(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006122
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】二重殻容器の内容物入出口構造及び二重殻容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 88/06 20060101AFI20230111BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B65D88/06 Z
B23K9/00 501K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108542
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】御手洗 泰広
(72)【発明者】
【氏名】島貫 純一
(72)【発明者】
【氏名】五十畑 優太
(72)【発明者】
【氏名】梅林 洋造
【テーマコード(参考)】
3E170
4E081
【Fターム(参考)】
3E170AA03
3E170AA08
3E170AB01
3E170AB11
3E170EA10
3E170EB10
3E170GB01
3E170KA05
3E170KC01
4E081YL01
4E081YX02
(57)【要約】
【課題】二重殻容器に対する内容物取出部の溶接の健全性を高め、耐久性に優れた内容物入出口構造を提供すること。
【解決手段】内側容器12と外側容器20とを有する二重殻容器10の内容物入出口構造であって、内側容器12に形成された第1開口15及び外側容器20に形成された第2開口25に嵌合すべく二重殻容器10に取り付けられた入出口部材30を有し、入出口部材30は、内容物が流通可能な内容物入出口32を画定する筒状の本体部34と、本体部34から外方に延出し、内側容器12の第1開口15の内周縁に突合せ溶接された外周縁を含む内側フランジ部36と、本体部34から外方に延出し、外側容器20の第2開口25の内周縁に突合せ溶接された外周縁を含む外側フランジ部38とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側容器と外側容器とを有する二重殻容器の内容物入出口構造であって、
前記内側容器に形成された第1開口及び前記外側容器に形成された第2開口に嵌合すべく前記二重殻容器に取り付けられた入出口部材を有し、
前記入出口部材は、
内容物が流通可能な内容物取出口を画定する筒状の本体部と、
前記本体部から外方に延出し、前記内側容器の前記第1開口の内周縁に突合せ溶接された外周縁を含む内側フランジ部と、
前記本体部から外方に延出し、前記外側容器の前記第2開口の内周縁に突合せ溶接された外周縁を含む外側フランジ部とを有する二重殻容器の内容物入出口構造。
【請求項2】
前記本体部は、横断面形状が円環形状をしており、軸線方向の中央部に向かうに従って外径が小さくなり、前記内側フランジ部と前記外側フランジ部との間に延在する外周面が縦断面で見て窪んだ湾曲面である請求項1に記載の二重殻容器の内容物入出口構造。
【請求項3】
前記湾曲面は全体に亘って一定の曲率であり、両端が前記内側フランジ部の前記外周縁及び前記外側フランジ部の前記外周縁に接続されている請求項2に記載の二重殻容器の内容物入出口構造。
【請求項4】
前記内側フランジ部及び前記外側フランジ部の少なくとも何れか一方は前記本体部の外周に突合せ溶接された環状部材を含む請求項1~3の何れか一項に記載の二重殻容器の内容物入出口構造。
【請求項5】
前記二重殻容器は前記内側容器と前記外側容器との間に温調媒体が流れる温調媒体通路を画定している請求項1~4の何れか一項に記載の二重殻容器の内容物入出口構造。
【請求項6】
前記内容物取出口は前記内側容器の内部に向けて拡径されたテーパ形状部を含む請求項1~5の何れか一項に記載の二重殻容器の内容物入出口構造。
【請求項7】
前記外側容器は、複数の分割体が互いに接合されてなる請求項1~6の何れか一項に記載の二重殻容器の内容物入出口構造。
【請求項8】
内側容器と外側容器とを有し、請求項1~7の何れか一項に記載の内容物入出口構造を備えた二重殻容器の製造方法であって、
前記内側容器の前記第1開口の内周縁に前記入出口部材の前記内側フランジ部の外周縁を突合せ溶接する第1工程と、
前記第1工程後に、前記内側容器の外側に前記外側容器を取り付ける第2工程と、
前記第2工程後に、前記外側容器の前記第2開口の内周縁に前記入出口部材の前記外側フランジ部の外周縁を突合せ溶接する第3工程とを含む二重殻容器の製造方法。
【請求項9】
前記内側フランジ部及び前記外側フランジ部は円環形状をしており、前記内側フランジ部の外径が前記外側フランジ部の外径よりも大きい請求項8に記載の二重殻容器の製造方法。
【請求項10】
内側容器と外側容器とを有し、請求項1~7の何れか一項に記載の内容物入出口構造を備えた二重殻容器の製造方法であって、
前記外側容器の前記第2開口の内周縁に前記入出口部材の前記外側フランジ部の外周縁を突合せ溶接する第1工程と、
前記第1工程後に、前記外側容器の内側に前記内側容器を取り付ける第2工程と、
前記第2工程後に、前記内側容器の前記第1開口の内周縁に前記入出口部材の前記内側フランジ部の外周縁を突合せ溶接する第3工程とを含む二重殻容器の製造方法。
【請求項11】
前記内側フランジ部及び前記外側フランジ部は円環形状をしており、前記外側フランジ部の外径が前記内側フランジ部の外径よりも大きい請求項10に記載の二重殻容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二重殻容器の内容物入出口構造及び二重殻容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
培養槽等として用いられる容器として、内側容器と外側容器とを有し、内側容器と外側容器との間に温調媒体が流れる温調媒体通路を画定している、所謂、ジャケット付き容器と呼ばれる二重殻容器が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような二重殻容器において、内側容器内に内容物を入れ出しするための内容物取出口構造は、外側容器に形成された開口の外周縁に溶接された一端及び内側容器の外面に溶接された他端を含む筒形部材と、筒形部材の内側(オープニング部)において内側容器に溶接によって取り付けられた一端を含む入出管とを有し、入出管の内部通路が内側容器に形成された内容物入出孔に連通した構造になっている。筒形部材は、作業者が入出管の一端を内側容器の外面に溶接する作業に必要な空間を確保するために設けられており、入出管の外径よりも十分に大きい内径を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内側容器の外面に対する筒形部材の溶接部は、内容物の熱影響を大きく受ける内側容器と内容物とは温度が異なる温調媒体の熱影響を大きく受ける筒形部材とに跨って延在しているから、当該溶接部は内側容器と筒形部材との熱膨張差に起因する熱応力を受ける。特に、バッチ運転される場合には、溶接部は熱応力を繰り返し受け、疲労強度に関して過酷な条件下に曝される。
【0006】
このため、内側容器と筒形部材との溶接は完全溶込み溶接によって行われ、非破壊検査が実施されることが望まれる。しかし、当該溶接は、突合せ溶接ではなく、隅肉溶接になるため、完全溶込み溶接になり難い。また、溶接部の非破壊検査のために必要な大きいスペースを取ることが難しく、溶接の健全性を確認することも難しい。
【0007】
本発明は、以上の背景を鑑み、二重殻容器に対する内容物入出口部の溶接の健全性を高め、耐久性に優れた内容物入出口構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの実施形態による二重殻容器の内容物入出口構造は、内側容器(12)と外側容器(20)とを有する二重殻容器(10)の内容物入出口構造であって、前記内側容器に形成された第1開口(15)及び前記外側容器に形成された第2開口(23)に嵌合すべく前記二重殻容器に取り付けられた入出口部材(30)を有し、前記入出口部材は、内容物が流通可能な内容物入出口(32)を画定する筒状の本体部(34)と、前記本体部から外方に延出し、前記内側容器の前記第1開口の内周縁に突合せ溶接された外周縁を含む内側フランジ部(36)と、前記本体部から外方に延出し、前記外側容器の前記第2開口の内周縁に突合せ溶接された外周縁を含む外側フランジ部(38)とを有する。
【0009】
この構成によれば、二重殻容器に対する内容物入出口部の溶接の健全性が向上し、優れた耐久性が得られる。
【0010】
上記二重殻容器の内容物入出口構造において、好ましくは、前記本体部は、横断面形状が円環形状をしており、軸線方向の中央部に向かうに従って外径が小さくなり、前記内側フランジ部と前記外側フランジ部との間に延在する外周面が縦断面で見て窪んだ湾曲面(44)である。
【0011】
この構成によれば、内側フランジ部及び外側フランジ部と本体部との境界部に応力が集中することが抑制され、内側フランジ部及び外側フランジ部の機械的強度も向上する。
【0012】
上記二重殻容器の内容物入出口構造において、好ましくは、前記湾曲面は全体に亘って一定の曲率であり、両端が前記内側フランジ部の前記外周縁及び前記外側フランジ部の前記外周縁に接続されている。
【0013】
この構成によれば、内側フランジ部及び外側フランジ部と本体部との境界部に応力が集中することが抑制され、内側フランジ部及び外側フランジ部の機械的強度も向上する。
【0014】
上記二重殻容器の内容物入出口構造において、好ましくは、前記外側フランジ部は前記本体部の外周に突合せ溶接された環状部材(46)を含む。
【0015】
この構成によれば、外側フランジ部の設計上の自由度が向上する。
【0016】
上記二重殻容器の内容物入出口構造において、好ましくは、前記二重殻容器は前記内側容器と前記外側容器との間に温調媒体が流れる温調媒体通路(28)を画定している。
【0017】
この構成によれば、内側容器内の温度が温調媒体により管理される。
【0018】
上記二重殻容器の内容物入出口構造において、好ましくは、前記内容物入出口は前記内側容器の内部に向けて拡径されたテーパ形状部(32A)を含む。
【0019】
この構成によれば、内容物入出口の通路長が長くなっても、内容物入出口内に内容物が溜まり難くなる。
【0020】
上記二重殻容器の内容物入出口構造において、好ましくは、前記外側容器は、複数の分割体(22A、22B)が互いに接合されてなる。
【0021】
この構成によれば、内側容器に対する外側容器の組み付けが、内側容器に取り付けられている入出口部材と干渉することなく行われる。
【0022】
本発明の一つの実施形態による二重殻容器の製造方法は、内側容器と外側容器とを有し、上述の実施形態による内容物入出口構造を備えた二重殻容器の製造方法であって、前記内側容器の前記第1開口の内周縁に前記入出口部材の前記内側フランジ部の外周縁を突合せ溶接する第1工程と、前記第1工程後に、前記内側容器の外側に前記外側容器を取り付ける第2工程と、前記第2工程後に、前記外側容器の前記第2開口の内周縁に前記入出口部材の前記外側フランジ部の外周縁を突合せ溶接する第3工程とを含む。
【0023】
この製造方法によれば、入出口部材の内側フランジ部と内側容器との突合せ溶接及び入出口部材の外側フランジ部と外側容器との突合せ溶接を容器の外側から行うことができる。
【0024】
上記二重殻容器の製造方法において、好ましくは、前記内側フランジ部及び前記外側フランジ部は円環形状をしており、前記内側フランジ部の外径が前記外側フランジ部の外径よりも大きい。
【0025】
この製造方法によれば、内側容器に対する内側フランジ部の溶接が外側フランジ部と干渉することなく行われる。
【0026】
本発明の他の一つの実施形態による二重殻容器の製造方法は、内側容器と外側容器とを有し、上述の実施形態による内容物入出口構造を備えた二重殻容器の製造方法であって、前記外側容器の前記第2開口の内周縁に前記入出口部材の前記外側フランジ部の外周縁を突合せ溶接する第1工程と、前記第1工程後に、前記内側容器の外側に前記外側容器を取り付ける第2工程と、前記第2工程後に、前記内側容器の前記第1開口の内周縁に前記入出口部材の前記内側フランジ部の外周縁を突合せ溶接する第3工程とを含む。
【0027】
この製造方法によれば、入出口部材の内側フランジ部と内側容器との突合せ溶接及び入出口部材の外側フランジ部と外側容器との突合せ溶接を容器の内側から行うことができる。
【0028】
上記二重殻容器の製造方法において、好ましくは、前記内側フランジ部及び前記外側フランジ部は円環形状をしており、前記外側フランジ部の外径が前記内側フランジ部の外径よりも大きい。
【0029】
この製造方法によれば、外側容器に対する外側フランジ部の溶接が内側フランジ部と干渉することなく行われる。
【発明の効果】
【0030】
本発明による二重殻容器の内容物入出口構造によれば、二重殻容器に対する内容物入出口部の溶接の健全性が向上し、優れた耐久性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による内容物入出口構造を備えた二重殻容器の全体構成を示す正面図
【
図4】本実施形態による内容物入出口構造の断面図(
図1の線IV-IVに沿った拡大断面図相当)
【
図5】本実施形態による内容物入出口構造の製造工程の1つの実施形態を示す断面図
【
図6】他の実施形態による内容物入出口構造の断面図
【
図7】他の実施形態による内容物入出口構造の断面図
【
図8】他の実施形態による内容物入出口構造を備えた二重殻容器の全体構成を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明に係る二重殻容器の内容物入出口構造の実施形態について説明する。
【0033】
図1~
図3に示されているように、二重殻容器10は、金属製の内側容器12と内側容器12の外側に配置された金属製の外側容器20とを有する。
【0034】
内側容器12は、円筒部14、円筒部14の上部に接合されたドーム形状の上部端体16及び円筒部14の下部に接合されたドーム形状の下部端体(鏡板)18を含む密閉構造になっており、内部に液体や粉粒体等の流動性を有する物質、つまり内容物を収容する。上部端体16及び下部端体18の少なくとも一方には、内側容器12に対する内容物の出入を行うための内容物出入部(不図示)が設けられる。
【0035】
外側容器20は、横断面形状が180度の回転角を有する円弧形状の前後2個の分割体22A、22B(
図2参照)の側縁同士を突合せ溶接部W1により互いに溶接して構成された円筒部22、円筒部22の上端及び内側容器12の円筒部14の外周面に接合された円環状の上部端体24及び円筒部22の下端及び内側容器12の円筒部14の外周面に接合された円環状の下部端体26を含む。分割体22A、22Bの突合せ溶接部W1はTIG溶接或いはMIG溶接により行われてよい。
【0036】
円筒部22の内径は円筒部14の外径よりも大きいことにより、円筒部14と円筒部22との間に、上下を上部端体24、下部端体26によって閉じられた横断面形状が円環状の温調媒体通路28が画定される。上部端体24或いは円筒部22の上部には温調媒体通路28に対する温調媒体流入口(不図示)が設けられ、下部端体26或いは円筒部22の下部には温調媒体通路28に対する温調媒体流出口(不図示)が設けられ、温調媒体通路28を冷却水等の温調媒体が流れる。これにより、内側容器12の温度が温調媒体により管理される。
【0037】
二重殻容器10の側部には金属製の入出口部材(ノズル部材)30が取り付けられている。入出口部材30は、
図4に示されているように、内側容器12内の内容物が流通可能な内容物入出口(通路)32を画定する円筒状の本体部34と、本体部34の内端から外方に延出した円環状の内側フランジ部36と、本体部34の外端から外方に延出した円環状の外側フランジ部38と有する。内容物入出口32は、内側容器12の内部に向けて拡径されたテーパ形状部32Aを含む。テーパ形状部32Aは可及的に内容物入出口32の全長に亘って設けられていることが好ましい。
【0038】
本体部34の外周面と内側フランジ部36の上面との接続部(隅角部)は大きいアール面37により形成されている。本体部34の外周面と外側フランジ部38の下面との接続部(隅角部)は大きいアール面39により形成されている。これにより、本体部34の外周面と内側フランジ部36の上面との接続部及び本体部34の外周面と外側フランジ部38の下面との接続部の応力集中が緩和される。
【0039】
入出口部材30は、内側容器12内に対する内容物(収容物)の出し入れのためのものであり、外側の端面に複数のボルト40によって通路接続部材42が取り付けられる。
【0040】
内側フランジ部36は、外側フランジ部38よりも大きい外径を有し、円筒部14に形成された第1開口15に嵌合し、第1開口15の内周縁にTIG溶接或いはMIG溶接により突合せ溶接された外周縁36Aを含む。内側フランジ部36と円筒部14との突合せ溶接部は符号W2により示されている。
【0041】
外側フランジ部38は、円筒部22に第1開口15と同軸上に形成された第2開口23に嵌合し、第2開口23の内周縁にTIG溶接或いはMIG溶接により突合せ溶接された外周縁38Aを含む。外側フランジ部38と円筒部14との突合せ溶接部は符号W3により示されている。
【0042】
入出口部材30は、内側フランジ部36を突合せ溶接部W2によって内側容器12に溶接され、外側フランジ部38を突合せ溶接部W3によって外側容器20に溶接されているから、完全溶込み溶接のもとに入出口部材30の内側容器12及び外側容器20に対する溶接の健全性が隅肉溶接を含む場合に比して十分に確保される。
【0043】
これにより、内側容器12の内容物と温調媒体通路28の温調媒体との温度差、つまり、内側容器12の内側の温度と外側の温度との違いにより、突合せ溶接部W2、W3が熱応力を繰り返し受けても、突合せ溶接部W2、W3及び溶接部近傍に割れが生じることが抑制され、優れた耐久性が得られる。
【0044】
入出口部材30は、内側フランジ部36を内側容器12に溶接され、外側フランジ部38を外側容器20に溶接されることにより、両持ち梁の状態で、二重殻容器10に固定されることになるから、このことによって、二重殻容器10に対する入出口部材30の取付強度が向上し、優れた耐久性が得られる。
【0045】
内容物入出口32は内側容器12の内部に向けて拡径されたテーパ形状部32Aを含むから、内容物入出口32の通路長が長くなっても、内容物入出口32内に内容物が溜まり難くなる。テーパ形状部32Aは、この効果が良好に得られるべく、可及的に内容物入出口32の全長に亘って設けられていることが好ましい。
【0046】
次に、上述の構成による内容物入出口構造を備えた二重殻容器10の製造方法の1つの実施形態を、
図5を参照して説明する。
【0047】
先ず、
図5(A)に示されているように、第1工程として、入出口部材30の内側フランジ部36を内側容器12の第1開口15に嵌合させ、内側フランジ部36の外周縁36Aを第1開口15の内周縁に内側容器12の外方からTIG溶接或いはMIG溶接を行う溶接トーチ50によって突合せ溶接する。これにより、完全溶込みによる突合せ溶接部W2が形成される。
【0048】
内側フランジ部36は外側フランジ部38よりも大きい外径を有しているから、突合せ溶接部W2は外側フランジ部38の外周縁38Aよりも径方向外方に位置する。これにより、突合せ溶接部W2の溶接に際して溶接トーチ50が外側フランジ部38に干渉することがなく、突合せ溶接部W2の溶接がスペース的な余裕をもって適確に行われる。
【0049】
第1工程完了下では、突合せ溶接部W2を内側容器12の外側から目視できると共に、突合せ溶接部W2に内側容器12の外側からアクセスすることができるから、突合せ溶接部W2の目視による検査やX線等による非破壊検査を容易に行うことができる。突合せ溶接部W2は外側フランジ部38の外周縁38Aよりも径方向外方に位置しているから、突合せ溶接部W2の目視による検査やX線等による非破壊検査が、内側容器12の外方から外側フランジ部38に邪魔されることなく確実に行われ得るようになる。
【0050】
第1工程及び突合せ溶接部W2の検査の終了後に、第2工程として、前側の分割体22Aに形成されている第2開口23に入出口部材30の外側フランジ部38が嵌合するように分割体22Aを円筒部14の前側に配置すると共に、
図2に示されているように、後側の分割体22Bを円筒部14の後側に配置し、分割体22A、22Bの側縁同士を外側から突合せ溶接(突合せ溶接部W1)し、円筒部22を完成させる。
【0051】
そして、上部端体24(
図2及び
図3参照)を内側容器12の円筒部14の外周面及び外側容器20の円筒部22の上端に溶接等によって接合すると共に、下部端体26を内側容器12の円筒部14の外周面及び外側容器20の円筒部22の下端に溶接等によって接合する。これにより、外側容器20が内側容器12に固定されると共に温調媒体通路28が画定される。
【0052】
第2工程後に、
図5(B)に示されているように、第3工程として、外側フランジ部38を外側容器20の第2開口23に嵌合させ、外側フランジ部38の外周縁38Aを第2開口23の内周縁に外側容器20の外方からTIG溶接或いはMIG溶接を行う溶接トーチ50によって突合せ溶接する。これにより、完全溶込みによる突合せ溶接部W3が形成される。
【0053】
これにより、内側容器12及び外側容器20に対する入出口部材30の取り付けが完了する。
【0054】
突合せ溶接部W3は外側容器20の外側に向けて露呈しているから、外側容器20の外側から突合せ溶接部W3の目視による検査やX線等による非破壊検査を容易に行うことができる。
【0055】
突合せ溶接部W2及びW3の溶接は、TIG溶接或いはMIG溶接により行われ、不活性ガス雰囲気中で行われるから、突合せ溶接部W2及びW3及び溶接部周辺の酸化や不純物の混入が抑制され、溶接の健全性が向上する。
【0056】
尚、突合せ溶接部W2は内側容器12の内方から行われてもよい。
【0057】
次に、二重殻容器10の内容物入出口構造の他の実施形態を、
図7を参照して説明する。なお、
図7において、
図4に対応する部分は、
図4に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0058】
この実施形態では、入出口部材30の本体部34は、横断面形状が円環形状をしており、軸線方向の中央部に向かうに従って外径が漸次小さくなり、内側フランジ部36と外側フランジ部38との間に延在する外周面が縦断面で見て窪んだ湾曲面44になっている。湾曲面44は、全体に亘って一定の曲率であり、両端が内側フランジ部36の外周縁36A及び外側フランジ部38の外周縁38Aに滑らかに接続されている。
【0059】
この形状によれば、内側フランジ部36及び外側フランジ部38と本体部34との境界部に応力が集中することが抑制され、内側フランジ部36及び外側フランジ部38の機械的強度も向上する。
【0060】
これにより、入出口部材30を取り付けられた二重殻容器10の耐久性が向上する。
【0061】
次に、二重殻容器10の内容物入出口構造の他の実施形態を、
図8を参照して説明する。なお、
図7において、
図4に対応する部分は、
図4に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0062】
この実施形態では、本体部34の外端側の外周に、突合せ溶接部W4によって円環状部材46が固定されている。円環状部材46は、上述の実施形態における外側フランジ部38と同等の部位をなし、外縁に突合せ溶接部W3によって外側容器20の円筒部22を溶接される。
【0063】
この実施形態では、外側フランジ部38が本体部34とは別体の円環状部材46により構成されるから、外側フランジ部38の設計上の自由度が向上すると共に、本体部34の製造が容易になる。
【0064】
円環状部材46の突合せ溶接部W4は、入出口部材30が内側容器12に取り付けられる以前の単体状態で行われてよい。この場合には、入出口部材30が内側容器12に取り付けられた後に、円環状部材46が外側からの突合せ溶接によって本体部34に固定されてよい。
【0065】
本体部34の外周面と外側フランジ部38の下面との接続部のアール面39は、入出口部材30が内側容器12に取り付けられる以前の状態下で、突合せ溶接部W4のビードを切削加工により形成されてよい。
【0066】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【0067】
例えば、内側フランジ部36も、
図8に示されている実施形態のように、本体部34とは別体の円環状部材によって構成されていてもよい。外側容器20は入出口部材30の取付部を境界として上下或いは左右に分割されていてもよい。外側容器20は、組付作業性の観点から分割構造になっているが、分割構造に限られることはなく、1つの円筒体により構成されていてもよい。入出口部材30は、
図8に示されているように、二重殻容器10の底部に設けられてもよい。
【0068】
二重殻容器10の製造は、上述した実施形態の製造方法(工程)に限られることなく、二重殻容器10は種々の製造方法により製造することが可能である。
【0069】
例えば、二重殻容器10は、外側容器20の第2開口23の内周縁に入出口部材30の外側フランジ部38の外周縁を突合せ溶接する第1工程と、第1工程後に、内側容器12の外側に外側容器20を取り付ける第2工程と、第2工程後に、内側容器12の第1開口15の内周縁に入出口部材30の内側フランジ部36の外周縁を突合せ溶接する第3工程とを含む工程により製造されてもよい。この製造方法においても、入出口部材30の内側フランジ部36と内側容器12との溶接及び入出口部材30の外側フランジ部38と外側容器20との溶接を突合せ溶接によって健全性よく行うことかできる。
【0070】
この場合には、外側容器20に対する外側フランジ部38の溶接が内側フランジ部36と干渉することなく行われるべく、外側フランジ部38の外径が内側フランジ部36の外径よりも大きいことが好ましい。
【0071】
各突合せ溶接部W1~W4の溶接は、TIG溶接或いはMIG溶接に限られることなく、製造方法に見合った溶接法によって行われてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 :二重殻容器
12 :内側容器
14 :円筒部
15 :第1開口
16 :上部端体
18 :下部端体
20 :外側容器
22 :円筒部
22A :分割体
22B :分割体
23 :第2開口
24 :上部端体
26 :下部端体
28 :温調媒体通路
30 :入出口部材
32 :内容物入出口
32A :テーパ形状部
34 :本体部
36 :内側フランジ部
36A :外周縁
37 :アール面
38 :外側フランジ部
38A :外周縁
39 :アール面
40 :ボルト
42 :通路接続部材
44 :湾曲面
46 :円環状部材
50 :溶接トーチ
W1 :突合せ溶接部
W2 :突合せ溶接部
W3 :突合せ溶接部
W4 :突合せ溶接部