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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059081
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】基板支持部及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230419BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230419BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20230419BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/205
H02N13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168981
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂山 和基
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 道茂
(72)【発明者】
【氏名】長山 将之
(72)【発明者】
【氏名】古谷 直一
(72)【発明者】
【氏名】原島 卓也
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004BB29
5F004BC06
5F004BD04
5F004CA06
5F045AA08
5F045DP03
5F045EF05
5F045EH14
5F045EH20
5F045EJ03
5F045EJ09
5F045EK06
5F045EM05
5F045EM09
5F045EN04
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA04
5F131CA06
5F131EB14
5F131EB22
5F131EB52
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB85
(57)【要約】
【課題】プラズマ処理の均一性を向上させることができる基板支持部及びプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】基板支持部は、プラズマ処理容器内に配置される基板支持部であって、基板を支持する支持面を備えるとともに、誘電体で形成される静電チャックと、静電チャックを支持する基台と、を有し、静電チャックは、支持面に基台側から伝熱ガスを供給する伝熱ガス供給孔と、伝熱ガス供給孔内に配置され、支持面において、誘電体と物理特性を揃えるように気孔率が制御されたポーラス材で構成される第1の部材と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理容器内に配置される基板支持部であって、
基板を支持する支持面を備えるとともに、誘電体で形成される静電チャックと、
前記静電チャックを支持する基台と、を有し、
前記静電チャックは、
前記支持面に前記基台側から伝熱ガスを供給する伝熱ガス供給孔と、
前記伝熱ガス供給孔内に配置され、前記支持面において、前記誘電体と物理特性を揃えるように気孔率が制御されたポーラス材で構成される第1の部材と、を備える、
基板支持部。
【請求項2】
前記基板支持部は、さらに、前記基板を授受するためのリフトピンを有し、
前記静電チャックは、さらに、前記リフトピンが貫通するピン用貫通孔を備え、
前記リフトピンは、先端側に前記ポーラス材で構成される第2の部材を備える、
請求項1に記載の基板支持部。
【請求項3】
前記リフトピンは、前記第2の部材の側面の一部が、前記ピン用貫通孔の上部の側面と円周において接触するように構成される、
請求項2に記載の基板支持部。
【請求項4】
前記誘電体は、アルミナである、
請求項1~3のいずれか1つに記載の基板支持部。
【請求項5】
前記物理特性は、比誘電率である、
請求項1~4のいずれか1つに記載の基板支持部。
【請求項6】
前記ポーラス材は、ジルコニアである、
請求項5に記載の基板支持部。
【請求項7】
前記気孔率は、61%~79%の範囲である、
請求項6に記載の基板支持部。
【請求項8】
前記ポーラス材は、ハフニアである、
請求項5に記載の基板支持部。
【請求項9】
前記気孔率は、49%~72%の範囲である、
請求項8に記載の基板支持部。
【請求項10】
前記物理特性は、熱伝導率である、
請求項1~4のいずれか1つに記載の基板支持部。
【請求項11】
前記ポーラス材は、窒化アルミニウムである、
請求項10に記載の基板支持部。
【請求項12】
前記気孔率は、72.3%~85.0%の範囲である、
請求項11に記載の基板支持部。
【請求項13】
前記ポーラス材は、炭化ケイ素である、
請求項10に記載の基板支持部。
【請求項14】
前記気孔率は、75.5%~86.8%の範囲である、
請求項13に記載の基板支持部。
【請求項15】
プラズマ処理容器と、
前記プラズマ処理容器内に配置される基板支持部と、を有し、
前記基板支持部は、
基板を支持する支持面を備えるとともに、誘電体で形成される静電チャックと、
前記静電チャックを支持する基台と、を有し、
前記静電チャックは、
前記支持面に前記基台側から伝熱ガスを供給する伝熱ガス供給孔と、
前記伝熱ガス供給孔内に配置され、前記支持面において、前記誘電体と物理特性を揃えるように気孔率が制御されたポーラス材で構成される第1の部材と、を備える、
プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板支持部及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置では、プラズマ処理を行うプラズマ処理容器内に、処理対象の基板を支持する基板支持部を有する。基板支持部には、基板支持部に置かれた基板の裏面と基板支持部の支持面との間に伝熱ガスを供給するための供給孔が形成されている。この供給孔では、プラズマ処理の際に異常放電が発生する場合がある。これに対し、異常放電を抑制するために、供給孔にポーラス材を挿入することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10896837号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマ処理の均一性を向上させることができる基板支持部及びプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板支持部は、プラズマ処理容器内に配置される基板支持部であって、基板を支持する支持面を備えるとともに、誘電体で形成される静電チャックと、静電チャックを支持する基台と、を有し、静電チャックは、支持面に基台側から伝熱ガスを供給する伝熱ガス供給孔と、伝熱ガス供給孔内に配置され、支持面において、誘電体と物理特性を揃えるように気孔率が制御されたポーラス材で構成される第1の部材と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理システムの一例を示す図である。
図2図2は、本実施形態の支持面における伝熱ガス供給孔及びピン用貫通孔の配置の一例を示す上面図である。
図3図3は、図2のA-A線における断面の一例を示す図である。
図4図4は、リフトピン下降時におけるリフトピン及びピン用貫通孔の断面の一例を示す図である。
図5図5は、リフトピン上昇時におけるリフトピン及びピン用貫通孔の断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示する基板支持部及びプラズマ処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0009】
プラズマ処理の際、伝熱ガスの供給孔における異常放電を抑制するために、供給孔にポーラス材を挿入する場合、支持面に材質の異なる箇所(特異点)があることになる。また、供給孔にポーラス材を挿入しない場合(空間がある場合)であっても同様に特異点となる。供給孔に挿入されたポーラス材は、周囲の支持面の材質と比誘電率や熱伝導率といった物理特性が異なるため、プラズマの均一性や基板温度の均一性等のプラズマ処理における均一性を損なう場合がある。そこで、プラズマ処理の均一性を向上させることが期待されている。
【0010】
[プラズマ処理システムの構成]
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理システムの一例を示す図である。図1に示すように、プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間10sからガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0011】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0012】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF(Radio Frequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0013】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0014】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された後述する伝熱ガス供給部52を含む。
【0015】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0016】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0017】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0018】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0019】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0020】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0021】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0022】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0023】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0024】
[基板支持部11の詳細]
次に、図2及び図3を用いて基板支持部11の詳細について説明する。図2は、本実施形態の支持面における伝熱ガス供給孔及びピン用貫通孔の配置の一例を示す上面図である。図3は、図2のA-A線における断面の一例を示す図である。図2に示すように、基板支持面である中央領域111aには、円周C1上に複数の伝熱ガス供給孔50と、複数のピン用貫通孔60とが、それぞれ等間隔に設けられる。また、中央領域111aには、円周C2上に複数の伝熱ガス供給孔50が等間隔に設けられる。さらに、リング支持面である環状領域111bには、円周C3上に複数の伝熱ガス供給孔50が等間隔に設けられる。円周C1~C3上の各伝熱ガス供給孔50の数は、例えばそれぞれ6個とすることができるが、円周C1~C3上においてそれぞれ等間隔であれば数は限定されない。また、円周C1上のピン用貫通孔60の数は、例えば3個とすることができるが、4個以上であってもよい。
【0025】
図3に示すように、各伝熱ガス供給孔50は、基台1110の内部に設けられた伝熱ガス供給路51に接続される。また、各ピン用貫通孔60は、リフトピン61との隙間を介して中央領域111aに伝熱ガスを供給可能なように、伝熱ガス供給路51に接続される。なお、図3では、基台1110内の流路1110a、及び、静電チャック1111内の静電電極1111bは図示を省略している。
【0026】
伝熱ガス供給部52は、基板支持部11の基台1110及び静電チャック1111に設けられた伝熱ガス供給孔50及びピン用貫通孔60に、伝熱ガス供給路51を介して、伝熱ガス(冷熱伝達用ガス)を供給する。伝熱ガスとしては、例えばヘリウムガスが用いられる。伝熱ガスは、中央領域111aの伝熱ガス供給孔50及びピン用貫通孔60から、基板Wの裏面と中央領域111aとの間に供給される。また、伝熱ガスは、環状領域111bの伝熱ガス供給孔50から、リングアセンブリ112と環状領域111bとの間に供給される。伝熱ガスを供給することで、プラズマ処理により入熱し高温となった基板Wとエッジリングの抜熱を行う。
【0027】
伝熱ガス供給孔50内には、ポーラス材で構成される部材53が配置される。部材53は、第1の部材の一例である。部材53は、中央領域111a及び環状領域111bにおいて、静電チャック1111のセラミック部材1111aと物理特性を揃えるように気孔率が制御されたポーラス材である。部材53は、例えば、静電チャック1111の製造時に伝熱ガス供給孔50内に挿入されて、セラミック部材1111aと同時に焼結される。つまり、部材53は、静電チャック1111の伝熱ガス供給孔50内において、周囲のセラミック部材1111aと一体化されている。なお、部材53は、他の方法によって伝熱ガス供給孔50内に固定されてもよい。
【0028】
ピン用貫通孔60内には、ポーラス材で構成される先端部64を備えるリフトピン61が配置される。先端部64は、第2の部材の一例である。リフトピン61は、駆動機構62により、先端部64が中央領域111aの表面から突没可能なように、上下にスライドさせることができる。ピン用貫通孔60の最下部には、リフトピン61との間で気密を保つためにOリング63が設けられている。先端部64は、中央領域111aにおいて、静電チャック1111のセラミック部材1111aと物理特性を揃えるように気孔率が制御されたポーラス材である。なお、リフトピン61は、先端部64だけでなくリフトピン61全体をポーラス材とするように構成されてもよい。
【0029】
ここで、図4及び図5を用いて、リフトピン61の詳細について説明する。図4は、リフトピン下降時におけるリフトピン及びピン用貫通孔の断面の一例を示す図である。図5は、リフトピン上昇時におけるリフトピン及びピン用貫通孔の断面の一例を示す図である。図4に示すように、先端部64は、リフトピン61の先端から静電チャック1111の厚さと略同一となる長さに渡って設けられている。先端部64の上端は、ピン用貫通孔60よりも大きい径を有する凸部64aが設けられている。凸部64aは、リフトピン61を中心とした円錐状であり、傾斜面64bがピン用貫通孔60の上端に設けられた凹部の傾斜面60aと当接するようになっている。つまり、リフトピン61の下降時には、傾斜面60aと傾斜面64bとが当接することで、先端部64によってピン用貫通孔60の上端が塞がれる。すなわち、リフトピン61は、先端部64の側面の一部(傾斜面64b)が、ピン用貫通孔60の上部の側面(傾斜面60a)と円周において接触するように構成される。また、先端部64の上面と中央領域111aの表面とは、略同一の面となるように構成される。このとき、伝熱ガスは、ピン用貫通孔60とリフトピン61との隙間からポーラス材である先端部64内を通って、基板Wの裏面と中央領域111aとの間に供給される。
【0030】
一方、図5に示すように、リフトピン61の上昇時には、先端部64が中央領域111aの表面より突出しており、リフトピン61によって持ち上げられた基板Wは、図示しない搬送ロボットのアームによって搬送可能となる。このとき、ピン用貫通孔60の上部は、開放された状態となる。
【0031】
(比誘電率を揃える場合)
部材53及び先端部64において、セラミック部材1111aと揃える物理特性としては、例えば、比誘電率又は熱伝導率が挙げられる。なお、プラズマの均一性を重視する場合には比誘電率を揃え、基板Wの温度の均一性を重視する場合には熱伝導率を揃える。例えば、セラミック部材1111aがアルミナ(Al2O3)であるときに、比誘電率を揃える場合、部材53及び先端部64は、ジルコニア(ZrO2)又はハフニア(HfO2)を用いる。部材53及び先端部64は、比誘電率を揃えるために気孔率が制御される。まず、目標とする比誘電率の範囲として、セラミック部材1111aの比誘電率との目標比下限Rmin及び目標比上限Rmaxを設定する。例えば、目標比下限Rmin=0.7、目標比上限Rmax=1.3と設定する。
【0032】
次に、下記の式(1)を満たす気孔率a%を算出する。ここで、母材であるセラミック部材1111aのアルミナの比誘電率をεr1=9.9であるとし、部材53及び先端部64の構成材料であるジルコニアの比誘電率をεr2=33であるとする。つまり、部材53及び先端部64の構成材料としては、比誘電率がεr2>εr1の条件を満たす材料を用いる。
【0033】
【数1】
【0034】
上記の式(1)より、部材53及び先端部64にジルコニアを用いる場合、気孔率a%は61%~79%とすればよいことが求められる。一方、部材53及び先端部64としてハフニアを用いる場合、ハフニアの比誘電率をεr2=25であるとして、上記の式(1)より、気孔率a%は49%~72%とすればよいことが求められる。部材53及び先端部64は、求めた気孔率a%となるように制御されて作成される。このように、ジルコニア又はハフニアで作成された部材53及び先端部64を用いることで、中央領域111a及び環状領域111bの面内において比誘電率を揃えることができ、ソースRF信号やバイパスRF信号の面内透過性を均一にすることができる。つまり、プラズマ処理空間10sで生成されるプラズマの均一性を向上させることができる。すなわち、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。さらに、伝熱ガス供給孔50内に部材53が配置されるので、異常放電を抑制することができる。
【0035】
(熱伝導率を揃える場合)
次に、熱伝導率を揃える場合について説明する。例えば、セラミック部材1111aがアルミナ(Al2O3)であるときに、熱伝導率を揃える場合、部材53及び先端部64は、窒化アルミニウム(AlN)又は炭化ケイ素(SiC)を用いる。部材53及び先端部64は、熱伝導率を揃えるために気孔率が制御される。まず、目標とする熱伝導率の範囲として、セラミック部材1111aの熱伝導率との目標比下限Rmin及び目標比上限Rmaxを設定する。例えば、目標比下限Rmin=0.7、目標比上限Rmax=1.3と設定する。
【0036】
次に、下記の式(2)を満たす気孔率a%を算出する。ここで、母材であるセラミック部材1111aのアルミナの熱伝導率をλ=32[W/(m・K)]であるとし、部材53及び先端部64の構成材料である窒化アルミニウムの熱伝導率をλ=150[W/(m・K)]であるとする。つまり、部材53及び先端部64の構成材料としては、熱伝導率がλ>λの条件を満たす材料を用いる。
【0037】
【数2】
【0038】
上記の式(2)より、部材53及び先端部64に窒化アルミニウムを用いる場合、気孔率a%は、72.3%~85.0%とすればよいことが求められる。一方、部材53及び先端部64として炭化ケイ素を用いる場合、炭化ケイ素の熱伝導率をλ=170[W/(m・K)]であるとして、上記の式(2)より、気孔率a%は、75.5%~86.8%とすればよいことが求められる。部材53及び先端部64は、求めた気孔率a%となるように制御されて作成される。このように、窒化アルミニウム又は炭化ケイ素で作成された部材53及び先端部64を用いることで、中央領域111a及び環状領域111bの面内において熱伝導率を揃えることができ、面内の熱伝導を均一にすることができる。つまり、基板Wの温度の均一性を向上させることができる。すなわち、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。さらに、伝熱ガス供給孔50内に部材53が配置されるので、異常放電を抑制することができる。
【0039】
なお、上記した実施形態では、ピン用貫通孔60からも伝熱ガスを供給する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、ピン用貫通孔60から伝熱ガスを供給しないように、ピン用貫通孔60を伝熱ガス供給路51に接続しない構成としてもよい。この場合、リフトピン61の先端部64は、セラミック部材1111aと同じ材料、例えばアルミナ(Al2O3)によって構成される。すなわち、リフトピン61の先端部64がセラミック部材1111aと同じ材料であるので、ピン用貫通孔60における比誘電率及び熱伝導率をセラミック部材1111aと揃えることができる。従って、伝熱ガス供給孔50内に、上述の部材53を配置することで、中央領域111a及び環状領域111bの面内において、比誘電率又は熱伝導率を揃えることができる。
【0040】
以上、本実施形態によれば、基板支持部11は、プラズマ処理容器(プラズマ処理チャンバ10)内に配置される基板支持部11であって、基板Wを支持する支持面(中央領域111a)を備えるとともに、誘電体で形成される静電チャック1111と、静電チャック1111を支持する基台1110と、を有する。静電チャック1111は、支持面に基台1110側から伝熱ガスを供給する伝熱ガス供給孔50と、伝熱ガス供給孔50内に配置され、支持面において、誘電体と物理特性を揃えるように気孔率が制御されたポーラス材で構成される第1の部材(部材53)と、を備える。その結果、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、基板支持部11は、さらに、基板Wを授受するためのリフトピン61を有する。静電チャック1111は、さらに、リフトピン61が貫通するピン用貫通孔60を備える。リフトピン61は、先端側にポーラス材で構成される第2の部材(先端部64)を備える。その結果、よりプラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、リフトピン61は、第2の部材の側面の一部(傾斜面64b)が、ピン用貫通孔60の上部の側面(傾斜面60a)と円周において接触するように構成される。その結果、ピン用貫通孔60から伝熱ガスを供給しつつ、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、誘電体は、アルミナである。その結果、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、物理特性は、比誘電率である。その結果、プラズマ処理空間10sで生成されるプラズマの均一性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、ポーラス材は、ジルコニアである。その結果、プラズマ処理空間10sで生成されるプラズマの均一性を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、気孔率は、61%~79%の範囲である。その結果、プラズマ処理空間10sで生成されるプラズマの均一性を向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、ポーラス材は、ハフニアである。その結果、プラズマ処理空間10sで生成されるプラズマの均一性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、気孔率は、49%~72%の範囲である。その結果、プラズマ処理空間10sで生成されるプラズマの均一性を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、物理特性は、熱伝導率である。その結果、基板Wの温度の均一性を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、ポーラス材は、窒化アルミニウムである。その結果、基板Wの温度の均一性を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、気孔率は、72.3%~85.0%の範囲である。その結果、基板Wの温度の均一性を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、ポーラス材は、炭化ケイ素である。その結果、基板Wの温度の均一性を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、気孔率は、75.5%~86.8%の範囲である。その結果、基板Wの温度の均一性を向上させることができる。
【0054】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形体で省略、置換、変更されてもよい。
【0055】
また、上記した各実施形態では、プラズマ源として容量結合型プラズマを用いて基板Wに対してエッチング等の処理を行うプラズマ処理装置1を例に説明したが、開示の技術はこれに限られない。プラズマを用いて基板Wに対して処理を行う装置であれば、プラズマ源は容量結合プラズマに限られず、例えば、誘導結合プラズマ、マイクロ波プラズマ、マグネトロンプラズマ等、任意のプラズマ源を用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 プラズマ処理装置
2 制御部
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
50 伝熱ガス供給孔
51 伝熱ガス供給路
52 伝熱ガス供給部
53 部材
60 ピン用貫通孔
60a,64b 傾斜面
61 リフトピン
62 駆動機構
64 先端部
111 本体部
111a 中央領域
111b 環状領域
112 リングアセンブリ
1110 基台
1111 静電チャック
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5