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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060156
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】気泡測定装置および気泡測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/06 20060101AFI20230420BHJP
   G01N 15/02 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
G01N15/06 E
G01N15/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033023
(22)【出願日】2023-03-03
(62)【分割の表示】P 2020510872の分割
【原出願日】2019-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2018062584
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018062583
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 進太郎
(57)【要約】
【課題】液体中の気泡のサイズが小さくなっても、気泡の状態を正確に把握できる気泡測定装置および気泡測定方法を提供する。
【解決手段】気泡測定装置10は、液体中を移動する気泡を測定する気泡測定装置である。気泡測定装置10は、液体を保持する計測チャンバ11を備えている。この計測チャンバ11には、液体W中の気泡を下側から導入する導入口27aと、液体Wに内在する気泡が上昇してくる位置に設けられ、斜め下を向いている透明傾斜面と、上昇流形成液体を注入する第1注入口26aと、が設けられている。そして気泡が、上昇流に乗って透明傾斜面を上昇する。この構成により、気泡が小さくなった場合でも、気泡を上昇流に乗せて運び去ることができるので、気泡の状態、すなわち気泡のサイズおよび数量を正確に測定することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中を移動する気泡を測定する気泡測定装置であって、
該液体を保持する計測チャンバを備え、
該計測チャンバには、
前記液体中の前記気泡を下側から導入する導入口と、
前記液体に内在する前記気泡が上昇してくる位置に設けられ、斜め下を向いている透明傾斜面と、
該透明傾斜面に沿って下側から上側に向けた上昇流を生じさせるための、上昇流形成液体を注入する第1注入口と、が設けられ、
前記上昇流形成液体は、前記計測チャンバ内に最初に充填する液体と同じものであり、
前記気泡が、前記上昇流に乗って前記透明傾斜面に沿って上昇する、
ことを特徴とする気泡測定装置。
【請求項2】
前記計測チャンバにおける、
前記透明傾斜面を正面から見たときの、前記透明傾斜面の一部である測定部の左右方向の長さが、
前記導入口の内面の左右方向の長さよりも長い、
ことを特徴とする請求項1に記載の気泡測定装置。
【請求項3】
前記透明傾斜面を正面から見たとき、
前記測定部にいたる拡大連通部の左右方向の長さが、
下側から上側に向けて一定の割合で長くなっている、
ことを特徴とする請求項2に記載の気泡測定装置。
【請求項4】
前記計測チャンバには、
前記透明傾斜面と垂直な面に沿って下側から上側に向けた補助流を生じさせるための、補助流形成液体を注入する第2注入口が設けられ、
前記補助流は、前記上昇流よりも流速が速い、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の気泡測定装置。
【請求項5】
前記透明傾斜面に光を照射する投光装置と、
該投光装置により光が照射された前記透明傾斜面を撮影する撮影装置と、が備えられている 、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の気泡測定装置。
【請求項6】
計測チャンバ内に、液体を導入する液体導入工程と、
前記計測チャンバの下方に設けられている気泡採取部を浸漬する気泡採取部浸漬工程と、
前記気泡採取部を開放し気泡を導入する気泡導入工程と、
前記計測チャンバ内の透明傾斜面に沿う上昇流を生じさせるための上昇流形成液体を第1注入口から注入する上昇流形成工程と、を含む、
ことを特徴とする気泡測定方法。
【請求項7】
前記上昇流形成工程は、
前記上昇流形成液体を第1注入口から注入する際に、前記透明傾斜面と垂直な面に沿って下側から上側に向けた補助流を生じさせるための、補助流形成液体を第2注入口から注入することを含む、
ことを特徴とする請求項6記載の気泡測定方法。
【請求項8】
前記透明傾斜面の一部である測定部に投光装置により光を照射し、該測定部を撮影装置で撮影する気泡撮影工程を、さらに含む、
ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の気泡測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡測定装置および気泡測定方法に関する。さらに詳しくは、浮遊選鉱機を構成する槽内などで発生した気泡のサイズおよび数量を測定する気泡測定装置および気泡測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有用金属を分離する選鉱において広く行われている浮遊選鉱法は、疎水性の有用金属の粒子を油性溶液の気泡に付着させて不要鉱物から分離する方法である。特許文献1には、浮遊選鉱機の1つであるアジテア型浮遊選鉱機が開示されている。
【0003】
浮遊選鉱機では、スラリーが蓄えられた浮遊選鉱槽内に撹拌機が設けられており、スラリー内に空気を導入して気泡を発生させることで、発生した気泡に有用金属を付着させる。この浮遊選鉱を効率よく行うために、発生した気泡のサイズおよび数量を適切に把握し、これらを適切な状態にすることが求められている。たとえば、非特許文献1には、気泡の状態を測定するための装置が開示されている。この文献で開示されている気泡測定装置では、斜め下を向いているガラス板を備え、このガラス板に液体中を浮上してくる気泡が衝突する。この様子は、CCDデジタルカメラで撮影され、気泡のサイズおよび数量が測定される。気泡が衝突するガラス板が斜め下を向いていることで、ガラス板の部分の気泡を撮影できるので、カメラの焦点を合わせるのが容易になるとともに、気泡の重なりを防止できるという効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-180289号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.R. Hernandez-Aguilar, C.O. Gomez, J.A. Finch, 「A technique for the direct measurement of bubble size distributions in industrial flotation cells」, Proceedings 34" Annual Meeting of the Canadian Mineral Processors, Canada, January 22-24,2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
浮遊選鉱機における選鉱の効率を上げるために、浮遊選鉱槽内の気泡の大きさを小さくすることが求められている。しかるに、気泡の大きさを小さくすると、従来の気泡測定装置では、透明なガラス板に気泡が付着してしまい、気泡が下から上に動作しないため、液体中の気泡の状態を正確に把握できないという問題がある。
本発明は上記事情に鑑み、液体中の気泡のサイズが小さくなっても、気泡の状態を正確に把握できる気泡測定装置および気泡測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の気泡測定装置は、液体中を移動する気泡を測定する気泡測定装置であって、該液体を保持する計測チャンバを備え、該計測チャンバには、前記液体中の前記気泡を下側から導入する導入口と、前記液体に内在する前記気泡が上昇してくる位置に設けられ、斜め下を向いている透明傾斜面と、該透明傾斜面に沿って下側から上側に向けた上昇流を生じさせるための、上昇流形成液体を注入する第1注入口と、が設けられ、前記上昇流形成液体は、前記計測チャンバ内に最初に充填する液体と同じものであり、前記気泡が、前記上昇流に乗って前記透明傾斜面を上昇することを特徴とする。
第2発明の気泡測定装置は、第1発明において、前記計測チャンバにおける、前記透明傾斜面を正面から見たときの、前記透明傾斜面の一部である測定部の左右方向の長さが、前記導入口の内面の左右方向の長さよりも長いことを特徴とする。
第3発明の気泡測定装置は、第2発明において、前記透明傾斜面を正面から見たとき、前記測定部にいたる拡大連通部の左右方向の長さが、下側から上側に向けて一定の割合で長くなっていることを特徴とする。
第4発明の気泡測定装置は、第1発明から第3発明のいずれかにおいて、前記計測チャンバには、前記透明傾斜面と垂直な面に沿って下側から上側に向けた補助流を生じさせるための、補助流形成液体を注入する第2注入口が設けられ、前記補助流は、前記上昇流よりも流速が速いことを特徴とする。
第5発明の気泡測定装置は、第1発明から第4発明のいずれかにおいて、前記透明傾斜面に光を照射する投光装置と、該投光装置により光が照射された前記透明傾斜面を撮影する撮影装置と、が備えられていることを特徴とする。
第6発明の気泡測定方法は、計測チャンバ内に、液体を導入する液体導入工程と、前記計測チャンバの下方に設けられている気泡採取部を浸漬する気泡採取部浸漬工程と、前記気泡採取部を開放し気泡を導入する気泡導入工程と、前記計測チャンバ内の透明傾斜面に沿う上昇流を生じさせるための上昇流形成液体を第1注入口から注入する上昇流形成工程と、を含むことを特徴とする。
第7発明の気泡測定方法は、第6発明において、前記上昇流形成工程は、前記上昇流形成液体を第1注入口から注入する際に、前記透明傾斜面と垂直な面に沿って下側から上側に向けた補助流を生じさせるための、補助流形成液体を第2注入口から注入することを含むことを特徴とする。
第8発明の気泡測定方法は、第6発明または第7発明のいずれかにおいて、前記透明傾斜面の一部である測定部に投光装置により光を照射し、該測定部を撮影装置で撮影する気泡撮影工程を、さらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、透明傾斜面に沿って下側から上側に向けた上昇流を生じさせるための、上昇流形成液体を注入する第1注入口が設けられていることにより、気泡が小さくなった場合でも、気泡を上昇流に乗せて運び去ることができるので、気泡の状態、すなわち気泡のサイズおよび数量を正確に測定することができる。
第2発明によれば、透明傾斜面の一部である測定部の左右方向の長さが、導入口の内面の左右方向の長さよりも長いことにより、気泡が左右方向に分散できるので、気泡の重なりを避けることができ、気泡の状態をより正確に測定することができる。
第3発明によれば、測定部にいたる拡大連通部の左右方向の長さが、下側から上側に向けて一定の割合で長さが長くなっていることにより、気泡の左右方向への分散がより容易になる。
第4発明によれば、透明傾斜面と垂直な面に沿って下側から上側に向けた補助流を生じさせるための、補助流形成液体を導入する第2注入口が設けられ、補助流は上昇流よりも流速が速くなっていることにより、ベルヌーイの定理から流速が大きい補助流周辺の圧力が、上昇流周辺の圧力よりも低くなり、気泡の左右方向への分散がさらに容易になる。
第5発明によれば、測定部に光を照射する投光装置と、測定部を撮影する撮影装置とが備えられていることにより、透明傾斜面における気泡の状態、すなわち気泡のサイズおよび数量を正確に記録することができる。
第6発明によれば、液体導入工程と、気泡導入工程と、上昇流形成液体を第1注入口から注入する上昇流形成工程とを、気泡測定方法が含むことにより、気泡が小さくなった場合でも、気泡を上昇流に乗せて運び去ることができるので、気泡の状態を正確に測定することができる。
第7発明によれば、上昇流形成工程は、透明傾斜面と垂直な面に沿って下側から上側に向けた補助流を生じさせるための、補助流形成液体を第2注入口から注入することを含むことにより、気泡の左右方向への分散が容易になり、気泡の状態を正確に測定することができる。
第8発明によれば、投光装置により光を照射し、測定部を撮影する気泡撮影工程がさらに含まれることにより、透明傾斜面における気泡の状態、すなわち気泡のサイズおよび数量を正確に記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る気泡測定装置を構成する計測チャンバの側面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る気泡測定装置の構成の概略説明図である。
図3図1の計測チャンバの側面方向からの断面図である。
図4図1の計測チャンバの透明傾斜面を正面から見た場合の図である。
図5図1の計測チャンバを構成する主部材の斜視図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る気泡測定装置を構成する計測チャンバの側面方向からの断面図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る気泡測定装置を構成する計測チャンバの側面図である。
図8図7の計測チャンバの側面方向からの断面図である。
図9図7の計測チャンバの透明傾斜面を正面から見た場合の図である。
図10】本発明の第4実施形態に係る気泡測定装置を構成する計測チャンバの側面図である。
図11図10の計測チャンバの透明傾斜面を正面から見た場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための気泡測定装置および気泡測定方法を例示するものであって、本発明は気泡測定装置を以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、本明細書において実際の「上下」を示す記載は、図1から図3図6から図8図10の図面上の上下と一致し、実際の「左右」を示す記載は、図4図9図11の図面上の左右と一致する。
【0011】
(気泡測定装置10の基本構成)
図2には、本発明の第1実施形態に係る気泡測定装置10の構成の概略説明図を示す。気泡測定装置10は、少なくとも後述する計測チャンバ11を備えている。気泡測定装置10は、たとえば浮遊選鉱機を構成する浮遊選鉱槽16で用いられているスラリーなどの液体W内の気泡のサイズおよび数量を測定するのに用いられる。気泡測定装置10は、浮遊選鉱槽16内の液体Wに浸漬する気泡採取部15と、この気泡採取部15からの液体中の気泡を計測チャンバ11へ導く延長管14とを備えていることが好ましい。また気泡測定装置10は、測定部23a(図3参照)の気泡の状態を視認することができる撮影装置12と、投光装置13とを備えているのが好ましい。投光装置13は、計測チャンバ11の一方の面からあらかじめ定められた種類の光を測定部23a(図3参照)に照射する。投光装置13は、たとえば白色LEDなどの面照明などが好適に用いられる。撮影装置12は、少なくとも静止画または動画のいずれかを撮影することができるデジタルカメラなどが好適に用いられる。撮影装置12で撮影された気泡のサイズおよび数量は、画像処理を行うソフトウェアで解析されることが好ましい。
【0012】
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態に係る気泡測定装置10を構成する計測チャンバ11の側面図を、図3にはこの計測チャンバ11の側面方向からの断面図を、図4には、計測チャンバ11の透明傾斜面を正面から見た場合の図を示す。図5には計測チャンバ11を構成する主部材22の斜視図を示す。
【0013】
計測チャンバ11は、複数の透明な部材から構成されている。本実施形態ではこれらの部材の材質は塩化ビニルである。部材の材質としては投光装置13から投光される光が計測チャンバ11を透過して撮影装置12で計測できるよう光透過率の高い部材を好適に用いることができる。部材の光透過率は波長400nm~700mmの可視光領域で80%以上が好ましく、90%以上がさらに好ましい。
上記光学特性を満足する部材としては塩化ビニルの他にガラス、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート等を用いることができる。
塩化ビニルは安価で加工性が高く透明性も高いため計測チャンバ11の部材として好適に用いることができる。またアクリルは塩化ビニルよりも透明性が高く、傷が付きにくく透明度の低下が少ないため、交換が難しい場所への設置に好適に用いることができる。
【0014】
計測チャンバ11には、主部材22と、この主部材22を挟むように、第1ふた部材23と第2ふた部材24とが設けられている。主部材22の外形は、厚みのある四角形の板形状、すなわち扁平な四角柱の形状をしている。主部材22には、径が比較的大きな計測孔22aが設けられている。この計測孔22aの軸線方向は、主部材22の四角柱形態のもっとも薄い厚さの、厚さ方向(以下この方向を主部材22の厚さ方向と称することがある)と一致している。この計測孔22aをふさぐように、主部材22を、第1ふた部材23と第2ふた部材24とで挟み込むことで、計測孔22a部分が、計測孔22aの軸線方向に閉じられた空間となる。
【0015】
ここで、主部材22と第1ふた部材23と第2ふた部材24とで構成される空間のうち、図3において第1ふた部材23の右側の面を透明傾斜面と称することがある。また、透明傾斜面のうち、計測孔22aが位置している部分を測定部23aと称することがある。本実施形態では、この透明傾斜面に、気泡の付着を抑制するために水との接触角が20度以下の親水性膜23bが設けられている。
【0016】
この親水性膜23bは、水との接触角が20度以下であり、光透過性があれば特に限定されない。たとえば、親水基を持つアクリル樹脂や、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロース類などの有機材料や、アクリルシリコン樹脂などの有機-無機ハイブリッド材料や、水ガラス(珪酸ソーダ)、酸化チタン、シリカなどの無機材料を用いることができる。特に親水性膜23bに酸化チタンを含有した材料は光触媒の作用により超親水性を示すため好適に用いられる。本実施形態における親水性膜23bの厚みは100μmであるが、20μm以上500μm以下であれば親水性の効果が発揮できる。
【0017】
計測チャンバ11は、さらに主部材22の下側に設けられている導入口接続部材26と、導入口接続部材26のさらに下側に設けられている導入管27と、主部材22の上側に設けられている導出管25と、を含んで構成されている。導入口接続部材26は通過孔を有し、導入管27、導出管25は、いずれも筒状構造であるので、図3に示すように、これらの部材を通して、計測チャンバ11は上下方向に連通している。このように連通していることにより、図3に示すように、計測チャンバ11内で液体Wを保持することが可能であるとともに、液体W内の気泡を導入口27aから導入することができる。
【0018】
計測チャンバ11を構成する導入管27は、管の内面の軸線が鉛直方向となるように配置される。また、この導入管27に接続する導入口接続部材26の上面は、水平面から傾き角θだけ傾いている。このように導入口接続部材26の上面が傾いていることにより、測定部23aを含む透明傾斜面が、鉛直から傾き角θだけ傾く。すなわち、透明傾斜面の法線が下向きになり、透明傾斜面が斜め下を向く姿勢となる。傾き角θは、導入口27aからの気泡の上昇してくる位置に透明傾斜面が位置するように決定される。本実施形態では傾き角θは15度である。
【0019】
図3に示すように、透明傾斜面が、傾き角θで傾いていることにより、液体W中を上昇してきた気泡は、測定部23aを含む透明傾斜面と接触し、一定の大きさ以上の気泡の場合、この透明傾斜面に沿って、図3に示す矢印のように気泡が上昇する。このように気泡が上昇することで、気泡の重なりを防止することができるので、気泡のサイズおよび数量を正確に測定できる。なおこの際、気泡が含まれる液体の移動はほとんどない。
【0020】
本実施形態の気泡測定装置10を構成する主部材22の計測孔22aの直径L1は、導入管27の導入口27aの内面の直径L2よりも長くなっている。ここで、計測孔22aの直径L1は、図4に示すように、透明傾斜面を正面から見たときの測定部23aの左右方向の長さである。
【0021】
また主部材22には、上述したように計測孔22aが設けられるとともに、この計測孔22aと導入口27aとを連通させるための拡大連通部22bが設けられている。図4に示すように、拡大連通部22bは、溝形状である。拡大連通部22bの溝部分の測定部23aにいたるまでの左右方向の長さが、下側から上側に向けて一定の割合で長くなっている。拡大連通部22bの溝形状の深さは、主部材22の厚さ方向の長さの1/3の深さを有している。
【0022】
本実施形態の気泡測定装置10が上記のような構成であることにより、以下(1)から(3)に記載の効果を奏する。
(1)計測チャンバ11内の透明傾斜面に、水との接触角が20度以下である親水性膜23bが設けられていることにより、気泡が小さくなった場合でも透明傾斜面に気泡が付着するのを防止できる。これにより気泡が透明傾斜面にとどまるのを防止でき、気泡の状態、すなわち気泡のサイズおよび数量を正確に測定することができる。
【0023】
(2)透明傾斜面を構成する部材である第1ふた部材23が、塩化ビニル製であることにより、透明傾斜面の透明性を確保しながら、計測チャンバ11の製作が容易になる。これにより気泡測定装置10の製造コストを抑えることができる。
【0024】
(3)親水性膜23bが酸化チタンを含んでいることから、気泡の状態を撮影する際に照射される光により光触媒の親水性の効果が発揮され、これにより気泡の付着を防止できる。
【0025】
(第1実施形態に係る気泡測定装置10の使用方法)
図2図3を用いて第1実施形態に係る気泡測定装置10の使用方法を説明する。
まず、気泡測定装置10の使用者は、気泡測定装置10の透明傾斜面が所定の傾き角θとなるように、すなわち導入管27の軸心が鉛直になるように気泡測定装置10の姿勢を決定する。そして、計測チャンバ11の測定部23aが測定できるように、投光装置13と、撮影装置12とを準備する。
【0026】
つぎに、気泡測定装置10の使用者は、気泡測定装置10の計測チャンバ11内に導出管25から液体Wを充填する。この際延長管14の下端は閉じられている。この充填により液体Wが、計測チャンバ11を始め、延長管14、導入管27、導入口接続部材26内に導入される(液体導入工程)。導入された後導出管25はバルブにより閉じられる。
【0027】
つぎに、気泡測定装置10の使用者は、液体Wが蓄えられた容器に気泡採取部15を浸漬する(気泡採取部浸漬工程)。たとえば使用者は、図2にあるように浮遊選鉱機の浮遊選鉱槽16の所定の位置に気泡採取部15を浸漬する。
【0028】
つぎに、浸漬された気泡採取部15を開放する。気泡採取部15が開放されることにより、気泡採取部15などに充填されている液体W中を通過し気泡が計測チャンバ11に向けて導入される(気泡導入工程)。
【0029】
計測チャンバ11に導入された気泡は、透明傾斜面に接触し、この透明傾斜面に沿って上側へ移動する。この際透明傾斜面には親水性膜23bが設けられているので、気泡は透明傾斜面に付着することなく上側へ移動する。
【0030】
つぎに、気泡測定装置10の使用者は、投光装置13で測定部23aに光を照射し、撮影装置12で測定部23aの状態を撮影する(気泡撮影工程)。撮影された画像に基づいて、気泡のサイズおよび数量が解析され、気泡の状態を正確に知ることができる。
【0031】
(第2実施形態)
図6には、本発明の第2実施形態に係る気泡測定装置10を構成する計測チャンバ11の側面方向からの断面図を示す。本実施形態と第1実施形態との相違点は、測定部23aにおける、第1ふた部材23と第2ふた部材24との間の距離が第1実施形態のものよりも短くなっている点である。すなわち第2ふた部材24に、主部材22の計測孔22aにはまり込むような円柱形状の凸部が設けられている。そのほかの点は、第1実施形態と同じである。第1ふた部材23と第2ふた部材24との間の最適な距離は、観測する気泡の大きさによって異なる。例えば気泡の大きさ(直径)が1μm以上100μm以下である場合は、第1ふた部材23と第2ふた部材24との間の距離は0.9mm以上1.1mm以下であることが好ましい。
【0032】
第1ふた部材23と第2ふた部材24との間の距離が0.9mm以上1.1mm以下であることにより、気泡の大きさが1μm以上100μm以下の気泡を適切に観測することができる。
【0033】
(第3実施形態)
図7には、本発明の第3実施形態に係る気泡測定装置10を構成する計測チャンバ11の側面図を、図8にはこの計測チャンバ11の側面方向からの断面図を、図9には、計測チャンバ11の透明傾斜面を正面から見た場合の図を示す。本実施形態に係る気泡測定装置10の基本構成は、第1実施形態に係る気泡測定装置10と同じである。第1実施形態の気泡測定装置10との相違点は、親水性膜23bが用いられていない点、および透明傾斜面に沿って下側から上側に向けた上昇流を生じさせるための、上昇流形成液体を注入する第1注入口26aが設けられている点である。以下の説明では、第1実施形態との相違点について説明する。なお、第3実施形態に係る気泡測定装置10においては、親水性膜23bが用いられていない構成について説明するが、親水性膜23bが用いられる場合もある。
【0034】
本実施形態の気泡測定装置10では、計測チャンバ11に、透明傾斜面に沿って、下側から上側に向けた上昇流を生じさせるための上昇流形成液体を注入するための第1注入口26aが設けられている。図8では、上昇流の流れを矢印で示している。上昇流形成液体は、計測チャンバ11内に最初充填する透明な液体と同じもので、気泡のサイズおよび数量に影響を与えない液体である必要がある。たとえば、浮遊選鉱槽16内の液体Wを使用することができる。第1注入口26aは、導入口接続部材26に1つ設けられており、第1注入口26aは図示しないポンプに接続され、このポンプから上昇流形成液体が注入される。この第1注入口26aの、透明傾斜面に対する角度は、滑らかに上昇流が形成できるように設ける必要がある。上昇流の透明傾斜面に沿った流速は、導入口27aからの気泡の上昇速度よりも速いことが望ましい。なお、上昇流形成液体は、計測チャンバ11から排出された後は、タンクに貯留され、気泡がないタンクの下部から再度上昇流形成液体としてポンプにより供給される場合がある。
【0035】
また、第1実施形態と同じように、本実施形態の気泡測定装置10を構成する主部材22の計測孔22aの直径L1は、導入管27の導入口27aの内面の直径L2よりも長くなっている。ここで、計測孔22aの直径L1は、図9に示すように、透明傾斜面を正面から見たときの測定部23aの左右方向の長さである。
【0036】
また第1実施形態と同じように、主部材22には、上述したように計測孔22aが設けられるとともに、この計測孔22aと導入口27aとを連通させるための拡大連通部22bが設けられている。図9に示すように、拡大連通部22bは、溝形状である。拡大連通部22bの溝部分の測定部23aにいたるまでの左右方向の長さが、下側から上側に向けて一定の割合で長くなっている。拡大連通部22bの溝形状の深さは、主部材22の厚さ方向の長さの1/3の深さを有している。
【0037】
本実施形態の気泡測定装置10が上記のような構成であることにより、以下(4)から(6)に記載の効果を奏する。
【0038】
(4)透明傾斜面に沿って下側から上側に向けた上昇流を生じさせるための、上昇流形成液体を注入する第1注入口26aが設けられていることにより、気泡が小さくなった場合でも、気泡を上昇流に乗せて運び去ることができるので、気泡の状態、すなわち気泡のサイズおよび数量を正確に測定することができる。
【0039】
(5)透明傾斜面の一部である測定部23aの左右方向の長さが、導入口27aの内面の左右方向の長さよりも長くなり、計測チャンバ11内に大きな空間があることにより、気泡が左右方向に分散できるので、気泡の重なりを避けることができ、気泡の状態をより正確に測定することができる。
【0040】
(6)測定部23aにいたる拡大連通部22bの左右方向の長さが、下側から上側に向けて一定の割合で長さが長くなっていることにより、気泡の左右方向への分散がより容易になる。
【0041】
(第3実施形態に係る気泡測定装置10の使用方法)
第3実施形態に係る気泡測定装置10の使用方法について説明する。第1実施形態に係る気泡測定装置10の使用方法との相違点は、気泡導入工程の後に上昇流注入工程が行われる点である。これ以外の点は第1実施形態の場合と同じである。以下の説明では、第1実施形態との相違点について説明する。なお、第3実施形態に係る気泡測定装置10においては、親水性膜23bが用いられていない構成について説明するが、親水性膜23bが用いられる場合もある。
【0042】
気泡導入工程のあと、気泡測定装置10の使用者は、計測チャンバ11内の透明傾斜面に沿う上昇流を生じさせるための上昇流形成液体を第1注入口26aから注入する(上昇流形成工程)。上昇流形成液体は、図示しないポンプを動作させて、第1注入口26aから注入される。
【0043】
液体導入工程と、上昇流形成液体を第1注入口26aから注入する上昇流形成工程とを、気泡測定方法が含むことにより、気泡が小さくなった場合でも、気泡を上昇流に乗せて運び去ることができるので、気泡の状態を正確に測定することができる。
【0044】
なお、気泡を導入する気泡導入工程の後に上昇流形成工程を行うように記載したが、工程の順番はこれに限定されない。たとえば上昇流形成工程が先に行われた後気泡導入工程が行われる場合もある。
【0045】
(第4実施形態)
図10には、本発明の第4実施形態に係る気泡測定装置10を構成する計測チャンバ11の側面図を、図11には、計測チャンバ11の透明傾斜面を正面から見た場合の図を示す。本実施形態に係る気泡測定装置10の基本構成は、第1実施形態に係る気泡測定装置10と同じである。また、第2実施形態の気泡測定装置10との相違点は、気泡測定装置10の計測チャンバ11に、補助流形成液体を注入する第2注入口26bが設けられている点である。なお図11には、点線矢印で補助流の流れを記載している。
【0046】
補助流は、主部材22の溝を形成している拡大連通部22bの、左右方向の長さが拡大している部分に形成される。この拡大している部分は、透明傾斜面と垂直な面である。補助流は、上昇流と同じく下側から上側に向けた流れである。この補助流は、導入口接続部材26に2箇所設けられた第2注入口26bから注入される補助流形成液体により形成される。補助流形成液体は、計測チャンバ11内に最初充填する透明な液体と同じもので、気泡のサイズおよび数量に影響を与えない液体である必要がある。たとえば、浮遊選鉱槽16内の液体Wを使用することができる。補助流の透明傾斜面に沿った流速は、少なくとも導入口27aからの気泡の上昇速度よりも速いことが望ましく、さらに上昇流の流速よりも速く、たとえば上昇流の流速の2倍とすることが望ましい。なお本実施形態では、第2注入口26bが2つ設けられているが、特にこれに限定されず1つである場合もある。この場合導入口接続部材26に補助流形成液体を分離する構成が設けられる。
【0047】
本実施形態の気泡測定装置10が上記のような構成であることにより、(7)に記載の効果を奏する。
(7)透明傾斜面と垂直な面に沿って下側から上側に向けた補助流を生じさせるための、補助流形成液体を導入する第2注入口26bが設けられ、補助流は上昇流よりも流速が速くなっていることにより、ベルヌーイの定理から流速が大きい補助流周辺の圧力が、上昇流周辺の圧力よりも低くなり、気泡の左右方向への分散がさらに容易になる。
【0048】
(第4実施形態に係る気泡測定装置10の使用方法)
第4実施形態に係る気泡測定装置10の使用方法について説明する。第3実施形態に係る気泡測定装置10の使用方法との相違点は、上昇流注入工程で補助流形成液体を注入する点である。
【0049】
気泡測定装置10の使用者は、上昇流形成工程において、上昇流形成液体を第1注入口26aから注入する際に、前記透明傾斜面と垂直な面に沿って下側から上側に向けた補助流を生じさせるための、補助流形成液体を注入する。補助流形成液体は、図示しないポンプを動作させて第2注入口26bから注入される。なお、本実施形態では、補助流形成液体を注入するためのポンプは、上昇流形成液体を注入するポンプとは異なっている。ただし、注入配管の途中に絞りを入れるなどして、同じポンプで注入を行うことも可能である。本実施形態では、補助流形成液体を注入し始めるタイミングは、上昇流形成液体を注入し始めるタイミングと同じであるが、必ずしも同じである必要はない。
【0050】
上昇流注入工程は、透明傾斜面と垂直な面に沿って下側から上側に向けた補助流を生じさせるための補助流形成液体を第2注入口26bから注入することを含むことにより、気泡の左右方向への分散が容易になり、気泡の状態を正確に測定することができる。
【0051】
なお、第3実施形態および第4実施形態に係る気泡測定装置10においては、第1ふた部材23と第2ふた部材24との間の距離は、第1実施形態に係る気泡測定装置10と同じようにすることもでき、また第2実施形態で記載のように第1実施形態よりも短くすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る気泡測定装置10について、浮遊選鉱機に対して使用する例を説明したが、本発明にかかる気泡測定装置10は、気泡が生じる他の装置で使用することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 気泡測定装置
11 計測チャンバ
22 主部材
22b 拡大連通部
23a 測定部
23b 親水性膜
26a 第1注入口
26b 第2注入口
27a 導入口
W 液体
θ 傾き角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11