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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061087
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】光学系及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 17/08 20060101AFI20230424BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20230424BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20230424BHJP
【FI】
G02B17/08
B23K26/064 Z
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170863
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】百村 和司
【テーマコード(参考)】
2H087
4E168
【Fターム(参考)】
2H087KA26
2H087PA02
2H087PB02
2H087TA01
2H087TA02
4E168AE01
4E168CB07
4E168DA02
4E168DA24
4E168DA32
4E168DA45
4E168EA11
4E168EA12
4E168HA01
4E168JA12
4E168JA14
4E168JA15
4E168KA13
(57)【要約】
【課題】 レーザ加工装置の光学系を小型化し、レーザ加工の安定性を高めることが可能な光学系及びレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】 被加工物の加工に用いられる加工レンズ(26)に対して光を中継する光学系(30、30A及び30B)であって、空間光変調器(24)と、空間光変調器と加工レンズとの間に配置された第2レンズ(L2)とを備え、第2レンズの焦点距離をf、空間光変調器から加工レンズの加工レンズ瞳への投影倍率をMとした場合に、第2レンズから加工レンズ瞳までの距離Dが、D=f-Mf、空間光変調器から第2レンズまでの距離D1が、D1=f-f/Mであり、空間光変調器が加工レンズの加工レンズ瞳と共役関係となる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の加工に用いられる加工レンズに対して光を中継する光学系であって、
空間光変調器と、
前記空間光変調器と前記加工レンズとの間に配置された第2レンズとを備え、
前記第2レンズの焦点距離をf、前記空間光変調器から前記加工レンズの加工レンズ瞳への投影倍率をMとした場合に、
前記第2レンズから前記加工レンズ瞳までの距離Dが、D=f-Mf
前記空間光変調器から前記第2レンズまでの距離D1が、D1=f-f/Mであり、前記空間光変調器が前記加工レンズの加工レンズ瞳と共役関係となる、光学系。
【請求項2】
前記空間光変調器より上流に配置された第1レンズを備え、
前記第1レンズと前記第2レンズとがアフォーカル光学系を構成する、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記空間光変調器に入射する光が通過し、かつ、前記空間光変調器に入射した後前記空間光変調器により反射された反射光が通過するように配置された第1レンズを備え、
前記第1レンズと前記第2レンズとがアフォーカル光学系を構成する、請求項1に記載の光学系。
【請求項4】
前記空間光変調器が集光作用を有しており、前記空間光変調器の焦点距離fが、f=-f/Mである、請求項1に記載の光学系。
【請求項5】
前記加工レンズと、請求項1から4のいずれか1項に記載の光学系とを備えるレーザ加工装置であって、
前記空間光変調器は、前記被加工物の内部に集光点を合わせて照射され、前記被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するためのレーザ光を変調し、
前記光学系は、前記空間光変調器によって変調された前記レーザ光を前記加工レンズに中継する、レーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学系及びレーザ加工装置に係り、特に被加工物にレーザ光を集光させてレーザ加工を行う光学系及びレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより、被加工物の切断予定ラインに沿って、被加工物の内部に切断の起点となる切断起点領域を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のレーザ加工装置では、4Fレンズユニットの一対のレンズが、反射型空間光変調器の反射面と集光レンズユニットの入射瞳面とが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-131942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなレーザ加工装置には、集光レンズユニットのような加工光学系に加えて、観察光学系及びAF(Automatic Focus)光学系等の光学系(以下、付帯光学系という。)が設けられる。上記のような付帯光学系は、4F光学系と加工光学系との間に設ける必要がある。
【0006】
図10は、レーザ加工装置の光学系の例を示す図である。図10において、一対のレンズL1及びL2は、アフォーカル光学系(4F光学系)を構成している。一対のレンズL1及びL2のうち、加工レンズ瞳26aから遠い側のレンズを第1レンズL1、近い側のレンズを第2レンズL2とし、第1レンズL1及び第2レンズL2の焦点距離をf及びfとする。
【0007】
図10に示すように、4F光学系を用いた光学系では、付帯光学系を設けるためのスペースを確保するため、4F光学系の構成する一対のレンズのうち、加工レンズ瞳26aに近い側の第2レンズL2の焦点距離fを長くする必要がある。
【0008】
以下、レーザ加工装置の光学系のサイズについて説明する。空間光変調器24から加工レンズ瞳26aへの倍率Mは、空間光変調器24と加工レンズ瞳26aの大きさによってほぼその範囲が決められる。空間光変調器24から加工レンズ瞳26aへの倍率Mは下記の式(1)により表される。
【0009】
【数1】
【0010】
図10に示すように、加工レンズ瞳26aは第2レンズL2の後側焦点位置に配置されており、空間光変調器24は第1レンズL1の前側焦点位置に配置されている。すなわち、空間光変調器24と加工レンズ瞳26aとは共役関係にある。したがって、空間光変調器24から加工レンズ瞳26aまでの距離Lは下記の式(2)により表される。
【0011】
L=2×(f+f) …(2)
式(1)に示すように、倍率Mが決まると第1レンズL1の焦点距離fが定まる。そして、第2レンズL2と加工レンズ瞳26aとの間に付帯光学系を設けるために、第2レンズL2の焦点距離fを長くすると、式(1)から必然的に第1レンズL1の焦点距離fが大きくなる。このため、式(2)で示されるように、空間光変調器24から加工レンズ瞳26aまでの距離Lが長くなり、レーザ加工装置の光学系が大型化する。
【0012】
第2レンズL2の焦点距離fと倍率Mをパラメータとして距離Lを表すと、下記の式(3)が得られる。
【0013】
【数2】
【0014】
なお、Dは、第2レンズL2から加工レンズ瞳26aまでの距離であり、図10に示す例では、第2レンズL2の焦点距離fと等しい。
【0015】
ここで、f=200mm、M=-2/3とすると、式(1)からf=300mmとなり、式(3)からL=1000mmとなる。
【0016】
また、f=300mm、M=-2/3とすると、式(3)からL=1500mmとなり、レーザ加工装置の光学系の全長は極めて大きくなる。
【0017】
上記のように、レーザ加工装置の光学系の全長が大きくなると、光学素子の角度誤差などの影響を受けやすくなり、レーザ加工の安定性を損なう場合がある。さらに、レーザ加工装置の熱膨張による影響を受けやすくなり、レーザ加工の安定性を損なう場合がある。
【0018】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、レーザ加工装置の光学系を小型化し、レーザ加工の安定性を高めることが可能な光学系及びレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、被加工物の加工に用いられる加工レンズに対して光を中継する光学系であって、空間光変調器と、空間光変調器と加工レンズとの間に配置された第2レンズとを備え、第2レンズの焦点距離をf、空間光変調器から加工レンズの加工レンズ瞳への投影倍率をMとした場合に、第2レンズから加工レンズ瞳までの距離Dが、D=f-Mf、空間光変調器から第2レンズまでの距離D1が、D1=f-f/Mであり、空間光変調器が加工レンズの加工レンズ瞳と共役関係となる。
【0020】
本発明の第2の態様に係る光学系は、第1の態様において、空間光変調器より上流に配置された第1レンズを備え、第1レンズと第2レンズとがアフォーカル光学系を構成する。
【0021】
本発明の第3の態様に係る光学系は、第1の態様において、空間光変調器に入射する光が通過し、かつ、空間光変調器に入射した後空間光変調器により反射された反射光が通過するように配置された第1レンズを備え、第1レンズと第2レンズとがアフォーカル光学系を構成する。
【0022】
本発明の第4の態様に係る光学系は、第1の態様において、空間光変調器が集光作用を有しており、空間光変調器の焦点距離fが、f=-f/Mである。
【0023】
本発明の第5の態様は、加工レンズと、第1から第4の態様のいずれかの光学系とを備えるレーザ加工装置であって、空間光変調器は、被加工物の内部に集光点を合わせて照射され、被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するためのレーザ光を変調し、光学系は、空間光変調器によって変調されたレーザ光を加工レンズに中継する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、空間光変調器から加工レンズ瞳までの距離を短縮することができ、レーザ加工の安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工装置を示す図である。
図2図2は、制御装置を示すブロック図である。
図3図3は、ウェーハ内部の集光点近傍に形成されるレーザ加工領域を説明する概念図である。
図4図4は、ウェーハ内部の集光点近傍に形成されるレーザ加工領域を説明する概念図である。
図5図5は、ウェーハ内部にレーザ加工領域を多層状に形成した状態を説明する概念図である。
図6図6は、本発明の第1の実施形態に係るリレー光学系の例を示す図である。
図7図7は、本発明の第2の実施形態に係るリレー光学系の例を示す図である。
図8図8は、本発明の第3の実施形態に係るレーザ加工装置を示す図である。
図9図9は、本発明の第3の実施形態に係るリレー光学系の例を示す図である。
図10図10は、レーザ加工装置の光学系の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に従って本発明に係る光学系及びレーザ加工装置の実施の形態について説明する。
【0027】
[第1の実施形態]
(レーザ加工装置)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工装置を示す図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係るレーザ加工装置10は、ステージ12と、加工装置本体(光学系ユニット)20と、加工レンズ26と、制御装置50とを備えている。なお、本実施形態では、加工装置本体20と制御装置50とが別々に構成される場合を例示したが、この構成に限らず、加工装置本体20は制御装置50の一部又は全部を含んでいてもよい。
【0029】
ステージ12は、被加工物を吸着保持するものである。ステージ12は、ステージ駆動機構28(図2参照)によりX方向及びθ方向に移動可能に構成される。ステージ駆動機構28としては、例えば、ボールねじ機構、リニアモータ機構等の種々の機構にて構成することができる。ステージ駆動機構28の動作は、制御装置50(図2の移動制御部54)により制御される。
【0030】
なお、図1においては、XYZの3方向は互いに直交し、このうちX方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。また、θ方向は、鉛直方向軸(Z軸)を回転軸とする回転方向である。
【0031】
本実施形態では、被加工物として、シリコンウェーハ等の半導体ウェーハ(以下、ウェーハという。)Wが適用される。ウェーハWは、格子状に配列された切断予定ラインによって複数の領域に区画され、この区画された各領域に半導体チップを構成する各種デバイスが形成されている。なお、本実施形態においては、被加工物としてウェーハWを適用した場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ガラス基板、圧電セラミック基板、ガラス基板なども適用することができる。
【0032】
ウェーハWは、デバイスが形成された表面(デバイス面)に粘着材を有するバックグラインドテープ(BGテープ)が貼付され、裏面が上向きとなるようにステージ12に載置される。ウェーハWの厚さは、特に制限はないが、一例で700μm以上、又は700μm~800μmである。
【0033】
なお、ウェーハWは、一方の面に粘着材を有するダイシングテープが貼付され、このダイシングテープを介してフレームと一体化された状態でステージ12に載置されるようにしてもよい。
【0034】
加工装置本体20は、筐体21と、レーザ光源22と、空間光変調器24と、リレー光学系30と、ビームエキスパンダ32と、λ/2波長板34とを備えている。
【0035】
筐体21の内部には、レーザ光源22、空間光変調器24、リレー光学系30、ビームエキスパンダ32、及びλ/2波長板34が配置される。なお、レーザ光源22は、筐体21の外部(例えば、筐体21の天面や側面など)に配置されていてもよい。また、筐体21の底面には、加工レンズ26が着脱自在に取り付けられる。
【0036】
加工装置本体20は、本体駆動機構29(図2参照)によりY方向及びZ方向に移動可能に構成される。本体駆動機構29としては、例えば、ボールねじ機構、リニアモータ機構等の種々の機構にて構成することができる。本体駆動機構29の動作は、制御装置50(図2の移動制御部54)により制御される。これにより、ウェーハWにおける加工位置(レーザ加工領域を形成する位置)に応じて、加工装置本体20をY方向に移動させることができると共に、加工装置本体20をZ方向に移動させることができる。そのため、加工レンズ26により集光されるレーザ光LBの集光点の位置を変化させて、レーザ加工領域をウェーハWの所望の位置に形成することができる。
【0037】
レーザ光源(IR(InfraRed)レーザ光源)22は、ウェーハWの内部にレーザ加工領域を形成するための加工用のレーザ光LBを出射(照射)する。レーザ光源22によるレーザ光LBの出射動作は、制御装置50(図2のレーザ制御部56)により制御される。レーザ光LBの条件としては、例えば、光源が半導体レーザ励起Nd:YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ、波長が1.1μm、レーザ光LBスポット断面積が3.14×10-8cm、発振形態がQスイッチパルス、繰り返し周波数が80kHz~200kHz、パルス幅が180ns~370ns、出力が8Wである。
【0038】
レーザ光源22から出射されたレーザ光LBは、全反射ミラー36により反射されてビームエキスパンダ32に到達する。ビームエキスパンダ32は、レーザ光源22から出射されたレーザ光LBを空間光変調器24のために適切なビーム径に拡大する。
【0039】
ビームエキスパンダ32により調整されたレーザ光LBは、全反射ミラー38により反射されてλ/2波長板34を経て空間光変調器24に到達する。λ/2波長板34は、空間光変調器24へのレーザ光LB入射偏光面を調整する。
【0040】
空間光変調器24は、2次元的に配列された複数の画素(微小変調素子)からなる光変調面を備えており、光変調面に入射した光の位相を画素毎に変調する位相変調型の空間光変調器である。空間光変調器24としては、例えば、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)が用いられる。空間光変調器24は、後述する空間光変調器制御部58により設定された所定の変調パターンに基づき、光変調面に入射した光の位相を画素毎に変調して、変調後の光を所定の方向に向けて出射する。
【0041】
空間光変調器24の動作、及び空間光変調器24で呈示される変調パターンは、制御装置50(図2の空間光変調器制御部58)によって制御される。変調パターンは、空間光変調器24の光変調面を構成する複数の画素のそれぞれに対応する制御値(位相変化量)が2次元的に分布するパターン(2次元情報)であってもよいし、変調領域内(光変調面)の変調をある関数で表したときの係数情報のようなものであってもよい。
【0042】
空間光変調器24は、加工レンズ26のレンズ瞳(射出瞳)26aと光学的に共役な位置に配置されている。
【0043】
光学系(リレー光学系)30は、空間光変調器24によって変調されたレーザ光LBを加工レンズ26に中継するための光学系であり、λ/2波長板34と加工レンズ26との間のレーザ光LBの光路に設けられており、空間光変調器24を含んでいる。リレー光学系30は、少なくとも1つのレンズL2を含んでいる。リレー光学系30は、両側テレセントリックな光学系を構成しており、空間光変調器24で変調されたレーザ光LBを加工レンズ26に投影する。
【0044】
このリレー光学系30は、両側テレセントリックな縮小光学系であり、その投影倍率M(以下、単に倍率ともいう。)の絶対値は1より小さくなっており、一例でM=-2/3である。
【0045】
加工レンズ26は、レーザ光LBをウェーハWの内部に集光させる対物レンズ(集光光学系)である。この加工レンズ26の開口数(NA)は、例えば0.65である。
【0046】
なお、図1に示す全反射ミラー36から46は、レーザ光LBの光路を曲げるために配置されるものであり、その個数及び配置は図1に示す例に限定されない。
【0047】
また、図示を省略したが、加工装置本体20には、ウェーハWとのアライメントを行うためのアライメント光学系、観察光学系及びウェーハWと加工レンズ26との間の距離(ワーキングディスタンス)を一定に保つためのAF光学系等が備えられている。
【0048】
(制御装置)
図2は、制御装置50を示すブロック図である。制御装置50は、例えばパーソナルコンピュータ又はマイクロコンピュータなどの汎用のコンピュータによって実現される。
【0049】
制御装置50は、プロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit))、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ストレージデバイス60及び入出力インターフェース等を備えている。
【0050】
制御装置50では、ストレージデバイス60に記憶されている制御プログラム等の各種プログラムがRAMに展開され、RAMに展開されたプログラムがプロセッサによって実行されることにより、図2に示した制御装置50内の各部の機能が実現され、入出力インターフェースを介して各種の演算処理や制御処理が実行される。
【0051】
図2に示すように、制御装置50は、制御部52、移動制御部54、レーザ制御部56及び空間光変調器制御部58として機能する。
【0052】
制御部52は、制御装置50を構成する各部(移動制御部54、レーザ制御部56、空間光変調器制御部58、及びストレージデバイス60を含む)を統括的に制御する。
【0053】
移動制御部54は、ステージ12と加工装置本体20との相対移動を制御するものである。移動制御部54は、ステージ12のX方向及びθ方向の移動を制御する制御信号をステージ駆動機構28に出力すると共に、加工装置本体20のY方向及びZ方向の移動を制御する制御信号を本体駆動機構29に出力する。
【0054】
レーザ制御部56は、レーザ光LBの出射を制御するものである。レーザ制御部56は、レーザ光LBの波長、パルス幅、強度、出射タイミング、及び繰り返し周波数などを制御する制御信号をレーザ光源22に出力する。
【0055】
空間光変調器制御部58は、空間光変調器24の動作を制御する制御信号を空間光変調器24に出力する。すなわち、空間光変調器制御部58は、所定の変調パターンを空間光変調器24に呈示させる制御を行う。空間光変調器制御部58は、空間光変調器24に表示させる変調パターンを適宜設定することにより、レーザ光LBが変調(例えば、レーザ光Lの強度、振幅、位相、偏光等が変調)可能となる。また、空間光変調器制御部58は、ウェーハWの内部におけるレーザ光LBの集光点を合わせる位置で発生するレーザ光LBの収差が所定の収差以下となるように、レーザ光LBを変調するための変調パターンを空間光変調器24に設定するようにしてもよい。
【0056】
ストレージデバイス60は、制御装置50の制御プログラム等を含む各種のデータを格納する装置であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)を含んでいる。
【0057】
(レーザ加工)
図3及び図4は、ウェーハ内部の集光点近傍に形成されるレーザ加工領域を説明する概念図である。
【0058】
図3は、ウェーハWの内部に入射されたレーザ光LBが集光点にレーザ加工領域Pを形成した状態を示している。図4は、パルス状のレーザ光LBの下でウェーハWが水平方向に移動され、不連続なレーザ加工領域P、P、・・・が並んで形成された状態を表している。この状態でウェーハWはレーザ加工領域Pを起点として自然に割断するか、或いは僅かな外力を加えることによってレーザ加工領域Pを起点として割断される。この場合、ウェーハWは表面や裏面にはチッピングが発生せずに容易にチップに分割される。
【0059】
図5は、ウェーハ内部にレーザ加工領域を多層状に形成した状態を説明する概念図である。
【0060】
ウェーハWの厚さが厚い場合で、レーザ加工領域Pの層が1層では割断できないときには、図5に示すように、レーザ光LBの集光点をウェーハWの厚さ方向に変化させて、レーザ光LBをウェーハWに対して複数回走査することにより、レーザ加工領域Pを多層状に形成することができる。このようにして多層状に形成されたレーザ加工領域Pをきっかけとして、ウェーハWは、自然に割断するか、或いは僅かな外力を加えることにより割断される。
【0061】
なお、図3から図5ではパルス状のレーザ光LBで不連続なレーザ加工領域P、P、…を形成した状態を示したが、レーザ光LBの連続波の下で連続的なレーザ加工領域Pを形成してもよい。
【0062】
(リレー光学系)
図6は、本発明の第1の実施形態に係るリレー光学系の例を示す図である。なお、図6では、図1に示したリレー光学系30のうち、全反射ミラー40、42、44及び46を省略する。
【0063】
図6に示すように、リレー光学系30では、加工レンズ瞳26aから遠い上流側から順に、空間光変調器24及びレンズ(以下、第2レンズという。)L2が配置されている。
【0064】
以下、空間光変調器24から加工レンズ瞳26aへの倍率をMとし、第2レンズL2の焦点距離をfとする。
【0065】
図6に示すように、第2レンズL2から加工レンズ瞳26aまでの距離DがD=f-Mfとなるように、第2レンズL2の焦点距離fを定める。また、加工レンズ瞳26aと空間光変調器24が共役関係となるように、空間光変調器24を第2レンズL2の上流側D1=f+f=f-f/Mの距離に配置する。
【0066】
そして、本実施形態に係る空間光変調器24には、その焦点距離fがf=-f/Mとなるようにパワーを持たせている。空間光変調器24において、焦点距離f=-f/Mとなるようにパワーを持たせるためのパターンをパターン1とする。
【0067】
本実施形態では、空間光変調器24による波面操作はパターン1に所定の変調パターンを加算することによって実現する。すなわち、本実施形態では、空間光変調器24にパワーをもたせる機能と空間光変調器24の変調機能を兼用させる。
【0068】
以下、本実施形態に係るリレー光学系30のサイズについて説明する。図6に示すように、第2レンズL2から加工レンズ瞳26aまでの距離Dは、D=f-Mfである。これを変形すると、下記の式(4)が得られる。
【0069】
【数3】
【0070】
空間光変調器24の焦点距離f=-f/Mに式(4)を代入すると、下記の式(5)が得られる。
【0071】
【数4】
【0072】
したがって、空間光変調器24から加工レンズ瞳26aまでの距離Lは、下記の式(6)により表される。
【0073】
【数5】
【0074】
式(6)において、第2レンズL2から加工レンズ瞳26aまでの距離D=200mm、倍率M=-2/3とすると、L=500mmとなり、空間光変調器24から加工レンズ瞳26aまでの距離Lが図10に示した例の1/2となる。
【0075】
本実施形態によれば、空間光変調器24にパワーを持たせることにより、空間光変調器24から加工レンズ瞳26aまでの距離Lを短縮することができる。これにより、レーザ加工装置の光学系を小型化し、レーザ加工の安定性を高めることができる。
【0076】
さらに、本実施形態によれば、空間光変調器24と加工レンズの間には4F光学系は存在せず、第2レンズL2があるのみとなるので、コンパクトかつ簡素な光学系を実現することができる。
【0077】
(数値例)
図6から、空間光変調器24から加工レンズ瞳26aまでの距離Lを第2のレンズL2の焦点距離fを用いて表すと、下記の式(7)が得られる。
【0078】
【数6】
【0079】
式(7)において、M=-2/3、f=200mmとすると、L=833.33mmとなる。そして、第2レンズL2と加工レンズ瞳26aとの間の距離Dは、D=f・(1-M)=333mmとなる。
【0080】
一方、図10に示した光学系では、第2レンズL2と加工レンズ瞳26aとの間の距離D=fであるので、空間光変調器24から加工レンズ瞳26aまでの距離Lは、下記の式(8)により表される。
【0081】
【数7】
【0082】
第1の実施形態では、第2のレンズL2から加工レンズ瞳26aまでの距離Dは、式(9)により表される。
【0083】
D=f・(1-M) …(9)
図10に示した4F光学系では、第2のレンズL2から加工レンズ瞳26aまでの距離Dは、D=fであったが、第1の実施形態のようにD=f・(1-M)とするためには、式(8)でfの代わりに式(9)を代入する。これにより、式(10)が得られる。
【0084】
【数8】
【0085】
ここで、L’は、図10に示した4F光学系において、第2のレンズL2から加工レンズ瞳26aまでの距離D=f・(1-M)を実現するために必要な空間光変調器24から加工レンズ瞳26aまでの距離である。
【0086】
式(10)において、M=-2/3、f=200mmとすると、L’=1666.7mmとなる。
【0087】
上記のように、第1の実施形態によれば、空間光変調器24から加工レンズ瞳26aまでの距離を1/2にすることができる。
【0088】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0089】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るリレー光学系の例を示す図である。なお、図7では、図6と同様に、レーザ光LBの光路を曲げるための全反射ミラー40、42、44及び46を省略する。
【0090】
図7に示すように、本実施形態に係るリレー光学系30Aでは、加工レンズ瞳26aから遠い上流側から順に、第1レンズL1、空間光変調器24及び第2レンズL2が配置されている。
【0091】
本実施形態では、上流側の第1レンズL1に空間光変調器24の集光レンズ作用を持たせている。
【0092】
図7に示すように、第1レンズL1から第2レンズL2までの距離はf+fであり、第1レンズL1と第2レンズL2は4F光学系(アフォーカル光学系)を構成する。そして、加工レンズ瞳26aは、第2レンズL2の後側焦点位置F2よりも下流側に-Mfだけ遠ざけて配置される。
【0093】
この場合、図7に示すように、加工レンズ瞳26aと共役な位置P0は、4F光学系の中、すなわち、第1レンズL1と第2レンズL2との間となる。空間光変調器24は加工レンズ瞳26aと共役な位置P0に配置される。
【0094】
具体的には、加工レンズ瞳26aと共役な位置P0は、第1レンズL1の後側焦点位置(第2レンズL2の前側焦点位置)F1から上流側にf/Mの位置となる。
【0095】
なお、本実施形態では、空間光変調器24にパワーを持たせる必要はないので、変調パターンは通常の4F光学系と同じものを用いることができる。
【0096】
図7の第1レンズL1、空間光変調器24及び第2レンズL2の位置関係から、下記の式(11)が得られる。
【0097】
【数9】
【0098】
本実施形態では、空間光変調器24から加工レンズ瞳26aへの倍率Mを確保するためには第1レンズL1の焦点距離fを長くする必要がある。また、空間光変調器24にはレーザ光LBは光変調面に対して斜めに入射する。このため、第2の実施形態では、第1レンズL1が空間光変調器24からの反射光を遮らないように、空間光変調器24とL1の距離dをある程度長くする必要がある。したがって、第1レンズL1の焦点距離fを決める際には、空間光変調器24から加工レンズ瞳26aへの倍率Mと、第1レンズL1と空間光変調器24との間の必要な間隔(距離d)とを勘案することになる。
【0099】
第1レンズL1の焦点距離fと第2レンズL2の焦点距離fが定まると、第1レンズL1に入射するレーザ光LBに必要な入射ビーム径が決まる。したがって、リレー光学系30Aの上流側のアフォーカル光学系又はビームエキスパンダ32で必要なビーム径を作ることができる。
【0100】
以下、本実施形態に係るリレー光学系30のサイズについて説明する。図7に示すように、本実施形態では、第1レンズL1から加工レンズ瞳26aまでの距離Lは、下記の式(12)により表される。
【0101】
L=f+2・f-M・f …(12)
式(12)において、D=200mm、f=230mm、f=120mm、第1レンズL1と空間光変調器24との間の距離d=50mmとすると、L=550mmとなる。
【0102】
本実施形態によれば、第1レンズL1に集光作用を持たせることにより、第1レンズL1から加工レンズ瞳26aまでの距離Lを短縮することができる。これにより、レーザ加工装置の光学系を小型化し、レーザ加工の安定性を高めることができる。また、第1レンズL1に集光作用を持たせることで、空間光変調器24の負担を低減することができる。
【0103】
さらに、本実施形態によれば、空間光変調器24と加工レンズの間には4F光学系は存在せず、第2レンズL2があるのみとなるので、コンパクトかつ簡素な光学系を実現することができる。
【0104】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、第1及び第2の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0105】
図8は、本発明の第3の実施形態に係るレーザ加工装置を示す図である。
【0106】
図8に示すように、本実施形態に係るリレー光学系30Bでは、第1レンズL1が空間光変調器24の光変調面に近接配置されている。すなわち、第1レンズL1は、レーザ光LBが2回通過するように配置されている。
【0107】
図9は、本発明の第3の実施形態に係るリレー光学系の例を示す図である。なお、図9では、図6及び図7と同様に、レーザ光LBの光路を曲げるための全反射ミラー40、42、44及び46を省略する。
【0108】
図9に示すように、本実施形態に係るリレー光学系30Bでは、レーザ光LBは、第1レンズL1を通過した後、空間光変調器24で反射されて再び第1レンズL1を通過する。その後、レーザ光LBは、第2レンズL2を通過して加工レンズ瞳26aに到達する。なお、図9では、レーザ光LBが通過する第1レンズL1を順番に符号L1-1、L1-2で示している。
【0109】
図9に示すように、第1レンズL1-1から第2レンズL2までの距離はf+fであり、第1レンズL1-1及びL1-2と第2レンズL2は4F光学系(アフォーカル光学系)を構成する。そして、加工レンズ瞳26aは、第2レンズL2の後側焦点位置F2よりも下流側に-Mfだけ遠ざけて配置される。
【0110】
また、空間光変調器24は、加工レンズ瞳26aと共役な位置、すなわち、第1レンズL1の後側焦点位置(第2レンズL2の前側焦点位置)F1から上流側にf/Mの位置に配置される。
【0111】
なお、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、空間光変調器24にパワーを持たせる必要はないので、変調パターンは通常の4F光学系と同じものを用いることができる。
【0112】
図9に示すように、本実施形態では、第1レンズL1から加工レンズ瞳26aまでの距離Lは、第2の実施形態と同様の式(12)により表される。
【0113】
本実施形態によれば、第1レンズL1を空間光変調器24に近接配置することにより、第1レンズL1から加工レンズ瞳26aまでの距離Lを短縮することができる。これにより、レーザ加工装置の光学系を小型化し、レーザ加工の安定性を高めることができる。
【0114】
さらに、本実施形態によれば、空間光変調器24と加工レンズの間の第1レンズL1-2と第2レンズL2は4F光学系(アフォーカル光学系)を構成しないので、コンパクトかつ簡素な光学系を実現することができる。
【0115】
また、本実施形態では、空間光変調器24からの反射光が第1レンズL1によって遮られないように、第1レンズL1と空間光変調器24の距離を大きくする必要がない。このため、本実施形態によれば、光学素子のレイアウト上の自由度が高くなる。
【0116】
さらに、本実施形態によれば、第1レンズL1にはレーザ光LBが2回通るので、第1レンズL1のレンズ屈折力を弱くすることができ、収差の発生を抑制することができる。
【0117】
なお、上記の実施形態において、第1レンズL1と第2レンズL2は1枚のレンズとして示しているが、本発明はこれに限定されない。第1レンズL1と第2レンズL2は、それぞれ1枚以上のレンズを組み合わせたレンズ群であってもよい。
【0118】
上記の通り、第1から第3の実施形態によれば、レーザ加工装置10の光学系(30、30A及び30B)をコンパクトに構成することができる。さらに、必要に応じて、レーザ加工装置10の全体を比較的小さくしながら、第2レンズL2から加工レンズ瞳26aまでの距離を長くすることができる。
【0119】
実際のレーザ加工装置では、第2レンズL2と加工レンズ瞳26aの間に、観察光学系、AF光学系、その他のモニタリングの為の光学系等が必要とされ、多くの光学素子が挿入される。このため、第2レンズL2から加工レンズ瞳26aまでの距離を長くする必要がある。
【0120】
ところが、第2レンズL2の焦点距離fを大きくすると、それに伴って第1レンズL1の焦点距離fが長くなり装置全体が大型化する。すなわち、図10に示した4F光学系ではf=Dであることが必要であった。
【0121】
これに対して、上記の実施形態に係る光学系(30、30A及び30B)ではf(1-M)=Dであればよいので、第2レンズL2の焦点距離fを短くすることができる。これにより、レーザ加工装置10の光学系の小型化を実現することができる。
【符号の説明】
【0122】
10…レーザ加工装置、12…ステージ、20…加工装置本体、21…筐体、22…レーザ光源、24…空間光変調器、26…加工レンズ、30、30A、30B…(リレー)光学系、L1…第1レンズ、L2…(第2)レンズ、32…ビームエキスパンダ、34…λ/2波長板、50…制御装置、52…制御部、54…移動制御部、56…レーザ制御部、58…空間光変調器制御部、60…ストレージデバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10