(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060809
(43)【公開日】2023-04-28
(54)【発明の名称】インクセット、画像形成方法、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
C09D 11/40 20140101AFI20230421BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230421BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230421BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20230421BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20230421BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20230421BHJP
【FI】
C09D11/40
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41M5/00 114
B41J2/01 501
B41J2/21
B41J2/01 123
C09D11/322
C09D11/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114358
(22)【出願日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2021170325
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】小橋 紀之
(72)【発明者】
【氏名】平出 智大
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 大輔
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA05
2C056EA11
2C056EA13
2C056EE18
2C056FA10
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2H186AA02
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2H186FB58
4J039AE04
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4J039FA02
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】摩擦堅牢性に優れ、カラーブリード及びビーディングの発生を抑制できるインクセットを提供すること。
【解決手段】白色インク及びカラーインクを有するインクセットであって、前記白色インク及び前記カラーインクが、それぞれ独立して、架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と架橋し得る官能基を有するブロック化イソシアネート化合物と、を含有し、前記白色インクと前記カラーインクとの間の、25℃における静的表面張力の差の絶対値が、1.0mN/m以下であり、前記白色インクと前記カラーインクとの間の、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であるインクセットである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色インク及びカラーインクを有するインクセットであって、
前記白色インク及び前記カラーインクが、それぞれ独立して、架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と架橋し得る官能基を有するブロック化イソシアネート化合物と、を含有し、
前記白色インクと前記カラーインクとの間の、25℃における静的表面張力の差の絶対値が、1.0mN/m以下であり、
前記白色インクと前記カラーインクとの間の、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であることを特徴とするインクセット。
【請求項2】
前記白色インク及び前記カラーインクが、それぞれ独立して、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子1質量部に対して、前記ブロック化イソシアネート化合物を0.1質量部~0.55質量部含有する、請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
前記白色インク及び前記カラーインクの25℃における静的表面張力が、それぞれ独立して、40.0mN/m以下である、請求項1に記載のインクセット。
【請求項4】
前記カラーインクが、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクを含む複数のカラーインクであり、
前記複数のカラーインク間における、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であり、
前記ブラックインク、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクにおける、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力が、下記関係式(1)を満たす、請求項1に記載のインクセット。
ブラックインク>シアンインク≧マゼンタインク≧イエローインク ・・・ 関係式(1)
【請求項5】
前記インクセットが、更に前処理液を有し、
前記前処理液が、水及び凝集剤を含有し、
前記凝集剤が、無機金属塩、有機酸金属塩、有機酸アンモニウム塩、及びカチオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のインクセット。
【請求項6】
前記前処理液が、更にノニオン性樹脂粒子を含有する、請求項5に記載のインクセット。
【請求項7】
前記前処理液が、更にワックス粒子を含有する、請求項5に記載のインクセット。
【請求項8】
前記ワックス粒子が、パラフィンワックスの粒子である、請求項7に記載のインクセット。
【請求項9】
記録媒体に対して白色インクを付与する白色インク付与工程と、
前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対してカラーインクを付与するカラーインク付与工程と、
を含み、
前記白色インク及び前記カラーインクが、それぞれ独立して、架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と架橋し得る官能基を有するブロック化イソシアネート化合物と、を含有し、
前記白色インクと前記カラーインクとの間の、25℃における静的表面張力の差の絶対値が、1.0mN/m以下であり、
前記白色インクと前記カラーインクとの間の、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
前記白色インク付与工程の前に、前記記録媒体の前記白色インクが付与される領域に対して前処理液を付与する前処理液付与工程を更に含む、請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記白色インク付与工程と前記カラーインク付与工程との間に、前記白色インクが付与された記録媒体を加熱又は乾燥する加熱又は乾燥工程を含まない、請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記記録媒体に対して前記白色インクが付与されてから、前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して前記カラーインクが付与されるまでの間の時間が、20秒間以内である、請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項13】
前記記録媒体が、濃色の布帛である、請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項14】
白色インクを収容した白色インク収容手段と、
カラーインクを収容したカラーインク収容手段と、
記録媒体に対して前記白色インクを付与する白色インク付与手段と、
前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して前記カラーインクを付与するカラーインク付与手段と、
を有し、
前記白色インク及び前記カラーインクが、それぞれ独立して、架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と架橋し得る官能基を有するブロック化イソシアネート化合物と、を含有し、
前記白色インクと前記カラーインクとの間の、25℃における静的表面張力の差の絶対値が、1.0mN/m以下であり、
前記白色インクと前記カラーインクとの間の、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
前処理液を収容した前処理液収容手段と、
前記記録媒体の前記白色インクが付与される領域に対して事前に前記前処理液を付与する前処理液付与手段と、
を更に有する、請求項14に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセット、画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、容易にカラー画像の記録が可能であり、しかもランニングコストが低いなどの理由から、近年、急速に普及してきている。また、インクジェット記録方法を用いて、布帛(織物、編物、又は不織布等)などを染色(捺染)することも行われている。従来、布帛に対する捺染方法としては、スクリーン捺染法、ローラー捺染法などが用いられてきたが、多種少量生産性、並びに、即時プリント性などの観点から、インクジェット記録方法を適用することが有利であるため種々検討されている。インク組成物に顔料と定着樹脂とを配合して布帛を捺染する、いわゆる顔料捺染についても検討が為されている。顔料捺染の場合には、布帛の繊維などに顔料を物理的に固着させることが重要となる。
【0003】
例えば、濃色の記録媒体などに対して印刷を行う場合、前処理液を付与された記録媒体に対して白色インクを付与することで白色の下地を形成し、白色の下地上にカラーインクを付与することで画像の発色性を向上させる技術が知られている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、摩擦堅牢性に優れ、カラーブリード及びビーディングの発生を抑制できるインクセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明のインクセットは、白色インク及びカラーインクを有するインクセットであって、前記白色インク及び前記カラーインクが、それぞれ独立して、架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と架橋し得る官能基を有するブロック化イソシアネート化合物と、を含有し、前記白色インクと前記カラーインクとの間の、25℃における静的表面張力の差の絶対値が、1.0mN/m以下であり、前記白色インクと前記カラーインクとの間の、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、摩擦堅牢性に優れ、カラーブリード及びビーディングの発生を抑制できるインクセットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の画像形成装置の収容手段の一例を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の画像形成装置を用いて印刷されるチャートの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(インクセット)
本発明のインクセットは、白色インク及びカラーインクを有し、更に前処理液を有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の構成を有する。
【0009】
前記インクセットにおいて、前記白色インク及び前記カラーインクは、それぞれ独立して、架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と架橋し得る官能基を有するブロック化イソシアネート化合物と、を含有し、
前記白色インクと前記カラーインクとの間の、25℃における静的表面張力の差の絶対値は、1.0mN/m以下であり、
前記白色インクと前記カラーインクとの間の、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値は、それぞれ独立して、1.0mN/m以下である。
【0010】
本明細書において、「インクセット」とは、前記白色インク及び前記カラーインクがそれぞれ独立した状態で存在していればよい。例えば、前記インクセットは、前記白色インクを収容している白色インク収容手段及び前記カラーインクを収容しているカラーインク収容手段が一体化した状態で製造、販売等されている場合に限られない。例えば、前記インクセットは、前記白色インク収容手段及び前記カラーインク収容手段が独立して製造、販売等されていたとしても、前記白色インク及び前記カラーインクが併用されることを前提としている場合、あるいは、前記白色インク及び前記カラーインクが併用されることを実質的に誘導している場合などは、本発明のインクセットに含まれる。
【0011】
本明細書において、「白色インク」とは、記録媒体に対して付与されることで白色画像を形成する液体組成物である。また、前記インクセットが、前記前処理液を有する場合、前記「白色インク」は、記録媒体の前処理液が付与された領域に対して付与されることで白色画像を形成する液体組成物である。
前記白色インクは、記録媒体上に白色画像を形成することで、例えば、前記白色インクが付与された領域に対して付与される前記カラーインクにより形成されるカラー画像の下地として機能し、カラー画像の発色性を向上させる。
なお、本明細書において、「白色」とは、社会通念上、白及びホワイトなどと称される色であり、微量着色されているものも含む。
【0012】
前記白色インクにより記録媒体上に形成された白色画像のハンター白色度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、75以上が好ましく、80以上がより好ましく、85以上が特に好ましい。前記ハンター白色度が、75以上であると、カラー画像の発色性を向上させることができる。
前記ハンター白色度は、分光濃度測色計(例えば、X-Rite eXact、X-Rite社製)を用いて記録媒体上に形成された白色画像の色彩値L、a、及びbを測定し、下記計算式(1)により算出することができる。なお、L、a、及びbは、国際照明委員会(CIE)が定めた色の表示方法であり、L*、a*、及びb*とも記載される。
ハンター白色度=100-sqr[(100-L)2+(a2+b2)] ・・・ 計算式(1)
【0013】
前記インクセットは、前記白色インクを、1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
【0014】
本明細書において、「カラーインク」とは、記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して付与されることでカラー画像を形成する液体組成物である。
なお、本明細書において、「カラー」とは、前記「白色」に含まれない色を表し、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、又はイエローなどを含む。
【0015】
前記インクセットは、前記カラーインクを、1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
【0016】
本明細書において、「前処理液」とは、記録媒体に対して付与され、該前処理液が付与された領域に対して後から付与された前記白色インク又は前記カラーインクと接触することで、前記白色インク又は前記カラーインクにおいて凝集又は増粘を生じさせる液体組成物である。
【0017】
[静的表面張力]
前記インクセットが有する前記白色インクと前記カラーインクとの間の、25℃における静的表面張力の差の絶対値は、1.0mN/m以下であるが、0.8mN/m以下であることが好ましく、0.6mN/m以下であることがより好ましく、0.5mN/m以下であることが更に好ましい。前記インクセットが有する前記白色インクと前記カラーインクとの間の、25℃における静的表面張力の差の絶対値が0mN/mに近づくことにより、カラーブリード及びビーディングが更に抑制できる。前記静的表面張力の差は絶対値を表すため、0mN/m以上である。前記インクセットが有する前記白色インクと前記カラーインクとの間の、25℃における静的表面張力の差の絶対値が、1.0mN/mを超えると、記録媒体に対して前記白色インクを付与した後で、前記記録媒体の白色インクが付与された領域に対して前記カラーインクを付与する場合において、カラーブリードが発生する。
【0018】
また、前記インクセットが前記白色インク又は前記カラーインクを複数有する場合、所定の白色インク及びカラーインクの組合せにおいて、前記静的表面張力の差の絶対値が1.0mN/m以下であればよいが、所定の白色インク及びカラーインクの組合せにおいて、前記静的表面張力の最大差の絶対値が1.0mN/m以下であることが好ましく、全ての白色インクとカラーインクの組合せにおいて、前記静的表面張力の差の絶対値が1.0mN/m以下であることがより好ましい。
【0019】
前記インクセットが有する前記白色インク及び前記カラーインクの、25℃における静的表面張力は、それぞれ独立して、40.0mN/m以下であることが好ましく、36.0mN/m以下であることがより好ましく、30.0mN/m以下であることが更に好ましい。前記白色インク及び前記カラーインクの、25℃における静的表面張力が、それぞれ独立して、40.0mN/m以下であることで、前記白色インクと前記カラーインクとの間のカラーブリードだけではなく、一のカラーインクと他のカラーインクとの間におけるカラーブリードの発生も抑制することができる。
【0020】
また、前記インクセットが前記白色インク又は前記カラーインクを複数有する場合、所定の白色インク及びカラーインクの前記静的表面張力が、それぞれ独立して、40.0mN/m以下であることが好ましく、全ての白色インク及びカラーインクの前記静的表面張力が、それぞれ独立して、40.0mN/m以下であることがより好ましい。
【0021】
ここで、前記「それぞれ独立して」とは、前記白色インク及び前記カラーインクの、25℃における静的表面張力が、いずれも40.0mN/m以下である限り、同一であってもよく、相違していてもよいことを表す。
【0022】
なお、前記白色インク又は前記カラーインクの、25℃における静的表面張力は、自動表面張力計(例えば、DY-300、協和界面科学株式会社製)を用いてプレート法(Wilhelmy法)により測定することができる。また、このときの温度25℃は、記録媒体の温度ではなく、前記白色インク又は前記カラーインク自体の温度である。
【0023】
[動的表面張力]
前記白色インクと前記カラーインクとの間の、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値は、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であり、0.9mN/m以下であることが好ましい。前記白色インクと前記カラーインクとの間の、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、0mN/mに近づくことにより、カラーブリード及びビーディングが更に抑制できる。前記動的表面張力の差は絶対値を表すため、0mN/m以上である。前記インクセットが有する前記白色インクと前記カラーインクとの間の、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/mを超えると、記録媒体に対して前記白色インクを付与した後で、前記記録媒体の白色インクが付与された領域に対して前記カラーインクを付与する場合において、カラーブリードが発生する。
【0024】
また、前記インクセットが、前記白色インク又は前記カラーインクを複数有する場合、所定の白色インク及びカラーインクの組合せにおいて、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であればよいが、所定の白色インク及びカラーインクの組合せにおいて、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の最大差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であることが好ましく、全ての白色インク及びカラーインクの組合せにおいて、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であることがより好ましい。
【0025】
ここで、前記「それぞれ独立して」とは、前記バブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値、前記バブルライフタイム150msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値、及び前記バブルライフタイム1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、いずれも1.0mN/m以下である限り、同一であってもよく、相違していてもよいことを表す。
【0026】
なお、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の、前記白色インク又は前記カラーインクの、25℃における動的表面張力は、ポータブル動的表面張力計(例えば、SITA Pro line t15、英弘精機株式会社製)を用いて測定することができる。
【0027】
前記インクセットにおいてカラーブリードの発生が抑制される理由について以下に説明する。
【0028】
インク組成物にポリカーボネート系骨格を有する架橋性樹脂とブロック化イソシアネート化合物を添加することで、画像の摩擦堅牢性が向上することや、インク組成物にアルカリ性(塩基性)の化合物を配合し、前記架橋性樹脂の再分散性を高めることが知られている(特許第6794746号公報参照)。しかし、このインク組成物は、文字滲みに代表される画像欠陥が発生しやすく、画像品質が大きく低下するという問題があった。
【0029】
また、一般に、濃色の記録媒体などに対して印刷を行う場合、記録媒体に対して白色インクを付与することで白色画像である下地を形成し、白色インクが付与された領域に対して後からカラーインクを付与することでカラー画像の発色性を向上させる。しかし、白色インクを付与してから短時間(例えば、20秒間以内)でカラーインクを付与する場合、白色インクの付与量が多い場合、記録媒体が低浸透性(非浸透性を含む)である場合、又は白色インクが付与されてからカラーインクが付与されるまでの間に白色インクが付与された記録媒体を加熱手段により加熱しないでカラーインクを付与する場合などにおいて、白色インクの乾燥が不十分であることに起因して、白色インク及びカラーインクが混ざるカラーブリードが生じ得るという問題があった。また、同様に白色インクの乾燥が不十分であることに起因して、白色インクが付与された領域に対して後から付与されるカラーインクの乾燥性が低下し、カラー画像における濃度ムラであるビーディングも生じ得るという問題もあった。
【0030】
これに対し、本発明のインクセットにおける前記白色インク及び前記カラーインクは、前記白色インクと前記カラーインクとの間の、25℃における静的表面張力の差の絶対値が、1.0mN/m以下であり、前記白色インクと前記カラーインクとの間の、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であるため、前記白色インクの乾燥が不十分となり得る場合であっても、カラーブリードの発生を抑制することができる。
【0031】
また、上述のような白色インクの乾燥が不十分である場合において、複数のカラーインクを使用する場合、白色インク及び各カラーインクが混ざるカラーブリードに加えて、白色インクが付与された領域上でカラーインク同士が接触して混ざるカラーブリードも生じ得る。
【0032】
これに対し、前記インクセットは、前記複数のカラーインク間における、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であることが好ましく、0.9mN/m以下であることがより好ましい。前記複数のカラーインク間における、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であることで、前記複数のカラーインク間で生じるカラーブリードを抑制することができる。前記複数のカラーインク間における、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力の差は絶対値を表すため、0mN/m以上である。
【0033】
また、前記複数のカラーインクの中の所定のカラーインクの組合せにおいて、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が1.0mN/m以下であればよいが、前記複数のカラーインクの中の所定のカラーインクの組合せにおいて、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力の最大差の絶対値が1.0mN/m以下であることが好ましく、全てのカラーインク同士の組合せにおいて、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であることが好ましい。
【0034】
例えば、前記インクセットが、前記複数のカラーインクとして、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクを有する場合、ブラックインク及びシアンインク間、ブラックインク及びマゼンタインク間、ブラックインク及びイエローインク間、シアンインク及びマゼンタインク間、シアンインク及びイエローインク間、並びに、マゼンタインク及びイエローインク間の全てにおいて、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であることが好ましい。
【0035】
ここで、前記「それぞれ独立して」とは、前記複数のカラーインク間における15msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、いずれも1.0mN/m以下である限り、同一であってもよく、相違していてもよいことを表す。
【0036】
また、上述のように、前記インクセットが、前記複数のカラーインクを有する場合において、該複数のカラーインクとして、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクを有する場合、各色のカラーインクにおける、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力は、下記関係式(1)を満たすことが好ましい。下記関係式(1)において、左側に位置するカラーインク(即ち、前記複数のカラーインク間における15msec時の25℃における動的表面張力の値がより大きいカラーインク)ほど、カラーブリードを生じた場合に他の色のインクの領域に視覚上与える影響が大きいが、下記関係式(1)を満たすことで、下記関係式(1)において左側に位置するカラーインクが右側に位置するカラーインク(即ち、前記複数のカラーインク間における15msec時の25℃における動的表面張力の値がより小さいカラーインク)に侵入するようなカラーブリードの発生を抑制することができる。
ブラックインク>シアンインク≧マゼンタインク≧イエローインク ・・・ 関係式(1)
【0037】
<白色インク及びカラーインク>
前記白色インク及び前記カラーインク(以下、前記白色インク及び前記カラーインクを併せて、「インク」と略記することがある)は、それぞれ独立して、架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と架橋し得る官能基を有するブロック化イソシアネート化合物と、を含有し、更に、有機溶剤、水、色材、界面活性剤を含有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0038】
ここで、前記「それぞれ独立して」とは、前記白色インク及び前記カラーインクの組成が、いずれも架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と架橋し得る官能基を有するブロック化イソシアネート化合物とを含有する限り、同一であってもよく、相違していてもよいことを表す。
【0039】
なお、前記インクセットが、前記白色インク及び前記カラーインクに加えて、前記前処理液を有する場合、前記色材及び前記樹脂から選ばれる少なくとも1つは、アニオン性であることが好ましい(これらを「アニオン性化合物」と総称してもよい)。前記色材及び前記樹脂から選ばれる少なくとも1つがアニオン性であることで、前記白色インク又は前記カラーインクが前記前処理液に含まれていた成分(凝集剤等)と接触した際に、前記白色インク又は前記カラーインクが凝集又は増粘を生じ、これにより記録媒体表面において前記白色インク又は前記カラーインクを留めることができる。
【0040】
-架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子-
前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子(以下、「水分散性樹脂粒子」と略記することがある)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水に安定に分散させるために必要な親水成分が導入された自己乳化型のものであってもよく、外部乳化剤の使用により水分散性となるものであってもよい。
【0041】
前記水分散性樹脂粒子の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、皮膜伸度と抗張力を有するものであることが好ましく設計の自由度が高く、それゆえ所望の皮膜物性を得やすいことから、ウレタン樹脂がより好ましい。
【0042】
前記ウレタン樹脂としては、ウレタン骨格を有し、水分散性を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクジェット吐出ヘッドへの材質適合性の観点から、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等のアニオン性の官能基を有するアニオン性のウレタン樹脂(ウレタン骨格を有するアニオン性樹脂)であることが好ましい。
【0043】
前記アニオン性のウレタン樹脂の具体例としては、スーパーフレックス 460、スーパーフレックス 460S、スーパーフレックス 470、スーパーフレックス 840(以上、第一工業製薬株式会社製);タケラック(登録商標) WS-4022、タケラック(登録商標) WS-5100、タケラック(登録商標) WS-5984、又はタケラック(登録商標) WS-6021(以上、三井化学ポリウレタン株式会社製)などが挙げられる。
【0044】
前記ウレタン樹脂としては、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂などを使用できる。これらの中でも、前記ウレタン樹脂は、ポリカーボネート型ウレタン樹脂及びポリエステル型ウレタン樹脂が好ましい。
【0045】
これらのウレタン樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。更に、本発明の効果を阻害しない範囲内で、前記物性を備えた水分散性樹脂粒子に加え、該水分散性樹脂粒子以外の水分散性樹脂、例えば、アクリル樹脂、アクリル-スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、又はアクリル-酢酸ビニル樹脂などを、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
前記水分散性樹脂粒子の体積平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、0.01μm以上0.15μm以下が好ましく、0.02μm以上0.1μm以下がより好ましい。
前記水分散性樹脂粒子の体積平均粒子径は、例えば、粒度分布測定装置(Nanotrac WaveII-UT151、Microtrac MRB株式会社製)により測定することができる。
【0047】
前記白色インク又は前記カラーインクにおける前記水分散性樹脂粒子の含有量(固形分含有量)としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記白色インク又は前記カラーインクの全質量に対して、3質量%以上15質量%以下が好ましく、5質量%以上13質量%以下がより好ましい。前記水分散性樹脂粒子の含有量(固形分含有量)が、15質量%以上であると、インクの吐出安定性が低下することがあり、3質量%以下であると、摩擦堅牢性が著しく低下することがある。
【0048】
-架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と架橋し得る官能基を有するブロック化イソシアネート化合物-
前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と架橋し得る官能基を有するブロック化イソシアネート化合物(以下、「ブロック化イソシアネート化合物」と略記することがある)は、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子の架橋剤として配合される。
【0049】
前記ブロック化イソシアネート化合物とは、イソシアネート基がブロック剤で保護されたもので、過熱によりブロック剤が解離し、活性なイソシアネート基が再生される化合物を意味する。この加熱により生成したイソシアネート基が、前記ウレタン樹脂等の前記水分散性樹脂粒子同士や、前記水分散性樹脂粒子の架橋性官能基と布帛等の記録媒体の官能基や活性水素部位と反応して、ウレタン結合や尿素結合等の架橋構造を形成することが考えられる。
【0050】
前記ブロック剤としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、フェノール系化合物、芳香族第2級アミン化合物、環状アミン化合物、ラクタム化合物、オキシム化合物、又は亜硫酸ソーダなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
より具体的には、前記ブロック化イソシアネート化合物としては、ウレタン骨格を有するものであることが好ましい。
【0052】
前記ウレタン骨格を有するブロック化イソシアネート化合物の具体例としては、エラストロン(登録商標)シリーズ、エラストロン(登録商標)BNシリーズ(以上、第一工業製薬株式会社製)、タケネート(登録商標)シリーズ(三井化学株式会社製)、又はアデカボンタイター HUXシリーズ(株式会社ADEKA製)などの各製品を使用することができ、より好ましくは、エラストロン(登録商標) E-37、エラストロン(登録商標) H-3-DF、エラストロン(登録商標) H-15、エラストロン(登録商標) NEW BAP-15、エラストロン(登録商標) F-29、エラストロン(登録商標) W-11P(以上、第一工業製薬株式会社製);タケネート(登録商標) XWB-ST001、タケネート(登録商標) XWB-ST047(以上、三井化学株式会社製);アデカボンタイター HUX-3861、アデカボンタイター HUX-3560(以上、株式会社ADEKA製)等の市販品を使用することができる。
【0053】
堅牢性の観点から、インク膜は一般に10μm~300μm程度の膜厚が必要とされているが、このような厚い膜は、布等の記録媒体が本来持つ風合いを損なってしまうという問題があった。
本発明のインクセットは、前記ブロック化イソシアネート化合物を用いることにより、従来のような厚いインク膜を形成しなくても充分な堅牢性を確保することができるため、記録媒体が本来持つ風合いを損なうことがない点で有利である。特に、前記インクセットは、前記ウレタン樹脂等の前記水分散性樹脂粒子と、前記ブロック化イソシアネート化合物とを組み合わせることにより、強力な密着性及び堅牢性を持つインク膜を形成することができる点で有利である。
【0054】
前記白色インク及び前記カラーインクにおける前記ブロック化イソシアネート化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、それぞれ独立して、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子1質量部(固形分含有量)に対して、堅牢性、特に湿潤摩擦堅牢性を確保する観点から、0.05質量部以上であることが好ましく、記録媒体の風合い低下を回避する観点から、1.0質量部以下であることが好ましく、0.05質量部~0.6質量部がより好ましく、得られるインク膜の皮膜特性の観点から、0.1質量部~0.55質量部であることが更に好ましい。
【0055】
なお、摩擦堅牢性は、JIS L 0849に規定の方法に従い、摩擦試験機I形を用いて、摩擦試験機I形(クロックメータ)法により摩擦堅牢度を測定することにより確認することができ、乾燥試験及び湿潤試験のいずれにおいても、等級が、3-4級以上が好ましく、4-5級以上がより好ましい。
【0056】
ここで、前記「それぞれ独立して」とは、前記白色インク及び前記カラーインクにおける前記ブロック化イソシアネート化合物の含有量が、同一であってもよく、相違していてもよいことを表す。
【0057】
-有機溶剤-
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、温度23℃、相対湿度(RH)80%環境中における平衡水分量が30質量%以上であるもの(以下、「湿潤剤」と称することがある)を用いることが好ましく、これらの中でも、前記有機溶剤は、平衡水分量及び沸点(bp)が高いものがより好ましい。このような有機溶剤の選択は、カラーブリード及びビーディングの抑制(言い換えると、静的表面張力及び動的表面張力の制御)に関係するが、インクの吐出安定性向上や画像形成装置の維持機構における廃インクの固着抑制などにも関係する。
【0058】
前記平衡水分量(%)は、塩化カリウムと塩化ナトリウムとを6:4(塩化カリウム:塩化ナトリウム、質量部)の割合で混合した飽和水溶液を用いデシケーター内の温湿度を、温度23℃±1℃、RH80%±3%に保ち、このデシケーター内に各有機溶剤を1gずつ秤量したシャーレを保管し、平衡する水分量を測定し、下記計算式(2)により算出したものである。
平衡水分量(質量%)=〔有機溶剤が吸収した水分量/(有機溶剤量+有機溶剤が吸収した水分量)〕×100 ・・・ 計算式(2)
【0059】
前記湿潤剤としては、例えば、温度23℃、RH80%環境中における平衡水分量が30質量%以上である多価アルコールなどが挙げられる。このような多価アルコールとしては、具体的には、ジエチレングリコール(bp245℃、平衡水分量43質量%)、トリエチレングリコール(bp285℃、平衡水分量39質量%)、テトラエチレングリコール(bp324℃~330℃、平衡水分量37質量%)、1,3-ブタンジオール(bp203℃~204℃、平衡水分量35質量%)、グリセリン(bp290℃、平衡水分量49質量%)、ジグリセリン(bp270℃/20hPa、平衡水分量38質量%)、1,2,3-ブタントリオール(bp175℃/33hPa、平衡水分量38質量%)、又は1,2,4-ブタントリオール(bp190℃~191℃/24hPa、平衡水分量41質量%)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記湿潤剤は、グリセリン及び1,3-ブタンジオールが好ましい。
【0060】
前記多価アルコール以外の湿潤剤としては、例えば、2-メチル-1,3-ブタンジオール(bp214℃)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(bp203℃)、ジプロピレングリコール(bp232℃)、1,5-ペンタンジオール(bp242℃)、プロピレングリコール(bp187℃)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(bp197℃)、エチレングリコール(bp196℃~198℃)、トリプロピレングリコール(bp267℃)、ヘキシレングリコール(bp197℃)、ポリエチレングリコール(粘調液体~固体)、ポリプロピレングリコール(bp187℃)、1,6-ヘキサンジオール(bp253℃~260℃)、1,2,6-ヘキサントリオール(bp178℃)、トリメチロールエタン(固体、融点(mp)199℃~201℃)、又はトリメチロールプロパン(固体、mp61℃)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記白色インク又は前記カラーインクにおける前記有機溶剤(湿潤剤)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記白色インク又は前記カラーインクの全質量に対して、10.0質量%以上75.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以上50.0質量%以下がより好ましい。前記有機溶剤(湿潤剤)の含有量が、10.0質量%以上であると、前記白色インク又は前記カラーインクにおける保湿効果が向上し、75.0質量%以下であると、記録媒体上における前記白色インク又は前記カラーインクの乾燥性が向上する。
【0062】
また、低浸透性(非浸透性を含む)の記録媒体を用いる場合、前記有機溶剤としては、溶解度パラメーター(SP値)が9.0(cal/cm3)1/2以上11.8(cal/cm3)1/2以下のものを用いることが好ましい。前記溶解度パラメーターが9.0(cal/cm3)1/2以上11.8(cal/cm3)1/2以下の有機溶剤としては、具体的には、3-エチル-3-オキセタンメタノール(SP値:11.31(cal/cm3)1/2)、3-メチル-3-オキセタンメタノール(SP値:11.79(cal/cm3)1/2)、β-メトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド(3-メトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド)(SP値:9.19(cal/cm3)1/2)、β-ブトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド(3-ブトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド)(SP値:9.03(cal/cm3)1/2)、1,2-ヘキサンジオール(SP値:11.8(cal/cm3)1/2)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(SP値:10.6(cal/cm3)1/2)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(SP値:10.8(cal/cm3)1/2)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(SP値:10.14(cal/cm3)1/2)、3-メトキシ-1-ブタノール(SP値:9.64(cal/cm3)1/2)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(SP値:9.64(cal/cm3)1/2)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(SP値:11.8(cal/cm3)1/2)、メチルプロピレントリグリコール(SP値:9.43(cal/cm3)1/2)、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(SP値:9.86(cal/cm3)1/2)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値:10.34(cal/cm3)1/2)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値:10.12(cal/cm3)1/2)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(SP値:9.82(cal/cm3)1/2)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値:10.19(cal/cm3)1/2)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(SP値:9.69(cal/cm3)1/2)、3-メトキシ-1-ブタノール(SP値:10.65(cal/cm3)1/2)、3-メトキシ-1-プロパノール(SP値:10.41(cal/cm3)1/2)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値:9.84(cal/cm3)1/2)、又は3-メチル-1,5-ペンタンジオール(SP値:11.8(cal/cm3)1/2)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
前記白色インク又は前記カラーインクにおける前記溶解度パラメーターが9.0(cal/cm3)1/2以上11.8(cal/cm3)1/2以下の有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記白色インク又は前記カラーインクの全質量に対して、0.5質量%以上5.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上4.0質量%以下がより好ましい。前記溶解度パラメーターが9.0(cal/cm3)1/2以上11.8(cal/cm3)1/2以下の有機溶剤の含有量が、0.5質量%以上5.0質量%以下であると、カラーブリード及びビーディングの抑制(言い換えると、静的表面張力及び動的表面張力の制御)の観点から好ましく、前記白色インク又は前記カラーインクの発色性の観点からも好ましい。
【0064】
-水-
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水(高純水)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
前記白色インク又は前記カラーインクにおける水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記白色インク又は前記カラーインクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、前記白色インク又は前記カラーインクの全質量に対して、10.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以上60.0質量%以下がより好ましい。
【0066】
-色材-
前記白色インクは白色の色材を含有し、前記カラーインクはカラーの色材を含有する。なお、本明細書においては、前記白色の色材及び前記カラーの色材を区別しない場合は、単に「色材」と記載する。
【0067】
前記色材としては、顔料などを使用可能である。前記顔料としては、特に制限はなく、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
前記顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、若しくは、光沢色顔料又はメタリック顔料(金色や銀色等)などを用いることができる。
【0069】
前記無機顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、又はカーボンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、前記無機顔料は、白色色材は酸化チタンが好ましく、黒色色材はカーボンブラックが好ましい。
【0070】
前記カーボンブラックとしては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造された、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ガスブラック、又はランプブラックなどが挙げられる。
【0071】
前記有機顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、又はアニリンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、前記有機顔料は、アゾ顔料又は多環式顔料などが好ましい。
【0072】
前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、又はキレートアゾ顔料などが挙げられる。
【0073】
前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、又はキノフタロン顔料などが挙げられる。
【0074】
前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、又は酸性染料型キレートなどが挙げられる。
【0075】
前記有機顔料としては、具体的には、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、128、139、150、151、155、153、180、183、185、又は213;C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、又は51;C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、又は219;C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、又は38;C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルー)、15:4、16、17:1、56、60、又は63;C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、又は36などが挙げられる。
【0076】
前記顔料のBET比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、10m2/g以上1,500m2/g以下が好ましく、20m2/g以上600m2/g以下がより好ましく、50m2/g以上300m2/g以下が更に好ましい。
【0077】
所望のBET比表面積の顔料は、一般的なサイズ減少又は粉砕処理を行うことにより得ることができる。
前記サイズ減少又は粉砕処理としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、ボールミル粉砕、ジェットミル粉砕、又は超音波処理などが挙げられる。前記顔料は、1種単独の処理が行われてもよく、2種以上を組み合わせた処理が行われてもよい。
【0078】
顔料の累積50%体積粒子径D50としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記白色インク又は前記カラーインク中において、50nm以上350nm以下であることが好ましい。
前記顔料の累積50%体積粒子径D50は、例えば、粒度分布測定装置(Nanotrac WaveII-UT151、Microtrac MRB株式会社製)により測定することができる。
【0079】
前記白色インク又は前記カラーインクにおける前記顔料の含有量(固形分含有量)としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記白色インク又は前記カラーインクの全質量に対して、1.0質量%以上15.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以上10.0質量%以下がより好ましい。前記顔料の含有量(固形分含有量)が、1.0質量%以上であると、前記白色インク又は前記カラーインクの発色性及び画像濃度が向上し、15.0質量%以下であると、前記白色インク又は前記カラーインクの吐出性が安定する。
【0080】
前記複合顔料の具体例としては、一次平均粒径が小さい観点から、シリカ/カーボンブラック複合材料、シリカ/フタロシアニンPB15:3複合材料、シリカ/ジスアゾイエロー複合材料、又はシリカ/キナクリドンPR122複合材料(以上、戸田工業株式会社製)などが好適である。
【0081】
例えば、一次粒子径が20nmである無機顔料粒子を等量の有機顔料で被覆した場合、この複合顔料の一次粒子径は、25nm程度になる。これに適当な分散剤を用いて一次粒子まで分散できれば、分散粒子径が25nmの非常に微細な複合顔料分散インクを作製することができる。前記複合顔料は、被覆している表面の有機顔料が分散に寄与するが、厚み約2.5nmの有機顔料の薄層を通して中心にある無機顔料の性質も現れてくるため、両者を同時に分散安定化できる顔料分散剤の選択も求められる。
【0082】
また、前記インクセットが、前記白色インク及び前記カラーインクに加えて、前記前処理液を有する場合、上述の通り、前記色材はアニオン性であることが好ましく、アニオン性の顔料であることがより好ましい。
【0083】
前記アニオン性の顔料としては、界面活性剤で顔料を分散させた界面活性剤分散顔料、樹脂で顔料を分散させた樹脂分散顔料、顔料の表面を樹脂で被覆した樹脂被覆分散顔料、及び顔料表面に親水基を設けた自己分散顔料などがあるが、いずれの分散形態においても水分散性であることが好ましい。
【0084】
前記アニオン性の顔料が、前記樹脂被覆分散顔料又は前記自己分散顔料である場合、表面に少なくとも一つの親水基を有するものが好ましい。
【0085】
前記親水基としては、例えば、-COOM、-SO3M、-PO3HM、-PO3M2、-CONM2、-SO3NM2、-NH-C6H4-COOM、-NH-C6H4-SO3M、-NH-C6H4-PO3HM、-NH-C6H4-PO3M2、-NH-C6H4-CONM2、又は-NH-C6H4-SO3NM2などが挙げられる。これらの親水基は公知の方法で導入することができる。なお、前記親水性基における「M」は、カウンターイオンを示す。
【0086】
また、前記親水基においてMで表示するカウンターイオンは、四級アンモニウムイオンであることが好ましい。前記四級アンモニウムイオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、ベンジルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリエチルアンモニウムイオン、又はテトラヘキシルアンモニウムイオンなどが挙げられる。前記四級アンモニウムイオンは、これらの中でも、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、又はベンジルトリメチルアンモニウムイオンが好ましく、テトラブチルアンモニウムイオンがより好ましい。このような顔料を用いた前記白色インク又は前記カラーインクは、経時の保存安定性に優れ、水分蒸発時の粘度上昇が抑制される。これは、水リッチなインクから水分が蒸発し、有機溶剤リッチとなった際においても、四級アンモニウムイオンを有する親水基により、顔料の分散が安定に保てるためであると推測される。
【0087】
前記表面に親水基を有する色材以外の色材としては、ポリマー微粒子に顔料を含有させたポリマーエマルションが好ましい。前記顔料は、前記ポリマー微粒子中に封入されていてもよく、前記ポリマー微粒子の表面に吸着されていてもよい。この場合、全ての顔料が、前記ポリマー微粒子中に封入又は前記ポリマー微粒子の表面に吸着されている必要はなく、一部がエマルション中に分散していてもよい。前記ポリマー微粒子用のポリマーとしては、例えば、ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、又はポリウレタン系ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記ポリマー微粒子用のポリマーは、これらの中でも、ビニル系ポリマー又はポリエステル系ポリマーが好ましい。
【0088】
なお、前記色材と前記有機溶剤との質量比は、インクの吐出安定性向上や画像形成装置の維持機構における廃インクの固着抑制などに関係するため、適宜調整することが好ましい。例えば、前記色材の含有量が多い一方で、前記有機溶剤の含有量が少ないインクをインクジェット吐出ヘッドから吐出する場合、ノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進むことで吐出不良を生じることがある。
【0089】
-界面活性剤-
前記白色インク及び前記カラーインクは、それぞれ、カラーブリード及びビーディングの抑制(言い換えると、静的表面張力及び動的表面張力の制御)のための一つの手段として界面活性剤を含むことが好ましい。
【0090】
前記界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シロキサン化合物、アセチレングリコール界面活性剤、アセチレンアルコール界面活性剤、又はフッ素系界面活性剤などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの界面活性剤に加えて、シリコーン系界面活性剤などを併用してもよい。前記界面活性剤を用いることで、前記白色インク及び前記カラーインクがインクジェット吐出ヘッドのノズルプレートにおける撥インク膜に濡れ難くなり、前記白色インク及び前記カラーインクがノズルに付着することによる吐出不良を抑制することができ、吐出安定性が向上する。
【0091】
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物としては、下記一般式(1)~(5)のいずれかで表されるものが好ましい。
【0092】
【0093】
前記一般式(1)中、R1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、mは0~23の整数を表し、nは1~10の整数を表し、aは1~23の整数を表し、bは0~23の整数を表す。
【0094】
【0095】
前記一般式(2)中、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、mは1~8の整数を表し、c及びdはそれぞれ独立して1~10の整数を表す。
【0096】
【0097】
前記一般式(3)中、R4は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、eは1~8の整数を表す。
【0098】
【0099】
前記一般式(4)中、R5は下記一般式(5)のポリエーテル基を表し、fは1~8の整数を表す。
【0100】
【0101】
前記一般式(5)中、R6は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、gは0~23の整数を表し、hは0~23の整数を表す。但し、g及びhが同時に0となる場合はない。
【0102】
前記一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、下記構造式(1)~(8)のいずれかで表される化合物などが挙げられる。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
前記一般式(2)で表される化合物としては、具体的には、下記構造式(9)で表される化合物などが挙げられる。
【0112】
【0113】
前記一般式(3)で表される化合物としては、具体的には、下記構造式(10)で表される化合物などが挙げられる。
【0114】
【0115】
前記一般式(4)で表される化合物としては、具体的には、下記構造式(11)~(13)のいずれかで表される化合物などが挙げられる。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
更に、市販品のポリエーテル変性シロキサン化合物としては、例えば、DOWSIL 71 Additive、DOWSIL 74 Additive、DOWSIL 57 Additive、DOWSIL 8029 Additive、DOWSIL 8054 Additive、DOWSIL 8019 Additive、DOWSIL 8526 Additive、DOWSIL FZ-2123、DOWSIL FZ-2191(以上、デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社製);TSF4440、TSF4445、TSF4446、TSF4450、TSF4452、TSF4460(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製);シルフェイス(登録商標) SAG002、シルフェイス(登録商標) SAG003、シルフェイス(登録商標) SAG005、シルフェイス(登録商標) SAG503A、シルフェイス(登録商標) SAG008、シルフェイス(登録商標) SJM003(以上、日信化学工業株式会社製);TEGO(登録商標) WetKL245、TEGO(登録商標) Wet250、TEGO(登録商標) Wet260、TEGO(登録商標) Wet265、TEGO(登録商標) Wet270、TEGO(登録商標) Wet280(以上、エボニック社製);BYK-345、BYK-347、BYK-348、BYK-375、又はBYK-377(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0120】
また、前記アセチレングリコール界面活性剤及び前記アセチレンアルコール界面活性剤としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、サーフィノール104E、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノールSE、サーフィノールSE-F、サーフィノールPSA-336、サーフィノールDF110D、サーフィノールDF58、オルフィンE1004、オルフィンE1010、オルフィンE1020、オルフィンPD-001、オルフィンPD-002W、オルフィンPD-004、オルフィンPD-005、オルフィンEXP.4001、オルフィンEXP.4200、オルフィンEXP.4123、又はオルフィンEXP.4300(以上、日信化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0121】
前記フッ素系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、又はパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが、起泡性が小さいため好ましい。
【0122】
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、又はパーフルオロアルキルスルホン酸塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、又はパーフルオロアルキルカルボン酸塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、又はパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩などが挙げられる。
【0123】
前記フッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、又はNH(CH2CH2OH)3などが挙げられる。
【0124】
前記白色インク又は前記カラーインクにおける前記界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記白色インク又は前記カラーインクの全質量に対して、0.001質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.01質量%以上3.0質量%以下がより好ましい。前記界面活性剤の含有量が、0.001質量%以上であることで、前記界面活性剤の添加効果が得られやすく、また、5.0質量を超えると添加効果が飽和することがある。
【0125】
-その他の成分-
前記白色インク又は前記カラーインクにおける前記その他の成分としては、必要に応じて、公知の種々の添加剤を用いることができる。
前記添加剤としては、例えば、抑泡剤(消泡剤)、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、又は前記水分散性樹脂粒子以外のその他の樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0126】
--抑泡剤(消泡剤)--
前記抑泡剤は、前記白色インク又は前記カラーインクに微量添加することによって、前記白色インク又は前記カラーインクの発泡を抑えるために用いられる。
ここで、「発泡」とは、液体が薄い膜になって空気を包むことである。この泡の生成には、前記白色インク又は前記カラーインクの表面張力や粘度等の特性が関与する。即ち、水のように表面張力が高い液体は、液体の表面積をできるだけ小さくしようとする力が働くため発泡し難い。これに対し、高粘度で高浸透性のインクは、表面張力が低いために発泡し易く、溶液の粘性により生成した泡が維持されやすく消泡し難い。
【0127】
通常、前記抑泡剤は、泡膜の表面張力を局部的に低下させて泡を破壊するか、発泡液に不溶な抑泡剤を発泡液表面に点在させることにより泡を破壊する。インクに界面活性剤として表面張力を低下させる働きの極めて強いポリエーテル変性シロキサン化合物を用いた場合には、前者の機構による抑泡剤を用いても泡膜の表面張力を局部的に低下させることができない。そこで、後者の発泡液に不溶な抑泡剤を用いることが好ましいが、この場合、溶液に不溶な抑泡剤によりインクの安定性が低下する場合がある。
【0128】
これに対して、下記一般式(6)で表される化合物を含む抑泡剤は、ポリエーテル変性シロキサン化合物ほど表面張力を低下させる働きが強くないものの、ポリエーテル変性シロキサン化合物に対する相溶性が高い。このため、前記抑泡剤が効率的に泡膜に取り込まれ、ポリエーテル変性シロキサン化合物とこの抑泡剤との表面張力の違いにより泡膜の表面が局部的に不均衡な状態となり、泡が破壊すると考えられる。
【0129】
【0130】
前記一般式(6)中、R7及びR8はそれぞれ独立して炭素数3~6のアルキル基を表し、R9及びR10はそれぞれ独立して炭素数1~2のアルキル基を表し、nは1~6の整数を表す。
【0131】
前記一般式(6)で表される化合物としては、例えば、2,4,7,9-テトラメチルデカン-4,7-ジオール、又は2,5,8,11-テトラメチルドデカン-5,8-ジオールなどが挙げられる。これらの中でも、前記一般式(6)で表される化合物は、抑泡効果とインクへの相溶性が高いことから、2,5,8,11-テトラメチルドデカン-5,8-ジオールが好ましい。
【0132】
前記白色インク又は前記カラーインクにおける前記抑泡剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記白色インク又は前記カラーインクの全質量に対して、0.01質量%以上10.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5.0質量%以下がより好ましい。前記抑泡剤の含有量が、0.01質量%以上であることで泡抑効果が得られ、10質量%以下であることで粘度、粒径等のインク物性に影響が出ることを抑制することができる。
【0133】
--pH調整剤--
前記pH調整剤としては、前記白色インク又は前記カラーインクのpHを調整できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属元素の水酸化物、アンモニウムの水酸化物、ホスホニウム水酸化物、又はアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記pH調整剤は、前記アルコールアミン類が好ましい。
【0134】
前記アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、又は2-アミノ-2-エチル-1,3プロパンジオールなどが挙げられる。
【0135】
前記アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0136】
前記アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、又は第4級アンモニウム水酸化物などが挙げられる。
【0137】
前記ホスホニウム水酸化物としては、例えば、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。
【0138】
前記アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウムなどが挙げられる。
【0139】
前記白色インク又は前記カラーインクにおける前記pH調整剤の含有量としては、前記白色インク又は前記カラーインクを所望のpHに調整することができれば、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
前記白色インク又は前記カラーインクのpHは、インクの吐出安定性向上の観点から7~11であることが好ましい。
【0140】
--防腐防黴剤--
前記防腐防黴剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,2-ベンゾチアゾリン-3-オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、又はペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0141】
前記白色インク又は前記カラーインクにおける前記防腐防黴剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0142】
--キレート試薬--
前記キレート試薬としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、及びウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0143】
前記白色インク又は前記カラーインクにおける前記防腐防黴剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0144】
--防錆剤--
前記防錆剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、又はジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0145】
前記白色インク又は前記カラーインクにおける前記防錆剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0146】
--酸化防止剤--
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、又はリン系酸化防止剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0147】
前記白色インク又は前記カラーインクにおける前記酸化防止剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0148】
--紫外線吸収剤--
前記紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、又はニッケル錯塩系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0149】
前記白色インク又は前記カラーインクにおける前記紫外線吸収剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0150】
--その他の樹脂--
前記その他の樹脂としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、造膜性に優れ、かつ耐溶剤性、耐水性、及び耐候性を備えた樹脂であることが画像形成において有用であり、例えば、縮合系合成樹脂、付加系合成樹脂、又は天然高分子化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0151】
前記縮合系合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリル-シリコーン樹脂、又はフッ素系樹脂などが挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0152】
前記付加系合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、又は不飽和カルボン酸系樹脂などが挙げられる。
【0153】
前記天然高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ロジン類、又は天然ゴムなどが挙げられる。
【0154】
前記白色インク又は前記カラーインクにおける前記その他の樹脂の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0155】
<<白色インク又はカラーインクの物性>>
前記白色インク又は前記カラーインクの物性としては、前記白色インクと前記カラーインクとの間の、25℃における静的表面張力の差の絶対値が、1.0mN/m以下であり、前記白色インクと前記カラーインクとの間の、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0156】
例えば、前記白色インク又は前記カラーインクの25℃における粘度は、5mPa・s以上25mPa・s以下が好ましく、6mPa・s以上20mPa・s以下がより好ましい。前記白色インク又は前記カラーインクの25℃における粘度が、5mPa・s以上であることで画像濃度や文字品位の向上効果が得られる。また、前記白色インク又は前記カラーインクの25℃における粘度が、25mPa・s以下であることでインク吐出性を向上させることができる。
前記白色インク又は前記カラーインクの粘度は、例えば、粘度計(RE-85L、東機産業株式会社製)を用いて、25℃で測定することができる。
【0157】
<<白色インク又はカラーインクの製造方法>>
前記白色インク又は前記カラーインクは、各種材料を撹拌し、混合する撹拌混合工程で混合物を製造することができる。
前記撹拌混合工程における撹拌混合は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェイカー、超音波分散機等の装置を用いて行うことができる。
【0158】
<前処理液>
前記前処理液は、水及び凝集剤を含み、更に、樹脂粒子、ワックス粒子、有機溶剤、界面活性剤を含有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0159】
-水-
前記水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水(高純水)などを用いることができる。
【0160】
前記前処理液における水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記前処理液の乾燥性の点から、前記前処理液の全質量に対して、10.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以上60.0質量%以下がより好ましい。
【0161】
-凝集剤-
本明細書において「凝集剤」とは、前記前処理液が前記白色インク又は前記カラーインクと接触したときに、前記白色インク又は前記カラーインクにおいて凝集又は増粘を生じさせる成分を表す。具体的には、例えば、前記白色インク又は前記カラーインクに含まれる前記色材又は前記水分散性樹脂粒子(例えば、前記アニオン性化合物)を凝集させる成分などが挙げられる。このような凝集剤を含む前処理液を用いることで、前記前処理液と接触した前記白色インク又は前記カラーインクにおいて凝集又は増粘を生じさせ、これにより記録媒体表面において前記白色インク又は前記カラーインクを留めることができる。
【0162】
前記凝集剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カチオン性化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記凝集剤としては、無機金属塩、有機酸金属塩、有機酸アンモニウム塩、及びカチオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、無機金属塩及びカチオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましい。
【0163】
前記無機金属塩としては、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マンガン、硫酸ニッケル、硫酸鉄(II)、硫酸銅(II)、硫酸亜鉛、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硝酸コバルト、硝酸ストロンチウム、硝酸銅(II)、硝酸ニッケル(II)、硝酸鉛(II)、硝酸マンガン(II)、塩化ニッケル(II)、塩化カルシウム、塩化スズ(II)、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化ナトリウム、又は塩化カリウムなどが挙げられる。これらの中でも、前記無機金属塩としては、硫酸マグネシウム又は塩化カリウムが好ましい。
【0164】
前記有機酸金属塩としては、例えば、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、アスコルビン酸カルシウム、L-アスコルビン酸ナトリウム、琥珀酸ナトリウム、琥珀酸二ナトリウム、クエン酸アルミニウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、乳酸亜鉛、乳酸アルミニウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、乳酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酒石酸カリウム、酒石酸カルシウム、DL-酒石酸ナトリウム、又は酒石酸ナトリウムカリウムなどが挙げられる。
【0165】
前記無機金属塩及び前記有機酸金属塩は、それぞれ、カルシウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩、及びアルミニウム塩から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これらの塩である場合、前記白色インク又は前記カラーインクに含まれる前記水分散性粒子に対する凝集機能が向上し、カラーブリード及びビーディングの発生をより抑制することができる。また、これらの塩は、前記前処理液の保存安定性の観点からも好ましい。
【0166】
前記有機酸アンモニウム塩としては、例えば、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、蓚酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、琥珀酸アンモニウム(琥珀酸二アンモニウム)、マロン酸ジアンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、又はL-グルタミン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0167】
前記カチオン性ポリマーとしては、第4級アンモニウム塩型のカチオン性高分子化合物が好ましく、具体的には、ジアルキルアリルアンモニウムクロライド重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級アンモニウム塩重合物、変性ポリビニルアルコールジアルキルアンモニウム塩重合物、又はジアルキルジアリルアンモニウム塩重合物などが挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0168】
また、その他のカチオン性ポリマーとしては、カチオン性特殊変性ポリアミン化合物、カチオン性ポリアミドポリアミン化合物、カチオン性尿素-ホルマリン樹脂化合物、カチオン性ポリアクリルアミド化合物、カチオン性アルキルケテンダイマー、カチオン性ジシアンジアミド化合物、カチオン性ジシアンジアミド-ホルマリン縮合化合物、カチオン性ジシアンジアミド-ポリアミン縮合化合物、カチオン性ポリビニルホルムアミド化合物、カチオン性ポリビニルピリジン化合物、カチオン性ポリアルキレンポリアミン化合物、又はカチオン性エポキシポリアミド化合物などが挙げられる。
【0169】
特に好ましいカチオン性ポリマーとしては、下記一般式(7)~(10)のいずれかで表される化合物などが挙げられる。
【0170】
【0171】
前記一般式(7)中、R11はそれぞれ独立してメチル基又はエチル基を表し、Y-はハロゲンイオンを表し、nは整数を表す。
【0172】
【0173】
前記一般式(8)中、Y-はハロゲンイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、又は酢酸イオンを表し、R12はH又はCH3を表し、R13、R14、及びR15はそれぞれ独立してH又はアルキル基を表し、nは整数を表す。
【0174】
【0175】
前記一般式(9)中、R16はそれぞれ独立してメチル基又はエチル基を表し、Y-はハロゲンイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、又は酢酸イオンを表し、nは整数を表す。
【0176】
【0177】
前記一般式(10)中、Y-はハロゲンイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、又は酢酸イオンを表し、Xはハロゲン原子を表し、nは1~3の整数を表し、mは1~3の整数を表す。
【0178】
前記前処理液における前記凝集剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記凝集剤の溶解性等の観点、並びに、カラーブリード及びビーディングの発生を抑制する観点から、前記前処理液の全質量に対して0.1質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上20.0質量%以下であることがより好ましい。
【0179】
-樹脂粒子-
前記前処理液は、樹脂粒子を含有することが好ましい。前記前処理液が前記樹脂粒子を含有することで、前記白色インク及び前記カラーインクと記録媒体との間の接着性を向上させることができる。
【0180】
前記樹脂粒子は、前記前処理液中において、カチオン性化合物である凝集剤と共存するため、長期的な保存安定性の観点から、一般的に用いられている電荷反発型エマルションではなく、立体障害により分散したノニオン性樹脂粒子であることが好ましい。なお、電荷反発型エマルションであるアニオン性樹脂粒子を用いた場合、前記凝集剤の一例である無機金属塩と共存すると凝集が生じ、特に、解離すると3価の陽イオンを生じる多価金属塩と共存させると瞬時に凝集が生じる。また、カチオン性樹脂粒子を用いた場合、常温放置では充分に安定であるが、長期安定性を見越した加速試験として加温下で静置すると、増粘が生じる。従って、上記の通り、前記に樹脂粒子は、前記ノニオン性樹脂粒子であることが好ましい。
【0181】
前記樹脂粒子が前記ノニオン性樹脂粒子であることを判断する方法としては、特に限定されないが、例えば、前記前処理液から遠心分離により固形分を単離後、熱分解GC-MS(例えば、GC-17A、株式会社島津製作所製など)により、カルボキシル基及びスルホ基等の酸性官能基、又はアミノ基等の塩基性官能基を含有する材料が検出されないことを示す方法などが挙げられる。
【0182】
前記ノニオン性樹脂粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレンブタジエン樹脂、又はこれらの樹脂の重合に用いられる重合性化合物の共重合体などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ノニオン性樹脂粒子は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル-バーサチック酸ビニル共重合体、又は塩素化オレフィン樹脂が好ましい。これら樹脂は、前記白色インク及び前記カラーインクと記録媒体との間の接着性をより向上させることができる。
【0183】
前記ノニオン性樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、-30℃以上30℃以下であることが好ましく、-25℃以上25℃以下であることがより好ましい。前記ノニオン性樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)が、-30℃以上であることで樹脂皮膜が強靭なものとなり、前記前処理液により形成される層がより堅牢なものとなる。また、前記ノニオン性樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)が、30℃以下であることで樹脂の成膜性が向上し、柔軟性も担保されるため、前記白色インク及び前記カラーインクと記録媒体との間の接着性をより向上させることができる。
【0184】
前記ノニオン性樹脂粒子の体積平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、0.05μm以上2.0μm以下が好ましく、0.1μm以上1.0μm以下がより好ましい。
前記ノニオン性樹脂粒子の体積平均粒子径は、例えば、粒度分布測定装置(Nanotrac WaveII-UT151、Microtrac MRB株式会社製)により測定することができる。
【0185】
前記前処理液における前記樹脂粒子の含有量(固形分含有量)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記前処理液の全質量に対して、0.5質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。前記樹脂粒子の含有量(固形分含有量)が、0.5質量%以上20.0質量%以下であることで、前記白色インク及び前記カラーインクと記録媒体との間の接着性をより向上させることができる。
【0186】
-ワックス粒子-
前記ワックス粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水分散性ワックス粒子などを用いることができる。具体的には、前記ワックス粒子としては、例えば、カルナバワックス、キャンデリラワックス、みつろう、ライスワックス、又はラノリン等の植物又は動物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、又はペトロラタム等の石油系ワックス;モンタンワックス又はオゾケライト等の鉱物系ワックス;カーボンワックス、へキストワックス、ポリエチレンワックス、又はステアリン酸アミド等の合成ワックスなどの粒子が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ワックス粒子としては、前記白色インク及び前記カラーインクと記録媒体との間の接着性をより向上させることができる観点、並びに前記前処理液中における分散性の観点から、パラフィンワックス又はポリエチレンワックスの粒子が好ましく、パラフィンワックスの粒子がより好ましい。
【0187】
前記ワックス粒子の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃以上130℃以下が好ましく、60℃以上120℃以下がより好ましい。前記ワックス粒子の融点が50℃以上130℃以下であることで、前記白色インク及び前記カラーインクと記録媒体との間の接着性をより向上させることができる。
【0188】
前記ワックス粒子の体積平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、1μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。
前記ワックス粒子の体積平均粒子径は、例えば、粒度分布測定装置(Nanotrac WaveII-UT151、Microtrac MRB株式会社製)により測定することができる。
【0189】
前記前処理液における前記ワックス粒子の含有量(固形分含有量)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記前処理液の全質量に対して、0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましい。前記ワックス粒子の含有量(固形分含有量)が、0.05質量%以上5.0質量%以下であることで、前記白色インクを記録媒体表面付近に留めることが可能になり、ハンター白色度を向上させることができる。ただし、前記ワックス粒子を含有した前処理液を塗布した後に、白色インク層を形成し、白色インク層上にカラーインクで画像形成を行うと、ワックス粒子を含まない前処理液に比べてカラーブリードが起こりやすくなる場合がある。
【0190】
-有機溶剤-
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶性有機溶剤などを用いることができる。前記水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、エーテル類(例えば、多価アルコールアルキルエーテル類、又は多価アルコールアリールエーテル類等)、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0191】
前記水溶性有機溶剤の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、又はペトリオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、又はエチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、又はγ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、又は3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、又はトリエチルアミン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、又はチオジエタノール等の含硫化合物;プロピレンカーボネート;炭酸エチレンなどが挙げられる。
【0192】
前記有機溶剤は、湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
また、前記有機溶剤として、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、及び1,2-ブタンジオールから選ばれる少なくとも1つを含有する場合、記録媒体表面に濡れ易くなるので好ましい。
【0193】
前記前処理液における前記有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記前処理液の乾燥性及び吐出信頼性の点から、前記前処理液の全質量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上30.0質量%以下がより好ましい。
【0194】
-界面活性剤-
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、又はアニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0195】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、又は側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらの中でも、前記シリコーン系界面活性剤は、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物などが挙げられる。
【0196】
前記フッ素系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記白色インク及び前記カラーインクに含まれるフッ素系界面活性剤と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0197】
前記両性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、又はラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
【0198】
前記ノニオン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、又はアセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0199】
前記アニオン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、又はポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
【0200】
-その他成分-
前記前処理液における前記その他成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、消泡剤、防腐防黴剤、又は防錆剤などが挙げられる。
【0201】
--消泡剤--
前記消泡剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、又は脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。また、前記白色インク又は前記カラーインク中の消泡剤(抑泡剤)と同様のものも使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記消泡剤は、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0202】
--防腐防黴剤、防錆剤--
前記防腐防黴剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記白色インク又は前記カラーインク中の防腐防黴剤と同様のものを使用することができる。
また、前記防錆剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記白色インク又は前記カラーインク中の防錆剤と同様のものを使用することができる。
【0203】
<記録媒体>
前記白色インク、前記カラーインク、及び前記前処理液などが付与される記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、普通紙、光沢紙、特殊紙、布帛、フィルム、OHPシート、又は汎用印刷用紙などが挙げられる。これらの中でも、前記記録媒体は、カラーブリード及びビーディングが発生しやすく、前記インクセットを適用することにより得られる効果が顕著になる観点から、商業印刷用紙等の低浸透性の記録媒体、サイネージ用等の非浸透性の記録媒体、又は布帛などが好ましい。なお、前記布帛は、フィルムや紙などと異なり、凹凸に富んだ表面構造を有するため、付与される白色インク及びカラーインクなどの量が多くなりやすく、これに伴ってカラーブリード及びビーディングが発生しやすくなる記録媒体である。
【0204】
前記記録媒体の一例として、布帛について説明する。本明細書において「布帛」とは、繊維を、織物、編物、不織布などの形態にしたものを表す。
【0205】
前記繊維としては、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、又は天然繊維等の有機質繊維であることが好ましい。
【0206】
前記合成繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、又はポリイミドなどの繊維が挙げられる。
【0207】
前記半合成繊維としては、例えば、アセテート、ジアセテート、又はトリアセテートなどの繊維が挙げられる。
【0208】
前記再生繊維としては、例えば、ポリノジック、レーヨン、リヨセル、又はキュプラなどの繊維が挙げられる。
前記天然繊維としては、例えば、綿、麻、絹、又は毛などの繊維が挙げられる。
【0209】
前記布帛を形成する繊維の中でも、綿等の天然繊維よりも、ポリエステル等の合成繊維の方が、カラーブリード及びビーディングが発生しやすく、更に白色インクを表面にとどめることも難しい。しかし、前記インクセットは、このような布帛に対しても好適に作用し、カラーブリードとビーディングを抑制し、更に白色インクを表面に留めることも可能となる点で有利である。
【0210】
前記布帛は、該布帛に用いられる繊維が顔料又は染料等の着色剤を内部又は表面において化学的に又は物理的に保持することにより着色された濃色であるものが好ましい。前記布帛が濃色である場合、該布帛に形成されるカラー画像の発色性を向上させることを目的として、該布帛とカラー画像との間に白色の下地が形成され得る。これにより、前記白色インク及び前記カラーインクを有する前記インクセットを使用することが好適になるためである。
【0211】
なお、本明細書において「濃色の布帛」とは、前記布帛の明度(L*)を分光測色計(例えば、X-Rite eXact、X-Rite社製)を用いて測定した場合に、60>L*の範囲を満たす布帛を表し、50>L*の範囲を満たす布帛であることが好ましく、40>L*の範囲を満たす布帛であることがより好ましく、30>L*の範囲を満たす布帛であることが更に好ましく、20>L*の範囲を満たす布帛であることが特に好ましい。
【0212】
(インクカートリッジ)
本発明のインクカートリッジは、本発明のインクセットを収容してなるものであり、前記インクセットと、容器と、を有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記インクカートリッジは、インク交換などの作業において、インクに直接触れる必要がなく、手指や着衣の汚れなどの心配がなく、またインクへのごみ等の異物混入を防止できる点で有利である。
【0213】
前記インクカートリッジは、前記インクセットを、一体的に収容していてもよく、前記白色インク及び前記カラーインクを、それぞれ独立に収容していてもよい。また、前記インクセットが、前記白色インク及び前記カラーインクを複数有する場合、前記インクカートリッジは、各白色インク及び各カラーインクを一体的に収容していてもよく、それぞれ独立に収容していてもよい。
【0214】
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを有するものなどが好ましい。
【0215】
前記インクカートリッジの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜用いて製造することができる。
【0216】
前記インクカートリッジは、例えば、前記インク袋等の容器に収容されたインクセットを、更にカートリッジケース(例えば、プラスチック製のケース)内に収容し、画像形成装置に着脱可能に装着して用いられるようになっていることが好ましい。これにより、インクの補充や交換を簡素化でき作業性を向上させることができる。
【0217】
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、白色インク収容手段と、カラーインク収容手段と、白色インク付与手段と、カラーインク付与手段と、を有し、更に必要に応じて、その他の手段を有してもよい。
【0218】
本発明の画像形成方法は、白色インク付与工程と、カラーインク付与工程と、を有し、必要に応じてその他工程を有してもよい。
【0219】
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置によって好適に行われる。以下に、本発明の画像形成装置の説明と併せて、本発明の画像形成方法について説明する。
【0220】
<白色インク収容手段>
前記白色インク収容手段は、白色インクを収容する手段である。
前記白色インク収容手段は、本発明のインクカートリッジであってもよい。
前記白色インク収容手段が収容する白色インクは、本発明のインクセットに含まれる白色インクである。
【0221】
<カラーインク収容手段>
前記カラーインク収容手段は、カラーインクを収容する手段である。
前記カラーインク収容手段は、本発明のインクカートリッジであってもよい。
前記カラーインク収容手段が収容するカラーインクは、本発明のインクセットに含まれるカラーインクである。
【0222】
<白色インク付与手段及び白色インク付与工程>
前記白色インク付与手段は、記録媒体に対して白色インクを付与する手段である。
前記白色インク付与工程は、記録媒体に対して白色インクを付与する工程である。
前記白色インク付与工程は、前記白色インク付与手段によって好適に行われる。
前記記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、前記(インクセット)の<記録媒体>に記載のものを使用することができ、好ましい態様も同様である。
【0223】
前記白色インクの付与方式としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、吐出方式又は塗布方式などが挙げられる。これらの中でも、前記白色インクの付与方式は、吐出方式であることが好ましく、インクジェット吐出方式であることがより好ましい。
【0224】
前記吐出方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、圧電素子アクチュエータを用いる方式、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータを用いる方式、又は連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドを用いる方式などが挙げられる。
【0225】
前記記録媒体に対する前記白色インクの付与量(付着量)としては、前記記録媒体の種類によって大きく異なるが、画像品質向上と乾燥性向上の観点から、1g/m2以上500g/m2以下であることが好ましく、5g/m2以上400g/m2以下であることがより好ましい。
また、前記記録媒体として前記布帛を用いる場合は、前記記録媒体に対する前記白色インクの付与量(付着量)としては、50g/m2以上500g/m2以下であることが好ましく、100g/m2以上400g/m2以下であることがより好ましく、150g/m2以上300g/m2以下であることが更に好ましい。
【0226】
<カラーインク付与手段及びカラーインク付与工程>
前記カラーインク付与手段は、前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対してカラーインクを付与する手段である。
前記カラーインク付与工程は、前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対してカラーインクを付与する工程である。
前記カラーインク付与工程は、前記カラーインク付与手段によって好適に行われる。
【0227】
前記カラーインクの付与方式としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、前記白色インクの付与方式と同様の方式を用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0228】
前記記録媒体に対する前記カラーインクの付与量(付着量)としては、前記記録媒体の種類によって大きく異なるが、画像品質向上と乾燥性向上の観点から、1g/m2以上50g/m2以下であることが好ましく、5g/m2以上30g/m2以下であることがより好ましい。
また、前記記録媒体として前記布帛を用いる場合は、前記記録媒体に対する前記カラーインクの付与量(付着量)としては、5g/m2以上50g/m2以下であることが好ましく、10g/m2以上30g/m2以下であることがより好ましい。
【0229】
前記画像形成方法において、前記記録媒体に対して前記白色インクが付与されてから、前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して前記カラーインクが付与されるまでの間の時間(即ち、前記白色インク付与工程と前記カラーインク付与工程との間の時間)は、極力短い方が生産性の観点から好ましい。前記記録媒体に対して前記白色インクが付与されてから、前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して前記カラーインクが付与されるまでの間の時間は、前記白色インクを乾燥(凝集及び/又は増粘)させる時間であり、前記白色インクの乾燥(凝集及び/又は増粘)が不十分であることに起因して生じるカラーブリード及びビーディングを抑制する目的である。本発明の画像形成方法は、前記(インクセット)の項目に記載の静的表面張力及び動的表面張力の関係を有する前記白色インク及び前記カラーインクを用い、前記記録媒体に対して前記白色インクが付与されてから、前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して前記カラーインクが付与され、カラーブリード及びビーディングを抑制することができる。
【0230】
<その他の手段及びその他の工程>
前記その他の手段としては、例えば、前処理液収容手段、前処理液付与手段、及び加熱又は乾燥手段などが挙げられる。
前記その他工程としては、例えば、前処理液付与工程、及び加熱又は乾燥工程などが挙げられる。
【0231】
<<前処理液収容手段>>
前記前処理液収容手段は、前処理液を収容する手段である。
前記前処理液を収容手段が収容する前処理液は、本発明のインクセットに含まれる前処理液である。
【0232】
<<前処理液付与手段及び前処理液付与工程>>
前記前処理液付与手段は、前記記録媒体の前記白色インクが付与される領域に対して事前に前記前処理液を付与する手段である。
前記前処理液付与工程は、前記白色インク付与工程の前に、前記記録媒体の前記白色インクが付与される領域に対して前処理液を付与する工程である。
前記前処理液付与工程は、前記前処理液付与手段により好適に行われる。
【0233】
前記画像形成装置が前記前処理液収容手段及び前記前処理液付与手段を有する場合、前記白色インク付与手段は、前記記録媒体の前記前処理液が付与された領域に対して前記白色インクを付与する手段と言い換えることができる。
また、前記画像形成方法が前記前処理液付与工程を有する場合、前記白色インク付与工程は、前記記録媒体の前記前処理液が付与された領域に対して前記白色インクを付与する工程と言い換えることができる。
【0234】
前記前処理液の付与方式としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、前記白色インクの付与方式と同様の方式を用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0235】
前記記録媒体に対する前記前処理液の付与量(付着量)としては、前記記録媒体の種類によって大きく異なるが、画像品質向上と乾燥性向上の観点から、0.1g/m2以上500g/m2以下であることが好ましく、1g/m2以上400g/m2以下であることがより好ましい。
また、前記記録媒体として前記布帛を用いる場合は、前記記録媒体に対する前記前処理液の付与量(付着量)としては、100g/m2以上500g/m2以下であることが好ましく、200g/m2以上500g/m2以下であることがより好ましく、300g/m2以上400g/m2以下であることが更に好ましい。
【0236】
<<加熱又は乾燥手段及び加熱又は乾燥工程>>
前記加熱又は乾燥手段は、前記記録媒体に付与された前記白色インク、前記カラーインク、又は前記前処理液などの各種液体を加熱又は乾燥する手段である。
前記加熱又は乾燥工程は、前記記録媒体に付与された前記白色インク、前記カラーインク、又は前記前処理液などの各種液体を加熱又は乾燥する工程である。
前記加熱又は乾燥工程は、前記加熱又は乾燥手段により好適に行われる。
【0237】
前記加熱又は乾燥手段としては、特に制限はなく、公知の加熱手段の中から適宜選択することができ、例えば、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風発生装置、ヒートプレス装置などが挙げられる。
【0238】
また、前記乾燥工程としては、前記記録媒体に付与された前記白色インク、前記カラーインク、又は前記前処理液などの各種液体を乾燥できる限り、特に制限はなく、各種液体を付与後に自然乾燥する方法などが挙げられる。なお、本明細書において、「乾燥工程」とは、ある液体を付与してから20秒間超経過後に他の液体を付与することを意味する。例えば、前記記録媒体に対して前記白色インクが付与されてから、前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して前記カラーインクが付与されるまでの間の時間が、20秒間超である場合に、前記画像形成方法は乾燥工程を含むこととなる。したがって、ある液体を付与してから20秒間以内に他の液体を付与する場合は、前記乾燥工程に含まれない。
【0239】
なお、前記画像形成方法は、上述のように、前記白色インク付与工程と前記カラーインク付与工程との間に、前記白色インクが付与された記録媒体を加熱又は乾燥する加熱又は乾燥工程を含まない場合であっても、カラーブリード及びビーディングの発生を抑制できるため、画像形成効率の点から、前記白色インク付与工程と前記カラーインク付与工程との間に、前記白色インクが付与された記録媒体を加熱又は乾燥する加熱又は乾燥工程を含まないことが好ましい。
同様に、前記画像形成装置は、前記白色インク付与手段による前記白色インクの付与と、前記カラーインク付与手段による前記カラーインクの付与との間に、前記白色インクが付与された記録媒体を加熱又は乾燥する加熱又は乾燥手段を有しないことが好ましい。
【0240】
以下に、
図1及び
図2を参照して、本発明の画像形成装置について具体的に説明するが、本発明は、これに限られるものではない。
【0241】
図1は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略斜視図である。
図2は、本発明の画像形成装置の収容手段(白色インク収容手段、カラーインク収容手段、又は前処理液収容手段)の一例を示す概略斜視図である。
【0242】
図1に示す画像形成装置400は、シリアル型のインクジェット吐出ヘッドを有する画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。前処理液用の前処理液収容手段410p、白色インク用の白色インク収容手段410w、ブラックインク用のブラックインク収容手段410k、シアンインク用のシアンインク収容手段410cにおける収容部411は、例えば、アルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これにより各収容手段410は、インクカートリッジとして用いられる。
【0243】
一方、画像形成装置400の本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側には、カートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、各収容手段410(p、w、k、及びc)が着脱自在に装着される。これにより、各供給チューブ436を介して、各収容手段410(p、w、k、及びc)の排出口413とインクジェット吐出ヘッド434とが連通し、インクジェット吐出ヘッド434から記録媒体へ前処理液及び各インクを吐出可能となる。
なお、
図1に示す画像形成装置400では、前処理液をインクジェット吐出方式で記録媒体に付与するが、前処理液の付与方法としてはこれに限られず、前述の付与方法を用いることができる。
【0244】
なお、画像形成装置400は、記録媒体に付与された白色インク、カラーインク、又は前処理液などの各種液体を加熱又は乾燥する加熱又は乾燥手段を有していてもよいが、白色インク付与後からカラーインク付与前までの間に、白色インクが付与された記録媒体を加熱又は乾燥する加熱又は乾燥手段を有さないことが好ましい。このような加熱又は乾燥手段は、白色インクを加熱又は乾燥させることで、白色インクの乾燥が不十分であることに起因して生じるカラーブリード及びビーディングを抑制する目的で設けられるが、本発明のインクセットは加熱又は乾燥手段を有さずともカラーブリード及びビーディングを抑制することができるためである。
【実施例0245】
以下に調製例、製造例、実施例、及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの調製例、製造例、及び実施例に何ら限定されるものではない。
【0246】
以下の調製例1~9に記載の方法により、顔料分散体又は顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
【0247】
(調製例1:表面改質ブラック顔料分散体の調製)
Cabot Corporation製のBLACK PEARLS(登録商標)1000(BET比表面積343m2/g、ジブチルフタレート吸収量(DBPA)105mL/100gを有するカーボンブラック)100g、スルファニル酸100mmol、及び高純水1Lを、室温(23℃±0.5℃)にて、Silverson(登録商標)ミキサーを用い、6,000rpmの条件で混合し、スラリーを得た。
次に、得られたスラリーに、硝酸100mmolを添加し、更に30分間後に10mLの高純水に溶解させた亜硝酸ナトリウム100mmolをゆっくり添加した。更に撹拌しながら60℃に加温し、1時間反応させてカーボンブッラクにスルファニル酸が付加した改質顔料を得た。
次に、10質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液でpHを9に調整し、30分間後に改質顔料分散体を得た。次いで、この改質顔料分散体と高純水とを用いて透析膜による限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20質量%含む表面改質ブラック顔料分散体を得た。
得られた表面改質ブラック顔料分散体の顔料の表面処理レベルは0.75mmol/gであり、粒度分布測定装置(Nanotrac WaveII-UT151、Microtrac MRB株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は120nmであった。
【0248】
(調製例2:表面改質マゼンタ顔料分散体の調製)
SENSIENT社製の顔料分散体SMART Magenta 3122BA(C.I.ピグメントレッド122表面処理分散体、顔料固形分14.5質量%)1kgを0.1Nの塩酸水溶液で酸析した。
次に、10質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液でpHを9に調整し、30分間後に改質顔料分散体を得た。少なくとも1つのアミノ安息香酸基又はアミノ安息香酸テトラエチルアンモニウム塩と結合した顔料を含む改質顔料分散体と、高純水とを用いて透析膜により限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20質量%含む表面改質マゼンタ顔料分散体を得た。
得られた表面改質マゼンタ顔料分散体について、粒度分布測定装置(Nanotrac WaveII-UT151、Microtrac MRB株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は104nmであった。
【0249】
(調製例3:表面改質シアン顔料分散体の調製)
SENSIENT社製の顔料分散体SMART Cyan 3154BA(C.I.ピグメントブルー15:4表面処理分散体、顔料固形分14.5質量%)1kgを0.1Nの塩酸水溶液で酸析した。
次に、40質量%ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液でpHを9に調整し、30分間後に改質顔料分散体を得た。少なくとも1つのアミノ安息香酸基又はアミノ安息香酸ベンジルトリメチルアンモニウム塩と結合した顔料を含む改質顔料分散体と、高純水とを用いて透析膜により限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20質量%含む表面改質シアン顔料分散体を得た。
得られた表面改質シアン顔料分散体について、粒度分布測定装置(Nanotrac WaveII-UT151、Microtrac MRB株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は116nmであった。
【0250】
(調製例4:表面改質イエロー顔料分散体の調製)
SENSIENT社製の顔料分散体SMART Yellow 3074BA(C.I.ピグメントイエロー74表面処理分散体、顔料固形分14.5質量%)1kgを、10質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液でpH9に調整し、30分間後に改質顔料分散体を得た。少なくとも1つのアミノ安息香酸基又はアミノ安息香酸テトラブチルアンモニウム塩と結合した顔料を含む改質顔料分散体と、高純水とを用いて透析膜により限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20%含む表面改質イエロー顔料分散体を得た。
得られた表面改質イエロー顔料分散体について、粒度分布測定装置(Nanotrac WaveII-UT151、Microtrac MRB株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は145nmであった。
【0251】
(調製例5:マゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製)
機械式撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gをフラスコ内で混合し、65℃に昇温した。次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を、2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を、0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間撹拌した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間撹拌した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液Aを800g得た。
【0252】
次に、ポリマー溶液Aを28gと、C.I.ピグメントレッド122を42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及び高純水13.6gを十分に撹拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストを高純水200gに投入し、充分に撹拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、更に粗大粒子を除くためにこの分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、顔料固形分を15質量%含み、総固形分を20質量%含むマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液を得た。
得られたマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液について、粒度分布測定装置(Nanotrac WaveII-UT151、Microtrac MRB株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は127nmであった。
【0253】
(調製例6:シアン顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製)
調製例5において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122を、フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)に変更したこと以外は、調製例5と同様にして、顔料固形分を15質量%含み、総固形分を20質量%含むシアン顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたシアン顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について粒度分布測定装置(Nanotrac WaveII-UT151、Microtrac MRB株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は93nmであった。
【0254】
(調製例7:イエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製)
調製例5において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122を、ビスアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー155)に変更したこと以外は、調製例5と同様にして、顔料固形分を15質量%含み、総固形分を20質量%含むイエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたイエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(Nanotrac WaveII-UT151、Microtrac MRB株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は76nmであった。
【0255】
(調製例8:ブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製)
調製例5において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122を、カーボンブラック(FW100、デグサ社製)に変更したこと以外は、調製例5と同様にして、顔料固形分を15質量%含み、総固形分を20質量%含むブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(Nanotrac WaveII-UT151、Microtrac MRB株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は104nmであった。
【0256】
(調製例9:ポリマー分散ホワイト顔料分散液の調製)
DISPERBYK-2081(BYKジャパン社製)コポリマー溶液55.6g、酸化チタン(TITONE R-25、堺化学工業株式会社製)517g、β-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド50g、及び高純水377.4gを十分に撹拌した後、ビーズミル(ダイノーミル)に投入し、累積50%体積粒子径D50が300nm以下になるまで分散を行った。更に粗大粒子を除くためにこの分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、ホワイト顔料固形分を50質量%含むポリマー分散ホワイト顔料分散液を得た。
得られたポリマー分散ホワイト顔料分散液における顔料粒子について、粒度分布測定装置(Nanotrac WaveII-UT151、Microtrac MRB株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は283nmであった。
【0257】
以下の製造例1-1~1-50に記載の方法により、白色インク及びカラーインクを製造した。
【0258】
(製造例1-1:インク1の製造)
撹拌機を備えた容器に、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールを2.00質量部、グリセリンを25.00質量部、プロピレングリコールを5.00質量部、及び2,4,7,9-テトラメチルデカン-4,7-ジオールを0.12質量部入れ、30分間混合撹拌した。次いで、防腐防黴剤(PROXEL(登録商標) GXL)を0.05質量部、及び調製例5のマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液を26.67質量部加え、20分間混合撹拌した。水分散性樹脂粒子としてのタケラック(登録商標) WS-6021を33.33質量部、更に、架橋剤としてのタケネート(登録商標) XWB-ST001を1.25質量部、及び全体が100質量部となる量の高純水を加え、60分間混合撹拌した。次いで、得られた混合物を、平均孔径1.2μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過し、粗大粒子及びごみを除去してインク1を得た。
【0259】
(製造例1-2~1-50:インク2~50の製造)
製造例1-1において、インクの処方を下記表1-1~表1-10に示す材料及び含有量に変更したこと以外は、製造例1-1と同様にしてインク2~50を得た。
なお、下記表1-1~表1-10において、各種材料の含有量の単位は「質量%」であり、含有量に関する表示は、固形分量又は有効成分量ではなく全量の表示である。
【0260】
なお、下記表1-1~表1-10において示す各種材料の詳細は以下に示す通りである。
【0261】
--色材--
・ポリマー分散ホワイト顔料分散液:AC-AW62(大日精化工業株式会社製、顔料固形分50質量%)
【0262】
--水分散性樹脂粒子--
・スーパーフレックス 460:ポリウレタンディスパージョン、固形分38質量%、第一工業製薬株式会社製
・スーパーフレックス 460S:ポリウレタンディスパージョン、固形分38質量%、第一工業製薬株式会社製
・スーパーフレックス 470:ポリウレタンディスパージョン、固形分38質量%、第一工業製薬株式会社製
・タケラック(登録商標) WS-5984:ポリウレタンディスパージョン、固形分40質量%、三井化学株式会社製
・タケラック(登録商標) WS-6021:ポリウレタンディスパージョン、固形分30質量%、三井化学株式会社製
【0263】
--ブロックイ化ソシアネート化合物--
・エラストロン(登録商標) E-37:有効成分28質量%、第一工業製薬株式会社製
・エラストロン(登録商標) H-3-DF:有効成分27.5質量%、第一工業製薬株式会社製
・タケネート(登録商標) XWB-ST001:有効成分40質量%、三井化学株式会社製
・アデカボンタイター HUX-3861:有効成分35質量%、株式会社ADEKA製
【0264】
--界面活性剤--
・構造式(8)で表される化合物:ポリエーテル変性シロキサン化合物、有効成分100%
・TEGO(登録商標)Wet 270:ポリエーテル変性シロキサン化合物、エボニック社製、有効成分100%
・シルフェイス SAG503A:ポリエーテル変性シロキサン化合物、日信化学工業株式会社製、有効成分100%
・サーフィノール 104E:2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、日信化学工業株式会社製、有効成分50%
・ユニダイン DSN403N:ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル、ダイキン工業株式会社製、有効成分100%
【0265】
--防腐防黴剤--
・PROXEL(登録商標) GXL:1,2-ベンゾチアゾリン-3-オンを主成分とした防腐防黴剤(アビシア社製、成分20%、ジプロピレングリコール含有)
【0266】
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
【0271】
【0272】
【0273】
【0274】
【0275】
【0276】
<白色インク及びカラーインクの物性>
製造例1-1~1-50で得られたインク1~50について、以下のようにして、粘度、pH、静的表面張力、及び動的表面張力の各種物性を測定した。結果を下記表2-1及び表2-2に示した。
【0277】
-粘度-
製造例1-1~1-50で得られたインク1~50の粘度は、粘度計(RE85L、東機産業株式会社製)を用いて、25℃で測定した。
【0278】
-pH-
製造例1-1~1-50で得られたインク1~50のpHは、pHメーター(HM-30R型、東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、25℃で測定した。
【0279】
-静的表面張力-
製造例1-1~1-50で得られたインク1~50の静的表面張力は、自動表面張力計(DY-300、協和界面科学株式会社製)を用いて、プレート法(Wilhelmy法)により25℃で測定した。
【0280】
-動的表面張力-
最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の製造例1-1~1-50で得られたインク1~50の動的表面張力は、ポータブル動的表面張力計(SITA Pro line t15、英弘精機株式会社製)を用いて、25℃で測定した。
なお、下記表2-1及び表2-2の「カラーインク間の動的表面張力の関係(15msec)」において、「B」はブラックインクを示し、「C」はシアンインクを示し、「M」はマゼンタインクを示し、「Y」はイエローインクを示す。
【0281】
【0282】
【0283】
以下の製造例2-1~2-12に記載の方法により、前処理液を調製した。
【0284】
(製造例2-1:前処理液1の製造)
ガラスビーカーに硫酸マグネシウムを12.50質量部秤量し、高純水を50.00質量部投入後、5分間撹拌した。次いで、プロピレングリコール3.00質量部、ノニオン系樹脂エマルション(タケラック(登録商標) W-635)を17.14質量部、防腐防黴剤(PROXEL(登録商標) GXL)を0.05質量部、及び1,2,3-ベンゾトリアゾールを0.10質量部投入後、15分間混合撹拌した。更に、高純水を添加して合計100質量部にし、10分間混合撹拌した。この混合物を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、不溶物等のごみを除去して、前処理液1を調製した。
【0285】
(製造例2-2~2-12:前処理液2~12の製造)
製造例2-1において、前処理液の処方を下記表3-1及び表3-2に示す材料及び含有量に変更したこと以外は、製造例2-1と同様にして前処理液2~12を調製した。
なお、下記表3-1及び表3-2において、各種材料の含有量の単位は「質量%」であり、含有量に関する表示は、固形分量又は有効成分量ではなく全量の表示である。
【0286】
なお、下記表3-1及び表3-2において示す各種材料の詳細は以下に示す通りである。
【0287】
--カチオン性ポリマー--
・シャロール(登録商標)DC-902P:ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、固形分51.0質量%、第一工業製薬株式会社製
・DK6810:ポリアミン樹脂、固形分55.0質量%、星光PMC株式会社製
【0288】
--ノニオン性樹脂粒子--
・タケラック(登録商標)W-635:ポリウレタンエマルション、固形分35質量%、三井化学株式会社製
・SUMIKAFLEX-850HQ:エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、固形分50質量%、住友化学株式会社製
・SUMIKAFLEX-951HQ:エチレン-酢酸ビニル-バーサチック酸ビニル共重合体、固形分55質量%、住友化学株式会社製
【0289】
--ワックス--
・AQUACER 497:パラフィンワックス、有効成分50質量%、BYKジャパン株式会社製
・AQUACER 539:変性パラフィンワックス、有効成分35質量%、BYKジャパン株式会社製
・AQUACER 531:変性ポリエチレンワックス、有効成分45質量%、BYKジャパン株式会社製
【0290】
--防腐防黴剤--
・PROXEL(登録商標) GXL:1,2-ベンゾチアゾリン-3-オンを主成分とした防腐防黴剤(アビシア社製、成分20%、ジプロピレングリコール含有)
【0291】
【0292】
【0293】
以下の実施例1~16及び比較例1~7に記載の方法により、インクセットを用いた画像形成を行った。
【0294】
(実施例1~14及び比較例1~7)
23℃±0.5℃、50%±5%RHに調整された環境条件下、インクジェット印刷装置(Direct to Garment Printer RICOH Ri 6000、株式会社リコー製)を用い、インクの吐出量が均しくなるようにピエゾ素子の駆動電圧を変動させ、記録媒体に同じ付着量のインクが付着するように設定した。
【0295】
まず、下記表4-1及び表4-2に示す通り、所定の記録媒体に対し、所定の前処理液を、所定の付与方法(塗布方法)で、所定の付着量になるように付与した。その後、記録媒体が濃色ポリエステルTシャツ(00300-ACT)である場合は、130℃のオーブンで90秒間乾燥させ、濃色綿Tシャツ(00085-CVT)である場合は、165℃のオーブンで90秒間乾燥させた。
【0296】
次に、下記表4-1及び表4-2に示す所定のインクセットに含まれる白色インク及びカラーインクをそれぞれ上記インクジェット印刷装置に充填し、記録媒体の前処理液が付与された領域に対して下記表4-1及び表4-2に示す所定の付着量で白色インクを付与してベタ画像を形成し、白色インクの付与から17秒間後に、記録媒体の白色インクが付与された領域に対して下記表4-1及び表4-2に示す所定の付着量でカラーインクを付与して
図3に示すチャートを形成した。
なお、白色インクの付与からカラーインクの付与までの間において記録媒体の加熱は行わなかった。
【0297】
次に、
図3に示すチャートが形成された記録媒体が濃色ポリエステルTシャツ(00300-ACT)である場合は、130℃のオーブンで3分間乾燥させ、濃色綿Tシャツ(00085-CVT)である場合は、165℃のオーブンで2分間乾燥させることによりサンプル画像を得た。
なお、
図3において、「W」は下地としての白色のベタ画像部を表し、「Y」は下地W上に形成されたイエロー色のベタ画像部を表し、「M」は下地W上に形成された赤色のベタ画像部を表し、「C」は下地W上に形成されたシアン色のベタ画像部を表し、「P」は下地W上に形成されたマゼンタ色のベタ画像部を表し、「V」は下地W上に形成された青色のベタ画像部を表し、「G」は下地W上に形成された緑色のベタ画像部を表し、「K」は下地W上に形成された黒色のベタ画像部を表し、「k
1」~「k
6」は下地W上に形成された黒色の文字「R」を表し、「y」は下地W上に形成されたイエロー色の文字「R」を表す。また、
図3に示すチャートは、ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)(アドビ(登録商標)社製)を用いて色補正無しでデータ化した画像を基に作成され、600dpi×600dpiで印刷された。
【0298】
(実施例15)
実施例1のサンプル画像の印刷において、白色インクの付与からカラーインクの付与までの時間を、17秒間から60秒間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、サンプル画像を得た。
【0299】
(実施例16)
実施例1のサンプル画像の印刷において、白色インクの付与と、カラーインクの付与との間で17秒間置かず、白色インクの付与直後に、165℃のオーブンで90秒間乾燥した後、カラーインクを付与したこと以外は、実施例1と同様の方法で、サンプル画像を得た。
【0300】
なお、下記表4-1及び表4-2において示す各種記録媒体の詳細は以下の通りである。
・00300-ACT:濃色ポリエステルTシャツ、glimmer(登録商標) 00300-ACT Black、トムス株式会社製
・00085-CVT:濃色綿Tシャツ、Printstar(登録商標) 00085-CVT Black、トムス株式会社製
【0301】
下記表4-1及び表4-2において、「白インク-カラーインク付与時間」は、実施例1~16及び比較例1~7のサンプル画像の印刷における、白色インクの付与からカラーインクの付与までの時間を示す。
また、下記表4-1及び表4-2において、「白インク付与後加熱工程」は、実施例1~16及び比較例1~7のサンプル画像の印刷における、白色インクの付与後、かつカラーインクの付与前における加熱工程の有無、及び加熱工程が「有り」の場合は、その加熱条件(温度及び時間)を示す。
【0302】
【0303】
【0304】
<サンプル画像の評価>
実施例1~16及び比較例1~7で得られた各サンプル画像について、以下のようにして、ハンター白色度、カラーブリード、ビーディング、及び摩擦堅牢度を評価した。結果を下記表5-1~表5-4に示した。
【0305】
-ハンター白色度-
実施例1~16及び比較例1~7で得られた各サンプル画像の白色のベタ画像部における画像濃度の色彩値L、a、及びbを、分光濃度測色計(X-Rite eXact、X-Rite社製)を用いて測定し、下記計算式(1)によりハンター白色度を算出し、下記評価基準に基づいて評価した。
なお、画像濃度の測定は、色上質紙 中厚口 黒紙(北越コーポレーション株式会社製)を5枚重ねた上にサンプル画像を置いて測定した。
ハンター白色度=100-sqr[(100-L)2+(a2+b2)] ・・・ 計算式(1)
[評価基準]
A+:ハンター白色度が85以上である
A :ハンター白色度が80以上85未満である
B :ハンター白色度が75以上80未満である
C :ハンター白色度が70以上75未満である
D :ハンター白色度が70未満である
【0306】
-カラーブリード-
実施例1~16及び比較例1~7で得られた各サンプル画像において、カラーのベタ画像部と、隣接する白色のベタ画像部との間におけるカラーブリード(例えば、
図3の「W」と「Y」との間の色境界にじみ)、及び一のカラーのベタ画像部と、隣接する他のカラーのベタ画像部との間におけるカラーブリード(例えば、
図3の「K」と「y」又は「k
1」と「Y」との間の色境界にじみ)の程度を、専門評価者が目視により観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
A+:色境界にじみが発生していない
A :極僅かに色境界にじみが発生している
B :僅かに色境界にじみが発生している
C :色境界にじみが発生している
D :著しく色境界にじみが発生している
【0307】
-ビーディング-
実施例1~16及び比較例1~7で得られた各サンプル画像のカラーのベタ画像部において、ビーディング(濃度ムラ)の程度を、専門評価者が目視により観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
A:濃度ムラが発生していない
B:僅かに濃度ムラが発生している
C:濃度ムラが発生している
D:著しく濃度ムラが発生している
【0308】
-摩擦堅牢度-
JIS L 0849に規定の方法に従い、摩擦試験機I形を用いて、摩擦試験機I形(クロックメータ)法により試験を行った。JIS L0849に規定される乾燥試験に則って「乾燥摩擦」を試験し、JIS L0849規定される湿潤試験に則って「湿潤摩擦」を試験し、下記評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
A:色票が4-5級~5級
B:色票が3-4級~4級
C:色票が2-3級~3級
D:色票が2級以下
【0309】
【0310】
【0311】
【0312】
【0313】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 白色インク及びカラーインクを有するインクセットであって、
前記白色インク及び前記カラーインクが、それぞれ独立して、架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と架橋し得る官能基を有するブロック化イソシアネート化合物と、を含有し、
前記白色インクと前記カラーインクとの間の、25℃における静的表面張力の差の絶対値が、1.0mN/m以下であり、
前記白色インクと前記カラーインクとの間の、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であることを特徴とするインクセットである。
<2> 前記白色インク及び前記カラーインクが、それぞれ独立して、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子1質量部に対して、前記ブロック化イソシアネート化合物を0.1質量部~0.55質量部含有する、前記<1>に記載のインクセットである。
<3> 前記白色インク及び前記カラーインクの25℃における静的表面張力が、それぞれ独立して、40.0mN/m以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載のインクセットである。
<4> 前記カラーインクが、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクを含む複数のカラーインクであり、
前記複数のカラーインク間における、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であり、
前記ブラックインク、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクにおける、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力が、下記関係式(1)を満たす、前記<1>から<3>のいずれかに記載のインクセットである。
ブラックインク>シアンインク≧マゼンタインク≧イエローインク ・・・ 関係式(1)
<5> 前記インクセットが、更に前処理液を有し、
前記前処理液が、水及び凝集剤を含有し、
前記凝集剤が、無機金属塩、有機酸金属塩、有機酸アンモニウム塩、及びカチオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1つである、前記<1>から<4>のいずれかに記載のインクセットである。
<6> 前記前処理液が、更にノニオン性樹脂粒子を含有する、前記<5>に記載のインクセットである。
<7> 前記前処理液が、更にワックス粒子を含有する、前記<5>から<6>のいずれかに記載のインクセットである。
<8> 前記ワックス粒子が、パラフィンワックスの粒子である、前記<7>に記載のインクセットである。
<9> 記録媒体に対して白色インクを付与する白色インク付与工程と、
前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対してカラーインクを付与するカラーインク付与工程と、
を含み、
前記白色インク及び前記カラーインクが、それぞれ独立して、架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と架橋し得る官能基を有するブロック化イソシアネート化合物と、を含有し、
前記白色インクと前記カラーインクとの間の、25℃における静的表面張力の差の絶対値が、1.0mN/m以下であり、
前記白色インクと前記カラーインクとの間の、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であることを特徴とする画像形成方法である。
<10> 前記白色インク付与工程の前に、前記記録媒体の前記白色インクが付与される領域に対して前処理液を付与する前処理液付与工程を更に含む、前記<9>に記載の画像形成方法である。
<11> 前記白色インク付与工程と、前記カラーインク付与工程との間に、前記白色インクが付与された記録媒体を加熱又は乾燥する加熱又は乾燥工程を含まない、前記<9>から<10>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<12> 前記記録媒体に対して前記白色インクが付与されてから、前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して前記カラーインクが付与されるまでの間の時間が、20秒間以内である、前記<9>から<11>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<13> 前記記録媒体が、濃色の布帛である、前記<9>から<12>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<14> 前記白色インク及び前記カラーインクが、それぞれ独立して、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子1質量部に対して、前記ブロック化イソシアネート化合物を0.1質量部~0.55質量部含有する、前記<9>から<13>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<15> 前記白色インク及び前記カラーインクの25℃における静的表面張力が、それぞれ独立して、40.0mN/m以下である、前記<9>から<14>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<16> 前記カラーインクが、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクを含む複数のカラーインクであり、
前記複数のカラーインク間における、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であり、
前記ブラックインク、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクにおける、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力が、下記関係式(1)を満たす、前記<9>から<15>のいずれかに記載の画像形成方法である。
ブラックインク>シアンインク≧マゼンタインク≧イエローインク ・・・ 関係式(1)
<17> 前記前処理液が、水及び凝集剤を含有し、
前記凝集剤が、無機金属塩、有機酸金属塩、有機酸アンモニウム塩、及びカチオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1つである、前記<10>から<16>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<18> 前記前処理液が、更にノニオン性樹脂粒子を含有する、前記<17>に記載の画像形成方法である。
<19> 前記前処理液が、更にワックス粒子を含有する、前記<17>から<18>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<20> 前記ワックス粒子が、パラフィンワックスの粒子である、前記<19>に記載の画像形成方法である。
<21> 白色インクを収容した白色インク収容手段と、
カラーインクを収容したカラーインク収容手段と、
記録媒体に対して前記白色インクを付与する白色インク付与手段と、
前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して前記カラーインクを付与するカラーインク付与手段と、
を有し、
前記白色インク及び前記カラーインクが、それぞれ独立して、架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子と架橋し得る官能基を有するブロック化イソシアネート化合物と、を含有し、
前記白色インクと前記カラーインクとの間の、25℃における静的表面張力の差の絶対値が、1.0mN/m以下であり、
前記白色インクと前記カラーインクとの間の、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時、150msec時、及び1,500msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であることを特徴とする画像形成装置である。
<22> 前処理液を収容した前処理液収容手段と、
前記記録媒体の前記白色インクが付与される領域に対して事前に前記前処理液を付与する前処理液付与手段と、
を更に有する、前記<21>に記載の画像形成装置である。
<23> 前記白色インクが付与された記録媒体を加熱又は乾燥する加熱又は乾燥手段を含まない、前記<21>から<22>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<24> 前記記録媒体が、濃色の布帛である、前記<21>から<23>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<25> 前記白色インク及び前記カラーインクが、それぞれ独立して、前記架橋性官能基を有する水分散性樹脂粒子1質量部に対して、前記ブロック化イソシアネート化合物を0.1質量部~0.55質量部含有する、前記<21>から<24>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<26> 前記白色インク及び前記カラーインクの25℃における静的表面張力が、それぞれ独立して、40.0mN/m以下である、前記<21>から<25>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<27> 前記カラーインクが、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクを含む複数のカラーインクであり、
前記複数のカラーインク間における、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力の差の絶対値が、それぞれ独立して、1.0mN/m以下であり、
前記ブラックインク、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクにおける、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の25℃における動的表面張力が、下記関係式(1)を満たす、前記<21>から<26>のいずれかに記載の画像形成装置である。
ブラックインク>シアンインク≧マゼンタインク≧イエローインク ・・・ 関係式(1)
<28> 前記前処理液が、水及び凝集剤を含有し、
前記凝集剤が、無機金属塩、有機酸金属塩、有機酸アンモニウム塩、及びカチオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1つである、前記<22>から<27>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<29> 前記前処理液が、更にノニオン性樹脂粒子を含有する、前記<28>に記載の画像形成装置である。
<30> 前記前処理液が、更にワックス粒子を含有する、前記<28>から<29>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<31> 前記ワックス粒子が、パラフィンワックスの粒子である、前記<30>に記載の画像形成装置である。
【0314】
前記<1>から<8>のいずれかに記載のインクセット、前記<9>から<20>に記載の画像形成方法、及び前記<21>から<31>のいずれかに記載の画像形成装置は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。