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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023060932
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】脱穀装置
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/22 20060101AFI20230424BHJP
【FI】
A01F12/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170619
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】木村 敦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】松本 大
(72)【発明者】
【氏名】関 正裕
【テーマコード(参考)】
2B094
【Fターム(参考)】
2B094AA03
2B094EA07
2B094FA02
2B094GA01
2B094GA05
2B094GB00
2B094GC04
(57)【要約】
【課題】トウモロコシのような作物でも、穂軸に穀粒が残る扱ぎ残しの生じ難い脱穀性能を向上させた脱穀装置を提供する。
【解決手段】トウモロコシが第一脱穀部321に掛け止めされ、受網50に押し付けられながら扱胴30とともに回転することで、多くの穀粒が穂軸から脱穀される。多くの穀粒が脱穀されたトウモロコシは、第一脱穀部321から第二脱穀部322へと搬送され、第二脱穀部322と受網50とに挟まれた状態で扱胴30の回転に伴って移動される。第二脱穀部322の反回転方向における長さは、扱胴30の径方向におけるラセン羽根90の先端90aと受網50との隙間(S3)よりも長い。また、第二脱穀部322と受網50との隙間(S2)は、穂軸の直径と略同じ程度か僅かに狭い程度に設定されている。それ故、トウモロコシは第二脱穀部322により受網50に押し付けられた状態で移動され、扱ぎ残しのある穂軸からでも穀粒が脱穀される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の扱胴と、前記扱胴の外周面に沿って間隔を空けて配置された受網とを有し、前記扱胴の回転に応じて作物を搬送しつつ脱穀する脱穀装置であって、
前記扱胴は、
前記外周面に形成された螺旋状のブレードと、
前記扱胴の回転軸線方向において隣り合う前記ブレードの間に配設された扱ぎ部材と、を備え、
前記扱ぎ部材は、
前記扱胴の外周面から遠ざかるにつれ前記扱胴の回転方向と反対の反回転方向に延びるように形成されてなり、前記扱胴の回転に伴い作物を前記受網に押し付けて脱穀する第一脱穀部と、
前記回転方向の上流側で前記第一脱穀部に連続し、前記扱胴の径方向において前記ブレードの先端よりも前記受網側に突出するように形成されてなり、前記扱胴の回転に伴い前記第一脱穀部から搬送される作物を前記受網との間に挟んで脱穀する第二脱穀部と、を有する、
ことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記第二脱穀部は、前記反回転方向における長さが前記径方向における前記ブレードの先端と前記受網との隙間よりも長い、
ことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記第二脱穀部は、前記反回転方向に沿って直線的に延びる天面と、作物を前記受網に押し付けるように前記天面よりも前記受網側に突出する突出部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記扱ぎ部材は、前記回転軸線方向において隣り合う前記ブレード間において前記扱胴の外周面に固定される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記扱胴は、前記回転軸線方向において隣り合う前記ブレード間において前記扱胴の外周面から前記径方向に突出して設けられ、隣り合う前記ブレードを繋いで補強する補強部材を有し、
前記扱ぎ部材は、前記補強部材と係合可能な切欠き部を有し、前記切欠き部を介して前記補強部材に係合した状態で前記ブレードに対して固定される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の脱穀装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用コンバイン等に搭載されて、刈り取られた作物を扱胴の回転により受網との間を搬送しながら脱穀する脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、汎用コンバインは、刈取部により刈り取られた作物を脱穀する脱穀装置を備えている。従来から、回転する筒状の扱胴(ローターとも呼ぶ)の外周面に螺旋状のブレードを設け、隣り合うブレードの間に掛止部材を設けた脱穀装置が提案されている(特許文献1)。一般的に、トウモロコシのような作物は、扱胴が回転する回転方向に対して直交する横向き姿勢で搬送された場合に、扱胴に設けられた扱歯等に引っ掛かり、受網に押し付けられた状態で扱胴に連れ回り脱穀作用を受けやすい。他方、トウモロコシが扱胴の回転方向に対して並行する縦向き姿勢で搬送された場合には、トウモロコシがブレードの間に入り脱穀作用を受けないまま機外に排出されやすい。そこで、特許文献1に記載の脱穀装置では、作物を掛止部材によって受網側に案内することで、トウモロコシのような作物でも脱穀されずに機外に排出されないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-178901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、上記特許文献1に記載の装置では、掛止部材によりトウモロコシを受網側に案内することで、作物が脱穀されないまま機外に排出されることを防止している。しかしながら、従来では脱穀作用が十分でなく、機体外へ排出される作物に「扱ぎ残し」が生じることがあった。
【0005】
そこで、本発明は例えトウモロコシのような作物であっても、扱ぎ残しの生じ難い脱穀性能を向上させた脱穀装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る脱穀装置(3)は、
筒状の扱胴(30)と、前記扱胴の外周面に沿って間隔を空けて配置された受網(50)とを有し、前記扱胴の回転に応じて作物を搬送しつつ脱穀する脱穀装置であって、
前記扱胴は、
前記外周面に形成された螺旋状のブレード(90)と、
前記扱胴の回転軸線方向において隣り合う前記ブレードの間に配設された扱ぎ部材(32)と、を備え、
前記扱ぎ部材は、
前記扱胴の外周面から遠ざかるにつれ前記扱胴の回転方向と反対の反回転方向に延びるように形成されてなり、前記扱胴の回転に伴い作物を前記受網に押し付けて脱穀する第一脱穀部(321)と、
前記回転方向の上流側で前記第一脱穀部に連続し、前記扱胴の径方向において前記ブレードの先端(90a)よりも前記受網側に突出するように形成されてなり、前記扱胴の回転に伴い前記第一脱穀部から搬送される作物を前記受網との間に挟んで脱穀する第二脱穀部(322)と、を有する、
ことを特徴とする。
【0007】
前記第二脱穀部(322)は、前記反回転方向における長さが前記径方向における前記ブレードの先端と前記受網との隙間よりも長い。
【0008】
前記第二脱穀部(322)は、前記反回転方向に沿って直線的に延びる天面(327)と、作物を前記受網に押し付けるように前記天面よりも前記受網側に突出する突出部(330)と、を有する。
【0009】
前記扱ぎ部材(32)は、前記回転軸線方向において隣り合う前記ブレード間において前記扱胴の外周面に固定される。
【0010】
前記扱胴(30)は、前記回転軸線方向において隣り合う前記ブレード間において前記扱胴の外周面から前記径方向に突出して設けられ、隣り合う前記ブレードを繋いで補強する補強部材(35)を有し、
前記扱ぎ部材(32)は、前記補強部材と係合可能な切欠き部(325)を有し、前記切欠き部を介して前記補強部材に係合した状態で前記ブレードに対して固定される。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によると、ブレードの間に配設された扱ぎ部材において、作物を受網に掛けた状態で扱胴と共に回転させて脱穀させる第一脱穀部から搬送される作物が、第二脱穀部により受網との間に挟まれた状態で脱穀される。したがって、例えトウモロコシのような作物であっても扱ぎ残しの生じ難い、脱穀性能を向上させた脱穀装置を提供できる。即ち、脱穀前のトウモロコシがブレードに従って扱ぎ部材へと確実に案内され、扱ぎ部材により受網に押し付けられながら搬送されて、トウモロコシの脱穀作用が促進されるので、脱穀装置の脱穀性能を向上することができる。
【0013】
請求項2に係る本発明によると、第二脱穀部は、反回転方向における長さが扱胴の径方向におけるブレードの先端と受網との隙間よりも長くに形成されているため、脱穀作用がより促進されて、第一脱穀部では脱穀しきれずに扱ぎ残しがある作物であっても穀粒を脱穀することができる。
【0014】
請求項3に係る本発明によると、突出部により第二脱穀部において受網との隙間を狭め、トウモロコシを受網により確実に押し付けながら搬送することができる。これにより、作物が標準より小さいトウモロコシである場合でも、トウモロコシを第二脱穀部と受網とで強く挟んで搬送するので、扱ぎ残しを少なくして脱穀することができるようになる。
【0015】
請求項4に係る本発明によると、扱ぎ部材は回転軸線方向において隣り合うブレード間において扱胴の外周面に固定されるので、扱ぎ部材を扱胴に取り付けることが容易にできる。
【0016】
請求項5に係る本発明によると、扱ぎ部材は補強リブと係合してブレードに取り付けられるので、作物を脱穀する際に係る負荷により撓んで変形し難い。また、扱ぎ部材を取り付ける際の位置決めが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る脱穀装置を用いて好適な汎用コンバインを示す側面図。
図2】脱穀装置を示す側面断面図。
図3】扱胴を示す側面図。
図4】扱胴及び受網を示す正面断面図。
図5】受網の一部を示す斜視図。
図6】補強プレートと着脱縦桟について説明する図。
図7】第一実施形態の扱ぎ部材を示す、(a)側面図、(b)斜視図。
図8】第二実施形態の扱ぎ部材を示す図であり、(a)第二脱穀部に扱胴の回転方向に交差する方向に丸棒部材を設けた場合を示す側面図、(b)第二脱穀部に扱胴の回転方向に交差する方向に丸棒部材を設けた場合を示す斜視図、(c)第二脱穀部に丸棒部材が上面から見て斜めに延設されている場合を示す上面図、(d)第二脱穀部に丸棒部材が上面から見て斜めに延設されている場合を示す側面図、(e)第二脱穀部に扱胴の回転方向に交差する方向に3本の丸棒部材を延設した場合を示す側面図、(f)第二脱穀部に扱胴の回転方向に3本の丸棒部材を延設した場合を示す斜視図。
図9】扱ぎ部材の他の実施形態を示す図であり、(a)第二脱穀部が曲面である場合を示す側面図、(b)第二脱穀部の下流側先端側に突状部材を設けた場合を示す側面図、(c)第二脱穀部の上流側先端に突状部材を設けた場合を示す側面図、(d)第二脱穀部の略中央に突状部材を設けた場合を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面に沿って説明をする。まず、本実施形態の脱穀装置を用いて好適な汎用コンバインについて、図1及び図2を用いて説明する。なお、図1及び図2では説明を理解しやすくするために、後述する受網の図示を省略している。
【0019】
図1に示すように、汎用コンバイン1は、走行機体1Aと、作物(穀稈)を刈り取る刈取部2と、全稈投入される作物から穀粒を脱穀して選別する脱穀装置3と、選別した穀粒を貯溜するグレンタンク4と、該グレンタンク4内の穀粒を機外に排出する排出オーガ5と、脱穀済の排稈を後処理する後処理部6と、運転者が乗車する運転操作部7と、クローラ式の走行部8とを備えて構成されている。
【0020】
刈取部2は、走行機体1Aの前端部に昇降動作可能に連結されるヘッダ9と、ヘッダ9の前端部で未刈り穀稈を分草するデバイダ10(分草体)と、未刈り穀稈を刈り取る刈刃11と、未刈り穀稈や刈り取った穀稈を掻込むリール12と、掻き込まれた穀稈を幅方向の所定箇所に集めるオーガ13と、オーガ13によって集められた穀稈を脱穀装置3に向けて搬送し、脱穀装置3に全稈投入する搬送フィーダ14とを備えて構成されている。
【0021】
脱穀装置3は、図2に示すように、脱穀部20と、脱穀部20の下方に設けられた選別部60とを有しており、脱穀部20によって作物から穀粒を脱粒し、脱穀部20から受網50(後述する図4参照)を通って落下してくる穀粒と包葉との混合物を選別部60によって選別する。本実施形態の脱穀装置3は、作物として穂軸が固く太いトウモロコシ(例えば、デントコーンなど)の脱穀に用いて好適である。
【0022】
脱穀部20は、搬送フィーダ14から搬送されてきたトウモロコシが投入される扱室21と、扱室21の内部に回転自在に支持されて、前後方向に延びる筒状の扱胴30と、扱胴30の下方に取り外し可能に配置された円弧形状の受網50(図4参照)とを有している。本実施形態の場合、詳しくは後述するように、扱胴30には回転軸線方向に複数の扱歯31と扱ぎ部材32とが配設されており、扱胴30の回転に応じて主に扱ぎ部材32と受網50とによってトウモロコシを脱穀する。脱穀された穀粒(コーン粒)及び脱穀後の穂軸は、混在した状態で扱胴30により搬送されながら受網50によって篩にかけられて粗く選別される。
【0023】
選別部60は、受網50の下方に位置する揺動選別体61と、揺動選別体61の前部下方に位置する唐箕ファン62と、を有している。この揺動選別体61は、揺動移送板63、チャフシーブ64、ラック65、ストローラック66を備えて構成されており、受網50から落下する混合物を篩選別するようになっている。また、唐箕ファン62は、揺動選別体61の前部下方から後部上方に向かって起風しており、揺動選別体61上を移動する混合物から包葉などを、排出口69を介して機外へと吹き飛ばして選別するように構成されている。また、排出口69からは脱穀後の穂軸が機外へ排出される。
【0024】
唐箕ファン62の後方には、選別された穀粒をグレンタンク4(図1参照)へと回収する一番ラセン67が設けられていると共に、一番ラセン67の後方側には、送風ファン24を挟んで二番ラセン68が設けられている。この二番ラセン68では、選別不十分な穀粒が回収されて揺動移送板63上もしくは扱室21内へと戻される。
【0025】
次に、扱胴30及び受網50について、図2を参照しながら図3乃至図6を用いて説明する。図3に示すように、扱胴30は、円筒形状の扱胴本体部33と、扱胴本体部33に一体構成された側板34と、回転軸40とを有する。回転軸40は扱胴本体部33に挿通され、扱胴本体部33に対して回転軸線方向に所定間隔隔てて対向して配置された脱穀装置3の前後側壁に回転自在に支持されている。回転軸40の回転に従って、扱胴本体部33と側板34とは一緒に回転する。
【0026】
図3及び図4に示すように、扱胴本体部33の外周面には、搬送フィーダ14から搬送されてきた作物を扱室21の奥に掻き込み搬送するためにラセン羽根90が形成されている。隣り合うラセン羽根90の間(螺旋状のブレード間)には、補強部材として補強リブ35が設けられている。補強リブ35は、隣り合うラセン羽根90の間に回転軸線方向に沿って延設されるようにして、扱胴30の回転方向(周方向)に間隔を空けて複数配設されている。補強リブ35は、ラセン羽根90がトウモロコシを搬送する際に撓み難くなるように(脱穀後の穂軸を搬送する場合を含む)、隣り合うラセン羽根90を接続することで補強している。補強リブ35は、扱胴30(詳しくは回転軸40)の回転軸線に対して平行となるように設けられている。
【0027】
ラセン羽根90には主に稲や麦などを脱穀するために、複数の扱歯31が受網50側(受網側)に向けて突出するようにしてネジ300によって着脱自在に設けられている。扱室21内に掻き込まれた稲や麦などは、ラセン羽根90によって扱胴本体部33に沿って回転軸線方向に搬送される際に、扱歯31によって受網50との間でしごかれて脱穀される。
【0028】
隣り合うラセン羽根90の間には、扱ぎ部材32が着脱自在に扱胴30の外周面に設けられる。本実施形態では、扱室21内に掻き込まれたトウモロコシが、扱ぎ部材32によって受網50に押し付けられながら搬送されることで脱穀され、また扱ぎ残しを少なくするために、扱ぎ部材32と受網50との間に挟まれて搬送されることで脱穀される。本実施形態では、トウモロコシを脱穀する場合に扱歯31が取り外されて扱ぎ部材32が取り付けられ、稲や麦などを脱穀する場合に扱ぎ部材32が取り外されて扱歯31が取り付けられる。
【0029】
即ち、扱ぎ部材32は、上記した扱歯31と交換可能に扱歯31の取り付け孔に固定部材として共通のネジ300によって固定される。図4では、2つの扱歯31を扱ぎ部材32に交換した場合を例に示している。そして、扱ぎ部材32は、補強リブ35と係合してラセン羽根90に取り付けられて、扱胴30の外周面に配設される。勿論、これに限らず、扱ぎ部材32は扱胴30の外周面にネジ等によって固定されるようにしてもよい。ただし、扱ぎ部材32が補強リブ35と係合してラセン羽根90に取り付けられると、トウモロコシを脱穀する際に係る負荷により撓んで変形し難くなるので好ましい。また、扱ぎ部材32を取り付ける際の位置決めが容易となる。さらに、扱歯31に変えて扱ぎ部材32を取り付けることで、扱胴30においてウェイト偏重を生じさせることなく扱ぎ部材32を均等配置することが容易になる。扱ぎ部材32の詳しい構成については後述する(図7(a)及び図7(b)参照)。
【0030】
なお、本実施形態では、扱ぎ部材32が補強リブ35と係合する補強リブ35の近傍でラセン羽根90に取り付けられるようにしたが、これに限らず、補強リブ35の近傍以外の箇所で補強リブ35と係合させることなく取り付けできるようにしてもよい。
【0031】
次に、受網50について、図2を参照しながら図4乃至図6を用いて説明する。図4に示すように、受網50は正面(扱胴30の回転軸線方向)から見て扱胴30下部の外周面に沿って円弧形状に形成されている。
【0032】
図5に示すように、受網50は、複数の縦桟51、52と、複数の横棒53と、枠体54とにより格子状に形成された格子網である。横棒53は扱胴30の回転軸線方向に沿って延びる丸棒部材からなり、扱胴30の周方向に複数の横棒53が並設されている。縦桟51、52は扱胴30の回転方向(周方向)に沿う円弧状の板部材からなり、扱胴30の回転軸線方向に複数の縦桟51、52が並設されている。
【0033】
複数の縦桟51、52には、回転軸線方向に所定の間隔に配置され、両端が枠体54に溶接された複数の溶接縦桟51と、隣り合う溶接縦桟51間に配置されるとともに両端が枠体54に着脱自在に取付けられる複数の着脱縦桟52とが含まれる。即ち、図5に示すように、枠体54、複数の溶接縦桟51及び複数の横棒53を溶接して受網50を構成し、この受網50において隣り合う溶接縦桟51間に着脱縦桟52を着脱自在に取り付ける。着脱縦桟52は受網50の裏側つまり扱胴30に面する側の反対側に、着脱縦桟52の上下両端がネジ56により枠体54に取り付けられている。
【0034】
なお、ここでは説明を省略したが、複数の横棒53に関しても、回転軸線方向の両端が枠体54に溶接された複数の溶接横棒と、隣り合う溶接横棒間に配置されるとともに両端が枠体54に着脱自在に取付けられる複数の着脱横棒とが含まれていてよい。こうすると、目合いのサイズが変更可能となって、受網50は、着脱縦桟52(また着脱横棒)の選択的な着脱(又は位置変更)に基づいて、トウモロコシ以外の作物(例えば、稲、麦、大豆、ソバなど)を脱穀する場合でも使用できるようになるので好ましい。
【0035】
図6に示すように、上記の着脱縦桟52には、複数の横棒53との干渉を回避するための切欠き521が形成され、着脱縦桟52は切欠き521に複数の横棒53が嵌合された状態で枠体54に取り付けられる。また、本実施形態の場合、着脱縦桟52には、補強プレート55がネジ56により着脱自在に取り付けられる。補強プレート55には、着脱縦桟52との間で横棒53を挟持するための溝部55aが形成されている。即ち、着脱縦桟52は補強プレート55を取り付けることにより、切欠き521に嵌合された横棒53に抜止される。したがって、着脱縦桟52はネジ56だけでなく補強プレート55も取り外されていないと、枠体54から取り外されない。
【0036】
上記のように、補強プレート55を着脱縦桟52に取り付けることにより、着脱縦桟52の剛性を向上させることができる。即ち、着脱縦桟52に補強プレート55を取り付けていない場合には、扱胴30と受網50との間に穀粒が滞留すると、滞留した穀粒による荷重によって着脱縦桟52が変形する虞があった。そこで、本実施形態のように、着脱縦桟52に補強プレート55を取り付けた場合には、着脱縦桟52の剛性を向上させることができるので、例え穀粒や穂軸が滞留して受網50に荷重が生じても、着脱縦桟52は変形し難い。また、補強プレート55は、着脱縦桟52の切欠き521に嵌合された着脱横棒が外力で切欠き521から外れるのを防止する。
【0037】
なお、図6に示すように、補強プレート55は扱胴30の回転軸線方向から見て、着脱縦桟52の内周を通る曲線Yよりも扱胴30側に突出するように形成されているのが好ましい。こうすると、回転軸線方向へのトウモロコシの搬送が抑制され、扱胴30と受網50とによるトウモロコシの脱穀を促進することができ有利である。ただし、補強プレート55は、回転方向(矢印X方向)上流側の先端エッジ部550が曲線Yよりも扱胴30側に突出しないように形成されているのが望ましい。これは、仮に先端エッジ部550が曲線Yよりも扱胴30側に突出していると、脱穀され回転方向に搬送される穀粒が先端エッジ部550に当たることで、穀粒が欠けたり割れたりする虞があるからである。これに対し、本実施形態では、先端エッジ部550が曲線Yよりも扱胴30側に突出していないために、穀粒が先端エッジ部550に当たっても欠けや割れが生じ難くなる。
【0038】
<第一実施形態>
次に、扱ぎ部材32について、図3図4を参照しながら図7(a)及び図7(b)を用いて説明する。本実施形態では、上述したように、主にトウモロコシを脱穀するために、扱胴30には複数の扱ぎ部材32が隣り合うラセン羽根90の間に着脱自在に配設されている。なお、扱ぎ部材32は例えば扱胴30の回転軸40の回転中心を基準とした所定の位相角毎(例えば45°毎)に配置されるのが好ましい。
【0039】
扱ぎ部材32は、第一脱穀部321と、第二脱穀部322と、側壁部323、324とを有する。第一脱穀部321と第二脱穀部322とは板材を折り曲げることによって形成され、その板材が回転軸線方向の両端部において側壁部323、324によって保持されることで扱ぎ部材32として一体的に構成されている。側壁部323、324には、扱ぎ部材32をネジ300によってラセン羽根90に取り付けるための取付孔326と、上記した補強リブ35と係合可能な切欠き部325とが形成されている。
【0040】
図7(a)に示すように、第一脱穀部321は回転方向(矢印X方向)の下流側において、扱胴30の外周面から遠ざかるにつれ扱胴30の回転方向と反対の反回転方向に傾斜して形成されている。第一脱穀部321では、トウモロコシを受網50に掛けた状態で扱胴30と共に回転させて脱穀する。即ち、第一脱穀部321ではトウモロコシが扱胴30側から受網50へと搬送され、トウモロコシが受網50に掛かった状態で押し付けられながら扱胴30とともに回転することで脱穀される。
【0041】
他方、第二脱穀部322は回転方向の上流側で第一脱穀部321に連続し、扱胴30の径方向においてラセン羽根90の先端90aよりも受網50側に突出するように形成されている。第二脱穀部322では、第一脱穀部321から搬送されてくるトウモロコシを受網50との間に挟んだ状態で扱胴30の回転に伴って反回転方向に回転させながら移動させることにより、第一脱穀部321では脱穀しきれずに穂軸に残った扱ぎ残しの穀粒を脱穀できるようにしている。
【0042】
第二脱穀部322の反回転方向における長さは、第一脱穀部321と第二脱穀部322とを形成する板材の厚さよりも長く、また脱穀するトウモロコシの穂軸の直径よりも長い。本実施形態では、第二脱穀部322の反回転方向における長さが、扱胴30の径方向におけるラセン羽根90の先端90aと受網50との隙間(S3、図4参照)よりも長くに形成されている。これにより、トウモロコシが第二脱穀部322と受網50とにより挟まれた状態で搬送される時間を確保している。第二脱穀部322の長さは、例えば「50mm」に設定される。
【0043】
ラセン羽根90の先端90aと受網50との隙間(S3)は、図4に示すように、扱歯31の先端31aと受網50との隙間(S1、例えば6mm)よりも長く、また第二脱穀部322と受網50との隙間(S2、例えば22mm)よりも長く(S1<S2<S3)、例えば「28mm」に設定される。他方、第二脱穀部322と受網50との隙間(S2)は、脱穀するトウモロコシの穂軸の直径と略同じ程度か、それより僅かに狭い(例えば、1~3mm程度狭い)程度に設定される。
【0044】
以上のように、本実施形態では、扱ぎ部材32が隣り合うラセン羽根90の間に配設され、トウモロコシが扱ぎ部材32の第一脱穀部321に掛け止めされ、トウモロコシが受網50に押し付けられながら扱胴30の回転に従って移動される。これによると、脱穀前のトウモロコシをラセン羽根90によって扱ぎ部材32に確実に案内することができ、扱ぎ部材32でトウモロコシを受網50に押し付けるので、脱穀性能が良い。それ故、多くの穀粒が穂軸から脱穀される。そして、第一脱穀部321により多くの穀粒が脱穀されたトウモロコシは、第一脱穀部321から第二脱穀部322へと搬送され、第二脱穀部322と受網50とに挟まれた状態で扱胴30の回転に伴って移動される。第二脱穀部322の反回転方向における長さは、第一脱穀部321と第二脱穀部322とを形成する板材の厚さよりも長く、また脱穀するトウモロコシの穂軸の直径よりも長い。また、第二脱穀部322と受網50との隙間(S2)がトウモロコシの穂軸の直径と略同じ程度かそれより僅かに狭い程度に設定されている。それ故、第二脱穀部322と受網50とに挟まれた状態で移動される際に、トウモロコシを受網50に確実に押し付けることができ、もって扱ぎ残しのある穂軸から穀粒を脱穀することができるようになる。このようにして、例え穂軸が固く太いトウモロコシのような作物であっても、扱ぎ残しを減らすことができる。
【0045】
<第二実施形態>
上述した実施形態では、トウモロコシが第二脱穀部322と受網50とに挟まれながら搬送されるが、生育のバラツキによって標準より小さいトウモロコシであると、トウモロコシが第二脱穀部322と受網50とに弱く挟まれた状態で搬送されてしまう。それ故、標準のトウモロコシに比べて扱ぎ残しが多いまま排出され得る。そこで、標準より小さいトウモロコシであっても、できる限り扱ぎ残しを少なくして脱穀できるようにすることが望まれる。以下、それを実現するための第二実施形態の扱ぎ部材32A~32Hについて、図3図4を参照しながら図8(a)乃至図9(d)を用いて説明する。
【0046】
図8(a)及び図8(b)に示す扱ぎ部材32Aの場合、第二脱穀部322は、反回転方向に沿って直線的に延びる天面327と、受網50との間隔(S2、図4参照)を狭めるように天面327よりも受網側に突出して形成され、トウモロコシを受網50に押し付ける突出部としての丸棒部材330を有する。扱ぎ部材32Aは、上述した第一実施形態の扱ぎ部材32に1本の丸棒部材330を第二脱穀部322の上面に溶接によって一体に形成したものである。丸棒部材330は、第二脱穀部322において扱胴30の回転方向(矢印X方向)の略中央に、扱胴30の回転方向に交差する方向に延設されている。第二脱穀部322の上面に丸棒部材330を溶接することで、丸棒部材330の直径分だけ(例えば、1~3mm)、丸棒部材330を溶接していない上述した扱ぎ部材32の場合に比べて、第二脱穀部322との隙間(S2、図4参照)を狭くし得る。
【0047】
この扱ぎ部材32Aでは、側壁部323、324に形成された切欠き部325が側面から見て、少なくとも一部が重なり合わないように形成されている。それ故、扱ぎ部材32Aは、隣り合うラセン羽根90の間に、扱胴30の回転軸線に対して所定の角度となるように取り付けられる。これにより、丸棒部材330も扱胴30の回転軸線に対して所定の角度となる。なお、図8(e)に示す扱ぎ部材32Cのように、丸棒部材330は複数が平行に溶接されていてもよい。
【0048】
図8(c)及び図8(d)に示すように、扱ぎ部材32Bは、上記した扱ぎ部材32Aと同様に、1本の丸棒部材330を第二脱穀部322の上面に溶接によって一体に形成したものであるが、丸棒部材330が上面から見て第二脱穀部322において斜めに延設されている点が異なる。この扱ぎ部材32Bでも、側壁部323、324に形成された切欠き部325が側面から見て、少なくとも一部が重なり合わないように形成されているので、ラセン羽根90の間に、扱胴30の回転軸線に対して所定の角度となるように取り付けられる。その場合に、丸棒部材330は扱胴30の回転軸線に対して平行となるように、第二脱穀部322において斜めに形成されている。
【0049】
なお、図8(e)に示す扱ぎ部材32Cのように、上記した丸棒部材330は、複数(ここでは3本)が第二脱穀部322の上面に溶接によって一体に形成されてもよい。また、図8(f)に示す扱ぎ部材32Dのように、複数(ここでは3本)の丸棒部材330が第二脱穀部322において扱胴30の回転方向に延設されていてもよい。
【0050】
上記した扱ぎ部材32A~32Dでは、第二脱穀部322において丸棒部材330により受網50との隙間(S2、図4参照)が狭くなることで、例えば生育にバラツキがあって標準より小さいトウモロコシであっても、丸棒部材330により受網50に押し付けられて強く挟まれた状態で搬送される。これにより、標準より小さいトウモロコシであっても扱ぎ残しを少なくして脱穀することができる。また、こうした扱ぎ部材32Aは、図7(b)に示した扱ぎ部材32に丸棒部材330を溶接するだけで、トウモロコシの種類に応じた最適な隙間(S2)を形成可能な交換部品としての扱ぎ部材を形成できるので好ましい。
【0051】
ところで、第二脱穀部322において受網50との隙間(S2、図4参照)を狭くするには、上述したように第二脱穀部322に丸棒部材330を溶接することに限られない。受網50との間隔(S2、図4参照)を狭め、トウモロコシを受網50に押し付けるように案内することができるならば、上記した丸棒部材330を用いなくてもよい。そうした場合の実施形態を、図9(a)乃至図9(d)に示す。
【0052】
図9(a)に示す扱ぎ部材32Eは、第二脱穀部322が扱胴30の回転方向(矢印X方向)において略中央で上流側や下流側よりも受網50側に突出するように(つまりは受網50との隙間が狭くなるように)、曲線形状に形成されたものである。
【0053】
図9(b)に示す扱ぎ部材32Fは、扱胴30の回転方向(矢印X方向)において第二脱穀部322の下流側が天面327よりも受網50側に突出するように、突出部としての突状部材360を設けたものである。
【0054】
図9(c)に示す扱ぎ部材32Gは、扱胴30の回転方向(矢印X方向)において第二脱穀部322の上流側が天面327よりも受網50側に突出するように、突出部としての突状部材370を設けたものである。この場合は、例えば1つの板状部材において第二脱穀部322の上流側を天面327よりも受網50側に突出するように折り曲げればよく、突状部材370を溶接等しなくて済むので、他に比べると形成が容易である。
【0055】
図9(d)に示す扱ぎ部材32Hは、扱胴30の回転方向(矢印X方向)において第二脱穀部322の略中央に、突出部として断面が三角形状の突状部材380を設けたものである。なお、この場合、例えば1つの板状部材において第二脱穀部322の中央を天面327よりも受網50側に突出するように折り曲げて形成するようにしてもよい。
【0056】
以上のようにして、第二脱穀部322において受網50との隙間を狭くすることで、標準より小さいトウモロコシであっても扱ぎ残しを少なくして脱穀することができる。
【符号の説明】
【0057】
3…脱穀装置
30…扱胴
32…扱ぎ部材
35…補強リブ(補強部材)
50…受網
90…ラセン羽根(ブレード)
90a…ブレードの先端
300…ネジ(固定部材)
321…第一脱穀部
322…第二脱穀部
325…切欠き部
327…天面
330…丸棒部材(突出部)
360、370、380…突状部材(突出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9