(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058928
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】ゲル-ゲル複合体、アクチュエータ、ゲル-ゲル複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/00 20060101AFI20230419BHJP
B29C 65/02 20060101ALI20230419BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
C08J5/00 CER
C08J5/00 CEZ
B29C65/02
B32B27/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168731
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500132214
【氏名又は名称】学校法人明星学苑
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樫村 吉晃
(72)【発明者】
【氏名】古川 一暁
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
4F071AA26X
4F071AB08
4F071AC13A
4F071AC19A
4F071AD02
4F071AE09
4F071AE19A
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4F071AG34
4F071AG36
4F071AH17
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB01
4F071BC01
4F071BC05
4F071BC07
4F071CA01
4F071CA02
4F071CD02
4F071CD07
4F100AB02B
4F100AK17A
4F100AK17B
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4F211AH59
4F211TA01
4F211TC09
4F211TD07
4F211TN28
(57)【要約】
【課題】複数の物質の機能を発現することができるゲル-ゲル複合体を提供する。
【解決手段】本発明のゲル-ゲル複合体1は、第1ゲル2と、第1ゲル2とは組成が異なる第2ゲル3と、を含み、第1ゲル2と第2ゲル3が結合している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ゲルと、前記第1ゲルとは組成が異なる第2ゲルと、を含み、
前記第1ゲルと前記第2ゲルが結合している、ゲル-ゲル複合体。
【請求項2】
前記第1ゲルに含まれる分散質と前記第2ゲルに含まれる分散質は、互いに相溶性がある、請求項1に記載のゲル-ゲル複合体。
【請求項3】
前記第1ゲルと前記第2ゲルの双方は添加物を含み、
前記第1ゲルに含まれる添加物と前記第2ゲルに含まれる添加物は異なる、請求項1または2に記載のゲル-ゲル複合体。
【請求項4】
前記第1ゲルに含まれる分散媒の沸点は前記第1ゲルの融点よりも高く、前記第2ゲルに含まれる分散媒の沸点は前記第2ゲルの融点よりも高い、請求項1~3のいずれか1項に記載のゲル-ゲル複合体。
【請求項5】
前記分散媒はイオン液体であり、前記分散質は高分子化合物である、請求項4に記載のゲル-ゲル複合体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のゲル-ゲル複合体を備え、前記ゲル-ゲル複合体を水面、または液-液界面に配置することにより生じる回転運動を動力として用いる、アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のゲル-ゲル複合体の製造方法であって、
互いに組成の異なるゲルを第1ゲルと第2ゲルとを個別に作製する工程と、
前記第1ゲルと前記第2ゲルを溶着する工程と、を有するゲル-ゲル複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル-ゲル複合体、アクチュエータ、ゲル-ゲル複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲルは、分散質と分散媒とからなる有形の物質であり、固体と液体の特徴を併せ持つ柔らかい物質である。ゲルは、日常、一般に存在するものである。例えば、食品の多くはゲルである。また、生体の構成物の多くはゲルである。これらのゲルでは、一般に、分散質としては高分子化合物が用いられ、分散媒としては水が用いられている。分散媒が水であるゲルは、ヒドロゲルと呼ばれる。食品において、分散媒が水であることは、食品が生命に対して無害であることを保証している。
【0003】
一方、分散媒が水ではないゲルも存在する。例えば、分散媒が有機溶剤であるゲルは、オルガノゲルと呼ばれる。また、分散媒がイオン液体であるゲルは、イオンゲルと呼ばれる。これらのゲルは、主に機能材料として使われる。例えば、オルガノゲルは、人の皮膚との親和性が良いため、化粧品類や経皮吸収型製剤として用いられる。また、オルガノゲルとしては、分子配向性を有するものがある。このような分子配向性を有するオルガノゲルは、光学フィルム等に用いられる(例えば、非特許文献1参照)。イオンゲルは、分散媒のイオン液体が不揮発性であり、かつイオン性を持つという特徴を活かして、固体電解質やデバイスにゲート電圧を印加する電子材料や、修復可能な乾かないゲルとして用いられる(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
このように、ゲルはそれ自体が様々な物性や機能を持つ。さらに、ゲルは、他の材料との複合化が容易であるという特徴を持つ。例えば、少量の色素や砂鉄等の添加物をゲル作製時に混合するにより、これらの物質が分散したゲルが得られる。ゲルが添加物の支持物質となることで、これらのゲルに、新たな機能を付加することが可能である。新たな機能としては、例えば、蛍光を示す機能、磁石から引力を受ける機能等が挙げられる。
【0005】
上述のように、ゲルは様々な物質との複合化が容易である。そのため、ゲルは、機能性材料として産業で広く用いられる。ここで、異種のゲルを接着する技術を加えることによって、これまでに実現できていないゲルとゲルとの複合体、すなわちゲル-ゲル複合体を作製することができる。これにより、ゲルの産業上の用途がさらに拡大する。ゲル-ゲル複合体を作製するためには、異種のゲルを接着する方法が求められている。
【0006】
しかしながら、一般に、異種のゲルを結合させることは非常に困難である。これまでに異種のゲルを接着する方法としては、いくつかの例が知られている。異種のゲルを接着するには、ゲルとゲルとの接着面に接着剤としての異種材料が必要なこと、その適用範囲がヒドロゲルに限定されること等、大きな制約があった(例えば、非特許文献3参照)。また、ヒドロゲルと比較して、電子・光機能性材料として有用なオルガノゲルやイオンゲルについては、その接着法が開発されていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“Self-Assembled Fibrillar Networks through Highly Oriented Aggregates of Porphyrin and Pyrene Substituted by Dialkyl L-Glutamine in Organic Media”T.Sagawa,S.Fukugawa,T.Yamada,H.Ihara,Langmuir,18,7223-7228(2002).
【非特許文献2】“Ion Gels Prepared by in Situ Radical Polymerization of Vinyl Monomers in an Ionic Liquid and Their Characterization as Polymer Electrolytes”M.A.B.H.Susan,T.Kaneko,A.Noda,M.Watanabe,J.Am.Chem Soc.127,4976-4983,(2005).
【非特許文献3】“Nanoparticle solutions as adhesives for gels and biological tissues”S.Rose,A.Prevoteau,P.Elziere,D.Hourdet,A.Marcellan,L.Leibler,Nature 505,382-385(2014).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、複数の物質の機能を発現することができるゲル-ゲル複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るゲル-ゲル複合体は、第1ゲルと、前記第1ゲルとは組成が異なる第2ゲルと、を含み、前記第1ゲルと前記第2ゲルが結合している。
【0010】
本発明の一態様に係るアクチュエータは、本発明の一態様に係るゲル-ゲル複合体を備え、前記ゲル-ゲル複合体を水面、または液-液界面に配置することにより生じる回転運動を動力として用いる。
【0011】
本発明の一態様に係るゲル-ゲル複合体の製造方法は、本発明の一態様に係るゲル-ゲル複合体の製造方法であって、互いに組成の異なるゲルを第1ゲルと第2ゲルとを個別に作製する工程と、前記第1ゲルと前記第2ゲルを溶着する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、複数の物質の機能を発現することができるゲル-ゲル複合体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体を構成するゲルを作製する工程を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体の変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体の変形例の製造方法を模式的に示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体の変形例の製造方法を模式的に示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体の変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体の変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体の変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体の変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体の変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体の変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体の変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体の変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体の変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図15】実施例1において、ゲル-ゲル複合体を構成するゲルフィルムを作製する工程を示すブロック図である。
【
図16】実施例1において、ゲル-ゲル複合体を構成するゲルフィルムを作製する工程を示すブロック図である。
【
図17】実施例1において、ゲル-ゲル複合体の製造方法を模式的に示す斜視図である。
【
図18】実施例1において、ゲル-ゲル複合体の製造方法を模式的に示す斜視図である。
【
図19】実施例1のゲル-ゲル複合体を模式的に示す平面図である。
【
図20】実施例1のゲル-ゲル複合体を模式的に示す平面図である。
【
図21】実施例2において、ゲル-ゲル複合体を構成するゲルフィルムを作製する工程を示すブロック図である。
【
図22】実施例2において、ゲル-ゲル複合体の製造方法を模式的に示す斜視図である。
【
図23】実施例2において、ゲル-ゲル複合体の製造方法を模式的に示す斜視図である。
【
図24】実施例2のゲル-ゲル複合体を模式的に示す斜視図である。
【
図25】実施例3において、ゲル-ゲル複合体の加工方法を模式的に示す平面図である。
【
図26】実施例3のゲル-ゲル複合体を用いたアクチュエータ動作の制御方法を模式的に示す斜視図である。
【
図27】実施例3のゲル-ゲル複合体を用いたアクチュエータ動作の制御方法を模式的に示す斜視図である。
【
図28】実施例3のゲル-ゲル複合体を用いたアクチュエータ動作の制御方法を模式的に示す斜視図である。
【
図29】実施例4において、ゲル-ゲル複合体の製造方法を模式的に示す斜視図である。
【
図30】実施例4において、ゲル-ゲル複合体の製造方法を模式的に示す斜視図である。
【
図31】実施例4のゲル-ゲル複合体を模式的に示す斜視図である。
【
図32】実施例4において、ゲル-ゲル複合体の製造方法を模式的に示す斜視図である。
【
図33】実施例4のゲル-ゲル複合体を模式的に示す斜視図である。
【
図34】比較例において、ゲル-ゲル複合体の製造方法を模式的に示す斜視図である。
【
図35】比較例のゲル-ゲル複合体を模式的に示す斜視図である。
【
図36】比較例のゲル-ゲル複合体の水面における回転運動の様子を模式的に示す斜視図である。
【
図37】比較例のゲル-ゲル複合体の水面における回転運動の様子を模式的に示す正面図である。
【
図38】実施例6のゲル-ゲル複合体を模式的に示す斜視図である。
【
図39】実施例6のゲル-ゲル複合体による回転運動速度の制御方法を模式的に示す正面図である。
【
図40】実施例6のゲル-ゲル複合体を模式的に示す斜視図である。
【
図41】実施例6のゲル-ゲル複合体による回転運動速度の制御方法を模式的に示す正面図である。
【
図42】実施例7のゲル-ゲル複合体を模式的に示す斜視図である。
【
図43】実施例7のゲル-ゲル複合体によるクロロホルムと純水の界面における回転運動の制御方法を模式的に示す正面図である。
【
図44】実施例7のゲル-ゲル複合体によるクロロホルムと純水の界面における回転運動の制御方法を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した実施形態に係るゲル-ゲル複合体とその製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0015】
[ゲル-ゲル複合体]
以下、本発明のゲル-ゲル複合体について、実施形態を示して説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態のゲル-ゲル複合体1は、第1ゲル2と、第1ゲル2とは組成が異なる第2ゲル3とが積層されたものである。言い換えれば、ゲル-ゲル複合体1は、第1ゲル2と、第2ゲル3とが、それぞれの厚さ方向に積層され、結合しているものである。即ち、第1ゲル2と第2ゲル3とは、直接接して一体化されている。第1ゲル2と第2ゲル3は、それぞれの厚さ方向と垂直な面(表面)で互いに接している。
「組成が異なる」とは、ゲルの分散質が異なる形態、ゲルの分散媒が異なる形態、ゲルの分散質と分散媒の比が異なる形態、ゲルに含まれる添加物が異なる形態等、様々なゲルの差異の形態を指す。
【0017】
第1ゲル2は、分散質と分散媒とからなる有形の物質であり、平面視にて長方形のフィルム状である。第2ゲル3は、分散質と分散媒とからなる有形の物質であり、平面視にて長方形のフィルム状である。
【0018】
第1ゲル2に含まれる分散質としては、特に限定されないが、高分子化合物が好ましい。高分子化合物としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリ(ビニリデンフルオリド-コ-トリフルオロエチレン)や、下記式(1)で表されるポリ(ビニリデンフルオリド-コ-ヘキサフルオロプロピレン)等が挙げられる。
【0019】
【0020】
第2ゲル3に含まれる分散質は、第1ゲル2に含まれる分散質と同様である。
第1ゲル2に含まれる分散質と第2ゲル3に含まれる分散質とは、同一のものであってもよく、異種のものであってもよい。第1ゲル2と第2ゲル3の結合を強固にするためには、第1ゲル2に含まれる分散質と第2ゲル3に含まれる分散質は、互いに相溶性があることが好ましい。
【0021】
第1ゲル2における分散質の含有量は、10質量%以上70質量%以下であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。分散質の含有量が前記下限値以上であれば、第1ゲル2の形状が安定に保持される。分散質の含有量が前記上限値以下であれば、第1ゲル2は柔軟性に優れ、水面に配置すると自己推進力による運動を示す。
【0022】
第2ゲル3における分散質の含有量は、10質量%以上70質量%以下であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。分散質の含有量が前記下限値以上であれば、第2ゲル3の形状が安定に保持される。分散質の含有量が前記上限値以下であれば、第2ゲル3は柔軟性に優れ、水面に配置すると自己推進力による運動を示す。
【0023】
第1ゲル2に含まれる分散媒の沸点は、第1ゲル2の融点より高いことが好ましい。第1ゲル2の融点は、50℃~250℃が好ましく、70℃~150℃がより好ましい。このような分散媒としては、特に限定されないが、例えば、水、液晶分子、コレステロール、イオン液体等が挙げられる。イオン液体としては、例えば、1-へキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(1-hexyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethylsulfonyl)amide)、下記式(2)で表される1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(1-ethyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethylsulfonyl)amide)等が挙げられる。
【0024】
【0025】
第1ゲル2における分散媒の含有量は、30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、50質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。分散媒の含有量が前記下限値以上であれば、第1ゲル2は柔軟性に優れる。分散媒の含有量が前記上限値以下であれば、第1ゲル2の形状が安定に保持される。
【0026】
また、第2ゲル3に含まれる分散媒の沸点は、第2ゲル3の融点より高いことが好ましい。第2ゲル3に含まれる分散媒は、第1ゲル2に含まれる分散媒と同様である。
第1ゲル2に含まれる分散媒と、第2ゲル3に含まれる分散媒とは、同一でもよいし、異種でもよい。
第2ゲル3における分散媒の含有量は、30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、50質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。分散媒の含有量が前記下限値以上であれば、第2ゲル3は柔軟性に優れる。分散媒の含有量が前記上限値以下であれば、第2ゲル3の形状が安定に保持される。
第1ゲル2の融点と第2ゲル3の融点との差は、0℃~100℃が好ましく、0℃~30℃がより好ましい。
【0027】
第1ゲル2と第2ゲル3の一方または双方は添加物を含んでいることが好ましい。また、第1ゲルに含まれる添加物と第2ゲルに含まれる添加物は、互いに異なることが好ましい。第1ゲルに含まれる添加物と第2ゲルに含まれる添加物が互いに異なることにより、複数の物質の機能を発現することができるゲル-ゲル複合体1とすることができる。
添加物としては、例えば、色素、砂鉄等が挙げられる。
【0028】
第1ゲル2における添加物の含有量は、0.01質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。添加物の含有量が前記下限値以上であれば、第1ゲル2において、添加物による機能が発現する。添加物の含有量が前記上限値以下であれば、第1ゲル2の形状が安定に保持される。
【0029】
第2ゲル3における添加物の含有量は、0.01質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。添加物の含有量が前記下限値以上であれば、第2ゲル3において、添加物による機能が発現する。添加物の含有量が前記上限値以下であれば、第2ゲル3の形状が安定に保持される。
【0030】
ゲル-ゲル複合体1は、第1ゲル2の成分(分散質、分散媒、添加物)が、第2ゲル3に拡散して、第1ゲル2における第1ゲル2と第2ゲル3の結合面近傍の領域と、第2ゲル3における第1ゲル2と第2ゲル3の結合面近傍の領域とにおいて、第1ゲル2の成分の濃度勾配を有していてもよい。第1ゲル2の成分の濃度勾配を有する領域は、第1ゲル2と第2ゲル3の結合面から、その接合面と垂直な方向に、第1ゲル2側に1mm以上50mm以下の範囲に形成されていることが好ましい。また、第1ゲル2の成分の濃度勾配を有する領域は、第1ゲル2と第2ゲル3の結合面から、その接合面と垂直な方向に、第2ゲル3側に1mm以上50mm以下の範囲に形成されていることが好ましい。このように、第1ゲル2の成分の濃度勾配を有する領域を有することにより、ゲル-ゲル複合体1は、前記の領域にて局所的に第1ゲル2の成分と第2ゲル3の成分とに起因する機能を発現することができる。
【0031】
ゲル-ゲル複合体1は、第2ゲル3の成分(分散質、分散媒、添加物)が、第1ゲル2に拡散して、第1ゲル2における第1ゲル2と第2ゲル3の結合面近傍の領域と、第2ゲル3における第1ゲル2と第2ゲル3の結合面近傍の領域とにおいて、第1ゲル2の成分の濃度勾配を有していてもよい。第2ゲル3の成分の濃度勾配を有する領域は、第1ゲル2と第2ゲル3の結合面から、その接合面と垂直な方向に、第1ゲル2側に1mm以上50mm以下の範囲に形成されていることが好ましい。また、第2ゲル3の成分の濃度勾配を有する領域は、第1ゲル2と第2ゲル3の結合面から、その接合面と垂直な方向に、第2ゲル3側に1mm以上50mm以下の範囲に形成されていることが好ましい。このように、第1ゲル2の成分の濃度勾配を有する領域を有することにより、ゲル-ゲル複合体1は、前記の領域にて局所的に第1ゲル2の成分と第2ゲル3の成分とに起因する機能を発現することができる。
【0032】
本実施形態のゲル-ゲル複合体1は、組成の異なる第1ゲル2と第2ゲル3が結合しているため、第1ゲル2に含まれる物質の機能と第2ゲル3に含まれる物質の機能とを発現することができる。
【0033】
[ゲル-ゲル複合体の製造方法]
以下、本発明のゲル-ゲル複合体の製造方法について、実施形態を示して説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体の製造方法は、上述の実施形態のゲル-ゲル複合体を製造する方法であって、互いに組成の異なる第1ゲルと第2ゲルとを個別に作製する工程(以下、「ゲル作製工程」と言う。)と、第1ゲルと第2ゲルを溶着する工程(以下、「ゲル溶着工程」と言う。)と、を有する。
【0034】
「ゲル作製工程」
ゲル作製工程では、
図2に示すフローに従い、ゲル-ゲル複合体を構成する互いに組成の異なる第1ゲルと第2ゲルを個別に作製する。
第1ゲルと第2ゲルの作製方法としては、公知の方法が用いられる。
例えば、任意の分散質を有機溶媒に溶解して、分散質を含む溶液を調製する。
次いで、この溶液に分散媒を加えて混合し、混合溶液を調製する。
さらに、混合溶液に必要に応じて任意の添加物を加えて、均一になるまで攪拌する。
次いで、添加物を含む混合溶液から有機溶媒を蒸発させて取り除くことにより、目的の添加物を含むゲルを得る。
【0035】
分散質としては、上記の第1ゲル2や第2ゲル3に含まれる分散質が用いられる。
分散媒としては、上記の第1ゲル2や第2ゲル3に含まれる分散媒が用いられる。
【0036】
有機溶媒としては、上記の分散質と分散媒を溶解することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、アセトン、ヘキサン、トルエン、エタノール等が挙げられる。
【0037】
ゲル作製工程において、混合溶液をシャーレ等のガラス容器の底等に平面状に静置した後、混合溶液から有機溶媒を除去すれば、シート状(フィルム状)のゲルが得られる。また、混合溶液を任意の形状を有する成形用の型内に静置した後、混合溶液から有機溶媒を除去すれば、前記の型の内面形状と同一の外面形状を有するゲルが得られる。
【0038】
ゲル作製工程において、混合溶液から有機溶媒を高効率に除去するためには、混合溶液を真空下に配置して、適切な時間放置すればよい。上記の分散質と分散媒は蒸気圧が極めて低く、また、上記の添加物も蒸気圧が低いため、真空下でも蒸発しない。したがって、真空下にて、混合溶液から有機溶媒のみを除去することができる。
【0039】
ゲル-ゲル複合体を構成する第1ゲルと第2ゲル毎に、上記のゲル作製工程を適用して、第1ゲルと第2ゲルを個別に作製する。
【0040】
ゲル作製工程によって作製するゲルの組成は特に限定されないが、互いに結合可能なゲルの組み合わせは、それぞれのゲルを構成する分散質や分散媒の種類に依存する。
【0041】
「ゲル溶着工程」
ゲル接着工程では、ゲル作製工程で作製した、第1ゲルと第2ゲルを溶着する。これにより、互いに組成の異なるゲルを第1ゲルと第2ゲルが結合したゲル-ゲル複合体を得る。
【0042】
第1ゲルと第2ゲルを溶着するには、第1ゲルと第2ゲルを結合したい箇所で接触させて、第1ゲルと第2ゲルの接触箇所を加熱してゲルを溶融させた後、冷却する。
第1ゲルと第2ゲルを溶着する場合、上記の接触箇所の加熱温度は、第1ゲルに含まれる分散媒の沸点および第2ゲルに含まれる分散媒の沸点未満とする。また、加熱温度が前記の沸点未満であっても、第1ゲルと第2ゲルから必要以上に分散媒が蒸発しないように加熱時間を調節する。また、加熱によって、第1ゲルに含まれる分散質や第2ゲルに含まれる分散質が変性する場合、加熱温度を、その変性温度を超えないように調節する。例えば、分散媒として水を用いたヒドロゲルを溶着する場合、上記の接触箇所の加熱温度は100℃以下とする。
【0043】
本実施形態のゲル-ゲル複合体の製造方法によれば、互いに組成の異なるゲルを第1ゲルと第2ゲルとを個別に作製し、その後、第1ゲルと第2ゲルを溶着して一体化するため、それぞれのゲルに含まれる物質の機能を発現することができるゲル-ゲル複合体が得られる。
【0044】
本実施形態のゲル-ゲル複合体の製造方法において、第1ゲル2と第2ゲル3の溶着をより促進させることにより、第1ゲル2における第1ゲル2と第2ゲル3の結合面近傍の領域において、第1ゲル2の成分の濃度勾配を有するゲル-ゲル複合体が得られる。また、本実施形態のゲル-ゲル複合体の製造方法において、第1ゲル2と第2ゲル3の溶着をより促進させることにより、第2ゲル3における第1ゲル2と第2ゲル3の結合面近傍の領域において、第2ゲル3の成分の濃度勾配を有するゲル-ゲル複合体が得られる。
【0045】
本実施形態のゲル-ゲル複合体の製造方法によれば、分散質が同一の高分子化合物であり、分散媒が異種の液体である、互いに組成の異なる第1ゲルと第2ゲルとが結合したゲル-ゲル複合体が得られる。
また、分散質として異種の疎水性高分子化合物を用い、分散媒として異種の液体を用いる場合、本実施形態のゲル-ゲル複合体の製造方法によれば、分散質が異種の疎水性高分子化合物であり、分散媒が異種の液体である、互いに組成の異なる第1ゲルと第2ゲルとが結合したゲル-ゲル複合体が得られる。
【0046】
[アクチュエータ]
本発明の一実施形態に係るアクチュエータは、上述の本発明の一実施形態に係るゲル-ゲル複合体を備え、前記ゲル-ゲル複合体を水面、または液-液界面に配置することにより生じる回転運動を動力として用いるものである。
ゲル-ゲル複合体としては、例えば、水面で回転運動を示すアクチュエータ動作が可能なものや、液-液界面で回転運動を示すアクチュエータ動作が可能なものが挙げられる。
【0047】
水面で回転運動を示すアクチュエータ動作が可能なゲル-ゲル複合体は、複合体を構成するゲルの少なくとも一方が水面でアクチュエータ動作を示すゲルであることを特徴とする。
液-液界面で回転運動を示すアクチュエータ動作が可能なゲル-ゲル複合体は、複合体を構成するゲルの少なくとも一方が液-液界面でアクチュエータ動作を示すゲルであることを特徴とする。
【0048】
本実施形態のアクチュエータによれば、上述の実施形態に係るゲル-ゲル複合体を備え、ゲル-ゲル複合体を水面、または液-液界面に配置することにより生じる回転運動を動力として用いるため、外部からの動力を用いることなく、機械等を動作させることができる。
【0049】
[他の実施形態]
なお、本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
【0050】
【0051】
「第1変形例」
図3に示す第1変形例のゲル-ゲル複合体10は、第1ゲルフィルム11と、第1ゲルフィルム11とは組成が異なる第2ゲルフィルム12とが結合したものである。言い換えれば、ゲル-ゲル複合体10は、平面視長方形の第1ゲルフィルム11と、平面視長方形の第2ゲルフィルム12とが、それぞれの厚さ方向に沿う面(側面)で互いに結合し、一体となったものである。第1ゲルフィルム11と第2ゲルフィルム12は、それぞれの厚さ方向に沿う面(側面)で互いに接している。すなわち、第1ゲルフィルム11と第2ゲルフィルム12は、ゲル-ゲル複合体10の面方向に並んでいる。
第1ゲルフィルム11、第2ゲルフィルム12の構成は、上記の第1ゲル2、第2ゲル3の構成と同様である。
【0052】
図4および
図5を参照して、ゲル-ゲル複合体10の製造方法を説明する。
上述のゲル作製工程に従って、厚さが等しい第1ゲルフィルム11と第2ゲルフィルム12を作製する。
得られた第1ゲルフィルム11と第2ゲルフィルム12をそれぞれ、平面視長方形状に切り出す。
次に、
図4に示すように、第1ゲルフィルム11と第2ゲルフィルム12が、それぞれの側面で互いに接触するように、第1ガラス板21の一方の面21aに、第1ゲル11と第2ゲル12を配置する。
次に、第1ゲルフィルム11と第2ゲルフィルム12の長さ方向に沿うように、第1ガラス板21の一方の面21aにおける互いに向き合う縁部のそれぞれに、スペーサ31を配置する。スペーサ31としては、第1ゲルフィルム11および第2ゲルフィルム12と厚さが等しいものを用いる。
次に、
図5に示すように、第1ゲルフィルム11、第2ゲルフィルム12およびスペーサ31の上に、第2ガラス板22を載置する。
次に、スペーサ31が配置されている部分にて、第1ガラス板21と第2ガラス板22をクリップ41でそれぞれの厚さ方向に挟み込み、第1ガラス板21と第2ガラス板22で第1ゲルフィルム11と第2ゲルフィルム12を固定する。
次に、第1ガラス板21と第2ガラス板22で固定した状態の第1ゲルフィルム11と第2ゲルフィルム12を、電気炉内にて加熱する。電気炉で第1ゲルフィルム11と第2ゲルフィルム12を加熱する温度は、それぞれのゲルフィルムが溶融する温度である。第1ゲルフィルム11と第2ゲルフィルム12を加熱する時間は、それぞれのゲルフィルムが十分に溶融する時間である。
その後、電気炉から第1ゲルフィルム11と第2ゲルフィルム12を取り出して、第1ゲルフィルム11と第2ゲルフィルム12を室温まで冷却する。
第1ガラス板21と第2ガラス板22から、室温まで冷却した第1ゲルフィルム11と第2ゲルフィルム12を剥がすと、第1ゲルフィルム11と第2ゲルフィルム12が、それぞれの側面で互いに結合し、一体となったゲル-ゲル複合体10が得られる。
【0053】
「第2変形例」
図6に示す第2変形例のゲル-ゲル複合体50は、第1ゲルフィルム51と、第1ゲルフィルム51とは組成が異なる第2ゲルフィルム52と、第1ゲルフィルム51および第2ゲルフィルム52とは組成が異なる第3ゲルフィルム53とが結合したものである。言い換えれば、ゲル-ゲル複合体50は、平面視長方形の第1ゲルフィルム51と、平面視長方形の第2ゲルフィルム52と、平面視長方形の第3ゲルフィルム53とが、それぞれの厚さ方向に沿う面(側面)で互いに結合し、一体となったものである。第1ゲルフィルム51と第2ゲルフィルム52は、それぞれの側面で互いに結合している。第2ゲルフィルム52と第3ゲルフィルム53は、それぞれの側面で互いに結合している。すなわち、第1ゲルフィルム51と第2ゲルフィルム52と第3ゲルフィルム53は、ゲル-ゲル複合体50の面方向に並んでいる。
第1ゲルフィルム51、第2ゲルフィルム52、第3ゲルフィルム53の構成は、上記の第1ゲル2、第2ゲル3の構成と同様である。
【0054】
「第3変形例」
図7に示す第3変形例のゲル-ゲル複合体60は、第1ゲルフィルム61と、第1ゲルフィルム61とは組成が異なる第2ゲルフィルム62と、第1ゲルフィルム61および第2ゲルフィルム62とは組成が異なる第3ゲルフィルム63と、第1ゲルフィルム61、第2ゲルフィルム62および第3ゲルフィルム63とは組成が異なる第4ゲルフィルム64とが結合したものである。言い換えれば、ゲル-ゲル複合体60は、平面視長方形の第1ゲルフィルム61と、平面視長方形の第2ゲルフィルム62と、平面視長方形の第3ゲルフィルム63と、平面視長方形の第4ゲルフィルム64とが、それぞれの厚さ方向に沿う面(側面)で互いに結合し、一体となったものである。第1ゲルフィルム61と、第2ゲルフィルム62および第4ゲルフィルム64とは、それぞれの側面で互いに結合している。第2ゲルフィルム62と、第1ゲルフィルム61および第3ゲルフィルム63とは、それぞれの側面で互いに結合している。第3ゲルフィルム63と、第2ゲルフィルム62および第4ゲルフィルム64とは、それぞれの側面で互いに結合している。第4ゲルフィルム64と、第1ゲルフィルム61および第3ゲルフィルム63とは、それぞれの側面で互いに結合している。すなわち、第1ゲルフィルム61と第2ゲルフィルム62と第3ゲルフィルム63と第4ゲルフィルム64は、ゲル-ゲル複合体60の面方向に並んでいる。
第1ゲルフィルム61、第2ゲルフィルム62、第3ゲルフィルム63、第4ゲルフィルム64の構成は、上記の第1ゲル2、第2ゲル3の構成と同様である。
【0055】
「第4変形例」
図8に示す第4変形例のゲル-ゲル複合体70は、第1ゲルフィルム71と、第1ゲルフィルム71とは組成が異なる第2ゲルフィルム72とが、それぞれの厚さ方向に沿う面(側面)で互いに結合し、一体となったものである。言い換えれば、ゲル-ゲル複合体70は、平面視長方形の第1ゲルフィルム71の中央部を厚さ方向に円形にくり抜いて穴を形成し、その穴に平面視円形の第2ゲルフィルム72を埋め込んで、第1ゲルフィルム71と、第2ゲルフィルム72とが、それぞれの厚さ方向に沿う面(側面)で互いに結合し、一体となったものである。なお、平面視において、第1ゲルフィルム71に対する第2ゲルフィルム72の配置は特に限定されず、第1ゲルフィルム71の表面(上面)の任意の位置に、第2ゲルフィルム72を配置することができる。
第1ゲルフィルム71、第2ゲルフィルム72の構成は、上記の第1ゲル2、第2ゲル3の構成と同様である。
【0056】
「第5変形例」
図9に示す第5変形例のゲル-ゲル複合体80は、第1ゲルフィルム81と、第1ゲルフィルム81とは組成が異なる第2ゲルフィルム82とが結合したものである。言い換えれば、ゲル-ゲル複合体80は、平面視半円形の第1ゲルフィルム81と、平面視半円形の第2ゲルフィルム82とが、それぞれの厚さ方向に沿う面(側面)で互いに結合し、一体となったものである。より詳細には、第1ゲルフィルム81と第2ゲルフィルム82は、それぞれの半円の直径となる側面で互いに接している。
第1ゲルフィルム81、第2ゲルフィルム82の構成は、上記の第1ゲル2、第2ゲル3の構成と同様である。
【0057】
「第6変形例」
図10に示す第6変形例のゲル-ゲル複合体90は、
図1に示すゲル-ゲル複合体1を、その長さ方向または幅方向にて円環状に湾曲させて、一方の端面と他方の端面を結合したものである。一方の端面と他方の端面は、ゲル-ゲル複合体1の厚さ方向に沿う面(側面)である。
【0058】
「第7変形例」
図11に示す第7変形例のゲル-ゲル複合体100は、
図3に示すゲル-ゲル複合体10を、その長さ方向にて円環状に湾曲させて、一方の端面と他方の端面を結合したものである。一方の端面と他方の端面は、ゲル-ゲル複合体10の厚さ方向に沿う面(側面)である。
【0059】
「第8変形例」
図12に示す第8変形例のゲル-ゲル複合体110は、
図3に示すゲル-ゲル複合体10を、その幅方向(第1ゲルフィルム11と第2ゲルフィルム12の配列する方向)にて円環状に湾曲させて、第1ゲルフィルム11の端面と第2ゲルフィルム12の端面を結合したものである。第1ゲルフィルム11の端面と第2ゲルフィルム12の端面は、ゲル-ゲル複合体10の厚さ方向に沿う面(側面)である。
【0060】
「第9変形例」
図13に示す第9変形例のゲル-ゲル複合体120は、
図6に示すゲル-ゲル複合体50を、その幅方向(第1ゲルフィルム51と第2ゲルフィルム52と第3ゲルフィルム53の配列する方向)にて円環状に湾曲させて、第1ゲルフィルム51の端面と第3ゲルフィルム53の端面を結合したものである。第1ゲルフィルム51の端面と第3ゲルフィルム53の端面は、ゲル-ゲル複合体50の厚さ方向に沿う面(側面)である。
【0061】
「第10変形例」
図14に示す第10変形例のゲル-ゲル複合体130は、
図1に示すゲル-ゲル複合体1を一定の長さの帯状に切り取り、その長さ方向に円環状に湾曲させるとともに、長さ方向と垂直な幅方向に180°捻って、端面を接触させて結合した、メビウスリング型のゲル-ゲル複合体である。
【0062】
図1、
図3、
図6~
図14に例示した構造以外にも、中空の三角錐構造や円柱構造を有するゲル-ゲル複合体や、ゲル-ゲル複合体で作製したリングをチェーン状につないだ構造等が、本発明により、容易に実現できる。
【実施例0063】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]
「ゲル-ゲル複合体の作製」
(第1ゲルフィルムの作製)
分散質(高分子化合物)として、ポリ(ビニリデンフルオリド-コ-ヘキサフルオロプロピレン)を用いた。分散媒(イオン液体)として、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを用いた。1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの沸点は200℃以上である。
図15に示すフローに従い、第1ゲルを作製した。
ポリ(ビニリデンフルオリド-コ-ヘキサフルオロプロピレン)(数平均分子量130000gmol
-1、重量平均分子量400000gmol
-1、シグマアルドリッチジャパン社製)1gをアセトン7gに溶解して、溶液を調製した。
次に、この溶液に1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド4gを加えて混合し、混合溶液(以下、「溶液A」と言う。)を調製した。
次に、溶液A0.8gを円筒ガラス容器に採取し、円筒ガラス容器を密封することなく室温に放置し、溶液Aに含まれるアセトンを蒸発させた。
その後、この円筒ガラス容器を真空下に1晩配置して、溶液Aに残存するアセトンを除去した。
これらの操作により、円筒ガラス容器の底面に、円形状の透明なゲルフィルム(質量0.32g、厚さ約0.4mm)を得た。
得られたゲルフィルムをガラス板上にとり、ナイフで切断することにより、幅8mmの帯状に加工した(以下、「第1ゲルフィルム」と言う。)。得られた第1ゲルフィルムの融点は、130℃程度であった。
【0065】
(第2ゲルフィルムの作製)
図16に示すフローに従い、第2ゲルフィルムを作製した。
第1ゲルフィルムの作製と同様の方法で調製した溶液Aに、砂鉄0.5gを加えて、均一になるまで攪拌した。
次に、砂鉄を含む溶液A0.8gを円筒ガラス容器に採取し、円筒ガラス容器を密封することなく室温に放置し、溶液Aに含まれるアセトンを蒸発させた。
その後、この円筒ガラス容器を真空下に1晩配置して、溶液Aに残存するアセトンを除去した。
これらの操作により、円筒ガラス容器の底面に、円形状の黒色のゲルフィルム(質量0.32g、厚さ約0.4mm)を得た。
得られたゲルフィルムをガラス板上にとり、ナイフで切断することにより、幅8mmの帯状に加工した(以下、「第2ゲルフィルム」と言う。)。得られた第2ゲルフィルムの融点は、130℃程度であった。
【0066】
(ゲル-ゲル複合体の作製1)
図17および
図18を参照して、ゲル-ゲル複合体の製造方法を説明する。
第1ゲルフィルム141として、上記のようにして作製した第1ゲルフィルムを用いた。第2ゲルフィルム142として、上記のようにして作製した第2ゲルフィルムを用いた。
図17に示すように、第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142が、それぞれの側面で互いに接触するように、第1ガラス板21の一方の面21aに、第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142を配置した。すなわち、第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142を、第1ガラス板21の一方の面21aの面方向に並べた。
次に、第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142の長さ方向に沿うように、第1ガラス板21の一方の面21aにおける互いに向き合う縁部のそれぞれに、スペーサ31を配置した。スペーサ31としては、厚さ0.4mmのステンレス製のものを用いた。
次に、
図18に示すように、第1ゲルフィルム141、第2ゲルフィルム142およびスペーサ31の上に、第2ガラス板22を載置した。
次に、スペーサ31が配置されている部分にて、第1ガラス板21と第2ガラス板22を金属製のクリップ41でそれぞれの厚さ方向に挟み込み、第1ガラス板21と第2ガラス板22で第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142を固定した。
次に、第1ガラス板21と第2ガラス板22で固定した状態の第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142を、あらかじめ140℃に温度調節した電気炉内にて10分間加熱した。
その後、電気炉から第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142を取り出して、第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142を室温まで冷却した。
第1ガラス板21と第2ガラス板22から、室温まで冷却した第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142を剥がすと、第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142が、それぞれの側面で互いに結合し、一体となった、
図19に示すゲル-ゲル複合体140Aが得られた。得られたゲル-ゲル複合体140Aは、平面視にて長楕円形状であった。ゲル-ゲル複合体140Aは、半分が透明(第1ゲルフィルム141)であり、もう半分が黒色(第2ゲルフィルム142)のフィルム状であった。ゲル-ゲル複合体140Aは、幅が約16mm、厚さが約0.4mmであった。第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142を接触させた部分は完全に結合しており、第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142の接触部位において、第1ゲルフィルム141の成分と第2ゲルフィルム142の成分とはほぼ混合することなく分離していた。
【0067】
(ゲル-ゲル複合体の作製2)
並列に配置した第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142を、あらかじめ140℃に温度調節した電気炉内にて60分間加熱したこと以外は、ゲル-ゲル複合体の作製1と同様にして、ゲル-ゲル複合体140Bを作製した。
得られたゲル-ゲル複合体140Bは、
図20に示すように、平面視にて長楕円形状であった。また、ゲル-ゲル複合体140Bは、長さ方向に沿う一方の端部(第1ゲルフィルム141側の端部)が透明であり、長さ方向に沿う他方の端部(第2ゲルフィルム142側の端部)が黒色のフィルム状であった。ゲル-ゲル複合体140Bは、幅が約16mm、厚さが約0.4mmであった。第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142を接触させた部分は完全に結合していた。ゲル-ゲル複合体140Bは、第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142の接触部位において、第1ゲルフィルム141の成分と第2ゲルフィルム142の成分とが混合し、第1ゲルフィルム141と第2ゲルフィルム142の結合面近傍の領域にて、砂鉄の濃度勾配を有していた。
【0068】
[実施例2]
「着色ゲルの作製」
図21に示すフローに従い、白色ゲルを作製した。
フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体[ポリ(ビニリデンフルオリド-コ-ヘキサフルオロプロピレン)、数平均分子量130000gmol
-1、重量平均分子量400000gmol
-1、シグマアルドリッチジャパン社製]1gをアセトン7gに溶解して、溶液を調製した。
次に、この溶液に1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド4gを加えて混合し、混合溶液を調製した。
次に、この混合溶液に水、有機溶媒、イオン液体に不溶の白色顔料0.2gを加え、白色顔料が混合溶液中に均一に分散するまで攪拌した。
次に、この混合溶液0.8gを円筒ガラス容器に採取し、円筒ガラス容器を密封することなく室温に放置し、混合溶液に含まれるアセトンを蒸発させた。
その後、この円筒ガラス容器を真空下に1晩配置して、混合溶液に残存するアセトンを除去した。
これらの操作により、円筒ガラス容器の底面に、円形状の白色ゲルフィルム(質量0.33g、厚さ約0.4mm)を得た。
上記白色ゲルフィルムの作製方法において、白色顔料の代わりに青色顔料を用いて、円形状の青色ゲルフィルム(質量0.33g、厚さ約0.4mm)を得た。
【0069】
図22および
図23を参照して、ゲル-ゲル複合体150の製造方法を説明する。
得られた白色ゲルフィルム151と青色ゲルフィルム152とをそれぞれ、平面視にて一辺の長さが30mmの正方形状に切り出した。
次に、
図22に示すように、白色ゲルフィルム151と青色ゲルフィルム152が、それぞれの厚さ方向と垂直な面(表面)で互いに接するように、第1ガラス板21の一方の面21aに、白色ゲルフィルム151と青色ゲルフィルム152を、それぞれの厚さ方向に積層して、配置した。
次に、白色ゲルフィルム151と青色ゲルフィルム152の長さ方向に沿うように、第1ガラス板21の一方の面21aにおける互いに向き合う縁部のそれぞれに、スペーサ31を配置した。スペーサ31としては、厚さ約0.8mmのものを用いた。
次に、
図23に示すように、白色ゲルフィルム151、青色ゲルフィルム152およびスペーサ31の上に、第2ガラス板22を載置した。
次に、スペーサ31が配置されている部分にて、第1ガラス板21と第2ガラス板22を金属製のクリップ41でそれぞれの厚さ方向に挟み込み、第1ガラス板21と第2ガラス板22で白色ゲルフィルム151と青色ゲルフィルム152を固定した。
次に、第1ガラス板21と第2ガラス板22で固定した状態の白色ゲルフィルム151と青色ゲルフィルム152を、あらかじめ140℃に温度調節した電気炉内にて10分間加熱した。
その後、電気炉から白色ゲルフィルム151と青色ゲルフィルム152を取り出して、白色ゲルフィルム151と青色ゲルフィルム152を室温まで冷却した。
第1ガラス板21と第2ガラス板22から、室温まで冷却した白色ゲルフィルム151と青色ゲルフィルム152を剥がすと、白色ゲルフィルム151と青色ゲルフィルム152が、それぞれの厚さ方向と垂直な面で互いに結合して、一体となった、
図24に示すゲル-ゲル複合体150を得た。得られたゲル-ゲル複合体150は、一方の面が白色で、他方の面が青色のフィルム状であった。ゲル-ゲル複合体150は、厚さが約0.8mm、一辺の長さが30mmの正方形状であった。
【0070】
[実施例3]
実施例1で得られたゲル-ゲル複合体140Aを、
図25に示すように、長さ8mm、幅3mmの短冊状のゲル-ゲル複合体140Cに切断加工した。この時、
図25に示すように、ゲル-ゲル複合体140Cの長さ方向において、5mmがゲル、3mmが砂鉄含有ゲルとなるように切断した。このゲル-ゲル複合体140Cの中心に、ポンチにより直径1.5mmの穴141を開けた。
図26に示すように、直径5cmのガラスシャーレ160を用意し、その中心に直径0.8mmの洋白線(回転軸)170をガラスシャーレ160の底面と垂直に固定した。このガラスシャーレ160に純水180を10mL注入し、ガラスシャーレ160の近傍に電磁石190を配置した。
電磁石190に電流を流さない状態で、ゲル-ゲル複合体140Cの中心に開けた穴141に洋白線170を挿通して、ゲル-ゲル複合体140Cを水面に静かに配置すると、ゲル-ゲル複合体140Cは水面に浮かんだ。その直後より、
図27に示すように、ゲル-ゲル複合体140Cは洋白線170を軸とした回転運動を始めた。回転速度は、およそ1秒間に5回転であった。ここで、電磁石190に電流を流して磁場を印加すると、
図28に示すように、回転しているゲル-ゲル複合体140Cの砂鉄を含む領域は磁場が加えられた方向に引力を受け、その方向に向かった状態で静止した。電磁石190に電流を流すのを止めて磁場をゼロに戻すと、ゲル-ゲル複合体140Cは再び水面で回転運動を始めた。ゲル-ゲル複合体140Cについて、水面で回転運動を示すアクチュエータ動作と、磁場によるアクチュエータ動作の制御とが確認された。
ここで、ゲル-ゲル複合体140Cの回転運動について説明する。ゲル-ゲル複合体140Cが水面に置かれると、ゲルの内部に含まれるイオン液体は水面および水中に溶出する。イオン液体が溶出した水面では表面張力が低下する。イオン液体の溶出は、ゲルの構造がアモルファスであることから、完全に等方的ではない。このため、ゲルが表面張力から受ける力は局所的に異なり、ゲルは力を受けることとなる。ゲル-ゲル複合体140Cは長方形状であり、中心が軸に固定されていることから、この力により回転運動が生じる。
【0071】
[実施例4]
「ゲル-ゲル複合体の3次元リング構造」
実施例2と同様にして、白色ゲルフィルムを作製した。また、実施例2に示す白色ゲルの作製方法において、白色顔料の代わりに青色顔料を用いて、青色ゲルフィルムを作製した。また、実施例2に示す白色ゲルの作製方法において、白色顔料の代わりに赤色顔料を用いて、赤色ゲルフィルムを作製した。
得られた白色ゲルフィルム、青色ゲルフィルムおよび赤色ゲルフィルムをそれぞれ、長さ8mm、幅3mmの短冊状に切断加工した。
【0072】
図29および
図30を参照して、ゲル-ゲル複合体の製造方法を説明する。
図29に示すように、青色ゲルフィルム201と白色ゲルフィルム202が、それぞれの長さ方向の端面(側面)で互いに接し、さらに、白色ゲルフィルム202と赤色ゲルフィルム203が、それぞれの長さ方向の端面(側面)で互いに接するように、第1ガラス板21の一方の面21aに、青色ゲルフィルム201と白色ゲルフィルム202と赤色ゲルフィルム203を配置した。
次に、青色ゲルフィルム201と白色ゲルフィルム202と赤色ゲルフィルム203の長さ方向に沿うように、第1ガラス板21の一方の面21aにおける互いに向き合う縁部のそれぞれに、スペーサ31を配置した。スペーサ31としては、厚さ0.4mmのステンレス製のものを用いた。
次に、
図30に示すように、青色ゲルフィルム201、白色ゲルフィルム202、赤色ゲルフィルム203およびスペーサ31の上に、第2ガラス板22を載置した。
次に、スペーサ31が配置されている部分にて、第1ガラス板21と第2ガラス板22を金属製のクリップ41でそれぞれの厚さ方向に挟み込み、第1ガラス板21と第2ガラス板22で青色ゲルフィルム201と白色ゲルフィルム202と赤色ゲルフィルム203を固定した。
次に、第1ガラス板21と第2ガラス板22で固定した状態の第1ゲル21と第2ゲル22を、あらかじめ140℃に温度調節した電気炉内にて10分間加熱した。
その後、電気炉から青色ゲルフィルム201と白色ゲルフィルム202と赤色ゲルフィルム203を取り出して、青色ゲルフィルム201と白色ゲルフィルム202と赤色ゲルフィルム203を室温まで冷却した。
第1ガラス板21と第2ガラス板22から、室温まで冷却した青色ゲルフィルム201と白色ゲルフィルム202と赤色ゲルフィルム203を剥がすと、青色ゲルフィルム201と白色ゲルフィルム202と赤色ゲルフィルム203が、それぞれの側面で互いに結合して、一体となった、
図31に示すゲル-ゲル複合体200Aが得られた。得られたゲル-ゲル複合体200Aは、長さが25mm、幅が3mm、厚さが0.4mmのリボン状であった。
続いて、
図32に示すように、リボン状のゲル-ゲル複合体200Aを、内径8mmのアルミニウム製の円筒210の内側面210aに、青色ゲルフィルム201の長さ方向の端面と赤色ゲルフィルム203の長さ方向の端面とが接してリング状になるように配置した。
円筒210とともにゲル-ゲル複合体200Aを、あらかじめ140℃に温度調節した電気炉内にて3分間加熱した。
その後、電気炉から円筒210とゲル-ゲル複合体200Aを取り出して、円筒210とゲル-ゲル複合体200Aを室温まで冷却した。
室温にて、円筒210からゲル-ゲル複合体200Aを取り出した。
これにより、
図33に示すように、青色-白色-赤色の3つの領域を持ち、ゲル-ゲル複合体200Aの両端面(青色ゲルフィルム201の長さ方向の端面と赤色ゲルフィルム203の長さ方向の端面)が結合した、幅3mmのリング状のゲル-ゲル複合体200Bを得た。
【0073】
[実施例5]
「ゲル-ゲル複合体の3次元メビウスリング構造」
実施例2で得た厚さ約0.8mmのゲル-ゲル複合体150を、長さ20mm、幅2mmの短冊状に切断加工した。
ピンセットを用いて、この短冊の両端を接触させた。この際、一方の端を幅方向に180°回転させて捻り、短冊の一端面の白色ゲルフィルム151からなる面と短冊の他端面の青色ゲルフィルム152からなる面が接するように短冊の両端を接触させた。この状態で、接触させた部位のみを局所的な加熱器で加熱した。接触部位が溶融した後、加熱を停止し、室温まで冷却した。これにより、接触部位は結合し、メビウスリング型のゲル-ゲル複合体が得られた。
【0074】
[比較例]
「水面における3次元リング構造のゲル-ゲル複合体の動き」
実施例2と同様にして、白色ゲルフィルムを作製した。
得られた白色ゲルフィルムを、長さ25mm、幅3mmの短冊状に切断加工した。
実施例4と同様にして、
図34に示すように、円筒210を用いて、白色ゲルフィルム220Aをリング状に加工し、
図35に示すリング状の白色ゲルフィルム220Bを作製した。
図36に示すように、直径10cmの深底のガラスシャーレ230を用意し、このガラスシャーレ230に純水240を300mL注入した。
リング状の白色ゲルフィルム220Bを水面に静かに配置すると、
図36に示すように、白色ゲルフィルム220Bは、片方の円が水面に他方の円が水中に位置する状態で水面に浮かんだ。その直後より、
図36および
図37に示すように、白色ゲルフィルム220Bは回転運動を始めた。回転速度は、およそ1秒間に1回転であった。白色ゲルフィルム220Bについて、水面で回転運動を示すアクチュエータ動作が確認された。
ここで、白色ゲルフィルム220Bの回転運動について説明する。白色ゲルフィルム220Bが水面に置かれると、ゲルの内部に含まれるイオン液体は水面および水中に溶出する。イオン液体が溶出した水面では表面張力が低下する。イオン液体の溶出は、ゲルの構造がアモルファスであることから、完全に等方的ではない。このため、ゲルが表面張力から受ける力は局所的に異なり、ゲルは力を受けることとなる。白色ゲルフィルム220Bは円筒状であり、リングの周方向と垂直な面(側面)が水中にあることから、並進運動に対する水の抵抗力が強いため、この力により回転運動が生じる。
【0075】
[実施例6]
「リング構造による回転運動速度の制御」
実施例2と同様にして、白色ゲルフィルムを作製した。また、実施例2に示す白色ゲルの作製方法において、白色顔料の代わりに黒色顔料を用いて、黒色ゲルフィルムを作製した。白色ゲルフィルムは、作製時に用いたイオン液体が水に不溶であるため、水面に置いても自己推進力による運動を示さなかった。黒色ゲルフィルムは、作製時に用いたイオン液体が水に可溶であるため、水面に置くと自己推進力による運動を示した。
得られた白色ゲルフィルムおよび黒色ゲルフィルムをそれぞれ短冊状に切断加工した。
実施例4と同様にして、
図38に示す、白色ゲルフィルム251と黒色ゲルフィルム252とが交互に2つずつ周方向に結合したリング状のゲル-ゲル複合体250を作製した。白色ゲルフィルム251と黒色ゲルフィルム252の構成比は、面積比で1:1であった。
図39に示すように、直径10cmの深底のガラスシャーレ260を用意し、このガラスシャーレ260に純水270を300mL注入した。
リング状のゲル-ゲル複合体250を水面に静かに配置すると、
図39に示すように、ゲル-ゲル複合体250は、リングの周方向と垂直な面(側面)の一方が水面に位置し、リングの周方向と垂直な面(側面)の他方が水中に位置する状態で水面に浮かんだ。その直後より、
図39に示すように、ゲル-ゲル複合体250は、リングの中心軸を中心とした回転運動を始めた。回転速度は、およそ1秒間に2回転であった。ゲル-ゲル複合体250について、水面で回転運動を示すアクチュエータ動作が確認された。
また、上記の白色ゲルフィルム251と黒色ゲルフィルム252を用いて、
図40に示す、白色ゲルフィルム251と黒色ゲルフィルム252とが交互に4つずつ周方向に結合したリング状のゲル-ゲル複合体280を作製した。白色ゲルフィルム251と黒色ゲルフィルム252の構成比は、面積比で4:1であった。
図41に示すように、直径10cmの深底のガラスシャーレ260を用意し、このガラスシャーレ260に純水270を300mL注入した。
リング状のゲル-ゲル複合体280を水面に静かに配置すると、
図41に示すように、ゲル-ゲル複合体280は、リングの周方向と垂直な面(側面)の一方が水面に位置し、リングの周方向と垂直な面(側面)の他方が水中に位置する状態で水面に浮かんだ。その直後より、
図41に示すように、ゲル-ゲル複合体280は、リングの中心軸を中心とした回転運動を始めた。回転速度は、およそ1秒間に0.5回転であった。ゲル-ゲル複合体280について、水面で回転運動を示すアクチュエータ動作が確認された。
このように、ゲルの構成を調整することにより、ゲル-ゲル複合体が水面で回転運動を示すアクチュエータ動作において、回転数を制御できることが確認された。
ここで、ゲル-ゲル複合体280の回転運動について説明する。ゲル-ゲル複合体280が水面に置かれると、ゲルの内部に含まれるイオン液体は水面および水中に溶出する。イオン液体が溶出した水面では表面張力が低下する。イオン液体の溶出は、ゲルの構造がアモルファスであることから、完全に等方的ではない。このため、ゲルが表面張力から受ける力は局所的に異なり、ゲルは力を受けることとなる。ゲル-ゲル複合体280は円筒状であり、リングの周方向と垂直な面(側面)が水中にあることから、並進運動に対する水の抵抗力が強いため、この力により回転運動が生じる。
【0076】
[実施例7]
「リング構造による界面での回転運動の制御」
実施例2と同様にして、白色ゲルフィルムを作製した。また、実施例2に示す白色ゲルの作製方法において、白色顔料の代わりに黒色顔料を用いて、黒色ゲルフィルムを作製した。白色ゲルフィルムは、作製時に用いたイオン液体が水に不溶であるため、水面に置いても自己推進力による運動を示さなかった。黒色ゲルフィルムは、作製時に用いたイオン液体が水に可溶であるため、水面に置くと自己推進力による運動を示した。
得られた白色ゲルフィルムおよび黒色ゲルフィルムをそれぞれ短冊状に切断加工した。
実施例1と同様にして、白色ゲルフィルムと黒色ゲルフィルムが、それぞれの側面で互いに結合されて、一体となったゲル-ゲル複合体を作製した。
実施例4と同様にして、
図42に示す、リング状のゲル-ゲル複合体290を作製した。白色ゲルフィルム291と黒色ゲルフィルム292の構成比は、面積比で1:1であった。
図43および
図44に示すように、直径5cmの深底のガラスシャーレ300を用意し、このガラスシャーレ300にクロロホルム310を10mL注いだ後、純水320を10mL注入した。
図43に示すように、ゲル-ゲル複合体290を、白色ゲルフィルム291がガラスシャーレ300の深さ方向の下方となり、黒色ゲルフィルム292がガラスシャーレ300の深さ方向の上方となるようにして、クロロホルム310と純水320の界面に、リングの周方向と垂直な面(側面)の一方(黒色ゲルフィルム292側の面、ゲル-ゲル複合体290の上端面)が接するように配置すると、ゲル-ゲル複合体290は界面で回転運動を始めた。回転速度は、およそ1秒間に2回転であった。
図44に示すように、ゲル-ゲル複合体290をガラスシャーレ300の深さ方向の上方に少し引き上げて、クロロホルム310と純水320の界面に、リングの周方向と垂直な面(側面)の他方(白色ゲルフィルム291側の面、ゲル-ゲル複合体290の下端面)が接するように配置すると、ゲル-ゲル複合体290は回転運動を停止した。
次に、ゲル-ゲル複合体290をガラスシャーレ300の深さ方向の下方に少し押し下げて、再びクロロホルム310と純水320の界面に、リングの周方向と垂直な面(側面)の一方(黒色ゲルフィルム292側の面、ゲル-ゲル複合体290の上端面)が接するように配置すると、ゲル-ゲル複合体290は再び回転を始めた。
このように、液-液界面で回転運動を示すアクチュエータ動作において、ゲル-ゲル複合体のわずかな上下移動によって、回転運動を制御できることが確認された。
ここで、ゲル-ゲル複合体290の回転運動について説明する。ゲル-ゲル複合体290が、黒色ゲルフィルム292が液-液界面にあるように、液-液界面に置かれると、黒色ゲルフィルム292の内部に含まれるイオン液体は水およびクロロホルム中に溶出する。イオン液体が溶出した液-液界面では、界面張力が低下する。イオン液体の溶出は、ゲルの構造がアモルファスであることから、完全に等方的ではない。このため、ゲルが界面張力から受ける力は局所的に異なり、ゲルは力を受けることとなる。ゲル-ゲル複合体290は円筒状であり、リングの周方向と垂直な面(側面)が液中にあることから、並進運動に対する水の抵抗力が強いため、この力により回転運動が生じる。一方、ゲル-ゲル複合体290が、白色ゲルフィルム291が液-液界面にあるように、液-液界面に置かれると、白色ゲルフィルム291の内部に含まれるイオン液体は水に溶けないので、液-液界面に界面張力の差が生じず、ゲル-ゲル複合体290は回転運動を示さない。
【0077】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
本発明のゲル-ゲル複合体は、組成の異なるゲルを複数含み、この複数のゲルが結合して一体となっているため、それぞれのゲルに含まれる物質の機能を局所的に発現することができる。したがって、本発明のゲル-ゲル複合体は、これまでに実現されていない機能を有する材料開発にも貢献することができる。