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  • 特開-前処理方法及び定量方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060418
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】前処理方法及び定量方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/06 20060101AFI20230421BHJP
   G01N 30/00 20060101ALI20230421BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
G01N30/06 E
G01N30/00 C
G01N30/88 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170015
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】川本 広明
(57)【要約】
【課題】植物抽出物に含まれる定量対象物質を高精度に定量するための前処理方法及び当該前処理方法を含む定量方法を提供する。
【解決手段】定量対象物質及び夾雑物を含む試料中の定量対象物質を定量するための前処理方法は、アルカリを用いて試料をアルカリ処理に供する工程と、酸を用いて試料を酸性にする工程と、酸性にした試料を、珪藻土を濾過助剤として用いた濾過処理に供する工程とを含み、濾過助剤は、水の透過度が85ミリダルシー(mDarcy)以下の珪藻土を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定量対象物質及び夾雑物を含む試料中の前記定量対象物質を定量するための前処理方法であって、
アルカリを用いて前記試料をアルカリ処理に供する工程と、
酸を用いて前記試料を酸性にする工程と、
前記酸性にした前記試料を、珪藻土を濾過助剤として用いた濾過処理に供する工程と
を含み、
前記濾過助剤は、水の透過度が85ミリダルシー(mDarcy)以下の前記珪藻土を含むことを特徴とする前処理方法。
【請求項2】
前記試料を濾過処理に供した後、前記珪藻土から前記定量対象物質を溶出させる工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の前処理方法。
【請求項3】
酢酸アルキル溶液を用いて、前記珪藻土から前記定量対象物質を溶出させることを特徴とする請求項2に記載の前処理方法。
【請求項4】
前記酸を用いて前記試料のpHを5.0以下に調整することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の前処理方法。
【請求項5】
前記濾過助剤を添加した前記試料を、上流側に前記濾過助剤が積層された濾材を用いた濾過処理に供することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の前処理方法。
【請求項6】
前記定量対象物質が、セラミド類であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の前処理方法。
【請求項7】
前記夾雑物が、セルロース類であることを特徴とする請求項6に記載の前処理方法。
【請求項8】
前記定量対象物質が、グルコシルセラミドであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の前処理方法。
【請求項9】
前記夾雑物が、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする請求項8に記載の前処理方法。
【請求項10】
定量対象物質及び夾雑物を含む試料中の前記定量対象物質を定量する方法であって、
請求項1~9のいずれかに記載の前処理方法により、前記試料の前処理を行う工程と、
前記前処理後の前記試料を液体クロマトグラフ分析に供する工程と
を含むことを特徴とする定量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量対象物質を含む試料の前処理方法及び当該定量対象物質の定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性表示食品は、当該機能性表示食品に配合される成分が有する効果に基づく機能を表示して需要者に提供される。上記機能性表示食品として需要者に提供しようとする場合、有効成分(機能性関与成分)の含有量やその定量方法を届け出なければならない。機能性表示食品には、有効成分を含む植物抽出物が配合されることがある。植物抽出物には、有効成分とそれ以外の成分(夾雑物)とが含まれているため、有効成分の定量結果の精度が夾雑物により低下しないことが重要である。
【0003】
上記有効成分を定量する方法としては、定量対象物質としての上記有効成分の標準物質を用いて液体クロマトグラフィー分析を行い、それにより得られるクロマトグラムのピーク面積から定量対象物質の検量線をあらかじめ作成しておき、定量対象物質を含む植物抽出物を液体クロマトグラフィー処理に付して、それにより得られるクロマトグラムからピーク面積を求めて、上記検量線により定量対象物質を定量する方法が一般的に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-221425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記液体クロマトグラフィー処理により得られるクロマトグラムのピーク面積から上記定量対象物質を定量する方法において、定量対象物質のピークと、上記夾雑物のピークとが相互に重なってしまうと、ピーク面積に基づいて求められる定量対象物質の定量結果の精度が低下してしまう。そのため、定量対象物質と重なるピークとして現れる夾雑物は、液体クロマトグラフィー処理に付される上記植物抽出物から可能な限り除去されなければならない。
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明は、植物抽出物に含まれる定量対象物質を高精度に定量するための前処理方法及び当該前処理方法を含む定量方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、定量対象物質及び夾雑物を含む試料中の前記定量対象物質を定量するための前処理方法であって、アルカリを用いて前記試料をアルカリ処理に供する工程と、酸を用いて前記試料を酸性にする工程と、前記酸性にした前記試料を、珪藻土を濾過助剤として用いた濾過処理に供する工程とを含み、前記濾過助剤は、水の透過度が85ミリダルシー(mDarcy)以下の前記珪藻土を含むことを特徴とする前処理方法を提供する。
【0008】
前記試料を濾過処理に供した後、前記珪藻土から前記定量対象物質を溶出させる工程を含んでいればよく、酢酸アルキル溶液を用いて、前記珪藻土から前記定量対象物質を溶出させればよい。前記酸を用いて前記試料のpHを5.0以下に調整するのがよく、前記濾過助剤を添加した前記試料を、上流側に前記濾過助剤が積層された濾材を用いた濾過処理に供すればよい。前記定量対象物質が、セラミド類であればよく、グルコシルセラミドであればよい。前記夾雑物が、セルロース類であればよく、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースであればよい。
【0009】
定量対象物質及び夾雑物を含む試料中の前記定量対象物質を定量する方法であって、上記前処理方法により、前記試料の前処理を行う工程と、前記前処理後の前記試料を液体クロマトグラフ分析に供する工程とを含むことを特徴とする定量方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、植物抽出物に含まれる定量対象物質を高精度に定量するための前処理方法及び当該前処理方法を含む定量方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るグルコシルセラミドの定量方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施形態に係る定量方法は、定量対象物質及び夾雑物を含む試料を前処理する前処理方法(S1)と、前処理された試料を液体クロマトグラフ分析に供する工程(S2)とを含む。
【0013】
本実施形態において、定量対象物質としては、例えば、グルコシルセラミド等のセラミド類であればよい。上記グルコシルセラミドは、例えば、80~100容量%エタノール水溶液を用いた抽出処理を介して、パイナップルの可食部から得られるものであるのが好ましい。上記グルコシルセラミドは、グルコシルセラミドを含むコメ、コンニャクイモ、トウモロコシ、小麦などから得られるものであってもよい。試料に含まれる夾雑物としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース類であればよい。ヒドロキシプロピルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロースは、医薬品の製剤化における結合剤として一般に利用されており、食品加工の分野においても広く利用されている。したがって、定量対象物質及び夾雑物を含む試料は、上記セラミド類及び上記セルロース類を含む組成物の水溶液等であればよく、例えば、上記セラミド類及び上記セルロース類を含む錠剤(タブレット)やカプセル剤などの水溶液等であればよい。
【0014】
本実施形態における前処理方法は、試料をアルカリ処理に供する工程(S11)と、アルカリ処理後、試料を酸性にする工程(S12)と、酸性にした試料を、濾過助剤を用いた濾過処理に供する工程(S13)と、濾過助剤から定量対象物質を溶出させる工程(S14)とを含む。
【0015】
試料をアルカリ処理に供する工程(S11)においては、例えば、0.2~0.6mol/Lのアルカリを試料に添加すればよい。試料をアルカリ処理に供することで、試料に含まれる脂肪酸エステル等を除去することが可能となる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化リチウム水溶液等であればよい。試料へのアルカリの添加量は、特に限定されるものではなく、上記脂肪酸エステル等を除去することができる程度に適宜設定される。なお、アルカリの添加量が相対的に多すぎると、後述する工程(S12)において、試料を酸性にするための酸の添加量を相対的に増大させてしまうため、アルカリの添加量は、上記脂肪酸エステル等を除去するのに必要最低限の量であるのが好ましい。
【0016】
試料を酸性にする工程(S12)においては、アルカリ処理が施された試料に酸を添加すればよい。試料をアルカリ処理に供することで、試料がアルカリ性になる。アルカリ性の試料を、後述する濾過処理(S13)に供し、定量対象物質を溶出(S14)させると、定量対象物質の回収率が低下してしまう。本実施形態に係る定量方法においては、定量対象物質を溶出させて得られる画分から当該定量対象物質を定量するため、定量対象物質の回収率が低下してしまうと、定量精度が低下してしまうという問題がある。本実施形態のように、アルカリ性の試料に酸を添加して試料を酸性にすることで、定量対象物質の回収率を実質的に100%(99%以上)にすることができる。
【0017】
試料に添加する酸としては、試料を酸性にすることができるのであれば特に制限はなく、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸等が挙げられる。試料への酸の添加量は、例えば、試料のpHが5.0以下になる程度、好ましくは当該pHが1.0~3.0になる程度であればよい。試料のpHが5.0以下に調整されることで、試料の前処理における定量対象物質の回収率を向上させることができ、定量精度を向上させることができる。
【0018】
酸性に調整した試料を、濾過助剤を用いた濾過処理に供する工程(S13)において、当該濾過助剤としては、水の透過度が85ミリダルシー(mDarcy)以下、好ましくは20~65ミリダルシー(mDarcy)の珪藻土が用いられ得る。後述する試験例からも明白なように、水の透過度が85ミリダルシー(mDarcy)以下の珪藻土を濾過助剤として用いることで、試料の前処理における定量対象物質の回収率を向上させることができ、定量精度を向上させることができる。珪藻土からなる濾過助剤層(厚さ:1cm,断面積:1cm)を、粘度1cPの流体(例えば20℃の純水)が1気圧の気圧差で1cm/secの流量で流れるとき、その透過率を1ダルシー(Darcy)という。
【0019】
上記濾過処理の方法としては、例えば、桐山漏斗等の目皿に載せたセルロース濾紙等の濾材を、純水等を流して吸引して目皿に貼り付け、純水等に濾過助剤を懸濁させた懸濁液を吸引濾過することで、濾材上に濾過助剤層(以下「第1濾過助剤層」という場合がある。)を設け、その後、酸性に調整した試料を吸引濾過する方法(いわゆるプレコート法)を用いればよく、酸性に調整した試料に濾過助剤を懸濁させたスラリーを濾過処理に供する方法(いわゆるボディフィード法)を併用してもよい。第1濾過助剤層は、上記水の透過度が85ミリダルシー(mDarcy)以下の珪藻土により設けられればよいが、第1濾過助剤層の下層に、他の種類の珪藻土等からなる濾過助剤層(以下「第2濾過助剤層」という場合がある。)が設けられていてもよい。第1濾過助剤層を構成する珪藻土としては、例えば、セルピュア65(Advanced Minerals社製)等が挙げられる。第1濾過助剤層を構成する珪藻土としてセルピュア65を用い、酸性に調整した試料を濾過処理に供することで、試料の前処理における定量対象物質の回収率を向上させることができ、定量精度を向上させることができる。また、酸性に調整した試料に懸濁させる濾過助剤としては、第1濾過助剤層を構成する珪藻土と同一のものを用いることができる。第2濾過助剤層を構成する他の種類の珪藻土としては、例えば、セライト545(富士フイルム和光純薬社製)、ラヂオライトデラックスW-50(昭和化学工業社製)等を用いることができる。第1濾過助剤層を構成する珪藻土としてセルピュア65を用い、その下層に第2濾過助剤層を設けることで、濾過処理における濾過性(濾過速度)を向上させることができる。
【0020】
濾過処理(S13)後、濾過助剤から定量対象物質を溶出させる工程(S14)においては、濾過助剤に捕捉された定量対象物質を溶出させ得る溶出液を用いて当該定量対象物質を溶出させ、定量対象物質を含む画分を取得する。
【0021】
溶出液としては、定量対象物質を溶出させ得るものである限り特に制限はないが、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸アルキル類;クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ジエチルエーテル、クロロホルム・メタノール混合溶媒、クロロホルム・エタノール混合溶媒等を用いることができる。特に、溶出液として、酢酸エチル等の酢酸アルキル類を用いることで、定量対象物質の回収率を顕著に向上させることができる。
【0022】
上記のようにして溶出させて得られる定量対象物質を含む画分は、従来公知の方法により精製されてもよい。例えば、クロロホルム・メタノール混合溶媒等の展開溶媒に当該画分を溶解し、シリカゲル等の多孔質物質等を充填材として用いたカラムクロマトグラフィに付する処理等が挙げられる。
【0023】
なお、濾過助剤から定量対象物質を溶出させる前に、濾過助剤を十分に水洗することで、濾過助剤に捕捉されている夾雑物をあらかじめ除去してもよい。夾雑物としてのヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類は、冷水(1~10℃程度)に容易に溶解するため、上記濾過助剤を冷水で洗浄することで、上記夾雑物を除去することができ、定量対象物質の回収率を向上させることができる。
【0024】
上記のようにして得られた定量対象物質を含む画分を定量用試料溶液とし、液体クロマトグラフィー処理に付することで定量用クロマトグラムを取得する(S2)。そして、定量用クロマトグラムにおける定量対象物質のピーク面積を求め、当該ピーク面積に基づいて、定量対象物質を定量する。定量対象物質の定量は、定量対象物質の標準試料を用いた液体クロマトグラフィー処理により検量線を予め作成しておき、上記定量用クロマトグラムから求めたピーク面積と検量線とに基づいて行われればよい。なお、定量用クロマトグラムを取得するための液体クロマトグラフィー処理の処理条件(例えば、液体クロマトグラフ装置、固定相の種類、移動相の種類等)と、検量線を作成するための液体クロマトグラフィー処理の処理条件(例えば、液体クロマトグラフ装置、固定相の種類、移動相の種類等)とは、同一とする。
【0025】
本実施形態においては、上記液体クロマトグラフィー処理に付される、定量対象物質を含む画分には、定量対象物質とピークの重なる夾雑物が実質的に含まれていない。そのため、上記液体クロマトグラフィー処理により取得された定量用クロマトグラムにおける定量対象物質のピーク面積と、上記検量線とから、高い精度で定量対象物質を定量することができる。
【0026】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例0027】
以下、試験例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例等に何ら限定されるものではない。
【0028】
〔試験例1〕
定量対象物質としてのグルコシルセラミド及び夾雑物としてのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含有する、パイナップルセラミド(パインセラ,丸善製薬社製)を配合した配合錠0.56g(グルコシルセラミド含量:1.44mg)を試料として準備し、当該錠剤を純水20mLに溶解させて試料溶液を調製した。当該試料溶液20mLに、48質量%水酸化カリウム水溶液1mLを添加し、40℃で30分間攪拌してアルカリ処理(S11)を行った。アルカリ処理後の試料溶液に、濃塩酸1.5mLを添加した(S12)。濃塩酸添加後の試料溶液のpHは1.02であった。濃塩酸添加後の試料溶液に珪藻土(セルピュア65,Advanced Minerals社製,水の透過度:65mDarcy)1gを加えて攪拌し、桐山漏斗(φ60mm)を用いて濾過処理(S13)を行った。なお、桐山漏斗には、目皿に濾紙(No.3)を貼り付け、濾紙上に珪藻土(セライト545,富士フイルム和光純薬社製,水の透過度:4000mDarcy)1gを用いて第2濾過助剤層を設け、第2濾過助剤層の上に珪藻土(セルピュア65,Advanced Minerals社製)2gを用いて第1濾過助剤層を設けた。
【0029】
濾過処理(S13)後の第1濾過助剤層及び第2濾過助剤層を純水で洗浄し、当該第1濾過助剤層及び第2濾過助剤層を秤量容器に回収し、溶出液(クロロホルム・メタノール溶媒,容量比=2:1)50mLを加えて5分間超音波を照射した後、濾過して濾液を回収した。同一の操作をさらに1回繰り返した後、濾過をして濾液を回収した。当該濾液を40℃以下で減圧濃縮した後、溶媒(クロロホルム・メタノール溶媒,容量比99:1)20mLを加えて溶解し、シリカゲルミニカラム(Sep-Pak plus Silica,Waters社製,690mg)に通液した。さらに、溶媒(クロロホルム・メタノール溶媒,容量比=99:1)10mLを2回、溶媒(クロロホルム・メタノール溶媒,容量比=50:1)10mLを2回の順でシリカゲルミニカラムに通液し、通過した液を廃棄した。そして、溶媒(クロロホルム・メタノール溶媒,容量比=2:1)20mLを1回シリカゲルミニカラムに通液し、溶出液を回収した。
【0030】
得られた溶出液を40℃以下で減圧濃縮し、85容量%メタノール水溶液10mLを加えて超音波を照射して濃縮物を溶解し、オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラム(Sep-Pak Vac tC18,Waters社製,500mg)に通液した。さらに、85容量%メタノール水溶液10mLを1回オクタデシルシリル化シリカゲルミニカラムに通液し、通過した液を廃棄した。そして、メタノール20mLを通液し、回収した溶出液を、ロータリーエバポレーターを用いて40℃以下で減圧濃縮した。得られた濃縮物に溶媒(クロロホルム・メタノール溶媒,容量比=2:1)を加え、メンブレンフィルター(孔径:0.45μm)で濾過し、初流を捨てた濾液を定量用試料溶液として調製した。
【0031】
上記のようにして得られた定量用試料溶液を、下記条件の液体クロマトグラフィー処理に付して定量用クロマトグラムを得た。
<液体クロマトグラフィー条件>
液体クロマトグラフ装置:Agilent1260 Infinity(Agilent Technologies社製)
検出器:蒸発光散乱検出器(G4260B,Agilent Technologies社製)
注入量:10μL
カラム:InertsilSil 100A 5μm(150mm×4.6mm,GLサイエンス社製)
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
移動相A:クロロホルム
移動相B:メタノール/水(容量比=95:5)
(グラジエント条件)
0~15min:移動相B(1~25%)
15~20min:移動相B(25~90%)
20~21min:移動相B(90~100%)
21~26min:移動相B(100%)
ポストタイム:10min
【0032】
得られた定量用クロマトグラムにおけるグルコシルセラミドのピーク面積を算出し、グルコシルセラミド基準品を用いて予め作成した検量線に基づき、グルコシルセラミドの定量を行い、当該定量結果からグルコシルセラミドの回収率(%)を算出した。なお、グルコシルセラミド基準品をクロロホルム・メタノール溶媒(容量比=2:1)に溶解し、メンブレンフィルター(孔径:0.45μm)で濾過して初流を捨てた濾液を標準溶液とし、当該標準溶液を上記条件の液体クロマトグラフィー処理に付することで、上記検量線を作成した。結果を表1に示す。
【0033】
[試験例2]
濾過処理(S13)後、第1濾過助剤層及び第2濾過助剤層を乾燥し、酢酸エチル50mLを3回濾過することで溶出液を回収した以外は、試験例1と同様にしてグルコシルセラミドの定量を行い、当該定量結果からグルコシルセラミドの回収率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0034】
[試験例3]
濃塩酸の添加量を変更し、濃塩酸添加後の試料溶液のpHを3.0に調整した以外は、試験例2と同様にしてグルコシルセラミドの定量を行い、当該定量結果からグルコシルセラミドの回収率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0035】
[試験例4]
濃塩酸の添加量を変更し、濃塩酸添加後の試料溶液のpHを4.74に調整した以外は、試験例2と同様にしてグルコシルセラミドの定量を行い、当該定量結果からグルコシルセラミドの回収率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0036】
[試験例5]
濃塩酸の添加量を変更し、濃塩酸添加後の試料溶液のpHを5.47に調整した以外は、試験例2と同様にしてグルコシルセラミドの定量を行い、当該定量結果からグルコシルセラミドの回収率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0037】
[試験例6]
濃塩酸の添加量を変更し、濃塩酸添加後の試料溶液のpHを6.51に調整した以外は、試験例5と同様にしてグルコシルセラミドの定量を行い、当該定量結果からグルコシルセラミドの回収率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0038】
[試験例7]
濃塩酸の添加量を変更し、濃塩酸添加後の試料溶液のpHを8.32に調整した以外は、試験例5と同様にしてグルコシルセラミドの定量を行い、当該定量結果からグルコシルセラミドの回収率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0039】
[試験例8]
濃塩酸の添加量を変更し、濃塩酸添加後の試料溶液のpHを9.88に調整した以外は、試験例1と同様にしてグルコシルセラミドの定量を行い、当該定量結果からグルコシルセラミドの回収率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示す結果から明らかなように、アルカリ処理後の試料溶液のpHを酸性にし、濾過助剤から酢酸エチルを用いて溶出させることで、グルコシルセラミドの回収率を向上させ得ることが確認された。特に、試料溶液のpHを5.0以下にすることで、グルコシルセラミドの回収率を顕著に向上させ得ることが判明した。この結果から、アルカリ処理後の試料溶液のpHを酸性にして所定の濾過助剤を用いた濾過処理に付することで、グルコシルセラミドを高精度に定量可能であることが確認された。なお、試験例1のように、濾過助剤からグルコシルセラミドを溶出させる溶出液として、クロロホルム・メタノール溶媒を用いると、グルコシルセラミドとともにヒドロキシプロピルメチルセルロースも溶出し、クロマトグラムにおける両者のピークが重なることで、回収率が100%を超えたものと想像される。
【0042】
[試験例9]
濃塩酸添加後の試料溶液のpHを1.38に調整し、濃塩酸添加後の試料溶液に珪藻土(セルピュア300,Advanced Minerals社製,水の透過度:300mDarcy)1gを加え、珪藻土(セルピュア300,Advanced Minerals社製)2gを用いて第1濾過助剤層を設けた以外は、試験例2と同様にしてグルコシルセラミドの定量を行い、当該定量結果からグルコシルセラミドの回収率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0043】
[試験例10]
濃塩酸添加後の試料溶液のpHを1.36に調整し、濃塩酸添加後の試料溶液に珪藻土(セルピュア1000,Advanced Minerals社製,水の透過度:1000mDarcy)1gを加え、珪藻土(セルピュア1000,Advanced Minerals社製)2gを用いて第1濾過助剤層を設けた以外は、試験例2と同様にしてグルコシルセラミドの定量を行い、当該定量結果からグルコシルセラミドの回収率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0044】
[試験例11]
濃塩酸添加後の試料溶液のpHを1.32に調整し、濃塩酸添加後の試料溶液に珪藻土(ラヂオライトデラックスP-5,昭和化学工業社製,水の透過度:90mDarcy)1gを加え、珪藻土(ラヂオライトデラックスP-5,昭和化学工業社製)2gを用いて第1濾過助剤層を設けた以外は、試験例2と同様にしてグルコシルセラミドの定量を行い、当該定量結果からグルコシルセラミドの回収率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0045】
[試験例12]
濃塩酸添加後の試料溶液のpHを1.32に調整し、濃塩酸添加後の試料溶液に珪藻土(ラヂオライトデラックスW-50,昭和化学工業社製,水の透過度:2100mDarcy)1gを加え、珪藻土(ラヂオライトデラックスW-50,昭和化学工業社製)2gを用いて第1濾過助剤層を設けた以外は、試験例2と同様にしてグルコシルセラミドの定量を行い、当該定量結果からグルコシルセラミドの回収率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0046】
[試験例13]
アルカリ処理後の試料溶液(pH=13.16)に珪藻土(ハイフロスーパーセル,富士フイルム和光純薬社製,水の透過度:1100mDarcy)1gを加え、第1濾過助剤層及び第2濾過助剤層に代えて珪藻土(ハイフロスーパーセル,富士フイルム和光純薬社製)3gを用いて濾過助剤層を設けた以外は、試験例8と同様にしてグルコシルセラミドの定量を行い、当該定量結果からグルコシルセラミドの回収率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0047】
[試験例14]
濃塩酸添加後の試料溶液のpHを1.13に調整し、濃塩酸添加後の試料溶液に珪藻土(ハイフロスーパーセル,富士フイルム和光純薬社製,水の透過度:1100mDarcy)1gを加え、第1濾過助剤層及び第2濾過助剤層に代えて珪藻土(ハイフロスーパーセル,富士フイルム和光純薬社製)2gを用いて濾過助剤層を設けた以外は、試験例1と同様にしてグルコシルセラミドの定量を行い、当該定量結果からグルコシルセラミドの回収率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示す結果から明らかなように、水の透過度が85mDarcy以下の珪藻土を濾過助剤として用いた濾過処理に、酸性の試料溶液を付することで、グルコシルセラミドの回収率を向上させ得ることが確認された。この結果から、アルカリ処理後の試料溶液のpHを酸性にして、水の透過度が85mDarcy以下の珪藻土を濾過助剤として用いた濾過処理に付することで、グルコシルセラミドを高精度に定量可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、機能性表示食品等に添加されるグルコシルセラミド等の定量対象物質を定量する方法として有用である。
図1