温度は、搬送の圧力及び時間、スクリュー全長及びフライト部長さ割合等から適宜定めればよい。特に、組成物に印加される熱量は、主に用いられる装置の特性によって大きく異なることから、処理前後の組成物の物性が所定の範囲に調整されるように加工することが好ましい。但し、一般的に、搬送時平均温度(フライト部のバレル内部における組成物平均温度)は例えば40℃以上100℃未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は、100℃未満であるが、中でも99℃以下、又は98℃以下、又は97℃以下、又は96℃以下、又は95℃以下とすることが好ましい。但し、搬送時の温度があまりに低すぎると、次工程である混練部における組成物内のでんぷん粒構造の破壊が十分に進まない場合があるので、搬送時の平均温度の下限は、通常40℃以上、中でも45℃以上、又は50℃以上、又は55℃以上とすること好ましい。平均温度とは、当該部位のバレル内部における組成物温度の算術平均値を表し、当該部位のバレル内部を有限の均等間隔(例えば1cm間隔)で測定することで算出することができる。さらに当該部位における最高到達温度は例えば40℃以上100℃未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限が通常100℃未満、中でも99℃以下、又は98℃以下、又は97℃以下、又は96℃以下、又は95℃以下であることが好ましく、その下限は、通常40℃以上、中でも45℃以上、又は50℃以上、又は55℃以上、又は60℃以上、又は65℃以上、又は70℃以上、又は75℃以上、又は80℃以上であることが好ましい。
【0225】
(4)段階(iii):混練処理
前記段階(ii)でフライト部から搬送された生地組成物を与圧条件下、一定以上の強さで混練する。このように強混練することで、組成物中の澱粉粒構造が適切に加水膨潤することで破壊されやすくなり、本発明の効果が奏される。特に、一定の加圧条件下で混練を行うことがより好ましい。
【0226】
混練時の具体的な条件としては、以下式Iで求められるSME(specific mechanical energy)値が所定値以上であることで、でんぷん粒が十分に破壊され、マトリクスとしての性質を発現するため好ましい。具体的には、当該SME値が例えば300kJ/kg以上、上限は特に制限されないが、例えば5000kJ/kg以下の範囲となる条件で混練することができる。より具体的に、その下限が通常300kJ/kg以上、中でも320kJ/kg以上、又は330kJ/kg以上、又は340kJ/kg以上又は350kJ/kg以上、又は360kJ/kg以上、又は370kJ/kg以上、又は380kJ/kg以上、又は390kJ/kg以上、又は400kJ/kg以上となる条件で混練することが好ましい。その上限は特に制限されないが、通常5000kJ/kg以下、又は4000kJ/kg以下、又は3000kJ/kg以下、又は2000kJ/kg以下とすることができる。また、押出機のスクリュー回転数を、例えば150rpm超2500rpm以下の範囲とすることができる。より具体的に、通常150rpm超、中でも200rpm超、又は250rpm超とすることが好ましい。その上限は特に制限されないが、例えば通常2500rpm以下、又は1500rpm以下とすることができる。
【0227】
【数2】
N:混練時スクリュー回転数(rpm)
N
max:最大スクリュー回転数(rpm)
τ:混練時トルク/最大トルク(%)
τ
empty:空回し時トルク/最大トルク(%)
Q:総質量流量(kg/時間)
P
max:撹拌機(例えば押出機)最大パワー(kW)
【0228】
本発明の製造方法は、本段階(iii)の混練を100℃未満(その下限は特に制限されないが通常0℃超)という低温で実施することを特徴の一つとする。本発明の製造方法によれば、前述の各要件を満たすことにより、本段階(iii)の混練を100℃未満という低温で実施しても、常温保管中に一定期間(例えば3日間以上)が経過しても組成物内部にひび割れが生じにくく、また、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくい固形状組成物を得ることができる。更に、このように混練を低温で実施できるため、高温高圧耐性を有する特殊な製造設備を用いることなく、汎用の押出機を使用して前記の固形状組成物を簡便に製造することが可能になる。具体的に、混練時の平均温度(混練部のバレル内部における組成物平均温度)は、上限は100℃未満、下限は制限されるものではないが、例えば40℃以上とすることができる。より具体的に、その上限は通常100℃未満であるが、中でも99℃以下、又は98℃以下、又は97℃以下、又は96℃以下、又は95℃以下とすることが好ましい。但し、混練時の温度があまりに低すぎると、混練による組成物内のでんぷん粒構造の破壊が十分に進まない場合があるので、混練時の平均温度の下限は、通常40℃以上、中でも45℃以上、又は50℃以上、又は55℃以上、又は60℃以上、又は65℃以上、又は70℃以上、又は75℃以上、又は80℃以上とすること好ましい。ここで、押出機による前記平均温度のうち特に下限値以上、且つ前述の高SME値における処理が、スクリューにおける混練部長さのうち、例えば3%以上100%以下の範囲で行われるようにすることができる。より具体的に、通常3%以上、中でも5%以上、又は8%以上、又は10%以上、又は15%以上、特に20%以上で行われることが好ましい。特に、豆類、雑穀類及び種実類に由来するでんぷん粒構造はその構造がより強固であるため、前記した比較的高温且つ高SME値における処理はより有用である。平均温度とは、当該部位のバレル内部における組成物温度の算術平均値を表し、当該部位のバレル内部を有限の均等間隔(例えば1cm間隔)で測定することで算出することができる。さらに、当該部位における最高到達温度が、例えば40℃以上100℃未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は通常100℃未満、中でも99℃以下、又は98℃以下、又は97℃以下、又は96℃以下、又は95℃以下であることが好ましく、その下限は、通常40℃以上、中でも45℃以上、又は50℃以上、又は55℃以上であることが好ましい。
【0229】
混練時の圧力条件は制限されず、大気圧下で行ってもよいが、大気圧に対する加圧条件下で行うことが好ましい。混練を通常よりも高い圧力を印加する条件で行うことで、本発明のでんぷん粒構造の破壊及び被染色部位構造の発達が進行しやすくなるためより好ましい。混練時圧力は、押出機の出口圧力を測定することで測定することができる。混練時に大気圧に対して印加すべき圧力は、下限としては例えば1.0MPa以上、上限は制限されるものではないが、例えば50MPa以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常1.0MPa以上、中でも1.3MPa以上、又は1.5MPa以上、又は1.8MPa以上、又は2.0MPa以上、又は2.5MPa以上、又は3.0MPa以上とすることができる。一方、混練時に大気圧に対して印加される圧力の上限は、特に制限はないが、例えば50MPa以下、又は40MPa以下、又は30MPa以下、又は20MPa以下とすることができる。
【0230】
混練の時間は、混練の温度及び圧力、混練容器の大きさ等から適宜定めればよい。特に、組成物に印加される熱量は、主に用いられる装置の特性によって大きく異なることから、処理前後の組成物の物性が所定の範囲に調整されるように加工することが好ましい。但し、一般的に、混練時間は例えば0.1分間以上60分間以内の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常0.1分間以上、中でも0.2分間以上、又は0.3分間以上、又は0.4分間以上、又は0.5分間以上、又は0.8分以上、又は1分間以上、特に2分間以上とすることが好ましい。混練時間の上限は、制限されるものではないが、効率の観点からは、例えば通常60分間以内、中でも30分間以内、又は15分間以内とすることが好ましい。
【0231】
生地組成物をこのような過酷な高圧条件下で混練処理することにより、100℃以上の高温における処理を行うことなくタンパク質、でんぷん、食物繊維等が複合構造を形成することや、常温保管中に時間が経過してもひび割れが生じにくくなると共に、加熱調理後に組成物内部の成分が流出しにくくなること、従来は全く知られていなかった驚くべき知見である。
【0232】
段階(i)において、でんぷん粒構造の数が所定値以下の生地組成物及び/又は食用植物加工品(前述のでんぷん含有粉砕組成物)を用いることで、段階(ii)および(iii)における効果が得られやすくなるため好ましい。その原理は不明であるが、でんぷん粒構造が破壊された生地組成物に、後述する高圧強混練条件下で組成物を加工することで、100℃以上の高温下における特殊な加工を用いることなくでんぷんがマトリクス状に組成物全体に拡散して連続的な構造となると考えられる。具体的には、段階(i)の生地組成物が下記のでんぷん粒構造に関する要件(a)及び/又は(b)を充足することが好ましく、要件(a)と要件(b)を共に充足することがさらに好ましい。
【0233】
また、下記のでんぷん粒構造に関する要件(a)及び/又は(b)を充足する程度にでんぷん粒が破壊された原料(特に前述のでんぷん含有粉砕組成物)を用いてもよく、要件(a)と要件(b)を共に充足するまで高温強混練処理を施された食用植物加工品(特に前述のでんぷん含有粉砕組成物)を原料として用いてもよい。
(a)組成物の粉砕物の6%懸濁液を観察した場合に認められるでんぷん粒構造が、300個/mm2以下となる。
(b)ラピッドビスコアナライザを用いて14質量%の組成物粉砕物水スラリーを50℃から140℃まで昇温速度12.5℃/分で昇温して測定した場合の糊化ピーク温度が120℃未満となる。
【0234】
前記(a)については、段階(i)の生地組成物及び/又は生地組成物に用いられる食用植物加工品(特に前述のでんぷん含有粉砕組成物)について、前記条件下で観察された組成物中のでんぷん粒構造の数が、通常300個/mm2以下、中でも250個/mm2以下、更には200個/mm2以下、とりわけ150個/mm2以下、又は100個/mm2以下、又は50個/mm2以下、又は30個/mm2以下、又は10個/mm2以下、特に0個/mm2となることが好ましい。なお、当該でんぷん粒構造の詳細は、本発明の組成物との関連で先に詳述したとおりである。
【0235】
前記(b)については、段階(i)の生地組成物及び/又は生地組成物に用いられる食用植物加工品(特に前述のでんぷん含有粉砕組成物)について、下記条件下で測定された組成物の糊化ピーク温度が、例えば50℃以上120℃未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は、通常120℃未満、中でも115℃以下、又は110℃以下、又は105℃以下、又は100℃以下、又は95℃以下、又は90℃以下、又は85℃以下、又は80℃以下であることが好ましい。一方、でんぷん粒が破壊された組成物においても、構成成分が加水膨潤して疑似的に糊化ピーク温度を示す場合もあるため、その下限は特に制限されないが、通常50℃以上、又は55℃以上、又は60℃以上とすることができる。
【0236】
上記(b)におけるラピッドビスコアナライザ(RVA)としては、測定対象物を140℃まで昇温可能な装置であればどのような装置であっても用いることができるが、例えば、Perten社製のRVA4800を用いることができる。RVAにて昇温速度12.5℃/分で測定したときの糊化ピーク温度は、具体的には以下の手順で測定する。即ち、乾燥質量3.5gの組成物試料を粉砕(例えば100メッシュパス(目開き150μm)120メッシュオン(目開き125μm)となるまで粉砕)した後、RVA測定用アルミカップに量りとり、蒸留水を加えて全量が28.5gとなるように調製した14質量%の試料水スラリー(単に「組成物粉砕物水スラリー」又は「試料水スラリー」と称する場合がある)を、上記RVA粘度測定に供する。14質量%の組成物粉砕物水スラリーについて、50℃で測定を開始し、測定開始時~測定開始10秒後までの回転数を960rpm、測定開始10秒後~測定終了までの回転数を160rpmとし、50℃で1分間保持後、50℃~140℃までの昇温速度12.5℃/分で昇温工程を開始し、糊化ピーク温度(℃)を測定する。
【0237】
本発明における糊化ピーク温度とは、RVA昇温工程において所定温度範囲内での最高粘度(cP)を示した後に粘度が減少傾向に転じた際の温度(℃)を表し、でんぷん粒の耐熱性を反映した指標である。例えば、測定開始直後の50℃保持段階における粘度が最高であり、その後は粘度低下する組成物については、糊化ピーク温度は50℃となり、50℃~140℃までの昇温段階の任意の温度T℃(50≦T≦140)における粘度が最高であり、T℃以降の昇温段階においては粘度低下する組成物については、糊化ピーク温度はT℃となり、140℃保持段階における粘度が最高粘度である組成物については、糊化ピーク温度は140℃となる。
【0238】
段階(iii)の混練後の組成物中のでんぷん糊化度は、所定値以上であることが、加熱調理時の形状崩壊を抑制する観点から好ましい。具体的に、段階(iii)の混練後の組成物中のでんぷん糊化度は、例えば30質量%以上100質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、通常30質量%以上、中でも40質量%以上、又は50質量%以上、又は60質量%以上、特に70質量%以上であることが好ましい。糊化度の上限は特に制限されないが、あまりに高すぎるとでんぷんが分解し、組成物がべたべたした好ましくない品質となる場合がある。よって、糊化度の上限は100質量%以下、又は99質量%以下、又は95質量%以下、又は90質量%以下であることが好ましい。
【0239】
(5)段階(iv):老化処理
また、前記段階(iii)の混練後の組成物の糊化度を一定以上低下させる段階を有することで、組成物表面付近のでんぷんを局所的に老化させることが可能となり、加熱調理後の組成物同士の結着を防げるため好ましい。本発明ではこの段階を「老化処理」の段階という場合がある。具体的には、段階(iv)において、組成物の乾量基準含水率が25%以上の状態で、雰囲気温度80℃以下かつ雰囲気湿度(RH%)60RH%以上の環境下で0.1時間以上処理することが好ましい。
【0240】
老化処理に際して、組成物を雰囲気湿度(RH%)が一定割合以上の環境下で処理することで、乾量基準含水率25質量%未満となるまでの時間が長くなり、加熱調理後の組成物同士の結着を組成物となるため好ましい。具体的には雰囲気湿度(RH%)が例えば60RH%以上100RH%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常60RH%以上、中でも70RH%以上、又は80RH%の環境下で処理することが好ましい。その上限は特に制限されないが、通常100RH%以下である。老化処理を行うことで品質が向上する理由としては、乾量基準含水率25質量%以上の状態では、通常すみやかに水分が失われ組成物内部と比較して老化しにくい組成物表面付近のでんぷんが局所的に老化するためと考えられる。また、雰囲気湿度(RH%)が一定割合以上の環境下とするために、ダイ部から押し出された後の組成物を高湿度環境に保管したり、組成物中から蒸発する水蒸気を組成物周辺に保持することによって相対湿度を高めたり、霧状の水を噴霧したりするなどの処理(湿潤処理とも称する)を施して、所定の雰囲気湿度を達成する方法を採用することができる。
【0241】
また、老化処理は、湿度を一定にした密閉装置内で処理を行っても、湿度を一定にした雰囲気を供給する装置で処理を行ってもよく、また組成物中から蒸発する水蒸気を組成物周辺に保持することによって相対湿度を保つことで湿潤処理を行う方法を用いてもよく、これらの方法を組み合わせて用いてもよい。
【0242】
また、組成物の老化を促進する観点から、老化処理時の雰囲気温度が所定温度以下であることが好ましい。具体的に、老化処理時の雰囲気温度は、例えば0℃超80℃以下の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は通常80℃以下が好ましく、又は70℃以下、又は60℃以下、又は50℃以下、又は40℃以下、又は30℃以下、又は20℃以下、又は10℃以下で行うことが好ましい。当該温度下限は特に限定されないが、通常0℃超、又は4℃以上で処理を行うことが好ましい。
【0243】
また、組成物の老化を促進する観点から、老化処理は、組成物中の乾量基準含水率が一定割合以上の状態で行うことが好ましい。具体的には、老化処理時組成物の乾量基準含水率が、例えば25質量%以上200質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限が通常25質量%以上、中でも30質量%以上の状態で老化処理を行うことが好ましい。その上限は特に制限されないが、通常200質量%以下、又は175質量%以下、又は150質量%以下、又は125質量%以下、又は100質量%以下である。
【0244】
また、後述する段階(v)の乾燥処理を行う場合、乾燥処理前に老化処理を行ってもよく、乾燥処理後に老化処理を行ってもよいが、乾燥処理前に老化処理を行う方が本発明の効果がより顕著に奏されるため好ましい。
【0245】
また、組成物の乾量基準含水率が25質量%以上の状態における老化処理を、パラメーターA×T(RH%・hr)が所定下限値以上となるような条件下で行うことが好ましい。ここでAは、雰囲気の平均相対湿度(RH%)を示し、Tは、湿潤処理時間(hour、「hr」と省略して表記する場合もある)を示す。但し、A≧60RH%である。例えば、雰囲気の平均相対湿度が95RH%(A)、湿潤処理時間が1時間(T)で湿潤処理を行った場合、パラメーターA×T=95(RH%・hr)となる。斯かるパラメーターA×T(RH%・hr)は、例えば6以上1000以下の範囲とすることができる。より具体的に、通常6以上、中でも8以上、又は10以上、又は12以上、又は14以上、又は16以上、又は18以上、又は24以上、又は30以上、又は36以上、又は42以上、又は48以上、又は54以上、特に60以上であることが更に好ましい。その上限は特に制限されないが、通常1000以下である。
【0246】
また、当該処理時における組成物温度は、例えば0℃超100℃未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は100℃未満、又は90℃以下、又は80℃以下、又は70℃以下、又は60℃以下、又は50℃以下、又は40℃以下、又は30℃以下、又は20℃以下、又は10℃以下で行うことが好ましい。当該温度の下限は特に限定されないが、通常0℃超、又は4℃以上で処理を行うことができる。
【0247】
本段階(iv)において、混練部以降の糊化度低下率(質量%)が一定以上であることで、加熱調理後の結着性が改善するため好ましい。具体的に混練部以降の組成物の糊化度の低下率は、段階(iii)の混練後の組成物の糊化度に対して、例えば通常6質量%以上 90質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、段階(iii)の混練直後の組成物の糊化度に対する混練部以降の組成物の糊化度の低下率が通常6質量%以上となる(すなわち、糊化度が6質量%以上低下する)まで老化処理を実施することで、加熱調理後の結着性が改善するため好ましい。当該低下率は、中でも7質量%以上、又は8質量%以上、又は9質量%以上、中でも10質量%以上、又は15質量%以上低下、特に20質量%以上低下させることが好ましい。一方、本段階(iv)における組成物の糊化度の低下率の上限は特に制限されないが、通常90質量%以下、又は80質量%以下、又は70質量%以下である。
【0248】
段階(iv)の糊化度低下後の組成物中のでんぷん糊化度は、所定値以下であることで、加熱調理後の結着性が改善するため好ましい。具体的に、段階(iv)の糊化度低下後の組成物中のでんぷん糊化度は、下限は制限されないが、例えば5質量%以上、一方上限は、例えば99質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、通常99質量%以下、中でも98質量%以下、又は95質量%以下、又は90質量%以下、又は85質量%以下、又は80質量%以下、又は75質量%以下、又は70質量%以下であることが好ましい。下限は特に規定されないが、通常5質量%以上、中でも10質量%以上、又は15質量%以上、又は20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、又は40質量%以上、又は45質量%以上、特に50質量%以上であることが好ましい。
【0249】
斯かる段階(iv)の老化を達成する手段は特に限定されないが、例えば、押出機による混練処理の完了後に後処理として、後述する保水処理を行うことで、組成物表面付近のでんぷんを老化させ、段階(iv)の老化を達成することができる。具体的には、前記段階(iii)以降で、組成物温度が90℃未満(当該温度下限は特に制限されないが、通常0℃超、又は4℃超である。)に低下してから、乾量基準含水率25質量%以上の状態で例えば通常0.1時間以上20時間以下の範囲とすることができる。より具体的に、その時間は通常0.1時間以上、中でも0.2時間以上、又は0.3時間以上、又は0.4時間以上、又は0.5時間以上、又は0.6時間以上、又は0.7時間以上、又は0.8時間以上、又は0.9時間以上、特に1.0時間以上に調節することができる。斯かる時間の上限は特に限定されないが、例えば通常20時間以下、又は15時間以下、又は10時間以下とすることができる。
【0250】
斯かる段階(iv)における組成物の温度は、限定されるものではないが、例えば0℃超90℃未満の範囲とすることができる。より具体的に、通常90℃未満、中でも80℃以下、又は70℃以下、特に60℃以下とすることが好ましい。下限は特に限定されないが0℃超、又は4℃超である。また、段階(iv)における圧力も特に限定されないが、例えば常圧下で行うことができる。
【0251】
(6)組成物の乾量基準含水率の調整について
なお、前記の老化を促進するための手段の一例として、前記(i)~(iii)の何れかの段階において水分を添加し、加工前の生地組成物の乾量基準含水率を所定割合以上に調整する方法を用いることができる。より具体的には、(i)又は(ii)の段階で加水を行う方法が好ましく、より好ましくは段階(i)で一定以上の乾量基準含水率となった生地組成物に対して、段階(i)以降、より具体的には段階(ii)及び/又は段階(iii)でさらに加水する方法が好ましく、特に段階(i)で一定以上の乾量基準含水率となった生地組成物に対して段階(ii)でさらに加水する方法が好ましい。また加水は水の状態でもスチームの状態でも行うことができるが、水の状態で添加することが好ましい。具体的には、組成物の乾量基準含水率を、例えば25質量%超200質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、組成物の乾量基準含水率の下限は、通常25質量%超、中でも30質量%超、又は35質量%超、又は40質量%超、又は45質量%超、又は50質量%超、又は55質量%超、又は60質量%超、又は65質量%超、又は70質量%超、又は75質量%超、特に80質量%超とすることが好ましい。一方、組成物の乾量基準含水率の上限は、特に制限されないが、例えば通常200質量%以下、又は175質量%以下、又は150質量%以下とすることができる。
【0252】
一般に、単にでんぷんの糊化を行う目的のみであれば、生地組成物における乾量基準含水率は、40質量%未満程度で十分である。その後の乾燥工程を考慮すると、それ以上の加水を行うことは、動機が存在しないどころか、むしろ阻害的な要因が存在すると言える。よって本段階(iv)のように、いったん糊化させたでんぷんを老化させるという思想を有さなければ、生地組成物における乾量基準含水率を高めるという着想は困難である。更に、単に生地組成物における乾量基準含水率を高めた場合であっても、その後に組成物中の水分を乾燥させるという思想とは逆の、本段階(iv)のような水分を一定時間保持するという思想が無ければ、前述したような、特に段階(iii)以降で、所定雰囲気温度以下のかつ所定雰囲気湿度割合以上の環境下で一定時間以上処理することで、組成物の乾量基準含水率が25%未満となるまでに要する時間を所定時間以上確保して老化を促進するという構成を採用することはできないと考えられる。
【0253】
このように組成物の乾量基準含水率を調整するための具体的な手段としては、制限されるものではないが、前記段階(i)の生地組成物の調製時に加水を行う方法が好ましい。加水を行う場合、水は液体の状態で添加してもよく、気体の状態で添加してもよいが、液体の状態で添加することが好ましい。更に、ヒーターを用いて組成物温度を加温する押出機を用いる場合は、その製造中に配合する水分の所定割合以上を、押出機内における組成物温度が初発温度から20℃以上加温される前に他原料と混合することで、でんぷんが過加熱によってその特性が変化することを抑制できる場合があるため好ましい。具体的に、押出機内における組成物温度が初発温度から20℃以上加温される前の段階で、製造中に配合する水分(特に段階(i)~段階(iii)において配合される水分合計量)のうち、予め混合する水分の割合を例えば50%以上100%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限として通常50%以上、中でも60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、特に100%を他原料と予め混合することが好ましい。水分を他原料と混合する場合、原料を押出機に投入する前に、予め前記割合の水分を混合しておくことが好ましい。
【0254】
また、予め一部又は全部の加水を行った場合における生地組成物の乾量基準含水率を、例えば5質量%超200質量%以下の範囲とすることができる。より具体的に、通常5質量%超、又は10質量%超、又は15質量%超、又は20質量%超、又は25質量%超、又は30質量%超、又は35質量%超、又は40質量%超、又は45質量%超、又は50質量%超、又は55質量%超、又は60質量%超、又は65質量%超、又は70質量%超、又は75質量%超、特に80質量%超とすることが好ましい。組成物の乾量基準含水率の上限は、特に制限されないが、例えば通常200質量%以下、又は175質量%以下、又は150質量%以下、又は100質量%以下とすることができる。
【0255】
また、前記段階(iii)以降の段階で、押出機による押出後の組成物に対して加水を行い、組成物が乾量基準含水率25質量%未満に到達するまでの時間を所定時間より長くする方法も用いることができる。加水は、水の状態でもスチームの状態でも行うことができるが、水の状態で添加することが好ましい。また、組成物を直接水中に投入することで、組成物の吸水によって加水する方法でも行うことができる。さらに、組成物の乾量基準含水率がいったん25質量%未満となった場合であっても、乾燥組成物に再加水して乾量基準含水率を高めることで、乾量基準含水率25%以上の保持時間合計が所定の時間以上となるように調整することで保水処理を行うことができる。乾燥組成物に再加水する場合には、その後の保持時間の過半の温度が60℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがさらに好ましく、40℃以下であることがより好ましい。その下限は特に制限されないが通常0℃超である。
【0256】
(7)段階(v):乾燥処理
さらに、段階(iii)又は(iv)の段階の後に、組成物の乾量基準含水率を一定以下とする段階(v)を更に含むことで、組成物中の品質変化が抑制され、品質が保持された組成物となるため好ましい。本発明ではこの段階を「乾燥処理」の段階という場合がある。具体的には、本段階(v)において、乾燥処理の前後で乾量基準含水率が5%以上低下する(すなわち、「(乾燥処理前の組成物における当該比率-乾燥処理後組成物における当該比率)/乾燥処理前の組成物における当該比率」で規定される低下割合が一定以上の数値となる)ことが好ましい。例えば当該低下割合を5%以上100%以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常5%以上、又は10%以上、又は15%以上、又は20%以上、又は25%以上、又は30%以上、又は35%以上、又は40%以上、又は45%以上、特に50%以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、例えば通常100%以下、又は95%以下とすることができる。特に、段階(iv)の老化処理段階の後に段階(v)の乾燥処理段階を更に含むことで、段階(iv)で形成された表面付近の老化でんぷんが乾燥処理時の組成物同士の結着が抑制し、生産性が高い組成物となるため好ましい。
【0257】
また、乾燥処理後の最終的な組成物中の乾量基準含水率は、例えば0.5質量%以上60質量%未満の範囲とすることができる。より具体的に、その下限を60質量%未満、又は55質量%未満、中でも50質量%未満、又は45質量%未満、又は40質量%未満、又は35質量%未満、又は30質量%未満、又は25質量%未満、又は20質量%未満、又は15質量%未満とすることが好ましい。一方、本発明の組成物中の乾量基準含水率の下限は、制限されるものではないが、工業上の生産効率という観点から、例えば0.5質量%以上、或いは1質量%以上、或いは2質量%以上とすることができる。なお、本発明の組成物中の乾量基準含水率は、組成物の各種成分に由来するものであってもよいが、本発明における加工に際して更に添加された水に由来するものであってもよい。
【0258】
斯かる段階(v)における乾燥処理中の組成物の温度は、限定されるものではないが、常圧下で処理を行う場合は例えば50℃超100℃未満の範囲とすることができる。より具体的に、通常50℃超、中でも60℃超、又は70℃超、特に80℃超とすることが好ましい。上限は特に限定されないが100℃未満、又は98℃未満である。
【0259】
また、段階(v)における圧力も特に限定されないが、例えば常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。減圧下(例えば0.1MPa未満)で処理を行う場合、組成物の温度は例えば0℃超80℃以下の範囲とすることができる。より具体的に、80℃以下、中でも70℃以下、又は60℃以下、特に50℃以下とすることが好ましい。下限は特に限定されないが、通常0℃超、又は4℃超である。
【0260】
乾燥方法としては、一般的に食品の乾燥に用いられる任意の方法を用いることができる。例としては、フリーズドライ、エアドライ(例えば通風乾燥(熱風乾燥)、流動層乾燥法、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥、天日乾燥、陰干し等)、加圧乾燥、減圧乾燥、マイクロウェーブドライ、油熱乾燥等が挙げられる。中でも、食材が本来有する色調や風味の変化の程度が小さく、食品以外の香り(こげ臭等)を制御できるという点から、マイクロウェーブドライが好ましく、減圧下におけるマイクロウェーブドライがさらに好ましい。また、大量の組成物を処理する観点からはエアドライ(例えば熱風乾燥、流動層乾燥法、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥、天日乾燥、陰干し等)が好ましく、特に通風乾燥(特に雰囲気温度が一定超の熱風乾燥)が好ましい。
【0261】
また、本段階(v)において、組成物を雰囲気温度(特に雰囲気平均温度)が一定超の環境下において一定時間以上処理することで、乾量基準含水率が所定割合以上低下するまでの時間が短くなるため好ましい。具体的には雰囲気温度(特に段階(v)における雰囲気平均温度)は例えば50℃超100℃以下の範囲とすることができる。より具体的に、その下限は通常50℃超、中でも60℃超、更には70℃超、又は80℃超の環境下で処理することが好ましい。その上限は特に制限されないが、通常100℃以下である。雰囲気温度が一定超の環境下とするために、ダイ部から押し出された後の組成物を高温環境に保管したり、高温で押し出された組成物温度を保持することによって雰囲気温度を高めたり、高温の空気によって通風乾燥したりするなどの処理を施して、所定の雰囲気温度を達成する方法を採用することができる。なお雰囲気平均温度は、乾燥処理中における積算温度を乾燥時間で除することで算出することができ、例えば1分ごとの雰囲気温度の合計値を乾燥処理分数で除することで算出することができる。
【0262】
また、当該段階(v)の所定雰囲気温度における処理時間は一定時間以上であればよいが、例えば0.1時間以上20時間以下の範囲とすることができる。より具体的に、通常0.1時間以上、中でも0.2時間以上、又は0.3時間以上、又は0.4時間以上、又は0.5時間以上、又は0.6時間以上、又は0.7時間以上、又は0.8時間以上、又は0.9時間以上、特に1.0時間以上に調節することができる。斯かる時間の上限は特に限定されないが、例えば通常20時間以下、又は15時間以下とすることができる。
【0263】
また、当該段階(v)の所定雰囲気温度における処理に際して、雰囲気湿度(RH%)が一定未満であることで、乾量基準含水率が所定割合以上低下するまでの時間が短くなるため好ましい。具体的には雰囲気湿度(特に段階(v)における雰囲気平均湿度)は例えば0RH%以上60RH%未満の範囲とすることができる。より具体的に、その上限は通常60RH%未満、又は50RH%未満、又は40RH%未満、又は30RH%未満の環境下で処理することが好ましい。その下限は特に制限されないが、通常0RH%以上である。なお雰囲気平均湿度は、乾燥処理中における積算湿度を乾燥時間で除することで算出することができ、例えば1分間ごとの雰囲気湿度の合計値を乾燥処理分数で除することで算出することができる。また、段階(iv)に続いて段階(v)を行う場合、段階(iv)における雰囲気湿度よりも低い湿度とすることが好ましい。例えば段階(iv)における雰囲気湿度が60RH%以上である場合、段階(v)における雰囲気湿度を60RH%未満とすることで、雰囲気湿度によって段階(iv)と段階(v)を判断することができる。
【0264】
(8)押出機
本発明の製造方法では、以上の段階のうち少なくとも段階(ii)及び(iii)、更に任意により段階(i)及び/又は段階(iv)の一部又は全部を、前述した本発明の特定の押出機(より好ましくは一軸押出機)を用いて行うことが好ましい。
【0265】
即ち、本発明の押出機に対して、フィーダを介して本発明の組成物の原料を供給し、混合することにより、食物繊維(又は不溶性食物繊維)の含有量、でんぷんの含有量、タンパク質の含有量、及び乾量基準含水率がそれぞれ前記所定の範囲を充足する組成物が調製される(段階(i))。但し、斯かる原料の混合による組成物の調製を、本発明の押出機の外部で行った上で、フィーダを介して調製された組成物を本発明の押出機に供給し、段階(ii)及び(iii)のみを本発明の製造方法で実施してもよい。次いで、前記の組成物を、スクリューを回転させることによりフライト部から混練部へと搬送し(段階(ii))、次いで混練部で混練してから(段階(iii))、ダイ部から成形しながら排出する。
【0266】
(9)その他の条件設定について
本発明の製造方法では、押出機の総質量流量を一定以上に保ちつつ、押出機のダイ部の出口温度設定を低下させることで、組成物の糊化が促進されるためより好ましい。それらの条件は、押出機の出口圧力が一定以上となるように適宜調整すればよいが、具体例としては以下の通りである。
【0267】
総質量流量(フロー量とも称する場合がある)は、限定されるものではないが、例えば0.5kg/時間以上100kg/時間以下の範囲とすることができる。より具体的に、通常0.5kg/時間以上、中でも0.7kg/時間以上、又は1.0kg/時間以上となるように、維持することが好ましい。総質量流量の上限は特に制限されないが、通常100kg/時間以下、又は50kg/時間以下である。
【0268】
押出機の出口温度設定は、限定されるものではないが、例えば0℃以上100℃未満の範囲とすることができる。より具体的に、通常100℃未満、又は95℃未満、又は90℃未満、又は85℃未満、80℃未満、中でも75℃未満、又は70℃未満、又は65℃未満、又は60℃未満、又は55℃未満、又は50℃未満、又は45℃未満、特に40℃未満であることが好ましい。下限は特に制限されないが、通常0℃以上、又は4℃以上とすることができる。
【0269】
なお、押出機は従来、パフを始めとする膨化物を製造するために用いられることが多かったが、それらの製造条件は、通常はダイ部から排出される組成物の押出時温度が、組成物の膨化温度を超える条件として設定されるため、本発明のような100℃未満で混練処理される膨化を伴わない固形状組成物の製造方法に適用することはできなかった。また、パフをはじめとする膨化物の製造時には、減圧時に速やかに膨化をさせるためにその総質量流量中に占める水分の割合を低くすることが当業者の技術常識であり、本発明のような膨化を伴わない固形状組成物のように総質量流量中に占める水分含量を高める動機は存在しなかった。
【0270】
(10)後処理
以上の段階を経ることにより、本発明の組成物を得ることができるが、前述した乾燥処理や老化処理以外にも更に後処理を加えてもよい。後処理としては、例えば成型処理等が挙げられる。
【0271】
成型処理としては、例えばでんぷん含有固形状組成物を所望の形態(例えば前述のパスタ、中華麺、うどん、稲庭うどん、きしめん、ほうとう、すいとん、ひやむぎ、素麺、蕎麦、蕎麦がき、ビーフン、フォー、冷麺の麺、春雨、オートミール、クスクス、きりたんぽ、トック、ぎょうざの皮等)に成型する処理等が挙げられる。斯かる成型処理は、当該技術分野において通常知られている方法を適宜採用することができる。例えば、パスタや中華麺等の麺のような細長状組成物とする場合、前述の押出機等の装置を用いて、組成物を細長形状に押し出し成形したり、平板上の組成物を切断処理すればよい。一方、平板状の組成物とする場合、組成物を平板形状に成形すればよい。更には、組成物をプレス成型したり、平板形状に成形した組成物を切断又は型抜きしたりすることで、細長状、粒状、薄片状等の任意の形状の組成物を得ることもできる。また、混練後に、前述される流路断面の平均凹凸度が所定値以上の流路を有するダイ部を用いて押出成形することで、断面凹凸度が所定値以上の組成物を成形してもよい。具体的には組成物断面の形状が円型、四角型、三角型、星型、楕円型、三日月型、半月型等、十字型、卍型やそれらの組み合わせ(例えば十字型の交差点に円の中心点を配置したギリシャ十字型と円型を組み合わせたケルト十字型の形状であって、円の半径が十字型の中心点から先端までの距離の4分3以下の大きさを有する形状)が挙げられる。例えば、組成物断面の形状が円型(円状)の組成物は、押出後は円柱状の形状を有する組成物となり、組成物断面の形状が四角型(特に正方形)の組成物は、押出後は四角柱状の形状を有する組成物となり、組成物断面の形状がそれ以外の組成物は、押出後は当該形状を底面とした柱状組成物となる。
【0272】
[IV:加熱調理用でんぷん含有固形状組成物の粉砕物及びその凝集体]
なお、本発明の組成物は、これを粉砕して用いてもよい。即ち、前述の本発明の製造方法において、前記段階(iii)の混練後又は前記段階(iv)の老化後又は前記段階(v)の乾燥後に、更に(vi)前記組成物を粉砕し、粉砕組成物とする段階を設けてもよい。こうして得られる本発明の組成物の粉砕物(これを適宜「本発明の粉砕組成物」という。)も、本発明の対象となる。本発明の組成物を粉砕して本発明の粉砕組成物とする場合、その粉砕条件は特に制限されず任意であるが、例えば粒子径d50及び/又はd90が50μm以上1000μm以下程度となるように粉砕することが好ましい。特に段階(v)の乾燥後に粉砕することが好ましい。
【0273】
また、こうして得られた粉砕組成物の一部を用いて、適宜加水などを行うことで、段階(i)の生地組成物を再度調製することもできる。
【0274】
また、本発明の粉砕組成物を原料として、前記の本発明の製造方法による高温強混練処理を再度実施することで、凝集体を形成してもよい。即ち、前述の本発明の製造方法において、前記段階(vi)の粉砕後、更に(vii)前記粉砕組成物を凝集させて、粉砕組成物凝集体とする段階を設けてもよい。こうして得られる本発明の粉砕組成物の凝集体(これを適宜「本発明の粉砕組成物凝集体」という。)は、本発明の組成物として好適に利用できる。斯かる本発明の粉砕組成物凝集体も、本発明の対象となる。本発明の組成物を粉砕して本発明の粉砕組成物とする場合、その製造条件については、前述したとおりである。
【実施例0275】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0276】
[でんぷん含有固形状組成物の調製方法]
各実施例及び比較例のでんぷん含有固形状組成物の試料は、適宜前処理を施した食用植物原料を用い、所定の組成となるように調製した生地組成物を、所定の一軸押出機を用い、所定の条件下で稼動させて混練することにより製造した。タンパク質及びでんぷんとしては、それぞれの食材に含有された状態のものを用い、比重の違いなどを利用して分離されたでんぷん及びタンパク質高含有画分含量を用いて含量を調整した。なお、乾燥きび粉末としてはでんぷん含有量が約60質量%のものを用い、乾燥オーツ麦粉末としてはでんぷん含有量が約60質量%のものを用い、乾燥キノア粉末としてはでんぷん含有量が約55質量%のものを用い、乾燥黄色エンドウ豆粉末としてはでんぷん含有量が約50質量%のものを用い、米粉末としてはでんぷん含有量が100質量%のものを用いた。また、実施例29、実施例30、及び実施例31における組成物全体の総でんぷん含有量に対する豆類由来でんぷん含有量の比率は、それぞれ60質量%、33質量%、及び14質量%であった。
【0277】
各実施例及び比較例の組成物原料の種別・組成・物性を、後述の表1の各欄に記す。各実施例及び比較例の加工対象となる生地組成物の組成を、後述の表2の各欄に記す。各実施例及び比較例の組成物の加工に使用した押出機の構成及び運転条件、並びに斯かる押出機を用いた処理内容を、後述の表3の各欄に記す。また、各実施例及び比較例の組成物の加工過程(糊化及び老化の各工程)における物性及び特性、並びに得られたでんぷん含有固形状組成物の官能評価結果を、後述の表4の各欄に記す。なお、老化処理の時間および組成物の乾量基準含水率が25質量%以上の状態におけるパラメーターA×T(RH%・hr、ここでAは、雰囲気の平均相対湿度(RH%)を示し、Tは、湿潤処理時間(hr)を示す)については、組成物の乾量基準含水率25質量%以上の状態において、雰囲気温度80℃以下かつ雰囲気湿度(RH%)60RH%以上の処理時間(hr)を記載し、乾燥処理については、表3に記載された条件で行った。乾燥処理時において組成物同士が結着しやすい試験区については、表3のコメント欄にその旨を記載した。
【0278】
各実施例及び比較例の原料及びそれを用いた生地組成物、並びにそれを加工して得られた加熱調理用でんぷん含有固形状組成物について、物性分析及び官能評価の条件・手順を以下に示す。なお、表1~表4に記載の各評価項目のうち、以下に条件・手順の記載のない項目については、前記[発明を実施するための形態]欄で説明した条件・手順を用いて分析・評価を行った。
【0279】
[押出機による加工]
各実施例及び比較例の生地組成物の加工は、なお、実施例16については、
図3および
図4に示すタンデム型スクリューを有する押出機を用いて、原料を押出機前半部(
図3の204Aおよび204B、特に204B)で加熱混練処理後100℃未満まで冷却し、押出機後半部(
図4の306)で表3に示す運転条件で稼動させることにより行った。それ以外の実施例については、「原料」の加工は二軸エクストルーダ(例えば
図3および
図4に示すタンデム型スクリューを有する押出機の前半部、具体的には
図3の204Aおよび204Bに相当する機能を有する二軸エクストルーダ)を用いて表1に示す運転条件で加工し、表3に示す構成の一軸押出機(
図1および
図2に示す一軸押出機)を用い、表3に示す運転条件で稼動させることにより行った。
【0280】
なお、バレルとしては、表3の「強制排気位置」列において、「供給部で排気」と示す試験区では、ベント部を有さないバレルを用い、「排気あり(前半部の混練部直後で排気)」と示す試験区(エクストルーダ前半部で加熱処理と粉砕処理を実施し、処理後100℃未満まで冷却した組成物を豆類粉砕物又は雑穀類粉砕物として使用)では、前半部の混練部直後にベント部を有し、後半部にはベント部を有さないバレルを用い、「フライト部で排気」と示す試験区では、バレル内にスクリューを配置した稼働時の状態において、ベント部がフライト部に対応する位置であって、フライト部の起点から5%以内の位置に配置されたバレルを用いた。
【0281】
また、スクリューとしては、何れの実施例及び比較例においても、フライト部全長に対するフォワードフライト構造の比率が100%であり、混練部および加熱部が溝穴付きスクリュー構造(フォワードフライト構造に対して斜め方向に連通された通路状構造を有し、当該通路状構造の回転軸に対する角度が螺旋角の50%)を有するスクリューを用いた。
【0282】
[単位体積当たり比表面積]
各実施例及び比較例の食用植物(豆類又は雑穀類)原料の超音波処理後の単位体積当たり比表面積(表1の「超音波処理後の単位体積当り比表面積」に相当)は、以下の手順で測定した。測定時には、溶媒として組成物の測定時の試料の構造に影響を与え難いエタノールを用いた。そして、測定する際には、試料を前もって溶媒で希釈し懸濁された分散液を用い、試料が溶媒に均質に懸濁された状態で測定を行った。具体的には、試料1gをエタノール50gに浸漬し、5分程度静置し、その後、スパーテルでよく攪拌、懸濁させ、目開き2.36mm、線径(Wire Dia.)1.0mmの8メッシュ(U.S.A. Standard Testing Sieves ASTM Specifications E 11-04にて、同文献中のNominal Dimensions, Permissible Variation for Wire Cloth of Standard Testing Sieves (U.S.A.) Standard Seriesにおける「Alternative」に規定された「No.8」と対応する篩)を通過した溶液(2質量%エタノール分散液)を用いて測定した。より具体的には、懸濁液(20℃)100gを、篩上に均等に散布し、組成物サイズが変わらない程度の負荷で振動させながら篩上の画分質量が一定となるまで処理した場合に篩を通過した溶液を2質量%エタノール分散液として測定に供した。測定に使用されるレーザー回折式粒度分布測定装置としては、レーザー回折散乱法によって少なくとも0.02μmから2000μmの測定範囲を有するレーザー回折式粒度分布測定装置を用いた。例えばマイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300 EX2システムを使用し、測定アプリケーションソフトウェアとしては、例えばDMSII(Data Management System version 2、マイクロトラック・ベル株式会社)を使用した。前記の測定装置及びソフトウェアを使用する場合、測定に際しては、同ソフトウェアの洗浄ボタンを押下して洗浄を実施したのち、同ソフトウェアのSetzeroボタンを押下してゼロ合わせを実施し、サンプルローディングで試料の濃度が適正範囲内に入るまで試料を直接投入した。擾乱前の試料、即ち超音波処理を行なわない試料は、試料投入後のサンプルローディング2回以内にその濃度を適正範囲内に調整した後、直ちに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値とした。一方、擾乱後の試料、即ち超音波処理を行った試料を測定する場合、試料投入後に前記の測定装置を用いて超音波処理を行い、続いて測定を行う。その場合、超音波処理を行っていない試料を投入し、サンプルローディングにて濃度を適正範囲内に調整した後、同ソフトの超音波処理ボタンを押下して超音波処理(周波数40kHzの超音波を出力40Wにて3分間の処理)を行う。その後、3回の脱泡処理を行った上で、再度サンプルローディング処理を行い、濃度が依然として適正範囲であることを確認した後、速やかに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値とした。測定時のパラメータとしては、例えば分布表示:体積、粒子屈折率:1.60、溶媒屈折率:1.36、測定上限(μm)=2000.00μm、測定下限(μm)=0.021μmとした。
【0283】
[酵素(アミラーゼ・プロテアーゼ)処理・超音波処理後粒子径d
90
測定]
各実施例及び比較例の原料、及び、それを前処理(加熱混練処理等)して得られた生地組成物について、酵素(アミラーゼ・プロテアーゼ)処理及び超音波処理後の粒子径d90(それぞれ、表1の「食用植物原料」欄の「擾乱後粒子径d90」列、及び、表2の「食物繊維」欄の「擾乱後粒子径d90」列に相当)を、以下の手順で測定した。各試料300mgを、5mLの水と共にプラスチックチューブに入れ、20℃で1時間程度膨潤させた後、小型ヒスコトロンで粥状の物性となるまで処理した(10000rpm、15秒程度)。その後、処理後試料2.5mLを分取し、プロテアーゼ(タカラバイオ社製、proteinase K)10μL、α-アミラーゼ(Sigma社製、α-Amylase from Bacillus subtilis)0.5mgを加え、20℃にて3日間反応させることにより、アミラーゼ及びプロテアーゼ処理を行った。以上の手順でアミラーゼ及びプロテアーゼ処理を施した各試料に対して、レーザー回折式粒度分布測定装置を用い、以下の条件に従って超音波処理を行ってから粒子径分布を測定した。測定時の溶媒としてはエタノールを用いレーザー回折式粒度分布測定装置によって、前述の単位体積当たり比表面積と同様の方法で測定して得られた粒子径分布から、擾乱後粒子径d90等を算出した。
【0284】
[でんぷん、タンパク質、食物繊維、乾量基準含水率、糊化度、AUC1~4]
表2に示す各試料中の成分含有量のうち、「でんぷん」については、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、AOAC996.11の方法に従い、80%エタノール抽出処理により、測定値に影響する可溶性炭水化物(ぶどう糖、麦芽糖、マルトデキストリン等)を除去した方法で測定し、「タンパク質」については、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、改良デュマ法によって定量した窒素量に、「窒素-タンパク質換算係数」を乗じて算出する方法で測定し、「食物繊維」については、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、プロスキー変法で「食物繊維総量」を測定し、「乾量基準含水率」については、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、減圧加熱乾燥法で90℃に加温することで測定し、表2および表4における「糊化度」については、関税中央分析所報を一部改変したグルコアミラーゼ第2法(Japan Food Research Laboratories社メソッドに従う:https://web.archive.org/web/20200611054551/https://www.jfrl.or.jp/storage/file/221.pdf又はhttps://www.jfrl.or.jp/storage/file/221.pdf)を用いて測定し、AUC1~4については前述の発明の詳細な説明において開示した好ましい態様(「ゲルろ過クロマトグラフィーの測定条件」)で測定した。
【0285】
[でんぷん粒構造の数]
各実施例及び比較例の生地組成物におけるでんぷん粒構造の数(表2の「でんぷん粒個数」列に相当)は、以下の手順で測定した。組成物をミルで粉砕した目開き150μmパスの組成物粉末3mgを、水50μgに懸濁した組成物粉末6質量%水懸濁液を作製した。その後、スライドグラスに懸濁液を滴下後、カバーガラスをかけ軽く押しつぶしてプレパラートを作製した。位相差顕微鏡(ECLIPSE80i、Nikon社製)にて、拡大倍率200倍でプレパラート中の代表的部位を偏光観察し、視野中のでんぷん粒構造の数を把握した。
【0286】
[官能評価]
・官能評価手順の概要:
各実施例及び比較例で調製されたでんぷん含有固形状組成物の官能評価(表4の「加工後の組成物の官能評価」欄に相当)は、以下の手順で行った。各組成物試料について、常温(20℃)で72時間保管後の加熱調理前の各組成物をひび割れの官能評価(外観のみ)に供し、各1質量部をそれぞれ9質量部の水中で90℃、5分間加熱調理した加熱料理後のゆで汁と組成物とをゆで汁への成分流出および総合評価の官能評価に供した。
【0287】
具体的には、常温で72時間保管後の加熱調理前の各組成物における組成物内部に生じたひび割れについて組成物外観を目視で観察し、「常温保管時のひび割れ」として評価を行った。また、加熱調理後のゆで汁についてその食味を評価し、「ゆで汁への成分流出」として評価を行った。さらに加熱調理後の各組成物についてゆで汁と共に喫食した際の食味について評価し、「総合評価」として評価を行った。官能評価は、訓練された官能検査員10名によって行った。
【0288】
・官能評価員:
なお、各官能試験を行う官能検査員としては、予め下記A)~C)の識別訓練を実施した上で、特に成績が優秀で、商品開発経験があり、食品の味や食感といった品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価を行うことが可能な検査員を選抜した。
【0289】
A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
C)メーカーA社醤油2つにメーカーB社醤油1つの計3つのサンプルからB社醤油を正確に識別する3点識別試験。
【0290】
また、前記の何れの評価項目でも、事前に検査員全員で標準サンプルの評価を行い、評価基準の各スコアについて標準化を行った上で、10名によって客観性のある官能検査を行った。各評価項目の評価は、各項目の5段階の評点の中から、各検査員が自らの評価と最も近い数字をどれか一つ選択する方式で評価した。評価結果の集計は、10名のスコアの算術平均値から算出し、小数第1位を四捨五入して最終評点とした。
【0291】
・「常温保管時のひび割れ」の評価基準:
各組成物について、常温保管された加熱調理前の組成物の外観(組成物内部に生じたひび割れ)を下記の5段階で評価した。
5:ひび割れがみられず、好ましい。
4:ひび割れがほとんどみられず、やや好ましい。
3:ひび割れが一部見られるものの、やや好ましい。
2:ひび割れがみられ、好ましくない。
1:ひび割れが著しくみられ、好ましくない。
【0292】
・「加熱調理時のゆで汁への成分流出」の評価基準:
各組成物1質量部を9質量部の水中で90℃、5分間加熱調理したときのゆで汁について下記の5段階で評価した。
5:ゆで汁への成分流出がみられず、好ましい。
4:ゆで汁への成分流出がほとんどみられず、やや好ましい。
3:ゆで汁への成分流出が一部見られるものの、やや好ましい。
2:ゆで汁への成分流出がみられ、好ましくない。
1:ゆで汁への成分流出が著しくみられ、好ましくない。
【0293】
・「総合評価」の評価基準:
ゆで汁と組成物とを共に喫食した際のおいしさについて、下記の5段階で評価した。また、加熱調理後の組成物同士の結着性についてコメントとして記載した。
5:組成物とゆで汁のバランスが特に良く、非常に品質が優れている。
4:組成物とゆで汁のバランスが良く、品質が優れている。
3:組成物とゆで汁のバランスがやや良く、品質がやや優れている。
2:組成物とゆで汁のバランスがやや悪く、品質が劣る。
1:組成物とゆで汁のバランスが悪く、非常に品質が劣る。
【0294】
[結果]
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【0295】
【0296】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0297】