(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005881
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】成膜装置、および成膜装置のクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20230111BHJP
G01B 7/00 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
C23C14/34 G
G01B7/00 101M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108131
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】品田 正人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 直樹
【テーマコード(参考)】
2F063
4K029
【Fターム(参考)】
2F063AA49
2F063BA26
2F063BB03
2F063BC05
4K029AA24
4K029DA03
4K029DA04
4K029DA12
4K029DC16
4K029DC46
4K029FA09
4K029JA01
4K029KA01
4K029KA09
(57)【要約】
【課題】載置台の載置面を覆うシャッタ部材を、迅速かつ安定して検出することができる技術を提供する。
【解決手段】成膜装置は、処理容器と、前記処理容器内に設けられるスパッタ用のターゲットと、前記処理容器内で基板を載置する載置面を有する載置台と、前記載置面を覆うことが可能なシャッタ部材と、前記シャッタ部材を前記載置台に搬入および搬出する搬送機構と、前記搬送機構自体に設けられ、前記シャッタ部材の有無に関わる指標を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づき、前記搬送機構に対する前記シャッタ部材の有無を判定する処理部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、
前記処理容器内に設けられるスパッタ用のターゲットと、
前記処理容器内で基板を載置する載置面を有する載置台と、
前記載置面を覆うことが可能なシャッタ部材と、
前記シャッタ部材を前記載置台に搬入および搬出する搬送機構と、
前記搬送機構自体に設けられ、前記シャッタ部材の有無に関わる指標を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づき、前記搬送機構に対する前記シャッタ部材の有無を判定する処理部と、を備える、
成膜装置。
【請求項2】
前記搬送機構は、前記シャッタ部材を支持する支持アームと、前記支持アームを回転させる回転装置と、を有し、
前記検出部は、前記回転装置に設けられ、前記支持アームの回転時に当該支持アームから前記回転装置にかかるトルクを前記指標として検出するトルクセンサを含む、
請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記トルクセンサは、前記処理容器の外部に設けられている、
請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記シャッタ部材は、磁性材料により形成され、
前記検出部は、前記シャッタ部材の近接時の磁気変化を前記指標として検出する磁気センサを含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記搬送機構による前記シャッタ部材の搬送中に、前記搬送機構に対する前記シャッタ部材の有無を判定し続ける、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記搬送機構から前記載置台に前記シャッタ部材を受け渡す時および前記載置台から前記搬送機構に前記シャッタ部材を受け取る時に、前記搬送機構に対する前記シャッタ部材の有無を判定する
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項7】
処理容器と、
前記処理容器内に設けられるスパッタ用のターゲットと、
前記処理容器内で基板を載置する載置面を有する載置台と、
前記載置面を覆うことが可能なシャッタ部材と、
前記シャッタ部材を前記載置台に搬入および搬出する搬送機構と、
前記搬送機構自体に設けられ、前記シャッタ部材の位置に関わる指標を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づき、前記搬送機構に対する前記シャッタ部材の位置を判定する処理部と、を備える、
成膜装置。
【請求項8】
前記シャッタ部材は、非磁性材料により形成されるとともに、前記搬送機構に対向する対向面に磁性材料により形成されたチップを1以上有し、
前記検出部は、前記搬送機構において前記チップの対向予定箇所に設けられた磁気センサを含む、
請求項7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記シャッタ部材は、前記対向面に凹部が形成されるとともに、前記凹部の奥部に前記チップを有し、
前記検出部は、前記磁気センサを備えるセンサ端子を含み、
前記センサ端子は、前記搬送機構から突出していることで前記凹部に挿入可能である、
請求項8記載の成膜装置。
【請求項10】
処理容器と、
前記処理容器内に設けられるスパッタ用のターゲットと、
前記処理容器内で基板を載置する載置面を有する載置台と、を備える成膜装置のクリーニング方法であって、
前記載置面を覆うことが可能なシャッタ部材を、搬送機構により前記載置台に搬入および搬出し、
前記搬送機構自体に設けられた検出部により、前記シャッタ部材の有無に関わる指標を検出し、
前記検出部の検出結果に基づき、前記搬送機構に対する前記シャッタ部材の有無を判定する、
成膜装置のクリーニング方法。
【請求項11】
処理容器と、
前記処理容器内に設けられるスパッタ用のターゲットと、
前記処理容器内で基板を載置する載置面を有する載置台と、を備える成膜装置のクリーニング方法であって、
前記載置面を覆うことが可能なシャッタ部材を、搬送機構により前記載置台に搬入および搬出し、
前記搬送機構自体に設けられた検出部により、前記シャッタ部材の位置に関わる指標を検出し、
前記検出部の検出結果に基づき、前記搬送機構に対する前記シャッタ部材の位置を判定する、
成膜装置のクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜装置、および成膜装置のクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ターゲットをスパッタすることにより、ターゲットの物質を基板に成膜する成膜装置が開示されている。この種の成膜装置は、ターゲットの表面状態を整える(例えば、自然酸化膜の除去等を行う)クリーニングを、適宜のタイミングで実施している。
【0003】
クリーニングでは、載置台の載置面に基板がない状態で、ターゲットの放電(ダミー放電)を行う。またこの際、成膜装置は、シャッタ部材により載置面を覆うことで、ダミー放電時に放出される物質から載置面を保護する。具体的には、成膜装置は、スパッタ処理時にシャッタ部材を退避位置に待機しておき、クリーニング時にシャッタ部材を載置面に配置し、クリーニング後にシャッタ部材を退避位置に戻す動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、クリーニング時に用いるシャッタ部材の搬送において、シャッタ部材を迅速かつ安定して検出することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、処理容器と、前記処理容器内に設けられるスパッタ用のターゲットと、前記処理容器内で基板を載置する載置面を有する載置台と、前記載置面を覆うことが可能なシャッタ部材と、前記シャッタ部材を前記載置台に搬入および搬出する搬送機構と、前記搬送機構自体に設けられ、前記シャッタ部材の有無に関わる指標を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づき、前記搬送機構に対する前記シャッタ部材の有無を判定する処理部と、を備える、成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、クリーニング時に用いるシャッタ部材の搬送において、シャッタ部材を迅速かつ安定して検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】成膜装置を有する基板処理システムの一構成例を示す概略平面図である。
【
図3】第1実施形態に係るシャッタ機構部、処理容器および載置台を示す概略平面図である。
【
図4】成膜装置のクリーニング方法の処理フローを示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る成膜装置のシャッタ機構部を示す面である。
【
図6】変形例に係るシャッタ機構部を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は、成膜装置1を有する基板処理システム100の一構成例を示す概略平面図である。
図1に示すように、一実施形態に係る成膜装置1は、基板の一例であるウエハWを処理する基板処理システム100に設けられている。
【0011】
基板処理システム100は、クラスタ構造(マルチチャンバタイプ)のシステムである。基板処理システム100は、複数の処理室111~115、真空搬送室120、複数のロードロック室131、132、大気搬送室140、ロードポート150および制御装置160を備える。複数の処理室111~115は、適宜の真空雰囲気に減圧され、所定の処理(クリーニング処理、エッチング処理、成膜処理等)をウエハWに施す。
【0012】
図1に示す基板処理システム100は、各処理室111~115と真空搬送室120とを隣接配置しており、真空搬送室120を経由して各処理室111~115にウエハWを搬送する。複数の処理室111~115の各々は、真空搬送室120と各室内との開閉を行うゲートバルブ111G~115Gを有している。
【0013】
基板処理システム100の真空搬送室120は、複数の室(処理室111~115、ロードロック室131、132)と連結され、所定の真空雰囲気に減圧される。真空搬送室120は、ウエハWを搬送する真空搬送装置121を内部に備える。真空搬送装置121は、各処理室111~115のゲートバルブ111G~115Gの開閉に応じて、各処理室111~115と真空搬送室120との間でウエハWの搬入および搬出を行う。また、真空搬送装置121は、各ロードロック室131、132のゲートバルブ131a、131aの開閉に応じて、各ロードロック室131、132と真空搬送室120との間でウエハWの搬入および搬出を行う。
【0014】
各ロードロック室131、132は、真空搬送室120と大気搬送室140との間に設けられ、室内を大気雰囲気と真空雰囲気とに切り替える。各ロードロック室131、132は、ウエハWを載置するステージ(不図示)と、真空搬送室120側のゲートバルブ131a、132aと、大気搬送室140側のドアバルブ131b、132bと、を備える。各ロードロック室131、132は、真空雰囲気の状態で、各ゲートバルブ131a、132aの開閉により真空搬送室120と連通する。また、各ロードロック室131、132は、大気雰囲気の状態で、各ドアバルブ131b、132bの開閉により大気搬送室140と連通する。
【0015】
大気搬送室140は、大気雰囲気となっており、例えば清浄空気のダウンフローが形成されている。また、大気搬送室140は、ウエハWを搬送する大気搬送装置141と、ウエハWの位置合わせを行うアライナ142と、を備える。
【0016】
さらに、大気搬送室140の壁面には、ロードポート150が設けられている。ロードポート150は、ウエハWが収容されたキャリアF又は空のキャリアFが取り付けられる。キャリアFとしては、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)等を用いることができる。
【0017】
大気搬送装置141は、各ドアバルブ131b、132bの開閉に応じて、各ロードロック室131、132と大気搬送室140との間でウエハWの搬入および搬出を行う。また、大気搬送装置141は、アライナ142と大気搬送室140との間でウエハWの搬入および搬出を行う。さらに、大気搬送装置141は、ロードポート150に取り付けられたキャリアFと大気搬送室140との間でウエハWの搬入および搬出を行う。
【0018】
制御装置160は、図示しない1以上のプロセッサ、メモリ、入出力インタフェースおよび電子回路を有する制御用コンピュータである。制御装置160は、メモリに記憶されたプログラムおよびレシピをプロセッサが実行することで、各処理室111~115に対してウエハWの処理を指令し、またウエハWの搬送を制御する。具体的には、制御装置160は、まず大気搬送装置141および真空搬送装置121を制御して、ロードポート150に取り付けられたキャリアFのウエハWを、アライナ142で位置調整を行い、ロードロック室131を介して真空搬送室120に搬送する。
【0019】
そして、制御装置160は、真空搬送室120から各処理室111~115に対してウエハWの搬入および搬出を行い、各処理室111~115にて所定の処理(クリーニング処理、エッチング処理、成膜処理等)をウエハWに施す。一実施形態に係る成膜装置1は、各処理室111~115のうち、成膜処理を行う装置として適宜の処理室に設置される。以下、処理室112に設けられた成膜装置1について代表的に説明する。
【0020】
図2は、成膜装置1を示す概略縦断面図である。
図2に示すように、成膜装置1は、内部空間10aを有する処理容器10を備える。また、成膜装置1は、処理容器10内でウエハWに成膜処理を行う構成として、ステージ機構部20と、ターゲット保持部30と、ターゲット覆い部40と、ガス供給部50と、ガス排出部60と、シャッタ機構部70と、を含む。さらに、成膜装置1は、各構成の動作を制御する制御部90を有する。
【0021】
成膜装置1の処理容器10は、例えば、アルミニウムにより形成され、接地電位に接続されている。成膜装置1は、処理容器10が処理室112内に設置されてもよく、処理容器10の内部空間10aが処理室112を構成していてもよい。処理容器10は、内部空間10aと処理容器10の外部とを連通する搬入出口11と、搬入出口11を開閉するゲートバルブ12と、を備える。ゲートバルブ12は、
図1中の処理室112のゲートバルブ112Gに相当する。成膜装置1は、ゲートバルブ12の開放時に、図示しない搬送装置により、搬入出口11を介してウエハWの搬入および搬出を行う。
【0022】
処理容器10は、内部空間10aにおいてウエハWに対する成膜処理の中心に位置し、かつ鉛直方向に沿って延在する処理中心軸Xを有する。この処理中心軸Xは、ステージ機構部20に載置されたウエハWのちょうど中心を通るように設定されたものである。さらに、処理容器10は、ステージ機構部20の上方に位置する天井部に、略錐形状(例えば、略四角錐形状、円錐形状等)の錐形部13を有する。処理中心軸Xは、錐形部13の中心部(頂部)を通っている。
【0023】
ステージ機構部20は、処理容器10内に配置される載置台21と、この載置台21を動作可能に支持する支持駆動部22と、を含んで構成される。載置台21は、略円盤形状のベース部21aと、ベース部21a上に固定された静電チャック21bと、を有する。
【0024】
ベース部21aは、例えば、アルミニウムにより形成されている。ベース部21aは、支持駆動部22の上端に固定されており、内部空間10aの所定の高さ位置に静電チャック21bを配置する。なお、ステージ機構部20は、ベース部21aの温度を調整して、載置台21上に載置されたウエハWの温度を制御する温度制御機構(不図示)を有してもよい。
【0025】
静電チャック21bは、誘電体膜と、誘電体膜の内層に設けられた電極と、を有する(共に不図示)。静電チャック21bの上面は、ステージ機構部20(載置台21)においてウエハWを載置する載置面211を構成している。静電チャック21bの電極には、直流電源23が接続されている。静電チャック21bは、直流電源23から電極に供給された直流電圧により誘電体膜に静電気力を生じさせて、載置面211に載置されたウエハWを吸着する。載置面211の中心は、処理中心軸Xに一致している。
【0026】
また、載置台21は、載置面211から突出してウエハWを支持可能な複数(例えば、3つ)のリフトピン212と、複数のリフトピン212を鉛直方向に移動させる鉛直方向移動部(不図示)と、を有する。ステージ機構部20は、真空搬送装置121により内部空間10aにウエハWが搬送された際に、鉛直方向移動部により載置面211から各リフトピン212を突出させて、各リフトピン212の上端においてウエハWを受け取る。さらに、ステージ機構部20は、鉛直方向移動部により各リフトピン212を載置面211側に後退させることで、載置面211にウエハWを載置する。逆に、ウエハWを搬出する場合は、各リフトピン212を上方向に突出させることでウエハWを載置面211から浮かせて、真空搬送装置121に受け渡す。
【0027】
支持駆動部22は、ベース部21aを保持している柱状の支軸24と、支軸24を動作させる動作装置25と、を有する。支軸24は、鉛直方向に沿って延在し、処理容器10の内部空間10aから底部14を通って処理容器10の外部に延在している。支軸24の軸心は、処理中心軸Xに重なっている。
【0028】
動作装置25は、処理容器10の外部に設けられ、支軸24の下端側を保持している。動作装置25は、制御部90の制御に基づき、支軸24を処理中心軸X回りに回転させ、また鉛直方向に昇降(上下動)させる。載置台21は、この動作装置25の動作によって、処理容器10内で回転および昇降する。
【0029】
さらに、ステージ機構部20は、処理容器10の底部14と支軸24との間に、支軸24を動作可能としつつ隙間を封止する封止構造26を有する。封止構造26としては、例えば、磁性流体シールを適用することができる。
【0030】
成膜装置1のターゲット保持部30は、載置台21から上方に離間した位置に、カソードターゲットであるターゲットTを複数保持する。ターゲット保持部30は、複数のターゲットTの各々を保持する金属製のホルダ31と、複数のホルダ31の外周部を固定して当該ホルダ31を支持する絶縁部材32と、を有する。
【0031】
各ホルダ31に保持されるターゲットTは、成膜用の物質を有する材料により形成され、長方形状の平板を呈している。なお、複数のターゲットTは、各ターゲットT間で、互いに異なる材料であってもよく、一部または全部が同じ材料であってもよい。
【0032】
各ホルダ31は、平面視で、ターゲットTよりも一回り大きな長方形状に形成されている。各ホルダ31は、絶縁部材32を介して錐形部13の傾斜面に固定されている。このため、各ホルダ31は、複数のターゲットTの表面(内部空間10aに露出したスパッタ面)を、処理中心軸Xに対して傾斜した状態で保持する。
【0033】
また、ターゲット保持部30は、各ホルダ31が保持している各ターゲットTに対して、電源33を電気的に接続している。複数の電源33の各々は、接続されているターゲットTに負の直流電圧を印加する。なお、電源33は、複数のターゲットTに選択的に電圧を印加する単一の電源であってもよい。
【0034】
さらに、ターゲット保持部30は、各ホルダ31の各々の背面側(ターゲットTの保持面と反対側)に、マグネット35と、当該マグネット35を動作させるマグネット動作部36と、備える。複数のマグネット35は、配置された各ターゲットTに対して磁場Hを付与することで、ターゲットTにプラズマを誘導する。各マグネット35は、錐形部13に固定されているホルダ31の傾斜に対応して、当該マグネット35の下面(対向面)がホルダ31およびターゲットTと平行になるように配置される。
【0035】
マグネット動作部36は、ターゲットT(ホルダ31)の延在方向と平行にマグネット35を往復動させる。例えば、マグネット動作部36は、ターゲットTの長手方向に延在するレールと、マグネット35を保持してレールに沿って移動可能な可動体と、を有する(共に不図示)。
【0036】
成膜装置1のターゲット覆い部40は、処理容器10内に配置される傘体41と、この傘体41を動作可能に支持する傘体駆動部42と、を有する。傘体41は、複数のターゲットTと載置台21との間に設けられている。傘体41は、処理容器10の錐形部13の傾斜面に略平行な錐形状に形成され、複数のターゲットTのスパッタ面に対向することが可能である。また、傘体41は、ターゲットTよりも若干大きな形状の開口41aを1つ有する。開口41aは、傘体駆動部42により、複数のターゲットTのうち1つのターゲットTに対向配置される。これにより、傘体41は、載置台21に対し選択ターゲットTsのみを露出させ、他のターゲットTを非露出とする。
【0037】
傘体駆動部42は、柱状の回転軸43と、回転軸43を回転させる回転部44と、を有する。回転軸43の軸線は、処理容器10の処理中心軸Xに重なっている。回転軸43は、鉛直方向に沿って延在し、下端において傘体41の中心(頂点)を固定している。回転軸43は、錐形部13の中心を通って処理容器10の外部に突出している。
【0038】
回転部44は、処理容器10の外部に設けられ、図示しない回転伝達部を介して、回転軸43を保持している上端(コネクタ55a)と相対的に回転軸43を回転させる。これにより、回転軸43および傘体41が処理中心軸X回りに回転する。したがって、ターゲット覆い部40は、制御部90の制御に基づき、開口41aの周方向位置を調整し、スパッタを行う選択ターゲットTsに開口41aを対向させる。
【0039】
成膜装置1のガス供給部50は、錐形部13に設けられ励起用のガスを供給する。なお、ガス供給部50は、励起用ガスの供給とは別に、ウエハWに堆積した金属(スパッタ粒子)を酸化させる酸化用のガスを供給する酸化用ガス部(不図示)を備えてもよい。
【0040】
ガス供給部50は、処理容器10の外部においてガスを流通させる配管52を有するとともに、この配管52の上流側から下流側に向かって順に、ガス源53、流量制御器54、およびガス導入部55を備える。ガス源53は、励起用のガス(例えば、Arガス)を貯留しており、配管52にガスを流出する。流量制御器54は、例えば、マスフローコントローラ等が適用され、処理容器10内に供給するガスの流量を調整する。ガス導入部55は、処理容器10の外部から内部にガスを導入する。ガス導入部55は、処理容器10の外部において配管52に連結されるコネクタ55aと、ターゲット覆い部40の回転軸43内に形成されたガスの通路43aと、で構成される。
【0041】
成膜装置1のガス排出部60は、減圧ポンプ61と、この減圧ポンプ61を処理容器10の底部14に固定するためのアダプタ62と、を有する。ガス排出部60は、制御部90の制御に基づき、処理容器10の内部空間10aを減圧する。
【0042】
以上の基板処理システム100および成膜装置1の各構成は、本開示に係る成膜装置1の共通の構成である。次に、
図2および
図3を参照して、第1実施形態に係る成膜装置1のシャッタ機構部70の構成について説明する。
図3は、第1実施形態に係るシャッタ機構部、処理容器および載置台を示す概略平面図であり、(a)は、シャッタ部材71が退避位置SPに位置する状態を示し、(b)は、シャッタ部材71が載置位置PPに位置する状態を示している。
【0043】
〔第1実施形態〕
シャッタ機構部70は、処理容器10内のクリーニング(ターゲットTのコンディショニング)においてダミー放電を行う際に、載置台21を保護するための機構部である。シャッタ機構部70は、適宜の厚みを有する円盤状のシャッタ部材71と、シャッタ部材71を載置台21上に対して搬入および搬出する搬送機構72と、を有する。
【0044】
シャッタ機構部70のシャッタ部材71は、載置台21の載置面211全体を覆うことで、ダミー放電時に載置面211を非露出とする。このため、シャッタ部材71の平面形状は、載置面211の形状に対応(相似)しており、正円形状に形成されている。シャッタ部材71の直径は、載置台21の載置面211の直径と同じにまたは載置面211の直径よりも若干大きく設定される。シャッタ部材71の直径としては、例えば、200mm~500mm程度の範囲であるとよい。シャッタ部材71の上面および下面は、一実施形態では平坦状に形成されている。
【0045】
シャッタ部材71の材料は、適宜の剛性を有していれば特に限定されず、ステンレス鋼(SUS)、アルミ等を適用することができる。第1実施形態では、後記の検出部80においてシャッタ部材71の有無に伴う磁気変化を検出するために磁性材料により形成された磁性SUSを適用している。
【0046】
シャッタ部材71は、搬送機構72により離脱自在に支持される。シャッタ部材71は、搬送機構72により載置台21上に搬送された際に、搬送機構72から離脱した状態で載置面211を覆う。
【0047】
シャッタ機構部70は、搬送機構72により、シャッタ部材71を載置台21の上方で受け渡し可能な載置位置PPと、載置台21から退避した退避位置SPと、に搬送する。そのため、処理容器10の一部の側壁は、水平方向外側に突出するように形成され、処理容器10は、この突出部分の内側(内部空間10a)に、シャッタ部材71の退避位置SPとなる退避区画10asを有している。
【0048】
退避位置SPは、シャッタ部材71の退避状態で、載置面211を上方に露出するように、載置位置PPから水平方向に沿って離間している。載置位置PPの中心(載置面211の中心)から退避位置SPの中心(退避したシャッタ部材71の中心)までの距離Dは、例えば、シャッタ部材71の直径の1.1倍~2倍程度の範囲に設定されることが好ましい。これにより、成膜装置1は、退避区画10asを有する構成でも処理容器10のサイズを可及的に小型化することが可能となる。
【0049】
シャッタ機構部70の搬送機構72は、シャッタ部材71を支持する支持アーム73と、支持アーム73に連結される軸部74と、軸部74を回転させる回転装置75と、を有する。さらに、シャッタ機構部70は、処理容器10の底部14と軸部74との間に、軸部74を回転可能としつつ隙間を封止する封止構造76を有する。封止構造76は、例えば、磁性流体シールを適用することができる。
【0050】
支持アーム73は、シャッタ部材71を支持する支持本体73aと、この支持本体73aと軸部74の間を延在する連結バー73bと、を含む。支持本体73aと連結バー73bは、一体に動作する。
【0051】
支持本体73aは、平面視で、シャッタ部材71を支持可能、かつ載置台21の複数のリフトピン212に非干渉となる適宜の形状に形成され、シャッタ部材71の外周部よりも内側を支持する。支持本体73aの上面および下面は、載置面211に対して平行に(水平方向に沿うように)延在している。
【0052】
支持本体73aは、当該支持本体73aの上面から突出し、シャッタ部材71の下面に接触する複数の(例えば、3つ)接触端子77を備える(
図2参照)。各接触端子77は、シャッタ部材71を安定して支持するために、支持本体73aの中心から所定半径離れ、かつ周方向に沿って互いに略等間隔の位置に配置されている。各接触端子77は、例えば、シャッタ部材71よりも軟質な樹脂材料により形成されている。
【0053】
連結バー73bは、支持本体73aを水平方向に沿って支持可能な剛性を有している。連結バー73bの一端には、軸部74が強固に固定されている。支持アーム73は、軸部74から延在する連結バー73bにより、支持本体73aおよびシャッタ部材71を円弧状に移動させる。
【0054】
軸部74は、処理中心軸Xに平行な方向(鉛直方向)に沿って延在し、上端部において連結バー73bを支持している。軸部74は、処理容器10の外側に突出して、外部において回転装置75に接続されている。
【0055】
回転装置75は、駆動源であるモータ75aと、モータ75aの回転軸および軸部74の下端間に設けられるギヤ機構75bと、を有し、軸部74を適宜の回転速度および回転角で回転させる。モータ75aは、図示しない駆動ドライバを介して制御部90に接続され、制御部90の制御に基づき回転角が制御される。ギヤ機構75bは、例えば、モータ75aの回転速度を減速させる。なお、回転装置75は、軸部74(すなわち支持アーム73)の回転角を、載置位置PPから退避位置SPの範囲内とするリミッタ機能を有しているとよい。
【0056】
また、シャッタ機構部70は、シャッタ部材71の有無に関わる指標を検出する検出部80を、搬送機構72自体に備える。一実施形態において、検出部80は、回転装置75に設けられるトルクセンサ81と、支持アーム73に設けられる磁気センサ82と、を適用している。なお、検出部80は、トルクセンサ81および磁気センサ82のうち一方のみでもよい。
【0057】
トルクセンサ81は、例えば、モータ75aの回転軸の回りに設けられ、回転軸のトルクを連続的に検出する非接触式または接触式のものを適用することができる。すなわち、支持アーム73にシャッタ部材71が支持されている状態におけるトルクは、支持アーム73にシャッタ部材71が支持されていない状態におけるトルクに対して大きくなる。したがって、成膜装置1は、トルクセンサ81のトルクを指標として取得することで、支持アーム73がシャッタ部材71を支持したか否か(シャッタ部材71の有無)を検出することができる。あるいは、トルクセンサ81は、回転装置75と駆動ドライバの間に設けられた電流計を適用してもよい。制御部90は、電流計の電流値の上昇に基づき、支持アーム73によるシャッタ部材71の支持を認識することができる。
【0058】
磁気センサ82は、例えば、支持本体73aの中心に設けられ、磁気変化を連続的に検出する非接触式のものを適用することができる。すなわち、磁気センサ82は、支持アーム73にシャッタ部材71が支持されている状態における磁気と、支持アーム73にシャッタ部材71が支持されていない状態における磁気と、で異なる磁気を検出する(磁気変化を検出する)。したがって、成膜装置1は、磁気センサ82の磁気変化を指標として取得しても、支持アーム73がシャッタ部材71を支持したか否かを検出することが可能となる。なお、磁気センサ82の数や位置は、支持本体73a上におけるシャッタ部材71の有無を適切に検出できれば、特に限定されないことは勿論である。
【0059】
成膜装置1の制御部90は、1以上のプロセッサ91、メモリ92、図示しない入出力インタフェースおよび電子回路を有する制御用コンピュータである。1以上のプロセッサ91は、CPU、ASIC、FPGA、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものである。メモリ92は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含み、制御部90の記憶部を形成している。なお、メモリ92の一部は、1以上のプロセッサ91に内蔵されていてもよい。
【0060】
プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたプログラムを実行することで、成膜装置1の成膜処理(ウエハW上へ金属を堆積させるスパッタ処理)を行う。成膜処理時に、プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたレシピに基づき、成膜装置1の各構成の動作を制御する。
【0061】
成膜処理において、プロセッサ91は、シャッタ機構部70のシャッタ部材71を退避位置SPに待機させ、平面視で、載置面211を上方に露出させる。これにより、基板処理システム100は、処理容器10内にウエハWを搬送すると、載置面211にウエハWが精度よく載置される。その後、プロセッサ91は、ガス供給部50により励起用ガスを処理容器10内に供給するとともに、ガス排出部60を制御して処理容器10内を所定の圧力に設定する。さらに、プロセッサ91は、傘体駆動部42の回転を制御して、目的のターゲットTに対して開口41aを対向配置し、かつマグネット動作部36を制御して各マグネット35を動作させる。そして、制御部90は、電源33から目的のターゲットTに負の直流電圧を印加することでプラズマを生成し、ターゲットTにプラズマを衝突させるスパッタ処理を行う。プラズマが衝突したターゲットTは、スパッタ粒子である金属を内部空間10aに放出し、このスパッタ粒子がウエハW上に堆積することで、ウエハWが成膜される。
【0062】
また、プロセッサ91は、成膜処理とは異なる適宜のタイミングまたはユーザの操作に基づき、処理容器10内のクリーニング(ターゲットTのコンディショニング)を行う。この際、プロセッサ91は、搬送機構72を制御して、退避位置SPに待機していたシャッタ部材71を載置位置PPに移動し、載置台21の載置面211をシャッタ部材71で覆う。成膜装置1は、シャッタ部材71により載置台21を保護した状態でダミー放電を行うことにより、ダミー放電時のパーティクルが載置面211に付着することを回避しつつ、ターゲットTの表面状態を整えることができる。このクリーニングの動作については、後に詳述する。
【0063】
また、プロセッサ91は、クリーニングにおける各工程を認識し、各工程における検出部80の検出結果に基づき、支持アーム73上のシャッタ部材71の有無を判定する。例えば、プロセッサ91は、トルクセンサ81の検出トルクに対応するトルク閾値を有し、検出トルクがトルク閾値以上となっているか否かを判定する。そして、検出トルクがトルク閾値以上となっている場合に、支持アーム73上にシャッタ部材71が有ることを判定し、検出トルクがトルク閾値未満となっている場合に、支持アーム73上にシャッタ部材71が無いことを判定する。
【0064】
同様に、プロセッサ91は、磁気センサ82の検出磁気に対応する磁気閾値を有し、検出磁気が磁気閾値以上となっているか否かを判定する。そして、検出磁気が磁気閾値以上となっている場合に、支持アーム73上にシャッタ部材71が有ることを判定し、検出磁気が磁気閾値未満となっている場合に、支持アーム73上にシャッタ部材71が無いことを判定する。
【0065】
プロセッサ91は、トルクセンサ81の検出トルクの判定結果と、磁気センサ82の検出磁気の判定結果との両方がシャッタ部材71の有りを判定した場合に、支持アーム73によるシャッタ部材71の支持を認識する。一方、プロセッサ91は、トルクセンサ81の検出トルクの判定結果と、磁気センサ82の検出磁気の判定結果との両方がシャッタ部材71の無しを判定した場合に、支持アーム73によるシャッタ部材71の非支持を認識する。なお、プロセッサ91は、トルクセンサ81の検出トルクの判定結果と、磁気センサ82の検出磁気の判定結果とのうち、一方がシャッタ部材71の有りで、他方がシャッタ部材71の無しの場合に、検出部80の故障を判定してもよい。あるいは、プロセッサ91は、トルクセンサ81の検出トルクの判定結果と、磁気センサ82の検出磁気の判定結果とのいずれか一方のみを用いて、シャッタ部材71の有無を判定してもよい。
【0066】
プロセッサ91は、支持アーム73がシャッタ部材71を支持するタイミングで、シャッタ部材71の無しを判定した場合、例えば、シャッタ部材71が非支持である旨のエラーをユーザに報知する。これにより、ユーザは、成膜装置1のエラーに対して早期に対処することができる。なお、プロセッサ91は、載置台21からシャッタ部材71を受け取るタイミングで、シャッタ部材71の無しを判定した場合に、プロセッサ91は、載置台21から支持アーム73へのシャッタ部材71の受け取りを再び(複数回)試行してもよい。これにより、成膜装置1は、エラーを報知せずに、支持アーム73がシャッタ部材71を支持する可能性を高めることができる。
【0067】
一実施形態に係る成膜装置1は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その動作および効果について説明する。
【0068】
図4は、成膜装置1のクリーニング方法の処理フローを示すフローチャートである。
図4に示すように、成膜装置1の制御部90は、クリーニング方法を実施すると、まず搬送機構72の動作を制御して、退避位置SPから載置位置PPにシャッタ部材71を移動(搬入)させる(ステップS1:搬入工程)。この際、制御部90は、支持アーム73の支持本体73aが載置位置PPに達するまで、回転装置75により支持アーム73を回転させる(
図3(a)も参照)。
【0069】
この搬入工程において、制御部90は、例えば、搬入工程を示すフラグを立てて検出部80の検出を行い、検出トルクおよび検出磁気に基づき、支持アーム73がシャッタ部材71を支持しているか否か(シャッタ部材71の有無)を判定する。搬入工程では、支持アーム73がシャッタ部材71を支持していることが正常状態となる。このため、制御部90は、シャッタ部材71の有りを判定した場合に、搬入工程を継続する一方で、シャッタ部材71の無しを判定した場合に、シャッタ部材71の搬送異常を認識し、ユーザに対して異常を報知する。この際、例えば制御部90は、搬入工程初期時であればシャッタ部材71が支持アーム73から外れていた状態であると判断しその旨を報知し、搬入工程中期以降であればシャッタ部材71を落とした状態であると判断しその旨を報知するとよい。これにより異常時に、ユーザは、適切な対処を直ちに採ることができる。
【0070】
載置位置PPにシャッタ部材71を移動させると、制御部90は、載置台21から複数のリフトピン212を上昇して、支持アーム73から各リフトピン212にシャッタ部材71を受け渡す(ステップS2:受渡工程)。この受渡工程でも、制御部90は、例えば磁気センサ82の検出磁気の変化に基づき、支持本体73aから各リフトピン212に正常に受け渡しできたか否かを判定することができる。
【0071】
その後、制御部90は、シャッタ部材71が無い状態で、搬送機構72を動作して、載置位置PPから退避位置SPに支持アーム73を移動させる(ステップS3:退避工程、
図3(b)も参照)。この退避工程でも、制御部90は、例えば、退避工程を示すフラグを立てて検出部80の検出を行い、検出トルクおよび検出磁気に基づき、支持アーム73がシャッタ部材71を支持していないか否かを判定する。退避工程では、支持アーム73がシャッタ部材71を支持していないことが正常状態となる。
【0072】
このため、制御部90は、シャッタ部材71の無しを判定した場合に、退避工程を継続する一方で、シャッタ部材71の有りを判定した場合に、シャッタ部材71の受け渡し異常を認識し、ユーザに対して異常を報知する。なお、制御部90は、シャッタ部材71の受け渡し異常を認識した場合に、すぐにステップS2に戻り、受渡工程を再試行してもよく、複数回試行した後にユーザに対して異常を報知してもよい。これにより、ユーザは、各リフトピン212の故障等を早期に認識することができる。
【0073】
その後、制御部90は、複数のリフトピン212を下降することで、シャッタ部材71を載置台21に接触配置させ、シャッタ部材71により載置面211の全面を覆う(ステップS4)。そして、制御部90は、目的のターゲットTに対して電源33から適宜の直流電圧を印加することでプラズマを生成し、ターゲットTの表面にプラズマ中の正イオンを当てる(ステップS5:ダミー放電工程)。これにより、ターゲットTからスパッタ粒子が放出されて、ターゲットTの表面が整えられる(自然酸化膜が除去される)。ダミー放電時に、成膜装置1は、シャッタ部材71により載置面211を覆っていることで、ターゲットTから放出されたスパッタ粒子が載置面211に堆積することを防ぐことができる。
【0074】
ダミー放電工程後に、制御部90は、複数のリフトピン212を再び上昇して、シャッタ部材71を載置位置PPに配置させることで、搬送機構72にシャッタ部材71を受け取り可能とする(ステップS6)。そして、制御部90は、搬送機構72を動作して支持アーム73を退避位置SPから載置位置PPに移動させる(ステップS7:再移動工程)。再移動工程において、支持アーム73の支持本体73aは、載置面211とシャッタ部材71の下面との間に入り込む。
【0075】
その後、制御部90は、複数のリフトピン212を下降することで、複数のリフトピン212から支持アーム73の支持本体73aにシャッタ部材71を受け取らせる(ステップS8:受取工程)。この受取工程でも、制御部90は、例えば磁気センサ82の検出磁気の変化に基づき、シャッタ部材71の受取が正常に行われたか否かを判定することができる。
【0076】
そして、制御部90は、支持アーム73にシャッタ部材71を支持した状態で、搬送機構72を動作して載置位置PPから退避位置SPにシャッタ部材71を移動(搬出)させる(ステップS9:搬出工程)。この際、制御部90は、支持アーム73の支持本体73aが退避位置SPに達するまで、回転装置75により支持アーム73を回転させる。
【0077】
この搬出工程でも、制御部90は、例えば、搬出工程を示すフラグを立てて検出部80の検出を行い、検出トルクおよび検出磁気に基づき、支持アーム73がシャッタ部材71を支持したか否かを判定する。搬出工程では、支持アーム73がシャッタ部材71を支持していることが正常状態となる。このため、制御部90は、シャッタ部材71の有りを判定した場合に、搬出工程を継続する一方で、シャッタ部材71の無しを判定した場合に、シャッタ部材71の搬送異常を認識し、ユーザに対して異常を報知する。これにより異常時に、ユーザは、適切な対処を直ちに採ることができる。
【0078】
退避位置にシャッタ部材71を戻すと、制御部90は、クリーニングを終了する。以上のように、制御部90は、搬送機構72自体の検出部80により、クリーニングにおけるシャッタ部材71の搬送中、受け渡し時や受け取り時に、シャッタ部材71の有無を精度よく判定することができる。
【0079】
ここで、従来の成膜装置は、シャッタ部材が支持アームに支持されているか否かについては、退避区画10asに光学センサ(光電センサ)を設置して、光学センサによるシャッタ部材の検出に基づき判定していた。このような光学センサを適用することは、退避区画10asの構造を複雑化し、処理容器10が大型化する要因となる。また、退避位置SPに光学センサを備えた構成は、シャッタ部材を退避位置SPに戻すまでシャッタ部材の有無が判定できず、シャッタ部材の検出のタイミングが遅くなっていた。
【0080】
これに対し、搬送機構72自体に検出部80を有する成膜装置1は、シャッタ部材71が退避する退避区画10asを簡素化することができ、処理容器10の小型化を促すことが可能となる。また、成膜装置1は、搬入工程、受渡工程、退避工程、受取工程、搬出工程等において、検出部80によりシャッタ部材71の有無を直ちに検出できるので、必要な対処を早期に採ることができる。
【0081】
本開示に係る成膜装置1およびクリーニング方法は、上記に限定されず、種々の変形例を採ることができる。例えば、成膜装置1は、搬送機構72自体に設ける検出部80としてトルクセンサ81や磁気センサ82以外のセンサを適用してもよい。一例として、検出部80は、シャッタ部材71に応じて変形する支持アーム73の歪みまたはシャッタ部材71自体の歪みを検出する歪みセンサを適用してもよい。また他の例として、検出部80は、支持アーム73や軸部74等に設けられ、シャッタ部材71による荷重変化を検出する荷重センサを適用してもよい。
【0082】
また、成膜装置1は、支持アーム73、軸部74および回転装置75を備える搬送機構72に限定されず、例えば、シャッタ部材71を直線状にスライドさせる機構を適用してもよい。この場合も、検出部80は、シャッタ部材71とともにスライドする可動体(不図示)または可動体を動作させる動作部にかかる負荷の変化を指標として検出する。これにより、制御部90はシャッタ部材71の有無を良好に判定することができる。あるいは、可動体に磁気センサ82を備えることで、制御部90は、磁気センサ82の磁気変化に基づきシャッタ部材71の有無を判定することができる。
【0083】
シャッタ部材71は、ユーザにより処理容器10から取り出されて新なシャッタ部材71に交換される構成とすることが好ましい。さらに、基板処理システム100は、成膜装置1が設けられている処理室とロードポート150との間で、シャッタ部材71を搬送する構成でもよい(
図1も参照)。これにより、基板処理システム100は、処理容器10内にユーザが直接アクセスすることなく、シャッタ部材71の交換を行うことができる。
【0084】
〔第2実施形態〕
図5は、第2実施形態に係る成膜装置1Aのシャッタ機構部70Aを示す図である。また
図5(a)は、シャッタ機構部70Aの概略縦断面図、
図5(b)はシャッタ部材71を位置決めが正常の場合の拡大縦断面図、
図5(c)はシャッタ部材71の位置決めが異常の場合の拡大縦断面図である。
図5(a)に示すように、シャッタ機構部70Aは、支持アーム73に対するシャッタ部材71の相対位置を検出する検出部80Aを備えてもよい。例えば、支持アーム73は、磁気センサ82と接触パッド83を組み合わせたセンサ端子84を、接触端子77に代えて複数備える。複数のセンサ端子84は、支持アーム73の支持本体73aの上面(シャッタ部材71の対向面)に設置され、上方に向かって順に磁気センサ82、接触パッド83を積層している。接触パッド83は、
図2の接触端子77と同様に、シャッタ部材71よりも軟性な樹脂材料により形成される。
【0085】
一方、シャッタ部材71は、非磁性材料により形成されるとともに、センサ端子84の接触予定箇所に凹部71aを備える。
図5(b)に示すように、凹部71aは、開口側が大きく底面(奥側)が小さいテーパ状に形成されているとよい。つまり、シャッタ機構部70Aは、複数の凹部71aの各々に対して複数のセンサ端子84をそれぞれ挿入することで、シャッタ部材71の位置決めを行う位置決め構造78を備える。
【0086】
そして、シャッタ部材71は、磁性材料により形成されたチップ71bを凹部71aの底面に有する。これにより、センサ端子84の磁気センサ82は、センサ端子84が凹部71aに挿入されて、磁気センサ82がチップ71bの近接した場合における、磁気変化を検出する。
【0087】
以上のシャッタ機構部70Aを有する成膜装置1Aは、搬送機構72によりシャッタ部材71を正常に支持している場合に、位置決め構造78(凹部71a、センサ端子83)により、シャッタ部材71と支持アーム73とが適度に係合している。このため、搬入工程や搬出工程等において、支持アーム73に対してシャッタ部材71が位置ずれすることを防ぐことができる。
【0088】
また、シャッタ機構部70Aは、受取工程において、シャッタ部材71を支持アーム73に対して下降した際に、支持アーム73の複数のセンサ端子84が凹部71a内に誘導される。センサ端子84が凹部71aに挿入された場合、磁気センサ82は、チップ71bに近接することになり、磁気変化を検出する。このため、制御部90は、センサ端子84が凹部71aに正常に挿入されたこと、すなわちシャッタ部材71と支持アーム73との位置が合っていることを判定することができる。
【0089】
一方、
図5(c)に示すように、シャッタ部材71を下降した際にセンサ端子84が凹部71aに挿入されない場合、磁気センサ82は、チップ71bから離れることになり、磁気変化を検出しない。このため、制御部90は、センサ端子84が凹部71aに挿入さていないこと、すなわちシャッタ部材71と支持アーム73との位置がずれていることを判定することができる。
【0090】
このように、成膜装置1Aは、検出部80Aによって、支持アーム73に対するシャッタ部材71の相対位置を検出することで、シャッタ部材71を搬送機構72に一層精度よく載置することができる。特に、シャッタ機構部70Aは、位置決め構造78により、シャッタ部材71と支持アーム73とを係合することが可能であり、シャッタ部材71の支持をより安定化することができる。
【0091】
なお、第2実施形態に係る成膜装置1Aも、上記の構成に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、シャッタ機構部70Aの検出部80Aは、複数の接触端子77の全てを複数のセンサ端子84に代えなくてもよく、一部の接触端子77にセンサ端子84を適用してよい。
【0092】
図6は、変形例に係るシャッタ機構部70Bを示す概略縦断面図である。
図6に示すように、シャッタ機構部70Bは、シャッタ部材71において支持アーム73に対向する平坦状の対向面(下面)に、磁性材料により形成されたチップ71bを有する。またシャッタ機構部70Bは、センサ端子84に代えて接触端子77を備えるとともに、支持アーム73の上面においてチップ71bに対向する予定位置に磁気センサ82(検出部80B)を有する。なお
図6中では、1つのチップ71bおよび1つの磁気センサ82を備えた構成を示しているが、シャッタ機構部70Bは、チップ71bを複数備えるとともに、チップ71bの対向箇所に磁気センサ82を複数備えてもよい。
【0093】
支持アーム73上に設けられた磁気センサ82は、支持アーム73がシャッタ部材71を支持する際に、チップ71bに非接触かつ近接した位置に配置されることで、磁気変化を検出する。逆に、支持アーム73に対してシャッタ部材71が位置ずれした場合には、チップ71bに対して磁気センサ82がずれることで磁気変化を検出しない。このように、成膜装置1Aは、支持アーム73に設置した磁気センサ82により、シャッタ部材71の対向面のチップ71bを検出することでも、シャッタ部材71と支持アーム73の相対位置を判定することができる。
【0094】
以上のように、本開示の第1態様に係る成膜装置1は、処理容器10と、処理容器10内に設けられるスパッタ用のターゲットTと、処理容器10内で基板(ウエハW)を載置する載置面211を有する載置台21と、載置面211を覆うことが可能なシャッタ部材71と、シャッタ部材71を載置台21に搬入および搬出する搬送機構72と、搬送機構72自体に設けられ、シャッタ部材71の有無に関わる指標を検出する検出部80と、検出部80の検出結果に基づき、搬送機構72に対するシャッタ部材71の有無を判定する処理部(制御部90)と、を備える。
【0095】
上記の成膜装置1は、搬送機構72自体に設けた検出部80によりシャッタ部材71を監視することで、クリーニングの各工程においてシャッタ部材71の有無を迅速かつ安定して認識することができる。これにより、成膜装置1は、シャッタ部材71の移動を検出する他の検出部を処理容器10に備えずに済み、処理容器10の小型化を促進できる。
【0096】
また、搬送機構72は、シャッタ部材71を支持する支持アーム73と、支持アーム73を回転させる回転装置75と、を有し、検出部80は、回転装置75に設けられ、支持アーム73の回転時に当該支持アーム73から回転装置75にかかるトルクを指標として検出するトルクセンサ81を含む。これにより、成膜装置1の制御部90は、回転装置75にかかるトルクに基づき、シャッタ部材71の有無を精度よく検出することができる。
【0097】
また、トルクセンサ81は、処理容器10の外部に設けられている。これにより、成膜装置1は、処理容器10内の搬送機構72の構成を一層簡素化することができる。
【0098】
また、シャッタ部材71は、磁性材料により形成され、検出部80は、シャッタ部材71の近接時の磁気変化を指標として検出する磁気センサ82を含む。これにより、成膜装置1の制御部90は、シャッタ部材71を搬送機構72に支持した際の磁気変化に基づき、シャッタ部材71の有無を精度よく検出することができる。
【0099】
また、処理部(制御部90)は、搬送機構72によるシャッタ部材71の搬送中に、搬送機構72に対するシャッタ部材71の有無を判定し続ける。これにより、成膜装置1は、搬送中に、シャッタ部材71が落下した場合等の状況を直ちに検出して、ユーザに適切な対処を促すことができる。
【0100】
また、処理部(制御部90)は、搬送機構72から載置台21にシャッタ部材71を受け渡す時および載置台21から搬送機構72にシャッタ部材71を受け取る時に、搬送機構72に対するシャッタ部材71の有無を判定する。これにより、成膜装置1は、シャッタ部材71の受け渡しや受け取りにおいてシャッタ部材71の有無を早期に認識することが可能となり、受け渡しや受け取りの再試行等を行うことができる。
【0101】
また、本開示の第2態様に係る成膜装置1Aは、処理容器10と、処理容器10内に設けられるスパッタ用のターゲットTと、処理容器10内で基板(ウエハW)を載置する載置面211を有する載置台21と、載置面211を覆うことが可能なシャッタ部材71と、シャッタ部材71を載置台21に搬入および搬出する搬送機構72と、搬送機構72自体に設けられ、シャッタ部材71の位置に関わる指標を検出する検出部80A、80Bと、検出部80A、80Bの検出結果に基づき、搬送機構72に対するシャッタ部材71の位置を判定する処理部(制御部90)と、を備える。この場合でも、成膜装置1Aは、搬送機構72に対するシャッタ部材71の位置を迅速かつ安定して検出することができる。
【0102】
また、シャッタ部材71は、非磁性材料により形成されるとともに、搬送機構72に対向する対向面に磁性材料により形成されたチップ71bを1以上有し、検出部80A、80Bは、搬送機構72においてチップ71bの対向予定箇所に設けられた磁気センサ82を含む。これにより、成膜装置1Aは、チップ71bに対する磁気センサ82の磁気変化に基づき、搬送機構72に対するシャッタ部材71の位置の正常または異常(位置ずれ)を良好に認識することができる。
【0103】
また、シャッタ部材71は、対向面に凹部71aが形成されるとともに、凹部71aの奥部にチップ71bを有し、検出部80Aは、磁気センサ82を備えるセンサ端子84を含み、センサ端子84は、搬送機構72から突出していることで凹部71aに挿入可能である。これにより、成膜装置1Aは、センサ端子84と凹部71aとを係合することができ、シャッタ部材71の搬送を一層安全に行うことができる。
【0104】
また、本開示の第3態様は、処理容器10と、処理容器10内に設けられるスパッタ用のターゲットTと、処理容器10内で基板(ウエハW)を載置する載置面211を有する載置台21と、を備える成膜装置1のクリーニング方法であって、載置面211を覆うことが可能なシャッタ部材71を、搬送機構72により載置台21に搬入および搬出し、搬送機構72自体に設けられた検出部80により、シャッタ部材71の有無に関わる指標を検出し、検出部80の検出結果に基づき、搬送機構72に対するシャッタ部材71の有無を判定する。
【0105】
また、本開示の第4態様は、処理容器10と、処理容器10内に設けられるスパッタ用のターゲットTと、処理容器10内で基板(ウエハW)を載置する載置面211を有する載置台21と、を備える成膜装置1のクリーニング方法であって、載置面211を覆うことが可能なシャッタ部材71を、搬送機構72により載置台21に搬入および搬出し、搬送機構72自体に設けられた検出部80A、80Bにより、シャッタ部材71の位置に関わる指標を検出し、検出部80A、80Bの検出結果に基づき、搬送機構72に対するシャッタ部材71の位置を判定する。
【0106】
以上の第3態様および第4態様に係る成膜装置1のクリーニング方法でも、載置台21の載置面211を覆うシャッタ部材71を、迅速かつ安定して検出することができる。
【0107】
今回開示された実施形態に係る成膜装置1は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0108】
1、1A 成膜装置
10 処理容器
21 載置台
211 載置面
71 シャッタ部材
71a 凹部
71b チップ
72 搬送機構
73 支持アーム
74 軸部
75 回転装置
80、80A、80B 検出部
81 トルクセンサ
82 磁気センサ
84 センサ端子
90 制御部
W ウエハ