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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059613
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】パーティクル抑制方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20230420BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
C23C16/44 J
C23C16/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169717
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】傳寳 一樹
(72)【発明者】
【氏名】金 大鎬
(72)【発明者】
【氏名】松本 淳志
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 英亮
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA03
4K030AA13
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA17
4K030BA18
4K030BA20
4K030BA38
4K030DA06
4K030FA01
4K030FA03
(57)【要約】
【課題】チャンバ内でのパーティクルの発生を抑制する。
【解決手段】パーティクル抑制方法は、工程a)と、工程b)と、工程c)とを含む。工程a)では、ハロゲン元素および金属元素を含む第1の処理ガスを基板が収容されたチャンバ内に供給し、第1の処理ガスをプラズマ化することにより、基板上に金属元素を含む膜を形成する。工程b)では、水素ガスを含む第2の処理ガスをチャンバ内に供給し、第2の処理ガスをプラズマ化することにより、チャンバの内壁に形成された堆積物の表面を還元する。工程c)では、窒素元素を含む第3の処理ガスをチャンバ内に供給することにより、還元された堆積物の表面を窒化する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ハロゲン元素および金属元素を含む第1の処理ガスを基板が収容されたチャンバ内に供給し、前記第1の処理ガスをプラズマ化することにより、前記基板上に前記金属元素を含む膜を形成する工程と、
b)水素ガスを含む第2の処理ガスを前記チャンバ内に供給し、前記第2の処理ガスをプラズマ化することにより、前記チャンバの内壁に形成された堆積物の表面を還元する工程と、
c)窒素元素を含む第3の処理ガスを前記チャンバ内に供給することにより、還元された前記堆積物の表面を窒化する工程と
を含むパーティクル抑制方法。
【請求項2】
前記工程c)では、前記チャンバ内に供給された前記第3の処理ガスをプラズマ化することにより、還元された前記堆積物の表面を窒化する請求項1に記載のパーティクル抑制方法。
【請求項3】
前記工程a)は、
a1)前記第1の処理ガスを前記チャンバ内に供給し、前記第1の処理ガスをプラズマ化することにより、前記基板上に前記金属元素を含む膜を形成する工程と、
a2)前記第2の処理ガスを前記チャンバ内に供給し、前記第2の処理ガスをプラズマ化することにより、前記基板上に形成された前記金属元素を含む膜の表面を還元する工程と、
a3)前記第3の処理ガスを前記チャンバ内に供給し、前記金属元素を含む膜の表面を前記第3の処理ガスに晒すことにより、還元された前記金属元素を含む膜の表面を窒化する工程と
を含む請求項1または2に記載のパーティクル抑制方法。
【請求項4】
a4)前記工程a)の後に実行され、前記金属元素を含む膜が形成された前記基板を前記チャンバ内から搬出する工程をさらに含み、
前記工程b)および前記工程c)は、前記工程a4)の後に実行される請求項1から3のいずれか一項に記載のパーティクル抑制方法。
【請求項5】
前記工程b)は、
前記工程a)が実行された前記基板の数、複数の前記基板について前記工程a)が実行されることにより前記基板に形成された前記金属元素を含む膜の累積膜厚、および、前記工程a)におけるプラズマ処理の累積時間の少なくともいずれかに基づいて実施される請求項1から4のいずれか一項に記載のパーティクル抑制方法。
【請求項6】
d)フッ素元素を含む第4の処理ガスを前記チャンバ内に供給することにより、前記チャンバの内壁に付着している前記堆積物を除去する工程と、
e)前記第1の処理ガスを前記チャンバ内に供給し、前記第1の処理ガスをプラズマ化することにより、前記チャンバの内壁に前記堆積物を形成する工程と、
f)前記第2の処理ガスを前記チャンバ内に供給し、前記第2の処理ガスをプラズマ化することにより、前記チャンバの内壁に形成された前記堆積物の表面を還元する工程と、
g)前記第3の処理ガスを前記チャンバ内に供給することにより、還元された前記堆積物の表面を窒化する工程と
をさらに含む請求項1から4のいずれか一項に記載のパーティクル抑制方法。
【請求項7】
前記工程g)では、前記チャンバ内に供給された前記第3の処理ガスをプラズマ化することにより、還元された前記堆積物の表面を窒化する請求項6に記載のパーティクル抑制方法。
【請求項8】
h)前記工程a)の前に実行され、前記第1の処理ガスを前記チャンバ内に供給し、前記第1の処理ガスをプラズマ化することにより、前記チャンバの内壁に前記堆積物を形成する工程と、
i)前記工程a)の前であり、かつ、前記工程h)の後に実行され、前記第2の処理ガスを前記チャンバ内に供給し、前記第2の処理ガスをプラズマ化することにより、前記チャンバの内壁に形成された前記堆積物の表面を還元する工程と、
j)前記工程a)の前であり、かつ、前記工程i)の後に実行され、前記第3の処理ガスを前記チャンバ内に供給することにより、還元された前記堆積物の表面を窒化する工程と
をさらに含む請求項1から5のいずれか一項に記載のパーティクル抑制方法。
【請求項9】
前記工程j)では、前記チャンバ内に供給された前記第3の処理ガスをプラズマ化することにより、還元された前記堆積物の表面を窒化する請求項8に記載のパーティクル抑制方法。
【請求項10】
第1の処理ガスに含まれるハロゲン元素はClであり、
第1の処理ガスに含まれる金属元素はTi、Ta、またはWである請求項1から9のいずれか一項に記載のパーティクル抑制方法。
【請求項11】
第1の処理ガスは、TiCl4ガス、TaCl5ガス、WCl4ガス、WCl5ガス、またはWCl6ガスである請求項1から10のいずれか一項に記載のパーティクル抑制方法。
【請求項12】
第2の処理ガスは、H2ガス、または、H2ガスおよび希ガスの混合ガスである請求項1から11のいずれか一項に記載のパーティクル抑制方法。
【請求項13】
第3の処理ガスは、NH3ガス、N2ガス、または、H2ガスおよびN2ガスの混合ガスである請求項1から12のいずれか一項に記載のパーティクル抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、パーティクル抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、CVD成膜処理を施すチャンバー11内をClF3ガスでクリーニングした後、該チャンバー内にArガスと還元ガスとを含むガスのプラズマを形成する技術が開示されている。このプラズマによりチャンバー内壁および/またはチャンバー内部材の表面に付着したAlF系物質からなる付着物50が除去される。引き続きチャンバー11内にプリコート用ガスが供給され、付着物50が除去された表面にプリコート膜51が形成され、その後チャンバー11内に被処理体Wが装入されて成膜処理が行われる。
【0003】
また、下記の特許文献2には、プラズマ増速Ti-CVD膜を蒸着するのに用いられる処理室を、湿式清浄化又はその場での化学的清浄化後、又は順次蒸着工程を行う度毎に、効果的に調整及びパッシベーションすることができる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-167673号公報
【特許文献2】特開2002-512307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、チャンバ内でのパーティクルの発生を抑制することができるパーティクル抑制方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、パーティクル抑制方法であって、工程a)と、工程b)と、工程c)とを含む。工程a)では、ハロゲン元素および金属元素を含む第1の処理ガスを基板が収容されたチャンバ内に供給し、第1の処理ガスをプラズマ化することにより、基板上に金属元素を含む膜を形成する。工程b)では、水素ガスを含む第2の処理ガスをチャンバ内に供給し、第2の処理ガスをプラズマ化することにより、チャンバの内壁に形成された堆積物の表面を還元する。工程c)では、窒素元素を含む第3の処理ガスをチャンバ内に供給することにより、還元された堆積物の表面を窒化する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、チャンバ内でのパーティクルの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態におけるプラズマ処理装置の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、第1の実施形態におけるパーティクル抑制方法の一例を示すフローチャートである。
図3A図3Aは、チャンバの内壁および排気室の内壁に付着した堆積物のコーティングの過程の一例を示す模式図である。
図3B図3Bは、チャンバの内壁および排気室の内壁に付着した堆積物のコーティングの過程の一例を示す模式図である。
図3C図3Cは、チャンバの内壁および排気室の内壁に付着した堆積物のコーティングの過程の一例を示す模式図である。
図4図4は、ギブス自由エネルギーの変化量と温度との関係の一例を示す図である。
図5A図5Aは、シャワープレートに付着した堆積物のコーティングの過程の一例を示す模式図である。
図5B図5Bは、シャワープレートに付着した堆積物のコーティングの過程の一例を示す模式図である。
図5C図5Cは、シャワープレートに付着した堆積物のコーティングの過程の一例を示す模式図である。
図6図6は、第2の実施形態におけるパーティクル抑制方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第3の実施形態におけるパーティクル抑制方法の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第4の実施形態におけるパーティクル抑制方法の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、パーティクルの数の測定結果の一例を示す図である。
図10図10は、ギブス自由エネルギーの変化量と温度との関係の一例を示す図である。
図11図11は、プラズマ処理装置の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、開示されるパーティクル抑制方法の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示されるパーティクル抑制方法が限定されるものではない。
【0010】
ところで、チタン等の金属元素を含む膜の成膜では、金属元素を含む原料ガスが、基板を収容するチャンバ内に供給され、基板上に金属元素を含む膜が成膜される。この際、チャンバの内壁も原料ガスに晒されるため、チャンバの内壁にも金属元素を含む膜が反応副生成物(以下、堆積物と記載する)なって付着する。そのため、金属元素を含む膜の成膜が複数の基板に対して実行されると、チャンバの内壁に付着する堆積物が厚くなり、その一部がパーティクルとなってチャンバ内に飛散する場合がある。そのため、チャンバの内壁に付着した堆積物がパーティクルとなってチャンバ内に飛散する前に、チャンバ内のクリーニングを実行して堆積物を除去することが考えられる。
【0011】
チャンバ内のクリーニングが行われた場合には、チャンバ内の状態を予め定められた状態にするために、チャンバの内壁のプリコート等の処理が行われる。クリーニングやプリコート等の処理の間は、成膜処理を行うことができないため、成膜処理のスループットの向上が難しい。成膜処理のスループットを向上させるためにクリーニングの回数を減らすことも考えられるが、クリーニングが行われていない期間にパーティクルが発生すると、発生したパーティクルにより基板から形成された半導体装置に欠陥が生じる場合がある。
【0012】
そこで、本開示は、チャンバ内でのパーティクルの発生を抑制することができる技術を提供する。
【0013】
(第1の実施形態)
[プラズマ処理装置100の構成]
本開示におけるパーティクル抑制方法は、例えば図1に示されるプラズマ処理装置100により実現される。図1は、第1の実施形態におけるプラズマ処理装置100の一例を示す概略断面図である。本実施形態におけるプラズマ処理装置100は、例えばTi(チタン)を含む膜を基板Wに成膜する装置である。Tiは、基板Wに成膜される膜に含まれる金属元素の一例である。
【0014】
プラズマ処理装置100は、内壁面に陽極酸化処理が施されたアルミニウム等によって略円筒状に形成されたチャンバ1を有する。チャンバ1は、接地されている。チャンバ1の内部には、サセプタ2が設けられている。サセプタ2は、チャンバ1の中央下部に設けられた略円筒状の支持部材3により支持されている。サセプタ2は、基板Wを水平に支持するための載置台(ステージ)であり、例えば窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料、または、アルミニウムやニッケル合金等の金属材料等で形成されている。サセプタ2は、支持部材3を介して接地されている。
【0015】
サセプタ2の外縁部には、基板Wをガイドするためのガイドリング4が設けられる。また、サセプタ2には、モリブデン等の高融点金属で構成されたヒータ5が埋め込まれる。ヒータ5には、ヒータ電源6が接続されている。ヒータ5は、ヒータ電源6から供給された電力によって、サセプタ2に支持された基板Wを予め定められた温度に加熱する。
【0016】
チャンバ1の天壁1aには、絶縁部材9を介してシャワーヘッド10が設けられている。本実施形態におけるシャワーヘッド10は、プリミックスタイプのシャワーヘッドであり、ベース部材11と、シャワープレート12とを有する。シャワープレート12の外周部は、貼り付き防止用の略円環状をなす中間部材13を介して、ベース部材11に固定されている。
【0017】
シャワープレート12は、フランジ状をなし、シャワープレート12の内部には、凹部が形成されている。即ち、ベース部材11とシャワープレート12との間には、ガス拡散空間14が形成されている。ベース部材11の外周部にはフランジ部11aが形成されており、ベース部材11は、フランジ部11aを介して絶縁部材9に支持されている。
【0018】
シャワープレート12には、複数のガス吐出孔15が形成されている。ベース部材11の略中央付近には、ガス導入孔16が形成されている。ガス導入孔16は、配管30を介してガス供給機構20に接続されている。
【0019】
ガス供給機構20は、ハロゲン元素および金属元素を含むガスの供給源21aと、希ガスの供給源21bと、水素(H2)ガスの供給源21cと、窒素元素を含むガスの供給源21dとを有する。本実施形態において、ハロゲン元素および金属元素を含むガスは、例えばTiCl4ガスである。また、本実施形態において、希ガスは、例えばArガスである。また、本実施形態において、窒素元素を含むガスは、例えばアンモニア(NH3)ガスである。TiCl4ガスは、第1の処理ガスの一例であり、ArガスおよびH2ガスを含むガスは、第2の処理ガスの一例であり、NH3ガスは、第3の処理ガスの一例である。
【0020】
供給源21aは、バルブ22a、マスフローコントローラ(MFC)23a、およびバルブ24aを介して配管30に接続されている。供給源21bは、バルブ22b、MFC23b、およびバルブ24bを介して配管30に接続されている。供給源21cは、バルブ22c、MFC23c、およびバルブ24cを介して配管30に接続されている。供給源21dは、バルブ22d、MFC23d、およびバルブ24dを介して配管30に接続されている。配管30を介してガス拡散空間14内の供給された処理ガスは、ガス拡散空間14内を拡散し、ガス吐出孔15を介してチャンバ1内にシャワー状に吐出される。
【0021】
ベース部材11には、整合器44を介して、RF(Radio Frequency)電源45が接続されている。RF電源45は、整合器44を介してプラズマ生成用のRF電力をベース部材11に供給する。ベース部材11に供給されたRF電力は、中間部材13およびシャワープレート12を介してチャンバ1内に放射される。チャンバ1内に放射されたRF電力によって、チャンバ1内に供給された処理ガスがプラズマ化される。そして、プラズマに含まれる活性種等により、基板Wの表面に金属元素を含む膜が形成される。本実施形態において、基板Wには、Ti膜が形成される。なお、処理ガスがプラズマ化されると、チャンバ1の内壁1cにも金属元素を含む膜が堆積物となって付着する。本実施形態において、シャワーヘッド10は、平行平板電極の上部電極としても機能する。一方、サセプタ2は、平行平板電極の下部電極としても機能する。
【0022】
シャワーヘッド10のベース部材11には、ヒータ47が設けられている。ヒータ47には、ヒータ電源48が接続されている。ヒータ47は、ヒータ電源48から供給された電力によってシャワーヘッド10を予め定められた温度に加熱する。これにより、シャワープレート12は、例えば350℃以上に加熱される。ベース部材11上面には、断熱部材49が設けられている。
【0023】
チャンバ1の底壁1bにおける略中央部には、略円形の開口部50が形成されている。底壁1bの開口部50には、開口部50を覆うように下方に向けて突出する排気室51が設けられている。排気室51は、内壁51aの面に陽極酸化処理が施されたアルミニウム等によって形成されている。排気室51は、チャンバ1を介して接地されている。排気室51の側壁には排気管52が接続されている。排気管52には、真空ポンプを含む排気装置53が接続されている。排気装置53により、チャンバ1内を予め定められた真空度まで減圧することができる。
【0024】
なお、チャンバ1内で処理ガスがプラズマ化されると、プラズマに含まれる活性種の一部が排気室51内にも流れる。これにより、排気室51の内壁51aにも金属元素を含む膜が堆積物となって付着する。
【0025】
サセプタ2には、基板Wを昇降させるための複数(たとえば、3本)のリフトピン54が、サセプタ2の表面に対して突没可能に設けられている。複数のリフトピン54は、支持板55によって支持されている。支持板55は、駆動機構56の駆動により昇降する。支持板55が昇降することにより、複数のリフトピン54が昇降する。
【0026】
チャンバ1の側壁には、チャンバ1と隣接して設けられた図示しない基板搬送室との間で基板Wの搬送を行うための搬送口57が設けられている。搬送口57は、ゲートバルブ58によって開閉される。
【0027】
プラズマ処理装置100は、制御装置60を備える。制御装置60は、例えばコンピュータであり、制御部61と記憶部62とを有する。記憶部62には、プラズマ処理装置100において実行される各種の処理を制御するプログラム等が予め格納されている。制御部61は、記憶部62に記憶されたプログラムを読み出して実行することによってプラズマ処理装置100の各部を制御する。
【0028】
なお、記憶部62内に予め格納されているプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から記憶部62にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、例えばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカード等がある。
【0029】
また、制御装置60には、オペレータがプラズマ処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うためのキーボードや、プラズマ処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等で構成されるユーザインターフェース63が接続される。
【0030】
[パーティクル抑制方法]
図2は、第1の実施形態におけるパーティクル抑制方法の一例を示すフローチャートである。図2のフローチャートに例示された各処理は、制御装置60がプラズマ処理装置100の各部を制御することにより実現される。
【0031】
まず、制御装置60は、基板Wの数をカウントするための変数n1を0に初期化する(S100)。そして、基板Wがチャンバ1内に搬入される(S101)。ステップS101では、駆動機構56により複数のリフトピン54が上昇し、ゲートバルブ58が開けられる。そして、図示しない搬送装置によって基板Wがチャンバ1内に搬入され、複数のリフトピン54に渡される。そして、駆動機構56により複数のリフトピン54が下降し、基板Wがサセプタ2上に載せられる。
【0032】
次に、基板WにTi膜が形成される(S102)。ステップS102は、工程a)および工程a1)の一例である。ステップS102では、ヒータ5によって基板Wが予め定められた温度に加熱される。そして、ガス供給機構20からチャンバ1内に、TiCl4ガス、H2ガス、およびArガスが供給され、排気装置53によりチャンバ1内の圧力が予め定められた圧力に制御される。そして、整合器44およびシャワーヘッド10を介してチャンバ1内にRF電力が供給されることにより、チャンバ1内のガスがプラズマ化され、プラズマに含まれる活性種により基板Wの表面にTi膜が形成される。
【0033】
ステップS102における主な処理条件は、例えば以下の通りである。
チャンバ1内の圧力:50~1333Pa
基板Wの温度:320~700℃
RF電力:10~3000W
TiCl4ガス/H2ガス/Arガス:5~100/1~500/10~10000sccm
処理時間:1~600秒
【0034】
そして、RF電力の供給が停止され、TiCl4ガスの供給が停止される。これにより、チャンバ1内がArガスおよびH2ガスで満たされる。
【0035】
次に、基板Wに形成されたTi膜の表面が窒化される(S103)。ステップS103は、工程a3)の一例である。ステップS103では、チャンバ1内にNH3ガスが供給される。これにより、Ti膜の表面が窒化される。
【0036】
ステップS103における主な処理条件は、例えば以下の通りである。
チャンバ1内の圧力:50~1333Pa
基板Wの温度:320~700℃
NH3ガス/H2ガス/Arガス:10~10000/5~10000/0~10000sccm
処理時間:1~180秒
【0037】
なお、ステップS103では、チャンバ1内にRF電力を供給し、チャンバ1内に供給されたガスがプラズマ化されてもよい。この場合、チャンバ1内に供給されるRF電力の大きさは、例えば3000W以下の大きさである。
【0038】
次に、基板Wがチャンバ1内から搬出される(S104)。ステップS104は、工程a4)の一例である。ステップS101では、駆動機構56により複数のリフトピン54が上昇し、基板Wが持ち上げられる。そして、ゲートバルブ58が開けられ、図示しない搬送装置によって基板Wがチャンバ1内から搬出される。
【0039】
次に、制御装置60は、変数n1を1増やす(S105)。そして、制御装置60は、基板Wの処理を終了するか否かを判定する(S106)。基板Wの処理を終了する場合(S106:Yes)、制御装置60は、本フローチャートに示された処理を終了する。
【0040】
一方、基板Wの処理を終了しない場合(S106:No)、制御装置60は、変数n1が予め定められた定数N1より大きいか否かを判定する(S107)。本実施形態において、定数N1は、例えば0以上の整数である。変数n1が定数N1以下である場合(S107:No)、再びステップS101に示された処理が実行される。
【0041】
一方、変数n1が定数N1より大きい場合(S107:Yes)、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物の表面が還元される(S108)。ステップS108は、工程b)の一例である。ステップS108では、ガス供給機構20からチャンバ1内にH2ガスおよびArガスが供給され、排気装置53によりチャンバ1内の圧力が予め定められた圧力に制御される。そして、整合器44およびシャワーヘッド10を介してチャンバ1内にRF電力が供給されることにより、チャンバ1内のガスがプラズマ化される。そして、プラズマに含まれる活性種により、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物の表面が還元される。
【0042】
ステップS108における主な処理条件は、例えば以下の通りである。
チャンバ1内の圧力:50~1333Pa
RF電力:3000W以下
2ガス/Arガス:5~10000/0~10000sccm
処理時間:1~180秒
【0043】
次に、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物の表面が窒化される(S109)。ステップS109は、工程c)の一例である。ステップS109では、ガス供給機構20からチャンバ1内にNH3ガスが供給され、排気装置53によりチャンバ1内の圧力が予め定められた圧力に制御される。これにより、ステップS108で還元された堆積物の表面が窒化される。
【0044】
ステップS109における主な処理条件は、例えば以下の通りである。
チャンバ1内の圧力:50~1333Pa
NH3ガス/H2ガス/Arガス:10~10000/5~10000/0~10000sccm
処理時間:1~180秒
【0045】
なお、ステップS109では、チャンバ1内にRF電力を供給し、チャンバ1内に供給されたガスがプラズマ化されてもよい。この場合、チャンバ1内に供給されるRF電力の大きさは、例えば3000W以下の大きさである。
【0046】
次に、制御装置60は、変数n1を0に初期化する(S110)。そして、再びステップS101に示された処理が実行される。
【0047】
ところで、ステップS102においてチャンバ1内でTiCl4ガスがプラズマ化されると、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aには、例えば図3Aに示されるように、TiClx(xは1~3のいずれか)を含む堆積物70が付着する。TiClxを含む堆積物70は、もろいため、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aから剥がれやすく、パーティクルとなってチャンバ1内に飛散しやすい。そこで、堆積物70の表面を窒化膜でコーティングすることにより、堆積物70を剥がれにくくすることが考えられる。
【0048】
ここで、ステップS103において、チャンバ1内にNH3ガスが供給されると、基板Wの表面に形成された堆積物70の表面も窒化されるように思われる。
【0049】
図4は、ギブス自由エネルギーの変化量ΔGと温度との関係の一例を示す図である。図4に例示された傾向1は、下記の反応式(1)におけるギブス自由エネルギーの変化量ΔGと温度との関係を示している。
TiCl3+NH3→TiN+3HCl ・・・(1)
【0050】
図4に例示された傾向1を参照すると、反応式(1)の反応が進む、即ち、ギブス自由エネルギーの変化量ΔGがマイナスとなるのは、温度が320℃以上の場合である。そのため、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aを320℃以上の温度に維持できれば、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着したTiCl3を含む堆積物70の表面は、NH3ガスによって窒化される。そして、TiCl3を含む堆積物70の表面は、反応式(1)に従ってTiNに変化する。
【0051】
しかし、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aを全て320℃以上に加熱することは難しい。そのため、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aには、表面が十分に窒化されない堆積物70が残り、パーティクルの発生源となる。
【0052】
そこで、本実施形態では、ステップS108において、堆積物70の表面がH2ガスを含むガスから生成されたプラズマに含まれる活性種によって還元された後に、NH3ガスによって堆積物70の表面を窒化する。
【0053】
例えば図4に示された傾向2は、下記の反応式(2)におけるギブス自由エネルギーの変化量ΔGと温度との関係を示している。なお、図4の傾向2は、H2ガスがプラズマ化されていない場合の傾向を示している。
2TiCl3+H2→2TiCl2+2HCl ・・・(2)
【0054】
図4の傾向2を参照すると、600℃よりもずっと高い温度でなければ、ギブス自由エネルギーの変化量ΔGがマイナスとはならず、反応式(2)に示される反応が進まない。
【0055】
これに対し、例えば図4に示された傾向3は、下記の反応式(3)におけるギブス自由エネルギーの変化量ΔGと温度との関係を示している。なお、図4の傾向3は、H2ガスがプラズマ化された場合の傾向を示している。
TiCl3+H→TiCl2+HCl ・・・(3)
【0056】
図4の傾向3を参照すると、ほぼ全ての温度帯において、ギブス自由エネルギーの変化量ΔGがマイナスとなっている。そのため、ほぼ全ての温度帯において、反応式(3)に示される反応が進む。
【0057】
また、例えば図4に示された傾向4は、下記の反応式(4)におけるギブス自由エネルギーの変化量ΔGと温度との関係を示している。
2TiCl2+2NH3→2TiN+4HCl+H2 ・・・(4)
【0058】
図4の傾向4を参照すると、プラスの温度帯では、ギブス自由エネルギーの変化量ΔGがマイナスとなっており、320℃よりも低い温度(例えば常温)でも反応式(4)に示される反応が進む。
【0059】
このように、320℃以上の温度に維持することが難しいチャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aでは、TiCl3を含む堆積物70に対してNH3ガスが供給されても、例えば図4の傾向1に示されるように、堆積物70の表面を窒化することが難しい。
【0060】
これに対し、本実施形態では、TiCl3を含む堆積物70を、H2ガスから生成されたプラズマに晒すことにより、図4の傾向3に示されるように、320℃よりも低い温度で、TiCl3がTiCl2に還元される。これにより、例えば図3Bに示されるように、堆積物70の表面にTiCl2を含む層71が形成される。
【0061】
その上で、TiCl2を含む層71を、NH3ガスに晒すことにより、図4の傾向4および前述の反応式(4)に示されるように、320℃よりも低い温度で、TiCl2がTiNに窒化される。これにより、例えば図3Cに示されるように、堆積物70の表面にTiNを含む窒化層72が形成される。これにより、剥がれやすい堆積物70の表面が、TiNを含む窒化層72でコーティングされ、堆積物70の飛散を抑制することができる。これにより、堆積物70を除去するためのクリーニングの実施回数を削減することができ、成膜処理のスループットを向上させることができる。
【0062】
なお、ステップS102においても、チャンバ1内でH2ガスがプラズマ化されるため、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物70の表面が、プラズマに含まれるH原子によって還元されるように思われる。しかし、ステップS102におけるH2ガスの流量は、TiCl4ガスの流量と同程度である。そのため、プラズマに含まれるH原子の密度は、TiCl4分子やH2分子の密度よりも5桁以上低くなってしまう。そのため、ステップS102では、基板W上に付着したTiClxをH原子によって還元することはできても、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物70の表面をH原子によって十分に還元することは難しい。
【0063】
また、ステップS102では、チャンバ1内にArガスが供給されており、プラズマにArイオンが含まれている。Arイオンによっても、TiClxを還元することが可能である。しかし、Arイオンは、H原子に比べて拡散係数が小さいため、プラズマが存在する電極間に多く存在するものの、電極から離れたチャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aには到達しにくい。そのため、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物70の表面を、Arイオンによって十分に還元することは難しい。
【0064】
そこで、本実施形態では、TiCl4ガスが供給されていないステップS108において、チャンバ1内でH2ガスをプラズマ化する。これにより、チャンバ1内には、多くのH原子を発生させることができ、Arイオンよりも拡散係数が大きいH原子を、チャンバ1内に拡散させることができる。これにより、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物70の表面に十分な量のH原子を供給することができる。従って、前述の反応式(3)に従った反応により、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物70の表面を十分に還元することができる。
【0065】
なお、基板Wに対するTi膜の成膜処理が繰り返されると、窒化層72の上に再び堆積物70が積層される。その場合、さらにその上に窒化層72が形成される。このように、堆積物70と窒化層72とが交互に積層されることにより、堆積物70をチャンバ1の内壁等から剥がれにくくすることができる。
【0066】
また、チャンバ1内の部材であっても、シャワープレート12のように320℃以上に加熱が可能な部材では、部材の表面にTiClxを含む堆積物70ではなく、例えば図5Aに示されるように、Ti膜75が形成される。Ti膜75は、TiClxを含む堆積物70よりも剥がれにくい。しかし、複数の基板Wに対してTi膜を成膜する処理が繰り返されると、チャンバ1内の部材の表面に形成されるTi膜75が厚くなる。Ti膜75が厚くなると、Ti膜75の膜ストレスによって、Ti膜75がチャンバ1の内壁等から剥がれる場合がある。
【0067】
Ti膜75を剥がれにくくするためには、Ti膜75の膜ストレスを低減することが考えられる。本実施形態では、ステップS109において、チャンバ1内にNH3ガスが供給される。これにより、例えば図5Bに示されるように、Ti膜75の表面が窒化され、TiN膜76が形成される。TiN膜76は、Ti膜75とは逆の膜ストレスを有するため、Ti膜75の膜ストレスを低減することができる。
【0068】
その後、基板Wに対するTi膜の成膜処理が繰り返されると、例えば図5Cに示されるように、TiN膜76の上に再びTi膜75が積層される。その場合、さらにその上にTiN膜76を形成する。このように、Ti膜75とTiN膜76とが交互に積層されることにより、Ti膜75をチャンバ1の内壁等から剥がれにくくすることができる。
【0069】
以上、第1の実施形態について説明した。本実施形態のパーティクル抑制方法は、工程a)と、工程b)と、工程c)とを含む。工程a)では、ハロゲン元素および金属元素を含む第1の処理ガスを基板Wが収容されたチャンバ1内に供給し、第1の処理ガスをプラズマ化することにより、基板W上に金属元素を含む膜を形成する。工程b)では、水素ガスを含む第2の処理ガスをチャンバ1内に供給し、第2の処理ガスをプラズマ化することにより、チャンバ1の内壁に形成された堆積物の表面を還元する。工程c)では、窒素元素を含む第3の処理ガスをチャンバ1内に供給することにより、還元された堆積物の表面を窒化する。これにより、チャンバ1内でのパーティクルの発生を抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態におけるパーティクル抑制方法において、工程c)では、チャンバ1内に供給された第3の処理ガスをプラズマ化することにより、還元された堆積物の表面を窒化してもよい。
【0071】
また、本実施形態におけるパーティクル抑制方法には、工程a)の後に実行され、金属元素を含む膜が形成された基板Wをチャンバ1内から搬出する工程a4)をさらに含み、工程b)および工程c)は、工程a4)の後に実行される。これにより、チャンバ1内でのパーティクルの発生を抑制するための処理が基板Wの膜質に与える影響を低減することができる。
【0072】
また、本実施形態において、工程b)は、工程a)が実行された基板Wの数に基づいて実施される。これにより、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物70が剥がれる前に、堆積物70の表面を窒化することができる。
【0073】
また、本実施形態において、第1の処理ガスに含まれるハロゲン元素はClであり、第1の処理ガスに含まれる金属元素はTiである。また、第1の処理ガスは、TiCl4ガスである。また、第2の処理ガスは、H2ガスおよび希ガスの混合ガスである。また、第3の処理ガスは、NH3ガスである。これにより、チャンバ1内で基板Wに金属元素を含む膜を形成する際に、チャンバ1内でのパーティクルの発生を抑制することができる。
【0074】
(第2の実施形態)
本実施形態では、予め定められた数の基板Wに対してTi膜の成膜を行う都度、チャンバ1内のクリーニングと、チャンバ1の内壁のプリコートとを実行する。そして、チャンバ1の内壁のプリコートにおいて、TiClxの堆積、堆積物の表面の還元、および、還元された堆積物の表面の窒化が行われる。これにより、クリーニング後のプリコート膜からのパーティクルの発生を抑制することができる。
【0075】
図6は、第2の実施形態におけるパーティクル抑制方法の一例を示すフローチャートである。図6のフローチャートに例示された各処理は、制御装置60がプラズマ処理装置100の各部を制御することにより実現される。なお、図6において、図2と同じ符号が付された処理は、図2において説明された処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0076】
まず、制御装置60は、基板Wの数をカウントするための変数n1および変数n2を0に初期化する(S120)。そして、ステップS101に示された処理が実行される。
【0077】
また、ステップS104に示された処理が実行された後、制御装置60は、変数n1および変数n2をそれぞれ1増やす(S121)。そして、ステップS106に示された処理が実行される。
【0078】
また、変数n1が定数N1より大きい場合(S107:Yes)、制御装置60は、変数n2が予め定められた定数N2より大きいか否かを判定する(S122)。本実施形態において、定数N2は、例えば1499である。変数n2が定数N2以下である場合(S122:No)、ステップS108に示された処理が実行される。
【0079】
一方、変数n2が定数N2より大きい場合(S122:Yes)、制御装置60は、チャンバ1内のクリーニングを行う(S123)。ステップS123は、工程d)の一例である。ステップS123では、図示しないクリーニングガスの供給源からチャンバ1内にフッ素元素を含むクリーニングガスが供給され、排気装置53によりチャンバ1内の圧力が予め定められた圧力に制御される。これにより、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物が除去される。フッ素元素を含むクリーニングガスとしては、例えばClF3ガス等が用いられる。フッ素元素を含むクリーニングガスは、第4のガスの一例である。
【0080】
次に、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aがプリコートされる(S124)。ステップS124は、工程e)の一例である。ステップS124では、ガス供給機構20からチャンバ1内に、TiCl4ガス、H2ガス、およびArガスが供給され、排気装置53によりチャンバ1内の圧力が予め定められた圧力に制御される。そして、整合器44およびシャワーヘッド10を介してチャンバ1内にRF電力が供給されることにより、チャンバ1内のガスがプラズマ化され、プラズマに含まれる活性種により、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに堆積物が形成される。
【0081】
ステップS124における主な処理条件は、例えば以下の通りである。
チャンバ1内の圧力:50~1333Pa
RF電力:10~3000W
TiCl4ガス/H2ガス/Arガス:5~100/1~500/10~10000sccm
処理時間:1~600秒
【0082】
次に、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに形成された堆積物の表面が還元される(S125)。ステップS125は、工程f)の一例である。ステップS125では、ガス供給機構20からチャンバ1内にH2ガスおよびArガスが供給され、排気装置53によりチャンバ1内の圧力が予め定められた圧力に制御される。そして、整合器44およびシャワーヘッド10を介してチャンバ1内にRF電力が供給されることでチャンバ1内のガスがプラズマ化される。そして、プラズマに含まれる活性種により、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物の表面が還元される。
【0083】
ステップS125における主な処理条件は、例えば以下の通りである。
チャンバ1内の圧力:50~1333Pa
RF電力:10~3000W
2ガス/Arガス:5~10000/0~10000sccm
処理時間:1~180秒
【0084】
次に、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに形成された堆積物の表面が窒化される(S126)。ステップS126は、工程g)の一例である。ステップS126では、ガス供給機構20からチャンバ1内にNH3ガスが供給され、排気装置53によりチャンバ1内の圧力が予め定められた圧力に制御される。これにより、還元された堆積物の表面が窒化される。
【0085】
ステップS126における主な処理条件は、例えば以下の通りである。
チャンバ1内の圧力:50~1333Pa
NH3ガス/H2ガス/Arガス:10~10000/5~10000/0~10000sccm
処理時間:1~180秒
【0086】
なお、ステップS126では、チャンバ1内にRF電力を供給し、チャンバ1内に供給されたガスがプラズマ化されてもよい。この場合、チャンバ1内に供給されるRF電力の大きさは、例えば3000W以下の大きさである。
【0087】
次に、制御装置60は、変数n2を0に初期化する(S127)。そして、再びステップS101に示された処理が実行される。
【0088】
なお、図6の例では、ステップS123が実行された後、ステップS124、S125、およびS126がそれぞれ1回ずつ実行されるが、開示の技術はこれに限られない。他の例として、ステップS123が実行された後、ステップS124、S125、およびS126の3ステップが、この順番で複数回繰り返されてもよい。
【0089】
以上、第2の実施形態について説明した。本実施形態のパーティクル抑制方法は、工程d)と、工程e)と、工程f)と、工程g)とをさらに含む。工程d)は、フッ素元素を含む第4の処理ガスをチャンバ1内に供給することにより、チャンバ1の内壁に付着している堆積物を除去する。工程e)は、第1の処理ガスをチャンバ1内に供給し、第1の処理ガスをプラズマ化することにより、チャンバ1の内壁に堆積物を形成する。工程f)は、第2の処理ガスをチャンバ1内に供給し、第2の処理ガスをプラズマ化することにより、チャンバ1の内壁に形成された堆積物の表面を還元する。工程g)は、第3の処理ガスをチャンバ1内に供給することにより、還元された堆積物の表面を窒化する。これにより、クリーニング後のプリコート膜からのパーティクルの発生を抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態におけるパーティクル抑制方法において、工程g)では、チャンバ1内に供給された第3の処理ガスをプラズマ化することにより、還元された堆積物の表面を窒化してもよい。
【0091】
(第3の実施形態)
本実施形態では、基板Wに対するTi膜の成膜の前に行われるチャンバ1の内壁のプリコートにおいて、TiClxの堆積、堆積物の表面の還元、および、還元された堆積物の表面の窒化が行われる。これにより、プリコート膜からのパーティクルの発生を抑制することができる。
【0092】
図7は、第3の実施形態におけるパーティクル抑制方法の一例を示すフローチャートである。図7のフローチャートに例示された各処理は、制御装置60がプラズマ処理装置100の各部を制御することにより実現される。なお、図7において、図2と同じ符号が付された処理は、図2において説明された処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0093】
変数n1の初期化の後に、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aがプリコートされる(S130)。ステップS130は、工程h)の一例である。ステップS130では、ガス供給機構20からチャンバ1内に、TiCl4ガス、H2ガス、およびArガスが供給され、排気装置53によりチャンバ1内の圧力が予め定められた圧力に制御される。そして、整合器44およびシャワーヘッド10を介してチャンバ1内にRF電力が供給されることにより、チャンバ1内のガスがプラズマ化され、プラズマに含まれる活性種により、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに堆積物が形成される。
【0094】
ステップS130における主な処理条件は、例えば以下の通りである。
チャンバ1内の圧力:50~1333Pa
RF電力:10~3000W
TiCl4ガス/H2ガス/Arガス:5~100/1~500/10~10000sccm
処理時間:1~600秒
【0095】
次に、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物の表面が還元される(S131)。ステップS131は、工程i)の一例である。ステップS131では、ガス供給機構20からチャンバ1内にH2ガスおよびArガスが供給され、排気装置53によりチャンバ1内の圧力が予め定められた圧力に制御される。そして、整合器44およびシャワーヘッド10を介してチャンバ1内にRF電力が供給されることにより、チャンバ1内のガスがプラズマ化される。そして、プラズマに含まれる活性種により、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物の表面が還元される。
【0096】
ステップS131における主な処理条件は、例えば以下の通りである。
チャンバ1内の圧力:50~1333Pa
RF電力:10~3000W
2ガス/Arガス:5~10000/0~10000sccm
処理時間:1~180秒
【0097】
次に、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物の表面が窒化される(S132)。ステップS132は、工程j)の一例である。ステップS132では、ガス供給機構20からチャンバ1内にNH3ガスが供給され、排気装置53によりチャンバ1内の圧力が予め定められた圧力に制御される。これにより、ステップS131で還元された堆積物の表面が窒化される。そして、ステップS101に示された処理が実行される。
【0098】
ステップS132における主な処理条件は、例えば以下の通りである。
チャンバ1内の圧力:50~1333Pa
NH3ガス/H2ガス/Arガス:10~10000/5~10000/0~10000sccm
処理時間:1~180秒
【0099】
なお、ステップS132では、チャンバ1内にRF電力を供給し、チャンバ1内に供給されたガスがプラズマ化されてもよい。この場合、チャンバ1内に供給されるRF電力の大きさは、例えば3000W以下の大きさである。
【0100】
以上、第3の実施形態について説明した。本実施形態のパーティクル抑制方法は、工程h)と、工程i)と、工程j)とをさらに含む。工程h)は、工程a)の前に実行され、第1の処理ガスをチャンバ1内に供給し、第1の処理ガスをプラズマ化することにより、チャンバ1の内壁に堆積物を形成する。工程i)は、工程a)の前であり、かつ、工程h)の後に実行され、第2の処理ガスをチャンバ1内に供給し、第2の処理ガスをプラズマ化することにより、チャンバ1の内壁に形成された堆積物の表面を還元する。工程j)は、工程a)の前であり、かつ、工程i)の後に実行され、第3の処理ガスをチャンバ1内に供給することにより、還元された堆積物の表面を窒化する。これにより、基板Wに対するTi膜の成膜の前にチャンバ1の内壁等に形成されたプリコート膜からのパーティクルの発生を抑制することができる。
【0101】
また、本実施形態におけるパーティクル抑制方法において、工程j)では、チャンバ1内に供給された第3の処理ガスをプラズマ化することにより、還元された堆積物の表面を窒化してもよい。
【0102】
(第4の実施形態)
本実施形態では、基板WにTi膜を成膜した後であって、基板Wに形成されたTi膜の表面を窒化する前に、基板Wに形成されたTi膜の表面をH2ガスから生成されたプラズマを用いて還元する。これにより、基板Wに形成されたTi膜の表面の窒化に要する時間を短縮することができる。また、H2ガスから生成されたプラズマによって、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物の表面を還元することができる。これにより、基板Wを搬出した後にチャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物の表面を還元する際の時間を短縮することができる。
【0103】
図8は、第4の実施形態におけるパーティクル抑制方法の一例を示すフローチャートである。図8のフローチャートに例示された各処理は、制御装置60がプラズマ処理装置100の各部を制御することにより実現される。なお、図8において、図2と同じ符号が付された処理は、図2において説明された処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0104】
ステップS102において基板Wの表面にTi膜が形成された後、Ti膜の表面が還元される(S140)。ステップS140は、工程a2)の一例である。ステップS140では、ガス供給機構20からチャンバ1内にH2ガスが供給され、排気装置53によりチャンバ1内の圧力が予め定められた圧力に制御される。そして、整合器44およびシャワーヘッド10を介してチャンバ1内にRF電力が供給されることにより、チャンバ1内のガスがプラズマ化され、プラズマに含まれる活性種により、基板Wに形成されたTi膜の表面が還元される。そして、ステップS103に示された処理が実行される。
【0105】
ステップS140における主な処理条件は、例えば以下の通りである。
チャンバ1内の圧力:0~1333Pa
RF電力:10~3000W
2ガス/Arガス:5~10000/0~10000sccm
処理時間:1~180秒
【0106】
図9は、パーティクルの数の測定結果の一例を示す図である。図9に示された比較例1は、図8に例示された処理の中で、ステップS108の処理が実行されない場合の例である。また、比較例2は、図8に例示された処理の中で、ステップS140およびステップS108の処理が実行されていない場合の例である。
【0107】
図9に示されるように、比較例1および比較例2における1500枚目の基板Wでは、基板Wには約50個のパーティクルが検出され、第4の処理ガスによるチャンバ1や排気室51内のクリーニングとプリコートによる内壁1cや内壁51aの初期化が必要となることがわかる。これに対し、1501枚目の基板Wに対して本実施形態における処理が行われると、基板Wに検出されたパーティクルの数は、約10個程度まで抑制されている。従って、本実施形態の方法により、チャンバ1内で発生するパーティクルの数を低減することができる。
【0108】
以上、第4の実施形態について説明した。本実施形態において、工程a)には、工程a1)、工程a2)、および工程a3)が含まれる。工程a1)は、第1の処理ガスをチャンバ1内に供給し、第1の処理ガスをプラズマ化することにより、基板W上に金属元素を含む膜を形成する。工程a2)は、第2の処理ガスをチャンバ1内に供給し、第2の処理ガスをプラズマ化することにより、基板W上に形成された金属元素を含む膜の表面を還元する。工程a3)は、第3の処理ガスをチャンバ1内に供給し、金属元素を含む膜の表面を第3の処理ガスに晒すことにより、還元された金属元素を含む膜の表面を窒化する。これにより、基板Wに形成されたTi膜の表面の窒化に要する時間を短縮することができる。また、H2ガスから生成されたプラズマによって、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物の表面を還元することができる。これにより、基板Wを搬出した後にチャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着した堆積物の表面を還元する際の時間を短縮することができる。
【0109】
[その他]
なお、本開示は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0110】
例えば、上記した実施形態では、基板Wに形成される膜に含まれる金属元素としてTiを例に説明されたが、開示の技術はこれに限られない。基板Wに形成される膜に含まれる金属元素としては、Ti以外に、Ta(タンタル)やW(タングステン)等も考えられる。基板WにTaを含む膜を形成する場合、第1の処理ガスとしては、TiCl4ガスに代えて、例えばTaCl5ガスが用いられる。
【0111】
図10は、ギブス自由エネルギーの変化量ΔGと温度との関係の一例を示す図である。図10に例示された傾向5は、下記の反応式(5)におけるギブス自由エネルギーの変化量ΔGと温度との関係を示している。
2TaCl4+2NH3→2TaN+6HCl+Cl2 ・・・(5)
【0112】
図10に例示された傾向5を参照すると、反応式(5)の反応が進む、即ち、ギブス自由エネルギーの変化量ΔGがマイナスとなるのは、温度が約400℃以上の場合である。そのため、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aを400℃以上の温度に維持できれば、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに付着したTaCl4等を含む堆積物の表面は、NH3ガスによって窒化される。そして、TaCl4等を含む堆積物の表面は、反応式(5)に従ってTaNに変化する。
【0113】
また、例えば図10に示された傾向6は、下記の反応式(6)におけるギブス自由エネルギーの変化量ΔGと温度との関係を示している。なお、図10の傾向6は、H2ガスがプラズマ化されていない場合の傾向を示している。
TaCl4+H2→TaCl2+2HCl ・・・(6)
【0114】
また、例えば図10に示された傾向7は、下記の反応式(7)におけるギブス自由エネルギーの変化量ΔGと温度との関係を示している。なお、図10の傾向7は、H2ガスがプラズマ化されていない場合の傾向を示している。
2TaCl4+H2→2TaCl3+2HCl ・・・(7)
【0115】
図10の傾向6および傾向7を参照すると、400℃よりもずっと高い温度でなければ、ギブス自由エネルギーの変化量ΔGがマイナスとはならない。そのため、400℃よりもずっと高い温度でなければ、反応式(6)および(7)に示される反応は進まない。
【0116】
また、例えば図10に示された傾向8は、下記の反応式(8)におけるギブス自由エネルギーの変化量ΔGと温度との関係を示している。なお、図10の傾向8は、H2ガスがプラズマ化された場合の傾向を示している。
TaCl3+H→TaCl2+HCl ・・・(8)
【0117】
また、例えば図10に示された傾向9は、下記の反応式(9)におけるギブス自由エネルギーの変化量ΔGと温度との関係を示している。なお、図10の傾向9は、H2ガスがプラズマ化された場合の傾向を示している。
TaCl4+H→TaCl3+HCl ・・・(9)
【0118】
図10の傾向8および傾向9を参照すると、ほぼ全ての温度帯において、ギブス自由エネルギーの変化量ΔGがマイナスとなっている。そのため、反応式(8)および(9)に示される反応は、ほぼ全ての温度帯において進む。
【0119】
また、例えば図10に示された傾向10は、下記の反応式(10)におけるギブス自由エネルギーの変化量ΔGと温度との関係を示している。
TaCl3+NH3→TaN+3HCl ・・・(10)
【0120】
また、例えば図10に示された傾向11は、下記の反応式(11)におけるギブス自由エネルギーの変化量ΔGと温度との関係を示している。なお、図10の傾向11は、NH3ガスがプラズマ化された場合の傾向を示している。
2TaCl2+2NH3→2TaN+4HCl+H2 ・・・(11)
【0121】
図10の傾向10および傾向11を参照すると、正の温度帯では、ギブス自由エネルギーの変化量ΔGがマイナスとなっている。そのため、400℃よりも低い温度(例えば常温)でも、反応式(10)および(11)に示されるNH3ガスによる窒化反応は進む。
【0122】
このように、400℃以上の温度に維持することが難しいチャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aでは、TaCl4を含む堆積物に対してNH3ガスが供給されても、例えば図10の傾向5に示されるように、堆積物の表面を窒化することが難しい。
【0123】
これに対し、TaCl4を含む堆積物を、H2ガスを含むガスから生成されたプラズマに晒すことにより、図10の傾向8および傾向9に示されるように、400℃よりも低い温度で、TaCl4がTaCl2またはTaCl3に還元される。
【0124】
その上で、TaCl2またはTaCl3を含む堆積物をNH3ガスに晒す。これにより、図10の傾向10および11、ならびに、前述の反応式(10)および(11)に示されるように、400℃よりも低い温度で、TaCl2またはTaCl3がTaNに窒化される。これにより、剥がれやすい堆積物の表面が、TaNを含む窒化層でコーティングされ、堆積物の飛散を抑制することができる。
【0125】
また、上記した各実施形態では、シャワーヘッド10からチャンバ1内に処理ガスおよびRF電力が供給されるため、プラズマに含まれる活性種は、基板Wの近傍に多く存在する。しかし、処理条件によっては、プラズマに含まれる活性種は、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aには十分に届かない場合がある。そこで、シャワーヘッド10、整合器44、およびRF電源45とは別に、例えば図11に示されるように、コーティングしたい堆積物の近傍に活性種を供給するためのリモートプラズマ生成部80が別途設けられてもよい。
【0126】
図11の例では、リモートプラズマ生成部80は、配管81を介して排気室51に接続されている。リモートプラズマ生成部80は、H2ガスを含むガスから生成されたプラズマに含まれる活性種を、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに形成された堆積物に供給する。そして、ガス供給機構20からチャンバ1内にNH3ガスが供給される。これにより、内壁1cおよび排気室51の内壁51aに形成された堆積物の表面をより効率よく窒化することができる。
【0127】
また、上記した各実施形態では、成膜処理が実施された基板Wの数に応じて、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに形成された堆積物の還元および窒化の処理が実行されるが、開示の技術はこれに限られない。チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに形成された堆積物が剥がれる前に、堆積物の還元および窒化の処理が実行されれば、他の情報に基づいて堆積物の還元および窒化の処理が実行されてもよい。例えば、チャンバ1の内壁1cおよび排気室51の内壁51aに形成された堆積物の還元および窒化の処理は、複数の基板Wに形成されたTi膜の累積膜厚や、基板WにTi膜を形成する際のプラズマ処理の累積時間等に基づいて実施されてもよい。
【0128】
また、上記した各実施形態において、供給源21aから供給される第1の処理ガスは、例えばTiCl4ガスであるが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、供給源21aから供給される第1の処理ガスは、TaCl5ガス、WCl4ガス、WCl5ガス、またはWCl6ガス等であってもよい。
【0129】
また、上記した各実施形態において、第2の処理ガスは、H2ガスおよびArガスの混合ガスであるが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、第2の処理ガスは、H2ガスおよび他の希ガスの混合ガスであってもよい。あるいは、第2の処理ガスは、H2ガスであってもよい。
【0130】
また、上記した各実施形態において、供給源21dから供給される第3の処理ガスは、NH3ガスであるが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、第3の処理ガスは、N2ガス、または、H2ガスおよびN2ガスの混合ガスであってもよい。
【0131】
また、上記した各実施形態では、プラズマ源の一例として、容量結合型プラズマ(CCP)を用いて処理を行うプラズマ処理装置100を説明したが、プラズマ源はこれに限られない。容量結合型プラズマ以外のプラズマ源としては、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)、マイクロ波励起表面波プラズマ(SWP)、電子サイクロトン共鳴プラズマ(ECP)、およびヘリコン波励起プラズマ(HWP)等が挙げられる。
【0132】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0133】
W 基板
100 プラズマ処理装置
1 チャンバ
1a 天壁
1b 底壁
1c 内壁
2 サセプタ
3 支持部材
4 ガイドリング
5 ヒータ
6 ヒータ電源
9 絶縁部材
10 シャワーヘッド
11 ベース部材
11a フランジ部
12 シャワープレート
13 中間部材
14 ガス拡散空間
15 ガス吐出孔
16 ガス導入孔
20 ガス供給機構
21 供給源
22 バルブ
23 MFC
24 バルブ
30 配管
44 整合器
45 RF電源
47 ヒータ
48 ヒータ電源
49 断熱部材
50 開口部
51 排気室
51a 内壁
52 排気管
53 排気装置
54 リフトピン
55 支持板
56 駆動機構
57 搬送口
58 ゲートバルブ
60 制御装置
61 制御部
62 記憶部
63 ユーザインターフェース
70 堆積物
71 層
72 窒化層
75 Ti膜
76 TiN膜
80 リモートプラズマ生成部
81 配管
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11