(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061894
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】光学式位置測定機構
(51)【国際特許分類】
G01D 5/347 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
G01D5/347 110D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022152115
(22)【出願日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】10 2021 211 814.3
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ケルベラー
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA10
2F103CA04
2F103DA12
2F103EA03
2F103EB01
2F103EB11
2F103EC16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】異なる平面においても2つの測定方向に沿って互いに対して移動可能であり、かつ互いに対して交差して配置されている少なくとも2つのスケールの相対位置を捕捉するための光学式位置測定機構に関する。
【解決手段】両方のスケールは少なくとも1つの測定目盛を有し、スケールの長手延在方向は、第1または第2の測定方向に対して平行に方向づけられ、第1のスケールでは照明光線束の部分光線束への分割が行われ、部分光線束は第2のスケールにぶつかって第1のスケールの方向に後方反射する。部分光線束が第1のスケールに衝突し再統合され、信号光線束が検出ユニットの方向に伝播し、第1または第2の測定方向に沿ったスケールの相対移動に関する走査信号が生成可能である。スケールの測定目盛が2次元の十字格子として形成されており、邪魔な比較的高次の回折次数が十字格子において抑制されるようなフィルタ作用をこの十字格子は保持する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる平面においても2つの測定方向に沿って互いに対して移動可能であり、かつ互いに対して交差して配置されている少なくとも2つのスケールの相対位置を捕捉するための光学式位置測定機構であって、
- 前記両方のスケールがそれぞれ、少なくとも1つの測定方向に沿って規則的に配置された異なる光学特性をもつ格子領域を備える少なくとも1つの測定目盛を有し、前記スケールの長手延在方向がそれぞれ、第1または第2の測定方向に対して平行に方向づけられており、
- 前記第1のスケールでは、光源から放出された照明光線束の、少なくとも2つの部分光線束への分割が行われ、
- 前記部分光線束がその後、前記第2のスケールにぶつかって、前記第1のスケールの方向に後方反射し、
- 前記後方反射された部分光線束が改めて前記第1のスケールに衝突し、そこで再統合され、これによりその後、結果として生じる少なくとも1つの信号光線束が検出ユニットの方向に伝播し、前記検出ユニットを介し、前記第1または第2の測定方向に沿った前記スケールの相対移動に関する1つまたは複数の位置依存の走査信号が生成可能である光学式位置測定機構において、
少なくとも1つのスケール(30、40;130.1、130.2、140.1、140.2)の前記測定目盛(G1、G2、G3;31、41;1131.1、1131.2、1141.1、1141.2)が2次元の十字格子(131.1;231.1、331.1;431.1;531.1;631.1)として形成されており、邪魔な比較的高次の回折次数が前記十字格子(131.1;231.1;331.1;431.1;531.1;631.1)において抑制されるようなフィルタ作用を前記十字格子が保持することを特徴とする光学式位置測定機構。
【請求項2】
前記十字格子(131.1;231.1;331.1;431.1;531.1;631.1)が、市松模様状に配置された異なる光学特性をもつ第1および第2の広範囲な測定目盛領域(M11、M12)を有し、前記第1および第2の広範囲な測定目盛領域(M11、M12)が、前記十字格子(131.1;231.1;331.1;431.1;531.1;631.1)の長手延在方向(RL1)に沿って第1の領域周期性(PB1)で規則的に、および長手延在方向(RL1)に対して直交に方向づけられている横延在方向(RQ1)に沿って第2の領域周期性(PB2)で規則的に、市松模様形に配置されており、前記第1および第2の広範囲な測定目盛領域(M11、M12)に、1次元または2次元の規則的なライン格子が重なっていることを特徴とする請求項1に記載の光学式位置測定機構。
【請求項3】
前記ライン格子が、各々の広範囲な測定目盛領域(M11、M12)内で、それぞれライン格子領域を有し、前記ライン格子領域が、
- 前記広範囲な測定目盛領域(M11、M12)の全長にわたって延在し、第1の延在方向(RL1;RQ1)に対して平行で、互いに対して第1の間隔(d1;d2)をあけて配置されている真っすぐな格子線(L11、L12;L21、L22)の少なくとも1つの第1のペアを含み、
- 2次元のライン格子の場合にはさらに、前記広範囲な測定目盛領域(M11、M12)の全長にわたって延在し、前記第1の延在方向(RQ1;RL1)に対して垂直に方向づけられている第2の延在方向(RL1;RQ1)に沿って、互いに対して第2の間隔(d2;d1)をあけて配置されている真っすぐな格子線(L21、L22;L11、L12)の第2のペアを含み、
- 前記ライン格子領域が、前記第1の延在方向(RL1;RQ1)に沿って、前記十字格子(131.1;231.1;331.1;431.1;531.1;631.1)の前記広範囲な測定目盛領域(M11、M12)と同一の周期性を保持し、
- 2次元のライン格子の場合には、前記ライン格子領域が、前記第2の延在方向(RQ1;RL1)に沿っても前記十字格子(131.1;231.1;331.1;431.1;531.1;631.1)の前記広範囲な測定目盛領域(M11、M12)と同一の周期性を有することを特徴とする請求項2に記載の光学式位置測定機構。
【請求項4】
前記広範囲な測定目盛領域(M11、M12)内に、前記第1の延在方向(RL1;RQ1)および/または前記第2の延在方向(RQ1;RL1)に沿ってそれぞれ少なくとも3つの、互いから前記格子線(L11、L12、L21、L22)によって分離された領域が存在することを特徴とする請求項3に記載の光学式位置測定機構。
【請求項5】
前記十字格子(131.1;231.1;331.1;431.1;531.1;631.1)における異なる光学特性として、
- 異なる透過特性および/または
- 異なる反射特性および/または
- 異なる移相作用
が企図されていることを特徴とする請求項2に記載の光学式位置測定機構。
【請求項6】
前記十字格子(131.1;231.1;331.1;431.1)が、2つの異なる光学特性をもつバイナリ格子として形成されており、前記ライン格子の前記格子線(L11、L12、L21、L22)がそれぞれ、前記第1および第2の広範囲な測定目盛領域(M11、M12)の光学特性とは別の光学特性を有することを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構。
【請求項7】
前記十字格子(531.1;631.1)が前記第1と第2の広範囲な測定目盛領域(M11、M12)の間に間隔領域(M13)を有し、前記間隔領域(M13)が、前記第1および第2の広範囲な測定目盛領域(M11、M12)の光学特性とは異なる第3の光学特性を保持することを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構。
【請求項8】
前記第1と第2の広範囲な測定目盛領域(M11、M12)の間の前記間隔領域(M13)が、長手延在方向(RL1)および横延在方向(RQ1)に沿ってそれぞれ同一の幅(PA1、PA2)を有することを特徴とする請求項7に記載の光学式位置測定機構。
【請求項9】
前記間隔領域(M13)が構造化されて形成されていることを特徴とする請求項7に記載の光学式位置測定機構。
【請求項10】
前記第2のスケール(40;140.1、140.2)の前記測定目盛(41;1141.1、1141.2)が、反射性の直線格子(141.1)として形成されており、前記直線格子(141.1)が、前記第2のスケール(40;140.1、140.2)の長手延在方向(RL2)に沿って規則的に配置され、それによって反射される前記光線束への異なる移相作用をもつ測定目盛領域(141.1a、141.1b)を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構。
【請求項11】
前記第2のスケール(40;140.1、140.2)の前記直線格子(141.1)が、特定の回折次数n>1が抑制されるようなフィルタ作用を保持することを特徴とする請求項10に記載の光学式位置測定機構。
【請求項12】
さらに、前記測定目盛(G1、G2、G3;31、41;1131.1、1131.2、1141.1、1141.2)の少なくとも1つが、それによって結果として生じる前記回折次数がそれぞれ規定の偏光を保持するように形成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構。
【請求項13】
前記スケール(30、40;130.1、130.2、140.1、140.2)の少なくとも1つが、その長手延在方向(RL1、RL2)を中心として傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構。
【請求項14】
テーブルおよび複数の、請求項1から13のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構を備えた構成において、
- 前記テーブル(110)が、水平移動平面において、2つの直交する測定方向(x、y)に沿って移動可能に配置されており、
- 前記テーブル(110)の向かい合う側に2つの第1のスケール(130.1、130.2)が配置されており、
- 少なくとも1つの第2のスケール(140.1、140.2)が、前記両方の第1のスケール(130.1、130.2)に対して静止状態で90°の角度で交差して、前記水平移動平面から方向(z)に沿って離隔した平面内に配置されており、前記方向(z)が前記移動平面に対して直交に方向づけられており、
- 前記第1のスケール(130.1、130.2)を備えた前記テーブル(110)の前記向かい合う側に隣接して複数の走査ユニット(150.1~150.4)が静止状態で配置されており、前記走査ユニット(150.1~150.4)がそれぞれ光源および検出ユニットを含む
ことを特徴とする構成。
【請求項15】
- 前記両方の第1のスケール(130.1、130.2)がそれぞれ、2次元の十字格子(131.1;231.1;331.1;431.1;531.1;631.1)の形態での反射性の測定目盛(1131.1、1131.2)を有し、その長手延在方向(RL1)を中心として、前記水平移動平面に対して傾斜して配置されており、
- 前記第2のスケール(140.1、140.2)が、長手延在方向(RL2)に対して平行に延在する2つの平行なトラック内で少なくとも2つの反射性の測定目盛(1141.1、1141.2、1141.3、1141.4)を有し、前記測定目盛(1141.1、1141.2、1141.3、1141.4)がそれぞれ反射性の直線格子として形成されており、前記直線格子が、それぞれの長手延在方向(RL2)に沿って規則的に配置された目盛領域(1141.1a、1141.1b、1141.2a、1141.2b)を有し、前記反射性の測定目盛(1141.1、1141.2、1141.3、1141.4)の格子平面が、前記水平移動平面に対して平行に方向づけられていることを特徴とする請求項14に記載の構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの測定方向に沿って互いに対して移動可能な2つの物体の高精度の位置測定に適した光学式位置測定機構に関する。これに関し、両方の物体はそれぞれスケールと結合している。
【背景技術】
【0002】
干渉走査原理をベースとする光学式位置測定機構が公知であり、この光学式位置測定機構では、照明光線束がスケールの測定目盛での回折によって異なる部分光線束に分割され、これらの部分光線束はその後、走査光線経路を通り抜け、その際に1つまたは複数のさらなるスケールにぶつかる。適切な部分光線束の再統合の後、スケールがもう一方のスケールに対して変位する際、両方の部分光線束の干渉から、検出ユニットにおいて規則的な信号が生じる。検出ユニットにおける信号周期を数えることにより、両方のスケールまたはこれらのスケールと結合した物体の変位の大きさが推定され得る。
【0003】
このような光学式位置測定機構は、例えば半導体産業における高精度の位置測定に用いられ、半導体産業では、例えばフォトリソグラフィのための露光マスクが、1メートル/秒超の速度でウェハに対して相対的に移動し、このとき、数ナノメートル以下の範囲の位置決め精度が保たれなければならない。格子ベースの位置測定機構の、干渉計に対する決定的な利点は、干渉する部分光線束が非常に短い距離しか進まなくてよいことにある。これにより、格子ベースの位置測定機構は、気圧変動、温度変動、および湿度変動のような環境の及ぼす影響によって妨害されることがほとんどなく、これら環境の及ぼす影響は、例えば空気の屈折率の変動を通して測定を歪曲し得る。
【0004】
WO2008/138501A1から、2つの交差するスケールを含み、これらのスケールがそれぞれ、共通の測定方向を横切って規則的に配置された線または格子領域をもつ測定目盛を有する光学式位置測定機構が公知である。位置依存の信号を生成するために干渉走査原理が使用される。このような位置測定機構により、2つの方向に移動可能なテーブルの第1の測定方向xに沿った位置が、もう1つの第2の測定方向yに沿ったテーブルの位置に関係なく高精度で捕捉され得る。2つの互いに対して直交に配置されたこのような位置測定機構を使用する場合、テーブルの位置は、第2の測定方向yに沿っても、今度は第1の測定方向xに沿ったテーブルの位置に関係なく高精度で捕捉され得る。
【0005】
さらに、干渉を用いた光学式位置測定機構を備えた同等の構成が、米国特許出願公開第2009/0135388A1号からも公知である。この構成は、半導体製作機構内の移動可能なテーブルの、水平移動平面内での、器具に対する位置を決定するために使用される。テーブル上には、例えばウェハが配置されてもよく、器具は露光対物レンズであり得る。これに関し
図6Bの例では、移動可能なテーブルに、2次元格子として形成されている第1のスケールが配置されており、第2のスケールも2次元格子として形成されており、第1のスケールとは違って静止状態で配置されている。このような構成により、水平なxy移動平面内でのテーブルの移動が捕捉され得る。
【0006】
一般的に、スケールの干渉走査では規則的な位置誤差が結果として生じる。この位置誤差は補間誤差とも呼ばれ、測定精度を望ましくなく低下させる。引用した両方の文献からは、交差したスケールを備えた光学式位置測定機構においてこのような位置誤差または補間誤差を最小限に抑えることに適した措置は読み取れない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2008/138501A1
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0135388(A1)号
【特許文献3】EP2857901A1
【特許文献4】EP3739300A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の基礎となる課題は、位置誤差のできるだけ少ない位置測定を保証する、交差して配置されたスケールを備えた高精度の光学式位置測定機構を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は本発明により、請求項1の特徴をもつ光学式位置測定機構によって解決される。
本発明による光学式位置測定機構の有利な実施形態は、従属請求項に記載された措置から明らかである。
【0010】
本発明による光学式位置測定機構は、異なる平面においても2つの測定方向に沿って互いに対して移動可能であり、かつ互いに対して交差して配置されている少なくとも2つのスケールの相対位置を捕捉するために用いられる。これに関し両方のスケールはそれぞれ、少なくとも1つの測定方向に沿って規則的に配置された異なる光学特性をもつ格子領域を備える少なくとも1つの測定目盛を有し、これらのスケールの長手延在方向はそれぞれ、第1または第2の測定方向に対して平行に方向づけられている。第1のスケールでは、光源から放出された照明光線束の、少なくとも2つの部分光線束への分割が行われる。部分光線束はその後、第2のスケールにぶつかって、第1のスケールの方向に後方反射する。この後方反射された部分光線束が改めて第1のスケールに衝突し、そこで再統合され、これによりその後、結果として生じる少なくとも1つの信号光線束が検出ユニットの方向に伝播し、この検出ユニットを介し、第1または第2の測定方向に沿ったスケールの相対移動に関する1つまたは複数の位置依存の走査信号が生成可能である。少なくとも1つのスケールの測定目盛が2次元の十字格子として形成されており、邪魔な比較的高次の回折次数がこの十字格子において抑制されるようなフィルタ作用をこの十字格子は保持する。
【0011】
十字格子は、市松模様状に配置された異なる光学特性をもつ第1および第2の広範囲な測定目盛領域を有してもよく、この第1および第2の広範囲な測定目盛領域は、十字格子の長手延在方向に沿って第1の領域周期性で規則的に、および長手延在方向に対して直交に方向づけられている横延在方向に沿って第2の領域周期性で規則的に、市松模様形に配置されており、この第1および第2の広範囲な測定目盛領域に、1次元または2次元の規則的なライン格子が重なっている。
【0012】
ライン格子は、各々の広範囲な測定目盛領域内で、それぞれライン格子領域を有することができ、このライン格子領域は、
- 広範囲な測定目盛領域の全長にわたって延在し、第1の延在方向に対して平行で、互いに対して第1の間隔をあけて配置されている真っすぐな格子線の少なくとも1つの第1のペアを含み、
- 2次元のライン格子の場合にはさらに、広範囲な測定目盛領域の全長にわたって延在し、第1の延在方向に対して垂直に方向づけられている第2の延在方向に沿って、互いに対して第2の間隔をあけて配置されている真っすぐな格子線の第2のペアを含み、
- ライン格子領域は、第1の延在方向に沿って、十字格子の広範囲な測定目盛領域と同一の周期性を保持し、
- 2次元のライン格子の場合には、ライン格子領域が、第2の延在方向に沿っても十字格子の広範囲な測定目盛領域と同一の周期性を有する。
【0013】
好ましくは、広範囲な測定目盛領域内に、第1の延在方向および/または第2の延在方向に沿ってそれぞれ少なくとも3つの、互いから格子線によって分離された領域が存在することが企図されている。
【0014】
十字格子における異なる光学特性として、
- 異なる透過特性および/または
- 異なる反射特性および/または
- 異なる移相作用
が企図されている場合もある。
【0015】
可能な一実施形態では、十字格子を、2つの異なる光学特性をもつバイナリ格子として形成されていてもよく、ライン格子の格子線はそれぞれ、第1および第2の広範囲な測定目盛領域の光学特性とは別の光学特性を有する。
【0016】
さらに、十字格子が第1と第2の広範囲な測定目盛領域の間に間隔領域を有することが可能であり、この間隔領域は、第1および第2の広範囲な測定目盛領域の光学特性とは異なる第3の光学特性を保持する。
【0017】
これに関し、第1と第2の広範囲な測定目盛領域の間の間隔領域は、長手延在方向および横延在方向に沿ってそれぞれ同一の幅を有し得る。
さらに、間隔領域は構造化されて形成されていてもよい。
【0018】
これに加え、第2のスケールの測定目盛は、反射性の直線格子として形成されていることが可能であり、この直線格子は、第2のスケールの長手延在方向に沿って規則的に配置された、それによって反射される光線束への異なる移相作用をもつ測定目盛領域を有する。
【0019】
これに関し、第2のスケールの直線格子は、特定の回折次数n>1が抑制されるようなフィルタ作用を保持し得る。
加えてさらに、測定目盛の少なくとも1つが、それによって結果として生じる回折次数がそれぞれ規定の偏光を保持するように形成されていることが企図されている場合もある。
【0020】
スケールの少なくとも1つが、その長手延在方向を中心として傾斜して配置されていることが有利である。
テーブルを備えた構成において、複数の本発明による光学式位置測定機構が設けられていてもよく、
- テーブルは、水平移動平面において、2つの直交する測定方向に沿って移動可能に配置されており、
- テーブルの向かい合う側に2つの第1のスケールが配置されており、
- 少なくとも1つの第2のスケールが、両方の第1のスケールに対して静止状態で90°の角度で交差して、水平移動平面から一方向に沿って離隔した平面内に配置されており、この方向が移動平面に対して直交に方向づけられており、
- 第1のスケールを備えたテーブルの向かい合う側に隣接して複数の走査ユニットが静止状態で配置されており、これらの走査ユニットは、それぞれ光源および検出ユニットを含む。
【0021】
これに関し、
- 両方の第1のスケールはそれぞれ、2次元の十字格子の形態での反射性の測定目盛を有し、その長手延在方向を中心として、水平移動平面に対して傾斜して配置されており、
- 第2のスケールは、長手延在方向に対して平行に延在する2つの平行なトラック内で少なくとも2つの反射性の測定目盛を有し、この測定目盛は、それぞれ反射性の直線格子として形成されており、この直線格子は、それぞれの長手延在方向に沿って規則的に配置された目盛領域を有し、この反射性の測定目盛の格子平面は、水平移動平面に対して平行に方向づけられていることが企図されている場合もある。
【0022】
本発明に基づく措置により、交差したスケールを備えた光学式位置測定機構の場合に、位置誤差が著しく減少され得る。高精密な位置測定が保証され得る。
相応の位置測定機構は、例えば、水平移動平面内でのテーブルの移動を捕捉するのに特に適している。これにより、移動平面内での2つの直線状の測定方向に沿ったテーブルの並進移動および移動平面に対して垂直な回転軸を中心としたテーブルの回転移動が、測定技術によって高精度に決定され得る。
【0023】
本発明のさらなる詳細および利点を、図と関連させて、本発明による装置の例示的実施形態の以下の説明に基づいて解説する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による光学式位置測定機構の1つの例示的実施形態の展開された走査光線経路を示す図である。
【
図2】
図2aは、
図1に基づく走査原理を利用する交差して配置されたスケールを備えた本発明による位置測定機構の部分図である。
図2bは、
図1に基づく走査原理を利用する交差して配置されたスケールを備えた本発明による位置測定機構の部分図である。
【
図3】
図3aは、4つの
図2a、
図2bに基づく本発明による光学式位置測定機構を備えた構成の平面図である。
図3bは、4つの
図2a、
図2bに基づく本発明による光学式位置測定機構を備えた構成の側面の断面図である。
【
図4】本発明による光学式位置測定機構の適切な第2の測定目盛の平面図である。
【
図5a】本発明による光学式位置測定機構のための適切な十字格子の第1の変形例の平面図である。
【
図5b】
図5aからの十字格子の第1の変形例の部分断面図である。
【
図5c】
図5aからの十字格子の第1の変形例の変形形態の部分断面図である。
【
図5d】
図5aからの十字格子の第1の変形例の変形形態の部分断面図である。
【
図5e】
図5aからの十字格子の第1の変形例の変形形態の部分断面図である。
【
図6】
図6aは、本発明による光学式位置測定機構のための適切な十字格子の第2の変形例の平面図である。
図6bは、十字格子の第2の変形例の部分断面図である。
【
図7】
図7aは、本発明による光学式位置測定機構のための適切な十字格子の第3の変形例の平面図である。
図7bは、十字格子の第3の変形例の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明による位置測定機構の1つの例示的実施形態および適切な測定目盛の幾つかの変形例を詳細に説明する前に、最初に
図1に基づいて、このような位置測定機構のための例示的な走査光線経路が解説される。これに関し、図は走査光線経路を展開図で示す。
【0026】
光源LQによって放出された照明光線束Sは、最初に、格子形の第1の測定目盛G1をもつ第1のスケールに衝突する。第1のスケールまたはその測定目盛G1では、衝突点P1.1において、照明光線束Sが2つの部分光線束S1、S2に分割される。両方の部分光線束S1、S2はその後、衝突点P2a.1およびP2b.2で、第2の格子形の測定目盛G2をもつ第2のスケールにぶつかる。そこでは部分光線束S1、S2がそれぞれ、図示したシステム全体の中心の対称軸Aの方向に戻るように回折される。その後、衝突点P3.1では、両方の部分光線束S1、S2が、第3の測定目盛G3をもつ第3のスケールに衝突し、そこで再統合される。その後、第3の測定目盛G1上の衝突点P3.1で起こる両方の部分光線束S1、S2の回折により、2つの部分光線束S1、S2の干渉する回折次数を内包する、結果として生じる少なくとも1つの信号光線束SBが、検出ユニットDETの方向に伝播する。第2の測定目盛G2が、両方の測定目盛G1、G3に対して測定方向yに沿って相対移動する場合には、検出ユニットDETを介し、測定目盛G2の、測定目盛G1、G3に対する相対位置の変化を特徴づける1つまたは複数の位置依存の走査信号が生成され得る。
【0027】
これに関し、
図1に示した、異なる第1および第3のスケールまたは測定目盛G1、G3を備えた展開された走査光線経路は、すべての測定目盛G1、G2、G3が透過型格子として形成されている透過光走査に相応する。その代わりに、このような走査光線経路はもちろん、反射型格子として形成された第2の測定目盛G2による落射光走査としても実施され得る。この場合には、第1および第3のスケールまたは第1および第3の測定目盛G1、G3が同一に形成されており、つまりG1=G3であり、よって第2の測定目盛G2で反射された後にもう一度、第1の測定目盛G1にぶつかる。これに関し、第1および第3の測定目盛G1、G3は、反射型格子としてまたは透過型格子として形成することが可能である。
【0028】
以下に、互いに対して交差して配置されたスケールを備えた本発明による位置測定機構の1つの例示的実施形態におけるこのような光学式走査原理の具体的な実施形態が、
図2aおよび
図2bに基づいて解説されている。これに関し、解説される例では、同一に形成された第1および第3の測定目盛による落射光走査が実施される。
【0029】
相応の位置測定機構は、第1の物体10に配置されている第1のスケール30を含む。物体10は、一平面内で互いに対して直交に方向づけられた2つの測定方向x、yに沿って移動可能に配置されており、この平面に対して直交する方向は以下では方向zと呼ばれている。これに関し、第1のスケール30の長手延在方向RL1は、測定方向yに対して平行に方向づけられている。第1のスケール31上には反射性の測定目盛31が配置されており、この測定目盛31は、少なくとも1つの測定方向x、yに沿って、異なる光学特性をもつ格子領域を有する。この例では、第1の測定目盛が2次元の十字格子として形成されている。この十字格子は、邪魔な比較的高次の回折次数が十字格子において抑制されるようなフィルタ作用を保持する。これに関し、第1の測定目盛31の様々な格子領域が、それによって反射される光線束への異なる移相作用を有し、つまり十字格子は反射型位相格子として実施されている。位置誤差を望ましく減少させるために重要な本発明による位置測定機構内の十字格子の詳細な解説は、この説明がさらに進む中で行われる。
【0030】
第1のスケール30に対して静止状態および交差して、z方向に沿って離隔した平面内で、静止状態の第2の物体20に第2のスケール40が配置されている。第2のスケール40の長手延在方向RL2は、測定方向xに対して平行に方向づけられている。第2のスケール40上でも、少なくとも1つの測定方向x、yに沿って異なる光学特性をもつ格子領域を有する反射性の測定目盛41が配置されている。図示した例では、第2の測定目盛41は直線格子からなり、この直線格子は、第2のスケール40の長手延在方向RL2に沿って規則的に配置された、それによって反射される光線束への異なる移相特性をもつ長方形の測定目盛領域を有し、よって第2の測定目盛41は、この例示的実施形態では反射型位相格子として形成されている。
【0031】
本発明による位置測定機構の図示した例示的実施形態ではさらに、同様に第1のスケール30に対して静止状態で、走査ユニット50が設けられており、この走査ユニット50内には光源および検出ユニットが配置されており、後者は
図2aおよび
図2bでは詳細には示していない。これに関し、光源および検出ユニットが必ずしも直接的に走査ユニット50内に配置される必要はない。これらのコンポーネントを走査ユニット50から空間的に離して配置し、光源の相応の光線束を、光導波体を介して走査ユニット50に送ること、または光導波体を介して走査ユニット50から検出ユニットに送ることも可能である。したがってこのような一実施形態では、走査ユニット50は純粋に受動型の構成単位として相応の光導波体だけを内包し、この光導波体のデカップリング面およびカップリング面が光源または検出ユニットとして機能する。
【0032】
図2a、
図2bでは非常に概略的に示唆しただけの走査光線経路に基づき、第1の測定目盛31の衝突点P1では、光源からまたは走査ユニット50から入射してくる光線束Sの、+/-1次の回折次数である2つの部分光線束への分割が、z方向に対して対称的に行われる。その後、両方の部分光線束は、第2の測定目盛31上の衝突点P2a.1、P2b.1に衝突し、そこからそれぞれ、入射してくる部分光線束に対して逆平行に、第1の測定目盛31の方向に戻るように伝播するよう回折される。上で言及したように、この落射光システムでは第3のぶつかられる測定目盛は第1の測定目盛31と同一である。そこでは、この場合は第1の衝突点P1と同一である衝突点P3.1において、部分光線束の再統合が結果として生じる。その後、結果として生じた干渉する部分光線束の少なくとも1つのペアをもつ信号光線束SBが、走査ユニット50内に配置された検出ユニットの方向に戻るように伝播する。
【0033】
図3aおよび
図3bでは、xy平面内で移動可能な物体の位置を決定するために用いられる4つの本発明に従って形成された
図2a、
図2bに基づく位置測定機構を含む構成が非常に概略的に示されている。移動可能な物体は、例えば半導体製作機構または半導体検査機構のテーブル110であってもよく、テーブル110は、機械枠120の形態での静止状態の物体に対して相対的に位置決めされ、機械枠120には器具160が配置されている。テーブル110上にはウェハ111があり、ウェハ111は、例えば露光対物レンズとして形成された器具160によって加工され、または顕微鏡として形成された器具160によって検査される。この構成では、4つの本発明に基づいて形成された位置測定機構により、測定方向x、yに沿ったテーブル110の並進およびこれに対して垂直なz方向を中心としたテーブル110の回転移動が、測定技術によって捕捉され得る。
【0034】
テーブル110には、向かい合う2つの側にそれぞれ、反射性の第1の測定目盛1131.1、1131.2をもつ第1のスケール130.1、130.2が配置されており、このスケール130.1、130.2は、そのそれぞれの長手延在方向RL1を中心として約45°傾斜している。これに関し、両方の第1のスケール130.1、130.2の傾斜は、そこから回折される部分光線束の、z方向に対して対称的な偏向が結果として生じるように行われる。
【0035】
さらに、第1のスケール130.1、130.2または第1の測定目盛1131.1、1131.2のz方向に沿った配置に関しては、4つの本発明による位置測定機構の異なる走査の第1の衝突点がテーブル110上にあるウェハ111の高さになるように、第1のスケール130.1、130.2または第1の測定目盛1131.1、1131.2をテーブル110に配置するよう注意しなければならない。こうすることで、ウェハ111に関する位置測定が、結果としてアッベ誤差が生じることなく可能である。
【0036】
これに対し、機械枠120の形態での静止状態の物体には、それぞれ2つの反射性の第2の測定目盛を有する2つの第2のスケール140.1、140.2と、4つの本発明による位置測定機構の4つの走査ユニット150.1~150.4とが配置されている。
【0037】
両方の第2のスケール140.1、140.2上ではそれぞれ2つの平行なトラック内に配置された反射性の第2の測定目盛が、それぞれ直線格子として形成されており、これらの直線格子は、それぞれの長手延在方向RL2に沿って規則的に配置された目盛領域を有する。これに関し、直線格子の格子平面は、xy平面内でのテーブルの水平移動平面に対して平行に配置されている。静止状態の物体または機械枠120には、概略的に示唆した器具160も結合されている。
【0038】
両方の第2のスケール140.1の一方の平面図が、その上で2つの平行なトラックに配置された、直線格子141.1として形成されている第2の測定目盛1141.1、1141.2によって
図4に示されている。
図4から明らかであるように、両方のトラック内では、第2のスケールの長手延在方向R
L2に沿ってそれぞれ測定目盛領域1141.1a、1141.1bまたは1141.2a、1141.2bが規則的に配置されており、この例では、第2のスケールの長手延在方向R
L2は測定方向yと一致する。さらに
図4から明らかであるように、目盛領域1141.1a、1141.1bまたは1141.2a、1141.2は、両方のトラック内で、互いに対してV字形に配置されており、つまり、両方のトラックからの向かい合う目盛領域1141.1a、1141.2aまたは1141.1b、1141.2bは、それぞれ長手延在方向R
L2に対して角度+αまたは-αをとる。第2の測定目盛1141.1、1141.2の測定目盛領域1141.1a、1141.1bまたは1141.2a、1141.2bは、異なる位相偏移を有し、つまり両方の第2の測定目盛1141.1、1141.2は反射型位相格子として形成されている。
【0039】
4つの本発明による位置測定機構は、図示した構成では、それぞれxy平面における感度ベクトルE1~E4を有し、この感度ベクトルE1~E4は、
図3aで相応の矢印によって示唆されている。この感度ベクトルはそれぞれ、進んだ長さ単位当たりで、それぞれの測定方向x、yの位置信号が最も速く上昇する移動方向を提示している。走査ユニットごとに、両方の得られた規則的な走査信号を計算処理することで、所望の測定方向x、yでの実際の移動が取得され得る。光学式位置測定機構における感度ベクトルのコンセプトに関しては、補足として例えば文献EP2857901A1を参照されたい。
【0040】
これに関し、第1の位置測定機構は、示した構成では、第1の走査ユニット150.1と、テーブル110の左側の第1の測定目盛1131.1をもつ第1のスケール130.1と、テーブル左側で第2の測定目盛1141.1をもつ第2のスケール140.1とによって構成され、帰属の感度ベクトルは
図3aではE1で表されている。第2の位置測定機構は、第2の走査ユニット150.2と、テーブル110の左側の第1の測定目盛1131.1をもつ第1のスケール130.1と、第2の測定目盛1141.2をもつ第2のスケール140.1とを含み、帰属の感度ベクトルはE2で表される。よって第1および第2の位置測定機構は、第1のスケール130.1上の同じ第1の測定目盛1131.1を利用する。
【0041】
第3の位置測定機構は、第3の走査ユニット150.3と、テーブル110の右側の第1の測定目盛1131.2を有する第1のスケール130.2と、第2の測定目盛1141.3を有する第2のスケール140.2とによって構成され、帰属の感度ベクトルは、この図ではE3で示されている。第4の位置測定機構は、第4の走査ユニット150.4と、テーブル110の右側の第1の測定目盛1131.2をもつ第1のスケール130.2と、さらなる第2の測定目盛1141.4をもつ第2のスケール140.2とを含み、帰属の感度ベクトルはE4で表される。これに従い、第3および第4の位置測定機構は、第1のスケール130.2上の同じ第1の測定目盛1131.2を利用する。
【0042】
図3aによれば、第1と第2の位置測定機構の感度ベクトルE1、E2も、第3と第4の位置測定機構の感度ベクトルE3、E4も、互いに対して直交に方向づけられている。4つの位置測定機構の感度ベクトルE1~E4は、xy平面内でそれぞれ測定方向x、yに対して45°の角度をとる。
【0043】
個々の位置測定機構において望ましくない測定誤差を回避するために重要なことは、既に上で示唆したように、相応の本発明による光学式位置測定機構内のそれぞれの第1の測定目盛の形成である。同様に既に言及したように、
図2a、
図2bまたは
図3a、
図3bの例示的実施形態における第1の測定目盛31、131.1はそれぞれ、特定のフィルタ特性を有する反射型位相格子の形態での反射性の十字格子として実施されている。
【0044】
第1の測定目盛のための適切な十字格子の第1の変形例131.1が、部分的に、
図5aの平面図および
図5bの部分断面図に示されている。最初に
図5aの平面図に基づいて、基礎になっている格子設計が解説されており、それから部分断面図によって第1の十字格子変形例の可能な格子構造が説明される。その後、
図5c~
図5eの部分断面図に基づいて、第1の十字格子変形例の格子構造のさらなる変形形態が解説される。
【0045】
図5aから明らかであるように、第1の測定目盛として利用される十字格子131.1は、市松模様形に配置された異なる光学特性をもつ第1および第2の広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2を有する。第1および第2の広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2は、十字格子131.1の長手延在方向R
L1に沿って第1の領域周期性P
B1で規則的に、および十字格子131.1の長手延在方向R
L1に対して直交に方向づけられている横延在方向R
Q1に沿って第2の領域周期性P
B2で規則的に配置されている。これに関し、図では明るく示した第1の測定目盛領域M1
1は、反射する光線束に対し、ハッチングされた第2の測定目盛領域M1
2とは異なる移相作用を及ぼし、つまり測定目盛領域M1
1またはM1
2は、異なる位相偏移Δ1またはΔ2を有する。よって十字格子131.1の第1および第2の広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2の異なる光学特性として、ここでは異なる移相作用が企図されている。
【0046】
十字格子131.1の第1および第2の広範囲な測定目盛領域M11、M12には、この変形例では、2次元の規則的なライン格子が重なっている。相応のライン格子もまた、各々の広範囲な測定目盛領域M11、M12内で、それぞれ真っすぐな格子線L11、L12またはL21、L22の第1および第2のペアを含むライン格子領域を有する。これに関し、真っすぐな格子線L11、L12の第1のペアは、広範囲な測定目盛領域M11、M12の全長にわたって延在し、長手延在方向RL1に対して平行に、格子線L11、L12の間に互いに対して第1の間隔d1をあけて配置されている。真っすぐな格子線L21、L22の第2のペアも、広範囲な測定目盛領域M11、M12の全長にわたって延在し、横延在方向RQ1に対して平行に、格子線L21、L22の間に互いに対して第2の間隔d2をあけて配置されている。したがって、第1の格子線ペアL11、L12は第2の格子線ペアL21、L22に対して直交に配置されている。ライン格子領域は、長手延在方向RL1および横延在方向RQ1に沿って、それぞれ、十字格子131.1の広範囲な測定目盛領域M11、M12と同一の周期性PB1、PB2を有する。したがってこのような十字格子形成形態では、個々の広範囲な測定目盛領域M11、M12内に、長手延在方向RL1および横延在方向RQ1に沿ってそれぞれ少なくとも3つの、互いから格子線L11、L12またはL21、L22によって分離された領域が存在する。
【0047】
第1の測定目盛として機能する十字格子131.1の広範囲な測定目盛領域M11、M12に重なったライン格子は、邪魔な比較的高次の回折次数の望ましい抑制のために重要な、いわゆる上部構造である。これに関し、なかでも下記の邪魔な回折次数(mx,my)が抑制される:(+/-2,+/-1)、(+/-1,+2)、(+/-3,0)、(0,+/-3)。これに対し、市松模様状に配置された広範囲な測定目盛領域M11、M12だけからなる十字格子内では、もっと多くの比較的高次の回折次数が結果として生じ、これらの比較的高次の回折次数が位置決定において誤差を引き起こす。
【0048】
図5aの例示的実施形態では、第1の測定目盛として利用される十字格子131.1がバイナリ格子として形成されている。これは、十字格子131.1が2つだけの異なる光学特性をもつ異なる領域を有することを意味し、これは、解説している例では、十字格子131.1内の、それによって反射される光線束に対する異なる移相作用をもつハッチングされた領域および明るい領域である。このようなバイナリ格子は、1つだけのリソグラフィプロセスによって製造でき、したがって製造が比較的安価で簡単である。
【0049】
図から明らかであるように、ライン格子の格子線L11、L12、L21、L22はそれぞれ、第1および第2の広範囲な測定目盛領域M11、M12の光学特性に対して別のまたは相補的な光学特性を有する。つまり、格子線L11、L12、L21、L22は、位相偏移Δ1をもつ明るく示された広範囲な第1の測定目盛領域M11においては例えば相補的な位相偏移Δ2を有し、位相偏移Δ2をもつハッチングされた広範囲な第2の測定目盛領域M12においては相補的な位相偏移Δ1を有する。
【0050】
例えば
図5aからのフィルタリングする十字格子131.1の代替的な変形例では、重ねられる規則的なライン格子が、2次元ではなく1次元で形成されていることが企図されている場合もある。これは例えば、第1の延在方向、例えば長手延在方向R
L1に沿って配置された格子線L2
1およびL2
2を有するライン格子だけが設けられていることを意味する。この場合、個々の広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2内に、第1の延在方向に沿ってのみ、それぞれ少なくとも3つの互いから格子線L2
1、L2
2によって分離された領域が存在する。このような変形例では、
図5aでは設けられた、第2の延在方向、つまり横延在方向R
Q1に沿った格子線L1
1およびL1
2はなくなる。第1および第2の延在方向は、互いに対して垂直に方向づけられており、この例では長手延在方向R
L1および横延在方向R
Q1に相当する。その代わりに、第2の延在方向に沿って、つまり横延在方向R
Q1に沿ってのみ、1次元のライン格子を配置することも基本的には可能である。
【0051】
図5bでは、
図5aからのフィルタリングする十字格子131.1が部分断面図で示されており、以下では
図5bに基づいてこの例の層構造が解説される。この図では、およびこれ以降の図でも、それぞれ2つの隣接する第1および第2の広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2をもつ第1の領域周期P
B1内の断面図が示されている。この十字格子131.1は、全面的につながっている反射層131.1aを有し、この反射層131.1aは、十字格子面全体にわたって広がっており、例えばアルミニウム(Al)またはクロム(Cr)からなる。その上には誘電層131.1bが同様に全面的につながって配置されており、誘電層131.1bには例えば二酸化ケイ素(SiO
2)が考慮される。誘電層131.1bの上には構造化層131.1cが配置されており、構造化層131.1cは、ハッチングされた領域内で適切な反射材料を有する。反射材料としては、例えば高屈折の誘電材料、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)のような半導体材料または金(Au)、銀(Ag)、もしくはアルミニウム(Al)のような金属が使用され得る。
【0052】
フィルタリングする十字格子231.1のための、ここでもバイナリ格子として形成された変形された層構造が、
図5cに部分断面図で示されている。ここでは、例えば石英ガラスまたはゼロデュアからなる基板231.1aのすぐ上に構造化層231.1bが配置されており、構造化層231.1bは、ハッチングされた領域内で適切な反射材料を有する。反射材料としてはここでも、高屈折の誘電材料、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)のような半導体材料または金(Au)、銀(Ag)、もしくはアルミニウム(Al)のような金属が使用され得る。
【0053】
フィルタリングする十字格子331.1のためのさらなる一変形形態が、
図5dに部分断面図で示されている。例えば、石英ガラスまたはゼロデュアからなる基板331.1aの上に、つながっている金属の反射層331.1bが全面的に配置されており、反射層331.1bは、十字格子面全体にわたって広がっている。反射層331.1bは、例えばアルミニウム(Al)または金(Au)からなり得る。その上に、同様に全面的につながって、例えば二酸化ケイ素(SiO
2)からなる誘電層331.1cが設けられている。その上には構造化層331.1dが配置されており、構造化層331.1dの場合、ハッチングされた領域内で、ここでも適切な反射材料、例えば金(Au)、ケイ素(Si)、五酸化タンタル(TaO
5)、または窒化ケイ素(Si
3N
4)が配置されている。
【0054】
適切なフィルタリングする十字格子431.1のためのさらに変形された層構造が、
図5eに部分断面図で示されている。
図5dからの例とは異なり、ここでは基板431.1aの上に設けられる反射層の代わりに、全広範囲な誘電性ミラー層431.1bが設けられており、誘電性ミラー層431.1bは、複数の誘電性の単一層による積層からなり、この単一層に関しては、例えば、高屈折材料、例えば二酸化チタン(TiO
2)、五酸化タンタル(TaO
5)および低屈折材料、例えば二酸化ケイ素(SiO
2)を設けられていてもよく、これらが交互に配置される。その上には、前の例でのように誘電層431.1cおよび構造化層431.1dが配置されている。誘電層431.1cのための材料として例えば二酸化ケイ素(SiO
2)が考慮され、構造化層には二酸化チタン(TiO
2)、ケイ素、または五酸化タンタル(TaO
5)が使用され得る。
【0055】
第1の測定目盛のための適切な十字格子の第2の変形例531.1が、
図6aに平面図で、および
図6bに部分断面図で示されている。ここでも、
図6aの平面図に基づいて最初に基本的な格子設計が解説されており、それから
図6bの部分断面図によって格子構造が説明される。これに関し以下では実質的に、
図5aからの第1の十字格子変形例に対する重要な違いだけが解説される。
【0056】
基本的には、第1の測定目盛として利用可能なフィルタリングする十字格子531.1のこの変形例もまた、市松模様状に配置された2つの異なる光学特性をもつ第1および第2の広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2を有し、この広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2にも、
図5aの例でのように、格子線L1
1、L1
2、L2
1、L2
2を有する2次元のライン格子が重なっている。ただしこの十字格子531.1では、第1と第2の広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2の間にさらに追加的な間隔領域M1
3が設けられており、間隔領域M1
3は、第1および第2の広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2の光学特性とは反射性および/または位相偏移が異なる第3の光学特性を保持する。よって第1および第2の広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2が、位相偏移Δ1、Δ2をもつ異なる移相作用を保持する場合、間隔領域M1
3は、位相偏移Δ1、Δ2とは異なる位相偏移Δ3を有し、さらに間隔領域M1
3は、吸収性に形成されており、つまり反射性R=0を保持することを企図していてもよい。
図6aから明らかであるように、第1と第2の広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2の間の間隔領域M1
3は、長手延在方向R
L1および横延在方向R
Q1に沿ってそれぞれ同一の幅P
A1、P
A2を有する。
【0057】
図6bでは、
図6aからのフィルタリングする十字格子531.1が、前の例に倣って部分断面図で示されており、この部分断面図に基づいて層構造が以下に解説される。例えばゼロデュアから成る基板531.1aの上に、例えばクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、または金(Au)からなる構造化された反射層531.1bが配置されている。基板531.1a上で反射層531.1bに覆われた領域の上には、第2の広範囲な測定目盛領域M1
2内に、さらに誘電層531.1cが設けられており、このための材料としては、例えば二酸化ケイ素(SiO
2)、五酸化タンタル(TaO
5)、または二酸化チタン(TiO
2)が考慮される。
【0058】
よって
図6aおよび
図6bに示した十字格子変形例は、バイナリ格子としてではなく、いわゆる混合型の振幅/位相格子として形成されている。この格子は、必要なリソグラフィステップの数に関し、第1の前述の十字格子変形例に対して少し多くの製作技術的コストを必要とする。しかしながら、望ましくない比較的高次の回折次数を特に効率的に抑制する可能性を提供する。
【0059】
第1の測定目盛のための適切なフィルタリングする十字格子の第3の変形例631.1が、
図7aに平面図で、および
図7bに部分断面図で示されている。以下では、最初に
図7aの平面図に基づいて基本的な格子設計が解説され、
図7bに基づいて格子構造が解説される。
【0060】
十字格子のこの変形例631.1もまた、市松模様状に配置された2つの異なる光学特性をもつ第1および第2の広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2を含む。この第1および第2の広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2にも、
図5aの例でのように、格子線L1
1、L1
2、L2
1、L2
2を有する2次元のライン格子が重なっている。この十字格子では前の例に倣って第1と第2の広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2の間に、さらに追加的な間隔領域M1
3が設けられており、間隔領域M1
3は、第1および第2の広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2の光学特性とは異なる第3の光学特性を保持する。ただしこの第1と第2の広範囲な測定目盛領域M1
1、M1
2の間の間隔領域M1
3は、
図6a、
図6bからの十字格子変形例とは異なり、構造化されて形成されている。
図7aから明らかであるように、そこでは例えば、長手および横延在方向R
L1、R
Q1に沿って規則的に配置された異なる光学特性をもつ正方形の格子領域からなる十字格子サブ構造が設けられている。
【0061】
図7aに基づく十字格子サブ構造の代わりに、間隔領域M1
3内で他の構造化変形例が設けられていてもよい。つまりそこに、間隔領域M1
3内で反射性R=0を有する非常に小さな格子周期でのいわゆる高周波格子を形成することも可能であろう。同様にそこに、弱い0次の回折次数だけを有する回折格子が配置されてもよく、これによっても間隔領域M1
3内で反射性R=0が結果として生じる。
【0062】
図7bは、
図7aからのフィルタリングする十字格子631.1を、前の例に倣って部分断面図で示し、以下にこの部分断面図に基づいて、この変形例の可能な層構造が解説される。例えばゼロデュアまたは石英ガラスからなる基板631.1aの上に、全広範囲な反射層631.1bが配置されており、反射層631.1bは、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、または金(Au)からなり得る。その上には、例えば二酸化ケイ素(SiO
2)からなる全広範囲な誘電層631.1cが設けられている。誘電層631.1cの上には構造化層631.1dが配置されており、これには二酸化チタン(TiO
2)、ケイ素、窒化ケイ素(Si
3N
4)、クロム(Cr)、またはアルミニウム(Al)が使用され得る。
【0063】
本発明による光学式位置測定機構の代替的な形成形態に関しては、もちろん解説した例示的実施形態だけでなくまださらなる可能性が存在する。
つまり、第1の測定目盛を、解説した例でのように反射型格子としてではなく、振幅格子の形態での透過型格子として実施することも可能である。この場合、このような透過型振幅格子では、様々な格子領域は、通り抜ける光線束のための異なる透過特性を有する。
【0064】
さらに、第1の測定目盛だけが、上で解説した邪魔な比較的高次の回折次数に対するフィルタ特性を有し得るわけではない。その代わりにまたはそれに加えて、第2の測定目盛も、フィルタ格子として、とりわけフィルタリングする十字格子として形成されることも可能である。
【0065】
本発明による位置測定機構のさらなる例示的実施形態では、第2の測定目盛をもつ第2のスケールも、その長手延在方向を中心として傾斜して配置され得る。
最後に、本発明による位置測定機構内で使用される測定目盛の少なくとも1つが、いわゆる偏光格子として形成されていることも可能である。このような偏光格子では、結果として生じる回折次数がそれぞれ規定の偏光を保持し、つまり、例えば結果として生じる+/-1次の回折次数が互いに対して直交に偏光され得るなどである。このような偏光格子に関しては、例えばEP3739300A1を参照されたい。
【符号の説明】
【0066】
110 テーブル
30、40;130.1、130.2、140.1、140.2 スケール
G1、G2、G3;31、41;1131.1、1131.2、1141.1、1141.2、1141.3、1141.4 測定目盛
1141.1a、1141.1b、1141.2a、1141.2b 測定目盛領域
131.1;231.1、331.1;431.1;531.1;631.1 十字格子
150.1~150.4 走査ユニット
d1、d2 第1および第2の間隔
L11、L12;L21、L22 格子線
M11、M12 第1および第2の広範囲な測定目盛領域
M13 間隔領域
PA1、PA2 幅
PB1 第1の領域周期性
PB2 第2の領域周期性
RL1 長手延在方向
RQ1 横延在方向
x、y 測定方向
z 方向
【外国語明細書】