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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059422
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】計測装置、計測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/026 20060101AFI20230420BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20230420BHJP
   G01P 5/20 20060101ALI20230420BHJP
   G01P 3/36 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
A61B5/026 120
G01B11/16 G
G01P5/20 F
G01P3/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169417
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 志織
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 陽光
(72)【発明者】
【氏名】黒住 隆行
(72)【発明者】
【氏名】木全 英明
(72)【発明者】
【氏名】久保 尋之
(72)【発明者】
【氏名】木渕 寛太
【テーマコード(参考)】
2F065
4C017
【Fターム(参考)】
2F065AA65
2F065BB00
2F065BB26
2F065FF56
2F065GG04
2F065HH02
2F065HH12
2F065JJ03
2F065JJ09
2F065JJ26
4C017AA11
4C017AC28
4C017BC16
4C017FF05
(57)【要約】
【課題】計測の時間間隔に制約がある条件下で、変化が一定でない物体の変化をスペックルパターンに基づいて推定する。
【解決手段】コヒーレント光を生成する照射部と、散乱体が前記コヒーレント光を受けることにより生じる散乱光の干渉により生成されるスペックルパターンの光を複数の画素により受光し、画素の各々が前記スペックルパターンの光を受光して検出する輝度値の変化を示す輝度変化量が、予め定められる検出対象の輝度変化量を有する画素を検出し、検出した画素の位置と、画素の輝度変化量の変化方向を示す符号値と、検出した時刻を示す検出時刻とを含むイベントデータを生成する計測部と、イベントデータに基づいて、散乱体の変化を示す物理量を算出する算出処理部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光を生成する照射部と、
散乱体が前記コヒーレント光を受けることにより生じる散乱光の干渉により生成されるスペックルパターンの光を複数の画素により受光し、前記画素の各々が前記スペックルパターンの光を受光して検出する輝度値の変化を示す輝度変化量が、予め定められる検出対象の輝度変化量を有する画素を検出し、検出した前記画素の位置と、前記画素の前記輝度変化量の変化方向を示す符号値と、検出した時刻を示す検出時刻とを含むイベントデータを生成する計測部と、
前記イベントデータに基づいて、前記散乱体の変化を示す物理量を算出する算出処理部と、
を備える計測装置。
【請求項2】
前記散乱体は、移動する移動散乱体を含んでおり、
前記算出処理部は、
予め定められる単位時間当たりの前記画素ごとの前記イベントデータの数に基づいて、前記画素の各々に対応する前記散乱体の位置における前記移動散乱体の移動速度を前記散乱体の変化を示す物理量として算出する、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記散乱体は、移動する移動散乱体を含んでおり、
前記計測部は、
前記画素の各々に対応する前記輝度変化量と、予め定められる検出閾値とに基づいて、前記画素の各々が、前記検出対象の輝度変化量を有する画素であるか否かを判定し、
前記算出処理部は、
前記イベントデータに含まれる前記輝度変化量の変化方向を示す符号値に、前記検出閾値を乗算することで乗算値を算出し、前記画素の各々について、前記検出時刻ごとに、当該検出時刻以前の検出時刻に対応する前記乗算値を積算した値を、前記検出時刻ごとの積算値として算出し、算出した前記画素の各々の前記検出時刻ごとの前記積算値に基づいて、前記画素の各々に対応する前記散乱体の位置における前記移動散乱体の移動速度を前記散乱体の変化を示す物理量として算出する、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記散乱体は、移動する移動散乱体を含んでおり、
前記計測部は、
前記画素の各々に対応する前記輝度変化量と、予め定められる検出閾値であって前記スペックルパターンの光から前記画素が検出する輝度値の最大値と最小値の差の絶対値に基づいて定められる検出閾値とにより、前記画素の各々が、前記検出対象の輝度変化量を有する画素であるか否かを判定し、
前記算出処理部は、
前記イベントデータに含まれる前記検出時刻に基づいて、前記画素ごとの前記イベントデータの発生間隔を算出し、算出した前記画素ごとの前記イベントデータの発生間隔に基づいて、前記画素の各々に対応する前記散乱体の位置における前記移動散乱体の移動速度を前記散乱体の変化を示す物理量として算出する、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項5】
前記散乱体は、移動する移動散乱体を含んでおり、
前記算出処理部は、
前記イベントデータに含まれる前記符号値に基づいて、前記検出時刻ごとの画像データを生成し、生成した異なる2つの前記検出時刻の前記画像データに基づいて、前記移動散乱体の移動速度を前記散乱体の変化を示す物理量として算出する、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項6】
前記照射部から前記計測部の複数の前記画素に至る光路を光路差が生じるように複数の光路に分岐する光分岐部と、
前記光分岐部が分岐した複数の前記光路を集束して前記計測部が備える複数の前記画素に前記スペックルパターンを結像させる光集束部と、を備え、
前記散乱体は、形状が変形する散乱体であり、
前記算出処理部は、
予め定められた時間内における前記画素ごとの前記イベントデータの数を画素値とする画像データを生成し、生成した前記画像データに基づいて、前記散乱体の変形によって生じた変位量を前記散乱体の変化を示す物理量として算出する、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項7】
コヒーレント光を生成し、
散乱体が前記コヒーレント光を受けることにより生じる散乱光の干渉により生成されるスペックルパターンの光を複数の画素により受光し、
前記画素の各々が前記スペックルパターンの光を受光して検出する輝度値の変化を示す輝度変化量が、予め定められる検出対象の輝度変化量を有する画素を検出し、
検出した前記画素の位置と、前記画素の前記輝度変化量の変化方向を示す符号値と、検出した時刻を示す検出時刻とを含むイベントデータを生成し、
生成された前記イベントデータに基づいて、前記散乱体の変化を示す物理量を算出する、
計測方法。
【請求項8】
散乱体がコヒーレント光を受けることにより生じる散乱光の干渉により生成されるスペックルパターンの光を複数の画素により受光し、前記画素の各々が前記スペックルパターンの光を受光して検出する輝度値の変化を示す輝度変化量が、予め定められる検出対象の輝度変化量を有する画素を検出し、検出した前記画素の位置と、前記画素の前記輝度変化量の変化方向を示す符号値と、検出した時刻を示す検出時刻とを含むイベントデータを生成する計測ステップと、
前記イベントデータに基づいて、前記散乱体の変化を示す物理量を算出する算出処理ステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スペックルパターンの変化を計測する計測装置、計測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
反射面に微細な凹凸のある物体や内部散乱を起こす物体に対してレーザ光などのコヒーレント光を照射すると、コヒーレント光を受けて物体から散乱光が生じ、生じた散乱光の干渉に由来するパターンを観察することができる。このパターンはスペックルパターンと呼ばれており、スペックルパターンの各点では複数の散乱光の重ね合わせによる強め合い弱め合いのために明暗が生じる。
【0003】
物体の変形や移動に伴って散乱光の位相差が変化すると、スペックルパターンも変化する。そのため、スペックルパターンの時間的な変化を計測することにより、物体における微細な形状の時間的な変化や、移動量の時間的な変化などを推定することができる。スペックルパターンを利用した計測法は、材料計測の他、血流計などの医療センサ、機械制御用の速度計など様々な用途で利用される。例えば、レーザドップラ血流計では、肌の上からレーザ光を照射し、血管内を移動する赤血球で散乱した光と、静止した生体組織で散乱した光との干渉によって生じるスペックルパターンの光から受光強度信号を受光素子によって検出する。検出した受光強度信号の周波数から血管中を通過する赤血球の速度を算出し、算出した赤血球の速度から血流量や脈拍を推定する。
【0004】
CCD(Charge Coupled Device)等の画像センサで撮影することにより、スペックルパターンを二次元で観察することができる。ただし、上記した血流のスペックルパターンのように受光強度信号の周波数が非常に高くなる散乱体を撮影する場合、その周波数の高さに応じた高いフレームレートの画像センサが必要になる。一般的に、画像センサは、フレームレートが高くなれば高くなるほど、解像度が高くなれば高くなるほど価格が高くなるという問題がある。高いフレームレートの画像センサや高解像の画像センサは、光量不足によりノイズの影響を強く受けるようになるという問題がある。
【0005】
例えば、非特許文献1に開示される技術、すなわち、レーザースペックル血流画像化法を用いた血流計では、一般的なフレームレートの画像センサを使用したスペックルパターンの計測法を用いることにより、上記のような画像センサの価格やノイズに関する問題を解決している。レーザースペックル血流画像化法を用いた血流計において、画像センサによって得られる画像データは、画素毎に露光時間内で受光強度信号を積分した結果を示すことになる。血流の速度が速いほど実時間での受光強度信号の周波数が高くなるので、積分値のバラツキが小さくなるという傾向がある。レーザースペックル血流画像化法を用いた血流計では、この傾向を利用し、画像データを複数回取得して比較し、比較結果に基づいて、画像データの間の変動の多寡により血流量を求めることを可能にしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】OMEGAWAVE, INC.、“2次元レーザー血流画像装置、OMEGAZONE 2D Laser Blood Flow Imager、測定原理”、[online]、[令和3年8月18日検索]、インターネット<http://www.omegawave.co.jp/products/oz/principle.shtml>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の非特許文献1に開示される技術のように、一般的なフレームレートの画像センサを用いてスペックルパターンを計測する際、上記した血流のように受光強度信号の周波数が高くなる物体を計測対象とする場合、複数回の継続的な計測が必要である。そのため、いわゆるリアルタイム計測などの計測の時間間隔に制約がある条件下での計測を行うことが難しいという問題がある。一般的なフレームレートの画像センサを用いる場合、複数回の継続的な計測が必要であることから、計測対象の物体に生じる変化の比率が一定の比率でない場合には、正確な計測を行うことが難しいという問題がある。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、計測の時間間隔に制約がある条件下で、変化が一定でない物体の変化をスペックルパターンに基づいて推定することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、コヒーレント光を生成する照射部と、散乱体が前記コヒーレント光を受けることにより生じる散乱光の干渉により生成されるスペックルパターンの光を複数の画素により受光し、前記画素の各々が前記スペックルパターンの光を受光して検出する輝度値の変化を示す輝度変化量が、予め定められる検出対象の輝度変化量を有する画素を検出し、検出した前記画素の位置と、前記画素の前記輝度変化量の変化方向を示す符号値と、検出した時刻を示す検出時刻とを含むイベントデータを生成する計測部と、前記イベントデータに基づいて、前記散乱体の変化を示す物理量を算出する算出処理部と、を備える計測装置である。
【0010】
本発明の一態様は、コヒーレント光を生成し、散乱体が前記コヒーレント光を受けることにより生じる散乱光の干渉により生成されるスペックルパターンの光を複数の画素により受光し、前記画素の各々が前記スペックルパターンの光を受光して検出する輝度値の変化を示す輝度変化量が、予め定められる検出対象の輝度変化量を有する画素を検出し、検出した前記画素の位置と、前記画素の前記輝度変化量の変化方向を示す符号値と、検出した時刻を示す検出時刻とを含むイベントデータを生成し、生成された前記イベントデータに基づいて、前記散乱体の変化を示す物理量を算出する、計測方法である。
【0011】
本発明の一態様は、散乱体がコヒーレント光を受けることにより生じる散乱光の干渉により生成されるスペックルパターンの光を複数の画素により受光し、前記画素の各々が前記スペックルパターンの光を受光して検出する輝度値の変化を示す輝度変化量が、予め定められる検出対象の輝度変化量を有する画素を検出し、検出した前記画素の位置と、前記画素の前記輝度変化量の変化方向を示す符号値と、検出した時刻を示す検出時刻とを含むイベントデータを生成する計測ステップと、前記イベントデータに基づいて、前記散乱体の変化を示す物理量を算出する算出処理ステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、計測の時間間隔に制約がある条件下で、変化が一定でない物体の変化をスペックルパターンに基づいて推定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態の計測装置の内部構成と散乱体とを示すブロック図である。
図2】第1の実施形態の算出処理部が行う第1の手法の処理の流れを示すフローチャートである。
図3】第1の実施形態の算出処理部が行う第2の手法の処理の流れを示すフローチャートである。
図4】第1の実施形態の算出処理部が行う第2の手法において算出処理部が算出する積算値の変化の一例を示すグラフである。
図5】第1の実施形態の算出処理部が行う第3の手法においてイベント検出部に設定する検出閾値の大きさとイベント検出部が検出するピークの位置との関係を説明するためのグラフである。
図6】第1の実施形態の算出処理部が行う第3の手法の処理の流れを示すフローチャートである。
図7】第1の実施形態の算出処理部が行う第4の手法の処理の流れを示すフローチャートである。
図8】第2の実施形態の計測装置の内部構成と散乱体とを示すブロック図である。
図9】第2の実施形態の光分岐部及び光集束部に適用される光学系の例を示す図である。
図10】第2の実施形態の算出処理部による処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態における計測装置1と、計測装置1の計測対象である散乱体30とを示すブロック図である。散乱体30は、一部に移動する移動散乱体31を含んでおり、コヒーレント光を受けて散乱光を生じさせる物体であればどのような物体であってもよい。例えば、散乱体30は、人体であり、移動散乱体31は、人体の血管を流れる血液である。
【0015】
計測装置1は、照射部11、計測部12及び算出処理部13を備える。照射部11は、コヒーレント光であるレーザ光を生成する光源を備えており、光源によりレーザ光を一定の光強度で生成する。照射部11は、生成したレーザ光を内部に備える光学素子により面状に拡散し、拡散したレーザ光40を散乱体30に対して照射する。ここで、照射部11が内部に備える光学素子とは、レーザ光を拡散させる光学素子であればどのようなものであってもよく、例えば、光源が生成したレーザ光を拡散する位置に配置された凸レンズである。
【0016】
図1において、散乱光50が、散乱体30において移動散乱体31を除く部分、すなわち静止している部分がレーザ光40を受けることにより生じる散乱光を示しており、散乱光51が、移動散乱体31がレーザ光40を受けることにより生じる散乱光を示している。移動散乱体31が移動していない場合、散乱光51は、散乱光50に含まれることになり、この場合、散乱光50の干渉によりスペックルパターンが生じることになる。これに対して、移動散乱体31が移動している場合、散乱光51が生じ、散乱光50と散乱光51との干渉によりスペックルパターンに変化が生じることになる。
【0017】
計測部12は、例えば、イベントベースビジョンセンサを備えたイベントカメラであり、受光部21と、イベント検出部23とを備える。受光部21は、散乱光50,51の干渉によって生じるスペックルパターンの光を受光することができる位置に配置される。受光部21は、例えば、矩形形状になるように並べられて、受光部21の受光面を形成する複数の画素22-1~22-nを備える。ここで、nは、2以上の整数であれば任意の値であってよく、一般的なイベントカメラであれば、nは、数万から数十万といった値になる。なお、図1では、一例として、n=54の例、すなわち、受光部21が、6行×9列の54個の画素22-1~22-54を備える例を示しており、その中の最初と最後の画素のそれぞれに符号「22-1」と「22-n」とを付して示している。画素22-1~22-nの各々は、散乱光50,51の干渉によって生じるスペックルパターンの光を受光すると、各々の位置において計測されるスペックルパターンの光の強度を示す輝度値を出力する。以下、画素22-1~22-nの任意の1つの画素を示す場合、符号の枝番号を示さずに画素22という。
【0018】
イベント検出部23は、画素22-1~22-nの各々が出力する輝度値の変化を示す輝度変化量を非同期で検出する。イベント検出部23は、更に、検出した輝度変化量が、予め定められる検出対象の輝度変化量を有している画素22を検出すると、検出した画素22の位置と、輝度変化量の変化方向を示す符号値と、検出した時刻を示す検出時刻とを含むイベントデータを生成する。ここで、画素22の位置は、例えば、画素22-1の位置を原点、すなわち(0,0)とする行と列の位置によって表される座標データによって示される位置であり、画素22-1の同一列の1行下の画素の位置は座標データ(1,0)として示され、画素22-1の同一行の1列右の画素の位置は、座標データ(0,1)として示されることになる。輝度変化量の変化方向を示す符号値とは、例えば、輝度値が小さい値から大きい値に変化している場合「+1」となり、輝度値が大きい値から小さい値に変化している場合「-1」となる値である。
【0019】
ここで、イベント検出部23が検出する輝度変化量と、スペックルパターンの変化を生じさせる受光強度信号との関係について説明する。受光強度信号とは、ある位置において計測されるスペックルパターンの光の光強度値を時系列に並べた信号である。スペックルパターンの変化が大きくなると、受光強度信号の周波数も高くなるという関係がある。画素22-1~22-nの各々が検出する輝度値は、各々の位置において計測されるスペックルパターンの光の強度を示しており、各々が検出する輝度値を時系列に並べることにより、画素22-1~22-nの各々の位置において計測されるスペックルパターンの受光強度信号が得られることになる。ここで、ある1つの画素22において計測される受光強度信号をI(t)とする(ただし、I(t)において、tは、時刻であり、I(t)は、時刻tにおいて画素22が検出する輝度値である)。例えば、画素22が時刻tにおいて検出した輝度値が、I(t)であり、画素22が時刻tの直後の検出時刻である時刻tにおいて検出した輝度値が、I(t)である場合、イベント検出部23は、時刻tにおいて、輝度値の対数値の差で表される輝度変化量log(I(t2))-log(I(t1))を検出することになる。ここで、log(・)の底は、「e」であり、以下、「対数」という場合は、底が「e」の自然対数であるものとする。イベント検出部23は、log(I(t))-log(I(t1))の演算の結果の符号を、符号値の符号として検出する。以下、輝度変化量log(I(t2))-log(I(t1))の式を一般化して、時刻tにおける輝度変化量を式によって示す場合、Δ(log(I(t))という式により示すものとする。
【0020】
算出処理部13は、イベント検出部23が出力するイベントデータに基づいて、散乱体30の変化を示す物理量を算出する。以下、散乱体30の変化を示す物理量として散乱体30に含まれる移動散乱体31の移動速度を算出する4通りの手法について説明する。
【0021】
(第1の実施形態の計測装置による第1の手法)
図2を参照しつつ、第1の実施形態における計測装置1による第1の手法について説明する。図2は、算出処理部13による第1の手法の流れを示すフローチャートである。図2のフローチャートの処理が開始される前提として、以下に示すことが行われているものとする。照射部11は、固定された位置及び方向に設置されており、レーザ光40を計測領域に対して照射する。ここで、計測領域とは、例えば、移動散乱体31が存在する散乱体30の領域である。計測部12の受光部21は、散乱光50,51の干渉によって生じるスペックルパターンの光を画素22-1~22-nにより受光する。
【0022】
イベント検出部23は、画素22-1~22-nの各々が出力する輝度値の変化を示す輝度変化量を非同期で検出する。イベント検出部23は、予め定められる検出閾値を内部の記憶領域に予め記憶させており、輝度変化量を検出すると、内部の記憶領域を参照し、検出した輝度変化量が、検出閾値以上の輝度変化量であるか否かを判定する。イベント検出部23は、検出した輝度変化量が予め定められる検出閾値以上の輝度変化量であると判定した場合、当該輝度変化量に対応する画素22を予め定められる検出対象の輝度変化量を有している画素として検出する。イベント検出部23は、検出した画素22に対するイベントデータ、すなわち画素22の位置と、輝度変化量の変化方向を示す符号値と、検出時刻とを含むイベントデータを生成し、生成したイベントデータを算出処理部13に出力する。
【0023】
上記したように、散乱体30に含まれる移動散乱体31が移動していない場合、散乱体30の全てが静止している状態になる。この場合、散乱光51は、散乱光50に含まれることになるので、散乱光50のみが生じることになる。照射部11は、上記したように一定の方向に対して、一定の光強度でレーザ光40を照射する。すなわち、照射部11が照射するレーザ光40は、時間が経過しても変化しないことになる。したがって、散乱光50の干渉によって生じるスペックルパターンも、時間が経過しても変化しないことになる。この場合、画素22-1~22-nの各々がスペックルパターンの光を受光して出力する輝度値は変化しないため、イベント検出部23は、いずれの画素22-1~22-nからも「0」の輝度変化量を検出することになる。ただし、実際には、ノイズなどが存在するため、イベント検出部23が検出する輝度変化量は、「0」にならない場合もあるが、検出閾値以上になることはない。したがって、この場合、イベント検出部23は、イベントデータを出力することもない。
【0024】
これに対して、散乱体30に含まれる移動散乱体31が移動している場合、散乱体30の移動散乱体31以外の静止部分がレーザ光40を受けることにより生じる散乱光50と、移動散乱体31がレーザ光40を受けることにより生じる散乱光51との干渉によりスペックルパターンが変化することになる。スペックルパターンが変化すると、スペックルパターンの変化が生じている位置に対応する画素22-1~22-nが検出する輝度値は変化することになる。イベント検出部23は、画素22-1~22-nが出力する輝度値から輝度変化量を検出した場合に、検出した輝度変化量が予め定められる検出閾値以上の輝度変化量であると判定したとき、当該輝度変化量に対応する画素22に関するイベントデータを生成して出力することになる。
【0025】
以下、図2のフローチャートにしたがって処理の流れを説明する。算出処理部13は、イベント検出部23が非同期に出力するイベントデータを取り込む(ステップSa1)。算出処理部13は、イベントデータの各々に含まれる画素22の位置と、検出時刻とに基づいて、画素22-1~22-nの各々の単位時間当たりのイベントデータの数をカウントする(ステップSa2)。
【0026】
移動散乱体31の移動速度が増加すると、スペックルパターンの変化は大きくなる。スペックルパターンの変化が大きくなると、受光強度信号の周波数が高くなる。受光強度信号の周波数が高くなると、単位時間当たりのイベントデータの数も増加する。したがって、単位時間当たりのイベントデータの数が多いということは、移動散乱体31の移動速度が速いことを示すことになり、イベントデータの数の多寡により、移動散乱体31の相対的な移動速度の大小を示すことができる。
【0027】
画素22-1~22-nの各々の位置は、散乱体30のいずれかの位置に関連付けることができる。算出処理部13は、画素22-1~22-nの各々の単位時間当たりのイベントデータの数を、画素22-1~22-nの各々に対応する散乱体30の位置における移動散乱体31の相対的な移動速度を示す値として出力する(ステップSa3)。
【0028】
(第1の実施形態の計測装置による第2の手法)
図3図4を参照しつつ、第1の実施形態における計測装置1による第2の手法について説明する。なお、第2の手法が行われる場合、算出処理部13の内部に記憶領域にイベント検出部23の内部の記憶領域に記憶させている検出閾値と同一値の検出閾値が予め記憶される。
【0029】
図3は、算出処理部13による第2の手法の流れを示すフローチャートである。なお、図3のフローチャートの処理が開始される前提は、上記した第1の手法の前提と同一の前提である。算出処理部13は、イベント検出部23が非同期に出力するイベントデータを取り込む(ステップSb1)。算出処理部13は、取り込んだイベントデータに含まれる符号値に、内部の記憶領域に記憶させている検出閾値を乗算してイベントデータごとの乗算値を算出する(ステップSb2)。算出処理部13は、画素22-1~22-nの各々について、検出時刻ごとに、当該検出時刻以前の検出時刻に対応する乗算値を積算し、検出時刻ごとの積算値を算出する(ステップSb3)。
【0030】
例えば、以下のようにして算出処理部13は、画素22-1~22-nの各々の検出時刻ごとの積算値を算出する。算出処理部13において、予め積算開始時刻が定められる。算出処理部13は、ある1つの画素22のイベントデータであって検出時刻が積算開始時刻以後のイベントデータを順次取り込む。ここで、算出処理部13が順次取り込む画素22の複数のイベントデータに含まれる検出時刻が、時刻の早いものから順にt,t,…であるとする。ただし、t,t,…は、積算開始時刻以後の時刻である。
【0031】
算出処理部13は、画素22の検出時刻tのイベントデータを取り込むと、ステップSb2の処理により検出時刻tに対応する乗算値を算出する。算出処理部13は、検出時刻tより前の検出時刻であって積算開始時刻以後の検出時刻に対応する乗算値が存在しないため、算出した検出時刻tに対応する乗算値を、画素22の検出時刻tの積算値とする。算出処理部13は、次に、画素22の検出時刻tのイベントデータを取り込むと、ステップSb2の処理により検出時刻tに対応する乗算値を算出する。算出処理部13は、画素22の検出時刻tの積算値に、算出した検出時刻tに対応する乗算値を加算し、加算した加算値を、画素22の検出時刻tの積算値とする。このようにして、算出処理部13は、画素22のイベントデータを取り込むごとに、1つ前の検出時刻の積算値に、取り込んだイベントデータに含まれる検出時刻に対応する乗算値を加算することを繰り返し、画素22の検出時刻ごとの積算値を算出する。算出処理部13は、全ての画素22-1~22-nに対して同様の演算を行い、画素22-1~22-nの各々の検出時刻ごとの積算値を算出する。
【0032】
図4は、算出処理部13が算出した、ある1つの画素22の検出時刻ごとの積算値の一例を棒グラフによって示した図である。図4に示す棒グラフは、横軸が検出時刻であり、縦軸が、算出処理部13が算出する積算値である。イベント検出部23が出力するイベントデータは、非同期であるため、棒グラフの検出時間の間隔は、一定の間隔にはならない。積算値は、符号値の「-1」または「+1」に検出閾値を乗算した値を加算しているため、検出閾値の大きさをステップ幅とした量子化値になる。この場合、図4に示す棒グラフの変化は、検出閾値の大きさで量子化されている分の誤差を含んでいるが、画素22における輝度変化量Δ(log(I(t))を時間方向に積算した場合の時間的な変化、すなわち、画素22の位置において計測されるlog(I(t))とみなすことができる。
【0033】
算出処理部13は、画素22-1~22-nの各々についてのlog(I(t))から、各々の受光強度信号I(t)を算出する。算出処理部13は、画素22-1~22-nの各々について算出した受光強度信号I(t)の周波数から、例えば、以下の参考文献1に示すレーザドップラ血流計による手法により、画素22-1~22-nの各々に対応する散乱体30の位置における移動散乱体31の移動速度を算出する(ステップSb4)。
【0034】
[参考文献1:株式会社光響、Optimedia、“38・7レーザースペックル血流画像化法”、[online]、[令和3年8月18日検索]、インターネット<https://optipedia.info/laser/handbook/laser-handbook-9th-section/38-7/>]
【0035】
すなわち、第2の手法の算出処理部13は、イベントデータに含まれる輝度変化量の変化方向を示す符号値に、検出閾値を乗算して乗算値を算出する。算出処理部13は、画素22-1~22-nの各々について、検出時刻ごとに、当該検出時刻以前の検出時刻に対応する乗算値を積算した値を、検出時刻ごとの積算値として算出する。算出処理部13は、算出した画素22-1~22-nの各々の検出時刻ごとの積算値に基づいて、画素22-1~22-nの各々に対応する散乱体30の位置における移動散乱体31の移動速度を算出するという処理を行っていることになる。
【0036】
上記の第2の手法により算出処理部13が算出する移動速度は、第1の手法と同じく相対的な移動速度である。ただし、第1の手法の場合、ノイズ、レーザ光40の光量に依存する検出遅延、一度に多量のイベントデータが発生した場合における受光部21やイベント検出部23での帯域不足などの外的要因により各検出時刻のイベントデータの発生量にバラツキが存在すると、算出する移動速度にもバラツキが生じることになる。これに対して、第2の手法では、符号値に検出閾値を乗算して得られる乗算値を時間方向に積算した積算値を算出して画素22-1~22-nの各々に対応する受光強度信号I(t)を算出する。そのため、第2の手法では、上記の外的要因による影響を軽減した相対的な移動速度を算出することができる。
【0037】
なお、算出処理部13は、図4に示す画素22の検出時刻ごとの積算値の棒グラフに対してフィルタリング処理を行うことにより、符号100で示す曲線を生成し、生成した曲線の変化を画素22の位置において計測されるlog(I(t))とみなすようにしてもよい。これにより、量子化による誤差を軽減して、画素22-1~22-nの各々に対応する散乱体30の位置における移動散乱体31の移動速度を算出することが可能になる。
【0038】
(第1の実施形態の計測装置による第3の手法)
図5図6を参照しつつ、第1の実施形態における計測装置1による第3の手法について説明する。なお、第3の手法が行われる場合、イベント検出部23の内部の記憶領域に予め記憶させている検出閾値の値は、以下のような値に予め定められる。イベント検出部23は、受光部21の画素22-1~22-nの各々がスペックルパターンの光を受光して検出する輝度値の中から最大値と最小値とを予め検出しておく。イベント検出部23は、予め検出した輝度値の最大値と最小値との差の絶対値を算出し、算出した差の絶対値を検出閾値として内部の記憶領域に予め記憶させる。
【0039】
図5は、ある1つの画素22がスペックルパターンの光を受光して検出する輝度値の変化の一例を示すグラフであり、横軸が時刻であり、縦軸が輝度値である。検出閾値の大きさは、符号110によって示す輝度値の最大値から最小値までの長さである。この場合、イベント検出部23は、輝度値が最大値から最小値に変化する符号121のピークの時刻と、輝度値が最小値から最大値に変化する符号122のピークの時刻とにおいて、画素22から検出する輝度変化量が検出閾値以上となるため、画素22に対するイベントデータを生成することになる。
【0040】
符号121のピークは、散乱光50,51の干渉が最も弱くなっている状態を示しており、符号122のピークは、散乱光50,51の干渉が最も強くなっている状態を示している。したがって、符号121のピークと、符号122のピークの発生間隔は、画素22の位置において計測される受光強度信号I(t)の周波数を示すことになる。なお、図5のグラフは、輝度値の最大値と最小値の差の絶対値を検出閾値とした場合に、どのようなケースでイベントデータが発生するのかを説明するために示した一例であり、実際のスペックルパターンの光のグラフは、明暗のパターンが周期的に表れるグラフになる。
【0041】
図6は、算出処理部13による第3の手法の流れを示すフローチャートである。なお、図6のフローチャートの処理が開始される前提は、上記した第1の手法の前提と同一の前提である。算出処理部13は、イベント検出部23が非同期に出力するイベントデータを取り込む(ステップSc1)。算出処理部13は、取り込んだイベントデータの検出時刻から画素22-1~22-nごとのイベントデータの発生間隔を計測する(ステップSc2)。算出処理部13は、計測した画素22-1~22-nごとのイベントデータの発生間隔に基づいて、画素22-1~22-nの各々に対応する受光強度信号I(t)の周波数を算出する(ステップSc3)。算出処理部13は、画素22-1~22-nの各々に対応する受光強度信号I(t)の周波数から、例えば、上記した参考文献1に示すレーザドップラ血流計による手法により、画素22-1~22-nの各々に対応する散乱体30の位置における移動散乱体31の移動速度を算出して出力する(ステップSc4)。
【0042】
すなわち、第3の手法の算出処理部13は、イベントデータに含まれる検出時刻に基づいて、画素22-1~22-nごとのイベントデータの発生間隔を算出する。算出処理部13は、算出した画素22-1~22-nごとのイベントデータの発生間隔に基づいて、画素22-1~22-nの各々に対応する散乱体30の位置における移動散乱体31の移動速度を算出していることになる。
【0043】
第3の手法では、上記したように受光強度信号I(t)がピークになる時刻においてのみイベントデータが発生することになる。そのため、イベントデータの発生間隔から受光強度信号I(t)の周波数を直接的に算出することができる。そのため、第1の手法のようにイベントデータの数をカウントしたり、第2の手法のように積算値を求めたりする必要がなく、第1及び第2の手法よりも少ない演算量で画素22-1~22-nの各々に対応する散乱体30の位置における移動散乱体31の移動速度を算出することが可能になる。第3の手法では、画素22-1~22-nの各々の位置において計測される受光強度信号I(t)の周波数を算出していることから、第1の手法や第2の手法のように相対的な移動速度を算出するのではなく、画素22-1~22-nの各々に対応する散乱体30の位置における移動散乱体31の絶対的な移動速度を算出することができる。
【0044】
なお、上記の第3の手法では、画素22-1~22-nの各々が検出する輝度値の最大値及び最小値の各々にバラツキがないことを前提とし、画素22-1~22-nの各々がスペックルパターンの光を受光して検出する輝度値の中の最大値と最小値との差の絶対値を、全ての画素22-1~22-nに対して共通の検出閾値としている。これに対して、画素22-1~22-nの各々が検出する輝度値の最大値及び最小値の各々にバラツキがある場合、イベント検出部23は、画素22-1~22-nごとに、輝度値の最大値と最小値とを予め検出し、画素22-1~22-nの各々に対応する輝度値の最大値と最小値の差の絶対値を、画素22-1~22-nの各々に対する個別の検出閾値とするようにしてもよい。
【0045】
(第1の実施形態の計測装置による第4の手法)
図7を参照しつつ、第1の実施形態における計測装置1による第4の手法について説明する。第4の手法は、散乱体30に含まれる移動散乱体31の領域が十分に大きい場合に適用されることを想定している。散乱体30に含まれる移動散乱体31の領域が十分に大きい場合、散乱光50,51の干渉によってパターンに変化が生じている部分のスペックルパターンの光を、受光部21の多くの画素22-1~22-nにおいて受光することができることになる。この場合、イベント検出部23が検出するイベントデータから、受光部21の受光面、すなわち画素22-1~22-nの位置において計測されるスペックルパターンの光の強弱の度合いを示す画像を検出時刻ごとに生成し、異なる2つの検出時刻の画像を比較することにより、スペックルパターンの時間的な変化を検出できることになる。
【0046】
図7は、算出処理部13による第4の手法の流れを示すフローチャートである。なお、図7のフローチャートの処理が開始される前提は、上記した第1の手法の前提と同一の前提である。算出処理部13は、イベント検出部23が非同期に出力するイベントデータを取り込む(ステップSd1)。算出処理部13は、画素22-1~22-nの各々について、検出時刻ごとに、当該検出時刻以前の検出時刻に対応する符号値を積算し、検出時刻ごとの積算値を算出する(ステップSd2)。なお、第4の手法において、算出処理部13が符号値を積算していく手順は、積算の対象が乗算値から符号値に代わる他は、第2の手法における乗算値を積算していく手順と同様の手順である。
【0047】
算出処理部13は、算出した画素22-1~22-nの各々についての検出時刻ごとの積算値を画素値とし、検出時刻ごとの画像データを生成する(ステップSd3)。第2の手法では、積算値は、符号値に検出閾値を乗算した乗算値を積算した値であり、画素22-1~22-nの各々についての検出時刻ごとの積算値の変化を、画素22-1~22-nの各々におけるΔlog(I(t))を積算したlog(I(t))とみなしていた。これに対して、第4の手法により算出する画素22-1~22-nの各々についての検出時刻ごとの積算値は、スペックルパターンの光の強弱の度合い示していることになる。したがって、ステップSd3において、算出処理部13が生成する検出時刻tの画像データによって表される画像は、検出時刻tにおけるスペックルパターンの光の強弱の度合いを示した画像ということになる。
【0048】
算出処理部13は、任意に選択する異なる2つの検出時刻の画像データの相互相関を算出する(ステップSd4)。算出処理部13が算出した相互相関においてピークが生じている場合、ピークが生じている位置が、異なる2つの検出時刻の間のスペックルパターンの移動量を示すことになる。算出処理部13は、相互相関により得られたピークの位置、すなわち、スペックルパターンの移動量を、異なる2つの検出時刻の時間差で除算して、スペックルパターンの速度、すなわち、移動散乱体31の全体の速度を算出する(ステップSd5)。
【0049】
すなわち、第4の手法の算出処理部13は、画素22-1~22-nの各々について、検出時刻ごとに、当該検出時刻以前の検出時刻に対応するイベントデータに含まれる符号値を積算した値を、検出時刻ごとの画素22-1~22-nの画素値として算出する。算出処理部13は、算出した画素値により、検出時刻ごとの画像データを生成し、生成した異なる2つの検出時刻の画像データに基づいて、移動散乱体31の移動速度を算出していることになる。
【0050】
なお、上記の第4の手法では、異なる2つの検出時刻の画像データの相互相関を算出することにより、スペックルパターンの移動量を算出するようにしているが、相互相関以外の手法、例えば、パターンマッチングなどによりスペックルパターンの移動量を算出するようにしてもよい。
【0051】
上記の第4の手法では、ステップSd2において、算出処理部13が、画素22-1~22-nの各々について、検出時刻ごとに、当該検出時刻以前の検出時刻に対応する符号値を積算し、検出時刻ごとの積算値を算出するようにしている。これに対して、算出処理部13は、検出時刻ごとの画素22-1~22-nの各々に対応するイベントデータの符号値を画素値とする画像データを生成するようにしてもよい。この場合、算出処理部13は、画像データを生成しようとする検出時刻に対応するイベントデータが存在しない画素22-1~22-nの画素値を「0」として画像データを生成する。そのため、算出処理部13が生成する画像データの画素値は、「-1」,「0」,「+1」のいずれかの値になる。
【0052】
算出処理部13が生成する画像データによって表される画像は、上記した第4の手法のように積算を行っていないため、第4の手法により生成する画像データほど強弱の違いが鮮明にはなっていないものの、検出時刻においてスペックルパターンの光の強弱の度合いを示した画像になる。したがって、算出処理部13が、異なる2つの検出時刻の画像データを比較することにより、スペックルパターンの移動量を算出することができる。なお、異なる2つの検出時刻の画像データの比較手法は、上記した第4の手法において用いた相互相関であってもよいし、相互相関以外の手法、例えば、パターンマッチングなどであってもよい。算出処理部13は、算出した移動量を、異なる2つの検出時刻の時間差で除算することにより、スペックルパターンの速度、すなわち、移動散乱体31の全体の速度を算出することができることになる。
【0053】
上記の第1の実施形態の計測装置1において、照射部11は、コヒーレント光を生成する。計測部12は、散乱体30がコヒーレント光を受けることにより生じる散乱光50,51の干渉により生成されるスペックルパターンの光を複数の画素22-1~22-nにより受光し、画素22-1~22-nの各々がスペックルパターンの光を受光して検出する輝度値の変化を示す輝度変化量が予め定められる検出対象の輝度変化量を有する画素22-1~22-nを検出し、検出した画素22-1~22-nの位置と、画素22-1~22-nの輝度変化量の変化方向を示す符号値と、検出した時刻を示す検出時刻とを含むイベントデータを生成する。算出処理部13は、計測部12が生成するイベントデータに基づいて、画素22-1~22-nの各々に対応する移動散乱体31の位置の移動の速度、または、移動散乱体31の移動速度を算出する。
【0054】
一般的なイメージセンサを備えるフレームカメラは、各画素に積算された輝度値をフレームごとに出力する。フレームカメラにおいて、積算時間、すなわち露光時間と信号のダイナミックレンジは、全ての画素で同一である。そのため、非常に明るい画素と、非常に暗い画素とが存在している場合、白飛び、黒つぶれ、量子化誤差などが生じることになる。照明の影響などでシーンの明度が激しく変化する場合、露光時間の調整ができずに白飛び、黒つぶれが生じることもある。
【0055】
これに対して、イベントカメラは、上記したように各画素の輝度変化量が検出閾値以上になるごとに非同期でイベントデータを出力する。そのため、白飛び、黒つぶれ、量子化誤差などの問題が生じない。イベントカメラが出力するイベントデータは、非同期で出力されるデータであるため、フレームカメラが出力する画像データに比べて、非常に疎なデータである。そのため、イベントデータを記憶しておくのに要するメモリの容量も少なくて済み、イベントデータを伝送する際に要する伝送容量も少なくて済むことになる。イベントデータが非常に疎なデータであることから、イベントカメラでは、撮影処理やデータ処理に要する演算量や消費電力量などのコストを、フレームカメラと比較して非常に低く抑えることができる。
【0056】
例えば、フレームカメラが出力する画像データの時間分解能と同等の時間分解能をイベントデータにおいて達成しようとする場合、フレームカメラが出力する画像データの容量よりも非常に少ない容量のイベントデータで達成することが可能である。言い換えると、フレームカメラが出力する画像データの容量と同等の容量のイベントデータを収集すれば、非常に高い時間分解能が得られることになる。これらの理由から、イベントカメラを用いることで、光量が少ない環境や照明の変化が激しい環境において、安定的に、低コストで、かつ非常に高い時間分解能での計測を行うことができる。
【0057】
第1の実施形態の計測装置1では、フレームカメラと比較して、上記のような利点を有するイベントカメラを計測部12に適用している。そのため、フレームカメラのように複数回の継続的な計測を行う必要がなく、計測装置1では、いわゆるリアルタイム計測のように計測の時間間隔に制約がある条件下で、変化が一定でない物体の変化をスペックルパターンに基づいて計測することが可能になる。
【0058】
なお、上記の第1の実施形態では、照射部11によりレーザ光を拡散した面状のレーザ光40を散乱体30に照射するようにしている。これに対して、照射部11の内部に備えられている凸レンズなどの光学素子の位置を調整して、照射部11がスポットレーザ光、すなわち拡散していないレーザ光を散乱体30の特定の箇所に照射するようにしてもよい。照射部11の内部に備えられる光学素子として、例えば、シリンドリカルレンズなどを適用して、照射部11がライン状のレーザ光を散乱体30に照射するようにしてもよい。照射部11として、レーザ光を生成する光源を備えるプロジェクタを適用し、任意のパターンのレーザ光を任意のタイミングで照射するようにしてもよい。
【0059】
計測部12に適用するイベントカメラの性能によっては、一度に多量の画素22-1~22-nにおいて輝度値の変化が生じると、受光部21やイベント検出部23における帯域が不足して、全てのイベントデータを算出処理部13に出力できない場合がある。このような場合に、照射部11が照射するレーザ光40を、上記のようなスポットレーザ光、ライン状のレーザ光、または、任意のパターンのレーザ光とし、レーザ光40を照射する範囲を絞ったり、異なるタイミングで散乱体30の別の箇所にレーザ光40を照射したりすることにより、受光部21やイベント検出部23における帯域不足を解消することができる。
【0060】
照射部11が照射するレーザ光40をスポットレーザ光とし、散乱体30の微小範囲、例えば、1つの画素22の受光面の広さの範囲にのみ照射し、1つの画素22によってのみスペックルパターンの光が計測されるように調節する。この場合、照射部11の照射位置と、画素22の位置とに基づいて三角測量を行うことにより、散乱体30においてレーザ光40が照射されている三次元空間内の位置を算出することができる。したがって、レーザ光40の照射位置をずらしながら計測することにより、画素22-1~22-nの各々に対応する散乱体30の三次元空間内の位置と、移動散乱体31が等速で移動している場合における移動散乱体31の移動速度とを算出することが可能になる。
【0061】
照射部11として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)レーザプロジェクタなどのラスタスキャン式のレーザを照射する装置を適用するようにしてもよい。この場合、照射部11は、散乱体30の一点にレーザ光40を照射し、散乱体30をレーザ光40によりラスタ走査するように、レーザ光40の照射先を一点ずつ変えていく。計測部12のイベント検出部23が、散乱光50、51の干渉により強め合いが生じた場合のみイベントデータを生成するようにしておく。具体的には、イベント検出部23において、輝度値の最小値と最大値との差の絶対値を検出閾値とし、輝度値が最小値から最大値に変化する場合であって、検出閾値以上の輝度変化量を検出した場合のみイベントデータを生成するようにしておく。これにより、算出処理部13は、画素22-1~22-nの各々におけるイベントデータの発生間隔から、干渉による強め合いが発生している間隔を検出することができる。算出処理部13は、検出した間隔から画素22-1~22-nの各々の位置において計測される受光強度信号の周波数を算出することができ、画素22-1~22-nの各々に対応する散乱体30の位置における移動散乱体31の移動速度を算出することが可能になる。この場合、散乱体30に対して一度に一点しかレーザ光40を照射しないため、輝度値の変化が生じる画素22-1~22-nの範囲も限定され、一度に多量のイベントデータが発生することもなく、広い範囲に一度にレーザ光40を照射する場合に起こりうる大量のイベントデータの発生による処理落ちを回避することも可能になる。また、広い範囲に一度にレーザ光40を照射する場合に比べて、低パワーのレーザで大面積を計測することも可能になる。
また、スキャン速度を任意に制御できるラスタスキャン式のレーザ照射装置を使用して、ある照射位置から次の照射位置に移るタイミングを任意に制御することで、イベントセンサの休眠のタイミングと照射位置の移動タイミングを合わせ、照射位置移動により発生するイベントを検出せずにスペックルの変化によるイベントのみを検出することも可能になる。一般的なイベントセンサでは各画素においてイベントを検出した後一定の休眠期間を経て次のイベント検出を行うため、休眠期間に生じた輝度変化に基づくイベントは検出されない。休眠期間と照射位置移動タイミングは予め設定するものとしてもよいし、同期装置を用いて動的に制御してもよい。あるいは、同様のレーザ照射装置について、算出処理部13において照射位置変更に基づくイベントとスペックルの変化によるイベントを分類する処理を行ってもよい。例えばT秒ごとに照射位置を変更する場合、周期Tで発生するイベントは照射位置変更によるものとすることができる。あるいは画素ごとに照射期間中に発生する一連のイベント群について、始めと終わりの一定期間分のイベントを照射位置変更によるものとすることができる。
【0062】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態における計測装置1aと、計測装置1aの計測対象である散乱体32とを示すブロック図である。第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。第2の実施形態における散乱体32は、例えば、時間が経過するとともに形状が変形し、コヒーレント光を受けて散乱光を生じさせる物体であれば、どのような物体であってもよい。
【0063】
計測装置1aは、照射部11a、計測部12、算出処理部13a、光分岐部14及び光集束部15を備える。照射部11aは、第1の実施形態の照射部11において内部に備える光学素子の位置を、レーザ光を拡散させる位置からレーザ光を直進させる位置に調節したものであり、直進するレーザ光41をコヒーレント光として一定の光強度で生成して照射する。光分岐部14は、照射部11aのレーザ光41の照射点から計測部12の受光部21の受光面に至る光路を光路差が生じるように2つの光路に分岐する。図8では、一例として、光分岐部14が、照射部11aが照射するレーザ光41を光路差が生じるように分岐して2つのレーザ光42,43を散乱体32に対して照射する構成を示している。
【0064】
散乱体32がレーザ光42を受けることにより散乱光52が受光部21の受光面の方向に照射され、散乱体32がレーザ光43を受けることにより散乱光53が受光部21の受光面の方向に照射される。光集束部15は、光分岐部14が分岐した2つの光路を集束、すなわち、散乱光52と、散乱光53とを集束し、集束した散乱光52,53の干渉によって生じるスペックルパターンを受光部21の受光面に結像させる。光集束部15として、例えば、凸レンズなどが適用されるが、スペックルパターンを受光部21の受光面に結像させることができるのであれば、凸レンズ以外の光学素子であってもよい。
【0065】
図9は、光分岐部14及び光集束部15に適用される光学系の例として、4通りの光学系の構成を示す図であり、以下に示す参考文献2の図31・34に示されている4つの光学系の線図の部分を引用し、光学系の構成の説明を行うために符号を付した図である。なお、説明の都合上、参考文献2の図31・34とは図の順番を入れ替えて示している。
【0066】
[参考文献2:株式会社光響、Optimedia、“31・3 スペックル”、[online]、[令和3年8月18日検索]、インターネット<https://optipedia.info/laser/handbook/laser-handbook-7th-section/31-3/>]
【0067】
(2光束法を適用した光分岐部の構成)
図9(a)は、図8に示した1つのレーザ光41を2つのレーザ光42,43に分岐する光分岐部14の一例であり、2光束法と呼ばれる光学系である。図9(a)において、ハーフミラー61、ミラー62,64、凸レンズ63,65が、光分岐部14に含まれる光学素子である。図9(a)では、光集束部15の一例として、凸レンズ15aを備える例を示しており、図9(b)~(d)においても同様の例を示している。図9(a)では、形状が変形する前の散乱体32を、散乱体32-1として示し、形状が変形した後の散乱体32を、散乱体32-2として示している。
【0068】
凸レンズ63,65,15aと、ミラー62,64が配置される位置関係は、以下の通りである。凸レンズ15aの光軸66と、ミラー62によってレーザ光が反射される方向であって凸レンズ63の光軸である光軸67とが成す角度と、光軸66と、ミラー64によってレーザ光が反射される方向であって凸レンズ65の光軸である光軸68とが成す角度が一致し、光軸66と、光軸67と、光軸68とが変形前の散乱体32-1の表面において交差するように配置される。光軸67と光軸68とが成す角度は、凸レンズ15aの開口角よりも大きな角度になるように定められる。凸レンズ15aは、その光軸が計測部12の受光部21の受光面と垂直になり、散乱体32-1,32-2と受光部21との間の位置であって、受光部21の受光面においてスペックルパターンが結像する位置に配置される。
【0069】
ハーフミラー61及びミラー62,64は、照射部11aが照射するレーザ光41がハーフミラー61により反射されてミラー62に到達し、レーザ光41がハーフミラー61を透過してミラー64に到達するように配置される。ハーフミラー61及びミラー62,64は、照射部11aの照射点から受光部21の受光面に至る光路に光路差が生じるように配置される。
【0070】
上記のように配置することにより、照射部11aが照射するレーザ光41は、ハーフミラー61によって反射されてミラー62に到達するレーザ光と、ハーフミラー61を透過してミラー64に到達するレーザ光とに分岐する。ミラー62は、受光したレーザ光を光軸67の方向に反射し、反射されたレーザ光は、凸レンズ63により拡散されて散乱体32-1,32-2に照射される。ミラー64は、受光したレーザ光を光軸68の方向に反射し、反射されたレーザ光は、凸レンズ65により拡散されて散乱体32-1,32-2に照射される。例えば、図8の光分岐部14が照射するレーザ光42が、凸レンズ63によって拡散されたレーザ光に対応し、レーザ光43が、凸レンズ65によって拡散されたレーザ光に対応する。以下、凸レンズ63によって拡散されたレーザ光を、レーザ光42といい、凸レンズ65によって拡散されたレーザ光を、レーザ光43という。
【0071】
変形前の散乱体32-1が、レーザ光42を受けることにより生じる散乱光を散乱光52-1とし、変形後の散乱体32-2が、レーザ光42を受けることにより生じる散乱光を散乱光52-2とする。同様に、変形前の散乱体32-1が、レーザ光43を受けることにより生じる散乱光を散乱光53-1とし、変形後の散乱体32-2が、レーザ光43を受けることにより生じる散乱光を散乱光53-2とする。散乱光52-1,52-2,53-1,53-2は、凸レンズ15aにより集光されて受光部21の受光面に到達する。
【0072】
変形前の散乱体32-1から生じる散乱光52-1,53-1は、光路差がある2つの方向から照射されたレーザ光によって生じた光であり、散乱光52-1,53-1が干渉することにより光路差によって生じた位相差が反映されたスペックルパターンが受光部21の受光面に結像されることになる。ここで、散乱体32-1の計測対象の面、すなわちレーザ光42,43が照射されている面が、符号39aの矢印で示す方向に動くような変形が生じて散乱体32-2になったとする。以下、このような変形による変位を、計測対象の面に平行な変位である面内変位という。変形後の散乱体32-2の散乱光52-2,53-2も、光路差がある2つの方向から照射されたレーザ光によって生じた光であり、散乱光52-2,53-2が干渉することにより光路差及び散乱体32-1から散乱体32-2に変形した際の変位量によって生じた位相差が反映されたスペックルパターンが受光部21の受光面に結像されることになる。
【0073】
(参照光法を適用した光分岐部の構成)
図9(b)に示す光学系は、参照光法と呼ばれる光学系である。なお、図9(b)においても、形状が変形する前の散乱体32を、散乱体32-1として示し、形状が変形した後の散乱体32を、散乱体32-2として示している。参照光法においても、散乱体32-1がレーザ光を受けることにより生じる散乱光を散乱光52-1とし、散乱体32-2がレーザ光を受けることにより生じる散乱光を散乱光52-2とする。参照光法では、上記した2光束法のように、2つのレーザ光を散乱体32-1,32-2に照射するのではなく、レーザ光の一方を散乱体32-1,32-2に照射し、レーザ光の他方を参照光として受光部21の受光面に照射する構成になる。
【0074】
図9(b)において凸レンズ71、ハーフミラー72、ミラー73が光分岐部14に含まれる光学素子である。ミラー73は、ミラー73の反射面が、照射部11aが照射するレーザ光41が直進する方向に対して垂直になるように配置される。ハーフミラー72は、照射部11aが照射するレーザ光41が直進する方向に対して45度傾いた位置に配置される。凸レンズ71は、その光軸が、レーザ光41が直進する方向に一致するように配置される。光集束部15の一例である凸レンズ15aは、その光軸が、計測部12の受光部21の受光面と垂直になるように配置される。凸レンズ15aは、ハーフミラー72を透過して到達する散乱光52-1,52-2を集光して受光部21の受光面においてスペックルパターンが結像する位置に配置される。
【0075】
上記のように配置することにより、照射部11aが照射するレーザ光41は、凸レンズ71によって拡散され、拡散されたレーザ光41は、ハーフミラー72により反射されて散乱体32-1,32-2の方向に進むレーザ光と、ハーフミラー72を透過してミラー73に到達するレーザ光とに分岐する。以下、ハーフミラー72を透過してミラー73に到達するレーザ光を参照光という。散乱体32-1,32-2がレーザ光を受けることにより生じる散乱光52-1,52-2は、ハーフミラー72の方向に進み、ハーフミラー72を透過し、凸レンズ15aにより集光されて受光部21の受光面に到達する。これに対して、参照光は、ミラー73によりハーフミラー72の方向に反射され、更に、ハーフミラー72により反射されて凸レンズ15aの方向に進み、凸レンズ15aにより集光されて受光部21の受光面に到達する。
【0076】
受光部21の受光面に散乱光52-1と、参照光とが到達すると、散乱光52-1と、参照光とが干渉することにより、散乱光52-1と参照光の光路差により生じた位相差が反映されたスペックルパターンが受光部21の受光面に結像されることになる。ここで、散乱体32-1が、符号39bの矢印で示す方向に動くような変形が生じて散乱体32-2になったとする。以下、このような変形による変位を、散乱体32-1の計測対象の面、すなわちハーフミラー72により反射されたレーザ光が照射される面に平行でない変位である面外変位という。散乱体32-1から散乱体32-2への変形の後に、受光部21の受光面に散乱光52-2と、参照光とが到達すると、散乱光52-2と、参照光とが干渉することにより、散乱光52-2と参照光の光路差及び散乱体32-1から散乱体32-2に変形した際の変位量により生じた位相差が反映されたスペックルパターンが受光部21の受光面に結像されることになる。
【0077】
(2開口法を適用した光分岐部の構成)
図9(c)に示す光学系は、2開口法と呼ばれる光学系である。なお、図9(c)においても、形状が変形する前の散乱体32を、散乱体32-1として示し、形状が変形した後の散乱体32を、散乱体32-2として示している。2開口法においても、散乱体32-1がレーザ光を受けることにより生じる散乱光を散乱光52-1とし、散乱体32-2がレーザ光を受けることにより生じる散乱光を散乱光52-2とする。2開口法では、照射部11aのレーザ光41の照射点から計測部12の受光部21の受光面に至る光路の途中に、2か所にスリットを有する複開口板82を配置することにより、光路差がある2つの光路を生成する。
【0078】
凸レンズ81、複開口板82が光分岐部14に含まれる光学素子である。凸レンズ81は、その光軸が、照射部11aが照射するレーザ光41が直進する方向に一致するように配置される。光集束部15の一例である凸レンズ15aは、その光軸83が計測部12の受光部21の受光面及び複開口板82の平面部分の面と垂直になるように配置される。凸レンズ15aは、複開口板82を通過して到達する散乱光52-1,52-2を集光して受光部21の受光面においてスペックルパターンが結像する位置に配置される。複開口板82は、平面の部分の面が受光部21の受光面と平行になるように配置され、更に、光軸83と交差する位置から、2つのスリットの各々までの距離が均等になるように配置される。
【0079】
上記のように配置することにより、照射部11aが照射するレーザ光41は、凸レンズ81によって拡散され、拡散されたレーザ光41は、散乱体32-1,32-2に照射される。散乱体32-1,32-2が拡散されたレーザ光41を受けることにより生じる散乱光52-1,52-2は、複開口板82の2か所のスリットを通過する際に回折によって光路差が生じることになる。複開口板82の2か所のスリットを通過した散乱光52-1,52-2は、凸レンズ15aにより集光されて受光部21の受光面に到達する。
【0080】
複開口板82により光路差が生じた2つの光路を通じて、散乱光52-1が、受光部21の受光面に到達すると、光路差により生じた位相差が反映されたスペックルパターンが受光部21の受光面に結像されることになる。ここで、散乱体32-1の計測対象の面、すなわち凸レンズ81により拡散されたレーザ光が照射されている面が、符号39cの矢印で示す方向に動くような変形が生じて散乱体32-2になったとする。すなわち、散乱体32-1において、図9(a)に示した2光束法と同様の面内変位が生じたとする。この場合、複開口板82により光路差が生じた2つの光路を通じて、散乱光52-2が、受光部21の受光面に到達すると、光路差及び散乱体32-1から散乱体32-2に変形した際の変位量により生じた位相差が反映されたスペックルパターンが受光部21の受光面に結像されることになる。
【0081】
(横ずらし法を適用した光分岐部の構成)
図9(d)に示す光学系は、横ずらし法と呼ばれる光学系である。横ずらし法では、照射部11aのレーザ光41の照射点から計測部12の受光部21の受光面に至る光路の途中に、バイプリズム92を配置することにより、光路差がある2つの光路を生成する。凸レンズ91、バイプリズム92が光分岐部14に含まれる光学素子である。凸レンズ91は、その光軸93が、照射部11aが照射するレーザ光41が直進する方向に一致するように配置される。バイプリズム92は、いわゆる複プリズムであり、断面が180度に近い頂角を有する二等辺三角形になっている三角柱形状のプリズムである。バイプリズム92は、二等辺三角形の形状の底辺を含む面が、受光部21の受光面と平行になるように配置される。光集束部15の一例である凸レンズ15aは、その光軸が、計測部12の受光部21の受光面及びバイプリズム92の二等辺三角形の形状の底辺を含む面と垂直になり、当該二等辺三角形の形状の頂角を含む辺と交差するように配置される。凸レンズ15aは、バイプリズム92を透過して到達する散乱光52-1,52-2を集光して受光部21の受光面においてスペックルパターンが結像する位置に配置される。
【0082】
上記のように配置することにより、照射部11aが照射するレーザ光41は、凸レンズ91によって拡散され、拡散されたレーザ光は、散乱体32に照射される。散乱体32がレーザ光を受けることにより生じる散乱光52は、バイプリズム92を透過する。散乱光52がバイプリズム92を透過する際に、バイプリズム92の光学的作用により、図9(d)に示すように、散乱体32のレーザ光が照射される計測対象の面上において、少しずれた位置に、散乱体32の複像32Dが形成される。ここで、複像32Dを形成する光であってバイプリズム92によって生成された光を複像光52Dとする。散乱光52と、複像光52Dとには、バイプリズム92の光学的作用による光路差が生じることになる。バイプリズム92を透過した散乱光52と、バイプリズム92により生成された複像光52Dとは、凸レンズ15aにより集光されて受光部21の受光面に到達する。
【0083】
散乱光52と、複像光52Dとが、受光部21の受光面に到達すると、光路差により生じた位相差が反映されたスペックルパターンが受光部21の受光面に結像されることになる。ここで、散乱体32において、図9(b)の参照光法のケースにおいて示した面外変位の変形、すなわち、散乱体32が計測対象の面と平行でない変位が生じたとする。この場合、散乱光52と、複像光52Dとが、受光部21の受光面に到達すると、光路差及び散乱体32の変形による変位量により生じた位相差が反映されたスペックルパターンが受光部21の受光面に結像されることになる。
【0084】
図9(a)~(d)に示したいずれかの光学系を適用した光分岐部14を用いることにより、変形前の散乱体32-1によって生じたスペックルパターンと、変形後の散乱体32-2によって生じたスペックルパターンとが得られることになる。変形前後の2つのスペックルパターンの差の二乗を算出すると干渉縞が得られることになる。得られた干渉縞の明暗は、散乱体32が変形した際の変位量に依存し、変位量がレーザ光41の波長の整数倍であるときに最も暗くなり、変位量がレーザ光41の波長の半整数倍であるときに最も明るくなる。1本の干渉縞は、同一の変位量を示しており、散乱体32の表面が連続している場合、干渉縞は、高度を変位量に替えた等高線とみなすことができる。したがって、干渉縞の間隔が細かい領域では変位量の変化が大きく散乱体32の形状が急激に変化していることを示しており、干渉縞の間隔が粗い領域では変位量の変化が小さく散乱体32の形状が緩やかに変化していることを示すことになる。このように、計測領域に対応するスペックルパターンを計測部12の受光部21の画素22-1~22-nにより受光して、散乱体32の形状の変形の前後で比較することにより、散乱体32の形状の変形に伴って生じた画素22-1~22-nの各々に対応する散乱体32の位置の変位量を推定することができる。
【0085】
(第2の実施形態の計測装置による処理)
図10を参照しつつ、第2の実施形態における計測装置1aによる処理について説明する。図10は、算出処理部13aによる処理の流れを示すフローチャートである。なお、ここでは、光分岐部14として、図9(a)に示した2光束法の光学系が適用されており、光集束部15として凸レンズ15aが適用されているものとして、計測装置1aによる処理について説明する。
【0086】
図10のフローチャートの処理が開始される前提として、以下に示すことが行われているものとする。照射部11aは、レーザ光41を生成して光分岐部14に出力する。光分岐部14において、ハーフミラー61は、照射部11aが照射するレーザ光41を、ミラー62に到達するレーザ光と、ミラー64に到達するレーザ光とに分岐する。ミラー62は、受光したレーザ光を光軸67の方向に反射し、反射されたレーザ光は、凸レンズ63により拡散されてレーザ光42になる。ミラー64は、受光したレーザ光を光軸68の方向に反射し、反射されたレーザ光は、凸レンズ65により拡散されてレーザ光43になる。レーザ光42と、レーザ光43とが、散乱体32に照射される。散乱体32が、レーザ光42を受けることにより生じる散乱光52と、散乱体32がレーザ光43を受けることにより生じる散乱光53とが、凸レンズ15aにより集光される。凸レンズ15aにより集光された散乱光52と、散乱光53とが干渉することにより、受光部21の受光面の画素22-1~22-nにおいてスペックルパターンが生じることになる。
【0087】
散乱体32の形状が変形していない場合、散乱光52と、散乱光53とに変化が生じないため、受光部21の受光面の画素22-1~22-nにおいて生じるスペックルパターンも変化しない。この場合、画素22-1~22-nの各々がスペックルパターンの光を受光して出力する輝度値は変化しないため、イベント検出部23は、いずれの画素22-1~22-nからも「0」の輝度変化量を検出することになる。ただし、実際には、ノイズなどが存在するため、イベント検出部23が検出する輝度変化量は、「0」にならない場合もあるが、検出閾値以上になることはない。したがって、この場合、イベント検出部23は、イベントデータを出力することもない。
【0088】
これに対して、散乱体32の形状が変形した場合、散乱光52と、散乱光53とに、散乱体32の形状が変形した際の変位量に応じた変化が生じることになる。そのため、散乱光52と、散乱光53の変化に応じてスペックルパターンが変化することになる。スペックルパターンが変化すると、スペックルパターンの変化が生じている位置に対応する画素22-1~22-nが検出する輝度値は変化することになる。イベント検出部23は、画素22-1~22-nが出力する輝度値から輝度変化量を検出した場合に、検出した輝度変化量が予め定められる検出閾値以上の輝度変化量であると判定したとき、当該輝度変化量に対応する画素22に対するイベントデータを生成して出力することになる。
【0089】
以下、図10のフローチャートにしたがって処理の流れを説明する。算出処理部13aは、イベント検出部23が非同期に出力するイベントデータを取り込む(ステップSe1)。算出処理部13aは、イベントデータの各々に含まれる画素22の位置と、検出時刻とに基づいて、予め定められた時間内の画素22-1~22-nの各々のイベントデータの数をカウントする(ステップSe2)。
【0090】
算出処理部13aは、画素22-1~22-nの各々のイベントデータの数を画素値とする画像データを生成する(ステップSe3)。上記したように、変形前後の2つのスペックルパターンの差の二乗を算出して得られる干渉縞の明暗は散乱体32の形状が変形した際の変位量に依存している。干渉縞の明るい部分は、散乱体32の変形前後の輝度変化量が大きいため、イベントデータが多くなる。これに対して、干渉縞の暗い部分では、散乱体32の変形前後の輝度変化量が小さいため、イベントデータが少なくなるか、または、イベントデータが存在しないことになる。したがって、算出処理部13aが生成する画像データによって表される画像は、干渉縞の変化を示した画像になる。
【0091】
上記したように、干渉縞の間隔が細かい領域では変位量が大きく散乱体32が急激に変化していることを示しており、干渉縞の間隔が粗い領域では変位量が小さく散乱体32が緩やかに変化していることを示している。算出処理部13aは、生成した画像データを周波数解析して、画素22-1~22-nの各々の位置における干渉縞の間隔の細かさを算出する。算出処理部13aは、算出した画素22-1~22-nの各々の位置における干渉縞の間隔の細かさから、画素22-1~22-nの各々に対応する散乱体32の位置における変位量を算出する(ステップSe4)。
【0092】
図9(a),(c)の場合、すなわち2光束法と2開口法の各々を適用した場合、算出処理部13aは、図9(a),(c)の符号39a,39cの方向、すなわち散乱体32の計測対象の面と平行な方向における散乱体32の変位量を算出することになる。図9(b)の場合、すなわち参照光法を適用した場合、算出処理部13aは、図9(b)の符号39bの方向、すなわち散乱体32の計測対象の面と平行でない方向における散乱体32の変位量を算出することになる。図9(d)の場合、すなわち横ずらし法の場合、算出処理部13aは、散乱体32の面外変位による変形によって生じる散乱体32と複像32Dのズレの方向に対する傾きを散乱体32の変位量として算出する。したがって、散乱体32と複像32Dのズレ量が十分に小さい場合、算出処理部13aが算出する変位量は、散乱体32の面外変位の微分値を示すことになる。図9(a)~(d)のいずれの光学系を光分岐部14に適用するかは、散乱体32におけるいずれの方向の変位量を検出するかによって適宜定められることになる。
【0093】
上記の第2の実施形態の計測装置1aにおいて、照射部11aは、形状が変形する散乱体32に照射するコヒーレント光を生成する。光分岐部14は、照射部11aから計測部12の複数の画素22-1~22-nに至る光路を光路差が生じるように2つの光路に分岐する。光集束部15は、光分岐部14が分岐した2つの光路を集束して計測部12が備える複数の画素22-1~22-nにスペックルパターンを結像させる。計測部12は、散乱体32がコヒーレント光を受けることにより生じる散乱光52,53の干渉により生成されるスペックルパターンの光を複数の画素22-1~22-nにより受光し、画素22-1~22-nの各々がスペックルパターンの光を受光して検出する輝度値の変化を示す輝度変化量が予め定められる検出対象の輝度変化量を有する画素22-1~22-nを検出し、検出した画素22-1~22-nの位置と、画素22-1~22-nの輝度変化量の変化方向を示す符号値と、検出した時刻を示す検出時刻とを含むイベントデータを出力する。算出処理部13aは、予め定められた時間内における画素22-1~22-nごとのイベントデータの数を画素値とする画像データを生成し、生成した画像データに基づいて、散乱体32の変形に伴って生じた変位量を算出する。
【0094】
上記の構成により、散乱体32の形状が変形することにより、光分岐部14が分岐した2つの光路において、散乱体32の形状が変形する際の変位量に応じた光路差が加わることになり、加わった光路差分の位相差が生じることになる。そのため、光集束部15が複数の画素22-1~22-nに結像させるスペックルパターンに、生じた位相差に応じた変化が現れることになる。したがって、画素22-1~22-nの各々に対応するイベントデータの数を画素値とする画像データを生成することにより、生成した画像データの画像は、干渉縞の間隔の細かさによって、散乱体32の形状の変形の前後のスペックルパターンの変化が示された画像になる。算出処理部13aは、生成した画像データを周波数解析することにより、干渉縞の間隔の細かさから散乱体32の形状が変形する際の変位量を算出することが可能になる。算出処理部13aによるイベントデータに基づく画像データの生成において、フレームカメラのように複数回の継続的な画像データの取得を行う必要がないことから、計測装置1aは、いわゆるリアルタイム計測のように計測の時間間隔に制約がある条件下で、変化が一定でない物体の変化をスペックルパターンに基づいて推定することが可能になる。
【0095】
なお、上記の第2の実施形態では、図9(b)の凸レンズ71、図9(c)の凸レンズ81及び図9(d)の凸レンズ91は、光分岐部14に含まれるとしている。これに対して、光分岐部14が、凸レンズ71,81,91を含まず、照射部11aの内部に備えられている光学素子の位置を調節して、照射部11aが拡散したレーザ光を照射するようにしてもよい。
【0096】
上記の第2の実施形態では、光分岐部14は、図9(a)~図9(d)の光学系のいずれが適用される場合であっても、照射部11aから計測部12の複数の画素22-1~22-nに至る光路を光路差が生じるように2つに分岐している。これに対して、光分岐部14は、照射部11aから計測部12の複数の画素22-1~22-nに至る光路を光路差が生じるように3つ以上の複数の光路に分岐するようにしてもよい。この場合、光集束部15は、光分岐部14が分岐した3つ以上の複数の光路を集束して計測部12が備える画素22-1~22-nにスペックルパターンを結像させることになる。
【0097】
上記の第1及び第2の実施形態では、イベント検出部23は、ある画素22の輝度変化量が、予め定められる検出閾値以上の輝度変化量であると判定した場合、当該輝度変化量に対応する画素22を予め定められる検出対象の輝度変化量を有している画素22として検出するようにしている。これに対して、イベント検出部23は、ある画素22の輝度変化量が、予め定められる検出閾値を超える輝度変化量であると判定した場合、当該輝度変化量に対応する画素22を予め定められる検出対象の輝度変化量を有している画素22として検出するようにしてもよい。ただし、この場合、第1の実施形態に示した画素22-1~22-nの輝度値の最大値と最小値との差の絶対値を検出閾値とする構成において、正しい判定が行われるようにするため、輝度値の最大値と最小値との差の絶対値をそのまま検出閾値にするのではなく、輝度値の最大値と最小値との差の絶対値からイベント検出部23の判定精度に応じた微小値を減算した値を検出閾値とする必要がある。
【0098】
上記した第1の実施形態の計測装置1は、散乱体30が、例えば、人体であり、移動散乱体31が、例えば、血液である場合、血流を測定する測定装置ということもでき、血流を観測する観測装置ということもできる。第2の実施形態の計測装置1aは、散乱体32が、例えば、人体である場合、人体の形状の変化を測定する測定装置ということもでき、人体の形状の変化を観察する観察装置ということもできる。
【0099】
上述した第1及び第2の実施形態における算出処理部13,13aをコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0100】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1…計測装置、11…照射部、12…計測部、13…算出処理部、21…受光部、22-1~22-n…画素、23…イベント検出部、30…散乱体、31…移動散乱体
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