(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061728
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】基板処理方法、および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
G01R 29/12 20060101AFI20230425BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
G01R29/12 Z
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171835
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 知久
(72)【発明者】
【氏名】菅原 武
(72)【発明者】
【氏名】安倍 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】植松 治志
(72)【発明者】
【氏名】宇賀神 肇
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131BA04
5F131BA15
5F131BA19
5F131BB04
5F131CA05
5F131DA02
5F131DA22
5F131DA42
5F131DB02
5F131DB54
5F131EB12
5F131EB13
5F131EB31
5F131KA40
5F131KA55
5F131KB30
5F131KB60
(57)【要約】
【課題】基板の処理における除電処理を最適化させることができる技術を提供する。
【解決手段】基板処理装置の基板処理方法であって、プラズマ処理および除電処理を基板に施すプロセスモジュールから前記基板を搬出して、大気雰囲気と真空雰囲気とに切り替え可能なロードロック部に当該基板を搬送する工程と、前記ロードロック部にて前記基板の帯電状態を測定する工程と、前記基板の帯電状態の測定結果を解析して前記除電処理を最適化する工程と、を有する、基板処理方法が提供される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置の基板処理方法であって、
プラズマ処理および除電処理を基板に施すプロセスモジュールから前記基板を搬出して、大気雰囲気と真空雰囲気とに切り替え可能なロードロック部に当該基板を搬送する工程と、
前記ロードロック部にて前記基板の帯電状態を測定する工程と、
前記基板の帯電状態の測定結果を解析して前記除電処理を最適化する工程と、を有する、
基板処理方法。
【請求項2】
前記基板の帯電状態を測定する工程では、前記ロードロック部の内部を真空雰囲気とする、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記ロードロック部は、搬送された前記基板を支持する支持部を有し、
前記基板の帯電状態を測定する工程では、前記ロードロック部に設置された帯電測定部により、前記支持部に支持された前記基板の表面電位を測定する、
請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記プロセスモジュールと前記ロードロック部との間で前記基板を搬送する搬送装置を備え、
前記搬送装置において前記基板に接触する接触子と、前記支持部において前記基板に接触する支持子は、それぞれ導電性を有し、
前記除電処理を最適化する工程では、前記支持部に支持された前記基板の帯電状態と、前記ロードロック部の内部で前記搬送装置により搬送している前記基板の帯電状態と、の測定結果に基づき、前記接触子および前記支持子の前記導電性についての劣化を推定する、
請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記接触子または前記支持子の前記導電性についての劣化を推定した場合に、前記除電処理の時間を最適化する、
請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記除電処理を最適化する工程では、先に設定された前記除電処理の時間で除電処理された前記基板の帯電状態と、目標の帯電状態とを比較し、当該比較に基づき次の前記除電処理の時間を調整する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記除電処理を最適化する工程では、先に設定された前記除電処理の時間で除電処理された前記基板の帯電状態と、目標の帯電状態との帯電差を算出し、前記帯電差に基づき前記除電処理の時間を設定し直す、
請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記基板の帯電状態を測定する工程では、前記ロードロック部の内部で搬送している前記基板の帯電状態を継続して測定し、
前記除電処理を最適化する工程では、前記基板の帯電状態の分布を抽出する、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記プロセスモジュールによる処理前の前記基板を前記ロードロック部に搬送する工程と、
前記ロードロック部にて前記処理前の前記基板の帯電状態を測定する工程と、をさらに有し、
前記除電処理を最適化する工程では、前記プロセスモジュールで処理された処理後の前記基板の帯電状態と、前記処理前の前記基板の帯電状態とに基づき、前記除電処理を最適化する、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記除電処理を最適化する工程は、前記ロードロック部に搬送された前記処理後の前記基板の帯電状態と、前記ロードロック部に搬送された前記処理前の前記基板の帯電状態との差分を算出して、前記差分と予め設定された閾値とを比較し、
前記差分が前記閾値以上の場合に、前記除電処理の時間を長くする、
請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記差分が前記閾値未満の場合に、前記除電処理の時間を短くする、
請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
基板処理装置であって、
プラズマ処理および除電処理を基板に施すプロセスモジュールと、
大気雰囲気と真空雰囲気とに切り替え可能なロードロック部と、
前記プロセスモジュールが処理した前記基板を、前記プロセスモジュールから前記ロードロック部に搬送する真空搬送モジュールと、
前記ロードロック部に設けられ、前記基板の帯電状態を測定する帯電測定部と、
前記帯電測定部の測定結果を処理する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記基板の帯電状態の測定結果を解析して前記除電処理を最適化する、
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板は、電荷が多く帯電していると、当該基板のデバイスに損傷(静電破壊)が生じたり、静電力により基板をステージから脱離するときに破損したりする場合がある。このため、従来から、基板の電荷を低減する除電処理が行われている。例えば、特許文献1には、基板処理システムに基板を搬入する際に帯電している基板について除電処理を行い、基板の帯電状態を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板の除電処理を最適化させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、基板処理装置の基板処理方法であって、プラズマ処理および除電処理を基板に施すプロセスモジュールから前記基板を搬出して、大気雰囲気と真空雰囲気とに切り替え可能なロードロック部に当該基板を搬送する工程と、前記ロードロック部にて前記基板の帯電状態を測定する工程と、前記基板の帯電状態の測定結果を解析して前記除電処理を最適化する工程と、を有する、基板処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一態様によれば、基板の除電処理を最適化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る基板処理装置を概略的に示す平面図である。
【
図2】ロードロック部および搬送装置の一部を模式的に示す側面断面図である。
【
図3】ロードロック部での基板の搬送過程に伴う帯電状態の変化を示すグラフである。
【
図4】除電処理を示すレシピの一部を例示する表である。
【
図5】第1実施形態に係る基板処理方法のフローチャートである。
【
図6】第2実施形態に係る基板処理方法のフローチャートである。
【
図7】第4実施形態に係る基板処理方法にフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
図1は、一実施形態に係る基板処理装置1を概略的に示す平面図である。
図1に示すように、基板処理装置1は、プラズマ処理を基板Sに施す複数(本実施形態では3つ)のプロセスモジュール10、11、12を有するマルチチャンバシステムに構成されている。基板処理装置1は、平面視で、方形状の真空搬送モジュール20を中央位置に配置している。そして、基板処理装置1は、真空搬送モジュール20の三方の側面の各々にプロセスモジュール10、11、12を配置しており、真空搬送モジュール20の残りの一側面にロードロック部30を配置している。プロセスモジュール10、11、12、真空搬送モジュール20およびロードロック部30は、いずれも減圧雰囲気(真空雰囲気)において動作可能なチャンバ容器である。また、基板処理装置1は、各部の動作を制御する制御部60を備える。
【0010】
基板処理装置1が処理する基板Sとしては、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのFPD(Flat Panel Display)用基板があげられる。この場合、基板Sの材料としては、ガラスまたは合成樹脂等が適用される。基板Sは、表面に回路がパターニングされたもの、あるいは回路を備えない支持基板などを含み得る。基板Sの平面寸法は、特に限定されないが、例えば、長辺が1800mm~3400mm程度の範囲であり、短辺が1500mm~3000mm程度の範囲であり、あるいは他の寸法の矩形の基板が挙げられる。
【0011】
真空搬送モジュール20と各プロセスモジュール10、11、12との間には、基板Sが通過可能な開口部10a、11a、12aがそれぞれ設けられる。また、基板処理装置1は、各開口部10a、11a、12aを開閉するゲートバルブ13、14、15をそれぞれ備える。各ゲートバルブ13、14、15は、閉状態で真空搬送モジュール20と各プロセスモジュール10、11、12の間を気密にシールし、開状態で真空搬送モジュール20と各プロセスモジュール10、11、12の間を連通させて基板Sの搬送を可能とする。
【0012】
各プロセスモジュール10、11、12は、各々の内部空間10s、11s、12s(基板処理室:プロセスチャンバ)を所定の減圧雰囲気(真空雰囲気)に保持可能な容器であり、内部空間10s、11s、12sに搬送された基板Sにプラズマ処理を実施する。各プロセスモジュール10、11、12内には、基板Sを載置するための載置台16が設けられている。載置台16は、例えば、静電力により基板Sを保持する静電チャック(不図示)を有する。各プロセスモジュール10、11、12は、載置台16に固定した基板Sに対して、エッチング処理、アッシング処理、成膜処理などのプラズマ処理を行う。なお、載置台16による基板の固定方法は、特には静電チャックに限定されず、メカニカルクランプなどを適用してもよい。基板処理装置1における各プロセスモジュール10、11、12は、同種のプラズマ処理を行ってもよく、プロセスモジュール10、11、12毎に異なる種類のプラズマ処理を行ってもよい。
【0013】
また、各プロセスモジュール10、11、12は、プラズマ処理などにより帯電した基板Sに対して除電処理を行う。例えば、除電処理として、各プロセスモジュール10、11、12は、静電チャックに埋設された吸着電極(不図示)に印加していた電圧とは正負が逆で同じ大きさの直流電圧を吸着電極に印加して、基板Sの電荷を取り除く方法を採ることができる。あるいは、各プロセスモジュール10、11、12は、除電処理用のプラズマを生起して基板Sの電荷を取り除く方法を採ってもよい。
【0014】
真空搬送モジュール20は、所定の真空雰囲気に保持できる容器に構成される。真空搬送モジュール20は、容器の内部空間(搬送室)に搬送装置21を有する。搬送装置21は、真空搬送モジュール20と各プロセスモジュール10、11、12の間、および当該真空搬送モジュール20とロードロック部30との間で基板Sを搬送する。
【0015】
搬送装置21は、台座部22と、この台座部22に支持されて基板Sの下面を保持可能なフォーク25をエンドエフェクタに有する搬送アーム23と、搬送アーム23を回転、上下動および進退させる動作部24と、を含む。動作部24は、制御部60に接続され、制御部60の動作指令に基づき搬送アーム23を動作させる。フォーク25は、搬送アーム23の動作において、各プロセスモジュール10、11、12の内部またはロードロック部30の内部に進出して、基板Sの受け渡しまたは受け取りを行う。さらに、フォーク25は、基板Sを受け渡した状態または基板Sを受け取った状態で、各プロセスモジュール10、11、12またはロードロック部30から後退することが可能である。
【0016】
図2は、ロードロック部30および搬送装置21の一部を模式的に示す側面断面図である。
図1および
図2に示すように、フォーク25は、複数の支持ピック26と、各支持ピック26の上面に設けられて基板Sに直接接触する複数の接触子27と、を有する。各接触子27は、支持ピック26よりも軟質で摩擦力を持っており、また導電性を有する材料により形成されている。この接触子27としては、例えば、導電性ゴムからなるリング状部材を適用し得る。また接触子27は、突起状部材であってもよい。搬送装置21は、接地電位に接続されており、基板Sの搬送時に、各接触子27、支持ピック26および搬送アーム23を介して、基板Sに帯電している電荷を移動させることが可能である。接触子27に劣化が生じておらず十分に導電性を保っている状態であれば、各プロセスモジュール10、11、12の内部での除電処理において除電しきれずに基板Sに残留した電荷も、基板Sの搬送時に十分低い帯電量まで補足的に除電することができる。
【0017】
図1に戻り、基板処理装置1は、真空搬送モジュール20とロードロック部30との間に、基板Sが通過する開口部30aを有するとともに、この開口部30aを開閉するゲートバルブ31を備える。ゲートバルブ31は、閉状態で真空搬送モジュール20とロードロック部30との間を気密にシールし、開状態で真空搬送モジュール20とロードロック部30との間を連通させて基板Sの搬送を可能とする。さらに、基板処理装置1は、ロードロック部30と当該ロードロック部30の外側との間に、開口部30b、ゲートバルブ32を備える。ゲートバルブ32は、閉状態でロードロック部30の気密性を維持し、開状態でロードロック部30と外側との間を連通させて基板Sの搬送を可能とする。
【0018】
ロードロック部30の外側には、当該ロードロック部30との間で基板Sを搬入および搬出するために、基板処理装置1とは別に設けられたロードモジュール50が接続されている。ロードモジュール50は、大気雰囲気で基板Sの待機、搬送などを行う。ロードモジュール50は、特に限定されず、例えば、複数の基板Sを収容したキャリアと、空のキャリアと(共に不図示)、各キャリアに対して基板Sを出し入れ可能な搬送機構51と、を含む構成を適用し得る。あるいは、ロードモジュール50は、基板処理装置1の周辺に設置された他の処理装置から基板Sを受け取り、また他の処理装置に基板Sを送り出す機構(不図示)であってもよい。
【0019】
基板処理装置1のロードロック部30(ロードロックモジュール)は、大気雰囲気にあるロードモジュール50と真空雰囲気の真空搬送モジュール20との間で基板Sの受渡しを行う。このため、ロードロック部30は、所定の真空雰囲気に保持できる容器に構成される。このロードロック部30は、大気雰囲気と真空雰囲気とに繰り返し切り替えるために、小さな容積に形成される。
【0020】
図1および
図2に示すように、ロードロック部30の容器は、矢印A方向に設けられた複数の側壁部33と、矢印B方向に設けられた開口部30aおよび開口部30bと、各側壁部33が連結する床部34と、各側壁部33により支持される天井部35と、を含み、接地電位に接続されている。矢印B方向に沿って対向し合う一対の開口部30aおよび開口部30bは、開口部30aにおいてはゲートバルブ31と、開口部30bにおいてはゲートバルブ32と、を別々に有している。
【0021】
ロードロック部30の床部34には、当該ロードロック部30の空間部30s(ロードロック室)において基板Sを支持する基板支持部36が設けられている。基板支持部36の上面は、矢印A方向に沿ってバッファ37(支持部)と、凹溝38とが交互に設けられた凹凸に形成されている。複数の凹溝38は、搬送装置21(フォーク25)の各支持ピック26を入り込み可能とするため直線状を呈している。
【0022】
また、複数のバッファ37の上面には、フォーク25が下降した際に、基板Sに接触して基板Sを支持する複数の支持ピン39(支持子)が設けられている。支持ピン39は、導電性を有する材料により形成されている。これにより、ロードロック部30は、基板Sに残留して帯電している電荷を、支持ピン39、基板支持部36および床部34を介してロードロック部30の外部に移動させることができる。
【0023】
そして、ロードロック部30は、基板Sの帯電状態を測定する帯電測定部40を天井部35に備える。本実施形態において基板Sの「帯電状態」とは、基板Sに生じる静電力の電圧(表面電位)として測定される。なお、帯電測定部40が測定する「帯電状態」は、表面電位に限定されず、例えば、基板Sの電荷量、電位差、電界、他の物理的な応力(圧電など)を測定してもよい。
【0024】
帯電測定部40は、矢印B方向中間位置よりも真空搬送モジュール20側(ゲートバルブ31の近傍位置)に設けられている。なお
図2中では、1つの帯電測定部40を図示しているが、ロードロック部30は複数の帯電測定部40を備えた構成でもよい。例えば、基板処理装置1は、
図1に示す矢印A方向に沿って、複数の帯電測定部40を並べて配置することで、基板Sの矢印B方向に沿った搬送に伴って全面の帯電状態の分布を得ることができる。
【0025】
帯電測定部40は、空間部30sを真空雰囲気にした状態で、基板Sの帯電状態を測定可能なセンサが適用される。空間部30sを大気雰囲気にした状態では基板Sの帯電状態が変わるためである。この帯電測定部40は、静電誘導現象を利用し、帯電物体にセンサを近づけたときに、帯電物体により形成された電界によってセンサ上に誘起される誘導電荷を測定することにより、表面電位を取得する。例えば、帯電測定部40は、天井部35に固定された増幅回路を有する測定本体41と、測定本体41から配線42を介して垂下されロードロック部30の内部に配置されるプローブ43と、を有する。測定本体41は、制御部60に通信可能に接続され、測定結果(帯電状態の情報)を制御部60に送信する。プローブ43は、天井部35内また天井部35よりも下側に配置され、搬送される基板Sに接近している。これにより、帯電測定部40は、基板Sの表面電位の検出精度が高められる。
【0026】
図3は、ロードロック部30での基板Sの搬送過程に伴う帯電状態の変化を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は時間であり、縦軸は基板Sについて測定された表面電位である。
図3に示すように、帯電測定部40は、真空搬送モジュール20からロードロック部30に基板Sを搬入して基板支持部36により基板Sを支持した搬送過程全体にわたって、基板Sの表面電位を測定することが可能である。
【0027】
詳細には、基板Sの搬送過程は、フォーク25により基板Sを搬入する搬入ステップと、フォーク25を下降する下降ステップと、フォーク25からバッファ37に基板Sを受け渡した受渡ステップと、フォーク25が離脱してバッファ37にて基板Sを支持した支持ステップと、を有する。この基板Sの搬送過程では、ロードロック部30の内部は、各プロセスモジュール10、11、12および真空搬送モジュール20の真空雰囲気と同等の真空雰囲気に減圧されている。帯電測定部40は、搬送過程の各ステップ(搬入ステップ、下降ステップ、受渡ステップ、支持ステップ)毎に、変動する基板Sの帯電状態を測定する。
【0028】
特に、基板支持部36で基板Sを支持した支持ステップにて測定した基板Sの帯電状態は、基板処理装置1における処理後の基板Sが各ステップにおける除電を経た結果としての最終的な帯電状態が示される。すなわち、基板Sに対して次の処理を施す際、この帯電状態を伴っていることとなる。ただし、支持ステップの初期は、帯電状態が安定しない可能性があるため、制御部60は、支持ステップの開始後に所定時間経過した後の測定結果を使用するとよい。なお、
図3中に示すように、帯電測定部40により測定された表面電位(基板Sの帯電状態)は時間経過に伴って微小な振幅を繰り返している。このため、制御部60は、帯電状態の測定波形について、振幅の平均値(移動平均など)や中間値を算出して帯電状態の値とすることが好ましい。
【0029】
また、制御部60は、搬入ステップにおける基板Sの搬送時に帯電測定部40による測定を継続して行うことで、基板Sの搬送方向に沿った帯電状態の分布を認識できる。このことから、制御部60は、搬送過程の各ステップにおける帯電測定部40の測定結果(基板Sの帯電状態)を用いることで、各プロセスモジュール10、11、12の除電処理の状態、基板Sの搬送時の接触子27による除電の状態および基板支持部36で基板Sを支持した際の支持ピン39による除電の状態による除電の結果を適切に認識することができ、除電処理の最適化を図ることが可能となる。
【0030】
なお、ロードロック部30は、ロードモジュール50から未処理の基板Sを搬入する空間部と、真空搬送モジュール20から処理後の基板Sを搬入する空間部と、を別に備えた構成(例えば、上下二段の空間部を有する構成)でもよい。この場合、帯電測定部40は、それぞれの空間部を囲う壁部に適宜設けられればよい。
【0031】
図1に戻り、基板処理装置1の制御部60は、コントローラ本体61と、コントローラ本体61に接続されるユーザインタフェース65と、を有する。コントローラ本体61は、1以上のプロセッサ62、メモリ63、図示しない入出力インタフェースおよび電子回路を有する制御用コンピュータを適用し得る。プロセッサ62は、CPU、ASIC、FPGA、複数のディスクリート半導体からなる回路などのうち1つまたは複数を組み合わせたものである。メモリ63は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ(例えば、コンパクトディスク、DVD、ハードディスク、フラッシュメモリなど)を含み、基板処理装置1を動作させるプログラム、プラズマ処理のプロセス条件などのレシピR(
図4も参照)を記憶している。
【0032】
ユーザインタフェース65は、ユーザが基板処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボード、基板処理装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ、または表示および入力の両機能の有するタッチパネルなどを適用し得る。
【0033】
本実施形態に係る基板処理装置1は、基本的には以上のように構成され、以下、その動作(基板処理方法)について説明する。
【0034】
基板処理装置1は、ロードロック部30に帯電測定部40を備えることで、帯電測定部40の測定結果(基板Sの帯電状態)に基づき、各プロセスモジュール10、11、12の除電処理の最適化を図る。なお、以下では、各プロセスモジュール10、11、12のうち代表的にプロセスモジュール10で処理を行うケースについて説明するが、他のプロセスモジュール11、12でも同じ処理を実施可能なことは勿論である。
【0035】
具体的には、制御部60は、以下の(a)~(d)の処理内容を実行することで、除電処理の最適化を図る。
(a)プロセスモジュール10からロードロック部30に搬入した後の基板Sの帯電状態に基づいて、除電処理の時間(以下、除電期間ともいう。)を設定し直す。
(b)ロードロック部30の内部での基板Sの搬送過程における基板Sの帯電状態に基づいて、搬送装置21の接触子27またはロードロック部30の支持ピン39の劣化を推定し、劣化を推定した場合に除電期間を長くする。
(c)ロードロック部30の内部での基板Sの搬送過程における基板Sの帯電状態に基づいて、基板Sの帯電状態の分布を認識する。
(d)ロードモジュール50からロードロック部30に搬入された未処理の基板Sの帯電状態と、プロセスモジュールの処理後にプロセスモジュールからロードロック部30に搬入された処理後の基板Sの帯電状態とに基づいて、除電期間を設定し直す。
【0036】
以下、基板処理方法の(a)~(d)の処理内容について、第1~第4実施形態に分けて説明する。なお、基板処理装置1は、(a)~(d)の処理内容のうちいずれか1つを実施する構成でもよく、(a)~(d)の処理内容のうち複数または全部を組み合わせて実施する構成でもよい。
【0037】
〔第1実施形態〕
(a)の処理内容は、プロセスモジュール10でプラズマ処理および除電処理された処理後の基板Sの帯電状態に応じて、そのプロセスモジュール10で除電処理を行う除電期間を短くする、または長くするものである。例えば、プロセスモジュール10で処理した基板Sの帯電極性がプラス(表面電位が正の値)の場合について、以下に説明する。
【0038】
基板Sがプラスに帯電した際に、基板処理装置1は、除電処理によって表面電位をマイナス側に低下させる。そして、除電処理した基板Sの帯電状態が目標の帯電状態よりも小さい場合には、除電期間が長いと言える。よって、制御部60は、次に処理する基板Sの除電期間を短くする。逆に、除電処理した基板Sの帯電状態が目標の帯電状態よりも大きい場合には、除電期間が短いと言える。よって、制御部60は、次に処理する基板Sの除電期間を長くする。なお、簡略化のため、接触子27および支持ピン39に導電性についての劣化が無いものとして、基板支持部36上における最終的な基板Sの帯電状態について説明したが、後述のように、接触子27および支持ピン39に劣化が生じていたとしても、結果的には同様の処理を行うこととなる。
【0039】
図4は、除電処理を示すレシピRの一部を例示する表である。簡略にするため、除電処理以外の処理ステップは省略した。そのため、空欄部は非該当として数値が記載されていない。
図4に示すように、基板Sのプロセス条件を記載したレシピRには、プロセスモジュール10の除電処理における、目標の表面電位(帯電状態)および初期の除電期間が記述されている。制御部60は、ロードモジュール50から搬送した1枚目の基板Sをプロセスモジュール10で最初に除電処理する場合に、レシピRに沿った目標の帯電状態および除電期間で処理を行う。なお、目標の帯電状態や初期の除電期間は、ユーザインタフェース65を介してユーザが設定する構成でもよい。
【0040】
そして
図2に示すように、制御部60は、除電処理した基板Sをプロセスモジュール10からロードロック部30に搬送して、ロードロック部30の帯電測定部40により基板Sの帯電状態を測定し、その測定結果に基づき除電期間を変更する。(a)の処理内容において、制御部60は、基板支持部36により基板Sが支持された支持ステップの帯電測定部40の測定結果を用いることが好ましい(
図3も参照)。これにより、基板Sの最終的な帯電状態の測定結果を取り扱うことができる。
【0041】
例えば、レシピRにおいて、目標の帯電状態が100Vでありかつ除電期間が40秒である一方で、除電処理後の基板Sの帯電状態(測定結果)が80Vである場合、除電期間が長いと言える。このため、制御部60は除電期間を短くする。
【0042】
除電期間の短縮は、測定した基板Sの帯電状態と、目標の帯電状態との差分(帯電差)を算出し、帯電差に応じて短縮する期間を設定するとよい。一例として、制御部60は、帯電差が1V増えるごとに1秒短縮するように除電期間を設定し直すことがあげられる。つまり、上記の例では帯電差が20Vであることに基づき、制御部60は40秒の除電期間を20秒短くする。あるいは、除電期間の短縮は、基板Sの処理を1回行う毎に、所定期間ずつ短縮する方法を採ってもよい。
【0043】
逆に、目標の帯電状態が100Vでありかつ除電期間が20秒である一方で、除電処理後の基板Sの帯電状態(測定結果)が110Vである場合、除電期間が短いと言える。このため、制御部60は除電期間を長くする。除電期間の延長も、測定した基板Sの帯電状態と、目標の帯電状態との差分(帯電差)を算出し、帯電差に応じて延長する期間を設定するとよい。あるいは、除電期間の延長でも、基板Sの処理を1回行う毎に、所定期間ずつ延長する方法を採ってもよい。
【0044】
なお、帯電差が所定範囲(例えば、数V)以内の場合、制御部60は、除電期間の設定し直しを行わないようにしてもよい。これにより、制御部60は、プロセスモジュール10による処理の度に除電期間が変化することを抑制でき、帯電測定部40による測定誤差などの影響による変動を回避できる。
【0045】
また逆に、プロセスモジュール10で処理した基板Sの帯電極性がマイナス(表面電位が負の値)の場合、基板処理装置1は、除電処理によって表面電位をプラス側に低下させる。そして、除電処理した基板Sの帯電状態が目標の帯電状態よりも大きい(ゼロに近い)場合には、除電期間が長いと言える。よって、制御部60は、次に処理する基板Sの除電期間を短くする。逆に、除電処理した基板Sの帯電状態が目標の帯電状態よりも小さい(マイナス側にある)場合には、除電期間が短いと言える。よって、制御部60は、次に処理する基板Sの除電期間を長くする。
【0046】
図5は、第1実施形態に係る((a)の処理内容に応じた)基板処理方法のフローチャートである。
図5に示すように、制御部60は、基板処理装置1による基板Sの処理開始時に、各プロセスモジュール10、11、12のうち基板Sを処理するプロセスモジュール10を選択する(ステップS1)。その後、制御部60は、選択したプロセスモジュール10によるプラズマ処理および除電処理についてレシピRに基づくプロセス条件を設定する(ステップS2)。これにより、除電処理の条件である目標の帯電状態および初期の除電期間が設定される。
【0047】
そして、制御部60は、ロードモジュール50からロードロック部30に基板Sを搬入し(ステップS3)、さらに搬送装置21を制御して、ロードロック部30の基板Sを選択したプロセスモジュール10に搬送する(ステップS4)。基板Sの搬送後、制御部60は、プラズマ処理および除電処理を基板Sに対して実施する(ステップS5)。この際、制御部60は、設定した目標の帯電状態および除電期間に従って除電処理を実行する。例えば、プロセスモジュール10で最初に除電処理を行う場合は、レシピRの除電期間だけ除電処理を行う。
【0048】
基板Sの処理後、制御部60は、処理した基板Sをプロセスモジュール10から搬出して、ロードロック部30に当該基板Sを搬送する(ステップS6)。そして、制御部60は、基板支持部36に支持された基板Sの帯電状態を、ロードロック部30の帯電測定部40により測定する(ステップS7)。これにより、制御部60は、帯電測定部40から測定結果を受信する。
【0049】
その後、制御部60は、帯電状態の測定結果を解析することで、除電処理の最適化を行う(ステップS8)。すなわち、制御部60は、測定結果の解析において、先に設定された除電期間で除電処理された基板Sの帯電状態と、目標の帯電状態とを比較する。この比較の結果、基板Sの帯電状態の絶対値が目標の帯電状態の絶対値よりも大きい場合には、次の除電処理の時間を長くし、基板Sの帯電状態の絶対値が目標の帯電状態の絶対値よりも小さい場合には、次の除電処理の時間を短くする。また上記したように、除電処理の最適化において、制御部60は、先に設定された除電期間で除電処理された基板Sの帯電状態と、目標の帯電状態との帯電差を算出し、帯電差に基づき除電期間を設定し直してもよい。
【0050】
基板Sの帯電状態の測定後、制御部60は、ロードロック部30の基板Sを、ロードロック部30からロードモジュール50に搬出する(ステップS9)。これにより、基板処理装置1は、先に処理を行ったプロセスモジュール10に対して、未処理の基板Sを新たに搬送できる。その後、プロセスモジュール10は、基板Sの処理を終了するか否かを判定し(ステップS10)、基板Sの処理を継続する場合(ステップS10:NO)には、ステップS3に戻って以下同様の処理フローを繰り返す。
【0051】
上記したようにステップS8において、制御部60は、次の基板Sを除電処理する際の除電期間を設定し直している。このため、ステップS5において、制御部60は、設定し直した除電期間に従って除電処理を行う。その結果、除電期間が過剰な場合には、除電期間を削減して処理全体としての時間を短縮化するとともに、除電処理により生じるパーティクルを抑制できる。逆に、除電期間が不足している場合には、除電期間を延長して帯電状態を低下させ、基板S上に形成されるデバイスが受ける損傷を低減させる。
【0052】
一方、基板Sの処理を終了する場合(ステップS10:YES)、制御部60は、ステップS11に進み、終了処理を行う。この終了処理において、制御部60は、ステップS8で最適化した除電処理の情報を記憶することが好ましい。これにより、制御部60は、基板Sの処理の再開時に、記憶した除電処理の情報(最適化した情報)を用いて最初から除電処理を行うことができる。
【0053】
以上のように、第1実施形態に係る基板処理方法は、プロセスモジュール10の処理後の基板Sについて、ロードロック部30にて帯電状態を測定し、除電処理の最適化を図る。このため、基板処理方法は、基板Sの帯電状態を所望の帯電状態としつつ、プロセスモジュール10の処理期間を適切な長さに調整することが可能となる。また、基板処理装置1は、各プロセスモジュール10に帯電測定部40を設置せずに済み、製造コストを低廉化できる。
【0054】
〔第2実施形態〕
(b)の処理内容は、ロードロック部30の内部での基板Sの搬送過程における基板Sの帯電状態の変化を用いて、基板Sに接触する導電性の部材(搬送装置21の接触子27、基板支持部36の支持ピン39)の劣化を推定するものである。なお、第2実施形態では、プロセスモジュール10で処理した基板Sの帯電極性がプラス(表面電位が正の値)の場合について説明するが、帯電極性がマイナスの場合でもプラスの場合と同様に、導電性の部材の劣化を抑制し得ることは勿論である。
【0055】
図3に示すように、ロードロック部30の内部では、基板Sの搬送時に、基板Sの帯電状態も変化していることが分かる。これは、帯電測定部40が静電誘導を利用したものであるため、対象物とセンサとの距離が変わればセンサに誘起される電荷が変化し、測定結果が変わることによる。従って、搬送アーム23の下降に伴う帯電状態の変化は、見掛け上のものとなる。それゆえ、他の搬送処理との間における搬入ステップ同士の帯電状態の比較、および支持ステップ同士の帯電状態の比較において、それぞれ、接触子27の(導電性についての)劣化、支持ピン39の(導電性についての)劣化が判断されることとなる。
【0056】
ここで、支持ステップにおいて、基板支持部36の導電性を有する各支持ピン39が基板Sを支持した状態では、基板Sに帯電している電子が、各支持ピン39を介して接地電位に放出される。したがって、基板Sの帯電状態は、支持ステップの実施に伴って低下する。長期間の使用などにより支持ピン39が劣化した場合には、支持ステップにおいて、基板Sの帯電状態の低下が弱まる(または変化しなくなる)。
【0057】
このことから、制御部60は、支持ステップにおける基板Sの帯電状態に基づき、支持ピン39の劣化を推定することができる。例えば、制御部60は、支持ステップにおける過去に同じプロセス条件(目標の帯電状態、除電期間など)の除電処理を実施した際の基板Sの帯電状態(複数の場合は平均値をとってもよい)と、現在の基板Sの帯電状態とを比較する。そして、基板Sの帯電状態の低下が所定以上小さくなった場合に、支持ピン39が劣化していると判定する。あるいは、制御部60は、支持ステップにより基板Sを支持している際の帯電状態の時間経過に伴う低下率を算出し、算出した低下率が所定の低下率閾値(不図示)未満となった場合に、支持ピン39の劣化を判定してもよい。
【0058】
そして、制御部60は、支持ピン39の劣化を判定すると、除電処理の最適化として、各プロセスモジュール10、11、12における除電期間を長く設定し直す。例えば、制御部60は、支持ピン39の劣化の判定に基づき、予め設定された期間だけ除電期間を長くする。なお、制御部60は、支持ピン39の劣化度合いを算出し、劣化度合いが大きくなるにしたがって除電期間を長く設定する構成でもよい。
【0059】
また、搬入ステップにおいて、搬送装置21(フォーク25)の導電性を有する各接触子27が基板Sを支持した状態でも、基板Sに帯電している電荷は、各接触子27を介して接地電位に放出される。したがって、基板Sの帯電状態は、搬入ステップの実施中に低下する。長期間の使用などにより接触子27が劣化した場合には、搬入ステップにおいて、基板Sの帯電状態の低下が弱まる(または変化しなくなる)。ただし、搬入ステップにおいて帯電測定部40が検出する電位には、基板Sの帯電状態の他に、基板支持部36に帯電している電荷が含まれる。
【0060】
このため、制御部60は、搬入ステップにおける基板Sの帯電状態と、支持ステップにおける基板Sの帯電状態とを両方用いることで、接触子27の劣化を推定する。例えば、制御部60は、現在の搬入ステップにおける基板Sの帯電状態から、現在の支持ステップにおける基板Sの帯電状態を減算して、基板支持部36の帯電の影響を除く。そして、現在の減算結果と、過去に同じプロセス条件(目標の帯電状態、除電期間など)の除電処理を実施した際の減算結果とを比較して、減算結果が所定以上小さくなった場合に、接触子27が劣化していると判定する。
【0061】
制御部60は、接触子27の劣化を判定すると、支持ピン39と同様に、各プロセスモジュール10、11、12における除電処理の時間を長く設定し直す。例えば、制御部60は、接触子27の劣化の判定に基づき、予め設定された期間だけ除電期間を長くする。接触子27が劣化した際の除電期間の延長量と、支持ピン39が劣化した際の除電期間の延長量とは、同じでもよく、互いに異なっていてもよい。なお、制御部60は、接触子27の劣化度合いを算出し、劣化度合いが大きくなるにしたがって除電期間を長く設定する構成でもよい。
【0062】
図6は、第2実施形態に係る((b)の処理内容に応じた)基板処理方法のフローチャートである。
図6に示すように、制御部60は、ステップS21~S26までは、上記の(a)の処理内容に応じた基板処理方法のステップS1~S6と同じ処理を行う。そして、制御部60は、ロードロック部30の内部で基板Sを搬送する搬送過程において、帯電測定部40により基板Sの帯電状態を継続的に測定する(ステップS27)。制御部60は、この基板Sの帯電状態の測定結果を受信し、メモリ63に記憶していく。
【0063】
その後、制御部60は、帯電状態の測定結果を解析することで、除電処理の最適化を行う(ステップS28)。すなわち、制御部60は、測定結果の解析において、上記したように搬入ステップ、支持ステップにおける基板Sの帯電状態から接触子27の状態を示す指標、および支持ピン39の劣化を示す指標を抽出する。
【0064】
さらに、制御部60は、抽出した各指標に基づき、接触子27の劣化および支持ピン39の劣化の各々を判定する(ステップS29)。接触子27または支持ピン39が劣化していないと判定した場合(ステップS29:NO)、制御部60は、劣化に応じた除電期間の補正を非実施とする(ステップS30)。このため、制御部60は、他の判定による除電期間の設定し直しを行わない場合、現行の除電期間を維持する。
【0065】
一方、接触子27または支持ピン39が劣化していると判定した場合(ステップS29:YES)、制御部60は、次の除電処理の時間を長くする補正を行う(ステップS31)。
【0066】
また、基板Sの帯電状態の測定後、制御部60は、ロードロック部30の基板Sを、ロードロック部30からロードモジュール50に搬出する(ステップS32)。これにより、基板処理装置1は、先に処理を行ったプロセスモジュール10に対して、未処理の基板Sを新たに搬送可能となる。その後、プロセスモジュール10は、基板Sの処理を終了するか否かを判定し(ステップS33)、基板Sの処理を継続する場合(ステップS33:NO)には、ステップS23に戻って以下同様の処理フローを繰り返す。
【0067】
接触子27または支持ピン39が劣化している場合、制御部60は、除電期間を長く設定し直している。このため、ステップS25では、制御部60は、延長した除電期間に従って除電処理を行う。基板処理装置1は、接触子27または支持ピン39の劣化に伴い除電期間を長くすることで、処理全体としての基板Sの帯電状態を一定に保ち、直ちにメンテナンスやパーツ交換を行わなくても、同様の品質で基板Sを処理できる。
【0068】
一方、基板Sの処理を終了する場合(ステップS33:YES)、制御部60は、ステップS34に進み、終了処理を行う。この終了処理において、制御部60は、最適化した除電処理の情報を記憶することが好ましい。これにより、制御部60は、基板Sの処理の再開時に、最適化した情報を用いて最初から除電処理を行うことができる。
【0069】
以上のように、第2実施形態に係る基板処理方法は、接触子27の劣化および支持ピン39の劣化を推定する。基板処理装置1は、ユーザインタフェース65を介してこの劣化の情報をユーザに報知することで、基板処理装置1のメンテナンスを促すことができる。また、基板処理方法は、直ちにメンテナンスを行わなくても除電期間を長くするので、プロセスモジュール10で基板Sの帯電状態を低下させる。よって、基板処理方法は、搬送装置21またはロードロック部30のメンテナンスを先延ばしして、次回の定期メンテナンスのタイミングで一緒にメンテナンスやパーツ交換を行うことを可能とし、装置のダウンタイムを抑制できる。
【0070】
〔第3実施形態〕
(c)の処理内容は、プロセスモジュール10でプラズマ処理および除電処理された基板Sの帯電状態の分布を認識し、帯電状態の均一性を監視するものである。なお、第3実施形態でも、プロセスモジュール10で処理した基板Sの帯電極性がプラス(表面電位が正の値)の場合について説明するが、帯電極性がマイナスの場合でもプラスの場合と同様に、帯電状態の分布を監視可能なことは勿論である。
【0071】
この場合、制御部60は、基板Sの搬送過程の搬入ステップにおいて測定した基板Sの帯電状態を使用して、基板Sの搬送速度と帯電測定部40の位置とに基づき、基板Sの延在方向に沿った帯電状態の分布を抽出する。そして例えば、制御部60は、基板Sの帯電状態が基板Sの面方向に沿って所定の許容差内(均一とみなせる範囲)である場合に、処理後の基板Sの品質が確保されていると判定する。逆に、制御部60は、基板Sの帯電状態が基板Sの面方向に沿って所定の許容差を超えている場合に、処理後の基板Sの帯電状態にムラがある(品質が低下している)と判定する。
【0072】
また、制御部60は、帯電状態にムラがあると判定した基板Sに対し、再び除電処理を行うとよい。この際、基板処理装置1は、プロセスモジュール10に基板Sを再搬送してプロセスモジュール10で除電処理を行ってもよく、ロードロック部30に基板Sを長く待機させて、支持ピン39を介して電荷を移動させる除電処理を採ってもよい。あるいは、制御部60は、ロードモジュール50において、品質が確保されている基板Sと、品質が低下している基板Sとに選別してもよい。
【0073】
〔第4実施形態〕
(d)の処理内容は、ロードモジュール50からロードロック部30に搬入した基板Sの帯電状態を測定し、この測定結果(以下、未処理帯電状態という)を用いてプロセスモジュール10で処理した後の基板Sの帯電状態を監視するものである。つまり、基板処理装置1に供給される基板Sは、既に帯電している(持ち込み帯電を有している)場合がある。持ち込み帯電がある場合についてそのまま解析を行った結果に基づく除電期間の調整を、次の除電処理に適用すると、正しく除電処理が行えなくなる可能性があるため、第4実施形態に係る基板処理方法は、この持ち込み帯電の影響を除外して、各プロセスモジュール10、11、12の処理後の基板Sの帯電状態を正確に捉えることを可能とする。ここでは、持ち込み帯電がプラスであってプラズマ処理でプラスに帯電する場合、持ち込み帯電がプラスであってプラズマ処理でマイナスに帯電する場合、持ち込み帯電がマイナスであってプラズマ処理でプラスに帯電する場合、および持ち込み帯電がマイナスであってプラズマ処理でマイナスに帯電する場合が考えられる。
【0074】
詳細には、制御部60は、処理後の基板Sの帯電状態から未処理帯電状態を減算した差(以下、処理前後差という)を算出する。制御部60は、この処理前後差と、予め保有している閾値とを比較する。閾値は、持ち込み帯電の無い場合の基板Sにおいて正しく除電期間の調整が行われるように設定される。処理前後差および閾値は、絶対値にて比較されることが好ましい。ここで、処理前後差が閾値よりも小さい場合とは、基板Sの表面電位がプラスに帯電している状況および基板Sの表面電位がマイナスに帯電している状況を含めて、除電処理が長いと言える。よって、制御部60は、次に処理する基板Sの除電期間を短くする。逆に、処理前後差が閾値よりも大きい場合とは、基板Sの表面電位がプラスに帯電している状況および基板Sの表面電位がマイナスに帯電している状況を含めて、除電処理が短いと言える。よって、制御部60は、次に処理する基板Sの除電期間を長くする。
【0075】
図7は、第4実施形態に係る((d)の処理内容に応じた)基板処理方法のフローチャートである。
図7に示すように、制御部60は、ステップS41~S43までは、上記の(a)の処理内容に応じた基板処理方法のステップS1~S3と同じ処理を行う。
【0076】
そして、制御部60は、ロードロック部30に搬入された基板Sについて、帯電測定部40により帯電状態(未処理帯電状態)を測定する(ステップS44)。そして、制御部60は、帯電測定部40が測定した測定結果(未処理帯電状態)を受信してメモリ63に記憶する。
【0077】
その後、制御部60は、搬送装置21を制御して、ロードロック部30の基板Sを選択したプロセスモジュール10に搬送する(ステップS45)。基板Sの搬送後、制御部60は、プラズマ処理および除電処理を基板Sに対して実施する(ステップS46)。この際、制御部60は、設定した目標の帯電状態および除電期間に沿って除電処理を実行する。
【0078】
基板Sの処理後、制御部60は、処理した基板Sをプロセスモジュール10から搬出して、ロードロック部30に当該基板Sを搬送する(ステップS47)。そして、制御部60は、搬送された処理後の基板Sの帯電状態をロードロック部30の帯電測定部40により測定する(ステップS48)。これにより、制御部60は、帯電測定部40が測定した測定結果を受信してメモリ63に記憶する。
【0079】
そして、制御部60は、処理後の基板Sの帯電状態と未処理帯電状態とを解析して、除電処理の最適化を行う(ステップS49)。制御部60は、測定結果の解析において、処理後の基板Sの帯電状態から未処理帯電状態を減算し、処理前後差を算出する。制御部60は、この処理前後差の絶対値が予め保有している閾値よりも小さい場合には、最適化において次の除電処理の時間を短くし、処理前後差の絶対値が閾値よりも大きい場合には、最適化において次の除電処理の時間を長くする。
【0080】
また、基板Sの帯電状態の測定後、制御部60は、ロードロック部30の基板Sを、ロードロック部30からロードモジュール50に搬出する(ステップS50)。これにより、基板処理装置1は、先に処理を行ったプロセスモジュール10に対して、未処理の基板Sを新たに搬送可能となる。このため、プロセスモジュール10は、基板Sの処理を終了するか否かを判定し(ステップS51)、基板Sの処理を継続する場合(ステップS51:NO)には、ステップS43に戻って以下同様の処理フローを繰り返す。
【0081】
上記したようにステップS49において、制御部60は、次の基板Sを除電処理する際の除電期間を設定し直している。このため、ステップS46では、制御部60は、設定し直した除電期間に従って除電処理を行う。その結果、過剰な除電期間を削減して処理全体としての時間を短縮化するとともに、除電処理により生じるパーティクルを抑制でき、除電期間が不足している場合には、除電期間を延長して帯電状態を低下させ、基板S上に形成されるデバイスが受ける損傷を低減させる。
【0082】
一方、基板Sの処理を終了する場合(ステップS51:YES)、制御部60は、ステップS52に進み、終了処理を行う。この終了処理において、制御部60は、ステップS49で最適化した除電処理の情報を記憶することが好ましい。これにより、制御部60は、基板Sの処理の再開時に、記憶した除電処理の情報(最適化した情報)を用いて最初から除電処理を行うことができる。
【0083】
以上のように、第4実施形態に係る基板処理方法は、未処理帯電状態を加味して処理後の基板Sの帯電状態を認識することで、プロセスモジュール10における除電処理能力を一層精度よく監視でき、除電期間を適切に調整できる。なお、基板処理方法は、ロードモジュール50から基板Sを搬入した際の未処理帯電状態について、導電性を有する部材の劣化を推定する際(つまり(b)の処理内容)に利用してもよい。さらに、基板処理方法は、ロードモジュール50から基板Sを搬入した際の未処理帯電状態について、基板Sの帯電状態の分布を監視する際(つまり(c)の処理内容)に利用してもよい。
【0084】
また、基板処理方法は、ロードモジュール50からロードロック部30に基板Sを搬入した際の未処理帯電状態がそもそも所定以上の場合には、プロセスモジュール10への搬送を止めてもよい。あるいは、基板処理方法は、未処理帯電状態がそもそも所定以上の場合に、プロセスモジュール10への搬送後に除電処理を直ちに実施してもよい。
【0085】
以上の実施形態で説明した本開示の技術的思想および効果について以下に記載する。
【0086】
本開示の第1の態様は、基板処理装置1の基板処理方法であって、プラズマ処理および除電処理を基板Sに施すプロセスモジュール10、11、12から基板Sを搬出して、大気雰囲気と真空雰囲気とに切り替え可能なロードロック部30に当該基板Sを搬送する工程と、ロードロック部30にて基板Sの帯電状態を測定する工程と、基板Sの帯電状態の測定結果を解析して除電処理を最適化する工程と、を有する。
【0087】
上記によれば、基板処理方法は、ロードロック部30において基板Sの帯電状態を安定して測定することが可能となり、この測定結果を用いることで、基板Sの除電処理を最適化させることができる。例えば、基板処理方法は、基板Sの帯電状態に応じて除電処理の時間を調整することで、基板Sの処理全体の時間短縮化を促し、またパーティクルを抑制することが可能となる。なお、除電処理の最適化は、除電期間の調整に限定されず、除電処理で供給する電力の調整を行ってもよい。例えば、帯電状態の絶対値が大きい場合に電力の供給量を増やして除電能力を高める一方で、帯電状態の絶対値が小さい場合に電力の供給量を減らして除電能力を低くすることがあげられる。
【0088】
また、基板Sの帯電状態を測定する工程では、ロードロック部30の内部を真空雰囲気とする。これにより、基板処理方法は、大気雰囲気によって基板Sの帯電状態が変化することを抑制して、基板Sの帯電状態をより精度よく測定できる。
【0089】
また、ロードロック部30は、搬送された基板Sを支持する支持部(バッファ37)を有し、基板Sの帯電状態を測定する工程では、ロードロック部30に設置された帯電測定部40により、支持部に支持された基板Sの表面電位を測定する。これにより、基板処理方法は、基板Sの帯電状態である表面電位を簡単に測定することが可能となる。
【0090】
また、プロセスモジュール10、11、12とロードロック部30との間で基板Sを搬送する搬送装置21を備え、搬送装置21において基板Sに接触する接触子27と、支持部(バッファ37)において基板Sに接触する支持子(支持ピン39)は、それぞれ導電性を有し、除電処理を最適化する工程では、支持部に支持された基板Sの帯電状態と、ロードロック部30の内部で搬送装置21により搬送している基板Sの帯電状態と、の測定結果に基づき、接触子27および支持子の導電性についての劣化を推定する。これにより、基板処理方法は、搬送装置21の接触子27およびロードロック部30(バッファ37)の支持子の導電性についての劣化を安定的に推定することができる。
【0091】
また、接触子27または支持子(支持ピン39)の導電性についての劣化を推定した場合に、除電処理の時間を最適化する。これにより、基板処理方法は、接触子27または支持子が導電性について劣化しても、除電処理を長く行うことで、基板Sの品質を確保して、基板処理装置1のメンテナンスを先延ばしすることが可能となる。
【0092】
また、除電処理を最適化する工程では、先に設定された除電処理の時間で除電処理された基板Sの帯電状態と、目標の帯電状態とを比較し、当該比較に基づき次の除電処理の時間を調整する。これにより、基板処理方法は、除電処理の時間を適切に調整することが可能となる。
【0093】
また、除電処理を最適化する工程では、先に設定された除電期間で除電処理された基板Sの帯電状態と、目標の帯電状態との帯電差を算出し、帯電差に基づき除電処理の時間を設定し直す。これにより、基板処理方法は、除電処理の時間を一層スムーズに調整できる。
【0094】
また、基板Sの帯電状態を測定する工程では、ロードロック部30の内部で搬送している基板Sの帯電状態を継続して測定し、除電処理を最適化する工程では、基板の帯電状態の分布を抽出する。これにより、基板処理方法は、基板S全体の帯電状態の分布を認識して、帯電状態のムラの抑制などを図ることができる。
【0095】
また、プロセスモジュール10、11、12による処理前の基板Sをロードロック部30に搬送する工程と、ロードロック部30にて処理前の基板Sの帯電状態を測定する工程と、をさらに有し、除電処理を最適化する工程では、プロセスモジュール10、11、12で処理された処理後の基板Sの帯電状態と、処理前の基板Sの帯電状態とに基づき、除電処理を最適化する。これにより、基板処理方法は、より精度よく除電処理を最適化できる。
【0096】
また、除電処理を最適化する工程は、ロードロック部30に搬送された処理後の基板Sの帯電状態と、ロードロック部に搬送された処理前の帯電状態との差分を算出して、差分と予め設定された閾値とを比較し、差分が閾値以上の場合に、除電処理の時間を長くする。これにより、基板処理方法は、差分が大きいことに基づき、除電処理の時間を長くして、基板Sの除電不足を抑制できる。
【0097】
また、差分が閾値未満の場合に、除電処理の時間を短くする。これにより、基板処理方法は、差分が小さいことに基づき、除電処理の時間を短くして、基板処理の作業効率を一層高めることができる。
【0098】
また、本開示の第2の態様は、基板処理装置1であって、プラズマ処理および除電処理を基板Sに施すプロセスモジュール10、11、12と、大気雰囲気と真空雰囲気とに切り替え可能なロードロック部30と、プロセスモジュール10、11、12が処理した基板Sを、プロセスモジュール10、11、12からロードロック部30に搬送する真空搬送モジュール20と、ロードロック部30に設けられ、基板Sの帯電状態を測定する帯電測定部40と、帯電測定部40の測定結果を処理する制御部60と、を有し、制御部60は、基板Sの帯電状態の測定結果を解析して除電処理を最適化する。これにより、基板処理装置1は、基板Sの処理における除電処理を最適化させることができる。
【0099】
今回開示された実施形態に係る基板処理方法、および基板処理装置1は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。例えば、基板処理方法および基板処理装置1が処理する基板Sの種類は、FPD用基板に限定されず、円盤形状のウエハなどの種々の部材を対象とし得る。
【0100】
本開示の基板処理装置1は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 基板処理装置
10、11、12 プロセスモジュール
20 真空搬送モジュール
21 搬送装置
27 接触子
30 ロードロック部
37 バッファ
39 支持ピン
40 帯電測定部
60 制御部
S 基板