IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧 ▶ 株式会社A.H.MotorLabの特許一覧

特開2023-6285モータ装置およびモータ装置の駆動方法
<>
  • 特開-モータ装置およびモータ装置の駆動方法 図1
  • 特開-モータ装置およびモータ装置の駆動方法 図2
  • 特開-モータ装置およびモータ装置の駆動方法 図3
  • 特開-モータ装置およびモータ装置の駆動方法 図4
  • 特開-モータ装置およびモータ装置の駆動方法 図5
  • 特開-モータ装置およびモータ装置の駆動方法 図6
  • 特開-モータ装置およびモータ装置の駆動方法 図7
  • 特開-モータ装置およびモータ装置の駆動方法 図8
  • 特開-モータ装置およびモータ装置の駆動方法 図9
  • 特開-モータ装置およびモータ装置の駆動方法 図10
  • 特開-モータ装置およびモータ装置の駆動方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006285
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】モータ装置およびモータ装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/092 20160101AFI20230111BHJP
   H02P 25/22 20060101ALI20230111BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H02P25/092
H02P25/22
H02P27/06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108812
(22)【出願日】2021-06-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】521210667
【氏名又は名称】株式会社A.H.MotorLab
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】新口 昇
(72)【発明者】
【氏名】竹村 望
【テーマコード(参考)】
5H501
5H505
【Fターム(参考)】
5H501BB03
5H501BB04
5H501BB08
5H501CC01
5H501DD09
5H501GG05
5H501HA08
5H501HB08
5H501HB16
5H501JJ24
5H501LL22
5H505BB02
5H505BB03
5H505BB06
5H505CC01
5H505DD03
5H505DD11
5H505EE41
5H505EE49
5H505GG04
5H505HA09
5H505HB01
5H505HB06
5H505JJ24
5H505LL22
(57)【要約】
【課題】一つの回転子に2系統の三相巻線を備えるスイッチトリラクタンスモータの各相を個別に制御しながらも、スイッチ数を低減できるモータ装置およびモータ装置の駆動方法を提供する。
【解決手段】回転子(11)と固定子(12)を有するモータ部(10)と、モータ部(10)に電力を供給するスイッチインバータ部と、スイッチインバータ部に含まれる各スイッチを制御するスイッチ制御部とを備えるモータ装置であって、回転子(11)が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであり、複数のティース部(13)には、第1系統の三相巻線および第2系統の三相巻線が巻回されており、スイッチインバータ部は、上段スイッチ、中段スイッチおよび下段スイッチが直列接続されたスイッチ群が3つ並列接続されており、三相ベクトル制御に基づいて前記第1系統および前記第2系統にそれぞれ制御信号を送出するベクトル制御モードを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転可能に配置された回転子と、内周に複数のティース部が形成された固定子を有するモータ部と、
前記モータ部に電力を供給するスイッチインバータ部と、
前記スイッチインバータ部に含まれる各スイッチを制御するスイッチ制御部とを備えるモータ装置であって、
前記回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであり、
前記複数のティース部には、第1系統の三相巻線および第2系統の三相巻線が巻回されており、
前記スイッチインバータ部は、第1電位と第2電位の間に上段スイッチ、中段スイッチおよび下段スイッチが直列接続されたスイッチ群が3つ並列接続されており、
前記スイッチ制御部は、三相ベクトル制御に基づいて前記スイッチインバータ部の前記第1系統および前記第2系統にそれぞれ制御信号を送出するベクトル制御モードを備えることを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ装置であって、
前記第1系統にはA相、E相およびC相が巻回され、前記第2系統にはD相、B相およびF相が巻回されており、
前記スイッチインバータ部は、U列スイッチ群、V列スイッチ群およびW列スイッチ群が並列に接続され、
前記U列スイッチ群は、前記第1電位から順に第1上段スイッチ、第1中段スイッチおよび第1下段スイッチが直列接続され、
前記V列スイッチ群は、前記第1電位から順に第2上段スイッチ、第2中段スイッチおよび第2下段スイッチが直列接続され、
前記W列スイッチ群は、前記第1電位から順に第3上段スイッチ、第3中段スイッチおよび第3下段スイッチが直列接続され、
前記第1上段スイッチと前記第1中段スイッチの間に前記A相の一端が接続され、前記第1中段スイッチと前記第1下段スイッチの間に前記D相の一端が接続され、
前記第2上段スイッチと前記第2中段スイッチの間に前記E相の一端が接続され、前記第2中段スイッチと前記第2下段スイッチの間に前記B相の一端が接続され、
前記第3上段スイッチと前記第3中段スイッチの間に前記C相の一端が接続され、前記第3中段スイッチと前記第3下段スイッチの間に前記F相の一端が接続されていることを特徴とするモータ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ装置であって、
前記A相、前記B相、前記C相、前記D相、前記E相および前記F相は、他端が中性点に接続されて、スター結線されていることを特徴とするモータ装置。
【請求項4】
請求項2に記載のモータ装置であって、
前記A相、前記B相、前記C相、前記D相、前記E相および前記F相は、環状に直列接続されて、ヘキサゴン結線されていることを特徴とするモータ装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一つに記載のモータ装置であって、
前記スイッチ制御部は、前記ベクトル制御モードにおいて、信号波と搬送波の比較によりパルス信号を生成し、前記各スイッチをPWM(Pulth Width Modulation)変調制御することを特徴とするモータ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のモータ装置であって、
前記信号波は、前記第1系統と前記第2系統とで位相が同じであり、振幅が互いにオフセットされていることを特徴とするモータ装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一つに記載のモータ装置であって、
前記スイッチ制御部は、前記第1系統および前記第2系統をパルス駆動するパルス制御モードを備え、
前記中段スイッチにオフ信号を送出し、前記上段スイッチで前記第1系統をパルス駆動し、前記下段スイッチで前記第2系統をパルス駆動することを特徴とするモータ装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一つに記載のモータ装置であって、
前記回転子の極数Pと、前記ティース部のスロット数Sの比は、P:S=5:6であることを特徴とするモータ装置。
【請求項9】
一つの回転子に対して第1系統および第2系統の三相巻線を備え、インバータスイッチ部からの出力により回転するモータ装置の駆動方法であって、
前記回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであり、
前記第1系統および前記第2系統の各相における電流値を取得する電流値取得工程と、
前記各相の前記電流値に基づいて、前記第1系統に対する第1指令電圧および前記第2系統に対する第2指令電圧を算出する指令電圧算出工程と、
搬送波の電圧と、前記第1指令電圧および前記第2指令電圧を比較して、前記第1系統と前記第2系統についてのゲート信号を決定するゲート信号決定工程と、
前記ゲート信号に基づいて前記インバータスイッチ部のオン信号/オフ信号を決定するインバータスイッチ制御工程とを備えることを特徴とするモータ装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置およびモータ装置の駆動方法に関し、特に、回転子に強磁性体を用いるスイッチトリラクタンスモータのモータ装置およびモータ装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な技術分野において、交流の周波数を変化させることで回転数を制御でき、安定した回転数を得られる三相モータが動力源として用いられている。また、回転子に強磁性体を用いるスイッチトリラクタンスモータも提案されている。(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
図11は、従来の三相巻線を2系統備えたモータ装置の駆動回路を簡略化して示す回路図である。図11に示すようにモータ装置は、第1系統の三相巻線としてA相コイル、E相コイル、C相コイルを有し、第2系統の三相巻線としてD相コイル、B相コイル、F相コイルを有している。また、電源電圧(+V)と接地電圧(0V)の間に、各相に対応する上段スイッチと下段スイッチが直列接続されてスイッチインバータを構成し、6つのスイッチインバータが並列に接続されている。また、各スイッチインバータの上段スイッチと下段スイッチの間には、各相の巻線(コイル)の一端が接続され、各相の巻線の他端は中性点に接続されている。
【0004】
図11に示したモータ装置では、各相の巻線を流れる電流値をモニターしながら、第1系統と第2系統のそれぞれにおいて3相ベクトル制御を行うことで、各相のコイルに適切に電流が流れて、スイッチトリラクタンスモータを回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-103957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11に示した従来のモータ装置では、各インバータで2系統の三相巻線の各々を個別に制御できるため、複雑な回転制御を行うことができるが、6相のインバータを用いるため12個のスイッチが必要であり、回路に含まれるスイッチ数が増加してしまう。駆動回路に搭載されるスイッチ数が増加すると、回路の搭載面積の増大や、発熱量の増加、コストの増加などの問題が生じるうえに、回路全体でのスイッチ故障の発生確率が増加するという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、一つの回転子に2系統の三相巻線を備えるスイッチトリラクタンスモータの各相を個別に制御しながらも、スイッチ数を低減できるモータ装置およびモータ装置の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のモータ装置は、回転軸を中心に回転可能に配置された回転子と、内周に複数のティース部が形成された固定子を有するモータ部と、前記モータ部に電力を供給するスイッチインバータ部と、前記スイッチインバータ部に含まれる各スイッチを制御するスイッチ制御部とを備えるモータ装置であって、前記回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであり、前記複数のティース部には、第1系統の三相巻線および第2系統の三相巻線が巻回されており、前記スイッチインバータ部は、第1電位と第2電位の間に上段スイッチ、中段スイッチおよび下段スイッチが直列接続されたスイッチ群が3つ並列接続されており、前記スイッチ制御部は、三相ベクトル制御に基づいて前記スイッチインバータ部の前記第1系統および前記第2系統にそれぞれ制御信号を送出するベクトル制御モードを備えることを特徴とする。
【0009】
このような本発明のモータ装置では、上段スイッチ、中段スイッチおよび下段スイッチが直列接続されたスイッチ群が3つ並列接続されたスイッチインバータ部を備えて、ベクトル制御モードでは第1系統および第2系統にそれぞれ三相ベクトル制御に基づいて制御信号を送出する。これにより、一つの回転子に2系統の三相巻線を備えるスイッチトリラクタンスモータの各相を個別に制御しながらも、スイッチ数を低減することが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記第1系統にはA相、E相およびC相が巻回され、前記第2系統にはD相、B相およびF相が巻回されており、前記スイッチインバータ部は、U列スイッチ群、V列スイッチ群およびW列スイッチ群が並列に接続され、前記U列スイッチ群は、前記第1電位から順に第1上段スイッチ、第1中段スイッチおよび第1下段スイッチが直列接続され、前記V列スイッチ群は、前記第1電位から順に第2上段スイッチ、第2中段スイッチおよび第2下段スイッチが直列接続され、前記W列スイッチ群は、前記第1電位から順に第3上段スイッチ、第3中段スイッチおよび第3下段スイッチが直列接続され、前記第1上段スイッチと前記第1中段スイッチの間に前記A相の一端が接続され、前記第1中段スイッチと前記第1下段スイッチの間に前記D相の一端が接続され、前記第2上段スイッチと前記第2中段スイッチの間に前記E相の一端が接続され、前記第2中段スイッチと前記第2下段スイッチの間に前記B相の一端が接続され、前記第3上段スイッチと前記第3中段スイッチの間に前記C相の一端が接続され、前記第3中段スイッチと前記第3下段スイッチの間に前記F相の一端が接続されている。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記A相、前記B相、前記C相、前記D相、前記E相および前記F相は、他端が中性点に接続されて、スター結線されている。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記A相、前記B相、前記C相、前記D相、前記E相および前記F相は、環状に直列接続されて、ヘキサゴン結線されている。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記スイッチ制御部は、前記ベクトル制御モードにおいて、信号波と搬送波の比較によりパルス信号を生成し、前記各スイッチをPWM(Pulth Width Modulation)変調制御する。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記信号波は、前記第1系統と前記第2系統とで位相が同じであり、振幅が互いにオフセットされている。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記スイッチ制御部は、前記第1系統および前記第2系統をパルス駆動するパルス制御モードを備え、前記中段スイッチにオフ信号を送出し、前記上段スイッチで前記第1系統をパルス駆動し、前記下段スイッチで前記第2系統をパルス駆動する。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記回転子の極数Pと、前記ティース部のスロット数Sの比は、P:S=5:6である。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明のモータ装置の駆動方法は、一つの回転子に対して第1系統および第2系統の三相巻線を備え、インバータスイッチ部からの出力により回転するモータ装置の駆動方法であって、前記回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであり、前記第1系統および前記第2系統の各相における電流値を取得する電流値取得工程と、前記各相の前記電流値に基づいて、前記第1系統に対する第1指令電圧および前記第2系統に対する第2指令電圧を算出する指令電圧算出工程と、搬送波の電圧と、前記第1指令電圧および前記第2指令電圧を比較して、前記第1系統と前記第2系統についてのゲート信号を決定するゲート信号決定工程と、前記ゲート信号に基づいて前記インバータスイッチ部のオン信号/オフ信号を決定するインバータスイッチ制御工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、一つの回転子に2系統の三相巻線を備えるスイッチトリラクタンスモータの各相を個別に制御しながらも、スイッチ数を低減できるモータ装置およびモータ装置の駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係るモータ装置の概要を示す図であり、図1(a)はスイッチインバータ部の構成を示す回路図であり、図1(b)はモータ部の構造例を示す模式図である。
図2】第1系統のU1相(A相)と第2系統のU2相(D相)に流れる電流の目標波形を示すグラフである。
図3】第1実施形態におけるモータ装置の駆動を制御する方法について説明する模式図である。
図4】第1実施形態におけるU1相とU2相の信号波と搬送波について説明するグラフであり、図4(a)はU1相を示し、図4(b)はU2相を示し、図4(c)はU1相とU2相を重ね合わせた結果を示している。
図5】第1実施形態における信号波と搬送波の比較結果を示すグラフであり、図5(a)はU1相とU2相の信号波および搬送波の波形を示し、図5(b)はU1相とU2相の比較結果を示し、図5(c)は各スイッチに入力される制御信号を示している。
図6】U1相の相電流波形をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図7】モータ装置のトルク波形をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図8】第2実施形態に係るモータ装置のスイッチインバータ部の構成を示す回路図である。
図9】第2実施形態でスイッチインバータ部の各スイッチに印加されるパルス信号を示すタイミングチャートである。
図10】第3実施形態に係るモータ装置の概要を示す回路図である。
図11】従来の三相巻線を2系統備えたモータ装置の駆動回路を簡略化して示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。図1は、本実施形態に係るモータ装置の概要を示す図であり、図1(a)はスイッチインバータ部の構成を示す回路図であり、図1(b)はモータ部の構造例を示す模式図である。
【0021】
図1(a)に示すように、本実施形態のスイッチインバータ部は、電源電圧(+V)と接地電圧(0V)の間に3つのスイッチ群(U列スイッチ群、V列スイッチ群、W列スイッチ群)が並列に接続されている。各スイッチ群には、3つのスイッチが含まれて直列接続されており、合計9個のスイッチでスイッチインバータ部が構成されている。各スイッチは、それぞれドレインが電源電圧側(上流側)に接続され、ソースが接地電圧側(下流側)に接続されている。また、各スイッチとしてMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を用いる場合には、ソースとドレインの間に寄生ダイオードが並列に逆接続された等価回路となる。
【0022】
また、モータ部は、A相巻線、E相巻線、C相巻線の3つの巻線(コイル)で構成される第1系統の三相巻線と、D相巻線、B相巻線、F相巻線の3つの巻線で構成される第2系統の三相巻線を備えている。ここで、三相巻線をベクトル制御するベクトル制御モードにおいて、第1系統のU1相、V1相、W1相は、それぞれA相巻線、E相巻線、C相巻線に流れる電流を想定している。また、U2相、V2相、W2相は、それぞれD相巻線、B相巻線、F相巻線に流れる電流を想定している。
【0023】
U列スイッチ群には、電源電圧側から順に上段スイッチUuと、中段スイッチUmと、下段スイッチUlとが直列接続されている。また、上段スイッチUuと中段スイッチUmの間がA相巻線の一端に接続されている。また、中段スイッチUmと下段スイッチUlの間がD相巻線の一端に接続されている。ここで、上段スイッチUu、中段スイッチUm、下段スイッチUlは、それぞれ本発明における第1上段スイッチ、第1中段スイッチ、第1下段スイッチに相当している。
【0024】
V列スイッチ群には、電源電圧側から順に上段スイッチVuと、中段スイッチVmと、下段スイッチVlとが直列接続されている。また、上段スイッチVuと中段スイッチVmの間がE相巻線の一端に接続されている。また、中段スイッチVmと下段スイッチVlの間がB相巻線の一端に接続されている。ここで、上段スイッチVu、中段スイッチVm、下段スイッチVlは、それぞれ本発明における第2上段スイッチ、第2中段スイッチ、第2下段スイッチに相当している。
【0025】
W列スイッチ群には,電源電圧側から順に上段スイッチWuと、中段スイッチWmと、下段スイッチWlとが直列接続されている。また、上段スイッチWuと中段スイッチWmの間がC相巻線の一端に接続されている。また、中段スイッチWmと下段スイッチWlの間がF相巻線の一端に接続されている。ここで、上段スイッチWu、中段スイッチWm、下段スイッチWlは、それぞれ本発明における第2上段スイッチ、第2中段スイッチ、第2下段スイッチに相当している。
【0026】
また、図1(a)に示したように、A相巻線、E相巻線、C相巻線、D相巻線、B相巻線、F相巻線の他端は共通の中性点に接続されて、スター結線されている。また、各スイッチはスイッチ制御部(図示省略)によって動作が制御される。
【0027】
図1(b)に示すように、モータ部10は回転子(ロータ)11と、回転子11の周囲に配置された固定子(ステータ)12を備えている。また、回転子11には、外周に沿って強磁性体からなるロータティースが配置されている。また固定子12は、コアバック部とその内周に突出して形成された複数のティース部13を備えている。また、各ティース部13には巻線(コイル)14が巻回されて、上述したA相巻線、E相巻線、C相巻線の第1系統の三相巻線と、D相巻線、B相巻線、F相巻線の第2系統の三相巻線が構成されている。
【0028】
コアバック部は、回転子11の外側に回転子11の外周を円周状に取り囲むように配置された部分であり、内周に複数のティース部13が等間隔に突出して形成されている。コアバック部には公知のものを用いることができ、構成する材料や構造は限定されない。また、コアバック部よりも外周には別途モータハウジング等の部材が設けられている。
【0029】
ティース部13は、コアバック部の内周面から回転子11に向かって突出して形成された突起状部分であり、各ティース部13は同じ長さと形状で形成されるとともに等間隔に配置されており、各ティース部13の間には間隔が設けられてスロットを構成している。各ティース部13およびスロットには、巻線14が巻回されており、巻線14に電流が流れることでティース部13に磁界が発生する。
【0030】
ここで、A相巻線、E相巻線およびC相巻線は、それぞれ1/3周期の差で配置されており第1系統の三相巻線を構成している。同様に、D相巻線、B相巻線およびF相巻線も、それぞれ1/3周期の差で配置されており第2系統の三相巻線を構成している。図1(b)では、回転子11が10個のロータティースを備え、固定子12が12個のティース部13を備えた10極12スロットのスイッチトリラクタンスモータの例を示している。モータ部の極数Pとスロット数Sは、10極12スロットには限定されないが、P:S=5:6の比率となっている。また、ティース部13への各相の巻回方法も集中巻きに限定されず分布巻きであってもよい。
【0031】
図2は、第1系統のU1相(A相)と第2系統のU2相(D相)に流れる電流の目標波形を示すグラフである。図2に示したように、U1相に流れる電流とU2相に流れる電流は、位相が同じ正弦波であり、U1相は正方向に+Idcだけオフセットされ、U2相は負方向に-Idcだけオフセットされている。したがって、U1相とU2相の電流値の合計は常に0となる。ここではU1相とU2相のみを示したが、V1相とV2相、W1相とW2相も同様である。また、上述したように第1系統と第2系統の三相巻線はそれぞれ三相交流で駆動され、各相の位相は1/3周期異なっており、共通の中性点に接続されている。したがって、U1相とV1相とW1相の電流値の合計と、U2相とV2相とW2相の電流値の合計は、それぞれ0となっている。
【0032】
図3は、本実施形態におけるモータ装置の駆動を制御する方法について説明する模式図である。図中に示したように、モータ装置の駆動時には、モータ部10のA相巻線、B相巻線、C相巻線、D相巻線、E相巻線およびF相巻線を流れる駆動電流i,i,i,i,iおよびiをそれぞれモニターする(電流値取得工程)。得られた6相の駆動電流から仮想の三相電流として、第1系統と第2系統の平均の相電流i,i,iを求める。
【0033】
次に、AC電流制御ブロックでは、得られた仮想三相電流i,i,iを三相dq変換して、回転座標系に変換しd軸電流iとq軸電流iを求める。次に、得られた電流i,iを入力値としてPI制御を行い、電流制御または回転速度制御のために電圧値v,vを得る。得られた電圧値v,vは回転座標系であるため、三相逆dq変換を行って交流指令電圧V,V,Vを得る。得られた指令電圧V,V,Vは、それぞれ周期的に変化するU1相とU2相、V1相とV2相、およびW1相とW2相の信号波における交流成分となる。
【0034】
また、DC電流制御ブロックでは、第1系統と第2系統で電流値IdcをそれぞれオフセットしているDC電流平均値として、6相の駆動電流から(i-i)/2、(i-i)/2、(i-i)/2として算出する。次に、得られたDC電流平均値Idcを入力値としてPI制御を行い、第1系統と第2系統のオフセット電流に対応した信号波における直流成分となる直流指令電圧+Vdcと-Vdcを得る。
【0035】
次に、直流指令電圧+Vdcに交流指令電圧V,V,Vを加算して、(V+Vdc)、(V+Vdc)、(V+Vdc)をそれぞれ第1系統のU1相、V1相、W1相の指令電圧として得る。また、直流指令電圧-Vdcに交流指令電圧V,V,Vを加算して、(V-Vdc)、(V-Vdc)、(V-Vdc)をそれぞれ第2系統のU2相、V2相、W2相の指令電圧として得る。得られた指令電圧の経時変化が信号波を構成する(指令電圧算出工程)。
【0036】
次に、得られた各相の信号波と搬送波との大小関係を比較し、信号波が搬送波よりも大きい場合をHigh信号とし、信号波が搬送波よりも小さい場合をLow信号として、第1系統と第2系統へのゲート信号を決定する(ゲート信号決定工程)。
【0037】
次に、決定されたゲート信号(High信号とLow信号)に基づいて、9スイッチインバータで構成されているスイッチインバータ部への入力信号を制御する(インバータスイッチ制御工程)。具体的には表1に示すように、第1系統と第2系統のHigh信号とLow信号の組み合わせに応じて、上段スイッチ、中段スイッチおよび下段スイッチのオンオフを制御する。表1および以下の図ではU相の場合のみを示して説明するが、V相とW相についても同様の制御を行う。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示したように、U1相とU2相が共にHigh信号の場合(パターン1)には、上段スイッチUuのゲートにはオン信号を入力し、中段スイッチUmのゲートにはオン信号を入力し、下段スイッチUlのゲートにはオフ信号を入力する。U1相とU2相が共にLow信号の場合(パターン2)には、上段スイッチUuのゲートにはオフ信号を入力し、中段スイッチUmのゲートにはオン信号を入力し、下段スイッチUlのゲートにはオン信号を入力する。
【0040】
パターン1では、上段スイッチUuがオン、中段スイッチUmがオン、下段スイッチUlがオフとされる。したがって、上段スイッチUuと中段スイッチUmの間の電位Uumは、上段スイッチUuの順方向電圧だけ電源電圧(+V)から電圧降下したものとなり、U1相のA相巻線に電位Uumが印加される。また、中段スイッチUmと下段スイッチUlの間の電位Umlは、上段スイッチUuおよび中段スイッチUmの順方向電圧だけ電源電圧(+V)から電圧降下したものとなり、U2相のD相巻線に電位Umlが印加される。
【0041】
パターン2では、上段スイッチUuがオフ、中段スイッチUmがオン、下段スイッチUlがオンとされる。したがって電位Uumは、中段スイッチUmおよび下段スイッチUlの順方向電圧だけ接地電圧(0)から高い電圧となり、U1相のA相巻線に印加される。また電位Umlは、下段スイッチUlの順方向電圧だけ接地電圧(0)から高い電圧となり、U2相のD相巻線に印加される。
【0042】
U1相がHigh信号で、U2相がLow信号の場合(パターン3)、およびU1相がLow信号で、U2相がHigh信号の場合(パターン4)には、ともに上段スイッチUuのゲートにはオン信号を入力し、中段スイッチUmのゲートにはオフ信号を入力し、下段スイッチUlのゲートにはオン信号を入力する。
【0043】
パターン3,4では、上段スイッチUuがオン、中段スイッチUmがオフ、下段スイッチUlがオンとされる。したがって電位Uumは、上段スイッチUuの順方向電圧だけ電源電圧(+V)から電圧降下したものとなり、U1相のA相巻線に電位Uumが印加される。また電位Umlは、下段スイッチUlの順方向電圧だけ接地電圧(0)から高い電圧となり、U2相のD相巻線に印加される。パターン3,4ではスイッチに印加される信号が同じになるが、各系統の電位差によって電流が発生するので、U1相がLow信号の場合にU列上段スイッチUuがオンであっても問題ない。
【0044】
図4は、本実施形態におけるU1相とU2相の信号波と搬送波について説明するグラフであり、図4(a)はU1相を示し、図4(b)はU2相を示し、図4(c)はU1相とU2相を重ね合わせた結果を示している。図4(a)~図4(c)において横軸は位相角度を示し、縦軸は電圧を示している。ここで電圧の最大値および最小値として±1Vが示されているが、簡便のために規格化した表現を用いるものであり、現実の電圧値は限定されない。また、グラフ中の破線は搬送波の信号波形を示しており、ここでは三角波を用いている。図4(a)中の実線はU1相の信号波の波形を示しており指令電圧(V+Vdc)の変化を示している。また、図4(b)中の一点鎖線はU2相の信号波の波形を示しており指令電圧(V-Vdc)の変化を示している。図4では簡便のために搬送波の周波数を小さくして周期を長くして示しているが、実際のモータ装置においては5kHz~15kHz程度の高周波な搬送波が用いられる。
【0045】
本実施形態では、図3に示したように第1系統と第2系統の相電流を平均化して指令電圧を同じにしているため、図4(a)~図4(c)に示したU1相およびU2相の信号波は振幅および位相が同じであり、互いに正負方向にオフセットしている。上述したように、図4(c)に示した搬送波とU1相、U2相の大小関係に基づいて、表1に示したインバータスイッチ部の制御を行う。
【0046】
図5は、本実施形態における信号波と搬送波の比較結果を示すグラフであり、図5(a)はU1相とU2相の信号波および搬送波の波形を示し、図5(b)はU1相とU2相の比較結果を示し、図5(c)は各スイッチに入力される制御信号を示している。図5(a)において横軸は位相角度を示し、縦軸は電圧を示している。図5(b)では、横軸は図5(a)と同じ位相角度を示しており、横軸の軸上がLow信号を示し、横軸から離れた位置がHigh信号を示している。図5(c)では、横軸は図5(a)と同じ位相角度を示しており、横軸の軸上がオフ信号を示し、横軸から離れた位置がオン信号を示している。また、図5(a)~図5(c)にわたって垂直に引かれた薄い破線は、図5(a)における搬送波と信号波の交点を示している。
【0047】
図5(a)(b)に示したように、本実施形態では第1系統と第2系統で指令電圧が互いにオフセットされており、U1相の信号波とU2相の信号波は、電圧差を有している。これにより、搬送波と信号波の交点はU1相とU2相で異なっており、U2相のHigh信号は常にU1相のHigh信号期間中であり、U1相よりも短くなっている。また、U1相とU2相のHigh信号およびLow信号の切り替わりタイミングが異なっているため、表1に示したパターン1からパターン3に基づいて上段スイッチUu、中段スイッチUmおよび下段スイッチUlのオン信号とオフ信号が選択される。つまり、スイッチ制御部は、信号波と搬送波の比較によりパルス信号を生成し、各スイッチをPWM(Pulth Width Modulation)変調制御する。
【0048】
次に、有限要素法を用いたシミュレーションで、電気回路との連成解析を実施した。図6は、U1相の相電流波形をシミュレーションした結果を示すグラフである。図6の横軸は時間(秒)を示し、縦軸はU1相に流れる電流値(A)を示している。グラフ中の相電流波形では、本実施形態の9スイッチインバータを用いた場合の結果を実線で示し、従来技術である6相インバータ(12個のスイッチ)を用いた場合の結果を破線で示している。図6から、図1に示した9スイッチインバータを用いても、図2に示した目標波形を供給し、従来技術と同様にスイッチトリラクタンスモータを回転駆動できることがわかる。
【0049】
図7は、モータ装置のトルク波形をシミュレーションした結果を示すグラフである。図7の横軸は時間(秒)を示し、縦軸はトルク(Nm)を示している。グラフ中の実線は、本実施形態の9スイッチインバータを用いた場合の結果を示し、破線は従来技術である6相インバータ(12個のスイッチ)を用いた場合の結果を示している。図7から、図1に示した9スイッチインバータを用いても、従来技術と同様にスイッチトリラクタンスモータを回転させて継続的にトルクを出力できることがわかる。
【0050】
上述したように本実施形態のモータ装置では、上段スイッチ、中段スイッチおよび下段スイッチが直列接続されたスイッチ群が3つ並列接続されたスイッチインバータ部を備えて、ベクトル制御モードでは第1系統および第2系統にそれぞれ三相ベクトル制御に基づいて制御信号を送出する。これにより、一つの回転子に2系統の三相巻線を備えるスイッチトリラクタンスモータの各相を個別に制御しながらも、スイッチ数を低減することが可能となる。
【0051】
また、第1系統および第2系統の各相における電流値を取得し、各相の電流値に基づいて各系統に対する指令電圧を算出し、搬送波の電圧と指令電圧を比較してゲート信号を決定し、ゲート信号に基づいてインバータスイッチ部のオン信号/オフ信号を決定する。これにより、9スイッチインバータで2系統の三相巻線に印加するパルスを求めて回転子11を回転させることができ、駆動状態に応じて低速から高速まで効率よく制御することができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図8および図9を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施形態ではさらに第1系統と第2系統をパルス駆動するパルス制御モードを備えている点が第1実施形態とは異なっている。図8は、本実施形態に係るモータ装置のスイッチインバータ部の構成を示す回路図である。図9は、本実施形態でスイッチインバータ部の各スイッチに印加されるパルス信号を示すタイミングチャートである。
【0053】
本実施形態では、スイッチ制御部はパルス制御モードにおいて、U列スイッチ群の中段スイッチUm、V列スイッチ群の中段スイッチVmおよびW列スイッチ群の中段スイッチWmに対して、オフ信号を供給する。これにより、各スイッチ群において上段スイッチと下段スイッチは、開放状態である中断スイッチによって電気的に分離される。したがって、第1系統の三相巻線に対しては、上段スイッチUu、上段スイッチVuおよび上段スイッチWuでU1相、V1相およびW1相の電流供給が行われる。また、第2系統の三相巻線に対しては、下段スイッチUl、下段スイッチVlおよび下段スイッチWlでU2相、V2相およびW2相の電流供給が行われる。
【0054】
図9に示したようにパルス制御モードでは、上段スイッチUu、下段スイッチVl、上段スイッチWu、下段スイッチUl、上段スイッチVuおよび下段スイッチWlに対して、スイッチ制御部は位相が1/6周期ずつ異なる信号を出力する。このとき、上段と下段のスイッチにはそれぞれ反転した信号が入力される。これにより、各相のコイルに適切に電流が流れて、スイッチトリラクタンスモータを回転させることができる。
【0055】
上述したように本実施形態では、スイッチ制御部がパルス制御モードを備えて、中段スイッチにオフ信号を送出して、各スイッチ群の上段スイッチで第1系統をパルス駆動し、各スイッチ群の下段スイッチで第2系統をパルス駆動する。これにより、ベクトル制御モードとパルス制御モードを切り替えて、回転速度やトルクに応じて適切な回転駆動を選択することができる。
【0056】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図10を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施形態では、第1系統と第2系統の三相巻線をヘキサゴン結線する点が第1実施形態とは異なっている。図10は、本実施形態に係るモータ装置の概要を示す回路図である。
【0057】
図10に示すように、本実施形態のスイッチインバータ部も、電源電圧(+V)と接地電圧(0V)の間に3つのスイッチ群(U列スイッチ群、V列スイッチ群、W列スイッチ群)が並列に接続されている。各スイッチ群には、3つのスイッチが含まれて直列接続されており、合計9個のスイッチでスイッチインバータ部が構成されている。各スイッチは、それぞれドレインが電源電圧側(上流側)に接続され、ソースが接地電圧側(下流側)に接続されている。
【0058】
また図10に示したように、モータ部はA相巻線、E相巻線、C相巻線の3つの巻線(コイル)で構成される第1系統の三相巻線と、D相巻線、B相巻線、F相巻線の3つの巻線で構成される第2系統の三相巻線を備えている。A相巻線、E相巻線、C相巻線、D相巻線、B相巻線、F相巻線の一端は、第1実施形態と同様にスイッチインバータ部の各スイッチ間に接続されている。また、A相巻線、B相巻線、C相巻線、D相巻線、E相巻線およびF相巻線は、環状に直列接続されて、ヘキサゴン結線されている。
【0059】
第1実施形態と同様に本実施形態のモータ装置でも、上段スイッチ、中段スイッチおよび下段スイッチが直列接続されたスイッチ群が3つ並列接続されたスイッチインバータ部を備えて、ベクトル制御モードでは第1系統および第2系統にそれぞれ三相ベクトル制御に基づいて制御信号を送出する。これにより、一つの回転子に2系統の三相巻線を備えるスイッチトリラクタンスモータの各相を個別に制御しながらも、スイッチ数を低減することが可能となる。
【0060】
また、第1系統および第2系統の各相における電流値を取得し、各相の電流値に基づいて各系統に対する指令電圧を算出し、搬送波の電圧と指令電圧を比較してゲート信号を決定し、ゲート信号に基づいてインバータスイッチ部のオン信号/オフ信号を決定する。これにより、9スイッチインバータで2系統の三相巻線に印加するパルスを求めて回転子11を回転させることができ、駆動状態に応じて低速から高速まで効率よく制御することができる。
【0061】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
10…モータ部
11…回転子
12…固定子
13…ティース部
14…巻線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-10-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転可能に配置された回転子と、内周に複数のティース部が形成された固定子を有するモータ部と、
前記モータ部に電力を供給するスイッチインバータ部と、
前記スイッチインバータ部に含まれる各スイッチを制御するスイッチ制御部とを備えるモータ装置であって、
前記回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであり、
前記複数のティース部には、第1系統の三相巻線および第2系統の三相巻線が巻回されており、
前記スイッチインバータ部は、第1電位と第2電位の間に上段スイッチ、中段スイッチおよび下段スイッチが直列接続されたスイッチ群が3つ並列接続されており、
前記スイッチ制御部は、三相ベクトル制御に基づいて前記スイッチインバータ部の前記第1系統および前記第2系統にそれぞれ制御信号を送出するベクトル制御モードを備え
前記ベクトル制御モードは、信号波と搬送波の比較によりパルス信号を生成し、前記各スイッチをPWM(Pulth Width Modulation)変調制御し、
前記信号波は、前記第1系統と前記第2系統とで位相が同じであり、振幅が互いにオフセットされ、前記オフセットの量は互いの前記振幅の範囲内であることを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ装置であって、
前記第1系統にはA相、E相およびC相が巻回され、前記第2系統にはD相、B相およびF相が巻回されており、
前記スイッチインバータ部は、U列スイッチ群、V列スイッチ群およびW列スイッチ群が並列に接続され、
前記U列スイッチ群は、前記第1電位から順に第1上段スイッチ、第1中段スイッチおよび第1下段スイッチが直列接続され、
前記V列スイッチ群は、前記第1電位から順に第2上段スイッチ、第2中段スイッチおよび第2下段スイッチが直列接続され、
前記W列スイッチ群は、前記第1電位から順に第3上段スイッチ、第3中段スイッチおよび第3下段スイッチが直列接続され、
前記第1上段スイッチと前記第1中段スイッチの間に前記A相の一端が接続され、前記第1中段スイッチと前記第1下段スイッチの間に前記D相の一端が接続され、
前記第2上段スイッチと前記第2中段スイッチの間に前記E相の一端が接続され、前記第2中段スイッチと前記第2下段スイッチの間に前記B相の一端が接続され、
前記第3上段スイッチと前記第3中段スイッチの間に前記C相の一端が接続され、前記第3中段スイッチと前記第3下段スイッチの間に前記F相の一端が接続されていることを特徴とするモータ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ装置であって、
前記A相、前記B相、前記C相、前記D相、前記E相および前記F相は、他端が中性点に接続されて、スター結線されていることを特徴とするモータ装置。
【請求項4】
請求項2に記載のモータ装置であって、
前記A相、前記B相、前記C相、前記D相、前記E相および前記F相は、環状に直列接続されて、ヘキサゴン結線されていることを特徴とするモータ装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一つに記載のモータ装置であって、
前記スイッチ制御部は、前記第1系統および前記第2系統をパルス駆動するパルス制御モードを備え、
前記中段スイッチにオフ信号を送出し、前記上段スイッチで前記第1系統をパルス駆動し、前記下段スイッチで前記第2系統をパルス駆動することを特徴とするモータ装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一つに記載のモータ装置であって、
前記回転子の極数Pと、前記ティース部のスロット数Sの比は、P:S=5:6であることを特徴とするモータ装置。
【請求項7】
一つの回転子に対して第1系統および第2系統の三相巻線を備え、インバータスイッチ部からの出力により回転するモータ装置の駆動方法であって、
前記回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであり、
前記第1系統および前記第2系統の各相における電流値を取得する電流値取得工程と、
前記各相の前記電流値に基づいて、前記第1系統に対する第1指令電圧および前記第2系統に対する第2指令電圧を算出する指令電圧算出工程と、
搬送波の電圧と、前記第1指令電圧および前記第2指令電圧を比較して、前記第1系統と前記第2系統についてのゲート信号を決定するゲート信号決定工程と、
前記ゲート信号に基づいて前記インバータスイッチ部のオン信号/オフ信号を決定するインバータスイッチ制御工程とを備え
前記第1指令電圧および前記第2指令電圧は、位相が同じで振幅が互いにオフセットされ、前記オフセットの量は互いの前記振幅の範囲内であることを特徴とするモータ装置の駆動方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のモータ装置は、回転軸を中心に回転可能に配置された回転子と、内周に複数のティース部が形成された固定子を有するモータ部と、前記モータ部に電力を供給するスイッチインバータ部と、前記スイッチインバータ部に含まれる各スイッチを制御するスイッチ制御部とを備えるモータ装置であって、前記回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであり、前記複数のティース部には、第1系統の三相巻線および第2系統の三相巻線が巻回されており、前記スイッチインバータ部は、第1電位と第2電位の間に上段スイッチ、中段スイッチおよび下段スイッチが直列接続されたスイッチ群が3つ並列接続されており、前記スイッチ制御部は、三相ベクトル制御に基づいて前記スイッチインバータ部の前記第1系統および前記第2系統にそれぞれ制御信号を送出するベクトル制御モードを備え、前記ベクトル制御モードは、信号波と搬送波の比較によりパルス信号を生成し、前記各スイッチをPWM(Pulth Width Modulation)変調制御し、前記信号波は、前記第1系統と前記第2系統とで位相が同じであり、振幅が互いにオフセットされ、前記オフセットの量は互いの前記振幅の範囲内であることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明のモータ装置の駆動方法は、一つの回転子に対して第1系統および第2系統の三相巻線を備え、インバータスイッチ部からの出力により回転するモータ装置の駆動方法であって、前記回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであり、前記第1系統および前記第2系統の各相における電流値を取得する電流値取得工程と、前記各相の前記電流値に基づいて、前記第1系統に対する第1指令電圧および前記第2系統に対する第2指令電圧を算出する指令電圧算出工程と、搬送波の電圧と、前記第1指令電圧および前記第2指令電圧を比較して、前記第1系統と前記第2系統についてのゲート信号を決定するゲート信号決定工程と、前記ゲート信号に基づいて前記インバータスイッチ部のオン信号/オフ信号を決定するインバータスイッチ制御工程とを備え、前記ベクトル制御モードは、信号波と搬送波の比較によりパルス信号を生成し、前記各スイッチをPWM(Pulth Width Modulation)変調制御し、前記信号波は、前記第1系統と前記第2系統とで位相が同じであり、振幅が互いにオフセットされ、前記オフセットの量は互いの前記振幅の範囲内であることを特徴とする。