(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062076
(43)【公開日】2023-05-02
(54)【発明の名称】眼科光学系、眼科装置、及び眼科システム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20230425BHJP
A61B 3/12 20060101ALI20230425BHJP
G02B 17/00 20060101ALI20230425BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
A61B3/10 300
A61B3/12
A61B3/10 100
G02B17/00
G02B13/18
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021922
(22)【出願日】2023-02-15
(62)【分割の表示】P 2020501043の分割
【原出願日】2019-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2018031110
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水田 正宏
(57)【要約】 (修正有)
【課題】被検眼を有する対象者に対する負担を軽減しつつ被検眼内を広範囲に観察する。
【解決手段】光学システム(28A)は、視軸から離れた周辺視野を観察可能にする第1光学ユニット(281)及び第2光学ユニット(282)の上流側である被検眼(12)側に、2個の凹面鏡を互いに向き合うように対向配置して被検眼(12)の像を形成する反射鏡ユニット(280)を備える。反射鏡ユニット(280)は一方の焦点と他方の焦点とに共役関係を有するので、反射鏡ユニット(280)によって被検眼(12)の像が形成されることで、被検眼(12)と、光学システム(28A)との距離を確保しつつ、被検眼を広範囲に観察できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1凹面鏡及び第2凹面鏡を含む反射ユニットと、前記反射ユニットからの光を受け入れるレンズユニットとを有する被検眼の眼科撮影光学系であって、
前記反射ユニットと前記レンズユニットとにより被検眼の瞳の共役像を被検眼と反対側に形成し、前記反射ユニットの前記第1凹面鏡及び前記第2凹面鏡は互いの凹面を向かい合わせて配置されてそれぞれ光軸上に開口を有すると共に、前記第1凹面鏡は前記第2凹面鏡の開口から入射する被検眼からの光を前記第2凹面鏡へ反射し、前記第2凹面鏡は前記第1凹面鏡で反射された光を前記第1凹面鏡の開口を通して前記レンズユニットへ向けて反射し、
前記第1凹面鏡の焦点距離は、前記第2凹面鏡の焦点距離より長い
眼科撮影光学系。
【請求項2】
前記第1凹面鏡及び前記第2凹面鏡の各々は、放物面鏡である
請求項1に記載の眼科撮影光学系。
【請求項3】
前記第1凹面鏡の焦点距離をfa、前記第2凹面鏡の焦点距離をfb、
とするとき、
fa<fb<1.1fa
で示される条件式を満たすように前記第1凹面鏡及び前記第2凹面鏡が形成される
請求項1又は請求項2に記載の眼科撮影光学系。
【請求項4】
所定波長の光を射出する光源と、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の眼科撮影光学系と、
前記光源からの光を前記レンズユニット及び前記反射ユニットを介して被検眼へ向けて走査し、かつ前記レンズユニットの瞳と共役な位置に配置された走査部材と、
前記走査部材で走査された光により前記被検眼の眼底を撮影する撮影部と、
を含む眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、眼科光学系、眼科装置、及び眼科システムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科診断及び眼科外科的処置等を行うための眼科装置が実現されている。近年、対象者の眼(以下、被検眼という。)の眼底を広範囲に観察することができる眼科装置が要望されている。広視野の眼底画像を得るために、広角光学系が利用される。広角光学系をレンズのみで構成した場合、被検眼と対物レンズとの間の作動距離(ワーキングディスタンス)を確保する都合上、レンズの口径が大きくなる。その結果、広角光学系の大型化、重量の増大及び製造コストの増大を招く。さらに、大口径レンズを用いて広視野の高分解能画像を得ようとした場合、収差補正が複雑になる。よって、眼底の広角画像を、簡便な構成、かつ、高分解能で得ることができる、広角光学系を備える眼科装置が求められている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2は、眼底の広角画像を取得するための光学系を備える眼科装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-169671号公報
【特許文献2】特表2015-534482号公報
【発明の概要】
【0005】
開示の技術の第1の態様に係る眼科光学系は、互いに焦点距離が同じ放物面鏡を有する第1凹面鏡及び第2凹面鏡を含む反射ユニットと、前記反射ユニットからの光を受け入れるレンズユニットとを有する眼科光学系であって、前記反射ユニットの前記第1凹面鏡及び前記第2凹面鏡は、それぞれ光軸上に開口を有すると共に、前記第1凹面鏡の焦点と前記第2凹面鏡の焦点とが共役関係を有しかつ、前記第1凹面鏡の焦点と前記第2凹面鏡の焦点との少なくとも一方が他方の凹面鏡の前記開口に位置するように対向配置され、前記第1凹面鏡の焦点からの光線が前記第1凹面鏡及び前記第2凹面鏡で反射されて前記第2凹面鏡の焦点に向けて集光され、前記レンズユニットは、前記第2凹面鏡の開口に配置される被検眼の瞳と共役の位置であって、前記レンズユニットの最も被検眼側において前記第1凹面鏡の開口の位置に配置され、前記反射ユニットからの光を前記反射ユニットで集光された光の角度を示す広画角の角度より小さい角度の光に変換する角度変換レンズを有する。
【0006】
開示の技術の第2の態様に係る眼科装置は、所定波長の光を射出する光源と、前記眼科光学系と、前記光源からの光を前記レンズユニット及び前記反射ユニットを介して前記被検眼へ向けて走査し、かつ前記レンズユニットの瞳と共役な位置に配置された走査部材と、前記走査部材で走査された光により前記被検眼の眼底を撮影する撮影部と、を含む。
【0007】
開示の技術の第3の態様に係る眼科システムは、前記眼科装置で撮影された前記被検眼の眼底と前記光軸とが交差する近軸領域の第1画像を取得する第1取得部と、前記近軸領域の周囲の前記被検眼の眼底の輪帯領域の第2画像を取得する第2取得部と、前記第1取得部で取得された前記第1画像と、前記第2取得部で取得された第2画像とを合成して前記被検眼の広域画像を形成する形成部と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る眼科装置の全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る眼科装置の被検眼に対する照射角の一例を示すイメージである。
【
図3】第1実施形態に係る眼科装置に含まれる共通光学系における光学システムの模式図である。
【
図4】第1実施形態に係る反射鏡ユニットの一例を示す模式図である。
【
図5】第1実施形態に係る反射鏡ユニットにより被検眼の像が形成された状態を示す模式図である。
【
図6】第1実施形態に係る光学システムにより撮影された被検眼の観察画像の一例に示すイメージ図である。
【
図7】実施例1に係る光学システムの構成の一例を示す構成図である。
【
図8】実施例1に係る光学システムの横収差図である。
【
図9】実施例2に係る光学システムの構成の一例を示す構成図である。
【
図10】実施例2に係る光学システムの横収差図である。
【
図11】第2実施形態に係る反射鏡ユニットの一例を示す模式図である。
【
図12】第2実施形態に係る反射鏡ユニットの他例を示す模式図である。
【
図13】照明アダプタの一例を示すイメージ図である。
【
図14】第3実施形態に係る光学システムの一例を示す模式図である。
【
図15】第4実施形態に係る画像システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図16】第4実施形態に係る画像表示端末で実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図17】第4実施形態に係るディスプレイの表示画面の一例を示すイメージ図である。
【
図18】第5実施形態に係る光学システムの一例を示す模式図である。
【
図19】第5実施形態に係る光学モジュールの着脱を用いたシステムの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
〔第1実施形態〕
本実施形態に係る眼科装置10の構成の一例を
図1に示す。被検眼12を撮像する撮像装置14と、それを制御する制御装置16とを備える。撮像装置14は、撮像機能として、SLOユニット18と、OCTユニット20とを備える。SLOユニット18は、走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope。以下、「SLO」という。)として機能する。OCTユニット20は、光干渉断層撮影(Optical Coherence Tomography。以下、「OCT」という。)として機能する。制御装置16は、撮像装置14と情報の授受を行うことで、その動作を制御する。制御装置16は、SLOユニット18で検出された信号に基づいてSLO画像を生成する。また、制御装置16は、OCTユニット20で検出された信号に基づいてOCT画像を生成する。制御装置16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM、及びRAM(Random Access Memory)を含むコンピュータによって実現されるが、これに限定されるものでなく、他のハードウェア構成によって実現してもよい。以下、観察対象として後眼部、特に眼底を例示するが、これに限定されるものでなく、前眼部であってもよい。前眼部の例として、角膜が挙げられる。
【0011】
以下の説明では、眼科装置10が水平面に設置された場合の水平方向を「X方向」、水平面に対する垂直方向を「Y方向」とし、被検眼12の前眼部から眼球中心Oを介して眼底に向かう方向を「Z方向」とする。
【0012】
SLO画像の取得は、光源及びセンサを含むSLOユニット18と、光学スキャナを含む走査装置19と、それらを制御する制御装置16とによって実現される。具体的には、SLOユニット18から出射された光(以下、「SLO光」という。)は、走査装置19および被検眼12の瞳孔Pを経由して眼底Fに照射される。走査装置19は、SLO光を走査する光学スキャナとして、第1スキャナ22(Y方向)および第3スキャナ29(X方向)を備える。そのため、SLOユニット18から出射されたSLO光は、走査装置19によって二次元走査される。眼底Fで反射された反射光は、瞳孔P及び走査装置19を経由してSLOユニット18に入射される。SLOユニット18のセンサは反射光に応じた信号を生成し、制御装置16に出力する。制御装置16は、センサにより検出された信号に基づき、眼底FのSLO画像を生成する。なお、SLOは周知の撮像機能であるため、詳細な説明は省略する。
【0013】
OCT画像、例えば、眼底OCT画像の取得は、光源、参照光学系、干渉計、分光器及びセンサを含むOCTユニット20と、光学スキャナを含む走査装置19と、それらを制御する制御装置16とによって実現される。具体的には、光源から出射された光は、OCTユニット20内で分岐されて、参照光として参照光学系に、測定光として走査装置19にそれぞれ入射される。測定光は、走査装置19および瞳孔Pを経由して、眼底Fに照射される。走査装置19は、測定光を走査する光学スキャナとして、第2スキャナ24(Y方向)及び第3スキャナ29(X方向)を備える。そのため、OCTユニット20から出射された測定光は、走査装置19によって二次元走査される。眼底Fで反射された測定光は、瞳孔Pおよび走査装置19を経由してOCTユニット20に入射される。OCTユニット20の干渉計は、測定光と参照光とを干渉させて、干渉光を生成する。分光器により分光された干渉光の各スペクトル成分はセンサで検出される。センサで検出された信号は、制御装置16に入力される。制御装置16は、検出信号に基づき、眼底FのOCT画像を生成する。なお、本実施形態において、OCTユニット20の一例として、SD―OCT(Spectral Domain-OCT)が例示されるが、これに限定されない。SD―OCTに替えて、その他のOCT、例えば、SS―OCT(Swept Source-OCT)を採用しても良い。なお、OCTは周知の撮像機能であるため、詳細な説明は省略する。
【0014】
以下の説明では、SLO光とOCT測定光とを区別して説明する必要がない場合、SLO光及びOCT測定光を総称して走査光という。また、共通光学系28を構成する光学システム28Aとは、
図1に示したSLOとOCTとの共用の光学系として機能する場合に限らず、SLO用又はOCT用として、SLO装置またはOCT装置用の単独用途の光学系として用いられることも可能であることは言うまでもない。
【0015】
次に、被検眼12に対する走査光の走査角と、眼底における撮像範囲との関係を説明する。
図2に示すように、瞳孔Pを基準位置とした走査光SLの走査角A(以下、外部走査角Aともいう。)は、観察者の視野角12A(FOV:Field of View)に対応する。走査角Aが大きくなれば、視野角12Aは大きくなる。なお、走査光SLは角膜により屈折を受けるが、
図2では模式的に、走査光SLが瞳孔Pの中心で屈折された状態を示している。
【0016】
視野角12Aはまた、走査角B(以下、内部走査角Bともいう。)で定義され得る。内部走査角Bは、眼球中心Oを基準位置とした走査光SLの走査角を表している。外部走査角Aと内部走査角Bとは基準位置がそれぞれ異なるが、対応関係にある。以下の説明では、視野角12Aに対応する走査角として、外部走査角Aが用いられる。なお、広角光学系として光学システム28Aを備える眼科装置10で実現される視野角12Aは、例えば、外部照射角Aで約120度、内部照射角Bで約160度である。なお、広角光学系を備えていない従来の眼科装置では、例えば、外部照射角Aは約45度、内部照射角Bは約60度である。
【0017】
外部照射角Aは、上述の通り、視野角A、すなわち、撮像可能な眼底の範囲に対応する。よって、以下の説明では、視野角12Aは、撮像範囲12Aとして言及される。ユーザは、走査装置19における走査角度を制御することによって、撮像範囲12A内で、任意に撮像位置や撮像領域を設定し得る。
【0018】
次に、SLO光学系及びOCT光学系について説明する。SLO光学系は、
図1に示すように、SLOユニット18および走査装置19から構成される。OCT光学系は、OCTユニット20および走査装置19から構成される。走査装置19は、走査光を走査するための光学スキャナとして、第1光学スキャナ22、第2光学スキャナ24および第3光学スキャナ29を備える。走査装置19はさらに、共通光学系28を備える。第3光学スキャナ29は、SLO光学系とOCT光学系との間で共有されるため、共通光学系28に含まれる。共通光学系28はさらに、広角光学系として光学システム28Aを備える。第3光学スキャナ29から出射された走査光は、光学システム28Aを介して被検眼12に入射される。走査装置19はさらに、ダイクロイックミラー26を備えている。ダイクロイックミラー26は、第1光学スキャナと第3光学スキャナとの間に配置される。第1光学スキャナ22から出射されたSLO光は、ダイクロイックミラー26を介して第3光学スキャナ29に導かれる。また、第2光学スキャナ24から出射されたOCT測定光は、ダイクロイックミラー26を介して第3光学スキャナ29に導かれる。第1光学スキャナ22とダイクロイックミラー26との間の光路長は、第2光学スキャナ24とダイクロイックミラー26との間の光路長に一致する。第1光学スキャナ22、第2光学スキャナ24及び第3光学スキャナ29は、瞳孔Pの中心と共役な位置に配置される。ダイクロイックミラー26は、上記のように、SLO光学系とOCT光学系とで共用されるため、共通光学系28に含めてもよい。
【0019】
光学スキャナの例として、例えば、ポリゴンミラーや、ガルバノミラーが挙げられる。光学スキャナ22、24、29として、ポリゴンミラーを用いてもよいし、ガルバノミラーを用いてもよいし、あるいは、それらの組み合わせであってもよい。光学スキャナ22、24、29は、ポリゴンミラーや、ガルバノミラーに限定されるものでなく、走査光を所定方向に偏向する偏向光学素子であればよい。
【0020】
すなわち、眼科装置10では、被検眼12における眼底の撮像範囲12A内を広範囲に撮像することが要求される。しかし、光学システム28Aをレンズのみを用いて構成した場合、被検眼12における外部照射角Aを超広角にして、より広角の視野を得ることは困難であった。これは、被検眼12と被検眼12に直近の光学系の面との間の作動距離(ワーキングディスタンス)の確保と、高分解画像を得る為の収差性能の向上と、フレア及びゴーストの抑制と、装置本体の大きさ及び重さの軽減と、製造難易度及びコストの軽減という複数の課題を解決することが要求されるためである。これらの課題は、より広角の視野を得ようとするのにしたがって二律相反する場合があった。
【0021】
上述の通り、眼底Fを広範囲に観察することができる眼科装置が要求されている。この場合、大きな撮像範囲12Aを得るために、従来の眼科装置に比較して、外部走査角Aを広角にする必要がある。そこで、広角な外部走査角Aを実現するために、眼科装置10は、広角光学系として光学システム28Aを備える。光学システム28Aは共通光学系28に含まれており、SLO光学系とOCT光学系とで共有される。よって、光学システム28Aを備える眼科装置10により、広角SLO画像および広角OCT画像の取得が可能になる。
【0022】
光学システム28Aは、
図3に示すように、被検眼12側から順に、被検眼12の像をリレーする反射ユニット280と、後続するレンズユニットとして第1レンズ群281と、第2レンズ群282とを備える。反射ユニット280は、一対の凹面鏡を備えており、被検眼12の瞳Ppの像をリレーする。一対の凹面鏡である第1凹面鏡280A及び第2凹面鏡280Bは、後述するように、互いの焦点が無収差の等倍共役関係となるように構成されている。そのため、被検眼側の第2凹面鏡280Bの開口280Bh付近に配置された被検眼12の瞳Ppの共役像は、被検眼と反対側の第1凹面鏡208Aの開口280Ah付近に形成される。第1凹面鏡280Aの開口280Ah付近に形成される瞳Ppの像Pp’は、反射ユニット280によって、開口280Bh付近の瞳Ppがリレーされたものである。よって、被検眼の瞳Ppの位置と、反射ユニット280により形成される瞳の共役位置とは、反射ユニット280の反射面280A,280Bの各焦点位置に適合するほど好ましい。被検眼の瞳Ppは第1反射鏡280Aの焦点位置近傍に配置され、第1レンズ群281および第2レンズ群282の合成系、すなわちレンズユニットとしての入射瞳の位置は、第2反射鏡280Bの焦点位置近傍、すなわち第1反射面280Aの中心開口280Ahの位置に配置される。開口280Ahにリレーされた瞳Ppの像Pp’は、正の屈折力を有するレンズを含む第1レンズ群281と、正の屈折力を有するレンズを含む第2レンズ群282とを有するレンズユニットによって、被検眼12と反対側の空間において被検眼の瞳Ppの位置と共役となる位置で、瞳共役像Pcjを形成する。また、
図3の例では、被検眼12と被検眼12に直近の光学系の面との間の作動距離(ワーキングディスタンス)の一例として、被検眼12と、被検眼12へ伝播される光線の最初の光学素子である第1凹面鏡280Aの反射面280Arとの距離Xwを示した。
【0023】
なお、一対の凹面鏡である第1凹面鏡280A及び第2凹面鏡280Bは、後述するとおりそれぞれ凹面反射面を持つが、例えば、凹の放物反射面を持つ反射鏡を用いることができる。本明細書においては単に反射鏡或いは反射面という場合もある。
また、第1凹面鏡280A及び第2凹面鏡280Bの反射面は、放物反射面に限定されず、光軸を中心にして回転対称に形成される非球面であってもよい。
【0024】
レンズユニット中の第1レンズ群281は、反射ユニット280から広角の光束を受容するためのレンズを備える。このレンズは、被検眼12からの広角光線の角度を広角光線の角度より小さい角度に変換するレンズ(以下、角度変換レンズという。)である。第1反射鏡280Aの開口280Ah付近に形成された被検眼の瞳Ppの像Pp’は、空間像であることから、この像に接してレンズを配置することができる。さらには、瞳Ppの空間像の中にレンズを設けてもよい。よって、第1レンズ群281において、広角の光束を受け入れるための角度変換レンズの口径を小さくすることができる。その結果、第1レンズ群281の被検眼側に配置されるレンズは、小口径の角度変換レンズでよい。このレンズによって、反射ユニット280で扱われる広角の光束の角度は小さく変換されるため、第1レンズ群281全体の口径をも小さくできる。第1レンズ群281のレンズ口径が小さくなることから、第2レンズ群282の口径も小さくできる。したがって、反射ユニット280を備える光学システム28によって、レンズユニットのレンズ構成が簡単でありながら諸収差を良好に補正することが可能になり、眼底の超広角画像を優れた画質で取得できる。
【0025】
反射ユニット280から瞳Pを介して眼底Fに照射された走査光SLは、
図3に示すように、眼底Fで反射され、反射光として反射ユニット280へ入射される。反射光は、反射ユニット280を介して、第1レンズ群281および第2レンズ群282からなるレンズユニット入射される。反射光はさらに、
図1に示したように、第3光学スキャナ29及び第1光学スキャナ22を経由してSLOユニット18に入射される。制御装置16は、センサで検出された信号に基づいて、眼底Fの広角画像を生成する。
【0026】
なお、光学システム28Aにおいて、眼底Fと共役関係にある眼底共役像Fcjの位置は、ほぼ第1レンズ群281の中あるいはその近傍に形成される。そして、被検眼の瞳Ppと共役関係にある瞳共役位置像Pcjの位置との間に配置された第1レンズ群281及び第2レンズ群282は、収差補正のために、そのレンズ群に少なくとも1面の負の屈折力を有する面を含むことが有効である。瞳Ppと瞳共役像Pcjとの間の瞳のコマ収差は、瞳共役Pcjの像位置での眼底像の光束画角差となり、眼底の位置で解像力が変化することに繋がる。この瞳のコマ収差を補正するために、被検眼12の眼底との眼底共役Fcj位置と瞳共役Pcj位置との間に、全体として正の屈折力を有するレンズ群が配置され、レンズ群中には少なくとも1面の負の屈折力をもつ面が構成されることが好ましい。また、眼科装置として被検眼への微妙な焦点調節が必要な場合には、一部の光学素子を光軸に沿って移動させることが好ましい。本実施態様においては、レンズユニット中の被検眼と反対側のレンズ群である第2レンズ群282を光軸に沿って移動させることが可能である。
【0027】
次に、反射ユニット280について詳しく説明する。反射ユニット280は、
図3に示すように、一対の凹面鏡280A、280Bを備える。凹面鏡280A、280Bはそれぞれ、放物面鏡として形成されており、両者の焦点距離は等しく両者の軸上間隔は、焦点距離に一致している。凹面鏡280A、280Bはそれぞれ、反射ユニットとしての光軸との交点を含む中心開口280Ah、280Bhを備えており、ドーナツ形状の輪帯反射部を構成する。2個の凹面鏡280A、280Bは、互いに向き合うように対向配置される。このような配置によって、一方の反射面280A側の中心開口280Ahから入射する光は、他方の反射面280Bで反射された後に、一方の反射面280Aで反射され、他方の反射面280Bの中心開口280Bhに向う。特に、凹面鏡280A、280Bを放物面としたことにより、焦点からの射出光線は光軸に平行な光線として反射され、光軸に平行な光が焦点に集光される。従って、反射面を放物面とした2つの凹面鏡を互いの焦点距離だけ離間して対向配置させると、一方の反射面の中心開口に位置する物体の像を他方の反射面の中心開口上に形成することができる。すなわち、被検眼12の瞳Ppが開口280Bhに位置されると、開口280Ahの位置に瞳Ppの像Pp’がリレーされる。この状態で、第1反射面280A側から、開口280Ah付近を観察すると、恰も瞳Pが浮き出たかのように観察される。反射ユニット280によりリレーされた瞳Ppの像は、瞳Ppと同様に扱われる。
【0028】
ここで、
図3に示した光学系の構成において、第1凹面鏡280Aの開口280Ahと第2凹面鏡280Bの開口280Bhとは、それぞれ反射面の中心に形成された物理的開口空間(孔)として形成することが可能であるが、これら一対の凹面鏡の空間内にゴミやホコリの侵入を防止するために、凹面鏡の中央部に形成された透過面として形成することが可能である。特に、被検眼の反対側に配置される第1反射鏡280Aの開口280Ahは、前述したように、レンズユニットの最先端のレンズ(角度変換レンズ)が嵌入する構成とする場合や、角度変換レンズが接合される透過面として形成することが可能である。
また、凹面鏡に形成された開口は、光を通過させることが可能に形成されればよく、開口形状を限定しない。一般に、開口の形状は円形状であるが、楕円形状、多角形状、又は非対称形状などに形成してもよい。開口の大きさは、反射ユニットによる光軸上の領域が遮蔽されるため小さいほど好ましい。ただし、被検眼側の凹面鏡280Bの中央開口が小さいと被検眼の顔が凹面鏡に接触するため、接触しない程度の大きさが必要である。また、被検眼と反対側の凹面鏡280Aの中央開口は、反射ユニット280からの射出光を後続のレンズユニットに導くために必須であり、中心遮蔽の大きさとのバランスにて決定される。
【0029】
反射ユニット280を構成する一対の凹面鏡のうち、凹面鏡280Aは、
図4に示すように、第1反射面280Aとして焦点距離fの放物面を有する。また、凹面鏡280Bは、第2反射面280Bとして焦点距離fの放物面を有する。2個の凹面鏡280A、280Bは、第1反射面280Aの焦点が、第2反射面280Bの頂点に重なるように配置される。このように、互いの凹面鏡の焦点が合致して、互いの凹面鏡が焦点距離だけの間隔を隔て対抗配置される構成によって、互いの焦点が無収差の等倍共役関係となる。
図4に示す例では、第1反射面280Aの焦点280Afを第2反射面280Bの頂点(例えば、第2反射面280Bの中心)に重ね、第2反射面280Bの焦点208Bfを第1反射面280Aの頂点(例えば、第1反射面280Aの中心)に重ねた場合を示している。
【0030】
第1反射面280A及び第2反射面280Bが互いに交差するまで反射面を延長すると、第1反射面280A及び第2反射面280Bで互いに反射可能な最大半角Cは一意に決定し、約70.5度となる。第1反射面280A及び第2反射面280Bの交差点を通る直線をx軸とし、第1反射面280Aの頂点と及び第2反射面280Bの頂点とを通る直線をy軸とすると、第1反射面280Aは、次の(1)式で表される。また、第2反射面280Bは、次の(2)式で表される。このように、放物面を有する2つの凹面鏡280A、280Bを対向配置すると、一方の反射面側に物体を配置することで、他方の反射面側に物体の像が形成される。本実施形態では、反射ユニット280を用いて、被検眼12を観察する。
y=-x2/4f+f/2 ・・・(1)
y=+x2/4f+f/2 ・・・(2)
【0031】
図5に、本実施形態に係る反射ユニット280により被検眼12の像が形成された状態を模式的に示す。反射ユニット280において、第1反射面280A及び第2反射面280Bの各々に、中心開口280Ah,280Bhを設け、第2反射面280Bの開口280Bhに被検眼12が位置すると、第1反射面280Aの開口280Ah付近に被検眼12の像12Zが形成される。
図5に示す状態で、反射ユニット280の外側(図中右側)から、第1反射面280Aの開口280Ah付近を観察すると、恰も被検眼12が浮き出たように観察される。この反射ユニット280により形成された被検眼12の像12Zを被検眼12と同様に扱うことが可能となる。すなわち、反射ユニット280により、被検眼の空間像が開口280Ah上に形成されるので、光学的には十分な距離Xwが確保されることになる。
【0032】
次に、
図6に光学システム28Aを用いて撮像された眼底Fの広角画像(以下、広角SLO画像ともいう。)の一例に示す。眼底Fで反射された反射光は、
図3に示すように、反射ユニット280を介して、第1レンズ群281および第2群282へ入射される。反射光はさらに、
図1に示したように、第1光学スキャナ22を経由してSLOユニット18に入射され、制御装置16で生成された眼底Fの広角画像を示す。反射ユニット280の開口280Ahを通過した反射光のうち、一部の反射光、すなわち、光軸AXに略沿う方向の近軸光は、反射ユニット280で反射されることなく、第1レンズ群281へ射出される。従って、
図6に示すように、広角画像の中央部、すなわち、開口280Ah,Bhに対応する中心領域では、眼底像が描出されない。開口280Ah,Bhに対応する領域には、例えば前眼部のぼけた像が形成される。これらの中心開口を通る被検眼からの光は、反射ユニット280を経ることがなく、レンズユニットに入射するためレンズユニットにより前眼部の像を形成することができる。その像位置は眼底像の位置とは一致はしないが、近軸光線による結像であるため焦点深度がかなり深く、若干ボケてはいても前眼部の映像を得ることができ、被検眼のアライメントに用いることが可能である。
【0033】
なお、眼底像が描出されない中央領域の大きさは、開口280Ah、280Bhの直径に応じた大きさである。眼底像が描出されない中心領域を小さくするという観点から、反射ユニット280各反射面に設ける開口208Ah、Bhの有効径は、小さくなるほど好ましい。例えば、被検眼12の瞳の大きさに適合する径、またはそれを含む程度の径に開口208の有効径を定めることで、取得することが困難な被検眼12の中心部の網膜像を最小の領域に定めることができる。
【0034】
(実施例1)
次に、
図7を用いて、実施例1に係る光学システム28Aを説明する。第1実施形態と同様の構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0035】
図7に示した光線は、光学システム28Aにより、被検眼12と反対側の空間内に瞳共役点Pcjを形成する様子を示している。光学システム28Aは、被検眼12側から順に、反射ユニット280と、第1レンズ群281と、第2レンズ群282とを備える。反射ユニット280は、被検眼12の瞳Pp側から順に、第2反射面280Br及び第1反射面280Arが配置されたミラーモジュールM01を有する。第1レンズ群281は、瞳Pp側から順に、角度変換レンズとしての瞳Pp側に凹面を向けた正メニスカスレンズL01と、瞳Pp側に凸面を向けた負メニスカスレンズL02と、両凸正レンズL03と、瞳Pp側に凹面を向けた正メニスカスレンズL04とを有する。正レンズL01は、その瞳Pp側の面が、反射面280Aの開口280Ah付近に形成された瞳Ppの像に接するように配置される。負メニスカスレンズL02と、両凸正レンズL03とは接合されて貼り合わせの正レンズ成分を構成し、瞳Ppと反対側の面に非球面を有している。また、第2レンズ群282は、瞳Pp側から順に、正レンズL05、両凸正レンズL06と、両凹負レンズL07とを有する。両凸正レンズL06と負レンズL07とは接合されて瞳Pp側に凸面を向けたメニスカスレンズ成分を形成している。なお、これら全ての光学要素は、単一の光軸AXに沿って配置される。
【0036】
ここで、第1レンズ群281の最も瞳Pp側に配置された正レンズL01は、角度変換レンズとして機能している。すなわち、その瞳Pp側のレンズ面は反射ユニット280による集光位置の近傍、すなわち、第2放物面鏡280Bの焦点の近傍からやや離れて配置され、その瞳Pp側の面は平面または弱い凹面であり、その瞳Ppと反対側に強い正屈折力を有することにより、反射ユニット280での2つの放物面で反射される極めて広角度の光を射出角度の小さな光に変換している。従って、この角度変換レンズとしての正レンズL01により、第1レンズ群281と、第2レンズ群282との口径が、反射ユニット280の口径に比較して、極めて小さく構成されていることが明らかである。なお、角度変換レンズとしての正レンズL01の瞳Pp側の面を凹面とする場合には、第1凹面鏡280Aの中心部を開口部を透過面としてこの透過面に正レンズL01を接合する構成とすることができる。
【0037】
第1レンズ群281から射出する平行光束はやや発散光となって後続の第2レンズ群282に入射する。第2レンズ群282は、第1レンズ群281からの弱い発散光を平行光束に変換し、第1レンズ群281との構成によって、被検眼12の瞳Ppの共役像Pcjを、被検眼12と反対側の空間に形成する。すなわち、被検眼12の瞳Pの位置から射出する平行光束と等価な光束が反射ユニット280により射出され、第1レンズ群281及び第2レンズ群282を介して瞳共役点Pcjが形成される。ここでは、眼底からの光が被検眼12を平行光束となって射出することを前提としている。この場合、被検眼12の眼底との共役点は、
図7中の点Fcjで示される位置であり、第1レンズ群281の光学要素(レンズL03とレンズL04)の間に眼底の一次空間像Fcjが形成される。なお、前述したSLOユニット18及びOCTユニット20では、各ユニットからの走査光SL(レーザ光)が瞳Pの位置を中心とする平行光束として種々の角度で被検眼12に入射することは言うまでもない。このように、この光学システム28Aは、
図3で述べたとおり、被検眼の瞳Ppの像をその共役像Pcjに結像する機能を有し、瞳のリレー系としての機能を有する。後述する実施例においても同様である。
【0038】
上述したレンズ要素の各レンズ面は適宜、非球面形状にすることによって結像性能を向上させることができる。これら非球面は、光軸に垂直な方向の高さをrとし、非球面の頂点における接平面から高さrにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(サグ量)をzとし、頂点曲率半径の逆数をcとし、円錐係数をkとし、n次の非球面係数をA、B、C、D、E、F、G、H、Jとしたとき、次に示す(3)式で表されるものとする。
【0039】
z=(c・r2)/〔1+{1-(1+k)・r2・c2}1/2〕
+A・r4+B・r6+C・r8+D・r10+E・r12
+F・r14+G・r16+H・r18+J・r20 ・・・(3)
【0040】
次の表1に、実施例1における光学システム28Aの諸元の値を示す。
表1では、有効視野角(瞳からの外部照射角A)が140度(瞳射出半角が70度)とし、入射瞳径が2mmである場合を示す。
【0041】
【0042】
なお、ミラーM01で、面番号2、3の第1反射面及び第2反射面の円錐係数はk=-1である。
レンズL03で面番号8では、円錐係数はk=0であり、非球面係数は、
A:+0.415921E-05
B:+0.770893E-07
C:-0.228405E-09
D:+0.182991E-11
E:-0.558798E-14
F:-0.208417E-16
G:+0.119039E-18
H:+0.765206E-22
J:-0.681444E-24
である。
【0043】
図8に、表1の諸元により構成された光学システム28Aの横収差図を示す。この横収差図は、本実施例の光学性能を評価するために、瞳共役Pcj位置に無収差理想レンズを便宜的に入れたときの眼底像についての収差図である。後述する各実施例においても同様に無収差理想レンズを入れて収差計算を行っている。
図8に示す収差図では、縦軸は像高を示し、実線は中心波長587.5618nmを示し、破線は656.2725nmを示し、一点鎖線は486.1327nmを示し、二点鎖線は435.8343nmを示している。
【0044】
図8に示す収差図から明らかなように、実施例1の光学システム28Aでは、可視光波長域の光に対して収差のばらつきが抑制され、良好に補正されていることがわかる。また、光学システム28Aは、有効視野角(すなわち外部照射角A)が60度から140度(瞳射出半角が30度から70度)近傍においても、良好に補正されていることがわかる。なお、図示を省略したが、球面収差、非点収差、歪曲収差などの諸収差も良好に補正されていることが確認されている。
【0045】
(実施例2)
次に、
図9を用いて、実施例2に係る光学システム28Aを説明する。実施例2は、実施例1の変形例であり、第1実施形態および実施例1と同様の構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0046】
図9に示した光線は、光学システム28Aにより、被検眼12と反対側の空間内に瞳共役点Pcjを形成する様子を示している。光学システム28Aは、被検眼12側から、反射ユニット280と、第1レンズ群281と、第2レンズ群282とを有する。反射ユニット280は、被検眼12の瞳P側から順に、第2反射面280B及び第1反射面280Aが配置されたミラーM01を有する。第1レンズ群281は、瞳Pp側から順に、瞳P側に凸面を向けた非球面形状を含む負メニスカスレンズL01と、瞳Pp側に凹面を向けた正メニスカスレンズL02と、瞳Pp側に凸面を向けた負メニスカスレンズL03と、レンズL03と貼り合わされた両凸正レンズL04と、瞳Pp側に凹面を向けた正メニスカスレンズL05と、を有する。負メニスカスレンズL03と、レンズL03と両凸正レンズL04とは貼り合わせの正レンズ成分を構成している。また、第2レンズ群282は、瞳Pp側から順に、正レンズL06と、瞳Pp側に凸面を向けた負メニスカスレンズL07と、瞳Pp側に凸面を向けた正メニスカスL08とを有する。ここで、負メニスカスレンズL07と、正メニスカスレンズL07とは貼り合わせのメニスカスレンズ成分を形成している。これら全ての光学要素は、単一の光軸AXに沿って配置される。
【0047】
本実施例に係る第1レンズ群281は、反射ユニット280から広角度の光束を受容して小さな角度の光束に変換するための角度変換レンズとして、負メニスカスレンズL01を有する。負メニスカスレンズL01の凸面は、瞳Ppの共役位置よりも被検眼12側に配置されることによって、負メニスカスレンズL01のレンズ口径を小さくすることができる。この小口径の角度変換レンズL01によって、反射ユニット280で扱われる広角の光束の角度は小さく変換されるため、第1レンズ群281を構成する後続の光学要素の口径も小さくなる。第1レンズ群281を構成する光学要素の口径が小さくなることから、第2レンズ群282を構成する光学要素の口径も小さくなる。したがって、反射ユニット280を備える光学システム28において、レンズの数が少なく、かつ、小型な広角光学系が実現される。また、角度変換レンズの口径を小さくできることから、眼底の広角画像を良好な収差性能で取得できる。さらに、実施例1に係る光学システム28Aと比較して、収差補正が容易になり、その結果、より高精度の広角画像を取得することができる。
【0048】
なお、レンズユニットの最も被検眼側の先端に設けられる角度変換レンズとして、この実施例では負メニスカスレンズL01となるが、これは瞳共役位置、すなわち走査される平行光束の回転中心、すなわち、瞳Ppの共役位置よりもレンズ面が、被検眼側に位置するためである。角度変換レンズが瞳共役位置に接するかこの位置よりも被検眼と反対側に遠ざかる場合には、
図7に示した実施例1のように正レンズとすることが有効である。
【0049】
次の表2に、実施例2における光学システム28Aの諸元の値を示す。
【0050】
【0051】
なお、ミラーM01で、面番号2、3の第1反射面及び第2反射面の円錐係数はk=-1である。
レンズL01で面番号4では、円錐係数はk=0であり、非球面係数は、
A:+0.746884E-04
B:-0.776642E-06
C:+0.648680E-08
D:-0.395590E-10
E:+0.158555E-12
F:-0.394995E-15
G:+0.574153E-18
H:-0.439516E-21
J:+0.135981E-24
である。
【0052】
図10に、表2の諸元により構成された光学システム28Aの横収差図を示す。
図10に示す収差図では、実施例1と同様に、縦軸は像高を示し、実線は中心波長587.5618nmを示し、破線は656.2725nmを示し、一点鎖線は486.1327nmを示し、二点鎖線は435.8343nmを示している。
【0053】
図10に示す収差図から明らかなように、実施例1の光学システム28Aと同様に、可視光波長域の光に対して収差のばらつきが抑制され、良好に補正されていることがわかる。
【0054】
〔第2実施形態〕
次に、
図11及び
図12を用いて、第2実施形態を説明する。第2実施形態は、反射ユニット280を除き、第1実施形態と同様の構成である。第1実施形態と同様の構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0055】
第1実施形態に係る反射ユニット280は、同じ焦点距離fの放物面である第1反射面280A及び第2反射面280Bを備え、一方の焦点を他方の頂点に重ねて互いの焦点が無収差の等倍共役関係となるように構成した。第2実施形態の係る反射ユニット280は、第1反射面280Aの焦点距離と、280Bの焦点距離とを異ならせたものである。
【0056】
上述のように、反射ユニット280に設ける開口の有効径は、小さいほど好ましく、被検眼12の瞳の位置、及び第1レンズ群281と第2レンズ群282とによる瞳の位置は、反射ユニット280の反射面の焦点位置に適合するほど好ましい。ところが、被検眼12の瞳の位置、及び第1レンズ群281と第2レンズ群282とによる瞳の位置の設定に関して、自由度は低下する。また、第1レンズ群281と第2レンズ群282とにおける収差補正に関しても反射ユニット280からの光束の角度(放射角度)に制限される。そこで、本実施形態では、反射ユニット280を構成する第1凹面鏡の焦点と前記第2凹面鏡の焦点との少なくとも一方が他方の凹面鏡の前記開口に位置するように対向配置されるという反射ユニット280の基本的共役関係を維持しつつ、扱いが容易な光学システム28Aを提供する。
【0057】
図11に、本実施形態に係る反射ユニット280の一例を示す。第1反射面280Arの焦点距離faは、第2反射面280Brの焦点距離fbよりも小さい(fa<fb)。第1反射面280Arの焦点280Afは、第2反射面280Brの頂点(例えば、第2反射面280Brの中心)に一致する。一方、第2反射面280Brの焦点280Bfは、第1反射面280Arの頂点(例えば、第1反射面280Arの中心)から離れて、第1レンズ群281側に位置する。焦点280Afおよび焦点280Bfは同一の光軸上に位置するため、それらの共役関係は維持されている。
【0058】
また、
図11に示すように、第2反射面280Br側に被検眼12を、第1反射面280Ar側に観察光学系(第1レンズ群281と第2レンズ群282)を配置すると、被検眼12側の有効視野角(瞳からの外部照射角A)が141度より大きくなる。この例では、外部照射角Aの半角は瞳射出半角θppで示され、その瞳射出半角θppは70.5度より大きくなる。一方、瞳射出半角θppに対応する観察光学系側の角度θojは、70.5度より小さくなる。従って、観察光学系における収差補正は、同じ焦点距離fの凹面鏡を対向配置した反射ユニット280に比べて容易になる。
【0059】
ところが、観察光学系へ向けて光束を通過させるための空間(中心遮蔽)は、同じ焦点距離fの凹面鏡を対向配置した反射ユニット280に比べて大きくなる。
図11に示す例では、観察光学系へ向けて光束を通過させるための空間(中心遮蔽)、すなわち開口280Ahを得るための被検眼12側からの角度を角度θxで示している。
【0060】
この場合、第1反射面280Aの焦点距離faの半値の位置を通る直線をx軸とし、第2反射面280Brの頂点(例えば、中心)を通る直線をy軸とすると、瞳射出半角θppは、次の(4)式で表され、角度θxは次の(5)式で表される。
θpp=tan-1((A/C)1/2/(A/4-C)) ・・・(4)
θx=tan-1((B(A/C)1/2/(A/4-B2/C)) ・・・(5)
ただし、A=4fa、B=fb-fa、C=(fa・fb)/(fa+fb)である。
【0061】
従って、上記の(4)式及び(5)式の関係を用いて、観察光学系における収差補正の容易性と、開口280Ahの大きさとを最適にする値を求めればよい。
実用上からは被検眼から第1反射鏡280Aの開口280Ahを見込む角度θxについては、
θx≦22.5度
で示される条件式を満たす開口を有するようにレンズユニット側の反射面を形成することが好ましい。この角度は、得られる被検眼12の眼底の輪帯形状像の中心遮蔽の半径に対応するため、小さいほど有利である。しかしながら、この条件を満たすことによって、
図6に例示した通り、光軸中心の像を得ることのできる従来の装置による中心部画像との組合せを行う場合に有利となる。
【0062】
上述のように、第2反射面280Brの焦点280Bfが第1反射面280Arから離れて設定されることは、反射ユニットと後続のレンズユニット、特に先端の角度変換レンズとを離間して設けることができる。よって、反射ユニット内にごみなどの不純物が混入した場合に不純物を除去する作業が容易になり、製造上のみならずメンテナンスなどの際に有効である。
【0063】
(変形例)
図12に、本実施形態に係る反射ユニット280の変形例を示す。この例では被検眼12から遠い位置にある側の第1反射面280Arの焦点距離faは、第2反射面280Brの焦点距離fbよりも大きい(fa>fb)。このようなに構成によれば、被検眼12は、第2反射面280Brから離れた位置に設定され、その結果、被検眼12と反射ユニット280との間に空間を形成できる。これによって、被検眼と第2放物面鏡280Bの裏面(凸面)との距離を確保することができ、ユーザビリティが向上する。
【0064】
上述した第2実施態様として、
図11及び
図12に示した構成において、前記反射ユニットの第1反射鏡、すなわち被検眼から遠い方の凹面鏡の焦点距離をfa、第2反射鏡、すなわち被検眼に近い方の凹面鏡の焦点距離をfbとするとき、両方の焦点距離が共に正であるとして、
0≦|fa-fb|≦0.1(fa+fb)
の条件を満たすことが、中心開口の大きさの制限および収差補正の観点から有効である。
【0065】
なお、上記の構成においては、各反射鏡の中心開口の位置に他方の焦点が位置することを基本としており、焦点距離の差異については、上述のとおり、大きくなるほど中心遮蔽の大きさが大きくなる傾向にあることは前述のとおりである。しかしながら、装置としての小型化や被検眼と装置との間隔を含めて、上記の範囲で装置全体の最適バランスを図ることが実用的である。そして、一方の反射面の焦点が他方の反射面の中心開口に位置する場合にも、その基本形を前提としつつ、収差バランスを含めて装置全体の最適化のために若干の変移が許容されることは言うまでもない。
【0066】
第1実施形態及び第2実施形態では、1個の反射ユニット280を含む光学システム28Aを説明したが、これに限定されるものではない。2つ以上の複数の反射鏡ユニットを組み合わせ、各反射ユニットの瞳と瞳とを一致させて連結することが可能である。また、第2実施形態で説明したように、第1反射面280A及び第2反射面280Bの焦点距離を異ならせてもよい。
【0067】
複数の反射ユニット280を用いることで、リレーされた被検眼12の瞳に対する加工を行うことが可能になる。
【0068】
例えば、リレーされた瞳Pの像の周辺を光源により直接照明し、被検眼12の眼底内への照明が可能になる。リレーされた瞳Pの像の周辺に、
図13に一例を示す照明アダプタ280Ltを設け、リレーされた瞳Pの像の周辺を照明する。照明アダプタ280Ltは、リレーされた瞳像Pp’を囲むように配置された照明光源280Fvを備える。
図13には、反射面280に設けられた開口の開口径に相当する径の円形空間の周囲に、リング状に配列された複数の照明光源280Fvが設けられる。このリング状照明光源は被検眼の瞳の周囲に再結像され、被検眼の内部を照明する。角膜上で撮影光束は光軸を含む中心部をとおり、照明光はリング状となるため、撮影光路と眼底への照明光路とが分離できるため、撮影光への角膜反射光の混入を防ぐことが可能となる。
【0069】
また、反射ユニット280は、その光軸中心部に開口280Ah、280Bhを有している。この開口280Ah、280Bhを通過する光は、そのまま第1レンズ群281及び第2レンズ群282に向う。そこで、第1レンズ群281及び第2レンズ群282の少なくとも一方のレンズ群の光軸上にのレンズを追加配置、又は相互のレンズ間隔を変化させることで、光軸中心付近の画像精度の向上が図れる。
【0070】
〔第3実施形態〕
次に、
図14を用いて、第3実施形態を説明する。第3実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態と同様の光学構成であり、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
第1実施形態及び第2実施形態では、光学システム28Aを、反射ユニット280、第1レンズ群281及び第2レンズ群282を含んで構成した(
図7参照)。第3実施形態は、光学システム28Aの光学要素を機能的に分類して構成したものである。
【0071】
図14に示すように、光学システム28Aを、第1光学システム28A-1、及び第2光学システム28A-2に分類して構成する。
第2光学システム28A-2は、レンズL02~L07を含み、近軸光線による眼底観察(すなわち、狭い視野観察)を可能とする通常画角の眼底撮影光学系として機能するように構成する。
一方、第1光学システム28A-1は、反射ユニット280、及びレンズL01を含んで構成される。レンズL01は、角度変換レンズとして機能するように形成する。すなわち、レンズL01は、被検眼12からの反射ユニット280を介する超広角の光線の角度を光学光線の角度より小さい角度に変換する。よって、第1光学システム28A-1は、被検眼と第2光学システム28A-2との間に挿入されることによって、広い視野観察を実現する光学系の一部を構成し、第1光学システム28A-1と第2光学システム28A-2とを同じ光軸上に配置することで、広い視野観察を実現する光学系として機能する。
【0072】
したがって、光学システム28Aを、第1光学システム28A-1、及び第2光学システム28A-2に分離して構成することとし、第1光学システム28A-1を着脱することにより、超広角の視野観察用の装置と、狭い視野観察との双方の観察用の装置とを提供できる。第2光学システム28A-2を、近軸光線による眼底観察を可能とする光学系として機能するように形成する場合、被検眼12へ向けて第2光学システム28A-2を、光軸方向に移動可能に構成することで、第1光学システム28A-1を取り外した場合に、簡単に、広い視野観察から狭い視野観察へ切り替えることが可能になる。このような構成により、同一の光学系(第2光学システム28A-2)を広い視野と狭い視野との両方の観察に利用可能になる。
【0073】
なお、光学モジュール28A-1を提供する場合、反射ユニット280に角度変換用のレンズL01を取り付けた一体構造として構成することが好ましい。また、反射ユニット280にレンズL01をアタッチメントを介して取り付けてもよい。
【0074】
なお、上記では、反射ユニット280とレンズユニットとを組合せた光学ユニット28Aは、光軸を中心とする眼底領域の情報を得ることができないが、光軸に対する被検眼12の位置をずらして複数回の撮影を行い、得られる複数の画像から中心部の情報を補って、広い眼底の情報を得ることが可能である。すなわち、視軸と光軸とを複数回異なる位置に移動して撮影することで、視軸と光軸とを一致させて撮影した場合に取得が困難であった領域の画像を取得可能である。そして、取得した複数の画像を合成して1枚の広域画像を形成することも可能である。その場合、被検眼の視軸は、図示しない固視標を被検眼に提示し、提示した固視標を目視させることで適宜設定すればよい。
【0075】
〔第4実施形態〕
次に、開示の技術に係る第4実施形態を説明する。第4実施形態は、第1実施形態乃至第3実施形態と同様の構成であり、第1実施形態乃至第3実施形態と同様の構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図15に、第4実施形態に係る撮像範囲12Aの全ての画像を提供することが可能な眼科システムの一例として画像システム100を示す。画像システム100は、第1眼科装置110と、第2眼科装置120と、インターネット及びローカルエリアネットワーク等のネットワーク130と、画像サーバ140と、画像表示端末150とを備えている。
【0076】
画像システム100は、
図15に示されるように、第1眼科装置110と、第2眼科装置120と、画像サーバ140と、画像表示端末150(例えば、コンピュータ150、以下、PC150ともいう。)と、これらをネットワーク接続するためのインターネット及びローカルエリアネットワーク等のネットワーク130と、を備える。第1眼科装置110は、例えば、外部走査角Aで45度程度の撮像範囲を提供する通常の眼科装置(以下、挟角眼科装置110ともいう。)である。第1眼科装置110を用いて、光軸AX近傍の眼底領域(近軸領域)を描写した挟角眼底画像が取得される。第2眼科装置120は、上記実施形態に係るいずれかの眼科装置10であって、例えば、外部走査角Aで130度程度の撮像範囲を提供する広角眼科装置(以下、広角眼科装置120ともいう。)である。第2眼科装置120を用いて、広角眼底画像が取得される。以下、眼底FのSLO画像を例示するが、これに限定されない。画像システム100で扱われる眼科画像は、上述したように、眼底FのOCT画像であってもよいし、前眼部の画像であってもよい。
【0077】
第2眼科装置120で取得された広角眼底画像は、
図6で説明したように、画像の中央部、すなわち、光軸AX近傍では、眼底像が描出されない。そこで、本実施形態では、第1眼科装置110で取得した挟角眼底画像と、第2眼科装置120で取得した広角眼底画像とを用いて、眼底像が全体に描出された広角眼底画像を生成する。
【0078】
第1眼科装置110は、ネットワーク130を介して、患者IDと関連付けられた挟角眼底画像データを画像サーバ140に送信する。第2眼科装置120もまた、ネットワーク130を介して、患者IDと関連付けられた広角眼底画像データを画像サーバ140に送信する。画像サーバ140は、これらの画像データを管理する。画像サーバ140は、ネットワーク130を経由して、PC150と種々の情報のやり取りを行う。画像サーバ140は、PC150からの指示に応じて、眼底画像データをPC150へ送信する。PC150は、第1眼科装置110で取得された挟角眼底画像と、第2眼科装置120で取得された広角眼底画像とを合成して、眼底像が全体に描出された広角眼底画像を生成するための画像処理プログラムを格納する。
【0079】
なお、本実施形態では、PC150が、第1眼科装置110及び第2眼科装置120から独立した画像システム100を説明するが、第1眼科装置110及び第2眼科装置120が、PC150の機能を有してもよい。
【0080】
次に、画像処理プログラムについて説明する。ユーザは、PC150のディスプレイに表示される電子カルテ画面を利用して、PC150に画像処理プログラムの実行を指示する。
図17に、PC150のディスプレイに表示される電子カルテ画面200を示す。画面200は、患者情報を表示する表示領域201と、第1眼科装置110により取得された挟角眼底画像203Gを表示する表示領域202と、第2眼科装置120により取得された広角眼底画像205Gを表示する表示領域204と、を備えている。表示領域202には、第1眼科装置110の型式名を表示する表示領域202Aが設けられる。また、表示領域204内には、第2眼科装置120の型式名を表示する表示領域204Aが設けられる。なお、画面200は、OCT画像を読み込むための指示ボタン206、眼科画像に対して人工知能診断を実行を指示するための指示ボタン207及び各種設定を指示する指示ボタン208などを含む。
【0081】
図16は、PC150で実行される画像処理プログラムの処理の流れを示す。
まず、
図16に示すステップS100では、患者情報の取得処理が実行され、取得された患者情報がディスプレイ156に表示される。
【0082】
次のステップS102では、撮影済みの患者の眼底画像が取得され、次のステップS104で電子カルテ上に表示される。
【0083】
次に、
図16に示すステップS106では、眼底中心部位の周辺である第2眼底画像領域12G2の撮影画像の撮影指示処理が実行され、撮影が完了するまで、ステップS108で否定判断される。ステップS108で肯定判断されると、ステップS110で、患者IDの被検眼12の中央部位周辺の眼底を撮影した撮影画像が取得される。第2眼科装置120は、画像表示端末150からの指示を受けて患者IDの被検眼12の中央部位周辺の眼底を撮影し、撮影画像を画像表示端末150へ出力する。なお、被検眼12の中央部位周辺の眼底撮影及び撮影画像の出力は、画像サーバ140を介して処理してもよい。
【0084】
次に、ステップS112では、ステップS102で取得した第1眼科装置110による撮影画像と、ステップS110で取得した第2眼科装置120による撮影画像とを合成する画像処理が実行される。次のステップS114では、画像処理により合成された画像が、撮像範囲12Aの全ての2次元画像12Gとして、表示領域204へ表示する。
【0085】
第1眼科装置110による撮影画像203Gと、第2眼科装置120による撮影画像205Gとの合成処理は、例えば、3Dデータ又はスキャンデータを用いて網膜の立体画像、断面画像、表面画像を生成すると共に、セグメンテーション処理を実行する処理が挙げられる。また、SLOユニット18から得られたデータ各々を用いて眼底画像を生成してもよい。
【0086】
例えば、これらの画像を合成する場合、各画像の血管パターンが重なるように画像を回転又は拡大縮小などの画像処理を実行すればよい。合成された画像は、恰も撮影画角が100度以上である広角画像撮影用の眼科機器で撮影したような、広角画像を得ることができる。画像を合成する画像処理は、上述の手法に限定されるものではなく、既知の手法で用いてもよいことは言うまでもない。そして、合成された画像は画像サーバ140に記憶保持される。
【0087】
図17に、表示領域204に第1眼科装置110による撮影画像203Gと、第2眼科装置120による撮影画像205Gとを合成した、2次元画像12Gが表示された電子カルテの画面220の一例を示す。
【0088】
以上説明したように、第4実施形態では、眼底中心の画像及び眼底中心部位の周辺の画像各々を合成し、撮像範囲12Aの全ての2次元画像12Gを得ることで、恰も撮影画角が例えば100度である広角画像撮影用の眼科機器で撮影したような、広角画像を得ることができる。
【0089】
第4実施形態に係る画像システム100は、眼科医が被検眼12の眼底画像12Gを観察して診断する場合に、好適に機能する。すなわち、画像システム100で合成された眼底画像に基づき診断を行い、画像ビューワの電子カルテ機能を用いて診断結果を入力する。また、眼底画像12GをAI診断する場合はボタン207を図示せぬインターフェースにより押下又はクリックし、AI診断モードに移行する。また、OCT画像が診断に必要な場合は、ボタン206を押下又はクリックしOCTモードに移行する。
【0090】
眼科医は、撮影画角30度の高解像度の中心部の眼底画像を用いて視神経乳頭及び黄斑など眼底中心部の診断を的確に行えるとともに、撮影画角100度以上に相当する合成された眼底画像12Gを用いて網膜周辺部の病変があるか否かを的確に行うことができる。
一方、眼科医は、眼底及び網膜の高解像度の画像を用いて診断を行うための眼科機器を保有している場合が多い。この高解像度の眼科機器は撮影画角が10~30度の範囲であり、その範囲を超えた眼底及び網膜の周辺部を撮影することが困難である。よって眼科医は、眼底及び網膜の周辺部用に広角及び超広角の眼底機器を別途購入する必要がある。これに対して第4実施形態に係る画像システム100を用いることにより、新規に広角及び超広角の眼底機器を購入することなく、保有している高解像度の眼科機器を有効活用し、眼底及び網膜の中心部を高解像度の画像を用いて診断することができる。また、合成された100度を超える広画角の眼底画像により眼底及び網膜の周辺部を診断することができる。
【0091】
〔第5実施形態〕
次に、第5実施形態を説明する。第5実施形態は、複数の光学システムを備える眼科装置である。上記実施形態と同様の構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0092】
本実施形態に係る光学システム28Aは、
図18に示されるように、第1光学システム28A1および第2光学システム28A2を備える。光学システム28Aはさらに、制御装置16からの指示に応じて、第1光学システム28A1と第2光学システム28A2との間で撮像に使用する光学システムを切り替えるための切替機構28Bを備える。切替機構28Bとして、例えば、回転ステージや、1軸ステージ等の移動装置が使用され得る。以下、眼底FのSLO画像を例示するが、これに限定されない。眼科装置10で扱われる眼科画像は、上述したように、眼底FのOCT画像であってもよいし、前眼部の画像であってもよい。
【0093】
光学システム28A1は、例えば、外部照射角Aで約45度の撮像範囲を提供する挟角光学系である。光学システム28A1を用いて、光軸AX近傍の眼底領域を描写した挟角眼底画像が取得される。光学システム28A2は反射ユニット280を備えており、上記実施形態で説明したように、例えば、外部照射角Aで約130度の撮像範囲を提供する広角光学系である。光学システム28A2を用いて、広角眼底画像が取得される。ここで、
図6で説明したように、この広角眼底画像の中央部、すなわち、光軸AX近傍では、眼底像が描出されない。そこで、本実施形態では、光学システム28A1で取得した挟角眼底画像と、光学システム28A2で取得した広角眼底画像とを用いて、眼底像が全体に描出された広角眼底画像を生成する。なお、挟角眼底画像と広角眼底画像との画像合成については、上述した通りなので、詳細な説明を省略する。
【0094】
本実施形態によれば、挟角光学システム28A1および広角光学システム28A2を用いて、挟角眼底画像および広角眼底画像を取得できる。眼科医は、挟角眼底画像を用いて視神経乳頭及び黄斑など眼底中心部の診断を的確に行えるとともに、必要に応じて、合成された広角眼底画像を用いて網膜周辺部の診断も行うことができる。
【0095】
図19に、光学モジュール28A-1の着脱を用いたシステムの一例を示す。この光学モジュール28A-1は、反射ユニット280に相当し、具体的には
図7及び
図9に示した第1レンズ群281中の先端部の角度変換用のレンズL01と一体に取り外すことが有効である。
図19に示すように、光学モジュール28A-1を着脱する機構を切替機構28Bが担当する。この場合、光学モジュール28A-1を取り外したことによって発生する被検眼12と光学モジュール28A-2との空間を埋めるべく、切替機構28Bが光学モジュール28A-2を光軸方向に移動させてもよい。また、光学モジュール28A-1と交換されるユニットには、レンズユニットに対応する光学モジュール28A-2の先端に別途のレンズを加えるように構成することによって、軸上の画像の性能改善を行うことも可能である。このように、光学モジュール28A-1を着脱する機構によっても、広い視野観察と狭い視野観察の双方の視野観察を実現する眼底撮影装置を提供することができる。
【0096】
さらに、周辺領域の超広角での撮影の可能とする光学系においては、光軸を含む中心領域での遮光面を設けることによって、迷光を防止することができる。SLOユニット18やOCTユニット20による走査光の照射領域を、撮影視野の輪帯領域に制限することによって、迷光を低減することが可能となる。
【0097】
以上、本開示の技術を実施形態を用いて例示したが、本開示の技術の技術的範囲は上記実施形態に限定されない。本開示の技術の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができる。当該変更または改良を加えた形態も本開示の技術の技術的範囲に含まれる。また、本明細書で参照された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0098】
10 眼科装置
12 被検眼
12A 撮像範囲
16 制御装置
19 走査装置
28 共通光学系
28A 光学システム
100 画像システム
110 第1眼科装置
120 第2眼科装置
130 ネットワーク
140 画像サーバ
150 コンピュータ
A 外部照射角