(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061310
(43)【公開日】2023-05-01
(54)【発明の名称】作業機械制御システム、作業機械、管理装置及び作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20230424BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171230
(22)【出願日】2021-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】洪水 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】山本 透
(72)【発明者】
【氏名】吉原 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】小岩井 一茂
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB02
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA02
2D003BB12
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA04
2D003DB01
2D003DB03
2D003DB04
2D003FA02
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】作業機械の操作装置に与えられるオペレータによる操作を、オペレータの操作技量に応じて適切にアシストすることが可能な作業機械制御システム、作業機械、管理装置及び作業機械の制御方法を提供する。
【解決手段】作業機械制御システムは、オペレータの操作技量を判定する操作技量判定器51と、操作技量過去データとこの操作技量過去データに関連づけられた制御パラメータ過去データとを含む複数のデータ群を記憶するデータ群記憶器62と、操作技量を含む情報である稼働情報と複数のデータ群とを用いて制御パラメータを設定するパラメータ設定器54と、アシスト量を制御パラメータを用いて演算するアシスト量演算器55と、操作装置に与えられる操作の操作量とアシスト量とを用いて、制御対象を作動させるための制御指令を演算し、制御指令を制御対象に入力する制御指令演算器56と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械を制御するための制御システムであって、
前記作業機械における制御対象を作動させるための操作がオペレータによって与えられる操作装置と、
前記オペレータの操作技量を判定する操作技量判定器と、
過去作業に関する複数のデータ群を記憶するデータ群記憶器であって、前記複数のデータ群のそれぞれが前記過去作業における操作技量過去データと前記操作技量過去データに関連づけられた制御パラメータ過去データとを含むデータ群記憶器と、
前記操作技量を含む情報である稼働情報と前記複数のデータ群とを用いて制御パラメータを設定するパラメータ設定器と、
前記オペレータによる前記操作をアシストするためのアシスト量を前記制御パラメータを用いて演算するアシスト量演算器と、
前記操作装置に与えられる前記操作の操作量と前記アシスト量とを用いて、前記制御対象を作動させるための制御指令を演算し、前記制御指令を前記制御対象に入力する制御指令演算器と、を備える作業機械制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械制御システムであって、
前記作業機械により行われている作業の内容である作業内容を判定する作業内容判定器をさらに備え、
前記稼働情報は、前記作業内容をさらに含み、
前記複数のデータ群のそれぞれは、前記過去作業における作業内容過去データをさらに含む、作業機械制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械制御システムであって、
前記パラメータ設定器は、前記作業内容に対応する前記作業内容過去データを含み、かつ、判定された前記操作技量に適した少なくとも一つのデータ群を前記複数のデータ群から選択し、選択された前記少なくとも一つのデータ群に含まれる前記制御パラメータ過去データを用いて前記制御パラメータを設定する、作業機械制御システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の作業機械制御システムであって、
前記パラメータ設定器は、前記操作技量に適した2つ以上のデータ群を前記複数のデータ群から選択し、選択された前記2つ以上のデータ群に含まれる前記制御パラメータ過去データを用いて前記制御パラメータを設定する、作業機械制御システム。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の作業機械制御システムであって、
前記操作技量に関連付けて目標操作技量を設定する目標設定器をさらに備え、
前記パラメータ設定器は、前記目標操作技量に基づく前記制御パラメータを設定する、作業機械制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機械制御システムであって、
前記操作技量の目標を入力することが可能な目標入力器をさらに備え、
前記目標設定器は、入力された前記操作技量の目標と前記操作技量とを用いて前記目標操作技量を設定する、作業機械制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の作業機械制御システムであって、
前記操作技量を表示する表示器をさらに備える、作業機械制御システム。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の作業機械制御システムであって、
前記複数のデータ群は、前記オペレータとは異なる他のオペレータに関するデータ群を含む、作業機械制御システム。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の作業機械制御システムであって、
前記作業機械に搭載され、前記稼働情報を記憶する作業機械記憶器と、
前記作業機械に搭載された作業機械通信器と、をさらに備え、
前記データ群記憶器は、前記作業機械から離れた場所に配置された管理装置に搭載され、
前記作業機械通信器は、前記作業機械による作業が終了又は中断したときに前記作業機械記憶器に記憶された前記稼働情報を前記管理装置に送信する、作業機械制御システム。
【請求項10】
作業機械における制御対象を作動させるための操作がオペレータによって与えられる操作装置と、
前記オペレータの操作技量を判定する操作技量判定器と、
前記操作技量を含む情報である稼働情報と過去作業に関する複数のデータ群とを用いて制御パラメータを設定するパラメータ設定器であって、前記複数のデータ群のそれぞれが前記過去作業における操作技量過去データと前記操作技量過去データに関連づけられた制御パラメータ過去データとを含むパラメータ設定器と、
前記オペレータによる前記操作をアシストするためのアシスト量を前記制御パラメータを用いて演算するアシスト量演算器と、
前記操作装置に与えられる前記操作の操作量と前記アシスト量とを用いて、前記制御対象を作動させるための制御指令を演算し、前記制御指令を前記制御対象に入力する制御指令演算器と、を備える作業機械。
【請求項11】
請求項1~8の何れか1項に記載の作業機械制御システムに用いられ、前記作業機械から離れた場所に配置された管理装置であって、前記データ群記憶器を備える管理装置。
【請求項12】
請求項11に記載の管理装置であって、
前記作業機械から送信される前記稼働情報を受信する通信器である管理装置通信器と、
前記複数のデータ群を用いて前記作業機械の前記稼働情報に適したデータ群である対象データ群を設定するデータ群設定器と、をさらに備え、
前記管理装置通信器は、設定された前記対象データ群を前記作業機械に送信する、管理装置。
【請求項13】
作業機械における制御対象を作動させるためのオペレータによる操作をアシストするための作業機械の制御方法であって、
過去作業に関する複数のデータ群であって前記複数のデータ群のそれぞれが前記過去作業における操作技量過去データと前記操作技量過去データに関連づけられた制御パラメータ過去データとを含むような前記複数のデータ群を記憶することと、
前記オペレータの操作技量を判定することと、
前記操作技量を含む情報である稼働情報と前記複数のデータ群とを用いて制御パラメータを設定することと、
前記オペレータによる前記操作をアシストするためのアシスト量を前記制御パラメータを用いて演算することと、
前記操作の操作量と前記アシスト量とを用いて、前記制御対象を作動させるための制御指令を演算し、前記制御指令を前記制御対象に入力することと、を備える作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械制御システム、作業機械、管理装置及び作業機械の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1-3のそれぞれは、作業現場における作業効率の向上を図るためにオペレータの操作をアシストする技術を開示している。
【0003】
特許文献1は、作業装置を構成するブーム、アーム及びバケットの合成重心の運動状態量を測定もしくは算出し、当該運動状態量が所定の第1目標値に追従するように、前記作業装置の操作機構に対する指示値をフィードバック制御を用いて決定し、当該指示値に基づき、前記作業装置に対する操作者の操作量を調整する技術を開示している。
【0004】
特許文献2は、建設機械のアクチュエータを駆動する機器を制御する制御装置に組込まれた制御パラメータを、前記建設機械の使用者の要望に応じて変更する建設機械の制御パラメータ変更システムを開示している。このシステムの管理サーバの記憶装置には、特性の異なる複数の制御パラメータセットと、油圧ショベルのユーザの操作性に関する要望を含む使用者要望情報が記憶される。管理サーバは、使用者要望情報に基づいて、制御パラメータセットのうちからユーザの要望に合致した制御パラメータセットを抽出し、その抽出した抽出制御パラメータセットを油圧ショベルに出力する。油圧ショベルの情報コントローラは、制御コントローラに組込まれた制御パラメータセットを抽出制御パラメータセットに変更する。
【0005】
特許文献3は、建設機械の出力特性変更システムを開示している。このシステムの管理サーバの記憶装置には、オペレータIDと車体IDと出力特性情報とが各オペレータの望む操作性と関連付けて記憶される。管理サーバは、オペレータIDと車体IDとからオペレータの望む操作性に合致した出力特性情報を抽出し、その抽出した出力特性情報を油圧ショベルに出力する。油圧ショベルの制御装置は、メモリに記憶された出力特性情報に基づいて油圧アクチュエータの出力特性を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-033815号公報
【特許文献2】特開2017-075500号公報
【特許文献3】国際公開第2017/168687号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、作業機械を操作する操作技量はオペレータごとに異なるので、操作技量に応じたアシストが行われることが望ましい。しかしながら、特許文献1の技術では、オペレータの操作技量が考慮されていないので、オペレータの操作技量によっては必ずしも作業効率が向上しない場合がある。
【0008】
また、各オペレータの操作技量は、種々の作業経験を重ねるにつれて向上する一方で、例えば作業を行わない期間が長くなると低下することもある。すなわち、各オペレータの操作技量は変動することがある。特許文献2の技術では、予め記憶されたユーザの操作性に関する要望を含む使用者要望情報に基づいて、制御パラメータセットのうちからユーザの要望に合致した制御パラメータセットが抽出される。従って、特許文献2の技術では、オペレータの操作技量が変動した場合にはオペレータの操作技量に応じたアシストができず、作業効率が向上しない場合がある。同様に、特許文献3の技術では、オペレータIDと車体IDと出力特性情報とが各オペレータの望む操作性と関連付けて予め記憶されており、これらのオペレータIDと車体IDとから出力特性情報が抽出され、抽出された出力特性情報が油圧ショベルに出力される。従って、特許文献3の技術では、オペレータの操作技量が変動した場合にはオペレータの操作技量に応じたアシストができず、作業効率が向上しない場合がある。
【0009】
本開示は、作業機械の操作装置に与えられるオペレータによる操作を、オペレータの操作技量に応じて適切にアシストすることが可能な作業機械制御システム、作業機械、管理装置及び作業機械の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
提供されるのは、作業機械を制御するための制御システムであって、前記作業機械における制御対象を作動させるための操作がオペレータによって与えられる操作装置と、前記オペレータの操作技量を判定する操作技量判定器と、過去作業に関する複数のデータ群を記憶するデータ群記憶器であって、前記複数のデータ群のそれぞれが前記過去作業における操作技量過去データと前記操作技量過去データに関連づけられた制御パラメータ過去データとを含むデータ群記憶器と、前記操作技量を含む情報である稼働情報と前記複数のデータ群とを用いて制御パラメータを設定するパラメータ設定器と、前記オペレータによる前記操作をアシストするためのアシスト量を前記制御パラメータを用いて演算するアシスト量演算器と、前記操作装置に与えられる前記操作の操作量と前記アシスト量とを用いて、前記制御対象を作動させるための制御指令を演算し、前記制御指令を前記制御対象に入力する制御指令演算器と、を備える。
【0011】
この作業機械制御システムでは、作業機械による作業ごとに操作技量判定器がオペレータの操作技量を判定し、この操作技量を含む稼働情報と、予め記憶された操作技量過去データ及びこれに関連づけられた制御パラメータ過去データを含む複数のデータ群と、を用いてパラメータ設定器が制御パラメータを設定する。このことは、作業機械による作業ごとに、その時点でのオペレータの操作技量に応じた制御パラメータが設定されることを可能にする。そして、制御指令演算器は、オペレータによる操作の操作量と、設定された制御パラメータを用いて演算されるアシスト量と、を用いて、制御対象を作動させる制御指令を演算する。このことは、作業機械の操作装置に与えられるオペレータによる操作を、オペレータの操作技量に応じて適切にアシストすることを可能にする。
【0012】
前記作業機械制御システムは、前記作業機械により行われている作業の内容である作業内容を判定する作業内容判定器をさらに備え、前記稼働情報は、前記作業内容をさらに含み、前記複数のデータ群のそれぞれは、前記過去作業における作業内容過去データをさらに含むことが好ましい。この構成では、パラメータ設定器は、稼働情報と複数のデータ群とを用いて、操作技量及び作業内容に基づく制御パラメータを設定することができる。すなわち、この構成では、作業機械による作業ごとに作業内容判定器が作業内容を判定するので、パラメータ設定器は、操作技量だけでなく、作業内容をも考慮に入れた制御パラメータの設定を行うことができる。これにより、オペレータによる操作を、オペレータの操作技量及び作業内容に応じてより適切にアシストすることができる。
【0013】
前記パラメータ設定器は、前記作業内容に対応する前記作業内容過去データを含み、かつ、判定された前記操作技量に適した少なくとも一つのデータ群を前記複数のデータ群から選択し、選択された前記少なくとも一つのデータ群に含まれる前記制御パラメータ過去データを用いて前記制御パラメータを設定することが好ましい。この構成では、実際に行われている作業の作業内容(現状の作業内容)とは関連性の低いデータ群が複数のデータ群から省かれ、現状の作業内容に対応する作業内容過去データを含む少なくとも一つのデータ群が選択される。そして、選択された少なくとも一つのデータ群に含まれる制御パラメータ過去データを用いて前記制御パラメータが設定される。これにより、オペレータによる操作をアシストするアシスト制御において、コントローラによる演算の負荷を低減することができる。
【0014】
前記パラメータ設定器は、前記操作技量に適した2つ以上のデータ群を前記複数のデータ群から選択し、選択された前記2つ以上のデータ群に含まれる前記制御パラメータ過去データを用いて前記制御パラメータを設定することが好ましい。この構成では、複数のデータ群において、実際に行われている作業におけるオペレータの現状の操作技量に一致するような操作技量過去データを含むデータ群が存在しない場合であっても、複数のデータ群から、現状の操作技量に近い操作技量過去データを含む2つ以上のデータ群が選択され、前記2つ以上のデータ群に含まれる複数の制御パラメータ過去データを用いて制御パラメータを設定することができる。
【0015】
前記作業機械制御システムは、前記操作技量に関連付けて目標操作技量を設定する目標設定器をさらに備え、前記パラメータ設定器は、前記目標操作技量に基づく前記制御パラメータを設定することが好ましい。この構成では、作業機械による作業を行うオペレータの現状の操作技量に対して操作技量の度合いを増加又は減少させた目標操作技量に基づく制御パラメータの設定が可能になる。
【0016】
前記作業機械制御システムは、前記操作技量の目標を入力することが可能な目標入力器をさらに備え、前記目標設定器は、入力された前記操作技量の目標と前記操作技量とを用いて前記目標操作技量を設定することが好ましい。この構成では、例えば、オペレータ又はこのオペレータによる作業に関係する作業関係者が目標入力器に前記操作技量の目標を入力することができるので、オペレータ又は作業関係者による意向を反映させた制御パラメータの設定が可能になる。
【0017】
前記作業機械制御システムは、前記操作技量を表示する表示器をさらに備えることが好ましい。この構成では、オペレータ又は作業関係者は、表示器に表示された操作技量を確認しながら自らの意向を反映させた制御パラメータの設定が可能になる。
【0018】
前記複数のデータ群は、前記オペレータとは異なる他のオペレータに関するデータ群を含むことが好ましい。この構成では、前記オペレータ以外の他のオペレータに関するデータ群を利用できるので、データ群を効率よく蓄積させることができ、また、オペレータが経験したことのない作業内容であっても、制御パラメータが適切に設定される。これにより、現状の作業内容の経験が少ない場合であっても、オペレータによる操作を、オペレータの操作技量に応じて適切にアシストすることができる。
【0019】
前記作業機械制御システムは、前記作業機械に搭載され、前記稼働情報を記憶する作業機械記憶器と、前記作業機械に搭載された作業機械通信器と、をさらに備え、前記データ群記憶器は、前記作業機械から離れた場所に配置された管理装置に搭載され、前記作業機械通信器は、前記作業機械による作業が終了又は中断したときに前記作業機械記憶器に記憶された前記稼働情報を前記管理装置に送信することが好ましい。この構成では、作業機械は、複数のデータ群を記憶するデータ群記憶器を備えていなくても、必要なときに管理装置との間でデータのやりとりを行うことで、オペレータによる操作を、オペレータの操作技量に応じて適切にアシストすることができる。
【0020】
提供される作業機械は、当該作業機械における制御対象を作動させるための操作がオペレータによって与えられる操作装置と、前記オペレータの操作技量を判定する操作技量判定器と、前記操作技量を含む情報である稼働情報と過去作業に関する複数のデータ群とを用いて制御パラメータを設定するパラメータ設定器であって、前記複数のデータ群のそれぞれが前記過去作業における操作技量過去データと前記操作技量過去データに関連づけられた制御パラメータ過去データとを含むパラメータ設定器と、前記オペレータによる前記操作をアシストするためのアシスト量を前記制御パラメータを用いて演算するアシスト量演算器と、前記操作装置に与えられる前記操作の操作量と前記アシスト量とを用いて、前記制御対象を作動させるための制御指令を演算し、前記制御指令を前記制御対象に入力する制御指令演算器と、を備える。この作業機械では、作業機械の操作装置に与えられるオペレータによる操作を、オペレータの操作技量に応じて適切にアシストすることができる。
【0021】
提供されるのは、前記作業機械制御システムに用いられ、前記作業機械から離れた場所に配置された管理装置であって、前記データ群記憶器を備える。この管理装置は、前記データ群記憶器を備えるので、作業機械に必要とされるメモリの容量を低減することができる。
【0022】
前記管理装置は、前記作業機械から送信される前記稼働情報を受信する通信器である管理装置通信器と、前記複数のデータ群を用いて前記作業機械の前記稼働情報に適したデータ群である対象データ群を設定するデータ群設定器と、をさらに備え、前記管理装置通信器は、設定された前記対象データ群を前記作業機械に送信することが好ましい。この管理装置は、複数のデータ群を用いて作業機械の稼働情報に適したデータ群である対象データ群を設定するので、作業機械の演算の負荷を低減することができる。
【0023】
提供されるのは、作業機械における制御対象を作動させるためのオペレータによる操作をアシストするための作業機械の制御方法であって、過去作業に関する複数のデータ群であって前記複数のデータ群のそれぞれが前記過去作業における操作技量過去データと前記操作技量過去データに関連づけられた制御パラメータ過去データとを含むような前記複数のデータ群を記憶することと、前記オペレータの操作技量を判定することと、前記操作技量を含む情報である稼働情報と前記複数のデータ群とを用いて制御パラメータを設定することと、前記オペレータによる前記操作をアシストするためのアシスト量を前記制御パラメータを用いて演算することと、前記操作の操作量と前記アシスト量とを用いて、前記制御対象を作動させるための制御指令を演算し、前記制御指令を前記制御対象に入力することと、を備える。この作業機械の制御方法では、作業機械の操作装置に与えられるオペレータによる操作を、オペレータの操作技量に応じて適切にアシストすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、作業機械の操作装置に与えられるオペレータによる操作を、オペレータの操作技量に応じて適切にアシストすることが可能な作業機械制御システム、作業機械、管理装置及び作業機械の制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示の実施形態に係る作業機械の一例を示す側面図である。
【
図2】前記作業機械の油圧回路の一部及びコントローラを示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る作業機械制御システムを示す概念図である。
【
図4】前記作業機械のコントローラによる制御の流れを示すブロック線図である。
【
図5】前記作業機械制御システムに格納された複数の過去のデータ群の一例を示す図である。
【
図6】前記作業機械の稼働情報の一例を示す図である。
【
図7】前記コントローラによる演算処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る作業機械100を示す側面図である。本実施形態では、作業機械100は、制御対象を含む作業機械の一例である油圧ショベルである。
図2は、作業機械100の油圧回路の一部及びコントローラ50を示す図である。
図3は、実施形態に係る作業機械制御システムを示す概念図である。この作業機械制御システムは、作業機械100と、管理装置60と、を備える。本実施形態では、管理装置60は、作業機械100から離れた場所に配置され、作業機械100からの命令を受けて特定の機能及び種々のデータを作業機械100に提供することができるサーバーである。
【0027】
図1及び
図2に示すように、作業機械100は、自走可能な下部走行体1と、下部走行体1に上下方向のZ軸回りに旋回可能に支持される上部旋回体2と、作業装置3と、複数の油圧アクチュエータと、複数の油圧ポンプと、複数の制御弁と、複数の操作装置と、複数の比例弁と、複数の検出器と、目標入力器41と、表示器42と、コントローラ50と、を備える。
【0028】
上部旋回体2は、下部走行体1に旋回可能に支持されるアッパーフレームと、アッパーフレームに支持されるキャビンと、キャビンの後方に配置されたカウンタウェイトと、を含む。
【0029】
作業装置3は、アッパーフレームに起伏可能に支持されるブーム4と、ブーム4の先端部に回動可能に支持されるアーム5と、アーム5の先端部に回動可能に支持されるバケット6と、を含む。
【0030】
複数の油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7と、アームシリンダ8と、バケットシリンダ9と、旋回モータ11と、を含む。
【0031】
複数の油圧ポンプは、
図2に示す油圧ポンプ21(第1の油圧ポンプ)と、図略の第2の油圧ポンプと、
図2に示すパイロットポンプ22と、を含む。第1及び第2の油圧ポンプのそれぞれは、複数の油圧アクチュエータの少なくとも一つに作動油を供給する。第1の油圧ポンプ21及び第2の油圧ポンプのそれぞれは、例えば可変容量形の油圧ポンプにより構成される。パイロットポンプ22は、複数の制御弁のそれぞれにパイロット圧を供給する。複数の油圧ポンプのそれぞれは、例えば図略のエンジンによって駆動される。
【0032】
図2では、ブームシリンダ7を動作させるための回路のみが代表して図示され、アームシリンダ8、バケットシリンダ9及び旋回モータ11を動作させるための回路の図示は省略されている。アームシリンダ8、バケットシリンダ9及び旋回モータ11のそれぞれを動作させるための回路の基本的な構造は、
図2に示すブームシリンダ7を動作させるための回路と同様である。
【0033】
ブームシリンダ7は、
図2に示す油圧ポンプ21からの作動油の供給を受けてブーム4を上部旋回体2に対して起伏動作させるように作動する油圧シリンダである。ブームシリンダ7の基端部は、上部旋回体2のアッパーフレームに回動可能に取り付けられ、ブームシリンダ7の先端部は、ブーム4に回動可能に取り付けられている。
図2に示すように、ブームシリンダ7は、ロッド室7Rと、ヘッド室7Hと、を有する。
【0034】
アームシリンダ8は、第1及び第2の油圧ポンプの何れかから作動油の供給を受けてアーム5をブーム4に対して回動動作させるように作動する油圧シリンダである。バケットシリンダ9は、第1及び第2の油圧ポンプの何れかから作動油の供給を受けてバケット6をアーム5に対して回動動作させるように作動する油圧シリンダである。旋回モータ11は、第1及び第2の油圧ポンプの何れかから作動油の供給を受けて上部旋回体2を下部走行体1に対して旋回動作させるように作動する油圧モータである。
【0035】
複数の制御弁は、
図2に示すブーム制御弁23と、図略のアーム制御弁と、図略のバケット制御弁と、図略の旋回制御弁と、を含む。複数の制御弁のそれぞれは、スプールと、パイロットポンプ22からのパイロット圧を受ける一対のパイロットポートと、を有する。
【0036】
ブーム制御弁23は、油圧ポンプ21とブームシリンダ7との間に介在し、ブームシリンダ7に供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉動作する。前記アーム制御弁は、第1及び第2の油圧ポンプの何れかとアームシリンダ8との間に介在し、アームシリンダ8に供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉動作する。バケット制御弁は、第1及び第2の油圧ポンプの何れかとバケットシリンダ9との間に介在し、バケットシリンダ9に供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉動作する。旋回制御弁は、第1及び第2の油圧ポンプの何れかと旋回モータ11との間に介在し、旋回モータ11に供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉動作する。
【0037】
複数の操作装置は、ブーム4を動作させるための操作を受けるブーム操作装置27(
図2参照)と、アーム5を動作させるための操作を受ける図略のアーム操作装置と、バケット6を動作させるための操作を受ける図略のバケット操作装置と、下部走行体1に対して上部旋回体2を旋回動作させるための図略の旋回操作装置と、を含む。複数の操作装置のそれぞれは、オペレータが操作を与えることが可能な操作レバーを有する。複数の操作装置のそれぞれは、操作レバーに対してオペレータによって与えられた操作の方向及び当該操作の操作量に対応する指令信号(電気信号)を出力する電気レバー装置である。出力された指令信号は、コントローラ50に入力される。
【0038】
具体的に、ブーム操作装置27は、ブーム上げ動作をブーム4に行わせるためのブーム上げ操作と、ブーム下げ動作をブーム4に行わせるためのブーム下げ操作と、が与えられることが可能なように構成される。ブーム上げ動作は、ブーム4の先端部が地面から離れるようなブーム4の動作であり、ブーム下げ動作は、ブーム4の先端部が地面に近づくようなブーム4の動作である。ブーム操作装置27は、ブーム上げ操作を受けると、ブーム上げ操作の操作量に対応するブーム上げ指令信号をコントローラ50に入力する。ブーム操作装置27は、ブーム下げ操作を受けると、ブーム下げ操作の操作量に対応するブーム下げ指令信号をコントローラ50に入力する。アーム操作装置、バケット操作装置及び旋回操作装置のそれぞれの基本的な構成及び機能は、ブーム操作装置27と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0039】
複数の比例弁のそれぞれは、コントローラ50から入力される制御指令に応じてパイロットポンプ22の圧油を減圧して出力する。複数の比例弁のそれぞれは、例えば電磁比例弁により構成されている。複数の比例弁は、一対のブーム比例弁24,25と、図略の一対のアーム比例弁と、図略の一対のバケット比例弁と、図略の一対の旋回比例弁と、を含む。
【0040】
具体的に、一対のブーム比例弁24,25のそれぞれは、コントローラ50から入力される制御指令(指令電流)に応じてパイロットポンプ22からの圧油を減圧し、制御指令に対応するパイロット圧をブーム制御弁23に出力する。一方のブーム比例弁24は、パイロットポンプ22とブーム制御弁23の一方のパイロットポートとを接続するパイロットラインに配置され、他方のブーム比例弁25は、パイロットポンプ22とブーム制御弁23の他方のパイロットポートとを接続するパイロットラインに配置されている。
【0041】
ブーム操作装置27がブーム下げ操作を受けると、コントローラ50からの制御指令がブーム比例弁24に入力される。ブーム比例弁24は、前記制御指令に応じたパイロット圧を生成し、生成されたパイロット圧は、ブーム制御弁23の一方のパイロットポート(
図2では、ブーム制御弁23における左側のポート)に供給される。ブーム制御弁23のスプールは、供給されたパイロット圧に対応する変位量(中立位置からのシフト量)でシフトする。これにより、ブーム制御弁23は、前記変位量に対応する開度(開口量)に調節され、油圧ポンプ21から吐出される作動油がブームシリンダ7のロッド室7Rに前記変位量に対応する流量で供給されることを許容し、ヘッド室7Hから作動油が排出されてタンクに戻ることを許容する。
【0042】
ブーム操作装置27がブーム上げ操作を受けると、コントローラ50からの制御指令がブーム比例弁25に入力される。ブーム比例弁25は、前記制御指令に応じたパイロット圧を生成し、生成されたパイロット圧は、ブーム制御弁23の他方のパイロットポート(
図2では、ブーム制御弁23における右側のポート)に供給される。ブーム制御弁23のスプールは、供給されたパイロット圧に対応する変位量(中立位置からのシフト量)でシフトする。これにより、ブーム制御弁23は、前記変位量に対応する開度(開口量)に調節され、油圧ポンプ21から吐出される作動油がブームシリンダ7のヘッド室7Hに前記変位量に対応する流量で供給されることを許容し、ロッド室7Rから作動油が排出されてタンクに戻ることを許容する。
【0043】
一対のアーム比例弁のそれぞれは、コントローラ50から入力される制御指令に応じてパイロットポンプ22からの圧油を減圧し、制御指令に対応するパイロット圧をアーム制御弁に出力する。一対のバケット比例弁のそれぞれは、コントローラ50から入力される制御指令に応じてパイロットポンプ22からの圧油を減圧し、制御指令に対応するパイロット圧をバケット制御弁に出力する。一対の旋回比例弁のそれぞれは、コントローラ50から入力される制御指令に応じてパイロットポンプ22からの圧油を減圧し、制御指令に対応するパイロット圧を旋回制御弁に出力する。これらの比例弁の基本的な構成及び機能は、ブーム比例弁24,25と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0044】
作業機械100は、少なくとも一つの制御対象を有する。前記少なくとも一つの制御対象は、例えば、ブーム4の起伏動作に関連する制御対象と、アーム5の回動動作に関連する制御対象と、バケット6の回動動作に関連する制御対象と、上部旋回体2の旋回動作に関連する制御対象と、を含んでいてもよい。この場合、これらの制御対象のそれぞれは、例えば、一対の比例弁と、制御弁と、油圧アクチュエータと、可動部と、を含んでいてもよい。具体的には、ブーム4の起伏動作に関連する制御対象は、一対のブーム比例弁24,25と、ブーム制御弁23と、ブームシリンダ7と、ブーム4(可動部の一例)と、を含んでいてもよい。アーム5の回動動作に関連する制御対象は、前記一対のアーム比例弁と、前記アーム制御弁と、前記アームシリンダ8と、アーム5(可動部の一例)と、を含んでいてもよい。バケット6の回動動作に関連する制御対象は、前記一対のバケット比例弁と、前記バケット制御弁と、前記バケットシリンダ9と、バケット6(可動部の一例)と、を含んでいてもよい。上部旋回体2の旋回動作に関連する制御対象は、前記一対の旋回比例弁と、前記旋回制御弁と、前記旋回モータ11と、上部旋回体2(可動部の一例)と、を含んでいてもよい。ただし、本開示における制御対象は、上記のような具体例に限られない。
【0045】
複数の検出器のそれぞれは、コントローラ50による作業機械100の動作の制御を可能にするために必要な情報を検出し、当該情報に対応する電気信号である検出信号をコントローラ50に入力する。複数の検出器は、前記ブーム4の起伏動作に関連する制御対象の出力を検出する検出器であるブーム関連動作検出器31と、アーム5の回動動作に関連する制御対象の出力を検出する検出器であるアーム関連動作検出器32と、バケット6の回動動作に関連する制御対象の出力を検出する検出器であるバケット関連動作検出器33と、上部旋回体2の旋回動作に関連する制御対象の出力を検出する検出器である旋回関連動作検出器34と、を含む。
【0046】
ブーム関連動作検出器31は、例えば、ブーム角度センサであってよく、ブームシリンダ7の動作を検出するストロークセンサであってもよく、他のセンサであってもよい。ブーム角度センサは、上部旋回体2に対するブーム4の角度を検出するセンサである。このような角度センサとしては、例えば、レゾルバ、ロータリーエンコーダ、ポテンショメータ、IMU(慣性計測装置)などを例示できる。ストロークセンサは、油圧シリンダのシリンダ長さを検出するものであってもよく、シリンダチューブに対するピストンロッドの位置を検出するものであってもよい。
【0047】
同様に、アーム関連動作検出器32は、ブーム4に対するアーム5の角度を検出するアーム角度センサであってもよく、アームシリンダ8の動作を検出するストロークセンサであってもよく、他のセンサであってもよい。バケット関連動作検出器33は、アーム5に対するバケット6の角度を検出するバケット角度センサであってもよく、バケットシリンダ9の動作を検出するストロークセンサであってもよく、他のセンサであってもよい。旋回関連動作検出器34は、例えば、下部走行体1に対する上部旋回体2の角度を検出する旋回角度センサであってもよく、下部走行体1に対する上部旋回体2の角速度(旋回角速度)を検出するジャイロセンサであってもよく、他のセンサであってもよい。
【0048】
コントローラ50は、複数の検出器から入力される検出信号に基づいて、制御対象の出力に関する情報である制御出力情報を取得することができる。コントローラ50は、制御出力情報に基づいて、例えば、可動部の動作速度を演算することが可能である。また、コントローラ50は、制御出力情報に基づいて、例えば、可動部の姿勢を演算することが可能である。可動部の動作速度は、例えば、上部旋回体2に対するブーム4の動作速度であってもよく、ブーム4に対するアーム5の動作速度であってもよく、アーム5に対するバケット6の動作速度であってもよく、下部走行体1に対する上部旋回体2の動作速度であってもよい。可動部の姿勢は、例えば、上部旋回体2に対するブーム4の姿勢であってもよく、ブーム4に対するアーム5の姿勢であってもよく、アーム5に対するバケット6の姿勢であってもよく、下部走行体1に対する上部旋回体2の姿勢であってもよい。
【0049】
コントローラ50は、CPUなどの演算処理装置と、メモリと、を備える。
図2に示すように、コントローラ50は、操作技量判定器51と、作業内容判定器52と、目標設定器53と、パラメータ設定器54と、アシスト量演算器55と、制御指令演算器56と、作業機械記憶器57と、作業機械通信器58と、を備える。操作技量判定器51、作業内容判定器52、目標設定器53、パラメータ設定器54、アシスト量演算器55、制御指令演算器56、作業機械記憶器57及び作業機械通信器58は、演算処理装置が制御プログラムを実行することにより実現される。
【0050】
管理装置60は、CPUなどの演算処理装置と、メモリと、を備える。
図2に示すように、管理装置60は、管理装置通信器61と、データ群記憶器62と、データ群設定器63と、を備える。管理装置通信器61、データ群記憶器62及びデータ群設定器63は、演算処理装置が制御プログラムを実行することにより実現される。
【0051】
作業機械通信器58及び管理装置通信器61は、作業機械100のコントローラ50と管理装置60との間でデータの双方向の通信(例えば無線通信)を行うことが可能なように構成される。本実施形態では、作業機械通信器58及び管理装置通信器61は、コントローラ50と管理装置60との間でデータの双方向の無線通信を行うことが可能な通信アンテナをそれぞれ有する。
【0052】
図5に示すように、管理装置60のデータ群記憶器62は、複数の作業機械による過去の複数の作業である複数の過去作業に関するデータ群A,B,C,D,E,Fを含む複数のデータ群を予め記憶している。複数のデータ群のそれぞれは、作業内容過去データと、操作技量過去データと、制御パラメータ過去データと、オペレータ過去データと、を含む。これらの過去データは、互いに関連付けられて一つのデータセット(データ群)としてデータ群記憶器62に記憶されている。
【0053】
本実施形態では、作業機械100を操縦するオペレータは、
図6に示すようにオペレータOPcである。
図5に示すように、複数のデータ群は、オペレータOPcとは異なるオペレータOPa及びオペレータOPbに関するデータ群を含む。
【0054】
作業内容過去データは、前記過去作業における作業内容に関するデータである。作業内容過去データは、前記過去作業において作業内容判定器52によって判定された作業内容の判定結果を示すデータであり、
図5では「作業内容判定結果」と表記されている。
図5に示すように、作業内容としては、掘削及び積込の作業、平地整地作業、及びのり面整地作業を例示できるが、作業内容は、これらの具体例に限られない。例えば、作業内容は、吊り荷運搬作業であってもよい。
【0055】
操作技量過去データは、前記過去作業におけるオペレータの操作技量に関するデータである。操作技量過去データは、前記過去作業において操作技量判定器51によって判定された操作技量の判定結果を示すデータであり、
図5では、「操作技量判定結果」と表記されている。
【0056】
制御パラメータ過去データは、前記操作技量過去データに関連づけられた制御パラメータに関するデータである。制御パラメータ過去データは、例えば、フィードバック制御に用いられる設計パラメータに関する過去データ(設計パラメータ過去データ)と、フィードバック制御に用いられる目標値に対応する過去データ(目標値対応過去データ)と、を含んでいてもよい。前記設計パラメータ過去データは、例えば、比例ゲイン(Kp)、積分ゲイン(Ki)及び微分ゲイン(Kd)のうち、フィードバック制御の種類に応じたゲインに関する過去データである。前記目標値対応過去データは、例えば、速度過去データ、加速度過去データ、トルク過去データ及び位置過去データ(姿勢過去データ)の少なくとも一つを含んでいてもよい。速度過去データは、過去作業における可動部の動作の速度に関する過去データである。加速度過去データは、過去作業における可動部の動作の加速度に関する過去データである。トルク過去データは、過去作業における上部旋回体2の旋回動作における旋回モータ11のトルクに関する過去データである。位置過去データ(姿勢過去データ)は、過去作業における可動部の位置(姿勢)に関する過去データである。
【0057】
オペレータ過去データは、前記操作技量過去データに関連づけられたオペレータに関するデータである。オペレータ過去データは、過去作業を行ったオペレータを識別するための識別情報を含んでいてもよい。
【0058】
図3に示す具体例では、管理装置60は、稼働情報記憶器64と、過去データ群構築器65と、をさらに備える。例えば、作業機械Aによる過去の作業である過去作業Aにおいて、当該過去作業Aが完了したときに、当該過去作業Aに関する稼働情報Aが作業機械Aから管理装置60に送信される。稼働情報Aは、当該過去作業Aの作業内容に関する情報と、当該過去作業Aのオペレータの操作技量に関する情報と、当該過去作業Aにおいて設定された制御パラメータに関する情報と、当該過去作業Aのオペレータに関する情報と、を含む。管理装置60の稼働情報記憶器64は、稼働情報Aを記憶し、過去データ群構築器65は、稼働情報Aに基づいて、過去作業Aにおける作業内容に関する過去データである作業内容過去データと、過去作業Aにおける操作技量に関する過去データである操作技量過去データと、過去作業Aにおける制御パラメータに関する過去データである制御パラメータ過去データと、過去作業Aにおけるオペレータに関する過去データであるオペレータ過去データと、を互いに関連付けて一つのデータ群Aとして構築し、データ群記憶器62は、当該データ群Aを記憶する。同様に、作業機械Bによる過去の作業である過去作業Bにおいて、当該過去作業Bが完了したときに、当該過去作業Bに関する稼働情報Bが作業機械Bから管理装置60に送信される。管理装置60の稼働情報記憶器64は、稼働情報Bを記憶し、過去データ群構築器65は、稼働情報Bに基づいて、作業内容過去データと、操作技量過去データと、制御パラメータ過去データと、オペレータ過去データと、を互いに関連付けて一つのデータ群Bして構築し、データ群記憶器62は、当該データ群Bを記憶する。
【0059】
なお、作業機械A,Bから管理装置60に送信される稼働情報A,Bのそれぞれは、例えば、速度情報、加速度情報、位置情報(姿勢情報)、作業負荷情報、及び操作量情報の少なくとも一つをさらに含んでいてもよい。速度情報は、過去作業A,Bのそれぞれにおける可動部の動作の速度に関する情報である。加速度情報は、過去作業A,Bのそれぞれにおける可動部の動作の加速度に関する情報である。位置情報(姿勢情報)は、過去作業A,Bにおける可動部の位置(可動部の姿勢)に関する情報である。作業負荷情報は、過去作業A,Bにおける作業負荷(例えば吊り荷の重さ)に関する情報である。操作量情報は、過去作業A,Bのそれぞれにおいて操作装置に与えられた操作量に関する情報である。過去データ群構築器65が構築するデータ群A,Bのそれぞれには、前記動作の速度に関する過去データである速度過去データ、前記動作の加速度に関する過去データである加速度過去データ、前記位置(姿勢)に関する過去データである位置過去データ(姿勢過去データ)、前記作業負荷に関する過去データである作業負荷過去データ、及び前記操作量に関する過去データである操作量過去データの少なくとも一つが含まれる。
【0060】
データ群設定器63は、
図3に示すように、前記複数のデータ群を用いて作業機械100の現状の稼働情報に適したデータ群である対象データ群Xを設定する。対象データ群Xは、制御パラメータに関する情報を含む。対象データ群Xの設定については後述する。
【0061】
次に作業機械100のコントローラ50について説明する。
【0062】
操作技量判定器51は、作業機械100を操作するオペレータの操作の技量である操作技量を判定する。操作技量の判定方法の具体例を以下に示す。ただし、操作技量の判定方法は、以下の具体例に限られず、種々の方法を採用可能である。
【0063】
操作技量判定器51は、後述する作業内容判定器52による作業内容の判定に基づいて、当該作業内容の開始時点と終了時点とを特定することができる。作業内容が例えば掘削及び積込の作業である場合、操作技量判定器51は、作業の開始時点から終了時点までの経過時間と、作業の開始時点から終了時点までにトラックなどの運搬車の荷台に積み込まれた土砂の重量と、に基づいて、掘削及び積込の作業の効率である作業効率を演算し、演算された作業効率と、予め設定されたマップ、計算式などの評価基準と、に基づいて、オペレータの操作技量を判定することができる。
図5及び
図6の具体例では、操作技量判定器51は、オペレータの操作技量が0~100点までの範囲のどのレベルに該当するかを判定しているが、このような具体例に限られない。
【0064】
作業内容判定器52は、作業機械100による作業の内容である作業内容を判定する。
図5に示すように、作業内容としては、掘削及び積込の作業、平地整地作業、及びのり面整地作業を例示できるが、作業内容は、これらの具体例に限られない。作業内容は、例えば上述したような吊り荷運搬作業であってもよい。
【0065】
作業内容判定器52は、複数の検出器31~34からコントローラ50に入力される検出信号に基づいて、複数の可動部の姿勢(具体的には、ブーム4の姿勢、アーム5の姿勢、バケット6の姿勢及び上部旋回体2の姿勢)を取得することができる。例えば掘削及び積込の作業、平地整地作業、及びのり面整地作業のそれぞれは、複数の可動部の姿勢が特徴的に変化するので、作業内容判定器52は、複数の可動部の姿勢データに基づいて、作業機械100の作業内容を判定することができる。具体的には、例えば、複数の可動部の姿勢のそれぞれが、予め定められた掘削姿勢に関する条件を満たし、予め定められた積込姿勢に関する条件を満たす場合に、作業内容判定器52は、作業機械100が掘削及び積込の作業を行っていると判定する。同様に、複数の可動部の姿勢のそれぞれが、予め定められた平地整地姿勢に関する条件を満たす場合に、作業内容判定器52は、作業機械100が平地整地作業を行っていると判定する。複数の可動部の姿勢のそれぞれが、予め定められたのり面整地姿勢に関する条件を満たす場合に、作業内容判定器52は、作業機械100がのり面整地作業を行っていると判定する。複数の可動部の姿勢のそれぞれが、予め定められた吊り荷運搬姿勢に関する条件を満たす場合に、作業内容判定器52は、作業機械100が吊り荷運搬作業を行っていると判定する。複数の可動部の姿勢のそれぞれは、例えば、作業機械100における予め設定された基準点を原点とする座標系における座標によって示されていてもよく、ブーム角度、アーム角度、バケット角度及び旋回角度で示されていてもよい。
【0066】
作業内容判定器52は、上記のような複数の可動部の姿勢データに代えて、作業装置3に加わる荷重に基づいて、作業機械100による作業内容を判定してもよい。この場合、作業内容判定器52は、例えば作業装置3に取り付けられた荷重センサの検出結果(検出信号)に基づいて、作業機械100による作業内容を判定してもよい。
【0067】
目標設定器53は、オペレータの操作技量の目標に関する目標操作技量を操作技量に関連付けて設定する。
【0068】
目標入力器41は、オペレータ又はオペレータによる作業に関係する作業関係者が操作技量の目標を入力することが可能な機器である。作業関係者には、例えば、作業機械100による作業の管理者、作業現場の監督者、作業機械100による作業の補助者などを含まれていてもよい。この場合、目標設定器53は、オペレータ又は作業関係者によって目標入力器41に入力された前記操作技量の目標と前記操作技量(現状の操作技量)とを用いて前記目標操作技量を設定し、パラメータ設定器54は、前記稼働情報と前記複数のデータ群とを用いて、操作技量に関連付けて設定された前記目標操作技量に基づく前記制御パラメータを設定する。
【0069】
パラメータ設定器54は、稼働情報と複数のデータ群とを用いて、少なくとも操作技量に基づく制御パラメータを設定する。パラメータ設定器54は、前記稼働情報と前記複数のデータ群とを用いて、前記操作技量及び前記作業内容に基づく前記制御パラメータを設定してもよい。本実施形態では、
図6に示すように、稼働情報は、オペレータと、作業内容と、操作技量と、目標操作技量と、を含む情報である。従って、パラメータ設定器54は、前記稼働情報と前記複数のデータ群とを用いて、操作技量に関連付けて設定された前記目標操作技量に基づく前記制御パラメータを設定してもよく、前記稼働情報と前記複数のデータ群とを用いて、前記目標操作技量と前記作業内容に基づく前記制御パラメータを設定してもよい。
【0070】
制御パラメータは、フィードバック制御に用いられる設計パラメータを含んでいてもよい。フィードバック制御がP制御である場合、前記設計パラメータは、比例ゲイン(Kp)を含む。また、フィードバック制御がPI制御である場合、前記設計パラメータは、比例ゲイン(Kp)及び積分ゲイン(Ki)を含む。また、フィードバック制御がPID制御である場合、前記設定パラメータは、比例ゲイン(Kp)、積分ゲイン(Ki)及び微分ゲイン(Kd)を含む。
【0071】
また、制御パラメータは、フィードバック制御に用いられる目標値を含んでいてもよい。前記目標値は、目標速度、目標加速度及び目標位置の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0072】
アシスト量演算器55は、パラメータ設定器54によって設定された制御パラメータを用いて、オペレータによる操作をアシストするためのアシスト量を演算する。
【0073】
制御指令演算器56は、前記操作装置に与えられる前記操作の操作量と前記アシスト量とを用いて、前記制御対象を作動させるための制御指令を演算し、前記制御指令を前記制御対象に入力する。本実施形態では、例えば、制御指令演算器56は、ブーム操作装置27に与えられる前記操作の操作量と前記アシスト量とを用いて、ブーム4の起伏動作に関連する制御対象を作動させるための制御指令を演算し、前記制御指令を前記制御対象に含まれる一対のブーム比例弁24,25の一方に入力する。
【0074】
作業機械記憶器57は、作業機械100に搭載され、前記稼働情報を記憶する。本実施形態では、作業機械記憶器57は、前記稼働情報を一時的に記憶する。
【0075】
作業機械通信器58は、作業機械100に搭載されている。作業機械通信器58は、作業機械100による作業が終了又は中断したときに作業機械記憶器57に記憶された前記稼働情報を管理装置60の管理装置通信器61に送信する。前記稼働情報が管理装置60に送信されると、作業機械記憶器57は、前記稼働情報を消去してもよい。作業機械100による作業が終了又は中断したことを判定可能な予め設定された条件が満たされたときに、作業機械100による作業が終了又は中断したことをコントローラ50が判定するように構成されていてもよい。また、作業機械100による作業が終了又は中断した場合に図略の入力装置に対してオペレータが予め定められた入力である作業停止入力を行うことによって当該作業停止入力に対応する信号が入力装置からコントローラ50に入力されるように構成されていてもよい。
【0076】
表示器42は、操作技量判定器51による操作技量の判定結果に基づいて前記操作技量を表示する。表示器42は、例えば作業機械100のキャビン内に配置されたディスプレイを含んでいてもよい。本実施形態では、表示器42は、例えば、
図6に示すような稼働情報に含まれる作業内容(作業内容判定結果)、操作技量(操作技量判定結果)、及び目標操作技量を表示するように構成されていてもよい。
【0077】
コントローラ50が行うアシスト制御は、例えば、応答性アシスト制御、速度アシスト制御、加速度アシスト制御、トルクアシスト制御及び姿勢アシスト制御の少なくとも一つを含んでいてもよい。具体的には以下の通りである。
【0078】
応答性アシスト制御は、可動部の動作の応答性に関するアシスト制御である。応答性アシスト制御は、例えば、操作装置に与えられるオペレータによる操作に対する可動部の動作の応答性をオペレータの操作技量に応じたレベルに調節することにより、オペレータによる操作をアシストする。具体的には、可動部の動作の応答性は、例えばオペレータの操作技量が高いほど高く設定されていてもよい。可動部の動作の応答性は、例えば前記設計パラメータに基づいて調節されてもよい。従って、コントローラ50が応答性アシスト制御を行うように構成されている場合、制御パラメータは、比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインの少なくとも一つを含む設計パラメータを含み、制御パラメータ過去データは、前記制御パラメータに含まれる前記設計パラメータに対応する過去データ(前記設計パラメータ過去データ)を含む。
【0079】
速度アシスト制御は、可動部の動作の速度に関するアシスト制御である。速度アシスト制御は、例えば、可動部の動作の速度をオペレータの操作技量に応じた大きさに調節することにより、オペレータによる操作をアシストする。具体的には、可動部の動作の目標速度(例えば上限速度)は、例えばオペレータの操作技量が高いほど大きく設定されていてもよい。コントローラ50が速度アシスト制御を行うように構成されている場合、制御パラメータは、目標速度(前記目標値の一例)を含み、制御パラメータ過去データは、当該目標速度に対応する過去データである前記速度過去データを含む。
【0080】
加速度アシスト制御は、可動部の動作の加速度に関するアシスト制御である。加速度アシスト制御は、例えば、可動部の動作の加速度をオペレータの操作技量に応じた大きさに調節することにより、オペレータによる操作をアシストする。具体的には、加速度が正の値の場合、可動部の動作の目標加速度(例えば上限加速度)は、例えばオペレータの操作技量が高いほど大きく設定されていてもよい。可動部の動作に対してブレーキ力が加えられるような場合(加速度が負の場合)、可動部の動作の目標加速度は、例えばオペレータの操作技量が高いほど小さく設定されていてもよい。コントローラ50が加速度アシスト制御を行うように構成されている場合、制御パラメータは、目標加速度(前記目標値の一例)を含み、制御パラメータ過去データは、当該目標加速度に対応する過去データである前記加速度過去データを含む。
【0081】
トルクアシスト制御は、下部走行体1に対する上部旋回体2の旋回動作におけるトルクに関するアシスト制御である。トルクアシスト制御は、例えば、上部旋回体2の旋回動作のための旋回モータ11が発生させるトルクをオペレータの操作技量に応じた大きさに調節することにより、オペレータによる操作をアシストする。具体的には、旋回動作の目標トルク(例えば上限トルク)は、例えばオペレータの操作技量が高いほど大きく設定されていてもよい。コントローラ50がトルクアシスト制御を行うように構成されている場合、制御パラメータは、目標トルク(前記目標値の一例)を含み、制御パラメータ過去データは、当該目標トルクに対応する過去データである前記トルク過去データを含む。
【0082】
姿勢アシスト制御は、可動部の姿勢に関するアシスト制御である。姿勢アシスト制御は、例えば、可動部の姿勢をオペレータの操作技量に応じた姿勢に調節することにより、オペレータによる操作をアシストする。コントローラ50が姿勢アシスト制御を行うように構成されている場合、制御パラメータは、目標位置(前記目標値の一例)を含み、制御パラメータ過去データは、当該目標位置に対応する過去データである前記位置過去データ(前記姿勢過去データ)を含む。
【0083】
以下では、
図7に示すフローチャートを参照しながら、コントローラ50による演算処理の一例について説明する。
【0084】
作業機械100のオペレータが作業機械100のシステムを起動するための操作を作業機械100に与えると、当該システムが起動する(ステップS1)。
【0085】
コントローラ50は、例えば表示器42において、本実施形態に係る作業機械制御システム(アシストシステム)を使用するか否かの入力をオペレータに催促するための表示を行う(ステップS2)。オペレータが表示器42に対してアシストシステムを使用する旨の入力を行うと(ステップS2においてYES)、コントローラ50は、ステップS3以降の処理を実行する。オペレータが表示器42に対してアシストシステムを使用しない旨の入力を行うと(ステップS2においてNO)、コントローラ50は、アシストシステムではなく通常のシステムを実行する(ステップS4)。
【0086】
次に、コントローラ50は、目標入力器41において目標操作技量に関する入力を受け付ける(ステップS3)。オペレータ又は作業関係者は、目標入力器41に操作技量の目標として操作技量の上げ幅(目標上げ幅)を入力する。入力された目標上げ幅は、コントローラ50に入力される。
【0087】
次に、作業機械100を用いたオペレータによる作業が開始されると、作業内容判定器52は、例えば上述したような方法で、作業機械100による作業の内容である作業内容を判定する(ステップS5)。
【0088】
また、操作技量判定器51は、例えば上述したような方法で、オペレータの現状の操作の技量である操作技量を判定する(ステップS6)。
【0089】
次に、コントローラ50は、例えば
図6に示すように、オペレータOPcに関する情報と、作業内容の判定結果に関する情報と、操作技量の判定結果に関する情報と、目標操作技量に関する情報と、を関連付けたデータのセットである稼働情報を生成する。上述したように、稼働情報は、速度情報、加速度情報、位置情報(姿勢情報)、作業負荷情報及び操作量情報の少なくとも一つをさらに含んでいてもよい。そして、コントローラ50(作業機械通信器58)は、当該稼働情報を管理装置60に送信する(ステップS7)。なお、本実施形態では、コントローラ50の目標設定器53は、目標入力器41から入力された目標上げ幅を、操作技量判定器51により判定された操作技量に加算することにより、目標操作技量を算出する。前記稼働情報における目標操作技量に関する情報は、算出された目標操作技量のデータを含む。上記のようにオペレータによって入力された目標上げ幅に基づいて目標操作技量が設定される。そして、後述するように、この目標操作技量に基づいて制御パラメータが設定される。従って、このアシスト制御は、オペレータが自身の操作技量を把握していなくても、オペレータの技量向上を促進させることができる。
【0090】
管理装置60(管理装置通信器61)が前記データセット(現状の稼働情報)を受信すると、
図3に示すように、データ群設定器63は、データ群記憶器62に記憶された複数のデータ群を用いて、作業機械100の前記稼働情報に適したデータ群である対象データ群Xを設定する。具体的には、例えば、データ群設定器63は、現状の稼働情報に含まれる作業内容の判定結果に関する情報及び操作技量の判定結果に関する情報に基づいて、前記作業内容に対応する前記作業内容過去データを含み、かつ、現状の作業技量に適した少なくとも一つのデータ群を前記複数のデータ群から選択し、選択された前記少なくとも一つのデータ群に含まれる前記制御パラメータ過去データを用いて前記制御パラメータを設定してもよい。対象データ群Xは、設定された制御パラメータに関する情報を含む。
【0091】
また、データ群設定器63は、現状の稼働情報に含まれる作業内容の判定結果に関する情報及び操作技量の判定結果に関する情報に基づいて、前記作業内容に対応する前記作業内容過去データを含み、かつ、前記操作技量に適した第1のデータ群及び第2のデータ群を含む2つ以上のデータ群(2つ以上の過去のデータ群)を前記複数のデータ群から選択し、選択された前記2つ以上のデータ群に含まれる前記制御パラメータ過去データを用いて前記制御パラメータを再構築(設定)してもよい。対象データ群Xは、設定された制御パラメータに関する情報を含む。データ群Xにおける制御パラメータの再構築は、例えば前記2つ以上のデータ群に含まれる前記制御パラメータ過去データを、例えば線形補間することにより行うことができるが、再構築の方法は、線形補間に限られない。
【0092】
本実施形態では、コントローラ50によるアシスト制御が前記応答性アシスト制御を含むので、対象データ群Xにおける前記制御パラメータは、前記設計パラメータ(比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲイン)を含み、制御パラメータ過去データは、前記制御パラメータに含まれる前記設計パラメータに対応する過去データ(前記設計パラメータ過去データ)を含む。また、本実施形態では、コントローラ50によるアシスト制御が前記速度アシスト制御をさらに含むので、対象データ群Xにおける前記制御パラメータは、前記目標速度をさらに含み、制御パラメータ過去データは、前記速度過去データをさらに含む。
【0093】
データ群設定器63が選択した前記2つ以上の過去のデータ群のそれぞれには、制御パラメータ過去データとして、速度過去データが含まれている。データ群設定器63は、前記2つ以上のデータ群に含まれる速度過去データの平均値を演算し、この平均値を対象データ群Xの制御パラメータとして設定してもよい。
【0094】
なお、コントローラ50によるアシスト制御が前記加速度アシスト制御を含む場合には、対象データ群Xにおける前記制御パラメータは、前記目標加速度を含み、制御パラメータ過去データは、前記加速度過去データを含む。コントローラ50によるアシスト制御が前記トルクアシスト制御を含む場合には、対象データ群Xにおける前記制御パラメータは、前記目標トルクを含み、制御パラメータ過去データは、前記トルク過去データを含む。コントローラ50によるアシスト制御が前記姿勢アシスト制御を含む場合には、対象データ群Xにおける前記制御パラメータは、前記目標位置(前記目標姿勢)を含み、制御パラメータ過去データは、前記位置過去データ(前記姿勢過去データ)を含む。
【0095】
管理装置60(管理装置通信器61)は、設定された対象データ群Xに関する情報を作業機械100のコントローラ50に送信し、コントローラ50(作業機械通信器58)は、対象データ群Xに関する情報を受信する(ステップS8)。
【0096】
本実施形態では、受信された対象データ群Xに含まれる制御パラメータは、例えば、フィードバック制御(PID制御)に用いられる設計パラメータ(PIDゲイン:Kp,Ki,Kd)に関する情報と、目標速度(目標値の一例)に関する情報と、を含む。コントローラ50のパラメータ設定器54は、対象データ群Xに含まれる設計パラメータに関する情報に基づいて、
図4のブロック線図に示すフィードバック制御(PID制御)のためのPIDゲインを制御パラメータとして設定する(ステップS9)。
【0097】
また、パラメータ設定器54は、対象データ群Xに含まれる目標速度に関する情報に基づいて、
図4のブロック線図に示すフィードバック制御のための目標値としての目標速度を制御パラメータとして設定する(ステップS10)。目標速度に基づく速度アシスト制御が行われることにより、可動部の動作の速度が目標速度に近づくように制御される。言い換えると、可動部の動作の上限速度が目標速度に設定される。本実施形態では、この目標速度は、オペレータの操作技量が高いほど大きく設定される。
【0098】
次に、
図4に示すように、コントローラ50の減算器59は、前記目標値と、制御対象から出力される制御出力と、の偏差を算出する。アシスト量演算器55は、パラメータ設定器54によって設定されたPIDゲインと前記偏差とを下記式(1)に代入して、前記偏差をゼロに近づけるためのアシスト量を演算する(S11)。なお、下記式(1)において、「u」は、アシスト量であり、「Kp」、「Ki」、「Kd」は、PIDゲイン(比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲイン)であり、「e」は、制御出力と目標値との偏差である。本実施形態では、偏差の演算に用いられる制御出力は、可動部(例えばブーム4)の実際の動作速度であり、目標値は、目標速度である。
【0099】
【0100】
次に、制御指令演算器56は、例えばブーム操作装置27に与えられる前記操作の操作量と前記アシスト量とを用いて、前記制御対象を作動させるための制御指令を演算し、前記制御指令を、制御対象に含まれる一対のブーム比例弁24,25の一方(前記操作の操作方向に対応するブーム比例弁)に入力する(ステップS12)。コントローラ50は、ステップS5~S12の制御を繰り返す。
【0101】
なお、パラメータ設定器54により設定される制御パラメータとしてのPIDゲインは、ステップS9において最初に設定された値と同じものが一つの作業が行われている間、使用されてもよく、一つの作業が行われている間、予め設定された条件に基づいて複数回更新されてもよく、ステップS5~S12の周期ごとに更新されてもよい。
【0102】
以上説明したように、この作業機械制御システムでは、作業機械100による作業ごとに操作技量判定器51がオペレータの操作の技量である操作技量を判定し、この操作技量を含む稼働情報と、予め記憶された操作技量過去データ及びこれに関連づけられた制御パラメータ過去データを含む複数のデータ群と、を用いてパラメータ設定器54が操作技量に基づく制御パラメータを設定する。このことは、作業機械100による作業ごとに、その時点でのオペレータの操作の技量である操作技量に応じた制御パラメータが設定されることを可能にする。そして、アシスト量演算器55は、を演算し、制御指令演算器56は、オペレータによる操作の操作量と、設定された制御パラメータを用いて演算されるアシスト量と、を用いて、制御対象を作動させる制御指令を演算する。このことは、作業機械の操作装置27に与えられるオペレータによる操作を、オペレータの操作技量に応じて適切にアシストすることを可能にする。
【0103】
[変形例]
以上、本開示の実施形態に係る作業機械の一例である作業機械100について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例を含む。
【0104】
(A)目標操作技量及び目標操作技量設定部について
目標操作技量及び目標操作技量設定部は省略可能である。
【0105】
(B)制御対象について
前記実施形態では、制御対象は、一対の比例弁(例えばブーム比例弁24,25)と、制御弁(例えばブーム制御弁23)と、油圧アクチュエータ(例えばブームシリンダ7)と、可動部(例えばブーム4)と、を含む。ただし、本開示における制御対象は、前記実施形態における具体例に限られず、例えば、前記アーム比例弁と、前記アーム制御弁と、前記アームシリンダ8と、を含んでいてもよい。また、本開示における制御対象は、例えば、前記バケット比例弁と、前記バケット制御弁と、前記バケットシリンダ9と、を含んでいてもよい。さらに、本開示における制御対象は、例えば、前記旋回比例弁と、前記旋回制御弁と、前記旋回モータ11と、を含んでいてもよい。
【0106】
(C)作業機械について
作業機械は、作業機械本体と、当該作業機械本体に対して離れた位置に配置された遠隔操作器と、を含むものであってもよい。この場合、作業機械本体は、
図1に示す作業機械100の下部走行体1、上部旋回体2及び作業装置3を含み、遠隔操作器は、ブーム操作装置27、アーム操作装置、バケット操作装置及び旋回操作装置を含む複数の操作装置を含む。作業機械本体は、コントローラ50の一部又は全部を含んでいてもよく、遠隔操作器は、コントローラ50の一部又は全部を含んでいてもよい。遠隔操作器は、表示器42を含んでいてもよい。作業機械本体は、遠隔操作器の複数の操作装置に与えられるオペレータによる操作に基づいて動作するように構成される。
【0107】
(D)データ群について
前記実施形態では、データ群記憶器が記憶する複数のデータ群は、種類の異なる作業内容の複数の過去作業に関するデータ群を含むが、同じ作業内容の複数の過去作業に関するデータ群のみを含んでいてもよい。
【0108】
(E)操作量情報及び作業負荷情報について
作業機械100が吊り荷運搬作業を行う場合、コントローラ50は、吊り荷の重さ(作業負荷)に応じて、複数の制御弁の開度を調整し、オペレータの操作技量に応じた速度で可動部が動作するようなアシスト制御を行ってもよい。これにより、非熟練オペレータであっても熟練オペレータのように可動部を急停止させない作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0109】
4 :ブーム(制御対象の一例)
7 :ブームシリンダ(制御対象の一例)
21 :油圧ポンプ
22 :パイロットポンプ
23 :ブーム制御弁(制御対象の一例)
24,25 :一対のブーム比例弁(制御対象の一例)
27 :ブーム操作装置(操作装置の一例)
31 :ブーム関連動作検出器(検出器の一例)
41 :目標入力器
42 :表示器
50 :コントローラ
51 :操作技量判定器
52 :作業内容判定器
53 :目標設定器
54 :パラメータ設定器
55 :アシスト量演算器
56 :制御指令演算器
57 :作業機械記憶器
58 :作業機械通信器
59 :減算器
60 :管理装置
61 :管理装置通信器
62 :データ群記憶器
63 :データ群設定器
64 :稼働情報記憶器
65 :過去データ群構築器
100 :作業機械