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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023062884
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】打抜き刃
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/44 20060101AFI20230427BHJP
   B26D 5/20 20060101ALI20230427BHJP
   B26D 7/18 20060101ALN20230427BHJP
【FI】
B26F1/44 B
B26D5/20 B
B26D7/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173043
(22)【出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 信次
【テーマコード(参考)】
3C024
3C060
【Fターム(参考)】
3C024CC01
3C060AA04
3C060AB01
3C060BA03
3C060BB04
3C060BD01
3C060BG18
3C060BH01
(57)【要約】
【課題】打抜き屑を低減しながらも、寸法精度に優れたフィルム片を打抜くことができる打抜き刃を提供する。
【解決手段】長尺状の原反フィルムから略方形のフィルム片を打抜くための打抜き刃は、1回の打抜きによって形成される打抜き線を2つ組み合わせることにより、1つのフィルム片の四辺全体が形成されるように構成される。打抜き線は、第1辺、第1辺に対向する第2辺、第1辺と第2辺とを繋ぐ第3辺、及び第4辺を有する第1切断線を2つ以上含む。上記四辺のうちの三辺を第1辺~第3辺が構成し、残りの一辺の一部を第4辺が構成する。第3辺及び第4辺は直線状の辺である。互いに隣り合う2つの第1切断線(1)及び第1切断線(2)は互いに平行であり、かつ、第1切断線(1)の第2辺及び第3辺が第1切断線(2)の第4辺に対向する。第1切断線のうちの第2辺を形成するための刃の厚みは、第1切断線のうちの第2辺以外の辺を形成するための刃の厚みよりも大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の原反フィルムから略方形のフィルム片を打抜くための打抜き刃であって、
前記打抜き刃による1回の打抜きによって形成される打抜き線を2つ組み合わせることにより、1つの前記フィルム片の四辺全体が形成されるように構成され、
前記打抜き線は、第1辺、前記第1辺に対向する第2辺、前記第1辺と前記第2辺とを繋ぐ第3辺、及び前記第1辺に繋がる第4辺を有する第1切断線を2つ以上含み、
前記第1辺、前記第2辺、及び前記第3辺は前記四辺のうちの三辺を構成し、前記第4辺は前記四辺のうちの残りの一辺の一部を構成し、
前記第3辺及び前記第4辺は、直線状の辺であり、
互いに隣り合う2つの前記第1切断線である第1切断線(1)及び第1切断線(2)は、互いに平行であり、かつ、前記第1切断線(1)の前記第2辺及び前記第3辺が前記第1切断線(2)の前記第4辺に対向し、
前記第1切断線のうちの前記第2辺を形成するための刃の厚みは、前記第1切断線のうちの前記第2辺以外の辺を形成するための刃の厚みよりも大きい、打抜き刃。
【請求項2】
前記第1切断線(1)の前記第3辺と、前記第1切断線(2)の前記第4辺とは、間隔をあけて対向している、請求項1に記載の打抜き刃。
【請求項3】
前記第1切断線のうちの前記第2辺以外の辺を形成するための刃の厚みは、互いに同じである、請求項1又は2に記載の打抜き刃。
【請求項4】
前記打抜き線は、さらに、前記第1切断線の前記第3辺の一部を共有し、かつ、1つの前記フィルム片の輪郭全体を構成する第2切断線を2以上含み、
前記第2切断線が輪郭全体を構成する前記フィルム片の一辺となる第5辺は、前記第3辺の一部と、前記第3辺の前記第1辺に繋がる側から前記第2辺側とは反対側に前記第3辺を延長するように延在する第1突出部と、を組み合わせて構成され、
前記第2切断線によって構成される前記フィルム片の輪郭は、前記第1切断線の前記第2辺と前記第4辺とを繋いで形成される前記フィルム片の輪郭に対して平行である、請求項1~3のいずれか1項に記載の打抜き刃。
【請求項5】
前記第1切断線は、前記第1辺と前記第3辺とを繋ぐ第1頂点を有し、
前記第2切断線は、前記第5辺に対向する第6辺と、前記第5辺の前記第1突出部側と前記第6辺とを繋ぐ第7辺と、前記第6辺と前記第7辺とを繋ぐ第2頂点と、を有し、
[i]前記第1切断線(1)及び前記第1切断線(2)の前記第1頂点どうしを結ぶ直線と、[ii]前記第1切断線(1)の前記第1頂点と、前記第2切断線のうちの前記第1切断線(1)の前記第3辺の一部を共有する第2切断線の第2頂点とを結ぶ直線と、のなす角度は、90±5°の範囲内にある、請求項4に記載の打抜き刃。
【請求項6】
前記第2切断線は、前記第5辺に対向する第6辺と、前記第5辺の前記第1突出部側と前記第6辺とを繋ぐ第7辺と、前記第7辺に対向する第8辺とを有し、
前記打抜き線は、さらに、前記第2切断線の前記第6辺の一部を共有し、かつ、1つ以上の前記フィルム片の輪郭全体を構成する第3切断線を2以上含み、
前記第3切断線が輪郭全体を構成する前記フィルム片のうちの1つのフィルム片の一辺となる辺は、前記第6辺の一部と、前記第6辺の前記第7辺に繋がる側から前記第8辺側とは反対側に前記第6辺を延長するように延在する第2突出部と、を組み合わせて構成され、
前記第3切断線によって構成される前記フィルム片の輪郭は、前記第2切断線によって構成される前記フィルム片の輪郭に対して平行である、請求項4又は5に記載の打抜き刃。
【請求項7】
前記第3切断線は、2つ以上の前記フィルム片の輪郭全体を構成する、請求項6に記載の打抜き刃。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の打抜き刃によって、長尺状の原反フィルムから略方形のフィルム片を打抜いて光学フィルムを製造する光学フィルムの製造方法であって、
前記打抜き刃は、前記第1切断線の前記第3辺と前記原反フィルムの幅方向とのなす角度、及び、前記第1切断線の前記第4辺と前記幅方向とのなす角度が、それぞれ独立して20°以上70°以下となるように前記打抜き線を形成し、
前記打抜き刃による前記原反フィルムの第mショット〔mは自然数を表す。〕の打抜きにより打抜き線(m)を形成し、
前記打抜き刃による前記原反フィルムの第nショット〔nはmより大きい自然数を表す。〕の打抜きによりさらに打抜き線(n)を形成し、
前記打抜き線(m)に含まれる前記第1切断線の前記第2辺と前記第4辺とを繋ぐように、前記打抜き線(n)を形成する、光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記第1切断線は、前記第1辺と前記第3辺とを繋ぐ第1頂点を有し、
前記打抜き線は、前記打抜き線に含まれる前記第1切断線の前記第1頂点が、前記幅方向に実質的に平行な直線上に位置するように、形成される、請求項8に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記原反フィルムは、延伸フィルムであり、
前記延伸フィルムの延伸軸は、前記原反フィルムの幅方向又は前記幅方向に直交する方向に平行である、請求項8又は9に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項11】
長尺状の原反フィルムから略方形のフィルム片を打抜いて光学フィルムを製造する光学フィルムの製造装置であって、
請求項1~7のいずれか1項に記載の打抜き刃と、
前記打抜き刃による打抜き毎に前記原反フィルムの異なる位置が打抜かれ、かつ、前記打抜き刃による打抜き毎に形成される前記打抜き線が2つ組み合わされることによって1つの前記フィルム片の四辺が形成されるように、前記原反フィルム及び前記打抜き刃を相対移動させる駆動部と、を備え、
前記打抜き刃は、前記第1切断線の前記第3辺と前記原反フィルムの幅方向とのなす角度、及び、前記第1切断線の前記第4辺と前記幅方向とのなす角度が、それぞれ独立して20°以上70°以下となるように前記打抜き線を形成する、光学フィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原反フィルムからフィルム片を打抜くための打抜き刃、並びにそれを用いた光学フィルムの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置及び有機EL表示装置等の表示装置には、偏光フィルム及び位相差フィルム等の光学フィルムが用いられる。光学フィルムは通常、打抜き刃を用いて、長尺の原反フィルムから表示装置の表示領域の大きさを考慮したサイズに打抜いて得られるフィルム片を用いて製造される。フィルム片を打抜く際には、原反フィルムの打抜き位置を変更しながら、打抜き刃により繰返し原反フィルムを打抜くことにより、複数のフィルム片を得ることができる。このような打抜きを行う際には、コスト及び廃棄物を低減する観点から、原反フィルムからフィルム片を打抜いた後に残る部分(打抜き屑)を少なくして、原反フィルムからできるだけ多くのフィルム片を打抜くことが求められる。
【0003】
特許文献1には、原反フィルムからフィルム片を打抜く場合に、複数回の打抜きを行い、複数回の打抜きのうちの1回の打抜きによりフィルム片の輪郭の一部となる打抜き線を形成し、残りの回の打抜きによりフィルム片の輪郭の残りの部分となる打抜き線を形成することにより、フィルム片の輪郭全体を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-56583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、原反フィルム片からフィルム片を打抜くにあたり、2回の打抜きにより形成される2つの打抜き線を組み合わせてフィルム片の輪郭全体を形成することがある。この場合、寸法精度の高いフィルム片を打抜くためには、打抜き刃の打抜きによりフィルム片の輪郭が適切に形成されるようにし、かつ、先に打抜いた打抜き線と後に打抜く打抜き線との位置合わせを適切に行う必要がある。
【0006】
また、光学フィルムに用いるフィルム片を得る際に、原反フィルムの幅方向に対して各辺が斜めになるように方形のフィルム片を打抜くことがある。この場合、打抜き屑をできるだけ低減できるように、打抜くフィルム片の原反フィルム上での配置を工夫する必要がある。
【0007】
本発明は、打抜き屑を低減しながらも、寸法精度に優れたフィルム片を打抜くことができる打抜き刃、それを用いた光学フィルムの製造方法及び製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の打抜き刃、光学フィルムの製造方法及び製造装置を提供する。
〔1〕 長尺状の原反フィルムから略方形のフィルム片を打抜くための打抜き刃であって、
前記打抜き刃による1回の打抜きによって形成される打抜き線を2つ組み合わせることにより、1つの前記フィルム片の四辺全体が形成されるように構成され、
前記打抜き線は、第1辺、前記第1辺に対向する第2辺、前記第1辺と前記第2辺とを繋ぐ第3辺、及び前記第1辺に繋がる第4辺を有する第1切断線を2つ以上含み、
前記第1辺、前記第2辺、及び前記第3辺は前記四辺のうちの三辺を構成し、前記第4辺は前記四辺のうちの残りの一辺の一部を構成し、
前記第3辺及び前記第4辺は、直線状の辺であり、
互いに隣り合う2つの前記第1切断線である第1切断線(1)及び第1切断線(2)は、互いに平行であり、かつ、前記第1切断線(1)の前記第2辺及び前記第3辺が前記第1切断線(2)の前記第4辺に対向し、
前記第1切断線のうちの前記第2辺を形成するための刃の厚みは、前記第1切断線のうちの前記第2辺以外の辺を形成するための刃の厚みよりも大きい、打抜き刃。
〔2〕 前記第1切断線(1)の前記第3辺と、前記第1切断線(2)の前記第4辺とは、間隔をあけて対向している、〔1〕に記載の打抜き刃。
〔3〕 前記第1切断線のうちの前記第2辺以外の辺を形成するための刃の厚みは、互いに同じである、〔1〕又は〔2〕に記載の打抜き刃。
〔4〕 前記打抜き線は、さらに、前記第1切断線の前記第3辺の一部を共有し、かつ、1つの前記フィルム片の輪郭全体を構成する第2切断線を2以上含み、
前記第2切断線が輪郭全体を構成する前記フィルム片の一辺となる第5辺は、前記第3辺の一部と、前記第3辺の前記第1辺に繋がる側から前記第2辺側とは反対側に前記第3辺を延長するように延在する第1突出部と、を組み合わせて構成され、
前記第2切断線によって構成される前記フィルム片の輪郭は、前記第1切断線の前記第2辺と前記第4辺とを繋いで形成される前記フィルム片の輪郭に対して平行である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の打抜き刃。
〔5〕 前記第1切断線は、前記第1辺と前記第3辺とを繋ぐ第1頂点を有し、
前記第2切断線は、前記第5辺に対向する第6辺と、前記第5辺の前記第1突出部側と前記第6辺とを繋ぐ第7辺と、前記第6辺と前記第7辺とを繋ぐ第2頂点と、を有し、
[i]前記第1切断線(1)及び前記第1切断線(2)の前記第1頂点どうしを結ぶ直線と、[ii]前記第1切断線(1)の前記第1頂点と、前記第2切断線のうちの前記第1切断線(1)の前記第3辺の一部を共有する第2切断線の第2頂点とを結ぶ直線と、のなす角度は、90±5°の範囲内にある、〔4〕に記載の打抜き刃。
〔6〕 前記第2切断線は、前記第5辺に対向する第6辺と、前記第5辺の前記第1突出部側と前記第6辺とを繋ぐ第7辺と、前記第7辺に対向する第8辺とを有し、
前記打抜き線は、さらに、前記第2切断線の前記第6辺の一部を共有し、かつ、1つ以上の前記フィルム片の輪郭全体を構成する第3切断線を2以上含み、
前記第3切断線が輪郭全体を構成する前記フィルム片のうちの1つのフィルム片の一辺となる辺は、前記第6辺の一部と、前記第6辺の前記第7辺に繋がる側から前記第8辺側とは反対側に前記第6辺を延長するように延在する第2突出部と、を組み合わせて構成され、
前記第3切断線によって構成される前記フィルム片の輪郭は、前記第2切断線によって構成される前記フィルム片の輪郭に対して平行である、〔4〕又は〔5〕に記載の打抜き刃。
〔7〕 前記第3切断線は、2つ以上の前記フィルム片の輪郭全体を構成する、〔6〕に記載の打抜き刃。
〔8〕 〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の打抜き刃によって、長尺状の原反フィルムから略方形のフィルム片を打抜いて光学フィルムを製造する光学フィルムの製造方法であって、
前記打抜き刃は、前記第1切断線の前記第3辺と前記原反フィルムの幅方向とのなす角度、及び、前記第1切断線の前記第4辺と前記幅方向とのなす角度が、それぞれ独立して20°以上70°以下となるように前記打抜き線を形成し、
前記打抜き刃による前記原反フィルムの第mショット〔mは自然数を表す。〕の打抜きにより打抜き線(m)を形成し、
前記打抜き刃による前記原反フィルムの第nショット〔nはmより大きい自然数を表す。〕の打抜きによりさらに打抜き線(n)を形成し、
前記打抜き線(m)に含まれる前記第1切断線の前記第2辺と前記第4辺とを繋ぐように、前記打抜き線(n)を形成する、光学フィルムの製造方法。
〔9〕 前記第1切断線は、前記第1辺と前記第3辺とを繋ぐ第1頂点を有し、
前記打抜き線は、前記打抜き線に含まれる前記第1切断線の前記第1頂点が、前記幅方向に実質的に平行な直線上に位置するように、形成される、〔8〕に記載の光学フィルムの製造方法。
〔10〕 前記原反フィルムは、延伸フィルムであり、
前記延伸フィルムの延伸軸は、前記原反フィルムの幅方向又は前記幅方向に直交する方向に平行である、〔8〕又は〔9〕に記載の光学フィルムの製造方法。
〔11〕 長尺状の原反フィルムから略方形のフィルム片を打抜いて光学フィルムを製造する光学フィルムの製造装置であって、
〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の打抜き刃と、
前記打抜き刃による打抜き毎に前記原反フィルムの異なる位置が打抜かれ、かつ、前記打抜き刃による打抜き毎に形成される前記打抜き線が2つ組み合わされることによって1つの前記フィルム片の四辺が形成されるように、前記原反フィルム及び前記打抜き刃を相対移動させる駆動部と、を備え、
前記打抜き刃は、前記第1切断線の前記第3辺と前記原反フィルムの幅方向とのなす角度、及び、前記第1切断線の前記第4辺と前記幅方向とのなす角度が、それぞれ独立して20°以上70°以下となるように前記打抜き線を形成する、光学フィルムの製造装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の打抜き刃によれば、打抜き屑を低減しながらも、寸法精度に優れたフィルム片を打抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の打抜き刃による1回の打抜きによって形成される打抜き線を説明するための図である。
図2図1に示す打抜き線を形成する打抜き刃を用いて2回の打抜きを行ったときに形成される打抜き線を説明するための図である。
図3】本発明の他の一実施形態の打抜き刃による1回の打抜きによって形成される打抜き線を説明するための図である。
図4図2に示す打抜き線を形成する打抜き刃を用いて2回の打抜きを行ったときに形成される打抜き線を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下のすべての図面は、本発明の理解を助けるために示すものであり、図面に示される各構成要素のサイズや形状は、実際の構成要素のサイズや形状とは必ずしも一致しない。
【0012】
〔実施形態1〕
図1は、本実施形態の打抜き刃による1回の打抜きによって形成される打抜き線を説明するための図である。図2は、図1に示す打抜き線を形成する打抜き刃を用いて2回の打抜きを行ったときに形成される打抜き線を説明するための図である。図中、Wは原反フィルムの幅方向を表し、Lは幅方向Wに直交する方向であって原反フィルムの長さ方向を表す。
【0013】
(打抜き刃)
本実施形態の打抜き刃は、長尺状の原反フィルム80から略方形のフィルム片85(図2)を打抜くためのものである。本明細書において、略方形とは、方形、方形が有する4つの角のうちの1以上が面取りされた角丸方形、方形又は角丸方形の辺の両端以外の部分に当該辺の一部を切欠くように形成された切欠き部を有する方形をいい、方形とは、長方形又は正方形をいう。図1及び図2では、長方形のフィルム片85を打抜く場合を示している。角丸方形のフィルム片の角丸部分を介して連続する2つの辺の境界は、角丸部分の輪郭長さを二等分する位置とする。この境界の位置は、後述する辺と辺とを繋ぐ部分である頂点となり得る。本明細書において、切欠き部を有する方形のフィルム片の切欠き部によって分断された2以上の辺は、方形の1つの辺を構成する一辺とみなす。フィルム片85の辺は、フィルム片85の平面視における辺である。
【0014】
打抜き刃は、1回の打抜きによって形成される打抜き線1を2つ組み合わせることにより(図2)、1つのフィルム片85の四辺全体が形成されるように構成されている。そのため、原反フィルム80の打抜き位置を変更して打抜き刃による打抜きを2回行えば、2回の打抜きにより形成された2つの打抜き線1(図2)により、フィルム片85を打抜くことができる。打抜き刃によって打抜かれるフィルム片85は通常、同じ大きさであり、同じ形状であることが好ましい。
【0015】
打抜き刃による1回の打抜きによって形成される打抜き線1は、2つ以上の第1切断線10(10a~10d)を含む。図1には、打抜き線1が4つの第1切断線10を有する場合を示しているが、これに限定されない。打抜き線1が有する第1切断線10の数は、3つ以上であってもよく、6つ以上であってもよく、8つ以上であってもよく、また、例えば20個以下とすることができ、15個以下であってもよく、12個以下であってもよく、10個以下であってもよい。
【0016】
打抜き線1が有する第1切断線10の数は、長尺状の原反フィルム80の幅方向Wの長さを基準に決定されてもよい。打抜き線1の幅方向の長さが、原反フィルム80の幅方向Wの長さに対して占める割合は、70%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよく、通常100%以下である。打抜き線1の幅方向の長さは、原反フィルム80の幅方向Wにおいて、打抜き線10のうちの、一方の端部に位置する第1切断線10(例えば、図1に示す第1切断線10a)の最も端に位置する部分と、他方の端部に位置する第1切断線10(例えば、図1に示す第1切断線10d)の最も端に位置する部分との間の、幅方向Wの長さである。
【0017】
第1切断線10は、図1に示すように、第1辺11、第1辺11に対向する第2辺12、第1辺11と第2辺12とを繋ぐ第3辺13、及び第1辺11に繋がる第4辺14を有する。第1辺11、第2辺12、及び第3辺13は、フィルム片85の四辺のうちの三辺を構成する。第4辺14は、フィルム片85の四辺のうちの残りの一辺の一部を構成する。第3辺13と第4辺14とは対向している。第3辺13及び第4辺14は、直線状の辺であり、切欠き部を有していない。第1切断線10において、第2辺12と第4辺14とは直接繋がらず離間しており、第4辺14の第1辺11に繋がる側とは反対側において、第2辺12側に第4辺14を延長した場合に、この延長部分が第2辺12に繋がるように構成されている。
【0018】
打抜き刃により原反フィルム80に打抜く際には、第1切断線10の第3辺13と原反フィルム80の幅方向Wとのなす角度、及び、第1切断線10の第4辺14と原反フィルム80の幅方向Wとのなす角度は、それぞれ独立して20°以上70°以下となるように打抜き線1を形成することができる。上記角度は、30°以上であってもよく、40°以上であってもよく、また、60°以下であってもよく、50°以下であってもよい。第3辺13と幅方向Wとのなす角度、及び、第4辺14と幅方向Wとのなす角度は、いずれも、それぞれがなす角度のうちの小さい方の角度をいう。
【0019】
打抜き線10に含まれる互いに隣り合う2つの第1切断線(1)10a及び第1切断線(2)10bは、互いに平行であり、かつ、第1切断線(1)10aの第2辺12及び第3辺13が、第2切断線(2)10bの第4辺14に対向する。第1切断線(1)10aの第2辺12及び第3辺13は、図1に示すように、上記した第1切断線(2)10bの第2辺12と第4辺14との間の離間部分(第2辺12の第3辺13と繋がっている側とは反対側の端部と、第4辺14の第1辺11と繋がっている側とは反対側の端部との間)に対向していないことが好ましい。
【0020】
本明細書において切断線が互いに平行であるとは、一方の切断線を平面内で平行移動させて他方の切断線に重ねたときに、形状が一致することをいう。第1切断線(1)10aの第2辺12と第2切断線(2)10bの第4辺14とは、各辺の延在方向が互いに交差するように対向しており、図1に示すように間隔をあけて対向していてもよく、第2切断線(2)10bの第4辺14の一端が第1切断線(1)10aの第2辺12に接して対向していてもよい。
【0021】
第1切断線(1)10aの第3辺13と第2切断線(2)の第4辺14とは、互いに重なっていてもよいが、図1に示すように間隔をあけて対向していることが好ましい。これは、原反フィルム80から幅方向Wに対して第3辺13及び第4辺14が上記した角度となるように複数のフィルム片85を打抜く際に、打抜き屑を低減できる配置としやすいためである。第1切断線(1)10aの第3辺13は、第2切断線(2)10bの第4辺14に対して実質的に平行となるように対向していることが好ましい。ここでいう実質的に平行とは、2つの辺の延在方向のなす角度のうちの小さい方の角度が3°以内であることをいい、2°以内であってもよく、1°以内であってもよく、0.5°以下であってもよい。
【0022】
第1切断線(2)10bと第1切断線(3)10cとの関係、及び、第1切断線(3)10cと第4切断線(4)10dとの関係も、上記で説明した第1切断線(1)10aと第1切断線(2)10bとの関係で説明した関係であることが好ましい。さらに、5以上の第1切断線10を含む場合も、互いに隣り合う2つの第1切断線10はいずれも、上記で説明した第1切断線(1)10aと第1切断線(2)10bとの関係で説明した関係であることが好ましい。
【0023】
打抜き刃において、第1切断線10の第2辺12を形成するための刃(以下、「第2刃」ということがある。)の厚みは、第1辺11、第3辺13、及び第4辺14を形成するための刃(以下、それぞれを「第1刃」、「第3刃」、及び「第4刃」ということがある。)の厚みよりも大きい。本明細書において、刃の厚みは、先端に向かって厚みが小さくなる刃先に繋がり、厚みが一定となっている刃元部分(本体部)の厚みをいう。打抜き刃は、第2辺12以外の辺(第1辺11、第3辺13、及び第4辺14)を形成するための刃の厚みは、互いに同じ厚みであることが好ましい。
【0024】
打抜き刃を用いて原反フィルム80の打抜きを行う際には、打抜き刃と原反フィルム80とを相対移動させ、原反フィルム80の異なる位置を打抜き刃で打抜くことにより、原反フィルム80に複数の打抜き線1を順次形成する。このとき、図2に示すように、第mショット〔mは自然数を表す。〕の打抜きにより形成された打抜き線1である打抜き線(m)に含まれる第1切断線10の第2辺12と第4辺14とが繋がるように、第nショット〔nはmより大きい自然数を表す。〕の打抜きにより形成された打抜き線1である打抜き線(n)を形成する。図2では、打抜き線(m)を実線で示し、打抜き線(n)を破線で示している。nは、n=m+1の関係を満たすことが好ましい。
【0025】
これにより、打抜き線(m)の第1切断線10と打抜き線(n)の一部とによって、フィルム片85の輪郭全体が形成される。図2では、打抜き線(m)の第1切断線10の第2辺12と第4辺14とが、打抜き線(n)の第1切断線10の第3辺13の一部によって繋がるように打抜きを行う場合を示している。これにより、原反フィルム80から複数のフィルム片85を打抜く際に、原反フィルム80の長さ方向Lに隣り合うフィルム片85どうしの間の隙間を低減するように打抜き線1を配置して、フィルム片85を打抜くことができる。
【0026】
打抜き線(m)と打抜き線(n)との配置は、上記したように、打抜き線(m)の第1切断線10の第2辺12と第4辺14とが、打抜き線(n)によって繋がれば特に限定されない。例えば、打抜き線(m)の第1切断線(1)10aの第2辺12と、打抜き線(n)の第1切断線(2)10bの第1辺11とが重なる配置としてもよく、図2に示すように、打抜き線(m)の第1切断線(1)10aの第2辺12と、打抜き線(n)の第1切断線(2)10bの第1辺11とが間隔をあけて対向する配置としてもよい。
【0027】
打抜き刃は、上記したように第1切断線10によってフィルム片85の輪郭の一部を形成するため、第2辺12を形成するための第2刃と第4辺14を形成するための第4刃とは直接繋がっておらず、離間している。そのため、平面視において一端が他の刃に繋がっていない自由端となっている第2刃及び第4刃は、原反フィルム80を打抜く際に打抜き刃に付与される押圧力により、歪みや位置ずれが生じるといった不具合を生じることがある。そこで、打抜き刃では、第2刃の厚みを第1刃、第3刃、及び第4刃の厚みよりも大きくして第2刃の強度を高めることにより、上記不具合が生じることを抑制することができる。第2刃の厚みを大きくすることにより、打抜かれるフィルム片の寸法精度が低下する可能性があるが、第2刃が形成する第2辺12はフィルム片85の一辺を形成するため、打抜き後のフィルム片85の研磨等の加工により調整が容易である。
【0028】
一方、第4刃は、第2刃のように厚みを大きくしてもよいが、次の理由により第1刃及び/又は第3刃と同じ厚みとすることが好ましい。打抜き刃の第mショットにより形成される打抜き線(m)のうちの第4刃が形成する部分は、打抜き刃の第nショットにより形成される打抜き線(n)と組み合わせて、フィルム片85の輪郭全体を形成することになる。第4刃の厚みと、打抜き線(m)の第2辺12と第4辺14とを繋ぐ部分を形成する刃の厚みとが異なると、第nショットを行う際の打抜き刃の位置合わせが行いにくくなり、打抜かれるフィルム片85の寸法精度が低下しやすい。そのため、第4刃は、第1刃及び/又は第3刃と同じ厚みとすることが好ましい。
【0029】
打抜き刃による第nショットの打抜きは、上記したように、打抜き線(n)が打抜き線(m)の第4辺14に接し、第4辺14の延在方向に沿って第4辺14と第2辺12とを繋いで形成されるように行えばよい。図2では、打抜き線(n)の第1切断線10の第3辺13が、打抜き線(m)の第2辺12と第4辺14とを繋いでいる。上記したように、打抜き刃によって形成される打抜き線10は、第4辺14の第1辺11に繋がっていない側を延長すれば第2辺12に接し、第2辺12と第4辺14とを繋ぐことができる。そのため、第mショットの打抜きにより形成された線状の第4辺14を目印とし、この第4辺14の第1辺11側とは反対側の端部を延長するように、第nショットを行うときの打抜き刃の位置を調整して打抜き線(n)を形成すればフィルム片85を打抜くことができる。このように、本実施形態の打抜き刃を用いれば、各ショットでの打抜き刃の位置合わせが行いやすく、寸法精度に優れたフィルム片85が得られやすい。
【0030】
打抜き刃の第2刃の厚みは特に限定されないが、例えば0.3mm以上とすることができ、0.5mm以上であってもよく、また、4.0mm以下であってもよく、2.0mm以下であってもよく、1.0mm以下であってもよい。打抜き刃の第1刃、第3刃及び第4刃の厚みは、それぞれ独立して、例えば0.1mm以上とすることができ、0.3mm以上であってもよく、また、3.0mm以下であってもよく、2.0mm以下であってもよく、1.5mm以下であってもよい。
【0031】
打抜き刃の刃の形状は特に限定されず、両刃、片刃、複数段刃等のいずれであってもよく、例えば両1段刃、片1段刃、両2段刃、両3段刃、片2段刃等が挙げられる。打抜き刃は、先端に向かって厚みが小さくなる刃先を有することが好ましい。刃先の先端の角度は特に限定されないが、例えば10°以上とすることができ、20°以上であってもよく、また、例えば40°以下とすることができ、30°以下であってもよい。
【0032】
打抜き刃は、トムソン刃、腐食刃(エッチング刃)、彫刻刃、ロータリーダイカッタ等、特に限定されないが、トムソン刃であることが好ましい。
【0033】
(光学フィルムの製造方法)
上記した打抜き刃は、光学フィルムの製造に用いることができる。本実施形態の光学フィルムの製造方法は、例えば図1に示す打抜き線1を形成する打抜き刃により、長尺状の原反フィルム80から略方形のフィルム片85を打抜いて光学フィルムを製造する方法である。打抜き刃は、上記したように、第1切断線10の第3辺13と原反フィルム80の幅方向Wとのなす角度、及び、第1切断線10の第4辺14と原反フィルム80の幅方向Wとのなす角度が、それぞれ独立して20°以上70°以下となるように打抜き線1を形成する。
【0034】
光学フィルムの製造方法では、上記したように、打抜き刃による原反フィルム80の第mショット〔mは自然数を表す。〕の打抜きにより打抜き線(m)を形成し、打抜き刃による原反フィルム80の第nショット〔nはmより大きい自然数を表す。〕の打抜きによりさらに打抜き線(n)を形成する(図2)。打抜き線(n)の形成は、打抜き線(m)に含まれる第1切断線10の第2辺12と第4辺14とを繋ぐように行う。打抜き線(n)を形成した後は、打抜き線(n)に含まれる第1切断線10の第2辺12と第4辺14とを繋ぐように、次の打抜き線を形成する。言い換えれば、第mショット及び第nショットを行って形成した打抜き線(n)に対して、第nショットで行った打抜き方法と同じ手順で行う打抜きを繰り返すことにより、原反フィルム80から複数のフィルム片85を打抜くことができる。
【0035】
光学フィルムの製造方法は、原反フィルム80と打抜き刃とを相対移動させることにより行われる。例えば、まず、原反フィルム80の搬送を停止した状態で、原反フィルムに対して打抜き刃を進退させて打抜きを行った後、打抜き刃による打抜きを停止した状態で、打抜き刃が次の打抜き位置と対向する位置まで原反フィルム80を搬送し、原反フィルム80の搬送を停止するという動作を繰り返すことにより、連続的にフィルム片85を打抜くことができる。
【0036】
上記のようにして打抜かれたフィルム片85は、そのまま光学フィルムとして用いてもよいが、フィルム片85の打抜きにより形成された端面の研磨処理、フィルム片85に貫通孔を形成する孔形成処理、フィルム片85に他の層を積層する積層処理等を行ったものを光学フィルムとしてもよい。
【0037】
打抜き刃の打抜きにより形成される打抜き線1は、第1切断線10において第1辺11と第3辺13とを繋ぐ頂点を第1頂点19とするとき、図1及び図2に示すように、打抜き線1に含まれる第1切断線10の第1頂点19が、幅方向Wに実質的に平行な直線W1上に位置するように形成されることが好ましい。
【0038】
ここでいう実質的に平行とは、幅方向Wと直線W1とのなす角度のうちの小さい方の角度が3°以内であることをいい、2°以内であってもよく、1°以内であってもよい。上記角度は、0°であってもよい。図1及び図2において、直線W1は一点鎖線で示している。
【0039】
上記のように打抜き線1を形成することにより、原反フィルム80から幅方向Wに対して第3辺13及び第4辺14が上記した角度となるようにフィルム片85を打抜く場合であっても、原反フィルム80の幅方向Wに実質的に平行な直線W1に沿って複数のフィルム片が並ぶように打抜きを行うことができ、上記した打抜き刃を用いることにより、打抜き屑を低減することができる。
【0040】
特に、幅方向Wに対して第3辺13及び第4辺14が上記した角度となるように打抜き線1を形成することにより、原反フィルム80が幅方向W及び/又は長さ方向Lに平行な延伸軸を有する延伸フィルムである場合、打抜かれるフィルム片85における延伸軸を、フィルム片85のいずれかの辺に対して平行ではなく、各辺に対して傾斜させることができる。
【0041】
図2に示す1回の第mショットと1回の第nショットとにより打抜かれるフィルム片85の数は、打抜き線1が有する第1切断線10の数に依存するが、2つ以上であってもよく、3つ以上であってもよく、3つ以上であってもよく、6つ以上であってもよく、8つ以上であってもよく、また、例えば20個以下とすることができ、15個以下であってもよく、12個以下であってもよく、10個以下であってもよい。
【0042】
(光学フィルムの製造装置)
光学フィルムの製造装置は、長尺状の原反フィルム80から略方形のフィルム片を打抜いて光学フィルムを製造する装置である。光学フィルムの製造装置は、上記した打抜き線1を形成するための打抜き刃と、打抜き刃による打抜き毎に原反フィルム80の異なる位置が打抜かれ、かつ、打抜き刃による打抜き毎に形成される打抜き線1が2つ組み合わされることによって1つのフィルム片85の四辺が形成されるように、原反フィルム80及び打抜き刃を相対移動させる駆動部と、を備える。
【0043】
打抜き刃に対して原反フィルム80を移動させる場合、駆動部は、原反フィルム80を搬送するための搬送部である。搬送部としては、例えば、搬送ローラ及び搬送ベルト等の公知のフィルムの搬送装置を挙げることができる。原反フィルム80に対して打抜き刃を移動させる場合、駆動部は、打抜き刃の位置を移動させるレール、打抜き刃を表面に備えるローラの駆動源等を挙げることができる。
【0044】
光学フィルムの製造装置において、打抜き刃は、上記したように、第1切断線10の第3辺13と原反フィルム80の幅方向Wとのなす角度、及び、第1切断線10の第4辺14と原反フィルム80の幅方向Wとのなす角度が、それぞれ独立して20°以上70°以下となるように打抜き線1を形成する。本実施形態の光学フィルムの製造装置は、上記した光学フィルムの製造方法を行うことができる。
【0045】
〔実施形態2〕
図3は、本実施形態の打抜き刃による1回の打抜きによって形成される打抜き線を説明するための図である。図4は、図3に示す打抜き線を形成する打抜き刃を用いて2回の打抜きを行ったときに形成される打抜き線を説明するための図である。図中、Wは原反フィルムの幅方向を表し、Lは幅方向Wに直交する方向であって原反フィルムの長さ方向を表す。各実施形態及び各図面において、先に説明した部材と同一の又は相当する部材には、同一の又は対応する参照符号を付し、その説明を繰り返さない場合がある。
【0046】
(打抜き刃)
本実施形態の打抜き刃によって形成される打抜き線2は、先の実施形態で説明した第1切断線10に加えて、図3に示すように、第1切断線10の第3辺13の一部を共有し、かつ、1つのフィルム片85の輪郭全体を構成する第2切断線20を含むことができる。第2切断線20に含まれる第5辺25は、第1切断線10の第3辺13の一部と、第3辺13の第1辺11に繋がる側から第2辺12側とは反対側に第3辺13を延長するように延在する第1突出部21とを組み合わせて構成される。第5辺は、第1切断線10の第3辺13の一部を共有し、第2切断線20が輪郭全体を構成するフィルム片85の一辺となる。第2切断線20は、さらに、第5辺25に対向する第6辺26と、第5辺25の第1突出部21側と第6辺26とを繋ぐ第7辺27と、第7辺27に対向する第8辺28とを有する。第2切断線20は、第6辺26と第7辺27とを繋ぐ第2頂点29を有する。
【0047】
打抜き線2において、第2切断線20によって構成されるフィルム片85の輪郭は、第1切断線10の第2辺12と第4辺14とを繋いで形成されるフィルム片85(図4)の輪郭に対して平行である。本明細書において、一方のフィルム片85の輪郭が他方のフィルム片の輪郭に対して平行であるとは、一方のフィルム片を平面内で平行移動させて他方のフィルム片に重ねたときに、輪郭の形状が一致することをいう。
【0048】
打抜き線2に含まれる第1切断線10及び第2切断線20の数はそれぞれ2以上であり、通常、打抜き線2に含まれる第1切断線10の数と同じである。図3及び図4には、打抜き刃による1回の打抜きによって形成される打抜き線2が、4つの第1切断線10及び4つの第2切断線20を含み、打抜き刃による1回の打抜きによって第2切断線20により4つのフィルム片85が打抜かれる場合を示しているが、これに限定されない。
【0049】
打抜き刃により原反フィルム80に打抜く際には、第1切断線10の第3辺13と原反フィルム80の幅方向Wとのなす角度、及び、第1切断線10の第4辺14と原反フィルム80の幅方向Wとのなす角度は、それぞれ独立して20°以上70°以下となるように打抜き線2を形成する。上記角度は、30°以上であってもよく、40°以上であってもよく、また、60°以下であってもよく、50°以下であってもよい。第3辺13と幅方向Wとのなす角度、及び、第4辺14と幅方向Wとのなす角度は、いずれも、それぞれがなす角度のうちの小さい方の角度をいう。
【0050】
打抜き線2に含まれる互いに隣り合う2つの第2切断線(1)20a及び第2切断線(2)20bは、互いに平行であり、かつ、第2切断線(1)20aの第6辺26及び第8辺28が、第2切断線(2)20bの第5辺25に対向することが好ましい。第2切断線(1)の第6辺26と第2切断線(2)の第5辺25とは、互いに重なっていてもよいが、図3に示すように間隔をあけて対向していることが好ましい。これは、上記したように、原反フィルム80から幅方向Wに対して第3辺13及び第4辺14が上記した角度となるように複数のフィルム片85を打抜く際に、打抜き屑を低減できる配置としやすいためである。第2切断線(1)20aの第6辺26は、第2切断線(2)20bの第5辺25に対して実質的に平行となるように対向していることが好ましい。ここでいう実質的に平行は、先の実施形態で説明したとおりである。
【0051】
図3及び図4に示すように打抜き線2が4つの第2切断線20を含む場合や、5つ以上の第2切断線20を含む場合、互いに隣り合う2つの第2切断線20はいずれも、上記で説明した第2切断線(1)20aと第2切断線(2)20bとの関係で説明した関係であることが好ましい。
【0052】
第1切断線10において第1辺11と第3辺13とを繋ぐ頂点を第1頂点19とするとき、[i]第1切断線(1)及び第2切断線(1)の第1頂点19どうしを結ぶ直線W1と(図1図3)、[ii]第1切断線(1)10aの第1頂点19と、第2切断線20のうちの第1切断線(1)10aの第3辺13の一部を共有する第2切断線(1)20aの第2頂点29とを結ぶ直線L2(図3)と、のなす角度は、90±5°の範囲内にあることが好ましい。これは、原反フィルム80から上記したように幅方向Wに対して第3辺13及び第4辺14が上記した角度となるように複数のフィルム片85を打抜く際に、打抜き屑を低減できる配置としやすいためである。上記角度は、90±3°の範囲内であってもよく、90±2°の範囲内であってもよく、90±1°の範囲内であってもよい。上記角度は、90°であってもよい。
【0053】
直線W1と、第1切断線(2)10bの第1頂点19と第2切断線(2)20bの第2頂点29とを結ぶ直線とのなす角度も、上記した直線W1と直線L2とのなす角度で説明した角度であることが好ましい。打抜き線2が3以上の第1切断線10及び3以上の第2切断線20を有する場合、直線W1と、第1切断線10の第1頂点19と当該第1切断線10の第3辺13の一部を共有する第2切断線20の第2頂点29とを結ぶ直線と、のなす角度は、いずれも、上記した直線W1と直線L2とのなす角度で説明した角度であることが好ましい。
【0054】
打抜き線2は、上記した第2切断線20に加えて、図3に示すように、第2切断線20の第6辺26の一部を共有し、かつ、1つ以上のフィルム片の輪郭全体を構成する第3切断線30を含んでいてもよい。図3には、1つの第3切断線30によって構成されるフィルム片85の輪郭が2つである場合を示している。第3切断線30は、第6辺26の一部と、第6辺26の第7辺27に繋がる側から第8辺28側とは反対側に第6辺26を延長するように延在する第2突出部31とを組み合わせて構成された第9辺33を有する。第9辺33は、第3切断線30が輪郭全体を構成するフィルム片85のうちの1つのフィルム片85の一辺を構成する。
【0055】
第3切断線30によって構成されるフィルム片85の輪郭は、第2切断線20によって構成されるフィルム片85の輪郭に対して平行である。打抜き線2に含まれる互いに隣り合う2つの第3切断線30はいずれも、上記で説明した第2切断線(1)20aと第2切断線(2)20bとの関係で説明した関係であることが好ましい。
【0056】
打抜き線2に含まれる第3切断線30の数は2以上であり、通常、打抜き線2に含まれる第1切断線10及び/又は第2切断線20の数と同じである。図3及び図4には、打抜き刃による1回の打抜きによって形成される打抜き線2が4つの第3切断線30を含み、打抜き刃による1回の打抜きによって第3切断線30により8つのフィルム片85が打抜かれる場合を示しているが、これに限定されない。
【0057】
1つの第3切断線30が構成するフィルム片85の輪郭の数は1つ以上であればよいが、2つ以上であることが好ましい。第3切断線30が構成するフィルム片85の輪郭の数が2つ以上である場合、互いに隣り合うフィルム片の輪郭はいずれも、図3に示すように、上記した第2切断線20と、第3切断線30のうちの当該第2切断線20の第6辺26の一部を共有するようにフィルム片85の輪郭を形成した部分との関係で説明した関係となるように配置することが好ましい。
【0058】
第3切断線30のうちの第9辺33を含んで輪郭を形成したフィルム片85の、第9辺33の第2突出部31側に繋がる辺と第9辺33に対向する辺とを繋ぐ第3頂点39は、直線L2上にあることが好ましい。打抜き線2が2以上の第1切断線10、2以上の第2切断線20、及び2以上の第3切断線30を有する場合、第3切断線のうちの第2切断線20の第6辺26の一部を共有するように輪郭を形成したフィルム片85の第3頂点39はいずれも、当該第2切断線20の第2頂点29と、当該第2切断線20の第5辺25の一部を共有する第1切断線10の第1頂点19とを結ぶ直線上(上記した直線L2に相当)にあることが好ましい。
【0059】
打抜き刃を用いて原反フィルム80の打抜きを行う際には、打抜き刃と原反フィルム80とを相対移動させ、原反フィルム80の異なる位置を打抜き刃で打抜くことにより、原反フィルム80に複数の打抜き線2を順次形成する。このとき、図4に示すように、第mショット〔mは自然数を表す。〕の打抜きにより形成された打抜き線2である打抜き線(m)に含まれる第1切断線10の第2辺12と第4辺14とが繋がるように、第nショット〔nはmより大きい自然数を表す。〕の打抜きにより形成された打抜き線2である打抜き線(n)を形成する。図4では、打抜き線(m)を実線で示し、打抜き線(n)を破線で示している。nは、n=m+1の関係を満たすことが好ましい。
【0060】
これにより、打抜き線(m)の第1切断線10と打抜き線(n)の一部とによって、フィルム片85の輪郭全体が形成される。図4では、打抜き線(m)の第1切断線10の第2辺12と第4辺14とが、打抜き線(n)の第3切断線30の辺の一部によって繋がるように打抜きを行う場合を示しているが、これに限定されない。打抜き刃によって形成される打抜き線2が第3切断線30を含んでいない場合は、打抜き線(m)の第1切断線10の第2辺12と第4辺14とが、打抜き線(n)の第2切断線20の第6辺26の一部によって繋がるように打抜きを行ってもよい。これにより、原反フィルム80から複数のフィルム片85を打抜く際に、原反フィルム80の長さ方向Lに隣り合うフィルム片85どうしの間の隙間を低減するように配置して、フィルム片85を打抜くことができる。
【0061】
打抜き線(m)と打抜き線(n)との配置は、上記したように、打抜き線(m)の第1切断線10の第2辺12と第4辺14とが、打抜き線(n)によって繋がれば特に限定されない。例えば、打抜き線(m)の第1切断線10の第2辺12に対向する打抜き線(n)の第3切断線30を構成する辺は、第2辺12に重なっていてもよく、図4に示すように、第2辺12と間隔をあけて対向していてもよい。
【0062】
本実施形態の打抜き刃は、第2切断線20、又は、第2切断線20及び第3切断線30を含むため、打抜き刃による1回の打抜きによってフィルム片を打抜くことができる。そのため、先の実施形態の打抜き刃よりも、原反フィルム80から効率よくフィルム片85を打抜くことができる。上記したように、打抜き刃の第1切断線10を形成する第2刃の厚みが他の刃の厚みよりも大きいため、打抜き時の歪みや位置ずれ等の不具合を抑制することができる。また、第mショットの打抜きにより形成された線状の第4辺14を目印とし、この第4辺14の第1辺11側とは反対側の端部を延長するように、第nショットを行うときの打抜き刃の位置を調整して打抜き線(n)を形成すればフィルム片85を打抜くことができる。このように、本実施形態の打抜き刃を用いれば、各ショットでの打抜き刃の位置合わせが行いやすく、寸法精度に優れたフィルム片85が得られやすい。
【0063】
打抜き刃において、第2切断線20及び第3切断線30を形成するための刃の厚みは、上記した第2刃の厚みよりも小さいことが好ましく、第1刃、第3刃、及び第4刃のうちのいずれかの厚みと同じであることが好ましく、第1刃、第3刃、及び第4刃の厚みと同じであることが好ましい。第2切断線20及び第3切断線30を形成するための刃のうち、第1切断線10の第2辺12と第4辺14とを繋ぐように切断線を形成する刃の厚みは、寸法精度に優れたフィルム片85を得る観点から、第4刃の厚みと同じであることが好ましい。打抜き刃の刃の形状、及び打抜き刃の種類としては、上記したものが挙げられる。
【0064】
(光学フィルムの製造方法)
上記した打抜き刃は、光学フィルムの製造に用いることができる。本実施形態の光学フィルムの製造方法は、例えば図3に示す打抜き線2を形成する打抜き刃により、長尺状の原反フィルム80から略方形のフィルム片85を打抜いて光学フィルムを製造する方法である。光学フィルムの製造方法では、先の実施形態で説明したように、第mショットによる打抜き線(m)の形成、及び、第nショットによる打抜き線(n)の形成を行うことにより、フィルム片85を得ることができる。打抜き刃は、上記したように、第1切断線10の第3辺13と原反フィルム80の幅方向Wとのなす角度、及び、第1切断線10の第4辺14と原反フィルム80の幅方向Wとのなす角度が、それぞれ独立して20°以上70°以下となるように打抜き線2を形成する。
【0065】
本実施形態の光学フィルムの製造方法では、第2切断線20、又は、第2切断線20及び第3切断線30を含む打抜き刃を用いるため、打抜き刃による1回の打抜きによってフィルム片を打抜くことができる。そのため、フィルム片を効率よく打抜くことができる。
【0066】
本実施形態の光学フィルムの製造方法においても、図3に示すように、打抜き線1に含まれる第1切断線10の第1頂点19が、幅方向Wに実質的に平行な直線W1上に位置するように形成されることが好ましい。特に、上記したように打抜き線2において直線W1と直線L2とのなす角度が90±5°の範囲内である場合、より一層、打抜き屑を低減して効率よくフィルム片85を打抜くことができる。
【0067】
図4に示す1回の第mショットと1回の第nショットとにより打抜かれるフィルム片85の数は、打抜き線2が有する第1切断線10、第2切断線20、及び第3切断線30の数に依存するが、例えば6つ以上であってもよく、10個以上であってもよく、15個以上であってもよく、20個以上であってもよく、30個以上であってもよく、また例えば100個以下であってもよく、80個以下であってもよく、60個以下であってもよい。
【0068】
(光学フィルムの製造装置)
本実施形態の光学フィルムの製造装置は、上記した打抜き線2を形成するための打抜き刃と、打抜き刃による打抜き毎に原反フィルム80の異なる位置が打抜かれ、かつ、打抜き刃による打抜き毎に形成される打抜き線2が2つ組み合わされることによって1つのフィルム片85の四辺が形成されるように、原反フィルム80及び打抜き刃を相対移動させる駆動部と、を備える。駆動部としては、先の実施形態で説明したものが挙げられる。
【0069】
光学フィルムの製造装置において、打抜き刃は、上記したように、第1切断線10の第3辺13と原反フィルム80の幅方向Wとのなす角度、及び、第1切断線10の第4辺14と原反フィルム80の幅方向Wとのなす角度が、それぞれ独立して20°以上70°以下となるように打抜き線2を形成する。本実施形態の光学フィルムの製造装置は、上記した光学フィルムの製造方法を行うことができる。
【0070】
以下、各実施形態で用いる原反フィルム、フィルム片及び光学フィルムについて詳述する。
(原反フィルム)
原反フィルムは、フィルム片を打抜くために用いられる帯状の長尺のフィルムであることができる。原反フィルムの幅は、打抜くフィルム片85の大きさや数にもよるが、例えば、800mm以上であり、1000mm以上であってもよく、1200mm以上であってもよく、また、2500mm以下であることが好ましく、2300mm以下であってもよい。
【0071】
原反フィルムは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。原反フィルムは、後述する光学フィルムを製造するための原反フィルムであることが好ましい。原反フィルムは、粘着剤層を有していてもよく、粘着剤層を被覆保護するための剥離フィルムを有していてもよい。原反フィルムは、延伸フィルムであることが好ましい。延伸フィルムは、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムの延伸軸は、原反フィルムの幅方向又は幅方向に直交する方向に平行であることができる。
【0072】
(フィルム片)
フィルム片は、略方形であれば特に限定されないが、略長方形であることが好ましい。フィルム片の一辺の長さは特に限定されないが、例えば50mm以上であってもよく、60mm以上であってもよく、70mm以上であってもよく、また、300mm以下であってもよく、250mm以下であってもよく、200mm以下であってもよく、160mm以下であってもよい。フィルム片が略長方形である場合、長辺の長さは、例えば70mm以上であってもよく、100mm以上であってもよく、また300mm以下であってもよく、200mm以下であってもよく、短辺の長さは、50mm以上であってもよく、70mm以上であってもよく、また200mm以下であってもよく、150mm以下であってもよい。
【0073】
原反フィルムが一軸延伸フィルムである場合、延伸軸方向とフィルム片のいずれかの辺とのなす角度のうち小さい方の角度は、20°以上であってもよく、30°以上であってもよく、また、70°以下であってもよく、60°以下であってもよい。
【0074】
(光学フィルム)
光学フィルムは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。単層構造の光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム、拡散フィルム、集光フィルム等が挙げられる。偏光フィルムとしては、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、ヨウ素等の二色性色素が吸着配向したものが挙げられる。位相差フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルムを一軸延伸又は二軸延伸したものが挙げられる。
【0075】
多層構造の光学フィルムとしては、偏光フィルムの片面又は両面に保護フィルム等の他の層を積層した偏光板、位相差フィルムの片面又は両面に保護フィルム等の他の層を積層した位相差板等が挙げられる。光学フィルムは、粘着剤層を有していてもよく、粘着剤層を被覆保護するための剥離フィルムを有していてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1,2 打抜き線、
10 第1切断線、10a 第1切断線(1)(第1切断線)、10b 第1切断線(2)(第1切断線)、10c 第1切断線(3)(第1切断線)、10d 第1切断線(4)(第1切断線)、
11 第1辺、12 第2辺、13 第3辺、14 第4辺、19 第1頂点、
20 第2切断線、20a 第2切断線(1)(第2切断線)、20b 第2切断線(2)(第2切断線)、
21 第1突出部、25 第5辺、26 第6辺、27 第7辺、28 第8辺、29 第2頂点、
30 第3切断線、31 第2突出部、33 第9辺、39 第3頂点、
80 原反フィルム、85 フィルム片、L 長さ方向、W 幅方向。
図1
図2
図3
図4