(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023061903
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】検査装置及び検査装置の保守方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20230425BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20230425BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H01L21/66 B
G01R31/26 J
G01R31/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164835
(22)【出願日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2021171973
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小西 顕太朗
【テーマコード(参考)】
2G003
2G132
4M106
【Fターム(参考)】
2G003AA10
2G003AG04
2G003AG12
2G132AE03
2G132AF02
2G132AL03
4M106AA01
4M106BA01
4M106DD03
4M106DD10
4M106DD18
4M106DD22
4M106DD23
4M106DH46
4M106DJ02
(57)【要約】
【課題】検査装置を簡易にメンテナンスする。
【解決手段】減圧雰囲気で電子デバイスにプローブを接触させ、前記電子デバイスの電気特性を検査する検査装置であって、前記電子デバイスが載置されるチャックと、プローブを有するプローブカードを保持するように構成されたフレームと、前記チャック又は前記フレームに離接可能に設けられ、前記チャックと前記フレームとの間に密閉空間を形成するように構成されたシール部材と、第1バルブを有し、前記密閉空間に連通する第1配管と、第2バルブを有し、前記密閉空間に連通する第2配管と、前記第1配管を介して前記密閉空間を排気するように構成された排気部と、前記第2配管を介して前記密閉空間に温調媒体を供給するように構成された温調媒体供給部と、前記第1バルブと前記第2バルブとの開閉を制御し、前記排気部による排気と前記温調媒体供給部による温調媒体の供給とを切り替える制御部とを有する検査装置が提供される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧雰囲気で電子デバイスにプローブを接触させ、前記電子デバイスの電気特性を検査する検査装置であって、
前記電子デバイスを載置するように構成されたチャックと、
プローブを有するプローブカードを保持するように構成されたフレームと、
前記チャック又は前記フレームに離接可能に設けられ、前記チャックと前記フレームとの間に密閉空間を形成するように構成されたシール部材と、
第1バルブを有し、前記密閉空間に連通する第1配管と、
第2バルブを有し、前記密閉空間に連通する第2配管と、
前記第1配管を介して前記密閉空間を排気するように構成された排気部と、
前記第2配管を介して前記密閉空間に温調媒体を供給するように構成された温調媒体供給部と、
前記第1バルブと前記第2バルブとの開閉を制御し、前記排気部による排気と前記温調媒体供給部による温調媒体の供給とを切り替える制御部と、
を有する検査装置。
【請求項2】
前記シール部材は、ベローズである、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
第3バルブを有し、前記密閉空間に連通する第3配管を有し、
前記制御部は、
前記密閉空間に温調媒体を供給した後、前記第2バルブと前記第3バルブとの開閉を制御し、前記温調媒体の供給を停止し、前記第3配管から前記密閉空間にドライエアーを供給し、前記第1配管及び前記密閉空間の温調媒体をパージする、
請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記チャックは内部に流路を有し、
前記流路に連通する温調配管及び前記温調配管に接続された温調媒体ユニットを有し、
前記温調媒体供給部は、前記温調媒体ユニットから前記温調配管を介して前記チャック内の流路に前記温調媒体を循環させる、
請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記温調媒体は、前記温調媒体ユニットから供給される洗浄液である、
請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記温調媒体は、前記温調媒体ユニットから供給される冷却水である、
請求項4に記載の検査装置。
【請求項7】
電子デバイスの電気特性を検査する検査装置の保守方法であって、
前記検査装置は、
前記電子デバイスを載置するように構成されたチャックと、
プローブを有するプローブカードを保持するように構成されたフレームと、
前記チャック又は前記フレームに離接可能に設けられ、前記チャックと前記フレームとの間に密閉空間を形成するように構成されたシール部材と、
第1バルブを有し、前記密閉空間に連通する第1配管と、
第2バルブを有し、前記密閉空間に連通する第2配管と、
前記第1配管を介して前記密閉空間を排気するように構成された排気部と、
前記第2配管を介して前記密閉空間に温調媒体を供給するように構成された温調媒体供給部と、を有し、
前記電子デバイスに前記プローブを接触させ、前記電子デバイスの電気特性を検査する工程と、
前記検査する工程の間、前記第1バルブ及び前記第2バルブを第1状態に制御し、前記第1配管を介して前記密閉空間を排気する工程と、
前記第1バルブ及び前記第2バルブを前記第1状態と異なる第2状態に切り替え、前記第2配管を介して前記密閉空間に温調媒体を供給する工程と、
を有する、検査装置の保守方法。
【請求項8】
前記密閉空間に供給された温調媒体の液面を検出するセンサを有し、
前記密閉空間に温調媒体を供給する工程は、前記センサの検出結果に基づき前記密閉空間に供給する温調媒体の供給量を調整し、プローブを洗浄する、
請求項7に記載の検査装置の保守方法。
【請求項9】
前記検査装置は、第3バルブを有し、前記密閉空間に連通する第3配管を有し、
前記密閉空間に温調媒体を供給する工程を実行した後、前記第1バルブ、前記第2バルブ及び前記第3バルブを第3状態に切り替え、前記温調媒体の供給を停止し、前記第3配管から前記密閉空間にドライエアーを供給し、前記第1配管及び前記密閉空間の温調媒体をパージする工程を有する、
請求項7又は8に記載の検査装置の保守方法。
【請求項10】
前記温調媒体をパージする工程を実行した後、次の電子デバイスの電気特性を検査する場合、前記密閉空間を排気する工程は、前記第1バルブ及び前記第2バルブを前記第1状態に切り替え、前記第1配管を介して前記密閉空間を排気する、
請求項7又は8に記載の検査装置の保守方法。
【請求項11】
減圧雰囲気でチャックに電子デバイスを載置し、前記電子デバイスにプローブを接触させ、前記電子デバイスの電気特性を検査する検査装置であって、
プローブを有するプローブカードを保持するように構成されたフレームと、
前記チャックの上面に設けられ、前記プローブの対向位置に温調媒体を貯留する貯留部を有する前記チャックと、
前記貯留部に温調媒体を供給するように構成された温調媒体供給口と、
前記貯留部から温調媒体を排気するように構成された温調媒体排液口と、
を有する検査装置。
【請求項12】
前記検査装置を制御する制御部と、前記チャックの位置を制御するアライナーと、を有し、
前記制御部は、
前記貯留部に貯留された温調媒体に前記プローブを浸すように前記アライナーを制御する、
請求項11に記載の検査装置。
【請求項13】
前記温調媒体供給口は、前記チャックの上面から前記貯留部に温調媒体を供給するように構成される、
請求項11に記載の検査装置。
【請求項14】
前記温調媒体排液口は、前記チャックの上面の外周部の突起の一部に形成された溝であり、前記貯留部に貯留された温調媒体が前記温調媒体排液口から排出される、
請求項11に記載の検査装置。
【請求項15】
前記チャックを加振する加振部を有する、
請求項11~14のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項16】
前記加振部は、前記チャックの位置を制御するアライナーに接続されたモータ又は前記アライナーに取り付けられた超音波振動子である、
請求項15に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査装置及び検査装置の保守方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、ウェハ検査用のプローブカードの針状のプローブを研磨するウェハ検査装置及びそのメンテナンス方法を開示する。電子デバイスの検査時のコンタクトによりプローブの針先(接触端子)には汚れが付着する。これを取り除くため、電子デバイスの検査とは別に定期的に接触端子を研磨するための研磨用ウェハを載置し、研磨用ウェハにより針先を研磨する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、検査装置を簡易にメンテナンスすることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、減圧雰囲気で電子デバイスにプローブを接触させ、前記電子デバイスの電気特性を検査する検査装置であって、前記電子デバイスを載置するように構成されたチャックと、プローブを有するプローブカードを保持するように構成されたフレームと、前記チャック又は前記フレームに離接可能に設けられ、前記チャックと前記フレームとの間に密閉空間を形成するように構成されたシール部材と、第1バルブを有し、前記密閉空間に連通する第1配管と、第2バルブを有し、前記密閉空間に連通する第2配管と、前記第1配管を介して前記密閉空間を排気するように構成された排気部と、前記第2配管を介して前記密閉空間に温調媒体を供給するように構成された温調媒体供給部と、前記第1バルブと前記第2バルブとの開閉を制御し、前記排気部による排気と前記温調媒体供給部による温調媒体の供給とを切り替える制御部と、を有する検査装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、検査装置を簡易にメンテナンスすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る検査システムの一例を示す水平断面図。
【
図2】
図1の検査システムのI-I線による断面図。
【
図4】参考例の検査装置のチャック及びフレーム周辺の一例を示す図。
【
図5】実施形態に係る検査装置のチャック及びフレーム周辺の検査中の動作を示す図。
【
図6】実施形態に係る検査装置のチャック及びフレーム周辺の保守中の動作を示す図。
【
図7】実施形態に係る検査装置のチャック及びフレーム周辺のパージ中の動作を示す図。
【
図8】実施形態に係る保守方法の一例を示すフローチャート。
【
図9】変形例に係る検査装置のチャック及びフレーム周辺の構成及び保守中の動作を示す図。
【
図10】変形例に係る検査装置の拡大図及び
図9のII-II断面を平面視した図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[検査システム]
最初に、実施形態に係る検査システム100について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る検査システム100の一例を示す水平断面図である。
図2は、
図1の検査システム100のI-I線による断面図である。
図3は、実施形態に係る検査装置30の概略構成図である。
【0010】
図1に示すように、検査システム100は、ウェハ(ウェハに形成された電子デバイス)に対して電気的検査を行う複数の検査装置30を有する検査部12と、検査部12にウェハを搬送するローダ部13とを有する。検査部12とローダ部13とは、連結されて構成されている。検査部12の、ローダ部13と反対側の背面側はメンテナンススペースとなっている。
【0011】
温調媒体供給部200は、温調媒体を検査部12の検査室列毎に供給する。温調媒体供給部200は、温調媒体ユニット70、温調配管60及び排熱処理部66を有しており、温調配管60が検査システム100内に延びている。
【0012】
図1及び
図2に示すように、検査部12は、X方向に沿って4つの検査室24が配列され、このような検査室列がZ方向(上下方向)に3段配置されている。つまり、検査システム100は、12に分かれた検査室24に12個の検査装置30を有し、4つの検査室列が3段に配置されている。12個の検査室24は、クリーンルーム300内に配置されている。
【0013】
各段の検査室列は連通して一つの密閉空間である検査空間となっており、上段検査空間12a、中段検査空間12b、下段検査空間12cを形成している。上段検査空間12aと中段検査空間12bとの間、中段検査空間12bと下段検査空間12cとの間、下段検査空間12cの下には、温調媒体供給部200から延びる温調配管60が配設される配管配設空間27が設けられている。配管配設空間27に延びる温調配管60は、上段検査空間12a、中段検査空間12b、下段検査空間12cのそれぞれに対応して1本ずつ配設され、検査室列内の4つの検査装置30を直列に接続する。
【0014】
各検査室24に設けられた検査装置30には、
図3に示すようにウェハ検査用のテスタ31、プローブカード32およびウェハWを保持するチャック(ウェハステージ)36が組み込まれている。アライナー28は、チャック36をX,Y,Z方向に移動させる。
【0015】
図2に示すように、上段検査空間12a、中段検査空間12b、下段検査空間12cのそれぞれにX方向に移動可能な1台のアライナー(ステージ)28が検査装置30の下方に設けられている。アライナー28は、X方向に配列された4つの検査装置30に対して、ウェハWの着脱および位置決めを行う。また、上段検査空間12a、中段検査空間12b、下段検査空間12cのそれぞれに、X方向に沿って移動可能に1台のアライメント用のカメラ29が設けられている。
【0016】
図1に示すように、各検査室24の背面側には、各検査装置30の制御機器であるセルコントロールユニット25が設けられている。セルコントロールユニット25は、ソレノイド、バキュームセンサ、電空レギュレータ、E-IOM基板、温調器等を有する。エレキ機器であるE-IOM基板、温調器等と、エアー/バキューム機器であるソレノイド、バキュームセンサ、電空レギュレータとは分離した状態で配設されている。また、各検査室24の前面には、搬送口24aが設けられており、搬送口24aはシャッター26により開閉可能となっている。検査室24とセルコントロールユニット25は連通している。
【0017】
ローダ部13は、載置台19と、搬入出部14と、搬入出部14及び検査部12の間に設けられる搬送室23とを有する。載置台19は、検査部12と対向するように、複数のウェハWを収容する容器であるFOUP18を載置する。搬入出部14には、プローブカードローダ20と、ウェハWの位置合わせを行う位置合わせ部21とがX方向に配列されている。搬入出部14の内部には制御部90が設けられている。搬送室23では、ウェハWを搬送する搬送機構22が走行する。
【0018】
搬送機構22は、Z方向およびX方向に移動可能に設けられ、搬送アームの前後動およびθ方向の回転により、FOUP18から検査前のウェハWを受け取り、各段の検査室24へウェハWを受け渡す。また、検査後のウェハWを受け取ってFOUP18へ戻す。搬送機構22は新規のプローブカードをプローブカードローダ20から各検査装置30へ搬送する。
【0019】
[検査装置の構成]
更に検査装置30の構成について、
図3を参照しながら詳述する。
図3は、実施形態に係る検査装置30の概略構成図である。検査装置30は、減圧雰囲気で電子デバイスにプローブを接触させ、電子デバイスの電気特性を検査する。検査装置30は、テスタ31と、プローブカード32と、フレーム33と、コンタクトブロック34と、ベローズ35と、チャック36とを有する。テスタ31は、ウェハWに形成された電子デバイスに検査信号を送る。プローブカード32は、ウェハWに形成された複数の電子デバイスの電極に接触する複数のプローブ32aを有する。フレーム33は、テスタ31の下に設けられ、プローブカード32を保持する。コンタクトブロック34は、テスタ31とプローブカード32とを接続する。
【0020】
ベローズ35は、フレーム33に固定され、フレーム33から垂下し、チャック36に離接可能に設けられ、プローブカード32を囲み、密閉空間Uを形成するように設けられる。ただし、ベローズ35は、チャック36に固定され、チャック36から延び、フレーム33に離接可能に設けられ、プローブカード32を囲み、密閉空間Uを形成するように設けられてもよい。ベローズ35は、チャック36又はフレーム33に離接可能に設けられ、チャック36とフレーム33との間に密閉空間Uを形成するように構成されたシール部材の一例である。したがって、シール部材は、ベローズ35に限らず、密閉空間Uを形成するように封止構造を有していればよい。
【0021】
コンタクトブロック34の上下面には、プローブカード32とテスタ31とを電気的に接続する多数のポゴピン34aが設けられている。ベローズ35は、チャック36上のウェハWをプローブカード32の複数のプローブ32aをウェハWに接触した状態で、プローブカード32とウェハWを含む密閉空間Uを形成する。その密閉空間Uを、密閉空間Uに接続されたバキュームラインである第1配管84を介して電空レギュレータ85により真空引きする。これにより、チャック36及びプローブカード32がフレーム33に吸着される。チャック36は、電子デバイスが形成されたウェハWを真空吸着により吸着支持し、ウェハWを温調する。
【0022】
アライナー28は、その段のベース板の上に設けられたガイドレール41上をX方向に移動するXブロック42を有する。アライナー28は、更にXブロック42上にY方向に沿って設けられたガイドレール43上をY方向に移動するYブロック44を有する。アライナー28は、更にYブロック44に対してZ方向に移動するZブロック45を有し、Zブロック45上には、チャック36が所定の位置関係を保った状態で係合される。なお、Yブロック44の周壁には、プローブカード32の下面を撮影するためのカメラ46が設けられている。
【0023】
アライナー28は、Xブロック42がX方向に移動することにより各検査装置30にアクセス可能である。アライナー28は、移動機構によりXブロック42、Yブロック44、Zブロック45を移動させてウェハを載置するチャック36をX,Y,Z方向に移動させる。これにより、各検査装置30に対して検査対象の電子デバイスが形成されたウェハWの位置合わせを行う。また、アライナー28は、チャック36上のウェハWのプローブカード32への装着、プローブカード32からのチャック36上のウェハWの取り外し、および搬送機構22に対するウェハWの授受等を行う。
【0024】
チャック36にウェハWを搬送し、次いで、ウェハWのプローブカード32に対する位置合わせを行う。次いで、アライナー28によりチャック36を上昇させて、ウェハWをプローブカード32のプローブ32aに接触させた後、さらにチャック36を上昇させ、ウェハWをプローブ32aに押し付ける。その状態でベローズ35に囲まれた密閉空間Uを、第1配管84を介して電空レギュレータ85により真空引きする。真空引きしてチャック36をフレーム33に吸着させるとともに、ウェハWがプローブ32aに押し付けられた状態を維持する。この状態で、テスタ31による電気的検査が開始される。このとき、アライナー28のZブロック45は下方に退避される。アライナー28は検査終了後の他の検査装置30に移動され、上記と逆動作により、検査後のチャック36を下降させて、検査後のウェハWを搬送機構22によりFOUP18に戻す。
【0025】
図1に示す制御部90は、コンピュータからなり、検査システム100を構成する各構成部、例えば、各検査装置30のテスタ31、電空レギュレータ85、アライナー28、搬送機構22、温調媒体ユニット70からの温調媒体の供給等を制御する。制御部90は、CPUを有する主制御部と、入力装置(キーボード、マウス等)、出力装置(プリンタ等)、表示装置(ディスプレイ等)、記憶装置(記憶媒体)を有している。制御部90の主制御部は、例えば、記憶装置に内蔵された記憶媒体、または記憶装置にセットされた記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて、検査システム100に所定の動作を実行させる。
【0026】
[チャック及びフレーム周辺]
次に、検査装置30のチャック36及びフレーム33周辺の真空排気及び温調媒体の供給に関する構成について、参考例の検査装置のチャック及びフレーム周辺の構成と比較して説明する。
図4は、参考例の検査装置30'のチャック及びフレーム周辺の一例を示す図である。
図5は、実施形態に係る検査装置30のチャック及びフレーム周辺の検査中の動作を示す図である。
【0027】
図4に示す参考例の検査装置30'のチャック36及びフレーム33の周辺では、密閉空間Uに接続されたバキュームラインである第1配管84を介して電空レギュレータ85が設けられている。電空レギュレータ85は、制御部90からの電気信号(入力信号)に比例した空気圧力を連続的にコントロールし、これにより第1配管84を介して接続された密閉空間U内を真空引きする。
【0028】
チャック36の内部には、温調媒体の流路36aが形成されている。流路36aは温調媒体を流路36aに流入する流路入口36b及び流路36aから温調媒体を流出する流路出口36cを有する。流路入口36b及び流路出口36cは温調配管60a、60bに接続され、温調配管60a、60bを介して温調媒体ユニット70に繋がる。また、温調配管60aには流量制御バルブ72が設けられ、弁体の開度を制御することで流路36aへ流す温調媒体の流量を制御する。温調配管60a、60bは、総称して温調配管60とも表記する。
【0029】
係る構成により、温調媒体は、温調媒体ユニット70から供給され、温調配管60aを流れ、流量制御バルブ72で流量制御されて流路入口36bから流路36aへ流入する。そして、温調媒体は、流路36aを流れて流路出口36cから温調配管60bに流出し、温調媒体ユニット70へ戻る。かかる循環経路を所定温度の温調媒体が循環することにより、チャック36の温度が調整される。
【0030】
プローブカード32は、ウェハWに形成された複数の電子デバイスの電極に複数のプローブ32aを接触させて検査を実行する。検査装置30では電子デバイスの検査時のこのような接触(コンタクト)によりプローブ32aの針先(接触端子)に汚れが発生する。その汚れを除去するため、電子デバイスの検査とは別に定期的にプローブ32aの針先を研磨するための研磨用ウェハをチャック36上の図示しない針研プレートに載置する。そして、研磨用ウェハによりプローブ32aの針先を研磨し、針先の汚れを取り除く。研磨用ウェハによる研磨中は検査を行うことができず、稼働率低下の要素の一つとなっている。
【0031】
また、プローブ32aの針先を研磨する際、メカニカルな針研動作を行うため、針研ウェハを針研プレートの上に乗せて搬送及びコンタクトを行っており、針研プレートのコストが課題となっている。
【0032】
そこで、本実施形態に係る検査装置30の保守方法では、密閉空間U内に液体を充填し、液体によりプローブ32aの針先を洗浄する。前述した針研動作にはアライナー28を必要とするが、本開示の保守方法ではアライナー28が不要となる。このため、アライナー28の律速条件により保守時間が長くなることを防ぎ、検査装置30の稼働率低下を抑制できる。また、アライナー28の剛性が不要となる。なお、以下の説明では、密閉空間U内に供給する液体は、温調媒体である。
【0033】
温調媒体は、温調媒体ユニット70から供給される冷却水でもよいし、温調媒体ユニット70から供給されるチャック36と約同一温度の温水でもよい。温調媒体ユニット70から供給されるフッ素系のブラインでもよい。また、温調媒体は、洗浄液であってもよい。この場合、温調媒体ユニット70は洗浄容器であり、洗浄容器から洗浄液が供給されるようにしてもよい。
【0034】
本開示の保守方法を実行するための、本実施形態の検査装置30のチャック36及びフレーム33の周辺の真空排気及び温調媒体の供給に関する構成について
図5を参照しながら説明する。本実施形態の検査装置30においても、密閉空間Uに接続されたバキュームラインである第1配管84を介して電空レギュレータ85が設けられている。第1配管84は、密閉空間Uに連通し、その間に第1バルブ82を有する。第1バルブ82の弁体の全閉及び全開により第1配管84の開閉が制御される。電空レギュレータ85は、制御部90からの電気信号(入力信号)に比例した空気圧力を連続的にコントロールし、これにより第1配管84を介して接続された密閉空間U内を真空引きする。これにより、チャック36及びプローブカード32をフレーム33に吸着させることができる。
【0035】
第1配管84は、第3配管87に分岐する。第3配管87は、第1配管84を介して密閉空間Uに連通する。第3配管87には第3バルブ83が設けられている。第3バルブ83の弁体の全閉及び全開により第3配管87の開閉が制御される。第3配管87には、図示しないドライエアー供給器から第3配管87及び第1配管84を介して密閉空間U内にドライエアーが供給される。
【0036】
第1配管84、第1バルブ82及び電空レギュレータ85は、第1配管84を介して密閉空間Uを排気するように構成された排気部400の一例である。
【0037】
チャック36の内部には、温調媒体の流路36aが形成されている。流路36aは温調媒体を流路36aに流入する流路入口36b及び流路36aから温調媒体を流出する流路出口36cを有する。
【0038】
温調媒体供給部200は、温調配管60a、60b、温調媒体ユニット70、流量制御バルブ72を有する。流路入口36bは温調配管60aに接続され、流路出口36cは温調配管60bに接続されている。温調配管60a、60bは温調媒体ユニット70に接続されている。温調配管60aには流量制御バルブ72が設けられ、弁体の開度を制御することで流路36aへ流す温調媒体の流量を制御する。
【0039】
係る構成により、温調媒体は、温調媒体ユニット70から供給され、温調配管60aを流れ、流量制御バルブ72で流量制御されて流路入口36bから流路36aへ流入する。そして、温調媒体は、流路36aを流れて流路出口36cから温調配管60bに流出し、温調媒体ユニット70へ戻る。かかる循環経路を所定温度の温調媒体が循環することにより、チャック36の温度が調整される。
【0040】
さらに、温調媒体供給部200は、第2配管80a、80bを有する。第2配管80aは、温調配管60aから分岐し、密閉空間Uに連通する。第2配管80aには、温調配管60a側から順に第2バルブ75a、可変オリフィス71が設けられている。第2バルブ75aの弁体の全閉及び全開により第2配管80aの開閉が制御される。可変オリフィス71は、第2配管80aを流れる温調媒体の流量を調整する。
【0041】
第2配管80bは、温調配管60bから分岐し、密閉空間Uに連通する。第2配管80bには、温調配管60b側から順に逆止弁79、第2バルブ75bが設けられている。第2バルブ75bの弁体の全閉及び全開により第2配管80bの開閉が制御される。逆止弁79は、温調媒体が第2配管80bから密閉空間Uへ逆流することを防止する。
【0042】
係る構成により、洗浄工程では、第2バルブ75aを開き、温調媒体ユニット70からの温調媒体を第2配管80aに流し、可変オリフィス71により流量調整された温調媒体を密閉空間Uに流す。パージ工程では、第2バルブ75bを開き、密閉空間U内の温調媒体を第2配管80bに流し、温調媒体ユニット70に戻す。
【0043】
第2配管80a、80bは、第2バルブ75a、75bを有し、密閉空間Uに連通する第2配管の一例である。以下、温調媒体供給部200のうち、温調配管60aから流路36aへ温調媒体を供給し、温調配管60bを介して温調媒体ユニット70へ温調媒体を循環させる構成を第1供給部240とも称する。また、温調媒体供給部200のうち、第2配管80aから密閉空間Uへ温調媒体を供給し、第2配管80bを介して温調媒体ユニット70へ温調媒体を循環させる構成を第2供給部250とも称する。
【0044】
つぎに、排気部400及び温調媒体供給部200の動作について説明する。検査装置30は、検査工程の間、密閉空間Uを排気する排気工程を行い、メンテナンス時に密閉空間Uに温調媒体を供給する洗浄工程に移行し、洗浄工程後に密閉空間U内をパージするパージ工程に移行し、パージ工程後に次の検査工程及び排気工程に移行する。排気工程から洗浄工程へ移行するとき、制御部90は、第1バルブ82と第2バルブ75a、75bとの開閉を制御し、排気部400による密閉空間Uの排気と温調媒体供給部200(第2供給部250)による密閉空間Uへの温調媒体の供給との切り替えを制御する。以下、排気工程(
図5)、洗浄工程(
図6)、パージ工程(
図7)の各工程の動作を説明する。
【0045】
[排気工程]
検査装置30がウェハW上の電子デバイスの電気特性を検査する検査工程の間、制御部90は、第1バルブ82及び第2バルブ75a、75bを第1状態に制御する。これに応じて、排気部400は第1配管84を介して密閉空間Uを排気する(排気工程)。
【0046】
第1状態は、
図5に示すように、第1バルブ82が開き、第2バルブ75a、75bが閉じた状態である。第1バルブ82が開かれているため、電空レギュレータ85は、制御部90の制御に従い空気圧力を連続的に制御し、密閉空間U内を真空引きする。また、第2バルブ75a、75bは閉じているため、第2供給部250は、温調媒体を密閉空間Uに供給しない。
【0047】
温調媒体供給部200の第1供給部240は、制御部90の制御に従い流量制御バルブ72の開度を調整し、所定流量の温調媒体を温調媒体ユニット70、温調配管60a、チャック36内の流路36a、温調配管60bに循環させる。なお、排気工程では、第3バルブ83は閉じられているため、密閉空間U内にドライエアーは供給されない。
【0048】
[洗浄工程]
検査工程を実行した後、保守条件が満たされるとメンテナンスが開始され、洗浄工程が実行される。保守条件としては、検査したウェハWの枚数、検査の継続時間等が閾値を上回ったときが一例として挙げられる。
【0049】
洗浄工程では、制御部90は、第1バルブ82及び第2バルブ75a、75bを第1状態と異なる第2状態に切り替える制御を行い、第2配管80aを介して密閉空間Uに温調媒体を供給する。
【0050】
第2状態は、
図6に示すように、第1バルブ82が閉じ、第2バルブ75aが開き、第2バルブ75bが閉じたままの状態である。また、第3バルブ83は閉じたままの状態である。第1バルブ82及び第3バルブ83を閉じた状態で第1配管84及び第3配管87が大気開放される。
【0051】
第2バルブ75aが開かれているため、可変オリフィス71により所定流量に絞られた温調媒体(
図6の温調媒体Lを参照)が第2配管80aから密閉空間Uに供給される。第2配管80bは閉じられ、その下流側に逆止弁79が設けられているため、温調媒体Lは第2配管80bから温調媒体ユニット70へは戻らない。これにより、密閉空間Uに温調媒体Lが供給され、プローブカード32のプローブ32aが温調媒体Lに浸され、プローブ32aの針先(接触端子)が洗浄される。密閉空間Uの上面には液面センサ86が設けられている。液面センサ86は、フレーム33の下面から垂下し、温調媒体Lの液面が温調媒体Lを充填してよい高さの限界値まで来たときに温調媒体Lの液面を検出し、その検出結果を制御部90に送信する。制御部90は、検出結果に基づき密閉空間Uに供給する温調媒体Lの供給を停止(調整)する。
【0052】
これにより、密閉空間Uに許容範囲内の温調媒体Lが充填される。この結果、プローブ32aの針先を含む部分が温調媒体に浸され、密閉空間Uに供給された温調媒体Lによってプローブ32aを洗浄することができる。また、液面センサ86により温調媒体Lが密閉空間Uから溢れないようにすることができる。
【0053】
なお、洗浄工程では、第3バルブ83は閉じられているため、密閉空間U内にドライエアーは供給されない。洗浄工程の間、第1供給部240は、温調媒体Lを温調媒体ユニット70、温調配管60a、流路36a、温調配管60b、温調媒体ユニット70に循環させてもよいし、その循環を停止してもよい。
【0054】
[パージ工程]
洗浄工程を実行した後、制御部90は、第1バルブ82、第2バルブ75a、75b及び第3バルブ83を第3状態に切り替える。
【0055】
第3状態は、
図7に示すように、第2バルブ75aが閉じ、第2バルブ75bが開き、第3バルブ83が開いた状態である。また、第1バルブ82は閉じたままの状態である。第2バルブ75aが閉じられているため、温調媒体の密閉空間Uへの供給が停止する。また、第3バルブ83が開かれるため、第3配管87及び第1配管84を介して密閉空間Uにドライエアーが供給される。
【0056】
これにより、ドライエアーによって第1配管84及び密閉空間U内がパージされる。第2バルブ75bが開かれているため、密閉空間U内の温調媒体は、第2配管80bに流れ、温調媒体ユニット70に戻る。逆止弁79により温調媒体が密閉空間U側に逆流することを防止できる。なお、
図7の例は、密閉空間U内の温調媒体Lが排出されている途中を示し、パージ工程において密閉空間U内の温調媒体Lはすべて排出される。パージ工程の間、第1供給部240は、温調媒体を温調媒体ユニット70、温調配管60a、流路36a、温調配管60b、温調媒体ユニット70に循環させてもよいし、その循環を停止してもよい。
【0057】
[次検査]
温調媒体を密閉空間Uからパージする工程を実行した後、
図5に示すように、検査工程では、次の検査対象の電子デバイスが形成されたウェハWを検査装置30内に搬入し、チャック36に検査対象のウェハWを載置する。そして、その電子デバイスにプローブ32aを接触させ、電子デバイスの電気特性を検査する。
【0058】
検査工程の間実行される排気工程では、制御部90は、再び第1バルブ82及び第2バルブ75a、75bを第1状態に切り替える。
図5に示すように、第1バルブ82が開き、第2バルブ75a、75bが閉じた状態である。これにより、第1配管84を介して密閉空間を排気でき、密閉空間U内に温調媒体は供給されない。なお、第3バルブ83は閉じられ、密閉空間U内にドライエアーは供給されない。検査工程の間、第1供給部240は、温調媒体を温調媒体ユニット70、温調配管60a、流路36a、温調配管60b、温調媒体ユニット70に循環させる。
【0059】
[保守方法]
本実施形態に係る保守方法について、
図8を参照しながら説明する。保守方法を含む検査方法は、制御部90の制御により検査装置30において実行される。まず、制御部90は、検査装置30の各部を制御し、ウェハW上に形成された電子デバイスの検査工程を実行する。
【0060】
(検査工程及び排気工程;S1)
検査工程では、ステップS1において制御部90は、チャック36にウェハWを搬送し、次いで、ウェハWのプローブカード32に対する位置合わせを行う。次いで、アライナー28によりチャック36を上昇させて、ウェハWをプローブカード32のプローブ32aに接触させた後、さらにチャック36を上昇させ、ウェハWをプローブ32aに押し付ける。
【0061】
その状態で
図5に示すように第1バルブ82を開き、電空レギュレータ85を制御してベローズ35に囲まれた密閉空間Uを真空引きしてチャック36をフレーム33に吸着させるとともに、ウェハWがプローブ32aに押し付けられた状態を維持する。この状態で、テスタ31による電気的検査が開始される。検査工程では、第2バルブ75a、75b、第3バルブ83は閉じている。第1供給部240は、温調媒体を温調媒体ユニット70、温調配管60a、流路36a、温調配管60b、温調媒体ユニット70に循環させる。
【0062】
(判定工程;S3)
次に、ステップS3において制御部90は、メンテナンスを行うかを判定する。メンテナンスを行うか否かは、保守条件を満たすか否かにより判定する。制御部90は、保守条件を満たすまで、「No」と判定し、ステップS1に戻り検査工程を続ける。制御部90は、保守条件を満たしたとき、「Yes」と判定し、ステップS5に進む。
【0063】
(洗浄工程;S5)
次に、ステップS5において制御部90は、プローブ32aの針先(接触端子)を洗浄する洗浄工程を実行する。洗浄工程では、
図6に示すように、第1バルブ82を閉じ、密閉空間Uの真空引きを停止する。洗浄工程では、第2バルブ75aが開き、第2バルブ75b、第3バルブ83は閉じたままである。これにより、第2配管80aから密閉空間Uへ温調媒体Lが供給され、密閉空間U内で温調媒体によりプローブ32aが洗浄される。
【0064】
(パージ工程;S7)
次に、ステップS7において制御部90は、パージ工程を実行する。パージ工程では、
図7に示すように、第1バルブ82は閉じたままの状態で、第2バルブ75b及び第3バルブ83が開き、第2バルブ75aは閉じている。
【0065】
これにより、第3配管87から密閉空間Uへドライエアーが供給され、ドライエアーにより第1配管84及び密閉空間U内がパージされ、密閉空間U内の温調媒体Lは、第2配管80bから温調媒体ユニット70へ戻される。
【0066】
(判定工程;S9)
次に、ステップS9において制御部90は、検査を終了するかを判定する。制御部90は、次の検査がある場合、「No」と判定し、ステップS1に戻り、次のウェハWを検査する。制御部90は、次の検査がない場合、「Yes」と判定し、本処理を終了する。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態に係る検査装置30及び検査装置30の保守方法によれば、プローブ32aの洗浄を容易に行うことができ、針先の摩耗を低減し、針研プレートを不要とすることができる。これにより、検査装置30を簡易にメンテナンスすることができる。また、検査装置30のメンテナンス時間を短縮し、検査装置30の稼働率を高めることができる。これにより、ランニングコストと針研時間を少なくすることができる。
【0068】
[変形例]
次に、変形例に係る検査装置30について、
図9及び
図10を参照しながら説明する。
図9は、変形例に係る検査装置30のチャック36及びフレーム33の周辺の構成及び保守中の動作を示す図である。
図10(a)は、変形例に係る検査装置30の温調媒体排液口36f付近の拡大図、
図10(b)は、
図9(a)のII-II線による断面を平面視した図である。変形例では、検査装置30のチャック36及びフレーム33の周辺構造を中心に説明し、その他の構成については上記実施形態に係る検査装置30とほぼ同一構成であるため説明を省略する。また、
図9(a)に示す温調配管60a、60bと配管88a、88bとは
図9(b)では省略する。
【0069】
変形例に係る検査装置30は、ベローズ35(
図3参照)を有していない。よって、変形例に係る検査装置30では、チャック36及びフレーム33の間は密閉空間Uを形成せず、チャック36は、その上面に温調媒体Lを貯留する貯留部36dを有する。貯留部36dは、チャック36の上面においてチャック36の外周部に形成された突起であるリブ36d1と、チャック36の上面とにより形成され、プローブ32aの対向位置に温調媒体Lを貯留する。リブ36d1は、チャック36の上面の最外周に全周に亘って環状に形成された突起である。
【0070】
温調媒体Lは、温調媒体ユニット70(
図9(a)参照)から供給される冷却水でもよいし、温調媒体ユニット70から供給されるチャック36と約同一温度の温水でもよい。温調媒体ユニット70から供給されるフッ素系のブラインでもよい。また、温調媒体Lは、洗浄液であってもよい。この場合、温調媒体ユニット70は洗浄容器であり、洗浄容器から洗浄液が供給されるようにしてもよい。
【0071】
変形例においても、検査工程を実行した後、保守条件が満たされるとメンテナンスが開始され、洗浄工程が実行される。洗浄工程では、温調媒体供給口から貯留部36dに温調媒体Lが供給される。このとき、基板Wはチャック36に載置されていない状態である。
【0072】
温調媒体供給口は、チャック36内の流路36eからチャック36の上面に開口する。
図10(b)では、温調媒体供給口が貯留部36dに5か所設けられている。温調媒体Lは、温調媒体ユニット70から供給され、配管88aからチャック36内の流路36eを通り、チャック36の上面に形成された複数の流路36eの開口(温調媒体供給口)から貯留部36dに上向きに噴き出すようにして供給される。これにより、
図9(a)に示すように、貯留部36dに温調媒体Lが供給される。
【0073】
貯留部36dに温調媒体Lを溜めた後、制御部90は、貯留部36dに貯留された温調媒体Lにプローブ32aを浸すようにアライナー28を制御する。これにより、アライナー28はチャック36の位置を上昇及び/又は水平移動させ、
図9(b)に示すようにプローブ32aを温調媒体Lに浸す。これにより、温調媒体Lを洗浄液としてプローブ32aをクリーニングすることができる。
【0074】
液面センサ86は、温調媒体Lの液面が温調媒体Lを充填してよい高さの限界値まで来たときに温調媒体Lの液面を検出し、その検出結果を制御部90に送信する。制御部90は、検出結果に基づき貯留部36dに供給する温調媒体Lの供給を停止する。これにより、貯留部36dに許容範囲内の温調媒体Lが充填される。ただし、液面センサ86はなくてもよい。
【0075】
検査装置30は、チャックを加振する加振部を有する。加振部は、アライナー28に接続されたモータ91又はアライナー28に取り付けられた超音波振動子92であってよい。モータ91の場合、モータ91のゲインを調整することにより温調媒体Lに浸されたプローブ32aを加振する。超音波振動子92の場合、超音波振動子92による振動により温調媒体Lに浸されたプローブ32aを加振する。これにより、プローブ32aの洗浄をより効果的に行うことができる。
【0076】
図9(a)及び(b)では、モータ91は、プローブ32aを垂直方向(Z方向)に加振する又は水平方向(X方向及びY方向)に加振するようにアライナー28のXブロック42、Yブロック44、Zブロック45の少なくともいずれかに配置されてもよい。
【0077】
モータ91に代えて超音波振動子92を用いて加振する場合、モータ91は不要であり、超音波振動子92は、チャック36直下のZブロック45に取り付けることが好ましい。超音波振動子92は垂直方向(Z方向)に加振する。
【0078】
モータ91又は超音波振動子92は、
図9(b)に示すように、プローブ32aの針先が温調媒体Lに着いたとき又はその後加振を開始する。Z方向、つまり垂直方向に加振する場合、プローブ32aの針先がチャック36に当たってしまわないように、制御部90は、モータ91又は超音波振動子92によるチャック36の振動の周波数とチャック36の変位とを制御する。X方向及びY方向、つまり水平方向に加振する場合には、チャック36とプローブ32aの針先とが当たってしまうことを回避することができる。
【0079】
図10(a)及び(b)に示すように、検査装置30は、貯留部36dから温調媒体を排気する温調媒体排液口36fを有する。温調媒体排液口36fは、リブ36d1の一部に形成された溝である。一例では、
図10(b)に示すように、温調媒体排液口36fは、環状に形成されたリブ36d1に対して上下左右に均等に4つ配置された溝である。
図10(a)に示すように、貯留部36dに貯留された温調媒体Lは、温調媒体排液口36fから排出される。
【0080】
温調媒体Lは、加振により又は加振しない場合にあってもプローブ32aから脱離した付着物を含んでいる。よって、貯留部36d内に付着物が溜まってしまわないように温調媒体Lを貯留部36dから排出する必要がある。そこで、リブ36d1の一部に形成された温調媒体排液口36fから温調媒体Lを外部へ排出する。
図10(a)及び(b)の矢印に示すように、温調媒体排液口36fから外部への温調媒体Lの流れが形成され、その流れに従い付着物が回収される。
【0081】
温調媒体排液口36fから外部へ温調媒体Lを回収するためにリブ36d1の外周に全周に亘って配管36gが形成されている。この配管36gには配管88bが接続され、配管88bを介してポンプ(図示せず)が接続されている。ポンプで配管36g内の温調媒体Lを回収し、ストレーナーを用いて回収した温調媒体Lから付着物を除去した後、温調媒体Lをチラーユニットに戻し、再利用する。
【0082】
変形例に係る検査装置30及び検査装置30の保守方法によっても、プローブ32aの洗浄を容易に行うことができ、針先の摩耗を低減し、針研プレートを不要とすることができる。これにより、検査装置30を簡易にメンテナンスすることができる。また、検査装置30のメンテナンス時間を短縮し、検査装置30の稼働率を高めることができる。これにより、ランニングコストと針研時間を少なくすることができる。
【0083】
なお、変形例に係る検査装置30において、検査工程、洗浄工程、温調媒体回収工程がこの順で行われる。また、適宜、上記実施形態に係る検査装置30の温調媒体供給部200、排気部400(
図5参照)等の構成を使用できる。また、
図9(a)に示す温調配管60a、60bと配管88a、88bとは、別系統でチラーユニット(図示せず)に接続されてもよい。流路36aと流路36eに流す温調媒体は共通化し、同じチラーユニットから供給されるようにしてもよいし、別のチラーユニットから供給されるようにしてもよい。
【0084】
以上に開示された実施形態は、例えば、以下の態様を含む。
(付記1)
減圧雰囲気で電子デバイスにプローブを接触させ、前記電子デバイスの電気特性を検査する検査装置であって、
前記電子デバイスを載置するように構成されたチャックと、
プローブを有するプローブカードを保持するように構成されたフレームと、
前記チャック又は前記フレームに離接可能に設けられ、前記チャックと前記フレームとの間に密閉空間を形成するように構成されたシール部材と、
第1バルブを有し、前記密閉空間に連通する第1配管と、
第2バルブを有し、前記密閉空間に連通する第2配管と、
前記第1配管を介して前記密閉空間を排気するように構成された排気部と、
前記第2配管を介して前記密閉空間に温調媒体を供給するように構成された温調媒体供給部と、
前記第1バルブと前記第2バルブとの開閉を制御し、前記排気部による排気と前記温調媒体供給部による温調媒体の供給とを切り替える制御部と、
を有する検査装置。
(付記2)
前記シール部材は、ベローズである、
付記1に記載の検査装置。
(付記3)
第3バルブを有し、前記密閉空間に連通する第3配管を有し、
前記制御部は、
前記密閉空間に温調媒体を供給した後、前記第2バルブと前記第3バルブとの開閉を制御し、前記温調媒体の供給を停止し、前記第3配管から前記密閉空間にドライエアーを供給し、前記第1配管及び前記密閉空間の温調媒体をパージする、
付記1又は2に記載の検査装置。
(付記4)
前記チャックは内部に流路を有し、
前記流路に連通する温調配管及び前記温調配管に接続された温調媒体ユニットを有し、
前記温調媒体供給部は、前記温調媒体ユニットから前記温調配管を介して前記チャック内の流路に前記温調媒体を循環させる、
付記1~3のいずれか一項に記載の検査装置。
(付記5)
前記温調媒体は、前記温調媒体ユニットから供給される洗浄液である、
付記4に記載の検査装置。
(付記6)
前記温調媒体は、前記温調媒体ユニットから供給される冷却水である、
付記4に記載の検査装置。
(付記7)
電子デバイスの電気特性を検査する検査装置の保守方法であって、
前記検査装置は、
前記電子デバイスを載置するように構成されたチャックと、
プローブを有するプローブカードを保持するように構成されたフレームと、
前記チャック又は前記フレームに離接可能に設けられ、前記チャックと前記フレームとの間に密閉空間を形成するように構成されたシール部材と、
第1バルブを有し、前記密閉空間に連通する第1配管と、
第2バルブを有し、前記密閉空間に連通する第2配管と、
前記第1配管を介して前記密閉空間を排気するように構成された排気部と、
前記第2配管を介して前記密閉空間に温調媒体を供給するように構成された温調媒体供給部と、を有し、
前記電子デバイスに前記プローブを接触させ、前記電子デバイスの電気特性を検査する工程と、
前記検査する工程の間、前記第1バルブ及び前記第2バルブを第1状態に制御し、前記第1配管を介して前記密閉空間を排気する工程と、
前記第1バルブ及び前記第2バルブを前記第1状態と異なる第2状態に切り替え、前記第2配管を介して前記密閉空間に温調媒体を供給する工程と、
を有する、検査装置の保守方法。
(付記8)
前記密閉空間に供給された温調媒体の液面を検出するセンサを有し、
前記密閉空間に温調媒体を供給する工程は、前記センサの検出結果に基づき前記密閉空間に供給する温調媒体の供給量を調整し、プローブを洗浄する、
付記7に記載の検査装置の保守方法。
(付記9)
前記検査装置は、第3バルブを有し、前記密閉空間に連通する第3配管を有し、
前記密閉空間に温調媒体を供給する工程を実行した後、前記第1バルブ、前記第2バルブ及び前記第3バルブを第3状態に切り替え、前記温調媒体の供給を停止し、前記第3配管から前記密閉空間にドライエアーを供給し、前記第1配管及び前記密閉空間の温調媒体をパージする工程を有する、
付記7又は8に記載の検査装置の保守方法。
(付記10)
前記温調媒体をパージする工程を実行した後、次の電子デバイスの電気特性を検査する場合、前記密閉空間を排気する工程は、前記第1バルブ及び前記第2バルブを前記第1状態に切り替え、前記第1配管を介して前記密閉空間を排気する、
付記7~9のいずれか一項に記載の検査装置の保守方法。
(付記11)
減圧雰囲気でチャックに電子デバイスを載置し、前記電子デバイスにプローブを接触させ、前記電子デバイスの電気特性を検査する検査装置であって、
プローブを有するプローブカードを保持するように構成されたフレームと、
部に形成された溝に設けられ、前記プローブの対向位置に温調媒体を貯留する貯留部を有する前記チャックと、
前記貯留部に温調媒体を供給するように構成された温調媒体供給口と、
前記貯留部から温調媒体を排気するように構成された温調媒体排液口と、
を有する検査装置。
(付記12)
前記検査装置を制御する制御部と、前記チャックの位置を制御するアライナーと、を有し、
前記制御部は、
前記貯留部に貯留された温調媒体に前記プローブを浸すように前記アライナーを制御する、
付記11に記載の検査装置。
(付記13)
前記温調媒体供給口は、前記チャックの上面から前記貯留部に温調媒体を供給するように構成される、
付記11又は12に記載の検査装置。
(付記14)
前記温調媒体排液口は、前記チャックの上面の外周部の突起の一部に形成された溝であり、前記貯留部に貯留された温調媒体が前記温調媒体排液口から排出される、
付記11~13のいずれか一項に記載の検査装置。
(付記15)
前記チャックを加振する加振部を有する、
付記11~14のいずれか一項に記載の検査装置。
(付記16)
前記加振部は、前記アライナーに接続されたモータ又はアライナーに取り付けられた超音波振動子である、
付記15に記載の検査装置。
【0085】
今回開示された実施形態に係る検査装置及び検査装置の保守方法は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0086】
12 検査部
13 ローダ部
18 FOUP
22 搬送機構
23 搬送室
24 検査室
30 検査装置
31 テスタ
32 プローブカード
32a プローブ
33 フレーム
36 チャック
36d 貯留部
60 温調配管
70 温調媒体ユニット
72 流量制御バルブ
75a、75b 第2バルブ
80a、80b 第2配管
82 第1バルブ
83 第3バルブ
84 第1配管
87 第3配管
91 モータ
92 超音波振動子
100 検査システム
200 温調媒体供給部
240 第1供給部
250 第2供給部
300 クリーンルーム
400 排気部