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  • 特開-積層体及び包装袋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059483
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】積層体及び包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20230420BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20230420BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230420BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/28 102
B32B27/30 C
B32B27/32 101
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169534
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】永井 貴久
(72)【発明者】
【氏名】府中 純子
(72)【発明者】
【氏名】品野 由宇
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB02
3E086CA01
3E086CA11
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK03C
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK05A
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK16A
4F100AK16B
4F100AK16C
4F100AK21A
4F100AK21B
4F100AK21C
4F100AK21E
4F100AK63B
4F100AK63C
4F100AK69A
4F100AK69B
4F100AK69C
4F100AL07A
4F100AL07B
4F100AL07C
4F100BA03
4F100BA05
4F100EH17C
4F100EH46A
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EH46E
4F100EJ61D
4F100EJ64C
4F100GB15
4F100GB16
4F100HB31D
4F100JA13B
4F100JA13C
4F100JD04
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】水蒸気バリア性に優れた積層体及び包装袋を提供する。
【解決手段】少なくとも第1層11と、第2層12と、第1層11及び第2層12に接して積層した中間層13と、を有する積層体10であって、第1層11、第2層12及び中間層13の主成分はポリオレフィン系樹脂であり、第1層11と第2層12と中間層13とが、積層体10の厚さ方向に直接隣接して配置され、第1層11、第2層12及び中間層13から選択される少なくとも1の層に極性官能基を有する成分を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1層と、第2層と、前記第1層及び前記第2層に接して積層した中間層と、を有する積層体であって、
前記第1層、前記第2層及び前記中間層の主成分はポリオレフィン系樹脂であり、
前記第1層と前記第2層と前記中間層とが、前記積層体の厚さ方向に直接隣接して配置され、
前記第1層、前記第2層及び前記中間層から選択される少なくとも1の層に極性官能基を有する成分を有する積層体。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂の少なくとも1種以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記極性官能基を有する成分が、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、酸変性ポリオレフィンから選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記極性官能基を有する成分が、ポリビニルアルコール(PVA)コート、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)コート、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)コートから選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体を用いた包装袋。
【請求項6】
液体物包装用である、請求項5に記載の包装袋。
【請求項7】
スタンディングパウチである、請求項6に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の包装袋として、底部フィルムが一対の胴部フィルムの間に配置された自立性を有するスタンディングパウチが使用されている。特許文献1には、シーラントを最内層とし、延伸フィルムを基材としたラミネートフィルムを包装袋に用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-7630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、資源を有効利用する観点から、リサイクルが可能である材料を用い、石油資源を節約することが求められる。しかし、複数の素材が組み合わされた積層フィルムは素材の分別に手間がかかり、リサイクルがしにくいという課題があった。このような課題に対し、リサイクルに適した材料として、単一素材(モノマテリアル)のフィルム材料を用いた容器が検討されている。
【0005】
しかし、モノマテリアルのフィルムを材料として形成した包装袋は、水蒸気バリア性が低いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、水蒸気バリア性に優れた積層体及び包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、少なくとも第1層と、第2層と、前記第1層及び前記第2層に接して積層した中間層と、を有する積層体であって、前記第1層、前記第2層及び前記中間層の主成分はポリオレフィン系樹脂であり、前記第1層と前記第2層と前記中間層とが、前記積層体の厚さ方向に直接隣接して配置され、前記第1層、前記第2層及び前記中間層から選択される少なくとも1の層に極性官能基を有する成分を有する積層体を提供する。
【0008】
前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂の少なくとも1種以上であってもよい。
前記極性官能基を有する成分が、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、酸変性ポリオレフィンから選択される少なくとも1種であってもよい。
前記極性官能基を有する成分が、ポリビニルアルコール(PVA)コート、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)コート、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)コートから選択される少なくとも1種であってもよい。
【0009】
また、本発明は、前記積層体を用いた包装袋を提供する。
前記包装袋が、液体物包装用であってもよい。
前記包装袋が、スタンディングパウチであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水蒸気バリア性に優れた積層体及び包装袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】積層体を製造する装置を例示する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
実施形態の積層体は、少なくとも第1層と、第2層と、第1層及び第2層に接して積層した中間層と、を有する。本明細書において、主成分とは、質量比で少なくとも50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であってもよい。
【0013】
(第1層)
第1層は、例えば基材層であってもよい。第1層の主成分はポリオレフィン系樹脂である。第1層の主成分がポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂であってもよい。第1層が1種のポリオレフィン系樹脂を主成分としてもよく、2種以上のポリオレフィン系樹脂を用いてもよい。第1層の樹脂成分が、ポリオレフィン系樹脂のみであってもよい。
【0014】
第1層のポリエチレン系樹脂は、高密度ポリエチレン(HDPE)でもよく、中密度ポリエチレン(MDPE)でもよく、低密度ポリエチレン(LDPE)でもよく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)でもよい。第1層のポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、エチレンを主成分とする共重合体(コポリマー)でもよい。第1層のポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、プロピレンを主成分とする共重合体(コポリマー)でもよい。
【0015】
第1層は、延伸されたポリオレフィン系樹脂フィルムであってもよい。第1層の厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上50μm以下が好ましく、15μm以上40μm以下がより好ましく、20μm以上35μm以下がさらに好ましい。
【0016】
(第2層)
第2層は、例えばシーラント層であってもよい。第2層が液体等の内容物に触れる面を有してもよい。第2層の主成分はポリオレフィン系樹脂である。第2層の主成分がポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂であってもよい。第2層が1種のポリオレフィン系樹脂を主成分としてもよく、2種以上のポリオレフィン系樹脂を用いてもよい。第2層の樹脂成分が、ポリオレフィン系樹脂のみであってもよい。
【0017】
第2層のポリエチレン系樹脂は、HDPE、MDPE、LDPE、LLDPE等であってもよい。第2層のポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、エチレンを主成分とする共重合体(コポリマー)でもよい。第2層のポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、プロピレンを主成分とする共重合体(コポリマー)でもよい。
【0018】
第2層は、無延伸のポリオレフィン系樹脂フィルムであってもよい。第2層の厚みは特に限定されないが、例えば50μm以上200μm以下が好ましく、70μm以上150μm以下がより好ましい。
【0019】
(中間層)
中間層は、第1層及び第2層に接して積層される樹脂層である。中間層の主成分はポリオレフィン系樹脂である。中間層の主成分がポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂であってもよい。中間層が1種のポリオレフィン系樹脂を主成分としてもよく、2種以上のポリオレフィン系樹脂を併用してもよい。中間層の樹脂成分が、ポリオレフィン系樹脂のみであってもよい。
【0020】
中間層のポリエチレン系樹脂は、HDPE、MDPE、LDPE、LLDPE等であってもよい。中間層のポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、エチレンを主成分とする共重合体(コポリマー)でもよい。中間層のポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、プロピレンを主成分とする共重合体(コポリマー)でもよい。
【0021】
実施形態の積層体では、第1層と第2層と中間層とが、積層体の厚さ方向に直接隣接して配置される。中間層が、押出樹脂層であってもよい。この場合、中間層は、溶融ポリオレフィン系樹脂を第1層及び第2層の間に押し出して形成される。中間層が押出加工により形成されたか否かは、積層体の断面を例えば走査型電子顕微鏡を用いて観察し、気泡が確認できた場合には押出加工により形成されていると判断することができる。
【0022】
第1層及び第2層の主成分がポリプロピレン系樹脂である場合は、中間層の主成分をポリプロピレン系樹脂とすることが好ましい。第1層及び第2層の主成分がポリエチレン系樹脂である場合は、中間層の主成分をポリエチレン系樹脂とすることが好ましい。中間層にポリエチレン系樹脂を用いる場合には、LLDPE又はHDPEのいずれか、あるいは、LLDPEとHDPEとの混合樹脂を使用することが好ましい。
【0023】
中間層の厚みは特に限定されないが、例えば5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上80μm以下である。
【0024】
(積層体)
実施形態の積層体は、第1層、第2層及び中間層から形成されてもよい。積層体が、第1層、第2層及び中間層を有する以外に、他の樹脂層を有してもよい。他の樹脂層は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。積層体は、第1層と第2層との間に、接着剤やアンカーコート剤を用いることなく、中間層を配置することにより、積層体のリサイクルを容易にすることができる。
【0025】
第1層、第2層、中間層等のポリオレフィン系樹脂は、石油等の化石資源に由来するポリオレフィン系樹脂でもよく、植物等のバイオマスに由来するポリオレフィン系樹脂でもよく、リサイクルされたポリオレフィン系樹脂でもよい。
【0026】
積層体の各層は、任意成分として、樹脂以外の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤、架橋剤等が挙げられる。添加剤は、樹脂に相溶する成分でもよく、樹脂に相溶しない成分でもよい。
【0027】
積層体の全量に対するポリオレフィン系樹脂の割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。積層体の全量に対するポリオレフィン樹脂の割合が高いことにより、モノマテリアル材料としてのリサイクルが容易になる。
【0028】
積層体は、第1層、第2層及び中間層から選択される少なくとも1の層に極性官能基を有する成分を有する。第1層と第2層と中間層とが厚さ方向に直接隣接して配置される場合に、極性官能基を有する成分が、第1層又は第2層と中間層との層間に配置されてもよい。例えば、第2層の中間層と対向する側に極性官能基を有する成分を有してもよい。第1層の中間層と対向する側に極性官能基を有する成分を有してもよい。
【0029】
第1層及び第2層に接して中間層を積層する際に、極性官能基を有する成分を用いることにより、積層体の水蒸気バリア性を向上することができる。その理由は必ずしも明らかでないが、例えば、疎水性の高いポリオレフィン系樹脂層の間に、親水性の高い極性官能基を有する成分を用いることにより、極性官能基を有する成分が水蒸気を吸着する等して、水蒸気透過性を低下させている可能性が考えられる。
【0030】
極性官能基を有する成分としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、酸変性ポリオレフィンから選択される少なくとも1種が好ましい。極性官能基を有する成分が、ポリビニルアルコール(PVA)コート、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)コート、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)コートから選択される少なくとも1種であってもよい。
【0031】
第1層、第2層のいずれかが、印刷面を有してもよい。印刷面にはインキ等から印刷層が形成されている。印刷面は、第1層又は第2層が中間層と対向する面に形成されてもよく、第1層が中間層と対向する側とは反対の面に形成されてもよい。印刷層は、積層体の外面に形成されてもよい。第1層と第2層と中間層とが厚さ方向に直接隣接して配置される場合に、印刷層が、第1層又は第2層と中間層との層間に配置されてもよい。
【0032】
印刷層は、グラビア印刷、凸版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット等の印刷方式でインキをベタ状又はパターン状に印刷することにより、形成することができる。印刷層の厚みは、特に限定されないが、0.5~10μm程度が挙げられる。印刷層は、積層体の全面に形成してもよく、積層体の面内の一部に形成してもよい。2層以上の印刷層を重ね合わせてもよい。
【0033】
印刷層を形成するためのインキは、顔料、染料等の着色材と、バインダーを含んでもよい。バインダーとしては、特に限定されないが、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル系重合体、ポリブタジエン、環化ゴム等が挙げられる。インキは、水、有機溶剤、植物油などの溶剤を含有してもよい。
【0034】
積層体は、任意にバリア層を備えてもよい。バリア層はバリア性を備える。バリア性とは、品質低下を招く外部からの要因を遮断する働きを意味する。品質低下を招く外部からの要因としては、水蒸気、酸素ガス、有機化合物、その他、種々の低分子成分が挙げられる。バリア層として、同種又は異種のバリア性を有する2以上のバリア層を積層してもよい。バリア層を形成するための材料は特に限定されず、公知のバリア性材料から適宜選択してもよい。
【0035】
バリア層が、第1層の中間層と対向する面に形成されてもよい。バリア層が、第1層の中間層と対向する面とは反対側の面に形成されてもよい。バリア層が第2層と中間層との間に積層されてもよい。第1層又は第2層が多層構成である場合は、第1層の一部又は第2層の一部にバリア層を有していてもよい。第1層と第2層と中間層とが厚さ方向に直接隣接して配置される場合に、バリア層が、第1層又は第2層と中間層との層間に配置されてもよい。
【0036】
バリア層の厚みは、5μm以下であることが好ましい。バリア層の厚みの具体例としては、特に限定されないが、5μm、4μm、3μm、2μm、1μm、0.5μm、0.2μm、0.1μm程度、あるいは、これらの中間値でもよい。
【0037】
バリア層は、アルミニウム等の金属、あるいは、シリカ、アルミナ等の無機化合物、ダイヤモンド類似カーボン(DLC)を蒸着して形成してもよい。バリア層として、金属箔を使用してもよい。バリア層として、バリア性樹脂から形成されるフィルムまたは、バリアコート剤を塗布したものを使用してもよい。バリアコート剤は、乾燥、硬化等により、バリア性を示すことができる。上記のバリア素材としては、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。
【0038】
(積層体の製造方法)
図1に、実施形態の積層体10の製造する装置の一例を示す。第1層11及び第2層12がフィルム形態で搬送され、第1層11及び第2層12の間に、中間層13が押出ダイ23から溶融樹脂膜で押し出される。押出ダイ23の下方には、第1層11及び第2層12のフィルムを案内するロール部材を配置してもよい。例えば、第1層11にニップロール21を用い、第2層12に冷却ロール22を用い、中間層13に向けて第1層11及び第2層12を押圧してもよい。
【0039】
第1層11又は第2層12と中間層13とが対向する面の少なくとも一方に、接着強度を上げるために必要に応じて表面処理を実施してもよい。表面処理としては、オゾン処理等の酸化処理、所定の雰囲気ガスを用いた、電子線照射処理、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ放電処理等の改質処理が挙げられる。改質処理の雰囲気ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、ネオン、キセノン、窒素等の不活性気体でもよく、水素、酸素等の反応性ガスでもよく、2種以上の気体の混合ガスでもよい。酸化処理が、酸化性雰囲気における改質処理であってもよい。表面処理により、第1層11又は第2層12と中間層13との界面に、樹脂等の酸化反応、還元反応、付加反応、脱離反応等によって生成した官能基を有する表面処理面が形成される。
【0040】
溶融樹脂膜で押し出される中間層13の、第1層11又は第2層12に対向する面に表面処理を実施してもよい。これにより、接着強度をより高めることでシール強度をより高めることができる。中間層13に対する表面処理としては、特に限定されないが、オゾン処理等が挙げられる。中間層13の両面に表面処理を行うことも可能である。
【0041】
第1層11が中間層13と対向する面に極性官能基を有する成分、バリア層、コート層、印刷層等を有する場合は、第1層11に表面処理を実施してもよい。第2層12が中間層13と対向する面に極性官能基を有する成分、バリア層、コート層、印刷層等を有する場合は、第2層12に表面処理を実施してもよい。第1層11又は第2層12に対する表面処理としては、特に限定されないが、電子線照射処理、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ放電処理等が挙げられる。
【0042】
(包装袋)
実施形態の積層体は、包装袋の材料に用いることができる。包装袋の内容物は、特に限定されないが、液状物、粉体や顆粒体等の固体、あるいは粘稠体、液体等、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。内容物の種類としては、特に限定されないが、洗剤、薬剤、化粧品、医薬品、飲料、調味料、インキ、塗料、燃料等が挙げられる。
【0043】
実施形態の積層体は、液体物包装用の包装袋に好適である。包装袋の具体例としては、特に限定されないが、三方シール袋、四方シール袋、ピロー袋、ガセット袋、スタンディングパウチ等が挙げられる。
【0044】
包装袋がスタンディングパウチである場合は、包装袋が胴部フィルムと底部フィルムとを備えていてもよい。胴部フィルムは、包装袋と同一の平面形状を有する2枚のフィルムである。底部フィルムは、2つ折りにした状態で胴部フィルムの下部に挟み込まれる。胴部フィルムの上部には、スパウト、チューブ等の成形品からなる注出口部材を備えてもよい。包装袋が注出口部材を備えない場合は、胴部フィルムの上部を引き裂いて開封できるように、ノッチ等の開封開始部、ハーフカットなどの開封案内線を設けてもよい。
【0045】
包装袋の寸法は特に限定されるものではないが、例えば詰め替え容器の用途では、上下方向の高さが100mm~500mm程度、左右方向の幅が70mm~300mm程度、充填量としては100cm~5000cm程度が挙げられる。
【0046】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
実施形態の積層体は、包装袋、包装フィルム等の包装用に限られず、種々の用途に用いることができる。
【実施例0047】
以下、実施例として、より具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
第1層として、厚み25μmのHDPEフィルムを用い、片面に印刷層を形成し、印刷層に対して窒素ガス雰囲気下で大気圧プラズマ処理を実施した。第2層として、厚み90μmのLLDPEフィルム(密度0.927g/cm)を用い、片面にポリビニルアルコール(PVA)コートを形成した。中間層として、LLDPE(密度0.898g/cm)を厚み20μmで溶融押出し、中間層の両面にオゾン処理による酸化処理を実施してから、第1層の印刷側及び第2層のコート側間に積層して、実施例1の積層体を作製した。実施例1の積層体の水蒸気バリア性(面積1mにおける1日当たりの水蒸気透過量)は、1.7g/day・mであった。水蒸気バリア性は、温度40℃、湿度100%RHの条件で測定した。
【0049】
(比較例1)
第2層の片面にポリビニルアルコール(PVA)コートを形成せず、中間層の第2層側にオゾン処理による酸化処理を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、第1層及び第2層の間に中間層を積層し、比較例1の積層体を作製した。比較例1の積層体の水蒸気バリア性は、2.4g/day・mであった。
【0050】
(参考例1)
第1層として、厚み25μmのHDPEフィルムを用い、片面に印刷層を形成した。第2層として、厚み110μmのLLDPEフィルム(密度0.927g/cm)を用い、片面にポリビニルアルコール(PVA)コートを形成した。ドライラミネート法により、接着剤を用いて、第1層及び第2層の間を接着し、参考例1の積層体を作製した。参考例1の積層体の水蒸気バリア性は、1.5g/day・mであった。
【0051】
(参考例2)
第2層の片面にポリビニルアルコール(PVA)コートを形成しなかったこと以外は、参考例1と同様にして、第1層及び第2層の間を接着し、参考例2の積層体を作製した。参考例2の積層体の水蒸気バリア性は、1.4g/day・mであった。
【0052】
(まとめ)
実施例1、比較例1及び参考例1~2の結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例1及び比較例1のように第1層と第2層との間に押出樹脂の中間層を配置した場合は、第2層にPVAコートを設けなかった比較例1に比べて、第2層にPVAコートを設けた実施例1の水蒸気バリアが向上した。PVAコートを使っても水蒸気バリアは上がらないと言われているのが通説であり、参考例1~2のように、第1層と第2層との間を接着剤で接着した場合は、第2層にPVAコートを設けても、水蒸気バリアに変化は認められなかった。
【符号の説明】
【0055】
10…積層体、11…第1層、12…第2層、13…中間層、21…ニップロール、22…冷却ロール、23…押出ダイ。
図1