(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062839
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】インクジェット装置、積層データを処理する処理装置、および画像形成方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/112 20170101AFI20230427BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20230427BHJP
B29C 64/386 20170101ALI20230427BHJP
B29C 64/236 20170101ALI20230427BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230427BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230427BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20230427BHJP
【FI】
B29C64/112
B29C64/209
B29C64/386
B29C64/236
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172970
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】畑中 伸一
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA44
4F213AR07
4F213AR12
4F213AR14
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL15
4F213WL32
4F213WL74
4F213WL94
(57)【要約】
【課題】立体物の段差を軽減すること。
【解決手段】本発明の一態様に係るインクジェット装置は、樹脂層を高さ方向に積層することにより立体物を造形するインクジェット装置であって、液滴を吐出するヘッドと、前記樹脂層を支持する支持体と前記ヘッドとを相対移動させる移動機構と、前記ヘッドによる吐出と、前記移動機構による相対移動と、を少なくとも制御することにより、前記ヘッドから吐出された前記液滴により前記支持体上に前記樹脂層を形成させる制御部と、を有し、前記制御部は、前記立体物における高さが高い領域と高さが低い領域とを接続する接続領域において、2以上の前記樹脂層のそれぞれを、体積が異なる複数の前記液滴により形成させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層を高さ方向に積層することにより立体物を造形するインクジェット装置であって、
液滴を吐出するヘッドと、
前記樹脂層を支持する支持体と前記ヘッドとを相対移動させる移動機構と、
前記ヘッドによる吐出と、前記移動機構による相対移動と、を少なくとも制御することにより、前記ヘッドから吐出された前記液滴により前記支持体上に前記樹脂層を形成させる制御部と、を有し、
前記制御部は、前記立体物における高さが高い領域と高さが低い領域とを接続する接続領域において、2以上の前記樹脂層のそれぞれを、体積が異なる複数の前記液滴により形成させるインクジェット装置。
【請求項2】
前記接続領域における前記樹脂層を形成する前記液滴は、前記接続領域以外の領域における前記樹脂層を形成する前記液滴よりも体積が小さい前記液滴を含む請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項3】
前記接続領域における前記樹脂層を形成する前記液滴は、前記接続領域以外の領域における前記樹脂層を形成する前記液滴よりも、体積が大きい前記液滴を含む請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項4】
樹脂層を高さ方向に積層することにより立体物を造形するインクジェット装置であって、
液滴を吐出するヘッドと、
前記樹脂層を支持する支持体と前記ヘッドとを相対移動させる移動機構と、
前記ヘッドによる吐出と、前記移動機構による相対移動と、を少なくとも制御することにより、前記ヘッドから吐出された前記液滴により前記支持体上に前記樹脂層を形成させる制御部と、を有し、
前記制御部は、前記立体物における高さが高い領域と高さが低い領域とを接続する接続領域において、液滴の積層方向における前記低い領域の最上層と同じ層を、前記接続領域以外の領域の樹脂層を形成する前記液滴よりも体積が小さい液滴により形成させるインクジェット装置。
【請求項5】
前記ヘッドは、3種類以上の体積の前記液滴を前記支持体上に配置する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット装置。
【請求項6】
前記インクジェット装置は、所定の積層データに基づいて前記樹脂層を形成し、
前記制御部は、前記積層データを補正することにより、前記接続領域における前記樹脂層を形成する前記液滴の体積と、前記接続領域以外の領域における前記樹脂層を形成する前記液滴の体積と、を異ならせる請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット装置。
【請求項7】
液滴を吐出するヘッドと、
樹脂層を支持する支持体と前記ヘッドとを相対移動させる移動機構と、
所定の積層データに基づいて、前記ヘッドによる吐出と、前記移動機構による相対移動と、を少なくとも制御することにより、前記ヘッドから吐出された前記液滴により前記支持体上に前記樹脂層を形成させる制御部と、を有し、
前記樹脂層を高さ方向に積層することによって立体物を造形するインクジェット装置において使用される前記積層データを処理する積層データの処理装置であって、
前記立体物における高さが高い領域と高さが低い領域とを接続する接続領域において、2以上の前記樹脂層のそれぞれを、体積が異なる複数の前記液滴により形成させる前記積層データを出力する出力部を有する積層データの処理装置。
【請求項8】
樹脂層を含む樹脂層画像を高さ方向に積層することにより立体物を造形するインクジェット装置によって、前記樹脂層画像を形成する画像形成方法であって、
ヘッドにより、液滴を吐出し、
移動機構により、前記樹脂層を支持する支持体と前記ヘッドとを相対移動させ、
制御部により、前記ヘッドによる吐出と、前記移動機構による相対移動と、を少なくとも制御することにより、前記ヘッドから吐出された前記液滴により前記支持体上に前記樹脂層画像を形成させ、
前記制御部は、前記立体物における高さが高い領域と高さが低い領域とを接続する接続領域において、2以上の前記樹脂層画像のそれぞれを、体積が異なる複数の前記液滴により形成させる画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット装置、積層データを処理する処理装置、および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドから吐出された液滴により形成した樹脂層を、高さ方向に積層することによって立体物を造形するインクジェット装置が知られている。
【0003】
上記インクジェット装置では、立体物の斜面における階段状の段差を軽減するために、段差よりも小さな形状を追加造形する技術が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の技術では、立体物の段差が目立つ場合がある。
【0005】
本発明は、立体物の段差を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るインクジェット装置は、樹脂層を高さ方向に積層することにより立体物を造形するインクジェット装置であって、液滴を吐出するヘッドと、前記樹脂層を支持する支持体と前記ヘッドとを相対移動させる移動機構と、前記ヘッドによる吐出と、前記移動機構による相対移動と、を少なくとも制御することにより、前記ヘッドから吐出された前記液滴により前記支持体上に前記樹脂層を形成させる制御部と、を有し、前記制御部は、前記立体物における高さが高い領域と高さが低い領域とを接続する接続領域において、2以上の前記樹脂層のそれぞれを、体積が異なる複数の前記液滴により形成させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、立体物の段差を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るインクジェット装置の全体構成を例示する図である。
【
図2】実施形態に係るヘッドユニットの構成を例示する図である。
【
図3】実施形態に係る制御部の機能構成を例示するブロック図である。
【
図4】実施形態に係る制御部による処理を例示するフローチャートである。
【
図5】比較例に係る接続領域の第1例を示す図である。
【
図6】比較例に係る接続領域の第2例を示す図である。
【
図7】比較例に係る接続領域の第3例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る接続領域を例示する図である。
【
図9】実施形態に係る体積が異なるインク滴の組合せを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について詳細に説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのインクジェット装置、積層データの処理装置および画像形成方法を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0011】
<インクジェット装置10の構成例>
図1および
図2を参照して、インクジェット装置10の構成について説明する。
図1は、インクジェット装置10の構成を例示する図である。
図2は、ヘッドユニット14の構成を例示する図である。
【0012】
図1に示すように、インクジェット装置10は、制御部12と、造形部30と、を有する。制御部12と造形部30とは、通信可能に接続されている。
【0013】
造形部30は、ヘッドユニット14と、移動ステージ16と、駆動部26と、を有する。ヘッドユニット14は、複数のヘッド18を有する。ヘッド18は、移動ステージ16に向き合うように、ヘッドユニット14に設けられている。造形部30は、ヘッドユニット14における複数のヘッド18のそれぞれから吐出された液滴としてのインク滴を支持体P上に層状に配置することにより、樹脂層を形成する。
【0014】
樹脂層は、インク滴を支持体P上に二次元配置することにより形成される層である。換言すると、樹脂層は、複数の画素を含んで構成され、複数の画素ごとにインク滴が配置されることによって形成される層状の画像である。インク滴は、樹脂層を形成するために用いる色材を含むインクの液滴である。
【0015】
支持体Pは、その上に樹脂層が形成される造形途中の立体物である。インクジェット装置10は、支持体P上にインク滴による樹脂層を積層する。支持体Pは、積層される樹脂層を支持できる。予め定められた全ての樹脂層が積層されると、支持体Pは、完成品としての立体物となる。なお、支持体Pは、平面状であってもよいし、凹凸等を備えた立体状であってもよい。
【0016】
インク滴は、刺激硬化性を有する。刺激は、例えば、紫外線または赤外線等の光、熱、あるいは電気等である。本実施形態では、インク滴は、一例として紫外線硬化性を有する場合を説明するが、インク滴は、紫外線硬化性を有するものに限定されるものではない。
【0017】
ヘッドユニット14は、移動ステージ16に向き合うように設けられた照射部20を有する。照射部20は、ヘッド18から吐出されたインク滴を硬化させる波長の光を支持体Pに照射する。本実施形態では、照射部20は、紫外線を照射する。
【0018】
移動ステージ16は、ヘッド18と樹脂層を支持する支持体Pとを相対移動させる移動機構の一例である。移動ステージ16は、支持体Pを保持する。駆動部26は、ヘッドユニット14および移動ステージ16を、主走査方向X、副走査方向Yおよび高さ方向Zのそれぞれに沿って相対移動させる。主走査方向Xと副走査方向Yとは略直交し、高さ方向Zは、鉛直方向に沿っており、主走査方向Xおよび副走査方向Yのそれぞれに略直交する。本実施形態では、移動ステージ16におけるヘッドユニット14に向き合う面は、主走査方向Xおよび副走査方向Yに沿っている。
【0019】
駆動部26は、第1駆動部22および第2駆動部24を含む。第1駆動部22は、ヘッドユニット14を、主走査方向X、副走査方向Yおよび高さ方向Zに沿って移動させる。第2駆動部24は、移動ステージ16を、主走査方向X、副走査方向Yおよび高さ方向Zに移動させる。なお、造形部30は、第1駆動部22および第2駆動部24の何れか一方を有する構成であってもよい。
【0020】
図2に示すように、ヘッドユニット14は、所定方向に配列するヘッド18K、18C、18M、18Y、18Wおよび18Tを有する。ヘッド18K、18C、18M、18Y、18Wおよび18Tは、吐出するインク滴を除き、同じ構成を有するため、本実施形態では、これらを特に区別しない場合には、ヘッド18と総称する。
【0021】
本実施形態では、ヘッド18K、18C、18M、18Y、18Wおよび18Tは、所定方向に配列している。ヘッド18K、18C、18M、18Y、18Wおよび18Tは、それぞれ1以上のノズルを有し、1以上のノズルのそれぞれを通してインク滴32を吐出する。詳細には、ヘッド18Kは、ブラックのインク滴32Kを吐出する。ヘッド18Cは、シアンのインク滴32Cを吐出する。ヘッド18Mは、マゼンタのインク滴32Mを吐出する。ヘッド18Yは、イエローのインク滴32Yを吐出する。ヘッド18Wは、白色のインク滴32Wを吐出する。ヘッド18Tは、透明なインク滴32Tを吐出する。本実施形態では、インク滴32K、32C、32M、32Y、32Wおよび32Tを特に区別しない場合には、インク滴32と総称する。
【0022】
また本実施形態では、ヘッド18のそれぞれは、体積が異なるインク滴を支持体P上に配置できる。体積が異なるインク滴32は、体積が大きい大滴32a、体積が小さい小滴32b、および体積が大滴32aと小滴32bとの間である中滴32cを含む。つまり、本実施形態では、ヘッド18は、3種類以上の体積のインク滴32を支持体P上に配置する。
【0023】
例えば、ヘッド18のそれぞれは、小滴32bを吐出することにより小滴32bを支持体P上に配置できる。またヘッド18のそれぞれは、2滴の小滴32bを連続吐出し、この2滴の小滴32bが支持体P上に配置されるまでの間に結合した中滴32cを支持体P上に配置できる。さらに、ヘッド18のそれぞれは、3滴の小滴32bを連続吐出し、この3滴の小滴32bが支持体P上に配置されるまでの間に結合した大滴32aを支持体P上に配置できる。
【0024】
なお、ヘッドユニット14から吐出されるインク滴32の色は、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローに限定されない。また、ヘッドユニット14から吐出されるインク滴32の組成は、同じ組成に限定されない。
【0025】
本実施形態では、インクジェット装置10は、ヘッド18K、18C、18M、18Y、18Wおよび18Tの配列方向の両端部に照射部20を有する。照射部20は、ヘッドユニット14から吐出されたインク滴32に紫外線を照射することにより、インク滴32を硬化させる。照射部20は、ヘッド18の近傍に配置することが好ましい。照射部20をヘッド18の近傍に配置することにより、ヘッド18のそれぞれから吐出されたインク滴32が支持体Pに配置されてから硬化するまでの硬化時間を短縮できる。このため、より高精細な画像を形成することができる。なお、照射部20の数や照射部20の設置位置は、
図2に示すものに限定されない。
【0026】
造形部30は、移動ステージ16に保持された支持体Pと、ヘッドユニット14と、を主走査方向Xおよび副走査方向Yに沿って相対移動させながら、ヘッド18から吐出したインク滴32を支持体P上に配置することにより樹脂層17を形成する。また造形部30は、支持体Pとヘッドユニット14とを高さ方向Zに沿って相対移動させながら樹脂層17を支持体P上に積層することにより、立体物を造形する。
【0027】
<制御部12の機能構成例>
図3は、制御部12の機能構成を例示するブロック図である。
図3に示すように、制御部12は、入力部121と、処理部122と、造形制御部123と、記憶部124と、を有する。
【0028】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含んで構成されるコンピュータであり、インクジェット装置10全体の動作を制御する。なお、制御部12は、汎用のCPU以外を含んで構成されてもよい。例えば、制御部12は、回路等を含んで構成されてもよい。また制御部12は、モニタ、マウス、キーボード等であり、ユーザインターフェースを提供する操作部を含むこともできる。
【0029】
制御部12は、入力部121、処理部122および造形制御部123の一部または全部の機能を、例えば、CPU等のプロセッサにプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。また造形部30等の制御部以外の構成部、あるいはインクジェット装置10以外の外部装置が、入力部121、処理部122および造形制御部123の一部または全部の機能を有してもよい。
【0030】
入力部121は、積層される複数の樹脂層17のそれぞれを形成する元となる積層データImを入力する。なお、入力部121は、通信部を介して外部装置から積層データImを入力してもよいし、制御部12に設けられた記憶部124から積層データImを入力してもよい。
【0031】
処理部122は、インクジェット装置10において使用される積層データImを処理する積層データImの処理装置の一例である。処理部122は、接続領域検出部125と、補正部126と、出力部127と、を有する。
【0032】
接続領域検出部125は、立体物における高さが高い領域と高さが低い領域とを接続する接続領域を検出する。本実施形態では、接続領域検出部125は、入力部121により入力された積層データImから接続領域を検出する。
【0033】
段差は、造形される立体物の外周面に生じるため、接続領域は主に、立体物を造形するための複数の積層データImのうち、樹脂層17の1層分の積層データImにおける端部である輪郭部に対応する。そのため、本実施形態では、接続領域検出部125は、樹脂層17の1層分の積層データImにおける輪郭部を接続領域として検出する。接続領域検出部125は、1層分の積層データImを画像処理すること等によってこのような輪郭部を検出できる。
【0034】
補正部126は、接続領域検出部125による検出結果に基づき、積層データImを補正する。詳細には、補正部126は、接続領域検出部125による検出結果に基づき、樹脂層17に含まれる画素ごとに配置するインク滴32の体積を決定し、画素に対応付けてインク滴32の体積情報を積層データImに付与することにより、積層データImを補正する。
【0035】
本実施形態では、補正部126は、接続領域における2以上の樹脂層17の形成に用いられる複数のインク滴32が相互に異なるように、ヘッド18から吐出するインク滴32の体積を決定する。また本実施形態では、補正部126は、接続領域における樹脂層17を形成するインク滴32が、接続領域以外の領域における樹脂層17を形成するインク滴32よりも体積が小さいインク滴を含むように、ヘッド18から吐出するインク滴32の体積を決定する。
【0036】
補正部126は、決定したインク滴32の体積情報を、立体物を造形する全ての樹脂層17に含まれる画素に対応付けて積層データImに付与することにより、積層データImを補正する。例えば、補正部126は、積層データImの画素ごとに予め定められたインク滴32の体積情報に対して、決定したインク滴32の体積情報を追加することにより、積層データImを補正できる。あるいは補正部126は、積層データImの画素ごとに予め定められたインク滴32の体積情報を、決定したインク滴32の体積情報に置き換えることにより、積層データImを補正してもよい。
【0037】
出力部127は、積層データImを出力する。本実施形態では、出力部127は、積層データImを、造形制御部123を介して造形部30に出力する。但し、これに限定されるものではなく、出力部127は、記憶装置や表示装置、コンピュータ等に積層データImを出力してもよい。
【0038】
造形制御部123は、積層データImに基づいて、ヘッド18から各画素に対応するインク滴32を吐出するように、ヘッドユニット14、駆動部26および照射部20を制御する。
【0039】
記憶部124は、処理対象のデータやプログラムを記憶する機能を有する。
【0040】
<制御部12による処理例>
図4は、制御部12による処理の一例を示すフローチャートである。制御部12は、インクジェット装置10のユーザから操作部を介して造形開始指示を受け付けること等により、
図4の動作を開始する。
【0041】
まず、ステップS41において、制御部12は、入力部121により、積層データImを入力する。
【0042】
続いて、ステップS42において、制御部12は、接続領域検出部125により、入力部121を介して入力された積層データImから接続領域を検出する。
【0043】
続いて、ステップS43において、制御部12は、補正部126により、接続領域検出部125による検出結果に基づいて、積層データImを補正する。
【0044】
続いて、ステップS44において、制御部12は、出力部127により、積層データImを造形制御部123に出力する。
【0045】
続いて、ステップS45において、制御部12は、造形制御部123により、積層データImに基づいて、ヘッド18から各画素に対応するインク滴32を吐出するようにヘッドユニット14、駆動部26および照射部20を制御する。
【0046】
続いて、ステップS46において、制御部12は、造形を終了するか否かを判定する。例えば制御部12は、積層データImに基づき全ての樹脂層の積層および硬化を完了したか否か、あるいは操作部を介したユーザによる終了指示に応じて、造形を終了するか否かを判定できる。
【0047】
このようにして、制御部12は、インクジェット装置10に立体物を造形させることができる。
【0048】
<インクジェット装置10の作用>
次に、
図5から
図9を参照して、インクジェット装置10の作用について説明する。
図5から
図7は、比較例に係るインクジェット装置による接続領域を示す図であり、
図5は第1例、
図6は第2例、
図7は第3例である。
図8は、実施形態に係る接続領域を例示する図である。
図9は、実施形態に係る体積が異なるインク滴の組合せを例示する図である。
【0049】
図5から
図8は、比較例に係る立体物の外周面の一部を拡大表示した模式図である。
図5は立体物200X1、
図6は立体物200X2、
図7は立体物200X3の外周面201Xの一部を示している。
【0050】
図5から
図8において、第1樹脂層171Xおよび第2樹脂層172Xのそれぞれは、インク滴32Xを並べて配置することにより形成された樹脂層である。第1樹脂層171Xの上に第2樹脂層172Xが積層されている。第2樹脂層172Xの端部である輪郭部には段差が生じている。第1樹脂層171Xの上面は、高さが低い領域202Xであり、第2樹脂層172Xの上面は、高さ高い領域203Xである。接続領域は、段差における、高さが高い領域203Xと高さが低い領域202Xとを接続する領域である。
【0051】
図5に示す立体物200X1は、接続領域204X1を含む。
図6に示す立体物200X2は、接続領域204X2を含む。
図7に示す立体物200X3は、接続領域204X3を含む。
【0052】
図6に示す接続領域204X2では、インク滴32Xよりも体積が小さいインク滴32Xbが1つ配置され、
図7に示す接続領域202X3では、インク滴32Xbが2つ配置されている。インク滴32Xbが配置されることにより、接続領域204X2および204X3のそれぞれにおける段差の高さは、接続領域204X1における段差の高さよりも低くなっている。段差が低くなることにより、立体物200X2および200X3では、立体物200X1と比較して、外周面の段差が目立たなくなる。
【0053】
しかしながら、立体物200X2および200X3においても、インク滴32Xとインク滴32Xbの体積の差、およびインク滴32Xbの体積に応じた段差は生じるため、外周面の段差が目立つ懸念がある。特に、緩やかな斜面である緩斜面では、外周面の段差が特に目立つ。
【0054】
一方、
図8は、実施形態に係る立体物200の外周面の一部を拡大表示した模式図である。
図8において、第1樹脂層171および第2樹脂層172のそれぞれは、インク滴32を並べて配置することにより形成された樹脂層である。第1樹脂層171の上に第2樹脂層172が積層されている。ここで、第1樹脂層171は、ヘッドユニット14が主走査方向Xへ一回移動する際にすべて形成してもよいし、複数回の移動で分割して形成してもよい。第2樹脂層172についても同様である。また、所定領域の第1樹脂層171と所定領域以外の他の領域の第2樹脂層172とをヘッドユニット14の同一の主走査方向Xへの移動の際に形成してもよい。
【0055】
第2樹脂層172の端部である輪郭部には、第2樹脂層172と第2樹脂層172よりも高さの低い第1樹脂層171とを接続する接続領域204を有する。接続領域204は、第1樹脂層171よりも高さが高く、第2樹脂層172よりも高さが低い。
図8では低い領域202は第1樹脂層171の1層のみ、第2樹脂層172第1樹脂層171および第2樹脂層172の2層で形成される例を示しているが層の数はこれに限らない。例えば高い領域203を合計3層、低い領域202を合計2層で形成してもよい。以下の説明においては、高い領域203および低い領域202をともに複数層で形成する場合、低い領域202を形成する複数層のうち最上の樹脂層(すなわち
図8で最も上方に位置する樹脂層)を第1樹脂層171、高い領域203を形成する複数層のうち最上の樹脂層(すなわち
図8で最も上方に位置する樹脂層)を第2樹脂層172とそれぞれ定義する。
【0056】
本実施形態では、インクジェット装置10は、立体物200における高さが高い領域203と高さが低い領域202とを接続する接続領域204において、液滴の積層方向における第1樹脂層171および第2樹脂層172と同じ層を、体積が異なる大滴32a、小滴32bおよび中滴32cにより形成する。例えば、
図8においては、接続領域204において第2樹脂層172と同じ層である2層目の層を、図中左から順に中滴32c、中滴32c、小滴32bで形成し、接続領域204において第1樹脂層171と同じ層である1層目の層を、図中左から順に大滴32a、中滴32c、中滴32cにより形成する。インクジェット装置10は、接続領域204以外の領域における第1樹脂層171および第2樹脂層172については、大滴32aにより形成する。
【0057】
例えば、高さ方向Zに沿って積み上げる2つのインク滴の組合わせを、大滴32aと大滴32a、大滴32aと中滴32c、大滴32aと小滴32b、中滴32cと中滴32c、中滴32cと小滴32b、および小滴32bと小滴32bの6通りにすることにより、接続領域204を6通りの高さを含んで形成できる。
図8に示す例では、接続領域204は、大滴32aと大滴32a、大滴32aと中滴32c、中滴32cと中滴32cおよび中滴32cと小滴32bの4種類の高さを含んで形成されている。
【0058】
高さが徐々に異なるように複数の高さを含んで接続領域204を形成すると、段差が低くなることによって軽減される。体積の異なるインク滴32の組合せの数が多くなるほど、段差が低くなり軽減される。
【0059】
特に緩斜面ほど、段差が目立たなくなる効果が顕著に得られる。例えば、インクジェット装置10が、大滴32aの高さが21ミクロンである600dpiの解像度を有する場合には、大滴32aと大滴32a、中滴32cと中滴32c、大滴32aのみ、中滴32cのみおよび小滴32bのみの5通りの高さを含んで接続領域204を形成でき、略15度の緩斜面を、段差を目立たせずに造形可能になる。
【0060】
図9は、体積が異なるインク滴の組合せを例示する図である。
図9は、大滴32a、中滴32cおよび小滴32bの3種類を組み合わせた12通りの高さを示している。
【0061】
ここで、第1樹脂層171側を大滴32a、第2樹脂層172側を中滴32cとする場合と、第2樹脂層172側を大滴32a、第1樹脂層171側を中滴32cとする場合とでは、インク滴32の組合せ自体は同じである。しかしながら、高さ方向Zに沿った配置順が異なるため、紫外線を照射した場合におけるインク滴32の収縮作用が異なる結果、高さを異ならせることができる。大滴32aと小滴32bの組合せ、および中滴32cと小滴32bの組合せにおいても同様である。
【0062】
また、本実施形態では、インクジェット装置10は、立体物200における高さが高い領域203と高さが低い領域202とを接続する接続領域204において、液滴の積層方向における第1樹脂層171と同じ層(すなわち低い領域202の最上層と同じ層)を、接続領域204以外の領域の樹脂層17を形成する大滴32aよりも体積が小さい中滴32cにより形成する。これにより、
図6に示した第2例や
図7に示した第3例と比較して、接続領域204を滑らかな緩斜面とすることができ、段差を目立たせずに立体物200を造形可能となる。
【0063】
また、上記に加えて、接続領域204において、液滴の積層方向における第2樹脂層172と同じ層を、接続領域204以外の領域における樹脂層17を形成する大滴32aよりも体積が小さい小滴32bおよび中滴32cにより形成するとより好ましい。これにより、
図6に示した第2例や
図7に示した第3例と比較して、接続領域204をより滑らかな緩斜面とすることができ、段差をより目立たせずに立体物200を造形可能となる。
【0064】
<インクジェット装置10の効果>
以上説明したように、インクジェット装置10は、樹脂層17を高さ方向Zに沿って積層することにより立体物200を造形するものである。インクジェット装置10は、インク滴32(液滴)を吐出するヘッド18と、樹脂層17を支持する支持体Pとヘッド18とを相対移動させる移動ステージ16(移動機構)と、を有する。またインクジェット装置10は、ヘッド18による吐出と、移動ステージ16による相対移動と、を少なくとも制御することにより、ヘッド18から吐出されたインク滴32により支持体P上に樹脂層17を形成させる制御部12を有する。
【0065】
制御部12は、立体物200における高さが高い領域203と高さが低い領域202とを接続する接続領域204において、第1樹脂層171および第2樹脂層172のそれぞれを、大滴32a、小滴32bおよび中滴32c(体積が異なる複数の液滴)により形成させる。
【0066】
換言すると、制御部12は、立体物200における高さが高い領域203と高さが低い領域202とを接続する接続領域204において、接続領域204以外の領域における樹脂層17を形成する大滴32aよりも体積が小さい小滴32bおよび中滴32cにより、低い領域202における最上の樹脂層である第1樹脂層171を形成させる。
【0067】
高さ方向Zに沿って積み上げる、体積が異なる2つのインク滴32の組合わせを異ならせることにより、積み上げた高さを異ならせることができるため、接続領域204における段差を低くすることができる。特に段差が目立ちやすい立体物200の緩斜面において段差を軽減することができる。このようにして、本実施形態では、立体物200の段差を軽減できる。
【0068】
また本実施形態では、接続領域204における樹脂層17を形成するインク滴は、接続領域204以外の領域における樹脂層17を形成する大滴32aよりも体積が小さい小滴32bおよび中滴32cを含む。この構成により、インクジェット装置10は、接続領域204における段差を低くすることができ、立体物200の段差を軽減できる。
【0069】
なお、本実施形態では、制御部12が第1樹脂層171および第2樹脂層172からなる2層の樹脂層17を、大滴32a、小滴32bおよび中滴32cにより形成させるが、2層以上の樹脂層17を大滴32a、小滴32bおよび中滴32cにより形成させても同様の効果が得られる。
【0070】
また本実施形態では、ヘッド18は、3種類の体積のインク滴32を支持体P上に配置する。具体的には、ヘッド18は、大滴32a、小滴32bおよび中滴32cの3種類の体積のインク滴32を支持体P上に配置する。この構成により、接続領域204に含まれる段差を低くすることができ、立体物200の段差を軽減できる。なお、ヘッド18が吐出するインク滴32の体積は3種類に限定されるものではなく、2種類であってもよいし、4種類以上であってもよい。
【0071】
また本実施形態では、インクジェット装置10は、所定の積層データImに基づいて樹脂層17を形成する。制御部12は、積層データImを補正することにより、接続領域204における樹脂層17を形成するインク滴32の体積と、接続領域204以外の領域における樹脂層17を形成するインク滴32の体積と、を異ならせる。これにより、インクジェット装置10は、接続領域204に含まれる段差を低くすることができ、立体物200の段差を軽減できる。
【0072】
また本実施形態では、処理部122(積層データの処理装置)は、樹脂層17を高さ方向Zに沿って積層することにより、立体物200を造形するインクジェット装置10において使用される積層データImを処理する。
【0073】
処理部122は、立体物200における高さが高い領域203と高さが低い領域202とを接続する接続領域204において、体積が異なる複数のインク滴32により、2以上の樹脂層17を形成させる積層データImを出力する出力部127を有する。この構成により、処理部122は、接続領域204における段差を低くすることができ、立体物200の段差を軽減可能な積層データImをインクジェット装置10に出力できる。
【0074】
[その他の好適な実施形態]
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0075】
例えば、インクジェット装置10において、接続領域204における樹脂層17を形成するインク滴32は、接続領域204以外の領域における樹脂層17を形成する大滴32aよりも、体積が大きいインク滴を含んでもよい。接続領域204における樹脂層17を、大滴32aよりも体積が大きいインク滴により1層分形成することによって、例えば小滴32bによって樹脂層17を2層分形成することと同等となる。
【0076】
例えばインクジェット装置10は、小滴32bにより形成する2層分の樹脂層17を、大滴32aよりも体積が大きいインク滴により形成する1層分の樹脂層17に置き換えつつ、接続領域204において、第1樹脂層171および第2樹脂層172のそれぞれを体積が異なる複数のインク滴により形成する。これにより、インクジェット装置10は、接続領域204における段差を低くすることができ、立体物200の段差を軽減できる。また、小滴32bにより形成する2層分の樹脂層17を1層分の樹脂層17に置き換えできるため、造形時間を短縮することができる。
【0077】
また実施形態は、画像形成方法も含む。例えば、画像形成方法は、樹脂層を含む樹脂層画像を高さ方向に積層することにより立体物を造形するインクジェット装置によって、前記樹脂層画像を形成する画像形成方法であって、ヘッドにより、液滴を吐出し、移動機構により、前記樹脂層を支持する支持体と前記ヘッドとを相対移動させ、制御部により、前記ヘッドによる吐出と、前記移動機構による相対移動と、を少なくとも制御することにより、前記ヘッドから吐出された前記液滴により前記支持体上に前記樹脂層画像を形成させ、前記制御部は、前記立体物における高さが高い領域と高さが低い領域とを接続する接続領域において、2以上の前記樹脂層画像のそれぞれを、体積が異なる複数の前記液滴により形成させる。このような画像形成方法により、上述したインクジェット装置10と同様の効果が得られる。なお、この画像形成方法は、CPU、LSI等の回路、ICカードまたは単体のモジュール等によって、実現されてもよい。
【0078】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0079】
また、機能ブロック図におけるブロックの分割は一例であり、複数のブロックを一つのブロックとして実現する、一つのブロックを複数に分割する、または一部の機能を他のブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数のブロックの機能を単一のハードウェアまたはソフトウェアが並列または時分割に処理してもよい。
【0080】
また、上記で説明した実施形態の各機能は、一または複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0081】
10 インクジェット装置
12 制御部
121 入力部
122 処理部(積層データの処理装置の一例)
123 造形制御部
124 記憶部
125 接続領域検出部
126 補正部
127 出力部
14 ヘッドユニット
16 移動ステージ(移動機構の一例)
17 樹脂層
171 第1樹脂層
172 第2樹脂層
18 ヘッド
20 照射部
22 第1駆動部
24 第2駆動部
26 駆動部
32 インク滴(液滴の一例)
32a 大滴
32b 小滴
32c 中滴
200 立体物
201 外周面
202 低い領域
203 高い領域
204 接続領域
P 支持体
X 主走査方向
Y 副走査方向
Z 高さ方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】