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特開2023-63242塗料組成物、被覆物品および硬化膜の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063242
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】塗料組成物、被覆物品および硬化膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20230427BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20230427BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20230427BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230427BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20230427BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230427BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20230427BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D171/00
C09D167/00
C09D7/63
C09D183/04
B05D7/24 302P
B05D7/24 302Y
B05D7/24 302T
B05D7/24 302R
B05D7/24 303A
B05D3/12 Z
B05D7/24 302V
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158214
(22)【出願日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2021172963
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】麻生 史拓
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AC12
4D075AE03
4D075BB16X
4D075BB21Z
4D075CA02
4D075CA32
4D075CA34
4D075CA44
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB01
4D075DB02
4D075DB04
4D075DB05
4D075DB07
4D075DB11
4D075DB12
4D075DB31
4D075DC05
4D075EA05
4D075EB22
4D075EB35
4D075EB37
4D075EB38
4D075EB43
4D075EB51
4D075EB56
4D075EC07
4D075EC08
4D075EC30
4D075EC37
4D075EC45
4D075EC51
4J038CG001
4J038DD001
4J038DF001
4J038GA03
4J038JC30
4J038JC32
4J038JC38
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA05
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA14
4J038NA03
4J038NA04
4J038NA05
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】簡便に製造可能であり、優れた硬度、耐薬品性、防汚性、耐候性を有する硬化膜を与える塗料組成物を提供すること。
【解決手段】(A)アクリルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールから選択される1種または2種以上のポリオール:100質量部、
(B)イソシアヌレート骨格を有するシランカップリング剤:0.5~20質量部、
(C)下記式(I)で表されるオルガノポリシロキサン:5~100質量部
(式中、R1は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基を表し、R2は、水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基を表し、a、b、c、dは、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦0.5、0≦d<1、a+b+c+d=1、かつ、0.5<(a+b)≦1を満たす数であり、eは、0<e≦4を満たす数である。)
を含む塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールからなる群より選択される1種または2種以上のポリオール:100質量部、
(B)イソシアヌレート骨格を有するシランカップリング剤:0.5~20質量部、および
(C)下記式(I)で表されるオルガノポリシロキサン:5~100質量部
【化1】
(式中、R1は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基を表し、R2は、水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基を表し、a、b、c、dは、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦0.5、0≦d<1、a+b+c+d=1、かつ、0.5<(a+b)≦1を満たす数であり、eは、0<e≦4を満たす数である。)
を含む塗料組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールまたはこれらの両方である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、下記式(II)で表される化合物である請求項1記載の塗料組成物。
【化2】
(式中、R3は、それぞれ独立して、炭素原子数1~20のアルキレン基を表し、R4は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基を表し、R5は、水素原子または炭素原子数1~8のアルキル基を表し、fは、それぞれ独立して、0、1または2である。)
【請求項4】
前記式(I)において、R1が、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数6~10のアリール基または炭素原子数7~10のアラルキル基である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記式(I)において、R1が、それぞれ独立して、メチル基、エチル基またはフェニル基である請求項4記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記式(I)において、R2の全数のうち、炭素原子数1~6のアルキル基の割合が、80%以上である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記式(I)において、aが、0<a≦1である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項8】
前記式(I)において、dが、0である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項9】
前記(C)成分の25℃における動粘度が、1~200mm2/sである請求項1記載の塗料組成物。
【請求項10】
さらに、(D)硬化触媒を含む請求項1記載の塗料組成物。
【請求項11】
前記(A)~(C)成分を、10~40℃で混合する請求項1~10のいずれか1項記載の塗料組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項記載の塗料組成物から形成された硬化膜。
【請求項13】
基材と、この基材の少なくとも一方の面に、直接または1つ以上のその他の層を介して形成された請求項12記載の硬化膜とを有する被覆物品。
【請求項14】
基材の少なくとも一方の面に、直接または1つ以上のその他の層を介して請求項1~10のいずれか1項記載の塗料組成物を塗布した後、塗料組成物を硬化させる、基材上への硬化膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物、被覆物品および硬化膜の形成方法に関し、さらに詳述すると、有機樹脂とオルガノポリシロキサンとを含む塗料組成物、当該塗料組成物からなる硬化膜を有する被覆物品、および当該塗料組成物からなる硬化膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサン系樹脂を主成分とした塗料は、塗膜硬度、耐薬品性、耐候性等に優れることから、建築や土木構造物の分野で汎用されている。
このオルガノポリシロキサン系塗料は、上記利点を有している反面、硬化速度が遅く、また、得られた塗膜が耐クラック性に劣るという欠点も有している。
【0003】
これらの欠点を改善すべく、従来、オルガノポリシロキサンと、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂とを混合した組成物を塗料として用いる手法が知られている。このような組成物として、例えば、特許文献1には、シリル基含有ビニル系重合体、シラノール基含有オルガノポリシロキサンおよびアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンを含む塗料用組成物が提案されている。
しかし、この組成物は、硬化性や耐クラック性は改善するものの、オルガノポリシロキサン系樹脂塗膜の特徴である、塗膜硬度、耐薬品性、耐熱性、耐候性等が低下してしまうという問題がある。
【0004】
また、特許文献2~5には、有機樹脂とオルガノシランまたはオルガノポリシロキサンとを反応させて複合化を行う手法が開示されているが、この手法は、樹脂を複合化するための合成設備が必要であるため、汎用性という点で問題がある。
このため、オルガノポリシロキサンと有機樹脂との両者の特性を引き出すための簡便な手法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3-197548号公報
【特許文献2】特開平11-116683号公報
【特許文献3】特開平5-345877号公報
【特許文献4】特許第5384939号公報
【特許文献5】特許第6113456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、簡便に製造可能であり、優れた硬度、耐薬品性、防汚性、耐候性を有する硬化膜を与える、有機樹脂とオルガノポリシロキサンとを含む塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ポリオール、イソシアヌレート骨格を有するシランカップリング剤および所定のオルガノポリシロキサンを所定割合で混合した塗料組成物が、加熱により硬化可能であるとともに、当該組成物から得られた塗膜が、硬度等の上記特性を満たすことを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. (A)アクリルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールからなる群より選択される1種または2種以上のポリオール:100質量部、
(B)イソシアヌレート骨格を有するシランカップリング剤:0.5~20質量部、および
(C)下記式(I)で表されるオルガノポリシロキサン:5~100質量部
【化1】
(式中、R1は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基を表し、R2は、水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基を表し、a、b、c、dは、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦0.5、0≦d<1、a+b+c+d=1、かつ、0.5<(a+b)≦1を満たす数であり、eは、0<e≦4を満たす数である。)
を含む塗料組成物、
2. 前記(A)成分が、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールまたはこれらの両方である1記載の塗料組成物、
3. 前記(B)成分が、下記式(II)で表される化合物である1記載の塗料組成物、
【化2】
(式中、R3は、それぞれ独立して、炭素原子数1~20のアルキレン基を表し、R4は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基を表し、R5は、水素原子または炭素原子数1~8のアルキル基を表し、fは、それぞれ独立して、0、1または2である。)
4. 前記式(I)において、R1が、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数6~10のアリール基または炭素原子数7~10のアラルキル基である1記載の塗料組成物、
5. 前記式(I)において、R1が、それぞれ独立して、メチル基、エチル基またはフェニル基である4記載の塗料組成物、
6. 前記式(I)において、R2の全数のうち、炭素原子数1~6のアルキル基の割合が、80%以上である1記載の塗料組成物、
7. 前記式(I)において、aが、0<a≦1である1記載の塗料組成物、
8. 前記式(I)において、dが、0である1記載の塗料組成物、
9. 前記(C)成分の25℃における動粘度が、1~200mm2/sである1記載の塗料組成物、
10. さらに、(D)硬化触媒を含む1記載の塗料組成物、
11. 前記(A)~(C)成分を、10~40℃で混合する1~10のいずれかに記載の塗料組成物の製造方法、
12. 1~10のいずれかに記載の塗料組成物から形成された硬化膜、
13. 基材と、この基材の少なくとも一方の面に、直接または1つ以上のその他の層を介して形成された12記載の硬化膜とを有する被覆物品、
14. 基材の少なくとも一方の面に、直接または1つ以上のその他の層を介して1~10のいずれかに記載の塗料組成物を塗布した後、塗料組成物を硬化させる、基材上への硬化膜の形成方法
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗料組成物は、ポリオール、イソシアヌレート骨格を有するシランカップリング剤および特定のオルガノポリシロキサンを混合するだけで製造でき、硬度、耐薬品性、防汚性、耐候性に優れる硬化膜を与えることから、種々の被覆物品の製造に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の塗料組成物は、下記(A)~(C)成分を含む。
(A)ポリオール
(B)イソシアヌレート骨格を有するシランカップリング剤
(C)下記式(I)で表されるオルガノポリシロキサン
【化3】
【0011】
(1)(A)ポリオール
(A)成分のポリオールは、1分子中に2個以上の反応性水酸基を有し、硬化触媒の存在下または非存在下において、加水分解性シリル基を有する(B)成分および(C)成分と反応して架橋構造を形成する成分である。
【0012】
ポリオールとしては、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーと他の任意の(メタ)アクリルモノマー等との(共)重合体であるアクリルポリオール、多塩基酸と多価アルコールとの縮重合体であるポリエステルポリオール(多塩基酸および脂肪酸と多価アルコールとの縮重合体であるアルキドポリオールを含む)、多価アルコールとアルキレンオキサイドとの付加重合体であるポリエーテルポリオール等が挙げられる。
これらの中でも、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールまたはこれらの両方が好ましく、得られる塗膜の透明性や光沢に優れることから、アクリルポリオールが特に好ましい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリルモノマーは、アクリルモノマーおよびメタクリルモノマーの双方を含む意味である。
【0013】
アクリルポリオールの原料モノマーである水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ-2-ヒドロキシエチルフマレート、モノ-2-ヒドロキシエチルモノブチルフマレート、ポリエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、「プラクセルFMまたはプラクセルFA」〔ダイセル化学(株)製のカプロラクトン付加モノマー〕等の各種α,β-エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、またはこれらとε-カプロラクトンとの付加物などが挙げられる。
これらの中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが、反応が容易であり、好ましい。
【0014】
水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーと共重合可能な他の(メタ)アクリルモノマーとしては、特に限定はなく、公知のモノマーを使用することが可能である。また、ビニルモノマーも共重合可能である。
それらの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1~22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート等のω-アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;スチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸のアルキルエステル類;ジメチルマレート、ジ-n-ブチルマレート、ジメチルフマレート、ジメチルイタコネート等の不飽和二塩基酸のジアルキルエステル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等のフルオロオレフィン類;エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル類;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルピロリドン等の3級アミド基含有モノマー類などが挙げられる。
【0015】
これらのモノマーを共重合させる際の重合方法、溶剤、および重合開始剤は、特に限定されるものではなく、例えば、塊状ラジカル重合、溶液ラジカル重合、非水分散ラジカル重合等の種々の重合法により、必要に応じてヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソプロピルアルコール等のアルコール類等の溶媒を用い、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の重合開始剤を使用して重合を実施することができる。
【0016】
(A)成分のポリオールの分子量は、特に限定されるものではないが、硬化性、耐候性および塗装性の観点から、ゲル浸透クロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは1,000~100,000であり、より好ましくは2,000~80,000である。
(A)成分に含まれる水酸基の量は、特に限定されるものではないが、水酸基価として、10~200mgKOH/gが好ましく、20~180mgKOH/gがより好ましい。なお、本発明において、水酸基価は、JIS K 0070:1992による値である。
【0017】
(A)成分としては、市販品を用いることができ、例えば、アクリディックA-801P(アクリルポリオール)、アクリディック53-580(アクリルポリオール)、バーノックD-220(ポリエステルポリオール)(いずれもDIC(株)製)等が挙げられる。
なお、(A)成分は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
(2)(B)イソシアヌレート骨格を有するシランカップリング剤
(B)成分は、イソシアヌレート骨格を有し、かつ好ましくは加水分解性シリル基またはシラノール基を1分子中に1個以上有するシランカップリング剤である。
【0019】
加水分解性シリル基としては、例えば、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル、エチルジエトキシシリル基等のオルガノジアルコキシシリル基;ジメチルモノメトキシシリル、ジエチルモノエトキシシリル基等のジオルガノアルコキシシリル基;トリクロロシリル、ジクロロメチルシリル、クロロジメチルシリル基等のハロシリル基等が挙げられ、これらの中でも、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基が好ましく、トリメトキシシリル基がより好ましい。
【0020】
イソシアヌレート骨格を有するシランカップリング剤としては、例えば、下記式(II)で示される化合物が挙げられる。
【0021】
【化4】
【0022】
3は、それぞれ独立して、炭素原子数1~20のアルキレン基を表し、R4は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基を表し、R5は、水素原子または炭素原子数1~8のアルキル基を表し、fは、それぞれ独立して、0、1または2である。
【0023】
3のアルキレン基としては、好ましくは炭素原子数1~8、より好ましくは炭素原子数1~4のアルキレン基である。
3のアルキレン基は、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、ヘキサデカメチレン、へプタデカメチレン、オクタデカメチレン、ノナデカメチレン、エイコサデシレン基等が挙げられる。これらの中でも、R3は、メチレン、エチレン、トリメチレン基が好ましく、トリメチレン基がより好ましい。
【0024】
4の一価炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、例えば、炭素原子数1~12、好ましくは炭素原子数1~8のアルキル基;炭素原子数2~12、好ましくは炭素原子数2~8のアルケニル基;炭素原子数6~12、好ましくは炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数7~12、好ましくは炭素原子数7~10のアラルキル基等が挙げられる。
炭素原子数1~12のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル基等が挙げられる。
炭素原子数2~12のアルケニル基の具体例としては、ビニル、アリル基等が挙げられる。
炭素原子数6~12のアリール基の具体例としては、フェニル、ナフチル基等が挙げられる。
炭素原子数7~12のアラルキル基の具体例としては、ベンジル、フェニルエチル基等が挙げられる。
また、これら一価炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子や、シアノ基等のその他の置換基で置換されていてもよく、それらの具体例としては、クロロメチル、ブロモエチル、トリフルオロプロピル、クロロフェニル、ブロモフェニル基等のハロゲン置換炭化水素基;シアノエチル基等のシアノ置換炭化水素基などが挙げられる。
【0025】
これらの中でも、R4としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、フェニル、ベンジル、ビニル基が好ましく、メチル、エチル、フェニル基がより好ましい。
【0026】
5のアルキル基としては、好ましくは炭素原子数1~8、より好ましくは炭素原子数1~6のものであり、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、その具体例としては、R4におけるアルキル基で例示した基のうち、炭素原子数1~8のものと同様のものが挙げられる。それらの中でも炭素原子数1~3のものが好ましく、メチル、エチル基がより好ましい。
【0027】
fは、0、1または2であり、0が好ましい。
【0028】
(B)成分の具体例としては、例えば、1,3,5-トリス(3-トリメトキシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-トリプロポキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-メチルジエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-メチルジプロポキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-フェニルジメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-フェニルジエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-フェニルジプロポキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(2-トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(2-トリエトキシシリルエチル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(2-トリプロポキシシリルエチル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(2-メチルジメトキシシリルエチル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(2-メチルジエトキシシリルエチル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(2-メチルジプロポキシシリルエチル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(2-フェニルジメトキシシリルエチル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(2-フェニルジエトキシシリルエチル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(2-フェニルジプロポキシシリルエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
これらの中でも、1,3,5-トリス(3-トリメトキシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが好ましく、1,3,5-トリス(3-トリメトキシリルプロピル)イソシアヌレートがより好ましい。
【0029】
(B)成分としては、市販品を用いてもよく、例えば、KBM-9659(信越化学工業(株)製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(B)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
(B)成分の配合量は、(A)成分の不揮発分100質量部に対して0.5~20質量部である。(B)成分が0.5質量部未満であると、得られる硬化膜の耐薬品性、防汚性、耐候性が劣り、(B)成分が20質量部を超えると、得られる硬化膜の硬度が劣る。
【0031】
(3)(C)オルガノポリシロキサン
(C)成分は、下記式(I)で表されるシロキサン単位構成比を有するオルガノポリシロキサンである。
【0032】
【化5】
【0033】
1は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~12の一価炭化水素基を表し、R2は、水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基を表し、a、b、c、dは、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦0.5、0≦d<1、a+b+c+d=1、かつ、0.5<(a+b)≦1を満たす数であり、eは、0<e≦4を満たす数である。
【0034】
1の一価炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、例えば、炭素原子数1~12、好ましくは炭素原子数1~8のアルキル基;炭素原子数2~12、好ましくは炭素原子数2~8のアルケニル基;炭素原子数6~12、好ましくは炭素原子数6~10のアリール基;炭素原子数7~12、好ましくは炭素原子数7~10のアラルキル基等が挙げられる。
炭素原子数1~12のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル基等が挙げられる。
炭素原子数2~12のアルケニル基の具体例としては、ビニル、アリル基等が挙げられる。
炭素原子数6~12のアリール基の具体例としては、フェニル、ナフチル基等が挙げられる。
炭素原子数7~12のアラルキル基の具体例としては、ベンジル、フェニルエチル基等が挙げられる。
また、これら一価炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子や、シアノ基等のその他の置換基で置換されていてもよく、それらの具体例としては、クロロメチル、ブロモエチル、トリフルオロプロピル、クロロフェニル、ブロモフェニル基等のハロゲン置換炭化水素基;シアノエチル基等のシアノ置換炭化水素基などが挙げられる。
【0035】
これらの中でも、R1としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、フェニル、ベンジル、ビニル基が好ましく、メチル、エチル、フェニル基がより好ましい。
なお、上記R1は、好ましくはR1の全数のうち20%以上が置換または非置換の炭素原子数6~12のアリール基であり、より好ましくはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6~12のアリール基である。
【0036】
一方、R2の炭素原子数1~6のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、炭素原子数1~3のものが好ましく、メチル、エチル基がより好ましい。
また、本発明において、R2の全数のうち、炭素原子数1~6のアルキル基の割合は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%がより一層好ましい。
【0037】
aは、0≦a≦1を満たす数であるが、得られる硬化膜の硬度の観点から、0<a≦1が好ましく、0.5≦a≦1がより好ましい。
bは、0≦b≦1を満たす数であるが、得られる硬化膜の耐擦傷性の観点から、0.1≦b≦0.8が好ましく、0.2≦b≦0.6がより好ましい。
cは、0≦c≦0.5を満たす数であるが、組成物の硬化性および得られる硬化膜の硬度の観点から、0≦c≦0.4が好ましく、0.1≦c≦0.3がより好ましい。
dは、0≦d<1を満たす数であるが、組成物の硬化性および得られる硬化膜の硬度の観点から、0≦d≦0.4が好ましく、0がより好ましい。
eは、0<e≦4を満たす数であるが、縮合性官能基による縮合反応の抑制に効果的であることや、得られる硬化膜の耐クラック性、耐水性および耐候性の観点から、0<e≦3が好ましく、0<e≦1を満たす数がより好ましい。
なお、a+b+c+d=1であり、かつ、a+bは、0.5<(a+b)≦1、好ましくは0.7≦(a+b)≦1を満たす数である。
【0038】
(C)成分は、一般的なオルガノポリシロキサンの製造方法に従って製造することができ、例えば、加水分解性基を有するシラン化合物を加水分解縮合させて得ることができる。
加水分解性基を有するシラン化合物は、加水分解性基であるクロルまたはアルコキシ基をケイ素原子上に1~4個含有し、上記条件を満たす有機置換基を有するシラン化合物であれば特に限定されるものではない。
その具体例としては、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、プロピルメチルジクロロシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロロシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、ジメチルフェニルメトキシシラン、ジメチルフェニルエトキシシラン、およびこれらの部分加水分解物等が挙げられるが、操作性、副生物の留去のしやすさ、および原料の入手の容易さから、メトキシシラン、エトキシシランが好適である。
なお、上記シラン化合物は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
加水分解を実施するに際し、加水分解触媒を使用してもよい。加水分解触媒としては、従来公知の触媒を使用することができ、その水溶液がpH1~7の酸性を示すものが好ましく、特に酸性のハロゲン化水素、スルホン酸、カルボン酸、酸性または弱酸性の無機塩、イオン交換樹脂等の固体酸等が好ましい。
酸性触媒の具体例としては、フッ化水素、塩酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、マレイン酸、安息香酸、乳酸、燐酸、表面にスルホン酸またはカルボン酸基を有するカチオン交換樹脂等が挙げられる。
加水分解触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、反応を速やかに進行させるとともに、反応後の触媒の除去の容易性を考慮すると、加水分解性シラン1モルに対して0.0002~0.5モルの範囲が好ましい。
【0040】
加水分解性シランと、加水分解縮合反応に要する水との質量比は、特に限定されるものではないが、触媒の失活を防いで反応を十分に進行させるとともに、反応後の水の除去の容易性を考慮すると、加水分解性シラン1モルに対し、水0.1~10モルの割合が好ましい。
加水分解縮合時の反応温度は、特に限定されるものではないが、反応率を向上させるとともに、加水分解性シランが有する有機官能基の分解を防止することを考慮すると、-10~150℃が好ましい。
【0041】
なお、加水分解縮合の際には、有機溶剤を使用してもよい。使用できる有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0042】
また、(C)成分は、溶剤等を除く不揮発分が85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。揮発分が多くなると、組成物を硬化した際のボイド発生による外観の悪化や、機械的性質の低下の原因となるおそれがある。
(C)成分の分子量は、特に限定されるものではないが、ゲル浸透クロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が500~10,000であることが好ましい。
(C)成分の動粘度は、特に限定されるものではないが、1~200mm2/sが好ましく、1~150mm2/sがより好ましく、3~120mm2/sがより一層好ましい。なお、動粘度は、JIS-Z-8803に準拠し、キャノン・フェンスケ型粘度計による25℃での測定値である。
【0043】
(C)成分の配合量は、上記(A)成分の不揮発分100質量部に対して、不揮発分質量で5~100質量部であるが、8~60質量部が好ましい。(C)成分の量が上記範囲より少ないと、得られる硬化膜の耐候性、防汚性が不十分であり、一方、多すぎると耐薬品性、耐クラック性、耐候性が不十分となる。
なお、(C)成分は、単一の組成でも、組成の異なる複数の化合物の混合物であってもよい。特に、平均組成の異なる複数の化合物を混合することで本発明の組成物を好適に製造できる。
【0044】
(4)(D)硬化触媒
本発明の塗料組成物は、硬化触媒を含有していてもよい。硬化触媒としては、オルガノシロキサン系塗料において一般的に用いられるものであれば、特に限定されるものではないが、有機金属化合物が好ましく、例えば、Ti、Al、Zr、Sn等の金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属エステル化合物等が挙げられるが、有機錫化合物を含むものが好ましい。
金属アルコキシド化合物の具体例としては、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ-n-プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ-n-ブトキシド、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリ-s-ブトキシド、アルミニウムトリ-t-ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド;テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ-t-ブチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート等のチタニウムアルコキシド;テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-s-ブチルジルコネート、テトラ-t-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-t-ペンチルジルコネート、テトラ-t-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネート等のジルコニウムアルコキシド;ジブチル錫ジブトキシド等の錫アルコキシドなどが挙げられる。
【0045】
金属キレート化合物の具体例としては、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n-プロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(イソプロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n-ブチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(プロピオニルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシプロピオニルアセトナトアルミニウム、アセチルアセトナト・ビス(プロピオニルアセトナト)アルミニウム、モノエチルアセトアセテート・ビス(アセチルアセトナト)アルミニウム、アセチルアセトナトアルミニウム・ジ-s-ブチレート、メチルアセトアセテートアルミニウム・ジ-s-ブチレート、ジ(メチルアセトアセテート)アルミニウム・モノ-tert-ブチレート、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、モノアセチルアセトナト・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタネート、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタネート、ジ-n-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタネート等のチタニウムキレート化合物;テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、テトラキス(n-プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキシレート)、ジベンジル錫ジ(2-エチルヘキシレート)、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレエート、ジブチル錫ビス(アセチルアセトネート)等の錫エステル化合物等の錫キレート化合物などが挙げられる。
これらの中でも、錫エステル化合物等の錫キレート化合物が、形成される塗膜の耐薬品性の点から適している。
【0046】
上記錫エステル化合物としては、市販品を用いることもでき、例えば、ネオスタンU-100、U-130、U-200、U-220H、U-303、U-700、U-810、U-820、U-830(以上、日東化成(株)製)、BT-120S(カネカ(株)製)等が挙げられる。
【0047】
(D)成分を配合する場合、その配合量は、組成物を硬化させるのに十分な量であればよいが、通常、(A)成分の不揮発分100質量部に対して0.01~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
なお、(D)成分の硬化触媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
(5)任意成分
本発明の塗料組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、適宜に任意の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤の具体例としては、溶剤、非反応性シリコーンオイル、反応性シリコーンオイル、(B)成分以外のシランカップリング剤等の密着付与剤、非反応性高分子樹脂、充填剤、レベリング剤、レオロジー調整剤、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、脱水剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、染料、顔料、香料、研磨剤、防錆剤、チキソトロピー付与剤等が挙げられる。
これらは、それぞれ1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶剤を配合する場合、その配合量は、(A)~(C)成分の合計不揮発分100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、2~30質量部がより好ましい。
【0050】
顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、シアニン系着色顔料、カーボンブラック、ジルコン粉末等の着色顔料;シリカ、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、タンカル等の体質顔料;リン酸亜鉛、リン・ケイ酸亜鉛、リン酸アルミニウム亜鉛、リン酸カルシウム亜鉛、リン酸カルシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸カルシウム、トリポリリン酸二水素アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸カルシウム、酸化亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、亜鉛、酸化亜鉛、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、ホウ酸塩系、メタホウ酸バリウム、シアナミド亜鉛カルシウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム;カルシウム、亜鉛、コバルト、鉛、ストロンチウム、バリウム等のカチオンを多孔質シリカ粒子に結合させた変性シリカ、カチオンをイオン交換によって結合させることにより得られるイオン交換シリカ、ピロリン酸アルミニウム、五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム、メタバナジン酸アンモニウム等のバナジウム系化合物等の防錆顔料等が挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
本発明の塗料組成物に顔料を配合する場合、その配合量は、形成される塗膜の耐候性の観点から、(A)~(C)成分の合計不揮発分100質量部に対して、不揮発分質量で5~100質量部が好ましく、30~90質量部がより好ましい。
【0052】
(6)製造方法
本発明の塗料組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、必要に応じて(D)成分および任意成分を、任意の順序で混合し、撹拌して得ることができる。混合条件は、特に限定されるものではないが、作業性や塗料組成物の安定性を考慮し、10~40℃で混合することが好ましい。
【0053】
本発明の塗料組成物の粘度は、特に限定されるものではないが、成形または塗布作業性を良好にし、スジムラ等の発生を抑制することを考慮すると、回転粘度計により測定される25℃での粘度が、100,000mPa・s以下が好ましく、20,000mPa・s以下がより好ましい。粘度の下限は、特に限定されないが、10mPa・s以上が好ましい。
【0054】
(7)塗料組成物の硬化膜および被覆物品
本発明の塗料組成物を被塗物に塗布し、これを硬化させることで硬化膜および被覆物品が得られる。
塗布の方法に制限はなく、例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り、流し塗り等の公知の手法を採用できる。
本発明の塗料組成物は、加熱により硬化可能であり、加熱温度は、80~200℃が好ましく、これにより、形成した硬化塗膜が優れた硬度、耐薬品性、防汚性、耐候性を発揮することができる。
【0055】
被塗物としては、ガラスや所望により下地処理された金属素材、例えば、鋼板、亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼、アルミニウム等、アルカリ性を有する基材、例えば、コンクリート、モルタル、スレート、スレート瓦等、窯業系建材、プラスチック等、およびそれらの上に古い塗膜が形成されているものなどが挙げられる。
【0056】
本発明の塗料組成物の用途としては、特に制限されるものではないが、橋梁、送電鉄塔、プラント、タンク等の鋼製構造物の重防食塗装用途などが挙げられる。
【0057】
本発明の塗料組成物は、長期の耐候性に優れ、当該組成物単独で厳しい環境から被塗物を保護し、美観を維持する硬化膜を与えるが、必要に応じて公知の下塗りおよび/または中塗りによる層を設けてもよい。
【0058】
上記下塗り塗料としては、例えば、エポキシ樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、エポキシ樹脂系ガラスフレーク塗料、エポキシ樹脂被覆材料、超厚膜形エポキシ樹脂塗料、エポキシ樹脂ジンクリッチペイント、無機ジンクリッチペイント、塩化ゴム樹脂系塗料、フタル酸樹脂系塗料、エポキシエステル樹脂塗料等が挙げられ、中塗り塗料の例として、エポキシ樹脂系塗料、ポリウレタン系塗料、エポキシ樹脂MIO塗料、フェノール樹脂系MIO塗料、塩化ゴム樹脂系塗料、フタル酸樹脂系塗料等が挙げられる。
【実施例0059】
以下、実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、水酸基価は、JIS K 0070:1992に準拠して中和滴定法で測定した値であり、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、HLC-8220 東ソー(株)製)を用いてテトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒として測定した値であり、不揮発分は、JIS K 5601-1-2:2008に準じ、アルミニウムシャーレ上で105℃、3時間加熱乾燥後の加熱残量法による測定値であり、動粘度は、キャノン・フェンスケ型粘度計を用いて25℃で測定した値である。また、下記(C)成分における各シロキサン単位の構成比は、1H-NMRおよび29Si-NMR測定の結果から算出した。
【0060】
[1]塗料組成物の製造
[実施例1-1~1-7,比較例1-1~1-4]
表1に示す組成比(質量比)で下記各成分を25℃で混合し、塗料組成物(i)~(xi)を製造した。
<(A)成分>
(A-1):アクリディックA-801P(アクリルポリオール、不揮発分50質量%、水酸基価50mg KOH/g、DIC(株)製)
(A-2):バーノックD-220(ポリエステルポリオール、不揮発分100質量%、水酸基価147mg KOH/g、DIC(株)製)
<(B)成分>
(B):KBM-9659(トリス-(トリメトキシリルプロピル)イソシアヌレート、信越化学工業(株)製)
<(C)成分>
(C-1):式(I)においてa=0.8、b=0.2、c=0、d=0、e=0.26、R1=メチル基、フェニル基(R1の全数のうちフェニル基の数が占める割合:20%)、R2=メチル基で表されるオルガノポリシロキサン(不揮発分:87質量%、重量平均分子量1,000、25℃における動粘度5mm2/s、信越化学工業(株)製)
(C-2):式(I)においてa=0.1、b=0.6、c=0.3、d=0、e=0.24、R1=メチル基、フェニル基(R1の全数のうちフェニル基の数が占める割合:30%)、R2=メチル基で表されるオルガノポリシロキサン(不揮発分:96質量%、重量平均分子量1,800、25℃における動粘度100mm2/s、信越化学工業(株)製)
<(D)成分>
(D):ネオスタンU-830(ジオクチル錫、日東化成(株)製)
<(E)成分>
(E):酢酸エチル/酢酸ブチル混合溶剤(質量比1:1)
【0061】
【表1】
【0062】
[2]被覆物品の製造および評価
[実施例2-1~2-7,比較例2-1~2-4]
実施例1-1~1-7、比較例1-1~1-4で得られた塗料組成物(i)~(xi)をフローコートにより乾燥塗膜厚が30μmとなるように金属基板上に塗布し、150℃で1時間加熱して被膜を得た。
得られた被覆物品について、塗膜外観、ラビング試験、鉛筆硬度、防汚性試験、促進耐候性の評価を行った。結果を表2に示す。
(1)塗膜外観
目視にて、塗膜表面が均一で、凝集物による凹凸やクラックが入っていないものを○、塗膜表面が不均一で、白化や凝集物による凹凸やクラックが発生したものを×とした。
(2)ラビング試験
アセトンをベンコットM-3II(面積4cm2、旭化成(株)製)に浸し、荷重500gfで表面を往復回数30回塗擦し、ラビング試験後に、目視での塗膜外観を評価した。
○:試験前の塗膜外観と比べて大きな変化が見られない。
△:試験前の塗膜外観と比べてやや剥がれや白色化が見られた。
×:試験前の塗膜外観と比べて著しく剥がれや白色化が見られた。
(3)鉛筆硬度
JIS K 5600-5-4に準じて750g荷重にて測定した。硬度は、F以上を合格とした。
(4)防汚性試験
試験面に、油性マジックペン(有機溶媒型マーカー、商品名:マッキー極細、ゼブラ(株)製)で線を描き、3時間放置した後、エタノール:トルエン(質量比で1:1)の混合溶媒を浸したベンコットM-3II(面積4cm2、旭化成(株)製)で拭き取れるか否かを評価した。試験終了後の、塗膜に残ったインクの量を目視によって観察し、3段階で評価した。
○:現状試験片と比べて大きな変化が見られない。
△:現状試験片と比べてややインクが残る。
×:現状試験片と比べて著しくインクが残る。
(5)促進耐候性
促進耐候性試験は、超促進耐候試験機(アイスーパーUVテスター、岩崎電気(株)製)を用いて行った。また、試験片にはポリエステル塗装鋼板(0.8mm×70mm×60mm)を用いた。試験条件としては、3時間照射(紫外線照射度90mW、ブラックパネル温度63℃,70%RH)、4時間暗黒(ブラックパネル温度63℃,70%RH)、3時間結露(ブラックパネル温度30℃,90%RH)の10時間を1サイクルとし、30サイクル試験した。試験終了後、塗膜の膨れ、割れ、剥がれ、艶の変化を目視によって観察し、3段階で評価した。
○:現状試験片と比べて大きな変化が見られない。
△:現状試験片と比べてやや艶引けがある。
×:現状試験片と比べて著しい艶引け、割れ、剥がれがある。
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示されるように、実施例2-1~2-7で得られた硬化膜は、耐薬品性、硬度、防汚性および耐候性に優れていることがわかる。
一方で、(B)成分の配合量が不足した組成物を用いた比較例2-1の硬化膜においては、耐薬品性、防汚性および耐候性が不十分であり、(B)成分を過剰に配合した組成物を用いた比較例2-3の塗膜においては、硬度が劣る結果となった。
また、(C)成分の配合量が不足した組成物を用いた比較例2-2の塗膜においては、耐薬品性、硬度、防汚性および耐候性が不十分であり、(C)成分が過剰に配合された組成物を用いた比較例2-4の塗膜においては、塗膜表面が不均一であり、耐薬品性および耐候性が劣る結果となった。