(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060151
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】エンハンスメント・モード及びデプレッション・モード・トランジスタの両者を有するモノリシック・マイクロ波集積回路
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20230420BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20230420BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230420BHJP
H01L 21/337 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
H01L29/80 E
H01L29/44 Y
H01L29/80 H
H01L29/80 F
H01L29/78 301B
H01L29/80 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032975
(22)【出願日】2023-03-03
(62)【分割の表示】P 2021502818の分割
【原出願日】2019-05-14
(31)【優先権主張番号】16/039,370
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】ウルフスピード インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】WOLFSPEED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スリラム、サプターリシ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ、ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー、ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】シェパード、スコット
(57)【要約】
【課題】窒化ガリウムに基づくモノリシック・マイクロ波集積回路を提供する。
【解決手段】窒化ガリウムに基づくモノリシック・マイクロ波集積回路は、基板110と、基板上のチャネル層130と、チャネル層上の障壁層140とを含む。リセス412が障壁層の最上面に設けられる。第1のゲート、ソース及びドレイン電極は、第1のゲート電極210、310の底面が障壁層と直接接触する状態で、チャネル層とは反対側の障壁層上に設けられる。第2のゲート電極410、ソース電極420及びドレイン電極430もまたチャネル層とは反対側の障壁層上に設けられる。ゲート絶縁層414が障壁層のリセス内に設けられ、第2のゲート電極が、障壁層とは反対側のゲート絶縁層上にあり、リセスの中へと延びる。第1のゲート、ソース及びドレイン電極が、デプレッション・モード・トランジスタ200、300の電極を構成し、第2のゲート、ソース及びドレイン電極が、エンハンスメント・モード・トランジスタ400の電極を構成する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノリシック基板と、
前記モノリシック基板上の窒化ガリウムに基づく障壁層であって、該障壁層の最上面内にリセスを含む、前記窒化ガリウムに基づく障壁層と、
前記モノリシック基板の第1の領域上に形成された無線周波数(RF)パワー増幅器であって、前記RFパワー増幅器が、第1の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタを含む、前記RFパワー増幅器と、
前記モノリシック基板の前記第2の領域上に形成されたデジタル回路であって、前記デジタル回路が、窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタを含む、前記デジタル回路と、
前記リセス内のゲート絶縁層であって、前記窒化ガリウムに基づく障壁層と前記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタのゲート電極との間に挟まれた、前記ゲート絶縁層と
を備える、半導体集積回路。
【請求項2】
前記窒化ガリウムに基づく障壁層の前記最上面の上に絶縁層をさらに備え、前記絶縁層は、開口部と、該開口部の中へと延びる前記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタの前記ゲート電極とを含む、請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記第1の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタが、第1のゲート電極と、第1のソース電極と、第1のドレイン電極とを含み、前記第1のゲート電極は、前記第1のドレイン電極よりも前記第1のソース電極に近い、請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタは、ソース電極と、ドレイン電極とをさらに含み、前記ゲート電極は、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で等距離である、請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記デジタル回路が、第2の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタをさらに含む、請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタのゲート長は、第2の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタのゲート長よりも小さい、請求項5に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記リセスが、前記窒化ガリウムに基づく障壁層を完全に貫通して延びる、請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記第1の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタは、第1のゲート幅を有し、該第1のゲート幅は、前記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタの第2のゲート幅よりも少なくとも10倍だけ大きい、請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項9】
前記モノリシック基板と前記窒化ガリウムに基づく障壁層との間に前記窒化ガリウムに基づくチャネル層をさらに備え、前記リセスが、前記窒化ガリウムに基づくチャネル層の最上面の中へとさらに延びる、請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項10】
前記第1の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタは、フィールド・プレートを含み、前記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタは、フィールド・プレートを含まない、請求項1に記載の半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、国防省により認められた契約書番号11-D-5309の下で政府支援により行われた。政府は、本発明における一定の権利を有する。
【0002】
本明細書において記載する発明の概念は、集積回路デバイスに関し、より詳細には、モノリシック・マイクロ波集積回路に関する。
【背景技術】
【0003】
パワー半導体デバイスは、大電流を伝達するため、高電圧をサポートするため及び/又は無線周波数などの高周波数で動作させるために広く使用されている。多様なパワー半導体デバイスが、例えば、パワー・スイッチング・デバイス及びパワー増幅器を含めて、本技術において知られている。多くのパワー半導体デバイスが、例えば、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistors)、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistors)を含めて、様々なタイプの電界効果トランジスタを使用して実装される。
【0004】
最新のパワー半導体デバイスは、ワイド・バンドギャップ半導体材料から一般に製造される。例えば、パワーHEMTを、炭化ケイ素(SiC)基板上に形成されたガリウムヒ素(GaAs)に基づく材料系、又はより最近では、窒化ガリウム(GaN)に基づく材料系から製造することができる。パワー半導体デバイスを、単体デバイスとして、又はいわゆるモノリシック・マイクロ波集積回路(MMIC:Monolithic Microwave Integrated Circuit)を形成するために共通基板上に形成される複数のデバイス(これは、トランジスタ及び抵抗器、インダクタ、キャパシタ、伝送線、等などの他の回路デバイスを含むことができる)として形成することができる。MMICは、特定の機能のために回路のすべてが単一の半導体チップへと集積される無線周波数信号及び/又はマイクロ波周波数信号で動作する集積回路を呼ぶ。実例のMMICデバイスは、共通基板上にすべてが実装された関連するマッチング回路、フィード・ネットワーク、等を含むトランジスタ増幅器である。MMICトランジスタ増幅器は、並列に接続された複数のユニット・セルHEMTトランジスタを典型的には含む。
【0005】
HEMT及びMOSFETなどの電界効果トランジスタを、トランジスタがゼロのゲート-ソース電圧においてON状態であるか又はOFF状態であるかどうかに対応するデプレッション・モード型及びエンハンスメント・モード型へと分類することができる。エンハンスメント・モード・デバイスでは、デバイスは、ゼロ・ゲート-ソース電圧においてOFFである、ところがデプレッション・モード・デバイスでは、デバイスは、ゼロ・ゲート-ソース電圧においてONである。HEMTは、典型的には、デプレッション・モード・デバイスとして実装され、そこではデバイスが、デバイスの障壁層とチャネル層との界面のところでの分極誘起電荷のためにゼロのゲート-ソース・バイアスで導電性である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例にしたがって、MMICデバイスであって、モノリシック基板と、上記モノリシック基板上の窒化ガリウムに基づくチャネル層と、上記モノリシック基板とは反対側の上記窒化ガリウムに基づくチャネル層上の窒化ガリウムに基づく障壁層とを含み、上記窒化ガリウムに基づく障壁層が、その最上面内にリセスを含む、MMICデバイスが提供される。第1のソース電極、第1のドレイン電極及び第1のゲート電極が、上記窒化ガリウムに基づくチャネル層とは反対側の上記窒化ガリウムに基づく障壁層上に設けられ、上記第1のゲート電極は、上記第1のゲート電極の底面が上記窒化ガリウムに基づく障壁層と直接接触する状態で上記第1のソース電極と上記第1のドレイン電極との間に位置する。第2のソース電極及び第2のドレイン電極もまた、上記窒化ガリウムに基づくチャネル層とは反対側の上記窒化ガリウムに基づく障壁層上に設けられる。ゲート絶縁層が、上記窒化ガリウムに基づく障壁層の上記リセス内にあり、第2のゲート電極が、上記窒化ガリウムに基づく障壁層とは反対側の上記ゲート絶縁層上にあり、上記第2のゲート電極が上記第2のソース電極と上記第2のドレイン電極との間に位置し、上記リセスの中へと延びる。上記第1のソース電極、上記第1のドレイン電極及び上記第1のゲート電極が、デプレッション・モード・トランジスタの電極を構成し、上記第2のソース電極、上記第2のドレイン電極及び上記第2のゲート電極が、エンハンスメント・モード・トランジスタの電極を構成する。
【0007】
いくつかの実施例では、上記リセスが、上記窒化ガリウムに基づくチャネル層を露出させるために上記窒化ガリウムに基づく障壁層を完全に貫通して延びる。上記リセスが、任意選択で上記窒化ガリウムに基づくチャネル層の最上面の中へとさらに延びることができる。
【0008】
いくつかの実施例では、上記MMICデバイスが、上記窒化ガリウムに基づくチャネル層とは反対側の上記窒化ガリウムに基づく障壁層上に第3のソース電極と、第3のドレイン電極と、第3のゲート電極とをさらに含むことができ、上記第3のゲート電極は、上記第3のゲート電極の底面が上記障壁層と直接接触する状態で上記第3のソース電極と上記第3のドレイン電極との間に延びる。このような実施例では、上記デプレッション・モード・トランジスタが、第1のデプレッション・モード・トランジスタであってもよく、上記第3のソース電極、上記第3のドレイン電極及び上記第3のゲート電極が、第2のデプレッション・モード・トランジスタの電極であってもよい。
【0009】
いくつかの実施例では、上記第2のソース電極と上記第2のゲート電極との間の第1の距離が、上記第2のドレイン電極と上記第2のゲート電極との間の第2の距離と実質的に同じであってもよい。いくつかの実施例では、上記第1のソース電極と上記第1のゲート電極との間の第3の距離が、上記第1のドレイン電極と上記第1のゲート電極との間の第4の距離よりも小さくてもよい。
【0010】
いくつかの実施例では、上記MMICデバイスは、上記第1及び第2のソース電極、上記第1及び第2のドレイン電極、並びに上記第1及び第2のゲート電極の各々のための開口部を有する、上記窒化ガリウムに基づく障壁層上の絶縁層をさらに含むことができる。このような実施例では、上記絶縁層及び上記ゲート絶縁層が異なる材料から形成されてもよく、上記ゲート絶縁層が、上記絶縁層の少なくとも一部分の最上面に沿って及び上記第2のゲート電極のための上記絶縁層内の上記開口部の側壁に沿って延び得る。
【0011】
いくつかの実施例では、上記ゲート絶縁層が酸化物層であってもよく、上記絶縁層が窒化物層であってもよい。
【0012】
いくつかの実施例では、上記デプレッション・モード・トランジスタが、フィールド・プレートを含んでもよく、上記エンハンスメント・モード・トランジスタが、フィールド・プレートを含まない。
【0013】
本発明のさらなる実施例にしたがって、半導体集積回路であって、基板と、上記基板の第1の領域上に形成された無線周波数(RF:radio frequency)パワー増幅器であって、上記RFパワー増幅器が、複数の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタを含む、RFパワー増幅器と、上記基板の第2の領域上に形成されたデジタル回路であって、上記デジタル回路が、複数の窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタを含む、デジタル回路とを含む、半導体集積回路が提供される。
【0014】
いくつかの実施例では、上記デジタル回路が、複数の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタをさらに含むことができる。
【0015】
いくつかの実施例では、上記半導体集積回路は、上記基板上の窒化ガリウムに基づくチャネル層と、上記基板とは反対側の上記窒化ガリウムに基づくチャネル層上の窒化ガリウムに基づく障壁層であって、上記窒化ガリウムに基づく障壁層が、その最上面内に複数のリセスを含む、窒化ガリウムに基づく障壁層とをさらに含むことができる。上記基板の上記第1の領域内の上記窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタのゲート電極が、上記窒化ガリウムに基づく障壁層と直接接触することができ、上記基板の上記第2の領域内の上記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタのゲート電極が、上記窒化ガリウムに基づく障壁層内の上記それぞれのリセスの中へと延びることができる。
【0016】
いくつかの実施例では、上記半導体集積回路は、上記窒化ガリウムに基づく障壁層と上記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタの上記それぞれのゲート電極との間の上記窒化ガリウムに基づく障壁層の上記リセス内にゲート絶縁層をさらに含むことができる。
【0017】
いくつかの実施例では、上記リセスが、上記窒化ガリウムに基づくチャネル層を露出させるために上記窒化ガリウムに基づく障壁層を完全に貫通して延びる。
【0018】
いくつかの実施例では、上記リセスが、上記窒化ガリウムに基づくチャネル層の最上面の中へとさらに延びる。
【0019】
いくつかの実施例では、上記ゲート絶縁層が、酸化物層を含む。
【0020】
いくつかの実施例では、上記リセスが、上記窒化ガリウムに基づく障壁層の途中まで延びるだけであり、上記基板の上記第2の領域内の上記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタの上記ゲート電極が、上記窒化ガリウムに基づく障壁層のそれぞれの部分と直接接触する。
【0021】
いくつかの実施例では、各々の窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタが、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を含み、各々の窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタの上記ゲート電極が、それ自体の対応するソース電極とドレイン電極との間で等距離である。
【0022】
いくつかの実施例では、各々の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタが、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を含み、各々の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタの上記ゲート電極が、それ自体の対応するドレイン電極までよりもそれ自体の対応するソース電極に近い。
【0023】
いくつかの実施例では、上記半導体集積回路は、上記基板上の窒化ガリウムに基づくチャネル層と、上記基板とは反対側の上記窒化ガリウムに基づくチャネル層上の窒化ガリウムに基づく障壁層とをさらに含むことができ、各々の窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタが、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を含み、上記窒化ガリウムに基づく障壁層が、各々の窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタの上記ソース電極及び上記ドレイン電極の下を第1の導電型ドーパントでドープされ、上記窒化ガリウムに基づく障壁層が、各々の窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタの上記ゲート電極の下を第2の導電型ドーパントでドープされ、上記第1の導電型が上記第2の導電型とは反対である。
【0024】
本発明のまたさらなる実施例にしたがって、半導体集積回路であって、モノリシック基板と、上記モノリシック基板の第1の領域上の第1の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタであって、上記第1の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタが、第1のゲート幅及び第1のゲート長を有する、第1の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタと、上記モノリシック基板の第2の領域上の第2の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタであって、上記第2の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタが第2のゲート幅及び第2のゲート長を有する、第2の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタと、上記モノリシック基板の第2の領域上の窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタであって、上記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタが第3のゲート幅及び第3のゲート長を有する、窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタとを含む、半導体集積回路が提供される。
【0025】
いくつかの実施例では、上記第1のゲート幅が、少なくとも10倍だけ上記第2のゲート幅より大きい。
【0026】
いくつかの実施例では、上記第1のゲート長が、上記第2のゲート長よりも短い。
【0027】
いくつかの実施例では、上記第1のゲート幅が、少なくとも10倍だけ上記第3のゲート幅より大きい。
【0028】
いくつかの実施例では、上記第1のゲート長が、上記第3のゲート長よりも短い。
【0029】
いくつかの実施例では、上記第2のゲート長が、上記第3のゲート長よりも長い
【0030】
いくつかの実施例では、上記半導体集積回路は、上記モノリシック基板上の窒化ガリウムに基づくチャネル層と、上記モノリシック基板とは反対側の上記窒化ガリウムに基づくチャネル層上の窒化ガリウムに基づく障壁層であって、上記窒化ガリウムに基づく障壁層の最上面がリセスを含む、窒化ガリウムに基づく障壁層とをさらに含むことができる。このような実施例では、上記第1の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタのゲート電極及び上記第2の窒化ガリウムに基づくデプレッション・モード・トランジスタのゲート電極が各々、上記窒化ガリウムに基づく障壁層と直接接触することができ、上記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタのゲート電極が、上記窒化ガリウムに基づく障壁層内の上記リセスの中へと延びる。
【0031】
いくつかの実施例では、上記半導体集積回路は、上記窒化ガリウムに基づく障壁層と上記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタの上記ゲート電極との間の上記窒化ガリウムに基づく障壁層の上記リセス内にゲート絶縁層をさらに含むことができる。
【0032】
いくつかの実施例では、上記リセスが、上記窒化ガリウムに基づくチャネル層を露出させるために上記窒化ガリウムに基づく障壁層を完全に貫通して延びる。
【0033】
いくつかの実施例では、上記リセスが、上記窒化ガリウムに基づくチャネル層の最上面の中へとさらに延びる。
【0034】
いくつかの実施例では、上記ゲート絶縁層が、酸化物層を含む。
【0035】
いくつかの実施例では、上記リセスが、上記窒化ガリウムに基づく障壁層の途中まで延びるだけであり、上記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタの上記ゲート電極が、上記リセスの側壁及び底面と直接接触する。
【0036】
いくつかの実施例では、上記半導体集積回路は、上記モノリシック半導体基板上の窒化ガリウムに基づくチャネル層と、上記モノリシック半導体基板とは反対側の上記窒化ガリウムに基づくチャネル層上の窒化ガリウムに基づく障壁層とをさらに含むことができる。このような実施例では、上記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタは、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を含むことができ、上記窒化ガリウムに基づく障壁層が、上記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタの上記ソース電極及び上記ドレイン電極の下を第1の導電型ドーパントでドープされることがあり、上記窒化ガリウムに基づく障壁層が、上記窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタの上記ゲート電極の下を第2の導電型ドーパントでドープされることがあり、上記第1の導電型が上記第2の導電型とは反対である。
【0037】
本発明の追加の実施例にしたがって、窒化ガリウムに基づくモノリシック・マイクロ波集積回路デバイスを製造する方法が提供され、上記方法では、窒化ガリウムに基づくチャネル層が基板上に形成される。窒化ガリウムに基づく障壁層が、上記基板とは反対側の上記窒化ガリウムに基づくチャネル層上に形成される。絶縁層が、上記窒化ガリウムに基づく障壁層上に形成され、上記絶縁層が上記窒化ガリウムに基づく障壁層を露出させる複数の第1のゲート電極開口部と、上記窒化ガリウムに基づく障壁層を露出させる複数の第2のゲート電極開口部と、上記窒化ガリウムに基づく障壁層を露出させる複数のソース/ドレイン電極開口部とを含む。リセスが、上記第1のゲート電極開口部により露出される上記窒化ガリウムに基づく障壁層のそれぞれの部分内に形成される。ゲート絶縁層が、上記第1のゲート電極開口部内に形成され、上記ゲート絶縁層が上記それぞれのリセスの側壁及び底面を覆う。複数の第1のソース電極、複数の第2のソース電極、複数の第1のドレイン電極及び複数の第2のドレイン電極が、上記絶縁層の上記ソース/ドレイン電極開口部内に形成され、上記第1のソース電極、上記第2のソース電極、上記第1のドレイン電極及び上記第2のドレイン電極が上記窒化ガリウムに基づく障壁層の最上面と直接接触する。第1のゲート電極が、上記ゲート絶縁層上の上記第1のゲート電極開口部内に形成され、各々の第1のゲート電極が上記リセスのうちのそれぞれ1つの中へと延びる。第2のゲート電極が、上記絶縁層の第2のゲート電極開口部内に形成され、上記第2のゲート電極が上記窒化ガリウムに基づく障壁層の最上面と直接接触する。第1のソース電極、第1のドレイン電極及び第1のゲート電極の各々の組がエンハンスメント・モード・トランジスタの電極を構成し、第2のソース電極、第2のドレイン電極及び第2のゲート電極の各々の組がデプレッション・モード・トランジスタの電極を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】外部制御回路から供給されるデジタル制御信号を使用して制御される従来の窒化ガリウムに基づくパワー半導体デバイスの概略平面図である。
【
図2A】デプレッション・モード・トランジスタ及びエンハンスメント・モード・トランジスタの両者を含む、本発明の実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスの3つの領域の概略断面図である。
【
図2B】
図2Aに図示された3つの断面領域のうちの1つに対応する概略平面図である。
【
図2C】
図2Aに図示された3つの断面領域のうちの1つに対応する概略平面図である。
【
図2D】
図2Aに図示された3つの断面領域のうちの1つに対応する概略平面図である。
【
図3】本発明の実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスにおいて使用されることがある代替のエンハンスメント・モード・トランジスタ・デザインの断面図である。
【
図4】本発明の実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスにおいて使用されることがあるもう1つの代替のエンハンスメント・モード・トランジスタ・デザインの断面図である。
【
図5A】本発明の様々な実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスの概略平面図である。
【
図5B】本発明の様々な実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスの概略平面図である。
【
図5C】本発明の様々な実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスの概略平面図である。
【
図6】本発明のある種の実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスを製造する方法を記述するフロー・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
窒化ガリウムに基づくHEMTデバイスなどの窒化ガリウムに基づくパワー半導体デバイスは、無線通信システム、レーダ及び様々な他のワイヤレス用途において使用される高出力増幅器などの高出力RF用途に対して非常に将来有望な候補である。本明細書において使用されるように、「窒化ガリウムに基づく」という用語は、窒化ガリウム並びに窒化アルミニウム・ガリウム(AlGaN)及び窒化アルミニウム・インジウム・ガリウム(AlInGaN)などの三元系及び四元系化合物を含め、少なくともガリウムと窒素とを含むこれらの半導電性化合物を呼ぶ。窒化ガリウムに基づくパワー半導体デバイスが、例えば、インピーダンス・マッチング・ネットワークなどの他の回路とつなげられる単体デバイス、又はMMICデバイス(例えば、組込み型インピーダンス・マッチング・ネットワークを有する多段HEMT増幅器)の両者として開発されてきている。多くの用途では、窒化ガリウムに基づくパワー半導体デバイスは、制御信号によって制御される。典型的には、市販されているデジタル回路が、窒化ガリウムに基づくパワー半導体デバイスに供給される制御信号を発生するために使用される。これらのデジタル回路は、1つ又は複数の追加の半導体チップを備えることができ、典型的にはシリコンに基づく半導体デバイスである。
【0040】
図1は、デジタル制御信号を使用して制御される従来の窒化ガリウムに基づくパワー半導体デバイスの概略平面図である。
図1に示されたような、窒化ガリウムに基づく集積回路チップ10が提供される。窒化ガリウムに基づく集積回路チップ10は、例えば、基板上に形成された複数の窒化ガリウムに基づくエピタキシャル層を有する炭化ケイ素半導体基板などの母材基板12を含むことができる。例えば、RF入力パッド14、RF出力パッド16、バイアス信号パッド18及び制御信号パッド20を含め、様々な入力/出力パッドを基板12上に形成することができる。制御回路集積回路チップ30もまた提供することができる。制御回路集積回路チップ30を、例えば、シリコン基板を含むことができる第2の半導体基板32上に実装することができる。例えば、バイアス信号パッド34、制御信号入力パッド36及び制御信号出力パッド38を含め、様々な入力/出力パッドを、制御回路集積回路チップ30の基板32の上に形成することができる。
図1は単一の制御回路集積回路チップ30を図示するが、特に、既製のデジタル回路が制御回路を形成するために使用される場合には、複数の別々の制御回路集積回路チップ30が、必要な制御信号を発生するために必要とされ得ることが認識されるだろう。
【0041】
(
図1の実例などの)いくつかのケースでは、窒化ガリウムに基づく集積回路チップ10及び制御回路集積回路チップ30を、シングル・パッケージ内にマウントすることができる。
図1に示したように、このような実施例では、制御回路集積回路チップ30に含まれる様々な出力パッド38を窒化ガリウムに基づく集積回路チップ10に含まれる入力パッド20に接続する複数のボンド・ワイア又は他の相互接続部40を設けることができる。他のケースでは、2つの集積回路チップ10、30を、別々にパッケージングすることができ、例えば、プリント回路基板上の制御線及び/又はボンド・ワイアを介して相互接続することができる。いずれのケースでも、2つの集積回路チップ10、30を相互接続することは、著しい付加的な複雑性及び製造プロセスの費用を追加しがちであり、デバイスの性能を低下させることがある。
【0042】
本発明の実施例にしたがって、RF回路、及びRF回路の動作を制御するデジタル制御信号を発生するために使用される制御回路の両者が単一のモノリシック基板上に形成される、窒化ガリウムに基づくMMICデバイスが提供される。典型的には、窒化ガリウムに基づくRF回路は、デプレッション・モード(ノーマリ・オン)トランジスタを使用して形成される。しかしながら、デプレッション・モード・トランジスタをもっぱら使用して形成されるデジタル制御回路は、設計することがさらに困難であり、実装するために著しく大きなチップ面積を必要とし、エンハンスメント・モード・トランジスタとデプレッション・モード・トランジスタとの組み合わせを使用して実装されるデジタル制御回路、又はエンハンスメント・モード・トランジスタをもっぱら使用して実装されるデジタル制御回路と比較したときにより多くの電力を使用する。結果として、デジタル制御回路は、従来の窒化ガリウムに基づくRF MMICデバイスへは集積されていない。
【0043】
本発明の実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスを、同じ機能を与える従来の多チップ回路と比較してより小さく、より安価に、より複雑性を少なくすることができる。その上、デジタル制御回路を窒化ガリウムに基づくMMICへと集積することにより、高温性能の改善及びより高速な動作速度を含め、様々な性能の利点を実現することができる。その上、本発明の実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスを、現在利用可能なツール及び製造技術を使用して製造することができる。
【0044】
いくつかの実施例では、例えば、炭化ケイ素基板などの基板上に形成された窒化ガリウムに基づくエピタキシャル構造を含む窒化ガリウムに基づくMMICデバイスが提供される。窒化ガリウムに基づくエピタキシャル構造は、例えば、窒化ガリウムに基づくチャネル層、及び基板とは反対側の窒化ガリウムに基づくチャネル層上に形成された窒化ガリウムに基づく障壁層を含むことができる。例えば、バッファ層、歪バランシング(strain balancing)層、遷移層、等などの、追加のエピタキシャル層を、窒化ガリウムに基づくチャネル層又は窒化ガリウムに基づく障壁層のいずれかの一部として含むことができる。複数のデプレッション・モード・トランジスタを、窒化ガリウムに基づくエピタキシャル構造の上に及び中に形成することができる。これらのデプレッション・モード・トランジスタは、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を含むことができる。これらの電極を、窒化ガリウムに基づくチャネル層とは反対側の窒化ガリウムに基づく障壁層上に形成することができ、窒化ガリウムに基づく障壁層と直接接触させることができる。
【0045】
加えて、複数のエンハンスメント・モード・トランジスタを、窒化ガリウムに基づくエピタキシャル構造の上に及び中に形成することができる。エンハンスメント・モード・トランジスタは、同様にゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を含むことができる。ソース電極及びドレイン電極を、窒化ガリウムに基づく障壁層上に形成することができ、窒化ガリウムに基づく障壁層と直接接触させることができる。ソース電極とドレイン電極との間にある窒化ガリウムに基づく障壁層の一部分を、エッチングして除去することができて、チャネル層を露出させる開口部を障壁層に形成することができる。例えば、酸化物層(例えば、SiO2)などのゲート絶縁層を、開口部内に形成することができ、ゲート電極を、窒化ガリウムに基づくチャネル層及び窒化ガリウムに基づく障壁層とは反対側のゲート絶縁層上に形成することができる。
【0046】
他の実施例では、エンハンスメント・モード・トランジスタは、ソース電極とドレイン電極との間にある窒化ガリウムに基づく障壁層の一部分が部分的にしかエッチングで除去されないことがあり、その結果、窒化ガリウムに基づく障壁層内に形成した開口部が窒化ガリウムに基づくチャネル層を露出させないという異なるデザインを有することがある。ゲート電極が、窒化ガリウムに基づく障壁層の開口部内に形成される。
【0047】
いくつかの実施例では、デプレッション・モード・トランジスタは、窒化ガリウムに基づくHEMT RF増幅器のトランジスタなどの、無線周波数(「RF」)信号で動作するように構成された「RF」デプレッション・モード・トランジスタを含むことができる。いくつかの実施例では、デプレッション・モード・トランジスタは、加えて、デジタル制御回路の一部である「デジタル」デプレッション・モード・トランジスタを含むことができる。デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ及びRFデプレッション・モード・トランジスタのサイズ及びレイアウトは、異なることがある。エンハンスメント・モード・トランジスタを、デジタル制御回路の一部である「デジタル」エンハンスメント・モード・トランジスタとすることができる。
【0048】
本発明の実施例を、
図2A~
図6を参照してここでより詳細に説明する。
【0049】
図2Aは、デプレッション・モード・トランジスタ及びエンハンスメント・モード・トランジスタの両者を含む本発明の実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスの3つの領域の概略断面図である。
図2B~
図2Dは、
図2Aに図示した3つの断面領域に対応する概略平面図である。
【0050】
図2A~
図2Dを参照して、窒化ガリウムに基づくMMICデバイス100が3つの異なるタイプのトランジスタ、すなわち、RFデプレッション・モード・トランジスタ200、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300及びデジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400を含むことを知ることができる。
図2Aは図面を単純化するために各々のトランジスタ200、300、400の単一の事例を図示するに過ぎないが、典型的には、窒化ガリウムに基づくMMICデバイス100は、多数の各々のタイプのトランジスタ200、300、400を含むだろうことが認識されるだろう。デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300を、いくつかの実施例では省略することができることもまた認識されるだろう。
【0051】
図2Aに示したように、RFデプレッション・モード・トランジスタ200、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300及びデジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400を、例えば、炭化ケイ素半導体基板110などのモノリシック基板110上にすべて形成することができる。例えば、基板110は、4H-SiC又は6H-SiC基板を含むことができる。炭化ケイ素は、窒化ガリウムに基づくデバイスにとって非常に一般的な基板材料であるサファイア(Al
2O
3)がマッチングするよりも窒化ガリウムに基づく材料とのはるかに近い結晶格子マッチングを有する。炭化ケイ素のより近い格子マッチングは、サファイア上で一般に利用可能な窒化ガリウムに基づく材料よりも高い品質の窒化ガリウムに基づく材料をもたらすことができる。炭化ケイ素はまた、非常に高い熱伝導率を有し、そのため炭化ケイ素上の窒化ガリウムに基づくデバイスの全出力パワーは、典型的には、サファイア上に形成した同じデバイスのケースにおけるように基板の熱放散によっては制限されない。また、半絶縁性炭化ケイ素基板の有効性が、デバイス分離及び寄生容量の減少を提供することができる。炭化ケイ素を基板材料として使用することができるとはいえ、本発明の実施例は、サファイア、窒化アルミニウム、窒化アルミニウム・ガリウム、窒化ガリウム、シリコン、GaAs、LGO、ZnO、LAO、InP、等などのいずれかの適切な基板を利用することができる。
【0052】
図2Aに示したように、窒化ガリウムに基づくエピタキシャル構造120が、基板110の上に形成される。窒化ガリウムに基づくエピタキシャル構造120は、第1のグループの1つ又は複数の窒化ガリウムに基づく層130を含むことができる。第1のグループの窒化ガリウムに基づく層130は、Al
xGa
1-xN、ただし0≦x<1、などの窒化ガリウムに基づくチャネル層を含むことができる。本発明のある種の実施例では、窒化ガリウムに基づくチャネル層は、式Al
xGa
1-xN、ただしx=0、を有することができ、チャネル層が窒化ガリウム層であることを示している。しかしながら、他の実施例では、窒化ガリウムに基づくチャネル層はまた、InGaN、AlInGaN、等などの異なる窒化ガリウムに基づく層であってもよいことが認識されるであろう。実例の実施例では、窒化ガリウムに基づくチャネル層は、アンドープであってもよい又は意図せずにドープされてもよく、約20Åよりも大きな厚さまで成長されることがある。窒化ガリウムに基づくチャネル層はまた、超格子などの多層構造であってもよく、GaN、AlGaN、等の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施例では、第1のグループの窒化ガリウムに基づく層130は、窒化ガリウムに基づくチャネル層、並びに例えば、バッファ層、核形成層、遷移層及び/又は歪バランシング層などの1つ又は複数の追加の層を含むことができる。例えば、窒化アルミニウム・バッファ層を、炭化ケイ素基板とデバイスの残りのものとの間で適切な結晶構造遷移を行うために含むことができる。本明細書では、第1のグループの窒化ガリウムに基づく層130を、窒化ガリウムに基づく層が窒化ガリウムに基づくチャネル層だけを含むのであるか又は追加の層もまた含むか否かに拘わらず窒化ガリウムに基づくチャネル層130と呼ぶだろう。
【0053】
窒化ガリウムに基づくエピタキシャル構造120は、第2のグループの1つ又は複数の窒化ガリウムに基づく層140をさらに含むことができる。第2のグループの窒化ガリウムに基づく層140は、窒化ガリウムに基づく障壁層を含むことができ、また、遷移層及び/又は歪バランシング層を含むことができる。本明細書では、第2のグループの窒化ガリウムに基づく層が窒化ガリウムに基づく障壁層だけを含むか又は追加の層もまた含むか否かに拘わらず、第2のグループの窒化ガリウムに基づく層は、窒化ガリウムに基づく障壁層140と呼ばれるであろう。窒化ガリウムに基づくチャネル層130の上側表面と接触する窒化ガリウムに基づく障壁層140の下側部分のバンドギャップは、窒化ガリウムに基づくチャネル層130の最上層のバンドギャップを超えることがある。加えて、窒化ガリウムに基づくチャネル層130は、窒化ガリウムに基づく障壁層140よりも大きな電子親和力を有することがある。窒化ガリウムに基づくチャネル層130の伝導帯端のエネルギーは、窒化ガリウムに基づくチャネル層130と窒化ガリウムに基づく障壁層140との間の界面のところでの窒化ガリウムに基づく障壁層140の伝導帯端のエネルギーよりも小さい。
【0054】
ある種の実施例では、窒化ガリウムに基づく障壁層140は、AlN、AlInN、AlGaN若しくはAlInGaN、又はこれらの層の組み合わせであり、約0.1nmと約30nmとの間の厚さをともなう。本発明のいくつかの実施例では、窒化ガリウムに基づく障壁層140は、AlxGa1-xN、ただし0<x<1、である。特定の実施例では、アルミニウム濃度は、約25%である。しかしながら、本発明の他の実施例では、窒化ガリウムに基づく障壁層140は、約5%と約100%との間のアルミニウム濃度を有するAlGaNを含む。本発明の具体的な実施例では、アルミニウム濃度は約10%よりも大きい。いくつかの実施例では、窒化ガリウムに基づく障壁層140を、アンドープとすることができる又は約1019cm-3未満の濃度にn型ドーパントでドープすることができる。窒化ガリウムに基づく障壁層140を、十分に厚くすることができ、窒化ガリウムに基づくチャネル層130と窒化ガリウムに基づく障壁層140との間の界面のところに意味のあるキャリア濃度を誘起するために十分に高いアルミニウム濃度を有することがある。実例の実施例では、窒化ガリウムに基づくチャネル層130の最上部部分は、窒化ガリウムを含むことができ、一方で窒化ガリウムに基づく障壁層140の最下部部分は、窒化アルミニウム・ガリウムを含むことができる。
【0055】
図2Aにさらに示されるように、基板110は、第1の領域112及び第2の領域114を含むことができる。RFデプレッション・モード・トランジスタ200を、基板110の第1の領域112内に形成することができ、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300及びデジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400を、基板110の第2の領域114内に形成することができる。
【0056】
ここで
図2A及び
図2Bを参照して、各々のRFデプレッション・モード・トランジスタ200は、ゲート電極210、ソース電極220及びドレイン電極230を含む。ゲート電極210は、ソース電極220とドレイン電極230との間に平行に延びる比較的狭いゲート・フィンガ210を含むことができる。トランジスタの「ゲート幅」は、ゲート・フィンガ210が関係するソース電極220とドレイン電極230との間に延びる又はこれらと「重なる」距離を呼ぶ。
図2Bに示したように、RFデプレッション・モード・トランジスタ200のゲート幅を、比較的大きくすることができる。描かれた実施例では、RFデプレッション・モード・トランジスタのゲート・フィンガ210の幅は、約500ミクロンである。
【0057】
図2Aにさらに示されるように、ソース/ドレイン領域142を、それぞれのソース電極及びドレイン電極220、230の下の窒化ガリウムに基づく障壁層140内に形成することができる。ソース/ドレイン領域142は、示したように、窒化ガリウムに基づくチャネル層130の中へと延びることがある。ソース/ドレイン領域142を、窒化ガリウムに基づく障壁層140のドープした(又はより高濃度にドープした)領域とすることができる。ソース/ドレイン領域142を、例えば、イオン注入により形成することができる。ソース/ドレイン領域142は、任意の適したドーピング濃度を有することができる。実例の実施例では、ソース/ドレイン領域142は、約1×10
20から1×10
21cm
-3までのドーピング濃度を有することができる。他の実施例では、ソース/ドレイン領域142は、窒化ガリウムに基づく障壁層140を完全に貫通するというよりは途中までしか延びないことがある。さらに他の実施例では、ソース電極及びドレイン電極220、230が窒化ガリウムに基づく障壁層140上に直接形成されるように、ソース/ドレイン領域142を省略することができる。下記により詳細に論じられるデジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300及びデジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400は、ソース/ドレイン領域142を省略することを含め、ソース/ドレイン領域142に関して上に論じた構成のうちのいずれかを有することができる。
【0058】
図には示さなかったが、複数のRFデプレッション・モード・トランジスタ200を、基板110の第1の領域112内に設けることができることが理解されるだろう。これらのRFデプレッション・モード・トランジスタ200は、互いに並列に電気的に接続される複数のユニット・セル・トランジスタを含むことができる。各々のユニット・セル・トランジスタ200は、1つ又は複数の隣接するユニット・セル・トランジスタ200とソース電極220及び/又はドレイン電極230を共有することができる。
【0059】
絶縁層150が、窒化ガリウムに基づく障壁層140の最上面の上に形成される。絶縁層150は、例えば、窒化シリコン層などの窒化物層を含むことができる。絶縁層150は、いくつかの実施例ではパッシベーション層として働くことができる。絶縁層150は、窒化ガリウムに基づく障壁層140からのゲート電極210の上側部分から横方向に延びるウィング212を追加で(又は代わりに)絶縁することができる。開口部が、それぞれのゲート電極、ソース電極及びドレイン電極210、220、230用に絶縁層150内に設けられる。これらの開口部は、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極210、220、230が窒化ガリウムに基づく障壁層140の最上面と直接接触できるように、窒化ガリウムに基づく障壁層140を露出させる。
【0060】
デプレッション・モード・トランジスタ200は、HEMTトランジスタを含むことができる。窒化ガリウムに基づく障壁層140と窒化ガリウムに基づくチャネル層130との間のバンドギャップの違い及び窒化ガリウムに基づく障壁層140と窒化ガリウムに基づくチャネル層130との間の界面におけるピエゾ電気効果のために、2次元電子ガス(2DEG)が、窒化ガリウムに基づくチャネル層130と窒化ガリウムに基づく障壁層140との間の接合部のところの窒化ガリウムに基づくチャネル層130内に誘起される。2DEGは、それぞれソース電極220及びドレイン電極230の下であるデプレッション・モード・トランジスタ200のソース領域とドレイン領域との間の導電を可能にする高い導電性層として作用する。ソース電極220及びドレイン電極230は、障壁層140と直接接触することができる。ゲート・フィンガ210もまた、窒化ガリウムに基づく障壁層140と直接接触することができ、ソース電極220とドレイン電極230との間に位置する。ゲート・フィンガ210及びソース電極220とドレイン電極230とがすべて、同じ「長さ」(すなわち、電極がX方向に延びる距離)を有するように
図2Aには示されるとはいえ、実際には、
図2Bに見られるように、ゲート・フィンガ210はソース電極220とドレイン電極230との長さよりも実質的に短い長さを有することが認識されるであろう。ソース電極220とドレイン電極230とは、必ずしも同じ長さを有する必要がないこともまた認識されるであろう。
【0061】
ゲート・フィンガ210は、いくつかの実施例では金属ゲート・フィンガを含むことができる。ゲート・フィンガ210を形成するために使用する特定の材料を、例えば、窒化ガリウムに基づく障壁層140の組成に基づいて選択することができる。実例の実施例では、ゲート・フィンガ210は、Ni、Pt及びAuのうちの1つ又は複数を含むことができる。ソース電極220とドレイン電極230とは、Ti、Ni及びPtなどの1つ又は複数の金属を含むことができる。実例の実施例では、ソース電極220とドレイン電極230とは、Ti/Si/Ni/Pt積層体を含むことができる。ソース電極220とドレイン電極230とは、窒化ガリウムに基づく障壁層140へのオーミック・コンタクトを形成することができる。ゲート電極210を、
図2Bに示されているように、ドレイン電極230までよりもソース電極220により近づけることができる。
【0062】
図2A及び
図2Bにさらに示されるように、スペーサ層240を、ゲート電極210の最上部に及び絶縁層150の最上部部分に形成することができる。フィールド・プレート250を、スペーサ層240の最上部に形成することができる。フィールド・プレート250は、ゲート電極210の一部分及びゲート電極210とドレイン電極230との間にある半導体構造120の一部分の両者と縦方向に重なることがある。フィールド・プレート250は、ゲート電極210及びフィールド・プレート250が縦方向に重なる半導体構造120の一部分の両者から電気的に絶縁される。フィールド・プレート250を、図には示されていない電気的接続部を介してソース電極220に接続することができる。フィールド・プレート250は、デバイスの絶縁破壊電圧、利得、及び最大動作周波数を向上させるためにトランジスタ200のドレイン側の電場を再分布させる導電性プレートである。
【0063】
図2A及び
図2Cは、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300のデザインを図示する。デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300は、RFデプレッション・モード・トランジスタ200と類似の層及び領域を有することができるが、様々な領域のサイズは、まったく異なることがある。
図2A及び
図2Cに示したように、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300は、基板110上に形成された窒化ガリウムに基づくチャネル層130、及び基板110とは反対側の窒化ガリウムに基づくチャネル層130上にある窒化ガリウムに基づく障壁層140を含む。窒化ガリウムに基づく障壁層140は、ソース/ドレイン領域142を含むことができる。ゲート電極310、ソース電極320及びドレイン電極330が、窒化ガリウムに基づく障壁層140上に形成される。ゲート電極310は、ソース電極320とドレイン電極330との間に平行に延びる。
【0064】
上に論じた絶縁層150(例えば、窒化シリコン絶縁層)はまた、基板110の第2の領域114内の窒化ガリウムに基づく障壁層140の最上面の上に形成される。ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極310、320、330は、絶縁層150のそれぞれの開口部内に形成される。デプレッション・モード・トランジスタ300は、デプレッション・モード・トランジスタ200のように、HEMTトランジスタを含むことができ、上に論じたデプレッション・モード・トランジスタ200と同じ方式で動作することができる。
【0065】
図2Cに示したように、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300のゲート幅を、RFデプレッション・モード・トランジスタ200のゲート幅よりも桁違いに小さくすることができる。描かれた実施例では、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタのゲート電極310の幅は、RFデプレッション・モード・トランジスタ200に関する約500ミクロンのゲート幅と比較して、約3ミクロンである。描かれた実施例では、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタのゲート電極310の長さは、RFデプレッション・モード・トランジスタ200に関する約0.1~0.5ミクロンのゲート長と比較して、約6~7ミクロンである。
図2Cにも示されるように、デプレッション・モード・トランジスタ300の各々のゲート幅を、実例の実施例ではデプレッション・モード・トランジスタ300のゲート長の約半分とすることができる。ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極310、320、330を、デプレッション・モード・トランジスタ200のゲート電極、ソース電極及びドレイン電極210、220、230を形成するために使用した対応する材料と同じ材料から形成することができる。デプレッション・モード・トランジスタ200に含まれるフィールド・プレート250を、デプレッション・モード・トランジスタ300では省略することができる。加えて、ゲート電極310を、デプレッション・モード・トランジスタ300ではソース電極320及びドレイン電極330から実質的に同距離に設置することができる。
【0066】
次に
図2A及び
図2Dを参照して、各々のデジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400は、ソース電極420とドレイン電極430との間に位置するゲート電極410を含む。デジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400のゲート幅を、RFデプレッション・モード・トランジスタ200のゲート幅よりも桁違いに小さくすることができ、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300のゲート幅とほぼ同じにすることができる。デジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400のゲート長を、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300のゲート長よりも1桁程度小さくすることができる。
【0067】
デジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400を、上に説明したデジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300と同様にすることができるが、異なるゲート電極デザインを有することがある。特に、先ず
図2Dを参照して、リセス412が窒化ガリウムに基づく障壁層140内に形成され、ゲート電極410がリセス412の中へと延びることが分かる。リセス412は、窒化ガリウムに基づく障壁層140を完全に貫通して延び、いくつかの実施例では、窒化ガリウムに基づくチャネル層130の中へと延びることがある。例えば、いくつかの実施例では、リセス412は、窒化ガリウムに基づくチャネル層130の中へと1nmと15nmとの間で延びることがある。ゲート絶縁層414が、リセス412内に形成される。ゲート絶縁層414は、ゲート電極410を窒化ガリウムに基づくチャネル層130から分離するために、窒化ガリウムに基づく障壁層140の露出した側壁並びに窒化ガリウムに基づくチャネル層130の露出した最上面を覆うことができる。修正したゲート電極構成は、トランジスタ400をエンハンスメント・モード・デバイスとして動作させる。有利なことに、エンハンスメント・モード・トランジスタ400を、デプレッション・モード・トランジスタ200、300を形成するために使用して同じ汎用処理ステップを使用して形成することができ、デプレッション・モード・トランジスタ及びエンハンスメント・モード・トランジスタの両者が同じ基板上に容易に形成されることを可能にする。
【0068】
デジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400は、いくつかの実施例では、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300のゲート幅と類似するゲート幅を有することがある。例えば、各々のデジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400のゲート幅を、約2~6ミクロンとすることができる。各々のデジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400のゲート長を、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタのゲート長よりも小さくすることができる。例えば、各々のデジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400のゲート長を、1ミクロン未満にすることができる。
【0069】
RFデプレッション・モード・トランジスタ200は、典型的には「ユニット・セル」トランジスタとして実装され、ここでは、単一のトランジスタとして動作するように並列に電気的に接続される複数の個々の「ユニット・セル」トランジスタが形成される。多くのユニット・セルを、デバイスの電流伝達能力及び電圧ブロッキング能力を高めるために設けることができる。対照的に、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300及びデジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400は、これらのトランジスタがはるかに小さな電流レベルしか通さないので、典型的には、スタンド・アロン・トランジスタとして実装される。
【0070】
いくつかの実施例では、RFデプレッション・モード・トランジスタ200は、RFパワー増幅器を構成することができ、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300及びデジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400を、RFパワー増幅器へ入力されるRF信号をゲートするデジタル制御回路を形成するように配置することができる。デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ300及びデジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400を、比較的小さな電場を発生する低電圧デバイスとすることができる。
【0071】
本発明の実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスは、多数の利点を示すことができる。例えば、RFトランジスタ及びデジタル制御トランジスタを、共通基板上に形成することができ、デジタル制御回路をRF回路に接続する伝送線が共通基板上に形成されることを可能にする。このことは、ワイア・ボンディング又は他の技術を介して多数のチップを相互接続することの必要性及び関連するコストを回避することができる。このように、本発明の実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスを、同じ機能を与える従来の多チップ回路と比較して、より小さく、より安価に、且つ複雑性をより小さくすることができる。その上、本発明の実施例によるデバイスは、はるかに短い制御線を有することができ、これゆえ性能の向上を示すことができる。加えて、デジタル・トランジスタ300、400を窒化ガリウムに基づくトランジスタとして製造することにより、回路の高温性能及び総合的な堅固さを改善することができる。その上、デジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ400を、デプレッション・モード・トランジスタ200、300を形成するために使用されるものと実質的に同じプロセス・ステップを使用して形成することができ、共通基板上にすべての3つのタイプのトランジスタを形成するために同じ処理機器を使用することを可能にする。エンハンスメント・モード・トランジスタ400の製造は、窒化ガリウムに基づく障壁層140内にリセス412を形成するステップ及び基板110の第2の領域内にゲート絶縁層414を形成するステップの追加のステップを必要とすることがあるが、これらは、両者とも、製造プロセスへと容易に組み込むことができる標準処理ステップである。
【0072】
図2A及び
図2Dに示したような窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタは、窒化ガリウムに基づくエンハンスメント・モード・トランジスタを製造するための理想的な方法を表さないことがある従来にないデザインを有する。しかしながら、このデザインは、エンハンスメント・モード・トランジスタを、RFトランジスタを形成するために使用される処理ステップ中に容易に製造することができるので、このデザインは、集積された制御回路を有する窒化ガリウムに基づくMMICデバイスを形成するために使用されるときにある種の利点を示す。
【0073】
本発明のさらなる実施例にしたがって、代替のデザインを有するエンハンスメント・モード・トランジスタを含む窒化ガリウムに基づくMMICデバイスを、提供することができる。
図3及び
図4は、本発明の実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスにおいて使用することができる2つの代替のエンハンスメント・モード・トランジスタ・デザインを図示する。
図3及び
図4に図示したエンハンスメント・モード・トランジスタ・デザインを、
図2Aのエンハンスメント・モード・トランジスタ400の代わりに使用することができる。
【0074】
図3は、本発明の実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスにおい使用することができる代替のエンハンスメント・モード・トランジスタ500の断面図である。
図3を
図2Aに比較することにより分かるように、エンハンスメント・モード・トランジスタ500を、上に説明したエンハンスメント・モード・トランジスタ400と同様にすることができるが、エンハンスメント・モード・トランジスタ500は、窒化ガリウムに基づく障壁層140を完全には貫通しないで延びるリセス512を含む。ゲート電極510は、リセス512の側壁及びリセス512の底面を覆うようにリセス512内に形成される。
【0075】
エンハンスメント・モード・トランジスタ500では、ゲート絶縁層414がデバイスの順方向ゲート電圧を大きくするので、ゲート絶縁層414を任意選択で設けることができる。しかしながら、窒化ガリウムに基づく障壁層140の残りの部分はゲート電極510が窒化ガリウムに基づくチャネル層130と短絡を形成することを防止できるので、ゲート絶縁層414を他の実施例では省略することができることが認識されるだろう。ゲート絶縁層414を含む実施例では、ゲート絶縁層414を、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコン又はいずれかの他の適切な高誘電率材料などの高誘電率材料(すなわち、酸化シリコンの誘電率よりも大きい誘電率を有する材料)とすることができる。ゲート電極510は、いくつかの実施例では酸化ニッケルを含むことができ、これは、有利なことに、エンハンスメント・モード・トランジスタ500のしきい値電圧を大きくできる。
【0076】
図4は、本発明のその上にさらなる実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスにおいて使用することができるもう1つの代替のエンハンスメント・モード・トランジスタ600の断面図である。
図6に示したように、エンハンスメント・モード・トランジスタ600は、
図2A及び
図2Dのエンハンスメント・モード・トランジスタ400とはいく分か異なるデザインを有する。特に、エンハンスメント・モード・トランジスタ600は、窒化ガリウム障壁層640内にリセスを含まず、また、いかなるゲート絶縁層をも含まない。エンハンスメント・モード・トランジスタ600の窒化ガリウムに基づく障壁層640は、しかしながら、第2の導電型ドーパントでドープされるドープト領域660をゲート電極610の下に特に含む。例えば、窒化ガリウムに基づく障壁層640内のソース/ドレイン領域142がn型ドーパントでドープされる場合には、ドープト領域660を、p型ドーパントでドープすることができる。ドープト領域660を、例えば、イオン注入により形成することができる。ある実例の実施例では、ドープト領域660を、マグネシウムなどのp型ドーパントでドープすることができる。例えば、8keV注入を、2×10
13cm
-2のドーズ量で実行することができる。
【0077】
図5A~
図5Cは、本発明の様々な実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスの概略平面図である。
【0078】
先ず
図5Aを参照して、MMICデジタル・パワー増幅器700が図示され、これは、ユニット・セルRFデプレッション・モード・トランジスタを使用して形成される増幅器段710、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタとデジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタとの組み合わせを使用して形成されるデジタル制御ブロック720、及びデジタル・デプレッション・モード・トランジスタとデジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタとの組み合わせを使用して形成されるデジタル・ドライバ回路730を含む。MMICデジタル・パワー増幅器700は、スイッチング増幅器として動作することができ、そこでは、スイッチング増幅器の増幅トランジスタが、線形領域にはほとんど留まらない(すなわち、トランジスタは、完全にオンであるか完全にオフであるかのいずれかである)、これは、パワー増幅器700が非常に高い効率レベル(例えば、90%を超える)を実現することを可能にできる。
【0079】
図5Bは、RFトランジスタ810、及びエンハンスメント・モード・トランジスタとデプレッション・モード・トランジスタとの両者を含む制御回路820を含んでいる集積回路800の概略平面図である。制御回路820は、RFトランジスタ810の直線性、温度応答、利得応答又は他の性能パラメータに影響を与えるようにRFトランジスタ810のバイアスを変調する、制限する、又はそうでなければ制御する。
【0080】
図5Cは、同じ周波数帯を使用して信号を送信し、受信する時分割二重通信システムでの使用に適しているMMIC送信/受信回路900の概略平面図である。
図5Cに示したように、MMIC送信/受信回路900は、高出力増幅器回路910、低雑音増幅器回路920、送信/受信スイッチ930及びデジタル制御ブロック940を含む。高出力増幅器回路910及び低雑音増幅器回路920を、ユニット・セルRFデプレッション・モード・トランジスタを使用して各々実装することができる。制御ブロック940は、例えば、高出力増幅器910用の及び/又は低雑音増幅器920用のバイアス制御回路を含むことができ、送信/受信スイッチ930の動作を制御するためのデジタル制御回路をさらに含むことができる。制御ブロック940を、例えば、デジタル・デプレッション・モード・トランジスタ及びデジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタを使用して実装することができる。
【0081】
図6は、本発明のある種の実施例による窒化ガリウムに基づくMMICデバイスを製造する方法を図説しているフロー・チャートである。
図6に示したように、作業は、窒化ガリウムに基づくチャネル層をモノリシック基板上に形成することで始めることができる(ブロック1000)。モノリシック基板は、例えば、炭化ケイ素ウェハを含むことができ、窒化ガリウムに基づくチャネル層が、窒化ガリウムに基づく材料の単一の層又は多数の層を含むことができる。次に、窒化ガリウムに基づく障壁層を、基板とは反対側の窒化ガリウムに基づくチャネル層上に形成することができる(ブロック1010)。窒化ガリウムに基づく障壁層は、単一の層又は多数の層を含むことができ、窒化ガリウムに基づく障壁層の下側部分のバンドギャップは、窒化ガリウムに基づく障壁層にすぐに隣接する窒化ガリウムに基づくチャネル層の上部部分のバンドギャップよりも大きい。
【0082】
次に、絶縁層が、窒化ガリウムに基づく障壁層の上に形成され、この絶縁層は、複数の第1、第2及び第3のゲート電極開口部、並びに窒化ガリウムに基づく障壁層を露出させる複数のソース/ドレイン電極開口部を含む(ブロック1020)。次いで、複数のリセスが、第1のゲート電極開口部内の窒化ガリウムに基づく障壁層に形成される(ブロック1030)。ゲート絶縁層が、第1のゲート電極開口部内に形成され、このゲート絶縁層が、それぞれのリセスの側壁及び底面を覆う(ブロック1040)。ゲート絶縁層はまた、絶縁層の最上面の一部分を覆うことができる。
【0083】
複数の第1のソース電極、複数の第2のソース電極、複数の第1のドレイン電極及び複数の第2のドレイン電極が、絶縁層のソース/ドレイン電極開口部内に形成され、そのため第1のソース電極、第2のソース電極、第1のドレイン電極及び第2のドレイン電極が、窒化ガリウムに基づく障壁層の最上面と直接接触する(ブロック1050)。次いで、分離注入プロセスを実行することができる(ブロック1060)。第1のゲート電極が、ゲート絶縁層上で第1のゲート電極開口部内に形成され、各々の第1のゲート電極が複数のリセスのうちのそれぞれ1つの中へと延びる(ブロック1070)。第2のゲート電極が、絶縁層の第2のゲート電極開口部内に形成され、第2のゲート電極が窒化ガリウムに基づく障壁層の最上面と直接接触する(ブロック1080)。第1のソース電極、第1のドレイン電極及び第1のゲート電極の各々のセットがエンハンスメント・モード・トランジスタの電極を構成し、第2のソース電極、第2のドレイン電極及び第2のゲート電極の各々のセットがデプレッション・モード・トランジスタの電極を構成する。
【0084】
デジタル・エンハンスメント・モード・トランジスタ(及びデジタル・デプレッション・モード・トランジスタ)を、デジタル制御回路、デジタル論理部、及びデジタルRFドライバなどの多様な異なる回路を実装するために使用することができることが認識されるであろう。
【0085】
第1の、第2の、等という用語を、様々な要素を記述するために本明細書において使用することがあるとはいえ、これらの要素は、これらの用語により限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、1つの要素をもう1つから区別するために使用されるに過ぎない。例えば、第1の要素は、第2の要素と呼ばれることがあり、同様に、本発明の範囲から逸脱することなく、第2の要素が第1の要素と呼ばれることがある。本明細書において使用したように、「及び/又は」という用語は、関連する列挙した項目のうちの1つ又は複数の任意の組み合わせ及びすべての組み合わせを含む。
【0086】
本明細書において使用するように、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」は、文脈が別なふうに明確に指示しない限り、同様に複数形を含むものとする。本明細書において使用されるときに、「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」及び/又は「含んでいる(including)」という用語は、述べた構成、整数、ステップ、作業、要素及び/又は構成要素の存在を特定するが、1つ又は複数の他の構成、整数、ステップ、作業、要素、構成要素及び/又はそのグループの存在又は追加を排除しないことがさらに理解されるであろう。
【0087】
別段の定めがない限り、本明細書において使用した(技術用語及び科学用語を含め)すべての用語は、この発明が属する分野の当業者により一般に理解されるような同じ意味を有する。本明細書において使用した用語は、この明細書の文脈及び関係する技術におけるそれらの意味と矛盾のない意味を有するように解釈されるべきであり、本明細書において特別にそのように規定されない限り、理想化された感覚又は過度に形式的な感覚で解釈されないことがさらに理解されるであろう。
【0088】
層、領域又は基板などのある要素がもう1つの要素の「上(on)」である又は「上へと(onto)」延びていると呼ばれるときには、この要素が他の要素の直接上にあっても若しくは直接上へと延びてもよい、又は介在する要素がさらに存在してもよいことが理解されるだろう。対照的に、ある要素が、もう1つの要素の「直接上(directly on)」にある又は「直接上へと(directly onto)」延びていると呼ばれるときには、介在する要素は存在しない。ある要素がもう1つに「接続(connected)」される又は「つなげ(coupled)」られると呼ばれるときには、この要素は、他の要素に直接接続される若しくはつなげられてもよく、又は介在する要素が存在してもよいこともまた理解されるであろう。対照的に、ある要素がもう1つの要素に「直接接続される(directly connected)」又は「直接つなげられる(directly coupled)」と呼ばれるときには、介在する要素は存在しない。
【0089】
「下方に(below)」若しくは「上方に(above)」又は「上側に(upper)」若しくは「下側に(lower)」又は「水平に(horizontal)」若しくは「横方向に(lateral)」又は「垂直に(vertical)」などの相対的な用語を、1つの要素、層又は領域の図に図示されたようなもう1つの要素、層又は領域に対する関係を記述するために本明細書において使用することができる。これらの用語が、図に描かれた向きに加えて、デバイスの違った向きを包含するものであることが理解されるであろう。
【0090】
発明の実施例が、発明の理想化した実施例(及び中間構造)の模式図である断面図を参照して本明細書では説明される。図面における層及び領域の厚さは、明確化のために誇張されることがある。加えて、例えば、製造技術及び/又は許容誤差の結果として図の形状からの変動が、予想される。このように、発明の実施例を、本明細書に図示された領域の特定の形状に限定するようには解釈すべきではなく、例えば、製造からもたらされる形状の偏差を含むものである。
【0091】
図面及び明細書では、発明の典型的な実施例を開示してきているとはいえ、具体的な用語が採用されており、これらの用語は、一般的な感覚及び説明的な感覚で単に使用され、限定の目的ではなく、発明の範囲は、以下の特許請求の範囲において明らかにされる。