(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061302
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
G01N 30/30 20060101AFI20230424BHJP
G01N 30/60 20060101ALI20230424BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20230424BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
G01N30/30
G01N30/60 B
G01N30/02 B
G01N30/88 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171218
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】源 法雅
(72)【発明者】
【氏名】宝泉 雄介
(72)【発明者】
【氏名】森 聖年
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正人
(57)【要約】
【課題】液体クロマトグラフにおいて、分離工程後に分離カラムを速やかに降温させて分析時間の短縮化を図る。
【解決手段】液体クロマトグラフは、送液部と、試料注入部と、分離カラムと、分離カラムの温度を第1温度まで昇温させる第1温度調整装置と、検出器と、分離カラムよりも上流に設けられ、移動相の温度を、第1温度よりも低い第2温度に調整する第2温度調整装置と、送液部および第2温度調整装置の少なくとも一方を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、分離カラムによる試料成分の分離の終了後、次の試料の注入前に、第2温度に調整された移動相を分離カラムに送液するように、送液部および第2温度調整装置の少なくとも一方を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に移動相を送液する送液部と、
前記流路における前記送液部の下流に設けられ、前記移動相中に試料を注入する試料注入部と、
前記流路における前記試料注入部の下流に設けられ、前記試料中の試料成分を分離する分離カラムと、
前記分離カラムによる前記試料成分の分離中に前記分離カラムの温度を第1温度まで昇温させる第1温度調整装置と、
前記流路における前記分離カラムの下流に設けられ、前記分離カラムにより分離された試料成分を検出する検出器と、
を備える液体クロマトグラフであって、
前記流路における前記分離カラムよりも上流に設けられ、前記移動相の温度を、前記第1温度よりも低い第2温度に調整する第2温度調整装置と、
前記送液部および前記第2温度調整装置の少なくとも一方を制御する制御装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、前記分離カラムによる前記試料成分の分離の終了後、次の前記試料の注入前に、前記第2温度に調整された前記移動相を前記分離カラムに送液するように、前記送液部および前記第2温度調整装置の少なくとも一方を制御する液体クロマトグラフ。
【請求項2】
請求項1に記載の液体クロマトグラフであって、
前記送液部は、前記移動相を貯留する容器を備えており、
前記第2温度調整装置は、前記容器に設けられている液体クロマトグラフ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体クロマトグラフであって、
前記送液部は、前記移動相を貯留する容器と、該容器中の該移動相を前記流路に送液するポンプと、を備えており、
前記第2温度調整装置は、前記容器と前記ポンプとの間の前記流路上に設けられている液体クロマトグラフ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の液体クロマトグラフであって、
前記第2温度調整装置は、前記送液部と前記試料注入部との間の前記流路上に設けられている液体クロマトグラフ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の液体クロマトグラフであって、
前記送液部と前記試料注入部との間の前記流路上に配置されたアンモニアフィルタカラムをさらに備え、
前記第2温度調整装置は、前記アンモニアフィルタカラムに設けられている液体クロマトグラフ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の液体クロマトグラフであって、
前記第2温度調整装置は、前記試料注入部と前記分離カラムとの間の前記流路上に設けられている液体クロマトグラフ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の液体クロマトグラフであって、
前記移動相は、第1溶離液と該第1溶離液より後に試料の分離のために送液開始される第2溶離液とを含む2種類以上の溶離液を含み、
前記第2温度調整装置は、前記第1溶離液の温度を調整する液体クロマトグラフ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の液体クロマトグラフであって、
前記移動相は、前記試料の分離に使用しない調整液を含み、
前記第2温度調整装置は、前記調整液の温度を調整する液体クロマトグラフ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の液体クロマトグラフであって、
イオン交換クロマトグラフである液体クロマトグラフ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の液体クロマトグラフであって、
アミノ酸を分析するためのアミノ酸分析計である液体クロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体クロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
試料中の試料成分を分析する方法として、液体クロマトグラフィが知られている。液体クロマトグラフィでは、試料成分の分離性能の向上等の観点から、分離カラムの温度調整が行われる。
【0003】
例えば特許文献1には、検出ベースラインを安定化させるために分離カラムの温度コントロールを行う技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、移動相を分離カラム導入前に事前加熱するための加熱装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許6601439号公報
【特許文献2】米国特許出願公開2007/0181702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、液体クロマトグラフィでは、一般的に、分離カラムによる試料成分の分離工程中に分離カラムの温度を昇温させて分離性能の向上を図ることが行われる。この場合、分離工程後には、次の試料注入前に、次の分析に備えて分離カラムの温度を降温させる。そのような分離カラムの温度調整には、例えば冷風循環方式またはアルミニウムブロックの熱伝導方式の温度調整装置が用いられる。
【0007】
しかしながら、そのような温度調整装置では、分離カラムの降温に時間を要すという問題があった。
【0008】
また、特許文献1,2の技術は、分離カラムの検出ベースラインの安定化や移動相の加熱を目的とするものであり、上述のような分離カラムの降温に適用することは困難であるという問題があった。
【0009】
そこで、本開示では、液体クロマトグラフにおいて、分離工程後に分離カラムを速やかに降温させて分析時間の短縮化を図る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一実施形態に係る液体クロマトグラフは、流路に移動相を送液する送液部と、前記流路における前記送液部の下流に設けられ、前記移動相中に試料を注入する試料注入部と、前記流路における前記試料注入部の下流に設けられ、前記試料中の試料成分を分離する分離カラムと、前記分離カラムによる前記試料成分の分離中に前記分離カラムの温度を第1温度まで昇温させる第1温度調整装置と、前記流路における前記分離カラムの下流に設けられ、前記分離カラムにより分離された試料成分を検出する検出器と、を備える液体クロマトグラフであって、前記流路における前記分離カラムよりも上流に設けられ、前記移動相の温度を、前記第1温度よりも低い第2温度に調整する第2温度調整装置と、前記送液部および前記第2温度調整装置の少なくとも一方を制御する制御装置と、をさらに備え、前記制御装置は、前記分離カラムによる前記試料成分の分離の終了後、次の前記試料の注入前に、前記第2温度に調整された前記移動相を前記分離カラムに送液するように、前記送液部および前記第2温度調整装置の少なくとも一方を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、液体クロマトグラフにおいて、分離工程後に分離カラムを速やかに降温させて分析時間の短縮化を図ることができる。
【0012】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態および実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1に係るアミノ酸分析計100の装置構成および流路の概略図。
【
図2】実施例1に係るアミノ酸分析計100の動作を制御するタイムプログラム上のタイムテーブルの概略図。
【
図3】実施例1に係るアミノ酸分析計100の分離カラムの経時的な温度変化の一例を示すグラフ。
【
図4】実施例2に係るアミノ酸分析計100の
図1相当図。
【
図5】実施例3に係るアミノ酸分析計100の
図1相当図。
【
図6】実施例4に係るアミノ酸分析計100の
図1相当図。
【
図7】実施例5に係るアミノ酸分析計100の
図1相当図。
【
図8】実施例6に係るアミノ酸分析計100の
図1相当図。
【
図9】実施例7に係るアミノ酸分析計100の
図1相当図。
【
図10】実施例7に係るアミノ酸分析計100の
図2相当図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態を説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0015】
<液体クロマトグラフ>
液体クロマトグラフは、移動相を送液しながら試料の目的成分を分離カラムで分離し、分離された順に流れてくる成分を分光光度計等の検出器で検出して、試料の成分を分析する装置である。本開示に係る液体クロマトグラフは、例えば高速液体クロマトグラフ(HPLC)、超高速液体クロマトグラフ(UHPLC)等が挙げられ、限定する意図ではないが、好ましくはHPLCである。
【0016】
液体クロマトグラフには、試料中の親水性成分、疎水性成分、イオン性成分などを分離するため、順相モード、逆相モード、イオン交換モードなどの様々な分離モードの分離カラムが使用される。本開示に係る液体クロマトグラフの分離モードは、限定する意図ではないが、好ましくは逆相モードおよびイオン交換モードであり、より好ましくはイオン交換モードである。
【0017】
分離カラムの固定相の種類および移動相の種類は、分離モードにより異なる。
【0018】
具体的に、順相クロマトグラフィは、シリカゲル等の極性の高い固定相に、有機溶媒等の極性の低い移動相を流し、極性の低い成分から順に溶出させる方法である。
【0019】
逆相クロマトグラフィは、C18シリカカラム、C30シリカカラム等の極性の低い固定相に、水、メタノール、アセトニトリル等の極性の高い移動相を流し、疎水性の低い成分から順に溶出させる方法である。
【0020】
イオン交換クロマトグラフィは、イオン交換樹脂などのイオン交換体からなる固定相と緩衝液などからなる移動相の2つの相において、試料成分との間で生じる相互作用を利用して、異なる性質の試料成分を分離し、分析する方法である。イオン交換体はイオン交換基が化学修飾されていて、スルホン酸、カルボン酸などの陽イオン交換体と第四級アンモニウム、第三級アンモニウムなどの陰イオン交換体がある。
【0021】
イオン交換クロマトグラフは、具体的には例えば、タンパク質・ペプチドのアミノ酸組成分析、医薬品・生体液等のアミノ酸とその類縁物質等の分析に用いられるアミノ酸分析計、タンパク質、アミン類、有機酸等の分析に用いられるHPLCシステム等であり、好ましくはアミノ酸分析計である。
【0022】
イオン交換クロマトグラフにより分析される試料としては、例えばアミノ酸等が挙げられる。
【0023】
多種のアミノ酸を一斉分析するアミノ酸一斉分析では、分析対象となるアミノ酸およびアミノ酸類縁物質は大別して、約20種のタンパク質加水分解物アミノ酸と40種類以上の生体液アミノ酸およびアミノ酸類縁物質に分類できる。複数の緩衝液を混合し、混合した緩衝液に試料を添加し、分離カラムを通過させて検出することにより、これら多種のアミノ酸を一斉分析できる。
【0024】
本開示に係る液体クロマトグラフは、グラジエント溶離法により試料成分を分析する装置であってもよい。この場合、分離のための移動相としては、複数種類の溶離液が使用される。なお、本明細書において、「グラジエント」の語は、ステップワイズグラジエント、カーブドグラジエントおよびリニアグラジエントを含む語として使用される。
【0025】
本開示に係る液体クロマトグラフは、流路の上流側から順に、送液部と、試料注入部と、分離部と、検出器と、制御装置と、を備える。また、液体クロマトグラフは、流路における分離カラムよりも上流に設けられた第2温度調整装置を備える。液体クロマトグラフは、これらの構成に加え、その他の任意の構成を備えてもよい。具体的には例えば、試料成分の検出を容易にする観点から、プレカラム誘導体化またはポストカラム誘導体化用の試薬、ポンプ、ミキサ、反応カラム等の装置を備えてもよい。
【0026】
[送液部]
送液部は、流路に移動相を送液する。
【0027】
グラジエント溶離法を使用する場合には、送液部は、分離のための移動相として、第1溶離液と該第1溶離液の次に送液開始される第2溶離液とを含む2種類以上の溶離液を流路に送液する。また、送液部は、移動相として、分離カラムを洗浄するためのカラム洗浄液、分離カラムの状態を調整するための調整液等の試料の分離に使用しない移動相を送液可能としてもよい。カラム洗浄をカラム再生と表現する場合があり、洗浄液のことを再生液とも呼ぶ。
【0028】
溶離液は、液体クロマトグラフの分離モードにより異なるが、順相モードでは極性の低い有機溶媒等、逆相モードでは極性溶媒等、イオン交換モードでは例えばクエン酸ナトリウム緩衝液、クエン酸リチウム緩衝液等の緩衝液である。溶離液およびカラム洗浄液としては、液体クロマトグラフィにおいて一般的に用いられる各液を使用することができる。
【0029】
調整液としては、液体クロマトグラフィにおいて一般的に用いられる各液を使用することができ、具体的には例えば、イオン交換モードでは、低塩濃度水溶液、分離カラムの固定相が陽イオン交換体の場合は低pH水溶液、分離カラムの固定相が陰イオン交換樹脂の場合は高pH水溶液、蒸留水等の純水等を利用可能である。イオン交換モードの場合、調整液の塩濃度は、溶離液の塩濃度よりも低いことが好ましい。また、イオン交換モードの場合、分離カラムの塩濃度を初期状態に速やかに遷移させる観点から、調整液として、純水を用いることがより好ましい。また、分離カラムの固定相が陽イオン交換体の場合であって、調整液として上記低pH水溶液を使用する場合は、当該低pH水溶液のpHは、溶離液のpHよりも低いことが好ましい。分離カラムの固定相が陰イオン交換樹脂の場合であって、調整液として上記高pH水溶液を使用する場合は、当該高pH水溶液のpHは、溶離液のpHよりも高いことが好ましい。
【0030】
なお、グラジエント溶離法を使用する場合、2種類以上の溶離液の中で、第1溶離液は1番目に分離カラムに導入される溶離液である。第1溶離液は、少なくとも後述する注入前送液工程、好ましくは冷却工程および注入前送液工程において分離カラムに導入される。従って、第1溶離液は、試料成分の分離に寄与する溶離液としての役割に加え、分離カラムを安定化させる役割を有する。一方、第2溶離液は、第1溶離液に比べて、試料成分の分離に寄与する役割が大きく、分離カラムを安定化させる役割を有しなくてもよい。
【0031】
分離モードがイオン交換モードの場合、第1溶離液の塩濃度は、第2溶離液の塩濃度よりも低いことが好ましい。これにより、分離カラムを効果的に安定化させることができる。そうして、第2溶離液を含む残りの溶離液による試料成分の分離性能を向上させることができる。なお、本明細書において、「塩濃度」とは、溶離液に含まれる陽イオン濃度または陰イオン濃度を意味する。具体的には、第1溶離液の塩濃度は0.05N以上0.2N未満であることが好ましく、0.12N以上0.19N以下であることがより好ましい。第2溶離液の塩濃度は0.16N超1.2N未満であることが好ましく、0.2N以上1N以下であることがより好ましい。
【0032】
また、分離モードがイオン交換モードの場合、第1溶離液のpHと第2溶離液のpHとの差は0.5以内であることが好ましく、0.3以内であることがより好ましい。後述する分離カラムの固定相が陽イオン交換樹脂である場合には、第1溶離液のpHは、第2溶離液のpHよりも高いことがより好ましい。これにより、分離カラムを効果的に安定化させることができる。そうして、第2溶離液を含む残りの溶離液による試料成分の分離性能を向上させることができる。
【0033】
なお、分離モードがイオン交換モードであって、後述する分離カラムの固定相が陽イオン交換体である場合は、第1溶離液および第2溶離液のpHは、3付近、具体的には2.5以上3.5以下であることが好ましい。また、この場合、溶離液が3種類以上の溶離液を含む場合、第2溶離液の次に送液開始される第3溶離液のpHは、第1溶離液および第2溶離液のpHよりも高いことが好ましい。
【0034】
送液部は、具体的には例えば、溶離液、カラム洗浄液、調整液等の各移動相を貯留する容器、各容器内の移動相を流路に送液開始・終了または各液の流量を調整する電磁弁、各容器中の移動相を流路に送液するとともに、各移動相の流速を調整するポンプ等により構成される。電磁弁は、各容器に対応して設けられた流路上に、各容器に対応して設けることができる。ポンプは、流路上の上記電磁弁の下流に設けることができる。具体的には例えば、各容器に対応する流路は、電磁弁の下流において合流して1つの流路となり、当該流路上に1つのポンプを設けてもよい(低圧グラジエント溶離)。また、各容器に対応する流路上に各容器に対応してポンプを複数設けてもよい(高圧グラジエント溶離)。
【0035】
[試料注入部]
試料注入部は、流路における送液部の下流に設けられ、流路を流れる移動相中に試料を注入するための手段である。試料注入部は、手動式のマニュアルインジェクタであってもよいし、自動式のオートサンプラであってもよいが、試料の注入タイミングおよび注入量を精度よく制御する観点から、好ましくはオートサンプラである。
【0036】
[分離部]
分離部は、流路における試料注入部の下流に設けられ、試料中の試料成分を分離する分離カラムと、分離カラムによる試料成分の分離中に分離カラムの温度を第1温度まで昇温させる第1温度調整装置と、を備える。
【0037】
分離カラムとしては、特に限定されるものではなく、液体クロマトグラフィに一般的に用いられるカラムを使用することができる。分離モードがイオン交換モードの場合、分離カラムの固定相は、陽イオン交換樹脂などの陽イオン交換体であってもよいし、陰イオン交換樹脂などの陰イオン交換体であってもよいが、陽イオン交換体であることが好ましく、陽イオン交換樹脂であることがより好ましい。
【0038】
第1温度調整装置は、分離カラムの温度を第1温度まで昇温できる装置であれば特に限定されず、例えばヒータ、ペルチェ素子、ヒートポンプ等の公知の装置である。第1温度調整装置は、分離カラムに設けられていてもよいし、分離カラムよりも上流の流路に設けられて分離カラムに送液される移動相を昇温させる構成であってもよい。第1温度は、一般的な液体クロマトグラフィにおいて採用される温度でよく、限定する意図ではないが、具体的には例えば60℃以上、好ましくは70℃以上100℃以下とすることができる。
【0039】
[検出器]
検出器は、流路における分離カラムの下流に設けられ、分離カラムにより分離された試料成分を検出するための装置である。検出器としては、特に限定されるものではなく、液体クロマトグラフィに一般的に用いられる例えば電気伝導度検出器、紫外・可視吸光光度検出器、蛍光光度検出器、電気化学的検出器等の検出器を使用することができる。
【0040】
[第2温度調整装置]
第2温度調整装置は、流路における分離カラムよりも上流に設けられ、移動相の温度を、第1温度よりも低い第2温度に調整するための装置である。
【0041】
第2温度調整装置は、移動相の温度を第2温度に調整できる装置であれば限定されず、例えばペルチェ冷蔵庫、ペルチェ素子、コンプレッサ冷蔵庫、低温恒温水循環装置、液化二酸化炭素ボンベ利用冷却器等の公知の装置である。第2温度調整装置は、分離カラムよりも上流であれば、例えば各移動相を貯留する容器に設けられてもよいし、例えば各容器とポンプとの間の流路上、送液部と試料注入部との間の流路上、試料注入部と分離カラムとの間の流路上等に設けられてもよい。また、例えば送液部と試料注入部との間の流路上にアンモニアフィルタカラム等の任意の要素が配置されている場合は、当該任意の要素に第2温度調整装置を設けてもよい。
【0042】
第2温度調整装置により温度調整される移動相は、溶離液、カラム洗浄液および調整液のいずれであってもよい。グラジエント溶離法を使用する場合には、第2温度調整装置は、第1溶離液、カラム洗浄液および調整液のいずれかの温度を調整することが好ましい。
【0043】
第2温度は、第1温度よりも低い温度である。なお、第2温度は、分離カラムの降温速度を向上させる観点から、より低い方が好ましいが、移動相が凝固しない温度であることが好ましい。また、第2温度は、分離工程前の分離カラムの初期温度以下であることが好ましく、初期温度よりも低いことがより好ましい。これにより、分離カラムの降温を加速できる。第2温度は、限定する意図ではないが、具体的には例えば0℃以上40℃以下、好ましくは0℃以上25℃以下、より好ましくは0℃以上20℃以下とすることができる。
【0044】
[制御装置]
制御装置は、送液部および第2温度調整装置の少なくとも一方を制御する装置である。
【0045】
具体的には、制御装置は、例えば送液部の電磁弁およびポンプ、オートサンプラの場合には試料注入部、第1温度調整装置、第2温度調整装置等に電気的に無線または有線接続されており、これらに制御信号を送ってこれらの動作を制御する。また、制御装置は、例えば検出器等にも電気的に無線または有線接続されており、例えば検出器の検出結果を取得してクロマトグラムおよびデータとして出力する。制御装置は、例えば周知のマイクロコンピュータをベースとする装置であり、外部からの情報を入力する入力部、情報を記憶する記憶部、各種情報に基づいて各種演算を行う演算部、および情報を出力する表示部等の出力部等を備える。
【0046】
制御装置の記憶部には、後述する分析工程を実行するためのタイムプログラムが格納されている。タイムプログラムは、後述する分析工程に含まれる各工程に対応するタイムテーブルを備える。なお、グラジエント溶離法を使用する場合には、タイムプログラムは、溶離液の混合比率を変化させて、該溶離液を送液部に送液させるためのグラジエント溶離タイムプログラムを含む。すなわち、グラジエント溶離法を用いて分析を行う液体クロマトグラフでは、制御装置は、当該グラジエント溶離タイムプログラムに基づいて、2種類以上の溶離液の混合比率を変化させて、送液部に送液させる。
【0047】
<液体クロマトグラフの分析工程>
液体クロマトグラフの分析工程は、試料注入工程と、分離工程と、冷却工程と、注入前送液工程と、を備え、これらの工程を1メソッドとして、ユーザにより設定された回数分繰り返される。また、分析工程は、後述するように、分離工程後注入前送液工程前に、洗浄工程および調整工程の少なくとも一方を備えてもよい。
【0048】
試料注入工程は、試料注入部により流路に試料が注入される工程である。タイムプログラムは、限定する意図ではないが、当該試料注入工程を時刻ゼロとして作成され得る。
【0049】
分離工程は、試料注入工程後に、分離カラムにおいて、試料の試料成分を分離する工程である。グラジエント溶離法を使用する場合は、少なくとも分離工程において、溶離液は、上述のグラジエント溶離タイムプログラムに基づいて、送液される。
【0050】
なお、分離工程では、分離カラムによる分離性能向上の観点から、第1温度調整装置により分離カラムの温度は第1温度にまで昇温される。すなわち、分離工程終了時の分離カラムの温度は第1温度にまで昇温されている。
【0051】
分離工程が終了すると、次のメソッドのために、分離カラムの状態を試料注入前の状態、すなわち初期状態へ遷移させて安定化させる必要がある。分離工程後の冷却工程および注入前送液工程は、そのために設けられている。
【0052】
冷却工程では、冷却工程用の移動相として、例えば第2温度に温度調整した溶離液、水とアルコールとの混合溶液等の不凍液等、好ましくは第1溶離液を送液して、分離カラムの温度を低下させる。
【0053】
さらに、注入前送液工程において、次のメソッドの試料注入工程前に、少なくとも第1溶離液を送液させて分離カラムを安定化させる。
【0054】
なお、分離工程後注入前送液工程前に、洗浄工程および調整工程の少なくとも一方を設けてもよい。
【0055】
洗浄工程は、カラム洗浄液を送液して分離カラムを洗浄する工程である。
【0056】
調整工程は、調整液を送液して分離カラムの状態を調整する工程である。
【0057】
なお、冷却工程で送液する第2温度に温度調整した移動相は、上述のカラム洗浄液および調整液の少なくとも一方でもよい。カラム洗浄液を使用する場合は、冷却工程は、洗浄工程を兼ねることができる。また、調整液を使用する場合は、冷却工程は、調整工程を兼ねることができる。そうして、分離カラムの温度、塩濃度、pH等の状態を速やかに初期状態へ遷移させて安定化できる。
【0058】
<液体クロマトグラフの制御方法>
本開示の液体クロマトグラフは、以下を特徴とする。
【0059】
制御装置は、分離カラムによる試料成分の分離の終了後、次の試料の注入前に、第2温度に調整された移動相を分離カラムに送液するように、送液部および第2温度調整装置の少なくとも一方を制御する。すなわち、制御装置は、冷却工程で、第2温度に調整された移動相を分離カラムに送液するように、タイムプログラムを実行する。
【0060】
例えば、第2温度調整装置が移動相の容器に設けられている場合には、当該容器に対応する電子弁を開けて、第2温度に調整された移動相を分離カラムに送液させる。また、第2温度調整装置が、例えば各容器とポンプとの間の流路上、送液部と試料注入部との間の流路上、試料注入部と分離カラムとの間の流路上等に設けられている場合には、冷却工程で送液される移動相に対応する電子弁を開けるとともに、当該移動相が第2温度に調整されるように、第2温度調整装置を制御する。
【0061】
上述のごとく、分離工程終了時の分離カラムの温度は、第1温度にまで昇温されている。次のメソッドの分析工程を実行するためには、分離カラムの温度を分離工程前の初期温度にまで低下させる必要がある。
【0062】
従来、分離工程後の分離カラムの温度を低下させるために、冷風循環方式またはアルミニウムブロックの熱伝導方式の温度調整装置が用いて分離カラムを冷却することが行われている。しかしながら、そのような温度調整装置では、分離カラムの降温に時間を要する。
【0063】
本開示に係る液体クロマトグラフでは、冷却工程で、第1温度よりも低い第2温度に調整された移動相を分離カラムに送液する。これにより、第2温度に調整された移動相が分離カラム内部の固定相に直接接触するから、従来に比べて、分離カラムの温度をより速やかに第2温度にまで低下させることができる。そうして、分離カラムの温度を初期温度に速やかに遷移させることができ、液体クロマトグラフの分析時間の短縮化を図ることができる。
【0064】
また、冷却工程以外の工程、特に注入前送液工程及び分離工程における第1温度調整装置の温度制御はファイン制御であることが好ましい。特に注入前送液工程では、次の試料注入に向けて分離カラムを高精度の恒温状態とするファイン制御を行うことが望ましい。一方、冷却工程における第2温度調整装置の温度制御はコース制御でよい。これにより、本開示に係る液体クロマトグラフは、分離工程後の急速な冷却能力及び分析に適する高精度な分離カラムの温度管理能力を兼ね備えることができる。なお、上記コース制御は、上記ファイン制御に比べて、5~10倍程度の温度誤差範囲内の制御とすることができる。
【実施例0065】
以下、図面を用いて本開示の実施例に係るアミノ酸分析計100(液体クロマトグラフ)およびその制御方法を説明する。
【0066】
[実施例1]
図1は、本開示の実施例1に係るアミノ酸分析計100の装置構成および流路の概略図である。
【0067】
アミノ酸分析計100には、移動相として、第1溶離液1~第4溶離液4、蒸留水5、カラム洗浄液6(それぞれ、「B1液」~「B6液」ともいう。)が設置可能である。この中から、電磁弁7A~7Fによっていずれかの液が選ばれ、移動相ポンプ9によって送液される。溶離液は、アンモニアフィルタカラム11を経たのち、分離カラム13に導入される。アンモニアフィルタカラム11の下流且つ分離カラム13の上流には、オートサンプラ12(試料注入部)が設けられており、アミノ酸試料がオートサンプラ12によって流路の溶離液中に注入される。注入されたアミノ酸試料は、溶離液とともに分離カラム13に到達し、分離カラム13で分離される。
【0068】
アミノ酸分析計100は、ニンヒドリン試薬8およびニンヒドリン試薬8を送液させるためのニンヒドリンポンプ10も備えている。分離カラム13において分離された各アミノ酸成分は、ニンヒドリンポンプ10によって送られてきたニンヒドリン試薬8とミキサ14で混合し、加熱された反応カラム15で反応する。
【0069】
反応によって発色したアミノ酸(ルーエマンパープル)は検出器16で連続的に検知され、データ処理装置17(制御装置)によってクロマトグラムおよびデータとして出力され、記録、保存される。
【0070】
B1液を貯留する容器には、B1液の温度を調整するためのペルチェ冷蔵庫21(第2温度調整装置)が設けられている。なお、B2液~B6液の容器にも、これらの移動相の温度を調整する温度調整装置を備えてもよい。また、分離カラム13には、分離カラム13の温度を調整する第1温度調整装置13Aが設けられている。反応カラム15等にも、その温度を調整する温度調整装置(図示せず)が設けられていてもよい。
【0071】
データ処理装置17は、B1液~B6液の各移動相を貯留する各容器の電磁弁7A~7F、移動相ポンプ9、ニンヒドリンポンプ10、オートサンプラ12、第1温度調整装置13A、ペルチェ冷蔵庫21、各移動相の容器および反応カラム15等の温度を調整する温度調整装置(図示せず)を制御する。この制御は主としてデータ処理装置17の記憶部(図示せず)に格納されたタイムプログラムによって実行される。
【0072】
図2は、アミノ酸分析計100のタイムプログラム上のタイムテーブルの概略図である。また、
図3は、アミノ酸分析計100の分析工程における分離カラム13の経時的な温度変化の一例を示している。
【0073】
図2に示すように、試料注入工程で、オートサンプラ12により流路へ試料が注入されると、分離工程が始まる。分離工程では、グラジエント溶離タイムプログラムに基づいて、第1溶離液(B1液)から第2溶離液2(B2液)を経て第3溶離液3(B3液)および第4溶離液4(B4液)が、混合比率を変化させて、順に分離カラム13へ送液される。そうして、試料成分の分離が行われる。分析対象の試料成分が全て溶出し、分離工程が終了すると、洗浄工程が開始し、カラム洗浄液6(B6液)が送液され、分離カラム13の洗浄が行われる。
【0074】
なお、
図3に示すように、分離工程の開始時には約30℃(初期温度)であった分離カラム13の温度は、第1温度調整装置13Aの加温により、分離工程中に徐々に昇温し、分離工程および洗浄工程の終了時には約80℃(第1温度)にまで上昇した状態となっている。
【0075】
洗浄工程が終了すると、冷却工程が開始する。冷却工程では、ペルチェ冷蔵庫21により冷却されたB1液が分離カラム13に送液される。
【0076】
詳細には、
図1のアミノ酸分析計100では、B1液の温度はペルチェ冷蔵庫21により、約30℃(第2温度)に保持されている。洗浄工程終了後、温度調整されたB1液が分離カラム13に送液される。これにより、
図3に示すように、洗浄工程終了後の分離カラム13の温度が急激に低下する。そうして、分離カラム13の温度を速やかに分離工程前の初期温度に遷移させることができる。
【0077】
なお、本実施例では、1メソッド全体に亘って、B1液の温度は、ペルチェ冷蔵庫21により、初期温度である約30℃に保持されているが、本構成に限られない。例えば、分離カラム13の温度が十分に低下したら、ペルチェ冷蔵庫21による温度制御を終了してもよい。この場合、冷却工程に先だって、すなわち、例えば分離工程の後半から洗浄工程の間等に、B1液の温度を約30℃(第2温度)に保持するように、ペルチェ冷蔵庫21を制御すればよい。また、B1液の温度を冷却工程に先だって初期温度よりも低い第2温度に調整しておき、冷却工程後には初期温度等に調整するように、ペルチェ冷蔵庫21を制御してもよい。なお、温度が十分に低下した際、温度制御は終了できるが、
図2に示すようなタイムプログラムは一定の方が望ましい。なぜならば、濃度やpHの時間変化サイクルを一定にするために移動相は一定間隔で送液する必要がある。
【0078】
なお、冷却工程では、分離カラム13に設けられた温度調整装置も、温度調整を終了するか、または、初期温度等に設定しておくことが好ましい。これにより、分離カラム13が速やかに降温される。
【0079】
冷却工程が終了すると、注入前送液工程が開始される。注入前送液工程は、試料注入工程前に、分離カラム13へ少なくともB1液を送液する工程である。これにより、試料注入前に分離カラム13を安定化させることができる。注入前送液工程において送液されるB1液は、初期温度等に調整されていてもよいし、常温に保持されていてもよい。注入前送液工程では、分離カラム13の温度は、温度調整装置により、初期温度に調整されていることが好ましい。
【0080】
[実施例2]
以下、本開示に係る他の実施例について詳述する。なお、これらの実施例の説明において、実施例1と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0081】
図4は、本開示の実施例2に係るアミノ酸分析計100の装置構成および流路の概略図である。
【0082】
実施例2では、B1液として、ペルチェ冷蔵庫21により温度調整されたB1液と、常温のB1液との2種類が設置されている。
【0083】
本構成では、電磁弁7Aおよび7Bの切り替えにより、冷却工程ではペルチェ冷蔵庫21により温度調整されたB1液を送液し、注入前送液工程および分離工程では常温のB1液を送液すればよい。これにより、例えば第2温度を初期温度よりも低い温度として、分離カラムの降温をさらに加速できる。
【0084】
[実施例3]
図5は、本開示の実施例3に係るアミノ酸分析計100の装置構成および流路の概略図である。
【0085】
実施例3では、溶離液としてB1液~B3液が設置されている。なお、B1液を貯留する容器は2つあり、一方の容器に貯留されたB1液が必要に応じて他方の容器にポンプ23により送液されるようになっている。他方の容器にはペルチェ冷蔵庫21が設けられており、他方の容器に送液されたB1液は当該ペルチェ冷蔵庫21により温度調整される。
【0086】
ポンプ23としては、限定する意図ではないが、例えばローラポンプ等の一般的な低コストの送液ポンプを使用できる。ポンプ23は、データ処理装置17により制御される。
【0087】
本構成では、ポンプ23による送液と、電磁弁7Aおよび7Bの切り替えとにより、冷却工程ではペルチェ冷蔵庫21により温度調整されたB1液を送液し、注入前送液工程および分離工程では常温のB1液を送液する。具体的には例えば、洗浄工程中に、一方の容器内のB1液の一部をポンプ23により他方の容器内へ送液しておき、冷却工程が開始したところで、他方の容器内のB1液を分離カラム13へ送液する。冷却工程が終了すると、電磁弁7Aを閉じ、電磁弁7Bを開けて、一方の容器内のB1液を送液する。本構成によれば、実施例3と同様に、例えば第2温度を初期温度よりも低い温度として、分離カラムの降温をさらに加速できる。
【0088】
[実施例4]
図6は、本開示の実施例4に係るアミノ酸分析計100の装置構成および流路の概略図である。
【0089】
実施例4では、電磁弁7Aと移動相ポンプ9との間の流路上にペルチェ素子22が設けられている。ペルチェ素子22は、具体的には例えば、流路を形成する部材に、アルミニウムブロック等を介して設置されており、データ処理装置17により制御される。ペルチェ素子22は、電磁弁7Aを開けた状態で流路内を流れるB1液の温度調整を行うことができる。
【0090】
本構成では、冷却工程において、ペルチェ素子22により温度調整されたB1液が分離カラムに送液される。注入前送液工程では、例えばペルチェ素子22による温度調整を終了してもよいし、ペルチェ素子22の温度設定を初期温度としてもよい。
【0091】
[実施例5]
図7は、本開示の実施例5に係るアミノ酸分析計100の装置構成および流路の概略図である。
【0092】
図7に示すように、移動相ポンプ9とオートサンプラ12との間の流路上に、ペルチェ素子22を設けてもよい。なお、
図7に示す例では、熱容量の大きいアンモニアフィルタカラム11を構成する部材に、例えばアルミニウムブロック等を介してペルチェ素子22を設けている。図示はしないが、アンモニアフィルタカラム11に代えて、ペルチェ素子22を設置してもよいし、移動相ポンプ9とアンモニアフィルタカラム11との間またはアンモニアフィルタカラム11とオートサンプラ12との間の流路上にペルチェ素子22を設置してもよい。
【0093】
冷却工程では、ペルチェ素子22による温度調整を行い、流路内のB1液の温度を調整する。注入前送液工程では、例えばペルチェ素子22による温度調整を終了してもよいし、ペルチェ素子22の温度設定を初期温度としてもよい。
【0094】
[実施例6]
図8は、本開示の実施例6に係るアミノ酸分析計100の装置構成および流路の概略図である。
【0095】
図8に示すように、オートサンプラ12と分離カラム13との間の流路に、ペルチェ素子22を設けてもよい。
【0096】
冷却工程では、ペルチェ素子22による温度調整を行い、流路内のB1液の温度を調整する。注入前送液工程では、例えばペルチェ素子22による温度調整を終了してもよいし、ペルチェ素子22の温度設定を初期温度としてもよい。
【0097】
[実施例7]
図9は、本開示の実施例7に係るアミノ酸分析計100の装置構成および流路の概略図である。
図10は、本実施例におけるアミノ酸分析計100のタイムプログラム上のタイムテーブルの概略図である。
【0098】
分析時間を短縮化する観点から、分離用の溶離液ではなく、分離カラム13の状態を調整するための専用の調整液を利用することにより、分離カラム13を試料注入前の初期状態に迅速に遷移させる方法も考えられる。
【0099】
調整液は、溶離液とは異なり、試料成分の分離には使用されない。調整液としては、上述のごとく、低塩濃度および/または低pH水溶液、蒸留水等の純水を利用可能である。あるいは、溶離液よりも高塩濃度の調整液や高pH水溶液の調整液を使用することもできる。調整液は、試料注入前の初期状態に迅速に遷移させるために、溶離液の塩濃度範囲やpH範囲から外れていることが特徴である。
【0100】
具体的には例えば、
図9および
図10に示すように、蒸留水5を貯留する容器にペルチェ冷蔵庫21を設け、冷却工程で、ペルチェ冷蔵庫21により温度調整された蒸留水5を分離カラムに導入する。これにより、分離カラム13の温度に加え、塩濃度およびpH等も速やかに初期状態に遷移させることができる。
【0101】
[変形例]
上記各実施例では、冷却工程を洗浄工程後注入前送液工程前に設ける構成であったが、冷却工程は、分離工程後、洗浄工程前に設けてもよい。また、実施例1~6では、冷却工程でB1液を送液する構成であったが、B6液を送液してもよい。この場合、冷却工程は洗浄工程を兼ねることができる。
【0102】
なお、本開示は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。