(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060918
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】模様位置検査方法
(51)【国際特許分類】
D21H 27/02 20060101AFI20230424BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20230424BHJP
B65H 23/188 20060101ALI20230424BHJP
B65H 7/02 20060101ALI20230424BHJP
D21F 7/00 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
D21H27/02
G01B11/00 H
B65H23/188
B65H7/02
D21F7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170598
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】金山 克幸
【テーマコード(参考)】
2F065
3F048
3F105
4L055
【Fターム(参考)】
2F065AA01
2F065AA06
2F065AA22
2F065AA49
2F065BB15
2F065BB27
2F065CC02
2F065DD03
2F065DD16
2F065FF04
2F065FF15
2F065GG04
2F065GG07
2F065JJ19
2F065JJ25
2F065JJ26
2F065MM03
2F065QQ08
2F065QQ23
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ26
2F065QQ31
2F065QQ38
2F065TT03
3F048AB01
3F048AC02
3F048CA06
3F048DA06
3F048DB11
3F048DC11
3F105AA01
3F105DA23
3F105DB11
3F105DC17
4L055CG20
4L055DA09
4L055FA08
4L055GA45
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】抄紙機等によって連続用紙に複数形成される模様の位置検査について、用紙流れ方向のラインカメラの分解能を精緻に算出し、算出された分解能により、連続用紙に施された模様位置を高い精度で検査する模様検査方法を提供する。
【解決手段】本発明は、抄紙機において連続用紙に複数形成された模様の位置を、抄紙機上において連続用紙が乾燥した状態、かつ、搬送状態において検査する模様位置検査方法であって、連続用紙に複数形成された模様が含まれる所定領域を撮像し、撮像する連続用紙の移動量を非接触により測定し、移動量から用紙流れ方向の分解能を算出し、模様位置の良損を判定することを特徴とする模様位置検査方法。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機において連続用紙に複数形成された模様の位置を、前記抄紙機上において前記連続用紙が乾燥した状態、かつ、搬送状態において検査する模様位置検査方法であって、
前記連続用紙に複数形成された模様が含まれる所定領域を撮像し、
前記撮像する前記所定領域内又はその近傍における前記連続用紙の移動量を非接触により測定し、
測定した前記連続用紙の移動量を単位時間あたりの撮像信号の数で除算して用紙流れ方向の分解能を算出し、
前記撮像により得られた撮像画像から対象となる模様を検出し、前記検出した前記模様間の画素数をカウントし、前記カウントした前記画素数に前記分解能を乗算して前記模様間の距離を算出し、前記算出した前記模様間の距離を予め設定された閾値と比較し、模様位置の良損を判定することを特徴とする模様位置検査方法。
【請求項2】
前記分解能が定時的に自動更新されることを特徴とする請求項1に記載の模様位置検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機上で連続的に製造される用紙に施されるすき入れ模様等の位置を高い精度で検査するための模様位置検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ及びカラー複写機等のデジタル機器の発展により、紙幣及び旅券等のセキュリティ媒体の精巧な偽造品を作製することが可能となっている。その偽造防止対策の一つとして、すき入れ模様がある。すき入れ模様とは、反射光下では模様を視認することができず、透過光下のみで模様を視認することが可能な模様であって用紙を製造する段階においてのみ付与することができる模様である。また、すき入れ模様のほかに、用紙の製造段階において、印刷模様や、スレッド等の偽造防止材料を付与することがある。これらの模様や偽造防止技術は、セキュリティ媒体の精巧な偽造を困難とするため、高い位置精度で付与される必要がある。
【0003】
このような模様が施された連続用紙は、抄紙機によって製造され、抄紙機の用紙搬送経路の上流側から下流側に向かって、長網部、乾燥部、カレンダー部、検査部、巻取部等で構成される。また、場合によって長網部と乾燥部の間に印刷部が設けられる。例えば、長網部においてワイヤー上の湿紙にすき入れ模様を施し、印刷部において、湿紙の状態の連続用紙について、すき入れ模様と同期した位置に印刷模様が付与される。乾燥部では、湿紙に熱を加えて用紙を乾燥させ、カレンダー部では、乾燥直後の用紙の表面に圧力を加えることで用紙の平滑性を高める。そして、検査部では、用紙における穴や異物を検査する欠陥検査と、すき入れ模様や印刷模様等の位置検査が行われたのち、巻取部で帯状の用紙が巻き取られる。
【0004】
このような抄紙機について、特許文献1には、連続的に製造される用紙の伸縮を自動に制御し、用紙に施されたすき入れ模様やレジスタマーク等の模様の定位置性を向上する技術が開示されている。この技術は、乾燥部の用紙が安定して走行する箇所にロータリーエンコーダ、マークセンサ等から成る寸法測定器を設けて用紙の流れ方向の寸法を測定するとともに、イメージセンサカメラ、光源、カウンタから成る用紙幅測定器を設けて用紙の幅方向の寸法を測定することにより、従来実施していた、用紙をサンプリングして用紙伸縮を測定することなく、常時、自動的に測定し、その制御を行うことで製品の品質向上と作業性の改善を図ることができるものである。
【0005】
また、従来から、抄紙機上において模様の位置検査を精度良く行うことも実施されている。これらの模様の位置検査は、抄紙機にて製造された連続用紙を、予め定められたセキュリティ媒体の寸法に断裁する際、製品規格の許容内とするための検査であり、連続して形成されたすき入れ模様とすき入れ模様との距離や、枚葉紙単位の領域において算出したすき入れ模様群の中点から各すき入れ模様までの距離や、すき入れ模様と印刷模様との距離を測定し、その距離が製品規格内であるかの良損判定を行うものである。連続的に製造される用紙の作製において、模様位置の検査精度は極めて重要である。模様位置の検査精度が低い場合、それらの模様が適切な位置から大きくずれているにも関わらず良紙と判定し、その結果、断裁された際に模様位置が大きくずれ、規格を外れてしまうからである。
【0006】
抄紙機の長網部で付与されたすき入れ模様は、乾燥部において乾燥する際に用紙が伸縮することに伴い、すき入れ模様の位置が変化するが、乾燥部以降は用紙伸縮変化が小さいため、乾燥部以降の検査部において、模様の位置検査が行われる。そして、抄紙機の検査部において、良紙判定された領域ごとの模様位置の測定データを保存し、その後の断裁工程等でその測定データを活用することで、模様位置のあばれを抑えたセキュリティ媒体を得ることができる。一方、抄紙機の検査部で損紙判定された領域は、例えば、検査部において損紙であることを示すマークが付され、断裁工程において当該マークを検出されることで、良紙から除かれる。
【0007】
模様位置の検査装置は、一般的にLED照明、ラインカメラ、エンコーダ、画像処理部等から構成される。連続用紙に形成された模様を撮像する場合は、LED照明を連続用紙に照射し、ラインカメラにて、連続用紙の透過画像を撮像することによりすき入れ透過画像を得る。また、エンコーダでは、搬送中の連続用紙と同期して、ラインカメラ撮像信号を、画像処理部に送る。このラインカメラ撮像信号は、搬送される連続用紙と同期した信号である。そして、ラインカメラで撮像された画像は、画像処理部において、予め設定した規格の許容範囲内か否かの良損判定が行われる。
【0008】
すき入れ模様の位置の良損判定を行う画像処理部は、連続用紙の透過画像に対して、予め設定されたすき入れ模様の基準画像によるパターンマッチングを行うことで、すき入れ模様の位置を検出する。次に、その検出したすき入れ模様の位置座標から、すき入れ位置を測定して、その位置が許容範囲内か否かによる合否判定を行う。また、この画像処理部には、予め正確な幅方向・流れ方向のラインカメラの分解能を調査し、設定しておく必要がある。具体的には、幅方向のラインカメラの分解能は、用紙の搬送経路に置いた高い精度で目盛が印字されたスケールを撮像し、撮像した画像のスケールの目盛間の画素数を数え、目盛間の実際の長さを目盛間の画素数で除算することで算出する。また、流れ方向のラインカメラの分解能は、用紙における模様と模様との距離を実際にスケールで測定し、次に、撮像した模様間の画素数を数え、すき入れ間の実際の距離を模様間の画素数で除算することで算出する。
【0009】
そして、ラインカメラ撮像信号は、搬送中の連続用紙と同期する必要があるため、ラインカメラ撮像信号を発するエンコーダのコロを搬送中の用紙に直接接触させるよう、エンコーダを連続用紙に配置する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1や従来の模様位置検査方法は、搬送中の用紙に直接コロが接触するため、用紙に傷を発生させる恐れがある。そこで、従来技術について、
図12に示す検査部の側面図のように、エンコーダのコロを直接用紙に接触させずに、用紙と連れ回って回転するペーパーロールに接触させて製造する必要があった。
しかしながら、一般的なペーパーロールは、搬送される用紙により連れ回る鉄製ロールであり、表面が平滑で回転負荷が大きく、搬送される用紙に対してペーパーロールがスリップすることがある。ペーパーロールがスリップした場合、エンコーダのコロの回転速度は搬送される用紙との同期が崩れるため、流れ方向の模様位置の測定誤差が大きくなるという課題があった。
【0012】
例えば、用紙の流れ方向における実際の模様間の距離が100.0mmで、その間を撮像したラインカメラの画像の画素数が1000個で、予め設定された分解能が0.1mm/画素の時、模様間の距離となる1000画素に0.1mm/画素を乗算することで、模様間の距離は正確に100.0mmと算出される。
しかし、ペーパーロールがスリップし、用紙が一定の速度で搬送されるにも関わらず、エンコーダからの撮像信号の数が少なくなり、その結果、実際の模様間の距離が100.0mmで、その間の画素数が900個と少なくなった場合、900画素に0.1mm/画素を乗算し算出される模様の間隔の長さは90.0mmと、実際よりも10mmも短い長さになる。
【0013】
また、抄紙機における検査部の連続用紙は、巻取部で一定の周速で巻き取られるために、常に巻取部の方向に常に引っ張られているため、従来技術の
図12に示すように、ラインカメラ撮像領域と下流側のペーパーロールの間のA点において、連続用紙が均等に伸びた場合、ラインカメラ撮像領域の用紙の速度は低下し、エンコーダからのラインカメラ撮像信号は、移動する連続用紙と同期したものとはならない。そのため、流れ方向のすき入れ模様の位置の誤差が大きいという課題があった。
【0014】
そこで、本発明は、抄紙機等によって連続用紙に複数形成される模様位置の検査方法に関し、ラインカメラ及び非接触レーザー速度計を用いて、ラインカメラの用紙流れ方向の分解能を精緻に算出するとともに、算出された分解能を自動で更新することにより、連続用紙に施された模様の位置検査を高い精度で検査するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の模様位置検査方法は、抄紙機において連続用紙に複数形成された模様の位置を、抄紙機上において連続用紙が乾燥した状態、かつ、搬送状態において検査する模様位置検査方法であって、
連続用紙に複数形成された模様が含まれる所定領域を撮像し、
撮像する所定領域内又はその近傍における連続用紙の移動量を非接触により測定し、
測定した連続用紙の移動量を単位時間あたりの撮像信号の数で除算して用紙流れ方向の分解能を算出し、
撮像により得られた撮像画像から対象となる模様を検出し、検出した模様間の画素数をカウントし、カウントした画素数に分解能を乗算して模様間の距離を算出し、前記算出した模様間の距離を予め設定された閾値と比較し、模様位置の良損を判定することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の模様位置検査方法は、分解能が定時的に自動更新されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、抄紙機等によって製造される連続用紙に形成される模様の位置について、非接触レーザー速度計を用いることで分解能を精緻に算出できることで、高い精度で模様位置を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】抄紙機上のすき入れ模様を有する連続用紙を示す図である。
【
図2】本実施の形態における模様位置検査方法を実施するための装置(S)の側面図である。
【
図3】本実施の形態における連続用紙のラインカメラ撮像領域の断面図である。
【
図4】本実施の形態における連続用紙のラインカメラ撮像領域の断面図である。
【
図5】本実施の形態におけるラインカメラ撮像領域の側面図である。
【
図6】本実施の形態におけるレーザー速度計の原理を示す模式図である。
【
図7】本実施の形態における非接触レーザー速度計の配置例である。
【
図8】本実施の形態におけるラインカメラ撮像信号と連続用紙の移動量の測定タイミングを示す図である。
【
図9】本実施の形態における光センサーの配置例を示す図である。
【
図10】本実施の形態において、
図9の配置例による分解能の算出方法を説明する図である。
【
図11】本実施の形態における模様位置検査方法のフロー図である。
【
図12】従来技術の模様位置検査方法を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0020】
(実施の形態)
図1は、本発明の模様位置検査方法における検査対象となる、複数の模様(1)が形成された帯状の連続用紙(2)を示す図である。本実施の形態において、模様(1)は、用紙の幅方向となるX方向及び用紙の流れ方向となるY方向に複数配置されている。また、模様(1)は、後工程において断裁されることにより枚葉紙単位となる、点線で囲まれた領域(3)内に形成されている。なお、
図1では、説明の都合上、枚葉紙単位となる領域(3)を点線で示しているが、実際には存在しない。連続用紙(2)は、最終的には後工程において、枚葉紙単位、あるいは枚葉紙単位から更に求められる製品形態の規格サイズに断裁され、セキュリティ媒体となる。本実施の形態では、
図1に示すように点線で囲まれる枚葉紙単位の領域(3)に8個の模様(1)が配置されているが、連続用紙(2)に形成される模様(1)の数や配置は、
図1に示す例に限定されない。
【0021】
本実施の形態において、連続用紙(2)に形成される模様(1)は、すき入れ模様、印刷模様、スレッド、レジスタマーク等であってもよい。また、連続用紙(2)に、すき入れ模様、印刷模様、スレッド、レジスタマーク等が組み合わせて施されていてもよい。本実施の形態において、印刷模様等の位置検査は、すき入れ模様(1)の位置検査と同じ手法となるため、本実施の形態では、すき入れ模様(1)を例に説明する。
【0022】
連続用紙(2)は、抄紙機ですき入れ模様(1)が形成された帯状の用紙であり、長網抄紙機や円網抄紙機等で製造される。本実施の形態では、長網抄紙機を用いて抄造される連続用紙(2)に対して、ダンディロールを用いてすき入れ模様(1)が形成される例について説明するが、これに限定されるものではなく、プレス工程で形成されてもよいし、円網方式ですき入れ模様(1)が形成されてもよい。
【0023】
長網抄紙機は、製造工程の上流側から下流側に向かって、長網部、印刷部、乾燥部、カレンダー部、検査部、巻取部等から構成される(図示せず)。長網部においてワイヤー上の湿紙にすき入れ模様(1)が形成され、乾燥部、検査部等を経て巻き取られ、巻取紙の形態となる。
【0024】
長網部ですき入れ模様(1)が形成された連続用紙(2)は、乾燥部にて水分の蒸発により用紙が伸縮することで、すき入れ模様(1)の位置が変化するため、検査部においてすき入れ模様の位置検査が行われる。ここで、検査部におけるすき入れ模様(1)の位置検査とは、用紙伸縮で変化したすき入れ模様(1)間の位置を検査するものである。例えば、隣り合うすき入れ模様(1)の距離が製品規格内であるか否かの判定を行う場合や、
図1の点線において示すように、枚葉紙となる領域ごとに、連続して形成されたすき入れ模様(1’)とすき入れ模様(1’’)の間の距離や、すき入れ模様を直線で結んだ時の交点となる中点(4)からの各すき入れ模様(1)までの距離が製品規格の許容内であるかの否かの判定を行う場合も含まれる。
【0025】
図2に、本発明の位置検査方法を実施するための模様位置検査装置(S)の側面図を示す。模様位置検査装置(S)は、少なくとも、LED照明(5)、ラインカメラ(6)、エンコーダ(7)、エンコーダのコロ(12)、下流側のペーパーロール(8)及び画像処理部(9)、非接触レーザー速度計(13)及びコントローラ(14)から構成される。
図2の本発明における模様位置検査装置の側面図と、従来技術である
図12とを比較すると、本発明は、非接触レーザー速度計(13)及びコントローラ(14)の構成が従来技術と異なっている。
【0026】
図2に示すように、検査部における連続用紙(2)の搬送経路は、ペーパーロールの配置で決まり、連続用紙(2)が上流側のペーパーロール(9)の上側と下流側のペーパーロール(8)の下側を通過する経路となっている。上流側のペーパーロール(9)及び下流側のペーパーロール(8)は、連続用紙(2)において共通で使用する1本の鉄製のロールであり、連続用紙(2)に対して連れ回って回転する。
【0027】
本発明において、LED照明(5)は、連続用紙(2)の幅方向全面に高輝度な白色光を照射し、輝度が最も高い箇所がラインカメラの受光素子と一致するように、LED照明とラインカメラは、連続用紙(2)を介して対面させて配置する。このように配置することで、ラインカメラ(6)は、歪みが少なく十分な輝度とコントラストを有したすき入れ透過画像を撮像することができる。ラインカメラ(6)は、エンコーダ(7)からの撮像信号を受けて1ラインの画像を撮像する。本実施の形態において、ラインカメラ(6)にて用紙透過画像を撮像するラインカメラ撮像領域(11)は、上流側のペーパーロール(10)と下流側のペーパーロール(8)の略中間に位置しているが、安定的にラインカメラ撮像領域(11)を得ることができれば、これに限定されない。
【0028】
なお、上記では
図2に示すように、すき入れ模様(1)の位置検査を行うため、LED照明(5)は、連続用紙(2)を介してラインカメラ(6)と対向する位置に配置しているが、LED照明(5)は、ラインカメラ(6)により良好な撮像画像を得ることができる位置に設置されればよい。例えば、連続用紙(2)に形成された印刷模様(1)を撮像する場合、LED照明(5)とラインカメラ(6)を連続用紙(2)の印刷模様(1)が形成されている側に配置して、LED照明(5)からの白色光を連続用紙(2)に対し約45度で照射するとともに、ラインカメラ(6)は連続用紙(2)に対して垂直に配置することで連続用紙(2)の反射画像を撮像することができる。
【0029】
次に、
図2に示すとおり、連続用紙(2)が通過する下流側ペーパーロール(8)は、その上部でエンコーダのコロ(12)が接触している。最も望ましくは、エンコーダ(7)を連続用紙(2)の移動量と完全に同期させるため、連続用紙(2)とエンコーダのコロ(12)を直接接触させることであるが、エンコーダのコロ(12)の接触により連続用紙(2)を損傷させる恐れがあるため、本発明では、下流側ペーパーロール(8)とエンコーダのコロ(12)を接触させて同期させる。エンコーダ(7)から発するラインカメラ撮像信号は、搬送される連続用紙と同期した信号であり、下流側ペーパーロール(8)の回転と同期した信号である。また、エンコーダ(7)からのラインカメラ撮像信号は、複数領域の位置検査装置で共通である。
本実施の形態では、エンコーダのコロ(12)を下流側ペーパーロール(8)に接触させた配置としたが、エンコーダのコロ(12)を上流側ペーパーロール(10)に接触するように配置してもよい。
【0030】
次に、本実施の形態において使用する非接触レーザー速度計(13)について説明する。非接触レーザー速度計(13)は、
図2に示すように、用紙搬送経路の近傍に設けられ、ラインカメラ撮像領域(11)を通過する連続用紙(2)の移動量が測定される。本明細書において、「用紙搬送経路の近傍」とは、搬送される連続用紙(2)に直接接触しない位置であれば、連続用紙(2)に対して上方、下方、あるいは斜め方向の位置でもよいし、搬送される連続用紙(2)に対して上流側でも下流の位置でもよい。これについて、以下に説明する。
【0031】
図3は、本発明の模様位置検査装置(S)を用紙搬送方向の下流側から上流側に向かって見た際の、連続用紙(2)のラインカメラ撮像領域(11)の断面図である。例えば、
図3に示すように非接触レーザー速度計(13)の配置箇所がラインカメラ(6)の撮像視野から外れた位置の場合、ラインカメラ(6)が撮像する画像にはレーザー光(15)が撮像されない。そのため、撮像された画像をすき入れ模様(1)の位置検査とともに、連続用紙における中の穴や汚れ等の欠陥検査にも使用することができる。
【0032】
しかしながら、
図4に示すように、非接触レーザー速度計(13)の配置箇所がラインカメラ(6)の撮像視野内に配置されてもよい。この場合、ラインカメラ(6)が撮像した透過画像に非接触レーザー速度計(13)によるレーザー光(15)が撮像されてしまうため、撮像画像を欠陥検査に用いることはできないが、レーザー光(15)を照射する位置に、検査対象のすき入れ模様(1)が通過しないよう配置することで、すき入れ模様(1)の位置検査は行うことができる。
【0033】
また、非接触レーザー速度計(13)の配置の別の例について、
図5に示すラインカメラ撮像領域(11)の側面図をもとに説明する。
図5に示すように、非接触レーザー速度計(13)の配置箇所をラインカメラ撮像領域(11)の下流側に配置した場合、ラインカメラ(6)が撮像する画像にレーザー光(15)は撮像されず、撮像にて得られる画像は連続用紙(2)の穴や汚れ等の欠陥検査が可能である。なお、非接触レーザー速度計(13)の配置箇所は、同様の理由でラインカメラ撮像領域(11)の上流側でも構わない(図示せず)。
【0034】
次に、非接触レーザー速度計(13)の原理について説明する。
図6は、非接触レーザー速度計(13)の原理を示す模式図である。非接触レーザー速度計(13)は、2軸のレーザー光(15)を角度2θで交差させた時、レーザー光(15)が交差した位置に生じる干渉稿の明暗の周波数が、そこを通過する物体の速度で変化する現象を利用した速度計である。非接触レーザー速度計(13)としては、レーザードップラー速度計が用いられる。
非接触レーザー速度計(13)により、ラインカメラ撮像領域(11)を用紙流れ方向(Y方向)に移動する連続用紙(2)に対して、レーザー光(15)を照射し、散乱光(16)の周波数を測定することで、連続用紙(2)の速度を測定する。そして、測定した速度を測定時間で積分することで用紙の移動量が算出される。移動量とは、連続用紙(2)の所定の位置が単位時間当たりにおいて、用紙流れ方向(Y方向)に移動した距離である。また、位置検査を行っている間、非接触レーザー速度計(13)から、常に算出された連続用紙(2)の移動量がコントローラ(14)に送信される。
【0035】
図7は、複数のすき入れ模様(1)が連続用紙(2)に配置された場合における非接触レーザー速度計(13)の配置図である。本発明において、非接触レーザー速度計(13)は、搬送される連続用紙(2)に対して、少なくとも一箇所に設置されるが、
図7に示すように、連続用紙(2)の幅が広い場合などは、非接触レーザー速度計(13)を領域ごとに複数箇所配置してもよい。これにより、連続用紙(2)の領域(幅方向の中央部と両端部)の用紙伸縮の違いによるすき入れ模様(1)にわずかな位置ずれがある場合にも、領域ごとに移動量を正確に測定できるため、より位置検査精度を高めることができる。
【0036】
続いて、本実施の形態におけるコントローラ(14)について説明する。コントローラ(14)は、
図2に示すように、エンコーダ(7)からのラインカメラ撮像信号と非接触レーザー速度計(13)が測定した連続用紙(2)の移動量を受信し、連続用紙(2)の移動量をラインカメラ撮像信号の数で除算することで、すき入れ模様(1)の位置検査装置の流れ方向の分解能を算出する。本実施の形態では、コントローラ(14)は、エンコーダ(7)からのラインカメラ撮像信号と非接触レーザー速度計(13)が測定した連続用紙(2)の移動量を受信することができれば、設置場所については問わない。なお、本実施の形態では、コントローラ(14)においてラインカメラ(6)の流れ方向の分解能を算出しているが、コントローラ(14)の機能を画像処理部(9)内に設けてもよい。
【0037】
図8は、ラインカメラ撮像信号と連続用紙(2)の移動量の測定タイミングを示す図である。ラインカメラ(6)では、エンコーダ(7)からの信号立ち上り時に、予め設定された露光時間で1ラインの画像を撮像する。非接触レーザー速度計(13)は測定した連続用紙(2)の速度を測定時間で積分することで、連続用紙(2)の移動量を測定する。
コントローラ(14)では、予め設定した時間(T0)から時間(T1)までのラインカメラ(6)の撮像信号数(P1)と、連続用紙(2)の移動量(L1)を記憶し、T1時間経過後、コントローラ(14)は、速やかに連続用紙(2)の移動量(L1)をラインカメラ撮像信号数(P1)で除算することで、一定時間のラインカメラ(6)の流れ方向の分解能を算出する。
【0038】
なお、
図9に示すとおり、ラインカメラ撮像領域(11)の近傍に、領域(3)におけるX方向・Y方向において最もプラス側に位置したすき入れ模様(18)のみを検出するため、X方向において最もプラス側に位置したすき入れ模様(18)が通過する位置に、すき入れ模様を検出する光センサー(17)等を設けることで、一定区間における流れ方向の分解能を算出することもできる。これについて、
図10を用いて説明すると、光センサー(17)により検出したすき入れ模様(1)の信号をカウンター(19)に送り、カウンター(19)において、予め設定した、信号がない区間後の連続4個の検出信号のパターンと光センサー(17)からの検出信号のパターンを比較することで、X方向で最もプラス側に位置したすき入れ模様(18)を識別して、それを信号(S0)及び信号(S1)として、コントローラ(14)に送信する。コントローラ(14)では、信号(S0)及び信号(S1)間における連続用紙(2)の移動量(L2)をラインカメラ撮像信号数(P2)で除算することで、領域の流れ方向の分解能を算出することができる。
上記では、X方向において最もプラス側に位置したすき入れ模様(1)を検出する方法について説明したが、同様の方法で、X方向におけるマイナス側、Y方向においてプラス側あるいはマイナス側に位置した許容範囲を超えるすき入れ模様(1)を検出することができる。
【0039】
コントローラ(14)では、一定時間内又は一定区間内において算出した流れ方向の分解能について画像処理部(9)に送信する。画像処理部(9)では、ラインカメラ(6)で1ライン毎に撮像された画像が2次元画像として形成されるとともに、コントローラ(14)から送られた分解能を用いて、すき入れ模様(1)間の長さを算出し、すき入れ模様位置の良損判定を行うことができる。
【0040】
具体的には、画像処理部(9)では、ラインカメラで撮像したラインカメラ撮像画像から、主にパターンマッチングを用いて、位置測定の対象となるすき入れ模様(1)が検出される。次に、検出された模様間の画素数がカウントされ、カウントした画素数に、上記で算出した分解能を乗算して模様間の距離が算出される。そして、算出された模様間の距離と、予め設定された閾値(許容範囲)の距離と比較し、閾値内か否かによって模様位置の良損判定がなされる。
【0041】
画像処理部(9)では、分解能が定時的に自動更新される。また、分解能の更新を行っている時間は、すき入れ模様(1)の位置検査は、更新前の分解能を使用することで、すき入れ位置検査を継続して行う。
【0042】
(模様位置検査方法)
次に、前述した模様位置検査装置(S)を用いた模様位置検査方法について説明する。
図11は、本発明の実施の形態における模様位置検査方法のフロー図である。
図11に示すように、本発明の実施の形態における模様位置検査方法は、撮像工程(Step1)、移動量測定工程(Step2)、分解能算出工程(Step3)及び模様検査工程(Step4)を少なくとも備える。以下、それぞれのStepについて説明する。
【0043】
(撮像工程(Step1))
撮像工程(Step1)では、搬送される連続用紙(2) から、ラインカメラ(6)等を用いてすき入れ模様(1)を撮像する。その際、良好なすき入れ模様(1)の撮像画像を得るために、LED照明(5)等の適切な照明や照射量、ラインカメラ(6)と照明の位置等、事前に撮像条件を調整しておくことが望ましい。
【0044】
(移動量測定工程(Step2))
移動量測定工程(Step2)では、撮像工程(Step1)において撮像する所定の領域内又はその近傍における連続用紙(2)の移動量を、非接触レーザー速度計(13)等を用いて非接触で測定する。測定にあたっては、
図4において説明したように、撮像工程(Step1)における撮像視野内の移動量を測定してもよいし、
図3において説明したように、撮像工程(Step1)における撮像視野からわずかに外れた領域の移動量を測定してもよい。なお、移動量測定工程(Step2)は、搬送される連続用紙(2)に直接接触しない位置で、非接触レーザー速度計(13)の高い測定精度で測定ができればよい。
また、
図7に示すように、連続用紙(2)の幅が広い場合などは、領域ごとに移動量を測定してもよい。これにより、連続用紙(2)の領域(幅方向の中央部と両端部)の用紙伸縮の違いによるすき入れ模様(1)にわずかな位置ずれがある場合にも、移動量を正確に測定できるため、より位置検査精度を高めることができる。
【0045】
(分解能算出工程(Step3))
分解能算出工程(Step3)では、移動量測定工程(Step2)において測定した所定の領域における連続用紙(2)の移動量を、単位時間あたりの撮像信号の数で除算してラインカメラの用紙流れ方向の分解能を算出する。具体的には、
図2に示すように、コントローラ(14)がエンコーダー(7)からのラインカメラ撮像信号と非接触レーザー速度計(13)が測定した連続用紙(2)の移動量を受信する。そして、コントローラ(14)において、連続用紙(2)の移動量をラインカメラ撮像信号の数で除算することで、すき入れ模様(1)の位置検査装置の流れ方向の分解能を算出する。
【0046】
(模様検査工程(Step4))
模様検査工程(Step4)では、撮像画像におけるすき入れ模様位置の検査を行う。具体的には、まず、分解能算出工程(Step3)で算出した流れ方向の分解能をコントローラ(14)から画像処理部(9)に送信する。
また、画像処理部(9)では、撮像工程(Step1)において撮像した撮像画像から位置測定の対象となるすき入れ模様(1)を検出する。すき入れ模様(1)を検出する方法については、パターンマッチング等の既存の方法で行うことができる。次に、検出された模様間の画素数がカウントされ、カウントした画素数に、上記で算出した分解能を乗算して模様間の距離を算出する。そして、算出された模様間の距離と、予め設定された閾値(許容範囲)の距離と比較し、閾値内か否かによって模様位置の良損判定がなされる。なお、本実施の形態では、すき入れ模様(1)間の位置について良損判定する例を示したが、これに限らず、任意の模様間や、連続用紙(2)の端部から任意の模様までの位置等、様々な例に用いることができる。以上が、本発明の実施の形態における模様位置検査方法のフローに関する説明である。
【0047】
本発明によれば、仮に、ペーパーロール(7)がスリップした場合でも、分解能が定時的に自動更新されるため、すき入れ模様(1)の位置検査の誤差を小さく抑えることができる。
【0048】
なお、本実施の形態において、下流側ペーパーロール(8)のスリップ量が常に変化するような場合、すき入れ模様(1)の位置検査装置の分解能が常に更新されるため、画像処理部(9)の処理が複雑になる。そこで、コントローラ(14)に予め分解能の変化量の閾値を設定しておき、閾値を超えた場合のみ、流れ方向の分解能を画像処理部(9)に送信することができる。
【0049】
例えば、分解能の変化の閾値を±0.000010mm/とした場合、下流側ペーパーロール(8)がスリップしたことで流れ方向の分解能が、0.1000000mm/画素から0.100015mm/画素に変化した時、コントローラ(14)から画像処理部(9)に分解能が送信され更新される。しかし、例えば、0.1000000mm/画素から0.100008mm/画素に分解能が変化した場合、閾値より変化した分解能は小さいため、画像処理部(9)には分解能を送信しないように設定することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 模様(すき入れ模様、印刷模様)
2 連続用紙
3 枚葉紙単位の領域
4 中点
5 LED照明
6 ラインカメラ
7 エンコーダ
8 下流側ペーパーロール
9 画像処理部
10 上流側ペーパーロール
11 ラインカメラ撮像領域
12 エンコーダのコロ
13 非接触レーザー速度計
14 コントローラ
15 レーザー光
16 散乱光
17 光センサー
18 最もプラス側に位置したすき入れ模様