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特開2023-6025化合物、組成物、膜、積層体および表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006025
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】化合物、組成物、膜、積層体および表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/60 20060101AFI20230111BHJP
   C07C 245/08 20060101ALI20230111BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20230111BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C09K19/60 A
C07C245/08 CSP
C09K19/38
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108394
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 京佑
(72)【発明者】
【氏名】八代 有弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 雅也
【テーマコード(参考)】
2H149
4H006
4H027
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB14
2H149BA02
2H149FA02X
2H149FA03Z
2H149FA23W
2H149FA24W
2H149FA28W
2H149FA51W
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB64
4H027BA03
4H027BA12
4H027BB02
4H027BD24
(57)【要約】
【課題】耐光性の高い膜を形成可能な組成物を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物と液晶性化合物とを含む組成物である。式中、nは1または2。Ar、ArおよびArは1,4-フェニレン基等を表し、これらの少なくとも1つは、分子内水素結合を形成し得る水酸基を有する。Rは-OC(=O)-、-N=N-等を表す。Rは、アルキルアミノ基を表す。Arが分子内水素結合を形成し得る水酸基を、有さないか、またはRのオルト位に有する場合、Rは、アルカンジイル基、アルカンジイルオキシ基、アルカンジイルオキシカルボニル基、アルカンジイルカルボニル基またはアルカンジイルカルボニルオキシ基を表す。Arが分子内水素結合を形成し得る水酸基をRのオルト位に有する場合、Rはその水酸基と水素結合を形成し得る環状または鎖状の基を表す。Rは、重合性基または水素原子を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物と、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも一方を含む液晶性化合物とを含む組成物。
【化1】
[式(1)中、nは、1または2の整数を表す。
Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、1,4-フェニレン基または含硫黄複素環基を表す。Ar、ArおよびArの少なくとも1つは、分子内水素結合を形成し得る水酸基を少なくとも1つ有する。
は-OC(=O)-、-C(=O)O-および-N=N-からなる群から選択される少なくとも1つの基を表す。
は、重合性基を有していてもよいアルキルアミノ基を表す。
Arが、分子内水素結合を形成し得る水酸基を、有さないか、またはRのオルト位に有する場合、Rは、炭素数4から20のアルカンジイル基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシ基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基、炭素数2から20のアルカンジイルカルボニル基および炭素数2から20のアルカンジイルカルボニルオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を表す。
Arが分子内水素結合を形成し得る水酸基をRのオルト位に有する場合、Rは、その水酸基と水素結合を形成し得る環状または鎖状である炭素数2から20の基を表す。
は、重合性基または水素原子を表す。
nが2である場合、2つのRは互いに同一であっても相異なっていてもよく、2つのArは互いに同一であっても相異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記重合性液晶化合物が重合性スメクチック液晶化合物であり、前記液晶性の高分子化合物がスメクチック液晶性の高分子化合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記重合性液晶化合物が、下記式(A)で表される化合物を含む請求項1または2に記載の組成物。
【化2】
[式(A)中、mは1から3の整数を表す。
、XおよびXは、それぞれ独立に、2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を表す。mが2または3である場合、複数あるXは互いに同一であっても相異なっていてもよい。X、XおよびXからなる群から選択される少なくとも3つが2価の炭化水素6員環基を表す。
、Y、WおよびWは、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表す。mが2または3である場合、複数あるYは互いに同一であっても相異なっていてもよい。
およびVは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1から20のアルカンジイル基を表す。前記アルカンジイル基を構成する-CH-の少なくとも1つは、-O-、-CO-、-S-または-NH-に置き換わっていてもよい。
およびUは、それぞれ独立に、重合性基または水素原子を表し、少なくとも一方は重合性基を表す。]
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物は、分子内水素結合を形成し得る水酸基数が1である請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(1)で表される化合物は、Rと分子内水素結合を形成し得る水酸基をArに有する請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
下記式(1a)で表される化合物。
【化3】
[式(1a)中、kは、1または2の整数を表す。
Ar11、Ar12およびAr13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基又は含硫黄複素環基を表す。Ar11およびAr12の少なくとも一方は、分子内水素結合を形成し得る水酸基を少なくとも1つ有する。
11は-OC(=O)-、-C(=O)O-および-N=N-からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表す。
12は、重合性基を有していてもよいアルキルアミノ基を表す。
Ar11が、分子内水素結合を形成し得る水酸基を、有さないか、またはR11のオルト位に有する場合、R13は、炭素数4から20のアルカンジイル基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシ基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基、炭素数2から20のアルカンジイルカルボニル基および炭素数2から20のアルカンジイルカルボニルオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を表す。
Ar11が分子内水素結合を形成し得る水酸基をR13のオルト位に有する場合、R13は、その水酸基と水素結合形成し得る環状または鎖状である炭素数2から20の基を表す。
14は、重合性基または水素原子を表す。
kが2である場合、2つのR11は互いに同一であっても相異なっていてもよく、2つのAr12は互いに同一であっても相異なっていてもよい。]
【請求項7】
分子内水素結合を形成し得る水酸基数が1である請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Ar11、Ar12およびAr13は、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基である請求項6または7に記載の化合物。
【請求項9】
13と分子内水素結合を形成し得る水酸基をAr11に有する請求項6から8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物を形成材料とする膜。
【請求項11】
請求項10に記載の膜を含む積層体。
【請求項12】
請求項11に記載の積層体を備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、組成物、膜、積層体および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示パネル等のディスプレイに対して薄型化の継続的な要求が存在しており、その構成要素の1つである偏光板、偏光子等に対してもさらなる薄型化が要求されている。このような要求に対して、例えば、重合性液晶化合物と二色性を示す色素化合物とを含む偏光膜を備える薄型のホストゲスト型偏光子が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007-510946号公報
【特許文献2】特開2013-37353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ホストゲスト型偏光子において、強い太陽光等の紫外線に連続的長時間晒されると吸光度が低下する場合があった。本発明の目的は、耐光性の高い化合物、その化合物を含む組成物、その組成物から形成される膜、その膜を備える積層体、その積層体を備える発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は下記[1]から[12]を提供する。
[1] 下記式(1)で表される化合物と、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも一方を含む液晶性化合物とを含む組成物。
【化1】
[式(1)中、nは、1または2の整数を表す。
Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、1,4-フェニレン基または含硫黄複素環基を表す。Ar、ArおよびArの少なくとも1つは、分子内水素結合を形成し得る水酸基を少なくとも1つ有する。
は-OC(=O)-、-C(=O)O-および-N=N-からなる群から選択される少なくとも1つの基を表す。
は、重合性基を有していてもよいアルキルアミノ基を表す。
Arが、分子内水素結合を形成し得る水酸基を、有さないか、またはRのオルト位に有する場合、Rは、炭素数4から20のアルカンジイル基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシ基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基、炭素数2から20のアルカンジイルカルボニル基および炭素数2から20のアルカンジイルカルボニルオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を表す。
Arが、分子内水素結合を形成し得る水酸基をRのオルト位に有する場合、Rは、その水酸基と水素結合を形成し得る環状または鎖状である炭素数2から20の基を表す。
は、重合性基または水素原子を表す。
nが2である場合、2つのRは互いに同一であっても相異なっていてもよく、2つのArは互いに同一であっても相異なっていてもよい。]
[2] 前記重合性液晶化合物が重合性スメクチック液晶化合物であり、前記液晶性の高分子化合物がスメクチック液晶性の高分子化合物である[1]に記載の組成物。
[3] 前記重合性液晶化合物が、下記式(A)で表される化合物を含む[1]または[2]に記載の組成物。
【化2】
[式(A)中、mは1から3の整数を表す。
、XおよびXは、それぞれ独立に、2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を表す。mが2または3である場合、複数あるXは互いに同一であっても相異なっていてもよい。X、XおよびXからなる群から選択される少なくとも3つが2価の炭化水素6員環基を表す。
、Y、WおよびWは、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表す。mが2または3である場合、複数あるYは互いに同一であっても相異なっていてもよい。
およびVは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1から20のアルカンジイル基を表す。前記アルカンジイル基を構成する-CH-の少なくとも1つは、-O-、-CO-、-S-または-NH-に置き換わっていてもよい。
およびUは、それぞれ独立に、重合性基または水素原子を表し、少なくとも一方は重合性基を表す。]
[4] 前記式(1)で表される化合物は、分子内水素結合を形成し得る水酸基数が1である[1]から[3]のいずれかに記載の組成物。
[5] 前記式(1)で表される化合物は、Rと分子内水素結合を形成し得る水酸基をArに有する[1]から[4]のいずれかに記載の組成物。
[6] 下記式(1a)で表される化合物。
【化3】
[式(1a)中、kは、1または2の整数を表す。
Ar11、Ar12およびAr13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基又は含硫黄複素環基を表す。Ar11およびAr12の少なくとも一方は、分子内水素結合を形成し得る水酸基を少なくとも1つ有する。
11は-OC(=O)-、-C(=O)O-および-N=N-からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表す。
12は、重合性基を有していてもよいアルキルアミノ基を表す。
Ar11が分子内水素結合を形成し得る水酸基を、有さないか、またはR11のオルト位に有する場合、R13は、炭素数4から20のアルカンジイル基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシ基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基、炭素数2から20のアルカンジイルカルボニル基および炭素数2から20のアルカンジイルカルボニルオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を表す。
Ar11が分子内水素結合を形成し得る水酸基をR13のオルト位に有する場合、R13は、その水酸基と水素結合形成し得る環状または鎖状である炭素数2から20の基を表す。
14は、重合性基または水素原子を表す。
kが2である場合、2つのR11は互いに同一であっても相異なっていてもよく、2つのAr12は互いに同一であっても相異なっていてもよい。]
[7] 分子内水素結合を形成し得る水酸基数が1である[6]に記載の化合物。
[8] Ar11、Ar12およびAr13は、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基である[6]または[7]に記載の化合物。
[9] R13と分子内水素結合を形成し得る水酸基をAr11に有する[6]から[8]のいずれかに記載の化合物。
[10] [1]から[5]のいずれかに記載の組成物を形成材料とする膜。
[11] [10]に記載の膜を含む積層体。
[12] [11]に記載の積層体を備える表示装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐光性の高い化合物、それを含む組成物、その組成物から形成される膜、その膜を備える積層体、積層体を備える発光装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書に記載される数値範囲の上限及び下限は、当該数値を任意に選択して組み合わせることが可能である。以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0008】
<組成物>
本実施形態にかかる組成物は、下記式(1)で表される化合物と、液晶性化合物とを含む。液晶性化合物は、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも一方を含む。組成物は、例えば偏光膜の形成材料として用いられる。すなわち組成物は、偏光膜形成用組成物であってよい。組成物を形成材料として得られる偏光膜を備える偏光板は、可視光に対する耐光性が向上し、式(1)で表される化合物の最大吸収波長における吸光度の低下を抑制することができる。
【0009】
下記式(1)で表される化合物は、Ar、ArおよびArの少なくとも1つが、分子内水素結合を形成し得る水酸基を少なくとも1つ有することで、耐光性が向上すると考えられる。
【0010】
【化4】
【0011】
式(1)中、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、1,4-フェニレン基または2価の含硫黄複素環基を表し、好ましくは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基を表す。2価の含硫黄複素環基としては、ベンゾチアゾールジイル基、チエノチアゾールジイル基およびチアゾールジイル基が挙げられ、好ましくはベンゾチアゾールジイル基である。
【0012】
Ar、ArおよびArにおける置換基は、ハロゲン原子、水酸基、メチル基およびメトキシ基からなる群から選択される少なくとも1種であってよく、好ましくはフッ素原子、塩素原子、水酸基、メチル基またはメトキシ基であり、より好ましくはフッ素原子または水酸基である。Ar、ArおよびArにおける置換基数は、それぞれ独立に、例えば0、1または2であり、好ましくは0または1である。
【0013】
Ar、ArおよびArの少なくとも1つは、分子内水素結合を形成し得る水酸基を少なくとも1つ有する。分子内水素結合を形成し得る水酸基は、ArおよびArの少なくとも一方に存在することが好ましく、少なくともArに存在することがより好ましい。
【0014】
水酸基が分子内水素結合を形成し得る官能基は、同一環上に隣接して存在していてよい。すなわち、水酸基はそのオルト位に存在する官能基と分子内水素結合を形成することが好ましく、6員環状の分子内水素結合を形成することもまた好ましい。水酸基が分子内水素結合を形成し得る官能基としては、水酸基、アルコキシ基、アゾ基、カルボニル基、オキシカルボニル基(-OC(=O)-)、カルボニルオキシ基(-C(=O)O-)、2-ピロリジンジイル基、2-ピペリジンジイル基、2-ピリミジンジイル基、2-チアゾールジイル基、2-チアゾリンジイル基、2-オキサゾールジイル基、2-オキサゾリンジイル基等を挙げることができる。水酸基が分子内水素結合を形成し得る官能基は、例えば、アゾ基以外の官能基であってよい。
【0015】
式(1)で表される化合物は、分子内水素結合を形成し得る水酸基をArおよびArの少なくとも一方に有し、その水酸基がRおよびRの少なくとも1つと分子内水素結合を形成することが好ましく、分子内水素結合を形成し得る水酸基を少なくともArに有し、その水酸基がRと分子内水素結合を形成することがより好ましい。式(1)で表される化合物における分子内水素結合を形成し得る水酸基の数は、例えば1であってよい。水酸基がRと分子内水素結合を形成する場合、Rは-C(=O)O-であることが好ましい。また、水酸基がRと分子内水素結合を形成する場合、Rは-OC(=O)-、カルボニル基、2-ピロリジンジイル基、2-ピペリジンジイル基、2-ピリミジンジイル基、2-チアゾールジイル基、2-チアゾリンジイル基、2-オキサゾールジイル基または2-オキサゾリンジイル基を含むことが好ましく、-OC(=O)-またはカルボニル基を含むことがより好ましく、炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基または炭素数2から20のアルカンジイルカルボニル基であることがさらに好ましい。
【0016】
は-OC(=O)-、-C(=O)O-および-N=N-からなる群から選択される少なくとも1つの基を表し、好ましくは-OC(=O)-、-C(=O)O-または-N=N-である。
【0017】
は、重合性基を有していてもよいアルキルアミノ基を表す。Rにおけるアルキルアミノ基は、モノアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基であってよく、好ましくはジアルキルアミノ基である。Rにおけるアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、モノプロピルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、モルホリニル基、オキサゾリジニル基等を挙げることでき、これらからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。Rにおけるアルキルアミノ基は、好ましくはジメチルアミノ基またはジエチルアミノ基である。
【0018】
で表されるアルキルアミノ基が有する水素原子は、その少なくとも1つが重合性基に置換されていてもよい。ここで重合性基としては、例えば、(メタ)アクリレート基((メタ)アクリロイルオキシ基)、ビニルフェニル基、ビニル基、エポキシ基等を挙げることができる。重合性基は、ラジカル重合性基であることが好ましく、中でも、(メタ)アクリレート基が好ましい。Rが重合性基を有する場合、その数は、例えば、1または2個であり、好ましくは1個である。
【0019】
としては、水酸基と分子内水素結合を形成し得る環状または鎖状である炭素数2から20の基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基、炭素数2から20のアルカンジイルカルボニル基、炭素数4から20のアルカンジイル基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシ基、炭素数2から20のアルカンジイルカルボニルオキシ基等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0020】
Arが、分子内水素結合を形成し得る水酸基を、有さないか、またはRのオルト位に有する場合、Rは、炭素数4から20のアルカンジイル基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシ基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基、炭素数2から20のアルカンジイルカルボニル基および炭素数2から20のアルカンジイルカルボニルオキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を表す。
【0021】
炭素数4から20のアルカンジイル基としては、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の無置換の(置換基を有していない)直鎖状又は分枝鎖状の炭素数4から20のアルキル基から水素原子を1つ取り除いて形成されるアルカンジイル基が挙げられる。アルカンジイル基の炭素数は、4から16が好ましく、4から12がより好ましい。
【0022】
炭素数4から20のアルキル基を構成する1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基または置換アミノ基で置換されていてもよい。ここで置換アミノ基としては、例えば、N-メチルアミノ基、N-エチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基等の1つまたは2つの炭素数1から20のアルキル基で置換されたアミノ基などが挙げられる。1つ以上の水素原子がハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基等で置換されたアルキル基としては、フルオロブチル基、オクタフルオロブチル基等の炭素数4から20のハロアルキル基;ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基等の炭素数4から20のヒドロキシアルキル基;アミノブチル基、2-(N,N-ジメチルアミノ)ブチル基等の無置換アミノ基または置換アミノ基を有する炭素数4から20のアルキル基などが挙げられる。
【0023】
炭素数2から20のアルカンジイルオキシ基としては、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブトキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基等の無置換の直鎖状又は分枝鎖状の炭素数2から20のアルコキシ基から水素原子を1つ取り除いて形成されるアルカンジイルオキシ基が挙げられる。アルカンジイルオキシ基の炭素数は、2から16が好ましく、2から12がより好ましい。
【0024】
炭素数2から20のアルコキシ基を構成する1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基または置換基を有するアミノ基で置換されていてもよい。置換基を有するアミノ基は上記と同様である。1つ以上の水素原子がハロゲン原子、ヒドロキシ、アミノ基等で置換されたアルコキシ基としては、テトラフルオロエトキシ基、オクタフルオロブトキシ基等の炭素数2から20のハロアルコキシ基;2-ヒドロキシエトキシ基等の炭素数2から20のヒドロキシアルコキシ基;アミノエトキシ基、2-(N,N-ジメチルアミノ)エトキシ基等の無置換または置換基を有するアミノ基を有する炭素数2から20のアルコキシ基が挙げられる。
【0025】
炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、n-デシルオキシカルボニル基等の無置換の炭素数2から20のアルコキシカルボニル基から水素原子を1つ取り除いて形成されるアルカンジイルオキシカルボニル基が挙げられる。アルカンジイルオキシカルボニル基のアルカンジイル部分の炭素数は、1から16が好ましく、1から12がより好ましい。
【0026】
炭素数2から20のアルコキシカルボニル基を構成する1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基または置換基を有するアミノ基で置換されていてもよい。置換基を有するアミノ基は上記と同様である。1つ以上の水素原子がハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基等で置き換わったアルコキシカルボニル基としては、フルオロエトキシカルボニル基、トリフルオロエトキシカルボニル基、テトラフルオロエトキシカルボニル基、オクタフルオロブトキシカルボニル基等の炭素数2から20のハロアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0027】
炭素数2から20のアルカンジイルカルボニル基としては、アセチル基、エチルカルボニル基、n-プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、n-ブチルカルボニル基、イソブチルカルボニル基、tert-ブチルカルボニル基、n-ペンチルカルボニル基、イソペンチルカルボニル基、ネオペンチルカルボニル基、n-ヘキシルカルボニル基、n-ヘプチルカルボニル基、n-オクチルカルボニル基、n-ノニルカルボニル基、n-デシルカルボニル基等の無置換の炭素数2から20のアルカノイル基から水素原子を1つ取り除いて形成されるアルカンジイルカルボニル基が挙げられる。アルカンジイルカルボニル基のアルカンジイル部分の炭素数は、1から16が好ましく、1から12がより好ましい。
【0028】
炭素数2から20のアルカノイル基を構成する1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基または置換基を有するアミノ基で置換されていてもよい。置換基を有するアミノ基は上記と同様である。1つ以上の水素原子がハロゲン原子、ヒドロキシ基等で置換されたアルカノイル基としては、フルオロエトキシカルボニル基、トリフルオロエトキシカルボニル基、テトラフルオロエチルカルボニル基、オクタフルオロブチルカルボニル基等の炭素数2から20のハロアシル基が挙げられる。
【0029】
炭素数2から20のアルカンジイルカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、tert-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、イソペンチルカルボニルオキシ基、ネオペンチルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、n-ヘプチルカルボニルオキシ基、n-オクチルカルボニルオキシ基、n-ノニルカルボニルオキシ基、n-デシルカルボニルオキシ基等の無置換の炭素数2から20のアルカノイルオキシ基から水素原子を1つ取り除いて形成されるアルカンジイルカルボニルオキシ基が挙げられる。アルカンジイルカルボニルオキシ基のアルカンジイル部分の炭素数は、1から16が好ましく、1から12がより好ましい。
【0030】
炭素数2から20のアルカノイルオキシ基を構成する1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基または置換基を有するアミノ基で置換されていてもよい。置換基を有するアミノ基は上記と同様である。1つ以上の水素原子がハロゲン原子、ヒドロキシ基等で置換されたアルカノイルオキシ基としては、テトラフルオロエチルカルボニルオキシ基、オクタフルオロブチルカルボニルオキシ基等の炭素数2から20のハロアシルオキシ基が挙げられる。
【0031】
炭素数4から20のアルキル基、炭素数2から20のアルコキシ基、炭素数2から20のアルコキシカルボニル基、炭素数2から20のアルカノイル基または炭素数2から20のアルカノイルオキシ基を構成するアルキル基部分を構成する-CH-の少なくとも1つは、-O-および-NR-の少なくとも1つで置換されていてもよい。ここでRは、水素原子または炭素数1から6、好ましくは炭素数1から4のアルキル基を表わし、炭素数1から6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基などが挙げられる。炭素原子間に、-O-または-NR-が挿入された置換アルキル基としては、2-エトキシエチル基、2-(2-エトキシエトキシ)エチル基、2-[2-(エチルアミノ)エチル)アミノ]エチル基等が挙げられる。
【0032】
Arが、分子内水素結合を形成し得る水酸基をRのオルト位に有する場合、Rは、その水酸基と分子内水素結合を形成し得る環状または鎖状である炭素数2から20の基を表す。Rは、好ましくは、水酸基と分子内水素結合を形成し得る鎖状の炭素数2から20の基であってよい。Rで表され、水酸基と分子内水素結合を形成し得る環状の基としては、2-ピロリジンジイル基、2-ピペリジンジイル基、2-ピリミジンジイル基、2-チアゾールジイル基、2-チアゾリンジイル基、2-オキサゾールジイル基、2-オキサゾリンジイル基等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。水酸基と分子内水素結合を形成し得る環状の基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、アルコキシ基、アルキル基、アルキルカルボニル基等を挙げることができる。置換基がアルキル部分を有する場合、その炭素数は、例えば、1から10であってよい。
【0033】
で表され、水酸基と分子内水素結合を形成し得る鎖状の基としては、炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基、炭素数2から20のアルカンジイルカルボニル基等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基および炭素数2から20のアルカンジイルカルボニル基については、既述のとおりである。
【0034】
は、重合性基または水素原子を表す。Rで表される重合性基としては、例えば、(メタ)アクリレート基((メタ)アクリロイルオキシ基)、ビニルフェニル基、ビニル基、エポキシ基等を挙げることができる。重合性基は、ラジカル重合性基であることが好ましく、中でも、(メタ)アクリレート基が好ましい。
【0035】
nは1または2を表す。nが2の場合、2つのRは互いに同一であっても相異なっていてもよく、2つのArは互いに同一であっても相異なっていてもよい。
【0036】
式(1)で表される化合物は、Ar、ArおよびArの少なくとも1つに、分子内水素結合を形成し得る水酸基を少なくとも1つ有する。式(1)で表される化合物における分子内水素結合を形成し得る水酸基数は、例えば1であってよい。以下に、式(1)で表される化合物における分子内水素結合の例を示すが、本発明はこれらの態様に限定されるわけではない。以下の例示ではAr、ArおよびArを便宜的に1,4-フェニレン基としているがこれに限定されない。また、R31は炭素数2から20のアルカンジイル基を表す。
【0037】
(1)分子内水素結合を形成し得る水酸基をArに有する場合
Ar上の水酸基は、例えば、RまたはRと6員環状の分子内水素結合を形成することができる。Ar上の水酸基がRと分子内水素結合を形成する態様としては、以下の(a)、(b)等を例示することができる。また、Ar上の水酸基がRと分子内水素結合を形成する態様としては、以下の(c)、(d)等を例示することができる。
【0038】
【化5】
【0039】
(2)分子内水素結合を形成し得る水酸基をArに有する場合
Ar上の水酸基は、例えば、RまたはArとArを連結するアゾ基と6員環状の分子内水素結合を形成することができる。Ar上の水酸基がRと分子内水素結合を形成する態様としては、以下の(e)、(f)等を例示することができる。また、Ar上の水酸基がArとArを連結するアゾ基と分子内水素結合を形成する態様としては、以下の(g)等を例示することができる。
【0040】
【化6】
【0041】
(3)分子内水素結合を形成し得る水酸基をArに有する場合
Ar上の水酸基は、例えば、ArとArを連結するアゾ基と6員環状の分子内水素結合を形成することができる。具体的には、以下の(h)等を例示することができる。
【0042】
【化7】
【0043】
分子内水素結合の態様は、耐光性の観点から、(a)から(h)のいずれかであることが好ましく、(a)、(b)、(c)および(e)のいずれかであることがより好ましく、(a)および(b)のいずれかであることがさらに好ましい。
【0044】
分子内水素結合の有無は、H-NMRを測定することで判断できる。例えば、https://www.chem-station.com/yukitopics/nmr-analysis.htm、「有機化合物のスペクトルによる同定法(第6版)」(1999年、東京化学同人、P.162-165)などに記載されているように、水素結合を形成している水酸基のプロトンは、水素結合を形成していない場合に比べて、低磁場側に観測される。分子内水素結合を形成している水酸基の化学シフトは、例えば重クロロホルム(CDCl)中において、9.0ppm以上18.0ppm以下であってよく、好ましくは10.0ppm以上であってよい。
【0045】
また、一般に水酸基の化学シフトは測定溶媒の極性に大きく影響される。具体的には、高極性溶媒(例えばDMSO-d)中では低磁場側に大きくシフトする。しかし、水酸基が水素結合を形成している場合には測定溶媒の影響が小さくなる。分子内水素結合を形成している水酸基の高極性溶媒(例えばDMSO-d)中における化学シフトと、低極性溶媒(例えばCDCl)中における化学シフトとの差分は、例えば1.0ppm以下であってよく、0.5ppm以下であってよい。
【0046】
式(1)で表される化合物は、極大吸収波長(λmax)は、例えば350nm以上700nm以下であってよく、好ましくは380nm以上650nm以下であってよい。極大吸収波長は、式(1)で表される化合物のクロロホルム溶液について、室温(例えば、25℃)で測定される。式(1)で表される化合物の極大吸収波長は、例えば、Ar、ArおよびArの骨格構造、Ar、ArおよびArにおける置換基、n、R等を適宜選択することで所望の波長に調整することができる。
【0047】
式(1)で表される化合物の具体例としては、以下の式(1-1)から式(1-75)で表される化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
【化8】
【0049】
【化9】
【0050】
【化10】
【0051】
【化11】
【0052】
【化12】
【0053】
【化13】
【0054】
【化14】
【0055】
【化15】
【0056】
【化16】
【0057】
【化17】
【0058】
式(1)で表される化合物は、耐光性の観点から、式(1-1)から(1-46)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、式(1-1)から(1-35)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、式(1-1)から(1-27)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種がさらに好ましく、式(1-1)から(1-18)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0059】
式(1)で表される化合物の製造方法
式(1)で表される化合物は従来公知の合成方法を適宜適用することで製造することができる。具体的に、式(1)で表される化合物におけるアゾ構造(-N=N-)は、例えば、国際公開WO2016/136561号の段落[0220]から[0268]の製造例の記載等を参考に、1級アミノ基を有する芳香族アミン化合物を亜硝酸ナトリウムなどでジアゾニウム塩に変換し、芳香族化合物とジアゾカップリングさせることで構築することができる。また、チアゾール構造を含むアゾ構造は、例えば、J. Mol. Struct., 2011, 987,158.の記載を参照して構築することができる。
【0060】
がアルカンジイルオキシ基である化合物は、例えば、ヒドロキシ基を有する前駆体にSN2置換反応を適用することで所望のアルカンジイルオキシ基を有する化合物として製造することができる。SN2置換反応は、従来公知の反応条件を適宜適用してもよいし、例えば、J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 13079の記載を参照してもよい。
【0061】
式(1)で表される化合物が、-OC(=O)-またはC(=O)O-を含む場合、例えば、カルボキシ基を有する前駆体と、水酸基を有する前駆体とを用いて、Jiang, L.; Lu, X.; Zhang, H.; Jiang, Y.; Ma, D. J. Org. Chem. 2009, 74 (3), 4542-4546.などを参考にして脱水縮合反応を適用することで合成することができる。具体的には例えば、溶媒中、エステル化縮合剤の存在下で縮合する条件が挙げられる。
【0062】
Ar、ArまたはArに水酸基を有する化合物は、サリチル酸型メトキシ基の脱メチル化反応の文献(例えば、(Chem. Commun. 2010, 46, 9019-9021.)を参考にして脱メチル化を行うことで水酸基に変換することができる。例えば、溶媒中脱メチル化剤を用いる条件が挙げられる。溶媒としては非プロトン性極性溶媒が挙げられ、単独溶媒であっても混合溶媒であってもよい。非プロトン性極性溶媒としては、アミド系溶媒やラクトン系溶媒、含窒素芳香族系溶媒、スルホキシド系溶媒等が挙げられる。アミド系溶媒としては、N、N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、N、N-ジメチルホルムアミド、N、N-ジエチルホルムアミド、N、N-ジエチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。ラクトン系溶媒としては、γ-ブチルラクトン、β-ブチルラクトン等が挙げられる。含窒素芳香族系溶媒としては、ピリジン、キノリン等が挙げられる。スルホキシド系溶媒としては、ジメチルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド等が挙げられる。なかでも好ましい例としてはN-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系溶媒、ピリジンなどの含窒素芳香族系溶媒が挙げられる。なかでもN-メチル-2-ピロリドン、ピリジンの混合溶媒であることがより好ましい。脱メチル化剤としてはリチウム塩を用いることが好ましく、なかでも塩化リチウムがより好ましい。反応温度は例えば0℃から200℃の範囲が挙げられ、好ましくは20℃から150℃の範囲であり、より好ましくは50℃から120℃の範囲である。反応終了後室温まで冷却し、塩酸、水などの貧溶媒を滴下して析出させることで、脱メチル化した生成物を得ることができる。
【0063】
式(1)で表される化合物の製造方法における反応時間は、反応途中の反応混合物を適宜サンプリングし、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段により、原料化合物の消失の度合い、式(1)で表される化合物の生成の度合いなどを確認して定めることもできる。
【0064】
反応後の反応混合物からは、再結晶、再沈殿、抽出および各種クロマトグラフィーといった公知の方法により、或いはこれらの操作を適宜組み合わせることにより、式(1)で表される化合物を取り出すことができる。
【0065】
組成物は、式(1)で表される化合物以外のその他の色素化合物、例えば二色性色素の少なくとも1種を更に含んでいてもよい。その他の色素化合物としては、例えば、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、スチルベンアゾ色素などのアゾ色素を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。組成物は、その他の色素化合物を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。例えば塗布型偏光板材料として用いる場合では、組成物が含むその他の色素化合物は、式(1)で表される化合物とは異なる波長範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。例えば塗布型偏光板材料として用いる場合では、組成物は、式(1)で表される化合物を含めて、3種類以上の二色性色素を組み合わせて含むことが好ましく、3種類以上のアゾ色素を組み合わせて含むことがより好ましい。組成物が極大吸収波長の異なる3種以上の色素化合物を組み合わせて含むことで、例えば、組成物から形成される膜によって可視光全域で吸収を得ることができる。
【0066】
組成物が、その他の色素化合物を含む場合、その含有量は、組成物の固形分100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下の範囲がより好ましく、0.1質量部以上5質量部以下の範囲がさらに好ましい。上記範囲内であれば、その他の色素化合物の分散が十分に可能になる。
【0067】
液晶性化合物
組成物は、式(1)で表される化合物に加えて、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも1種を含む液晶性化合物を含む。組成物は、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の一方のみを含んでいても、両方を含んでいてもよい。また、組成物に含まれる重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物は、それぞれ2種以上であってもよい。組成物が重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも1種を含むことで、式(1)で表される化合物が液晶性化合物に分散した組成物を構成することができる。
【0068】
液晶性の高分子化合物は、サーモトロピック液晶型ポリマーを構成するものであってもよいし、リオトロピック液晶型ポリマーを構成するものであってもよい。液晶性の高分子化合物は、緻密な膜厚制御が可能な点で、サーモトロピック液晶型ポリマーを構成するものであることが好ましい。
【0069】
液晶の分類としては、液晶状態での分子配列の構造により、スメクチック液晶、ネマチック液晶、コレステリック液晶に分類される。なかでも偏光膜用途においてはスメクチック液晶が好ましく用いられる。したがって、重合性液晶化合物は、重合性スメクチック液晶化合物であることが好ましく、液晶性の高分子化合物は、スメクチック液晶性の高分子化合物であることが好ましい。
【0070】
スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物およびスメクチック液晶性を示す高分子化合物を用いることにより、配向秩序度の高い偏光膜を形成することができる。重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の示す液晶状態は、好ましくはスメクチック相(スメクチック液晶状態)であり、より高い配向秩序度を実現し得る観点から、高次スメクチック相(高次スメクチック液晶状態)であることがより好ましい。ここで、高次スメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相およびスメクチックL相を意味し、これらの中でも、スメクチックB相、スメクチックF相およびスメクチックI相がより好ましい。配向秩序度の高い偏光膜は、X線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。ブラッグピークとは、分子配向の面周期構造に由来するピークを意味する。組成物から得られる偏光膜が有する周期間隔(秩序周期)は、好ましくは0.3nm以上0.6nm以下である。重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物は、X線回折測定において高次構造由来のブラッグピークを示す、重合性スメクチック液晶化合物またはスメクチック液晶性の高分子化合物であってよい。
【0071】
重合性液晶化合物
重合性液晶化合物とは、分子内に少なくとも1つの重合性基を有し、配向することによって液晶相を示すことができる化合物である。重合性液晶化合物は、好ましくは単独で配向することによって液晶相を示すことができる化合物である。重合性基とは、重合反応に関与し得る官能基を意味し、ラジカル重合性基であることが好ましい。
【0072】
重合性液晶化合物としては、少なくとも1つの重合性基を有し、好ましくはスメクチック液晶性を示す液晶化合物であれば特に限定されず、公知の重合性液晶化合物を用いることができる。重合性液晶化合物として具体的には、例えば、下記式(A)で表される化合物(以下、「重合性液晶化合物(A)」ともいう)が好ましく挙げられる。
【0073】
【化18】
【0074】
式(A)中、kは1から3の整数である。X、XおよびXは、各々独立して、2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を表す。kが2または3である場合、複数のX1は互いに同一であっても相異なっていてもよい。X、XおよびXからなる群から選択される少なくとも3つが2価の炭化水素6員環基を表す。Y、Y、WおよびWは、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表す。kが2または3である場合、Yは互いに同一であっても相異なっていてもよい。VおよびVは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1から20のアルカンジイル基を表す。アルカンジイル基を構成する-CH-の少なくとも1つは、-O-、-CO-、-S-または-NH-に置換されていてもよい。UおよびUは、それぞれ独立に、重合性基または水素原子を表し、少なくとも一方は重合性基を表す。
【0075】
、XおよびXにおける2価の芳香族基としては、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基(ナフタレン-1,4-ジイル基)等が挙げられる。2価の脂環式炭化水素基としては、シクロヘキサン-1,4-ジイル基等が挙げられる。X、XおよびXにおける2価の芳香族基および2価の脂環式炭化水素基の少なくとも1つは、置換基を有していてもよい。置換基としては、メチル基、エチル基、n-ブチル基等の炭素数1から4のアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。2価の脂環式炭化水素基を構成する-CH-の少なくとも1つは、-O-、-S-または-NR-に置換されていてもよい。ここで、Rは、炭素数1から6のアルキル基またはフェニル基を表す。
【0076】
、XおよびXにおける2価の炭化水素6員環基としては、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基等が挙げられる。
【0077】
、XおよびXにおける2価の芳香族基は、好ましくは置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基であり、より好ましくは無置換の1,4-フェニレン基である。また2価の脂環式炭化水素基は、好ましくは置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、より好ましくは置換基を有していてもよいトランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であり、さらに好ましくは無換基のトランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基である。
【0078】
およびYは、各々独立して単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基は、例えば、-CHCH-、-CHO-、-(C=O)O-、-O(C=O)O-、-N=N-、-CR=CR-、-C≡C-および-CR=N-からなる群から選択される少なくとも1種である。ここでRおよびRは、各々独立して、水素原子または炭素数1から4のアルキル基を表す。Yは、好ましくは-CHCH-、-(C=O)O-または単結合である。Yは、好ましくは-CHCH-または-CHO-である。
【0079】
およびWは、各々独立して、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基は、例えば、-O-、-S-、-(C=O)O-および-O(C=O)O-からなる群から選択される少なくとも1種である。WおよびWは、各々独立して、好ましくは単結合または-O-である。
【0080】
およびVは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1から20のアルカンジイル基を表す。前記アルカンジイル基を構成する-CH-の少なくとも1つは、-O-、-CO-、-S-または-NH-に置き換わっていてもよい。
【0081】
およびVで表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,1-ジイル基、およびイコサン-1,20-ジイル基が挙げられる。VおよびVは、好ましくは炭素数2から12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6から12のアルカンジイル基である。
【0082】
置換基を有していてもよい炭素数1から20のアルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基およびハロゲン原子が挙げられる。当該アルカンジイル基は、好ましくは置換基を有していないアルカンジイル基であり、より好ましくは置換基を有しておらず、かつ直鎖状のアルカンジイル基である。
【0083】
およびUは、それぞれ独立に、重合性基または水素原子を表し、少なくとも一方は重合性基を表す。UおよびUは、好ましくは重合性基である。UおよびUがともに重合性基であることが好ましく、ともにラジカル重合性基であることが好ましい。Uで示される重合性基とUで示される重合性基とは、互いに異なっていてもよいが、同じ種類の基であることが好ましい。UおよびUにおける重合性基としては、重合性液晶化合物が有する重合性基として先に例示した重合性基と同様のものが挙げられる。中でも、UおよびUで表される重合性基は、ビニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、およびオキセタニル基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0084】
重合性液晶化合物(A)の具体例としては、下記式(A-1)から式(A-17)で表される化合物が挙げられる。重合性液晶化合物(A)がシクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合には、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス型であることが好ましい。
【0085】
【化19】
【0086】
【化20】
【0087】
【化21】
【0088】
中でも、重合性液晶化合物(A)は、式(A-2)、式(A-3)、式(A-4)、式(A-5)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-8)、式(A-13)、式(A-14)、式(A-15)、式(A-16)および式(A-17)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。重合性液晶化合物(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
重合性液晶化合物(A)は、例えば、Lub et al. Recl. Trav. Chim. Pays-Bas,115,321-328(1996)、特許第4719156号公報等の公知文献に記載の方法により製造することができる。
【0090】
液晶性の高分子化合物
液晶性の高分子化合物とは、前記重合性液晶化合物を重合させた化合物(以下、重合性液晶化合物の重合体ともいう)であってもよく、その他の液晶性の高分子化合物であってもよく、好ましくは、前記重合性液晶化合物の重合体である。
【0091】
前記重合性液晶化合物の重合体は、2種以上の前記重合性液晶化合物を原料モノマーとして用いてもよい。また、前記重合性液晶化合物の重合体は、前記重合性液晶化合物以外のその他のモノマーを原料モノマーとして含んでいてもよい。
【0092】
前記重合性液晶化合物の重合体における前記重合性液晶化合物の含有割合は、前記重合性液晶化合物の重合体を構成する前記重合性液晶化合物に由来する構成単位の合計量に対して、通常1モル%以上100モル%以下であり、前記重合性液晶化合物の重合体の配向性を高くするという観点から、30モル%以上100モル%以下であることが好ましく、50モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、80モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましい。
【0093】
前記その他の液晶性の高分子化合物としては、液晶性基を有する高分子化合物が挙げられる。例えば、母骨格となる高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ノルボルネンポリマーなどの環状オレフィン樹脂;ポリアルキレンエーテル、ポリビニルアルコール;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;等が挙げられ、これらの高分子化合物が液晶性基を有する。中でも、液晶性基を有するポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルが好ましい。
【0094】
前記その他の液晶性の高分子化合物は、2種類以上の液晶性基を含んでいてもよい。液晶性基は、母骨格となる高分子化合物の主鎖に含まれていてもよく、母骨格となる高分子化合物の側鎖に含まれていてもよく、母骨格となる高分子化合物の主鎖および側鎖ともに含まれていてもよい。液晶性基としては、少なくとも2つの炭化水素6員環構造を有する化合物から1個の水素原子を除いて形成される基、または、該化合物から2個の水素原子を除いて形成される基が挙げられる。
【0095】
前記その他の液晶性の高分子化合物における液晶性基の含有割合は、前記その他の液晶性の高分子化合物の母骨格となる高分子化合物を構成する構成単位の合計量に対して、通常1モル%以上100モル%以下であり、前記その他の液晶性の高分子化合物の配向性を高くするという観点から、30モル%以上100モル%以下であることが好ましく、50モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、80モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましい。
【0096】
組成物において、2種類以上の重合性液晶化合物を組み合わせる場合には、そのうちの少なくとも1種類が重合性液晶化合物(A)であることが好ましく、そのうちの2種類以上が重合性液晶化合物(A)であることがより好ましい。2種類以上の重合性液晶化合物を組み合わせることにより、液晶-結晶相転移温度以下の温度であっても液晶相を一時的に保持することができる場合がある。組成物に含まれる重合性液晶化合物(A)の含有量は、組成物中の全重合性液晶化合物の総質量に対して合計で、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、全ての重合性液晶化合物が重合性液晶化合物(A)であってもよい。重合性液晶化合物(A)の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物が高い配向秩序度で並びやすく、それに沿って式(1)で表される化合物が配向することにより、優れた偏光性能を有する偏光膜を得ることができる。
【0097】
組成物における重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の合計含有割合は、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の配向性を高くするという観点から、組成物の固形分100質量部に対して、例えば50質量部以上であり、好ましくは70質量部以上99.9質量部以下であり、より好ましくは70質量部以上99.5質量部以下であり、更に好ましくは80質量部以上99質量部以下であり、特に好ましくは80質量部以上94質量部以下であり、より更に好ましくは80質量部以上90質量部以下である。
【0098】
組成物における式(1)で表される化合物の総含有量は、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の合計量100質量部に対して、通常、0.1質量部以上50質量部以下であり、好ましくは0.1質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下であり、さらに好ましくは0.1質量部以上、5質量部以下である。重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の合計量に対する式(1)で表される化合物の総含有量が50質量部以下であると、重合性液晶化合物、液晶性の高分子化合物および式(1)で表される化合物の配向の乱れが少なく、高い配向秩序度を有する偏光膜を得ることができる傾向がある。
【0099】
高分子化合物
組成物は、式(1)で表される化合物および重合液晶性化合物に加えて、高分子化合物を更に含んでいてもよい。組成物が高分子化合物を含むことで、式(1)で表される化合物が組成物中に分散し易くなる場合がある。組成物が含みうる高分子化合物としては、式(1)で表される化合物を分散可能であれば、特に制限はない。式(1)で表される化合物を均一に分散させやすい点から、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系ポリマーが好ましい。また高分子化合物は、既述の重合性液晶化合物を重合した高分子化合物であってもよい。高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、例えば1万以上20万以下であり、好ましくは2万以上15万以下である。
【0100】
組成物が高分子化合物を含む場合、その含有量は、目的等に応じて適宜選択することができる。高分子化合物の含有量は、組成物の固形分100質量部に対して、10質量部以下であると好ましく、5.0質量部以下の範囲がより好ましく、3.0質量部以下の範囲がさらに好ましい。
【0101】
組成物は、好ましくは溶剤等の液媒体および重合開始剤をさらに含み、必要に応じて光増感剤、重合禁止剤、レベリング剤等をさらに含んでいてもよい。
【0102】
溶剤
溶剤は、式(1)で表される化合物、重合性液晶化合物、液晶性の高分子化合物、ならびに高分子化合物を完全に溶解し得る溶剤であることが好ましい。また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
【0103】
溶剤としては、アルコール溶剤、エステル溶剤、ケトン溶剤、脂肪族炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ニトリル溶剤、エーテル溶剤、塩素含有溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
組成物が溶剤を含む場合において、溶剤の含有割合は、組成物の総量に対して50質量%以上98質量%以下が好ましい。換言すると、組成物における固形分の含有割合は、2質量%以上50質量%以下が好ましい。当該固形分が50質量%以下であると、組成物の粘度が低くなり、組成物から得られる膜、例えば膜の厚みが略均一になり、当該膜にムラが生じ難くなる傾向がある。かかる固形分の含有割合は、製造しようとする膜の厚さを考慮して定めることができる。
【0105】
重合開始剤
重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物である。重合開始剤は、より低温条件下で重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカルまたは酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0106】
重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩、およびスルホニウム塩などが挙げられる。重合開始剤は、公知の重合開始剤から目的等に応じて適宜選択することができる。また、重合開始剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0107】
組成物が重合開始剤を含有する場合、その含有量は、該組成物に含まれる重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜決定すればよい。重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、例えば0.001質量部以上、0.01質量部以上、0.1質量部以上または0.5質量部以上であり、例えば30質量%以下、10質量%以下または8質量%以下である。また重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.001質量部以上30質量部以下が好ましく、0.01質量部以上10質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上8質量部以下がさらに好ましい。重合性開始剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0108】
光増感剤
組成物が光重合開始剤を含有する場合、組成物は、好ましくは光増感剤の少なくとも1種を含有してよい。組成物が光重合開始剤および光増感剤を含有することにより、重合性液晶化合物の重合反応がより促進される傾向がある。当該光増感剤としては、キサントンおよびチオキサントン等のキサントン化合物;アントラセンおよびアルコキシ基置換アントラセン等のアントラセン化合物;フェノチアジンおよびルブレン;などが挙げられる。光増感剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0109】
組成物が光増感剤を含む場合、組成物における光増感剤の含有量は、光重合開始剤および重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜決定すればよい。組成物における光増感剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上8質量部以下である。
【0110】
重合禁止剤
組成物は、重合禁止剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えばブチルカテコール)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル捕捉剤;チオフェノール類;β-ナフチルアミン類およびβ-ナフトール類;などが挙げられる。組成物が重合禁止剤を含むことにより、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いを制御することができる。
【0111】
組成物が重合禁止剤を含む場合、組成物における重合禁止剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上8質量部以下である。
【0112】
レベリング剤
組成物は、レベリング剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。レベリング剤は、組成物の流動性を調整し、該組成物を塗布することにより得られる塗膜をより平坦にする機能を有し、具体的には、界面活性剤が挙げられる。レベリング剤としては、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤およびフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。レベリング剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0113】
組成物がレベリング剤を含む場合、レベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上3質量部以下である。レベリング剤の含有量が前記範囲内であると、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物を水平配向させやすく、かつ、ムラが生じ難く、より平滑な膜、例えば偏光膜を得られる傾向がある。
【0114】
レベリング剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物を水平配向させることが容易であり、かつ、得られる膜がより平滑となる傾向がある。重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物に対するレベリング剤の含有量が上記範囲を超えると、得られる膜にムラが生じ易い傾向がある。
【0115】
酸化防止剤
組成物は酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤は、組成物が本発明の効果を発揮し得るものであれば特に限定されず、公知の酸化防止剤を用いることができる。酸化防止剤は、式(1)で表される化合物の光劣化に対する高い抑制効果を有する観点から、ラジカルを捕捉して自動酸化の防止作用を有する、いわゆる一次酸化防止剤が好ましい。したがって、組成物に含まれる酸化防止剤は、フェノール系化合物、脂環式アルコール系化合物およびアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。酸化防止剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
組成物における上記酸化防止剤の含有量は、組成物100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上15質量部以下であり、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは12質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以下である。酸化防止剤の含有量が上記下限値以上であると、式(1)で表される化合物の光劣化をより効果的に抑制することができる。また、酸化防止剤の含有量が上記上限値以下であると、重合性液晶化合物の配向をより乱し難く、かつ、式(1)で表される化合物の光劣化に対するより高い抑制効果を期待できる。
【0117】
組成物は、上記以外の他の添加剤を含有してよい。他の添加剤としては、例えば、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤および滑剤などが挙げられる。組成物が他の添加剤を含有する場合、他の添加剤の含有量は、組成物の固形分に対して、0%を超えて20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0%を超えて10質量%以下である。
【0118】
組成物は、従来公知の組成物の調製方法により製造することができる。例えば、式(1)で表される化合物と、液晶性化合物と、必要に応じて酸化防止剤、レベリング剤などの添加剤とを混合、撹拌することにより調製することができる。
【0119】
<化合物>
本実施形態にかかる化合物は、下記式(1a)で表される。
【0120】
【化22】
【0121】
式(1a)中、kは、1または2の整数を表す。kが2の場合、2つのR11は互いに同一であっても相異なっていてもよく、2つのAr12は互いに同一であっても相異なっていてもよい。
【0122】
Ar11、Ar12およびAr13は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基又は含硫黄複素環基を表す。Ar11およびAr12の少なくとも一方は、分子内水素結合を形成し得る水酸基を少なくとも1つ有する。Ar11、Ar12およびAr13の詳細は、式(1)におけるAr、ArおよびArのそれぞれと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0123】
11は-OC(=O)-、-C(=O)O-および-N=N-からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表し、好ましくは-OC(=O)-、-C(=O)O-または-N=N-である。
【0124】
12は、重合性基を有していてもよいアルキルアミノ基を表す。R12の詳細は、式(1)におけるRと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0125】
13は、水酸基と分子内水素結合を形成し得る環状または鎖状である炭素数2から20の基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基、炭素数2から20のアルカンジイルカルボニル基、炭素数4から20のアルカンジイル基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシ基等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。R13の詳細は、式(1)におけるRと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0126】
14は、重合性基または水素原子を表す。R14の詳細は、式(1)におけるRと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0127】
<膜>
本実施形態にかかる膜は、式(1)で表される化合物を形成材料として含む膜であってもよく、式(1)で表される化合物と液晶性化合物とを含む組成物を形成材料として得られる膜であってもよい。組成物からなる膜は、組成物を基材に付与し、成膜することで形成されてよい。また、組成物が、重合性液晶化合物を含む場合、該重合性液晶化合物を重合させて得られる硬化物を含む膜は、組成物を基材に付与し、成膜した後に該重合性液晶化合物を重合し、硬化させることで形成されてよい。
【0128】
組成物は、耐光性に優れ、吸光度維持率の高い膜、例えば偏光膜を形成することができる。したがって、本実施形態にかかる膜は、式(1)で表される化合物と、液晶性化合物とを含んでなる組成物から形成される偏光膜であって、吸光度維持率に優れる偏光膜を包含する。また、組成物は、配向秩序度の高い膜、例えば偏光膜を形成することができる。したがって、本実施形態にかかる膜は、式(1)で表される化合物と、液晶性化合物とを含んでなる組成物から形成される偏光膜であって、配向秩序度の高い偏光膜を包含する。
【0129】
ここで、配向秩序度の高い偏光膜では、X線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。したがって、組成物から形成される偏光膜は、重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物がX線回折測定においてブラッグピークを示すように配向していることが好ましく、光を吸収する方向に重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物の分子が配向する「水平配向」であることがより好ましい。ブラッグピークを示すような高い配向秩序度は、用いる重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物の種類、式(1)で表される化合物の量等を制御することにより実現し得る。
【0130】
膜を形成するために用いる組成物を構成する式(1)で表される化合物および液晶性化合物については、既述の通りである。
【0131】
膜は、例えば、以下の工程を含む方法により製造することができる。
工程A:式(1)で表される化合物と液晶性化合物と溶剤とを含む組成物の塗膜を形成すること、
工程B:前記塗膜から溶剤の少なくとも一部を除去すること、
工程C:液晶性化合物が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後、降温して、該液晶性化合物をスメクチック相(スメクチック液晶状態)に相転移させること、および
工程D:必要に応じて、前記スメクチック相(スメクチック液晶状態)を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させること。
【0132】
組成物の塗膜の形成は、例えば、基材、後述する配向膜などの上に組成物を塗布することにより行うことができる。また、偏光板を構成する位相差フィルム、その他の層上に組成物を直接塗布してもよい。
【0133】
基材は通常、透明基材である。なお、基材が表示素子の表示面に設置されないとき、例えば、膜から基材を取り除いた積層体を表示素子の表示面に設置する場合は、基材は透明でなくてもよい。透明基材とは、光、特に可視光を透過し得る透明性を有する基材を意味し、透明性とは、380nm以上780nm以下の波長範囲にわたる光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的な透明基材としては、透光性樹脂基材が挙げられる。
【0134】
透光性樹脂基材を構成する樹脂としては、ポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;セルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシド等が挙げられる。入手のしやすさや透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステル、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネートが好ましい。
【0135】
基材に求められる特性は、膜の構成によって異なるが、通常、位相差性ができるだけ小さい基材が好ましい。位相差性ができるだけ小さい基材としては、ゼロタック(コニカミノルタオプト株式会社)、Zタック(富士フイルム株式会社)等の位相差を有しないセルロースエステルフィルム等が挙げられる。また、未延伸の環状オレフィン系樹脂基材も好ましい。膜が積層されていない基材の面には、ハードコート処理、反射防止処理、帯電防止処理等がなされてもよい。
【0136】
基材の厚みは、通常5μm以上300μm以下であり、好ましくは20μm以上200μm以下、より好ましくは20μm以上100μm以下である。前記下限値以上であれば強度の低下が抑制され、加工性が良好になる傾向がある。
【0137】
組成物を基材等に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が挙げられる。
【0138】
次いで、組成物から得られた塗膜に含まれる溶剤の少なくとも一部を乾燥等により除去することにより乾燥塗膜が形成される。また、該塗膜中に重合性液晶化合物が含まれる場合、該重合性液晶化合物が重合しない条件で、乾燥をおこなうことにより乾燥塗膜が形成される。前記塗膜の乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥、減圧乾燥法等が挙げられる。
【0139】
さらに、液晶性化合物を液体相に相転移させるため、液晶性化合物が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後、降温して液晶性化合物をスメクチック相(スメクチック液晶状態)に相転移させる。かかる相転移は、塗膜中の溶剤除去後に行ってもよいし、溶剤の除去と同時に行ってもよい。
【0140】
組成物が、重合性液晶化合物を含む場合、重合性液晶化合物のスメクチック液晶状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、重合性液晶化合物の硬化物を含む膜が形成される。重合方法としては光重合法が好ましい。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、乾燥塗膜に含まれる光重合開始剤の種類、重合性液晶化合物の種類(特に、重合性液晶化合物が有する重合性基の種類)およびその量に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線およびγ線からなる群から選択される1種以上の光、活性電子線等が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって、光重合可能なように、組成物に含有される重合性液晶化合物、光重合開始剤の種類等を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら、光照射することで、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施すれば、基材が比較的耐熱性が低いものを用いたとしても、適切に膜を形成できる。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた膜を得ることもできる。
【0141】
前記活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380nm以上440nm以下で発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0142】
紫外線照射強度は、通常、10mW/cm以上3,000mW/cm以下であってよい。紫外線照射強度は、好ましくは光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒以上10分以下であってよく、好ましくは0.1秒以上5分以下、より好ましくは0.1秒以上3分以下、さらに好ましくは0.1秒以上1分以下である。このような紫外線照射強度で1回または複数回照射すると、その積算光量は、10mJ/cm以上3,000mJ/cm以下であることが好ましい。
【0143】
光重合を行うことにより、重合性液晶化合物は、スメクチック相、好ましくは高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、膜が形成される。重合性液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる膜は、二色性色素の作用にも伴い、従来のホストゲスト型偏光フィルム、すなわち、ネマチック相の液晶状態からなる膜と比較して、偏光性能が高いという利点がある。さらに、二色性色素、またはリオトロピック液晶のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点もある。
【0144】
膜の厚みは、適用される表示装置等に応じて適宜選択でき、好ましくは0.5μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは1μm以上3μm以下である。
【0145】
膜が、偏光膜として使用される場合、配向膜上に形成されることが好ましい。配向膜は、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。配向膜としては、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも1種を含む液晶性化合物を含有する組成物の塗布等により溶解しない溶剤耐性を有し、また、溶剤の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜および表面に凹凸パターンや複数の溝を有するグルブ配向膜等が挙げられ、配向角の精度および品質の観点から、光配向膜が好ましい。
【0146】
<積層体>
本実施形態にかかる積層体は、式(1)で表される化合物を形成材料として含む膜を備えていてもよく、式(1)で表される化合物と液晶性化合物とを含む組成物を形成材料とする膜を備えていてもよい。積層体は、基材と、基材上に配置される式(1)で表される化合物を形成材料として含む膜とを備えていてよく、基材と、基材上に配置される配向膜と、配向膜上に配置される式(1)で表される化合物を形成材料とする膜とを備えていてよい。式(1)で表される化合物を形成材料として含む膜は、偏光膜を構成してよい。また、基材は位相差フィルムであってもよい。積層体は、例えば、偏光板を構成することができる。積層体は、例えば、上述した膜の製造方法に準じて、基材上に膜を形成することで製造することができる。
【0147】
積層体の厚みは、表示装置の屈曲性や視認性の観点から、好ましくは10μm以上300μm以下、より好ましくは20μm以上200μm以下、さらに好ましくは25μm以上100μm以下である。
【0148】
積層体が基材として位相差フィルムを備える場合、位相差フィルムの厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択できる。
【0149】
<表示装置>
本実施形態の表示装置は、前記積層体を備え、積層体は偏光板であってよい。表示装置は、例えば、粘接着剤層を介して、偏光板としての積層体を表示装置の表面に貼合することにより得ることができる。表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む装置である。表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、電子放出表示装置(例えば、電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インク、電気泳動素子等を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えば、グレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)、および圧電セラミックディスプレイ等が挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置、および投写型液晶表示装置等のいずれも包含する。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。特に、表示装置としては、有機EL表示装置およびタッチパネル表示装置が好ましく、特に有機EL表示装置が好ましい。
【実施例0150】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。また、「常温」および「RT」は23℃である。
【0151】
実施例1:化合物1-1の合成
化合物1-1を合成するために、まず化合物1-1-aおよび化合物1-1-bを合成した。続いて脱水縮合エステル化して化合物1-1を得た。
【0152】
化合物1-1-aの合成
4-アミノ-2-フルオロ安息香酸(7.76g、50.0mmol)、35%塩酸(13.2mL、150mmol)、および水(100mL)を混合して0から5℃に冷却し、そこへ亜硝酸ナトリウム(3.55g、51.5mmol)の水(6.5mL)溶液を滴下した。その後、0から5℃を保ちながら30分間撹拌しジアゾ液を調製した。一方、N,N-ジメチルアニリン(9.10g、75.1mmol)、酢酸ナトリウム(16.4g,200mmol)、メタノール(67.0mL)、および水(33.0mL)を混合して0から5℃に冷却し、先ほど調製したジアゾ液全量を滴下した。滴下終了後、常温まで昇温し、析出した固体を濾別して化合物1-1-aを得た(14.0g、収率97%)
【0153】
【化23】
【0154】
化合物1-1-bの合成
2,4-ジヒドロキシ安息香酸(3.08g、20.0mmol)、1-ブタノール(30.0mL、327mmol)および、DMAP(N,N-ジメチルアミノピリジンの略。0.245g、2.01mmol)を混合し、EDC・HCl(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩の略。4.61g、24.0mmol)を加え、常温で18時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチル(100mL)で希釈し、水(100mL)で3回分液洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して固体を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)にて精製し、化合物1-1-b(3.20g、収率76%)を得た。
【0155】
【化24】
【0156】
化合物1-1の合成
1-1-a(0.287g,0.998mmol)、1-1-b(0.258g、1.23mmol)、DMAP(13.3mg、0.109mmol)、およびテトラヒドロフラン(10.0mL)を混合し、EDC・HCl(0.236g、1.23mmol)を加え、反応溶液を常温で4時間撹拌した。反応溶液に水を加え、析出した固体を濾別し、メタノールで洗浄した。得られた固体を、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらにクロロホルム/メタノールからの再沈殿により精製し、化合物1-1を得た(0.304g、収率63%)。
【0157】
【化25】
【0158】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=11.02(s,1H)、8.19(t,1H),7.93-7.91(m,3H),7.74(dd,1H),7.64(dd,1H),6.91(d,1H),6.82(dd,1H),6.77(d,2H),4.38(t,2H),3.14(s,6H),1.78(quin,2H),1.55-1.45(m,2H),1.00(t,3H).
【0159】
化合物1-1においてはCDCl中における水酸基の化学シフトが11.02ppmと低磁場であり、分子内水素結合を形成していることを反映している。
【0160】
実施例2:化合物1-2の合成
化合物1-2を合成するために、まず化合物1-2-aを合成し、続いて化合物1-2-b、化合物1-2-cおよび化合物1-2-dを合成した。続いて脱水縮合エステル化をして化合物1-2を得た。
【0161】
化合物1-2-aの合成
亜硫酸水素ナトリウム(78.0g、750mmol)、および水(150mL)を混合し、70℃まで昇温し37%ホルムアルデヒド水溶液(44.3mL、600mmol)を滴下した。全量滴下後、40℃まで冷却し、アニリン(45.7mL、500mmol)を1時間で滴下し、9時間撹拌した。0℃まで冷却し、析出した固体を濾別し、化合物1-2-aを得た(96.0g、収率100%)
【0162】
【化26】
【0163】
化合物1-2-bの合成
4-アミノ-2-メトキシ安息香酸(8.36g、50.0mmol)、35%塩酸(13.2mL、150.0mmol)、および水(100mL)を混合して0から5℃に冷却し、そこへ亜硝酸ナトリウム(3.62g、52.5mmol)の水(7.0mL)溶液を滴下した。その後、0から5℃を保ちながら4時間撹拌し、ジアゾ液を調製した。一方、化合物1-2-a(15.7g、75.0mmol)、および水(200mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、先ほど調製したジアゾ液全量を滴下した。滴下終了後、0から5℃で3時間撹拌し、常温まで昇温し16時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム(24.0g、600mmol)を加え、90℃まで昇温し2時間撹拌した。常温まで冷却し、塩酸(52mL、589mmol)を滴下し、析出した固体を濾別し、さらに水で洗浄して固体である化合物1-2-bを得た。精製せずに次のジアゾカップリングに供した。
【0164】
【化27】
【0165】
化合物1-2-cの合成
化合物1-2-bに35%塩酸(8.8mL、100.0mmol)、酢酸(50.0mL)、および水(50.0mL)を混合して0から5℃に冷却し、そこへ亜硝酸ナトリウム(3.62g、52.5mmol)の水(7.0mL)溶液を滴下した。その後、0から5℃を保ちながら1時間撹拌し、ジアゾ液を調製した。一方、N,N-ジメチルアニリン(9.08g、75.0mmol)、酢酸ナトリウム(16.4g、200mmol)、メタノール(67.0mL)および水(34.0mL)を混合して0から5℃に冷却し、先ほど調製したジアゾ液全量を滴下した。滴下終了後、0から5℃で2時間撹拌し、常温まで昇温し析出した固体を濾別し、さらにアセトニトリル/水で洗浄して化合物1-2-cを得た(13.9g、4-アミノ-2-メトキシ安息香酸基準の収率69%)。
【0166】
【化28】
【0167】
化合物1-2-dの合成
化合物1-2-c(13.7g、34mmol)、塩化リチウム(4.32g、100mmol)、N-メチル-2-ピロリドン(68mL)、およびピリジン(22.7mL)を混合し、100℃まで昇温して16時間撹拌した。その後、常温まで冷却し、塩酸(28mL,317mmol)を滴下し、析出した固体を濾別し、さらに水で洗浄して化合物1-2-dを得た(15.0g、収率104%)。
【0168】
【化29】
【0169】
化合物1-2の合成
化合物1-2-d(6.39g、15.0mmol)、1-ブタノール(13.8mL、150mmol)、DMAP(2.02g、16.5mmol)、およびテトラヒドロフラン(50.0mL)を混合し、EDC・HCl(4.31g、22.5mmol)を加え、反応溶液を50℃まで昇温し4時間撹拌した。反応溶液に水(150mL)を加え、析出した固体を濾別し、メタノールで洗浄した。得られた固体を、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらにクロロホルム/メタノールからの再沈殿により精製し、化合物1-2を得た(1.93g、収率29%)。
【0170】
【化30】
【0171】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=10.98(s,1H),8.07(d,2H),8.01-7.98(m,3H),7.93(dd,2H),7.52(d,1H),7.45(dd,1H),6.78(d,2H),4.40(t,2H),3.12(s,6H),1.81(quin、2H),1.56-1.47(m,2H),1.01(t,3H).
【0172】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=10.78(br,1H),8.08(d,2H),7.99-7.97(m,3H),7.86(d、2H),7.48(dd,1H),7.45(d,1H),6.88(d,2H),4.36(t,2H),3.10(s,6H),1.74(quin,2H),1.50-1.41(m,2H),0.96(t,3H)
【0173】
化合物1-2は、例えば以下のように分子内水素結合を形成していると考えられる。化合物1-2はCDCl中における水酸基の化学シフトが10.98ppmと低磁場側にあり、分子内水素結合を形成していることを反映している。また低極性重溶媒であるCDCl中と高極性重溶媒DMSO-d中での水酸基のプロトンの化学シフト(10.78ppm)の差は0.2ppmと小さく、このことも分子内水素結合を形成していることを反映している。
【0174】
比較例1:化合物C-1の合成
化合物C-1を合成するために、まず先述の化合物1-2-aを合成した。続いて脱水縮合エステル化して化合物C-1を得た。
【0175】
化合物C-1の合成
化合物1-2-a(0.291g、1.01mmol)、4-n-ブチルレソルシノール(0.199g、1.20mmol)、DMAP(76.0mg、0.622mmol)、およびテトラヒドロフラン(10.0mL)を混合し、EDC・HCl(0.233g、1.22mmol)を加え、反応溶液を常温で18時間撹拌した。反応溶液に水を加え、析出した固体を濾別し、メタノールで洗浄した。得られた固体を、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらに水/メタノールからの再沈殿により精製し、化合物C-1を得た(0.064g、収率12%)。
【0176】
【化31】
【0177】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.18(t,1H),7.92(d,2H),7.73(dd,1H),7.63(dd,1H),7.15(d,1H),6.79-6.72(m,4H),4.77(s,1H),3.14(s,6H),2.61(t,2H),1.65-1.57(m,2H),1.45-1.36(m,2H),0.96(t,3H).
【0178】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=9.64(br,1H),8.19(t,1H),7.87(d,2H),7.76(dd,1H),7.67(dd,1H),7.11(d,1H),6.88(d,2H),6.69(d,1H),6.64(dd,1H),3.12(s,6H),1.53(quin,2H),1.38-1.28(m,2H),0.91(t,3H).
【0179】
実施例の化合物と異なり、C-1はCDCl中における水酸基の化学シフトが4.77ppmと高磁場側であり、分子内水素結合を形成していないことを反映している。また低極性重溶媒であるCDCl中と高極性重溶媒DMSO-d中での水酸基のプロトンの化学シフト(9.64ppm)の差は4.87ppmと大きく、測定溶媒の極性差による影響を大きく受けることがわかった。このことも分子内で水素結合を形成していないことを反映している。
【0180】
比較例2
化合物(C-2)については特開2017-082217号公報に記載の製造例6(1-34)の製造方法に準じて合成した。
【0181】
【化32】
【0182】
実施例11:化合物1-1を含む組成物E1の調製
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、組成物E1を得た。
・重合性液晶化合物(A-6) 75質量部
・重合性液晶化合物(A-7) 25質量部
・化合物1-1 4.0質量部
・重合開始剤: 2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;BASFジャパン社製)
6質量部
・レベリング剤:ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製) 1.2質量部
・溶剤:o-キシレン 250質量部
【0183】
重合性液晶化合物(A-6)
【化33】
【0184】
重合性液晶化合物(A-7)
【化34】
【0185】
なお、重合性液晶化合物(A-6)は、Lub et al. Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 115, 321-328 (1996)に記載の方法で合成した。また、この方法に準拠して、重合性液晶化合物(A-7)を製造した。
【0186】
実施例12:組成物E2の調製
化合物1-1の代わりに、化合物1-2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例12の組成物E2を得た。
【0187】
比較例11および12:組成物C1およびC2の調製
化合物1-1の代わりに、合成法を先述した下式で表される化合物C-1またはC-2をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例11および12の組成物C1およびC2をそれぞれ得た。
【0188】
<偏光板の製造>
1.配向膜の形成
透明基材としてガラス基板を用いた。ガラス基板上に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液(配向層形成用組成物)をスピンコート法により塗布し、乾燥後、厚さ100nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施すことにより配向膜を形成し、ガラス基板上に配向膜が形成された基材を得た。
【0189】
2.偏光膜の形成
上記で得られた基材の配向膜上に、上記で得られた組成物をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥した後、速やかに70℃(降温時にスメクチック液晶相を示す温度)以下に冷却して、配向膜上に乾燥皮膜が形成された積層体を得た。
【0190】
次いで、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用い、紫外線を、露光量1000mJ/cm(365nm基準)で乾燥皮膜に照射することにより、乾燥皮膜に含まれる重合性液晶化合物を、組成物の液晶状態を保持したまま重合させ、乾燥皮膜から偏光膜を形成して偏光板を得た。
【0191】
<評価>
得られた偏光板について、以下のようにして二色比の測定を行った。偏光板の偏光膜の極大吸収波長(λmax)における透過軸方向の吸光度(A1)及び吸収軸方向の吸光度(A2)を、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)に、偏光板を備えるフォルダーをセットした装置を用いて、ダブルビーム法で測定した。該フォルダーには、リファレンス側に光量を50%カットするメッシュを設置した。測定された透過軸方向の吸光度(A1)及び吸収軸方向の吸光度(A2)の値から、比(A2/A1)を算出し、二色比(DR)とした。耐光性試験前の二色比を表1および表2に示す。
【0192】
また、形成された偏光膜の表面に保護フィルム(40μmTAC(コニカミノルタ株式会社製「KC4UY」))を配置し、その上から下記条件で光を照射することによって耐光性を評価した。耐光性試験前の偏光膜の極大吸収波長における、耐光性試験後の偏光膜の吸収軸方向の吸光度(A3)を、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)に、偏光板を備えるフォルダーをセットした装置を用いて、ダブルビーム法で測定した。耐光性試験後の偏光膜の吸収軸方向の吸光度(A3)を耐光試験前の偏光膜の吸収軸方向の吸光度(A2)で除して百分率を求めて吸光度維持率(%)とした。結果を表1および表2に示す。なお、吸光度維持率が80%を超える場合、偏光膜として良好と判断される。
【0193】
耐光性試験における光の照射条件は以下の通りである。
使用機器:ATLAS社製Ci4000
使用光源:キセノンアークランプ
露光条件:120W/m(300nm-400nm)
試験時間:40時間
暴露量:17280KJ/m
温度:65℃。
【0194】
【表1】
【0195】
【表2】
【0196】
表1から式(1)で表される化合物を含む組成物を形成材料とする膜を備える偏光板は過酷な使用条件に対しても耐光性が高く、それに加えて二色比を向上できることがわかる。