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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063526
(43)【公開日】2023-05-09
(54)【発明の名称】エッチング方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230427BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023041775
(22)【出願日】2023-03-16
(62)【分割の表示】P 2023514954の分割
【原出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】戸村 幕樹
(72)【発明者】
【氏名】大類 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 圭恵
(72)【発明者】
【氏名】須田 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】大内田 聡
(72)【発明者】
【氏名】若生 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】木原 嘉英
(57)【要約】
【課題】プラズマエッチングにおいてマスクのエッチングに対するシリコン含有膜のエッチングの選択性を高める技術を提供する。
【解決手段】開示されるエッチング方法は、プラズマ処理装置のチャンバ内に基板を準備する工程(a)を含む。基板はシリコン含有膜を含む。エッチング方法は、チャンバ内で処理ガスから生成されたプラズマからの化学種によりシリコン含有膜をエッチングする工程(b)を更に含む。処理ガスは、フッ化水素ガス及びリン含有ガスを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)プラズマ処理装置のチャンバ内に基板を準備する工程であり、該基板はシリコン含有膜を含む、該工程と、
(b)前記チャンバ内で処理ガスから生成されたプラズマからの化学種により前記シリコン含有膜をエッチングする工程と、
を含み、
前記処理ガスは、フッ化水素ガス及びリン含有ガスを含み、
希ガスを含まない前記処理ガスにおける全てのガスの流量のうち前記フッ化水素ガスの流量が最も多いか、前記処理ガスにおける希ガスを除く全てのガスの流量のうち前記フッ化水素ガスの流量が最も多い、
エッチング方法。
【請求項2】
前記リン含有ガスは、リンの酸化物、リンのハロゲン化物、ハロゲン化ホスリル、ホスフィン、リン化カルシウム、リン酸、リン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸フルオロホスフィンのそれぞれのガスのうち一つ以上を含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記リン含有ガスは、P10、P、P、PF、PF、PCl、PCl、PBr、PBr、PI、POF、POCl、POBr、PH、Ca、HPO、NaPO、HPF、HPF、HPFのそれぞれのガスのうち一つ以上のガスを含む、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記処理ガスは、ハロゲン含有ガスを更に含む、請求項1~3の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記ハロゲン含有ガスは、Cl、Br、HCl、HBr、HI、BCl、CHCl、CFBr、CF、ClF、IF、IF、BrFのそれぞれのガスのうち一つ以上のガスを含み、ここで、x、yは1以上の整数である、請求項4に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記ハロゲン含有ガスは、炭素を含む、請求項4に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記ハロゲン含有ガスは、CHCl、CFBr、CF、Cのそれぞれのガスのうち一つ以上のガスを含み、ここで、x、y、zは1以上の整数である、請求項6に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記ハロゲン含有ガスは、CHCl、CFBrのそれぞれのガスのうち一つ以上のガスを含み、ここで、x、yは1以上の整数である、請求項5に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記ハロゲン含有ガスは、CCl、CBr、CBr、CFI、CI、CIのうちいずれか一つ以上のガスを含む、請求項6に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記処理ガスは、炭素含有ガスを更に含む、請求項1~9の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記炭素含有ガスは、その分子中の炭素原子数が一つ以上、六つ以下であるフルオロカーボン及び/又はハイドロフルオロカーボンを含む、請求項10に記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記処理ガスは、NF、O、CO、CO、N、He、Ar、Kr、Xeのそれぞれのガスのうち一つ以上のガスを更に含む、請求項1~11の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記(b)において、前記チャンバ内の圧力が0.666パスカル以上、2.666パスカル以下に設定される、請求項1~12の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項14】
前記シリコン含有膜は、シリコン酸化膜及び/又はシリコン窒化膜を含む、請求項1~13の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項15】
前記シリコン含有膜は、多結晶シリコン膜を更に含む、請求項14に記載のエッチング方法。
【請求項16】
前記基板は、前記シリコン含有膜上にマスクを有し、
該マスクは炭素含有マスク又は金属含有マスクである、
請求項1~15の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項17】
(a)プラズマ処理装置のチャンバ内に基板を準備する工程であり、該基板はシリコン含有膜を含む、該工程と、
(b)前記チャンバ内で処理ガスから生成されたプラズマからの化学種により前記シリコン含有膜をエッチングする工程と、
を含み、
前記処理ガスは、フッ化水素ガス及びリン含有ガスを含む、
エッチング方法。
【請求項18】
前記基板は、前記チャンバ内の基板支持器上に載置され、
前記(b)において、
前記基板支持器又は該基板支持器の上方に設けられた上部電極に第1の周波数を有する高周波電力が供給され、
前記基板支持器に第2の周波数を有する電気バイアスが供給される、
請求項1~17の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項19】
前記電気バイアスは、前記第2の周波数を有する高周波電力であるか、第2の周波数で周期的に発生される電圧のパルス波である、請求項18に記載のエッチング方法。
【請求項20】
前記電気バイアスのパルス波が、第3の周波数で前記基板支持器に周期的に供給される、請求項19に記載のエッチング方法。
【請求項21】
前記(b)は、前記基板支持器の温度が0℃以下に設定されてから開始される、請求項18~20の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項22】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持器と、
前記チャンバ内にガスを供給するように構成されたガス供給部と、
前記チャンバ内でガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、
前記ガス供給部及び前記プラズマ生成部を制御するように構成された制御部と、
を備え、
前記制御部は、シリコン含有膜を含む基板が前記基板支持器上に載置された状態で、前記チャンバ内で処理ガスから生成されたプラズマからの化学種により前記シリコン含有膜をエッチングする工程を実行するように構成されており、
前記処理ガスは、フッ化水素ガス及びリン含有ガスを含む、
プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、エッチング方法、処理ガス、及びプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造においては、基板のシリコン含有膜のプラズマエッチングが行われている。プラズマエッチングでは、処理ガスから生成されたプラズマを用いてシリコン含有膜のエッチングが行われる。米国特許出願公開第2016/0343580号明細書は、シリコン含有膜のプラズマエッチングに用いられる処理ガスとして、フルオロカーボンガスを含む処理ガスを開示している。特開2016-39310号公報は、シリコン含有膜のプラズマエッチングに用いられる処理ガスとして、炭化水素ガス及びハイドロフルオロカーボンガスを含む処理ガスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0343580号明細書
【特許文献2】特開2016-39310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマエッチングにおいてマスクのエッチングに対するシリコン含有膜のエッチングの選択性を高める技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、エッチング方法が提供される。エッチング方法は、プラズマ処理装置のチャンバ内に基板を準備する工程(a)を含む。基板はシリコン含有膜を含む。エッチング方法は、チャンバ内で処理ガスから生成されたプラズマからの化学種によりシリコン含有膜をエッチングする工程(b)を更に含む。処理ガスは、フッ化水素ガス及びリン含有ガスを含む。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、プラズマエッチングにおいてマスクのエッチングに対するシリコン含有膜のエッチングの選択性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一つの例示的実施形態に係るエッチング方法の流れ図である。
図2図1に示すエッチング方法が適用され得る一例の基板の部分拡大断面図である。
図3】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図4図1に示すエッチング方法が適用された一例の基板の部分拡大断面図である。
図5】一つの例示的実施形態に係るエッチング方法に関する一例のタイミングチャートである。
図6図6の(a)、図6の(b)、及び図6の(c)の各々は、炭素含有ガスの流量及びチャンバ内の圧力の例示的タイミングチャートである。
図7図7の(a)は、炭素含有ガスの流量が多い場合に得られる一例の基板の部分拡大断面図であり、図7の(b)は、炭素含有ガスの流量が少ないか炭素含有ガスが供給されない場合に得られる一例の基板の部分拡大断面図である。
図8図8の(a)は、チャンバ内の圧力が高い場合に得られる一例の基板の部分拡大断面図であり、図8の(b)は、チャンバ内の圧力が低い場合に得られる一例の基板の部分拡大断面図である。
図9】第1の実験の結果を示すグラフである。
図10】第2の実験の結果を示すグラフである。
図11図11の(a)、図11の(b)、図11の(c)はそれぞれ、第12のサンプル基板、第15のサンプル基板、及び第16のサンプル基板のプラズマエッチング後の断面写真である。
図12図12の(a)は第5の実験の結果を示すグラフであり、図12の(b)は第6の実験の結果を示すグラフである。
図13】第7の実験の結果を示すグラフである。
図14】第8~第11の実験の結果を示すグラフである。
図15】第12の実験及び第13の実験で用いたサンプル基板の平面図である。
図16】第14~第18の実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、エッチング方法が提供される。エッチング方法は、プラズマ処理装置のチャンバ内に基板を準備する工程(a)を含む。基板はシリコン含有膜及びマスクを含む。マスクは、シリコン含有膜上に設けられている。エッチング方法は、チャンバ内で処理ガスから生成されたプラズマからの化学種によりシリコン含有膜をエッチングする工程(b)を更に含む。処理ガスは、フッ化水素ガス及び炭素含有ガスを含む。希ガスを含まない処理ガスにおける全てのガスの流量のうちフッ化水素ガスの流量が最も多い。或いは、処理ガスにおける希ガスを除く全てのガスの流量のうちフッ化水素ガスの流量が最も多い。
【0010】
上記実施形態では、炭素含有ガスから生成される炭素化学種がマスク上に堆積して、マスクを保護する。また、フッ化水素から生成されるエッチャントは、その質量は小さいが、シリコン含有膜のエッチング能力に優れる。したがって、上記実施形態によれば、マスクのエッチングに対するシリコン含有膜のエッチングの選択性が高くなる。
【0011】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、リン含有ガスを更に含んでいてもよい。これにより、シリコン含有膜のエッチングレートがより高くなり、結果的にマスクのエッチングに対するシリコン含有膜のエッチングの選択性が高くなる。
【0012】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、アミン系ガスを更に含んでいてもよい。これにより、シリコン含有膜のエッチングレートがより高くなり、結果的にマスクのエッチングに対するシリコン含有膜のエッチングの選択性が高くなる。
【0013】
一つの例示的実施形態において、炭素含有ガスは、その分子中の炭素原子数が一つ以上、六つ以下であるフルオロカーボン及び/又はハイドロフルオロカーボンを含んでいてもよい。
【0014】
一つの例示的実施形態では、工程(b)において、炭素含有ガスの流量が段階的に減少されてもよい。一つの例示的実施形態では、工程(b)において、チャンバ内の圧力が0.666パスカル以上、2.666パスカル以下に設定されてもよい。
【0015】
一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理方法は、プラズマ処理装置のチャンバ内に基板を準備する工程(a)を含む。基板はシリコン含有膜及びマスクを含む。マスクは、シリコン含有膜上に設けられている。エッチング方法は、チャンバ内で処理ガスから生成されたプラズマからの化学種によりシリコン含有膜をエッチングする工程(b)を更に含む。処理ガスは、フッ化水素ガスを含み、リン含有ガス又はアミン系ガスを更に含む。希ガスを含まない処理ガスにおける全てのガスの流量のうちフッ化水素ガスの流量が最も多い。或いは、処理ガスにおける希ガスを除く全てのガスの流量のうちフッ化水素ガスの流量が最も多い。
【0016】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、NF、O、CO、CO、N、He、Ar、Kr、Xeのそれぞれのガスのうち一つ以上のガスを更に含んでいてもよい。
【0017】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、ハロゲン含有ガスを更に含んでいてもよい。ハロゲン含有ガスは、Cl、Br、HCl、HBr、HI、BCl、CHCl、CFBr、CF、ClF、IF、IF、BrFのそれぞれのガスのうち一つ以上のガスを含んでいてもよい。ここで、x、yは1以上の整数である。
【0018】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、ヨウ素含有ガスを更に含んでいてもよい。ヨウ素含有ガスは、HI、IF、及びCのうち一つ以上を含んでいてもよい。ここで、t、x、y、zは、1以上の整数である。
【0019】
一つの例示的実施形態では、工程(b)において、チャンバ内の圧力が段階的に減少されてもよい。
【0020】
一つの例示的実施形態において、シリコン含有膜は、シリコン酸化膜及び/又はシリコン窒化膜を含んでいてもよい。シリコン含有膜は、多結晶シリコン膜を更に含んでいてもよい。一つの例示的実施形態において、マスクは炭素含有マスクであってもよい。
【0021】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0022】
図1は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法の流れ図である。図1に示すエッチング方法(以下、「方法MT」という)は、シリコン含有膜を有する基板に適用される。方法MTでは、シリコン含有膜がエッチングされる。
【0023】
図2は、図1に示すエッチング方法が適用され得る一例の基板の部分拡大断面図である。図2に示す基板Wは、DRAM、3D-NANDのようなデバイスの製造に用いられ得る。基板Wは、膜SF及びマスクMKを有する。基板Wは、下地領域URを更に有していてもよい。膜SFは、下地領域UR上に設けられ得る。マスクMKは、膜SF上に設けられている。
【0024】
膜SFは、シリコン含有膜である。即ち、膜SFは、シリコンを含有する。膜SFは、単層膜であってもよく、多層膜であってもよい。膜SFは、単層膜である場合には、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、多結晶シリコン膜のようなシリコン膜、SiC膜のような炭素含有シリコン膜、又は低誘電率膜である。低誘電率膜は、例えば層間絶縁膜として用いられる膜であり、SiOC、SiOF、SiCOH等から形成される。膜SFは、多層膜である場合には、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜のうち少なくとも一方を含む。膜SFは、多層膜である場合に、多結晶シリコン膜を更に含んでいてもよい。膜SFは、複数のシリコン酸化膜及び複数のシリコン窒化膜の交互の積層を含んでいてもよい。膜SFは、複数のシリコン酸化膜及び複数のシリコン膜(例えば、多結晶シリコン膜)の交互の積層を含んでいてもよい。膜SFは、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、及び多結晶シリコン膜を含んでいてもよい。
【0025】
マスクMKは、工程STbにおける膜SFのエッチングレートよりも低いエッチングレートを有する材料から形成される。マスクMKは、有機材料から形成され得る。即ち、マスクMKは、炭素含有マスクであってもよい。マスクMKは、例えば、アモルファスカーボン膜、フォトレジスト膜、スピンオンカーボン膜(SOC膜)、又は炭化ホウ素膜から形成され得る。或いは、マスクMKは、シリコン含有反射防止膜のようなシリコン含有膜から形成されてもよい。或いは、マスクMKは、窒化チタン、酸化チタン、タングステン、炭化タングステンのような金属含有材料から形成された金属含有マスクであってもよい。マスクMKは、3μm以上の厚みを有し得る。
【0026】
マスクMKは、パターニングされている。即ち、マスクMKは、工程STbにおいて膜SFに転写されるパターンを有している。マスクMKのパターンが膜SFに転写されると、膜SFにはホール又はトレンチのような凹部が形成される。工程STbにおいて膜SFに形成される凹部のアスペクト比は20以上であってよく、30以上、40以上、又は50以上であってもよい。なお、マスクMKは、ラインアンドスペースパターンを有していてもよい。
【0027】
方法MTでは、膜SFのエッチングのためにプラズマ処理装置が用いられる。図3は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図3に示すプラズマ処理装置1は、チャンバ10を備える。チャンバ10は、その中に内部空間10sを提供する。チャンバ10はチャンバ本体12を含む。チャンバ本体12は、略円筒形状を有する。チャンバ本体12は、例えばアルミニウムから形成される。チャンバ本体12の内壁面上には、耐腐食性を有する膜が設けられている。耐腐食性を有する膜は、酸化アルミニウム、酸化イットリウムなどのセラミックから形成され得る。
【0028】
チャンバ本体12の側壁には、通路12pが形成されている。基板Wは、通路12pを通して内部空間10sとチャンバ10の外部との間で搬送される。通路12pは、ゲートバルブ12gにより開閉される。ゲートバルブ12gは、チャンバ本体12の側壁に沿って設けられる。
【0029】
チャンバ本体12の底部上には、支持部13が設けられている。支持部13は、絶縁材料から形成される。支持部13は、略円筒形状を有する。支持部13は、内部空間10sの中で、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。支持部13は、基板支持器14を支持している。基板支持器14は、内部空間10sの中で基板Wを支持するように構成されている。
【0030】
基板支持器14は、下部電極18及び静電チャック20を有する。基板支持器14は、電極プレート16を更に有し得る。電極プレート16は、アルミニウムなどの導体から形成されており、略円盤形状を有する。下部電極18は、電極プレート16上に設けられている。下部電極18は、アルミニウムなどの導体から形成されており、略円盤形状を有する。下部電極18は、電極プレート16に電気的に接続されている。
【0031】
静電チャック20は、下部電極18上に設けられている。基板Wは、静電チャック20の上面の上に載置される。静電チャック20は、本体及び電極を有する。静電チャック20の本体は、略円盤形状を有し、誘電体から形成される。静電チャック20の電極は、膜状の電極であり、静電チャック20の本体内に設けられている。静電チャック20の電極は、スイッチ20sを介して直流電源20pに接続されている。静電チャック20の電極に直流電源20pからの電圧が印加されると、静電チャック20と基板Wとの間に静電引力が発生する。基板Wは、その静電引力によって静電チャック20に引き付けられて、静電チャック20によって保持される。
【0032】
基板支持器14上には、エッジリング25が配置される。エッジリング25は、リング状の部材である。エッジリング25は、シリコン、炭化シリコン、又は石英などから形成され得る。基板Wは、静電チャック20上、且つ、エッジリング25によって囲まれた領域内に配置される。
【0033】
下部電極18の内部には、流路18fが設けられている。流路18fには、チャンバ10の外部に設けられているチラーユニットから配管22aを介して熱交換媒体(例えば冷媒)が供給される。流路18fに供給された熱交換媒体は、配管22bを介してチラーユニットに戻される。プラズマ処理装置1では、静電チャック20上に載置された基板Wの温度が、熱交換媒体と下部電極18との熱交換により、調整される。
【0034】
プラズマ処理装置1には、ガス供給ライン24が設けられている。ガス供給ライン24は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス(例えばHeガス)を、静電チャック20の上面と基板Wの裏面との間の間隙に供給する。
【0035】
プラズマ処理装置1は、上部電極30を更に備える。上部電極30は、基板支持器14の上方に設けられている。上部電極30は、部材32を介して、チャンバ本体12の上部に支持されている。部材32は、絶縁性を有する材料から形成される。上部電極30と部材32は、チャンバ本体12の上部開口を閉じている。
【0036】
上部電極30は、天板34及び支持体36を含み得る。天板34の下面は、内部空間10sの側の下面であり、内部空間10sを画成する。天板34は、発生するジュール熱の少ない低抵抗の導電体又は半導体から形成され得る。天板34は、天板34をその板厚方向に貫通する複数のガス吐出孔34aを有する。
【0037】
支持体36は、天板34を着脱自在に支持する。支持体36は、アルミニウムなどの導電性材料から形成される。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。支持体36は、ガス拡散室36aから下方に延びる複数のガス孔36bを有する。複数のガス孔36bは、複数のガス吐出孔34aにそれぞれ連通している。支持体36には、ガス導入口36cが形成されている。ガス導入口36cは、ガス拡散室36aに接続している。ガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0038】
ガス供給管38には、流量制御器群41及びバルブ群42を介して、ガスソース群40が接続されている。流量制御器群41及びバルブ群42は、ガス供給部を構成している。ガス供給部は、ガスソース群40を更に含んでいてもよい。ガスソース群40は、複数のガスソースを含む。複数のガスソースは、方法MTで用いられる処理ガスのソースを含む。流量制御器群41は、複数の流量制御器を含む。流量制御器群41の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。バルブ群42は、複数の開閉バルブを含む。ガスソース群40の複数のガスソースの各々は、流量制御器群41の対応の流量制御器及びバルブ群42の対応の開閉バルブを介して、ガス供給管38に接続されている。
【0039】
プラズマ処理装置1では、チャンバ本体12の内壁面及び支持部13の外周に沿って、シールド46が着脱自在に設けられている。シールド46は、チャンバ本体12に反応副生物が付着することを防止する。シールド46は、例えば、アルミニウムから形成された母材の表面に耐腐食性を有する膜を形成することにより構成される。耐腐食性を有する膜は、酸化イットリウム等のセラミックから形成され得る。
【0040】
支持部13とチャンバ本体12の側壁との間には、バッフルプレート48が設けられている。バッフルプレート48は、例えば、アルミニウムから形成された部材の表面に耐腐食性を有する膜(酸化イットリウムなどの膜)を形成することにより構成される。バッフルプレート48には、複数の貫通孔が形成されている。バッフルプレート48の下方、且つ、チャンバ本体12の底部には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、圧力調整弁及びターボ分子ポンプなどの真空ポンプを含む。
【0041】
プラズマ処理装置1は、高周波電源62及びバイアス電源64を備えている。高周波電源62は、高周波電力HFを発生する電源である。高周波電力HFは、プラズマの生成に適した第1の周波数を有する。第1の周波数は、例えば27MHz~100MHzの範囲内の周波数である。高周波電源62は、整合器66及び電極プレート16を介して下部電極18に接続されている。整合器66は、高周波電源62の負荷側(下部電極18側)のインピーダンスを高周波電源62の出力インピーダンスに整合させるための回路を有する。なお、高周波電源62は、整合器66を介して、上部電極30に接続されていてもよい。高周波電源62は、一例のプラズマ生成部を構成している。
【0042】
バイアス電源64は、電気バイアスを発生する電源である。バイアス電源64は、下部電極18に電気的に接続されている。電気バイアスは、第2の周波数を有する。第2の周波数は、第1の周波数よりも低い。第2の周波数は、例えば400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数である。電気バイアスは、高周波電力HFと共に用いられる場合には、基板Wにイオンを引き込むために基板支持器14(一例では、下部電極18)に与えられる。電気バイアスが下部電極18に与えられると、基板支持器14上に載置された基板Wの電位は、第2の周波数で規定される周期内で変動する。なお、電気バイアスは、下部電極18以外の基板支持器14の電極、例えば静電チャック20の中に設けられた電極に与えられてもよい。
【0043】
一実施形態において、電気バイアスは、第2の周波数を有する高周波電力LFであってもよい。高周波電力LFは、高周波電力HFと共に用いられる場合には、基板Wにイオンを引き込むための高周波バイアス電力として用いられる。高周波電力LFを発生するように構成されたバイアス電源64は、整合器68及び電極プレート16を介して下部電極18に接続される。整合器68は、バイアス電源64の負荷側(下部電極18側)のインピーダンスをバイアス電源64の出力インピーダンスに整合させるための回路を有する。
【0044】
なお、高周波電力HFを用いずに、高周波電力LFを用いて、即ち、単一の高周波電力のみを用いてプラズマを生成してもよい。この場合には、高周波電力LFの周波数は、13.56MHzよりも大きな周波数、例えば40MHzであってもよい。また、この場合には、プラズマ処理装置1は、高周波電源62及び整合器66を備えなくてもよい。この場合には、バイアス電源64は一例のプラズマ生成部を構成する。
【0045】
別の実施形態において、電気バイアスは、電圧のパルス波であってもよい。電圧のパルス波は、周期的に発生されて、下部電極18に与えられる。電圧のパルス波の周期は、第2の周波数で規定される。即ち、電圧のパルス波の周期の時間長は、第2の周波数の逆数である。電圧のパルス波は、直流電圧のパルス波であってもよい。直流電圧のパルス波の周期は、二つの期間を含む。二つの期間のうち一方の期間における直流電圧は、例えば負極性の直流電圧であり、当該一方の期間において基板Wの電位を負の電位に設定する。二つの期間のうち一方の期間における直流電圧のレベル(即ち、絶対値)は、二つの期間のうち他方の期間における直流電圧のレベル(即ち、絶対値)よりも高い。他方の期間における直流電圧は、負極性、正極性の何れであってもよい。他方の期間における負極性の直流電圧のレベルは、ゼロよりも大きくてもよく、ゼロであってもよい。この実施形態において、バイアス電源64は、ローパスフィルタ及び電極プレート16を介して下部電極18に接続される。なお、電気バイアスとして用いられるパルス波は、直流以外の波形を有するパルス状の電圧を含んでいてもよい。電気バイアスとして用いられるパルス波は、矩形パルス、三角波パルス、インパルス、又は他の任意の波形のパルスを含んでいてもよい。また、パルス波が正の電圧及び負の電圧を含む場合には、バイアス電源64は一つ以上の電源から構成されてもよい。
【0046】
一実施形態において、バイアス電源64は、電気バイアスの連続波を下部電極18に与えてもよい。即ち、バイアス電源64は、電気バイアスを連続的に下部電極18に与えてもよい。電気バイアスの連続波は、方法MTの工程STbが実行されている期間において、下部電極18に与えられ得る。
【0047】
別の実施形態において、バイアス電源64は、電気バイアスのパルス波を下部電極18に与えてもよい。電気バイアスのパルス波は、周期的に下部電極18に与えられ得る。電気バイアスのパルス波の周期は、第3の周波数で規定される。即ち、電気バイアスのパルス波の周期の時間長は、第3の周波数の逆数である。第3の周波数は、第2の周波数よりも低い。第3の周波数は、例えば1Hz以上、200kHz以下である。他の例では、第3の周波数は、5Hz以上、100kHz以下であってもよい。
【0048】
電気バイアスのパルス波の周期は、二つの期間、即ちH期間及びL期間を含む。H期間における電気バイアスのレベル(即ち、電気バイアスのパルスのレベル)は、L期間における電気バイアスのレベルよりも高い。即ち、電気バイアスのレベルが増減されることにより、電気バイアスのパルス波が下部電極18に与えられてもよい。L期間における電気バイアスのレベルは、ゼロよりも大きくてもよい。或いは、L期間における電気バイアスのレベルは、ゼロであってもよい。即ち、電気バイアスのパルス波は、電気バイアスの下部電極18への供給と供給停止とを交互に切り替えることにより、下部電極18に与えられてもよい。ここで、電気バイアスが高周波電力LFである場合には、電気バイアスのレベルは、高周波電力LFの電力レベルである。電気バイアスが高周波電力LFである場合には、電気バイアスのパルスにおける高周波電力LFのレベルは、2kW以上であってもよい。電気バイアスが負極性の直流電圧のパルス波である場合には、電気バイアスのレベルは、負極性の直流電圧の絶対値の実効値である。電気バイアスのパルス波のデューティ比、即ち、電気バイアスのパルス波の周期においてH期間が占める割合は、例えば1%以上、80%以下である。別の例では、電気バイアスのパルス波のデューティ比は5%以上50%以下であってよい。或いは、電気バイアスのパルス波のデューティ比は、50%以上、99%以下であってもよい。電気バイアスのパルス波は、方法MTの工程STbを実行するために、下部電極18に与えられ得る。
【0049】
一実施形態において、高周波電源62は、高周波電力HFの連続波を供給してもよい。即ち、高周波電源62は、高周波電力HFを連続的に供給してもよい。高周波電力HFの連続波は、方法MTの工程STbが実行されている期間において、供給され得る。
【0050】
別の実施形態において、高周波電源62は、高周波電力HFのパルス波を供給してもよい。高周波電力HFのパルス波は、周期的に供給され得る。高周波電力HFのパルス波の周期は、第4の周波数で規定される。即ち、高周波電力HFのパルス波の周期の時間長は、第4の周波数の逆数である。第4の周波数は、第2の周波数よりも低い。一実施形態において、第4の周波数は、第3の周波数と同じである。高周波電力HFのパルス波の周期は、二つの期間、即ちH期間及びL期間を含む。H期間における高周波電力HFの電力レベルは、二つの期間のうちL期間における高周波電力HFの電力レベルよりも高い。L期間における高周波電力HFの電力レベルは、ゼロよりも大きくてもよく、ゼロであってもよい。
【0051】
なお、高周波電力HFのパルス波の周期は、電気バイアスのパルス波の周期と同期していてもよい。高周波電力HFのパルス波の周期におけるH期間は、電気バイアスのパルス波の周期におけるH期間と同期していてもよい。或いは、高周波電力HFのパルス波の周期におけるH期間は、電気バイアスのパルス波の周期におけるH期間と同期していなくてもよい。高周波電力HFのパルス波の周期におけるH期間の時間長は、電気バイアスのパルス波の周期におけるH期間の時間長と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0052】
プラズマ処理装置1においてプラズマ処理が行われる場合には、ガスがガス供給部から内部空間10sに供給される。また、高周波電力HF及び/又は電気バイアスが供給されることにより、上部電極30と下部電極18との間で高周波電界が生成される。生成された高周波電界が内部空間10sの中のガスからプラズマを生成する。
【0053】
プラズマ処理装置1は、制御部80を更に備え得る。制御部80は、プロセッサ、メモリなどの記憶部、入力装置、表示装置、信号の入出力インターフェイス等を備えるコンピュータであり得る。制御部80は、プラズマ処理装置1の各部を制御する。制御部80では、入力装置を用いて、オペレータがプラズマ処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができる。また、制御部80では、表示装置により、プラズマ処理装置1の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、記憶部には、制御プログラム及びレシピデータが格納されている。制御プログラムは、プラズマ処理装置1で各種処理を実行するために、プロセッサによって実行される。プロセッサは、制御プログラムを実行し、レシピデータに従ってプラズマ処理装置1の各部を制御する。
【0054】
再び図1を参照する。以下、方法MTについて、それがプラズマ処理装置1を用いて図2に示す基板Wに適用される場合を例にとって、説明する。プラズマ処理装置1が用いられる場合には、制御部80によるプラズマ処理装置1の各部の制御により、プラズマ処理装置1において方法MTが実行され得る。以下の説明においては、方法MTの実行のための制御部80によるプラズマ処理装置1の各部の制御についても説明する。
【0055】
以下の説明では、図1に加えて、図4を参照する。図4は、図1に示すエッチング方法が適用された一例の基板の部分拡大断面図である。
【0056】
図1に示すように、方法MTは、工程STaで開始する。工程STaでは、基板Wがチャンバ10内に準備される。基板Wは、チャンバ10内において静電チャック20上に載置されて、静電チャック20によって保持される。なお、基板Wは300mmの直径を有し得る。
【0057】
方法MTでは、次いで、工程STbが実行される。工程STbでは、プラズマが、チャンバ10内で処理ガスから生成される。工程STbでは、膜SFが、プラズマからの化学種によりエッチングされる。図4に示すように、膜SFは、下地領域URが露出するまで工程STbにおいてエッチングされ得る。
【0058】
工程STbで用いられる処理ガスは、エッチャントガスとして、フッ化水素ガスを含む。フッ化水素から生成されるエッチャントは、その質量は小さいが、膜SFのエッチング能力に優れる。したがって、マスクMKのエッチングに対する膜SFのエッチングの選択性が高くなる。
【0059】
工程STbにおいて、処理ガスは、希ガスを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。希ガスを含まない処理ガスにおけるフッ化水素ガスの流量は、当該処理ガスにおける全てのガスの流量のうちで最も多い。或いは、処理ガスにおけるフッ化水素ガスの流量は、処理ガスにおける希ガスを除く全てのガスの流量のうちで最も多い。
【0060】
具体的に、工程STbにおけるフッ化水素ガスの流量は、希ガスを含まない処理ガス又は希ガスを除いた処理ガスの全流量に対して、70体積%以上、80体積%以上、85体積%以上、90体積%以上、又は95体積%以上であってもよい。なお、処理ガスが炭素含有ガス等の他のガスを更に含む場合には、フッ化水素ガスの流量は、希ガスを含まない処理ガス又は希ガスを除いた処理ガスの全流量に対して、100体積%未満、99.5体積%以下、98体積%以下、又は96体積%以下であってもよい。
【0061】
一例では、フッ化水素ガスの流量は、希ガスを含まない処理ガス又は希ガスを除いた処理ガスの全流量に対して、70体積%以上、96体積%以下に調整される。処理ガス中のフッ化水素ガスの流量をこのような範囲内の流量に制御することにより、マスクMKのエッチングを抑制しつつ、高いエッチングレートで膜SFをエッチングすることができる。例えば、マスクMKのエッチングに対する膜SFのエッチングの選択比は、5以上の高い選択比となる。その結果、3次元構造を有するNANDフラッシュメモリの製造プロセスのように高いアスペクト比が要求されるプロセスにおいても、実効性のある速度で膜SFをエッチングすることができる。また、このような高い選択比に起因して、炭素含有ガス等の堆積性ガスの添加量を抑制することができるため、マスクMKの開口が閉塞するリスクを低減することができる。
【0062】
工程STbで用いられる処理ガスは、炭素含有ガスを更に含んでいてもよい。炭素含有ガスから生成される炭素化学種は、マスクMK上に堆積して、マスクを保護する。したがって、マスクMKのエッチングに対する膜SFのエッチングの選択性が更に高められる。
【0063】
炭素含有ガスは、例えば、ハイドロカーボン(C)ガス、フルオロカーボンガス(C)、及びハイドロフルオロカーボン(C)ガスからなる群から選択される少なくとも一種を含む。ここで、x、y、s、t、u、v、wの各々は1以上の整数である。炭素含有ガスは、その分子中の炭素原子数が一つ以上、六つ以下であるフルオロカーボン及び/又はハイドロフルオロカーボンを含んでいてもよい。なお、二つ以上の炭素原子を含む炭素含有ガスが用いられる場合には、マスクMK及び膜SFにおいて凹部を画成する側壁面の保護効果がより大きくなり得る。また、ハイドロフルオロカーボンガスからはフッ化水素が生成されるので、ハイドロフルオロカーボンガスは炭素含有物質によるマスクMKの保護に加えて、膜SFのエッチングレートの向上に寄与する。
【0064】
フルオロカーボンガスとしては、例えば、CF、C、C、C、C、C、Cのそれぞれのガスのうち一つ以上を用いることができる。ハイドロフルオロカーボンガスとしては、例えば、CHF、CH、CHF、CHF、C、C、C、CHF、C、C、C、C、C、C、C10、c-C、Cのそれぞれのガスのうち一つ以上を用いることができる。ハイドロカーボンガスとしては、例えば、CH、C、C、C、C10のそれぞれのガスのうち一つ以上を用いることができる。
【0065】
一例では、炭素含有ガスとして、炭素数が2以上のフルオロカーボンのガス及び/又は炭素数が2以上のハイドロフルオロカーボンのガスを用いることができる。炭素数が2以上のフルオロカーボンのガス及び/又は炭素数が2以上のハイドロフルオロカーボンのガスを用いる場合には、ボーイング等の形状異常を効果的に抑制できる。なお、炭素数が3以上のフルオロカーボンのガス及び/又は炭素数が3以上のハイドロフルオロカーボンのガスを用いることにより、形状異常を更に抑制することができる。炭素数が3以上のフルオロカーボンのガスとしては、例えば、C又はCを使用することができる。炭素数が3以上のハイドロフルオロカーボンのガスは、不飽和結合を含んでいてもよく、1以上のCF基を含んでもよい。炭素数が3以上のハイドロフルオロカーボンのガスとしては、例えば、C、C、又はCを用いることができる。
【0066】
工程STbで用いられる処理ガスは、リン含有ガス又はNHガスのようなアミン系ガスを含んでいてもよい。リン化学種又はアミン系の化学種が基板W上に存在している状態では、凹部の底へのエッチャントの供給が促進される。したがって、膜SFのエッチングレートが高くなり、結果的にマスクMKのエッチングに対する膜SFのエッチングの選択性が高くなる。なお、リン含有ガスから生成されるリン化学種は、マスクMK及び膜SFの凹部を画成する側壁の保護効果も有する。
【0067】
リン含有ガスは、少なくとも一種のリン含有分子を含む。リン含有ガスは、十酸化四リン(P10)、八酸化四リン(P)、六酸化四リン(P)のような酸化物を含んでいてもよい。十酸化四リンは、五酸化二リン(P)と呼ばれることがある。リン含有ガスは、三フッ化リン(PF)、五フッ化リン(PF)、三塩化リン(PCl)、五塩化リン(PCl)、三臭化リン(PBr)、五臭化リン(PBr)、ヨウ化リン(PI)のようなハロゲン化物を含んでいてもよい。即ち、リン含有ガスは、ハロゲン元素としてフッ素又はフッ素以外のハロゲン元素を含んでいてもよい。リン含有ガスは、フッ化ホスホリル(POF)、塩化ホスホリル(POCl)、臭化ホスホリル(POBr)のようなハロゲン化ホスホリルを含んでいてもよい。リン含有ガスは、ホスフィン(PH)、リン化カルシウム(Ca等)、リン酸(HPO)、リン酸ナトリウム(NaPO)、ヘキサフルオロリン酸(HPF)等を含んでいてもよい。リン含有ガスは、フルオロホスフィン類(HPF)を含んでいてもよい。ここで、xとyの和は、3又は5である。リン含有ガスは、フッ化リンを含んでいてもよい。フッ化リンの一例は、PF又はPFを含んでいてもよい。フルオロホスフィン類としては、HPF、HPFが例示される。処理ガスは、少なくとも一種のリン含有分子として、上記のリン含有分子のうち一種以上のリン含有分子を含み得る。また、処理ガスは、リン含有ガスとして、例えば、PF、PCl、PF,PCl,POCl、PH、PBr、PBrのそれぞれのガスのうち少なくとも一つのガスを含んでいてもよい。なお、処理ガスに含まれる各リン含有分子は、それが液体又は固体である場合には、加熱等によって気化されてチャンバ10内に供給され得る。
【0068】
工程STbで用いられる処理ガスは、NF、O、CO、CO、N、He、Ar、Kr、Xeのそれぞれのガスのうち一つ以上のガスを含んでいてもよい。これらのガスから生成される化学種は、マスクMKの開口の閉塞を抑制するか、マスクMKの側壁の垂直性を高め得る。
【0069】
また、工程STbで用いられる処理ガスは、酸素含有ガスを含んでいてもよい。酸素含有ガスは、O、CO、CO、HO、Hのそれぞれのガスのうち一つ以上を含み得る。
【0070】
工程STbで用いられる処理ガスは、ハロゲン含有ガスを含んでいてもよい。ハロゲン含有ガスによれば、膜SFの側壁のボーイングが抑制される。
【0071】
工程STbで用いられる処理ガスにおけるハロゲン含有ガスは、炭素を含まないフッ素含有ガス、塩素含有ガス、臭素含有ガス、又はヨウ素含有ガスのうち一つ以上を含む。
【0072】
炭素を含まないフッ素含有ガスは、例えば、SF、NF、XeF、SiF、IF、ClF、BrF、AsF、NF、PF、PF、POF、BF、HPF、WF等のそれぞれのガスのうち一つ以上を含む。
【0073】
塩素含有ガスは、Cl、HCl、CHCl、ClF、SiCl、SiCl、CCl、BCl、PCl、PCl、POCl等のそれぞれのガスのうち一つ以上を含む。ここで、x、yは1以上の整数である。
【0074】
臭素含有ガスは、Br、HBr、BrF、CBr、CFBr、PBr、PBr、POBr等のそれぞれのガスのうち一つ以上のガスを含む。ここで、x、yは1以上の整数である。CFBrは、例えばCBrである。
【0075】
ヨウ素含有ガスは、HI、IF、C、I、PIのそれぞれのガスのうち一つ以上を含んでいてもよい。ここで、t、x、y、zは、1以上の整数である。IFは、例えばIF、IF等である。CFは、例えばCFI、CI、CI等である。ヨウ素含有ガスは、例えばCFIガスである。ヨウ素含有ガスは、凹部の側壁を保護する機能に加えて、マスクMKの側壁面の垂直性を高めることに寄与し得る。なお、ヨウ素の質量に近い質量を有するXeガスも、マスクMKの側壁面の垂直性を高めることに寄与し得る。したがって、ヨウ素含有ガスは、Xeガスと共に、或いは、Xeガスに加えて用いられ得る。なお、処理ガスは、ヨウ素含有ガスに代えて、或いは、ヨウ素含有ガスに加えて、WFガスを含んでいてもよい。
【0076】
一実施形態において、工程STbで用いられる処理ガスにおけるハロゲン含有ガスは、Cl、Br、HCl、HBr、HI、BCl、CHCl、CFBr、CF、ClF、IF、IF、BrFのそれぞれのガスのうち一つ以上のガスを含んでいてもよい。ここで、x、yは1以上の整数である。
【0077】
処理ガスは、不活性ガスを更に含んでいてもよい。不活性ガスとしては、窒素ガス、並びに、Arガス、Krガス、及びXeガス等の種々の希ガスのうち一つ以上を含む。
【0078】
工程STbの実行のために、制御部80は、処理ガスをチャンバ10内に供給するようにガス供給部を制御する。また、制御部80は、処理ガスに含まれるフッ化水素ガスの流量を上述した流量に設定するようにガス制御部を制御する。また、制御部80は、チャンバ10内でのガスの圧力を指定された圧力に設定するように排気装置50を制御する。また、制御部80は、処理ガスからプラズマを生成するようにプラズマ生成部を制御する。プラズマ処理装置1では、制御部80は、高周波電力HF、高周波電力LF、又は高周波電力HF及び電気バイアスを供給するように高周波電源62及びバイアス電源64を制御する。
【0079】
一実施形態では、工程STbは、基板支持器14(特に静電チャック20)の温度が、0℃以下、-40℃以下、又は-50℃以下の温度に設定されてから、開始されてもよい。工程STbにおいても、基板支持器14(特に静電チャック20)の温度は、工程STbの開始前の温度に維持されてもよく、或いは、変化してもよい。このような温度に基板Wの温度が設定されると、工程STbにおける膜SFのエッチングレートが高くなる。基板支持器14の温度を設定するために、制御部80はチラーユニットを制御し得る。なお、処理ガスが、リン含有ガスを含む場合には、処理ガス中のリン含有ガスの比率に応じて、基板支持器14の温度は、50℃以下、30℃以下、又は20℃以下の温度に設定されてもよい。
【0080】
工程STbでは、処理ガスから生成されたプラズマからのハロゲン化学種により膜SFがエッチングされる。ハロゲン化学種は、フッ化水素ガスから生成されたフッ素化学種を含む。フッ化水素は小さい分子量の分子であり、それから生成される化学種のマスクMKに対するスパッタ効果は小さいので、マスクMKのエッチングが抑制される。したがって、フッ化水素ガスから生成されるプラズマは、マスクMKのエッチングを抑制しつつ、膜SFをエッチングし得る。また、フッ化水素ガスから生成されるプラズマは、膜SFのエッチングレートを高め得る。また、炭素含有ガスから生成される化学種は、マスクMKを保護する。炭素含有ガスに含まれる分子における炭素原子の数が大きいほど、マスクMKの保護効果は高くなる。また、リン含有ガスから生成されるプラズマは、マスクMKのエッチングを抑制し得る。さらに、リン含有ガスから生成されるリン化学種が基板Wの表面に存在する状態では、凹部の底へのエッチャントの供給が促進されて、膜SFのエッチングレートが高められる。したがって、方法MTによれば、膜SFのプラズマエッチングにおいてエッチングレートが高められ、マスクMKのエッチングに対する膜SFのエッチングの選択性が高められる。また、処理ガスに含まれるリン含有ガスが上述のハロゲン元素を含む場合、及び/又は、処理ガスが上述のハロゲン含有ガスを含む場合には、膜SFのエッチングレートが更に高められる。
【0081】
また、工程STbでは、リン化学種(イオン及び/又はラジカル)が、リン含有ガスから生成されたプラズマから基板Wに供給される。リン化学種は、リンを含む保護膜を基板Wの表面上に形成してもよい。保護膜は、処理ガスに含まれる炭素及び/又は水素を更に含んでいてもよい。一実施形態では、保護膜は、処理ガスに含まれるか又は膜SFに含まれる酸素を更に含んでいてもよい。一実施形態では、保護膜は、リンと酸素の結合を含んでいてもよい。
【0082】
保護膜の形成に代えて、又は、保護膜の形成に加えて、リン化学種は、膜SFにおいて凹部を画成する側壁面において膜SFに含まれる元素とリンの結合を形成してもよい。膜SFがシリコン酸化膜を含む場合には、リン化学種は、リンと酸素の結合を膜SFの側壁面において形成する。工程STbでは、膜SFの側壁面がリン化学種により不活性化(又は不動態化)される。即ち、膜SFの側壁面のパッシベーションが行われる。
【0083】
したがって、方法MTによれば、膜SFの側壁面がエッチングされて膜SFの開口が横方向において広がること(サイドエッチング)が抑制される。
【0084】
なお、マスクMKが炭素を含有する場合には、リン化学種は、マスクMKの表面に炭素とリンの結合を形成し得る。炭素とリンの結合は、マスクMKにおける炭素間結合よりも高い結合エネルギーを有する。したがって、方法MTによれば、膜SFのプラズマエッチングにおいて、マスクMKが保護される。
【0085】
以下、図5を参照する。図5は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法に関する一例のタイミングチャートである。図5において、横軸は時間を示している。図5において、縦軸は、高周波電力HFの電力レベル、電気バイアスのレベル、及び処理ガスの供給状態を示している。高周波電力HFの「L」レベルは、高周波電力HFが供給されていないか、又は、高周波電力HFの電力レベルが、「H」で示す電力レベルよりも低いことを示している。電気バイアスの「L」レベルは、電気バイアスが下部電極18に与えられていないか、又は、電気バイアスのレベルが、「H」で示すレベルよりも低いことを示している。また、処理ガスの供給状態の「ON」は、処理ガスがチャンバ10内に供給されていることを示しており、処理ガスの供給状態の「OFF」は、チャンバ10内への処理ガスの供給が停止されていることを示している。
【0086】
一実施形態の工程STbでは、図5において実線で示すように、高周波電力HFの連続波が供給されてもよい。即ち、工程STbが行われる期間において、高周波電力HFは、連続的に供給されてもよい。高周波電力HFの電力レベルは、2kW以上、10kW以下のレベルに設定され得る。
【0087】
一実施形態の工程STbでは、図5において実線で示すように、電気バイアスの連続波が下部電極18に与えられてもよい。電気バイアスとして高周波電力LFが用いられる場合には、高周波電力LFの電力レベルは、2kW以上のレベルに設定され得る。高周波電力LFの電力レベルは、10kW以上のレベルに設定されてもよい。
【0088】
一実施形態の工程STbでは、図5において破線で示すように、上述した電気バイアスのパルス波が、バイアス電源64から下部電極18に与えられてもよい。電気バイアスが高周波電力LFである場合には、電気バイアスのパルス波の周期内のH期間において、高周波電力LFの電力レベルは、2kW以上のレベルに設定され得る。電気バイアスのパルス波の周期内のH期間において、高周波電力LFの電力レベルは、10kW以上のレベルに設定されてもよい。
【0089】
一実施形態の工程STbでは、図5において破線で示すように、上述した高周波電力HFのパルス波が、供給されてもよい。高周波電力HFのパルス波の周期内のH期間において、高周波電力HFの電力レベルは、1kW以上、10kW以下のレベルに設定され得る。図5に示すように、高周波電力HFのパルス波の周期は、電気バイアスのパルス波の周期と同期していてもよい。図5に示すように、高周波電力HFのパルス波の周期におけるH期間は、電気バイアスのパルス波の周期におけるH期間と同期していてもよい。或いは、高周波電力HFのパルス波の周期におけるH期間は、電気バイアスのパルス波の周期におけるH期間と同期していなくてもよい。高周波電力HFのパルス波の周期におけるH期間の時間長は、電気バイアスのパルス波の周期におけるH期間の時間長と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0090】
一実施形態の工程STbでは、図5に示すように、処理ガスの供給と供給停止が交互に行われてもよい。処理ガスが供給される期間は、高周波電力HFのパルス波の周期におけるH期間と同期していてもよく、同期していなくてもよい。処理ガスが供給される期間は、電気バイアスのパルス波の周期内のH期間に同期していてもよく、同期していなくてもよい。
【0091】
以下、図6の(a)、図6の(b)、図6の(c)、図7の(a)、図7の(b)、図8の(a)、及び図8の(b)を参照する。図6の(a)、図6の(b)、及び図6の(c)の各々は、炭素含有ガスの流量及びチャンバ内の圧力の例示的タイミングチャートである。図7の(a)は、炭素含有ガスの流量が多い場合に得られる一例の基板の部分拡大断面図であり、図7の(b)は、炭素含有ガスの流量が少ないか炭素含有ガスが供給されない場合に得られる一例の基板の部分拡大断面図である。図8の(a)は、チャンバ内の圧力が高い場合に得られる一例の基板の部分拡大断面図であり、図8の(b)は、チャンバ内の圧力が低い場合に得られる一例の基板の部分拡大断面図である。
【0092】
図6の(a)、図6の(b)、及び図6の(c)に示すように、一実施形態の工程STbでは、処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量及び/又はチャンバ内の圧力が変更される。例えば、処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量及び/又はチャンバ内の圧力は、段階的に減少されてもよい。図6の(a)に示すように、工程STbでは、処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量及び/又はチャンバ内の圧力は、一段階で減少されてもよい。或いは、図6の(b)に示すように、工程STbでは、処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量及び/又はチャンバ内の圧力は、多段階で減少されてもよい。処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量及び/又はチャンバ内の圧力の段階的な減少において、各段階の時間長は同一であってもよい。或いは、図6の(c)に示すように、処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量及び/又はチャンバ内の圧力の段階的な減少において、各段階の時間長は、異なっていてもよい。
【0093】
処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量が多い場合には、基板Wの表面上に形成される炭素含有の堆積物DPCの量が多くなる。したがって、マスクMKのエッチングに対する膜SFのエッチングの選択性が高くなり、また、図7の(a)に示すように膜SFの側壁のボーイングが抑制される。しかしながら、処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量が多い場合には、膜SFに形成される凹部の幅が小さくなることがあり、マスクMKの開口の幅及び膜SFに形成される凹部の底における幅が小さくなることがある。
【0094】
一方、処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量が少ないか炭素含有ガスが供給されない場合には、基板Wの表面上に形成される炭素含有の堆積物DPCの量が少なくなる。したがって、図7の(b)に示すように、マスクMKの開口の幅及び膜SFに形成される凹部の底における幅が大きくなる。しかしながら、膜SFの側壁のボーイングが発生して、膜SFに形成される凹部の一部における幅が大きくなることがある。
【0095】
したがって、工程STbにおいて処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量が段階的に減少される場合には、エッチングの高い選択性及びボーイングの抑制の効果を維持しつつ、マスクMKの開口の幅及び膜SFの凹部の底での幅の縮小を抑制することができる。
【0096】
また、工程STbにおけるチャンバ内の圧力が高い場合には、膜SFのエッチングレートが高くなる。しかしながら、工程STbにおけるチャンバ内の圧力が高い場合には、図8の(a)に示すように、膜SFに形成される凹部の底における幅が狭くなることがあり、凹部のベンディングが生じることがある。
【0097】
一方、工程STbにおけるチャンバ内の圧力が低い場合には、イオンが基板Wに垂直に供給されるので、図8の(b)に示すように、膜SFに形成される凹部の垂直性が高くなる。しかしながら、凹部の側壁に形成される炭素含有の堆積物の量が少なくなって、膜SFの側壁のボーイングが発生することがある。
【0098】
したがって、工程STbにおいてチャンバ内の圧力が段階的に減少される場合には、膜SFのエッチングレートの低下を抑制しつつ、膜SFの側壁のボーイングの発生を抑制し、膜SFに形成される凹部の垂直性を高めることができる。
【0099】
一実施形態では、工程(b)において、チャンバ内の圧力が0.666パスカル(5mTorr)以上、2.666パスカル(20mTorr)以下に設定された状態で、処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量が段階的に減少されてもよい。例えば、工程(b)において、チャンバ内の圧力が2パスカル(15mTorr)に設定された状態で、処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量が段階的に減少されてもよい。
【0100】
以下、方法MTの評価のために行った種々の実験について説明する。
【0101】
(第1の実験)
【0102】
第1の実験では、図2に示す基板Wと同じ八つのサンプル基板、即ち第1~第8のサンプル基板を準備した。膜SFは、複数のシリコン酸化膜と複数のシリコン窒化膜の交互の積層を含む多層膜であった。マスクMKは、アモルファスカーボン製であった。第1の実験では、プラズマ処理装置1を用いて、八つのサンプル基板の膜SFのプラズマエッチングを行った。プラズマエッチングでは、フルオロカーボンガス、ハイドロフルオロカーボンガス、炭素を含まないフッ素含有ガス、及びハロゲン含有ガスを含む処理ガスを用いた。第1のサンプル基板のプラズマエッチングに用いた処理ガスは、フッ化水素ガスを含んでいなかった。第2~第8のサンプル基板のプラズマエッチングに用いた処理ガスでは、当該処理ガスの全流量に対するフッ化水素ガスの流量は、それぞれ34.2体積%、51.0体積%、80.0体積%、95.2体積%、98.8体積%、99.5体積%、及び100体積%であった。なお、第1の実験では、プラズマエッチングの開始前に、サンプル基板を載置する静電チャック20の温度を-50℃以下の温度に調整した。
【0103】
第1の実験では、八つのサンプル基板の膜SFのプラズマエッチングの結果から、マスクMKのエッチングに対する膜SFのエッチングの選択比を求めた。具体的に、八つのサンプル基板の膜SFのプラズマエッチングの結果から、膜SFのエッチングレートをマスクMKのエッチングレートで除すことにより選択比を求めた。
【0104】
第1の実験の結果を図9のグラフに示す。図9のグラフにおいて、横軸は、流量比を示している。流量比は、希ガスを除いた処理ガスの全流量に占めるフッ化水素ガスの流量の割合(体積%)である。図9のグラフにおいて、縦軸は、選択比を示している。図9において、参照符号P1~P8はそれぞれ、第1~第8のサンプル基板の膜SFのプラズマエッチングの結果から求めた選択比を示している。
【0105】
図9に示すように、第1の実験の結果、選択比は、希ガスを除いた処理ガスの全流量に対するフッ化水素ガスの流量の比率(以下、「流量比」という。)の増加に伴って増加することが確認された。特に、流量比が80体積%以上の領域では、流量比が80体積%未満の領域と比較して、流量比の増加に対する選択比の増加率が大きい(図9のグラフにおける近似曲線の傾きが大きい)ことが確認された。この理由は、以下のように考えられる。流量比が80体積%未満の領域では、流量比の増加に伴い、膜SFのエッチングレートが上昇し、これによって選択比が増加する。但し、この領域では、マスクもある程度エッチングされるため、流量比の増加に対する選択比の増加は比較的緩やかとなる。一方、流量比が80体積%以上の領域では、膜SFのエッチングレートは飽和傾向となるが、マスクのエッチング速度が低下し、これによって選択比が増加する。すなわち、流量比が80体積%以上の領域では、膜SFが高いエッチングレートを保ったままエッチングされる一方で、マスクがほとんどエッチングされなくなるため、流量比の増加に対する選択比の増加率が大きくなる。
【0106】
また、図9から、フッ化水素ガスの流量が希ガスを除いた処理ガスの全流量において70体積%以上を占める場合には、5以上の選択比が得られることがわかる。特に、フッ化水素ガスの流量が、希ガスを除いた処理ガスの全流量において90体積%以上を占める場合には7以上の選択比が、95体積%以上を占める場合には7.5以上の選択比が得られることがわかる。
【0107】
(第2の実験)
【0108】
第2の実験では、第1の実験で用いたサンプル基板と同じ三つのサンプル基板、即ち第9~第11のサンプル基板を準備した。第2の実験では、プラズマ処理装置1を用いて、三つのサンプル基板の膜SFのプラズマエッチングを行った。プラズマエッチングでは、フッ化水素ガス及び炭素含有ガスを含む処理ガスを用いた。第9のサンプル基板に対しては、フッ化水素ガス及びCHガスを含む処理ガスを用いた。第10のサンプル基板に対しては、フッ化水素ガス及びCガスを含む処理ガスを用いた。第11のサンプル基板に対しては、フッ化水素ガス及びCガスを含む処理ガスを用いた。なお、第2の実験では、プラズマエッチングの開始前に、サンプル基板を載置する静電チャック20の温度を-50℃以下の温度に調整した。
【0109】
第2の実験では、三つのサンプル基板の膜SFのプラズマエッチングの結果から、マスクMKのエッチングに対する膜SFのエッチングの選択比を求めた。具体的に、三つのサンプル基板の膜SFのプラズマエッチングの結果から、膜SFのエッチングレートをマスクMKのエッチングレートで除すことにより選択比を求めた。
【0110】
第2の実験の結果を図10のグラフに示す。図10のグラフにおいて、参照符号Sub.9~11は、第9~第11のサンプル基板の膜SFのプラズマエッチングの結果から求めた選択比を示している。
【0111】
図10に示すように、第2の実験の結果、何れのサンプル基板においても選択比が6以上であることが確認された。特に、第11のサンプル基板では選択比が14程度であり、最も高い選択比が得られることが確認された。
【0112】
(第3の実験)
【0113】
第3の実験では、第1の実験で用いたサンプル基板と同じ四つのサンプル基板、即ち第12~第15のサンプル基板を準備した。第3の実験では、プラズマ処理装置1を用いて、四つのサンプル基板の膜SFのプラズマエッチングを行った。プラズマエッチングでは、フッ化水素ガス及びCガスを含む処理ガスを用いた。第12のサンプル基板に対して用いた処理ガスは、その他のガスを含んでいなかった。第13のサンプル基板に対して用いた処理ガスは、10sccmのClガスを含んでいた。第14のサンプル基板に対して用いた処理ガスは、10sccmのHBrガスを含んでいた。第15のサンプル基板に対して用いた処理ガスは、10sccmのCFIガスを含んでいた。四つのサンプル基板のプラズマエッチングにおいて、チャンバ内の圧力は、23mTorr(3.066Pa)であった。また、高周波電力HFは、40MHz、5.5kWの高周波電力であった。また、電気バイアスとして、-6kVの電圧のパルス波を400kHzの周波数で周期的に供給した。四つのサンプル基板のプラズマエッチングの時間は、6分であった。なお、第3の実験では、プラズマエッチングの開始前に、サンプル基板を載置する静電チャック20の温度を-70℃の温度に調整した。
【0114】
第3の実験では、膜SFに形成された凹部の幅を膜SFの側壁においてボーイングが発生していた箇所において測定した。その結果、第13のサンプル基板の凹部の幅は、第12のサンプル基板の凹部の幅に対して14nm小さくなっていた。第14のサンプル基板の凹部の幅は、第12のサンプル基板の凹部の幅に対して19nm小さくなっていた。また、第15のサンプル基板の凹部の幅は、第12のサンプル基板の凹部の幅に対して42nm小さくなっていた。第3の実験の結果、処理ガスがClガス、HBrガス、又はCFIガスのようなハロゲン含有ガスを含む場合に、膜SFの側壁のボーイングが抑制されることが確認された。また、ハロゲン含有ガスが、比較的高い質量を有するヨウ素を含む場合に、膜SFの側壁のボーイングが大きく抑制されることが確認された。
【0115】
(第4の実験)
【0116】
第4の実験では、第1の実験で用いたサンプル基板と同じ第16のサンプル基板を準備した。第4の実験では、プラズマ処理装置1を用いて、第16のサンプル基板の膜SFのプラズマエッチングを行った。プラズマエッチングでは、フッ化水素ガス、Cガス、及びXeガスを含む処理ガスを用いた。第16のサンプル基板のプラズマエッチングにおいて、チャンバ内の圧力は、23mTorr(3.066Pa)であった。また、高周波電力HFは、40MHz、5.5kWの高周波電力であった。また、電気バイアスとして、-6kVの電圧のパルス波を400kHzの周波数で周期的に供給した。第16のサンプル基板のプラズマエッチングの時間は、6分であった。なお、第4の実験では、プラズマエッチングの開始前に、サンプル基板を載置する静電チャック20の温度を-70℃の温度に調整した。
【0117】
図11の(a)、図11の(b)、図11の(c)はそれぞれ、第12のサンプル基板、第15のサンプル基板、及び第16のサンプル基板のプラズマエッチング後の断面写真である。図11の(a)に示すように、第12のサンプル基板のマスクMKの側面はテーパー状になっていた。一方、図11の(b)に示すように、CFIガスを含む処理ガスを用いてエッチングした第15のサンプル基板では、マスクMKの側面は高い垂直性を有していた。また、図11の(c)に示すように、Xeガスを含む処理ガスを用いてエッチングした第16のサンプル基板では、マスクMKの側面は高い垂直性を有していた。なお、Xe(キセノン)はヨウ素の質量に近い質量を有しているので、図11の(b)及び図11の(c)に示すように、第15のサンプル基板の断面プロファイルと第16のサンプル基板の断面プロファイルは互いに類似していた。このことから、膜SFの側壁のボーイングは、ヨウ素及び/又はXeのような比較的大きい質量を有する元素を含むガスを用いることにより、抑制可能であることがわかる。
【0118】
(第5の実験及び第6の実験)
【0119】
第5の実験では、プラズマ処理装置1を用いて、フッ化水素ガス及びアルゴンガスの混合ガスである処理ガスからプラズマを生成して、シリコン酸化膜をエッチングした。第6の実験では、プラズマ処理装置1を用いて、フッ化水素ガス、アルゴンガス、及びPFガスの混合ガスである処理ガスからプラズマを生成して、シリコン酸化膜をエッチングした。第5の実験及び第6の実験では、静電チャック20の温度を変更しながら、シリコン酸化膜をエッチングした。第5の実験及び第6の実験では、四重極型質量分析計を用いて、シリコン酸化膜のエッチング時の気相中のフッ化水素(HF)の量とSiFの量を測定した。図12の(a)及び図12の(b)に第5の実験の結果及び第6の実験の結果を示す。図12の(a)は、第5の実験におけるシリコン酸化膜のエッチング時の静電チャック20の温度とフッ化水素(HF)の量及びSiFの量の各々との関係を示している。また、図12の(b)は、第6の実験におけるシリコン酸化膜のエッチング時の静電チャック20の温度とフッ化水素(HF)の量及びSiFの量の各々との関係を示している。
【0120】
図12の(a)に示すように、第5の実験では、静電チャック20の温度が約-60℃以下の温度である場合に、エッチャントであるフッ化水素(HF)の量が減少し、シリコン酸化膜のエッチングにより生成される反応生成物であるSiFの量が増加していた。即ち、第5の実験では、静電チャック20の温度が約-60℃以下の温度である場合に、シリコン酸化膜のエッチングにおいて消費されるエッチャントの量が増加していた。一方、図12の(b)に示すように、第6の実験では、静電チャック20の温度が20℃以下の温度である場合に、フッ化水素(HF)の量が減少し、SiFの量が増加していた。即ち、第6の実験では、静電チャック20の温度が20℃以下の温度である場合に、シリコン酸化膜のエッチングにおいて消費されるエッチャントの量が増加していた。第6の実験で用いた処理ガスはPFガスを含んでいる点で、第5の実験で用いた処理ガスと異なっている。したがって、第6の実験では、シリコン酸化膜のエッチング時に、シリコン酸化膜の表面にリン化学種が存在する状態が形成されていた。このことから、リン化学種が基板の表面に存在する状態では、凹部の底へのエッチャントの供給が促進されて、シリコン含有膜のエッチングレートが高められることが確認された。
【0121】
(第7の実験)
【0122】
第7の実験では、第1の実験で準備したサンプル基板と同じ複数のサンプル基板を準備した。第7の実験では、プラズマ処理装置1を用いて処理ガスからプラズマを生成して複数のサンプル基板の膜SFをエッチングした。第7の実験で用いた処理ガスは、フッ化水素ガス及びフルオロカーボンガスを含んでいた。第7の実験では、複数のサンプル基板に対して用いた処理ガスのそれぞれにおけるPFガスの流量の割合は、互いに異なっていた。ここで、PFガスの流量の割合は、処理ガスの流量に対するPFガスの流量の割合である。第7の実験のプラズマエッチングにおいて、チャンバ内の圧力は、27mTorr(3.6Pa)であった。また、高周波電力HFは、40MHz、4.4kWの高周波電力であった。また、電気バイアスとして、400kHz、6kWの高周波バイアス電力を供給した。第7の実験のプラズマエッチングの時間は、6分であった。なお、第7の実験では、プラズマエッチングの開始前に、サンプル基板を載置する静電チャック20の温度を-40℃の温度に調整した。
【0123】
第7の実験では、複数のサンプル基板の各々の膜SFのエッチングの結果から、膜SFのエッチングレートを求めた。そして、PFガスの流量の割合と膜SFのエッチングレートの関係を求めた。その結果を図13に示す。図13に示すように、処理ガスの流量に対するPFガスの流量の割合が2%以上(又は2.5%以上)であれば、高いエッチングレートが得られることが確認された。即ち、フッ化水素ガス、Cガス、及びリン含有ガス(PFガス)を含む処理ガスの流量に対してリン含有ガスの流量が2%以上(又は2.5%以上)であれば、高いエッチングレートが得られることが確認された。
【0124】
(第8~第11の実験)
【0125】
第8実験及び第9の実験の各々では、各々がシリコン酸化膜を有する複数の基板を準備した。第8の実験及び第9の実験の各々では、プラズマ処理装置1を用いて処理ガスからプラズマを生成して複数のサンプル基板のシリコン酸化膜をエッチングした。第8の実験及び第9の実験の各々において複数のサンプル基板のシリコン酸化膜をエッチングしたときの基板支持器14の温度は互いに異なっていた。第10の実験及び第11の実験の各々では、各々がシリコン窒化膜を有する複数の基板を準備した。第10の実験及び第11の実験の各々では、プラズマ処理装置1を用いて処理ガスからプラズマを生成して複数のサンプル基板のシリコン窒化膜をエッチングした。第10の実験及び第11の実験の各々において複数のサンプル基板のシリコン窒化膜をエッチングしたときの基板支持器14の温度は互いに異なっていた。第8~第11の実験の各々で用いた処理ガスは、フッ化水素ガス及びCガスを含んでいた。第8の実験及び第10の実験で用いた処理ガスの流量に対するPFガスの流量の割合は2.5%であった。第9の実験及び第11の実験で用いた処理ガスは、PFガスを含んでいなかった。第8~第11の実験の各々の他の条件は、第7の実験に関して上述した対応の条件と同一であった。
【0126】
第8の実験及び第9の実験では、複数のサンプル基板の各々のシリコン酸化膜のエッチングの結果から、シリコン酸化膜のエッチングレートを求めた。第10の実験及び第11の実験では、複数のサンプル基板の各々のシリコン窒化膜のエッチングの結果から、シリコン窒化膜のエッチングレートを求めた。第8~第11の実験において設定した基板支持器14の温度と得られたエッチングレートの関係を、図14に示す。図14において、凡例No.8、No.9、No.10、No.11はそれぞれ、第8~第11の実験の結果を指している。図14に示すように、PFガスを処理ガスに含めた第8の実験では、シリコン酸化膜のエッチングレートが、PFガスを含まない処理ガスを用いた第9の実験のシリコン酸化膜のエッチングレートに比して高くなることが確認された。また、第8の実験の結果から、PFガスを含む処理ガスを用いる場合において基板支持器14の温度が0℃以下に設定されることにより、シリコン酸化膜のエッチングレートがより高くなることが確認された。
【0127】
(第12の実験及び第13の実験)
【0128】
第12の実験及び第13の実験の各々では、プラズマ処理装置1を用いて処理ガスからプラズマを生成してサンプル基板の膜SFをエッチングした。図15は、第12の実験及び第13の実験で用いたサンプル基板の平面図である。サンプル基板において、膜SFは、シリコン酸化膜、多結晶シリコン膜、及びシリコン窒化膜を含む積層構造を有していた。マスクMKは、アモルファスカーボン製であった。図15に示すように、マスクMKは、複数の開口OPを画成していた。複数の開口OPの各々は、図15に示すように、矩形の平面形状を有していた。複数の開口OPは、図15に示すように、それらの複数の行と複数の列を提供するように二次元的に配列されていた。
【0129】
第12の実験では、処理ガスは、Hガス、Clガス、HBrガス、フルオロカーボンガス、ハイドロフルオロカーボンガス、及びNFガスを含む混合ガスであった。第12の実験のプラズマエッチングにおいて、チャンバ内の圧力は、15mTorr(2Pa)であった。また、高周波電力HFは、40MHz、5.5kWの高周波電力であった。また、電気バイアスとして、400kHz、7kWの高周波バイアス電力を供給した。第12の実験のプラズマエッチングの時間は、1350秒であった。なお、第12の実験では、プラズマエッチングの開始前に、サンプル基板を載置する静電チャック20の温度を-35℃の温度に調整した。
【0130】
第13の実験では、処理ガスは、フッ化水素ガス、PFガス、NFガス、Clガス、HBrガス、Cガス、及びCHガスの混合ガスであった。第13の実験のプラズマエッチングにおいて、チャンバ内の圧力は、25mTorr(3.066Pa)であった。また、高周波電力HFは、40MHz、5.5kWの高周波電力であった。また、電気バイアスとして、-6kVの電圧のパルス波を400kHzの周波数で周期的に供給した。第13の実験のプラズマエッチングの時間は、420秒であった。なお、第13の実験では、プラズマエッチングの開始前に、サンプル基板を載置する静電チャック20の温度を-70℃の温度に調整した。
【0131】
第12の実験及び第13の実験では、膜SFのエッチングレート及びマスクMKのエッチングに対する膜SFのエッチングの選択比を求めた。その結果、第13の実験における膜SFのエッチングレートは、第12の実験における膜SFのエッチングレートの約3倍であった。また、第13の実験における選択比は、第12の実験における選択比の約2.5倍であった。したがって、方法MTの工程STbにおいて用いられる処理ガスは、膜SFのエッチングレート及びマスクMKのエッチングに対する膜SFのエッチングの選択比を高めることが確認された。
【0132】
また、第12の実験及び第13の実験の各々では、図15に示すマスクMKのラインLNのLER(Line Edge Roughness)を求めた。その結果、第12の実験におけるLERは26.5nmであり、第13の実験におけるLERは16.8nmであった。したがって、方法MTの工程STbにおいて用いられる処理ガスは、マスクMKの形状の劣化を抑制し得ることが確認された。
【0133】
(第14~第18の実験)
【0134】
第14~第18の実験の各々では、プラズマ処理装置1を用いて処理ガスからプラズマを生成して、サンプル基板の膜SFをエッチングした。第14~第18の実験の各々で用いたサンプル基板は、第1の実験で準備したサンプル基板と同じであった。プラズマエッチングでは、フッ化水素ガスを含む処理ガスを用いた。第14の実験及び第16~第18の実験において、処理ガスは、Cガスを炭素含有ガスとして更に含んでいた。第15の実験では、処理ガスは、炭素含有ガスを含んでいなかった。第16の実験では、プラズマエッチングの開始時点から終了時点までの間に、2段階で炭素含有ガスの流量を0sccmまで減少させた。第17の実験では、プラズマエッチングの開始時点から終了時点までの間に、3段階で炭素含有ガスの流量を0sccmまで減少させた。第18の実験では、プラズマエッチングの開始時点から終了時点までの間に、5段階で炭素含有ガスの流量を0sccmまで減少させた。第14~第18の実験のプラズマエッチングにおいて、チャンバ内の圧力は、23mTorr(3.066Pa)であった。また、高周波電力HFは、40MHz、5.5kWの高周波電力であった。また、電気バイアスとして、-6kVの電圧のパルス波を400kHzの周波数で周期的に供給した。第14~第18の実験では、プラズマエッチングの開始前に、サンプル基板を載置する静電チャック20の温度を-70℃の温度に調整した。
【0135】
第14~第18の実験の各々では、膜SFに形成された凹部の底の幅(Bottom CD)と膜SFの側壁にボーイングが発生している箇所での凹部の幅(Bow CD)を求めた。また、Bottom CDとBow CDの差(Difference)を求めた。図16に、第14~第18の実験の結果を示す。図16において、No.14、No.15、No.16、No.17、No.18はそれぞれ、第14~第18の実験の結果を示している。図16では、各実験において求めたBottom CDを第14の実験において求めたBottom CDで規格した値を示している。また、図16では、各実験において求めたBow CDを第14の実験において求めたBow CDで規格した値を示している。また、図16では、各実験において求めたDifferenceを第14の実験において求めたDifferenceで規格した値を示している。
【0136】
第15の実験では、処理ガスは炭素含有ガスを含んでいなかったので、Bottom CDは、第14の実験におけるBottom CDより大きくなったものの、Bow CDも、第14の実験におけるBow CDより大きくなっていた。一方、第16~第18の実験の各々では、第14の実験におけるBow CDに対してBow CDの増加が抑制されており、且つ、Bottom CDが第14の実験におけるBottom CDに対して増加していた。また、第16~第18の実験の各々では、Differenceが、第14の実験におけるDifferenceに対して相当に小さくなっていた。したがって、プラズマエッチング中に処理ガスにおける炭素含有ガスの流量を段階的に減少させることにより、Bow CDを抑制しつつ、凹部の垂直性を高めることが可能であることが確認された。
【0137】
(第19の実験)
【0138】
第19の実験では、第17の実験のサンプル基板と同じサンプル基板の膜SFのプラズマエッチングを行った。第19の実験のプラズマエッチングは、チャンバ内の圧力が15mTorr(2Pa)である点において第17の実験のプラズマエッチングの条件と異なっていた。第19の実験では、第14の実験におけるBow CDに対してBow CDの増加が抑制されており、且つ、Bottom CDが第14の実験におけるBottom CDに対して約1.4倍増加していた。したがって、チャンバ内の圧力を比較的低い圧力に設定し、且つ、処理ガスに含まれる炭素含有ガスの流量を段階的に減少させることにより、Bow CDを抑制しつつ、凹部の垂直性を更に高めることが可能であることが確認された。
【0139】
(第20及び第21の実験)
【0140】
第20及び第21の実験においては、プラズマ処理装置1を用いて、第1の実験のサンプル基板と同じサンプル基板の膜SFのプラズマエッチングを行った。第20の実験では、プラズマエッチングのための処理ガスとして、Hガス、ハイドロフルオロカーボンガス、フルオロカーボンガス、フッ素含有ガス、及びハロゲン含有ガスを含む混合ガスを用いた。第21の実験では、プラズマエッチングのための処理ガスとして、フッ化水素ガス、Cガス、及びOガスを含む混合ガスを用いた。第20及び第21の実験のプラズマエッチングでは、チャンバ内の圧力は、27mTorr(3.6Pa)であった。また、高周波電力HFは、40MHz、4.4kWの高周波電力であった。また、電気バイアスとして、400kHz、-6kVの高周波バイアス電力を用いた。第20及び第21の実験では、プラズマエッチングの開始前に、サンプル基板を載置する静電チャック20の温度を-40℃の温度に調整した。
【0141】
そして、第20及び第21の実験では、膜SFのエッチングレート及びマスクMKのエッチングに対する膜SFのエッチングの選択比を求めた。その結果、第20及び第21の実験における膜SFのエッチングレートはそれぞれ、310nm/分、296nm/分であった。また、第20及び第21の実験における選択比はそれぞれ、3.24、6.52であった。第20~第21の実験の結果、処理ガスにフッ化水素ガスを添加することによりマスクMKのエッチングレートが低下して選択比が向上することが確認された。
【0142】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0143】
例えば、方法MTにおいて用いられるプラズマ処理装置は、プラズマ処理装置1以外の容量結合型のプラズマ処理装置であってもよい。或いは、方法MTにおいて用いられるプラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置、ECR(電子サイクロトロン共鳴)プラズマ処理装置、又はマイクロ波といった表面波を用いてプラズマを生成するプラズマ処理装置等であってもよい。
【0144】
また、プラズマ処理装置は、高周波電力LFを下部電極18に供給するバイアス電源64に加えて、電圧のパルスを断続的に又は周期的に下部電極18に印加するように構成された別のバイアス電源を備えていてもよい。
【0145】
また、開示する実施形態は、以下の態様を更に含む。
(A1). シリコン酸化膜のプラズマエッチング用の処理ガスであって、フッ化水素ガス、リン含有ガス、及び炭素含有ガスを含む、処理ガス。
(A2). 前記フッ化水素ガスの流量、前記リン含有ガスの流量、及び前記炭素含有ガスの流量のうち、前記フッ化水素ガスの流量が最も大きい、A1に記載の処理ガス。
(B1). (a)プラズマ処理装置のチャンバ内に基板を準備する工程であり、該基板はシリコン含有膜を含む、該工程と、
(b)前記チャンバ内で処理ガスから形成されたプラズマからの化学種により前記シリコン含有膜をエッチングする工程であり、前記処理ガスは、リン含有ガス、フッ素含有ガス、ハイドロフルオロカーボンガス、及びフッ素以外のハロゲン元素を含有するハロゲン含有ガスを含む、該工程と、
を含む、エッチング方法。
(B2). 前記フッ素含有ガスは、フルオロカーボンガス及び炭素を含有しないフッ素含有ガスからなる群から選択される少なくとも一つのガスを含む、B1に記載のエッチング方法。
(B3). 前記炭素を含有しないフッ素含有ガスは、三フッ化窒素ガス又は六フッ化硫黄ガスである、B2に記載のエッチング方法。
(B4). 前記ハロゲン含有ガスは、Clガス及び/又はHBrガスである、B1~B3の何れか一項に記載のエッチング方法。
【0146】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0147】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、14…基板支持器、80…制御部、W…基板、SF…膜。
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