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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062354
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】ハンダボール印刷機
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230426BHJP
   B23K 3/06 20060101ALI20230426BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
H01L21/92 604E
B23K3/06 H
H05K3/34 505A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172270
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】316011226
【氏名又は名称】AIメカテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 章雄
(72)【発明者】
【氏名】水鳥 量介
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AA07
5E319AB05
5E319AC01
5E319BB04
5E319CC33
5E319GG03
(57)【要約】
【課題】
本発明はハンダボールを基板面上に形成されている電極上に効率よく印刷するための装置に関する。
【解決手段】
ハンダボール印刷のための充填ヘッドが回転軸に設けた固定部材にスキージを取り付け、所定の押し付け力でマスク面を押し付けながら充填ヘッドを移動させて、ハンダボールをマスク開口部に充填すると共に、充填ヘッド外周に柔軟に動く枠を取付け、枠の外周からエアを吹き付けることで、ハンダボールが充填ヘッドから洩れない構成とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、基板上の電極にマスクを介してハンダボールを印刷するハンダボール印刷装置において、
前記ハンダボールを前記マスクに設けられた開口部に充填する充填ヘッドと、
前記充填ヘッドの下方に位置し2ケ以上の回転軸を備えた充填部と、
前記充填部の前記回転軸の各々に固定される複数の充填部材を前記ハンダボールの充填時にマスク面に接触しながら前記充填ヘッドの進行方向に対して所望の速度で回転させる回転駆動部と、
前記充填部および前記回転駆動部を取り囲むカバーを備え、
前記カバーには、前記ハンダボールが前記カバーの外へ洩れない様に、前記充填ヘッドと前記マスクとの隙間を調整するハンダボール洩れ防止手段を備えたことを特徴とするハンダボール印刷機。
【請求項2】
請求項1に記載のハンダボール印刷機において、
前記ハンダボール洩れ防止手段としては、カバー周囲を取り囲むようにした枠部を備え、前記マスクと接触する前記枠部と、前記枠部を押さえるブロック部に分離した構成とし、前記枠部は前記ハンダボールと引っ掛かりが生じたときにはブロックの移動方向に対し逆方向に、前記マスクと水平にスライド可能とすることを特徴とするハンダボール印刷機。
【請求項3】
請求項1に記載のハンダボール印刷機において、
前記ハンダボール洩れ防止手段の枠部において、マスクと接触する面を凸形状にすることを特徴とするハンダボール印刷機。
【請求項4】
請求項1に記載のハンダボール印刷機において、
前記ハンダボール洩れ防止手段の枠部は、前記充填部を囲うようにマスクと接する4辺に継ぎ目のない構成とし、4隅はR形状としたことを特徴とするハンダボール印刷機。
【請求項5】
請求項1に記載のハンダボール印刷機において、
前記ハンダボール洩れ防止手段の枠部において、充填ヘッド部を囲う枠の外側からエアを吹き付けることで、マスクと枠の隙間からエアが吹き出すようにしたことを特徴とするハンダボール印刷機。
【請求項6】
請求項1に記載のハンダボール印刷機において、
前記ハンダボール洩れ防止手段の内側に平行に配置した複数の前記充填部を備え、前記充填ヘッドの両端に配置された両端軸充填部は、ハンダボール充填動作時に、前記マスクとの接線部における回転方向が互いに中央方向に、中央部に配置された中央軸充填部については、ハンダボール充填動作時に、前記マスクとの接線部における回転方向が前記充填ヘッドの移動方向になる様に、回転方向制御することを特徴とするハンダボール印刷機。
【請求項7】
請求項1に記載のハンダボール印刷機において、
前記充填ヘッドに配置された前記充填部の回転速度を前記ハンダボールの大きさ、前記充填ヘッドの移動速度に対し、各々の前記充填部を任意の回転速度で速度制御することを特徴とするハンダボール印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等の基板の電極上にはんだを印刷法により形成するための印刷装置に
係り、特にハンダボールを用いて印刷するハンダボール印刷装置およびハンダボール印刷方法に関する。なお、ここで述べる印刷(印刷法)とは、ボール振込み(ボール振込み法)もしくはボール搭載(ボール搭載法)と同義の主旨で用いている。
【背景技術】
【0002】
従来のハンダボール印刷機において、ハンダボールをマスク開口部に充填するため、スキージを備えた充填ヘッド等が用いられている。例えば、特許文献1には、複数本の繊維状部材を供給ローラに備え、回転させながら水平方向に移動させ、充填ヘッドからはみ出したハンダボールは、エアまたは窒素を吹き付けることで充填ヘッドからのハンダボールの洩れを減らし、マスク上でハンダボールを転がしながら移動させ、開口部に充填する構造が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、供給ローラの軸を2個備え、充填ヘッドの内側へハンダボールを集めながら水平方向に移動させマスク開口部に充填し、同様にエアまたは窒素を吹き付けることで洩れを軽減する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-105889号公報
【特許文献2】特開2010-258132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、回転軸を用いて掃き出しながらマスク上のハンダボールを移動させるときに、例えばボール径が100μm以下のように小径なマイクロボールのときは、ハンダボールとマスクの間に摩擦力、静電気、ファンデルワールス力などの吸引力が働き、ボールは自力で転がりにくい性質があるが、ハンダボールの径が200μm以上等と大きくなるに連れて、ハンダボールにスキージの接触押圧、あるいはエア(窒素)など吹き付けによる外力が加わると、ハンダボールは勢いよく転がり容易には停止しにくくなる性質がある。また、マスクを設置するときの傾斜、あるいは充填ヘッドを移動させるときのマスクの振動などでもハンダボールは転がり、マスク上のハンダボールを動かないように制御することは困難である。
【0006】
そのため、ハンダボールが大径になる場合等で、特許文献1の構成では、供給ローラによりハンダボールが充填ヘッドから押し出され勢いよく転がるため、マスク上でハンダボールを適正に移動させることができなくなり、その結果、充填ヘッド内のハンダボールの数が減り、マスク開口部から適切な量のハンダボールを基板上に充填することができず、欠損ボールを発生する恐れがある。そのため、充填ヘッドからはみ出したハンダボールが、充填ヘッドの外に広がりマスク上にハンダボールが残留することから、ハンダボールがマスク開口部から基板上に余分に落下し、2重ハンダボール、余剰ハンダボールの原因となり、欠陥を発生させる恐れがある。
【0007】
また、特許文献2の構成の場合、回転機構を2個備え、充填ヘッドの内側へハンダボールを引き寄せる構成となっているが、繊維状のスキージまたはコイル状に巻き付けたブラシでは、ハンダボールが隙間から洩れ、あるいは、繊維状あるいはコイル状の隙間にハンダボールが挟まり付着することで、回転軸と一緒にハンダボールも回転し、適正にハンダボールを移動させることが困難である。
【0008】
また、ハンダボールが洩れないように回転機構軸の回転速度を上げると、ハンダボールの転がる勢いが増し、ハンダボール同士の衝突、跳ね返りが発生し、更にハンダボールが充填ヘッドからはみ出し易い傾向にある。
【0009】
またエア(または窒素)を吹き付けることで内側へハンダボールを戻す構造になっているが、エアを直接ハンダボールに吹き付けるために、エアの圧力、流量を下げると、ハンダボールの転がる力が弱くなり、充填ヘッドからのハンダボールの洩れを抑えることは困難である。
【0010】
また、エアの圧力、流量を上げるとエアの気流は乱れて、ハンダボールは不規則の方向に転がるため、内側に留めておくことは困難である。その結果、ハンダボールは充填ヘッドの外側のマスク上で堆積し、2重ハンダボール、余剰ハンダボールの欠陥を発生させる恐れがある。
【0011】
本発明の目的は上記課題を解消し、ハンダボールを充填ヘッドからはみ出さないようにし、マスク開口部にハンダボールが残留しないハンダボール印刷機を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は上記課題を解消し、ハンダボールを確実にマスク開口部に充填でき、且つ、マスク面上にハンダボールが残留しないハンダボール印刷機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、基板と、基板上の電極にマスクを介してハンダボールを印刷するハンダボール印刷装置において、ハンダボールをマスクに設けられた開口部に充填する充填ヘッドと、充填ヘッドの下方に位置し2ケ以上の回転軸を備えた充填部と、充填部の回転軸の各々に固定される複数の充填部材を、ハンダボールの充填時にマスク面に接触しながら充填ヘッドの進行方向に対して所望の速度で回転させる回転駆動部と、充填部および回転駆動部を取り囲むカバーを備え、カバーには、ハンダボールがカバーの外へ洩れない様に、充填ヘッドとマスクとの隙間を調整するハンダボール洩れ防止手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
すなわち、フラックスが塗布された基板面に形成された複数の電極部に、マスクを介してハンダボールを印刷するためのハンダボール充填ヘッドを備え、充填ヘッド内には2ヶ以上の軸を備え、外形が6角形~12角形等の多角形の回転軸の各面に充填部材(スキージ)をそれぞれ固定し、ハンダボール充填時にマスク面に接触しながらハンダボール充填ヘッドの進行方向に対してスキージが下向きになるように所望の速度で回転させる回転駆動部を備え、外側の軸部は常時充填ヘッドの内側へハンダボールが転がるように適宜調整した回転速度で回転させ、また充填ヘッドには枠を設け、枠を所定の力でマスクを押し付けると同時に、枠はマスクと枠の隙間が大きくならないように調整・維持しながら、枠が水平方向に微移動を可能とすることを特徴とする。
【0015】
また、充填ヘッド中央に中央軸充填部を設けて充填ヘッドの移動方向にハンダボールが掃き出され転がる様に回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
ハンダボール充填ヘッドを上記構成とすることで、充填ヘッドからハンダボールの洩れをなくし、2重ハンダボール、余剰ハンダボールを軽減させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ハンダボール印刷機の概略全体構成図である。
図2】充填ヘッドを左方向に移動中の充填ヘッドの概略構成を示す図である。
図3】充填ヘッドを右方向に移動中の充填ヘッドの概略構成を示す図である。
図4】充填ヘッドの正面から見た回転軸部の断面を示す概略構成を示す図である。
図5】充填ヘッドの下面からみた概略構成を示す図である。
図6】(a)充填ヘッドの外周に設けた枠の概略を示す図であり、(b)図6(a)のA-A断面図を示す。
図7】充填ヘッドの外周に設けた枠を押さえる機構の概略構成を示す図である。
図8】充填ヘッドの外周に設けた枠及びエア吹き付けの有効性を説明する図である。
図9】充填ヘッドの動作フローの概略を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
【実施例0019】
以下、図面を参照して、本発明のハンダボール印刷装置の好適な実施の形態について説明する。
【0020】
図1に、ハンダボールを印刷するためのハンダボール印刷機の概略全体構成を示す。図1(a)にはマスクと基板の位置合わせを行っている状態を、図1(b)には基板上にハンダボールを印刷している状態を示している。
【0021】
ハンダボール印刷機1には、上下に移動可能なように駆動部22を備えた印刷テーブル21が設けてある。なお、印刷テーブル21は、XYθ方向に移動できるように、XYθテーブルで構成されている。この印刷テーブル21上に基板20を載置する。
【0022】
また、印刷機本体1側にマスク枠9を介して取り付けてあるマスク8の面と、基板20の面とをカメラ18(2視野カメラ)を用いてそれぞれに設けた位置合わせマークを撮像して、図示していない制御部にて、画像処理してマスクと基板のマークの位置ずれを求める。制御部では求めたずれ量を用いて、マーク位置が合うように基板20を載置した印刷テーブル21を水平方向(XYθ方向)に駆動制御して、位置合わせを行う。印刷テーブル21とマスク8の裏面側との間には、カメラ18を移動するためのカメラ移動フレーム24が設けてある。このカメラ移動フレーム24は、図1の前後方向に移動可能に設けてある。
【0023】
カメラ18を用いて位置合わせを行った後、位置合わせ用のカメラ18を退避させ、図1(b)に示すように、駆動部22を動作させて、基板20を載置した印刷テーブル21を上昇させ、上部に設けあるマスク8に基板20の面を接触させる。
【0024】
次に充填ヘッドについて図2を用いて説明する。
【0025】
カバー4の内側には中央軸充填部3a及び両端軸充填部3bが配置されており、カバー支持部材10を介し、ヘッド取り付け枠7の上部に設けたシリンダ5aを構成するピストン棒6に支持されている。このヘッド取り付け枠7は図1で示したように印刷機本体に設けた、ボールネジ2bをモータ2gにより回転駆動することで図示していないリニアレール上を水平方向に往復移動する構成としてある。
【0026】
なお、ハンダボール印刷機1本体側には複数の開口を設けたマスク8を取り付けたマスク枠9を保持するマスク保持部が設けてある。
【0027】
その後、ヘッド上下駆動機構5を駆動して、充填ヘッド2をマスク面側に降下させ、中央軸充填部3a及び両端軸充填部3bの充填部材12をマスク面に所定の押し圧力で接触させる。(本説明では充填部材12をスキージとも呼ぶ。)
なお、充填部材12は印刷する基板の幅方向と等しいか大きく作られており、充填ヘッド2を水平方向(基板の長手方向)に1回移動することで、ハンダボールをマスク開口部に充填できる。
【0028】
実際には、充填ヘッドを、基板長手方向に1往復させて、確実にマスク開口部に充填させている。充填ヘッドを水平方向に移動時には、中央軸充填部3a及び両端軸充填部3bに設けてある駆動機構13(図4図5参照)を動作させて、中央軸充填部3a及び両端軸充填部3bを回転させる。
【0029】
そして、ヘッド駆動部(モータ)2gを駆動することでボールネジ2bを回転させ、充填ヘッド2を水平方向に移動させる。
【0030】
なお、図1に示すように、充填ヘッド2が移動しているときに、中央軸充填部3aは、マスク面との接触部で充填ヘッド2の進行方向と同一方向に(ボール11を掃き出すように)、所定の回転数で回転している。両端軸充填部3bは、ハンダボール11を常時中央軸充填部3aに向かってボールを中央に寄せるように所定の回転数で回転している。
【0031】
図2及び図3は、充填ヘッドの移動方向に対する概略図を示す。図2は充填ヘッドが左側へ移動する状態を示している。また、図3には充填ヘッドが右側へ移動する状態を示している。
【0032】
図2に示すように、充填ヘッド2は、中央軸充填部3a及び両端軸充填部3bがカバー4内に収納され、シリンダ5aに設けられたピストン棒6がカバー支持部材10に結合されており、シリンダ5aを駆動することでカバー4と一緒に上下に移動できるように構成されている。
【0033】
なお、図2に示すように、充填ヘッド2を図の左側方向に移動するとき、中央軸充填部3aは図に示すように時計回り方向に回転させる。また、図3に示すように充填ヘッド2が図の右側方向に移動するときは、中央軸充填部3aは反時計回りに回転するように構成してある。このように、充填ヘッド2の移動方向に応じて充填部3aの回転方向を、ハンダボール11が充填ヘッド2の進行側に掃き出されるように回転させる構成としてある。
【0034】
すなわち、ハンダボール洩れ防止手段の内側に平行に配置した複数の充填部を備え、充填ヘッドの両端に配置された両端軸充填部は、ハンダボール充填動作時に、マスクとの接線部における回転方向が互いに中央方向に、中央部に配置された中央軸充填部については、ハンダボール充填動作時に、マスクとの接線部における回転方向が充填ヘッドの移動方向になる様に、回転方向制御することを特徴とする。
【0035】
また中央軸充填部3aは毎秒0.1~5回転と比較的低速で回転させ、両端軸充填部3bは中央軸充填部3aと同一速度またはそれより速い速度で回転させる。あまり高速で回転させるとスキージ12が、充填するハンダボールを切断して体積不良の原因となる恐れがある。
【0036】
尚、中央軸充填部3a及び両端軸充填部3bの回転速度はハンダボール11のサイズ、量などにより変えられるように、可変速のモータにしておいた方が望ましい。
【0037】
一例として、両端軸充填部および中央軸充填部の回転速度設定例は6~600rpmとして、任意に回転速度調整を可能としている。
【0038】
すなわち、充填ヘッドに配置された充填部の回転速度をハンダボールの大きさ、充填ヘッドの移動速度に対し、各々の充填部を任意の回転速度で速度制御することを特徴とする。
【0039】
また充填ヘッド2の下方に配置されているカバー4の外周に、図2に示すように洩れ防止枠41を設置し、ハンダボールが充填ヘッド2から洩れにくい構成としている。
【0040】
洩れ防止枠41の概略形状は充填ヘッド2を下方から見た図5に示す。中央軸充填部3a及び両端軸充填部3bを囲む形状としている。
【0041】
洩れ防止枠41の詳細形状を図6に示す。図6(a)に示すように、下方から見て4角形状の4辺(4角形状に限定するものではない)を継ぎ目が無く連続に繋げた一体型とすることでマスク8面と接触する面の平面度を精度よく製作することが好ましい。
【0042】
洩れ防止枠41内でハンダボール11が枠に接触したときに、ボールは4隅に停留する傾向があるので、4隅にRを設けることで停留しにくい構造にすることが可能となる。
【0043】
すなわち、ハンダボール洩れ防止手段の枠部は、充填部を囲うようにマスクと接する4辺に継ぎ目のない構成とし、4隅はR形状としたことを特徴とする。
【0044】
また、洩れ防止枠41とマスク8の隙間はハンダボール11の半径以下である必要がある。上記隙間を保持するためには、図6(b)に示すように、洩れ防止枠41がマスク8と接触する部分の形状を凸形状にし、凸の先端部分の幅は2mm以下することで、マスク8との接触面積を小さくし、洩れ防止枠41が移動するときの摩擦力を低減し、また凸先端部の高さhをボールの直径より大きくすることで、枠がハンダボール11に乗り上げるリスクを低減することが可能となる。
【0045】
また、凸先端部の平面精度はハンダボールの半径の1/3以下にすることが望ましい。
【0046】
すなわち、ハンダボール洩れ防止手段の枠部において、マスクと接触する面を凸形状にし、また、凸の先端部分の幅は2mm以下とし、凸先端部の平面精度はハンダボールの半径の1/3以下にすることを特徴とする。
【0047】
また、マスク8の取付け精度、印刷テーブル21と充填ヘッド2が移動する平行精度により洩れ防止枠41とマスク8との隙間が変動する恐れがあるので、図7に示すように、隙間が所定の間隔となるように、洩れ防止枠41の上面に枠押さえブロック42を設け、このブロックは直動ガイド42aを介して上下動作により隙間調整を可能とし、同時にピン42bを設けることで回転動作を可能とし、枠押さえブロック42の左右には板バネ42cを設け、調整ねじ42dで板バネ42cを押し付けることで、所定の力で上方から均等に洩れ防止枠41をマスクに押し付ける構成としている。これらの押さえブロック42は、充填ヘッド2に対し、前後2ヵ所に設ける構成としている。
【0048】
尚、板バネの代わりにプランジャーまたはコイルバネ等のスプリング材料で代用しても構わないものとする。
【0049】
また、洩れ防止枠41と枠押さえブロック42は、一体構造としても機能することは出来るが、分離した構成とすることが好ましい。洩れ防止枠41の動作について、図8を用いて説明する。
【0050】
図8(1)に示すように、マスク8の開口部からハンダボール11が充填された時は、洩れ防止枠41は、ハンダボール11に引っ掛かること無しに、マスク8上を通過することが可能であるが(図8(2)の状態)、ハンダボール11が開口部に落下する瞬間に洩れ防止枠41が通過する場合は、図8(3)図のように、ハンダボール11に引掛かかり洩れ防止枠41ははんだボール11の上に乗り上げ、1カ所乗り上げる箇所が発生すると、多量のハンダボールが洩れ防止枠41から洩れる恐れがある。
【0051】
そこで、図8(5)図に示すように、洩れ防止枠41と押さえブロック42は分離構造とすることで、ハンダボールと引っ掛かりが生じたときには、洩れ防止枠41はブロック42の移動方向に対し逆方向に、水平に一瞬スライドすることで、ハンダボール11が落下するのを促す。
【0052】
すなわち、ハンダボール洩れ防止手段としては、カバー4の周囲を取り囲むようにした洩れ防止枠41を備え、マスク8と接触する枠部と、枠部を押さえるブロック部に分離した構成とし、洩れ防止枠はハンダボールと引っ掛かりが生じたときにはブロック42の移動方向に対し逆方向に、マスクと水平にスライド可能としている。
【0053】
また、洩れ防止枠41を適正にスライドさせるためには、洩れ防止枠41の上面及び押さえブロック42下面の面精度は、精度よく製作することが望ましい。
【0054】
また、洩れ防止枠41をスライドさせるために、例えばMCナイロンなどのような柔軟性のある材料で図6に示すように5mm以上変形させても元の状態に復元する材料を選定するのが望ましい。また樹脂またはプラスチックなどに金属メッキを施して、洩れ防止枠41がマスク8の上面での接触移動を繰り返しても、異物が発生しにくくなるように表面処理を施してもよい。尚、ここでは材料の特性を記載しており、材料を限定するものではない。
【0055】
また、図8(4)のように洩れ防止枠41がハンダボール11に引っ掛かる確率を低減するためには、洩れ防止枠41がマスク8の開口部上を通過する前にハンダボール11が開口部に充填されていることが望ましい。
【0056】
そのために、前述に記載した中央軸充填部3a及び両端軸充填部3bを併用することで、事前にハンダボール11を充填させることができる。
【0057】
また、図4に示すノズル4aあるいは図5に示す4bから洩れ防止枠41に向かってエアを吹き出すことで、図8(6)に示すように、洩れ防止枠41とマスク8の隙間から空気が均等に吹き出し、ハンダボール11が洩れ防止枠41に接触しにくくなるので、ハンダボール11が洩れ防止枠41から洩れにくくなる。
【0058】
エアの代わりに窒素などでハンダボール11の酸化を遅らせる気体を吹き込むようにしても良い。
【0059】
すなわち、ハンダボール洩れ防止手段の枠部において、充填ヘッド部を囲う枠の外側からエアを吹き付けることで、マスクと枠の隙間からエアが均一に吹き出すようにしたことを特徴とする。
【0060】
次に、ハンダボール印刷の一連の動作を、図9を用いて説明する。
【0061】
まず電極部にフラックスの印刷された基板20がハンダボール印刷機に搬入され印刷テーブル21上に載置される。印刷テーブル21には負圧を供給する吸着口が複数設けてあり、ここに負圧を供給することで基板20が印刷テーブル21上を移動しないように保持している。また印刷テーブルには、図示していない磁石が内蔵されており、磁力のON,OFF、もしくは、磁力の強弱調整が可能なものとし、弱磁性材料を用いたマスク或いはスキージを磁力で吸着し、基板或いはボールとの隙間を生じない様にすることが出来る。マスクやスキージの材質によって、磁力を強くすることで、より隙間が生じさせない様にすることができるため、2重ハンダボールや余剰ハンダボール等の不良を抑制可能となる。
【0062】
次に、基板20面に設けた位置合わせマークと、マスク8に設けてある位置合わせマークを、位置合わせ用のカメラ18を用いて撮像する。撮像したデータは図示していない制御部に送られ、そこで画像処理され、位置ずれ量が求められ、その結果に基づいて、印刷テーブル21が図示していない水平方向移動機構により、ずれを補正する方向に移動される。
【0063】
位置合わせが終了すると、印刷テーブル21の上昇機構22駆動して印刷テーブル21を上昇させてマスク8の裏面に接触させる。このときテーブル21内の磁石によりマスク8を基板20に密着させることができる。
【0064】
なお、磁性の弱いマスクを使用する場合、テーブル21内の磁石の強度を強くなるように調整することにより、マスク8を基板20により密着させマスクと基板との隙間を少なくすることで、2重ボールや余剰ボールなどの不良を低減することができる。
【0065】
次に、図示していないハンダボール供給装置によりマスク8の面の充填ヘッド2の初期位置(印刷開始位置)の進行方向前側部分にハンダボール11を供給する。その後、充填ヘッド2を印刷開始位置に水平移動し、マスク面まで降下させる。なおこの時、充填部はマスク面に所定の押し付け力が作用する位置まで降下させている。
【0066】
次に、図9の(1)に示すように中央軸充填部3aを時計回りに回転させる。両端軸充填部3bはハンダボール11を中央に寄せるように回転させる。
【0067】
すなわち、2つの両端軸充填部3bは、マスクとの接線部の回転方向が中央充填部の方向となる様に、互いに逆方向に回転させることで、ハンダボール11を充填ヘッドの中央部に掃き寄せる様に回転させる。
【0068】
その後、ハンダボール充填ヘッド2を、マスク面上を図の矢印の左方向に水平移動させる。このとき、エア供給部4aから中央軸充填部3aの充填ヘッド内側へ向けて洩れ防止枠41とマスク8の隙間から空気を均等に吹き出しながら移動する。
【0069】
また、このように、中央軸充填部3a及び両端軸充填部3bを回転させることで、マスク開口部ではハンダボール11を開口部に落とし込み、基板20上のフラックスに付着させ、開口部以外の部分では中央軸充填部3a及び両端軸充填部3bがハンダボール11をマスク面上の進行方向に移動させる。両端軸充填部3bの進行方向後側が基板端部に至ると、中央軸充填部3aの回転を停止した後、反時計回りに逆回転させる。
【0070】
この際、図示していない充填ヘッド2に具備されたバイブレータを駆動することで、ハンダボール11をマスク開口への落とし込み~充填する効率を向上させることが出来る。なお、バイブレータは、洩れ防止枠41または枠押さえブロック42に具備することで、より効率よくハンダボール11をマスク開口への落とし込み~充填することが出来る。
【0071】
その後、図9の(2)のように充填ヘッド2を基板20から抜けるまで左方向に移動させ、次に図9(3)(4)に示すように、充填ヘッド2を右側に移動させる。そして、マスク8開口部からハンダボール11を再度フラックスの付いた基板20上に落とし込み付着させる。
【0072】
同様に図9(5)のように、両端軸充填部3bの進行方向後側が基板20を抜けたら中央軸充填部3aを一旦停止し、次に中央軸充填部3aを時計方向に回転させて基板20から完全に抜けるまで右側に移動させ、ハンダボール11が中央軸充填部3aの左側に位置するようにして待機状態とする。
【0073】
このように、本実施例では、充填ヘッド2を1往復させて、ハンダボールをマスク開口部に充填することで、確実に充填できるようにしている。
【0074】
その後、印刷テーブル内の磁力をOFFし、印刷テーブル21を降下させて基板20をマスク面から離間させることで一連の印刷工程が完了する。
【0075】
次に、好ましくは、印刷された基板20の印刷状態をカメラにて撮像し欠陥の有無を調べる。欠陥の有無を調べ終わると、清掃機構25を駆動してマスク裏面の清掃を行う。
【0076】
なお、好ましくは、欠陥があればリペア部に基板20を搬送しそこで欠陥部を修復する。欠陥部修復後リフロー部に基板を搬送し、ハンダボールを溶融固着させる。
【0077】
以上、大まかなハンダボールの印刷工程を述べたが、リペア部やリフロー部に関しては前述の装置とは別装置となるので、詳細な説明は省略する。
【0078】
この工程中で、本発明のハンダボール充填ヘッドを用いることで、転がり易いハンダボールをマスク開口部から電極上に塗布されたフラックス上に確実に印刷・搭載することが出来る。
【符号の説明】
【0079】
1・・・ハンダボール印刷機、2・・・充填ヘッド、3a・・・中央軸充填部、3b・・・両端軸充填部、4・・・カバー、4a・・・ノズル、4b・・・ノズル孔、4c・・・エアまたは窒素、5・・・ヘッド上下駆動機構、6・・・ピストン棒、7・・・ヘッド取り付け枠、8・・・マスク、9・・・マスク枠部、10・・・充填部支持部材、11・・・ハンダボール、12・・・充填部材(スリットスキージ)、13・・・歯車、14・・・充填部取り付け部材(スキージホルダ)、16・・・回転軸、18・・・カメラ、20・・・基板、21・・・印刷テーブル、41・・・洩れ防止枠、42・・・枠押さえブロック、42a・・・直動ガイド、42b・・・ピン、42c・・・板バネ、42d・・・調整ねじ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9