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特開2023-60651非水系二次電池用負極材料シートおよびその製造方法、非水系二次電池用負極、並びに、非水系二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060651
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】非水系二次電池用負極材料シートおよびその製造方法、非水系二次電池用負極、並びに、非水系二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20230421BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20230421BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/1393
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170367
(22)【出願日】2021-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【弁理士】
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】村上 康之
(72)【発明者】
【氏名】米丸 裕之
(72)【発明者】
【氏名】永谷 祐介
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA08
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CB08
5H050CB09
5H050FA12
5H050FA14
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA04
5H050GA08
5H050GA09
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】
【課題】シート強度を維持しつつ非水系二次電池に良好な初期不可逆容量を付与し得る負極を形成可能な非水系二次電池用負極材料シートを提供する。
【解決手段】本発明の非水系二次電池用負極材料シートは、粒子状炭素材料を含み、前記粒子状炭素材料が、前記非水系二次電池用負極材料シートの表面に対して垂直方向に配向しており、前記非水系二次電池用負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合が、所定値以下であり、かつ前記非水系二次電池用負極材料シートの表面粗さSaが、所定値以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状炭素材料を含む非水系二次電池用負極材料シートであって、
前記粒子状炭素材料が、前記非水系二次電池用負極材料シートの表面に対して垂直方向に配向しており、
前記非水系二次電池用負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合が、8質量%以下であり、かつ
前記非水系二次電池用負極材料シートの表面粗さSaが、10μm以下である、
非水系二次電池用負極材料シート。
【請求項2】
厚みが50μm以上である、請求項1に記載の非水系二次電池用負極材料シート。
【請求項3】
前記粒子状炭素材料が鱗片状黒鉛を含む、請求項1または2に記載の非水系二次電池用負極材料シート。
【請求項4】
前記粒子状炭素材料のアスペクト比が1.2超20以下である、請求項1~3のいずれかに記載の非水系二次電池用負極材料シート。
【請求項5】
樹脂と粒子状炭素材料とを含む組成物を加圧してシート状に成形し、1次シートを得る1次シート成形工程と、
前記1次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記1次シートを折畳または捲回して、積層体を得る積層体形成工程と、
前記積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、2次シートを得るスライス工程と、
前記2次シートを加圧下で600℃以上の焼成温度で焼成する焼成工程と、を含む非水系二次電池用負極材料シートの製造方法。
【請求項6】
前記焼成工程が、0.001MPa以上の加圧下で行われる、請求項5に記載の非水系二次電池用負極材料シートの製造方法。
【請求項7】
前記1次シートにおける粒子状炭素材料の体積分率が45体積%以上である、請求項5または6に記載の非水系二次電池用負極材料シートの製造方法。
【請求項8】
前記粒子状炭素材料が鱗片状黒鉛を含む、請求項5~7のいずれかに記載の非水系二次電池用負極材料シートの製造方法。
【請求項9】
前記粒子状炭素材料のアスペクト比が1.2超20以下である、請求項5~8のいずれかに記載の非水系二次電池用負極材料シートの製造方法。
【請求項10】
請求項1~4のいずれかに記載の非水系二次電池用負極材料シートを備える非水系二次電池用負極。
【請求項11】
請求項10に記載の非水系二次電池用負極を備える非水系二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池用負極材料シートおよびその製造方法、非水系二次電池用負極、並びに、非水系二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの非水系二次電池(以下、単に「二次電池」と略記する場合がある。)は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そのため、近年では、二次電池の更なる高性能化を目的として、電極(正極、負極)などの電池部材の改良が検討されている。
【0003】
ここで、リチウムイオン二次電池などの二次電池に用いられる負極は、通常、集電体と、集電体上に形成された電極合材層(負極合材層)とを備えている。そして、この負極合材層(「負極活物質層」と称することもある)は、例えば、負極活物質と、必要に応じて用いられる結着材等の樹脂成分とを含んでいる。
【0004】
そこで、近年では、この負極合材層を改良することで、二次電池の性能を更に向上させる試みがなされている。
例えば、特許文献1では、二次電池の出入力特性(レート特性)等を向上させる目的で、負極活物質層中の負極活物質の全量の少なくとも50個数%を、電荷担体の吸蔵および放出が行われる方向が集電体の表面に対して45°以上90°以下となるように配向させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/088540号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように樹脂製バインダーを用いて電極を作成すると、このバインダー成分が負極活物質の電荷担体吸蔵/放出反応を阻害することで、初期不可逆容量が大きくなることが予想される。このことから電極内のバインダー成分を極力少なくすることで、電池の性能を上げることができると期待される。
【0007】
そこで、本発明者らは、良好な初期不可逆容量を得ることを期待して、電極を高温で焼成することでバインダー成分を除去することを検討した。高温焼成によりバインダー成分が除去されると、初期不可逆容量の向上が期待されるが、一方で糊の役割をしていたバインダー成分の消失によりシート強度が低下する問題が予想される。シート強度低下の抑止を期待して、焼成条件を変えて高温焼成しようとすると、樹脂製バインダーの変性物が残留し、このような樹脂由来の残留変性物も一種のバインダーとして機能することになり、残留変性物の存在により初期不可逆容量が大きくなる問題が予想される。そのため、良好な初期不可逆容量とシート強度の維持を両立させ得る負極材料およびその製造方法が求められていた。
【0008】
本発明は、シート強度を維持しつつ非水系二次電池に良好な初期不可逆容量を付与し得る負極を形成可能な非水系二次電池用負極材料シートを提供することを目的とする。
また、本発明は、強度が維持され、非水系二次電池に良好な初期不可逆容量を付与し得る負極を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、負極の強度が維持され、良好な初期不可逆容量を持つ非水系二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、粒子状炭素材料を含み、粒子状炭素材料が、非水系二次電池用負極材料シートの表面に対して垂直方向に配向しており、非水系二次電池用負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合が、所定値以下であり、さらに、非水系二次電池用負極材料シートの表面粗さSaが、所定値以下である、非水系二次電池用負極材料シートであれば、負極材料シートとしてのシート強度を維持しつつ、負極合材層として集電体と貼り合わせて負極を作製した時に、かかる負極を備える非水系二次電池に良好な初期不可逆容量を付与し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用負極材料シート(以下、単に「負極材料シート」と称することがある。)は、粒子状炭素材料を含み、前記粒子状炭素材料が、前記負極材料シートの表面に対して垂直方向に配向しており、前記負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合が、所定値以下であり、かつ前記負極材料シートの表面粗さSaが、所定値以下であることを特徴とする。
このように、本発明の負極材料シートは、粒子状炭素材料を含み、粒子状炭素材料が負極材料シートの表面に対して垂直方向に配向しており、負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合が所定値以下であるので、二次電池に良好な初期不可逆容量を付与し得る負極を形成可能である。さらに、本発明の負極材料シートは、粒子状炭素材料が負極材料シートの表面に対して垂直方向に配向しており、かつ表面粗さSaが所定値以下であるので、負極材料シートとしてのシート強度が良好に維持される。
なお、本発明において、負極材料シート中の粒子状炭素材料の配向性、負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合、および負極材料シートの表面粗さSaは、本明細書の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0011】
ここで、本発明の非水系二次電池用負極材料シートは、厚みが80μm以上であることが好ましい。非水系二次電池用負極材料シートの厚みが上記所定値以上であれば、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池を高容量化することができる。
なお、本発明において、非水系二次電池用負極材料シートの厚みは、本明細書の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0012】
また、本発明の非水系二次電池用負極材料シートは、前記粒子状炭素材料が鱗片状黒鉛を含むことが好ましい。粒子状炭素材料として鱗片状黒鉛を用いれば、負極材料シートを備える負極の強度を更に良好に維持することができ、またその負極を用いて製造した二次電池のレート特性を更に向上させることができる。
【0013】
さらに、本発明の非水系二次電池用負極材料シートは、前記粒子状炭素材料のアスペクト比が1.2超20以下であることが好ましい。上記所定の範囲内のアスペクト比を有する粒子状炭素材料を用いれば、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池のレート特性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、「アスペクト比」は、粒子状炭素材料をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個の粒子状炭素材料について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。なお、上記において、例えば、鱗片形状である粒子状炭素材料をSEMで観察する場合、「長径」は当該鱗片形状が有する主面の長軸の方向の長さを指し、「短径」は、当該主面と同一平面上において当該主面の長軸に直交する方向の長さを指すものとする。
【0014】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用負極材料シートの製造方法は、樹脂と粒子状炭素材料とを含む組成物を加圧してシート状に成形し、1次シートを得る1次シート成形工程と、前記1次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記1次シートを折畳または捲回して、積層体を得る積層体形成工程と、前記積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、2次シートを得るスライス工程と、前記2次シートを加圧下で所定値以上の焼成温度で焼成する焼成工程と、を含むことを特徴とする。本発明の非水系二次電池用負極材料シートの製造方法によれば、シート強度を維持しつつ二次電池に良好な初期不可逆容量を付与し得る非水系二次電池用負極材料シートを製造することができる。
【0015】
また、本発明の非水系二次電池用負極材料シートの製造方法では、焼成工程は、所定値の圧力以上の加圧下で行われることが好ましい。加圧の圧力が所定値以上であれば、焼成時に負極材料シートの表面に平滑性を与えることができ、それによって負極材料シートの表面粗さSaを上記上限以下に調整することが可能となり、負極材料シート中の粒子状炭素材料の充填性が向上し、負極材料シートとして優れたシート強度を与えることができる。
【0016】
また、本発明の非水系二次電池用負極材料シートの製造方法では、前記1次シートにおける粒子状炭素材料の体積分率が45体積%以上であることが好ましい。1次シートにおける粒子状炭素材料の体積分率が上記下限以上であれば、製造される負極材料シートの密度を適度に高めて、負極材料シートの強度を向上させると共に、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池を高容量化することができる。
【0017】
さらに、本発明の非水系二次電池用負極材料シートの製造方法は、前記粒子状炭素材料が鱗片状黒鉛を含むことが好ましい。粒子状炭素材料として鱗片状黒鉛を用いれば、製造される負極材料シートを備える負極の強度を更に良好に維持することができ、またその負極を用いて製造した二次電池のレート特性を更に向上させることができる。
【0018】
また、本発明の非水系二次電池用負極材料シートの製造方法は、前記粒子状炭素材料のアスペクト比が1.2超20以下であることが好ましい。上記所定の範囲内のアスペクト比を有する粒子状炭素材料を用いれば、製造される負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池のレート特性を更に向上させることができる。
【0019】
そして、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用負極は、上述したいずれかの非水系二次電池用負極材料シートを備えることを特徴とする。本発明の非水系二次電池用負極は、強度が維持され、二次電池に良好な初期不可逆容量を付与することができる。
【0020】
さらに、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池は、上述した非水系二次電池用負極を備えることを特徴とする。本発明の非水系二次電池は、上述した非水系二次電池用負極を備えているため、負極の強度が維持され、良好な初期不可逆容量を持つことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、シート強度を維持しつつ非水系二次電池に良好な初期不可逆容量を付与し得る負極を形成可能な非水系二次電池用負極材料シートを提供することができる。
また、本発明によれば、強度が維持され、非水系二次電池に良好な初期不可逆容量を付与し得る負極を提供することができる。
さらに、本発明によれば、負極の強度が維持され、良好な初期不可逆容量を持つ非水系二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の非水系二次電池用負極材料シート(以下、単に「負極材料シート」と称することがある。)は、非水系二次電池用負極の負極合材層として用いることができる。
なお、本発明の負極材料シートは、本発明の負極材料シートの製造方法を用いて製造することができる。
そして、本発明の非水系二次電池用負極(以下、単に「負極」と称することがある。)は、負極合材層として、本発明の負極材料シートを備えている。即ち、本発明の負極材料シートは、本発明の負極の製造に用いることができる。例えば、本発明の負極は、本発明の負極材料シートを集電体と貼り合わせることにより製造することができる。
さらに、本発明の非水系二次電池(以下、単に「二次電池」と称することがある。)は、本発明の負極を備えている。即ち、本発明の負極は、本発明の二次電池の製造に用いることができる。
【0023】
(非水系二次電池用負極材料シート)
本発明の負極材料シートは、粒子状炭素材料を含み、任意で、樹脂由来成分および繊維状炭素材料などのその他の成分を更に含んでいる。また、本発明の負極材料シートにおいて、粒子状炭素材料は、負極材料シートの表面に対して垂直方向に配向している。また、本発明の負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合は、所定値以下である。また、本発明の負極材料シートの表面粗さSaは、所定値以下である。
そして、本発明の負極材料シートは、強度が維持され、二次電池に良好な初期不可逆容量を付与し得る負極を形成可能である。
【0024】
<粒子状炭素材料>
粒子状炭素材料は、非水系二次電池の負極活物質として、リチウム等の電荷担体を吸蔵および放出し得る、炭素原子含有物質から形成される粒子状材料である。粒子状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、黒鉛、カーボンブラック等が挙げられる。黒鉛としては、由来によって、天然黒鉛および人造黒鉛が挙げられる。また、黒鉛としては、形態的特徴によって、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛(鱗状黒鉛)、土状黒鉛、薄片化黒鉛等、球状黒鉛(楕円状黒鉛)が挙げられる。また、黒鉛は、処理が施されていてもなくてもよい。処理が施された黒鉛としては、例えば、酸処理黒鉛(例、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛)等が挙げられる。カーボンブラックは、黒鉛質の炭素微結晶が数層集まって乱層構造を形成した集合体であり、具体的にはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等が挙げられる。また、カーボンブラックは、主成分である炭素元素と異なるヘテロ元素(例、ケイ素、窒素、ホウ素等)を含有してもよい。これらの粒子状炭素材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上述した中でも、粒子状炭素材料としては、優れた配向性を得る形状となる観点から、長軸を有する形状(即ち、長径と短径と厚みを有する形状)を有する粒子状炭素材料を用いることが好ましい。このような形状を有する粒子状炭素材料としては、例えば、平板形状を有する黒鉛(例、鱗片状黒鉛)、長軸を有する球状黒鉛(楕円状黒鉛)等が挙げられる。また、このような形状を有する粒子状炭素材料の中でも、充填性および密着性が向上することにより粒子状炭素材料同士の接合強度が向上して負極材料シートの強度が向上する観点から、平板形状を有する黒鉛(例、鱗片状黒鉛)を用いることがより好ましい。粒子状炭素材料として鱗片状黒鉛を用いれば、負極材料シート中での垂直方向への優れた配向性を得ることができ、そのことによって負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池のレート特性を更に向上させることができる。また、粒子状炭素材料として鱗片状黒鉛を用いれば、充填性および密着性が向上し、そのことによって負極活物質同士の接合強度が更に向上して負極材料シートの強度を更に向上させることができる。なお、鱗片状黒鉛としては、例えば、日本黒鉛工業株式会社製「UP20α」等が挙げられる。
【0026】
<<粒子状炭素材料の性状>>
粒子状炭素材料の体積平均粒子径は、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることが更に好ましく、12μm以上であることが一層好ましく、16μm以上であることがより一層好ましく、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。粒子状炭素材料の体積平均粒子径が上記下限以上であれば、負極材料シートの密度が適度に低下することにより、リチウム等の電荷担体の移動が容易になるため、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池のレート特性を更に向上させることができる。一方、粒子状炭素材料の体積平均粒子径が上記上限以下であれば、負極材料シートの密度が適度に高まることにより、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池を高容量化することができる。
なお、本発明において「体積平均粒子径」は、JIS Z8825に準拠して測定することができ、レーザー回折法で測定された粒度分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
【0027】
また、粒子状炭素材料は、上述したように、長軸を有する形状(即ち、長径と短径と厚みを有する形状)を有する粒子状炭素材料が好ましい。長軸を有する形状を有する粒子状炭素材料として、粒子状炭素材料のアスペクト比(長径/短径)は、1.2超であることが好ましく、2超であることがより好ましく、4超であることが更に好ましく、6超であることが一層好ましく、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。粒子状炭素材料のアスペクト比が上記所定の範囲内であれば、粒子状炭素材料の優れた配向性が得られ、後述するような、粒子状炭素材料が負極材料シートの表面に対して垂直方向に配向していることによる効果(即ち、リチウム等の電荷担体の移動が容易になるため、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池のレート特性を更に向上させることができるとの効果)が、顕著に示される。
【0028】
<<粒子状炭素材料の含有割合>>
負極材料シート中の粒子状炭素材料の含有割合は、92質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることが更に好ましく、98質量%以上であることが一層好ましく、99質量%以上であることがより一層好ましく、100質量%以下とすることができる。負極材料シート中の粒子状炭素材料の含有割合が上記下限以上であれば、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池の初期不可逆容量を更に向上させると共に、当該二次電池を高容量化することができる。
【0029】
<その他の成分>
本発明の負極材料シートは、上述した粒子状炭素材料以外の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、樹脂由来成分および繊維状炭素材料などを用いることができる。
【0030】
<<樹脂由来成分>>
本発明の負極材料シートに任意で含まれる「樹脂由来成分」とは、特に限定されないが、例えば、後述する負極材料シートの製造方法において、負極材料シートの前駆体である1次シートおよび2次シートを成形するために用いられた樹脂のうちの一部が、焼成工程で燃焼せずに、樹脂そのものまたは樹脂変性物(例、物質の詳細は不明であるが、恐らくタールと推測される物質)として残存したものをいう。具体的には、樹脂由来成分は、後述する樹脂由来成分の含有割合の測定方法のように負極材料シートを30℃から600℃まで昇温させる間に消失(例、気化または酸化)する成分として特定することができる。
負極材料シートに含まれ得る樹脂由来成分の由来となる樹脂の具体例としては、「非水系二次電池用負極材料シートの製造方法」の項で後述されている樹脂などが挙げられる。
なお、負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合については後述する。
【0031】
<<繊維状炭素材料>>
負極材料シートに任意で含まれる繊維状炭素材料は、負極材料シートの強度を向上させ得る材料である。
繊維状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、および、それらの切断物などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ここで、上述した中でも、繊維状炭素材料としては、カーボンナノチューブなどの繊維状の炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、カーボンナノチューブを含む繊維状の炭素ナノ構造体を用いることがより好ましい。カーボンナノチューブなどの繊維状の炭素ナノ構造体を使用すれば、負極材料シートの強度を更に向上させることができる。
【0033】
<粒子状炭素材料の配向性>
粒子状炭素材料は、非水系二次電池用負極材料シートの表面に対して垂直方向に配向している。「垂直方向に配向している」とは、粒子状炭素材料の長軸が、負極材料シートの表面に対して、所定値以上の角度で配向していることをいう。粒子状炭素材料が負極材料シートの表面に対して垂直方向に配向していれば、リチウム等の電荷担体の移動が容易になるため、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池のレート特性を更に向上させることができる。このような粒子状炭素材料の配向性は、例えば、粒子状炭素材料の配向角度の測定値を指標として評価することができる。なお、このような粒子状炭素材料の配向性は、例えば、後述する負極材料シートの製造方法において実施する工程、使用する粒子状炭素材料の性状(例えば、アスペクト比)、後述する1次シートの膜厚を始めとする成形条件、積層体の切断角度および、焼成の条件(例えば、温度、加圧荷重、および時間)などによって調整することができる。
【0034】
<<粒子状炭素材料の配向角度>>
粒子状炭素材料の配向角度を指標とする場合、粒子状炭素材料が負極材料シートの表面に対して垂直方向に配向していることとしては、負極材料シート中の粒子状炭素材料の配向角度は、負極材料シートの表面に対して、60°以上であることが好ましく、65°以上であることがより好ましく、70°以上であることが更に好ましく、90°以下であることが好ましい。粒子状炭素材料の配向角度が負極材料シートの表面に対して上記所定の範囲内であれば、リチウム等の電荷担体の移動が容易になるため、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池のレート特性を更に向上させることができる。なお、本発明において、非水系二次電池用負極材料シートの表面に対する粒子状炭素材料の配向角度は、本明細書の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0035】
<樹脂由来成分の含有割合>
本発明の負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合は、8質量%以下であることが必要であり、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以下であることが一層好ましい。負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合が上記所定値以下であれば、一種のバインダーとして機能し得る樹脂由来成分が少なくなることから、樹脂由来成分の存在に起因し得る初期不可逆容量の増大が抑制されると考えられるため、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池は良好な初期不可逆容量を持つことができる。
また、負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合は、特に限定されず、0質量%以上とすることができる。
そして、二次電池の初期不可逆容量を更に向上させる観点から、負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合は0質量%であることが特に好ましい。
なお、負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合は、例えば、後述する負極材料シートの製造方法において実施する工程、使用する樹脂の種類および量、並びに、焼成の条件(例えば、温度、加圧荷重、および時間)などによって調整することができる。
本発明において、負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合は、負極材料シートを、酸素雰囲気下、30℃から600℃以上の温度(例、1000℃)までの温度範囲において、10℃/分の昇温速度により熱重量測定(TGA測定)を行い、30℃から600℃までの間に消失(例、気化または酸化)により減少した重量を樹脂由来成分の重量とし、当該樹脂由来成分の重量の最初の負極材料シートの重量に対する割合を負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合とすることにより測定することができる。
【0036】
<負極材料シートの表面粗さSa>
負極材料シートの表面粗さSaは、10μm以下であり、6μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく3μm以下であることが更に好ましい。負極材料シートの表面粗さSaが上記上限以下であれば、負極材料シートの表面の平滑度が高くなり、負極材料シート中の粒子状炭素材料の充填性が向上し、負極材料シートとして優れたシート強度を与えることができる。また、表面粗さSaが上記上限以下であれば、そのような負極材料シートを用いた負極の表面が平滑となり、対向電極間(負極-正極間)の距離が均一となり、二次電池の出力不安定化や電極間ショート等の問題を回避することができる。また、負極材料シートの表面粗さSaは、1.0μm以上であることが好ましい。極材料シートの表面粗さSaが極端に小さいと、負極材料シート製造の際の焼成時の加圧が過剰であることが原因と考えられ、粒子状炭素材料が水平方向に倒れた配向が生じ易くなると考えられる。そのため、負極材料シートの表面粗さSaが上記下限以上であれば、粒子状炭素材料の水平方向に倒れた配向を回避でき、粒子状炭素材料が垂直方向に配向したシートを製造し易くなる。負極材料シートの表面粗さSaは、例えば、負極材料シートを後述する負極材料シートの製造方法により製造する際に2次シートを加圧下で焼成することにより、上記範囲内に調整することができる。
【0037】
<厚み>
負極材料シートの厚みは、50μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることが更に好ましく、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることが更に好ましい。負極材料シートの厚みが上記下限以上であれば、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池を高容量化することができる。一方、負極材料シートの厚みが上記上限以下であれば、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池を薄型化することができる。
【0038】
(非水系二次電池用負極材料シートの製造方法)
本発明の負極材料シートの製造方法は、(A)樹脂と粒子状炭素材料とを含む組成物を加圧してシート状に成形し、1次シートを得る1次シート成形工程と、(B)前記1次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記1次シートを折畳または捲回して、積層体を得る積層体形成工程と、(C)前記積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、2次シートを得るスライス工程と、(D)前記2次シートを加圧下で所定値以上の焼成温度で焼成する焼成工程と、を含む。
なお、本発明の負極材料シートの製造方法は、任意で、上記(A)~(D)以外の工程を更に含んでいてもよい。
【0039】
本発明の負極材料シートの製造方法によれば、シート強度を維持しつつ非水系二次電池に良好な初期不可逆容量を付与し得る負極を形成可能な負極材料シートを製造することができる。
そして、本発明の負極材料シートの製造方法によれば、上述した本発明の負極材料シートを効率良く製造することができる。
【0040】
<(A)1次シート成形工程>
1次シート成形工程では、樹脂と粒子状炭素材料とを含む組成物を加圧してシート状に成形し、1次シートを得る。
【0041】
<<組成物>>
上記組成物は、樹脂と粒子状炭素材料とを含む。なお、上記組成物は、繊維状炭素材料を更に含んでいてもよく、含んでいなくてもよい(即ち、組成物中の繊維状炭素材料の含有量が、樹脂100質量部に対して、0質量部であり、粒子状炭素材料100質量部に対して、0質量部以上であってもよい)。また、上記組成物は、上述した樹脂、粒子状炭素材料、繊維状炭素材料以外の成分(その他の成分)を更に含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0042】
-樹脂-
樹脂としては、特に限定されず、任意の樹脂を用いることができる。例えば、樹脂としては、液状樹脂および固体樹脂のいずれも用いることができる。なお、樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、樹脂としては、液状樹脂と固体樹脂との双方を用いることができる。なお、樹脂として液状樹脂と固体樹脂とを併用する場合、液状樹脂と固体樹脂との質量比は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で調整することができる。なお、樹脂全体に占める液状樹脂の含有割合が高いほど、1次シート内における粒子状炭素材料の充填率を容易に上げることができる。一方、樹脂全体に占める固体樹脂の含有割合が高いほど、一次シートの強度を上げることができる。
【0043】
=液状樹脂=
そして、液状樹脂としては、常温常圧下で液体である限り、特に限定されることなく、例えば、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂を用いることができる。
なお、本発明において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
【0044】
液状樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(ニトリルゴム)が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
=固体樹脂=
固体樹脂としては、常温常圧下で液体でない限り、特に限定されることなく、例えば、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂、常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂等を用いることができる。
【0046】
常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2-エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2-エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン-プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン-アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(ニトリルゴム);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン-ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン-イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、ゴムは、「樹脂」に含まれるものとする。
【0047】
常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
-粒子状炭素材料-
粒子状炭素材料としては、「非水系二次電池用負極材料シート」の項で上述した粒子状炭素材料を用いることができる。
【0049】
そして、組成物中の粒子状炭素材料の含有量は、樹脂100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、120質量部以上であることが更に好ましく、180質量部以上であることが一層好ましく、250質量部以上であることがより一層好ましく、500質量部以下であることが好ましく、450質量部以下であることがより好ましく、400質量部以下であることが更に好ましい。組成物中の粒子状炭素材料の含有量が上記下限以上であれば、製造される負極材料シートの密度を適度に高めて、負極材料シートの強度を向上させると共に、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池を高容量化することができる。一方、組成物中の粒子状炭素材料の含有量が上記上限以下であれば、製造される負極材料シートの密度を適度に低下させて、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池のレート特性を更に向上させると共に、当該二次電池の電解液注液性を高めることができる。
【0050】
また、1次シートとなる組成物中で、固形成分の合計体積(即ち、樹脂、粒子状炭素材料、および任意で追加した繊維状炭素材料、その他の成分の合計体積)に対する粒子状炭素材料の体積の割合(体積分率)は、25体積%以上であることが好ましく、37体積%以上であることが好ましく、45体積%以上であることがより好ましく、53体積%以上であることが更に好ましく、75体積%以下であることが好ましく、70体積%以下であることがより好ましく、65体積%以下であることが更に好ましい。組成物中の樹脂および粒子状炭素材料の合計体積に占める粒子状炭素材料の体積の割合が上記下限以上であれば、製造される負極材料シートの密度を適度に高めて、負極材料シートの強度を向上させると共に、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池を高容量化することができる。一方、組成物中の樹脂および粒子状炭素材料の合計体積に占める粒子状炭素材料の体積の割合が上記上限以下であれば、製造される負極材料シートの密度を適度に低下させて、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池のレート特性を更に向上させると共に、当該二次電池の電解液注液性を高めることができる。
【0051】
-その他の成分-
上記組成物は、上述した樹脂、粒子状炭素材料、および繊維状炭素材料以外のその他の成分を更に含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。その他の成分としては、例えば、分散剤を用いることができる。分散剤としては、特に限定されることはなく、既知のものを用いることができる。なお、組成物中の分散剤の含有量は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で調整することができる。
【0052】
-組成物の調製-
組成物は、特に限定されることはなく、上述した成分を混合することにより調製することができる。
なお、上述した成分の混合は、特に制限されることなく、ニーダー;ヘンシェルミキサー、ホバートミキサー、ハイスピードミキサー等のミキサー;二軸混練機;ロール;などの既知の混合装置を用いて行うことができる。また、混合は、酢酸エチル等の溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒に予め樹脂を溶解または分散させて樹脂溶液として、粒子状炭素材料、並びに任意で添加される繊維状炭素材料およびその他の成分と混合してもよい。なお、繊維状炭素材料として、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体を用いる場合は、メチルエチルケトン等の溶媒にCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体と分散剤とを分散させてなる分散液を調製した後、当該分散液に少量の樹脂を添加し、溶媒を留去して得られるマスターバッチを、樹脂および粒子状炭素材料と混合してもよい。そして、混合時間は、例えば、5分以上60分以下とすることができる。また、混合温度は、例えば、5℃以上150℃以下とすることができる。
【0053】
<<組成物の成形>>
そして、上述のようにして調製した組成物は、任意に脱泡および解砕した後に、加圧してシート状に成形することができる。このように組成物を加圧成形したシート状のものを、1次シートとすることができる。なお、混合時に溶媒を用いている場合には、溶媒を除去してからシート状に成形することが好ましく、例えば、真空脱泡を用いて脱泡を行えば、脱泡時に溶媒の除去も同時に行うことができる。
【0054】
ここで、組成物は、圧力が負荷される成形方法であれば、特に制限されることなく、プレス成形、圧延成形または押し出し成形などの既知の成形方法を用いてシート状に成形することができる。中でも、組成物は、圧延成形(一次加工)によりシート状に成形することが好ましく、保護フィルムに挟んだ状態でロール間を通過させてシート状に成形することがより好ましい。なお、保護フィルムとしては、特に制限されることなく、サンドブラスト処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を用いることができる。また、ロール温度は5℃以上150℃以下、ロール間隙は50μm以上2500μm以下、ロール線圧は1kg/cm以上3000kg/cm以下、ロール速度は0.1m/分以上20m/分以下とすることができる。
【0055】
<(B)積層体形成工程>
積層体形成工程では、1次シート成形工程で得られた1次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、1次シートを折畳または捲回して、樹脂および粒子状炭素材料を含む1次シートが厚み方向に複数形成された積層体を得る。ここで、1次シートの折畳による積層体の形成は、特に制限されることなく、折畳機を用いて1次シートを一定幅で折り畳むことにより行うことができる。また、1次シートの捲回による積層体の形成は、特に制限されることなく、1次シートの短手方向または長手方向に平行な軸の回りに1次シートを捲き回すことにより行うことができる。また、1次シートの積層による積層体の形成は、特に制限されることなく、積層装置を用いて行うことができる。例えば、シート積層装置(日機装社製、製品名「ハイスタッカー」)を用いれば、層間に空気が入り込むことを抑えることができるため、良好な積層体を効率的に得ることができる。
【0056】
なお、積層工程では、得られた積層体を、加熱しながら、積層方向に加圧(二次加圧)することが好ましい。積層体を加熱しながら積層方向に加圧する二次加圧を行うことにより、積層された1次シート相互間の融着を促進することができる。
【0057】
ここで、積層体を積層方向に加圧する際の圧力は、0.05MPa以上0.50MPa以下とすることができる。
また、積層体の加熱温度は、特に限定されないが、50℃以上170℃以下であることが好ましい。
さらに、積層体の加熱時間は、例えば、10秒間以上30分間以下とすることができる。
【0058】
なお、1次シートを積層、折畳または捲回して得られる積層体では、粒子状炭素材料が積層方向に略直交する方向に配向していると推察される。例えば、粒子状炭素材料が鱗片形状である場合、当該鱗片形状が有する主面の長軸の方向は、積層方向に略直交していると推察される。
【0059】
<(C)スライス工程>
スライス工程では、積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスして、積層体のスライス片よりなる2次シートを得る。ここで、積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、2次シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカンナやスライサー)を用いることができる。
【0060】
なお、積層体をスライスする角度は、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが好ましい。
そして、このようにして得られた2次シートでは、厚み方向に粒子状炭素材料が良好に配向している。例えば、粒子状炭素材料が鱗片形状である場合、当該鱗片形状が有する主面の長軸の方向は、2次シートの厚み方向と略一致している。
【0061】
<(D)焼成工程>
焼成工程では、2次シートを加圧下で所定値以上の焼成温度で焼成して、2次シートに含まれる樹脂を燃焼させて除去することにより、負極材料シートを得る。
得られた負極材料シートは、上述した2次シートから樹脂が除去されて得られるシートである。したがって、負極材料シートでは、厚み方向に粒子状炭素材料が良好に配向している。例えば、粒子状炭素材料が鱗片形状である場合、当該鱗片形状が有する主面の長軸の方向は、2次シートの表面に対して垂直方向に配向している。
【0062】
ここで、2次シートを焼成する際の加熱温度は、600℃以上であり、700℃以上であることが好ましく、800℃以上であることがより好ましく、900℃以上であることが更に好ましい。また、2次シートを焼成する際の加熱温度は、2000℃以下であることが好ましく、1500℃以下であることがより好ましく、1200℃以下であることが更に好ましい。2次シートを焼成する際の加熱温度が上記下限以上であれば、製造される負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合を低減して、負極材料シートを備える負極を用いて製造した二次電池の初期不可逆容量を更に向上させることができる。一方、2次シートを焼成する際の加熱温度が上記上限以下であれば、過度な加熱によって製造される負極材料シートが有する構造等が損なわれることを抑制し、負極材料シートの強度を十分に高く確保することができる。
【0063】
2次シートの焼成は、加圧下で行われる。加圧は、2次シートの厚み方向に荷重されることが好ましく、均一に荷重されることがより好ましい。加圧手段としては、2次シート上に重りを載せることにより荷重すること、2次シートを高圧気体下に置くこと等が挙げられるが、2次シートの厚み方向に均一に荷重することができる観点から、2次シート上に重りを載せることにより荷重することが好ましい。2次シートの焼成を加圧下で行うことにより、焼成時に負極材料シートの表面に平滑性を与えることができ、それによって負極材料シートの表面粗さSaを上記上限以下に調整することが可能となる。
【0064】
2次シートを焼成する際の加圧の圧力は、0.001MPa以上であることが好ましく、0.003MPa以上であることがより好ましく、0.005MPa以上であることが更に好ましい。また、2次シートを焼成する際の加圧の圧力は、1MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることがより好ましく、0.1MPa以下であることが更に好ましい。2次シートを焼成する際の加圧の圧力が上記下限以上であれば、焼成時に負極材料シートの表面に平滑性を与えることができ、それによって負極材料シートの表面粗さSaを上記上限以下に調整することが可能となり、負極材料シート中の粒子状炭素材料の充填性が向上し、負極材料シートとして優れたシート強度を与えることができる。一方、2次シートを焼成する際の加圧の圧力が上記上限以下であれば、過剰な圧力により粒子状炭素材料の配向性が悪化して(即ち、配向角度が垂直方向ではなく水平方向に偏ったり、配向角度の均一性が低下する等する)二次電池に用いた時のレート特性が低下すると共に、配向性悪化に伴って負極材料シートのシート強度が低下して負極材料シートが脆くなることを抑止することができる。
【0065】
なお、2次シートを焼成する際の加熱時間は、加熱温度に応じて調整可能であるが、例えば、30分間以上72時間以下とすることができる。
【0066】
(非水系二次電池用負極)
本発明の非水系二次電池用負極は、上述した本発明の負極材料シートを備えることを特徴とする。例えば、本発明の負極は、集電体上に、負極合材層としての本発明の負極材料シートを備えている。
そして、本発明の負極は、強度が維持され、非水系二次電池に良好な初期不可逆容量を付与することができる。
【0067】
本発明の負極は、特に限定されることはなく、例えば、集電体と本発明の負極材料シートとを貼り合わせることにより製造することができる。
ここで、集電体としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等の材料からなる集電体を用いることができる。中でも、負極に用いる集電体としては銅箔が特に好ましい。なお、上述した材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、集電体と負極材料シートとは、特に限定されず、既知の方法により貼り合わせることができる。なお、集電体と負極材料シートとの貼り合わせの際は、接着剤などを用いてもよい。
【0068】
(非水系二次電池)
本発明の非水系二次電池は、上述した本発明の非水系二次電池用負極を備えることを特徴とする。
例えば、本発明の非水系二次電池は、正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備え、負極として、本発明の非水系二次電池用負極を用いたものである。そして、本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池用負極を用いているので、負極の強度が維持され、良好な初期不可逆容量を持つことができる。以下、非水系二次電池がリチウムイオン二次電池である場合を例に挙げ、正極、電解液、およびセパレータについて記載するが、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
【0069】
<正極>
正極としては、リチウムイオン二次電池用正極として用いられる既知の正極を用いることができる。具体的には、正極としては、例えば、正極合材層を集電体上に形成してなる正極を用いることができる。
なお、集電体としては、アルミニウム等の金属材料からなるものを用いることができる。また、正極合材層としては、既知の正極活物質と、導電材と、結着材とを含む層を用いることができる。
【0070】
<電解液>
電解液としては、溶媒に電解質を溶解した電解液を用いることができる。
ここで、溶媒としては、電解質を溶解可能な有機溶媒を用いることができる。具体的には、溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン等のアルキルカーボネート系溶媒に、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、酢酸メチル、ジメトキシエタン、ジオキソラン、プロピオン酸メチル、ギ酸メチル等の粘度調整溶媒を添加したものを用いることができる。
電解質としては、リチウム塩を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、特開2012-204303号公報に記載のものを用いることができる。これらのリチウム塩の中でも、有機溶媒に溶解しやすく、高い解離度を示すという点より、電解質としてはLiPF、LiClO、CFSOLiが好ましい。
【0071】
<セパレータ>
セパレータとしては、特に限定されず、既知のものを用いることができ、例えば、特開2012-204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、リチウムイオン二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系の樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)からなる微多孔膜が好ましい。
【0072】
<非水系二次電池の製造方法>
本発明の非水系二次電池は、例えば、正極と、負極とを、セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。二次電池の内部の圧力上昇、過充放電などの発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【実施例0073】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
なお、実施例における各種の測定および評価は以下の方法に従って行った。
【0074】
<粒子状炭素材料の配向角度>
負極材料シート中の粒子状炭素材料の配向角度は、負極材料シートを正八角形に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテクノロジーズ製「SU-3500」)にて当該シートの上端から下端までが収まる倍率で観察して求めた。なお、このときの倍率は700倍であった。この断面における任意の50個の粒子状炭素材料の長軸に50本線を引き、負極材料シートの表面に対する長軸の角度の平均を算出した。これを8面に対して実施し、8面の中で最も値の大きなものを負極材料シート中の粒子状炭素材料の配向角度とした。
【0075】
<表面粗さSa>
負極材料シートの表面粗さSaは、三次元形状測定機(株式会社キーエンス製、製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ」)を用いて測定した。
具体的には、負極材料シートの評価対象の表面から抽出した5点の解析範囲(1cm×1cm)について、三次元形状を測定した。なお、5点抽出する際に各解析範囲は0.5cm以上離れていることが望ましいが、負極材料シートのサイズが小さい場合は、解析範囲の一部が重なっていても構わない。また、負極材料シートのサイズが小さく、1cm×1cmの解析範囲を確保できない場合には、解析範囲を0.3cm×0.3cmまで小さくしてもよい。
更に、三次元形状の測定結果に対してソフトウェアでフィルター処理(2.5mm)を行い、うねり成分を取り除くことにより、表面粗さSa(μm)を自動計算し、5点の解析範囲の平均値を負極材料シートの表面粗さSaとした。
【0076】
<樹脂由来成分の含有割合>
負極材料シートを、酸素雰囲気下、30~1000℃の温度範囲において、10℃/分の昇温速度により熱重量測定(TGA測定)を行った。始点から600℃における重量の減少割合(600℃までの減少量/測定開始時のシート質量×100%)を、負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合とした。
【0077】
<厚み>
膜厚計(ミツトヨ製、製品名「デジマチックインジケーター ID-C112XBS」)を用いて、負極材料シートの略中心点および四隅(四角)の計五点における厚みを測定し、測定した厚みの平均値(μm)を負極材料シートの厚みとした。
【0078】
<強度>
負極材料シートを1cm×5cmのサイズに切断した試験片を作製した。また、6cm×6cm×2cmの台座を準備した。そして、試験片の中心から右半分を台座上に載せ、左半分を台座から外にはみ出すよう設置した。さらに、試験片の右半分に6×6×2mmのアルミ板を載せた。そして、試験片の台座からはみ出した部分に対して、試験片が折れるまで、100mg、200mg、および300mgの重りを順番に交代で乗せていき、試験片が折れたときに乗せていた重りの重量から、下記の基準に従って、負極材料シートの強度を評価した。
〇:300mgの重りで試験片が折れた
△:200mgの重りで試験片が折れた
×:100mgの重りで試験片が折れた
【0079】
<不可逆容量率>
<<電極評価用セルの製造>>
下記に示す構成で評価用のリチウムイオン二次電池のハーフセル(半電池)を作製した。なお、ハーフセルの作製は、各部材を17mmφサイズに打ち抜き、真空乾燥(120℃×10時間)した後、露点-80℃以下のドライボックス内にて行った。
【0080】
〔ハーフセルの構成〕
作用極:負極(負極材料シートを銅箔に貼り付けてなる負極)
対極:Li金属
参照極:Li金属
セパレータ:ガラス不織布、ポリエチレン(PE)微多孔膜
電解液:濃度1.0MのLiPF溶液(溶媒はエチレンカーボネート(EC)/メチルエチルカーボネート(MEC)=3/7(体積比)の混合溶媒、添加剤としてビニレンカーボネート(VC)を1体積%(溶媒比)含有)
【0081】
<<充放電試験>>
得られた評価用のハーフセルについて、以下の条件1で充放電試験を行った。
(条件1)
充電条件:0.2C 充電電圧0.01V-CCCV(0.05Ccut)
放電条件:0.2C 終止電圧2.5V-CC
サイクル数:10サイクル
試験温度:25℃
次いで、以下の条件2で更に充放電試験を行った。
(条件2)
充電条件:0.2C 充電電圧0.01V-CCCV(0.05Ccut)
放電条件:2.0C 終止電圧2.5V-CC
サイクル数:10サイクル
試験温度:25℃
そして1サイクル目における、充電容量に対する放電容量の割合を百分率で算出したものを初期の不可逆容量率とした。以下のような評価とした。
A:初期の不可逆容量率が85%以上100%以下
B:初期の不可逆容量率が75%以上85%未満
C:初期の不可逆容量率が65%以上75%未満
尚、不可逆容量率の値が小さいほど、樹脂由来成分の影響に伴い、リチウムが正しく反応していないことを示唆している。
【0082】
(実施例1)
<組成物の調製>
常温常圧下で液体のニトリルゴム(NBR)(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol 1312」、分解開始温度:336℃)210部と、常温常圧下で固体のニトリルゴム(NBR)(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol 3350」、分解開始温度:375℃)90部と、粒子状炭素材料としての鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製、商品名「UP20α」、体積平均粒子径:20μm、アスペクト比=10)820部(使用した樹脂300体積部に対して364体積部に相当する量)とを加圧ニーダー(日本スピンドル製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を解砕機(大阪ケミカル社製、商品名「ワンダークラッシュミルD3V-10」)に投入して、10秒間解砕することにより、組成物を得た。
【0083】
<1次シートの形成>
次いで、得られた組成物50gを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmのPETフィルム(保護フィルム)で挟み、ロール間隙1000μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形(一次加圧)し、厚み0.8mmの1次シートを得た。
【0084】
<積層体の形成>
続いて、得られた1次シートを縦150mm×横150mm×厚み0.8mmに裁断し、1次シートの厚み方向に188枚積層し、更に、温度120℃、圧力0.1MPaで3分間、積層方向にプレス(二次加圧)することにより、高さ約150mmの積層体を得た。
【0085】
<2次シートの形成>
その後、二次加圧された積層体の積層側面を0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、積層方向に対して0度の角度で(換言すれば、積層された1次シートの主面の法線方向に)スライスすることにより、縦150mm×横150mm×厚み0.10mmの2次シートを得た。
【0086】
<負極材料シートの作製>
その後、得られた2次シートに厚み方向に0.003MPaになるように均一に圧力をかけた状態で、窒素雰囲気下にて1000℃で8時間焼成し、樹脂成分を燃焼させて除去することにより、負極材料シートを得た。
得られた負極材料シートを用いて、各種の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例2)
実施例1における鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製、商品名「UP20α」、体積平均粒子径:20μm、アスペクト比=10)に代えて、球状化された天然黒鉛(Atomaxchem社製、商品名「DMGS」、体積平均粒子径:15μm、アスペクト比=2)を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。
【0088】
(実施例3)
実施例1における鱗片状黒鉛の量を550部にした。それ以外は実施例1と同様に行った。
【0089】
(実施例4)
実施例1における焼成温度を600℃にした。それ以外は実施例1と同様に行った。
【0090】
(実施例5)
実施例1の焼成時の圧力を1MPaにした。それ以外は実施例1と同様に行った。
【0091】
(比較例1)
実施例1における焼成温度を380℃にし、圧力をかけずに焼成を行った。それ以外は実施例1と同様に行った。
【0092】
(比較例2)
実施例1における焼成温度を380℃にした。それ以外は実施例1と同様に行った。
【0093】
(比較例3)
実施例1において圧力をかけずに焼成を行った。それ以外は実施例1と同様に行った。
【0094】
【表1】
【0095】
表1より、粒子状炭素材料を含み、粒子状炭素材料が、負極材料シートの表面に対して垂直方向に配向しており、負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合が、所定値以下であり、さらに、負極材料シートの表面粗さSaが、所定値以下である、負極材料シートを負極合材層として集電体と貼り合わせて作製した実施例1~5の負極は、シート強度を良好に維持しつつ二次電池に良好な初期不可逆容量を付与することができることが分かる。
一方、負極材料シート中の樹脂由来成分の含有割合が所定値以下ではなく、または負極材料シートの表面粗さSaが所定値以下ではない、負極材料シートを負極合材層として集電体と貼り合わせて作製した比較例1~3の負極は、二次電池に対する初期不可逆容量、または負極材料シートに対するシート強度のいずれかまたは両方において劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明によれば、シート強度を維持しつつ非水系二次電池に良好な初期不可逆容量を付与し得る負極を形成可能な非水系二次電池用負極材料シートを提供することができる。
また、本発明によれば、強度が維持され、非水系二次電池に良好な初期不可逆容量を付与し得る負極を提供することができる。
さらに、本発明によれば、負極の強度が維持され、良好な初期不可逆容量を持つ非水系二次電池を提供することができる。