(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059523
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】撮像光学系、カメラ装置及びステレオカメラ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20230420BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20230420BHJP
【FI】
G02B13/04 D
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169584
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】横山 悠久
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA03
2H087PA06
2H087PA18
2H087PB07
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA21
2H087QA26
2H087QA34
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA44
2H087UA01
(57)【要約】
【課題】広角化と小型化とを両立しながらも、諸収差を良好に補正可能な新規な撮像光学系の提供。
【解決手段】
本発明は、開口絞りと、前記開口絞りより物体側に配置される第1レンズ群と、前記開口絞りより像側に配置される正のパワーを持つ第2レンズ群と、で構成された撮像光学系であって、前記第1レンズ群は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負のパワーを持つメニスカス形状の第1レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第2レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第3レンズと、を有し、前記第2レンズの像側の面と、前記第3レンズの物体側の面とは接合され、前記第1レンズのd線におけるアッベ数をνd1、前記第2レンズのd線におけるアッベ数をνd2、前記第3レンズのd線におけるアッベ数をνd3、としたとき、条件式(1):
νd3/(νd1+νd2)<0.4・・・(1)を満足する撮像光学系である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口絞りと、前記開口絞りより物体側に配置される第1レンズ群と、前記開口絞りより像側に配置される正のパワーを持つ第2レンズ群と、で構成された撮像光学系であって、
前記第1レンズ群は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負のパワーを持つメニスカス形状の第1レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第2レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第3レンズと、を有し、
前記第2レンズの像側の面と、前記第3レンズの物体側の面とは接合され、
前記第1レンズのd線におけるアッベ数をνd1、前記第2レンズのd線におけるアッベ数をνd2、前記第3レンズのd線におけるアッベ数をνd3、としたとき、条件式(1):
νd3/(νd1+νd2)<0.4・・・(1)
を満足することを特徴とする撮像光学系。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像光学系であって、
前記第2レンズのd線における屈折率をNd2、前記第3レンズのd線における屈折率をNd3、としたとき、条件式(2):
Nd3/Nd2>1.1・・・(2)
を満足することを特徴とする撮像光学系。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撮像光学系であって、
前記第2レンズは正のパワーを持つメニスカスレンズであり、前記第3レンズは負のパワーを持つメニスカスレンズであることを特徴とする撮像光学系。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の撮像光学系であって、
前記第3レンズのd線における屈折率Nd3が条件式(3):
Nd3>1.85・・・(3)
を満足することを特徴とする撮像光学系。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の撮像光学系であって、
前記第1レンズ群は、前記第3レンズよりも像側に設けられ、正のパワーを持つ第4レンズを備えることを特徴とする撮像光学系。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つに記載の撮像光学系であって、
前記第1レンズの焦点距離をf1、前記第2レンズの物体側の面の曲率半径をR2、前記第1レンズの像側の面から前記第2レンズの物体側の面までの光軸上の距離をd12、入射瞳径をD、としたとき、条件式(4):
|D/(R2f1)×(d12-f1+R2)|<0.35・・・(4)
を満足することを特徴とする撮像光学系。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の撮像光学系であって、
前記第1レンズの物体側の面から、前記開口絞りまでの光軸上の距離をd1a、前記第2レンズの物体側の面から前記開口絞りまでの光軸上の距離をd2aとしたとき、条件式(5):
d2a/d1a>0.6・・・(5)
を満足することを特徴とする撮像光学系。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1つに記載の撮像光学系であって、
前記第2レンズと前記第3レンズとで形成された接合レンズの焦点距離をf23、全系の焦点距離をfとしたとき、条件式(6):
|f/f23|<0.2・・・(6)
を満足することを特徴とする撮像光学系。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1つに記載の撮像光学系であって、
当該撮像光学系の最大半画角が50deg以上であることを特徴とする撮像光学系。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1つに記載の撮像光学系を有するカメラ装置。
【請求項11】
請求項1乃至9の何れか1つに記載の撮像光学系を複数有し、
前記撮像光学系を用いて得られた複数の画像から対象物までの距離を測定するステレオカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像光学系及び撮像光学系を有するカメラ装置、ステレオカメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像光学系とエリアセンサを用いたカメラ装置において、対象物体の識別や距離測定を行うセンシング用途の監視カメラや、車載カメラのような数多くのカメラ装置が実用化され、需要が増加している。
特にセンシングカメラ装置においては、比較的小さい物体の識別や比較的遠方での状況の観察を可能とするために高解像度であることや広範囲の観察を可能とするために広角であること、設置自由度を高めるために小型であること、等が同時に要求される。
【0003】
一般的に、広角化を達成するためには、広角から入射してきた光束を撮像面に導くために、撮像光学系に大きな負のディストーションを持たせる。しかしながら、広角化を進めることは諸収差については悪化する方向に作用し、収差の悪化による対象物の識別や距離測定の精度低下を招いてしまう。
特に倍率色収差は、波長によって像倍率すなわち像面上における到達像高が変わる現象であるが、ディストーションの波長差とも解釈可能であり、敢えて大きな負のディストーションを与えることで、直接的に悪化しやすい収差の1つである。広角光学系の実装に当たっては、このような倍率色収差を抑制する撮像光学系が種々提案されている(例えば特許文献1等参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの撮像光学系においても、広角における倍率色収差の補正が十分とは言えなかったり、画角が小さく十分な広角化が難しいものであったり、小型化や低コスト化が困難なレンズ構成である等の課題があり、特にセンシングカメラ用途としては不十分な点も存在している。
【0005】
このような課題を解決するため、本発明は、広角化と小型化とを両立しながらも、諸収差を良好に補正可能な新規な撮像光学系の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる撮像光学系は、開口絞りと、前記開口絞りより物体側に配置される第1レンズ群と、前記開口絞りより像側に配置される正のパワーを持つ第2レンズ群と、で構成された撮像光学系であって、前記第1レンズ群は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負のパワーを持つメニスカス形状の第1レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第2レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第3レンズと、を有し、前記第2レンズの像側の面と、前記第3レンズの物体側の面とは接合され、前記第1レンズのd線におけるアッベ数をνd1、前記第2レンズのd線におけるアッベ数をνd2、前記第3レンズのd線におけるアッベ数をνd3、としたとき、条件式(1):
νd3/(νd1+νd2)<0.4・・・(1)
を満足する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、広角化と小型化とを両立しながらも、諸収差を良好に補正可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の撮像光学系を備えたカメラ装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図1とは逆側から見たときのカメラ装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図1に示したカメラ装置の機能の一例を示す図である。
【
図4】数値実施例1に係る撮像光学系のレンズ構成の一例を示す断面図である。
【
図5】開口絞りより物体側に負のパワー、像側に正のパワーを配置したときのディストーション発生の方向を示す図である。
【
図6】本発明の撮像光学系による広画角の光線の各レンズ面における屈折の方向と波長による差を模式的に示した図である。
【
図7】本発明の撮像光学系による軸上マージナル光線の各レンズ面における屈折の方向と波長による差を模式的に示した図である。
【
図8】数値実施例1に係る撮像光学系の各光学面のデータの一例を示す図である。
【
図9】数値実施例1に係る非球面レンズの非球面データの一例を示す図である。
【
図10】数値実施例1に係る撮像光学系の諸収差の一例を示す図である。
【
図11】数値実施例1に係る撮像光学系の倍率色収差の一例を示す図である。
【
図12】数値実施例2に係る撮像光学系のレンズ構成の一例を示す断面図である。
【
図13】数値実施例2に係る撮像光学系の各光学面のデータの一例を示す図である。
【
図14】数値実施例2に係る非球面レンズの非球面データの一例を示す図である。
【
図15】数値実施例2に係る撮像光学系の諸収差の一例を示す図である。
【
図16】数値実施例2に係る撮像光学系の倍率色収差の一例を示す図である。
【
図17】数値実施例3に係る撮像光学系のレンズ構成の一例を示す断面図である。
【
図18】数値実施例3に係る撮像光学系の各光学面のデータの一例を示す図である。
【
図19】数値実施例3に係る非球面レンズの非球面データの一例を示す図である。
【
図20】数値実施例3に係る撮像光学系の諸収差の一例を示す図である。
【
図21】数値実施例3に係る撮像光学系の倍率色収差の一例を示す図である。
【
図22】数値実施例4に係る撮像光学系のレンズ構成の一例を示す断面図である。
【
図23】数値実施例4に係る撮像光学系の各光学面のデータの一例を示す図である。
【
図24】数値実施例4に係る非球面レンズの非球面データの一例を示す図である。
【
図25】数値実施例4に係る撮像光学系の諸収差の一例を示す図である。
【
図26】数値実施例4に係る撮像光学系の倍率色収差の一例を示す図である。
【
図27】本発明の撮像光学系を用いたステレオカメラ装置の構成の一例を示す図である。
【
図28】
図27に示したステレオカメラ装置の対象物までの距離の測定方法を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて順次説明する。実施形態において、同一機能や同一構成を有するものには同一の符号を付し、重複説明は適宜省略する。図面は一部構成の理解を助けるために部分的に省略あるいは簡素化して記載する場合もある。
【0010】
本発明の実施形態に係る撮像光学系は、監視カメラや車載カメラなどのセンシング用途のカメラ装置やステレオカメラ装置に用いられる撮像光学系である。
なお、本発明における実施形態の説明においては、物体側から像側へ向かう方向を正方向またはプラス方向、像側から物体側へ向かう方向を負方向またはマイナス方向とする。
【0011】
本発明のカメラ装置あるいは撮像装置の一例として、
図1、
図2にデジタルカメラ100を例示する。
図1は、物体側、すなわち被写体側である前面側からみたデジタルカメラ100の外観を模式的に示している。
同様に
図2は、撮影側である背面側から見たデジタルカメラ100の外観を模式的に示している。
なお、本実施形態ではデジタルカメラ100を例に示したが、画像記録媒体として銀塩フィルムを用いた銀塩フィルムカメラや、車載カメラ装置、監視カメラ装置等、高解像度、低ディストーション、広画角、大口径が要求されるようなカメラ装置に好適である。
また、所謂PDA(Personal Data Assistant)や携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末等の携帯情報端末装置に付属のカメラ装置に取り付けられる撮像光学系として用いられても良い。あるいは、センシング用途のカメラ装置に用いられる撮像光学系であっても良い。
【0012】
デジタルカメラ100は、カメラボディである筐体5と、複数のレンズで構成される撮像光学系1と、光学ファインダー2と、電子フラッシュライト式のストロボ3と、シャッタボタン4と、電源スイッチ6と、液晶モニタ7と、操作ボタン8と、メモリカードスロット9と、を有している。
デジタルカメラ100はまた、
図3に示すように、筐体5の内部に制御部の中央演算装置たるCPU11と、画像処理部12と、受光素子13と、信号処理部14と、半導体メモリ15と、通信カード16と、を有している。
【0013】
デジタルカメラ100は、撮像光学系1を介して入射した光を、イメージセンサである受光素子13上に結像させ被写体光学像を読み取る。
受光素子13によって読み取られた被写体光学像は、CPU11により制御される信号処理部14によって適切に処理されて、デジタル画像情報として変換される。さらに、画像処理部12によって所定の画像処理が施されて、不揮発性メモリ等である記憶部としての半導体メモリ15に保存される。
このような画像を保存する記憶部あるいは記憶媒体として、半導体メモリ15に保存する他例えば通信カード16を用いて外部の情報処理端末へと送信しても良いし、メモリカードスロット9に挿入されたメモリーカードを用いても良い。
【0014】
液晶モニタ7には、撮影された画像データの他、半導体メモリ15に保存された画像データの表示が可能となっている。また、操作ボタン8による画像処理の設定変更等もかかる液晶モニタ7に表示される。
なお、本実施形態では液晶モニタ7を表示装置として用いているが、かかる構成に限定されるものではなく、有機ELディスプレイやその他の表示装置を用いても良い。
【0015】
撮像光学系1は、後述するように撮像光学系を形成する複数のレンズで構成されており、最も前面側(対物側)のレンズは、デジタルカメラ100の携帯時には筐体5に備えられたレンズバリアによって覆われている。
本実施形態では、操作者が電源スイッチ6を操作して電源を投入すると、レンズバリアが開いて撮像光学系1の最も物体側のレンズの対物面が筐体5から露出する。
【0016】
半導体メモリ15及び通信カード16は、メモリカードスロット9のような専用あるいは汎用のスロットに装填されて使用される。
【0017】
デジタルカメラ100の撮像光学系1について述べる。
本実施形態では、
図4に示すように撮像光学系1は複数のレンズL1、L2、L3、L4で構成された第1レンズ群G1と、レンズL5、L6、L7で構成された第2レンズ群G2と、を有している。
また、撮像光学系1は第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間に開口絞りSを有し、結像位置として示された設計上の像面IMGに結像させる撮像光学系である。
【0018】
本実施形態では、撮像光学系1は、第2レンズ群G2と像面IMGとの間には、光学ローパスフィルタ、赤外光カットフィルタ、紫外光カットフィルタ、受光素子13のカバーガラス(シールガラス)等、各種の光学フィルタが設けられている。
【0019】
これらの光学フィルタを、
図4においては2枚の平行平板として第1光学フィルタF1と、第2光学フィルタF2として例示する。
しかしながら、これら光学フィルタの挿入の有無や枚数の多寡についてはかかる構成に限定されるものではなく、それぞれの光学設計に従って適宜変更可能である。
【0020】
こうしたデジタルカメラ100の構成においては、高解像度化、広角化、大口径化、小型軽量化、低コスト化のニーズが強く、これらの要望に応える開発をしていくことが要求される。
例えば比較的小さい被写体の識別や比較的遠方での状況の観察が可能となるように高解像度であること、広い範囲の観察が可能となるように広角であること、夜などの暗い環境においても良好な撮像認識を可能とするために大口径であること、設置自由度を高めるために小型軽量であること、これらの価値が低コストで得られること、などが同時に要求される。
【0021】
一般的な撮像光学系において、広角化を達成するためには、広角から入射してきた光束を撮像面に導くために、撮像光学系に大きな負のディストーション(歪曲収差)を持たせることが必要である。
しかしながら、広角化を進めるとコマ収差、非点収差、像面湾曲等の他の収差が増大しやすく、それらの諸収差を同時に補正する必要が生じる。
【0022】
ディストーションは、撮像光学系においては開口絞りよりも前側(物体側)に正のパワーを有するレンズを配置すると正の方向(以下、オーバー側と表現する)に作用し、負のパワーを有するレンズを配置することで負の方向(以下、アンダー側と表現する)に作用する。
また、開口絞りよりも像側ではこの関係は逆転し、正のパワーを有するレンズを配置することで、アンダー側に作用し、負のパワーを有するレンズを配置することでオーバー側に作用する。
ディストーションのオーバー側とは像形状が糸巻き型に、アンダー側とは像形状が樽型になる方向を示している。
【0023】
本実施形態の撮像光学系1は、既に述べたように物体側から順に、第1レンズ群G1、開口絞りS、第2レンズ群G2で構成されており、第1レンズ群G1のうち最も物体側の第1レンズL1に物体側に凸面を向けた負パワーのメニスカスレンズを用いることで、広画角の光束を取り込みつつ、広角化のためのアンダー側のディストーションを発生させる。
さらに、開口絞りSより像側の第2レンズ群G2を正パワーとしたことで、アンダー側のディストーションをさらに発生させつつ、上記の第1レンズ群G1で生じる像面湾曲を、第2レンズ群G2の正パワーで相殺させる。
図5には、第1レンズ群G1の負パワーのレンズと、第2レンズ群G2の正パワーのレンズとで像面湾曲を相殺しつつ、アンダー側のディストーションが相乗して発生する方向にそれぞれ屈折される様子を模式的に示している。
【0024】
一般的に、レンズ面への入射角(ここでは入射光線とレンズ面の入射位置における法線とのなす角)が大きく、屈折が大きいほど、当該レンズ面におけるディストーションを含む諸収差は大きくなる。
本実施形態では、第1レンズL1のように物体側に凸面を向けた負パワーのメニスカスレンズを用いている。このような負パワーのメニスカスレンズを用いると、入射面、出射面のどちらにおいても物体側に凸の形状であるために、広画角の光束であっても入射角を比較的小さく抑えることができて、諸収差を抑えつつも必要なアンダー側のディストーションの確保が容易になる。
さらに、第1レンズ群G1を複数のレンズ構成とすることで、さらに諸収差を抑えながら必要なアンダー側のディストーションを確保することができる。
【0025】
さて、複数枚のレンズを用いた場合、上述のように収差の低減やディストーションの確保の上ではメリットがあるが、他方では入射瞳の位置が物体側から離れてしまうことにより、第1レンズ群G1を構成する各レンズの径が大きくなりやすいデメリットもある。
入射瞳の位置を物体側に近づけるためには、第1レンズ群G1のレンズ面のうち、負のパワーを持つレンズ面をより物体側に配置し、より物体側にてディストーションを生じさせることが有効である。言い換えると、本実施形態の撮像光学系1では、第2レンズL2の物体側のレンズ面が負のパワーとなるように、物体側に凹の形状としている。
【0026】
第2レンズL2の像側のレンズ面においても負のパワーとなるように、物体側に凸の形状とすれば、よりディストーションの確保及び入射瞳の位置を物体側に近づけるという目的には有利であるが、第2レンズL2が両凹レンズとなってしまう。仮に第2レンズL2を両凹レンズとしてディストーションの確保のために曲率を大きくすると、第2レンズL2の負のパワーが極端に大きくなってしまい、製造時の偏心誤差への感度が強まって、必要とされる組付け精度が高くなる等、コスト面では不適当である。
そこで、第2レンズL2の像側のレンズ面を物体側に凹の形状とすることで入射角を比較的大きくとって、第2レンズL2の像側のレンズ面において生じるディストーションを増大させるとともに、第2レンズL2の像側の面を第3レンズL3の物体側の面と接合し、第2レンズL2の屈折率よりも第3レンズL3の屈折率の方が高くなるような光学材料を用いることで、かかるディストーションが負のディストーションとなるように構成されている。
つまり、本実施形態では、第2レンズL2の像側のレンズ面を物体側に凹の形状とするとともに、第3レンズL3の物体側の面と接合し、第2レンズL2の屈折率よりも第3レンズL3の屈折率の方が高くなるような光学材料を用いることで、接合面にて入射角の比較的大きい負のディストーションを発生させている。
【0027】
ところで、第2レンズL2と第3レンズL3との間の接合面のように、屈折が大きく、ディストーションを大きく発生させるような面においては、同時に波長ごとの屈折の差、すなわち倍率色収差もまた増大することがわかっている。
かかる倍率色収差は、受光素子13の受光面における色のにじみやズレとして観測されてしまうため、なるべく低く抑えることが好ましい。
そこで、本実施形態では、第3レンズL3の像側の面を物体側に凹形状とし、条件式(1)を満足するように各レンズの光学材料を選定することで、倍率色収差の補正を行う。
【0028】
【0029】
なお、条件式(1)においては、第1レンズL1のd線におけるアッベ数をνd1、第2レンズL2のd線におけるアッベ数をνd2、第3レンズL3のd線におけるアッベ数をνd3とした。
条件式(1)は、第1レンズL1と第2レンズL2とにおける光の分散の大きさと、第3レンズL3における光の分散の大きさとの比を表すものであり、条件式(1)の上限を超えると、第1レンズL1と第2レンズL2の分散に対して、第3レンズL3の分散が十分に大きいとは言えなくなる。したがって第3レンズL3の倍率色収差の補正効果が相対的に小さくなってしまう。
このように条件式(1)を満足することで、第3レンズL3は、その像側の面が物体側に凹形状をもつ高分散のレンズ面となるから、第3レンズL3と比較して低分散である第1レンズL1、第2レンズL2の負のパワーを持つ面で生じる倍率色収差を補正することができる。
【0030】
撮像光学系1の各レンズ面での屈折の様子を模式的に示したものが
図6である。
図6においては、広画角の光線が各レンズ面を通過する位置におけるレンズ面の法線を点線で、スネルの法則に従って屈折する方向(ディストーションが発生する方向)を矢印の向きで表現している。
図6から明らかなように、ディストーションが負の方向(アンダー側)に発生する面を物体側に寄せて構成されており、特に第2レンズL2を物体側に凹形状を向けたメニスカス形状であることによって、入射角を比較的大きくすることができ、入射瞳の位置を物体側に近付けている。
【0031】
また、倍率色収差においては、短波長の光の屈折を白矢印で表しており、短波長の光がより屈折が大きくなる現象を矢印の長さによって模式的に示している。すなわち、
図6における矢印の長さの差が、各レンズ面における倍率色収差の大小関係を示しており、矢印の長さの差が小さいことが低分散であること、矢印の長さの差が大きいことが高分散であること、をそれぞれ表す。
【0032】
図5、
図6に見るように、第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3、が条件式(1)で示したアッベ数の関係(≒分散の関係)を満足するとき、第1レンズL1と第2レンズL2とによって生じた倍率色収差を、高分散の第3レンズL3の像側の面によって補正する構成が示されている。なお、より屈折が小さくなる長波長の光においても同様に説明することができ、長波長側の倍率色収差も十分に補正することができる。
以上のように、物体側に凸形状を持つ負メニスカスレンズである第1レンズL1と、物体側、像側ともに物体側に凹形状を向けたメニスカスレンズである第2レンズL2と、第2レンズL2の像側の面に接合され、物体側と像側の何れも物体側に凹形状を向けたメニスカスレンズである第3レンズL3と、を有し、条件式(1)を満足する構成とすることにより、撮像光学系1は、広角化と小型化を両立し、大きな負のディストーションを生じさせたことで悪化した倍率色収差をも補正可能とすることができる。
【0033】
先に述べたように、本発明の撮像光学系1は、その第2レンズL2と第3レンズL3との接合面において、像側のレンズが高屈折率となるように、第3レンズL3に第2レンズL2よりも高屈折率の光学材料を使用することが好ましい。
かかる構成によれば、接合面において曲率を増大させることなく大きな負のディストーションを発生させることができる
【0034】
具体的には、撮像光学系1は、第2レンズL2のd線における屈折率:Nd2、第3レンズL3のd線における屈折率:Nd3、としたとき、条件式(2)を満足する。
【0035】
【0036】
かかる条件式(2)は、第2レンズL2と第3レンズL3との相対的な屈折率の比を表しており、条件式(2)の下限を下回ると、第3レンズL3の屈折率が、第2レンズL2の屈折率に対して十分な大きさを持たないため、接合面において生じるディストーションが小さくなり、好ましくない。
【0037】
このように撮像光学系1は、条件式(2)を満足する範囲内で第2レンズL2と第3レンズL3との光学材料を選択することによって、接合面において生じる負のディストーションを増大させることができるので、撮像光学系1は、広角化と小型化を両立し、大きな負のディストーションを生じさせたことで悪化した倍率色収差をも補正可能とすることができる。
【0038】
さらに望ましくは、第3レンズL3は、d線における屈折率Nd3が条件式(3)を満足するような光学材料を選択することがより好ましい。
【0039】
【0040】
既に述べたように、条件式(2)の範囲内で第2レンズL2と第3レンズL3との屈折率を定めることで、接合面において生じる負のディストーションを増大しているが、このような大きな屈折は、倍率色収差以外にも、コマ収差や非点収差も大きくしてしまうというデメリットもある。
そこで、条件式(3)の範囲を満足することで、第3レンズL3の像側の面が十分なパワーを持つことが出来て、第2レンズL2の物体側の面及び第3レンズL3との接合面で生じてしまうコマ収差及び非点収差を、第3レンズL3の像側の面において良好に補正することができる。
かかる条件式(3)の下限を下回る場合には、第3レンズL3のパワーが下がり、第3レンズL3の像側の面によって行うこれらのコマ収差や非点収差の補正が十分とは言えなくなってしまう。
【0041】
また本発明の撮像光学系1では、第1レンズ群G1は、第3レンズL3よりも像側に設けられ、正のパワーを持つ第4レンズL4を備えている。
かかる構成により、正のパワーを持つ第2レンズ群G2で生じる倍率色収差を、開口絞りより物体側に配置した正パワーの第4レンズL4にて発生する逆方向の倍率色収差によって相殺することができる。
【0042】
次に、軸上色収差について考える。本実施形態における軸上色収差の相殺関係を、軸上光束のマージナル光線の屈折で模式的に表したものが
図7である。
図7では、
図6と同様に、マージナル光線が各レンズ面を通過する位置におけるレンズ面の法線を点線で、スネルの法則に従い屈折する方向を矢印で、それぞれ示している。
また短波長の光の屈折と、長波長の光の屈折とをそれぞれ異なる矢印で示しており、矢印の長さは各レンズ面で発生する軸上色収差の大きさを表している。
【0043】
図7から明らかなように、第1レンズL1において短波長の光はより発散方向に屈折するが、第2レンズL2の物体側の面及び接合面、第3レンズL3の像側の面においては、物体側に凹形状とすることで、マージナル光線の入射角と軸上光主光線の入射角との差が小さくなり、軸上色収差が発生しにくい構成となっている。
【0044】
そこで、接合面の曲率を第2レンズL2の物体側の面の曲率および第3レンズL3の像側の面の曲率より大きく、言い換えれば第2レンズL2を正メニスカスレンズ、第3レンズL3を負メニスカスレンズとしている。
【0045】
すなわち、撮像光学系1において、第2レンズL2は正のパワーを持つメニスカスレンズであり、第3レンズL3は負のパワーを持つメニスカスレンズである。
【0046】
かかる構成とすることにより、低分散の第1レンズL1及び第2レンズL2の像側の面における短波長の光が発散方向になる色収差を、高分散の第3レンズL3の像側の面の集光方向になる色収差で相殺する。
仮に、接合面における曲率を第2レンズL2の物体側の面の曲率および第3レンズL3の像側の面の曲率よりも小さく、言い換えると第2レンズL2を負のパワーを持つメニスカスレンズ、第3レンズL3を正のパワーを持つメニスカスレンズとなるように構成を変更することを考える。第2レンズL2を負メニスカスレンズ、第3レンズL3を正メニスカスレンズとしたときには、接合面における屈折は小さくなる方向に変化して、接合面における軸上色収差こそ抑えられるものの、低分散の第1レンズL1が高分散の第3レンズL3の像側の面で相殺関係を満たすことは難しいから、撮像光学系1全体での収差は悪化する。
他方、第2レンズL2と第3レンズL3とを両方とも正メニスカスレンズあるいは負メニスカスレンズとなるようにしたときには、第2レンズL2と第3レンズL3とを接合した接合レンズにおいて、パワーの増大を招いて光軸からの偏心誤差に対して悪影響が大きくなる。
【0047】
このように、撮像光学系1は、第2レンズL2は正のパワーを持つメニスカスレンズであり、第3レンズL3は負のパワーを持つメニスカスレンズである構成によって、レンズ系全体での軸上色収差を低減することができる。
【0048】
さらに、撮像光学系1は、
図4に見るように、第1レンズL1の焦点距離をf
1、第2レンズL2の物体側の面の曲率半径をR
2、第1レンズL1の像側の面から第2レンズL2の物体側の面までの光軸上の距離をd
12、入射瞳径をD、としたとき、条件式(4)を満足する。
【0049】
【0050】
条件式(4)を満足することで、第2レンズL2の物体側の面への入射角を小さく抑制することができるから、より軸上色収差を低減することができる。
【0051】
また、撮像光学系1は、第1レンズL1の物体側の面から、開口絞りSまでの光軸上の距離をd1a、第2レンズL2の物体側の面から開口絞りSまでの光軸上の距離をd2aとしたとき、条件式(5)を満足する。
【0052】
【0053】
かかる構成により、大きな負のディストーションを持たせるための第2レンズL2を開口絞りSから離して十分に物体側に近い位置に配置することが出来るので、広角化と小型化の両立を行いながらも、軸上色収差を抑えることができる。
【0054】
また、撮像光学系1は、第2レンズL2と第3レンズL3とで形成された接合レンズの焦点距離をf23、全系の焦点距離をfとしたとき、条件式(6)を満足する。
【0055】
【0056】
かかる条件式(6)は、撮像光学系1の全パワーに対する第2レンズL2と第3レンズL3とからなる接合レンズのパワーの比を示しており、上限値をこえると、接合レンズのパワー比が大きくなりすぎて、製造時の組付け誤差等によって生じる偏心誤差に対して悪影響が大きくなる。
条件式(6)の範囲内とすることによれば、全系のパワーに対して接合レンズのパワーを低く抑えることができて、各収差補正を満たしながらも偏心誤差に対する感度を抑制することができるので、組付け精度の低減やコストの低下にも寄与する。
【0057】
撮像光学系1は、主として広角化と小型化とを主目的とするものであり、当該撮像光学系1の最大半画角は50deg以上であることが好ましいが、かかる構成に限定されるものではない。
【0058】
なお、本発明の撮像光学系1は、いずれかのレンズに非球面レンズを採用しても良い。
非球面レンズを採用することで、像面湾曲やディストーションの像高間のバランスや、球面収差やコマ収差などの諸収差を低減することができる。また、非球面形状においては、光軸方向の変位Xを、数式(7)で示すことが出来る。
【0059】
【0060】
なお、数式(7)において、面頂点を基準としたときの光軸からのレンズ高さ:H、面頂点における曲率半径:R、円錐係数:k、次数iに対する非球面関数:Aiとしている。
【0061】
上述のような本発明の実施形態に基づく、具体的な数値実施例を詳細に説明する。実施例1~4は、本発明の実施形態に係る撮像光学系1の数値例である。
図1~5は、実施例1における撮像光学系1を説明するためのものである。
なお、以下の各実施例においては、共通の記号の意味を下記の通りに示す。
f:撮像光学系1の全系の焦点距離
Fno:開放F値
θ:半画角
Y:最大像高
r:曲率半径
d:面間隔
Nd:屈折率
νd:アッベ数
【0062】
図4には、実施例1の撮像光学系1の断面構成を示す。
撮像光学系1は、
図4に示すように、物体側から像側に向かって、順次、第1レンズ群G1、開口絞りS、第2レンズ群G2を配置し、第1レンズ群G1には、4枚のレンズL1、L2、L3、L4を配置している。また第2レンズ群G2には、レンズL5、L6、L7を配置している。
ここで、各レンズを物体側から順に第1レンズL1、第2レンズL2、・・・第7レンズL7とする。第1レンズL1は負のパワーを持ち物体側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ、第2レンズL2は正のパワーを持ち物体側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズ、第3レンズL3は負のパワーを持ち物体側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズ、第4レンズL4は正のパワーを持ち両凸形状のレンズ、である。
また、第2レンズ群G2を構成する各レンズは、第5レンズL5は正のパワーを持つ両凸形状、第6レンズL6は負のパワーを持つ両凹形状、第7レンズL7は正のパワーを持つ両凸形状である。
【0063】
実施例1において、撮像光学系1の全系の焦点距離:f、開放F値:Fno、半画角:θ、最大像高:Yはそれぞれ表1に示すように設定され、それぞれのレンズにおける曲率半径r、隣接する光学面の面間隔d、屈折率Nd、アッベ数νd等の各光学特性は、
図8に示すように設定される。なお、
図8において非球面レンズについてはその面番号に付帯記号を付け、各レンズ面の非球面係数を
図9に示した。
【0064】
【0065】
上述するような撮像光学系1の実施例1において、条件式(1)~(6)に対応する値は、表2の通りとなり、いずれも条件式(1)~(6)を満足する。
【0066】
【0067】
また、
図10、
図11には実施例1のレンズ構成を用いた際の諸収差を示す。球面収差図において、
図10中のdはd線(波長λ=587.6nm)、CはC線(波長λ=656.3nm)、FはF線(波長λ=486.1nm)における収差をそれぞれ示し、各波長の差が小さく、軸上色収差においても良好に補正されていることがわかる。
また像面湾曲図において、図中の実線はサジタル収差を示し、破線はメリディオナル収差を示している。図から明らかなように、非点収差においても良好に補正されていることがわかる。
【0068】
また、
図11には実施例1の撮像光学系1の倍率色収差の収差曲線を示す。図中のC-dはC線とd線の各画角における到達像高の差、F-dはF線とd線の各画角における到達像高の差を示している。全画角における最大値は、実施例1のC-dが2.0μm、F-dが1.1μmであり、3.0μm未満によく抑制されていることが明らかである。
【0069】
以上のように、実施例1における倍率色収差をはじめとする各収差は十分に補正されている。
【0070】
図12には、実施例2の撮像光学系1の断面構成を示す。
撮像光学系1は、
図12に示すように、物体側から像側に向かって、順次、第1レンズ群G1、開口絞りS、第2レンズ群G2を配置し、第1レンズ群G1には、4枚のレンズL1、L2、L3、L4を配置している。また第2レンズ群G2には、レンズL5、L6、L7を配置している。
ここで、各レンズを物体側から順に第1レンズL1、第2レンズL2、・・・第7レンズL7とする。第1レンズL1は負のパワーを持ち物体側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ、第2レンズL2は正のパワーを持ち物体側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズ、第3レンズL3は負のパワーを持ち物体側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズ、第4レンズL4は正のパワーを持ち両凸形状のレンズ、である。
また、第2レンズ群G2を構成する各レンズは、第5レンズL5は正のパワーを持つ両凸形状、第6レンズL6は負のパワーを持つ両凹形状、第7レンズL7は正のパワーを持つ両凸形状である。
また、第2レンズL2と第3レンズL3とは、第2レンズL2の像側面と第3レンズL3の物体側面とを接合面とする接合レンズを構成している。
【0071】
実施例2において、撮像光学系1の全系の焦点距離:f、開放F値:Fno、半画角:θ、最大像高:Yはそれぞれ表3に示すように設定され、それぞれのレンズにおける曲率半径r、隣接する光学面の面間隔d、屈折率Nd、アッベ数νd等の各光学特性は、
図13に示すように設定される。なお、
図13において非球面レンズについてはその面番号に付帯記号を付け、各レンズ面の非球面係数を
図14に示した。
【0072】
【0073】
上述するような撮像光学系1の実施例2において、条件式(1)~(6)に対応する値は、表4の通りとなり、いずれも条件式(1)~(6)を満足する。
【0074】
【0075】
また、
図15、
図16には実施例1のレンズ構成を用いた際の諸収差を示す。球面収差図において、
図15中のdはd線(波長λ=587.6nm)、CはC線(波長λ=656.3nm)、FはF線(波長λ=486.1nm)における収差をそれぞれ示し、各波長の差が小さく、軸上色収差においても良好に補正されていることがわかる。
また像面湾曲図において、図中の実線はサジタル収差を示し、破線はメリディオナル収差を示している。図から明らかなように、非点収差においても良好に補正されていることがわかる。
【0076】
また、
図16には実施例2の撮像光学系1の倍率色収差の収差曲線を示す。図中のC-dはC線とd線の各画角における到達像高の差、F-dはF線とd線の各画角における到達像高の差を示している。全画角における最大値は、実施例2のC-dが2.2μm、F-dが1.5μmであり、3.0μm未満によく抑制されていることが明らかである。
【0077】
以上のように、実施例2における倍率色収差をはじめとする各収差は十分に補正されている。
【0078】
図17には、実施例3の撮像光学系1の断面構成を示す。
撮像光学系1は、
図17に示すように、物体側から像側に向かって、順次、第1レンズ群G1、開口絞りS、第2レンズ群G2を配置し、第1レンズ群G1には、4枚のレンズL1、L2、L3、L4を配置している。また第2レンズ群G2には、レンズL5、L6、L7を配置している。
ここで、各レンズを物体側から順に第1レンズL1、第2レンズL2、・・・第7レンズL7とする。第1レンズL1は負のパワーを持ち物体側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ、第2レンズL2は正のパワーを持ち物体側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズ、第3レンズL3は負のパワーを持ち物体側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズ、第4レンズL4は正のパワーを持ち物体側に凸面を向けた平凸形状のレンズ、である。
また、第2レンズ群G2を構成する各レンズは、第5レンズL5は正のパワーを持つ両凸形状、第6レンズL6は負のパワーを持つ両凹形状、第7レンズL7は正のパワーを持つ両凸形状である。
また、第2レンズL2と第3レンズL3とは、第2レンズL2の像側面と第3レンズL3の物体側面とを接合面とする接合レンズを構成している。
【0079】
実施例3において、撮像光学系1の全系の焦点距離:f、開放F値:Fno、半画角:θ、最大像高:Yはそれぞれ表5に示すように設定され、それぞれのレンズにおける曲率半径r、隣接する光学面の面間隔d、屈折率Nd、アッベ数νd等の各光学特性は、
図18に示すように設定される。なお、
図18において非球面レンズについてはその面番号に付帯記号を付け、各レンズ面の非球面係数を
図19に示した。
【0080】
【0081】
上述するような撮像光学系1の実施例2において、条件式(1)~(6)に対応する値は、表6の通りとなり、いずれも条件式(1)~(6)を満足する。
【0082】
【0083】
また、
図20、
図21には実施例1のレンズ構成を用いた際の諸収差を示す。球面収差図において、
図20中のdはd線(波長λ=587.6nm)、CはC線(波長λ=656.3nm)、FはF線(波長λ=486.1nm)における収差をそれぞれ示し、各波長の差が小さく、軸上色収差においても良好に補正されていることがわかる。
また像面湾曲図において、図中の実線はサジタル収差を示し、破線はメリディオナル収差を示している。図から明らかなように、非点収差においても良好に補正されていることがわかる。
【0084】
また、
図21には実施例3の撮像光学系1の倍率色収差の収差曲線を示す。図中のC-dはC線とd線の各画角における到達像高の差、F-dはF線とd線の各画角における到達像高の差を示している。全画角における最大値は、実施例2のC-dが2.7μm、F-dが2.4μmであり、3.0μm未満によく抑制されていることが明らかである。
【0085】
以上のように、実施例3における倍率色収差をはじめとする各収差は十分に補正されている。
【0086】
図22には、実施例4の撮像光学系1の断面構成を示す。
撮像光学系1は、
図22に示すように、物体側から像側に向かって、順次、第1レンズ群G1、開口絞りS、第2レンズ群G2を配置し、第1レンズ群G1には、4枚のレンズL1、L2、L3、L4を配置している。また第2レンズ群G2には、レンズL5、L6、L7を配置している。
ここで、各レンズを物体側から順に第1レンズL1、第2レンズL2、・・・第7レンズL7とする。第1レンズL1は負のパワーを持ち物体側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズ、第2レンズL2は正のパワーを持ち物体側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズ、第3レンズL3は負のパワーを持ち物体側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズ、第4レンズL4は正のパワーを持ち両凸形状のレンズ、である。
また、第2レンズ群G2を構成する各レンズは、第5レンズL5は正のパワーを持つ両凸形状、第6レンズL6は負のパワーを持つ両凹形状、第7レンズL7は正のパワーを持つ両凸形状である。
また、第2レンズL2と第3レンズL3とは、第2レンズL2の像側面と第3レンズL3の物体側面とを接合面とする接合レンズを構成している。
【0087】
実施例4において、撮像光学系1の全系の焦点距離:f、開放F値:Fno、半画角:θ、最大像高:Yはそれぞれ表7に示すように設定され、それぞれのレンズにおける曲率半径r、隣接する光学面の面間隔d、屈折率Nd、アッベ数νd等の各光学特性は、
図23に示すように設定される。なお、
図23において非球面レンズについてはその面番号に付帯記号を付け、各レンズ面の非球面係数を
図24に示した。
【0088】
【0089】
上述するような撮像光学系1の実施例4において、条件式(1)~(6)に対応する値は、表8の通りとなり、いずれも条件式(1)~(6)を満足する。
【0090】
【0091】
また、
図25、
図26には実施例4のレンズ構成を用いた際の諸収差を示す。球面収差図において、
図25中のdはd線(波長λ=587.6nm)、CはC線(波長λ=656.3nm)、FはF線(波長λ=486.1nm)における収差をそれぞれ示し、各波長の差が小さく、軸上色収差においても良好に補正されていることがわかる。
また像面湾曲図において、図中の実線はサジタル収差を示し、破線はメリディオナル収差を示している。図から明らかなように、非点収差においても良好に補正されていることがわかる。
【0092】
また、
図26には実施例4の撮像光学系1の倍率色収差の収差曲線を示す。図中のC-dはC線とd線の各画角における到達像高の差、F-dはF線とd線の各画角における到達像高の差を示している。全画角における最大値は、実施例4のC-dが2.9μm、F-dが0.1μmであり、3.0μm未満によく抑制されていることが明らかである。
【0093】
以上のように、実施例4における倍率色収差をはじめとする各収差は十分に補正されている。
【0094】
実施例1~4で述べたように、本発明の実施形態による撮像光学系1を用いて構成された光学系は倍率色収差をはじめとする各収差を十分に補正しており、半画角64deg程度の広画角かつF2.0程度以下の大口径でありながらもレンズ枚数を6~7枚程度で抑えて非常に良好な像性能を確保することができる。
【0095】
なお、実施例1~4においては、非球面レンズには安価に製造可能なプラスチックレンズを用いて良いし、ガラスで形成されるガラスモールド非球面レンズを用いても良い。なお、第5レンズL5や第6レンズL6の他にも、非球面レンズを配置するとしても良い。
【0096】
また実施例1~4において、第2レンズ群G2の像側後方には、フィルタFが配置されるとしても良い。かかるフィルタFには、光学ローパスフィルタや赤外光および紫外光のカットフィルタ等の各種フィルタや、受光素子13のカバーガラス(シールガラス)を等価的な平行平板として示すフィルタガラスが配置される。
受光素子13がCCD(電荷結合素子)センサやCMOS(相補型金属酸化物半導体)センサ等の個体撮像素子を用いるタイプの撮像光学系においては、バック挿入ガラス、ローパスフィルタ、カットフィルタ、受光面を保護するタイプのカバーガラス等の少なくとも何れかを設けることが好ましい。
【0097】
これらの撮像光学系1を用いて、
図1、2で示したようなデジタルカメラ100の他、車両に取り付け可能な車載カメラ装置にも応用することができる。
あるいは、同等の撮像光学系1を2つ用いて、2つのレンズユニットを備えたステレオカメラのような構成としても良い。
【0098】
例えば、本発明の第2の実施形態として、撮像光学系1を備えるステレオカメラ装置200について説明する。
図27は、撮像光学系1を光学系として備えた右側カメラ装置100aと、左側カメラ装置100bと、を有するステレオカメラ装置200の外観図を示している。
図28に示したように右側カメラ装置100aと、左側カメラ装置100bとは、何れもデジタルカメラ100と同様の撮像光学系1a、1bと、それぞれの撮像光学系1に対応する受光素子13a、13bとを有している。
右側カメラ装置100aと、左側カメラ装置100bとは、それぞれの各構成がデジタルカメラ100と同様の構成のものであっても良いが、かかる構成に限定されるものではない。
【0099】
ステレオカメラ装置200は、右側カメラ装置100aと左側カメラ装置100bとでそれぞれ撮影された画像情報について補正や画像処理を行うための画像処理部201を有している。
画像処理部201は、例えば右側カメラ装置100aと左側カメラ装置100bとで撮影した2枚の画像に写る被写体である対象物Pについて、処理を行う。
具体的には、右側カメラ装置100aによって撮影された画像Qaと、左側カメラ装置100bによって撮影された画像Qbとでは、対象物Pが撮影された画像中の位置が異なることで視差Zが生じる。
ここでは左側カメラ装置100bの位置を基に、右側カメラ装置100aに写った対象物Pの位置のずれ(視差)から対象物Pまでの距離を測定する場合について説明する。
視差Z、右側カメラ装置100aと左側カメラ装置100bとの間隔である基線長Bとしたとき、撮像光学系1の全系の焦点距離f、測定距離Mの間には、三角測量の原理から数式(8)の相関関係がある。
【0100】
【0101】
従って、画像処理部201は、基線長Bと、焦点距離fの値を記憶しておけば、視差Zを右側カメラ装置100aと左側カメラ装置100bとでそれぞれ取得された2枚の画像から、測定距離Mが測定できる。
【0102】
このようなステレオカメラ装置200においては、対象物Pの位置を正しく把握するために、右側カメラ装置100aと左側カメラ装置100bとは何れも広角で高解像度を両立することが好ましく、さらに多くは車両に取り付けられるために小型化される必要がある。したがって、広角化と小型化とを両立しながらも、諸収差を良好に補正可能な本発明による撮像光学系1を用いることは、ステレオカメラ装置200にとって重要である。
【0103】
そこで、本実施形態においても、左側カメラ装置100bと右側カメラ装置100aとにはそれぞれ、実施例1~4で述べたような撮像光学系1を用いることが望ましい。このように、撮像光学系1をステレオカメラ装置200に内蔵することによって、広角化と小型化とを両立しながらも、諸収差を良好に補正可能である。
【0104】
また、その他、監視カメラ装置などの高解像度、低ディストーション、広画角、大口径が要求される様々なカメラ装置にも好適である。
あるいは、所謂PDA(Personal Data Assistant)や携帯電話機、スマートホン、タブレット端末等の携帯情報端末に用いられるカメラ機能のための光学系として搭載されても良い。
【0105】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、上述の各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに異なる実施形態や変形例を適宜に組み合わせてもよい。
【0106】
例えば、撮像光学系1は、上記説明における「像側」を物体側とし、「物体側」を像側として、投射光学系としても用いることができる。
【0107】
この発明の実施の形態に記載された効果は、発明から生じる好適な効果を列挙したに過ぎず、発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0108】
1 撮像光学系
100 デジタルカメラ
S 開口絞り
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
L6 第6レンズ
L7 第7レンズ
f 焦点距離
r 曲率半径
D 入射瞳径
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】