(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061677
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】尿路結石を模擬したシュウ酸カルシウム成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 55/07 20060101AFI20230425BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20230425BHJP
B01J 2/22 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
C07C55/07
B01J2/00 A
B01J2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171756
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 悠紀
【テーマコード(参考)】
4G004
4H006
【Fターム(参考)】
4G004AA03
4G004MA03
4H006AA03
4H006AB20
4H006BS70
(57)【要約】
【課題】シュウ酸カルシウム成形体及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】シュウ酸カルシウムを構成成分とし、前記シュウ酸カルシウムの相が、シュウ酸カルシウム一水和物、シュウ酸カルシウム二水和物、シュウ酸カルシウム三水和物のいずれか一種以上から構成されることを特徴とする成形体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュウ酸カルシウムを構成成分とする成型体であって、シュウ酸カルシウムの相を含み、前記シュウ酸カルシウムの相が、シュウ酸カルシウム一水和物、シュウ酸カルシウム二水和物、シュウ酸カルシウム三水和物のいずれか一種以上から構成されることを特徴とする、成形体。
【請求項2】
シュウ酸カルシウムにさらに有機分子(但し、シュウ酸カルシウムは除く)を含有し、有機分子を成形体の乾燥重量に対して0.001wt%以上含むことを特徴とする、請求項1記載の成形体。
【請求項3】
前記有機分子が、アミノ酸、カルボン酸、脂質、タンパク質、ビタミン、核酸、糖、アルコール、多糖ステロイド、リン酸エステルのいずれか一種以上であることを特徴とする、請求項2に記載の成形体。
【請求項4】
さらに無機物質を含有し、シュウ酸カルシウムの含有量が10mol%以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のシュウ酸カルシウム成形体。
【請求項5】
前記無機物質が、リン酸カルシウムに分類される化合物であることを特徴とする、請求項4に記載のシュウ酸カルシウム成形体。
【請求項6】
前記成形体は、立方体、直方体、円柱、円錐形、円錐台形、球、八面体、四面体のいずれかの形状を有し、体積が1mm3以上であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項7】
シュウ酸カルシウムを主成分とする結晶同士が、化学的に結合し、又は、互いに融合し或いは絡み合うことにより形状を維持していることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項8】
DTS強度が0.01MPa以上であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項9】
カルシウムを含有する化合物粉末とシュウ酸を含有する化合物粉末を混合する工程と、得られた混合粉末に練和用液体を滴下してスラリー又は混合泥にする工程と、前記スラリー又は混合泥をモールドに充填し養生する工程と、養生後、成形体をモールドから取り出し、乾燥させる工程、を含む、シュウ酸カルシウム一水和物、シュウ酸カルシウム二水和物、シュウ酸カルシウム三水和物のいずれか1種以上から構成されるシュウ酸カルシウムの相を含むシュウ酸カルシウム成形体の製造方法。
【請求項10】
前記カルシウムを含有する化合物粉末とシュウ酸を含有する化合物粉末を混合する工程において、さらに無機物質を混合することを特徴とし、前記成形体はさらに無機物質を含有する、請求項9に記載の成形体の製造方法。
【請求項11】
前記混合粉末及び/又は練和用液体に有機分子を添加することを特徴とし、前記成形体はさらに有機分子を含有することを特徴とする、請求項9又は10に記載の成形体の製造方法。
【請求項12】
シュウ酸カルシウムの粉末または顆粒を、有機分子を含む練和用液体でスラリー又は混合泥にする工程と、前記スラリー又は混合泥をモールドに充填し養生する工程と、養生後、成形体をモールドから取り出し、乾燥させる工程と、を含む、有機分子を含有するシュ
ウ酸カルシウム成形体の製造方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載のシュウ酸カルシウムの成形体を粉砕後、粉砕粉を、有機分子を含む練和用液体でスラリー又は混合泥にする工程と、前記スラリー又は混合泥をモールドに充填し養生する工程と、養生後、成形体をモールドから取り出し、乾燥させる工程と、を含む、有機分子を含有するシュウ酸カルシウム成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュウ酸カルシウム成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
尿路結石は、結石のある場所によって尿管結石、膀胱結石、腎結石、尿道結石と称されており、主として、シュウ酸カルシウム(CaOx)結晶が、晶出、集積し、尿道を閉塞したものである。尿路結石は、日本の人口の10%程度が罹患し、その半数は再発すると言われている。尿路結石には環境的要因と遺伝的要因があり、食事による、シュウ酸源となる化合物及びカルシウムの排出量の増加が一因ではあるが、発症しない健常者がいる一方、家族に罹患歴がある場合は、発症率が高いことが知られている。
【0003】
尿路結石の治療法として、結石が小さい場合には、薬剤によって利尿作用を促し、自然に排出されるのを待つことが行われる。一方、結石が大きい場合には、体外衝撃波破砕術(ESWL:Extracorporeal Shock Wave Lithotripsy)、経尿道的尿管砕石術(TUL:Transurethral Ureter-lithotripsy)などの手法により、結石を細かく粉砕し、体外に強
制排出することが行われる。しかし、尿路結石の形成や粉砕のメカニズムについては、未解明な部分が多く、現在も研究途上にある。
【0004】
特許文献1には、生体結石中のシュウ酸カルシウム一水和物を赤外分光法によって定量分析する技術が開示されている。また、特許文献2には、結石を粉砕、除去するためのエレメントが開示されている。しかしながら、尿路結石に対して特効薬等が存在しないのが現状である。なお、特許文献3には、人工シュウ酸カルシウム系結晶が開示されているが、この技術は、骨や歯などの硬組織に利用することを目的とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-105886号公報
【特許文献2】特表2021-511140号公報
【特許文献3】特開2006-45078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
尿路結石の治療技術の開発に関して、2つ観点からのアプローチが考えられる。すなわち、1)増悪プロセス阻害要素の定量的評価、2)ESWL、TUL、CT(Computed tomography)など、結石治療用の医療機器への結石モデル(尿路結石を模擬した物質)の
提供である。1)に関して、シュウ酸カルシウム結晶の形成、成長、集積のプロセスが結石増悪プロセスの本質であるため、このプロセスを解明して、これらを抑制することができれば、新規治療法や投薬等の低侵襲医療の開発につながることが期待できる。
【0007】
2)に関して、ESWL、TUL、CTは低侵襲医療である一方、結石自体の物性評価は困難である。特に、結石を構成するCaOxの相(シュウ酸カルシウム一水和物:COM、シュウ酸カルシウム二水和物:COD)の種類やタンパク質の影響は、結石の物性を大きく変動させることが臨床研究において知られている。このため、尿路結石により近い結石モデルを提供できれば、ESWL療機器の性能向上、新規創薬などのより効果的な医療の提供が期待できる。
このような諸事情に鑑み、本発明は、シュウ酸カルシウム成形体及びその製造方法を提供することを課題とし、好ましくは尿路結石の治療技術開発への適用が可能なシュウ酸カ
ルシウム成形体及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
なお、先行研究において、シュウ酸カルシウム結晶の調製、大型結晶化、タンパク質をはじめとする有機分子のシュウ酸カルシウムへの影響は検討されている。一方で、尿路結石は、シュウ酸カルシウム単結晶で構成されている訳ではなく、微細な結晶や介在因子が緻密に集積、複合化した成形体となっている。このため、結石の割れやすさを決めるのに重要な要素である成形体の機械的特性の評価は、単結晶であるシュウ酸カルシウムの評価では、決してなし得ない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、シュウ酸カルシウムを構成成分とし、前記シュウ酸カルシウムの相がシュウ酸カルシウム一水和物、シュウ酸カルシウム二水和物、シュウ酸カルシウム三水和物のいずれか一種以上から構成されることを特徴とする成形体である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、シュウ酸カルシウム成形体及びその製造方法を提供することができる。得られたシュウ酸カルシウム成形体は、ESWLなどの結石モデルとしてハンドリングができる程度の強度を有する。該シュウ酸カルシウム成形体は、尿路結石に類似する性質を備えることから、尿路結石の増悪プロセス阻害要素の定量評価用、あるいは、ESWL、TUL、CT用などの結石モデル、創薬における結石強度変化測定のための結石モデルとして、尿路結石の新規治療技術の開発用として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1のシュウ酸カルシウム一水和物成形体の写真である(図面代用写真)。
【
図2】実施例1のシュウ酸カルシウム一水和物成形体のX線回折パターンである。
【
図3】実施例1のシュウ酸カルシウム一水和物成形体のFT-IRスペクトラである。
【
図4】実施例1のシュウ酸カルシウム一水和物成形体のSEM写真((a)倍率500倍、(b)倍率5000倍)である(図面代用写真)。
【
図5】実施例2のシュウ酸カルシウム一水和物成形体の写真である(図面代用写真)。
【
図6】実施例2のシュウ酸カルシウム一水和物成形体のX線回折パターンである。
【
図7】実施例3のシュウ酸カルシウム二水和物成形体の写真である(図面代用写真)。
【
図8】実施例3のシュウ酸カルシウム二水和物成形体のX線回折パターンである。
【
図9】実施例3のシュウ酸カルシウム二水和物成形体のFT-IRスペクトラである。
【
図10】実施例3のシュウ酸カルシウム二水和物成形体のSEM写真((a)倍率500倍、(b)倍率5000倍)である(図面代用写真)。
【
図11】実施例4のタンパク質を含有するシュウ酸カルシウム一水和物成形体の写真である(図面代用写真)。
【
図12】実施例4のタンパク質を含有するシュウ酸カルシウム一水和物成形体のX線回折パターンである。
【
図13】実施例4のタンパク質を含有するシュウ酸カルシウム一水和物成形体のFT-IRスペクトラである。
【
図14】実施例4のタンパク質を含有するシュウ酸カルシウム一水和物成形体のSEM写真((a)倍率500倍、(b)倍率5000倍、(c)倍率500倍、(d)倍率5000倍)である(図面代用写真)。
【
図15】実施例4のタンパク質を含有するシュウ酸カルシウム一水和物成形体のDTS強度を示すグラフである。
【
図16】実施例4のタンパク質を含有するシュウ酸カルシウム一水和物成形体のCHN分析を示すグラフである。
【
図17】実施例5のタンパク質によって練和したシュウ酸カルシウム一水和物顆粒を使用して形成した成形体の写真である。
【
図18】実施例5のタンパク質によって練和したシュウ酸カルシウム一水和物顆粒を使用して形成した成形体のDTS強度を示すグラフである。
【
図19】実施例1及び2で作製した成形体の形状維持性の検討結果を示す写真である(図面代用写真)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する事項の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明は、これらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
本発明の実施形態に係るシュウ酸カルシウム成形体は、組成式:Ca(COO)2・H2O、Ca(COO)2・2H2O、或いは、Ca(COO)2・3H2Oで表されるシュウ酸カルシウムを主成分とする。シュウ酸カルシウムには無水物と水和物とがあり、水和物には一水和物(COM)、二水和物(COD)、三水和物(COT)があるが、本実施形態に係るシュウ酸カルシウム成形体は、COM、COD、COTのいずれか一種以上を含有するものである。
【0014】
本実施形態に係るシュウ酸カルシウム成形体は、主にシュウ酸カルシウムの結晶を成形して作製される。本成形体には、タンパク質などの影響評価や実際の結石に近づけるために、有機分子や無機物質を添加したシュウ酸カルシウム結晶も含まれる。成形体の断面構造を走査電子顕微鏡(SEM)で観察すると、個々のCaOx結晶の一部あるいは全部が、隣接するCaOx結晶と緻密に絡み合う或いは融合して、硬化した形態を保つことを確認できるが、単にCaOx粉末を圧粉した圧粉体は、前記のような構造を有さない。本成形体は、後述する通り、少なくとも水又は生理食塩水の培地に24時間浸漬しても、崩壊せずに形態を保つことができる。
【0015】
本実施形態に係るシュウ酸カルシウム成形体の形状は特に制限されないが、機械的特性評価において、成形体の体積、断面積、高さといった情報は、円滑な評価を行う上で特定されていることが望ましい。成形体の形状は、例えば、タブレット形状(略円柱形状)、球状、立方体、直方体、円錐形、円錐台形、八面体、などとすることができる。
各形状の各辺の寸法は、体積が1mm3以上であれば、特に限定されないが、好ましくは体積が5mm3以上、さらに好ましくは10mm3以上である。タブレット形状(略円柱形状)の場合、底面の半径は、例えば0.5mm以上30mm以下であり、高さは、例えば1mm以上100mm以下である。直方体及び立方体形状の場合、幅は、例えば0.5mm以上、30mm以下であり、奥行きは、例えば0.5mm以上、30mm以下であり、高さは、例えば0.5mm以上、50mm以下である。円錐形状の場合、底面の半径は、例えば0.5mm以上、30mm以下であり、高さは、例えば1mm以上、100mm以下である。
【0016】
本実施形態に係るシュウ酸カルシウム成形体は、DTS強度(ダイアメトラル引張強さ)が、好ましくは、0.1MPa以上である。DTS強度が前記下限値以上であることで、ハンドリングの際に粉砕することなく、好ましくは、結石モデルとしての使用に耐えることができる。下限値は、好ましくは0.15MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上、さらに好ましくは1.0MPa以上である。一方、上限値は、好ましくは10MPa以下、より好ましくは7MPa以下、さらに好ましくは5MPa以下である。
【0017】
本実施形態に係るシュウ酸カルシウム成形体はシュウ酸カルシウムを主成分とするが、生体内での結石の形成、成長、集積のメカニズムを解明するために、尿路結石の組成により近づけるよう各種の有機分子を含んでいてもよい。なお、シュウ酸カルシウムも有機物に分類される化合物であるが、ここでいう有機分子はシュウ酸カルシウム以外の物質を意味する。有機分子は、成形体の乾燥重量に対して0.001wt%以上30wt%以下含むことが好ましい。有機分子が0.001wt%以上であれば、CHN分析、XRF分析などによる円滑な評価が比較的容易になる。下限値は、好ましくは0.1wt%以上、より好ましくは0.5wt%以上、さらに好ましくは1.0wt%以上である。
含有される有機分子については、特に限定されないが、実際の結石との対比に際しては、アミノ酸、カルボン酸、脂質、タンパク質、ビタミン、核酸、糖、アルコール、多糖、ステロイド、リン酸エステルに分類される化合物群であることが望ましい。シュウ酸カルシウム成形体の物性制御・評価のために、生体内に存在することが考えられないような分子を添加してもよい。
【0018】
シュウ酸カルシウム成形体中の有機分子の濃度分布は特に限定されない。成形体中に一様に有機分子が分布していてもよいし、例えば、シスチン結石とシュウ酸カルシウム結石とが結合した構造を模擬するため、ブロック、プレート、あるいはディスク状のシスチンなどの有機分子にシュウ酸カルシウムが接合した成形体としてもよい。
【0019】
ここでいうアミノ酸とは、アミノ基とカルボキシ基の両方の官能基を持つ有機化合物の総称である。具体例として、グリシン、アルギニン、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンなどのタンパク質合成時に必須なアミノ酸、及び、シスチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、サイロキシン、0-ホスホセリン、デスモシンなどの修飾アミノ酸、β-アラニン、サルコシン、オルニチン、シトルリン、クレアチン、クレアチニン、γ-アミノ酪酸、オパイン、トリメチルグリシンなどのタンパク質には含
まれないが生体内に存在するアミノ酸、カルボシステイン、テアニン、トリコロミン酸、カイニン酸、ドウモイ酸、イボテン酸、アクロメリン酸などの薬理作用を発揮する分子及び、その塩があげられる。
【0020】
ここでいうカルボン酸とは、組成中に-COOHで表される官能基を1つ以上持つ分子のことをいう。
カルボキシル基を持つ分子の具体例として、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、カルボン酸チオール、ハロゲン化カルボン酸、芳香族酸、ヒドロキシ酸、糖酸、ニトロカルボン酸、脂肪酸、ポリカルボン酸などに分類される物質、これらの誘導体、及びこれらを重合させた物質が挙げられる。すなわち、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ギ酸、吉草酸、コハク酸、クエン酸、メルカプトウンデカン酸、チオグリコール酸、アスパラガス酸、α-リポ酸、β-リポ酸、ジヒドロリボ酸、クロロ酢酸、マロン酸、アコニット酸、リンゴ酸、酒石酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、α-ケトグルタル酸、オキサロコハク酸、ピルビン酸、イソクエン酸、テアニン、乳酸、フォリン酸、パントテン酸、安息香酸、サリチル酸、o-フタル酸、m-フタル酸、p-フタル酸、ニコチン酸、ピコリン酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、ジャスモン酸、ウンデシレン酸、レブリン酸、イズロン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、グリセリン酸、グルコン酸、ムラミン酸、シアル酸、マンヌロン酸、グリコール酸、グリオキシル酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトロ酢酸、ニトロヒドロケイ皮酸、ニトロ安息香酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルチミン酸、ペンタデシル酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、ステアリドン酸、イワシ酸、リノレン酸、ピノレン酸、クロ
トン酸、ネルボン酸、ニシン酸、ポリアクリル酸、ポリクエン酸、ポリイタコン酸並びにこれらの塩などを挙げることができる。これらは、単独で使用してもよいし、複数を混合して使用してもよい。なお、上記に掲げるカルボン酸の中には「糖」に分類されるようなものも含まれているが、分類の種別は、あくまで理解を容易にするためであって、分類によって物質を限定する意図はない。
【0021】
ここでいう脂質とは、単純脂質と呼称されるアルコールと脂肪酸のエステルである、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロールに分類される化合物、リン脂質、糖脂質に分類される化合物の総称である。
【0022】
ここでいう脂肪酸とは、一価のカルボキシ基に、炭素鎖が結合した構造をなす化合物を
指す。炭素鎖中の二重結合の有無により、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類される。具体例として、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、アラキドン酸などを挙げることができる。
【0023】
ここでいうタンパク質とは、アミノ酸が鎖状に多数連結し、重合して形成した高分子化合物であり、水溶性、脂溶性は問わない。具体例として、リゾチーム、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン、オステオポンチン、カリギュラリン、プロトロンビン、オステオカルシン、アルカリフォスファターゼ、アシッドフォスファターゼ、アクチン、アンギュリン、アミロイド、アメロジェニン、イオクリン、インテイン、インヒビン、エナメリン、エメリン、アルブミン、オルチニン、カルバイン、キネシン、グロブリン、クリスタリン、クルクリン、グルテン、クロマチン、コヒーシン、コフィリン、コンデンシン、サイクリン、セプチン、セリシン、セレノプロテイン、ソーマチン、ダイニン、チューブリン、ディフェンシン、デスミン、デスモシン、トリセルニン、トリポニン、GFP、ヒスタチン、ヒストン、ビメンチン、フィブリノゲン、フィブリン、フクチン、フラジェリン、ペンタジン、ミオシン、ミラクリン、モネリン、ラクトフェリン、リシン、ルシフェラーゼ、レクチン、ロドブシンなどが挙げられる。
【0024】
ここでいう糖とは、分子内にホルミル基或いは、カルボニル基を一つ以上持つ多価アルコールの総称である。具体例として、グリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース、ジヒドロキシアセトン、エリトルロース、キシルロース、リブロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトースなどの単糖、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、マルチトールなどの二糖、ニゲロトリオ―ス、マルトトリオース、メレジトース、マルトトリウロース、ラフィノース、ケストースなどの三糖、ニストース、ニゲロテトラオース、スタキオースなどの四糖、デンプン、デキストリン、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロース、カードラン、キチン、デキストラン、ニゲラン、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、ペクチン、キシログルカン、キシラン、グルコマンナン、レバン、ゲランガム、キサンタンガムなどの多糖及び、これの誘導体が挙げられる。
【0025】
ここでいうアルコールとは、分子内に-OH基を1つ以上持つ有機物質の総称である。
具体例として、メタノール、エタノール、プロパン-1-オール、ブタン-1-オール、ペンタン-1-オール、ヘキサン-1-オール、ヘプタン-1-オール、オクタン-1-オール、ノナン-1-オール、デカン-1-オールなどの第一級アルコール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、ブタン-2-オール、ペンタン-2-オール、ヘキサン-2-オール、シクロヘキサノールなどの第二級アルコール、tert-ブチルアルコール、2-メチルブタン-2-オール、2-メチルペンタン-2-オール、2-メチルヘキサン-2-オール、3-メチルペンタン-3-オール、3-メチルオクタン-3-オ
ールなどの第三級アルコールをはじめとする一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの二価アルコール、グリセリンなどの三価アルコール、フェノールなどの芳香環アルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)などのポリエーテルなどが挙げられる。
【0026】
ここでいうステロイドとは、シクロペンタノペルヒドロフェナントレン(ステラン)を基本骨格とし、それに官能基が付随したものを指す。すなわち、基本骨格としてコレスタン、コラン、プレグナン、アンドロスタン、エストランの5種類に、任意の官能基が修飾されているものをいう。例えば、コレステロール、フィトステロール、カンペステロール、β―シトステロール、エルゴステロールなどのステロール、コルチゾール、アルドステロン、プロゲステロン、エストラジオール、テストステロンなどのステロール誘導体、ジヒドロテストステロン、エストロン、エストリオール、デヒドロエビアンドロステロン、アンドロステロンなどの性ホルモン、コルチゾール、プロドニゾン、コルチコステロン、コルチゾン、プロゲステロンなどの糖質コルチコイド、アルドステロン、デスオキシコルチコステロン、フルドロコルチゾンなどの鉱質コルチコイド、アンドロゲン、コレステン、コール酸などが挙げられる。
【0027】
ここでいうビタミンとは、生物の生存・生育に不可欠な分子の中、その生物の体内で十分な量を合成できない、炭水化物、タンパク質、脂質のいずれにも該当しない有機分子の総称である。本ビタミンは、水溶性、脂溶性のいずれも問わない。また、生体内において所望の働きをする分子群でもある。すなわち、ビタミンAとして、レチノール、α-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチンなどが挙げられる。ビタミンB1として、チアミン及びその塩などが挙げられる。ビタミンB2として、リボフラビン及びその塩などが挙げられる。ビタミンB3として、 ナイアシン及びその塩などが挙げられる。ビタ
ミンB5として、 パントテン酸及びその塩などが挙げられる。ビタミンB6として、ピ
リドキサール、ピリドキサールリン酸、ピリドキサミン、ピリドキシン及びこれらの塩などが挙げられる。ビタミンB7として、ビオチン及びその塩などが挙げられる。ビタミンB9として、葉酸及びその塩などが挙げられる。ビタミンB12として、シアノコバラミン、メチルコバラミン、ヒドロキソコバラミン及びこれらの塩などが挙げられる。ビタミンCとして、アスコルビン酸及びその塩などが挙げられる。ビタミンDとして、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロールなどが挙げられる。ビタミンEとして、トコフェロール、トコトリエノールなどが挙げられる。ビタミンKとして、フィロキノン、メナキノンの二つのナフトキノン誘導体などが挙げられる。
【0028】
ここでいう核酸とは、リボ核酸 (RNA)とデオキシリボ核酸(DNA)の総称で、
塩基と糖、リン酸からなるヌクレオチドがホスホジエステル結合で連なった生体高分子の総称である。ここでいう塩基とは、核酸塩基と呼称される、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、キサンチン、ヒポキサンチン、プリン、2,6-ジアミノプリン、6,8-ジアミノプリン及び、これらの誘導体からなる化合物群を指す。ここでいう糖とは、フラノースに分類される化合物の誘導体を指す。
【0029】
ここでいうリン酸エステルとは、組成中に-PO4R2で表される官能基をいう。Rは、水素又はアルキル基である。
リン酸基を持つ分子の具体例として、アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、ヌクレオチド、グルコース-6-リン酸、フラビンモノヌクレオチド、ポリリン酸、10-メタクリロイルオキシデシル二水素リン酸(MDP)、イノシトール一リン酸、イノシトール二リン酸、イノシトールトリスリン酸、イノシトールテトラキスリン酸、イノシトールペンタキスリン酸、フィチン酸、ホスホリルコリン、ホスファチジルコリン、レシチン並びにこれらの塩などを挙げることができる。
【0030】
ところで、尿路結石の核形成プロセスとして、ランドールプラーク(リン酸カルシウム粒子)上に尿中のシュウ酸カルシウム結晶が結合して形成されると考えられている。また、尿路結石の集積プロセスとして、各種タンパク質をはじめとする生体分子が糊のような役割をしてシュウ酸カルシウムを互いに結合、集積していくと考えられている。すなわち、尿路結石の核形成メカニズム或いは集積メカニズムの解明には、リン酸カルシウム粒子とシュウ酸カルシウム結晶の結合強度、或いは、シュウ酸カルシウム成形体同士の結合強度が重要なパラメータと考えられる。本実施形態に係るシュウ酸カルシウム成形体は、これらの結合強度を測定するための模擬物質、さらに、結合強度を低下させる要素を評価するための模擬物質として用いることができる。
【0031】
本実施形態のシュウ酸カルシウム成形体においても、尿路結石に普遍的にみられる無機物質を混合することで、より実際の結石に近づけた模擬物質の調製が可能である。無機物質としては、炭酸を除く形態の炭素化合物以外の化合物であればよいが、実際の生体内で観察させる化合物で、生体鉱物と呼称される化合物であることが望ましい。生体鉱物としては、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウムに分類される化合物であることが好ましく、例えば、ブルッシャイト(DCPD)、モネタイト(DCPA)、リン酸八カルシウム(OCP)、アモルファスリン酸カルシウム(ACP)、炭酸アパタイト、水酸アパタイト、リン酸マグネシウムアンモニウム、尿酸、尿酸カルシウム、カルサイト、アラゴナイト、バテライト、アモルファス炭酸カルシウム(ACC)、ドロマイトなどが挙げられる。
【0032】
シュウ酸カルシウム成形体へ混合する無機物質の形状は、特に限定されない。通常、粉末、顆粒、ディスク状、プレート状、多孔体など、模擬物質としての機能評価を円滑にするような形状として両者を混合することが好ましい。シュウ酸カルシウムと無機物質の混合比率は、シュウ酸カルシウムがモル比で10%以上であれば、特に限定されない。前記のモル比は、成形体全体の比率であり、局所における比率は異なってもよい。
また、シュウ酸カルシウム成形体の物性の制御あるいは評価のために、金属鉄、金属アルミニウム、金属銀、二酸化ケイ素、炭酸セシウム、炭酸バリウム、炭酸鉄、炭酸銀、硫酸カルシウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タングステン、酸化バナジウム、硫黄、セレン、テルルなど、通常、生体内に存在することが考えられないような分子についても添加することもできる。
【0033】
シュウ酸カルシウム成形体中への無機物質の濃度分布については、特に限定されない。成形体中に一様に分布していてもよいし、ランドールプラーク上へのシュウ酸カルシウム結石形成性の評価のために、例えば、プレート状、あるいは、ディスク状の無機物質材料に、シュウ酸カルシウムを結合した構造を有する成形体であってもよい。
【0034】
実際の尿路結石を模擬するため、シュウ酸カルシウム又は無機物質を含むシュウ酸カルシウムに、有機分子を添加してもよい。
添加する有機分子については、特に限定されないが、上述する、アミノ酸、カルボン酸、脂質、タンパク質、ビタミン、核酸、糖、アルコール、多糖類、ステロイド、リン酸エステルに分類される化合物群であることが、実際の結石との対比に際しては望ましい。シュウ酸カルシウム成形体の物性制御・評価のため、生体内に存在することが考えられないような分子についても当然、添加することもある。
【0035】
尿路結石の形成・増悪プロセスにおいては、シュウ酸カルシウムの形成、集積、成長と複雑なプロセスを経て形成することが知られている。特に、集積プロセスは、急激な増悪の要素となることが知られている。本プロセスにおいては、タンパク質をはじめとする有機分子の存在が主要な役割を果たしていることが知られている。すなわち、シュウ酸カルシウム成形体、或いは、シュウ酸カルシウム成形体を粉砕等して得られる顆粒を、タンパ
ク質などの増悪因子の候補物質と練和し、再度機械的特性評価可能な成形体に調製し、この成形体の物性を評価すれば、これらの候補物質の増悪プロセスに与える影響を評価可能である。
タンパク質などの有機分子に練和する顆粒のサイズは、特に限定されないが、好ましくは1μm~3mmであり、より好ましくは10μm~1mmであり、更に好ましくは100μm~750μmである。
【0036】
尿路結石は小さいものであれば、自然に体外に排出されるが、ある程度の大きさを超えると、自然排出が困難となるため、ESWL(体外衝撃波結石粉砕術)を用いて微細粉砕することが行われる。しかし、ESWL用のサンプルがないため、患者の体内に存在する実際の対象(尿路結石)に衝撃波を照射し、CT画像と併せて、粉砕が適切に実施されたかを確認することが行われている。尿路結石の物性により近い模擬物質について、ESWLでの評価ができれば、ESWLの性能の向上を期待できる。本実施形態に係るシュウ酸カルシウム成形体は、このようなESWLなどの性能評価に用いる模擬物質として利用することができる。
【0037】
次に、本実施形態に係るシュウ酸カルシウム成形体の製造方法の一例について説明する。なお、公知の製造方法や製造工程については不必要に不明瞭となることを避けるために省略することがあるが、そのような省略した製造方法や製造条件は、最終的な製品の特性を大きく変えない限りにおいて、適宜、変更することが可能である。
【0038】
まず、カルシウムを含む化合物の原料粉末とシュウ酸を含む化合物の原料粉末を秤量し、混合する。次に、混合粉末に練和用液体を滴下し、混合泥又はスラリー化した後、これを所望の形状の型(モールド)に填入する。その後、密封したモールド中で養生し、カルシウムイオンとシュウ酸イオンを反応させる。これにより、晶出したシュウ酸カルシウム結晶が絡み合い、或いは結晶同士が融合し、或いは、介在因子による結晶が接合などすることにより、型の形状を保ったシュウ酸カルシウム成形体を製造することができる。このようにして得られたシュウ酸カルシウム成形体は機械的特性(例えば強度)を評価可能な形状を有する。
なお、本実施形態に係るシュウ酸カルシウム成形体の製造方法は、その後、切削、研磨等の形状を加工する過程を経ないものであり、切削、研磨等の形状を加工したものと、成形体の表面状態(表面粗さ、表面形状)において区別することができる。
【0039】
カルシウムを含む化合物は、特に限定されない。例えば、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸三カルシウムα相、リン酸三カルシウムβ相、炭酸カルシウム、金属カルシウム、硝酸カルシウム、ヨウ素化カルシウム、フッ化カルシウム、臭化カルシウム、炭化カルシウム、水素化カルシウム、酸化カルシウム、過酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、塩素酸カルシウムなどの無機カルシウム塩、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムなどの有機塩が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。また、粉末の形態で用いても良いし、一部又は全部を溶液中に分散させて、溶液或いは懸濁液の形態で用いても良い。いずれにせよ、円滑に混合し、型に填入できるようにすることが好ましい。また、シュウ酸カルシウム成形体を作製した後、成形体の一部にカルシウムを含む化合物が残存していてもよい。
【0040】
シュウ酸を含む化合物は、特に限定されない。例えば、シュウ酸、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸アンモニウム一水和物、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸鉄、シュウ酸アルミニウム、シュウ酸銀などがあげられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。また、粉末の形態で用いても良いし、一部又は全部
を溶液中に分散させて、溶液或いは、懸濁液の形態で用いても良い。いずれにせよ、円滑に混合し、型に填入できるようにすることが好ましい。また、シュウ酸カルシウム成形体を作製した後、成形体の一部にシュウ酸を含む化合物が残存していてもよい。
【0041】
練和用液体は、特に限定されず、極性溶媒及び又は非極性溶媒のいずれを使用してもよい。水以外の極性溶媒の組成については特に限定されず、水と任意の割合で混合する或いはコロイド状に均一に分散するものであればよい。また、非極性溶媒についても、混和或いは、コロイド状に均一に分散させることが可能であれば、使用しても差し支えない。カルシウムとシュウ酸のイオン反応を惹起させるため、極性溶媒であることが望ましい。
【0042】
水以外の溶媒の具体例として、メタノール、エタノール、プロパン-1-オール、ブタン-1-オール、ペンタン-1-オール、ヘキサン-1-オール、ヘプタン-1-オール、オクタン-1-オール、ノナン-1-オール、デカン-1-オールなどの第一級アルコール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、ブタン-2-オール、ペンタン-2-オール、ヘキサン-2-オール、シクロヘキサノールなどの第二級アルコール、tert-ブチルアルコール、2-メチルブタン-2-オール、2-メチルペンタン-2-オール、2-メチルヘキサン-2-オール、3-メチルペンタン-3-オール、3-メチルオクタン-3-オールなどの第三級アルコールをはじめとする一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどの二価アルコール、グリセリンなどの三価アルコール、フェノールなどの芳香環アルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)などのポリエーテル、ポリアクリル酸、ポリカルバリン酸などのポリカルボン酸、酢酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪酸、ペンタン、ブタン、ヘキサン、セプタン、オクタンなどのアルカン、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル、ベンゼン、トルエン、ピクリン酸、TNTといった芳香族化合物、ナフタレン、アズレン、アントラセンなどの多環芳香族炭化水素、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などの有機ハロゲン化合物、酢酸エチル、酪酸メチル、サリチル酸メチル、ギ酸エチル、酪酸エチル、カプロン酸エチル、酢酸オクチル、フタル酸ジブチル、炭酸エチレン、エチレンスルフィドのようなエステル類、シクロペンタン、シクロヘキサン、デカリンなどのシクロアルカン、ビシクロアルカン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、バニリンなどのアルデヒド、アミノメタン、アミノエタン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、アニリンなどのアミン化合物、グルコース、フルクトース、トレイトールなどの糖類、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、チオフェノールなどのチオール類、ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィド、アスパラガス酸、シスタミン、シスチンなどのジスルフィド化合物、などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して使用してもよい。
【0043】
以下、本実施形態に係るシュウ酸カルシウム成形体のより詳細な製造方法を示す。
(1.シュウ酸カルシウム一水和物成形体の製造方法:セメント硬化反応)
[1]混合粉末の作製
水酸化カルシウム粉末とシュウ酸粉末とを準備し、それぞれモル比が約1:1となるように秤量した後、混合する。混合は、乳鉢などを用いることが好ましいが、他の混合方法を用いてもよい。混合は、室温(20~40℃、好ましくは25~35℃)程度で行うことが好ましい。また、後述する態様における混合粉末の作製においても、上記と同様の混合方法を採用することができる。
【0044】
[2]スラリーの作製
得られた混合粉末に水を滴下して、素早く混合粉末と水とを混合してスラリー状にする
。滴下する液体の混水比は特に限定されない。例えば、混合粉末1gあたり0.1~1.0mlとすることができる。混合粉末は水を滴下する前に小分けされていてもよい。また、このとき、混合粉末と水の混合時に激しく発熱するため、注意が必要である。
【0045】
[3]成形体の作製
作製したスラリーを型に充填し、フィルムで被覆した後、圧着し、その状態で養生することで、カルシウムイオンとシュウ酸イオンとが反応して、型の形状を保ったシュウ酸カルシウム成形体を作製することができる。養生は、0℃以上90℃以下、2時間以上行うことが好ましい。養生後、フィルムを除去し、成形体を4℃以上150℃以下、1時間以上で乾燥させる。以上により、シュウ酸カルシウム一水和物成形体を作製することができる。
【0046】
(2.発熱を防止したシュウ酸カルシウム一水和物成形体の製造方法)
水酸化カルシウムとシュウ酸の混合粉末と、水とを混合すると、上記の通り、中和熱により激しく発熱することから、以下に発熱を抑えた製造方法について説明する。
[1]混合粉末の作製
硫酸カルシウム半水和物粉末とシュウ酸ナトリウム粉末とを準備し、それぞれモル比が約1:1となるように秤量した後、混合する。
【0047】
[2]混合泥の作製
得られた混合粉末に水を滴下して、素早く混合粉末と水とを混合して混合泥にする。水は、混合粉末1gあたり0.1~3mlとすることができる。混合粉末は水を滴下する前に小分けされていてもよい。なお、混合粉末と水の混合時に発熱は検出されない。
【0048】
[3]成形体の作製
作製した混合泥を型に充填し、フィルムで被覆した後、圧着し、その状態で養生して成形体を作製する。養生は、0℃以上、90℃以下、2時間以上行うことが好ましい。養生後、成形体を0℃以上、100℃以下、12時間以上で乾燥させる。また、副生成物として硫酸ナトリウムが形成することから、乾燥後に水で洗浄し、再度0℃以上、100℃以下、12時間以上で乾燥させることが好ましい。以上により、発熱を防止して、シュウ酸カルシウム一水和物成形体を作製することができる。
【0049】
(3.シュウ酸カルシウム二水和物成形体の製造方法:溶解析出反応)
[1]混合粉末の作製
水酸化カルシウム粉末とシュウ酸粉末とを準備し、それぞれモル比が約1:1となるように秤量した後、混合する。
【0050】
[2]混合泥の作製
得られた混合粉末を0℃以下、2時間以上、静置して粉末を十分に冷却する。
次に、クエン酸三アンモニウムを水に溶解して、0.1mol/L以上5.0mol/L以下のクエン酸三アンモニウム溶液を作製し、これを4℃以下で2時間以上静置して、十分に冷却する。混合粉末1gあたり0.1~2.0mlにて、冷却した混合粉末に滴下して、氷冷下で素早く混合して混合泥を作製する。混合粉末はクエン酸三アンモニウム溶液を滴下する前に小分けされていてもよい。なお、クエン酸三アンモニウム溶液は、溶媒が水である場合には、クエン酸三アンモニウム水溶液であるが、溶媒は水に限られず、エタノール、DMSO(ジメチルスルホキシド)などの混合溶液、であってもよい。
【0051】
[3]成形体の作製
作製した混合泥をモールドに充填し、フィルムで被覆した後、圧着し、その状態で養生して成形体を作製する。養生は-5℃以上10℃以下、48時間以上行うことが好ましい
。養生後は、フィルムを除去し、成形体を0℃以上25℃以下、48時間以上で乾燥させる。以上により、シュウ酸カルシウム二水和物成形体を作製することができる。
【0052】
(4.タンパク質を含有するシュウ酸カルシウム一水和物成形体の製造方法)
[1]混合粉末の作製
水酸化カルシウム粉末とシュウ酸粉末とを準備し、それぞれモル比が約1:1となるように秤量した後、混合する。
【0053】
[2]混合泥の作製
得られた混合粉末を0℃以下、2時間以上、静置して粉末を冷却する。なお、水酸化カルシウムとシュウ酸の混合粉末と、後述するタンパク質を含む溶液とを混合すると、中和熱により激しく発熱し、タンパク質を添加した際に、タンパク質を変性させるなどの影響を及ぼすことが予想されることから、十分に冷却することが好ましい。
次に、タンパク質を水に溶解して、タンパク質を含む溶液を作製し、これを混合粉末1gあたり0.1~3.0mlにて、冷却した混合粉末に滴下して、氷冷下で素早く混合して混合泥を作製する。混合粉末はタンパク質を含む溶液を滴下する前に小分けされていてもよい。混合時に発熱してタンパク質の熱変性があることから、タンパク質を含む溶液は2時間以上で4℃以下に十分に冷却したものを用いることが好ましい。なお、タンパク質を含む溶液は、溶媒が水である場合には、タンパク質を含む水溶液であるが、溶媒は水に限られず、アンモニア水、水酸化ナトリウム溶液、塩酸、エタノール溶液、DMSOなどであってもよい。
【0054】
[3]成形体の作製
作製した混合泥を氷冷下で30分以上静置して冷却した後、モールドに充填し、フィルムで被覆した後、圧着し、その状態で養生して成形体を作製する。養生は0℃以上60℃以下、2時間以上行うことが好ましい。養生後、成形体を0℃以上60℃以下、12時間以上で乾燥させる。以上により、タンパク質を含有するシュウ酸カルシウム一水和物成形体を作製することができる。
【0055】
(5:シュウ酸カルシウム顆粒とタンパク質溶液練和によるシュウ酸カルシウム成形体の製造方法)
[1]顆粒の作製
シュウ酸カルシウム一水和物、シュウ酸カルシウム二水和物、シュウ酸カルシウム三水和物のいずれか一種の成形体(無機物質を含有していても良い)をメノウ乳鉢にて粉砕する。その後、必要に応じて精密篩によって、分級し、所定サイズのシュウ酸カルシウムの顆粒を得る。
【0056】
[2]タンパク質の添加
分級したシュウ酸カルシウム顆粒をトレーなどに取り出し、ここにアルブミン溶液、ゼラチン溶液などのタンパク質を含む溶液を滴下し、混合する。
【0057】
[3]成形体の作製
タンパク質を含む溶液と混合した顆粒をモールドに填入し、フィルムで被覆した後、圧着し、その状態で養生して成形体を作製する。養生は0℃以上60℃以下、2時間以上行うことが好ましい。養生後、成形体を0℃以上60℃以下、12時間以上で乾燥させる。以上により、タンパク質を含有するシュウ酸カルシウム成形体を作製することができる。
【0058】
[4]成形体の形状維持の確認法
調製した成形体を5個以上、その容積の10倍以上の容量の溶液に含侵後、容器を密閉する。これを容器ごと、0℃以上95℃以下、振盪しながら保持する。振盪時間は、2時
間以上行うことが好ましい。振盪後、成形体を0℃以上60℃以下、12時間以上で乾燥させる。以上により、シュウ酸カルシウム成形体の形状維持性を評価することが出来る。
【実施例0059】
以下、実施例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、これらの例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0060】
本開示におけるシュウ酸カルシウム成形体の物性等の評価は以下の測定装置や測定条件を用いて行った。
(DTS強度について)
ダイアメトラル引張強さ(DTS強度)については、島津製作所製万能試験機、AGS-Jを用いて、ヘッドスピード1mm/minの速度にて測定した。
【0061】
(X線回折分析について)
XRD:MiniFlex600、株式会社リガク、日本、ターゲット:Cu、波長:0.15406nm、により分析を行った。XRDの測定条件は、加速電圧及び振幅をそれぞれ40kV、15mAとし、特性評価については2°/分の操作速度で3°から70°にわたり2θの値で回折角を連続的にスキャンした。
【0062】
(フーリエ変換赤外分光について)
FT-IR:Nicolet NEXUS670、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社、米国、により、GeSeで作られた減衰全反射プリズムを有する硫酸トリグリシン検出器(32スキャン、解像度2cm-1)を用いて、試料の化学振動スキームの特性を評価した。測定を行うためのバックグラウンドとして大気雰囲気を使用した。
【0063】
(電子顕微鏡観察について)
電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM:JSM-6700F、日本電子株式会社、日本)により、試料の微細構造を評価した。加速電圧を5kVとし、表面の電荷蓄積を防止するため、サンプルにOsを用いてスパッタコーティングをした。
【0064】
(CHN分析について)
CHN分析装置(MT-6:ヤナコ―株式会社、日本)により、試料中の炭素(C)、水素(H)、窒素(N)の含有量を評価した。キャリアガスとしてはArを用い、試料をP205デシケーター中で完全に乾燥させた後に測定した。
【0065】
(実施例1)シュウ酸カルシウム一水和物成形体の調製
水酸化カルシウム粉末(富士フイルム和光純薬工業製)とシュウ酸粉末(富士フイルム和光純薬工業製)をモル比で1:1となるように秤量した後、室温にて、メノウ乳鉢でよく擦り混合粉末とした。得られた混合粉末を1gずつスチロールトレーに小分けにし、ここに混合比0.4にて蒸留水を滴下した後、スパチュラにて素早く混合粉末と蒸留水を混合して、スラリー状とした。なお、混合粉末と蒸留水を混合した際に、激しく発熱した。
次に、シリコンゴムシートに作製した直径6mm、高さ3mmのモールドに、調製したスラリーを充填し、スラリーの両面を厚さ0.3mmのポリプロピレンフィルムにて被覆後、クリップで圧着した。その状態で、2時間、40℃で養生後、両面のポリプロピレンフィルムを除去した後、40℃で12時間以上乾燥させた。乾燥後、試料(成形体)をモールドから取り出し、室温で保管した。
【0066】
得られた成形体の写真を
図1に示す。得られた成形体は、モールドの形を維持していた
。
また、成型体のDTS強度を測定した結果、1.34±0.44MPaであった。この強度は、ピンセットなどで強めに摘まんでも崩壊しない強度である。
【0067】
また、試料の組成及び結晶学的情報について、XRDにより分析を行った。その結果を
図2に示す。得られた成形体は、シュウ酸カルシウム一水和物(COM:Ca(COO)
2・H
2O)単相となっていることを確認した。
【0068】
また、FT-IRを用いて、試料の化学振動スキームの特性を評価した。試料のFt-IRスペクトラを
図3に示す。成形体はXRDパターン同様、COM単相となっている様子が観察された。
【0069】
FE-SEMにより、試料の微細構造を評価した。試料の破断面をFe-SEMにて観察した結果を
図4に示す。断面には、数百nm程度のサイズの菱面体結晶が緻密に集積し、一部が融合し、緻密に絡み合っている様子が観察された。
【0070】
(実施例2)発熱を防止したシュウ酸カルシウム一水和物成形体の調製
まず、硫酸カルシウム半水和物粉末(富士フイルム和光純薬工業製)とシュウ酸ナトリウム粉末(富士フイルム和光純薬工業製)をモル比1:1にてメノウ乳鉢にてよく混合した。これをスチロールトレーに1gずつ小分けにした。次に、小分けにした混合粉末に蒸留水を0.6mL滴下した後、素早くスパチュラで混合し、混合泥とした。混合時においても、混合泥からの発熱は検出されなかった。その後、混合泥をシリコンモールド(直径6mm×高さ3mm)に填入して密封し、40℃にて2日間養生した後、40℃にて、完全に乾燥させた。乾燥後の成形体をモールドから取り外し、その後、蒸留水でよく洗浄し、再度40℃にてよく乾燥させた。
【0071】
成形体(試料)の乾燥後の試料の写真を
図5に示す。乾燥後の試料は、明瞭に型の形状を維持していた。試料のXRDパターンを
図6に示す。乾燥後の試料は、COM単相となっていることを確認した。試料のDTS強度は0.17±0.06MPaであった。
【0072】
(実施例3)シュウ酸カルシウム二水和物成形体の調製
実施例1と同様の手順で作製した、水酸化カルシウム粉末(富士フイルム和光純薬工業製)とシュウ酸粉末(富士フイルム和光純薬工業製)の混合粉末を1g秤量し、スチロールトレー上に小分けにした。その後、-20℃にて2時間以上静置し、混合粉末を十分に冷却した。また別途、クエン酸三アンモニウム(富士フイルム和光純薬工業製)を蒸留水に溶解させ、1mol/Lのクエン酸三アンモニウム溶液を調製した。当該溶液については、4℃にて半日以上静置し、十分に冷却した。
【0073】
次に、十分に冷却した1mol/Lのクエン酸三アンモニウム溶液を混合比0.6にて、十分に冷却した混合粉末に滴下し、氷冷下で素早くスパチュラで混合後、直径6mm×3mmのシリコンモールドに填入後、ポリプロピレンフィルムにて両面を圧接した。その後、4℃にて12時間静置し、養生した。その後、ポリプロピレンフィルムを除去し、4℃にて1日乾燥させた後、成形体をモールドから取り外した。
【0074】
このようにして得られた成形体(試料)の写真を
図7に示す。また、試料のXRDパターンを
図8に示す。試料は、シュウ酸カルシウム二水和物(COD:Ca(COO)
2)・2H
2O)を主成分とし、一部COMで構成されていることが分かった。
試料のIRスペクトラを
図9に示す。XRDパターン同様、試料にCODが含有されていることが分かった。また、試料の破断面をSEMにて観察した結果を
図10に示す。断面には、多孔質をした、そろばん玉状の結晶が集積している様子が観察された。試料のD
TS強度は0.37±0.13MPaであった。
【0075】
(実施例4)タンパク質を含む溶液を含有するシュウ酸カルシウム一水和物成形体の調製
実施例1と同様の手順で作製した、水酸化カルシウム粉末(富士フイルム和光純薬工業製)とシュウ酸粉末(富士フイルム和光純薬工業製)の混合粉末を1g秤量し、スチロールトレー上に小分けにした後、予め、-20℃にて十分に冷却した。その後、これにゼラチン溶液又はアルブミン溶液(各5、10、50、100g/L)を50μLずつ、十分に滴下時間の間隔を開けて分注し、混合比0.4となるように滴下後、スパチュラでゆっくりとかき混ぜ、混合泥とした。次いで、混合泥を氷冷下にて、1分以上静置し、混合泥を十分に冷却した。その後、スパチュラで試料をシリコンモールド(直径6mm、高さ3mm)に填入後、2時間圧着後、40℃にて完全に乾燥させた。その後、成形体をモールドから取り外した。
【0076】
乾燥後の成形体(試料)の写真を
図11に示す。いずれのタンパク質のどの濃度においても、成形体は明瞭に形状を維持していた。
試料のXRDパターンを
図12に示す。いずれのタンパク質のどの濃度においても、成形体はCM単相となっていることを確認した。
また、試料のFT-IRスペクトラを
図13に示す。タンパク質溶液の濃度が高いほど、カルボキシ基及びアミノ基のバンドが顕著に観察された。
タンパク質(ゼラチン、アルブミン)濃度をそれぞれ50g/Lにて調製した試料の断面のSEM像を
図14に示す。いずれのタンパク質を含有した成形体においても、断面には、数百nm程度のサイズの菱面体結晶が緻密に集積し、一部が融合している様子が観察された。
試料のDTS強度を
図15に示す。いずれのタンパク質においても、50g/Lの濃度で添加した場合において、強度の極大値が観察された。なお、X線回折分析、IRスペクトラ分析、SEM分析、及びDTS強度の測定条件は実施例1と同様とした。また、試料のタンパク質含有量をCHN分析により測定した結果を
図16に示す。いずれのタンパク質においても、溶液中のタンパク質の濃度が高いほど、タンパク質の含有量が大きかった。
【0077】
(実施例5)シュウ酸カルシウム顆粒とタンパク質溶液練和によるシュウ酸カルシウム多孔質成形体の調製
実施例1と同様の方法で作製したシュウ酸カルシウム一水和物からなる成形体をメノウ乳鉢にて粉砕後、精密篩によって、分級し、シュウ酸カルシウムの顆粒サイズが、それぞれ100~250μm、250~500μm、500~1000μm、1000~2000μmとなるように分級した。次に、分級した顆粒をそれぞれ1.5g秤量し、これをスチレントレーに取った。ここに100g/Lの濃度のアルブミン溶液又は100g/Lのゼラチン溶液を800μLとなるように滴下し、スパチュラで混合した。各溶液と混合した顆粒をスパチュラでシリコンモールド(直径6mm、高さ3mm)に填入後、2時間圧着後、40℃にて完全に乾燥させた。その後、成形体をモールドから取り外した。
【0078】
乾燥後の試料の写真を
図17に示す。いずれのタンパク質においても、顆粒同士が連結し、一塊の成形体となっていることを確認した。
試料のDTS強度を
図18に示す。いずれの試料においても、強度と顆粒サイズには相関はあまり観察されなかった。
【0079】
(実施例6)シュウ酸カルシウム成形体の溶液中での形状維持性の検討
実施例1で作製したシュウ酸カルシウム成形体(Ca(OH)
2-Oxalate)及び実施例2で作製したシュウ酸カルシウム成形体(CSH-Oxalate-Na)を複数個用意し、それぞれ、50mLの遠沈管に入れた40mLの蒸留水(H
2O)、リン酸
緩衝生理食塩水(PBS)、細胞培養用培地(αMEM)のいずれかに含侵し、恒温振盪機(タイテック株式会社製:BioShaker BR-23FP)を用いて、37℃、60rpm、72
時間の条件で振盪させた。その後、試料を蒸留水で数回洗浄し、40℃にて12時間以上静置して、完全に水分を乾燥させた。
乾燥後のそれぞれの試料の写真を
図19に示す。いずれの条件においても、成形体は振盪前の形状(図中、Beforeと記す)を明瞭に維持していることを確認した。
本発明によれば、シュウ酸カルシウム成形体及びその製造方法を提供することができる。得られたシュウ酸カルシウム成形体は、尿路結石を模擬したモデルとしてハンドリングができる程度の強度を有する。該シュウ酸カルシウム成形体は、尿路結石に類似する性質を備えることから、尿路結石の増悪プロセス阻害要素の定量評価用、あるいは、ESWLやCT用の結石モデルとして、尿路結石の新規治療技術の開発用として使用することができる。