(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058860
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】画像形成装置、および画像形成方法
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20230419BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230419BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20230419BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20230419BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20230419BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
B41J29/38 206
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J29/38 301
G03G21/00 512
G03G15/20 555
G03G21/14
G03G15/20 525
G03G21/00 386
H05B3/00 310C
H05B3/00 320Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168626
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】森谷 竜弥
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
2H033
2H270
3K058
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EB12
2C056EB14
2C056EB29
2C056EC12
2C056EC26
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2C056FA14
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2C056HA46
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2C061AQ06
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2C061HV02
2C061HV08
2C061HV23
2C061HV32
2C061HV45
2H033AA35
2H033BB18
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2H033CA57
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2H270QB01
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2H270QB09
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2H270ZC06
3K058AA11
3K058AA22
3K058AA97
3K058BA18
3K058CA02
3K058CA23
3K058CA32
3K058GA06
(57)【要約】
【課題】ダウンタイムを短縮可能な画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る画像形成装置は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、供給電力に応じて発熱することにより前記記録媒体を加熱する加熱部と、前記画像形成装置の動作を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記供給電力に応じた前記加熱部の抵抗値に基づき、前記加熱部の劣化状態に応じた制御を行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
供給電力に応じて発熱することにより前記記録媒体を加熱する加熱部と、
前記画像形成装置の動作を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記供給電力に応じた前記加熱部の抵抗値に基づき、前記加熱部の劣化状態に応じた制御を行う画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記加熱部の抵抗値と、格納部に予め格納されている前記加熱部の状態情報と、に基づき、前記加熱部の劣化状態に応じた制御を行う請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像を形成する液体を前記記録媒体に付与する液体付与部を有し、
前記加熱部は、前記記録媒体に付与された前記液体を加熱する請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記録媒体を搬送する搬送部を有し、
前記制御部は、前記搬送部による前記記録媒体の搬送速度を制御する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記加熱部の抵抗値が大きいほど前記搬送部による前記記録媒体の搬送速度を遅くする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記加熱部の状態情報を報知する報知部を有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記状態情報は、前記加熱部の交換を通知する情報、または前記加熱部の清掃を通知する情報の少なくとも一方を含む請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、交流電力に基づく前記供給電力に応じた前記加熱部の抵抗値と、前記交流電力における交流電圧値または交流電流値の少なくとも一方と、に基づき、前記加熱部の劣化状態に応じた制御を行う請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置による画像形成方法であって、前記画像形成装置が、
供給電力に応じて発熱する加熱部により、前記記録媒体を加熱し、
制御部により、前記画像形成装置の動作を制御し、
前記制御部は、前記供給電力に応じた前記加熱部の抵抗値に基づき、前記加熱部の劣化状態に応じた制御を行う画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばインクジェットプリンタ等の液体吐出方式の画像形成装置では、記録媒体に液体を付与した後、記録媒体に付与された液体を加熱することによって乾燥させる構成が知られている。
【0003】
上記画像形成装置として、ヒータ周辺の温度を検出する温度センサを有し、第1および第2のヒータユニットの温度差が所定時間内に所定の範囲から外れた場合に、給電配線の接続又は信号配線の接続の異常を判定する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、加熱部に異常が発生するまで加熱部を交換する等の対策を行えないため、画像形成装置を使用できない期間であるダウンタイムが長くなる懸念がある。
【0005】
本発明は、ダウンタイムを短縮可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る画像形成装置は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、供給電力に応じて発熱することにより前記記録媒体を加熱する加熱部と、前記画像形成装置の動作を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記供給電力に応じた前記加熱部の抵抗値に基づき、前記加熱部の劣化状態に応じた制御を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ダウンタイムを短縮可能な画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置の全体構成を例示する図である。
【
図2】実施形態に係る制御部のハードウェア構成を例示する図である。
【
図3】実施形態に係る制御部の機能構成を例示する図である。
【
図4】加熱部が正常状態である場合の抵抗値を例示する図である。
【
図5】加熱部が第1劣化状態である場合の抵抗値を例示する図である。
【
図6】加熱部が第2劣化状態である場合の抵抗値を例示する図である。
【
図7】加熱部が異常状態である場合の抵抗値を例示する図である。
【
図8】実施形態に係る画像形成装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
[実施形態]
<画像形成装置100の全体構成例>
図1は、実施形態に係る画像形成装置100の全体構成の一例を示す図である。画像形成装置100は、液体の一例である画像形成用のインクを吐出して、記録媒体の一例である用紙に付与することにより、用紙に画像を形成する液体吐出方式の画像形成装置である。
【0011】
図1に示すように、画像形成装置100は、先塗部101と、第1搬送ローラ102と、第2搬送ローラ103と、搬送ドラム104と、液体付与部105と、加熱部106と、制御部110と、を有する。
【0012】
画像形成装置100は、用紙10を供給する給紙部を起点に、先塗部101、第1搬送ローラ102、第2搬送ローラ103、搬送ドラム104、液体付与部105および加熱部106を通って、画像形成装置100内を搬送方向30に沿って用紙10を搬送する。
【0013】
画像形成装置100は、搬送される用紙10の表面(第1面)に、液体付与部105によってインクを付与することにより画像を形成する。その後、画像形成装置100は、用紙10上に付与されたインクを加熱部106により加熱することによって乾燥させた後、排紙トレイを用いて用紙10を排紙する。
【0014】
用紙10の表裏の両面に画像形成する両面印刷の場合には、画像形成装置100は、反転ユニットにより用紙10をスイッチバックし、再び液体付与部105により用紙10の表面とは反対側の裏面(第2面)に画像を形成する。その後、加熱部106を通した後、排紙トレイを用いて用紙10を排紙する。
【0015】
先塗部101は、タンク内に貯留された先塗液20と、用紙10を挟持して用紙10に先塗液20を塗布する第1塗布ローラ21aおよび第2塗布ローラ21bと、を含む。先塗液20は、用紙10上においてインクと反応して滲みを抑制する機能を有する。
【0016】
先塗液20が表面に塗布された後、搬送ドラム104へ搬送されてきた用紙10は、受け取り胴の表面に設けられた用紙グリッパによって先端が把持され、受け取り胴の表面移動に伴って搬送される。受け取り胴により搬送された用紙10は、搬送ドラム104に向き合う位置において搬送ドラム104へ受け渡される。
【0017】
搬送ドラム104は、用紙10を搬送する搬送部の一例である。搬送ドラム104は、表面に用紙グリッパを含み、用紙10の先端を用紙グリッパによって把持する。また搬送ドラム104の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されており、各吸引孔には吸引装置によって搬送ドラム104の内側へ向かう吸い込み気流が発生する。
【0018】
受け取り胴から搬送ドラム104へ受け渡された用紙10は、用紙グリッパによって先端が把持されるとともに、吸い込み気流によって搬送ドラム104の外周面に吸着する。搬送ドラム104は、用紙10を外周面に担持しながら回転することにより、用紙10を搬送する。なお、本実施形態では、搬送部として搬送ドラム104の構成および動作を例示するが、搬送部は、搬送ドラム104の他、先塗部101から加熱部106までの用紙10の搬送経路に含まれる全ての搬送ローラを含むことができる。
【0019】
液体付与部105は、画像を形成するインクを用紙10に付与する。液体付与部105は、インク吐出ヘッドを有し、搬送ドラム104に担持された用紙10に向けて、インク吐出ヘッドに含まれるノズルからインクを吐出することにより、用紙10の表面にインクを付与する。液体付与部105は、例えば、画像データに基づいてブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)等の色のインクを用紙10の表面に付与することにより、用紙10に画像を形成する。各色の液体付与部105は、インクを吐出するものであれば、その構成に制限はなく、あらゆる構成のものを採用できる。
【0020】
搬送ドラム104は、液体付与部105によりインクを付与された用紙10を、受け渡し胴を介して加熱部106に受け渡す。
【0021】
加熱部106は、供給電力に応じて発熱することにより用紙10を加熱する。加熱部106は、供給電力に応じて発熱する電熱線等を含む抵抗体である。加熱部106には、カーボンヒータまたはシーズヒータ等を適用できる。
【0022】
加熱部106は、液体付与部105により用紙10に付与されたインクを加熱することにより、インク中の水分等の液分を蒸発させ、用紙10上にインクを固着させる。なお、加熱部106は、用紙10上に付着したインクを加熱して乾燥させるものであれば、その構成に制限はない。
【0023】
制御部110は、画像形成装置100の動作を制御する。本実施形態では特に、制御部110は、供給電力に応じた加熱部106の抵抗値に基づき、加熱部106の劣化状態に応じた制御を行う。例えば、制御部110は、加熱部106の劣化状態に応じて搬送ドラム104による搬送速度を制御する。あるいは制御部110は、加熱部106の劣化状態を示す状態情報を、操作部120に含まれている操作パネル等に表示させる制御を行うことができる。
【0024】
なお、画像形成装置100において、制御部110および操作部120が配置される位置に特段の制限はない。画像形成装置100の外部に制御部110および操作部120が配置されてもよい。
【0025】
また、画像形成装置100は、液体付与部105と用紙10とが相対的に移動するものであるが、これに限定されるものではない。画像形成装置100には、例えば、液体付与部105を移動させるシリアル型装置や、液体付与部105を移動させないライン型装置等が含まれる。
【0026】
また、液体付与部105が有するインク吐出ヘッドは、吐出孔(ノズル)からインクを吐出・噴射する機能部品である。インクを吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子および薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどの吐出エネルギー発生手段を使用することができる。インク吐出ヘッドにおいて使用される吐出エネルギー発生手段に特段の制限はない。
【0027】
<制御部110のハードウェア構成例>
図2は、画像形成装置100が有する制御部110の電気的なハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、制御部110は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、HDD(Hard Disk)14と、I/F(Interface)15とを有する。
【0028】
これらのうち、CPU11は、RAM13を作業領域として使用し、ROM12に格納されているプログラムを実行することにより、制御部110全体の動作を制御する。
【0029】
HDD14は、記憶部として使用され、予め設定された設定値を格納する。HDD14に格納されている情報は、CPU11が読み出しプログラム実行時に使用することもある。なお、制御部110は、記憶部としてHDD14に代えてSSD(Solid State Drive)を備えてもよい。
【0030】
I/F15は、クライアントPC(Personal Computer)200等の外部装置と、画像形成装置100と、を通信可能にするインターフェースである。
【0031】
<制御部110の機能構成例>
図3は、制御部110の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、制御部110は、加熱制御部111と、電圧検出部112と、格納部113と、状態情報取得部114と、搬送制御部115と、報知部116と、を有する。
【0032】
制御部110は、CPU11が所定のプログラムを実行することにより、加熱制御部111、電圧検出部112、状態情報取得部114、搬送制御部115および報知部116の各機能を実現する。あるいは制御部110は、上記の各構成部の機能の少なくとも一部を電気回路または電子回路により実現することもできる。また制御部110は、HDD14により格納部113の機能を実現できる。
【0033】
ここで、加熱部106は、腐食または酸化に伴う電熱線の細線化等の内部要因により経時劣化する。また加熱部106は、加熱部106の周囲における熱だまりや、加熱部106による発熱の伝熱不良等の外部要因によっても経時劣化する。加熱部106の周囲における熱だまりの要因は、加熱部106の取付不良や、加熱部106の周囲を流れる気流の不良、加熱部106周囲の温度の異常上昇等である。加熱部106による発熱の伝熱不良の要因は、インクミストや乾燥時に発生する溶剤を含んだ蒸気等が加熱部106に付着することによる汚染等である。
【0034】
加熱部106が劣化すると、用紙10上のインクを乾燥させるために十分な加熱を行えなくなり、用紙10に形成された画像が剥がれたり、用紙10に固着されなかったインクが用紙10の搬送経路に付着したりする不具合が生じる場合がある。
【0035】
内部要因により加熱部106が劣化すると、加熱部106の抵抗値Rは大きくなる。制御部110は、加熱部106の抵抗を検出し、この抵抗値Rに基づき、加熱部106の劣化状態に応じた画像形成装置100の制御を行うことによって、加熱部106の劣化に伴う不具合を抑制する。
【0036】
また加熱部106に供給電力として交流電力を供給する場合には、交流電力は変動するため、加熱部106の抵抗値Rは加熱部106の劣化状態によらずに変動する。その結果、制御部110は、加熱部106の抵抗値Rに基づき、加熱部106の劣化状態に応じた制御を行えない場合がある。このため、制御部110は、交流電力に基づく供給電力に応じた加熱部106の抵抗値Rと、交流電力における交流電圧値または交流電流値の少なくとも一方と、に基づき、加熱部106の劣化状態に応じた画像形成装置100の制御を行う。これにより制御部110は、交流電力が供給される場合にも、加熱部106の劣化状態に応じた制御を可能にする。
【0037】
また外部要因により加熱部106が劣化すると、内部要因とは異なり加熱部106の抵抗値Rは変化しない。このため、制御部110は、加熱部106による加熱熱量をサーミスタ107により検出し、この熱量値Tに基づき、加熱部106の劣化状態に応じた画像形成装置100の制御を行うことによって、加熱部106の劣化に伴う不具合を抑制する。
【0038】
加熱制御部111は、加熱部106に要求される加熱温度に応じて、PWM(Pulse Width Modulation)制御方式を用いて加熱部106への供給電力を制御することにより、加熱部106による加熱を制御する。PWM制御方式は、オンとオフの一定周期を含むパルス列信号におけるオンの時間幅(デューティ)を変化させるものである。加熱制御部111は、PWM制御方式を用いることにより、消費電力の低減または加熱部106の長寿命化の少なくとも1つを実現できる。
【0039】
電圧検出部112は、交流電源130からの交流電力の交流電圧値を検出し、検出結果を状態情報取得部114に提供する。交流電源130は、例えば商用電源であるが、商用電源以外の交流電源であってもよい。なお、制御部110は、電圧検出部112に代えて、交流電源からの交流電力の交流電流値を検出し、検出結果を状態情報取得部114に提供する電流検出部を備えてもよい。
【0040】
格納部113は、供給電力に応じた加熱部106の抵抗値Rおよび加熱部106の熱量値Tのそれぞれと、加熱部106の状態との関係を示す情報を格納する。加熱部106の状態には、加熱部106の劣化状態を示す情報、加熱部106の異常を示す情報、または加熱部106の劣化状態または異常に関連する情報等が含まれる。格納部113は、例えば、加熱部106の状態に応じた加熱部106の抵抗値Rの範囲を示す抵抗閾値情報、および加熱部106の状態に応じた加熱部106の熱量値Tの範囲を示す熱量閾値情報を格納している。
【0041】
状態情報取得部114は、供給電力に応じて加熱部106に流れる電流値を入力し、加熱部106に流れる電流値のうち、交流電力に基づく変動成分を、電圧検出部112により検出された交流電圧値に応じて除去する。状態情報取得部114は、交流電力に基づく変動成分が除去された電流値から加熱部106の抵抗値Rを算出することにより、加熱部106の抵抗値Rを検出する。状態情報取得部114は、算出した加熱部106の抵抗値Rに基づき、格納部113を参照して、加熱部106の状態情報を取得する。
【0042】
また状態情報取得部114は、加熱部106が有するサーミスタ107から加熱部106の熱量値Tを入力し、この熱量値Tに基づき、格納部113を参照して、加熱部106の状態情報を取得する。なお、熱量を検出する構成部は、サーミスタ107に限定されず、各種温度計を適用できる。
【0043】
状態情報取得部114は、取得した加熱部106の状態情報を搬送制御部115および報知部116に提供する。
【0044】
搬送制御部115は、状態情報取得部114から受け取った加熱部106の状態情報に応じて、搬送ドラム104等の搬送部による用紙10の搬送を制御する。例えば、搬送制御部115は、加熱部106の抵抗値Rが大きいほど搬送部による用紙10の搬送速度を遅くする。加熱部106が劣化しているほど、加熱部106の抵抗値Rが大きくなるため、加熱部106の抵抗値Rが大きいほど用紙10の搬送速度を遅くすることにより、用紙10を加熱する時間を長くできる。その結果、加熱部106の劣化により熱量値Tが小さい場合にも、加熱部106は、用紙10を十分な熱量で加熱し、乾燥させることができる。換言すると、加熱部106は、乾燥強度を上げることができる。
【0045】
報知部116は、加熱部106の状態情報を報知する。例えば、報知部116は、加熱部106の交換を通知する情報、または加熱部106の清掃を通知する情報の少なくとも一方を操作部120における操作パネルに表示させることにより、画像形成装置100のユーザに報知する。但し、報知部116による報知は、操作パネルに表示させるものに限らず、音声によるものや、電子メールの送信によるもの等であってもよい。
【0046】
加熱部106の交換を促す情報を視認したユーザは、加熱部106における電熱線が断線する等して使用できなくなる前に加熱部106を交換できるため、画像形成装置100のダウンタイムが短かくなる。
【0047】
また加熱部106の清掃を促す情報を視認したユーザが加熱部106を清掃することにより、外部要因による加熱部106の劣化が改善する。
【0048】
<加熱部106の抵抗値Rと加熱部106の状態情報との関係>
次に、
図4から
図7を参照して、加熱部106の抵抗値Rと加熱部106の状態情報との関係を説明する。
図4は、加熱部106が正常状態である場合の抵抗値R1を例示する図である。
図5は、加熱部106が第1劣化状態である場合の抵抗値R2を例示する図である。
図6は、加熱部106が第2劣化状態である場合の抵抗値R3を例示する図である。
図7は、加熱部106が異常状態である場合の抵抗値R4を例示する図である。
【0049】
図4から
図7のグラフにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は抵抗値Rを表している。第1抵抗閾値th1、第2抵抗閾値th2および第3抵抗閾値th3は、加熱部106の状態を区別するための閾値であり、格納部113に格納されている抵抗閾値情報である。
【0050】
図4では、抵抗値R1は第1抵抗閾値th1未満であり、加熱部106は正常状態である。画像形成装置100は、所望の搬送速度により搬送される用紙10に付与されたインクを加熱部106により好適に加熱し、乾燥させることができる。
【0051】
図5では、抵抗値R2は第1抵抗閾値th1以上であって第2抵抗閾値th2未満であり、加熱部106は第1劣化状態である。この第1劣化状態は、例えば加熱部106が内部要因により劣化したことによって、正常状態と比較して熱量が小さくなり、所望の搬送速度により搬送される用紙10上のインクを十分に乾燥させることができない状態である。この場合には、画像形成装置100は、搬送制御部115により用紙10の搬送速度を遅くすることによって、加熱部106による乾燥強度を確保すると共に、報知部116によって用紙10の搬送速度を遅くしたことをユーザに報知する。
【0052】
ユーザは、搬送速度を重視する場合には、報知された情報に応じて、加熱部106を発注する等の交換準備を行い、その後、ユーザにとって都合がよいタイミングに加熱部106を交換できる。ユーザは、搬送速度を重視しない場合には、正常状態に比べて用紙10の搬送速度は遅いものの、乾燥強度を確保して、画像形成を継続できる。
【0053】
図6では、抵抗値R3が第2抵抗閾値th2以上であって第3抵抗閾値th3未満であり、加熱部106は第2劣化状態である。この第2劣化状態は、例えば内部要因により加熱部106が劣化しつつ、インクミストが付着する等の外部要因により加熱部106が汚染された状態である。第2劣化状態では、正常状態と比較して熱量が小さくなり、所望の搬送速度により搬送される用紙10上のインクを十分に乾燥させることができない状態である。この場合には、画像形成装置100は、搬送制御部115により用紙10の搬送速度をさらに遅くすることによって、加熱部106による乾燥強度を確保すると共に、報知部116によって用紙10の搬送速度を遅くしたことをユーザに報知する。また、画像形成装置100は、サーミスタ107による熱量値Tに基づき、加熱部106が汚染されていることを検知できるため、報知部116によって加熱部106の清掃が必要であることを報知する。
【0054】
ユーザは、搬送速度を重視する場合には、報知された情報に応じて、加熱部106の清掃をユーザにとって都合のよいタイミングに行うことができる。ユーザは、搬送速度を重視しない場合には、正常状態に比べて用紙10の搬送速度は遅いものの、乾燥強度を確保して、画像形成を継続できる。
【0055】
図7では、抵抗値R4が第3抵抗閾値th3以上であり、加熱部106は異常状態である。この異常状態は、例えば加熱部106に含まれる電熱線が断線する等して発熱できない状態である。画像形成装置100は、搬送制御部115により用紙10の搬送を停止すると共に、報知部116により画像形成を停止することをユーザに報知する。画像形成の停止を報知されたユーザによる操作入力に応じて、画像形成装置100は画像形成を停止する。
【0056】
<画像形成装置100の動作例>
図8は、画像形成装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
図8は、画像形成装置100の主電源がオンされたタイミングを起点にした動作を例示している。
【0057】
まず、ステップS81において、画像形成装置100は、交流電源130からの交流電力における交流電圧値を、電圧検出部112により検出する。
【0058】
続いて、ステップS82において、画像形成装置100は、電圧検出部112により検出された交流電圧値が所定の電圧範囲であるか否かを、制御部110により判定する。
【0059】
ステップS82において、所定の電圧範囲ではないと判定された場合には(ステップS82、No)、ステップS83において、画像形成装置100は、画像形成を停止する。
【0060】
一方、ステップS82において、所定の電圧範囲であると判定された場合には(ステップS82、Yes)、ステップS84において、画像形成装置100は、加熱制御部111により、加熱部106に電力を供給する。
【0061】
続いて、ステップS85において、画像形成装置100は、状態情報取得部114により、加熱部106の抵抗値Rを検出する。
【0062】
続いて、ステップS86において、画像形成装置100は、加熱部106の抵抗値Rが第1抵抗閾値th1未満であるか否かを、状態情報取得部114により判定する。
【0063】
ステップS86において、第1抵抗閾値th1未満であると判定された場合には(ステップS86、Yes)、ステップS87において、画像形成装置100は、状態情報取得部114により、加熱部106の熱量値Tを検出する。
【0064】
続いて、ステップS88において、画像形成装置100は、加熱部106の熱量値Tが所定の熱量閾値以上であるか否かを、制御部110により判定する。
【0065】
ステップS88において、所定の熱量閾値以上ではないと判定された場合には(ステップS88、No)、ステップS89において、画像形成装置100は、加熱部106を清掃できたか否かを、制御部110により判定する。例えば制御部110は、操作部120を用いたユーザの操作入力を受け付けることにより、加熱部106を清掃できたか否かを判定できる。
【0066】
ステップS89において、清掃できたと判定された場合には(ステップS89、Yes)、画像形成装置100は、ステップS90に動作を移行する。一方、ステップS89において、清掃できていないと判定された場合には、画像形成装置100は、ステップS83に動作を移行する。
【0067】
一方、ステップS88において、所定の熱量閾値以上であると判定された場合には(ステップS89、Yes)、ステップS90において、画像形成装置100は、用紙10への画像形成を実行する。
【0068】
また、ステップS86において、第1抵抗閾値th1未満ではないと判定された場合には(ステップS86、No)、ステップS91において、画像形成装置100は、抵抗値Rが第3抵抗閾値未満であるか否かを、状態情報取得部114により判定する。
【0069】
ステップS91において、第3抵抗閾値未満であると判定された場合には(ステップS91、Yes)、ステップS92において、画像形成装置100は、操作部120の操作パネルに通知を報知部116により表示させることにより、加熱部106の劣化を報知する。
【0070】
続いて、ステップS93において、画像形成装置100は、搬送制御部115により、搬送部による用紙10の搬送速度を減速する。その後、ステップS90に移行する。
【0071】
一方、ステップS91において、第3抵抗閾値未満ではないと判定された場合には(ステップS91、No)、ステップS94において、画像形成装置100は、搬送制御部115により、搬送部による用紙10の搬送を停止する。その後、画像形成装置100は、ステップS95に動作を移行する。
【0072】
続いて、ステップS95において、画像形成装置100は、画像形成を終了するか否かを判定する。例えば画像形成装置100は、操作部120を用いたユーザの操作入力を受け付けることにより、画像形成を終了するか否かを判定できる。
【0073】
ステップS95において、終了すると判定された場合には(ステップS95、Yes)、ステップS96において、画像形成装置100は、主電源をオフした後、動作を終了する。一方、ステップS95において、終了しないと判定された場合には(ステップS95、No)、画像形成装置100は、ステップS85以降の動作を再度行う。
【0074】
以上のようにして、画像形成装置100は、加熱部106の劣化状態に応じた制御を制御部110により行われつつ、用紙10への画像形成を行うことができる。
【0075】
<画像形成装置100の作用効果>
以上説明したように、画像形成装置100は、用紙10(記録媒体)に画像を形成するものであって、供給電力に応じて発熱することにより用紙10を加熱する加熱部106と、画像形成装置100の動作を制御する制御部110と、を有する。制御部110は、供給電力に応じた加熱部106の抵抗値Rに基づき、加熱部106の劣化状態に応じた制御を行う。例えば、制御部110は、加熱部106の抵抗値Rと、格納部113に予め格納されている加熱部106の状態情報と、に基づき、加熱部106の劣化状態に応じた制御を行う。
【0076】
例えば、加熱部106における電熱線の断線等の異常を判定して画像形成装置を停止させる制御を行うと、加熱部106が異常状態になるまで、加熱部106を交換する等の対策を行うことができない。この結果、画像形成装置のダウンタイムが長くなる。これに対し、画像形成装置100は、加熱部106の劣化状態に応じた制御を行うことができるため、加熱部106が異常状態になる前に、予め加熱部106を交換する等の対策を行うことができる。これにより、ダウンタイムを短縮可能な画像形成装置を提供できる。
【0077】
また本実施形態では、画像形成装置100は、画像を形成するインク(液体)を用紙10に付与する液体付与部105を有し、加熱部106は、用紙10に付与されたインクを加熱する。この構成により、ダウンタイムを短縮可能な液体吐出方式の画像形成装置100を提供できる。
【0078】
また本実施形態では、画像形成装置100は、用紙10を搬送する搬送ドラム104(搬送部)を有し、制御部110は、搬送ドラム104による用紙10の搬送速度を制御する。例えば制御部110は、加熱部106の抵抗値Rが大きいほど搬送ドラム104による用紙10の搬送速度を遅くする。これにより、画像形成装置100は、加熱部106が劣化して加熱部106による発熱量が小さくなった場合にも、加熱時間を長くすることにより乾燥強度を確保することができる。但し、制御部110による搬送速度の制御は、用紙10の搬送速度を遅くすることに限定されるものではない。例えば制御部110は、加熱部106の劣化状態に応じて用紙10の搬送速度を速くすることにより、画像形成装置100による画像形成の生産性を上げることもできる。
【0079】
また本実施形態では、制御部110は、加熱部106の状態情報を報知する報知部116を有する。これにより、画像形成装置100のユーザに加熱部106の状態を認識させ、加熱部106の交換が必要であることや、用紙10の搬送速度が遅くなっている理由等を、ユーザに認識させることができる。
【0080】
また報知部116により報知される加熱部106の状態情報は、加熱部106の交換を通知する情報、または加熱部106の清掃を通知する情報の少なくとも一方を含む。これにより、加熱部106の劣化に対する対策をユーザに伝えることができる。
【0081】
また本実施形態では、制御部110は、交流電力に基づく供給電力に応じた加熱部106の抵抗値Rと、交流電力における交流電圧値または交流電流値の少なくとも一方と、に基づき、加熱部106の劣化状態に応じた制御を行う。例えば、制御部110は、交流電圧値の検出値に基づく抵抗値Rの変動成分を除去した後、抵抗値Rに基づく制御を行う。これにより、交流電力の供給によって加熱部106の抵抗値Rが加熱部106の劣化状態によらずに変動する場合にも、交流電力の変動の影響を抑え、加熱部106の劣化状態に応じた制御を行うことができる。
【0082】
<その他の好適な実施形態>
上述した実施形態では、加熱部106が交流電源130から交流電力を供給される構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、加熱部106は直流電源から直流電力を供給されてもよい。この場合には、状態情報取得部114は、交流電力における交流電圧値または交流電流値を用いずに、供給電力に応じた加熱部の抵抗値に基づき、加熱部106の劣化状態に応じた画像形成装置100の制御を行うことができる。
【0083】
また上述した実施形態では、液体吐出方式の画像形成装置を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、電子写真方式の画像形成装置では、トナーを記録媒体に定着させるために、ヒータ等の加熱部を含む定着部が使用される。この定着部に含まれる加熱部も、上述した実施形態と同様に劣化が生じる。実施形態は、定着部に含まれる加熱部の劣化状態に応じて、画像形成装置を制御することにも適用可能である。
【0084】
また実施形態は、画像形成方法を含む。例えば画像形成方法は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置による画像形成方法であって、前記画像形成装置が、供給電力に応じて発熱する加熱部により、前記記録媒体を加熱し、制御部により、前記画像形成装置の動作を制御し、前記制御部は、前記供給電力に応じた前記加熱部の抵抗値に基づき、前記加熱部の劣化状態に応じた制御を行う。このような画像形成方法により、上述した画像形成装置100と同様の効果を得ることができる。
【0085】
以上、実施形態における一例について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。すなわち、本発明の範囲内で種々の変形および改良が可能である。
【0086】
実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0087】
10 用紙(記録媒体の一例)
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 HDD
15 I/F
20 先塗液
21a 第1塗布ローラ
21b 第2塗布ローラ
30 搬送方向
100 画像形成装置
101 先塗部
102 第1搬送ローラ
103 第2搬送ローラ
104 搬送ドラム(搬送部の一例)
105 液体付与部
106 加熱部
107 サーミスタ
110 制御部
111 加熱制御部
112 電圧検出部
113 格納部
114 状態情報取得部
115 搬送制御部
116 報知部
120 操作部
130 交流電源
200 クライアントPC
R 抵抗値
T 熱量値
th1 第1抵抗閾値
th2 第2抵抗閾値
th3 第3抵抗閾値
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】