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特開2023-61729スパッタ成膜装置及びスパッタ成膜方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061729
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】スパッタ成膜装置及びスパッタ成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
C23C14/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171836
(22)【出願日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和男
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 均
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】宇賀神 肇
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA09
4K029BA44
4K029CA06
4K029DC27
4K029DC28
4K029DC34
4K029DC35
4K029DC39
(57)【要約】
【課題】ターゲットを効率的にスパッタする。
【解決手段】基板を載置する載置台を有する処理容器と、前記載置台に対向し、前記処理容器の天井面を構成する第1面を有し、非磁性金属から成る金属窓と、前記金属窓の前記第1面と反対側の前記金属窓の第2面から離間して配置され、前記処理容器内にプラズマを生成する誘導結合アンテナと、前記誘導結合アンテナに接続された高周波電源と、前記金属窓に接続された直流電源、直流パルス電源又は交流電源のいずれかと、前記処理容器内に前記プラズマの生成用の処理ガスを供給するガス供給部と、を有するスパッタ成膜装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置する載置台を有する処理容器と、
前記載置台に対向し、前記処理容器の天井面を構成する第1面を有し、非磁性金属から成る金属窓と、
前記金属窓の前記第1面と反対側の前記金属窓の第2面から離間して配置され、前記処理容器内にプラズマを生成する誘導結合アンテナと、
前記誘導結合アンテナに接続された高周波電源と、
前記金属窓に接続された直流電源、直流パルス電源又は交流電源のいずれかと、
前記処理容器内に前記プラズマの生成用の処理ガスを供給するガス供給部と、
を有するスパッタ成膜装置。
【請求項2】
前記金属窓は、前記誘導結合アンテナによる誘導電界を媒介し、前記処理容器内に前記プラズマを形成する機能と、前記基板にスパッタ処理を行うためのターゲット材としての機能とを有する、
請求項1に記載のスパッタ成膜装置。
【請求項3】
基板を載置する載置台を有する処理容器と、
前記載置台に対向し、前記処理容器の天井面を構成する第1面を有し、非磁性金属から成る金属窓と、
前記金属窓の前記第1面と反対側の前記金属窓の第2面から離間して配置され、前記処理容器内にプラズマを生成する誘導結合アンテナと、
前記第1面に設けられたターゲット材と、
前記誘導結合アンテナに接続された高周波電源と、
前記金属窓に接続された直流電源、直流パルス電源又は交流電源のいずれかと、
前記処理容器内に前記プラズマの生成用の処理ガスを供給するガス供給部と、
を有するスパッタ成膜装置。
【請求項4】
前記金属窓は、互いに電気的に絶縁された複数の分割窓により構成される、
請求項1~3のいずれか一項に記載のスパッタ成膜装置。
【請求項5】
前記誘導結合アンテナには、アンテナセグメントが複数配置される、
請求項1~4のいずれか一項に記載のスパッタ成膜装置。
【請求項6】
前記誘導結合アンテナには、環状矩形コイルアンテナである複数の前記アンテナセグメントが同心状に配置される、
請求項5に記載のスパッタ成膜装置。
【請求項7】
前記誘導結合アンテナには、縦巻矩形コイルアンテナである複数の前記アンテナセグメントが格子状又は直線状に配置され、かつ、複数の前記アンテナセグメントを構成する前記縦巻矩形コイルアンテナの底部のアンテナ線が、互いに平行となるように配置される、
請求項5に記載のスパッタ成膜装置。
【請求項8】
前記非磁性金属は、アルミニウムである、
請求項1~7のいずれか一項に記載のスパッタ成膜装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のスパッタ成膜装置において実行するスパッタ成膜方法であって、
載置台に基板を載置する工程と、
ガス供給部から処理容器内に処理ガスを供給する工程と、
高周波電源から誘導結合アンテナに高周波電力を供給し、前記処理容器内にプラズマを生成する工程と、
金属窓に接続された直流電源、直流パルス電源又は交流電源のいずれかから直流電圧、直流パルス電圧又は交流電圧を印加し、前記プラズマから前記金属窓にイオンを引き込む工程と、
前記イオンによりスパッタされたスパッタ粒子を前記基板上に堆積する工程と、
を有するスパッタ成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スパッタ成膜装置及びスパッタ成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1のマグネトロンスパッタ成膜装置は、ターゲット材に加えられた直流電圧による直流電界と、ターゲット材の背面にある磁石からの磁界とにより高密度のプラズマを形成してターゲット材をスパッタし、成膜を行う。
【0003】
例えば、特許文献2のスパッタ成膜装置は、誘導結合プラズマを用いてターゲット材をスパッタし、成膜を行う。このスパッタ成膜装置は、誘電体板に対応させて設けた誘導コイルを有し、また、ターゲット材の背面に磁石を有し、誘導コイルに高周波電力が導入された際に、誘電体板を介して処理空間に誘導電界を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/116430号公報
【特許文献2】特開2012-209483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、ターゲット材を効率的にスパッタすることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、基板を載置する載置台を有する処理容器と、前記載置台に対向し、前記処理容器の天井面を構成する第1面を有し、非磁性金属から成る金属窓と、前記金属窓の前記第1面と反対側の前記金属窓の第2面から離間して配置され、前記処理容器内にプラズマを生成する誘導結合アンテナと、前記誘導結合アンテナに接続された高周波電源と、前記金属窓に接続された直流電源、直流パルス電源又は交流電源のいずれかと、前記処理容器内に前記プラズマの生成用の処理ガスを供給するガス供給部と、を有するスパッタ成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一の側面によれば、ターゲット材を効率的にスパッタすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るスパッタ成膜装置を示す断面図。
図2】金属窓を用いた誘導結合プラズマの生成を説明するための図。
図3】実施形態に係る金属窓と誘導結合アンテナを平面視した図。
図4】実施形態に係る金属窓と誘導結合アンテナを平面視した図。
図5】実施形態に係る縦巻矩形コイルアンテナの一例を示した図。
図6】実施形態に係るスパッタ成膜におけるソースパワー依存性の実験結果を示す図。
図7】実施形態に係るターゲット材のスパッタを説明するための図。
図8】実施形態に係るスパッタ成膜における直流電圧依存性とプラズマ電子密度の実験結果を示す図。
図9】実施形態に係るスパッタ成膜装置による平行磁場とスパッタを説明するための図。
図10】実施形態に係るスパッタ成膜処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
[スパッタ成膜装置]
最初に、一実施形態に係るスパッタ成膜装置10について説明する。図1は、実施形態に係るスパッタ成膜装置10を示す断面図である。図1に示すスパッタ成膜装置10は、矩形基板、例えば、FPD用ガラス基板(以下、基板Gという。)にプラズマを用いて酸化アルミニウム(AlO)膜や酸化物半導体(IGZO)等の成膜を行うときに用いることができる。ここで、FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。ただし、基板はFPD用ガラス基板に限るものではない。
【0011】
スパッタ成膜装置10は、導電性材料、例えば、内壁面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる角筒形状の気密な本体容器1を有する。この本体容器1は分解可能に組み立てられており、接地線1aにより電気的に接地されている。
【0012】
本体容器1は、本体容器1と絶縁されて形成された矩形状の金属窓2により上下にアンテナ室3および処理容器4に区画されている。金属窓2は、処理容器4の天壁を構成する。金属窓2は、例えば、非磁性体で導電性の金属、例えばアルミニウムまたはアルミニウムを含む合金で構成される。
【0013】
アンテナ室3の側壁3aと処理容器4の側壁4aとの間には、本体容器1の内側に突出する支持棚5が設けられている。支持棚5は導電性材料、望ましくはアルミニウム等の金属で構成される。
【0014】
金属窓2は、絶縁部材7を介して互いに電気的に絶縁された複数の分割窓2a~2dにより構成されている。分割窓2a~2dは、絶縁部材7を介して支持棚5に支持される。金属窓2を複数本のサスペンダ(図示せず)により本体容器1の天井から吊り下げる構造である。なお、図1は、金属窓2の分割形態を模式的に示したものであり、実際の分割形態を示したものではない。金属窓2の種々の分割形態については後述する。
【0015】
支持棚5には複数のガス供給孔21aが形成されている。ガス供給部20はガス供給管21を介して複数のガス供給孔21aに繋がる。ガス供給部20は、プラズマ生成用の原料ガスを含む処理ガスを供給する。処理ガスは、ガス供給管21を介して複数のガス供給孔21aから処理容器4内に導入される。なお、金属窓2の内部にガス空間(図示せず)を設けてガス供給管21に接続し、ガスを供給するようにしてもよい。
【0016】
金属窓2の上のアンテナ室3内には、金属窓2に面し、かつ周回して環状をなすように配置された誘導結合アンテナ13を有するアンテナユニット40を有している。誘導結合アンテナ13は、後述するように、導電性材料、例えば銅などからなり、絶縁部材からなるスペーサ(図示せず)により金属窓2から離間して配置されている。
【0017】
アンテナユニット40の誘導結合アンテナ13には、給電線16、整合器17を介して第1の高周波電源18が接続されている。そして、プラズマ処理(スパッタ成膜処理)の間、誘導結合アンテナ13には、第1の高周波電源18から延びる給電線16を介して、例えば13.56MHzの高周波電力(以下、ソースパワーともいう。)が供給される。そして、誘導結合アンテナ13が形成する誘導電界により金属窓2の分割窓2a~2dにループ電流を誘起する。これにより、金属窓2の分割窓2a~2dに誘起されるループ電流を介して、処理容器4内に誘導電界が形成される。この誘導電界により、処理容器4内の金属窓2直下のプラズマ生成空間Sにおいて、ガス供給孔21aから供給された処理ガスがプラズマ化され、誘導結合プラズマが生成される。
【0018】
金属窓2は第1面と第2面とを有する。金属窓2の下面22aを第1面とし、第1面の反対面である金属窓2の上面22bを第2面とする。第1面は、処理容器4の天井面を構成する。第2面側には誘導結合アンテナ13が金属窓2から離間して配置され、処理容器4内にプラズマを生成する。金属窓2の下面22aにはターゲット材Tがインジウムのロウ付けにより接合、若しくは螺子留めなどにより金属窓2と電気的導通を維持しながら固定されている。ターゲット材Tは消耗品であるため、ある閾値以下の厚さまで消耗したら交換し、新たなターゲット材Tが金属窓2の下面22aにロウ付けにより接合、若しくは螺子留めなどにより固定される。ターゲット材Tは成膜する膜に応じた材料から構成されている。AlO膜及びAlN膜を成膜する場合、ターゲット材Tはアルミニウムにより構成されてもよい。SiO膜及びSiN膜を成膜する場合、ターゲット材Tはシリコンにより構成されてもよい。IGZO膜を成膜する場合、ターゲット材Tはインジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、酸素(O)により構成されてもよい。
【0019】
処理容器4内の底部には、第1面と対向する載置台23が絶縁部材24を介して固定されている。載置台23は、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムで構成され、載置台23の載置面に基板Gを載置する。載置された基板Gは、載置面に設けられた静電チャック(図示せず)により吸着保持される。
【0020】
載置台23の上部周縁部には絶縁性のシールドリング25aが設けられ、載置台23の周面には絶縁リング25bが設けられている。載置台23には基板Gの搬入出の際に用いられるリフターピン26が、本体容器1の底壁、絶縁部材24を介して挿通されている。リフターピン26は、本体容器1外に設けられた昇降機構(図示せず)により昇降駆動して基板Gの搬入出の際に基板Gの受け渡しを行うようになっている。
【0021】
さらに、載置台23内には、基板Gの温度を制御するため、ヒータ等の加熱手段や冷媒流路等からなる温度制御機構と、温度センサーとが設けられている(いずれも図示せず)。これらの機構や部材に対する配管や配線は、いずれも本体容器1の底面および絶縁部材24に設けられた開口部1bを通して本体容器1外に導出される。
【0022】
処理容器4の側壁4aには、基板Gを搬入出するための搬入出口27aおよびそれを開閉するゲートバルブ27が設けられている。また、処理容器4の底部には、排気管31を介して真空ポンプ等を含む排気装置30が接続される。この排気装置30により、処理容器4内が排気され、プラズマ処理中、処理容器4内が所定の真空雰囲気(例えば10mTorr(1.33Pa))に設定、維持される。
【0023】
載置台23に載置された基板Gの裏面側には冷却空間として機能する微細な間隙(図示せず)が形成されており、一定の圧力の熱伝達用ガスとしてHeガスを供給するためのHeガス流路32が設けられている。このように基板Gの裏面側に熱伝達用ガスを供給することにより、真空下において基板Gのスパッタ成膜処理による温度上昇や温度変化を抑制することができるようになっている。
【0024】
スパッタ成膜装置10は、さらに制御部100を有している。制御部100は、コンピュータからなり、プラズマ処理装置の各構成部を制御するCPUと、入力装置と、出力装置と、表示装置と、記憶装置とを有している。記憶装置は、プラズマ処理装置で実行される各種処理のパラメータや、スパッタ成膜装置10で実行される処理を制御するためのプログラム、すなわち処理レシピが記憶された記憶媒体を有している。CPUは、記憶媒体に記憶されている所定の処理レシピを呼び出し、その処理レシピに基づいてプラズマ処理装置に、所定の処理動作を実行させる。
【0025】
[金属窓]
次に、金属窓2について詳細に説明する。金属窓2には直流パルス電源62a、62bが接続され、直流パルス電源62a、62b(総称して直流パルス電源62ともいう。)は所定のDuty比の矩形波(パルス波)の直流電圧(以下、直流パルス電圧ともいう。)を金属窓2に印加する。直流パルス電圧の周波数は5kHz~150kHzであってもよい。直流パルス電圧は、矩形波を構成する2値を持ち、2値は0又は負の直流電圧に制御される。金属窓2には、直流パルス電源62に替えて直流電源又は交流電源が接続さてもよい。金属窓2に直流電源が接続されている場合、負の直流電圧が金属窓2に印加される。金属窓2に交流電源が接続されている場合、交流電源は所定の周波数(例えば、50kHz)の交流電圧を金属窓2に印加する。以上から金属窓2には直流電源、直流パルス電源又は交流電源のいずれかが電気的に接続されるため、金属窓2は導電性物質から構成される。また、金属窓2は非磁性金属から構成されている。非磁性金属は、例えばアルミニウムである。以下の説明では、金属窓2に印加される直流電圧(直流パルス電圧)を上げる(大きくする)とは、直流電圧(直流パルス電圧)の絶対値を上げる(大きくする)ことをいう。
【0026】
金属窓2と直流パルス電源62a、62bのそれぞれの間にはローパスフィルタ(LPF)61が設けられ、第1の高周波電源18からの高周波電力が直流パルス電源62a、62bに伝搬しないようにしている。係る構造により誘導結合アンテナ13と金属窓2を使用して処理容器4内に高密度プラズマを生成し、直流パルス電圧を金属窓2に印加することで高密度プラズマ中のイオンを金属窓2に引き込み、反応性スパッタを可能にする。
【0027】
図2は、金属窓2を用いた誘導結合プラズマの生成を説明するための図である。図2に示すように、誘導結合アンテナ13に流れる高周波電流IRFより、金属窓2の上面に誘導電流が発生する。誘導電流は表皮効果により金属窓2の表面部分にしか流れないが、金属窓2は支持棚5および本体容器1から絶縁されている。このため、誘導結合アンテナ13の平面形状が直線状であれば、金属窓2の上面に流れた誘導電流は、金属窓2の側面に流れ、次いで、側面に流れた誘導電流は、金属窓2の下面に流れ、さらに、金属窓2の側面を介して、再度金属窓2の上面に戻り、渦電流IEDを生成する。このようにして、金属窓2には、上面から下面にループする渦電流IEDが生成される。このループする渦電流IEDのうち、金属窓2の下面を流れた電流が処理容器4内に誘導電界Iを生成し、この誘導電界Iにより処理ガスのプラズマが生成される。
【0028】
一方、誘導結合アンテナ13が金属窓2に対応する面内で周方向に沿って周回するように設けられている場合には、金属窓2として無垢の一枚板を用いると、金属窓2の下面に渦電流は流れずプラズマは生成されない。つまり、誘導結合アンテナ13によって金属窓2の上面に生成される渦電流IEDは、金属窓2の上面をループするのみとなって、渦電流IEDは金属窓2の下面には流れない。そこで、金属窓2を、以下のような種々の構成にして金属窓2の下面に渦電流が流れて、所望の誘導電界が生成されるようにする。
【0029】
[金属窓の構成]
第1の態様では、金属窓2を複数の分割領域に分割するとともに互いに絶縁する。これにより、渦電流IEDが金属窓2の下面に流れるようになる。すなわち、金属窓2を互いに絶縁した状態で複数に分割することにより、分割された金属窓2(分割窓)の上面には側面に達する誘導電流が流れ、側面から下面に流れ、再度側面を流れて上面に戻るループ状の渦電流IEDを生成する。このため、金属窓2を複数の分割窓に分割する。以下に金属窓2のいくつかの分割例及び誘導結合アンテナ13の配置例について説明する。
【0030】
図3は、実施形態に係る金属窓2と誘導結合アンテナ13を平面視した図である。金属窓2は、基板Gに対応して長辺と短辺を有する矩形状をなしている。図3(a)では、誘導結合アンテナ13には、それぞれ環状矩形コイルアンテナから成る複数のアンテナセグメント131、132、133が金属窓2に面して周回するように設けられている。複数のアンテナセグメント131、132、133をそれぞれ構成する環状矩形コイルアンテナは、1本のアンテナ線(図示しない)を螺旋状に巻回して枠状に形成されてもよく、2本または4本のアンテナ線を互いに対称的に、螺旋状に巻回して枠状に形成されてもよい。これにより、本例では、金属窓2の下面22aに沿って均一に誘導電界を形成するために、矩形状の金属窓2を、金属窓2の各角部に向かって概ね放射状に分割する。これにより、金属窓2は4つの分割窓2a~2dに分割される。4つの分割窓2a~2dは、長辺側で台形であり、短辺側で三角形である。これらの台形及び三角形は、長辺を底辺とした台形の高さと、短辺を底辺とした三角形の高さが同じとなるように構成されている。分割窓2a~2dは、絶縁部材7を介して互いに絶縁されている。
【0031】
このように誘導結合アンテナ13の一例としては、環状矩形コイルアンテナから成るアンテナセグメントが複数配置される。
【0032】
図3(b)では、図1に示すように、直流パルス電源62a、62bが2つ設けられている。直流パルス電源62aは、分割窓2a、2bに接続され、分割窓2a、2bに直流パルス電圧を供給する。直流パルス電源62bは、分割窓2c、2dに接続され、分割窓2c、2dに直流パルス電圧を供給する。なお、図3(b)及び(c)ではローパスフィルタ61の図示を省略している。
【0033】
図3(c)では、直流パルス電源62は、分割窓2a~2dに接続され、分割窓2a~2dに直流パルス電圧を供給する。例えば、外側のプラズマが弱い場合、分割窓2c、2dに印加する直流電圧のDutyを、分割窓2a、2bに印加する直流電圧のDutyよりも大きく(即ち、パルス電圧の2値のうち、負の直流電圧が印加される時間を長く)することで成膜の面内分布の均一性を図ることができる。このため、分割窓の面積に応じてプラズマ中のイオンの引き込みの面内分布を変えることができる。この場合、直流パルス電源62を1つ設ければよく、直流パルス電源の個数を減らすことができる。
【0034】
図4は実施形態に係る金属窓2と誘導結合アンテナ13を平面視した図であり、図3の他の例である。本例では、金属窓2は、矩形状に6つの分割窓2e~2jに分割されている。分割窓2e~2jは、ローパスフィルタ61を介して直流パルス電源62c、62d、62eのいずれかに接続されている。直流パルス電源62cは、分割窓2e、2fに接続され、分割窓2e、2fに直流パルス電圧を供給する。直流パルス電源62dは、分割窓2g、2hに接続され、分割窓2g、2hに直流パルス電圧を供給する。直流パルス電源62eは、分割窓2i、2jに接続され、分割窓2i、2jに直流パルス電圧を供給する。
【0035】
誘導結合アンテナ13は、図4に示すように平行アンテナのみで構成されてもよい。平行アンテナは、プラズマ生成に寄与する誘導電界を生成し、かつ金属窓2に面して基板Gに対向するように形成された矩形状領域を有し、これら矩形状領域を直線状又は格子状のプラズマ制御領域に分ける。そして、分けた領域のそれぞれに矩形状領域の一部を構成するアンテナセグメント134を配置し、複数のアンテナセグメント134においてアンテナ線が全て平行となるように、多分割平行アンテナとして構成されている。
【0036】
図4のアンテナセグメント134は、図5に示すように、導電性材料、例えば銅などからなるアンテナ線135を基板G(金属窓2)に交差する方向、例えば直交する方向、すなわち垂直方向に渦巻き状に巻回して構成された縦巻矩形コイルアンテナから成る。各縦巻矩形コイルアンテナには、第1の高周波電源18から高周波電力が供給される。
【0037】
図4では、2つの分割窓2e、2fを跨いだアンテナセグメント134が、分割窓2e、2fの長手方向に5つ配置されている。同様に、2つの分割窓2g、2hを跨いだ5つのアンテナセグメント134及び2つの分割窓2i、2jを跨いだ5つのアンテナセグメント134が配置されている。
【0038】
縦巻矩形コイルアンテナとしては、アンテナセグメント134を図4に示す各分割窓の長手方向に直線状に配置したものに限らず、格子状に配置してもよい。例えば、アンテナセグメント134を縦横2つずつの4分割タイプ、縦横3つずつの9分割タイプ、縦横5つずつの25分割タイプ、またはそれ以上に分割し、各分割窓に縦巻矩形コイルアンテナを格子状に配置してもよい。
【0039】
このように縦巻矩形コイルアンテナからなるアンテナセグメント134を直線状又は格子状に配置して、アンテナセグメント134の誘導電界(高周波電流)の向きが全て同じとする。これにより、環状矩形コイルアンテナを並べた場合のような誘導電界が打ち消し合う領域は存在しない。このため、環状矩形コイルアンテナを並べた場合に比べて効率が良いとともに、プラズマの均一性を高めることができる。
【0040】
なお、金属窓2の誘導結合アンテナ13に対応する領域において、金属窓2の分割数と、誘導結合アンテナ13の分割数(アンテナセグメントの数)との関係は任意である。ただし、直流パルス電源としてバイポーラ直流パルス電源を使用する場合には、金属窓の分割数は偶数である必要がある。
【0041】
以上に説明したスパッタ成膜装置10により、金属窓2は誘導結合アンテナ13による誘導電界を媒介し、処理容器4内にプラズマを形成するように機能する。加えて金属窓2は、基板Gにスパッタ成膜処理を行うためのターゲット材Tにイオンを引き込むように機能する。
【0042】
係る構造により誘導結合アンテナ13と金属窓2を使用して処理容器4内に高密度プラズマを生成し、直流パルス電圧を金属窓2に印加することでイオンを引き込み、高密度プラズマによる反応性スパッタを可能にする。スパッタによりターゲット材Tから放出されたスパッタ粒子を基板Gに堆積させることで、AlO膜、AlN膜、SiO膜、SiN膜、TiN膜、IGZO膜等の成膜が可能となる。
【0043】
プラズマは、誘導結合アンテナ13にソースパワーを供給して形成された電磁界により形成される。ターゲットのスパッタは、ターゲット材Tを取り付けた金属窓2に直流パルス電圧を印加してイオンを引き込むことによりを行う。よって、本開示のスパッタ成膜装置10によれば、プラズマの形成とイオンの引き込みとを独立して制御可能となる。また、誘導結合アンテナ13により形成される磁界と直流電界とによりプラズマの高密度化を行うが、誘導結合アンテナ13より形成される磁界は交番磁界であるため、静磁界と直流電界により発生するようなプラズマの偏りは起きず、ターゲット材が均一にスパッタされるという利点がある。
【0044】
なお、金属窓2自体をターゲット材としてもよい。また、ターゲット材に印加する直流電圧は、本開示では直流パルス電圧を例に挙げて説明するが、これに限られず、連続した直流電圧であってもよいし、交流電圧であってもよい。誘導結合アンテナ13は、縦巻矩形コイルアンテナから成る複数のアンテナセグメントを、直線状又は格子状に並べた構成であってもよい。誘導結合アンテナ13は、環状矩形コイルアンテナを同心状に複数並べた構成、或いは縦巻矩形コイルアンテナと環状矩形コイルアンテナを組み合わせた構成であってもよい。
【0045】
以下、本開示のスパッタ成膜装置10による4つの効果について順に説明する。4つの効果とは、高密度プラズマによる高成膜レート(効果1)、ソースパワーと直流電圧の独立制御(効果2)、欠陥が少ないIGZO膜等の成膜(効果3)、平行磁場によるスパッタ効果(効果4)である。金属窓2及び誘導結合アンテナ13については、図3の構成により評価を行った。
【0046】
[効果1:高密度プラズマによる高成膜レート]
金属窓2に直流パルス電圧を印加し直流電界を発生することで、誘導結合アンテナ13による交番磁界と直流電界とで高密度化されたプラズマにより高い成膜レートを得ることができる。図1のスパッタ処理装置10を使用して以下のプロセス条件に基づき実験を行った。
【0047】
<プロセス条件>
金属窓から載置台までのギャップ 50mm
処理容器内圧力 5mT(0.67Pa)
ガス アルゴン(Ar)ガス、酸素(O)ガス 50/50sccm
ターゲット材 アルミニウム
直流パルス電圧 -500V 50kHz Duty=50%
ソースパワー 可変
上記条件でターゲット材をアルゴン及び酸素の混合ガスによるプラズマでスパッタし、透明なAlO膜を成膜した結果を図6に示す。図6は、実施形態に係るスパッタ成膜におけるソースパワー依存性の実験結果を示す図である。
【0048】
図6の横軸は、第1の高周波電源18からのソースパワーを示し、縦軸(左)はAlO膜の成膜レート(DR)、縦軸(右)はAlO膜の屈折率(RI)を示す。これによれば、誘導結合アンテナ13にソースパワーを供給し金属窓2に直流パルス電圧を印加することでプラズマを高密度化でき、これにより成膜レートを高くすることができた。
【0049】
また、ソースパワーを上げると、より高密度プラズマを生成でき、AlO膜の成膜レート(DR)及び屈折率(RI)がさらに改善できた。また、基板G上の段差部に形成されたAlO膜の底部の膜厚に対する側部の膜厚の割合は、ソースパワーが1000W、3000W、5000Wのときにそれぞれ1.00、1.00、0.95であった。つまり、ソースパワーの大きさに関わらず、AlO膜のカバレッジは良好であった。以上から、本開示のスパッタ成膜装置10によれば、成膜レート、屈折率を改善でき、カバレッジの良い緻密なAlO膜をスパッタにより成膜できることがわかった。
【0050】
カバレッジの良い膜をスパッタにより成膜できる理由について、図7を参照して説明する。図7は、実施形態に係るスパッタ成膜装置10におけるターゲット材Tのスパッタを説明するための図である。金属窓2に負の直流電圧を印加すると、アルゴンガスなどから形成されたプラズマ中のイオン、例えばアルゴンイオン(Ar)が金属窓2に引き込まれて、ターゲット材Tに衝突し、アルミニウムから形成されたターゲット材Tからスパッタ粒子としてAlイオン(Al)が放出される。
【0051】
また、ソースパワーの供給により生成された高密度プラズマによって膜の酸化や窒化が促進され、緻密なAlO膜が成膜できる。ソースパワーが供給される誘導結合アンテナ13では、図3図5に示すアンテナセグメント131~134の形状により平行磁場Bが生じる。これにより、ローレンツ力(F=qv×B)を受けて、Alイオン(Al)が高角度に放出される。これにより、カバレッジが良いAlO膜をスパッタにより成膜できる。
【0052】
[効果2:ソースパワーと直流電圧の独立制御]
スパッタ成膜装置10では、金属窓2に直流パルス電圧を印加する制御と、誘導結合アンテナ13にプラズマソースを供給する制御とを独立して行うことができる。このため、欠陥の少ない膜を成膜できる。図1のスパッタ処理装置10を使用して以下のプロセス条件に基づき実験を行った。
【0053】
<プロセス条件>
金属窓から載置台までのギャップ 50mm
処理容器内圧力 5mT(0.67Pa)
ガス アルゴン(Ar)ガス、酸素(O)ガス 50/50sccm
ターゲット材 アルミニウム
ソースパワー 3kW
直流パルス電圧 可変 50kHz Duty=50%
上記条件でターゲット材Tをアルゴン及び酸素の混合ガスによるプラズマでスパッタし、AlO膜を成膜した結果を図8に示す。図8は、実施形態に係るスパッタ成膜における直流電圧依存性とプラズマ電子密度の実験結果を示す図である。
【0054】
図8(a)の横軸は、直流パルス電圧(DC)を示し、縦軸(左)はAlO膜の成膜レート(DR)、縦軸(右)はAlO膜の屈折率(RI)を示す。これによれば、金属窓2に印加する直流パルス電圧を大きくすると、プラズマ中のイオン、例えばアルゴンイオンがターゲット材Tに衝突する確率を高め、スパッタ力を高めることができたため、成膜レート(DR)を高めることができた。一方、直流パルス電圧を大きくしても屈折率(RI)を維持できた。
【0055】
図8(b)の横軸は、ソースパワーを示し、縦軸はプラズマ電子密度(Ne密度[個/cm])を示す。これによれば、直流パルス電圧が0Vの場合の線Aと、直流パルス電圧が-300Vの場合の線Bとを比較すると、プラズマ電子密度Neは直流パルス電圧の値によってほぼ影響を受けなかった。つまり、プラズマ電子密度Neはソースパワーに依存し、直流パルス電圧に依存しないことがわかった。
【0056】
以上から、金属窓2に直流パルス電圧を印加する制御と、誘導結合アンテナ13にプラズマソースを印加する制御とを独立して行うことで、高密度プラズマを生成しながら、欠陥の少ない絶縁膜やIGZO膜を成膜できることが証明された。
【0057】
[効果3:欠陥が少ない成膜]
例えば、金属窓2に印加する直流電圧を大きくすると、ターゲット材Tにプラズマ中のイオンを強く引き込むことができる。このため、ターゲット材Tから放出されるスパッタ粒子量を増やすことができ、成膜レートを上げることができる。一方、金属窓2に印加する直流電圧を大きくすると、放出されたスパッタ粒子のエネルギーも高くなり、膜に強く打ち込まれるため、膜の欠陥の原因になることがある。本開示のスパッタ成膜装置10では、直流電圧とソースパワーとを独立して制御できる。このため、例えば、欠陥の少ないIGZO膜を成膜するために、金属窓2に印加する直流電圧を下げ、ソースパワーを例えば5000W程度まで上げることができる。これにより、高密度プラズマを生成して成膜レートを高めながら、プラズマ中のイオンの引き込みを弱くするように直流電圧を制御することで欠陥の少ないIGZO膜を成膜できる。
【0058】
[効果4:平行磁場によるスパッタ効果]
図9は、実施形態に係るスパッタ成膜装置10の金属窓2の下方に形成される平行磁場とスパッタを説明するための図である。図9(a)は、実施形態に係るスパッタ成膜装置10によるスパッタ時の金属窓2(ターゲット材T)の下方の平行磁場B1を示し、図9(b)は、参考例にかかるマグネトロンスパッタ装置によるスパッタ時の金属窓2(ターゲット材T)の下方の磁場B2を示す。
【0059】
図9(b)に示す参考例のマグネトロンスパッタ成膜装置では、ターゲット材Tに加えられた直流電圧による直流電界Eと、ターゲット材Tの背面にある磁石91により形成される磁場B2とにより高密度プラズマを形成してターゲット材Tをスパッタし、成膜を行う。係るスパッタ成膜では、磁場B2によりプラズマ中の電子を囲い込むことで高密度のプラズマを生成し、成膜レート(スパッタレート)を高める。しかし、N極及びS極の磁石91間の磁場B2によりターゲット材Tのスパッタ領域が偏り、磁石91間のターゲット材Tが環状に削れる。これにより、磁石91間のターゲット材Tの消費が磁石91下のターゲット材Tの消費よりも高くなる。ターゲット材Tの不均一な使用により交換時期が早まり、ターゲット材Tの利用効率が悪い。また、磁石91下のターゲット材Tが削れない部分は、反応副生成物やその他の物質が堆積しやすく、パーティクルの発生源になることがある。
【0060】
これに対して、本開示のスパッタ成膜装置10では、誘導結合アンテナ13の複数のアンテナセグメントが使用され、金属窓2に面したアンテナ線が金属窓2に対して平行に環状を成すように配置されるか、又は金属窓2に面したアンテナ線の全てが平行になるように配置される。
【0061】
よって、図9(a)に示すように、ターゲット材Tの下方にて水平方向に幅広く平行磁場B1が形成される。したがって、スパッタ成膜装置10では、図9(b)に示す参考例のように磁場が局所的に強くなる箇所がない。このため、金属窓2へ印加された直流電圧による直流電界Eと、ターゲット材Tの下方にて広範に形成された平行磁場B1とによりターゲット材Tが均一に削れ、均一な成膜が可能となり、カバレッジの良い膜を成膜できる。ターゲット材Tが均一に削れるため、ターゲット材Tの利用効率が高く、ターゲット材Tの寿命を長くできる。
【0062】
[スパッタ成膜方法]
最後に、本開示のスパッタ成膜装置10において実行するスパッタ成膜方法について、図10を参照して説明する。図10は、実施形態に係るスパッタ成膜処理を示すフローチャートである。スパッタ成膜処理は制御部100により制御され、スパッタ成膜装置10により実行される。
【0063】
本処理が開始されると、ステップS1において、制御部100は、ゲートバルブ27が開き、搬入出口27aから基板Gを搬入し、載置台23に載置する。これにより、基板Gの準備が完了する。
【0064】
次に、ステップS3において、制御部100は、ガス供給部20から処理容器4内に処理ガスを供給する。次に、ステップS5において、制御部100は、第1の高周波電源18から誘導結合アンテナ13に高周波電力を供給し、処理容器4内にプラズマを生成する。
【0065】
次に、ステップS7において、制御部100は、直流パルス電源62から金属窓2に直流パルス電圧を印加し、金属窓2側にイオンを引き込む。次に、ステップS9において、ターゲット材Tがイオンによりスパッタされ、ターゲット材Tから放出されたスパッタ粒子が基板G上に堆積される。これにより、基板上にAlO膜等の所望膜が成膜される。
【0066】
以上のスパッタ成膜方法によれば、本開示のスパッタ成膜装置10を用いて高密度プラズマを生成し、反応性スパッタによりAlO膜等の所望膜を成膜できる。また、第1の高周波電源18から誘導結合アンテナ13に供給するソースパワーと、直流パルス電源62から金属窓2に印加する直流パルス電圧とを独立して制御することで、高移動度及び高信頼性を有するIGZO膜等の所望膜を成膜できる。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態のスパッタ成膜装置及びスパッタ成膜方法によれば、金属窓に印加する直流パルス電圧により高密度プラズマを形成し、ターゲット材Tを効率的にスパッタし、成膜レートを高めることができる。
【0068】
今回開示された実施形態に係るスパッタ成膜装置及びスパッタ成膜方法は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0069】
10 スパッタ成膜装置
1 本体容器
2 金属窓
2a、2b、2c、2d 分割窓
3 アンテナ室
4 処理容器
13 誘導結合アンテナ
18 第1の高周波電源
20 ガス供給部
22a 金属窓の下面
22b 金属窓の上面
23 載置台
62 直流パルス電源
T ターゲット材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10