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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062812
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20230427BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
G03G21/00 370
G03G15/02 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172922
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】浦山 太一
(72)【発明者】
【氏名】尾関 孝将
(72)【発明者】
【氏名】安田 理
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200FA08
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA45
2H200GA47
2H200HB12
2H200JB13
2H200JC04
2H200JC15
2H200MA04
2H270LA19
2H270LA22
2H270LD03
2H270MA01
2H270MA14
2H270MB14
2H270MB15
2H270MB16
2H270MB25
2H270MB29
2H270MB43
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】シートの表面の地肌汚れを生じにくくする。
【解決手段】シートPの表面に転写された地肌汚れを検知する地汚れ検知センサ99(地汚れ検知手段)と、搬送されるシートPの種類を検知する操作表示パネル95(シート検知手段)と、が設けられている。そして、所定の種類のシートPが初めて搬送されるときに、そのシートPと同種類のシートPの表面に感光体ドラム1Yの表面から転写された地肌汚れとしての地肌汚れパターンX1~X9を地汚れ検知センサ99で検知して、その検知結果に基づいて作像条件を決定して、その作像条件に調整するとともに、そのシートPの種類と決定した作像条件との関係を記憶部91(記憶手段)に記憶する「地汚れ検知モード」を実行している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
帯電バイアスが印加されて、前記感光体の表面を帯電する帯電装置と、
前記感光体の表面に形成された地肌汚れを、中間転写体を介して、又は、直接的に、シートに転写する転写装置と、
前記シートの表面に転写された前記地肌汚れを検知する地汚れ検知手段と、
搬送されるシートの種類を検知するシート検知手段と、
を備え、
所定の種類のシートが初めて搬送されるときに、そのシートと同種類のシートの表面に前記感光体の表面から転写された地肌汚れとしての地肌汚れパターンを前記地汚れ検知手段で検知して、その検知結果に基づいて作像条件を決定して、その作像条件に調整するとともに、そのシートの種類と決定した作像条件との関係を記憶手段に記憶する地汚れ検知モードを実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶されたシートと同種類のシートが搬送されるときに、前記地汚れ検知モードは実行せずに、そのシートの種類に対応する、前記記憶手段に記憶された作像条件に調整することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
トナーとキャリアとからなる現像剤が収容されて、前記感光体の表面に形成された潜像を現像する現像装置を備え、
前記地肌汚れパターンは、前記感光体の表面の帯電電位と前記現像装置の現像ローラに印加される現像バイアスとの電位差としての地肌ポテンシャルを段階的に変化させて形成したものであって、
前記地汚れ検知モードは、前記地汚れ検知手段によって前記地肌汚れパターンを検知した検知結果に基づいて、地肌ポテンシャルと地肌汚れとの関係を求めて、作像条件としての地肌ポテンシャルを決定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記地肌汚れパターンを検知した検知結果に基づいて、前記地肌汚れが狙いのものより悪くならない、最小の地肌ポテンシャルを決定することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記地肌汚れパターンは、前記現像バイアスの大きさを変化させずに、前記帯電装置に印加する帯電バイアスの大きさを変化させて、地肌ポテンシャルを段階的に変化させたものであることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記地肌汚れパターンを形成するときに、前記地肌汚れパターンの近傍に、横帯状の画像を基準位置として形成することを特徴とする請求項3~請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記地汚れ検知モードにおいて決定される作像条件は、前記帯電装置に印加される帯電バイアスとしての直流電圧であることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記地汚れ検知手段は、シートの表面に転写されたトナー像が定着される定着装置に対して搬送方向下流側に設置されて、シートの表面の地肌濃度又は画像濃度を光学的に検知する光学センサであることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の画像形成装置において、感光体ドラム(感光体)の表面に生じた地肌汚れを低減するための技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
詳しくは、特許文献1には、地肌汚れ(画像形成が予定されていない非画像部にトナーが付着する状態、又は、その付着したトナーである。)を低減することを目的として、感光体ドラムの表面に形成した地肌汚れパターンを中間転写ベルト(中間転写体)に転写して、その中間転写ベルト上の地肌汚れパターンのトナー付着量を検出して、その検出結果に基づいて帯電バイアスの大きさを変更する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の画像形成装置は、感光体(感光体ドラム)の表面に形成される地肌汚れを低減する制御をおこなっても、プリントされたシートの表面に許容できない地肌汚れが生じてしまうことがあった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、シートの表面に地肌汚れが生じにくい、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明における画像形成装置は、感光体と、帯電バイアスが印加されて、前記感光体の表面を帯電する帯電装置と、前記感光体の表面に形成された地肌汚れを、中間転写体を介して、又は、直接的に、シートに転写する転写装置と、前記シートの表面に転写された前記地肌汚れを検知する地汚れ検知手段と、搬送されるシートの種類を検知するシート検知手段と、を備え、所定の種類のシートが初めて搬送されるときに、そのシートと同種類のシートの表面に前記感光体の表面から転写された地肌汚れとしての地肌汚れパターンを前記地汚れ検知手段で検知して、その検知結果に基づいて作像条件を決定して、その作像条件に調整するとともに、そのシートの種類と決定した作像条件との関係を記憶手段に記憶する地汚れ検知モードを実行するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シートの表面に地肌汚れが生じにくい、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
図2】作像部の一部を拡大して示す構成図である。
図3】中間転写ベルトとその近傍とを示す概略図である。
図4】地肌汚れパターンが形成されたシートが、地汚れ検知センサの位置に搬送される状態を示す図である。
図5】帯電バイアスと地肌ポテンシャルとの関係を示すグラフである。
図6】地肌汚れパターンを形成するときの、帯電バイアスの変化を示すグラフである。
図7】地肌ポテンシャルと地肌汚れとの関係を示すグラフである。
図8】高平滑シートと低平滑シートとに関する、中間転写ベルト上の地汚れ量と、シート上の地汚れ量と、の関係を示すグラフである。
図9】地汚れ検知モードに関する制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
まず、図1及び図2にて、画像形成装置100における全体の構成・動作について説明する。
図1は画像形成装置としてのプリンタを示す構成図であり、図2はその作像部の一部を示す拡大図である。
図1に示すように、画像形成装置本体100の中央には、中央転写体としての中間転写ベルト8が設置されている。また、中間転写ベルト8に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部6Y、6M、6C、6Kが並設されている。
なお、画像形成装置本体100の外装部には、プリント動作(画像形成動作)に関わる情報が表示されたり操作をおこなったりするための操作表示パネル95が設置されている。そして、この操作表示パネル95は、プリント時に搬送されるシートPの種類を検知するシート検知手段としても機能するが、これについては後で詳しく説明する。
【0011】
図2を参照して、イエローに対応した作像部6Yは、感光体としての感光体ドラム1Yと、感光体ドラム1Yの周囲に配設された帯電装置4Y、現像装置5Y、クリーニング装置2Y、除電装置(不図示)、等で構成されている。そして、感光体ドラム1Y上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程、除電工程)がおこなわれて、感光体ドラム1Y上にイエロー画像が形成されることになる。
【0012】
なお、他の3つの作像部6M、6C、6Kも、使用されるトナーの色が異なる以外は、イエローに対応した作像部6Yとほぼ同様の構成となっていて、それぞれのトナー色に対応した画像が形成される。以下、他の3つの作像部6M、6C、6Kの説明を適宜に省略して、イエローに対応した作像部6Yのみの説明をおこなうことにする。
【0013】
図2を参照して、感光体としての感光体ドラム1Yは、メインモータ(不図示)によって反時計方向に回転駆動される。そして、帯電装置4Yの位置で、感光体ドラム1Yの表面が一様に帯電される(帯電工程である。)。具体的に、本実施の形態における帯電装置4Yは、帯電ローラであって、電源93から帯電バイアスとして直流電圧(DC電圧)が印加される。
その後、感光体ドラム1Yの表面は、露光装置7から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での幅方向(図1図2の紙面垂直方向であって、主走査方向である。)の露光走査によってイエローに対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
【0014】
その後、感光体ドラム1Yの表面は、現像装置5Yとの対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、イエローのトナー像が形成される(現像工程である。)。なお、このようにしてトナー像が形成された部分が画像部となり、それ以外の部分が地肌部(非画像部)となる。そして、この地肌部に付着したトナーが、後述する「地肌汚れ」となる。
その後、感光体ドラム1Yの表面は、中間転写ベルト8及び1次転写ローラ9Yとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト8の表面に1次転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム1Y上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
【0015】
その後、感光体ドラム1Yの表面は、クリーニング装置2Yとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1Y上に残存した未転写トナーがクリーニングブレード2aとクリーニングブラシ2bとによってクリーニング装置2Y内に回収される(クリーニング工程である。)。
最後に、感光体ドラム1Yの表面は、除電装置(不図示)との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム1Y上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
【0016】
なお、上述した作像プロセスは、他の作像部6M、6C、6Kでも、イエロー作像部6Yと同様におこなわれる。すなわち、作像部の上方に配設された露光装置7から、画像情報に基いたレーザ光Lが、各作像部6M、6C、6Kの感光体ドラム1M、1C、1K上に向けて照射される。詳しくは、露光装置7は、光源からレーザ光Lを発して、そのレーザ光Lを回転駆動されたポリゴンミラーで走査しながら、複数の光学素子を介して感光体ドラム上に照射する。
その後、各現像装置5M、5C、5Kによる現像工程を経て各感光体ドラム1M、1C、1K上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト8上に重ねて1次転写する。こうして、中間転写ベルト8上にカラー画像が形成される。
【0017】
ここで、中間転写ベルト8は、複数のローラ部材16~21によって張架・支持されるとともに、駆動モータ(不図示)による1つのローラ部材(駆動ローラ16)の回転駆動によって図3中の矢印方向に無端移動される。
4つの1次転写ローラ9Y、9M、9C、9Kは、それぞれ、中間転写ベルト8を感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写ローラ9Y、9M、9C、9Kに、トナーの極性とは逆の極性の転写電圧(1次転写バイアス)が印加される。
そして、中間転写ベルト8は、矢印方向に走行して、1次転写ローラ9Y、9M、9C、9Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト8の表面に重ねて1次転写される(1次転写工程である。)。
【0018】
その後、各色のトナー像が重ねて1次転写された中間転写ベルト8は、転写装置としての2次転写ベルト72(及び、2次転写ローラ70)との対向位置に達する。この位置では、2次転写対向ローラ21が、2次転写ローラ70との間に中間転写ベルト8と2次転写ベルト72とを挟み込んで2次転写ニップ(転写ニップ)を形成している。そして、中間転写ベルト8上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された用紙等のシートP上に2次転写される(2次転写工程である。)。このとき、中間転写ベルト8には、シートPに転写されなかった未転写トナーが残存する。
その後、中間転写ベルト8は、中間転写クリーニング装置10の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト8の表面に付着した未転写トナーなどの付着物が除去される。
こうして、中間転写ベルト8上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
【0019】
ここで、図1を参照して、転写ニップとしての2次転写ニップの位置に搬送されるシートPは、装置本体100の下方に配設された給紙装置26から、給紙ローラ27やレジストローラ対28等を経由して搬送されるものである。
詳しくは、給紙装置26には、用紙等のシートPが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ27が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上のシートPが搬送経路K1を経由してレジストローラ対28のローラ間に向けて給送される。
【0020】
レジストローラ対28(搬送ローラ対)に搬送されたシートPは、回転駆動を停止したレジストローラ対28のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト8上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対28が回転駆動されて、シートPが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、シートP上に、所望のカラー画像が転写される。
【0021】
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写されたシートPは、2次転写ベルト72によって搬送されて、2次転写ベルト72から分離された後に、搬送ベルト60によって定着装置50の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ベルト及び圧力ローラによる熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像がシートP上に定着される(定着工程である。)。
その後、シートPは、搬送経路K2を経由して、排紙ローラ対によって装置外へと排出される。排紙ローラ対によって装置外に排出されたシートPは、出力画像として、スタック部上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成動作(プリント動作)が完了する。
なお、定着装置50に対して搬送方向下流側(搬送経路K2である。)には、シートPの表面の地汚れを検知する地汚れ検知手段としての地汚れ検知センサ99が設置されているが、これについては後で詳しく説明する。
【0022】
次に、図2にて、作像部における現像装置5Yの構成・動作について、さらに詳しく説明する。
現像装置5Yは、感光体ドラム1Yに対向する現像ローラ51Yと、現像ローラ51Yに対向するドクターブレード52Yと、現像剤収容部内に配設された2つの搬送スクリュ55Yと、現像剤中のトナー濃度を検知するトナー濃度検知センサ56Yと、等で構成される。現像ローラ51Yは、内部に固設されたマグネットや、マグネットの周囲を回転するスリーブ等で構成される。現像剤収容部内には、キャリアとトナーとからなる現像剤G(2成分現像剤)が収容されている。
【0023】
このように構成された現像装置5Yは、次のように動作する。
現像ローラ51Yのスリーブは、図2の矢印方向に回転している。そして、マグネットにより形成された磁界によって現像ローラ51Y上に担持された現像剤Gは、スリーブの回転にともない現像ローラ51Y上を移動する。ここで、現像装置5Y内の現像剤Gは、現像剤G中のトナーの割合(トナー濃度)が所定の範囲内になるように調整される。具体的に、現像装置5Yに設置されたトナー濃度検知センサ56Yによってトナー濃度が低い状態が検知されたときには、トナー濃度が所定の範囲内になるように、補給ローラ59(トナー容器58内に設置されている。)が回転駆動されて、トナー容器58から現像装置5Y内に新品トナーが補給される。
その後、トナー容器58から現像剤収容部内に補給されたトナーは、2つの搬送スクリュ55Yによって、現像剤Gとともに混合・撹拌されながら、隔絶された2つの現像剤収容部を循環する(図2の紙面垂直方向の移動である。)。そして、現像剤G中のトナーは、キャリアとの摩擦帯電によりキャリアに吸着して、現像ローラ51Y上に形成された磁力によりキャリアとともに現像ローラ51Y上に担持される。
【0024】
現像ローラ51Y上に担持された現像剤Gは、図2中の矢印方向に搬送されて、ドクターブレード52Yの位置に達する。そして、現像ローラ51Y上の現像剤Gは、この位置で現像剤量が適量化された後に、感光体ドラム1Yとの対向位置(現像領域である。)まで搬送される。そして、現像領域に形成された電界によって、感光体ドラム1Y上に形成された潜像にトナーが吸着される。その後、現像ローラ51Y上に残った現像剤Gはスリーブの回転にともない現像剤収容部の上方に達して、この位置で現像ローラ51Yから離脱される。
なお、現像領域に形成される電界は、現像電源97によって現像ローラ51Yに印加される現像バイアスと、帯電工程と露光工程とによって感光体ドラム1Yの表面に形成される表面電位(潜像電位)と、によって形成されるものである。
また、トナー容器58は、現像装置5Y(画像形成装置100)に対して着脱可能(交換可能)に設置されている。そして、トナー容器58は、その内部に収容された新品のトナーが空になると、現像装置5Y(画像形成装置100)から取り外されて新品のものに交換されることになる。
【0025】
次に、図3等を用いて、本実施の形態における中間転写ベルト装置について詳述する。
図3を参照して、中間転写ベルト装置は、中間転写体としての中間転写ベルト8、4つの1次転写ローラ9Y、9M、9C、9K 、駆動ローラ16、従動ローラ17、転写前ローラ18、テンションローラ19、クリーニング対向ローラ20、中間転写クリーニング装置10、2次転写対向ローラ21、転写装置としての2次転写装置69、等で構成される。
中間転写体としての中間転写ベルト8は、各色のトナー像をそれぞれ担持する4つの感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに当接して1次転写ニップを形成している。中間転写ベルト8は、主として6つのローラ部材(駆動ローラ16、従動ローラ17、転写前ローラ18、テンションローラ19、クリーニング対向ローラ20、2次転写対向ローラ21、である。)によって張架され支持されている。
【0026】
本実施の形態において、中間転写ベルト8は、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)、等を単層又は複数層に構成して、カーボンブラック等の導電性材料を分散させたものである。中間転写ベルト8は、体積抵抗率が106~1013Ωcm、ベルト裏面側の表面抵抗率が107~1013Ωcmの範囲となるように調整されている。また、中間転写ベルト8は、厚さが20~200μmの範囲となるように設定されている。本実施の形態では、中間転写ベルト8の厚さが60μm程度に、体積抵抗率が109Ωcm程度に、設定されている。
なお、必要に応じて中間転写ベルト8の表面に離型層をコートすることもできる。その際、コートに用いる材料として、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、PVDF(フッ化ビニルデン)、PEA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体)、PVF(フッ化ビニル)、等のフッ素樹脂を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0027】
1次転写ローラ9Y、9M、9C、9Kは、それぞれ、中間転写ベルト8を介して対応する感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに当接している。詳しくは、イエロー用の転写ローラ9Yは中間転写ベルト8を介してイエロー用の感光体ドラム1Yに当接して、マゼンタ用の転写ローラ9Mは中間転写ベルト8を介してマゼンタ用の感光体ドラム1Mに当接して、シアン用の転写ローラ9Cは中間転写ベルト8を介してシアン用の感光体ドラム1Cに当接して、ブラック用(黒色用)の転写ローラ9Kは中間転写ベルト8を介してブラック用(黒色用)の感光体ドラム1Kに当接している。1次転写ローラ9Y、9M、9C、9Kは、それぞれ、芯金上に導電性スポンジ層が形成された弾性ローラであって、体積抵抗が106~1012Ω(好ましくは、107~109Ω)の範囲となるように調整されている。
【0028】
駆動ローラ16は、4つの感光体ドラム(感光体)に対して中間転写ベルトの走行方向下流側の位置で、中間転写ベルト8が120度程度の巻付角度で巻き付けられた状態で中間転写ベルト8の内周面に当接するように配置されている。駆動ローラ16は、制御部90によって制御される駆動モータ(不図示)によって図3の時計方向に回転駆動される。これにより、中間転写ベルト8は所定の走行方向(図3の時計方向である。)に走行することになる。
【0029】
従動ローラ17は、4つの感光体ドラムに対して中間転写ベルト8の走行方向上流側の位置で、中間転写ベルト8が180度程度の巻付角度で巻き付けられた状態で中間転写ベルト8の内周面に当接するように配置されている。中間転写ベルト8において、従動ローラ17から駆動ローラ16に至る部分は、ほぼ水平面になるように設定されている。従動ローラ17は、中間転写ベルト8の走行にともない図3の時計方向に従動回転する。
【0030】
テンションローラ19は、中間転写ベルト8の外周面に当接している。転写前ローラ18、クリーニング対向ローラ20、2次転写対向ローラ21は、中間転写ベルト8の内周面に当接している。
2次転写対向ローラ21とテンションローラ19との間には、中間転写ベルト8を介してクリーニング対向ローラ20に当接するように中間転写クリーニング装置10(クリーニングブレード)が設置されている。
【0031】
図3を参照して、2次転写対向ローラ21は、中間転写ベルト8と2次転写ベルト72とを介して2次転写ローラ70に当接している。2次転写対向ローラ21は、ステンレス鋼等からなる円筒状の芯金の外周面に、体積抵抗が107~108Ω程度で、硬度(JIS-A硬度)が48~58度程度のNBRゴムからなる弾性層83(層厚は5mm程度である。)が形成されたものである。
【0032】
次に、図3を用いて、転写装置としての2次転写装置69について詳述する。
図3を参照して、2次転写装置69は、2次転写ベルト72、2次転写ローラ70、分離ローラ71、2次転写ブレード73(クリーニングブレード)、等で構成される。
2次転写ローラ70と2次転写ベルト72とは、中間転写ベルト8(中間転写体)との間に形成された転写ニップ(2次転写ニップ)に搬送されるシートPに、中間転写ベルト8に担持されたトナー像を転写する転写部材として機能する。
【0033】
2次転写ベルト72は、複数のローラ部材(2次転写ローラ70と分離ローラ71とである。)に張架・支持された無端ベルトであって、中間転写ベルト8とほぼ同じ材料で形成されている。2次転写ベルト72は、中間転写体としての中間転写ベルト8に当接して2次転写ニップ(転写ニップ)を形成するとともに、2次転写ニップから送出されたシートPを搬送するものである。
【0034】
2次転写ローラ70は、2次転写対向ローラ21との間に中間転写ベルト8と2次転写ベルト72とを挟んで2次転写ニップを形成している。2次転写ローラ70は、ステンレス鋼、アルミニウム等からなる中空状の芯金上に、硬度(アスカーC硬度)が40~50度程度の弾性層が形成(被覆)されたものである。2次転写ローラ70の弾性層は、ポリウレタン、EPDM、シリコーン等のゴム材料に、カーボン等の導電性フィラーを分散させたり、イオン性の導電材料を含有させたりして、ソリッド状又は発泡スポンジ状に形成することができる。本実施の形態において、弾性層は、転写電流の集中を抑えるために、その体積抵抗が106.5~107.5Ω程度に設定されている。
【0035】
また、本実施の形態において、2次転写ローラ70は、電源部(不図示)に電気的に接続されていて、その電源部から直流成分と交流成分とが重畳された2次転写バイアス(高圧電圧)が印加される。この2次転写ローラ70に印加される2次転写バイアスは、2次転写ニップに搬送されるシートPに、中間転写ベルト8の表面に担持(1次転写)されたトナー像を2次転写するためのものであって、トナーの極性と異なる極性(本実施の形態ではプラス極性である。)の直流電圧と、ピーク・ツー・ピーク電圧が4~10kV程度の交流電圧と、が重畳されたものである。これにより、中間転写ベルト8のトナー担持面(外周面)に担持されたトナーが、2次転写電界によって2次転写対向ローラ21側から2次転写装置69側に向かって静電移動することになる。
なお、本実施の形態では、2次転写バイアスを転写部材としての2次転写ローラ70に印加したが、2次転写バイアスを転写対向部材としての2次転写対向ローラ21に印加することもできるし、2次転写バイアスを2次転写ローラ70と2次転写対向ローラ21とにそれぞれ印加することもできる。ただし、直流成分の2次転写バイアスを2次転写対向ローラ21に印加する場合には、トナーの極性と同じ極性(マイナス極性である。)の直流電圧を印加することになる。
【0036】
また、2次転写ローラ70は、制御部90によって制御される駆動モータ(不図示)によって図3の反時計方向に回転駆動されて、2次転写ベルト72を図3の反時計方向に回転(走行)させるとともに、分離ローラ71を図3の反時計方向に従動回転させる。
【0037】
分離ローラ71は、2次転写ニップに対してシートPの搬送方向下流側の位置に配置されている。2次転写ニップから送出されたシートPは、図3の反時計方向に走行する2次転写ベルト72に沿うように搬送された後に、分離ローラ71の位置で、分離ローラ71の外周に沿うように曲面が形成された2次転写ベルト72によって、2次転写ベルト72から分離(曲率分離)されることになる。
なお、本実施の形態では、2次転写ローラ70と分離ローラ71との2つのローラ部材によって2次転写ベルト72を張架するように構成したが、3つ以上のローラ部材によって2次転写ベルト72を張架・支持するように構成することもできる。
2次転写ブレード73は、2次転写ベルト72の表面に当接して、2次転写ベルト72の表面に付着したトナーや紙粉などの異物を除去するものである。2次転写ブレード73は、2次転写ベルト72の走行方向に対してカウンタ方向に当接するように、2次転写ベルト72を介して2次転写ローラ70に圧接している。
【0038】
以下、本実施の形態において特徴的な、画像形成装置100の構成・動作について詳述する。
先に図1図2等を用いて説明したように、画像形成装置100には、感光体としての感光体ドラム1Y(1M、1C、1K)、帯電装置4Y、転写装置としての2次転写装置69、などが設置されている。
【0039】
本実施の形態における帯電装置4Yは、電源93から帯電バイアスとして直流電圧が印加される帯電ローラである。本実施の形態において、電源93は、制御部90による制御によって、帯電装置4Yに印加する帯電バイアス(直流電圧)の大きさを可変できるように構成されている。
転写装置としての2次転写装置69は、感光体ドラム1Yの表面に形成されたトナー像を、中間転写ベルト8を介して、シートPに転写するものである。したがって、転写装置69は、感光体ドラム1Yの表面に形成された地肌汚れ(意図せずに形成されてしまったものはもちろんのこと、後述するように意図的に形成した地肌汚れパターンX1~X9なども含む。)を、中間転写ベルト8(中間転写体)を介して、シートPに転写するものでもある。
【0040】
ここで、図1図2等を参照して、本実施の形態における画像形成装置100には、シートPの表面に転写された地肌汚れを検知する地汚れ検知手段としての地汚れ検知センサ99が設けられている。
詳しくは、地汚れ検知センサ99(地汚れ検知手段)は、シートPの表面に転写されたトナー像が定着される定着装置50に対して搬送方向下流側(シートPの搬送方向の下流側である。)に設置されている。定着工程後の位置で地肌汚れを検知することで、ユーザーが最終的に手にするシートPにおける地肌汚れの程度を正確に把握することができる。
また、地汚れ検知センサ99は、シートPの表面の地肌濃度を光学的に検知する光学センサである。具体的に、地汚れ検知センサ99は、発光素子と受光素子とからなる反射型光学センサであって、発光素子から射出した光をシートPの表面に投射して、その表面で反射した光を受光素子で受光する。そして、シートPの表面の地肌濃度の大きさによって、地汚れ検知センサ99(受光素子)の出力が変化することにより、その出力値からシートP上の地汚れ量(地肌汚れ量)が把握されることになる。
なお、このように構成された地汚れ検知センサ99は、シートP上に形成されたトナー像(画像)の画像濃度も検知可能である。
【0041】
ここで、本実施の形態において、地汚れ検知センサ99によるシートP上の地肌汚れの検知(後述する「地汚れ検知モード」における検知である。)は、通常のプリント動作とは別のタイミング(例えば、プリント前のウォーミングアップ時である。)でおこなっている。具体的に、通常のプリント動作とは別のタイミングで、地肌汚れ検知用のダミーのシートP(検知用のシート)を搬送して、その検知用のシートPに形成された地肌汚れを地汚れ検知センサ99で検知している。
なお、地汚れ検知センサ99によるシートP上の地肌汚れの検知(例えば、「地汚れ検知モード」以外で補助的におこなう検知である。)は、通常のプリント動作においておこなうこともできる。詳しくは、先に図1を用いて説明した通常のプリント動作において、定着工程後のシートPが地肌汚れ検知センサ99の位置を通過するときに、そのシートPの全面の画像濃度を検知する。そして、その全面の画像濃度の情報から、露光装置7の書込みデータ(画像情報)から割り出した非画像部(地肌部)の位置に基づいて、地肌部の画像濃度(地肌汚れ)を検知する。
【0042】
また、図1図2等を参照して、本実施の形態における画像形成装置100には、プリント動作において搬送されるシートPの種類を検知するシート検知手段としての操作表示パネル95が設置されている。
具体的に、ユーザーが操作表示パネル95を操作して入力したシートPの種類に関する情報に基づいて、制御部90で、搬送されるシートPが、低平滑シートのように転写率の低いものであるか、高平滑シートのように転写率の高いものであるか、が判別される。そのため、制御部90も、シート検知手段の一部として機能しているとも言える。
なお、シートの「平滑度」は、シートをガラスに押し付けて、その間を空気がどれだけの速さで通過するかを計測した数値であって、単位は「秒」で表す。そして、本願明細書等において、「低平滑シート」は上述した数値が40秒以下のものであって、「高平滑シート」上述した数値が500秒以上のものと定義する。
【0043】
そして、本実施の形態では、所定の種類のシートP(例えば、A社製の高平滑シートWである。)が初めて搬送されるときに、そのシートPと同種類のシートPの表面に感光体ドラム1Yの表面から転写された地肌汚れとしての地肌汚れパターンX1~X9(図4参照)を地汚れ検知センサ99(地汚れ検知手段)で検知して、その検知結果に基づいて作像条件を決定して、その作像条件に調整するとともに、そのシートPの種類と決定した作像条件との関係を記憶手段としての記憶部91(図2参照)に記憶する「地汚れ検知モード」を実行する。
【0044】
すなわち、「地汚れ検知モード」は、シートPの種類ごとに地肌汚れの生じにくい最適な作像条件を設定するためにおこなわれる制御モードであって、以下の手順でおこなわれる。
(1)検知用のシートP上に地肌汚れパターンX1~X9を形成する。
(2)シートP上の地肌汚れパターンX1~X9を地汚れ検知センサ99で検知する。
(3)地汚れ検知センサ99の検知結果に基づいて、地肌汚れの生じにくい最適な作像条件を決定するとともに、その最適な作像条件に調整する。
(4)(3)で決定した作像条件と、そのシートPの種類と、の組み合わせを制御部90の記憶部91に記憶・保存する。
【0045】
そして、記憶部91(記憶手段)に記憶されたシートPと同種類のシートP(例えば、A社製の高平滑シートWである。)が搬送されるときに、「地汚れ検知モード」は実行せずに、そのシートPの種類に対応する、記憶部91に記憶された作像条件に調整する。
すなわち、プリント動作に使用されるシートPの種類と、その最適な作像条件と、の組み合わせが既に記憶部91に記憶・保持されている場合には、わざわざ地汚れ検知モードをおこなうことなく、その記憶された最適な作像条件に設定して、プリント動作をおこなう。
【0046】
このように、本実施の形態では、シートP上の地肌汚れ(地汚れ)の程度を直接的に検知する地汚れ検知センサ99を設けているため、中間転写ベルト8上の地汚れを検知するセンサを設ける場合に比べて、シートP上の地汚れの程度を効率的に把握することができる。
すなわち、中間転写ベルト8上の地汚れを検知するセンサを設けたとしても、そのセンサによって検知された地汚れの程度は、シート上の地汚れの程度とは必ずしも一致しない。具体的に、中間転写ベルト8上(又は、感光体ドラム上)の地汚れがそれほど悪くなくても、シートP上の地汚れが悪くなってしまうことがあるし、その逆のケースもある。これは、シートPの種類によって、中間転写ベルト8上の地肌汚れの転写性が異なるためである。具体的に、図8に示すように、中間転写ベルト8上の地肌汚れの程度が同じであっても、シートPとして表面が滑らかで転写率の高い高平滑シートが用いられた場合には、シートPとして表面が粗くて転写率の低い低平滑シートが用いられた場合に比べて、シートP上の地肌汚れの程度(地汚れ量)が悪くなってしまう。
ユーザーが重視するのは、最終的に手にするプリント後のシートP上の地肌汚れの程度であって、本実施の形態では、シートP上の地肌汚れを直接的に検知しているため、シートPの種類などに関係することなく、シートP上の地肌汚れに関する画像品質を正確に把握することができる。
そして、本実施の形態では、シートPの種類と、地肌汚れの程度と、の関係を紐づけて、記憶部91に記憶しているため、その後に同じ種類のシートPが搬送されるときに、効率的に作像条件を最適化して、シートPの種類に関わらず、シートP上の地肌汚れを効率的に軽減することができる。
【0047】
なお、このような地汚れ検知センサ99によるシートP上の地肌汚れの検知結果と、操作表示パネル95によるシートPの種類に関する検知結果と、に基づいた作像条件の調整は、4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の色ごとにおこなうこともできるし、特定色(例えば、地肌汚れが目立つブラックである。)のみおこなうこともできる。
【0048】
ここで、本実施の形態において、「地汚れ検知モード」において決定されて設定される作像条件は、帯電装置4Yに印加される帯電バイアスとしての直流電圧である。
具体的に、地汚れ検知センサ99によって地肌汚れパターンX1~X9(図4参照)を検知した検知結果に基づいて、地肌汚れが狙いのもの(本実施の形態では、「分光濃度・測色計(Xrite社製)」における計測値が、0.005~0.01程度の画像濃度である。)より悪くならない、最小の地肌ポテンシャル(帯電バイアス)を決定している。例として、図7に示すような、地肌ポテンシャルと地肌汚れとの関係において、狙いの閾値Xを超えないような、最小の地肌ポテンシャル(閾値Xを示す破線と、曲線グラフと、の交点の近傍であって左側に位置する地肌ポテンシャルである。)が決定されることになる。
【0049】
さらに具体的に、表面が滑らかで転写率の高い高平滑シートなどのシートPが通紙される場合には、表面が粗くて転写率の低い低平滑シートなどのシートPが通紙される場合に比べて、シートP上の地肌汚れの程度(地汚れ量)が悪くなるため、地肌ポテンシャルが大きくなるように帯電バイアス(電源93)を調整する。
【0050】
なお、図5を参照して、「地肌ポテンシャル」は、感光体ドラム1Yの表面の帯電電位(通常時、-700V程度である。)と、現像ローラ51Yに印加される現像バイアス(通常時、-555V程度である。)と、の電位差(通常、-145V程度である。)である。そして、図7に示すように、地肌ポテンシャルの絶対値が低い場合には、地肌ポテンシャルの絶対値が高い場合に比べて、感光体ドラム1Y上の地肌部にトナー(特に、正常に帯電しない弱帯電トナーや逆帯電トナーである。)が静電的に付着しやすくなってしまい、感光体ドラム1Y上の地肌汚れが悪化してしまう。なお、本実施の形態では、地肌ポテンシャルを調整するときに、現像バイアス(現像電源から現像ローラ51Yに印加される電圧である。)を固定して、帯電バイアスを可変するようにしているが、帯電バイアスを固定して現像バイアスを可変しても良いし、帯電バイアスと現像バイアスとの両方を可変しても良い。ただし、現像バイアスを可変してしまうと、帯電バイアスを可変する場合に比べて、画像濃度への直接的な影響が大きくなるため、現像バイアスを固定することが好ましい。
【0051】
ここで、本実施の形態では、ユーザーが任意に操作表示パネル95を操作することによって、「地汚れ検知モード」で決定・記憶されたシート種類と最適な作像条件(地肌ポテンシャル)との関係を取り消して、同種類のシートについて、新たに「地汚れ検知モード」を再実行して、シート種類と最適な作像条件(地肌ポテンシャル)との関係を再設定(更新)できるようにしている。
これは、画像形成装置100が長期間使用されるうちに、作像条件に関する構成部材が劣化したり交換されたりすることによって、同種類のシートであっても最適な作像条件が変化する可能性があるためである。
なお、本実施の形態では、シート種類と最適な作像条件(地肌ポテンシャル)との組み合わせに関する情報の再設定を、ユーザーが任意のタイミングでおこなえるようにしたが、所定のタイミング(例えば、画像形成装置100の累積稼働時間が所定時間Tに達するごとのタイミングである。)でおこなえるようにすることもできる。
【0052】
ここで、図6(及び、図4)を参照して、地肌汚れパターンX1~X9は、感光体ドラム1Yの表面の帯電電位と、現像装置5Yの現像ローラ51Yに印加される現像バイアスと、の電位差としての地肌ポテンシャルを段階的に変化させて形成したものである。
具体的に、本実施の形態では、現像ポテンシャルが最も大きくなる第1段階の地肌汚れX1から、現像ポテンシャルが最も小さくなる第9段階の地肌汚れX9に至るまで、9段階の横帯状の地肌汚れ(X1~X9)を図4の白矢印で示すシート搬送方向に沿うように並べて形成している。
なお、本実施の形態において、地肌汚れパターンX1~X9は、図6に示すように、現像バイアスの大きさを変化させずに、帯電装置4Yに印加する帯電バイアスの大きさを変化させて、地肌ポテンシャルを段階的に変化させたものである。このようにすることで、画像濃度への影響がほとんどないように調整される作像条件(現像バイアスを固定して帯電バイアスを可変する作像条件の調整である。)に合わせて、地肌汚れパターンX1~X9を形成することができる。
【0053】
そして、「地汚れ検知モード」は、地汚れ検知センサ99(地汚れ検知手段)によって地肌汚れパターンX1~X9を検知した検知結果に基づいて、地肌ポテンシャルと地肌汚れとの関係(図7参照)を求めて、作像条件としての地肌ポテンシャル(帯電バイアス)を決定している。
詳しくは、地肌汚れパターンX1~X9を検知した検知結果に基づいて、地肌汚れが狙いのもの(閾値X)より悪くならない、最小の地肌ポテンシャルを決定している。
例えば、図4において、1~4段階の地肌汚れX1~X4の地肌汚れ量が閾値Xを超えずに、5~9段階の地肌汚れX5~X9の地肌汚れ量が閾値Xを超えたものである場合、4段階の地肌汚れX4に対応する地肌ポテンシャル(帯電バイアス)が決定され設定されることになる。
【0054】
ここで、図4図6を参照して、本実施の形態において、地肌汚れパターンX1~X9を形成するときに、その地肌汚れパターンX1~X9の近傍(シートPの搬送方向後端部である。)に、横帯状の画像Z(基準画像)を基準位置として形成している。
すなわち、検知用のシートPには、地肌汚れパターンX1~X9が形成されるとともに、その下流側に基準画像Zが形成されることになる。
この横帯状の画像Z(基準画像)は、感光体ドラム1Y上において、地肌汚れパターンX1~X9の下流側に相当する位置に対して、帯電工程をおこなった後に、露光装置7によって露光工程をおこなって、幅方向に延在するように形成したもの(例えば、ベタ画像である。)である。そして、段階的な地肌汚れパターンX1~X9とともに、感光体ドラム1Yから中間転写ベルト8を介してシートPに転写された画像Z(基準画像)を基準位置として、地汚れ検知センサ99によって検知することで、段階的な地肌汚れパターンX1~X9の位置を正確に把握しやすくなる。そのため、地汚れ検知センサ99によって地肌汚れパターンX1~X9を位置ズレした状態で検知してしまう不具合(位置を間違えて検知してしまう不具合)を防止することができる。
【0055】
図9は、ここまでに説明した「地汚れ検知モード」に関係する制御の一例を示すフローチャートである。
図9に示すように、まず、プリント動作の指令が操作表示パネル95の操作によって入力されると、そのプリント動作に関わるシートPの種類が初めてのものか(記憶部91に、最適な地肌ポテンシャルとともに紐づけされた種類のものか)、が判別される(ステップS1)。
その結果、プリントされるシートPが初めての種類のものと判別された場合、そのプリント動作が開始される前に、地汚れ検知モードが実行される(ステップS2)。詳しくは、先に説明したように、検知用のシートP上に地肌汚れパターンX1~X9(及び、基準画像Z)が形成されて、それらが地汚れ検知センサ99によって検知される。そして、その検知結果に基づいて、そのシート種類について地肌汚れが生じない最適な地肌ポテンシャル(帯電バイアス)が決定され設定(調整)される。そして、その設定された地肌ポテンシャル(帯電バイアス)にて、指令されたプリント動作がおこなわれる。
これに対して、ステップS1で、プリントされるシートPが初めての種類のものでなないと判別された場合、記憶部91に既に記憶されているシート種類と最適な地肌ポテンシャルとの関係に関するデータを再設定する要求がユーザーの設定によってされているか(又は、再設定するタイミングであるか)が判別される(ステップS3)。その結果、そのような要求がされているもの(又は、再設定するタイミングであるもの)と判別された場合には、ステップS2以降のフローが繰り返される。すなわち、その種類のシートPについて、再び地汚れ検知モードが実行されて、シート種類と最適な地肌ポテンシャルとの関係に関するデータが再設定される。
これに対して、ステップS3で、再設定の要求がないもの(又は、再設定するタイミングでないもの)と判別された場合、記憶部91に既に記憶されているシート種類と最適な地肌ポテンシャルとの関係に関するデータを照合して(ステップS4)、プリントされるシートPの種類に適した地肌ポテンシャル(帯電バイアス)が決定され設定(調整)される(ステップS5)。そして、その設定された地肌ポテンシャル(帯電バイアス)にて、指令されたプリント動作がおこなわれる。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態における画像形成装置100は、感光体ドラム1Y(感光体)と、帯電バイアスが印加されて感光体ドラム1Yの表面を帯電する帯電装置4Yと、感光体ドラム1Yの表面に形成された地肌汚れを中間転写ベルト8を介して(又は、直接的に)シートPに転写する2次転写装置69(転写装置)と、シートPの表面に転写された地肌汚れを検知する地汚れ検知センサ99(地汚れ検知手段)と、搬送されるシートPの種類を検知する操作表示パネル95(シート検知手段)と、が設けられている。そして、所定の種類のシートPが初めて搬送されるときに、そのシートPと同種類のシートPの表面に感光体ドラム1Yの表面から転写された地肌汚れとしての地肌汚れパターンX1~X9を地汚れ検知センサ99で検知して、その検知結果に基づいて作像条件を決定して、その作像条件に調整するとともに、そのシートPの種類と決定した作像条件との関係を記憶部91(記憶手段)に記憶する「地汚れ検知モード」を実行している。
これにより、シートPの表面の地肌汚れを生じにくくすることができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、転写装置としての2次転写ローラ70及び2次転写ベルト72と、中間転写体としての中間転写ベルト8と、を用いた画像形成装置100に対して、本発明を適用した。これに対して、中間転写ベルトや中間転写ドラムなどの中間転写体を備えず、現像装置によって現像されたトナー像が形成される感光体ドラム(感光体)と、感光体ドラムの位置に搬送されるシートに対して感光体ドラム上のトナー像を転写するための転写ローラ、転写ベルトなどの転写装置と、を備えた装置、いわゆる直接転写方式の画像形成装置に対しても、本発明を適用することができる。その場合、転写装置は、感光体(感光体ドラム)の表面に形成された地肌汚れを、直接的にシートに転写することになる。
また、本実施の形態では、転写装置としての2次転写ローラ70と2次転写ベルト72とを用いた画像形成装置100に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、転写装置としての2次転写ベルトが用いられておらず2次転写ローラのみが用いられた画像形成装置に対しても、本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、カラー画像を形成する画像形成装置100に対して、本発明を適用した。これに対して、モノクロ画像のみを形成する画像形成装置に対しても本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、シートの種類として、低平滑シートと高平滑シートとを例示したが、シートの種類はこれに限定されることはない。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0059】
なお、本願明細書等において、「シート」とは、紙(用紙)の他に、コート紙、ラベル紙、OHPシート、フィルムシート等のシート状の記録媒体のすべてを含むものと定義する。
【符号の説明】
【0060】
1Y、1M、1C、1K 感光体ドラム(感光体)、
4Y 帯電装置、
5Y、5M、5C、5K 現像装置、
8 中間転写ベルト(中間転写体)、
69 2次転写装置(転写装置)、
90 制御部、
91 記憶部(記憶手段)、
93 電源(地肌ポテンシャル調整手段)、
95 操作表示パネル(シート検知手段)、
99 地汚れ検知センサ(地汚れ検知手段)、
100 画像形成装置(画像形成装置本体)、
X1~X9 地肌汚れパターン、
Z 基準画像(基準位置)、
P シート(被転写体)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2017-107056号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9