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特開2023-59658ポリウレタン、ポリウレタンの製造方法、導電性ペースト組成物、導電配線および導電配線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059658
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】ポリウレタン、ポリウレタンの製造方法、導電性ペースト組成物、導電配線および導電配線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/32 20060101AFI20230420BHJP
   C07C 43/23 20060101ALI20230420BHJP
   C07C 255/54 20060101ALI20230420BHJP
   C07C 69/675 20060101ALI20230420BHJP
   C07C 311/09 20060101ALI20230420BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20230420BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230420BHJP
   H01B 7/06 20060101ALI20230420BHJP
   C07C 49/82 20060101ALI20230420BHJP
   C07D 307/20 20060101ALN20230420BHJP
【FI】
C08G18/32 003
C07C43/23 D
C07C255/54
C07C69/675
C07C311/09
C08G18/32 025
H01B1/22 A
H01B13/00 503D
H01B7/06
C07C49/82
C07D307/20
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169777
(22)【出願日】2021-10-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】野中 汐里
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 幸士
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 修
【テーマコード(参考)】
4C037
4H006
4J034
5G301
5G311
5G323
【Fターム(参考)】
4C037DA05
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB46
4H006AB48
4H006BM10
4H006BM71
4H006BN10
4H006BP10
4H006GN38
4H006GP03
4H006KA03
4H006QN30
4J034BA06
4J034CA01
4J034CA12
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CB07
4J034CC12
4J034CC37
4J034CD04
4J034CD12
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA02
4J034JA32
4J034JA41
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KE02
4J034RA14
5G301DA03
5G301DA04
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA07
5G301DA09
5G301DA10
5G301DA11
5G301DA12
5G301DA13
5G301DA14
5G301DA18
5G301DA22
5G301DA42
5G301DA55
5G301DA59
5G301DD01
5G301DE01
5G311BA02
5G311BB06
5G311BC01
5G323CA03
5G323CA05
(57)【要約】
【課題】伸縮時に於ける導電性の変化が少ない伸縮性導電配線を形成するための導電性ペースト組成物、及び該組成物を与えるポリウレタンを提供する。
【解決手段】ポリウレタンであって、下記一般式(1A)で示されるフェノール性水酸基を含有するものであることを特徴とするポリウレタン。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンであって、下記一般式(1A)で示されるフェノール性水酸基を含有するものであることを特徴とするポリウレタン。
【化1】
(式中、Azは炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-NR-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。R、Rは炭素数1~6の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、又はフェニル基であり、Rは水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、もしくは分岐状のアルキル基である。Zは単結合又は酸素原子を示す。Xfはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のフッ素原子で置換されてよい直鎖状、分岐状もしくは環状の1価炭化水素基、炭素数1~10のフッ素原子で置換されてよいアルコキシ基、又は電子求引基を示す。環ZZはそれぞれ独立に炭素数5~20の芳香族性の単環又は多環を示す。前記環ZZの炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb及びkdは1又は2を示す。kc及びkeは0~2の整数を示し、破線は結合手を示す。)
【請求項2】
前記ポリウレタンが、下記一般式(1B)で示されるフェノール性水酸基を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン。
【化2】
(式中、Az’は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-NR-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb、kc、kd、keは1又は2を示す。R、R、Rは前記と同じであり、破線は結合手を示す。)
【請求項3】
前記ポリウレタンが、更に下記一般式(1a)~(1c)で示される弱酸性官能基を1つ以上含むものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン。
【化3】
(式中、Rは水素原子、フッ素原子、又は炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のフッ素化されていてもよい炭化水素基を示し、Rfはフッ素原子又は炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のフッ素化炭化水素基を示す。nは1又は2の整数であり、破線は結合手を示す。)
【請求項4】
前記ポリウレタンが、更に下記一般式(2a)~(2c)で示される構造を1つ以上含むものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリウレタン。
【化4】
(式中、Rは水素原子、又は炭素数1~3の1価の炭化水素基であり、Aは単結合、又は炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基を示し、構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、又は-C-に置換されていてもよく、-NR-C(=O)-であってもよい。A及びAはそれぞれ独立に、-O-、-O-C(=O)-NR-、-NR-、-C(=O)O-から選ばれるいずれかの基を示す。n、n、nは0~10の整数であり、nは0又は1の整数である。Rは前記と同じであり、破線は結合手を示す。)
【請求項5】
請求項2に記載のポリウレタンの製造方法であって、鎖延長反応後に下記一般式(1C)で示されるアルコール又はアミンを用いてポリウレタンに前記フェノール性水酸基を導入することを特徴とするポリウレタンの製造方法。
【化5】
(式中、Az”は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。Xは酸素原子又はNRを示す。kaは0~2の整数を示す。kb、kc、kd、keは1又は2を示す。R、R、Rは前記と同じである。)
【請求項6】
請求項5に記載のポリウレタンの製造方法であって、鎖延長剤として下記一般式(3a)~(3c)で示されるアルコールを1つ以上用いてポリウレタンに弱酸性官能基を導入することを特徴とするポリウレタンの製造方法。
【化6】
(式中、Rは水素原子、又は炭素数1~3の1価の炭化水素基であり、Aは単結合、又は炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基を示し、構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、又は-C-に置換されていてもよく、-NR-C(=O)-であってもよい。Rは水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、もしくは分岐状のアルキル基である。n、n、nは0~10の整数である。)
【請求項7】
(A)導電性フィラーと(B)請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポリウレタンと(C)溶剤とを含むものであることを特徴とする導電性ペースト組成物。
【請求項8】
前記導電性ペースト組成物が、さらに(D)フェノール化合物を含むものであることを特徴とする請求項7に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項9】
前記(D)成分のフェノール化合物が下記一般式(2A)で示される構造を含むものであることを特徴とする請求項8に記載の導電性ペースト組成物。
【化7】
(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又は水酸基を示す。Ayは炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb及びkdは1又は2を示す。kc及びkeは0~2の整数を示す。Z、Xf、ZZ、R、Rは前記と同じである。)
【請求項10】
前記(D)成分のフェノール化合物が下記一般式(2B)で示される構造を含むものであることを特徴とする請求項9に記載の導電性ペースト組成物。
【化8】
(式中、Ay’は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb、kc、kd、keは1又は2を示す。R、R、Rは前記と同じである。)
【請求項11】
前記(A)成分の導電性フィラーが、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して70質量部を越える割合で含有されているものであることを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項12】
前記(A)成分の導電性フィラーが、金、銀、塩化銀、白金、銅、錫、鉄、マグネシウム、チタン、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロム、インジウム、はんだ、及び炭素、又はこれらの複合体から選ばれる粉末であることを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか一項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項13】
前記(A)成分の導電性フィラーが銀粉であることを特徴とする請求項12に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項14】
前記(A)成分の導電性フィラーの平均粒径が5nm~10μmであることを特徴とする請求項7から請求項13のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項15】
基材上に形成され、請求項7から請求項14のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物の焼成物からなることを特徴とする導電配線。
【請求項16】
前記基材が伸縮性を有するものであることを特徴とする請求項15に記載の導電配線。
【請求項17】
前記基材が熱可塑性ポリウレタンであることを特徴とする請求項16に記載の導電配線。
【請求項18】
20%伸長時の電気抵抗が伸長前の電気抵抗の500%以下であることを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の導電配線。
【請求項19】
伸長率20%で1000回繰り返し伸縮した際の最大電気抵抗が、伸縮前の電気抵抗の5000%以下であることを特徴とする請求項16から請求項18のいずれか1項に記載の導電配線。
【請求項20】
請求項7から請求項14のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物を用いて基材上に導電配線を形成する導電配線の製造方法であって、前記導電配線を形成する時の焼成温度を60~160℃とすることを特徴とする導電配線の製造方法。
【請求項21】
請求項7から請求項14のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物を印刷することによって基材上に導電配線を形成することを特徴とする導電配線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン、ポリウレタンの製造方法、導電性ペースト組成物、導電配線および導電配線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT(Internet of Things)の普及と共に人体に装着可能なウェアラブルデバイスの開発が進んでいる。特に医療・ヘルスケア・介護分野やスポーツ分野での活用が期待されており、リアルタイムでの生体情報・運動情報のモニタリングや体の動きのセンシング等により、疾病の早期発見や体調管理を行うことが検討されている。
【0003】
生体情報を連続して測定するウェアラブルデバイスの形状としては、時計、メガネ、イヤホンのようなアクセサリ型、衣服型、体に直接貼り付けるパッチ型等がある。正確な生体情報を安定して測定するためには体表面にフィットさせて用いる必要があり、特に衣服型、パッチ型デバイスでは体の動きに追従する高い柔軟性、伸縮性と伸縮の繰り返しに対する耐久性が求められる。そのため、配線やセンサーに伸縮性を付与するための技術や材料の開発が重要となっている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のウェアラブルデバイスは伸縮性のウレタン膜で被覆された蛇腹の形の伸縮可能な銀配線を用いており、金属配線自体に伸縮性がなくても、配線のデザインにより疑似的に伸縮性を持たせ、導電性を確保している。
【0005】
また、導電性糸を編み込んで編地を形成することで伸縮性を持たせる方法(特許文献2)や伸縮性のある弾性繊維に導電性繊維を巻き付けた伸縮性の導電性複合糸を用いる方法(特許文献3)も報告されている。
【0006】
しかしながら、導電性糸を編み込む方法ではパターン形状の自由度が低く、印刷によるパターン形成と比較してスループットが低いという問題が挙げられる。また、特許文献1の方法もパターン形状に制限があり、コンパクトな配線デザインが困難なことから、伸長時にも導通を取ることのできる配線を、印刷により形成するための伸縮性導電性ペーストやインクの開発が盛んに行われている。
【0007】
例えば、ガリウム-インジウム-錫からなるガリンスタンや、ガリウム-インジウムからなる液体金属を使った伸縮性配線、金属添加物として銀ナノワイヤーを混合した伸縮性配線(特許文献4)、フッ素ゴムと界面活性剤と銀フィラーを組み合わせて、アニーリング中に銀のナノ粒子を発生させる伸縮性配線(特許文献5)、適切なタップ密度と平均粒径を有する銀フレークを用いた伸縮性配線(特許文献6)、適切な粒径、粒度分布および空隙率の銀粉を用いた伸縮性配線(特許文献7)等多くの提案や出願がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3923861号
【特許文献2】特許第6657525号
【特許文献3】特開2019-076214号公報
【特許文献4】国際公開第2017/217509号
【特許文献5】国際公開第2018/110632号
【特許文献6】特開2019-110093号公報
【特許文献7】国際公開第2018/235734号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、伸縮時に於ける導電性の変化が少ない伸縮性導電配線を形成するための導電性ペースト組成物、及び該組成物を与えるポリウレタンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、ポリウレタンであって、下記一般式(1A)で示されるフェノール性水酸基を含有するものであるポリウレタンを提供する。
【化1】
(式中、Azは炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-NR-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。R、Rは炭素数1~6の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、又はフェニル基であり、Rは水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、もしくは分岐状のアルキル基である。Zは単結合又は酸素原子を示す。Xfはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のフッ素原子で置換されてよい直鎖状、分岐状もしくは環状の1価炭化水素基、炭素数1~10のフッ素原子で置換されてよいアルコキシ基、又は電子求引基を示す。環ZZはそれぞれ独立に炭素数5~20の芳香族性の単環又は多環を示す。前記環ZZの炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb及びkdは1又は2を示す。kc及びkeは0~2の整数を示し、破線は結合手を示す。)
【0011】
このようなポリウレタンであれば、伸縮時に於ける導電性の変化が少ない伸縮性導電配線を形成するための導電性ペースト組成物を与えるものとなる。
【0012】
また、本発明では、前記ポリウレタンが、下記一般式(1B)で示されるフェノール性水酸基を含有するものであることが好ましい。
【化2】
(式中、Az’は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-NR-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb、kc、kd、keは1又は2を示す。R、R、Rは前記と同じであり、破線は結合手を示す。)
【0013】
このようなポリウレタンであれば、伸縮性導電配線を形成するための導電性ペースト組成物としたときに、伸縮時に於ける導電性の変化をより少ないものとすることができる。
【0014】
また、本発明では、前記ポリウレタンが、更に下記一般式(1a)~(1c)で示される弱酸性官能基を1つ以上含むものであることが好ましい。
【化3】
(式中、Rは水素原子、フッ素原子、又は炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のフッ素化されていてもよい炭化水素基を示し、Rfはフッ素原子又は炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のフッ素化炭化水素基を示す。nは1又は2の整数であり、破線は結合手を示す。)
【0015】
このようなポリウレタンであれば、伸縮性導電配線を形成するための導電性ペースト組成物としたときに、伸縮時に於ける導電性の変化を更に少ないものとすることができる。
【0016】
また、本発明では、前記ポリウレタンが、更に下記一般式(2a)~(2c)で示される構造を1つ以上含むものであることが好ましい。
【化4】
(式中、Rは水素原子、又は炭素数1~3の1価の炭化水素基であり、Aは単結合、又は炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基を示し、構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、又は-C-に置換されていてもよく、-NR-C(=O)-であってもよい。A及びAはそれぞれ独立に、-O-、-O-C(=O)-NR-、-NR-、-C(=O)O-から選ばれるいずれかの基を示す。n、n、nは0~10の整数であり、nは0又は1の整数である。Rは前記と同じであり、破線は結合手を示す。)
【0017】
このようなポリウレタンであれば、伸縮性導電配線を形成するための導電性ペースト組成物に含まれたときに、伸縮時に於ける導電性の変化をより一層少ないものとすることができる。
【0018】
また、本発明は、上記ポリウレタンの製造方法であって、鎖延長反応後に下記一般式(1C)で示されるアルコール又はアミンを用いてポリウレタンに前記フェノール性水酸基を導入することを特徴とするポリウレタンの製造方法を提供する。
【化5】
(式中、Az”は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。Xは酸素原子又はNRを示す。kaは0~2の整数を示す。kb、kc、kd、keは1又は2を示す。R、R、Rは前記と同じである。)
【0019】
このようなポリウレタンの製造方法であれば、上記ポリウレタンを容易に合成できる。
【0020】
この時、鎖延長剤として下記一般式(3a)~(3c)で示されるアルコールを1つ以上用いてポリウレタンに弱酸性官能基を導入することが好ましい。
【化6】
(式中、Rは水素原子、又は炭素数1~3の1価の炭化水素基であり、Aは単結合、又は炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基を示し、構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、又は-C-に置換されていてもよく、-NR-C(=O)-であってもよい。Rは水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、もしくは分岐状のアルキル基である。n、n、nは0~10の整数である。)
【0021】
このようなポリウレタンの製造方法であれば、ポリウレタンに容易に弱酸性官能基を導入することができる。
【0022】
また、本発明は、(A)導電性フィラーと(B)上記ポリウレタンと(C)溶剤とを含むものであることを特徴とする導電性ペースト組成物を提供する。
【0023】
このような導電性ペースト組成物であれば、伸縮時に於ける導電性の変化が少ない伸縮性導電配線を形成することができる。
【0024】
また、本発明では、前記導電性ペースト組成物が、さらに(D)フェノール化合物を含むものであることが好ましい。
【0025】
このような導電性ペースト組成物であれば、伸縮時に於ける導電性の変化がより少ない伸縮性導電配線を形成することができる。
【0026】
更に、本発明では、前記(D)成分のフェノール化合物が下記一般式(2A)で示される構造を含むものであることが好ましい。
【化7】
(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又は水酸基を示す。Ayは炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb及びkdは1又は2を示す。kc及びkeは0~2の整数を示す。Z、Xf、ZZ、R、Rは前記と同じである。)
【0027】
このような導電性ペースト組成物であれば、伸縮時に於ける導電性の変化がより少ない伸縮性導電配線を形成することができる。
【0028】
また、本発明では、前記(D)成分のフェノール化合物が下記一般式(2B)で示される構造を含むものであることが好ましい。
【化8】
(式中、Ay’は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb、kc、kd、keは1又は2を示す。R、R、Rは前記と同じである。)
【0029】
このような導電性ペースト組成物であれば、伸縮時に於ける導電性の変化が更に少ない伸縮性導電配線を形成することができる。
【0030】
この場合、前記(A)成分の導電性フィラーが、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して70質量部を越える割合で含有されているものであることが好ましい。
【0031】
このような導電性ペースト組成物であれば、十分な導電性を有するとともに、伸縮時に於ける導電性の変化がより少ない伸縮性導電配線を形成することができる。
【0032】
また、本発明では、前記(A)成分の導電性フィラーが、金、銀、塩化銀、白金、銅、錫、鉄、マグネシウム、チタン、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロム、インジウム、はんだ、及び炭素、又はこれらの複合体から選ばれる粉末であることが好ましい。
【0033】
このような導電性ペースト組成物であれば、電気導電性を高めた伸縮性導電配線を形成することができる。
【0034】
この時、前記(A)成分の導電性フィラーが銀粉であることが特に好ましい。
【0035】
このような導電性フィラーが導電性と価格の観点から総合的に好適である。
【0036】
また、本発明では、前記(A)成分の導電性フィラーの平均粒径が5nm~10μmであることが好ましい。
【0037】
このような導電性フィラーを導電性ペースト組成物に配合することが好適である。
【0038】
また、本発明は、基材上に形成され、上記に記載の導電性ペースト組成物の焼成物からなる導電配線を提供する。
【0039】
このような導電配線であれば、伸縮時に於ける導電性の変化が少ないものとなる。
【0040】
この場合、前記基材が伸縮性を有するものであることが好ましい。
【0041】
このような基材が、本発明の導電配線に好適である。
【0042】
この時、前記基材が熱可塑性ポリウレタンであることが好ましい。
【0043】
このような基材が、本発明の導電配線により好適である。
【0044】
また、本発明の導電配線では、20%伸長時の電気抵抗が伸長前の電気抵抗の500%以下であることが好ましい。
【0045】
このような導電配線であれば、伸縮時に於ける導電性の変化が少なく体表面にフィットさせて用いることが可能となる。
【0046】
また、本発明の導電配線では、伸長率20%で1000回繰り返し伸縮した際の最大電気抵抗が、伸縮前の電気抵抗の5000%以下であることが好ましい。
【0047】
このような導電配線であれば、繰り返し伸縮における導電安定性に適したものとなる。
【0048】
また、本発明は、上記に記載の導電性ペースト組成物を用いて基材上に導電配線を形成する導電配線の製造方法であって、前記導電配線を形成する時の焼成温度を60~160℃とすることを特徴とする導電配線の製造方法を提供する。
【0049】
このような導電配線の製造方法であれば、耐熱性の低い基材に導電配線を形成することが可能となり、尚且つ伸縮時に於ける導電性の変化が少ない導電配線を確実に得ることができる。
【0050】
また、本発明では、上記の導電性ペースト組成物を印刷することによって基材上に導電配線を形成することもできる。
【0051】
印刷によって配線パターンを形成することによって配線のデザイン性、生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0052】
以上のように、本発明のポリウレタンを含む導電性ペースト組成物であれば、伸縮時における導電性の変化が少ないとともに、電気信号を効率良くデバイスに伝えることができ(即ち、導電性に優れ)、軽量であり、低コストで製造することができる導電配線を形成することができる。
また、繰り返し伸縮における導電安定性に優れることから、人間の体の動きによりひずみが生じるウェアラブルデバイスに適した導電配線を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
従来技術では、樹脂に金属フィラーを混合した導電ペーストを用いた導電配線は絶縁成分を含むことから金属配線と比較して電気抵抗が高く、また、伸長に伴う抵抗上昇や、伸縮を繰り返すことによる劣化が避けられず、場合によっては断線してしまうこともある。また、伸縮に伴う導電性変化により、デバイスの動作に影響を及ぼす可能性も懸念される。そのため、より導電性が高く、伸縮時における導電性の変化の小さい導電性材料組成物の開発が求められていた。
【0054】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、(A)導電性フィラー、(B)下記一般式(1A)で示されるフェノール性水酸基を含有するポリウレタン、(C)溶剤を含有する導電性ペースト組成物を用いることで、低抵抗かつ伸長時における導電性の低下が少なく、繰り返し伸縮における導電安定性に優れた導電配線が得られることを見出した。
特に、下記一般式(1A)で示されるフェノール性水酸基を含有するポリウレタンは、従来知られていない。
【0055】
即ち、本発明は、ポリウレタンであって、下記一般式(1A)で示されるフェノール性水酸基を含有するものであることを特徴とするポリウレタンである。
【化9】
(式中、Azは炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-NR-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。R、Rは炭素数1~6の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、又はフェニル基であり、Rは水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、もしくは分岐状のアルキル基である。Zは単結合又は酸素原子を示す。Xfはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のフッ素原子で置換されてよい直鎖状、分岐状もしくは環状の1価炭化水素基、炭素数1~10のフッ素原子で置換されてよいアルコキシ基、又は電子求引基を示す。環ZZはそれぞれ独立に炭素数5~20の芳香族性の単環又は多環を示す。前記環ZZの炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb及びkdは1又は2を示す。kc及びkeは0~2の整数を示し、破線は結合手を示す。)
【0056】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の説明中、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがあるが、その場合は一つの式でそれらの異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0057】
[ポリウレタン]
本発明のポリウレタンは、下記一般式(1A)で示されるフェノール性水酸基を含有するものである。
【化10】
(式中、Azは炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-NR-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。R、Rは炭素数1~6の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、又はフェニル基であり、Rは水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、もしくは分岐状のアルキル基である。Zは単結合又は酸素原子を示す。Xfはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のフッ素原子で置換されてよい直鎖状、分岐状もしくは環状の1価炭化水素基、炭素数1~10のフッ素原子で置換されてよいアルコキシ基、又は電子求引基を示す。環ZZはそれぞれ独立に炭素数5~20の芳香族性の単環又は多環を示す。前記環ZZの炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb及びkdは1又は2を示す。kc及びkeは0~2の整数を示し、破線は結合手を示す。)
【0058】
上記Azの炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基としては、具体的には下記のものを例示できる。
【化11】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0059】
【化12】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0060】
【化13】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0061】
Azの炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価のフッ素化炭化水素基としては、具体的には上記の炭化水素基中の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子に置換されたものを例示できる。
【0062】
前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-NR-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。
【0063】
、Rの炭素数1~6の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0064】
の炭素数1~4の直鎖状、もしくは分岐状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等を挙げることができる。
【0065】
Zは単結合又は酸素原子を示し、酸素原子が好ましい。
【0066】
Xfのハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等を挙げることができる。
【0067】
Xfの炭素数1~10のフッ素原子で置換されてよい直鎖状、分岐状もしくは環状の1価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基等のアルキル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基等を挙げることができる。
【0068】
Xfの炭素数1~10のフッ素原子で置換されてよいアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロプロポキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基等を挙げることができる。
【0069】
Xfの電子求引基の具体例としては、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ホルミル基、スルホン酸エステル基、アミド基、-O-C(=O)-G-(Gは硫黄原子又はNHである)等を挙げることができる。
【0070】
環ZZの炭素数5~20の芳香族性の単環又は多環として、具体的には下記のものを例示できる。下記のように環ZZはさらに置換基を有していてもよい。
【化14】
【0071】
kaは0~2の整数を示し、kb及びkdは1又は2を示し、kc及びkeは0~2の整数を示す。
【0072】
(1A)で示されるフェノール性水酸基を含有するポリウレタンの具体例として、下記ポリイソシアネート、高分子量ポリオール、鎖延長剤を反応することにより得られるポリウレタンが挙げられる。ポリイソシアネート、高分子量ポリオール、鎖延長剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0073】
ポリイソシアネートとしてはエチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカメチレントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアナトメチルオクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-ω、ω’-ジイソシアネート、リジンイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、2-イソシアナトプロピル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、ビス(4-イソシアネート-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-シクロヘキシルジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,5-ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2,6-ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル2-(3-イソシアナトプロピル)-5-イソシアナトメチルビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-6-イソシアナトメチルビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル3-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル3-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル2-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル2-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン等の脂肪族および脂環族ポリイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート又は2,6-トリレンジイソシアネート及びそれらの異性体混合物(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート又は2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよびそれらの異性体混合物(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、オルトキシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート、更にこれらのウレタン変性体として多量体、ビウレット変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。
【0074】
高分子量ポリオールとしては、ポリオキシプロピレングリコール類、ポリオキシエチエングリコール類、ポリオキシテトラメチレングリコール類、及びそれらの共重合体であるポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステル-アミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、末端水酸基化ポリオレフィン、シリコーンポリオール、植物油系ポリオール等が挙げられる。
【0075】
ポリオキシプロピレングリコール類及びポリオキシエチレングリコール類の具体例としてはエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、ダイマー酸ジオール、1,2-ベンゼンジオール、1,3-ベンゼンジオール、1,4-ベンゼンジオール、ヒドロキノンジ(2-ヒドロキシエチルエーテル)、ビスフェノールA、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、α-メチルグルコシド、ジグリセリン等の4価アルコールまたはソルビトール、ショ糖等の多価アルコール等の低分子量ポリオール、モノエタノールアミン、ジメタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子量アミノアルコール、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブタンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4-メチレンビス-о-クロロアニリン等の低分子量ポリアミンを開始剤としたエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドの付加重合体等が挙げられる。なお、ポリエステルポリオールの構成成分であるアルキレンオキサイドは単独または2種類以上を併用することができ、2種類以上を併用したポリオキシアルキレンポリオールとしてはブロック型、ランダム型のいずれの構造体であってもよい。
【0076】
ポリオキシテトラメチレングリコールの具体例としては結晶性のポリオキシテトラメチレングリコールや、THFに3-メチルテトラヒドロフラン等のアルキル置換テトラヒドロフランや、上述した2価アルコールを共重合させた非晶性ポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0077】
ポリエステルポリオールとしては、上述の低分子量ポリオールとシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,1-ジメチル-1,3-ジカルボキシプロパン、3-メチル-3-エチルグルタル酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、α-ハイドロムコン酸、β-ハイドロムコン酸、フタル酸、オルソフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ヘット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等の多価カルボン酸、およびそれらの誘導体、酸無水物、酸ハライドとの重合縮合体、上述の低分子量ポリオールを開始剤としたβ-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等のラクトンまたはL-ラクチド、D-ラクチド等のラクチドの開環重合体が挙げられる。なお、ポリエステルポリオールの構成成分である低分子量ポリオール、多価カルボン酸、オリゴマー酸、ラクトン、又はラクチドはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0078】
ポリエステル-アミドポリオールとしてはポリエステルポリオールの低分子量ポリオールの一部を上述の低分子量ポリアミンや、アミノアルコールに代えて得られる重合縮合体が挙げられる。
【0079】
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、上述の低分子量ポリオールとジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のカーボネート化合物との重縮合体が挙げられる。なお、ポリカーボネートポリオールの構成成分である低分子量ポリオール又はカーボネート化合物はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0080】
アクリルポリオールの具体例としては2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピルアクリレート、2,2-ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有ビニルモノマー、または、そのアルキルエステル、3-(2-イソシアネート-2-プロピル)-α-メチルスチレンなどのイソシアネート基を含むモノマー、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロメチルトリフルオロエチレンなどのフッ素を含むビニルモノマー、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシリコーンモノマー等のビニルモノマーを共重合することで得られる共重合体が挙げられる。なお、アクリルポリオールの構成成分である(メタ)アクリレート又はビニルモノマーはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。
【0081】
末端水酸基化ポリオレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、ビニルエーテル、酢酸ビニル及びそれら構造の一部がフッ素、塩素、臭素などのハロゲンで置換されたオレフィンの1種又は2種以上を重合した重合体の末端を水酸基化した化合物が挙げられる。
【0082】
シリコーンポリオールの具体例としては、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を重合したビニル基含有シリコーン化合物、および分子中に少なくとも1個の末端水酸基を有する、α,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω-ジヒドロキシポリジフェニルシロキサン等のポリシロキサンが挙げられる。
【0083】
植物油系ポリオールの具体例としては、ヒマシ油、ヤシ油などのヒドロキシル基含有植物油等、ヒマシ油脂肪酸とポリオールとの反応により得られるエステル変性ヒマシ油ポリオール、脱水ヒマシ油、部分脱水ヒマシ油、水添ヒマシ油等が挙げられる。
【0084】
鎖延長剤としてはエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、ダイマー酸ジオール、1,2-ベンゼンジオール、1,3-ベンゼンジオール、1,4-ベンゼンジオール、ヒドロキノンジ(2-ヒドロキシエチルエーテル)、ビスフェノールA、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等の2価アルコール、エタノールアミン、ジメタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブタンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4-メチレンビス-о-クロロアニリン等のアミン類等が用いられる。
更に弱酸性官能基を含有する下記鎖延長剤が挙げられる。
【0085】
【化15】
(式中、R、R4、R7、R8は前記と同じである。)
【0086】
【化16】
【0087】
【化17】
(式中、Rは前記と同じである。)
【0088】
更にフェノールを含有する下記鎖延長剤が挙げられる。
【化18】
【0089】
(1A)で示されるフェノール性水酸基を含有するポリウレタンの具体例として、上記ポリイソシアネート、高分子量ポリオール、鎖延長剤を反応することにより得られるポリウレタンが挙げられる。
【0090】
更に前述のポリイソシアネート、高分子量ポリオール、鎖延長剤に加えて下記キャップ剤を反応させることにより得られるポリウレタンが挙げられる。
【0091】
【化19】
(式中、Xは酸素原子またはNRを示し、Rは前記と同じである。)
【0092】
【化20】
(式中、Xは酸素原子またはNRを示し、Rは前記と同じである。)
【0093】
上記の例として下記のようなポリウレタンが挙げられる。
【化21】
(式中、laは7~30、lbは2~30、lcは3~30、ldは1~5、leは2~20の整数である。)
【0094】
上記一般式(1A)で示されるフェノール性水酸基を含有するポリウレタンとしては、特に下記一般式(1B)で示されるフェノール性水酸基を含むものであることが好ましい。
【化22】
(式中、Az’は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-NR-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb、kc、kd、keは1又は2を示す。R、R、Rは前記と同じであり、破線は結合手を示す。)
【0095】
Az’は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-NR-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。
【0096】
kaは0~2の整数を示し、kb、kc、kd、keは1又は2を示す。
【0097】
上記一般式(1A)および(1B)で示される部分構造として、具体的には下記のものを例示できる。
【化23】
(式中、Xは酸素原子またはNRを示し、破線は結合手を示す。Rは前記と同じである。)
【0098】
【化24】
(式中、Xは酸素原子またはNRを示し、破線は結合手を示す。Rは前記と同じである。)
【0099】
【化25】
(式中、Xは酸素原子またはNRを示し、破線は結合手を示す。Rは前記と同じである。)
【0100】
【化26】
(式中、Xは酸素原子またはNRを示し、破線は結合手を示す。Rは前記と同じである。)
【0101】
【化27】
(式中、Xは酸素原子またはNRを示し、破線は結合手を示す。Rは前記と同じである。)
【0102】
【化28】
(式中、Xは酸素原子またはNRを示し、破線は結合手を示す。Rは前記と同じである。)
【0103】
また、本発明では、前述のポリウレタンが更に下記一般式(1a)~(1c)で示される弱酸性官能基を1つ以上含むものであることが好ましい。
【化29】
(式中、Rは水素原子、フッ素原子、又は炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のフッ素化されていてもよい炭化水素基を示し、Rfはフッ素原子又は炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のフッ素化炭化水素基を示す。nは1又は2の整数であり、破線は結合手を示す。)
【0104】
Rは水素原子、フッ素原子、又は炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のフッ素化されていてもよい炭化水素基を示し、その具体例としては水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基等を挙げることができる。
【0105】
Rfはフッ素原子又は炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のフッ素化炭化水素基を示し、その具体例としては、フッ素原子、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基等が好ましい。
【0106】
nは1又は2の整数である。
【0107】
弱酸性官能基(1a)の具体例としては下記に示されるフルオロアルコール含有基が挙げられる。
【0108】
【化30】
(式中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基を示し、RとRは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3~8の非芳香環を形成していても良い。破線部は結合手を示す。)
【0109】
弱酸性官能基(1b)の具体例としては下記に示される環状のフルオロアルコール含有基が挙げられる。
【0110】
【化31】
(式中、Rは水素原子または炭素数1~3の1価の炭化水素基である。破線部は結合手を示す。)
【0111】
弱酸性官能基(1c)の具体例としては下記に示されるスルホンアミド含有基が挙げられる。
【0112】
【化32】
【0113】
本発明のポリウレタンは、更に下記一般式(2a)~(2c)で示される構造を1つ以上含むものであることがさらに好ましい。
【化33】
(式中、Rは水素原子、又は炭素数1~3の1価の炭化水素基であり、Aは単結合、又は炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基を示し、構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、又は-C-に置換されていてもよく、-NR-C(=O)-であってもよい。A及びAはそれぞれ独立に、-O-、-O-C(=O)-NR-、-NR-、-C(=O)O-から選ばれるいずれかの基を示す。n、n、nは0~10の整数であり、nは0又は1の整数である。Rは前記と同じであり、破線は結合手を示す。)
【0114】
は水素原子、又は炭素数1~3の1価の炭化水素基であり、水素原子、メチル基、またはエチル基が好ましい。
【0115】
[ポリウレタンの製造方法]
上記ポリウレタンは、例えば、ワンショット法やプレポリマー法などの公知の方法により、ポリイソシアネートとポリオール、ポリアミン又はポリカルボン酸等を反応させることで得られ、好ましくはプレポリマー法が用いられる。
【0116】
プレポリマー法では、(a)ジイソシアネートと高分子量ポリオールをイソシアネート基過剰で反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応混合物を得る工程、(b)前記プレポリマーに低分子量のジオール、ジアミン又はジカルボン酸(鎖延長剤)を反応させることでプレポリマーを高分子量化させる工程によりポリウレタンを合成する。更に、反応基数3以上のポリイソシアネート、または反応基数3以上のポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸を加えることで架橋構造を有するポリウレタンを得ることもできる。
【0117】
また、上記(b)の重合をイソシアネート基過剰で行った後、イソシアネート基と反応し得る反応性基(水酸基、アミノ基、カルボキシル基等)を有するキャップ剤を加えることで、ウレタン末端にキャップ剤由来の官能基を導入することもできる。
【0118】
本発明のフェノール性水酸基を含有するポリウレタンは、上記(a)及び(b)の反応において、高分子量ポリオール、鎖延長剤、キャップ剤の少なくとも一つの全量又は一部をフェノール性水酸基を含有する化合物に置換することで合成することができるが、鎖延長反応後にキャップ剤としてフェノール性水酸基を導入する方法、即ち、鎖延長反応後に下記一般式(1C)で示されるアルコール又はアミンを用いてポリウレタンに前記フェノール性水酸基を導入する方法がより好ましい。
【化34】
(式中、Az”は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。Xは酸素原子又はNRを示す。kaは0~2の整数を示す。kb、kc、kd、keは1又は2を示す。R、R、Rは前記と同じである。)
【0119】
Az”は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。
【0120】
Xは酸素原子又はNRを示す。
【0121】
kaは0~2の整数を示し、kb、kc、kd、keは1又は2を示す。
【0122】
、R、Rは前記と同じである。
【0123】
なお、フェノール性水酸基はイソシアネートと反応し得るため高分子量ポリオールまたは鎖延長剤にフェノール性水酸基を導入する場合は適切な保護基で保護した状態でポリウレタン化を行い、その後脱保護することが好ましい。
【0124】
更に(a)及び(b)の反応において、高分子量ポリオール、鎖延長剤、キャップ剤の少なくとも一つの全量又は一部を弱酸性官能基を含有する化合物に置換することでフェノール性水酸基と弱酸性官能基を含有するポリウレタンを合成することができる。
【0125】
[ポリイソシアネート]
ポリウレタンの構成成分であるポリイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカメチレントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアナトメチルオクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-ω、ω’-ジイソシアネート、リジンイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、2-イソシアナトプロピル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、ビス(4-イソシアネート-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-シクロヘキシルジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,5-ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2,6-ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル2-(3-イソシアナトプロピル)-5-イソシアナトメチルビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-6-イソシアナトメチルビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル3-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル3-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル2-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル2-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン等の脂肪族および脂環族ポリイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート又は2,6-トリレンジイソシアネート及びそれらの異性体混合物(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート又は2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよびそれらの異性体混合物(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、オルトキシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート、更にこれらのウレタン変性体として多量体、ビウレット変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。
【0126】
上記ポリイソシアネートは単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0127】
[高分子量ポリオール]
ポリウレタンの構成成分である高分子量ポリオールとして、イソシアネート基と反応し得るヒドロキシル基を2つ以上有し、数平均分子量500~5,000のポリオールを用いることができる。例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、末端水酸基化ポリオレフィン、シリコーンポリオール、植物油系ポリオール等が挙げられる。
【0128】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシプロピレングリコール類、ポリオキシエチエングリコール類、ポリオキシテトラメチレングリコール類、及びそれらの共重合体等が例示される。
【0129】
ポリオキシプロピレングリコール類及びポリオキシエチレングリコール類は低分子量ポリオールやポリアミン、アミノアルコール類を開始剤としたアルキレンオキサイドの付加重合体であり、低分子量ポリオールとしてはエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、ダイマー酸ジオール、1,2-ベンゼンジオール、1,3-ベンゼンジオール、1,4-ベンゼンジオール、ヒドロキノンジ(2-ヒドロキシエチルエーテル)、ビスフェノールA、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、α-メチルグルコシド、ジグリセリン等の4価アルコールまたはソルビトール、ショ糖等の多価アルコールが挙げられる。低分子量アミノアルコールとしてはモノエタノールアミン、ジメタノールアミン、トリエタノールアミンが挙げられ、低分子量ポリアミンとしてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブタンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4-メチレンビス-о-クロロアニリン等が挙げられる。開始剤は単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0130】
更に、上述したフェノール性水酸基または弱酸性官能基を含む低分子量ポリオールを用いることで、フェノール性水酸基または弱酸性官能基を含有するポリエーテルポリオールを得ることもできる。なお、フェノール性水酸基および弱酸性官能基は保護した状態で重合を行い、その後脱保護することが好ましい。
【0131】
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられ、単独または2種類以上を併用することができる。2種類以上を併用したポリオキシアルキレンポリオールとしてはブロック型、ランダム型のいずれの構造体を用いても良い。
【0132】
ポリオキシテトラメチレングリコールはテトラヒドロフラン(THF)のカチオン重合によって得られる開環重合物であり、結晶性のポリオキシテトラメチレングリコールや、THFに3-メチルテトラヒドロフラン等のアルキル置換テトラヒドロフランや、上述した2価アルコールを共重合させた非晶性ポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0133】
ポリエステルポリオールとしては、上述の低分子量ポリオールと多価カルボン酸、オリゴマー酸との重合縮合体、又は低分子量ポリオールを開始剤としたラクトンまたはラクチドの開環重合体が例示される。
【0134】
多価カルボン酸としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,1-ジメチル-1,3-ジカルボキシプロパン、3-メチル-3-エチルグルタル酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、α-ハイドロムコン酸、β-ハイドロムコン酸、フタル酸、オルソフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ヘット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸が挙げられ、それらの誘導体、酸無水物、酸ハライドなどを用いることもできる。
【0135】
ラクトンとしてはβ-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられ、ラクチドとしてはL-ラクチド、D-ラクチドが挙げられる。
【0136】
ポリエステルポリオールの構成成分である低分子量ポリオール、多価カルボン酸、オリゴマー酸、ラクトン、又はラクチドはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0137】
更に、ポリエステルポリオールの低分子量ポリオールの一部を上述の低分子量ポリアミンや、アミノアルコールに代えて得られるポリエステル-アミドポリオールを使用することもできる。
【0138】
ポリカーボネートポリオールとしては、上述のポリオールとカーボネート化合物との重縮合体が例示される。
【0139】
カーボネート化合物としてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等が挙げられる。
【0140】
ポリカーボネートポリオールの構成成分である低分子量ポリオール又はカーボネート化合物はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0141】
アクリルポリオールとしては、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとビニルモノマーを共重合することで得られる共重合体が例示される。
【0142】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピルアクリレート、2,2-ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。上述のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートは単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0143】
ビニルモノマーとしてはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有ビニルモノマー、または、そのアルキルエステル、3-(2-イソシアネート-2-プロピル)-α-メチルスチレンなどのイソシアネート基を含むビニルモノマー、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロメチルトリフルオロエチレンなどのフッ素を含むビニルモノマー、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシリコーンモノマー等が挙げられる。上述のビニルモノマーは単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0144】
末端水酸基化ポリオレフィンとしては、1種又は2種以上のオレフィン重合体の末端を水酸基化した化合物が挙げられる。オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、ビニルエーテル、酢酸ビニルが例示され、更に上記構造の一部がフッ素、塩素、臭素などのハロゲンで置換されていても良い。
【0145】
シリコーンポリオールとしては、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を重合したビニル基含有シリコーン化合物、および分子中に少なくとも1個の末端水酸基を有する、α,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω-ジヒドロキシポリジフェニルシロキサン等のポリシロキサンが挙げられる。
【0146】
植物油系ポリオールとしては、ヒマシ油、ヤシ油などのヒドロキシル基含有植物油等、ヒマシ油脂肪酸とポリオールとの反応により得られるエステル変性ヒマシ油ポリオール、脱水ヒマシ油、部分脱水ヒマシ油、水添ヒマシ油等が挙げられる。
【0147】
高分子量ポリオールの数平均分子量は500以上、5,000以下の範囲が好ましく、1,000以上、3,000以下であることがより好ましく、1,000以上、2,000以下が更に好ましい。
【0148】
高分子量ポリオールの数平均分子量が下限以上であることにより、ポリウレタン中のウレタン基濃度の過度な上昇とそれに伴う硬度上昇、伸縮性低下等の性能低下を抑制することができる。また、数平均分子量が上限以下であることにより、ウレタン基濃度の過度な低下を抑制し、ウレタン結合に由来する強度の低下を防ぎ、適度な強度と伸縮性を両立することができる。
【0149】
高分子量ポリオールは二官能性ポリオール又は三官能性ポリオールであることが好ましく、より好ましくは二官能性ポリオールである。
【0150】
[鎖延長剤]
鎖延長剤としてはエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、ダイマー酸ジオール、1,2-ベンゼンジオール、1,3-ベンゼンジオール、1,4-ベンゼンジオール、ヒドロキノンジ(2-ヒドロキシエチルエーテル)、ビスフェノールA、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等の2価アルコール、エタノールアミン、ジメタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブタンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4-メチレンビス-о-クロロアニリン等のアミン類等が用いられる。
【0151】
更に、鎖延長剤として下記一般式(3a)~(3c)で示されるアルコールを1つ以上用いてポリウレタンに弱酸性官能基を導入することができる。鎖延長剤は(3a)~(3c)に記載のポリオールを単独で用いても良いし、前述の鎖延長剤と組み合わせて用いても良い。
【化35】
(式中、Rは水素原子、又は炭素数1~3の1価の炭化水素基であり、Aは単結合、又は炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基を示し、構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、又は-C-に置換されていてもよく、-NR-C(=O)-であってもよい。Rは水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、もしくは分岐状のアルキル基である。n、n、nは0~10の整数である。)
【0152】
このような鎖延長剤を用いることで、上述の一般式(2a)~(2c)で示される構造を含むポリウレタンを得ることができる。
【0153】
は水素原子、又は炭素数1~3の1価の炭化水素基であり、水素原子、メチル基、またはエチル基が好ましい。
【0154】
は単結合、又は炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基を示し、構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、又は-C-に置換されていてもよく、-NR-C(=O)-であってもよい。上記Aの炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基は、具体的には下記の例が挙げられる。
【化36】
【0155】
更に上記Aの-CH-のいずれかが-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C-または-NR-C(=O)-に置換されたものを例示できる。Rは水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、もしくは分岐状のアルキル基であり、n、n、nは0~10の整数である。
【0156】
上記一般式(3a)~(3c)で表されるポリオールの具体例として下記のものが例示されるが、これらに限定はされない。
【化37】
(式中、R、R、R、Rは前記と同じである。)
【0157】
【化38】
【0158】
【化39】
(式中、Rは前記と同じである。)
【0159】
前記弱酸性官能基を有する鎖延長剤はウレタンの構成成分の総量に対して5~50質量%用いることが好ましく、より好ましくは20~40質量%である。
【0160】
[架橋剤]
架橋剤としてはグリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、α-メチルグルコシド、ジグリセリン等の多価アルコールが用いられる。
【0161】
架橋剤の添加量としては、ウレタンの構成成分の総量に対して0~5質量%の範囲内であることが好ましく、0~3質量%であることがより好ましい。
【0162】
架橋剤の添加量が上限以下であれば過度に強度が上昇せず、柔軟性、伸縮性が損なわれることがないため、本発明のポリウレタンを含む導電性ペースト組成物への使用に適するものとなる。
【0163】
[有機溶剤]
ポリウレタンはバルク重合または、溶液重合によって合成される。溶液重合に用いられる有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、クメン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、スチレン、αメチルスチレン、ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼン、2-エチル-p-キシレン、2-プロピルトルエン、3-プロピルトルエン、4-プロピルトルエン、1,2,3,5-テトラメチルトルエン、1,2,4,5-テトラメチルトルエン、テトラヒドロナフタレン、4-フェニル-1-ブテン、tert-アミルベンゼン、アミルベンゼン、2-tert-ブチルトルエン、3-tert-ブチルトルエン、4-tert-ブチルトルエン、5-イソプロピル-m-キシレン、3-メチルエチルベンゼン、tert-ブチル-3-エチルベンゼン、4-tert-ブチル-o-キシレン、5-tert-ブチル-m-キシレン、tert-ブチル-p-キシレン、1,2-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジプロピルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、1,3,5-トリエチルベンゼン等の芳香族系炭化水素系溶剤、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-ヘキサン、オクタン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、1,6-ヘプタジエン、5-メチル-1-ヘキシン、ノルボルナン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1-メチル-1,4-シクロヘキサジエン、1-ヘプチン、2-ヘプチン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、1,3-ジメチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、1-メチル-1-シクロヘキセン、3-メチル-1-シクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、4-メチル-1-シクロヘキセン、2-メチル-1-ヘキセン、2-メチル-2-ヘキセン、1-ヘプテン、2-ヘプテン、3-ヘプテン、n-オクタン、2,2-ジメチルヘキサン、2,3-ジメチルヘキサン、2,4-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,3-ジメチルヘキサン、3,4-ジメチルヘキサン、3-エチル-2-メチルペンタン、3-エチル-3-メチルペンタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、シクロオクタン、シクロオクテン、1,2-ジメチルシクロヘキサン、1,3-ジメチルシクロヘキサン、1,4-ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、イソプロピルシクロペンタン、2,2-ジメチル-3-ヘキセン、2,4-ジメチル-1-ヘキセン、2,5-ジメチル-1-ヘキセン、2,5-ジメチル-2-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、2-エチル-1-ヘキセン、2-メチル-1-ヘプテン、1-オクテン、2-オクテン、3-オクテン、4-オクテン、1,7-オクタジエン、1-オクチン、2-オクチン、3-オクチン、4-オクチン、n-ノナン、2,3-ジメチルヘプタン、2,4-ジメチルヘプタン、2,5-ジメチルヘプタン、3,3-ジメチルヘプタン、3,4-ジメチルヘプタン、3,5-ジメチルヘプタン、4-エチルヘプタン、2-メチルオクタン、3-メチルオクタン、4-メチルオクタン、2,2,4,4-テトラメチルペンタン、2,2,4-トリメチルヘキサン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,2-ジメチル-3-ヘプテン、2,3-ジメチル-3-ヘプテン、2,4-ジメチル-1-ヘプテン、2,6-ジメチル-1-ヘプテン、2,6-ジメチル-3-ヘプテン、3,5-ジメチル-3-ヘプテン、2,4,4-トリメチル-1-ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、1-エチル-2-メチルシクロヘキサン、1-エチル-3-メチルシクロヘキサン、1-エチル-4-メチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,1,3-トリメチルシクロヘキサン、1,1,4-トリメチルシクロヘキサン、1,2,3-トリメチルシクロヘキサン、1,2,4-トリメチルシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルシクロヘキサン、アリルシクロヘキサン、ヒドリンダン、1,8-ノナジエン、1-ノニン、2-ノニン、3-ノニン、4-ノニン、1-ノネン、2-ノネン、3-ノネン、4-ノネン、n-デカン、3,3-ジメチルオクタン、3,5-ジメチルオクタン、4,4-ジメチルオクタン、3-エチル-3-メチルヘプタン、2-メチルノナン、3-メチルノナン、4-メチルノナン、tert-ブチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、4-イソプロピル-1-メチルシクロヘキサン、ペンチルシクロペンタン、1,1,3,5-テトラメチルシクロヘキサン、シクロドデカン、1-デセン、2-デセン、3-デセン、4-デセン、5-デセン、1,9-デカジエン、デカヒドロナフタレン、1-デシン、2-デシン、3-デシン、4-デシン、5-デシン、1,5,9-デカトリエン、2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン、リモネン、ミルセン、1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエン、α-フェランドレン、ピネン、テルピネン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、5,6-ジヒドロジシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、1,4-デカジイン、1,5-デカジイン、1,9-デカジイン、2,8-デカジイン、4,6-デカジイン、n-ウンデカン、アミルシクロヘキサン、1-ウンデセン、1,10-ウンデカジエン、1-ウンデシン、3-ウンデシン、5-ウンデシン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-4-エン、n-ドデカン、2-メチルウンデカン、3-メチルウンデカン、4-メチルウンデカン、5-メチルウンデカン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、1,3-ジメチルアダマンタン、1-エチルアダマンタン、1,5,9-シクロドデカトリエン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アセトン、メチルエチルケトン、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチルn-ペンチルケトン等のケトン系溶剤、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-secブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、アミルエーテル、イソアミルエーテル、ジ-tert-アミルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、ジ-n-ヘキシルエーテル、アニソール、ジヒドロターピニルアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-tert-ブチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、プロピオン酸tert-ブチル、3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート等のエステル系溶剤、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、アセトニトリルなどのニトリル系溶剤、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン等のハロゲン系溶剤、N-メチルピロリドン、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミドなどの極性非プロトン溶剤などを挙げることができる。
【0164】
なお、有機溶剤の添加量は、ポリウレタン構成成分(ポリイソシアネート、高分子量ポリオール、鎖延長剤、架橋剤)の総量100質量部に対して20質量部以上、500質量以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは25質量部以上、100質量部以下である。
【0165】
有機溶剤は重合反応後に減圧留去又は晶析等により除去しても良いし、除去せずにポリウレタン溶液のまま導電性ペースト組成物へ適用しても良い。
【0166】
[触媒]
ポリウレタン合成においてはウレタン結合生成反応を促進するために、必要に応じて触媒を添加することが好ましい。
【0167】
ウレタン化触媒としては公知の触媒から適宜選択して用いることができ、アミン系触媒、アンモニウム塩系触媒、カリウム塩系触媒、有機金属触媒等が挙げられる。
【0168】
アミン系触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、2-メチルトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチル-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N-ジメチルヘキサノールアミン、N,N-ジメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N-ジメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ジメチルアミノプロピルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾール、1-(2-ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシプロピル)-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0169】
アンモニウム塩系触媒としては、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウム等の4級アンモニウム塩や、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7又は1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5と、オクチル酸、オレイン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、フェノール酸、オルソフタル酸、酢酸、マレイン酸又はホウ酸とからなるアンモニウム塩等が挙げられる。
【0170】
カリウム塩系触媒としては、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム等が挙げられる。
【0171】
有機金属触媒としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫(2-エチルヘキサン酸スズ)、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫化合物、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、オクテン酸銅などの有機銅化合物、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられる。
【0172】
本発明のポリウレタンは弱酸性官能基を含むことから塩基性の触媒の活性を阻害する可能性があるため、有機金属触媒を用いることが好ましく、より好ましくは有機ビスマス化合物が挙げられる。
【0173】
これらのウレタン化触媒は、単独、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ウレタン化触媒の使用量はポリウレタン構成成分の総量100質量部に対して0質量部以上、5質量部以下の範囲であることが好ましく、0.1質量部以上、2質量部以下の範囲で用いられることがより好ましい。
【0174】
[キャップ剤]
本態様にかかるポリウレタンは、イソシアネート基過剰で重合を行った後に末端キャップ剤を添加することでポリウレタン末端にキャップ剤由来の官能基を導入することができる。
例えば、ポリウレタン末端のキャップ剤として下記のヒドロキシ(メタ)アクリレートを使用することでウレタンアクリレートを合成することができる。
【化40】
(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Etはエチル基であり、Phはフェニル基である。Rは前記と同じである。)
【0175】
は水素原子又はメチル基である。
【0176】
ウレタンアクリレートは必要に応じて反応性モノマーと重合開始剤と共に熱又は紫外線、可視光、レーザー光、電子線、X線、γ線、プラズマ、マイクロウェーブなどの活性エネルギー線を照射することにより、重合・硬化させて硬化物とすることができる。
【0177】
前記反応性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のアリーロキシアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、フェニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレートなどのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート化合物、又は、これらのエチレンオキシ変性品やプロピレンオキシ変性品、ラクトン変性品が使用できる。これらは単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0178】
前記重合開始剤として、例えば、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン-n-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインジメチルケタール、チオキサントン、p-イソプロピル-α-ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノンなどが挙げられるが、好ましくは1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドが使用される。これらは単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0179】
また、鎖延長反応後に下記一般式(1C)で示されるアルコール又はアミンを用いてポリウレタンに前記フェノール性水酸基を導入することもできる。
【化41】
(式中、Az”は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。Xは酸素原子又はNRを示す。kaは0~2の整数を示す。kb、kc、kd、keは1又は2を示す。R、R、Rは前記と同じである。)
【0180】
Az”は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。
【0181】
Xは酸素原子又はNRを示す。
【0182】
kaは0~2の整数を示し、kb、kc、kd、keは1又は2を示す。
【0183】
、R、Rは前記と同じである。
【0184】
上記Az”の炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基は、具体的に下記の例が挙げられる。
【化42】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0185】
【化43】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0186】
【化44】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0187】
上記一般式(1C)で表されるアルコールの具体例として下記のものが例示されるが、これらに限定はされない。
【化45】
(式中、Xは酸素原子またはNRを示し、Rは前記と同じである。)
【0188】
【化46】
(式中、Xは酸素原子またはNRを示し、Rは前記と同じである。)
【0189】
【化47】
(式中、Xは酸素原子またはNRを示し、Rは前記と同じである。)
【0190】
前記フェノール性水酸基を有するキャップ剤はウレタンの構成成分の総量に対して1~20質量%用いることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
【0191】
ポリウレタン合成時の反応温度は反応基質の種類によって適宜変更されるが、通常は30~200℃が好ましく、40~120℃がより好ましい。
【0192】
ポリウレタンの重量平均分子量は10,000~500,000が好ましく、15,000~200,000がより好ましい。更に好ましくは20,000~150,000である。重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によりポリスチレン換算値として測定したものである。
【0193】
本態様にかかるポリウレタンは、さらに必要に応じて、添加剤として、酸化防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤等を含んでいてもよい。
【0194】
<導電性ペースト組成物>
本発明の導電性ペースト組成物は、(A)導電性フィラーと(B)本発明のフェノール性水酸基を含有するポリウレタンと(C)溶剤とを含むものであり、さらに(D)フェノール化合物を含むものであることが好ましい。以下、各成分について、更に詳細に説明する。
【0195】
[(A)導電性フィラー]
電気導電性を高めるための(A)成分として、金、銀、白金、銅、錫、鉄、マグネシウム、チタン、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロム、インジウム、はんだ、及びこれらの銀メッキ粉等の金属粒子もしくは合金粒子、または炭素、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、塩化銀、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウムスズなどの粉末などが挙げられる。
【0196】
導電性の観点では金、銀、白金が好ましく、価格の観点では銀、銅、錫、鉄、チタン、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロム、ステンレスが好ましく、総合的には銀(銀粉)が最も好ましい。
【0197】
導電性フィラーの粒子の形状としては、球状、粒状、角状、樹枝状、フレーク状、針状、不定形等が挙げられ、複数の種類のフィラーを組み合わせて用いることもできる。
【0198】
導電性フィラーの平均粒径は特に限定されないが、5nm~10μmであることが好ましい。
【0199】
平均粒径の測定方法は特に限定されないが、例えばレーザー回折式粒度分布装置を用いて測定することができる。
【0200】
導電性フィラーの添加量は、(A)導電性フィラーと(B)フェノール性水酸基を含有するポリウレタンの合計100質量部に対して70質量部を越える割合で含有されているものとすることが好ましく、より好ましくは80質量部以上90質量部以下である。
【0201】
[(B)フェノール性水酸基を含有するポリウレタン]
フェノール性水酸基を含有するポリウレタンとしては上述のものが挙げられる。
【0202】
フェノール性水酸基を含有するポリウレタンは一種類を単独で用いても良いし、複数種類を混合して用いても良い。更にフェノール性水酸基を含有するポリウレタンの一部をフェノール性水酸基を含有しないポリウレタンに置換しても良い。
【0203】
フェノール性水酸基を含有しないポリウレタンの含有量はフェノール性水酸基を含有するポリウレタンとフェノール性水酸基を含有しないポリウレタンの総量に対して0~30質量%が好ましい。
【0204】
前記フェノール性水酸基を含有するポリウレタンは、更に上述の弱酸性官能基を含むことが好ましい。
【0205】
導電性フィラーが金属粒子もしくは合金粒子、特には銀粉である場合、本発明の導電性ペースト組成物はポリウレタン中のフェノール性水酸基または弱酸性官能基と銀粉末の酸化被膜により銀塩が形成され、その銀塩が熱により還元されることで銀ナノ粒子を生成しているものと推測される。この際、強い酸性度を示す官能基の場合形成される銀塩が安定となるため、熱による還元が進行しにくく、弱い酸の場合は銀塩を形成しにくいため、銀ナノ粒子が生成しにくくなると考えられる。そのため、適度な酸性度を有する官能基を含有するポリウレタンを用いることで、比較的低温での焼成であっても銀塩形成と銀塩の還元が可能となり、銀ナノ粒子が生成しやすくなるものと思われる。
【0206】
[(C)溶剤]
(C)成分は溶剤である。(C)成分を含むことで、導電性ペースト組成物の粘度が好適なものとなり、作業性が向上する。
【0207】
(C)成分の溶剤としては、具体的には、トルエン、キシレン、クメン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、スチレン、αメチルスチレン、ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼン、2-エチル-p-キシレン、2-プロピルトルエン、3-プロピルトルエン、4-プロピルトルエン、1,2,3,5-テトラメチルトルエン、1,2,4,5-テトラメチルトルエン、テトラヒドロナフタレン、4-フェニル-1-ブテン、tert-アミルベンゼン、アミルベンゼン、2-tert-ブチルトルエン、3-tert-ブチルトルエン、4-tert-ブチルトルエン、5-イソプロピル-m-キシレン、3-メチルエチルベンゼン、tert-ブチル-3-エチルベンゼン、4-tert-ブチル-o-キシレン、5-tert-ブチル-m-キシレン、tert-ブチル-p-キシレン、1,2-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジプロピルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、1,3,5-トリエチルベンゼン等の芳香族系炭化水素系溶剤、n-ヘプタン、イソヘプタン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、1,6-ヘプタジエン、5-メチル-1-ヘキシン、ノルボルナン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1-メチル-1,4-シクロヘキサジエン、1-ヘプチン、2-ヘプチン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、1,3-ジメチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1-メチル-1-シクロヘキセン、3-メチル-1-シクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、4-メチル-1-シクロヘキセン、2-メチル-1-ヘキセン、2-メチル-2-ヘキセン、1-ヘプテン、2-ヘプテン、3-ヘプテン、n-オクタン、2,2-ジメチルヘキサン、2,3-ジメチルヘキサン、2,4-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,3-ジメチルヘキサン、3,4-ジメチルヘキサン、3-エチル-2-メチルペンタン、3-エチル-3-メチルペンタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、シクロオクタン、シクロオクテン、1,2-ジメチルシクロヘキサン、1,3-ジメチルシクロヘキサン、1,4-ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、イソプロピルシクロペンタン、2,2-ジメチル-3-ヘキセン、2,4-ジメチル-1-ヘキセン、2,5-ジメチル-1-ヘキセン、2,5-ジメチル-2-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、2-エチル-1-ヘキセン、2-メチル-1-ヘプテン、1-オクテン、2-オクテン、3-オクテン、4-オクテン、1,7-オクタジエン、1-オクチン、2-オクチン、3-オクチン、4-オクチン、n-ノナン、2,3-ジメチルヘプタン、2,4-ジメチルヘプタン、2,5-ジメチルヘプタン、3,3-ジメチルヘプタン、3,4-ジメチルヘプタン、3,5-ジメチルヘプタン、4-エチルヘプタン、2-メチルオクタン、3-メチルオクタン、4-メチルオクタン、2,2,4,4-テトラメチルペンタン、2,2,4-トリメチルヘキサン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,2-ジメチル-3-ヘプテン、2,3-ジメチル-3-ヘプテン、2,4-ジメチル-1-ヘプテン、2,6-ジメチル-1-ヘプテン、2,6-ジメチル-3-ヘプテン、3,5-ジメチル-3-ヘプテン、2,4,4-トリメチル-1-ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、1-エチル-2-メチルシクロヘキサン、1-エチル-3-メチルシクロヘキサン、1-エチル-4-メチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,1,3-トリメチルシクロヘキサン、1,1,4-トリメチルシクロヘキサン、1,2,3-トリメチルシクロヘキサン、1,2,4-トリメチルシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルシクロヘキサン、アリルシクロヘキサン、ヒドリンダン、1,8-ノナジエン、1-ノニン、2-ノニン、3-ノニン、4-ノニン、1-ノネン、2-ノネン、3-ノネン、4―ノネン、n-デカン、3,3-ジメチルオクタン、3,5-ジメチルオクタン、4,4-ジメチルオクタン、3-エチル-3-メチルヘプタン、2-メチルノナン、3-メチルノナン、4-メチルノナン、tert-ブチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、4-イソプロピル-1-メチルシクロヘキサン、ペンチルシクロペンタン、1,1,3,5-テトラメチルシクロヘキサン、シクロドデカン、1-デセン、2-デセン、3-デセン、4-デセン、5-デセン、1,9-デカジエン、デカヒドロナフタレン、1-デシン、2-デシン、3-デシン、4-デシン、5-デシン、1,5,9-デカトリエン、2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン、リモネン、ミルセン、1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエン、α-フェランドレン、ピネン、テルピネン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、5,6-ジヒドロジシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、1,4-デカジイン、1,5-デカジイン、1,9-デカジイン、2,8-デカジイン、4,6-デカジイン、n-ウンデカン、アミルシクロヘキサン、1-ウンデセン、1,10-ウンデカジエン、1-ウンデシン、3-ウンデシン、5-ウンデシン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-4-エン、n-ドデカン、2-メチルウンデカン、3-メチルウンデカン、4-メチルウンデカン、5-メチルウンデカン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、1,3-ジメチルアダマンタン、1-エチルアダマンタン、1,5,9-シクロドデカトリエン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチルn-ペンチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン等のケトン系溶剤、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ-n-ペンチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-sec-ブチルエーテル、ジ-sec-ペンチルエーテル、ジ-tert-アミルエーテル、ジ-n-ヘキシルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、α-ターピネオール、α-ピネン、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート等のテルペン系溶剤などを挙げることができる。溶剤は単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。
【0208】
印刷時に溶剤が揮発しにくく、印刷に適した粘度を与えることから、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが特に好ましい。
【0209】
溶剤(有機溶剤)の添加量は、(B)ポリウレタン100質量部に対して100~1,000質量部の範囲とすることが好ましい。
【0210】
[(D)フェノール化合物]
さらに、フェノール化合物として下記一般式(2A)で示される構造を含むフェノール化合物を含むことが好ましい。
【化48】
(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又は水酸基を示す。Ayは炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb及びkdは1又は2を示す。kc及びkeは0~2の整数を示す。Z、Xf、ZZ、R、Rは前記と同じである。)
【0211】
は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又は水酸基を示す。
【0212】
Ayは炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。Ayの炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の(ka+2)価の炭化水素基としては、具体的には下記のものを例示できる。
【化49】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0213】
【化50】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0214】
【化51】
(式中、破線は結合手を示す。)
【0215】
Ayの炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の(ka+2)価のフッ素化炭化水素基としては、具体的には上記の炭化水素基中の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子に置換されたものを例示できる。
【0216】
kaは0~2の整数を示し、kb及びkdは1又は2を示し、kc及びkeは0~2の整数を示す。
【0217】
Z、Xf、ZZ、R、Rは前記と同じである。
【0218】
上記一般式(2A)で示されるフェノール化合物としては、特に下記一般式(2B)で示されるフェノール化合物であることが好ましい。
【化52】
(式中、Ay’は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb、kc、kd、keは1又は2を示す。R、R、Rは前記と同じである。)
【0219】
Ay’は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。
【0220】
kaは0~2の整数を示し、kb、kc、kd、keは1又は2を示す。
【0221】
、R、Rは前記と同じである。
【0222】
上記一般式(2A)および(2B)で示される化合物として、具体的には下記のものを例示できる。
【化53】
【0223】
【化54】
【0224】
【化55】
【0225】
【化56】
【0226】
【化57】
【0227】
【化58】
【0228】
【化59】
【0229】
【化60】
【0230】
【化61】
【0231】
【化62】
【0232】
【化63】
【0233】
【化64】
【0234】
【化65】
【0235】
上記一般式(2A)、(2B)で表されるフェノール化合物の合成法は特に限定されず、構造に応じて最適な方法を選択して合成することができるが、例えば、式(2B)中のkb、kcが1である一般式(2Ba)の場合は、下記反応式に示したステップi)~v)により合成できる。
【化66】
(式中、R、Ay’、ka,kc及びkeは上記の通りである。Rpは酸不安定基を示す。XAはハロゲン原子を示す。)
【0236】
ステップi)は、ハロゲン化フェノール化合物(2Bb)を保護化することにより中間体ハロゲン化アリール化合物(2Bd)へ導く工程である。
【0237】
ステップi)の反応は公知の条件で容易に進行するが、例えば、Rpがt-ブチル基、t-アミル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルアダマンチル基、エチルアダマンチル基等の3級アルキル基の場合は、無溶媒又はトルエン、ヘキサン等の溶媒中、ハロゲン化フェノール化合物(2Bb)及びイソブテン、イソアミレン等のRpに対応するオレフィンを酸触媒の存在下、反応温度-20~50℃にて反応を行うのがよい。用いる酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸等の無機酸類、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸を挙げることができる。
【0238】
ステップii)は、フルオロベンゼン化合物(2Bc)の求核置換反応により中間体ハロゲン化アリール化合物(2Bd)へ導く工程である。
【0239】
ステップii)の反応は公知の条件で容易に進行するが、例えば、Rpがt-ブチル基、t-アミル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルアダマンチル基、エチルアダマンチル基等の3級アルキル基の場合は、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン等の溶媒中、フルオロベンゼン化合物(2Bc)及びt-ブチルアルコール、t-アミルアルコール等のRpに対応するアルコール又はt-ブトキシカリウムなどの対応するアルコキシドを塩基の存在下、反応温度10~80℃にて反応を行うのがよい。用いる塩基としては、例えば、ボラン、アルキルボラン、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カリウム、水素化カルシウムなどの金属水素化物、トリチルリチウム、トリチルナトリウム、トリチルカリウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、エチルマグネシウムブロマイド等のアルキル金属化合物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド等のアルコキシドを挙げることができる。
【0240】
ステップiii)は、ハロゲン化アリール化合物(2Bd)を酸化することにより中間体フェノール化合物(2Be)へ導く工程である。
【0241】
反応は公知の方法により容易に進行するが、例えば、以下の反応式の方法を例示できる。
【化67】
(式中、Rp、ke及びXAは上記の通りである。MAはLi、MgCl、MgBr、MgIを示す。Rは、炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
【0242】
まず、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の溶媒中、ハロゲン化アリール化合物(2Bd)とLi又はMgとから有機金属試薬(2Bg)を調製する。続いて、ホウ酸エステル化合物(2J)との反応によりアリールボロン酸誘導体(2Bh)へ導き、最後に過酸化水素、過ギ酸、過酢酸、m-クロロ過安息香酸等の酸化剤を用い、中間体フェノール化合物(2Be)を得る。本工程は通常、精製工程を経ずにワンポットで反応を進行させることができる。
【0243】
ステップiv)は、中間体フェノール化合物(2Be)のエーテル化によりアリールエーテル化合物(2Bf)へ導く工程である。
【0244】
反応は公知の方法により容易に進行するが、例えば、以下の反応式の方法を例示できる。
【化68】
(式中、Rp、ka、ke及びAy’は上記の通りである。Tは、それぞれ独立に水酸基、ハロゲン原子、アルカンスルホニルオキシ基、又はアレーンスルホニルオキシ基を示す。)
【0245】
エーテル化の方法として、中間体フェノール化合物(2Be)と脱離基含有化合物(2Bi)とを塩基処理することによりエーテル化させる方法を例示できる。
【0246】
のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を例示できる。また、Tのアルカンスルホニルオキシ基及びアレーンスルホニルオキシ基としては、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、ベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ基を例示できる。
【0247】
用いられる塩基として、具体的にはナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシドなどのアルコキシド類、ピリジン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、4-ジメチルアミノピリジンなどの有機アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化テトラ-n-ブチルアンモニウムなどの無機水酸化物類、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの無機炭酸塩類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシドなどのアルコキシド類、ボラン、アルキルボラン、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カリウム、水素化カルシウムなどの金属水素化物、トリチルリチウム、トリチルナトリウム、トリチルカリウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロマイドなどのアルキル金属化合物類、ナトリウムアミド、カリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムジイソプロピルアミド、リチウムジシクロヘキシルアミド、カリウムジシクロヘキシルアミド、リチウム2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、リチウムビストリメチルシリルアミド、ナトリウムビストリメチルシリルアミド、カリウムビストリメチルシリルアミド、リチウムイソプロピルシクロヘキシルアミド、ブロモマグネシウムジイソプロピルアミドなどの金属アミド類、を例示できる。使用する塩基の量は中間体フェノール化合物(2Be)1モルに対して0.9~10モル、特に1.0~5.0モルの使用が好ましい。
【0248】
溶媒として水又はテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル類、n-ヘキサン、n-ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコール等のアルコール類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒を反応条件により選択して単独又は混合して用いることができる。上記の塩基自身を溶媒として使用してもよい。
【0249】
反応温度、時間は試薬・条件により種々異なるが、例えば、Tが臭素原子、塩基として炭酸カリウムを用いて反応を行う場合、反応温度は室温~120℃、望ましくは30℃~90℃が迅速な反応完結ために好ましい。反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常1~60時間程度である。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work-up)によりアリールエーテル化合物(2Bf)を得ることができ、必要があれば蒸留、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。
【0250】
ステップv)は、アリールエーテル化合物(2Bf)の脱保護反応により本発明のフェノール化合物へ導く工程である。
【0251】
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、2-ブタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトニトリルなどのニトリル類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒;水から選択して単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。また、無溶媒で反応を行うこともできる。
【0252】
酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸類、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸類、三フッ化ホウ素、トリメチルシリルトリフラート、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化鉄、塩化亜鉛、塩化チタンなどのルイス酸を用いることができる。また、酸の使用量は、アリールエーテル化合物(2Bf)1モルに対し0.001~5モル、特に0.01~0.5モルとすることが好ましい。0.001モル以上の使用であれば反応速度が遅くならないため、反応時間の増加によるコスト面での不利にならず、5モル以下の使用であれば強酸性による副反応が起こらず、収率が低下しない。また、酸性度を抑えるために塩基、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン、コリジン、N,N-ジメチルアニリンなどアミン類を加えてもよい。
【0253】
上記脱保護反応は反応条件により適切な反応温度を選べるが、低温条件では反応が進行しない場合があるため、通常40~120℃が好ましい。また、反応時間は収率向上のため薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどにより反応の進行を追跡して決定することが好ましいが、通常2時間~1日程度である。反応は、アリールエーテル化合物(2Bf)を溶媒で希釈した後、酸を加えて加熱撹拌することでできる。反応終了後、通常の水系後処理(aqueous work-up)によりもの本発明のフェノール化合を得ることができ、必要があれば蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。
【0254】
上記フェノール化合物を本発明の導電性ペースト組成物に配合する場合、(A)導電性フィラーと(B)フェノール性水酸基を含有するポリウレタンと(D)フェノール化合物との合計100質量部に対して0.5質量部を超える範囲とすることが好ましく、より好ましくは1質量部以上10質量部以下である。
【0255】
上記フェノール化合物は本発明のポリウレタン中のフェノール性水酸基、弱酸性官能基と同様の効果を有する。すなわち、導電性フィラーが金属粒子もしくは合金粒子、特には銀粉である場合、フェノール化合物のフェノール性水酸基と、銀粉末の酸化被膜により銀塩が形成され、その銀塩が熱により還元されることで銀ナノ粒子を生成するものと推測される。特に芳香環上に電子求引性基を有するフェノール化合物は無官能のフェノールと比較して酸性度が向上し、銀塩を形成しやすくなるため、低温でも銀ナノ粒子を生成しやすくなるものと思われる。その上、フェノール化合物が上記一般式(2B)のフェノール化合物の場合は、芳香環上にフッ素原子を有しており、銀塩により求核置換反応が進行し、その過程で副生したフッ化銀が熱等で還元されることでも、銀ナノ粒子が生成するものと推測される。
【0256】
<導電配線>
また、本発明では、基材上に形成され、上記導電性ペースト組成物の焼成物からなる導電配線を提供する。基材が伸縮性を有する場合には、伸縮性導電配線を与える。
以下、本発明の導電配線について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0257】
導電配線を形成する基材としては、ポリウレタン、ポリエステル、シリコーン、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、PTFE、PFA等が挙げられる。基材は伸縮性を有することが好ましく、伸縮性を有するシートやフィルムがより好ましく、さらに好ましくは伸縮性のポリウレタン基材、特に好ましくは熱可塑性ポリウレタン基材である。シートの表面は平坦でも良いが、凹凸がついていても良い。凹凸がついていると、基材に対して垂直方向に蛇腹構造の伸縮配線を形成することが出来、伸縮時の導電性の変化を抑えることが可能である。また不織布や伸縮性の繊維からなる布を用いることも可能である。
【0258】
伸縮性を有する基材は、最大1000%の伸縮性を有することが好ましい。人間の動きに対する肌の伸長度は、胸などの骨の上は10%、腹部などは20%、関節部では50%と言われており、肌に貼り付ける部分に応じて導電配線に求められる伸縮性が異なる。
【0259】
以下、伸縮性を有する基材(伸縮性基材)を用いる場合について述べるが、伸縮性を有さない基材についても同様であり、以下に限定されない。
【0260】
伸縮性基材上に本発明の導電性ペースト組成物による導電配線を形成する。伸縮性基材上に導電配線を塗布する方法は、特に限定されないが、例えばディップコート、スプレーコート、スピンコート、ロールコート、フローコート、ドクターコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の方法が好適である。特に印刷によって配線パターンを形成することによって生産性を向上させることが出来、配線幅含めて自由なデザインが可能になる。
【0261】
導電配線の膜厚は10nm~1000μmの範囲が好ましく用いられる。より好ましくは5~50μmである。
【0262】
伸縮性基材上に導電性ペースト組成物を印刷によって塗布し、その後焼成する。即ち、導電性ペースト組成物を印刷することによって基材上に導電配線を形成する。導電配線を形成する時の焼成温度は60~160℃、好ましくは120℃~150℃の範囲、時間は1秒から10時間、好ましくは10分~5時間である。焼成はホットプレートやオーブン中で行うことが出来るが、フラッシュアニーリングによって上記温度よりも高温で短時間に行うことも出来、赤外光の照射による焼成を行うことも可能である。
【0263】
伸縮性導電配線を基材上に形成し、配線の両端間の電気抵抗を測定することによって導電性の評価が可能である。基材を伸長する前と伸長している間の電気抵抗の変化が小さい程、伸長した基材を収縮させて元に戻したときの導電性の劣化が小さい程優れた伸縮性導電配線と言える。また、繰り返し伸縮を行った場合に配線の破断が起こらずに、電気抵抗の変化が小さい方が好ましい。
【0264】
また、本発明の導電配線は、20%伸長時の電気抵抗が伸長前の電気抵抗の500%以下であることが好ましく、伸長率20%で1000回繰り返し伸縮した際の最大電気抵抗が、伸縮前の電気抵抗の5000%以下であることが好ましい。上記電気抵抗は、後述の測定方法で求めることができる。
【0265】
更に、導電配線を覆うためのカバー膜を設けることも出来る。カバー膜を設けることによって、耐水性や機械的強度を向上させることが出来る。基材と導電配線の両方が伸縮性を有しているため、カバー膜も伸縮性を有している必要がある。カバー膜の材質は基材と同じくポリウレタン、ウレタンアクリレート、ポリエステル、シリコーン、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、PTFE、PFAなどから選択できる。カバー膜の膜厚は10nm~1mmの範囲が好ましく用いられる。
【0266】
本発明の導電性ペースト組成物を用いて形成された導電配線は、特に銀粉を含む場合には、配線の焼成過程で生成した銀ナノ粒子が、銀粉体間の絶縁性ポリマー中に分散されることで高い導電性を示す。また、配線を伸長し銀粉体間の距離が広がった際も、銀粉体間に分散する銀ナノ粒子により導電経路が切断されにくくなるため、断線が起きにくく、導電性の変化が小さくなる。
【実施例0267】
以下、合成例、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によりポリスチレン換算値として測定したものである。GPCの測定条件は、以下の通りである。
カラム:TSKgel G4000HXL、TSKgel G3000HXL、TSKgel G2000HXL2本
移動相:テトラヒドロフラン
カラムオーブン温度:40℃
サンプル濃度:0.20質量%
サンプル注入量:100μL
流量:1mL/min
【0268】
フェノール性水酸基を含有するポリウレタンは、以下のようにして合成した。
[1] フェノール性水酸基含有キャップ剤の合成
[合成例1-1]キャップ剤1の合成
【化69】
【0269】
[合成例1-1-1]ブロモベンゼン1の合成
窒素雰囲気下、ブロモフェノール1(76.4g)、イソアミレン(112.2g)のトルエン(10g)溶液へ、メタンスルホン酸(4.8g)を-20~-10℃にて加えた。そのままの温度にて3時間撹拌した後、トリエチルアミン(10.1g)、続いて25質量%苛性ソーダ水(32.0g)を滴下して反応を停止した。通常の水系後処理(aqueous work-up)を行った。減圧蒸留によりブロモベンゼン1(84.6g、収率81%)を得た。
沸点:67℃/10Pa。
【0270】
[合成例1-1-2]中間体フェノール1の合成
窒素雰囲気下、ブロモベンゼン1(52.2g)、マグネシウム(5.1g)及びテトラヒドロフラン140mLを用いて予め調製したGrignard試薬を、内温-5℃以下にて、ホウ酸トリメチル(22.9g)、テトラヒドロフラン(310mL)の溶液に滴下した。反応温度5℃にて3時間撹拌を続けた。その後内温30℃以下にて、酢酸(18.0g)及び35%過酸化水素(25.3g)を加えた。室温にて3時間撹拌を続け、通常の後処理方法を行い、トルエン/n-ヘキサン混合溶剤より再結晶を行い、中間体フェノール1(29.7g、収率75%)を得た。
IR(D-ATR):ν=3233、3071、2941、2929、2853、1622、1601、1512、1480、1465、1447、1378、1334、1311、1205、1196、1158、1111、1097、975、966、870、816cm-1
H-NMR(600MHz in DMSO-d6):δ=9.52(1H、s)、6.88(1H、t)、6.55(1H、dd)、6.46(1H、dd)、1.62(2H、q)、1.14(6H、s)、0.93(3H、t)ppm。
19F-NMR(565MHz in DMSO-d6):δ=-126.6(1F、s)ppm。
【0271】
[合成例1-1-3]保護フェノール1の合成
窒素雰囲気下、中間体フェノール1(29.5g)、炭酸カリウム(20.5g)、ヨウ化ナトリウム(40mg)、ジメチルホルムアルデヒド(74g)のスラリー溶液へ、エーテル化剤1(36.9g)を60~80℃にて加えた。そのままの温度にて20時間撹拌した後、水(160g)を滴下して反応を停止した。通常の水系後処理(aqueous work-up)を行い、保護フェノール1(53.2g、粗収率91%)を得た。
【0272】
[合成例1-1-4]キャップ剤1の合成
上記で得られた保護フェノール1(53.2g)、p-トルエンスルホン酸1水和物(0.2g)、トルエン(140g)の溶液を内温70~100℃にて3時間加熱撹拌を続けた。その後内温30℃以下にて水50gを加え反応を停止した。その後、通常の水系後処理(aqueous work-up)を行い、酢酸エチル/n-ヘキサン混合溶剤より再結晶を行い、キャップ剤1(31.6g、二工程収率71%)を得た。
IR(D-ATR):ν=3483、3189、2919、2852、1605、1521、1477、1468、1449、1395、1313、1275、1263、1243、1205、1163、1113、1046、1032、1008、955、864、840、799、788cm-1
H-NMR(600MHz in DMSO-d6):δ=9.18(1H、s)、6.82(1H、t)、6.74(1H、dd)、6.54(1H、dd)、4.29(1H、s)、3.83(2H、t)、3.36(2H、t)、1.63(2H、m)、1.16-1.44(16H、m)ppm。
19F-NMR(565MHz in DMSO-d6):δ=-133.7(1F、t)ppm。
【0273】
[合成例1-2]キャップ剤2の合成
【化70】
【0274】
[合成例1-2-1]ブロモベンゼン2の合成
窒素雰囲気下、t-ブトキシカリウム(63.9g)をTHF(360g)に溶解した溶液へ、フルオロベンゼン1(100g)を0~10℃で滴下した。そのままの温度にて10時間撹拌した後、水(150g)を滴下して反応を停止した。通常の水系後処理(aqueous work-up)を行った。減圧蒸留によりブロモベンゼン2(98.6g、収率77%)を得た。
沸点:97-100℃/700Pa。
【0275】
[合成例1-2-2]中間体フェノール2の合成
ブロモベンゼン1をブロモベンゼン2に変更した以外は、[合成例1-1-2]と同様な方法で中間体フェノール2を得た(収率77%)。
【0276】
[合成例1-2-3]保護フェノール2の合成
中間体フェノール1を中間体フェノール2に変更した以外は、[合成例1-1-3]と同様な方法で保護フェノール2を得た(収率92%)。
【0277】
[合成例1-2-4]キャップ剤2の合成
保護フェノール1を保護フェノール2に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でキャップ剤2を得た(収率78%)。
【0278】
[合成例1-3]キャップ剤3の合成
【化71】
【0279】
[合成例1-3-1]ブロモベンゼン3の合成
ブロモフェノール1をブロモフェノール3に変更した以外は、[合成例1-1-1]と同様な方法でブロモベンゼン3を得た(収率77%)。
沸点:66℃/6Pa。
【0280】
[合成例1-3-2]中間体フェノール3の合成
ブロモベンゼン1をブロモベンゼン3に変更した以外は、[合成例1-1-2]と同様な方法で中間体フェノール3を得た(収率62%)。
【0281】
[合成例1-3-3]保護フェノール3の合成
中間体フェノール1を中間体フェノール3に変更した以外は、[合成例1-1-3]と同様な方法で保護フェノール3を得た(収率82%)。
【0282】
[合成例1-3-4]キャップ剤3の合成
保護フェノール1を保護フェノール3に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でキャップ剤3を得た(収率92%)。
IR(D-ATR):ν=3494、3215、2932、2918、2849、1613、1526、1503、1480、1470、1434、1400、1287、1264、1212、1183、1091、1077、1054、1020、1004、967、942、804cm-1
H-NMR(600MHz in DMSO-d6):δ=9.75(1H、s)、6.70(2H、dt)、4.28(1H、t)、3.92(2H、t)、3.35(2H、m)、1.65(2H、m)、1.32-1.42(4H、m)、1.20-1.32(12H、m)ppm。
19F-NMR(565MHz in DMSO-d6):δ=-158.1~-157.9(1F、m)、-159.3~-159.1(1F、m)ppm。
【0283】
[合成例1-4]キャップ剤4の合成
【化72】
【0284】
[合成例1-4-1]ブロモベンゼン4の合成
ブロモフェノール1をブロモフェノール4に変更した以外は、[合成例1-1-1]と同様な方法でブロモベンゼン4を得た(収率72%)。
沸点:53℃/15Pa。
【0285】
[合成例1-4-2]中間体フェノール4の合成
ブロモベンゼン1をブロモベンゼン4に変更した以外は、[合成例1-1-2]と同様な方法で中間体フェノール4を得た(収率64%)。
H-NMR(600MHz in DMSO-d6):δ=9.99(1H、s)、6.44(2H、m)、1.62(2H、m)、1.15(6H、s)、0.94(3H、t)ppm。
19F-NMR(565MHz in DMSO-d6):δ=-122.9(2F、s)ppm。
【0286】
[合成例1-4-3]保護フェノール4の合成
中間体フェノール1を中間体フェノール4に変更した以外は、[合成例1-1-3]と同様な方法で保護フェノール4を得た(収率89%)。
【0287】
[合成例1-4-4]キャップ剤4の合成
保護フェノール1を保護フェノール4に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でキャップ剤4を得た(収率73%)。
IR(D-ATR):ν=3532、3101、2922、2853、2801、1649、1613、1530、1468、1457、1426、1397、1268、1254、1239、1200、1156、1046、1036、1018、855、817、804cm-1
H-NMR(600MHz in DMSO-d6):δ=9.38(1H、s)、6.63(2H、m)、4.30(1H、s)、3.85(2H、t)、3.36(2H、t)、1.63(2H、m)、1.32-1.42(4H、m)、1.20-1.32(12H、m)ppm。
19F-NMR(565MHz in DMSO-d6):δ=-158.1(1F、m)ppm。
【0288】
[合成例1-5]キャップ剤5の合成
【化73】
【0289】
[合成例1-5-1]ブロモベンゼン5の合成
フルオロベンゼン1をフルオロベンゼン2に変更した以外は、[合成例1-2-1]と同様な方法でブロモベンゼン5を得た(収率94%)。
沸点:82-84℃/300Pa。
【0290】
[合成例1-5-2]中間体フェノール5の合成
ブロモベンゼン1をブロモベンゼン5に変更した以外は、[合成例1-1-2]と同様な方法で中間体フェノール5を得た(収率62%)。
【0291】
[合成例1-5-3]保護フェノール5の合成
中間体フェノール1を中間体フェノール5に変更した以外は、[合成例1-1-3]と同様な方法で保護フェノール5を得た(収率81%)。
【0292】
[合成例1-5-4]キャップ剤5の合成
保護フェノール1を保護フェノール5に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でキャップ剤5を得た(収率77%)。
【0293】
[合成例1-6]キャップ剤6の合成
【化74】
【0294】
[合成例1-6-1]ブロモベンゼン6の合成
フルオロベンゼン1をフルオロベンゼン3に変更した以外は、[合成例1-2-1]と同様な方法でブロモベンゼン6を得た(収率77%)。
沸点:99-100℃/1KPa。
【0295】
[合成例1-6-2]中間体フェノール6の合成
ブロモベンゼン1をブロモベンゼン6に変更した以外は、[合成例1-1-2]と同様な方法で中間体フェノール6を得た(収率68%)。
【0296】
[合成例1-6-3]保護フェノール6の合成
中間体フェノール1を中間体フェノール6に変更した以外は、[合成例1-1-3]と同様な方法で保護フェノール6を得た(収率86%)。
【0297】
[合成例1-6-4]キャップ剤6の合成
保護フェノール1を保護フェノール6に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でキャップ剤6を得た(収率86%)。
【0298】
[合成例1-7]キャップ剤7の合成
【化75】
【0299】
[合成例1-7-1]キャップ剤7の合成
窒素雰囲気下、ジヒドロキシベンゼン1(55.9g)、炭酸カリウム(41.5g)、ヨウ化ナトリウム(100mg)、ジメチルホルムアルデヒド(300g)のスラリー溶液へ、エーテル化剤2(19.5g)を60~80℃にて加えた。そのままの温度にて3時間撹拌した後、水(400g)を滴下して反応を停止した。通常の水系後処理(aqueous work-up)を行った。酢酸エチル/n-ヘキサン混合溶剤より再結晶を行い、キャップ剤7(18.6g、収率62%)を得た。
【0300】
[合成例1-8]キャップ剤8の合成
【化76】
【0301】
[合成例1-8-1]キャップ剤8の合成
ジヒドロキシベンゼン1をジヒドロキシベンゼン2に、エーテル化剤2をエーテル化剤1に変更した以外は、[合成例1-7-1]と同様な方法でキャップ剤8を得た(収率43%)。
【0302】
[合成例1-9]キャップ剤9の合成
【化77】
【0303】
[合成例1-9-1]キャップ剤9の合成
ジヒドロキシベンゼン1をジヒドロキシベンゼン3に、エーテル化剤2をエーテル化剤1に変更した以外は、[合成例1-7-1]と同様な方法でキャップ剤9を得た(収率45%)。
【0304】
[合成例1-10]キャップ剤10の合成
【化78】
【0305】
[合成例1-10-1]保護フェノール10の合成
エーテル化剤1をエーテル化剤3に変更した以外は、[合成例1-1-3]と同様な方法で保護フェノール10を得た(収率81%)。
【0306】
[合成例1-10-2]キャップ剤10の合成
保護フェノール1を保護フェノール10に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でキャップ剤10を得た(収率86%)。
【0307】
[合成例1-11]キャップ剤11の合成
【化79】
【0308】
[合成例1-11-1]保護フェノール11の合成
エーテル化剤1をエーテル化剤4に変更した以外は、[合成例1-1-3]と同様な方法で保護フェノール11を得た(収率82%)。
【0309】
[合成例1-11-2]キャップ剤11の合成
保護フェノール1を保護フェノール11に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でキャップ剤11を得た(収率75%)。
IR(D-ATR):ν=3619、3292、2948、2890、1608、1516、1452、1386、1280、1234、1191、1157、1109、1101、1052、1023、966、945、912、851、841、823、798、756、740cm-1
H-NMR(600MHz in DMSO-d6):δ=9.20(2H、s)、6.82(2H、t)、6.76(2H、dd)、6.57(2H,dd)、4.55(2H、t)、3.85(4H、s)、3.54(4H、d)ppm。
【0310】
[2]弱酸性官能基含有ポリオールの合成
[合成例2-1]ヘキサフルオロアルコール含有鎖延長剤1の合成
【化80】
【0311】
[合成例2-1-1]鎖延長剤1の合成
窒素雰囲気下、トリメチロールプロパン(1260g)、エステル化剤1(1415g)、28質量%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(60.7g)を100~140℃で撹拌した。メタノールを留去しながらエステル交換を行い、反応が完結した後、50℃以下に冷却し塩酸で中和した。その後、通常の水系後処理(aqueous work-up)を行い、IPE/n-ヘキサン混合溶剤より再結晶を行い、鎖延長剤1を949g(純度99.1%、収率46.2%)得た。
鎖延長剤1:
白色粉体
H-NMR(DMSO-d6):δ=0.78(3H,t),1.26(2H,q),3.27(4H,m),4.17(2H,s),4.49(2H,t),9.08(1H,s)
【0312】
[合成例2-2]ヘキサフルオロアルコール含有鎖延長剤2の合成
【化81】
【0313】
[合成例2-2-1]鎖延長剤2の合成
原料のトリメチロールプロパンをグリセロールに変更した以外は、[合成例2-1-1]と同様な方法で鎖延長剤2を得た(収率40%)。
【0314】
[合成例2-3]ヘキサフルオロアルコール含有鎖延長剤3の合成
【化82】
【0315】
[合成例2-3-1]中間体3の合成
窒素雰囲気下、カルボン酸1(10.0g)、トルエン(50.0g)、N,N-ジメチルホルムアミド2滴の懸濁液中に塩化オキサリル(8.7g)を加えた。室温で5時間撹拌した後、溶媒を減圧留去し酸塩化物1を得た。
窒素雰囲気下、氷冷したアルコール3(15.6g)、トリエチルアミン(7.9g)、アセトニトリル(20mL)の溶液に酸塩化物1のアセトニトリル溶液を添加し、室温で一晩撹拌した。反応が完結した後、水を加え、通常の後処理を行うことで中間体3を19.0g(粗収率80%)得た。
【0316】
[合成例2-3-2]鎖延長剤3の合成
上記で得られた中間体3(15.0g)、メタノール(30g)、強酸性陽イオン交換樹脂(1g)を加熱還流した。アセトンを留去しながら脱保護を行い、反応が完結した後、イオン交換樹脂を除去し、溶剤を留去することで鎖延長剤3を13.3g(粗収率97%)得た。
【0317】
[合成例2-4]ヘキサフルオロアルコール含有鎖延長剤4の合成
【化83】
【0318】
[合成例2-4-1]中間体4の合成
アルコール3をアルコール4に変更した以外は、[合成例2-3-1]と同様な方法で中間体4を得た。
【0319】
[合成例2-4-2]鎖延長剤4の合成
中間体3を中間体4に変更した以外は、[合成例2-3-2]と同様な方法で鎖延長剤4を得た(二工程収率75%)。
【0320】
[合成例2-5]ペンタフルオロアルコール含有鎖延長剤5の合成
【化84】
【0321】
[合成例2-5-1]中間体5の合成
アルコール3をアルコール5に変更した以外は、[合成例2-3-1]と同様な方法で中間体5を得た。
【0322】
[合成例2-5-2]鎖延長剤5の合成
中間体3を中間体5に変更した以外は、[合成例2-3-2]と同様な方法で鎖延長剤5を得た(二工程収率75%)。
【0323】
[合成例2-6]トリフルオロメタンスルホンアミド含有鎖延長剤6の合成
【化85】
【0324】
[合成例2-6-1]中間体6の合成
窒素雰囲気下、アミン1(15.0g)、ジクロロメタン(45.0g)、トリエチルアミン(12.5g)の混合溶液にトリフルオロメタンスルホン酸無水物(32.1g)を-78℃で滴下し、そのままの温度にて2時間撹拌した。室温まで昇温し更に1時間撹拌した後、氷冷しながら水を加えて反応停止した。その後、通常の後処理を行うことで中間体6を22.7g(粗収率78%)得た。
【0325】
[合成例2-6-2]鎖延長剤6の合成
中間体3を中間体6に変更した以外は、[合成例2-3-2]と同様な方法で鎖延長剤6を得た(収率87%)。
【0326】
[3]弱酸性官能基含有ポリウレタンの合成
原料
<高分子量ポリオール>
・ニッポラン4010(東ソー社製)ポリエステルポリオール、数平均分子量2000
・ニッポラン4009(東ソー社製)ポリエステルポリオール、数平均分子量1000
・クラレポリオールP-2010(クラレ社製)ポリエステルポリオール、数平均分子量2000
・クラレポリオールC-2090(クラレ社製)ポリカーボネートポリオール、数平均分子量2000
・プラクセル210(ダイセル社製)ポリカプロラクトンジオール、数平均分子量1000
【0327】
<ジイソシアネート>
・2,4-トリレンジイソシアネート又は2,6-トリレンジイソシアネート及びそれらの異性体混合物(TDI)
・イソホロンジイソシアネート(IPDI)
【0328】
<鎖延長剤>
【化86】
【0329】
<キャップ剤>
【化87】
キャップ剤12は市販品を使用した。
【0330】
<触媒>
・XK-640(KING INDUSTRIES社製)
【0331】
[合成例3]
窒素雰囲気下、TDI 86.0g、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA) 134.2gとXK-640(KING INDUSTRIES社製)0.36gに40質量%ニッポラン4009のBCA溶液445.8gを滴下、1時間撹拌し、プレポリマーを調製した。90℃に加熱したプレポリマー溶液に、50質量%鎖延長剤1のBCA溶液を232.9g滴下し、そのままの温度で10時間熟成した後、10質量%キャップ剤1のBCA溶液91.1gを加え、1時間熟成した。
PU1:
Mw=125,190、Mw/Mn=3.53
【0332】
ジイソシアネート、高分子量ポリオール、鎖延長剤、キャップ剤の種類、配合比と触媒の使用量を表1、2に記載の通りに変更した以外は上記[合成例3]と同様の手順によりPU2~17、及び比較PU1~3を合成した。
【0333】
【表1】
【0334】
【表2】
【0335】
添加剤として用いるフェノール化合物は、以下のようにして合成した。
[4]フェノール化合物の合成
[合成例4-1]フェノール1の合成
【化88】
【0336】
[合成例4-1-1]保護フェノール12の合成
エーテル化剤1をエーテル化剤5に変更した以外は、[合成例1-1-3]と同様な方法で保護フェノール12を得た(収率85%)。
【0337】
[合成例4-1-2]フェノール1の合成
保護フェノール1を保護フェノール12に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でフェノール1を得た(収率84%)。
IR(D-ATR):ν=3402、2953、2942、2920、2870、2854、1607、1516、1479、1471、1460、1398、1313、1275、1255、1205、1158、1111、1028、840、788cm-1
H-NMR(600MHz in DMSO-d6):δ=9.18(1H、s)、6.82(1H、t)、6.72(1H、dd)、6.54(1H、dd)、3.82(2H、t)、1.62(2H、m)、1.14-1.38(18H、m)、0.83(3H、t)ppm。
19F-NMR(565MHz in DMSO-d6):δ=-133.7(1F、t)ppm。
【0338】
[合成例4-2]フェノール2の合成
【化89】
【0339】
[合成例4-2-1]保護フェノール13の合成
中間体フェノール1を中間体フェノール5に変更した以外は、[合成例4-1-1]と同様な方法で保護フェノール13を得た(収率88%)。
【0340】
[合成例4-2-2]フェノール2の合成
保護フェノール1を保護フェノール13に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でフェノール2を得た(収率72%)。
IR(D-ATR):ν=3423、2954、2942、2920、2853、1639、1616、1531、1478、1472、1379、1400、1379、1244、1214、1152、1054、1032、1020、828、822、809、789cm-1
H-NMR(主要異性体のみ、600MHz in DMSO-d6):δ=10.32(1H、s)、6.38(1H、m)、6.27(1H、m)、3.82(2H、t)、1.63(2H、m)、1.16-1.40(18H、m)、0.82(3H、t)ppm。
19F-NMR(主要異性体のみ、565MHz in DMSO-d6):δ=-137.4(1F、m)、-171.7(1F、m)ppm。
【0341】
[合成例4-3]フェノール3の合成
【化90】
【0342】
[合成例4-3-1]保護フェノール14の合成
中間体フェノール1を中間体フェノール6に変更した以外は、[合成例4-1-1]と同様な方法で保護フェノール14を得た(収率90%)。
【0343】
[合成例4-3-2]フェノール3の合成
保護フェノール1を保護フェノール14に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でフェノール3を得た(収率81%)。
IR(D-ATR):ν=3591、3446、2926、2855、1605、1507、1468、1391、1254、1204、1172、1026、983、912、836、792cm-1
H-NMR(600MHz in DMSO-d6):δ=10.06(1H、s)、7.08(1H、d)、6.49(1H、d)、6.34(1H、dd)、3.86(2H、t)、1.64(2H、m)、1.15-1.38(18H、m)、0.83(3H、t)ppm。
19F-NMR(565MHz in DMSO-d6):δ=-57.5(3F、t)ppm。
【0344】
[合成例4-4]フェノール4の合成
【化91】
【0345】
[合成例4-4-1]保護フェノール15の合成
中間体フェノール1を中間体フェノール3に変更した以外は、[合成例4-1-1]と同様な方法で保護フェノール15を得た(収率91%)。
【0346】
[合成例4-4-2]フェノール4の合成
保護フェノール1を保護フェノール15に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でフェノール4を得た(収率76%)。
IR(D-ATR):ν=3290、2956、2918、2873、2849、1615、1526、1502、1470、1420、1398、1284、1265、1216、1180、1089、1062、1053、1042、1030、1016、975、945、802cm-1
H-NMR(600MHz in DMSO-d6):δ=9.74(1H、s)、6.70(2H、dt)、3.91(2H、t)、1.64(2H、m)、1.32-1.39(2H、m)、1.16-1.32(16H、m)、0.82(3H、t)ppm。
19F-NMR(565MHz in DMSO-d6):δ=-158.1~-157.9(1F、m)、-159.3~-159.1(1F、m)ppm。
【0347】
[合成例4-5]フェノール5の合成
【化92】
【0348】
[合成例4-5-1]フェノール5の合成
ジヒドロキシベンゼン1をヒドロキノンに、エーテル化剤2をエーテル化剤6に変更した以外は、[合成例1-7-1]と同様な方法でフェノール5を得た(収率59%)。
【0349】
[合成例4-6]フェノール6の合成
【化93】
【0350】
[合成例4-6-1]保護フェノール16の合成
エーテル化剤1をエーテル化剤6に変更した以外は、[合成例1-1-3]と同様な方法で保護フェノール16を得た(収率94%)。
【0351】
[合成例4-6-2]フェノール6の合成
保護フェノール1を保護フェノール16に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でフェノール6を得た(収率90%)。
IR(D-ATR):ν=3380、2944、2869、1642、1606、1516、1477、1446、1394、1368、1317、1263、1242、1195、1162、1109、1023、969、956、867、838、796cm-1
H-NMR(600MHz in DMSO-d6):δ=9.19(2H、s)、6.82(2H、t)、6.75(2H、dd)、6.55(2H、dd)、3.85(4H、t)、1.66(4H、quin)、1.42(4H、m)ppm。
19F-NMR(565MHz in DMSO-d6):δ=-133.6(2F、t)ppm。
【0352】
[合成例4-7]フェノール7の合成
【化94】
【0353】
[合成例4-7-1]保護フェノール17の合成
エーテル化剤1をエーテル化剤7に変更した以外は、[合成例1-1-3]と同様な方法で保護フェノール17を得た(収率92%)。
【0354】
[合成例4-7-2]フェノール7の合成
保護フェノール1を保護フェノール17に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でフェノール7を得た(収率87%)。
IR(D-ATR):ν=3385、2941、2923、2856、1608、1514、1479、1468、1455、1288、1276、1253、1203、1156、1110、1042、1022、988、956、842、818、802、787、748cm-1
H-NMR(600MHz in DMSO-d6):δ=9.18(2H、s)、6.82(2H、t)、6.74(2H、dd)、6.55(2H、dd)、3.83(4H、t)、1.66(4H、quin)、1.20-1.41(12H、m)ppm。
19F-NMR(565MHz in DMSO-d6):δ=-133.7(2F、t)ppm。
【0355】
[合成例4-8]フェノール8の合成
【化95】
【0356】
[合成例4-8-1]保護フェノール18の合成
中間体フェノール1を中間体フェノール4に、エーテル化剤1をエーテル化剤7に変更した以外は、[合成例1-1-3]と同様な方法で保護フェノール18を得た(収率88%)。
【0357】
[合成例4-8-2]フェノール8の合成
保護フェノール1を保護フェノール18に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でフェノール8を得た(収率84%)。
IR(D-ATR):ν=3401、2942、2923、2856、1648、1616、1528、1479、1469、1459、1378、1247、1202、1148、1045、1023、1017、823、802cm-1
H-NMR(600MHz in DMSO-d6):δ=9.38(2H、s)、6.64(4H、m)、3.85(4H、t)、3.36(2H、t)、1.64(4H、m)、1.32-1.42(4H、m)、1.18-1.40(12H、m)ppm。
19F-NMR(565MHz in DMSO-d6):δ=-131.0(4F、d)ppm。
【0358】
[合成例4-9]フェノール9の合成
【化96】
(式中Msはメシル基を示す。)
【0359】
[合成例4-9-1]保護フェノール19の合成
エーテル化剤1をエーテル化剤8に変更した以外は、[合成例1-1-3]と同様な方法で保護フェノール19を得た(収率85%)。
【0360】
[合成例4-9-2]フェノール9の合成
保護フェノール1を保護フェノール19に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でフェノール9を得た(収率81%)。
H-NMR(600MHz in DMSO-d6):δ=9.22(2H、s)、6.83(2H、dd)、6.78(2H、dd)、6.57(2H、ddd)、3.95~3.98(4H、m)、3.65~3.70(4H、m)、3.50~3.56(8H、m)ppm。
19F-NMR(565MHz in DMSO-d6):δ=-136.8(2F、t)ppm。
【0361】
[合成例4-10]フェノール10の合成
【化97】
【0362】
[合成例4-10-1]エーテル化剤9の合成
窒素雰囲気下、シラン1(30.7g)、マグネシウム(6.7g)及びテトラヒドロフラン120mLを用いて予め調製したGrignard試薬を、内温10~30℃にて、ジブロモ体1(75.0g)、ヨウ化第一銅(0.52g)、亜リン酸トリエチル(0.96g)、テトラヒドロフラン(100mL)の溶液に滴下した。そのままの反応温度にて20時間撹拌を続けた。その後内温30℃以下にて、飽和塩化アンモニウム水溶液(200g)を加え、反応を停止した。通常の後処理方法を行い、エーテル化剤9(43.3g、収率62%)を得た。
沸点:72℃/20Pa。
【0363】
[合成例4-10-2]保護フェノール20の合成
エーテル化剤1をエーテル化剤9に変更した以外は、[合成例1-1-3]と同様な方法で保護フェノール20を得た(収率85%)。
【0364】
[合成例4-10-3]フェノール10の合成
保護フェノール1を保護フェノール20に変更した以外は、[合成例1-1-4]と同様な方法でフェノール10を得た(収率93%)。
H-NMR(500MHz in DMSO-d6):δ=9.18(1H、s)、6.81(1H、t)、6.72(1H、dd)、6.53(1H、dd)、3.82(2H、t)、1.63(2H、m)、1.19-1.40(12H、m)、0.44(2H、m)、-0.06(9H、s)ppm。
19F-NMR(470MHz in DMSO-d6):δ=-133.7(1F、t)ppm。
【0365】
[実施例1~26、比較例1~5]
<導電性ペースト組成物の調製>
導電性ペースト組成物を調製するためのポリウレタンとして表1、2に記載のPU1~17、比較PU1~3及び、以下の樹脂を用いた。
・フッ素ゴム(ダイキン製、G801)
・ポリエステル(ユニチカ製、UE-9200)
【0366】
導電性フィラーは、下記の銀粉A~E及び銅粉Aを用意した。
・銀粉A:平均粒径(DL50)は2.1μm
・銀粉B:平均粒径(DL50)は5.3μm
・銀粉C:平均粒径(DL50)は1.2μm
・銀粉D:平均粒径(DL50)は0.67μm
・銀粉E:平均粒径(DL50)は1.72μm
・銅粉A:平均粒径(DL50)は1.30μm
平均粒径の測定はレーザー回析粒度分布装置を用いて粒度分布を測定し、その積算値50%の粒径を平均粒径として求めた。
【0367】
添加剤のフェノール化合物としては、下記のフェノール1~13を用いた。ここで、フェノール11はキャップ剤1、フェノール12はキャップ剤4、フェノール13はキャップ剤11と同じである。
【化98】
【0368】
表3に記載の組成でポリマーと導電性フィラーとフェノール化合物と溶剤(BCA)を撹拌混合し導電性ペースト組成物を調製した。
【表3】
BCA:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
【0369】
[伸縮性導電配線の評価]
<評価サンプルの作製>
マイクロテック(株)社製スクリーン印刷機MT-320TVCを用い、ポリウレタンフィルム上に導電性ペースト組成物を塗布した後、熱風乾燥器で熱処理することで線幅10mm、長さ70mm、膜厚10μmの伸縮性導電配線を形成した。
【0370】
<非伸長状態の初期電気抵抗の測定>
ポリウレタンフィルム上に形成された伸縮性導電配線の両端の電気抵抗を4端子抵抗測定法で測定した。電気抵抗の測定は、ナショナルインスツルメンツ株式会社製PXIe-4136SMU抵抗測定装置により行った。
・電気抵抗(Ω)R=V/I(V:電圧、I:電流)
初期電気抵抗(非伸長状態の電気抵抗)の測定結果を表4に示す。
【0371】
<20%伸長時の最大電気抵抗の測定>
伸縮性導電配線が形成されたポリウレタンフィルムを撓みのない非伸長状態(0%)から20%伸長した状態で固定し、4端子抵抗測定法にて電気抵抗を測定した。
伸縮性導電配線が形成されたポリウレタンフィルムは、株式会社島津製作所製精密万能試験機AG-Xplus HSを使用し、伸縮性導電配線(長方形)の長手方向に300mm/minの速度で伸長させた。
・20%伸長時の電気抵抗変化=[20%伸長時の電気抵抗(Ω)]÷[初期電気抵抗(Ω)]×100
20%伸長時の電気抵抗変化を表4に示す。
【0372】
<300%伸長時の最大電気抵抗の測定>
伸縮性導電配線が形成されたポリウレタンフィルムを0%の非伸長状態から300%伸長した状態で固定し電気抵抗を測定した。
伸縮性導電配線が形成されたポリウレタンフィルムは、株式会社島津製作所製精密万能試験機AG-Xplus HSを使用し、伸縮性導電配線(長方形)の長手方向に300mm/minの速度で伸長させた。
・300%伸長時の電気抵抗変化=[300%伸長時の電気抵抗(Ω)]÷[初期電気抵抗(Ω)]×100
300%伸長時の電気抵抗変化を表4に示す。
【0373】
<0~20%繰り返し伸縮における最大抵抗値の測定>
伸縮性導電配線が形成されたポリウレタンフィルムに対して撓みのない非伸長状態(0%)から20%の伸縮を1000往復繰り返し、導電配線の電気抵抗経時変化を測定した。
繰り返し伸縮試験は、株式会社島津製作所製精密万能試験機AG-Xplus HSを使用し、伸縮性導電配線(長方形)の長手方向にポリウレタンフィルムを引張速度300mm/minで伸縮させることにより行った。
また、電気抵抗の測定は、引っ張り試験機(上記精密万能試験機AG-Xplus HS)のサンプル固定冶具の内側に電極を設置し、ナショナルインスツルメンツ株式会社製PXIe-4136SMU抵抗測定装置を用い、4端子抵抗測定法により行った。
・伸長率0~20%で1000回繰り返し伸縮した際の最大電気抵抗値変化=[繰り返し伸縮試験における最大電気抵抗(Ω)]÷[初期電気抵抗(Ω)]×100
伸長率20%で1000回繰り返し伸縮した際の最大電気抵抗変化を表4に示す。
【0374】
【表4】
- :未測定
【0375】
表4に示されるようにフェノール性水酸基を含有するポリウレタンを配合した導電性ペースト組成物を用いた場合、120℃、30分という低温短時間焼成でも配線伸長による電気抵抗の上昇が小さく、繰り返し伸縮における導電安定性に優れた導電配線が得られることが分かる(実施例1~26)。更に添加剤としてフェノール化合物を添加することで、配線伸長による劣化を抑制することができる(実施例7~26)。一方、比較例のフェノール性水酸基を有さないポリウレタン(比較例1~3)や樹脂(比較例4~5)は配線の伸長や繰り返し伸縮により電気抵抗が大きく上昇した。
【0376】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンであって、下記一般式(1B)で示されるフェノール性水酸基を含有するものであることを特徴とするポリウレタン。
【化1】
(式中、Az’は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH -が-O-、-NR -、-C(=O)-、又は-Si(R )-に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb、kc、kd、keは1又は2を示す。R 、R は炭素数1~6の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、又はフェニル基であり、R は水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、もしくは分岐状のアルキル基である。破線は結合手を示す。)
【請求項2】
前記ポリウレタンが、更に下記一般式(1a)~(1c)で示される弱酸性官能基を1つ以上含むものであることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン。
【化2】
(式中、Rは水素原子、フッ素原子、又は炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のフッ素化されていてもよい炭化水素基を示し、Rfはフッ素原子又は炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のフッ素化炭化水素基を示す。nは1又は2の整数であり、破線は結合手を示す。)
【請求項3】
前記ポリウレタンが、更に下記一般式(2a)~(2c)で示される構造を1つ以上含むものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン。
【化3】
(式中、Rは水素原子、又は炭素数1~3の1価の炭化水素基であり、Aは単結合、又は炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基を示し、構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、又は-C-に置換されていてもよく、-NR-C(=O)-であってもよい。A及びAはそれぞれ独立に、-O-、-O-C(=O)-NR-、-NR-、-C(=O)O-から選ばれるいずれかの基を示す。n、n、nは0~10の整数であり、nは0又は1の整数である。Rは前記と同じであり、破線は結合手を示す。)
【請求項4】
請求項に記載のポリウレタンの製造方法であって、鎖延長反応後に下記一般式(1C)で示されるアルコール又はアミンを用いてポリウレタンに前記フェノール性水酸基を導入することを特徴とするポリウレタンの製造方法。
【化4】
(式中、Az”は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。Xは酸素原子又はNRを示す。kaは0~2の整数を示す。kb、kc、kd、keは1又は2を示す。R、R、Rは前記と同じである。)
【請求項5】
請求項に記載のポリウレタンの製造方法であって、鎖延長剤として下記一般式(3a)~(3c)で示されるアルコールを1つ以上用いてポリウレタンに弱酸性官能基を導入することを特徴とするポリウレタンの製造方法。
【化5】
(式中、Rは水素原子、又は炭素数1~3の1価の炭化水素基であり、Aは単結合、又は炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基を示し、構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、又は-C-に置換されていてもよく、-NR-C(=O)-であってもよい。Rは水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状、もしくは分岐状のアルキル基である。n、n、nは0~10の整数である。)
【請求項6】
(A)導電性フィラーと(B)請求項1から請求項のいずれか1項に記載のポリウレタンと(C)溶剤とを含むものであることを特徴とする導電性ペースト組成物。
【請求項7】
前記導電性ペースト組成物が、さらに(D)フェノール化合物を含むものであることを特徴とする請求項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項8】
前記(D)成分のフェノール化合物が下記一般式(2A)で示される構造を含むものであることを特徴とする請求項に記載の導電性ペースト組成物。
【化6】
(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又は水酸基を示す。Ayは炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb及びkdは1又は2を示す。kc及びkeは0~2の整数を示す。Zは単結合又は酸素原子を示す。Xfはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のフッ素原子で置換されてよい直鎖状、分岐状もしくは環状の1価炭化水素基、炭素数1~10のフッ素原子で置換されてよいアルコキシ基、又は電子求引基を示す。環ZZはそれぞれ独立に炭素数5~20の芳香族性の単環又は多環を示す。前記環ZZの炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子に置換されていてもよい。、Rは前記と同じである。)
【請求項9】
前記(D)成分のフェノール化合物が下記一般式(2B)で示される構造を含むものであることを特徴とする請求項に記載の導電性ペースト組成物。
【化7】
(式中、Ay’は炭素数1~19の直鎖状、分岐状もしくは環状の(ka+2)価の炭化水素基、又はフッ素化炭化水素基を示し、前記(ka+2)価の炭化水素基を構成する-CH-が-O-、-C(=O)-、又は-Si(R)-に置換されていてもよい。kaは0~2の整数を示す。kb、kc、kd、keは1又は2を示す。R、R、Rは前記と同じである。)
【請求項10】
前記(A)成分の導電性フィラーが、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して70質量部を越える割合で含有されているものであることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項11】
前記(A)成分の導電性フィラーが、金、銀、塩化銀、白金、銅、錫、鉄、マグネシウム、チタン、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロム、インジウム、はんだ、及び炭素、又はこれらの複合体から選ばれる粉末であることを特徴とする請求項から請求項10のいずれか一項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項12】
前記(A)成分の導電性フィラーが銀粉であることを特徴とする請求項11に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項13】
前記(A)成分の導電性フィラーの平均粒径が5nm~10μmであることを特徴とする請求項から請求項12のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項14】
基材上に形成され、請求項から請求項13のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物の焼成物からなることを特徴とする導電配線。
【請求項15】
前記基材が伸縮性を有するものであることを特徴とする請求項14に記載の導電配線。
【請求項16】
前記基材が熱可塑性ポリウレタンであることを特徴とする請求項15に記載の導電配線。
【請求項17】
20%伸長時の電気抵抗が伸長前の電気抵抗の500%以下であることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の導電配線。
【請求項18】
伸長率20%で1000回繰り返し伸縮した際の最大電気抵抗が、伸縮前の電気抵抗の5000%以下であることを特徴とする請求項15から請求項17のいずれか1項に記載の導電配線。
【請求項19】
請求項から請求項13のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物を用いて基材上に導電配線を形成する導電配線の製造方法であって、前記導電配線を形成する時の焼成温度を60~160℃とすることを特徴とする導電配線の製造方法。
【請求項20】
請求項から請求項13のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物を印刷することによって基材上に導電配線を形成することを特徴とする導電配線の製造方法。