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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061587
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】基板載置方法および基板載置機構
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230425BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H01L21/68 R
C23C16/458
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171591
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 孝一
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 賢太朗
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 靖之
【テーマコード(参考)】
4K030
5F131
【Fターム(参考)】
4K030AA04
4K030AA06
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA20
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA06
4K030EA04
4K030EA11
4K030FA01
4K030FA10
4K030GA02
4K030JA03
4K030JA09
4K030JA10
4K030KA25
4K030LA15
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131EA03
5F131EA04
5F131EB17
5F131EB53
5F131EB57
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB85
(57)【要約】
【課題】基板を載置台の載置面に載置する際に、基板に横ずれが生じて基板が不所望の位置に係止された際にも、所望の位置に基板を載置することができる基板載置方法および基板載置機構、ならびに基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板を載置する基板載置方法は、載置面に対して突没可能に設けられた昇降ピンを載置面の上方に突出した基板受け渡し位置に位置させ、昇降ピン上に基板を受け渡す工程と、次いで、基板が載せられた昇降ピンを前記載置面の下方の基板載置位置に下降させる工程と、次いで、昇降ピンを微小距離上昇させて引き続き基板載置位置へ戻す工程とを有し、昇降ピンを基板受け渡し位置から基板載置位置に下降する際に、基板のエッジがテーパ面に係止された場合に、昇降ピンを微小距離上昇させて引き続き基板載置位置へ戻す工程により、エッジのテーパ面への係止を解消して基板を載置面に導く。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理装置のチャンバー内で、基板を載置する載置面および前記載置面の外周に設けられた基板をガイドするテーパ面を有する載置台の前記載置面に、基板を載置する基板載置方法であって、
前記載置面に対して突没可能に設けられた昇降ピンを前記載置面の上方に突出した基板受け渡し位置に位置させ、前記昇降ピン上に基板を受け渡す工程と、
次いで、前記基板が載せられた前記昇降ピンを前記載置面の下方の基板載置位置に下降させる工程と、
次いで、前記昇降ピンを微小距離上昇させて引き続き基板載置位置へ戻す工程と、
を有し、
前記昇降ピンを前記基板受け渡し位置から前記基板載置位置に下降する際に、前記基板のエッジが前記テーパ面に係止された場合に、前記昇降ピンを微小距離上昇させて引き続き基板載置位置へ戻す工程により、前記エッジの前記テーパ面への係止を解消して前記基板を前記載置面に導く、基板載置方法。
【請求項2】
前記載置台は、前記基板を静電吸着する静電チャックを有し、前記昇降ピンを微小距離上昇させ、引き続きウエハ載置位置へ戻す工程の後、前記静電チャックにより前記基板を静電吸着する工程をさらに有する、請求項1に記載の基板載置方法。
【請求項3】
前記載置台はヒータを有し、前記基板は前記載置台上で前記ヒータにより200℃以上に加熱される、請求項2に記載の基板載置方法。
【請求項4】
前記基板が載せられた前記昇降ピンを前記基板載置位置に下降させる途中の位置で止めて前記基板を前記載置面に近接させた状態で、前記チャンバー内に熱伝導ガスを供給し、前記基板をプリヒートする工程をさらに有する、請求項3に記載の基板載置方法。
【請求項5】
前記基板をプリヒートした後、前記基板を前記載置面に近接させた状態で、前記チャンバー内の圧力を13.3Pa以下にする工程をさらに有する、請求項4に記載の基板載置方法。
【請求項6】
前記基板を前記載置面に載置する際に、前記チャンバー内の圧力を13.3Pa以下とする、請求項1または請求項2に記載の基板載置方法。
【請求項7】
前記微小距離は、前記エッジの前記テーパ面への係止を解消できる値である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の基板載置方法。
【請求項8】
前記微小距離は、1mm以上である、請求項7に記載の基板載置方法。
【請求項9】
前記微小距離は、1~3mmである、請求項8に記載の基板載置方法。
【請求項10】
基板を処理する基板処理装置のチャンバー内で、基板を載置する基板載置機構であって、
基板を載置する載置面および前記載置面の外周に設けられた基板をガイドするテーパ面を有する載置台と、
前記載置面に対して突没可能に設けられ、前記載置面の上方に突出した基板受け渡し位置と、前記載置面の下方の基板載置位置との間で昇降する昇降ピンと、
前記昇降ピンの昇降を制御する昇降制御部と、
を有し、
前記昇降制御部は、
前記昇降ピンを前記載置面の上方に突出した基板受け渡し位置に位置させ、
前記昇降ピン上に基板が受け渡たされた際に、前記基板が載せられた前記昇降ピンを前記載置面の下方の基板載置位置に下降させ、
次いで、前記昇降ピンを微小距離上昇させて引き続き基板載置位置へ戻すように制御し、
前記昇降ピンを前記基板受け渡し位置から前記基板載置位置に下降する際に、前記基板のエッジが前記テーパ面に係止された場合に、前記昇降ピンを微小距離上昇させて引き続き基板載置位置へ戻す制御により、前記エッジの前記テーパ面への係止を解消して前記基板を前記載置面に導く、基板載置機構。
【請求項11】
前記載置台は、前記基板を静電吸着する静電チャックを有し、前記昇降ピンを微小距離上昇させて引き続きウエハ載置位置へ戻す制御を行った後、前記静電チャックにより前記基板を静電吸着する、請求項10に記載の基板載置機構。
【請求項12】
前記載置台はヒータを有し、前記基板は前記載置台上で前記ヒータにより200℃以上に加熱される、請求項11に記載の基板載置機構。
【請求項13】
前記昇降制御部は、前記基板が載せられた前記昇降ピンを前記基板載置位置に下降させる途中の位置で止めるように制御して前記基板を前記載置面に近接させ、その状態で、前記チャンバー内に熱伝導ガスが供給されて、前記基板がプリヒートされる、請求項12に記載の基板載置機構。
【請求項14】
前記基板のプリヒート後、前記昇降制御部により前記基板が前記載置面に近接された状態で、前記チャンバー内の圧力が13.3Pa以下にされる、請求項13に記載の基板載置機構。
【請求項15】
前記微小距離は、1mm以上である、請求項10から請求項14のいずれか一項に記載の基板載置機構。
【請求項16】
前記微小距離は、1~3mmである、請求項15に記載の基板載置機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板載置方法および基板載置機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウエハのような基板の処理に際しては、水平な載置面を有する載置台の上に基板を載置する。特許文献1には、基板の載置面を凹部の底部に有し、載置面の外周に基板を載置面にガイドするテーパ面を有する載置台に対し、基板の横ずれを防止するために、基板の下面を載置面に対して非平行にして載置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-50904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板を載置台の載置面に載置する際に、基板に横ずれが生じて基板が不所望の位置に係止された際にも、所望の位置に基板を載置することができる基板載置方法および基板載置機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る基板載置方法は、基板を処理する基板処理装置のチャンバー内で、基板を載置する載置面および前記載置面の外周に設けられた基板をガイドするテーパ面を有する載置台の前記載置面に、基板を載置する基板載置方法であって、前記載置面に対して突没可能に設けられた昇降ピンを前記載置面の上方に突出した基板受け渡し位置に位置させ、前記昇降ピン上に基板を受け渡す工程と、次いで、前記基板が載せられた前記昇降ピンを前記載置面の下方の基板載置位置に下降させる工程と、次いで、前記昇降ピンを微小距離上昇させて引き続き基板載置位置へ戻す工程と、を有し、前記昇降ピンを前記基板受け渡し位置から前記基板載置位置に下降する際に、前記基板のエッジが前記テーパ面に係止された場合に、前記昇降ピンを微小距離上昇させて引き続き基板載置位置へ戻す工程により、前記エッジの前記テーパ面への係止を解消して前記基板を前記載置面に導く。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板を載置台の載置面に載置する際に、基板に横ずれが生じて基板が不所望の位置に係止された際にも、所望の位置に基板を載置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る基板載置方法を実施するための基板載置機構の一例を示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る基板載置方法を実施するための基板載置機構の一例を示す平面図である。
図3】一実施形態に係る基板載置方法を実施するための基板載置機構の一例を示す断面図である。
図4】基板載置方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図5】基板載置方法の一実施形態を示す模式図である。
図6】昇降ピン上でのウエハの横ずれを説明するための図である。
図7】ウエハのエッジがテーパ面に係止された状態を示す模式図である。
図8】ウエハのエッジがテーパ面に係止された状態でウエハを静電吸着した際のチッピングを説明するための図である。
図9】昇降ピンを微小距離上昇させて引き続きウエハ載置位置へ戻す工程によりウエハエッジのテーパ面への係止を解消するメカニズムを示す図である。
図10】プリヒートを行う際の基板の状態を示す図である。
図11】基板載置機構を適用した基板処理装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態について説明する。
【0009】
<基板載置機構>
最初に、一実施形態に係る基板載置方法を実施するための基板載置機構の一例について説明する。図1は基板載置機構を示す斜視図、図2はその平面図、図3はその断面図である。
【0010】
基板載置機構1は、基板を処理する基板処理装置において、真空に保持されるチャンバー内で基板を載置するものである。基板としては半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)が例示され、以下の説明では基板としてウエハを用いた場合について説明する。また、基板処理装置は特に限定されるものではないが、CVDやALDにより膜を形成する成膜装置を挙げることができる。CVDやALDは、プラズマCVDまたはプラズマALDであってもよい。
【0011】
基板載置機構1は、ウエハWを載置する載置台2、および載置台2の裏面側の中央に下方に延びるように取り付けられた支持部材3を有する。
【0012】
載置台2は、誘電体、例えば窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスからなる。載置台2の内部には、その表面近傍部分に、ウエハWを吸着する吸着電極11が埋設されており、静電チャックを構成している。吸着電極11は、例えばMoで形成され、例えばメッシュ状をなしている。吸着電極11には給電線13を介して直流電源14が接続されており、吸着電極11に直流電圧が印加されることによりウエハWが静電吸着される。直流電源14はスイッチ(図示せず)によりON・OFF可能となっている。なお、吸着電極11は、プラズマに対する接地電極としても機能する。
【0013】
図3に示すように、載置台2の内部における吸着電極11の下方位置にはヒータ12が埋設されていてもよい。例えばCVDやALDによる成膜処理の際に、ヒータ12によりウエハWが加熱される。ヒータ12には給電線15を介してヒータ電源16が接続されており、熱電対等の温度センサ(図示せず)の検出値に基づいてヒータ12の出力が制御され、載置台2の温度が制御される。
【0014】
載置台2の表面には、ウエハWの外周に対応する位置に円環状をなし、ウエハWが載置される載置面21が形成されている。
【0015】
載置面21の内側には、載置面21から、20~70μm程度低い位置に吸着面22が形成されている。吸着面22は、静電チャックがONになった際にウエハWが吸着される面であり、例えばエンボス加工が施されたエンボス面となっている。静電チャックによりウエハWが吸着面22に吸着された際に、ウエハWは載置面21に密着され、基板処理がCVDやALDの場合に反応性ガスがウエハW裏面側に回り込むことによるデポ膜の形成をより効果的に抑制できる。特に、プラズマCVDやプラズマALDで導電性膜を成膜する場合に、導電性デポ膜が形成されることによるリーク電流やアーキングを抑制することができる。
【0016】
吸着面22にはガス導入口24が形成されており、ガス供給源18からガス供給路17を介して供給されたバックサイドガスがガス導入口24から空間23内に供給されるようになっている。ガス供給源18、ガス供給路17、ガス導入口24は、バックサイドガス供給機構を構成する。バックサイドガスとしては、ヘリウム(He)ガスのような熱伝導性の高いガスが用いられ、バックサイドガスを介して載置台2の熱がウエハWに伝熱される。
【0017】
載置台2の表面の、載置面21よりも外側の部分には、ウエハWをガイドするガイド部26が円環状に形成されている。ガイド部26の内面は、ウエハWが横方向にずれた場合に、ウエハWをガイドして載置面21へ導くためのテーパ面26aとなっている。図3に示すテーパ面26aのテーパ角度αは50~70°であることが好ましく、例えば60°である。この範囲でウエハWのエッジをガイドする機能を有効に発揮することができる。
【0018】
ガイド部26の内側は凹部27となっており、載置面21は凹部27の底部に位置し、載置面21に載置されたウエハWが凹部27内に収容されるようになっている。凹部27の高さ、すなわち、ガイド部26の上面の載置面21からの高さは、例えば0.5~1mmである。
【0019】
載置面21とガイド部26の間には、円環状をなす溝部25が形成されている。溝部25は、処理装置による処理がガスを用いるものである場合に、ガスによるデポ膜を蓄積するためのものである。特に、処理装置による処理が導電性膜を成膜するものである場合には、溝部25にデポ膜を蓄積することにより、導電性のデポ膜がウエハWの載置面に回り込んで静電チャック機能が発揮されなくなることが抑制される。
【0020】
載置台2の載置面21に対応する部分には、垂直方向に貫通する昇降ピン挿通孔28が3つ(図3では2つのみ図示)形成され、各昇降ピン挿通孔28には、昇降ピン29が載置面21に対して突没可能に挿通されている。これら昇降ピン29は支持板30に支持されている。そして、昇降ピン29は、エアシリンダ等の駆動機構31により支持板30を介して昇降される。昇降ピン29は、載置面21から突出したウエハ受け渡し位置と、載置面21よりも下方のウエハ載置位置との間で移動し、ウエハ受け渡し位置でその上にウエハWが受け渡され、ウエハ載置位置でウエハWが載置面21に載置される。
【0021】
駆動機構31による昇降ピン29の昇降動作は、昇降制御部40により制御され、これにより、昇降ピン29上に載置されたウエハWの載置面21への載置動作が制御される。なお、基板載置機構1のヒータ12や吸着電極11への電圧印加等の他の制御は、上位の制御部(図1~3では図示せず。後述の制御部160参照)により行われる。
【0022】
静電チャックは、基板であるウエハWのそりを矯正する機能を有する。ウエハWのそりを有効に矯正する観点から、吸着電極11への給電によりウエハWをジョンソン・ラーベック力で吸着するようにすることが好ましい。ジョンソン・ラーベック力を用いたウエハWの吸着は、誘電体の成膜温度での体積抵抗率を1×10~1×1012Ω・cm程度と多少低くし、電荷の移動を可能として行われる。これにより、電荷の蓄積量を多くすることができ、クーロン力よりも高い吸着力を得ることができる。誘電体としてAlNを用いることにより、上記範囲の体積抵抗率を得ることができ、ジョンソン・ラーベック力を有効に発揮させることができる。
【0023】
静電チャックを用いる場合、ヒータ12による載置台2表面の温度、すなわちウエハWの温度は200℃以上が有効である。加熱温度200℃以上の場合に基板であるウエハWのそりが大きくなりやすく、静電チャックとしての機能の必要性が高くなる。400℃以上、さらには400~700℃の場合に、より高い効果を得ることができる。
【0024】
なお、静電チャックは必ずしも設ける必要はない。静電チャックを設けない場合は、吸着電極11や吸着面22、空間23は不要であり、ウエハWの全面が載置面21に載置される構成とすることができる。
【0025】
<基板載置方法>
次に、以上のように構成される基板載置機構1の載置台2に基板であるウエハWを載置する基板載置方法の一実施形態について図4のフローチャートおよび図5の模式図を参照して説明する。この基板載置方法は、昇降制御部40による昇降ピン29の制御により行われる。
【0026】
まず、図5(a)に示すように、昇降ピン29を載置面21の上方に突出したウエハ受け渡し位置に位置させ、真空状態のチャンバー内に搬入されたウエハWを昇降ピン29の上に受け渡す(ステップ1)。
【0027】
次いで、図5(b)に示すように、昇降ピン29を載置面21よりも下方のウエハ載置位置に下降させる(ステップ2)。これにより、通常であればウエハWが載置面21に載置される。
【0028】
次いで、図5(c)に示すように、昇降ピン29を微小距離上昇させて引き続きウエハ載置位置へ戻す(ステップ3)。
【0029】
以下、ステップ3を行う理由について詳細に説明する。
ウエハWを載せた昇降ピン29をウエハ受け渡し位置からウエハ載置位置へ下降させる動作の途中で、図6のように昇降ピン29上のウエハWの滑りにより横ずれが生じてウエハWのエッジがガイド部26のテーパ面26aに接触することがある。これは比較的高圧で行われるCVDやALDによる成膜処理において生じやすい。テーパ面26aは、ウエハWのエッジが接触した場合に、ウエハWをガイドするように設計されている。そのため、通常であれば、ウエハWのエッジがテーパ面26aに接触した場合でもウエハWの自重により、ウエハWのエッジがテーパ面26aを滑り、ウエハWが載置面に載置される。
【0030】
しかし、テーパ面26aにウエハWのエッジが係止されたままになってウエハWが載置面21に正確に載置されないことがある。このような現象は、図7に示すように、ウエハWのエッジがテーパ面26aにせり上がって若干噛み込んだ状態となって、局部的に摩擦抵抗が大きくなることにより生じると考えられる。
【0031】
このような現象が生じると、種々の不都合が生じる。例えば、静電チャックを用いる場合には、図8に示すように、ウエハWを静電吸着したときにウエハWのエッジのテーパ面26aに係止された部分に局部的にストレスがかかり、チッピングが発生するおそれがある。また、静電チャックを用いない場合でも、ウエハWのエッジがテーパ面26aに係止されることによりウエハWの裏面と載置面21との間に空間が生じるため、ウエハWの裏面へデポ膜が形成されやすくなる。
【0032】
このような現象が生じるのは、1000枚のウエハに対して1枚程度の頻度ではあるが、半導体製造工程ではこのような頻度でも問題となる。
【0033】
そこで、本実施形態では、昇降ピン29をウエハ載置位置に下降させるステップ2を行った後、昇降ピン29を微小距離上昇させて引き続きウエハ載置位置へ戻すステップ3を行って、このようなテーパ面におけるウエハエッジの係止を解消する。すなわち、このステップ3においては、昇降ピン29を一旦微小距離上昇させることにより、図9(a)に示すように、テーパ面26aに係止されていたウエハWが持ち上げられ、ウエハWのエッジがテーパ面26aから離れて、局部的な大きい摩擦抵抗がリセットされる。そして、再び昇降ピン29をウエハ載置位置に下降させた際には、図9(b)に示すように、ウエハWのエッジがテーパ面26aを滑り、ウエハWが載置面21に載置される。
【0034】
静電チャックを用いる場合には、以上のようにしてウエハWを載置面21に載置した後、静電チャックの吸着電極11に直流電圧を印加してウエハWを吸着する。上述したように、上記ステップ3によりウエハWエッジのテーパ面26への係止を解消してウエハWを載置面21に載置することができるので、このようにウエハWが静電吸着された際に、ウエハエッジの局部的なチッピングを防止することができる。
【0035】
また、静電チャックを用いない場合にも、ウエハWの裏面と載置面21との間に空間が生じてウエハWの裏面へデポ膜が形成されることを防止することができる。
【0036】
ステップ3における、昇降ピン29の上昇距離(微小距離)、すなわちウエハWを持ち上げるストロークは、ウエハWエッジのテーパ面26aへの係止(噛み込み)を解消できる値であることが必要である。このような観点から、昇降ピン29の上昇距離は1mm以上であることが好ましい。また、昇降ピン29の上昇距離は大きすぎてもタクトタイムに影響を与える。このため、タクトタイムに影響を与えないことを考慮すると、昇降ピン29の上昇距離は3mm以下が好ましい。この程度の上昇距離であれば、昇降ピンを上昇した後再び下降するまでに必要な時間は1sec程度以下であり、タクトタイムにほとんど影響を与えない。以上から、ステップ3では、昇降ピン29の上昇距離は、1~3mmが好適である。
【0037】
この工程が必要なのは、エッジがテーパ面26aに係止されたウエハのみであるが、全てのウエハWについてこの工程を実施することが好ましい。これにより、ウエハWのエッジの係止を検出する手段や、ウエハによって工程を変えることが不要であるため、簡易に実施することができる。
【0038】
必要に応じて、図10に示すように、昇降ピン29を途中で止め、ウエハWを載置面21に近接させた状態にしてチャンバー内に熱伝導ガスとしてArガスのような不活性ガスを供給し、ウエハWのプリヒートを行ってもよい。このときのウエハWと載置面21との距離は、0.5~1mm、例えば1mmとされる。
【0039】
ウエハWを載置面21に載置する際のチャンバー内の圧力は、13.3Pa(0.1Torr)以下であることが好ましい。ウエハWを載置面21上に載置する際には、ウエハWが載置された状態の昇降ピン29が下降されるが、載置される直前にチャンバー内の圧力が13.3Pa(0.1Torr)より高いと、ウエハWが載置される際に横ずれが生じやすくなることが確認されている。すなわち、ウエハWを載置面21に載置する際のチャンバー内の圧力は、13.3Pa(0.1Torr)以下とすることにより、ウエハWの横ずれ自体を抑制する効果が得られる。
【0040】
ウエハ載置シーケンスの最初から、チャンバー内をこのような低圧状態に設定してもよいが、プリヒートを行う場合には、プリヒート後、昇降ピン29をそのままにして、ウエハWを載置面21に近接した状態で、チャンバー内を低圧状態にしてもよい。また、プリヒートを行わない場合でも、昇降ピン29を途中で止めた後、チャンバーを低圧状態にしてもよい。
【0041】
<基板処理装置>
次に、上述した基板載置機構を適用した基板処理装置について説明する。
図11は基板処理装置を示す断面図である。
【0042】
基板処理装置100は、CVDによりタングステン(W)膜を成膜する成膜装置として構成されている。
【0043】
この基板処理装置100は、略円筒状をなす金属製のチャンバー101を有している。チャンバー101は、本体の底壁101bの中央部に形成された円形の穴150を覆うように下方に向けて突出する排気室151を有している。排気室151の側面には排気管152が接続されており、この排気管152には圧力制御バルブおよび真空ポンプを有する排気装置153が設けられている。この排気装置153により、チャンバー101内を排気するとともに、チャンバー101内の圧力を所定の圧力の減圧状態に制御することが可能となっている。
【0044】
チャンバー101の側壁には、チャンバー101と隣接して設けられたウエハ搬送室(図示せず)との間でウエハWの搬入出を行うための搬入出口157と、この搬入出口157を開閉するゲートバルブ158とが設けられている。
【0045】
チャンバー101の内部には、上述した構成を有する基板載置機構1が設けられている。基板載置機構1の支持部材3は、絶縁部材4を介して排気室151の底壁に取り付けられている。また、昇降ピン29を昇降する駆動機構31は、排気室151の外側に取り付けられている。
【0046】
チャンバー101の天壁101aには、シャワーヘッド110が基板載置機構1の載置台2に対向するように設けられている。シャワーヘッド110は、ガス導入部として機能する。シャワーヘッド110は、ベース部材111とシャワープレート112とを有しており、シャワープレート112の外周部はベース部材111にねじ止めされている。ベース部材111とシャワープレート112との間にガス拡散空間114が形成されている。ベース部材111は天壁101aに支持されている。シャワープレート112は、載置台2に対向するガス吐出面118を有し、シャワープレート112には複数のガス吐出孔115が形成されている。ベース部材111の中央付近には一つのガス導入孔116が形成されている。ガス導入孔116には、後述するガス供給機構120のガス配管が接続され、ガス供給機構120から供給された処理ガスがシャワーヘッド110を介してチャンバー101内にシャワー状に導入される。
【0047】
また、シャワーヘッド110のベース部材111には、シャワーヘッド110を加熱するためのヒータ147が設けられている。このヒータ147はヒータ電源(図示せず)から給電され、シャワーヘッド110を所望の温度に加熱する。ベース部材111の上部に形成された凹部には断熱部材149が設けられている。
【0048】
ガス供給機構120は、ClFガス供給源121、Nガス供給源122、WFガス供給源123、Arガス供給源124、SiHガス供給源125、Hガス供給源126を有している。ClFガスはクリーニングガスとして用いられる。WFガスはW原料ガスとして用いられる。SiHガスおよびHガスは還元ガスとして用いられる。NガスおよびArガスは、キャリアガスおよびパージガスとして用いられる。
【0049】
ClFガス供給源121にはガスライン127が接続されている。Nガス供給源122にはガスライン128が接続されている。WFガス供給源123にはガスライン129が接続され、このガスライン129の途中から分岐ライン130が分岐している。この分岐ライン130は後述するニュークリエーション工程に用いられ、流量が厳密に制御されるようになっている。Arガス供給源124にはガスライン131が接続されている。このガスライン60に、上記ガスライン129および分岐ライン130が合流するようになっている。SiHガス供給源125にはガスライン132が接続されている。Hガス供給源126にはガスライン133が接続されている。そして、ガスライン127,128,131,132,133は共通ガスライン139に接続され、この共通ガスライン139が上述のガス導入孔116に接続される。ガスはガス導入孔116を経てガス拡散空間114に至り、シャワープレート112のガス吐出孔115を通ってチャンバー101内のウエハWに向けてシャワー状に吐出される。
【0050】
ガスライン127,128,129,130,131,132,133には流量制御器としてのマスフローコントローラ137と、その前後の2つの開閉バルブ136とが設けられている。なお、流量制御器はマスフローコントローラ137に限らない。
【0051】
基板処理装置100は、バルブ136、マスフローコントローラ137、整合器140、高周波電源141、基板載置機構1の昇降制御部40や直流電源14、ヒータ電源16等を制御する制御部160を有している。制御部160は、CPU(コンピュータ)を有し、上記各構成部の制御を行う主制御部と、入力装置、出力装置、表示装置、および記憶装置を有している。記憶装置には、基板処理装置100で実行される処理を制御するためのプログラム、すなわち処理レシピが格納された記憶媒体がセットされ、主制御部は、記憶媒体に記憶されている所定の処理レシピを呼び出し、その処理レシピに基づいて基板処理装置100に所定の処理を行わせるように制御する。
【0052】
次に、以上のような基板処理装置100を用いて行われるW膜の成膜処理について説明する。
【0053】
ここでは、予めウエハW上にバリア層として形成されたTiN薄膜の上にW薄膜を形成する典型例について示す。
【0054】
まず、チャンバー101内にウエハWを搬入するに先立って、チャンバー101内のプリコート処理を行う。チャンバー11内を、好ましくは350~450℃に加熱し、後述するイニシエーション工程、ニュークリエーション工程、W成膜工程と同様の処理を同じ条件で順次実施し、チャンバー101の内壁や載置台2、シャワーヘッド110の表面等にプリコート膜を形成する。
【0055】
このようなプリコート処理が終了後、チャンバー101内をArガスおよびNガスでパージする。次いで、チャンバー101内の圧力を調整した後、ゲートバルブ158を開にして、真空搬送室(図示せず)から搬送機構(図示せず)により搬入出口157を介してウエハWをチャンバー101内へ搬入し、ヒータ12により所定温度に保持された載置台2の載置面21に載置する。
【0056】
ウエハWを載置台2の載置面21に載置する際には、上述したように、昇降ピン29を載置面21から突出したウエハ受け渡し位置に位置させ、昇降ピン29の上にウエハWを受け渡す。
【0057】
次いで、昇降ピン29を途中で止め、ウエハWを載置面21に近接した状態でチャンバー内に熱伝導ガスとしてArガスを供給し、ウエハWのプリヒートを行う。次いで、ウエハWを同じ位置に止めたまま、チャンバー101内を排気し、チャンバー101内の圧力を13.3Pa(0.1Torr)以下にする。これにより、ウエハWの昇降ピン29上での横ずれが抑制される。次いで、昇降ピン29を載置面21よりも下方のウエハ載置位置に下降させる。次いで、昇降ピン29を微小距離上昇させ、引き続きウエハ載置位置へ戻す工程を行う。上述したように、この工程を行うことにより、昇降ピン29上でウエハWの横ずれが生じ、横ずれしたウエハWのエッジがテーパ面26aに噛み込んだ状態で係止された場合でも、ウエハWのエッジの噛み込みがリセットされ、テーパ面26aに係止されたウエハWを載置面21へ載置することができる。
【0058】
載置台2に載置したウエハWに対して、まず、その後形成されるW膜の異常粒成長を抑制して良好な表面状態とするためのイニシエーション処理を実施する。イニシエーション処理は、シャワーヘッド110を介してチャンバー101内にSiH4ガスおよびH2ガスを供給してTiN膜上にSiHx(例えばx=1~3)を吸着させる。
【0059】
このイニシエーション処理の後、チャンバー101内にWF6ガス、Arガス、Hガス、Nガスを供給してニュークリエーション処理を実施する。このニュークリエーション処理の際には、ガスライン129の途中から分岐している分岐ライン130のマスフローコントローラ137をより厳密に流量を制御できるものとし、WF6ガスを成膜処理の際よりも少量で厳密に流量制御してWの核生成を行う。
【0060】
次いで、Arガス、Hガス、Nガスを供給したまま、分岐ライン130から本ラインであるガスライン129に切り替えてニュークリエーションの際よりも多い流量でWF6ガスを流してW膜の成膜処理を行う。
【0061】
これらニュークリエーション処理および成膜処理においては、加熱温度は380~500℃が好ましい。
【0062】
成膜処理を予め定められた時間行った後、ガスライン129のバルブを閉じ、WF6ガス供給源123からのWF6ガス等の供給が停止され、成膜工程が終了する。
【0063】
その後、チャンバー101内をArガスでパージし、次いで、リフトピン16によりウエハWを押し上げ、搬送アームによりウエハWをチャンバー11外へ搬出する。
【0064】
以上のような工程を、所与の枚数のウエハWについて繰り返し行った後、ClF3ガスをチャンバー11内に供給してチャンバー内のクリーニングを行う。クリーニング後、再びプリコート処理を行い、上述の処理を繰り返し行う。
【0065】
以上のような基板処理装置100によるウエハWへのW膜の成膜処理において、上述したように、ウエハWを載置台2に載置する際に、昇降ピン29を微小距離上昇させて引き続きウエハ載置位置へ戻す工程を行う。これにより、テーパ面26aへのウエハWのエッジの噛み込みが生じた場合に、それを解消することができ、静電チャックによりウエハWを載置台2に静電吸着した際に、ウエハWのエッジに局部的なストレスによるチッピングが発生することを防止できる。
【0066】
また、基板処理装置100によるW膜の成膜処理は、380~500℃という高温で行われ、ウエハWのそりが問題となるが、静電チャックによりウエハWを静電吸着することにより、ウエハWのそりを生じ難くすることができる。このため、処理の均一性悪化や、ウエハWと載置台2との間にデポ物が付着すること等のウエハWのそりによる問題を解消することができる。
【0067】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0068】
例えば、上記実施形態では、基板載置方法を実施する基板載置機構として静電チャックを有するものを例示したが、静電チャックを有しないものであってもよい。
【0069】
また、基板載置方法を適用する基板処理装置としてCVDによりW膜を成膜する成膜装置を例示したが、これに限るものではない。例えば、成膜する膜種はW膜に限らず任意であり、また、成膜装置に限るものでもない。また、上記実施形態では基板処理装置としてプラズマを用いないものを例示したが、プラズマを用いるものであってもよい。
【0070】
さらに、基板載置機構も上記実施形態の構成に限定されない。例えば、上記実施形態では、基板載置機構として載置台を支持部材で支持した例を示したが、支持部材を設けずに載置台を直接チャンバーの底部に設けてもよい。
【0071】
さらにまた、基板として半導体ウエハを用いた例を示したが、基板はウエハに限らず、FPD基板やセラミックス基板等の他の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1;基板載置機構
2;載置台
3;支持部材
11;吸着電極
12;ヒータ
21;載置面
22;吸着面
23;空間
24;ガス導入口
25;溝部
26;ガイド部
26a;テーパ面
27;凹部
29;昇降ピン
31;駆動機構
40;昇降制御部
100;基板処理装置
101;チャンバー
110;シャワーヘッド
120;ガス供給機構
141;高周波電源
W;半導体ウエハ(基板)
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