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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061727
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20230425BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230425BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H05H1/46 M
H01L21/302 101B
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171833
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】進藤 崇央
(72)【発明者】
【氏名】荒井 宏貴
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB01
2G084CC02
2G084CC03
2G084CC04
2G084CC08
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD23
2G084DD37
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF15
2G084HH02
2G084HH06
2G084HH07
2G084HH20
2G084HH22
2G084HH23
2G084HH24
2G084HH28
2G084HH43
5F004AA16
5F004BA04
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB29
5F004BC03
5F004BC06
5F004BC08
5F004BD04
5F004CA03
5F045AA08
5F045AB31
5F045EB03
5F045EB09
5F045EE04
5F045EE14
5F045EF05
5F045EG02
5F045EH01
5F045EH05
5F045EH14
5F045EH19
5F045EH20
5F045EM09
5F045EN04
(57)【要約】
【課題】下部電極の上に載置される基板に向けて入射するイオンのエネルギーを低減する技術を提供する。
【解決手段】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置が提供される。下部電極はチャンバ内に設けられ基板が載置されるように構成された基板支持部に含まれ、上部電極はチャンバ内に設けられ下部電極に対向するように配置され、ガス供給部は上部電極及び下部電極の間に処理ガスを供給するように構成され、高周波電源は上部電極に電気的に接続され上部電極に高周波電圧を印加することによって処理ガスのプラズマを生成するように構成され、回路部は高周波電源及び下部電極の間に電気的に接続され下部電極に電位を提供するように構成され、高周波電源の電位が下部電極の電位よりも高い場合に高周波電源から下部電極に向けて電流を流すことによって下部電極に電位を提供するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられ基板が載置されるように構成された基板支持部に含まれる下部電極と、
前記チャンバ内に設けられ前記下部電極に対向するように配置された上部電極と、
前記上部電極及び前記下部電極の間に処理ガスを供給するように構成されたガス供給部と、
前記上部電極に電気的に接続され該上部電極に高周波電圧を印加することによって前記処理ガスのプラズマを生成するように構成された高周波電源と、
前記高周波電源及び前記下部電極の間に電気的に接続され、該下部電極に電位を提供するように構成された回路部と、
を備え、
前記回路部は、前記高周波電源の電位が前記下部電極の電位よりも高い場合に該高周波電源から該下部電極に向けて電流を流すことによって該下部電極に電位を提供するように構成されている、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記回路部は、ダイオードを有し、
前記ダイオードのアノードは、前記高周波電源に電気的に接続され、
前記ダイオードのカソードは、前記下部電極に接続されている、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記回路部は、ダイオード及びツェナーダイオードを有し、
前記ダイオード及び前記ツェナーダイオードは、直列に接続され、
前記ダイオードのアノードは、前記高周波電源に電気的に接続され、
前記ダイオードのカソードは、前記ツェナーダイオードのカソードに電気的に接続され、
前記ツェナーダイオードのアノードは、前記下部電極に電気的に接続されている、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記回路部は、ダイオード及び抵抗器を有し、
前記ダイオード及び前記抵抗器は、直列に接続され、
前記ダイオードのアノードは、前記高周波電源に電気的に接続され、
前記ダイオードのカソードは、前記抵抗器を介して前記下部電極に電気的に接続されている、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記回路部は、ダイオード及びインダクタを有し、
前記ダイオード及び前記インダクタは、直列に接続され、
前記ダイオードのアノードは、前記高周波電源に電気的に接続され、
前記ダイオードのカソードは、前記インダクタを介して前記下部電極に電気的に接続されている、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記回路部は、第1の電位測定器、第2の電位測定器、スイッチ素子、及び駆動回路を有し、
前記スイッチ素子は、前記高周波電源及び前記下部電極の間に電気的に接続され、該高周波電源及び該下部電極の間の導通をオン・オフするように構成され、
前記第1の電位測定器は、前記高周波電源及び前記駆動回路の間に電気的に接続され、該高周波電源の電位を測定して第1の測定結果を生成し、該第1の測定結果を該駆動回路に出力し、
前記第2の電位測定器は、前記下部電極及び前記駆動回路の間に電気的に接続され、該下部電極の電位を測定して第2の測定結果を生成し、該第2の測定結果を該駆動回路に出力し、
前記駆動回路は、前記第1の測定結果及び前記第2の測定結果に基づいて、前記高周波電源の電位が前記下部電極の電位よりも高い場合に前記スイッチ素子を駆動して該高周波電源及び該下部電極の間の導通をオンにし、該高周波電源の電位が該下部電極の電位以下の場合に該スイッチ素子を駆動して該高周波電源及び該下部電極の間の導通をオフにするように構成されている、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記高周波電源及び前記上部電極の間に電気的に接続され該高周波電源から該上部電極に供給される電力を調節するように構成された電力調節器を更に備え、
前記回路部は、前記高周波電源及び前記電力調節器を電気的に接続するラインと前記下部電極との間に電気的に接続され、
前記電力調節器は、前記高周波電源から前記上部電極に供給される電力を測定し、測定結果に応じて該高周波電源が出力する電力を増減するように該高周波電源を制御するように構成されている、
請求項1~6の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の基板に対する処理としてプラズマ処理が多用されている。特許文献1及び特許文献2には、プラズマ生成に用いられる高周波電流の下部電極につながる電流路のインピーダンスを制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-108413号公報
【特許文献2】特開2015-124398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、下部電極の上に載置される基板に向けて入射するイオンのエネルギーを低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバと、下部電極と、上部電極と、ガス供給部と、高周波電源と、回路部とを備える。下部電極は、チャンバ内に設けられ基板が載置されるように構成された基板支持部に含まれる。上部電極は、チャンバ内に設けられ下部電極に対向するように配置されている。ガス供給部は、上部電極及び下部電極の間に処理ガスを供給するように構成されている。高周波電源は、上部電極に電気的に接続され上部電極に高周波電圧を印加することによって処理ガスのプラズマを生成するように構成されている。回路部は、高周波電源及び下部電極の間に電気的に接続され、下部電極に電位を提供するように構成されている。回路部は、高周波電源の電位が下部電極の電位よりも高い場合に高周波電源から下部電極に向けて電流を流すことによって下部電極に電位を提供するように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、下部電極の上に載置される基板に向けて入射するイオンのエネルギーが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の構成を示す図である。
図2】一例の回路部を示す図である。
図3】一例の電力調節器を備えるプラズマ処理装置の構成を示す図である。
図4】一例の回路部を示す図である。
図5】一例の回路部を示す図である。
図6】一例の回路部を示す図である。
図7】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置によるシミュレーション結果を示す図である。
図8】従来のプラズマ処理装置によるシミュレーション結果を示す図である。
図9】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置によるシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバと、下部電極と、上部電極と、ガス供給部と、高周波電源と、回路部とを備える。下部電極は、チャンバ内に設けられ基板が載置されるように構成された基板支持部に含まれる。上部電極は、チャンバ内に設けられ下部電極に対向するように配置されている。ガス供給部は、上部電極及び下部電極の間に処理ガスを供給するように構成されている。高周波電源は、上部電極に電気的に接続され上部電極に高周波電圧を印加することによって処理ガスのプラズマを生成するように構成されている。回路部は、高周波電源及び下部電極の間に電気的に接続され、下部電極に電位を提供するように構成されている。回路部は、高周波電源の電位が下部電極の電位よりも高い場合に高周波電源から下部電極に向けて電流を流すことによって下部電極に電位を提供するように構成されている。
【0010】
回路部を備えたプラズマ処理装置によれば、回路部によって下部電極の電位は上部電極に電位を提供する高周波電源の電位と同等又は以上となる。したがって、プラズマ生成中に下部電極の上に載置される基板とプラズマとの境界に形成されるシース領域のシース電圧は低くなる。このため、基板に衝突し得るプラズマ中のイオンのエネルギーは低減される。
【0011】
更に、電気的に接地されたチャンバの側壁と下部電極との間の空間においてプラズマが形成されると、下部電極から側壁を介してグランドに電力が流れ得る。一つの例示的実施形態に係る回路部を有するプラズマ処理装置では、下部電極の電位が上部電極に電位を提供する高周波電源の電位と同等又は以上となっている。このため、側壁を介して下部電極からグランドに電力が流れる場合に生じ得るシース電圧は、側壁を介して下部電極からグランドに電力が流れない場合に生じ得るシース電圧と同程度となる。このように、側壁を介して下部電極からグランドに電力が流れる場合であっても、シース電圧の上昇を回避できる。
【0012】
一つの例示的実施形態において、回路部は、ダイオードを有し得る。ダイオードのアノードは、高周波電源に電気的に接続され得る。ダイオードのカソードは、下部電極に接続され得る。
【0013】
一つの例示的実施形態において、回路部は、ダイオード及びツェナーダイオードを有し得る。ダイオード及びツェナーダイオードは、直列に接続され得る。ダイオードのアノードは、高周波電源に電気的に接続され得る。ダイオードのカソードは、ツェナーダイオードのカソードに電気的に接続され得る。ツェナーダイオードのアノードは、下部電極に電気的に接続され得る。
【0014】
一つの例示的実施形態において、回路部は、ダイオード及び抵抗器を有し得る。ダイオード及び抵抗器は、直列に接続され得る。ダイオードのアノードは、高周波電源に電気的に接続され得る。ダイオードのカソードは、抵抗器を介して下部電極に電気的に接続され得る。
【0015】
一つの例示的実施形態において、回路部は、ダイオード及びインダクタを有し得る。ダイオード及びインダクタは、直列に接続され得る。ダイオードのアノードは、高周波電源に電気的に接続され得る。ダイオードのカソードは、インダクタを介して下部電極に電気的に接続され得る。
【0016】
一つの例示的実施形態において、回路部は、第1の電位測定器、第2の電位測定器、スイッチ素子、及び駆動回路を有し得る。スイッチ素子は、高周波電源及び下部電極の間に電気的に接続され、高周波電源及び下部電極の間の導通をオン・オフするように構成され得る。第1の電位測定器は、高周波電源及び駆動回路の間に電気的に接続され、高周波電源の電位を測定して第1の測定結果を生成し、第1の測定結果を駆動回路に出力し得る。第2の電位測定器は、下部電極及び駆動回路の間に電気的に接続され、下部電極の電位を測定して第2の測定結果を生成し、第2の測定結果を駆動回路に出力し得る。駆動回路は、第1の測定結果及び第2の測定結果に基づいて、高周波電源の電位が下部電極の電位よりも高い場合にスイッチ素子を駆動して高周波電源及び下部電極の間の導通をオンにし得る。駆動回路は、第1の測定結果及び第2の測定結果に基づいて、高周波電源の電位が下部電極の電位以下の場合にスイッチ素子を駆動して高周波電源及び下部電極の間の導通をオフにするように構成され得る。
【0017】
一つの例示的実施形態において、高周波電源及び上部電極の間に電気的に接続され高周波電源から上部電極に供給される電力を調節するように構成された電力調節器を更に備え得る。回路部は、高周波電源及び電力調節器を電気的に接続するラインと下部電極との間に電気的に接続され得る。電力調節器は、高周波電源から上部電極に供給される電力を測定し、測定結果に応じて高周波電源が出力する電力を増減するように高周波電源を制御するように構成され得る。
【0018】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。図1は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図1に示すプラズマ処理装置1は、チャンバ10を備えている。チャンバ10は、その中に内部空間を提供している。チャンバ10は、チャンバ本体12を含み得る。チャンバ本体12は、略円筒形状を有している。チャンバ10の内部空間は、チャンバ本体12の中に提供されている。チャンバ本体12は、アルミニウムといった金属から形成されている。チャンバ本体12は、電気的に接地されている。なお、チャンバ本体12の側壁は、基板Wが搬送される際にそこを通過する通路を提供していてもよい。また、この通路を開閉するために、ゲートバルブがチャンバ本体12の側壁に沿って設けられていてもよい。
【0019】
プラズマ処理装置1は、基板支持部14を更に備えている。基板支持部14は、チャンバ10の内部に設置されている。基板支持部14は、その上に載置される基板Wを支持するよう構成されている。基板支持部14は、本体を有している。基板支持部14の本体は、例えば窒化アルミニウムから形成されており、円盤形状を有し得る。基板支持部14は、支持部材16によって支持されていてもよい。支持部材16は、チャンバ10の底部から上方に延在している。基板支持部14は、下部電極18を含んでいる。下部電極18は、基板支持部14に含まれており、基板支持部14の本体の中に埋め込まれている。
【0020】
プラズマ処理装置1は、上部電極20を更に備えている。上部電極20は、チャンバ10内に設けられ、基板支持部14の上方に設けられている。上部電極20は、下部電極18に対向するよう配置されている。上部電極20は、チャンバ10の天部を構成している。上部電極20は、チャンバ本体12と電気的に分離されている。一実施形態において、上部電極20は、絶縁部材21を介してチャンバ本体12の上部に固定されている。
【0021】
一実施形態において、上部電極20は、シャワーヘッドとして構成されている。上部電極20は、その内部においてガス拡散空間20dを提供している。また、上部電極20は、複数のガス孔20hを更に提供している。複数のガス孔20hは、ガス拡散空間20dから下方に延びており、チャンバ10の内部空間に向けて開口している。即ち、複数のガス孔20hは、ガス拡散空間20dとチャンバ10の内部空間を接続している。
【0022】
プラズマ処理装置1は、ガス供給部22を更に備えている。ガス供給部22は、チャンバ10内にガスを供給するよう構成されている。ガス供給部22は、上部電極20及び下部電極18の間に処理ガスを供給するよう構成されている。ガス供給部22は、配管23を介してガス拡散空間20dに接続されている。ガス供給部22は、一つ以上のガスソース、一つ以上の流量制御器、及び一つ以上の開閉バルブを有していてもよい。一つ以上のガスソースの各々は、対応の流量制御器及び対応の開閉バルブを介して、配管23に接続される。
【0023】
一実施形態において、ガス供給部22は、成膜ガスを供給してもよい。即ち、プラズマ処理装置1は、成膜装置であってもよい。成膜ガスを用いて基板W上に形成される膜は、絶縁膜であってもよい。別の実施形態において、ガス供給部22は、エッチングガスを供給してもよい。即ち、プラズマ処理装置1は、プラズマエッチング装置であってもよい。
【0024】
プラズマ処理装置1は、排気装置24を更に備えている。排気装置24は、自動圧力制御弁のような圧力制御器及びターボ分子ポンプ又はドライポンプのような真空ポンプを含んでいる。排気装置24は、チャンバ本体12の側壁に設けられた排気口12eから排気管を介してチャンバ10の内部空間に接続されている。
【0025】
プラズマ処理装置1は、高周波電源26を更に備えている。高周波電源26は、上部電極20に整合器28を介して電気的に接続されている。高周波電源26は、整合器28を含んでいる構成であってもよい。高周波電源26は、上部電極20に高周波電圧を印加することによって、ガス供給部22から上部電極20及び下部電極18の間に供給される処理ガスのプラズマを生成するよう構成されている。一実施形態において、高周波電源26は、高周波電力を発生する。高周波電力の周波数は、任意の周波数であってもよい。高周波電力の周波数は、13.56MHz以下であってもよい。高周波電力の周波数は、2MHz以下であってもよい。高周波電力の周波数は、20kHz以上であってもよい。
【0026】
高周波電源26は、整合器28を介して、上部電極20に接続されている。高周波電源26からの高周波電力は、整合器28を介して上部電極20に供給される。整合器28は、高周波電源26の負荷のインピーダンスを、高周波電源26の出力インピーダンスに整合させる整合回路を有している。
【0027】
別の実施形態において、高周波電源26は、直流電圧のパルスを周期的に上部電極20に印加するよう構成されていてもよい。高周波電源26からの直流電圧のパルスが上部電極20に印加される周期を規定する周波数は、例えば10kHz以上、10MHz以下である。なお、高周波電源26が直流電圧のパルスを周期的に上部電極20に印加するよう構成されている場合には、プラズマ処理装置1は整合器28を備えていなくてもよい。
【0028】
プラズマ処理装置1は、リング電極30を更に備えている。リング電極30は、環形状を有する。リング電極30は、周方向に沿って配列された複数の電極に分割されていてもよい。リング電極30は、基板支持部14の外周を囲むように、基板支持部14の周囲に設けられている。リング電極30と基板支持部14の外周との間には間隙が設けられているが、当該間隔は設けられていなくてもよい。リング電極30は、電気的に接地されている。
【0029】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、ガス供給部32を更に備えている。ガス供給部32は、リング電極30と基板支持部14との間の間隙を通って上方にパージガスが流れるようパージガスを供給する。ガス供給部32は、ガス導入ポート12pを介してチャンバ10内にパージガスを供給する。図示された例では、ガス導入ポート12pは、基板支持部14の下方においてチャンバ本体12の壁に設けられている。ガス供給部32によって供給されるパージガスは、不活性ガスであってもよく、例えば希ガスであってもよい。
【0030】
プラズマ処理装置1において基板Wに対するプラズマ処理が行われる際には、処理ガスが、ガス供給部22からチャンバ10内に供給される。そして、高周波電源26からの高周波電力又は直流電圧のパルスが上部電極20に与えられる。その結果、プラズマが、チャンバ10内で処理ガスから生成される。基板支持部14上の基板Wは、生成されたプラズマからの化学種によって処理される。例えば、プラズマからの化学種は、基板W上に膜を形成する。或いは、プラズマからの化学種は、基板Wをエッチングする。
【0031】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、回路部4を更に備える。回路部4は、高周波電源26及び下部電極18の間に電気的に接続されている。回路部4は、下部電極18に電位を提供するように構成されている。より具体的に、回路部4は、高周波電源26の電位が下部電極18の電位よりも高い場合に高周波電源26から下部電極18に向けて電流を流すことによって下部電極18に電位を提供するように構成されている。
【0032】
一実施形態において、図2に示すように、回路部4は、ダイオード4aを有し得る。ダイオード4aのアノードは、高周波電源26に整合器28を介して電気的に接続されている。ダイオード4aのカソードは、下部電極18に接続されている。
【0033】
回路部4を備えたプラズマ処理装置1によれば、回路部4によって下部電極18の電位は上部電極20に電位を提供する高周波電源26の電位と同等又は以上となる。したがって、プラズマ生成中に下部電極18の上に載置される基板Wとプラズマとの境界に形成されるシース領域のシース電圧は低くなる。このため、基板Wに衝突し得るプラズマ中のイオンのエネルギーは低減される。
【0034】
更に、電気的に接地されたチャンバ本体12の側壁12Sと下部電極18との間の空間においてプラズマが形成されると、電力流路EPに沿って下部電極18から側壁12Sを介してグランドに電力が流れ得る。ここで図8を参照する。回路部4を有さないプラズマ処理装置1では下部電極18から側壁12Sを介してグランドに電力が流れる場合に生じ得るシース電圧(波形G3)は下部電極18から側壁12Sを介してグランドに電力が流れない場合に生じ得るシース電圧(波形G4)より高い。これに対し、回路部4を有するプラズマ処理装置1では、下部電極18の電位が上部電極20に電位を提供する高周波電源26の電位と同等又は以上となっている。このため、図7に示すように、下部電極18から側壁12Sを介してグランドに電力が流れる場合に生じ得るシース電圧(波形G1)は、下部電極18から側壁12Sを介してグランドに電力が流れない場合に生じ得るシース電圧(波形G2)と同程度となる。このように、下部電極18から側壁12Sを介してグランドに電力が流れる場合であっても、シース電圧の上昇を回避できる。
【0035】
回路部4を備えたプラズマ処理装置1による上記効果は、図2に示す回路部4を備えたプラズマ処理装置1だけでなく後述する図3図6のそれぞれに示す回路部4を備えたプラズマ処理装置1でも同様に奏される。
【0036】
一実施形態において、図3に示すように、プラズマ処理装置1は、電力調節器5を備え得る。電力調節器5は、高周波電源26及び上部電極20の間に電気的に接続されている。電力調節器5は、整合器28を介して高周波電源26に電気的に接続されている。回路部4は、高周波電源26及び電力調節器5を電気的に接続するラインと下部電極18との間に電気的に接続されている。当該ラインは、整合器28を介して高周波電源26に電気的に接続されている。電力調節器5は、高周波電源26から上部電極20に供給される電力を調節するように構成されている。より具体的に、電力調節器5は、高周波電源26から上部電極20に供給される電力を測定し、測定結果に応じて高周波電源26が出力する電力を増減するように高周波電源26を制御するように構成されている。
【0037】
電力調節器5によれば、高周波電源26から上部電極20に供給される電力が好適に制御され得る。例えば、下部電極18の下側の空間において電力流路EPに沿って側壁12Sを介して電力がグランドに流れて高周波電源26から上部電極20への電力が低減される場合がある。この場合でも、電力調節器5は、高周波電源26に出力電力を増加させることによってこの電力の低減を補填することができる。
【0038】
一実施形態において、図4に示すように、回路部4は、ダイオード4a及びツェナーダイオード4bを有し得る。ダイオード4a及びツェナーダイオード4bは、直列に接続され得る。ダイオード4aのアノードは、高周波電源26に整合器28を介して電気的に接続されている。ダイオード4aのカソードは、ツェナーダイオード4bのカソードに電気的に接続されている。ツェナーダイオード4bのアノードは、下部電極18に電気的に接続されている。また、図4に示す回路部4を備えるプラズマ処理装置1は、図3に示す電力調節器5を更に備え得る。
【0039】
回路部4のツェナーダイオード4bは、高周波電源26及び下部電極18の間に電位差を提供する。図9のグラフに示すように、この電位差(図9のグラフの横軸)を増減することによって、下部電極18上の基板Wとプラズマとの境界に形成されるシース領域のシース電位(図9のグラフの縦軸)が増減される。したがって、ツェナーダイオード4bを有する回路部4によれば、シース電位を好適な値に調節することができる。ツェナーダイオード4bを有する回路部4によるこのような効果は、後述する図5に示す抵抗器4cやインダクタを有する回路部4によっても同様に奏される。
【0040】
一実施形態において、図5に示すように、回路部4は、ダイオード4a及び抵抗器4cを有し得る。ダイオード4a及び抵抗器4cは、直列に接続され得る。ダイオード4aのアノードは、高周波電源26に整合器28を介して電気的に接続され得る。ダイオード4aのカソードは、抵抗器4cを介して下部電極18に電気的に接続され得る。また、図5に示す回路部4を備えるプラズマ処理装置1は、図3に示す電力調節器5を更に備え得る。抵抗器4cは、可変抵抗器であっても良く、例えばプラズマ処理装置1の動作を制御する制御装置(図示せず)によって可変抵抗器である抵抗器4cの抵抗値が好適に調整され得る。
【0041】
一実施形態において、図5に示す回路部4は、抵抗器4cに代えて、インダクタを備え得る。このインダクタは、ダイオード4aに直列に接続され得る。ダイオード4aのアノードは、高周波電源26に整合器28を介して電気的に接続され得る。ダイオード4aのカソードは、インダクタを介して下部電極18に電気的に接続され得る。また、図5に示す回路部4が抵抗器4cに代えてインダクタを備えるプラズマ処理装置1は、図3に示す電力調節器5を更に備え得る。このインダクタは、可変インダクタであっても良く、例えばプラズマ処理装置1の動作を制御する制御装置(図示せず)によって当該可変インダクタのインダクタンスが好適に調整され得る。
【0042】
一実施形態において、図6に示すように、回路部4は、電位測定器4f、電位測定器4g、スイッチ素子4d、及び駆動回路4eを有し得る。スイッチ素子4dは、高周波電源26及び下部電極18の間に電気的に接続され得る。スイッチ素子4dは、整合器28を介して高周波電源26に電気的に接続され得る。スイッチ素子4dは、高周波電源26及び下部電極18の間の導通をオン・オフするように構成され得る。
【0043】
電位測定器4fは、高周波電源26及び駆動回路4eの間に電気的に接続され得る。電位測定器4fは、整合器28を介して高周波電源26に電気的に接続され得る。電位測定器4fは、高周波電源26の電位を測定して第1の測定結果を生成し、この第1の測定結果を駆動回路4eに出力し得る。電位測定器4gは、下部電極18及び駆動回路4eの間に電気的に接続され得る。電位測定器4gは、下部電極18の電位を測定して第2の測定結果を生成し、この第2の測定結果を駆動回路4eに出力し得る。
【0044】
駆動回路4eは、上記の第1の測定結果及び第2の測定結果に基づいて、高周波電源26の電位が下部電極18の電位よりも高い場合にスイッチ素子4dを駆動して高周波電源26及び下部電極18の間の導通をオンにするように構成され得る。駆動回路4eは、上記の第1の測定結果及び第2の測定結果に基づいて、高周波電源26の電位が下部電極18の電位以下の場合にスイッチ素子4dを駆動して高周波電源26及び下部電極18の間の導通をオフにするように構成され得る。
【0045】
図6に示す回路部4を備えるプラズマ処理装置1は、図3に示す電力調節器5を更に備え得る。
【0046】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0047】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0048】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、12S…側壁、14…基板支持部、18…下部電極、20…上部電極、22…ガス供給部、26…高周波電源、32…ガス供給部、4…回路部、4a…ダイオード、4b…ツェナーダイオード、4c…抵抗器、4d…スイッチ素子、4e…駆動回路、4f…電位測定器、4g…電位測定器、5…電力調節器、W…基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9