IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-着火制御方法、成膜方法及び成膜装置 図1
  • 特開-着火制御方法、成膜方法及び成膜装置 図2
  • 特開-着火制御方法、成膜方法及び成膜装置 図3
  • 特開-着火制御方法、成膜方法及び成膜装置 図4
  • 特開-着火制御方法、成膜方法及び成膜装置 図5
  • 特開-着火制御方法、成膜方法及び成膜装置 図6
  • 特開-着火制御方法、成膜方法及び成膜装置 図7
  • 特開-着火制御方法、成膜方法及び成膜装置 図8
  • 特開-着火制御方法、成膜方法及び成膜装置 図9
  • 特開-着火制御方法、成膜方法及び成膜装置 図10
  • 特開-着火制御方法、成膜方法及び成膜装置 図11
  • 特開-着火制御方法、成膜方法及び成膜装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062369
(43)【公開日】2023-05-08
(54)【発明の名称】着火制御方法、成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20230426BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20230426BHJP
   C23C 16/509 20060101ALI20230426BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/318 B
C23C16/509
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172297
(22)【出願日】2021-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 健
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084BB06
2G084BB11
2G084CC04
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD12
2G084DD57
2G084FF07
2G084FF08
2G084FF22
2G084FF33
2G084HH07
2G084HH22
2G084HH24
2G084HH32
2G084HH55
2G084HH56
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA13
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA38
4K030BA40
4K030CA12
4K030FA01
4K030GA06
4K030JA17
4K030KA14
4K030KA30
4K030KA41
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB33
5F045AC00
5F045AC03
5F045AC05
5F045AC07
5F045AC12
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045AF03
5F045BB17
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EE17
5F045EF03
5F045EH13
5F045EH18
5F045EH20
5F045EK06
5F058BA06
5F058BA20
5F058BC08
5F058BD10
5F058BF07
5F058BF24
5F058BF30
5F058BF37
5F058BG10
5F058BJ01
(57)【要約】
【課題】基板上に形成された膜の膜厚及び膜質の制御性を高める。
【解決手段】基板を収容する処理容器と、前記処理容器に形成されたプラズマボックスと、前記プラズマボックスを挟むように配置された電極対と、可変コンデンサを有する整合器を介して前記電極対に接続されたRF電源とを有する成膜装置にて実行される着火制御方法であって、前記電極対に第1周波数の高周波電圧を印加したときの前記可変コンデンサの複数の調整位置のそれぞれに対する前記電極間の電圧を示す第1情報と前記電極及び基板間の電圧を示す第2情報とを記憶部に記憶する工程と、前記記憶部を参照して前記第1情報と前記第2情報とに基づき前記可変コンデンサの初期位置を決定する工程と、前記可変コンデンサの調整位置を前記初期位置に設定し、プラズマ着火させる領域を前記プラズマボックスと前記処理容器とから選択する工程と、を含む着火制御方法が提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器に形成されたプラズマボックスと、
前記プラズマボックスを挟むように配置された一対の電極と、
可変コンデンサを有する整合器を介して前記一対の電極に接続されたRF電源と、
を有する成膜装置にて実行される着火制御方法であって、
前記RF電源から前記一対の電極に第1周波数の高周波電圧を印加したときの前記可変コンデンサの複数の調整位置のそれぞれに対する前記電極間の電圧を示す第1情報と前記電極及び基板間の電圧を示す第2情報とを予め記憶部に記憶する工程と、
前記記憶部を参照して、前記第1情報と前記第2情報とに基づき前記可変コンデンサの初期位置を決定する工程と、
前記可変コンデンサの調整位置を前記初期位置に設定し、プラズマ着火させる領域を前記プラズマボックスと前記処理容器とから選択する工程と、を含む着火制御方法。
【請求項2】
前記初期位置を決定する工程は、前記プラズマボックスにおける第1整合位置の情報、前記処理容器における第2整合位置の情報、前記第1情報及び前記第2情報に基づき前記可変コンデンサの初期位置を決定する、
請求項1に記載の着火制御方法。
【請求項3】
前記記憶部に記憶する工程は、前記一対の電極に前記第1周波数と異なる第2周波数の高周波電圧を印加したときの前記可変コンデンサの複数の調整位置のそれぞれに対する前記電極間の電圧を示す第3情報と前記電極及び基板間の電圧を示す第4情報と、を予め記憶し、
前記RF電源は周波数を可変に制御可能であり、前記RF電源の周波数を前記第2周波数に制御する工程を有し、
前記初期位置を決定する工程は、前記RF電源の周波数が前記第2周波数に制御された場合、前記記憶部を参照して、前記第3情報及び前記第4情報に基づき前記可変コンデンサの初期位置を更新し、
前記選択する工程は、前記可変コンデンサの調整位置を、更新した前記初期位置に設定し、プラズマ着火させる領域を前記プラズマボックスと前記処理容器とから選択する、
請求項1又は2に記載の着火制御方法。
【請求項4】
前記初期位置を決定する工程は、前記プラズマボックスにおける第1整合位置の情報、前記処理容器における第2整合位置の情報、前記第3情報及び前記第4情報に基づき前記可変コンデンサの初期位置を更新する、
請求項3に記載の着火制御方法。
【請求項5】
(a)窒化される元素を含む原料ガスを基板に供給し、前記元素を含む層を前記基板に形成する工程と、
(b)前記原料ガスを基板に供給した後、プラズマにより活性化した窒素ガス、水素ガス又はアンモニアガスを供給し、前記元素を含む層を改質する工程と、
(c)プラズマにより活性化した窒素を含むガスを供給し、前記元素を窒化する工程と、を有し、基板に窒化膜を成膜する成膜方法において、
前記(b)の工程において、請求項1~4のいずれか一項に記載の着火制御方法を使用してプラズマ着火させる領域をプラズマボックスと処理容器とから選択する、成膜方法。
【請求項6】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器に形成されたプラズマボックスと、
前記プラズマボックスを挟むように配置された一対の電極と、
可変コンデンサを有する整合器を介して前記一対の電極に接続されたRF電源と、
制御部と、を有する成膜装置であって、
前記制御部は、
前記RF電源から前記一対の電極に第1周波数の高周波電圧を印加したときの前記可変コンデンサの複数の調整位置のそれぞれに対する前記電極間の電圧を示す第1情報と前記電極及び基板間の電圧を示す第2情報とを予め記憶部に記憶する工程と、
前記記憶部を参照して、前記第1情報と前記第2情報とに基づき前記可変コンデンサの初期位置を決定する工程と、
前記可変コンデンサの調整位置を前記初期位置に設定し、プラズマ着火させる領域を前記プラズマボックスと前記処理容器とから選択する工程と、を制御する、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、着火制御方法、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2は、複数の基板を処理容器に収容し、ALD(Atomic Layer Deposition)法で複数の基板に窒化膜を成膜するバッチ式の成膜装置を開示する。
【0003】
特許文献1は、シリコンを含む原料ガスを供給する工程と、プラズマにより活性化した水素ガスを供給する工程と、熱により活性化した窒化ガスを供給し、シリコン元素を窒化する工程と、プラズマにより活性化した窒化ガスを供給し、シリコン元素を窒化する工程と、各工程の間にパージガスを供給する工程とを有する成膜方法を提案する。これにより、所望の膜厚分布となるようにシリコン窒化膜を成膜できる。
【0004】
特許文献2は、シリコンを含む原料ガスを供給する工程と、プラズマにより活性化した水素ガスを含む改質ガスを供給する工程と、熱により活性化した窒化ガスを供給し、シリコン元素を窒化する工程と、各工程の間にパージガスを供給する工程とを有する成膜方法を提案する。これにより、シリコン窒化膜が形成される下地膜のダメージを低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-161722号公報
【特許文献2】特開2020-113743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、基板上に形成された膜の膜厚及び膜質の制御性を高めることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一の態様によれば、基板を収容する処理容器と、前記処理容器に形成されたプラズマボックスと、前記プラズマボックスを挟むように配置された電極対と、可変コンデンサを有する整合器を介して前記電極対に接続されたRF電源と、を有する成膜装置にて実行される着火制御方法であって、前記RF電源から前記電極対に第1周波数の高周波電圧を印加したときの前記可変コンデンサの複数の調整位置のそれぞれに対する前記電極間の電圧を示す第1情報と前記電極及び基板間の電圧を示す第2情報とを予め記憶部に記憶する工程と、前記記憶部を参照して、前記第1情報と前記第2情報とに基づき前記可変コンデンサの初期位置を決定する工程と、前記可変コンデンサの調整位置を前記初期位置に設定し、プラズマ着火させる領域を前記プラズマボックスと前記処理容器とから選択する工程と、を含む着火制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
一の側面によれば、基板上に形成された膜の膜厚及び膜質の制御性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る成膜装置の構造図。
図2】実施形態に係る電極間電圧及び電極-ウェハ間電圧の説明図。
図3】実施形態に係る成膜装置のガス供給源及び制御部の説明図。
図4】パッシェン曲線を示す図。
図5】13.56MHzのRFを印加したときの可変コンデンサの各調整位置における電極間電圧及び電極-ウェハ間電圧を示すテーブル例。
図6】14.56MHzのRFを印加したときの可変コンデンサの各調整位置における電極間電圧及び電極-ウェハ間電圧を示すテーブル例。
図7】可変コンデンサの初期位置の説明図。
図8】可変コンデンサの初期位置の説明図。
図9】実施形態に係る着火制御方法を示すフローチャート。
図10】実施形態に係る着火制御方法を示すタイムチャート。
図11】実施形態に係る成膜方法を示すフローチャート。
図12】実施形態に係る成膜方法を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
[成膜装置]
まず、本実施形態に係る成膜装置10について、図1を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る成膜装置10を示す図である。成膜装置10は、複数のウェハを処理容器11に収容し、ALD(Atomic Layer Deposition))法により複数のウェハに窒化膜を成膜する。成膜装置10は、係る成膜方法を実行する装置の一例である。
【0012】
成膜装置10は、複数のウェハを処理するバッチ式の縦型熱処理装置である。ただし、成膜装置10は、係る熱処理装置に限らない。例えば、成膜装置10は、ウェハを1枚ずつ処理する枚葉式の装置であってもよい。また、成膜装置10は、セミバッチ式の装置であってもよい。セミバッチ式の装置は、回転テーブルの回転中心線の周りに配置した複数枚のウェハを、回転テーブルと共に回転させ、異なるガスが供給される複数の領域を順番に通過させる装置でもよい。
【0013】
窒化膜は、例えばシリコン窒化膜(SiN)であるがこれに限らない。本実施形態に係る成膜装置10が実行する成膜方法で形成するシリコン窒化膜は、原料ガス(例えばジクロロシランガス)と、窒化ガス(例えばアンモニア(NH)ガス)のプラズマとを交互にウェハに供給することにより、ウェハ上に形成される。
【0014】
係る成膜方法では、ウェハの面内に形成される窒化膜の膜厚がウェハのエッジにおいて厚くなる傾向がある。これを抑制するためにアンモニアガスのプラズマを供給する工程の前に窒素(N)ガスのプラズマを供給することでウェハのエッジの膜厚を抑制する方法があるが、更なる膜厚調整が望まれている。そこで、本実施形態に係る成膜方法では、膜厚及び膜質の制御性を更に高めることができる技術を提供する。
【0015】
成膜装置10は、ウェハ2を収容し、ウェハ2が処理される空間を内部に形成する処理容器11と、処理容器11の下端の開口を気密に塞ぐ蓋体20と、ウェハ2を保持する基板保持具30とを有する。ウェハ2は、例えば半導体基板であって、より詳細には例えばシリコンウェハである。基板保持具30は、ウェハボートとも呼ばれる。
【0016】
処理容器11は、下端が開放された有天井の円筒形状の処理容器本体12を有する。処理容器本体12は、例えば石英により形成される。処理容器本体12の下端には、フランジ部13が形成される。また、処理容器11は、例えば円筒形状のマニホールド14を有する。マニホールド14は、例えばステンレス鋼により形成される。マニホールド14の上端にはフランジ部15が形成され、そのフランジ部15には処理容器本体12のフランジ部13が設置される。フランジ部15とフランジ部13との間には、Oリング等のシール部材16が配置される。
【0017】
蓋体20は、マニホールド14の下端の開口に、Oリング等のシール部材21を介して気密に取り付けられる。蓋体20は、例えばステンレス鋼により形成される。蓋体20の中央部には、蓋体20を鉛直方向に貫通する貫通穴が形成される。その貫通穴には、回転軸24が配置される。蓋体20と回転軸24の隙間は、磁性流体シール部23によってシールされる。回転軸24の下端部は、昇降部25のアーム26に回転自在に支持される。回転軸24の上端部には、回転プレート27が設けられる。回転プレート27上には、保温台28を介して基板保持具30が設置される。
【0018】
基板保持具30は、複数枚のウェハ2を鉛直方向に間隔をおいて保持する。複数枚のウェハ2は、それぞれ、水平に保持される。基板保持具30は、例えば石英(SiO)または炭化珪素(SiC)により形成される。昇降部25を上昇させると、蓋体20および基板保持具30が上昇し、基板保持具30が処理容器11の内部に搬入され、処理容器11の下端の開口が蓋体20で密閉される。また、昇降部25を下降させると、蓋体20および基板保持具30が下降し、基板保持具30が処理容器11の外部に搬出される。また、回転軸24を回転させると、回転プレート27と共に基板保持具30が回転する。
【0019】
成膜装置10は、3本のガス供給管40A、40B、40Cを有する。ガス供給管40A、40B、40Cは、例えば石英(SiO)により形成される。ガス供給管40A、40B、40Cは、処理容器11の内部にガスを供給する。ガスの種類については後述する。なお、1本のガス供給管が1種類又は複数種類のガスを順番に吐出してもよい。また、複数本のガス供給管が同じ種類のガスを吐出してもよい。
【0020】
ガス供給管40A、40B、40Cは、マニホールド14を水平に貫通する水平管43A、43B、43Cと、処理容器11の内部に鉛直に配置される鉛直管41A、41B、41Cを有する。鉛直管41A、41B、41Cは、鉛直方向に間隔をおいて複数の給気口42A、42B、42Cを有する。水平管43A、43B、43Cに供給されたガスは、鉛直管41A、41B、41Cに送られ、複数の給気口42A、42B、42Cから水平に吐出される。鉛直管41Cは、プラズマボックス19内に配置されている。鉛直管41A、41Bは、処理容器11内に配置されている。
【0021】
成膜装置10は、排気管45を有する。排気管45は、図示しない排気装置に接続される。排気装置は、真空ポンプを含み、処理容器11の内部を排気する。処理容器11の内部を排気すべく、処理容器本体12には排気口18が形成される。その排気口18は、給気口42A、42B、42Cと対向するように配置される。給気口42A、42B、42Cから水平に吐出されたガスは、排気口18を通った後、排気管45から排気される。排気装置は、処理容器11の内部のガスを吸引して除害装置に送る。除害装置は、排気ガスの有害成分を除去したうえで排気ガスを大気に放出する。
【0022】
成膜装置10は、更に加熱部60を有する。加熱部60は、処理容器11の外部に配置され、処理容器11の外側から処理容器11の内部を加熱する。例えば、加熱部60は、処理容器本体12を取り囲むように円筒形状に形成される。加熱部60は、例えば電気ヒータで構成される。加熱部60は、処理容器11の内部を加熱することにより、処理容器11内に供給されるガスの処理能力を向上させる。
【0023】
[プラズマボックス]
図2は、実施形態に係る成膜装置10の電極間電圧及び電極-ウェハ間電圧の説明図である。図1及び図2に示すように、処理容器本体12の周方向の一部には開口部17が形成される。その開口部17を囲むように、プラズマボックス19が処理容器11の側面に形成される。プラズマボックス19は、処理容器本体12から径方向外方に突き出すように形成され、例えば鉛直方向視でU字状に形成される。
【0024】
プラズマボックス19を挟むように一対の電極(電極対)91、92が配置される。電極対91、92は、プラズマボックス19の外側に対面して設置した一対の並行電極である。電極対91、92は、鉛直管41Cと同様に、互いに対向して鉛直方向に細長く形成される。電極対91、92は、整合器53を介してRF電源55に接続され、RF電源55から高周波電圧を印加される。
【0025】
整合器53は、電圧供給ライン51、52、54を介してRF電源55と電極対91、92との間に直列接続されている。整合器53は、第1可変コンデンサ57(C1)、第2可変コンデンサ58(C2)及びコイル(固定インダクタンス)L1、L2を含む。図1に示す制御部100は、後述する着火制御方法により第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の変化量を求め、その変化量に応じて第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の機械調整位置(単に調整対値ともいう)を変更する。機械調整位置の変更は、図示しない第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58用のそれぞれのモータの回動を制御する。これにより、第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の容量C1,C2をそれぞれ調整する。これにより、整合器53は自身のインピーダンスを調節することで、RF電源55の出力インピーダンスと負荷インピーダンスとの整合を行う。なお、整合器53には、センサー56が設けられ、電極対91、92の間にかかる電圧(図2の距離D1間の電圧、以下、「電極間電圧」ともいう。)を測定する。また、センサー59は、電極対91とグラウンド間にかかる電圧を測定する。センサー59で測定した電圧は、ウェハはグラウンド電位とみなせば、電極91の処理容器11側の端部からウェハ2の端部までの間にかかる電圧(図2の距離D2間の電圧、以下、「電極-ウェハ間電圧」ともいう。)とみなす。
【0026】
[ガス供給]
プラズマボックス19は、改質ガス及び窒化ガス用の鉛直管41Cを収容する。改質ガスは、鉛直管41Cの給気口42Cから開口部17に向けて水平に吐出され、開口部17を介して処理容器本体12の内部に供給される。同様に、窒化ガスは、鉛直管41Cの給気口42Cから開口部17に向けて水平に吐出され、開口部17を介して処理容器本体12の内部に供給される。
【0027】
原料ガス用の鉛直管41A、41Bは、プラズマボックス19の外部であって、処理容器本体12の内部の開口部17の外側に配置される。なお、鉛直管41Bを窒化ガス用としてプラズマボックス19の内部に配置し、改質ガス用の鉛直管41Cと分けて各ガスを供給してもよい。
【0028】
電極対91、92の間に高周波電圧を印加することにより、プラズマボックス19の内部空間に高周波電界が印加される。改質ガスは、プラズマボックス19の内部空間において、高周波電界によってプラズマ化される。改質ガスが窒素ガスを含む場合、窒素ガスがプラズマ化され、窒素ラジカルが生成される。改質ガスが水素ガスを含む場合、水素ガスがプラズマ化され、水素ラジカルが生成される。改質ガスがアンモニアガスを含む場合、アンモニアガスがプラズマ化され、アンモニアラジカルが生成される。これらの活性種は、開口部17を介して処理容器本体12の内部に供給され、Si含有層を改質する。
【0029】
Si含有層の改質は、例えば、Si含有層に含まれるハロゲン元素を除去することを含む。ハロゲン元素を除去することで、Siの未結合手を形成できる。その結果、Si含有層を活性化でき、Si含有層の窒化を促進できる。Si含有層の窒化は、本実施形態ではSi含有層の改質の後に行われる。
【0030】
図3は、実施形態に係る成膜装置10のガス供給部及び制御部の説明図である。成膜装置10では、ガス供給部は、原料ガス供給源70と、改質ガス供給源75と、窒化ガス供給源80とを有する。原料ガス供給源70は、処理容器11の内部に原料ガスを供給する。原料ガスは、窒化される元素(例えばシリコン)を含むものである。
【0031】
原料ガスとしては、例えば、ジクロロシラン(DCS:SiHCl)ガスが用いられる。なお、本実施形態の原料ガスはDCSガスであるが、本開示の技術はこれに限定されない。原料ガスとして、DCSガスの他にモノクロロシラン(MCS:SiHCl)ガス、トリクロロシラン(TCS:SiHCl)ガス、シリコンテトラクロライド(STC:SiCl)ガス、ヘキサクロロジシラン(HCDS:SiCl)ガス等を使用できる。これらのガスをウェハ2に供給することにより、シリコン(Si)を含む層(Si含有層)をウェハ2に形成できる。原料ガスがハロゲン元素を含むため、Si含有層はSiの他にハロゲン元素を含む。
【0032】
原料ガス配管72は、原料ガス供給源70とガス供給管40A、40Bとを接続し、原料ガス供給源70からガス供給管40A、40Bに原料ガスを送る。原料ガスは、鉛直管41A、41Bの給気口42A、42Bから、ウェハ2に向けて水平に吐出される。原料ガス流量制御弁73は、原料ガス配管72の途中に設けられ、原料ガスの流量を制御する。
【0033】
改質ガス供給源75は、処理容器11の内部に改質ガスを供給することにより、Si含有層を改質する。Si含有層の改質は、例えば、Si含有層に含まれるハロゲン元素を除去することを含む。ハロゲン元素を除去することで、Siの未結合手(Dangling Bond)を形成できる。その結果、Si含有層を活性化でき、Si含有層の窒化を促進できる。改質ガスは、窒素ガス、水素ガス、アンモニアガス、又はこれらのガスのいずれかを含むガスを用いることができる。
【0034】
改質ガス配管77は、改質ガス供給源75とガス供給管40Cとを接続し、改質ガス供給源75からガス供給管40Cに改質ガスを送る。改質ガスは、鉛直管41Cの給気口42Cから、ウェハ2に向けて水平に吐出される。改質ガス流量制御弁78は、改質ガス配管77の途中に設けられ、改質ガスの流量を制御する。
【0035】
窒化ガス供給源80は、処理容器11の内部に窒化ガスを供給することにより、Si含有層を窒化する。窒化ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガス、有機ヒドラジン化合物ガス、アミン系ガス、NOガス、NOガス、またはNOガスが用いられる。有機ヒドラジン化合物ガスとしては、例えば、ヒドラジン(N)ガス、ジアゼン(N)ガス、またはモノメチルヒドラジン(MMH)ガスなどが用いられる。アミン系ガスとしては、例えば、モノメチルアミンガスなどが用いられる。
【0036】
窒化ガス配管82は、窒化ガス供給源80とガス供給管40Cとを接続し、窒化ガス供給源80からガス供給管40Cに窒化ガスを送る。窒化ガスは、鉛直管41Cの給気口42Cから、ウェハ2に向けて水平に吐出される。窒化ガス流量制御弁83は、窒化ガス配管82の途中に設けられ、窒化ガスの流量を制御する。
【0037】
更に、図示しないパージガス供給源が設けられてもよい。処理容器11の内部にパージガスを供給することにより、処理容器11の内部に残留する原料ガス、改質ガス、および窒化ガスを除去する。パージガスとしては、例えば不活性ガスが用いられる。不活性ガスとしては、Arガス等の希ガス、またはNガスが用いられる。
【0038】
図3に示すように、成膜装置10は、成膜装置10を制御する制御部100を備える。制御部100は、例えばコンピュータで構成され、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリ102とを備える。メモリ102には、成膜装置10において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部100は、メモリ102に記憶されたプログラムをCPU101に実行させることにより、成膜装置10の動作を制御する。また、制御部100は、入力インターフェース103と、出力インターフェース104とを備える。制御部100は、入力インターフェース103で外部からの信号を受信し、出力インターフェース104で外部に信号を送信する。
【0039】
かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されていたものであって、その記憶媒体から制御部100のメモリ102にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどが挙げられる。なお、プログラムは、インターネットを介してサーバからダウンロードされ、制御部100のメモリ102にインストールされてもよい。
【0040】
[パッシェン曲線]
図4は、パッシェン曲線を示す図であり。横軸は処理容器11内の圧力pと電極間距離dとの乗算値pdを示し、縦軸は放電電圧Vを示す。図2に示すように、電極91,92間距離はD1であり、電極-ウェハ間距離はD2であり、D1<D2の関係にある。よって、横軸の乗算値pdは、pD1<pD2の関係が成り立つ。
【0041】
プラズマボックス19及び処理容器11内に窒素(N)ガスを供給した場合を想定する。Nガスのパッシェン曲線NとpD1を示す点線との交点Aの放電電圧Vは1000Vになる。つまり、窒素ガス雰囲気のプラズマボックス19では、パッシェン曲線Nによる放電開始電圧以上の電圧、つまり、1000V以上の電圧を電極91、92間に印加することによりプラズマボックス19内でプラズマ着火し、プラズマを生成できる。つまり、プラズマボックス19では、電極91,92間の最低着火電圧は1000Vであり、1000Vよりも小さい電圧を電極91,92間に印加してもプラズマボックス19内でプラズマ着火しないことがわかる。
【0042】
これに対して、Nガスのパッシェン曲線NとpD2を示す破線との交点Bの放電電圧Vは500Vになる。つまり、窒素ガス雰囲気の処理容器11では、パッシェン曲線Nによる放電開始電圧以上の電圧、つまり、500V以上の電圧を電極91とウェハ間に印加することにより処理容器11内でプラズマ着火し、プラズマを生成できる。つまり、処理容器11では、電極91-ウェハ間の最低着火電圧は500Vであり、500Vよりも小さい電圧を電極91-ウェハ間に印加しても処理容器11内でプラズマ着火しないことがわかる。
【0043】
従来はプラズマボックス19内で生成した活性ガス(例えば窒素ガスのプラズマ)を処理容器11へリモート供給するため処理容器11内のウェハ2のよりエッジに近い側への膜厚が厚くなることや膜質への課題が生じていた。これに対して、本実施形態に係る着火制御方法では、処理容器11側でプラズマを生成することとプラズマボックス19側でプラズマを生成することを選択できる方法を提供する。これにより、ウェハ2のエッジ及びセンターへの膜厚及び膜質の制御を行うことが可能となる。
【0044】
プラズマボックス19でのプラズマ着火及び処理容器11でのプラズマ着火の選択は「電極間電圧」若しくは「電極-ウェハ間電圧」をパッシェン曲線で得られる放電電圧に対して制御することで可能となる。
【0045】
そこで、着火時の「電極間電圧」及び「電極-ウェハ間電圧」をパッシェン曲線で得られる放電電圧に対して制御するために、整合器53内の第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の機械的調整位置(以下、調整位置という)を制御する。これにより、第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の容量C1、C2を調整する。この容量C1、C2の調整に加えて、RF電源55の周波数を可変に制御してもよい。この場合、RF電源55は周波数可変RF電源を用いる。
【0046】
[テーブル]
「電極間電圧」及び「電極-ウェハ間電圧」は、プラズマ生成時の整合位置を中心にRF電源55が供給する高周波の周波数毎に、第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の調整位置毎の電圧を測定し、その測定値を格納したテーブルを作成する。作成したテーブルは予めメモリ102に記憶しておく。これにより、メモリ102に記憶したテーブルを参照して、着火時の反射波を抑制した第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の調整位置であって、プラズマボックス19又は処理容器11でのプラズマ着火を選択できる調整位置を決定できる。第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の初期位置をプラズマボックス19又は処理容器11でのプラズマ着火を選択できる調整位置に設定することで、プラズマ着火させる領域をプラズマボックス19と処理容器11とから選択できる。
【0047】
図5は、周波数が13.56MHzの高周波電圧を印加したときの第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の各調整位置における電極間電圧(図5(a))及び電極-ウェハ間電圧(図5(b))を測定し、測定値を記憶したテーブル例である。図6は、周波数が14.56MHzの高周波電圧を印加したときの第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の各調整位置における電極間電圧(図6(a))及び電極-ウェハ間電圧(図6(b)を測定し、測定値を記憶したテーブル例である。
【0048】
図5(a)のテーブルに記憶した測定値は、RF電源55から電極対91、92に第2周波数の一例である13.56MHzの周波数の高周波電圧を印加したときの可変コンデンサの複数の調整位置のそれぞれに対する電極間電圧を示す第1情報の一例である。
【0049】
図5(b)のテーブルに記憶した測定値は、RF電源55から電極-ウェハ間に13.56MHzの周波数の高周波電圧を印加したときの可変コンデンサの複数の調整位置のそれぞれに対する電極-ウェハ間電圧を示す第2情報の一例である。このとき、ウェハはグラウンド電位であるとみなす。
【0050】
図6(a)のテーブルに記憶した測定値は、RF電源55から電極対91、92に第1周波数の一例である14.56MHzの周波数の高周波電圧を印加したときの可変コンデンサの複数の調整位置のそれぞれに対する電極間電圧を示す第3情報の一例である。
【0051】
図6(b)のテーブルに記憶した測定値は、RF電源55から電極-ウェハ間に14.56MHzの周波数の高周波電圧を印加したときの可変コンデンサの複数の調整位置のそれぞれに対する電極-ウェハ間の電圧を示す第4情報の一例である。第1情報~第4情報は、メモリ102に予め記憶される。メモリ102は、第1情報~第4情報を記憶する記憶部の一例である。第1情報~第4情報は、本例ではテーブル形式で示すが、テーブル形式に記憶されていなくてもよい。
【0052】
図5及び図6のいずれも、テーブルに記憶した測定値の測定する際、窒素ガスを鉛直管41A、41B、41Cの給気口42A、42B、42Cから供給した。ただし、窒素ガスを鉛直管41A、41B、41Cの給気口42A、42B、42Cの少なくともいずれかから供給すればよい。
【0053】
RF電源55から13.56MHzの周波数、100Wのパワーの高周波電圧を電極91,92間に印加したときの電極間電圧の測定値を図5(a)のテーブルに示し、電極-ウェハ間電圧の測定値を図5(b)のテーブルに示す。第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の調整位置は最小位置の0%から最大位置の100%までの範囲を5%刻みでずらし、これにより調整位置毎に第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の容量C1、C2を変化させる。5%刻みで容量C1、C2を変化させたときの電極間電圧の測定値を図5(a)のテーブルに記憶し、電極-ウェハ間電圧の測定値を図5(b)のテーブルに記憶する。図6(a)及び(b)のテーブルの作成条件は、RF電源55から出力する高周波の周波数を14.56MHzに変更した点が異なり、その他の点は図5(a)及び(b)のテーブルの作成条件と同じである。ただし、図5及び図6において、5%刻みで容量C1、C2を変化させたが、これに限らず、1%刻みで容量C1、C2を変化させる等、刻み値を変えてもよい。
【0054】
図5(a)及び(b)、図6(a)及び(b)のいずれのテーブルの作成時にも、プラズマボックス19及び処理容器11でのプラズマ着火は生じていない。つまり、プラズマボックス19及び処理容器11においてプラズマ放電が生じていない状態での電極間電圧、電極-ウェハ間電圧を測定した。このように電極間電圧及び電極-ウェハ間電圧の測定時はプラズマが生成しない低い高周波電圧及び圧力を用いることで安定した電圧測定が可能となる。
【0055】
また、電極間でプラズマが安定整合したときの整合位置MP1の情報と、電極-ウェハ間でプラズマが安定整合したときの整合位置MP2の情報と、をメモリ102に記憶する。
【0056】
図5(a)及び(b)のテーブルのC1が60%、C2が25%の位置は、電極間でプラズマ着火(放電)が生じ、プラズマが安定整合したときの整合位置MP1である。図5(a)及び(b)のテーブルのC1が80%、C2が30%の位置は、電極-ウェハ間でプラズマ着火(放電)が生じ、プラズマが安定整合したときの整合位置MP2である。
【0057】
図6(a)及び(b)のテーブルにおいても、図5(a)及び(b)のテーブルと同位置に電極間の整合位置MP1及び電極-ウェハ間の整合位置MP2が示されている。なお、図5及び図6のテーブルから、高周波の周波数を上げると電極間電圧及び電極-ウェハ間電圧のいずれも、1000V以上の高い電圧の領域が中央から左側に移ることがわかる。
【0058】
図7(a)及び(b)は、周波数が14.56MHzの高周波電圧を印加したときに、図6(a)及び(b)のテーブルを参照して、第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の初期位置を決定する説明図である。図8(a)及び(b)は、高周波の周波数を14.56MHzから13.56MHzに変更したときに、図5(a)及び(b)のテーブルを参照して、第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の初期位置を決定する説明図である。
【0059】
14.56MHz、13.56MHzの各周波数について、第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の調整位置毎に測定したテーブルを作成する(図5及び図6)。これにより、各周波数について、整合位置MP1、MP2を中心にプラズマボックス19と、処理容器11と、のそれぞれにおいてプラズマ着火時の反射波を抑制した制御位置(調整位置)を第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の初期位置として決定できる。
【0060】
例えば、周波数が14.56MHzの高周波電圧を印加するとき、図6(a)及び(b)のテーブルを参照して、整合位置MP1、MP2に比較的近い領域Arを反射波の少ない領域として特定する。特定した結果を図7(a)及び(b)に示す。そして、領域Ar内でプラズマボックス19において安定放電する領域、つまり、反射波がほぼ出ない状態で電極間においてプラズマ着火する可変コンデンサの調整位置の領域BAを特定する。図7(a)において領域は電極間電圧が1000V以上であるため、電極間においてプラズマ着火が可能である。電極間でプラズマ着火し、安定放電する場合、電極-ウェハ間電圧は問わない。
【0061】
以上から、周波数が14.56MHzの高周波電圧を印加するとき、図7(a)のテーブルを参照して、容量C1及びC2が領域BAのいずれかになるように第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の初期位置を決定する。これにより、14.56MHzの周波数の高周波を印加する場合、容量C1、C2が図7(a)の領域BA内になるように第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の調整位置の初期位置を制御する。これにより、プラズマボックス19内でプラズマ着火させることができる。
【0062】
つぎに、高周波の周波数が14.56MHzから13.56MHzに変更されたとき、図5(a)及び(b)のテーブルを参照して、整合位置MP1、MP2に比較的近い領域Arを特定する。特定した結果を図8(a)及び(b)に示す。なお、高周波の周波数は瞬時(数msec程度)に14.56MHzから13.56MHzに変更できるが、この時間では第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58は追従できずほとんど動かない。この状態において、領域Ar内で処理容器11において安定放電する領域、つまり、反射波がほぼ出ない状態で電極-ウェハ間においてプラズマ着火する可変コンデンサの調整位置の領域RAを特定する。図8(b)において領域RA内に電極-ウェハ間電圧が500V以上の位置があるため、電極-ウェハ間においてプラズマ着火が可能である。電極-ウェハ間でプラズマ着火し、安定放電する場合、電極間電圧は最低着火電圧の1000V未満とする。
【0063】
そこで、図8(a)のテーブルを参照すると、図8(a)において領域RA内において電極間電圧は1000V未満である。これにより、13.56MHzの周波数の高周波を印加する場合、容量C1、C2が図8(b)の領域RA内の電極-ウェハ間電圧が500V以上の位置になるように第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の調整位置の初期位置を制御する。これにより、処理容器11内でプラズマ着火させることができる。
【0064】
また、RF電源55の高周波の周波数を13.56MHzと14.56MHzの間で切り替え、かつ第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の調整位置の初期位置を制御することで、プラズマ着火させる領域を高速に切り替えることができる。
【0065】
以上に説明したように、RF電源55の高周波の周波数を第1周波数(例えば14.56MHz)としたとき、第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の初期位置を決定する際、各周波数の高周波電圧を印加するときのテーブル内の電極間電圧(第1情報)及び電極-ウェハ間電圧(第2情報)を使用する。ただし、第1情報及び第2情報に加えて、第1整合位置MP1及び第2整合位置Mp2の情報を用いることが好ましい。
【0066】
また、RF電源55の高周波の周波数を第1周波数と異なる第2周波数(例えば13.56MHz)としたとき、第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の初期位置を決定する際、各周波数の高周波電圧を印加するときのテーブル内の電極間電圧(第3情報)及び電極-ウェハ間電圧(第4情報)を使用する。ただし、第3情報及び第4情報に加えて、第1整合位置MP1及び第2整合位置Mp2の情報を用いることが好ましい。
【0067】
[着火制御方法]
次に、上記のようにして決定した第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の初期位置を用いた着火制御方法について、図9及び図10を参照して説明する。図9は、実施形態に係る着火制御方法を示すフローチャートである。図10は、実施形態に係る着火制御方法を示すタイムチャートである。実施形態に係る着火制御方法は制御部100により制御される。
【0068】
本例では、図10(b)に示すように、時刻Tから時刻TまでRF電源55がオフされ、時刻TにおいてRF電源55がオンされ、14.56MHzの周波数の高周波電圧が印加される。そして、時刻Tにおいて周波数が14.56MHzから13.56MHzに変更され、RF電源55から13.56MHzの周波数の高周波電圧が印加される。
【0069】
図9の処理は、成膜装置10の電源がオンされたときに開始される。RF電源55から出力される高周波の周波数は予め第1周波数に設定される(工程S1)。第1周波数は、本例では14.56MHzである。アイドルモードでは高周波電圧がオフされた状態であり(工程S3)、制御部100は、この状態で鉛直管41A、41B、41Cの複数の給気口42A、42B、42Cから窒素ガスを供給する。
【0070】
制御部100は、RF電源55がオンされ、電極91,92間に高周波電圧が印加されたかを判定する(工程S5)。高周波電圧が電極91,92間に印加されるまでアイドルモードが続き、時刻TにおいてRF電源55がオンされ、高周波電圧が電極91,92間に印加されると、着火モードとなる(工程S7)。着火モードでは、制御部100は、第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサの調整位置を決定した初期位置に制御する。制御部100は、決定した初期位置をプラズマボックス19における着火が可能な位置又は処理容器11における着火が可能な位置のいずれかから選択して第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサの初期位置を制御する。可変コンデンサの初期位置をこのように制御することで、プラズマ着火させる領域をプラズマボックス19と処理容器11とから選択することができる。
【0071】
次に、制御部100は、RF電源55がオフされたかを判定する(工程S9)。RF電源55がオフされた場合、工程S3に戻りアイドルモードに遷移する。
【0072】
RF電源55がオフされていない場合、着火時間(着火モードから所定時間)が経過したかを判定する(工程S11)。時刻Tから着火時間が経過した時刻Tには、RF電源55から出力される高周波の周波数が第2周波数に変更される(工程S13)。本例では、第2周波数は13.56MHzである。時刻Tから時刻Tまでの着火時間は、例えば、1.0ms~400msである。図10(a)に示すように、時刻Tから時刻Tまでの着火時間は高周波の反射波が増える。その後、高周波の周波数を13.56MHzに変更すると安定モードとなる(工程S15)。
【0073】
次に、制御部100は、RF電源55がオフされたかを判定する(工程S17)。RF電源55がオンしている間安定モードが維持され(工程S15)、RF電源55がオフされた場合、工程S3に戻りアイドルモードに遷移する。
【0074】
以上に説明した着火制御方法によれば、プラズマ着火させる領域をプラズマボックス19と処理容器11とから選択することができる。これにより、ウェハ2上の膜の膜厚の制御性を高めることができる。例えば、ウェハ2上の膜の膜厚を中央が厚い山型から中央が薄いボウル型にする等、ウェハ2上に形成されるシリコン窒化膜等の膜厚分布を制御できる。例えば、プラズマボックス19側でプラズマ着火させることでウェハ2上の膜のエッジ側の膜厚を厚くしたり、処理容器11側でプラズマ着火させることでウェハ2上の膜のセンター側の膜厚を厚くしたり、全体の膜厚を厚くしたりすることができる。また、プラズマ着火させる領域をプラズマボックス19と処理容器11とから選択することで、ウェハ2上の膜のストレス等の膜質を制御することができる。
【0075】
以上の説明では、RF電源55から出力される高周波の周波数と可変コンデンサの容量との両方を変更したが、高周波の周波数は変えずに可変コンデンサの容量のみを変更してプラズマ着火させる領域をプラズマボックス19と処理容器11とから選択してもよい。これによってもウェハ上に形成された膜の膜厚及び膜質の制御性を高めることができる。
【0076】
[成膜方法]
次に、実施形態に係る成膜方法について、図11及び図12を参照しながら説明する。図11は、実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。図12は、実施形態に係る成膜方法を示すタイムチャートである。実施形態に係る成膜方法は制御部100により制御される。
【0077】
成膜方法が開始されると、制御部100は、ウェハ2を処理容器11の内部に搬入し、準備する(工程S20)。工程S20では、先ず、処理容器11の外部で、搬送装置が複数のウェハ2を基板保持具30に載せる。基板保持具30は、複数のウェハ2を鉛直方向に間隔をおいて水平に保持する。次いで、昇降部25を上昇させ、蓋体20および基板保持具30を上昇させる。基板保持具30と共にウェハ2が処理容器11の内部に搬入され、処理容器11の下端の開口が蓋体20で密閉される。
【0078】
次に、制御部100は、Si含有層を形成する(工程S21)。この工程S21は、図12に示す時刻t1から時刻t2まで行われる。この工程S21では、排気管45に接続された排気装置によって処理容器11の内部を排気しつつ、原料ガス供給源70から原料ガスを処理容器11の内部に供給する。原料ガスは、例えばDCSガスである。これにより、Si含有層がウェハ2上に形成される。この工程S21の時間は、例えば1秒以上10秒以下である。
【0079】
次に、制御部100は、パージ工程を行う(工程S23)。この工程S23は、図12に示す時刻t2から時刻t3まで行われる。この工程S23では、排気装置によって処理容器11の内部を排気しつつ、パージガスを処理容器11の内部に供給する。これにより、処理容器11の内部に残留するガスを、パージガスで置換する。パージガスは、窒素ガスであってもよいし、アルゴンガスであってもよいし、その他の不活性ガス又はこれらの組み合わせであってもよい。この工程S23の時間は、例えば3秒以上10秒以下である。パージガスは、窒化ガス供給源80等から供給されてよい。
【0080】
次に、制御部100は、Si含有層の改質工程を行う(工程S25)。この工程S25は、図12に示す時刻t3から時刻t4まで行われる。この工程S25では、排気装置によって処理容器11の内部を排気しつつ、改質ガス供給源75によって改質ガスを処理容器11の内部に供給する。また、この工程S25では、プラズマボックス19又は処理容器11のいずれかにおいてプラズマ着火させ、改質ガスをプラズマ化する。この工程S25において、実施形態に係る着火制御方法が実行され、制御部100は、プラズマ着火する領域が、プラズマボックス19又は処理容器11のいずれかに選択されるように第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の初期位置を制御する。
【0081】
改質ガスは、例えば窒素ガスである。改質ガスは、水素ガスまたはアンモニアガスであってもよい。改質ガスは、窒素ガスを含むガス又は水素ガスを含むガスであってもよい。プラズマ化した改質ガスで、Si含有層を改質する。Si含有層の改質は、例えば、Si含有層に含まれるハロゲン元素を除去することを含む。ハロゲン元素を除去することで、Siの未結合手を形成できる。その結果、Si含有層を活性化でき、Si含有層の窒化を促進できる。RF電源55の高周波の周波数は、例えば13.56MHz又は14.56MHzである。工程S25の時間は、例えば3秒以上60秒以下である。
【0082】
次に、制御部100は、パージ工程を行う(工程S27)。この工程S27は、図12に示す時刻t4から時刻t5まで行われる。この工程S27では、排気装置によって処理容器11の内部を排気しつつ、パージガスを処理容器11の内部に供給する。これにより、処理容器11の内部に残留するガスを、パージガスで置換する。この工程S27の時間は、例えば3秒以上10秒以下である。パージガスは、窒素ガス等であってよく、窒化ガス供給源80等から供給されてよい。
【0083】
次に、制御部100はSi含有層の窒化工程を行う(工程S29)。この工程S29は、図12に示す時刻t5から時刻t6まで行われる。この工程S29では、排気装置によって処理容器11の内部を排気しつつ、窒化ガス供給源80によって窒化ガスを処理容器11の内部に供給する。また、この工程S29では、プラズマボックス19又は処理容器11のいずれかにおいてプラズマ着火させ、窒化ガスをプラズマ化する。この工程S29において、実施形態に係る着火制御方法が実行され、制御部100は、プラズマ着火する領域が、プラズマボックス19又は処理容器11のいずれかに選択されるように第1可変コンデンサ57及び第2可変コンデンサ58の初期位置を制御する。窒化ガスは、例えばアンモニアガスである。プラズマ化したアンモニアガスで、Si含有層を窒化する。工程S29の時間は、例えば5秒以上120秒以下である。
【0084】
次に、制御部100は、パージ工程を行う(工程S31)。この工程S31は、図12に示す時刻t6から時刻t7まで行われる。この工程S31では、排気装置によって処理容器11の内部を排気しつつ、パージガスを処理容器11の内部に供給する。これにより、処理容器11の内部に残留するガスを、パージガスで置換する。この工程S31の時間は、例えば3秒以上10秒以下である。パージガスは、窒素ガス等であってよく、窒化ガス供給源80等から供給されてよい。
【0085】
次に、制御部100は、設定回数繰り返したかを判定する(工程S33)。設定回数は予め設定され、制御部100は、設定回数繰り返していないと判定すると、工程S21に戻り、工程S21~工程S31のサイクルを繰り返す。サイクルを繰り返し実施する間、ウェハ2の温度は例えば400℃以上600℃以下であり、処理容器11の内部の気圧は例えば13Pa以上665Pa以下である。
【0086】
制御部100は、設定回数繰り返したと判定すると、所望の膜厚及び膜質のシリコン窒化膜が形成されたので、本処理を終了する。
【0087】
以上に説明した成膜方法では、パージ工程は省略できる。実施形態に係る成膜方法は、以下の(a)、(b)、(c)の工程を含む。
(a)窒化される元素を含む原料ガスを基板に供給し、前記元素を含む層を前記基板に形成する工程
(b)前記原料ガスを基板に供給した後、プラズマにより活性化した窒素ガス、水素ガス又はアンモニアガスを供給する工程
(c)プラズマにより活性化した窒素を含むガスを供給し、前記元素を窒化する工程
そして、(b)の工程において、前述した着火制御方法を使用してプラズマ着火させる領域をプラズマボックスと処理容器とから選択する。
【0088】
[効果]
従来は、処理容器11の側面に配置された石英製のプラズマボックス19内でプラズマを生成し、処理容器11内に活性化したガスを供給する。これに対して、本実施形態では、プラズマ着火時の電極間電圧、電極-ウェハ間電圧をコントロールすることにより処理容器11内でプラズマを生成することができる。また、プラズマボックス19及び処理容器11で交互にプラズマ着火を行ったり、又は、プラズマボックス19又は処理容器11の少なくともいずれかでプラズマ着火を行ったりすることができる。これにより、ウェハ上のシリコン窒化膜の基板上の膜厚及び膜質の制御性を高めることができる。
【0089】
なお、処理容器11の壁面等へのシリコン窒化膜の累積膜厚や処理容器11内のクリーニング、成膜装置10のメンテナンスなどの影響によりプラズマ生成(着火)時の整合位置が変化する場合がある。この場合、整合位置の変化量に従って、着火時の可変コンデンサの初期位置及びRF電源55の周波数を補正してもよい。予め作成したテーブルと変化後の整合位置とを用いることで、整合位置が変化した後においても反射波を抑制したプラズマボックス19又は処理容器11におけるプラズマ着火が可能となる。
【0090】
以上に説明したように、本実施形態の着火制御方法、成膜方法及び成膜装置によれば、プラズマ着火させる領域をプラズマボックスと処理容器とから選択できる。これにより、ウェハ上に形成された膜の膜厚及び膜質の制御性を高めることができる。
【0091】
今回開示された実施形態に係る着火制御方法、成膜方法及び成膜装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0092】
10 成膜装置
11 処理容器
19 プラズマボックス
53 整合器
57 第1可変コンデンサ
58 第2可変コンデンサ
100 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12