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特開2023-61271処理装置、およびクリーニング処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061271
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】処理装置、およびクリーニング処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20230424BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230424BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/302 101H
C23C16/44 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171169
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 智也
(72)【発明者】
【氏名】黒川 昌毅
(72)【発明者】
【氏名】及川 大海
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
4K030BA44
4K030KA05
4K030KA39
4K030KA41
5F004AA15
5F004BD04
5F004CA08
5F004DA00
5F004DA17
5F004DA20
5F004DA23
5F004DA25
5F004DB03
5F045AA06
5F045AB32
5F045AC00
5F045AC05
5F045AC15
5F045AC16
5F045AD01
5F045AE01
5F045BB10
5F045BB15
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EB06
5F045EF02
5F045EF03
5F045EF09
5F045EK06
5F045GB06
5F045GB16
(57)【要約】
【課題】クリーニング処理を安定して行うことができる技術を提供する。
【解決手段】処理装置は、処理容器と、処理容器内の温度を検出する温度センサと、フッ素を含有するクリーニングガスを処理容器内に供給するガス供給部と、処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、ガス供給部および圧力調整部を制御して、処理容器内の堆積膜を除去するクリーニング処理を行う制御部と、を備える。制御部は、処理容器内の温度と処理容器内の水の蒸気圧を対応付けた蒸気圧曲線を記憶部に記憶している。制御部は、クリーニング処理において、記憶部を参照して、温度センサが検出した検出温度と蒸気圧曲線とに基づき、蒸気圧曲線以下の目標圧力を設定し、処理容器内の圧力が目標圧力となるように圧力調整部を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、
前記処理容器内の温度を検出する温度センサと、
フッ素を含有するクリーニングガスを前記処理容器内に供給するガス供給部と、
前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、
前記ガス供給部および前記圧力調整部を制御して、前記処理容器内の堆積膜を除去するクリーニング処理を行う制御部と、を備える処理装置であって、
前記制御部は、前記処理容器内の温度と前記処理容器内の水の蒸気圧を対応付けた蒸気圧曲線を記憶部に記憶しており、
かつ前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記記憶部を参照して、前記温度センサが検出した検出温度と前記蒸気圧曲線とに基づき、前記蒸気圧曲線以下の目標圧力を設定し、前記処理容器内の圧力が前記目標圧力となるように前記圧力調整部を制御する、
処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記記憶部を参照して、前記蒸気圧曲線に基づき前記検出温度に応じた蒸気圧を抽出し、
抽出した蒸気圧から減算値を減算することにより前記目標圧力を算出する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記減算値は、前記クリーニング処理において、前記処理容器内に設定した複数の所定位置毎におけるエッチングレートの最大値と最小値の差が20[nm/min]以下となる値である、
請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記減算値は、1[Torr]~10[Torr]の範囲の値に設定される、
請求項2または3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記減算値は、抽出した前記蒸気圧または前記クリーニング処理の処理時間に応じて変動する変動値である、
請求項2~4のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記蒸気圧曲線を参照して前記検出温度に応じた蒸気圧を前記目標圧力に設定する、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項7】
前記温度センサは、前記処理容器内の複数のゾーン毎の温度を検出し、
前記制御部は、前記温度センサから取得した前記複数のゾーン毎の温度に基づき、平均値、最大値、最小値または中央値のうちいずれか1つを前記検出温度として設定する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項8】
前記処理容器は、シリコン酸化膜を基板に形成する基板処理を行うものであり、
前記クリーニング処理では、前記処理容器内に堆積した前記堆積膜として前記シリコン酸化膜を除去する、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項9】
処理容器内の堆積膜を除去するクリーニング処理方法であって、
前記処理容器内の温度を取得する工程と、
フッ素を含有するクリーニングガスを前記処理容器内に供給する工程と、
前記温度を検出する工程で検出した検出温度と、前記処理容器内の温度および前記処理容器内の水の蒸気圧を対応付けた蒸気圧曲線とに基づき、前記蒸気圧曲線以下の目標圧力を設定する工程と、
前記処理容器内の圧力が前記目標圧力となるように前記処理容器内の圧力を調整する工程と、を有する、
クリーニング処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理装置、およびクリーニング処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
処理装置は、処理容器内に収容された基板に対して膜を形成するなどの基板処理を行う。基板処理に伴って処理容器内にも膜が堆積するため、処理装置は、適宜のタイミングでクリーニング処理を実施している。例えば、クリーニング処理において、処理装置は、クリーニングガスを処理容器内に供給することにより、堆積膜をエッチング(除去)する。
【0003】
特許文献1には、このクリーニング処理においてオーバエッチングを防止するために、処理容器内の温度に基づきエッチング速度を算出し、この算出したエッチング速度に基づきエッチング時間を設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021‐61349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、クリーニング処理を安定して行うことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、処理容器と、前記処理容器内の温度を検出する温度センサと、フッ素を含有するクリーニングガスを前記処理容器内に供給するガス供給部と、前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、前記ガス供給部および前記圧力調整部を制御して、前記処理容器内の堆積膜を除去するクリーニング処理を行う制御部と、を備える処理装置であって、前記制御部は、前記処理容器内の温度と前記処理容器内の水の蒸気圧を対応付けた蒸気圧曲線を記憶部に記憶しており、かつ前記制御部は、前記クリーニング処理において、前記記憶部を参照して、前記温度センサが検出した検出温度と前記蒸気圧曲線とに基づき、前記蒸気圧曲線以下の目標圧力を設定し、前記処理容器内の圧力が前記目標圧力となるように前記圧力調整部を制御する、処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、クリーニング処理を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の処理装置の構成例を概略的に示す説明図である。
図2】ウエハボート、蓋体および断熱ユニットの構成を拡大して示す説明図である。
図3】クリーニング処理時の処理容器の温度を例示する図表である。
図4】クリーニング処理の制御部の機能ブロックを示すブロック図である。
図5】温度センサが検出した温度の一例を示す図表である。
図6】水の蒸気圧曲線を例示するグラフである。
図7】クリーニング処理の検出温度が32℃の場合における処理容器の圧力とエッチングレートとの関係を示すグラフである。
図8】クリーニング処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〔処理装置〕
図1は、一実施形態の処理装置1の構成例を概略的に示す説明図である。図1に示すように、一実施形態に係る処理装置1は、複数の基板Wを鉛直方向(上下方向)に並べて配置し、これら各基板に対して成膜などの基板処理を行う縦型処理装置である。基板Wは、例えば、シリコンウエハ、もしくは化合物半導体ウエハなどの半導体基板、またはガラス基板があげられる。
【0011】
処理装置1は、処理容器10、ガス供給部30、排気部40、加熱部50、冷却部60、温度センサ70および制御部90を有する。
【0012】
処理容器10は、鉛直方向に沿って複数の基板Wを収容可能な筒状に形成されている。例えば、処理容器10は、天井を有する一方で下端が開放された円筒状の内筒11と、この内筒11の外側を覆うとともに天井を有する一方で下端が開放された円筒状の外筒12と、を含む。内筒11および外筒12は、石英などの耐熱性材料により形成されており、互いに同軸状に配置された2重構造を呈している。なお、処理容器10は、2重構造に限らず、単筒構造でもよく、あるいは3以上の筒からなる多重構造でもよい。
【0013】
内筒11は、平坦状の天井を有する一方で、外筒12は、ドーム状の天井を有する。内筒11の所定の周方向位置には、上下方向に沿ってガスノズル31を収容する収容部13が形成されている。一例として、収容部13は、内筒11の側壁の一部を径方向外側に突出させた凸部14の内側に形成される。
【0014】
内筒11において収容部13に対向する反対側の側壁には、上下方向に長い開口15が形成されている。開口15は、内筒11内のガスを、内筒11と外筒12の間の空間P1に排気する。開口15の上下方向の長さは、ウエハボート16の上下方向の長さと同じか、またはウエハボート16よりも上下方向に長く形成されているとよい。
【0015】
処理容器10の下端は、例えば、ステンレス鋼により形成される円筒状のマニホールド17によって支持されている。マニホールド17の上端にはフランジ18が形成されており、フランジ18は外筒12の下端のフランジ12fを支持する。フランジ12fとフランジ18との間には、外筒12およびマニホールド17の内部を気密にシールするシール部材19が設けられる。
【0016】
マニホールド17の上部の内壁には、円環状の支持部20が径方向内側に突出しており、支持部20は、内筒11の下端を支持している。マニホールド17の下端の開口には、シール部材22を介して蓋体21が気密に取り付けられている。すなわち、蓋体21は、マニホールド17の下端側の開口を気密に塞いでいる。蓋体21は、例えば、ステンレス鋼により平板状に形成される。
【0017】
蓋体21の中央部には、磁性流体シール部23を介してウエハボート16を回転可能に支持する回転軸24が貫通している。回転軸24の下部は、ボートエレベータなどにより構成される昇降機構25のアーム25Aに支持されている。処理装置1は、昇降機構25のアーム25Aを昇降することで、蓋体21とウエハボート16と一体に上下動させ、処理容器10内に対してウエハボート16を挿入および離脱させることができる。
【0018】
回転軸24の上端には回転プレート26が設けられており、この回転プレート26上には、断熱ユニット27を介して基板Wを保持するウエハボート16が載置される。ウエハボート16は、鉛直方向の所定間隔毎に基板Wを保持する基板保持具である。ウエハボート16により、各基板Wは水平方向に沿うように保持される。
【0019】
図2は、ウエハボート16、蓋体21および断熱ユニット27の構成を拡大して示す説明図である。断熱ユニット27は、例えば石英製の複数の大フィン28を棚状に配列すると共に、複数の大フィン28の上方側において大フィン28のサイズよりも小さい断熱材、例えば石英製の複数の小フィン29を棚状に配列して構成される。大フィン28のサイズは、基板Wの直径と略同じ直径に設定される。
【0020】
断熱ユニット27は、その側方近傍にガス供給部30や排気部40の入出部、または他の温度変化要素が存在することで、処理容器10内で温度変化が大きい箇所に配置される。断熱ユニット27は、これらの温度変化を断熱することで、当該断熱ユニット27よりも上方の処理容器10内の温度を安定化させる。
【0021】
図1に戻り、ガス供給部30は、マニホールド17を介して処理容器10の内部に挿入されている。ガス供給部30は、処理ガス、クリーニングガス、パージガスなどのガスを内筒11の内部に導入する。例えば、ガス供給部30は、処理ガスおよびパージガスを導入するガスノズル31と、クリーニングガスを導入するガスノズル32と、を有する。
【0022】
ガスノズル31は、石英製であり、内筒11内の上下方向に沿って延びると共に、下端においてL字状に屈曲してマニホールド17の内外を貫通するように設けられている。ガスノズル31は、上下方向に沿って所定の間隔毎に複数のガス孔31hを備えており、各ガス孔31hを介して水平方向にガスを放出する。所定の間隔は、例えば、ウエハボート16に支持される各基板Wの間隔と同じになるように設定される。また、ガス孔31hの上下方向の位置は、上下方向に隣り合う基板W間の中間に位置するように設定されており、各基板W間の空間にガスを円滑に流通できるようになっている。
【0023】
ガスノズル31は、例えば、処理ガス、パージガスを供給するインジェクタ管であり、ガス供給部30は、処理容器10の外部において流量を制御しながら処理ガスおよびパージガスを処理容器10内に供給する。処理ガスは、基板Wに成膜する膜種に応じて適宜のものが選択されるとよい。シリコン酸化膜を形成する場合、処理ガスとしては、例えば、ジクロロシラン(DCS)ガスなどのシリコン含有ガスと、オゾン(O)ガスなどの酸化ガスを利用できる。パージガスは、例えば、窒素(N)ガス、アルゴン(Ar)ガスを利用できる。
【0024】
ガスノズル32は、石英製であり、ウエハボート16よりも下側の位置で上下方向に延在するように設けられる。ガスノズル32は、下端においてL字状に屈曲してマニホールド17の内外を貫通するように設けられている。ガスノズル32は、上端が開口しており、開口から上方に向けてガスを放出する。ガスノズル32は、例えば、クリーニングガスおよびパージガスを供給するインジェクタ管である。ガス供給部30は、処理容器10の外部に設置した図示しない流量調整器により流量を調整しながらクリーニングガスを処理容器10内に供給する。クリーニングガスは、処理容器10内で成膜される膜種に応じて適宜のものが選択されるとよい。処理容器10内で成膜される膜がシリコン酸化膜である場合、クリーニングガスとしては、例えば、フッ化水素(HF)ガス、フッ素(F)ガス、三フッ化塩素(ClF)ガス、三フッ化窒素(NF)ガスなどのフッ素含有ガスがあげられる。
【0025】
なお、ガス供給部30は、複数種類の処理ガスまたはパージガスを個別に供給するために、ガスノズル31を複数備えた形態でもよく、処理ガス、クリーニングガスおよびパージガスを1つのガスノズル31から処理容器10内に供給する形態でもよい。要するに、ガスノズル31、32の数は図1の例に限定されない。
【0026】
排気部40は、処理容器10内のガスを外部に排気する。ガス供給部30により供給されたガスは、内筒11の開口15から内筒11と外筒12との間の空間P1に流出し、ガス出口41を介して排気される。ガス出口41は、マニホールド17の上部の側壁であって、支持部20の上方に形成されている。ガス出口41には、排気部40の排気経路42が接続されている。排気部40は、排気経路42の上流から下流に向かって順に、圧力調整弁43、真空ポンプ44を備える。排気部40は、処理容器10内のガスを真空ポンプ44により吸引するとともに、圧力調整弁43により排気するガスの流量を調整することで、処理容器10内の圧力を調整する。
【0027】
加熱部50は、天井を有する円筒状の断熱材51により、処理容器10の外側を覆うように設置され、処理容器10内の基板Wを加熱する。断熱材51は、シリカおよびアルミナを主成分として形成されている。一例として、加熱部50は、外筒12のフランジ12fに支持されたベースプレート54に取り付けられている。加熱部50は、処理容器10内の基板Wを加熱することができれば、特に限定されず、例えば、赤外線を放射して処理容器10を加熱する赤外線ヒータを適用し得る。この場合、線状の発熱体52が断熱材51の内周に螺旋状または蛇行状に設けられている。発熱体52は、加熱部50の高さ方向に複数のゾーンに分けて温度制御が可能である。以下、複数のゾーンを上方から順に「TOP」、「C-T」、「CTR」、「C-B」および「BTM」と称する。発熱体52は、断熱材51の内壁面に保持部(不図示)を介して保持されている。
【0028】
断熱材51の形状を保持すると共に断熱材51を補強するために、断熱材51の外周はステンレス鋼などの金属製の外皮53で覆われている。また、加熱部50の外部への熱影響を抑制するために、外皮53の外周は、図示しない水冷ジャケットで覆われている。
【0029】
冷却部60は、処理容器10に向けて空気などの冷却流体を供給し、処理容器10内の基板Wを冷却する。冷却部60は、例えば、熱処理の後に基板Wを急速降温させる際に、処理容器10に向けて冷却流体を供給する。また、冷却部60は、処理容器10内の堆積膜をエッチングするクリーニング処理において、処理容器10内に向けて冷却流体を供給してもよい。冷却部60は、流体流路61、吹出孔62、分配経路63、冷却流体流量調整部64および排熱口65を有する。
【0030】
流体流路61は、断熱材51の外側(外皮53)の高さ方向かつ周方向に沿って複数形成されている。吹出孔62は、各流体流路61から断熱材51を貫通するように形成されており、外筒12と断熱材51との間の空間P2に冷却流体を吹き出す。分配経路63は、外皮53の外部に複数設置されて、各流体流路61に冷却流体を分配して供給する。
【0031】
冷却流体流量調整部64は、複数の分配経路63毎に設けられ、流体流路61に供給する冷却流体の流量を調整する。
【0032】
排熱口65は、複数の吹出孔62よりも上方に設けられており、空間P2内に供給された冷却流体を処理装置1の外部に排出する。処理装置1の外部に排出された冷却流体は、例えば、図示しない熱交換器により冷却されて再び分配経路63に供給される。あるいは、処理装置1の外部に排出された冷却流体は、再利用されることなく廃棄されてもよい。
【0033】
温度センサ70は、内筒11の内部に設けられて、処理容器10内の温度を検出する。ただし、温度センサ70は、処理容器10内の温度を検出できる位置に設けられていればよく、例えば、内筒11と外筒12との間の空間P1に設けられていてもよい。温度センサ70は、上記した複数のゾーンに対応して、複数(本実施形態では5つ)の測温子71~75を高さ方向の異なる位置に有する。測温子71~75は、それぞれゾーン「TOP」、「C-T」、「CTR」、「C-B」および「BTM」に応じて設けられている。複数の測温子71~75は、熱電対、測温抵抗体などを適用し得る。温度センサ70は、複数の測温子71~75毎に検出した温度を、制御部90にそれぞれ送信する。
【0034】
処理装置1の制御部90は、1以上のプロセッサ91、メモリ92、図示しない入出力インタフェースおよび電子回路を有するコンピュータを適用し得る。プロセッサ91は、CPU、ASIC、FPGA、複数のディスクリート半導体からなる回路などのうち1つまたは複数を組み合わせたものである。メモリ92は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ(例えば、コンパクトディスク、DVD、ハードディスク、フラッシュメモリ等)を含み、処理装置1を動作させるプログラム、基板処理やクリーニング処理のレシピ(プロセス条件)を記憶している。
【0035】
プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたプログラムを実行することで、基板処理における処理装置1の各構成を制御する。基板処理において、プロセッサ91は、昇降機構25を動作して、複数の基板Wを載置したウエハボート16を処理容器10内に収容する。昇降機構25により上昇した蓋体21がマニホールド17に接触することで、処理容器10の底部が気密に密閉される。
【0036】
そして、プロセッサ91は、排気部40により処理容器10内の圧力を低下させるとともに、加熱部50により処理容器10を加熱する。さらに、プロセッサ91は、ガス供給部30を制御し、ガスノズル31を介して内筒11内に処理ガスを供給する。この際、プロセッサ91は、真空ポンプ44により処理ガスを吸引しつつ排気部40の圧力調整弁43の開度を制御することにより、処理容器10内の圧力を調整する。これにより、処理容器10内では、基板Wの加熱およびガスノズル31から供給された処理ガスに基づき、適宜の膜が基板Wに形成される基板処理が行われる。
【0037】
基板処理の終了後、プロセッサ91は、処理容器10内への処理ガスの供給を停止し、さらに昇降機構25を下降して、ウエハボート16を処理容器10から離脱させる。さらに、図示しない搬送装置によってウエハボート16から各基板Wを取り出すことで、処理装置1は新たな基板処理が可能な状態となる。
【0038】
以上の基板処理の実施に伴って、処理容器10内には堆積膜が堆積する。例えば、シリコン酸化膜を形成する基板処理では、堆積膜としてSiOが堆積する。この種の堆積膜は、内筒11や外筒12の表面、ガスノズル31、ガス出口41、排気経路42などに堆積する。このため、処理装置1は、定期的なメンテナンスなどにおいて、堆積膜をエッチング(除去)するクリーニング処理を行う。
【0039】
クリーニング処理は、例えば、フッ素含有ガスであるHFをガスノズル32から供給することで、以下の反応式(1)に示すように、SiOとフッ素とを反応させ、四フッ化ケイ素(SiF)に変化させる。
SiO(s)+4HF(g)→SiF+2HO(l) ・・・(1)
【0040】
また、反応式(1)で発生した水は、以下の反応式(2)で示されるように、フッ化水素ガスと反応してフッ化水素酸(HF(aq))を生成する。
HF(g)+HO(l)→HF(aq) ・・・(2)
【0041】
そして、フッ化水素酸は、以下の反応式(3)に示されるように、シリコン酸化膜をさらにエッチングすることができる。
SiO(s)+4HF(aq)→SiF+6HO(l) ・・・(3)
【0042】
ここで、上記の反応式(1)の反応速度は、反応式(2)および反応式(3)の反応速度と比較して非常に小さい。このため、水(HO)を蒸気として発生させて反応式(2)および反応式(3)の反応を促すことが好ましい。これにより、クリーニング処理の効率化が図られる。ただし、生成された水が、気体(水蒸気)から液体(液水)になって処理容器10内の壁面等の構成に付着すると、その箇所の反応だけ大きく促進され、処理容器10内の各構成にて元々被膜していたSiOの損傷やはがれが生じるオーバエッチングとなる。すなわち、クリーニング処理において堆積膜のエッチングムラを生じさせずに、均一にエッチングするためには、処理容器10内で水蒸気の状態を維持することが重要となる。なお、本明細書における「エッチングムラ」とは、処理容器10内の構成の一部にオーバエッチングが生じる状態であることに限らず、クリーニング処理において堆積膜が不均一に除去される状態であることを含む。
【0043】
また、処理装置1は、クリーニング処理において加熱部50の動作を停止する。このため、クリーニング処理時の処理容器10内の温度は、処理装置1が設置されている周辺環境(例えば、工場のクリーンルームの環境)の影響を受けることで、同じ機種であっても各装置同士の間で変化する。
【0044】
図3は、クリーニング処理時の処理容器10の温度を例示する図表である。例えば図3に示すように、工場に設置された処理装置1(装置A~E)の処理容器10の温度は、加熱部50の非動作状態で、工場のファシリティ要因などにより30℃~38℃程度の間で変動する。なおクリーニング処理において、処理装置1は、冷却部60を動作してもよい。冷却部60を動作した場合でも、処理容器10に供給する空気は周辺環境の温度に依存するため、処理容器10は、やはり周辺環境に応じた温度でクリーニング処理を行うことになる。
【0045】
一例として、処理装置1は、熱の放射が大きい設備の近くに設置されていれば、処理容器10内の温度が自然に高くなる。あるいは、処理容器10は、空調設備の近くに設置されていれば、空調設備のダウンフローが当たるなどして処理容器10内の温度が低くなる。つまり、処理装置1は、装置毎の設置された周辺環境に応じて、異なる温度でクリーニング処理を実施することになる。
【0046】
ここで、クリーニング処理において、装置A~Eの処理容器10内の圧力を同じにしたまま、装置A~Eが互いに異なる温度でクリーニング処理を実施していると、例えば、温度が低い装置は、反応式(1)~(3)の反応が進んで処理容器10内に液水が生じる。この液水により、処理容器10内はエッチングムラが生じる可能性がある。このことから、本実施形態に係る制御部90は、温度センサ70が検出する処理容器10内の温度に基づき、クリーニング処理の動作を制御することで、クリーニング処理の最適化を図る。
【0047】
図4は、クリーニング処理の制御部90の機能ブロックを示すブロック図である。プロセッサ91は、クリーニング処理においてプログラムの実行下に、図4に示すように、温度取得部100、蒸気圧抽出部101、圧力算出部102、圧力制御部103、ガス供給制御部104を形成する。
【0048】
温度取得部100は、温度センサ70が検出した処理容器10内の検出温度を取得する。上記したように、温度センサ70は5つの測温子71~75を備えており、温度取得部100は、この温度センサ70によりウエハボート16の高さ方向に沿った5つのゾーン毎の温度を取得することができる。なお、温度センサ70が検出する処理容器10内の温度は、5つより少なくてもよく(1つを含む)、または5つより多くてもよい。
【0049】
図5は、温度センサ70が検出した温度の一例を示す図である。図5の例では、「TOP」位置の温度が34℃、「C-T」位置の温度が33℃、「CTR」位置の温度が32℃、「C-B」位置の温度が31℃、「BTM」位置の温度が30℃である。また、温度取得部100は、温度センサ70から取得した処理容器10内の検出温度をメモリ92に記憶する。
【0050】
さらに、温度取得部100は、5つのゾーン毎の温度を検出した場合に、メモリ92に記憶した検出温度に基づき、蒸気圧抽出部101に出力する1つの検出温度を選択または算出する。この際、温度取得部100は、5つのゾーン毎の温度の平均値または中央値を算出してもよく、5つのゾーン毎の温度のうち最大温度、最小温度を選択してもよい。図5の例では、5つのゾーン毎の温度の平均値(32℃)を算出している。
【0051】
蒸気圧抽出部101は、温度取得部100から出力された検出温度に基づき、処理容器10内の水の蒸気圧を抽出する。「蒸気圧」は、取得した検出温度において、気体になる分子数と液体に戻る分子数が釣り合った気液平衡となる気体の圧力をいう。このため、蒸気圧抽出部101は、検出温度に対応する水の蒸気圧曲線200を、内部の蒸気圧曲線記憶部101aに予め保有している。
【0052】
図6は、水の蒸気圧曲線200を例示するグラフである。図6に示すように、水の蒸気圧曲線200は、横軸を温度とし、縦軸を圧力とした場合に、温度が上昇するに連れて圧力が非線形に上昇する傾向を示す。図6のグラフにおいて、ちょうど蒸気圧曲線200に重なる箇所は気液平衡の状態にある。蒸気圧曲線200よりも上側の箇所は、飽和水蒸気圧を超えた水蒸気が凝縮することで液体が生じる状態にある。これに対して、蒸気圧曲線200よりも下側の箇所は、気体の水(水蒸気)として処理容器10内に存在することができる。上記したように、反応式(1)で生成された水が液水になって処理容器10内に付着すると、堆積膜のエッチングムラを生じさせる要因となる。このため、クリーニング処理において、制御部90は、蒸気圧曲線200に重なるか、蒸気圧曲線200よりも下側に処理容器10内の目標圧力が位置するように制御を行う。
【0053】
詳細には、蒸気圧抽出部101は、温度取得部100から検出温度を受け取ると、蒸気圧曲線記憶部101aに記憶されている蒸気圧曲線200を読み出して、蒸気圧曲線200に重なる蒸気圧(以下、算出用圧力ともいう)を認識する。すなわち、蒸気圧抽出部101は、図6に点線で示すように蒸気圧曲線200を通して、取得した検出温度(例えば、32℃)において気液平衡となる算出用圧力(35.7[Torr]≒4759.61[Pa])を抽出する。そして、蒸気圧抽出部101は、抽出した算出用圧力を圧力算出部102に出力する。
【0054】
圧力算出部102は、蒸気圧抽出部101から算出用圧力を受け取ると、当該算出用圧力に基づき処理容器10内の圧力を調整するための目標圧力を算出する。目標圧力は、クリーニング処理におけるエッチングレートを加味して算出されることが好ましい。
【0055】
図7は、クリーニング処理の検出温度が32℃だった場合における処理容器10の圧力とエッチングレートとの関係を示すグラフである。なお、図7に示すグラフは、横軸が処理容器10内の圧力であり、縦軸がエッチングレートである。図7の実線は、ウエハボート16の天板の位置Z1(図2参照)のエッチングレートを示している。図7の1点鎖線は、断熱ユニット27の小フィン29の最も上側の位置Z2(図2参照)のエッチングレートを示している。図7の2点鎖線は、断熱ユニット27の大フィン28の最も上側の位置Z3(図2参照)のエッチングレートを示している。図7の太い1点鎖線は、断熱ユニット27の大フィン28の最も下側の位置Z4(図2参照)のエッチングレートを示している。図7の太い2点鎖線は、蓋体21の位置Z5(図2参照)のエッチングレートを示している。
【0056】
図7に示すように、クリーニング処理では、処理容器10内の圧力が大きくなるにつれてエッチングレートが大きくなることが分かる。ただし、処理容器10内の圧力が大きくなる程、各位置Z1~Z5におけるエッチングレートが相互に離れていく傾向にあることが分かる。
【0057】
具体的に、図7のグラフにおいて40[Torr](≒5332.89[Pa])の圧力におけるエッチングレートを見ると、各位置Z1~Z5同士の間でエッチングレートが大きく乖離している(例えば、エッチングレートの最大値と最小値の差が40[nm/min]以上離れている)。また、35[Torr](≒4666.28[Pa])の圧力におけるエッチングレートを見ても、各位置Z1~Z5同士の間でエッチングレートに乖離が生じている。すなわち、処理容器10は、鉛直方向下側(断熱ユニット27付近)のほうが温度低下し易く水が多く存在し易い領域にあたる。そのため、鉛直方向下側に向かってエッチングレートが大きくなる傾向にある。特に、蓋体21の上面の位置Z5は、処理容器10内で最も温度が低くなり易く、液水が生じてエッチングが進みやすいことが分かる。
【0058】
一方、図7のグラフにおいて30[Torr](≒3999.67[Pa])の圧力におけるエッチングレートを見ると、位置Z1が若干低いものの位置Z2~Z5のエッチングレートは概ね一致していると言える。すなわち、処理容器10内の圧力が30[Torr]付近であれば、均一なエッチングを進行させることができる。また、20[Torr](≒2666.45[Pa])の圧力では、各位置Z1~Z5のエッチングレートが略一致しているが、エッチングレート自体が低くなっていることが分かる。
【0059】
以上のことから、圧力算出部102は、目標圧力を算出する場合に、エッチングレートの均一性を優先しつつ、エッチングレートがある程度高くなるような圧力を算出する。このため、圧力算出部102は、蒸気圧曲線200よりも多少低下した値となるように目標圧力を算出するとよい。
【0060】
目標圧力の算出方法は、特に限定されず、例えば、算出用圧力(蒸気圧)に対して所定の減算値Svを減算することがあげられる。減算値Svは、同じ形状の処理容器10を用いて実験などを行うことで、算出用記憶部102aに予め記憶しておくとよい。減算値Svは、クリーニング処理において、処理容器10内に設定した位置Z1~Z5毎におけるエッチングレートの最大値と最小値の差が20[nm/min]以下となるような値とする。例えば、検出温度が32℃の場合は、図7に示すように処理容器10の圧力が35[Torr]であると、位置Z5のエッチングレート(最大値)と位置Z1のエッチングレート(最小値)との差が20[nm/min]より大きくなる。一方、33[Torr](≒4399.64[Pa])以下になると、位置Z5のエッチングレートと位置Z1のエッチングレートとの差が20[nm/min]以下となる。したがって、目標圧力が33[Torr]以下となるように、減算値Svは、2.7[Torr]よりも大きな値にすることがあげられる。
【0061】
なお、制御部90は、処理容器10の圧力とエッチングレートとを対応させたマップ情報を複数の検出温度毎に備え、検出温度の取得時に当該検出温度に応じたマップ情報を参照してもよい。すなわち、制御部90は、エッチングレートの最大値と最小値との差が20[nm/min]以下となり、エッチングムラを抑制できる目標圧力を、マップ情報に基づき設定することができる。
【0062】
また、エッチングムラの抑制とエッチングレートの確保とを両立を図る場合、減算値Svは、より好ましくは、1[Torr]~10[Torr]の範囲の値に設定するとよい。一例として図7では、圧力算出部102は、減算値Svとして5.7[Torr](≒759.937[Pa])を予め記憶しており、算出用圧力を取得した際に5.7[Torr]を減算する。
【0063】
図3に示すように、各装置A~Eの蒸気圧(算出用圧力)は、検出温度に応じて変動する。圧力算出部102は、検出温度に対応する算出用圧力に対して同じ減算値Sv(例えば、5.7[Torr])を減算して目標圧力を得ることができる。また図3中では、圧力算出部102は、算出用圧力から減算値Svを減算した後に目標圧力の小数点以下を四捨五入する処理を行っている。これにより、目標圧力を自然数に設定でき、排気部40による圧力制御を簡素化できる。
【0064】
あるいは、減算値Svは、固定値ではなく変動値であってもよく、また処理装置1のユーザが設定する構成でもよい。例えば、検出温度が高い場合は、大きな減算値Svを設定する一方で、検出温度が低い場合は、小さな減算値Svを設定することがあげられる。また、減算値Svは、レシピなどに応じて設定されるクリーニング処理の時間に基づき変動してもよい。例えば、クリーニング処理の時間が長く設定される場合には、大きな減算値Svを設定して蒸気圧曲線200よりも目標圧力を充分に低くすることで、堆積膜のエッチングムラの抑制を優先するとよい。逆に、クリーニング処理の時間が短く設定される場合には、小さな減算値Svを設定して蒸気圧曲線200に近い目標圧力に設定することで、処理効率を優先することができる。
【0065】
なお、目標圧力は、蒸気圧曲線200に重なる蒸気圧(すなわち気液平衡の圧力)を用いてもよい。この場合、圧力算出部102は、抽出された蒸気圧を減算せずに、そのまま目標圧力に設定することになる。これにより、処理装置1は、クリーニング処理の期間を一層短縮化できる。換言すれば、制御部90は、エッチングの均一性およびエッチングレートを適宜勘案して、蒸気圧曲線200以下の目標圧力を設定すればよい。
【0066】
圧力制御部103は、圧力算出部102が算出した目標圧力に基づき、排気部40の圧力調整弁43の開度を調整する。また、ガス供給制御部104は、ガス供給部30の各構成(ガスノズル32に設置される流量調整器、開閉弁など)を制御して、処理容器10内へのフッ素を含有するクリーニングガスの供給量を調整する。これにより、処理装置1は、処理容器10内の圧力が目標圧力に調整されることになり、クリーニング処理を安定して行うことが可能となる。
【0067】
本開示の処理装置1は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下クリーニング処理における動作(クリーニング処理方法)について図8を参照して説明する。図8は、クリーニング処理方法の一例を示すフローチャートである。
【0068】
制御部90は、処理装置1の起動時や起動停止時、一の基板処理と他の基板処理の合間などの適宜のタイミングで、クリーニング処理を実施する。クリーニング処理の準備段階として、制御部90は、ウエハボート16にダミーウエハを収容した状態またはウエハボート16を空とした状態で、昇降機構25を上昇させて蓋体21により処理容器10を密閉する。なお、処理装置1は、処理容器10内にウエハボート16が存在しない状態で、クリーニング処理を実施してもよい。
【0069】
また上記したように、制御部90は、加熱部50の動作を停止状態とする。これにより、処理装置1の周辺環境の影響を受けて処理容器10の温度が変化する。
【0070】
このためクリーニング処理方法において、制御部90の温度取得部100は、温度センサ70により処理容器10内の温度を検出し、温度センサ70から検出温度を取得する(ステップS1)。この際、温度センサ70は、各測温子71~75により複数のゾーン毎の温度を検出して制御部90に送信する。これにより、温度取得部100は、各ゾーンの温度をメモリ92に記憶し、所定の選択方法または算出方法に基づき1つの検出温度を蒸気圧抽出部101に出力する。
【0071】
また、制御部90のガス供給制御部104は、ガス供給部30を制御することにより、ガスノズル32を介してHFなどのクリーニングガスを処理容器10内に供給する(ステップS2)。
【0072】
制御部90の蒸気圧抽出部101は、蒸気圧曲線記憶部101aに記憶した蒸気圧曲線200を参照して、温度取得部100から受け取った検出温度に対応する蒸気圧を抽出する(ステップS3)。そして、蒸気圧抽出部101は、抽出した蒸気圧を算出用圧力として圧力算出部102に出力する。
【0073】
さらに、圧力算出部102は、蒸気圧抽出部から入力された算出用圧力を用いて、処理容器10の目標圧力を算出する(ステップS4)。圧力算出部102は、例えば図7に示すように、算出用圧力から5.7[Torr]の減算値Svを減算することで、目標圧力を算出する。圧力算出部102は、算出した目標圧力を圧力制御部103に出力する。
【0074】
圧力制御部103は、圧力算出部102から入力した目標圧力に基づき、排気部40の圧力調整弁43や真空ポンプ44の動作を制御することで、処理容器10内の圧力が目標圧力となるように調整する(ステップS5)。また、制御部90のガス供給制御部104は、目標圧力に基づきガス供給部30を制御して、クリーニングガスの供給量を調整してもよい。これにより、クリーニング処理時における処理容器10内の圧力が目標圧力で維持される。よって、処理容器10内において生成された水は、凝縮せずに水蒸気として存在するようになる。
【0075】
つまり、処理容器10内では、水蒸気を維持しつつ、反応式(1)~(3)の反応を促進することができる。この結果、処理容器10内の各構成のエッチングムラを抑制することが可能となる。また処理装置1は、蒸気圧に近い目標圧力とすれば、クリーニング処理のエッチングレートをある程度確保することができるので、作業効率の低下を抑えることができる。
【0076】
なお、制御部90は、クリーニング処理時に、上記の処理フローを継続的に繰り返すことが好ましい。これにより、処理容器10内の温度が変化しても適切な目標圧力に直ちに調整することができ、処理容器10内の水蒸気を安定して維持することが可能となる。あるいは、制御部90は、クリーニング処理の開始時に、上記の処理フローにより目標圧力を設定した場合に、クリーニング処理の実施中はその目標圧力を維持してもよい。これにより、処理装置1は、目標圧力を短期間に変動させることを抑制して、処理を安定化させることができる。
【0077】
以上の実施形態で説明した本開示の技術的思想および効果について以下に記載する。
【0078】
本開示の第1の態様は、処理容器10と、処理容器10内の温度を検出する温度センサ70と、フッ素を含有するクリーニングガスを処理容器10内に供給するガス供給部30と、処理容器10内の圧力を調整する圧力調整部(ガス供給部30、圧力調整弁43)と、ガス供給部30および圧力調整部を制御して、処理容器10内の堆積膜を除去するクリーニング処理を行う制御部90と、を備える処理装置1であって、制御部90は、処理容器10内の温度と処理容器10内の水の蒸気圧を対応付けた蒸気圧曲線200を記憶部(蒸気圧曲線記憶部101a)に記憶しており、かつ制御部90は、クリーニング処理において、記憶部を参照して、温度センサ70が検出した検出温度と蒸気圧曲線200とに基づき、蒸気圧曲線200以下の目標圧力を設定し、処理容器10内の圧力が目標圧力となるように圧力調整部を制御する。
【0079】
上記によれば、処理装置1は、温度センサ70の検出温度に基づき蒸気圧曲線200以下の目標圧力を設定し、処理容器10内を目標圧力に調整することで、クリーニング処理において、処理容器10内での水の凝縮を抑制できる。これにより、処理装置1は、フッ素含有ガスおよび水によるエッチングムラを抑えて、クリーニング処理を安定して行うことが可能となる。例えば、処理装置1は、処理容器10内の構成の損傷を効果的に抑止できる。
【0080】
また、制御部90は、記憶部(蒸気圧曲線記憶部101a)を参照して、蒸気圧曲線200に基づき検出温度に応じた蒸気圧を抽出し、抽出した蒸気圧から減算値Svを減算することにより目標圧力を算出する。これにより、処理装置1は、検出温度に応じた目標圧力を簡単に得ることができる。
【0081】
また、減算値Svは、クリーニング処理において、処理容器10内に設定した複数の所定位置(位置Z1~Z5)毎におけるエッチングレートの最大値と最小値の差が20[nm/min]以下となる値である。これにより、処理装置1は、処理容器10内のエッチングを一層均一に行うことが可能となる。
【0082】
また、減算値Svは、1[Torr]~10[Torr]の範囲の値に設定される。これにより、処理装置1は、エッチングムラを抑制しつつ、処理容器10のエッチングレートを確保することが可能となり、処理の効率化を図ることができる。
【0083】
また、減算値Svは、抽出した蒸気圧またはクリーニング処理の処理時間に応じて変動する変動値である。これにより、処理装置1は、クリーニング処理の状況に応じて適切な目標圧力で処理を行うことができる。
【0084】
また、制御部90は、蒸気圧曲線200を参照して検出温度に応じた蒸気圧を目標圧力に設定する。これにより、処理装置1は、クリーニング処理において高い目標圧力を設定することが可能となり、クリーニング処理の期間を短くすることができる。
【0085】
また、温度センサ70は、処理容器10内の複数のゾーン毎の温度を検出し、制御部90は、温度センサ70から取得した複数のゾーン毎の温度に基づき、平均値、最大値、最小値または中央値のうちいずれか1つを検出温度として設定する。これにより、処理装置1は、処理容器10内の温度に追従した目標圧力を精度よく得ることができる。
【0086】
また、処理容器10は、シリコン酸化膜を基板Wに形成する基板処理を行うものであり、クリーニング処理では、処理容器10内に堆積した堆積膜としてシリコン酸化膜を除去する。これにより、処理装置1は、処理容器10内のシリコン酸化膜の堆積膜を安定してエッチングすることができる。
【0087】
また、本開示の第2の態様は、処理容器10内の堆積膜を除去するクリーニング処理方法であって、処理容器10内の温度を取得する工程と、フッ素を含有するクリーニングガスを処理容器10内に供給する工程と、温度を検出する工程で検出した検出温度と、処理容器10内の温度および処理容器10内の水の蒸気圧を対応付けた蒸気圧曲線200とに基づき、蒸気圧曲線200以下の目標圧力を設定する工程と、処理容器10内の圧力が目標圧力となるように処理容器10内の圧力を調整する工程と、を有する。これにより、クリーニング処理方法は、クリーニング処理をより安定して行うことができる。
【0088】
今回開示された実施形態に係る処理装置1は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0089】
本開示の処理装置1は、複数の基板Wを同時に処理する縦型処理装置に限定されず、横型処理装置でもよく、あるいは基板Wを1枚ずつ処理する枚葉装置などのクリーニング処理にも適用し得る。また例えば、処理装置1は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 処理装置
10 処理容器
30 ガス供給部
43 圧力調整弁
70 温度センサ
90 制御部
200 蒸気圧曲線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8