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特開2023-63954液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023063954
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20230428BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/14 613
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174083
(22)【出願日】2021-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】紀伊國 敬
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF65
2C057AN01
2C057AP25
(57)【要約】
【課題】外装部品や内装部品に歪みが発生するのを抑制できる液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッド1は、内部部品たる流路部品3と、流路部品3を覆う外装部品たる外装カバー2とを備えている。流路部品3は、外装カバー2の流路部品3を介して対向する一方面と他方の面とに接合されている。そして、流路部品3は、第一部材たるヘッド部3aと、流路部品3の外装カバー2に接合された接合面と直交する方向にヘッド部3aに対して相対的に移動可能にヘッド部3aに連結される第二部材たる液体供給部3bと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部部品と、
前記内部部品を覆う外装部品とを備え、
前記内部部品は、前記外装部品の前記内部部品を介して対向する一方面と他方の面とに接合されており、
前記内部部品は、第一部材と、前記内部部品の前記外装部品に接合された接合面と直交する方向に前記第一部材に対して相対的に移動可能に前記第一部材に連結される第二部材と、を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記第二部材は、前記接合面と直交する方向に隙間を有して前記第一部材に連結されることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記外装部品の線膨張係数と、前記内部部品の線膨張係数とが互いに異なることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記第二部材と、前記第二部材とは異なる部材とに固定される第二内部部品を備え、
前記内部部品は、前記接合面と直交する方向に前記第二部材に対して相対的に移動可能に前記第二部材に連結される第三部材を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記内部部品は、前記接合面と直交する方向に前記第二部材に対して相対的に移動可能に前記第二部材に連結される第三部材を有し、
前記第二部材と前記第一部材との外れを防止する第一外れ防止部と、前記第二部材と前記第三部材との外れを防止する第二外れ防止部とを有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項4または5に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記第三部材は、前記接合面と直交する方向に隙間を有して前記第二部材に連結されることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記内部部品は、液体を流す流路部品であって、
前記内部部品を構成する部材間の連結箇所を介して一方の部材から他方の部材へ液体を流しており、
前記連結箇所に前記液体をシールするシール部材を設けたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記内部部品を構成する部材間の相対的な移動をガイドするガイド部を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記内部部品と前記外装部品との接合箇所に封止材を設けたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項1乃至9いずれか一項に記載の液体吐出ヘッドを含むことを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項11】
請求項1乃至9いずれか一項に記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項10に記載の液体吐出ユニットを備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内部部品と、内部部品を覆う外装部品とを備える液体吐出ヘッドが知られている。
【0003】
特許文献1には、上記液体吐出ヘッドとして、内部部品としての液体の供給経路や液室などを構成する部材や回路基板等の電装部品を覆う外装部品としてのカバー部材を備えたものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外装部品および内装部品の少なくとも一方に歪みが発生するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、内部部品と、前記内部部品を覆う外装部品とを備え、前記内部部品は、前記外装部品の前記内部部品を介して対向する一方面と他方の面とに接合されており、前記内部部品は、第一部材と、前記内部部品の前記外装部品に接合された接合面と直交する方向に前記第一部材に対して相対的に移動可能に前記第一部材に連結される第二部材とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、外装部品や内装部品に歪みが発生するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の液体吐出ヘッドの概略断面図。
図2】同液体吐出ヘッドの流路部品の概略斜視図。
図3】(a)は、従来の液体吐出ヘッドの外装カバーと、流路部品とを示す概略断面図であり、(b)は、熱膨張後の従来の液体吐出ヘッドの外装カバーと、流路部品とを示す概略断面図。
図4】従来の液体吐出ヘッドの熱膨張後の歪みの一例を示す図。
図5】(a)は、本実施形態の液体吐出ヘッドの外装カバーと、流路部品とを示す概略断面図であり、(b)は、熱膨張後の液体吐出ヘッドの外装カバーと、流路部品とを示す概略断面図。
図6】接着剤で流路部品と外装カバーとを接合した液体吐出ヘッドの概略断面図。
図7】接合箇所にシール部材を設けた液体吐出ヘッドの概略断面図。
図8】流路部品の変形例1を示す概略断面図。
図9】流路部品の変形例2を示す概略断面図。
図10】電装基板をヘッド部と下部液体供給部とに固定した変形例2の態様を示す概略断面図。
図11】上部液体供給部を外装カバーに接合する際に、下部液体供給部と上部液体供給部との連結が外れる不具合について説明する図。
図12】第一外れ防止部と第二外れ防止部とを設けた変形例2の態様を示す概略断面図。
図13】同装置の要部平面説明図。
図14】同装置の要部側面説明図。
図15】同ユニットの要部平面説明図。
図16】同ユニットの正面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、液体を吐出する装置である画像形成装置としてのインクジェット記録装置の液体吐出ヘッドに適用した一実施形態について説明する。
なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0009】
図1は、本実施形態の液体吐出ヘッド1の概略断面図であり、図3は、流路部品3の概略斜視図である。
液体吐出ヘッド1は、内部部品としての流路部品3と、第二内部部品としての電装基板4と、これらを覆う外装部品として外装カバー2とを備えている。
【0010】
流路部品3は、第一部材たるヘッド部3aと、第二部材たる液体供給部3bとを有している。液体供給部3bは、ヘッド部3aに対して上下方向に相対移動可能に連結部10でヘッド部3aに連結されている。
ヘッド部3aは、複数のノズル31aが配列されたノズル面31、ノズル31aが通じる個別液室、個別液室に液体を供給する共通液室、各個別液室の液体を加圧する圧力部などを有している。ノズル列は、図1の紙面と直交する方向に4個設けられている。
【0011】
液体供給部3bは、ヘッド部3aの共通液室に通じる供給経路、外装カバー2を貫通するように設けられ、液体を貯留するタンクから液体を供給するためのチューブが着脱可能に接続される供給ポート32などを有している。供給ポート32の外周面は取り付けられたチューブが抜けないよう返しが設けられている。供給ポート32は、図3に示すように、流路部品3の上面に4つ配置されている。
【0012】
供給ポート32へ供給された液体は、液体供給部3bの供給経路から連結部10を介してヘッド部3aの共通液室に供給され、共通液室から個別液室に供給される。2つある供給ポートのうち、一方の供給ポートから供給される液体の色と、他方の供給ポートから供給される液体の色とは、互いに異なる。一方の供給ポートから供給される液体は、2個のノズル列のうち一方のノズル列のノズルから吐出され、他方の供給ポートから供給される液体は、他方のノズル列のノズルから吐出される。
【0013】
ヘッド部3aと液体供給部3bとを連結する連結部10は、ヘッド部3aの上面に、突き出すように設けられた円筒状の連結挿入部35と、液体供給部3bの下面に設けられ、ヘッド部3aの連結挿入部35が挿入される円形状の連結凹部34とで構成されている。連結挿入部35の中央には、共通液室に通ずる連通路が形成されており、連結凹部34の底面には、供給経路が繋がっている。
【0014】
連結凹部34の内径は、連結挿入部35の外径よりも大きくなっており、連結凹部34の内周面と、連結挿入部35の外周面との隙間を埋めるシール部材としてのOリング33が設けられている。このOリング33が、液体供給部3bの供給経路から連結凹部34へ流れてきた液体をシールし、液体の漏れを防止する。連結凹部34へ流れてきた液体は、連結挿入部35の連通路を通って共通液室へ流れる。
【0015】
なお、連結凹部34の内周面または連結挿入部35にOリング33が嵌まる溝部を設けるのが好ましい。これにより、連結凹部34または連結挿入部35のいずれかにOリング33を嵌め込んで、連結挿入部35を連結凹部34に挿入することができ、組み付けを容易にすることができる。
【0016】
また、連結挿入部35の上面を、連結挿入部35の中央に設けられた連通路に向けて下方へ傾斜するようなテーパ面とするのが好ましい。これにより、連結凹部34の供給経路から連結挿入部35の中央の連通路へ流れ落ちずに、連結挿入部35の上面に付着した液体を、連通路へ流すことができる。
【0017】
また、ヘッド部3aに連結凹部34を設け、液体供給部3bに連結挿入部35を設けるのが好ましい。ヘッド部3aに連結凹部34を設けることで、Oリング33のシール箇所を、液体供給部3bの供給経路からヘッド部3aの連通路へ液体を受け渡す箇所よりも上方にできる。これにより、Oリング33のシール箇所へ液体が流れ落ちることがなく、液体のシール性を高めることができる。
【0018】
本実施形態では、連結部10を、連結凹部34と、この連結凹部34に挿入される連結挿入部35とを有し、連結挿入部35を連結凹部34内で所定の範囲で移動可能な構成としている。これにより、液体供給部3bが、ヘッド部3aに対して相対的に移動可能にヘッド部3aに連結される。
【0019】
第二内部部品として電装基板4は、ヘッド部3aの圧力部に設けられたアクチュエータに接続され、アクチュエータを駆動させるための駆動回路が形成されている。この電装基板4には、外部から電装基板4へ電力、駆動信号を伝送するためのFFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)5が接続されている。電装基板4は、ヘッド部3aの側面に隣接配置されており、ネジ6により外装カバー2の底面にネジ止めされている。なお、電装基板4をヘッド部3aに固定してもよい。電装基板4をヘッド部3aに固定することで、電装基板4がヘッド部3aの図中左右方向の熱膨張を阻害するのを抑制することができる。
【0020】
外装カバー2は、下方が開口した箱型形状の第一カバー部材2aと、この第一カバー部材2aの開口を塞ぐように第一カバー部材2aにネジ6により接合される板状の第二カバー部材2bとを有する。
【0021】
外装カバー2の底部を構成する第二カバー部材2bには、ヘッド部3aのノズル面31を露出させるための開口部21aが形成されている。また、外装カバー2の天井部を構成する第一カバー部材2aの上面部には、液体供給部3bの供給ポート32が貫通するための開口部21bと、FFC5が貫通するための開口部21cが形成されている。
【0022】
図1に示すように、ノズル面31のノズル31aを露出させるための開口部21aの近傍で、流路部品3の接合面たる下面を外装カバー2にネジ6により接合し、流路部品3の下面を外装カバー2の被接合面たる底面に密着させている。これにより、この開口部21aから外装カバー内へ、液滴、塵、埃などの侵入を防ぐことができる。また、供給ポート32が貫通するための開口部21bの近傍で流路部品3の接合面である上面を外装カバーにネジ6により接合し、流路部品3の上面を外装カバー2の被接合面である天井面に密着させている。これにより、この開口部21bから外装カバー内へ、液滴、塵、埃などの侵入を防ぐことができる。これにより、外装カバー内に配置された電装基板4に液滴、塵、埃などが付着するのを抑制でき、ショートなどの発生を抑制することができる。
【0023】
外装カバー2は、美観・強度が要求されることから、ガラスフィラーを含んだPPS(ポリフェニレンサルファイド)で構成される。一方、流路部品3(ヘッド部3aおよび液体供給部3b)は、接液性、清浄性に加えて、低コスト性、インクによるケミカルアタックへの耐性が要求され、ガラスフィラーを含まないPP(ポリプロピレン)で構成している。このように、要求される条件から、外装カバー2と流路部品3とを互いに異なる材料で構成している。その結果、高環境下での線膨張係数が、流路部品3の方が大きく、高温環境下において、流路部品3の高さ変動の方が、外装カバー2の高さ変動よりも大きくなっている。
【0024】
図3(a)は、従来の液体吐出ヘッドの外装カバーと、流路部品とを示す概略断面図であり、(b)は、熱膨張後の従来の液体吐出ヘッドの外装カバーと、流路部品とを示す概略断面図である。
図3(a)に示すように、従来の液体吐出ヘッドの流路部品は、ヘッド部3aの上面に液体供給部3bが接着剤などにより固定され、液体供給部3bをヘッド部3aに対して相対的に移動不能に連結していた。
従来の液体吐出ヘッドにおいても、ノズル面を露出させるための開口部21aの近傍で、流路部品3の下面を外装カバーにネジ6により接合し、流路部品3の下面を外装カバー2の底面に密着させる。そのため、外装カバーに接合される流路部品3の接合面である下面から上面までの高さを、外装カバーの被接合面である底面から天井面からの高さと同一にしていた。
【0025】
図3(b)に示すように、ガラスフィラーを含んだPPSで構成された外装カバー2は、熱膨張によって、高温環境下で被接合面間の高さ(底面から天井面からの高さ)がD→D'に変化する。一方、外装カバー2よりも線膨張係数が大きいPPで構成された流路部品3は、熱膨張によって高温環境下で接合面間の高さ(下面から上面までの高さ)がD→D''(D'<D'')に変化する。このように、流路部品3が、外装カバー2よりも熱膨張による寸法変動が大きい。しかし、外装カバー2に上下面が接合されて収納されている流路部品3は、外装カバー2の開口部21a,21bの周囲の接合箇所で外装カバー2により寸法変動が抑え込まれる。その結果、図4に示すように、外装カバー2の上面部および下面部、流路部品3の上面部および下面部ともに、図中左右方向中央が、突出するように歪んでしまう。このように、流路部品3が歪むことで、ノズル面31が歪み、ノズルから吐出される液体が規定の位置に着弾しなくなる。また、液体吐出ヘッド1が図4に示すように歪むことで、外観不良が生じてしまう。さらに、接着剤により流路部品3を外装カバー2に接合している場合は、図3に示すような歪みにより、接着が剥がれてしまい、流路部品3が外装カバー2内でガタついてしまう不具合も発生するおそれがある。
【0026】
図5(a)は、本実施形態の液体吐出ヘッドの外装カバー2と、流路部品3とを示す概略断面図であり、図5(b)は、熱膨張後の液体吐出ヘッドの外装カバーと、流路部品とを示す概略断面図である。
図5(a)に示すように、本実施形態の流路部品3は、液体供給部3bが、ヘッド部3aに対して上下方向に相対的に移動可能にヘッド部3aに連結されている。
【0027】
図5(a)に示すように、本実施形態では、外装カバー2に接合される流路部品3の接合面である下面から上面までの高さを、外装カバーの被接合面である底面から天井面からの高さDと同一にしたとき、ヘッド部3aの上面と液体供給部3bの下面との間に隙間dが生じる。すなわち、本実施形態では、ヘッド部3aの上面と液体供給部3bの下面との間に隙間dが形成されて、流路部品3の下面と上面を外装カバーに接合して外装カバー内に流路部品3が収納される。
【0028】
図5(b)に示すように、外装カバー2は、従来と同様に、熱膨張により被接合面間の高さ(底面から天井面からの高さ)がD→D'に変化する。一方で、流路部品3は、外装カバー2よりも(D''-D')分余計に高さ方向に熱膨張しようとするが、実際は、外装カバー2により抑えられているため流路部品3の接合面間の高さ(下面から上面までの高さ)は、D'に抑えられる。そして、流路部品3の余計な熱膨張分(D''-D')は、ヘッド部3aの上面と液体供給部3bの下面との隙間dがd′に狭まることで吸収される。その結果、高温環境下において、外装カバー2と流路部品3との接合箇所で応力が発生するのを抑制でき、高温環境下で液体吐出ヘッド1が歪むのを抑制できる。これにより、高温環境下で着弾位置が規定の位置からずれたり、外観不良が発生したりするのを抑制することができる。
【0029】
上述では、流路部品3の線膨張係数が、外装カバー2の線膨張係数よりも大きい場合について説明したが、流路部品3の線膨張係数が外装カバー2の線膨張係数よりも小さい場合についても、本実施形態の構成を適用できる。流路部品3の線膨張係数が外装カバー2の線膨張係数よりも小さい場合、図3に示す従来構成の場合は、図4とは逆に液体吐出ヘッド1の上下が凹面状に歪んでしまう。一方、本実施形態のよるに、流路部品3の液体供給部3bがヘッド部3aに対して上下方向に移動可能に構成することで、熱膨張時に、ヘッド部3aと液体供給部3bとの間の隙間dが広がるように、液体供給部3bがヘッド部3aに対して相対移動する。これにより、高温環境下において、外装カバー2と流路部品3との接合箇所で応力が発生するのを抑制でき、高温環境下で液体吐出ヘッド1が歪むのを抑制できる。なお、流路部品3の線膨張係数が外装カバー2の線膨張係数よりも小さい場合は、初期(常温環境下)において、ヘッド部3aと液体供給部3bとの隙間dは無くてもよい(d=0)。
【0030】
また、例えば、製造誤差により外装カバー2の被接合面間の高さ(底面から天井面からの高さ)寸法と、流路部品3の接合面間の高さ(下面から上面までの高さ)寸法とに差が生じる場合がある。このような場合も図3に示す従来構成においては、図4に示すように外装カバー2や流路部品3に歪みが発生してしまう。一方、本実施形態では、このような製造誤差による寸法差も、液体供給部3bがヘッド部3aに対して上下方向に相対移動して吸収することができ、製造誤差による外装カバーとヘッド部との寸法差による外装カバー2や流路部品3の歪みの発生も抑制できる。
【0031】
なお、上述では、ネジ6により流路部品3を外装カバー2に接合したが、図6に示すように封止材としての接着剤7により流路部品3を外装カバー2に接合してもよい。
ネジ6により外装カバー2と流路部品3とを接合する場合は、外装カバー2と流路部品3との間に僅かな隙間が生じるおそれがある。そのため、流路部品3の外装カバー2の開口部21bから露出している箇所に付着した液滴が、やがて接合箇所の僅かな隙間から外装カバー2内に侵入するおそれがある。
【0032】
一方、図6に示すように、接着剤7で外装カバー2と流路部品3とを接合することで、接合箇所の隙間を完全に塞ぐことができ、接合箇所からの外装カバー2内への液体の侵入を防止できる。また、図6に示すように、第一カバー部材2aと、第二カバー部材2bとの接合も接着剤7で行うことで、第一カバー部材2aと第二カバー部材2bとの隙間から外装カバー内への液体の侵入するのを防止できる。
さらに、図6に示すように、外装カバー2のFFC5が貫通するための開口部21cを接着剤7で埋めることで、この開口部21cからの液滴や塵埃などの侵入を防止できる。
【0033】
一方、図1に示すように、ネジ6により外装カバー2と流路部品3とを接合することで、以下の利点を得ることができる。すなわち、外装カバー2のネジ6が貫通する貫通孔の内径をネジ6の胴部の外径よりも大きくし、熱膨張時の流路部品3と外装カバー2との左右方向の寸法誤差を、上記貫通孔とネジ胴部との隙間で吸収することが可能となる。これにより、接着剤7で外装カバー2と流路部品3とを接合する場合に比べて、高温環境時の接合箇所にかかるせん断応力を低減することができるという利点である。なお、外装カバー2の貫通孔とネジ胴部との隙間は、ネジの頭部により塞がれ、その隙間からの液体や埃などの侵入は防止できる。
【0034】
また、接着剤7による接合は、接着剤7によっては硬化時に収縮する特性を有し、その収縮ばらつきにより流路部品3や外装カバー2に歪みが生じたり、接合不良が発生したりするおそれがある。これに対し、ネジ6により外装カバー2と流路部品3とを接合することで、接着剤7による接合で発生する上述した歪みの発生や接合不良の発生を防止できるという利点もある。
【0035】
また、図7に示すように、外装カバー2と流路部品3との接合箇所に封止材としてのゴムなどの弾性部材からなるシール部材8を設けて外装カバー2と流路部品3とをネジ6で接合してもよい。かかる構成でも、接合箇所の隙間を完全に塞ぐことができ、接合箇所からの外装カバー2内への液体の侵入を防止できる。
【0036】
なお、シール部材としては、接合箇所の外装カバー2と流路部品3との隙間が埋められるものであればよく、接着剤7であってもよい。接着剤とネジ6とで外装カバー2と流路部品3とを接合することで、上述した接着剤の硬化時の収縮による不具合の発生を防止できる。
【0037】
また、第一カバー部材2aと、第二カバー部材2bとの固定箇所にもシール部材8を設けてネジ6で接合することで、第一カバー部材2aと第二カバー部材2bとの隙間から外装カバー内への液体の侵入するのを防止できる。
【0038】
なお、上述では、接着剤7やネジ6で外装カバー2と流路部品3とを固定して、流路部品3を外装カバー2に接合しているが、開口部21a,21bから外装カバー内への液滴や塵埃などの侵入を防止できるように流路部品3が外装カバー2に接し合っていればよい。そのため、高い密着性が得られるなら、接着剤7やネジ6で固定せず、流路部品3を外装カバー2の開口部21a,21bの周囲に接触させるのみで流路部品3を外装カバー2に接合する構成でもよい。本実施形態のように流路部品3の線膨張係数が外装カバー2の線膨張係数よりも大きい場合は、流路部品3と外装カバー2との接合を維持して流路部品3の液体供給部3bをヘッド部3aに対して相対移動し、流路部品3や外装カバー2の歪みの発生を抑制できる。
【0039】
一方、流路部品3の線膨張係数が外装カバー2の線膨張係数よりも小さい場合は、接着剤7やネジ6で外装カバー2と流路部品3とを固定して流路部品3を外装カバー2に接合するのが好ましい。これは、流路部品3を外装カバー2の開口部21a,21bの周囲に接触させるのみで接合する場合は、高温環境下で接合が維持できず、流路部品3と外装カバー2との間に隙間ができてしまう。その結果、外装カバー内への液体等の侵入を防止できないからである。
【0040】
流路部品3の線膨張係数が外装カバー2の線膨張係数よりも小さく、ネジ6等による固定で接合する構成では、外装カバー2と流路部品3との熱膨張差によって上下方向に寸法差が発生したときは次のようにして歪みの発生が抑制される。すなわち、液体供給部3bとヘッド部3aとの隙間が広がる方向に液体供給部3bがヘッド部3aに対して相対的に移動し、流路部品3の上下方向の寸法を外装カバー2の寸法に習う。これにより、外装カバー2や流路部品3に歪みが発生するのを抑制できるのである。
【0041】
また、上述では、開口部21a,21bから外装カバー内への液滴や塵埃などの侵入を防止する目的で、流路部品3を外装カバー2の開口部の周囲で接合しているが、これに限られない。例えば、外装カバー内での流路部品3のガタつき防止や、位置決めの目的のために、流路部品3を外装カバー2に接合する構成でもよい。開口部21a,21bから外装カバー内への液滴や塵埃などの侵入を防止する目的以外で流路部品3を外装カバー2に接合する場合は、流路部品3と外装カバー2との接合箇所は、開口部21aの周囲でなくてもよい。
【0042】
図8は、流路部品3の変形例1を示す概略断面図である。
図8に示すように、この変形例の流路部品は、液体供給部3bのヘッド部3aに対する相対的な移動を案内するガイド部36を有している。ガイド部36は、ヘッド部3aを液体供給部3bよりも図中左右方向に長くし、ヘッド部3aの左右方向両端から上方に延び出し、液体供給部3bの側面に対向するように設けられている。これにより、液体供給部3bの側面が、ガイド部36によりガイドされながら、液体供給部3bが上下方向にヘッド部3aに対して相対的に移動する。
【0043】
弾性変形可能なOリング33で連結部10をシールしているため、連結部10の液体に対するシール性を確保するには、連結挿入部35の中心軸と連結凹部34の中心軸との軸ずれは少ない方がよい。
【0044】
この変形例1のようにガイド部36を設けることで、液体供給部3bが上下方向にヘッド部3aに対して相対的に移動するときに、液体供給部3bがヘッド部3aに対して図中左右にずれるのを防止できる。これにより、連結挿入部35の中心軸と連結凹部34の中心軸との軸ずれを抑制でき、Oリング33により連結部のシール性を安定させることができる。
【0045】
なお、例えば、ヘッド部3aを液体供給部3bよりも図8の紙面と直交する方向にも長くし、液体供給部3bの紙面と直交する側面に対向するガイド部をさらにヘッド部に設けてもよい。これにより、液体供給部3bが上下方向にヘッド部3aに対して相対的に移動するときに、液体供給部3bがヘッド部3aに対し図8の紙面と直交する方向にずれるのも防止できる。
【0046】
また、図8に示す構成では、ガイド部36をヘッド部3aに設けているが、液体供給部3bに設けてもよい。さらに、液体供給部3bのヘッド部3aに対する上下方向の相対的な移動をガイドできればよく、図8の構成に限られるものではない。例えば、ヘッド部のガイド部36に溝を設け、液体供給部にこの溝に嵌まるガイド突起を設けた構造でもよい。
【0047】
図9は、流路部品3の変形例2を示す概略断面図である。
図9に示す変形例2の流路部品3は、液体供給部3bを第二部材としての下部液体供給部3b1と、第三部材としての上部液体供給部3b2とに分割している。すなわち、変形例2は、流路部品3を、ヘッド部3aと、下部液体供給部3b1と、上部液体供給部3b2の3部材で構成したものである。
下部液体供給部3b1とヘッド部3aとを連結する第一連結部10aの構造と、下部液体供給部3b1と上部液体供給部3b2とを連結する第二連結部10bの構造は、上述した連結部10と同様な構造である。すなわち、連結部を構成するいずれか一方に連結凹部を設け、他方に連結凹部に挿入される連結挿入部を設ける。そして、連結凹部の内周面と連結挿入部の外周面との隙間をOリング33でシールした構成である。第一連結部10aをかかる構成とすることで、下部液体供給部3b1をヘッド部3aに対して相対的に移動可能にヘッド部3aに連結できる。また、第二連結部10bをかかる構成とすることで、上部液体供給部3b2を下部液体供給部3b1に対して相対的に移動可能に、下部液体供給部3b1に連結できる。
また、この変形例2では、電装基板4は、第二カバー部材2bと下部液体供給部3b1とネジ6により固定されている。
【0048】
図1に示す液体吐出ヘッドでは、電装基板4は、第二カバー部材2bにのみ固定されている構成であるが、薄板の電装基板4の固定箇所が一箇所であるため、電装基板4の姿勢が安定しないという不具合がある。そのため、電装基板4を第二カバー部材2bと電装基板4に隣接して配置された流路部品3とに固定して、電装基板4の固定箇所を増やすのが好ましい。しかし、電装基板4の線膨張係数と流路部品3の線膨張係数の差により、高温環境下において、熱膨張による電装基板4の寸法変動と、流路部品3の寸法変動とが異なる。その結果、流路部品3よりも剛性の弱い電装基板4に歪みが発生し、電装基板4とFFC5との間に電気的な接触不良が発生するなどの不具合が発生するおそれがある。
【0049】
これに対し、図9に示す変形例2では、流路部品3を互いに相対移動可能な3部材で構成し、電装基板4を、3部材のうちの上下方向中央の下部液体供給部3b1と、第二カバー部材2bとに固定する構成としている。これにより、高温環境下において、下部液体供給部3b1は、電装基板4の熱膨張に追随してヘッド部3aおよび上部液体供給部3b2に対して相対移動する。よって、電装基板4に歪みが発生するのを防止でき、電装基板4とFFC5との間に電気的な接触不良が発生するなどの不具合の発生を防止できる。
【0050】
一方、流路部品3と外装カバー2との線膨張係数の違いによる熱膨張後の流路部品3と外装カバー2との間の上下方向の寸法差や、製造誤差による寸法差は、下部液体供給部3b1に対して、ヘッド部3aと上部液体供給部3b2とが相対的に移動して吸収する。これにより、外装カバー2や流路部品3の歪みも防止できる。
【0051】
また、本実施形態の液体吐出ヘッドは、例えば、製造誤差により電装基板4の上下方向の寸法が規定の寸法と異なる場合の外装カバー2や流路部品3の歪みも抑制できる。すなわち、電装基板4の上下方向の寸法が規定の寸法と異なる場合、下部液体供給部3b1に取り付けられた電装基板4を外装カバー2にネジ止めする際に下部液体供給部3b1がヘッド部3aおよび上部液体供給部3b2に対して相対移動する。これにより、電装基板4の上下方向の寸法誤差を吸収することができ、電装基板4の上下方向の寸法誤差による電装基板4の歪みも抑制できる。
【0052】
なお、図10に示すように電装基板4をヘッド部3aと下部液体供給部3b1とに固定してもよい。これにより、流路部品3と外装カバー2との図中左右方向の熱膨張差によって電装基板4が歪むのを抑制できる。
【0053】
流路部品3を外装カバー2に組み付けるときに、上部液体供給部3b2が下部液体供給部3b1から外れたり、ヘッド部3aが下部液体供給部3b1から外れたりするおそれがある。
【0054】
また、図9図10に示す構成の場合は、電装基板4が下部液体供給部3b1に取り付けられることで、電装基板4により下部液体供給部3b1の上下方向の位置が決まる。そのため、ヘッド部3aと下部液体供給部3b1との隙間、ヘッド部3aと上部液体供給部3b2との隙間をほぼ均等にできる。しかし、図11に示すように、電装基板4が下部液体供給部3b1に取り付けられない構成の場合は、下部液体供給部3b1の上下方向の位置が決まらない。その結果、ヘッド部3aと下部液体供給部3b1との隙間が狭い状態で、下部液体供給部3b1がヘッド部3aに組み付けられる場合がある。この場合、上部液体供給部3b2を外装カバー2にネジ6で接合する際に、下部液体供給部3b1と上部液体供給部3b2との連結が外れるおそれがある。
【0055】
そのため、図12に示すように、ヘッド部3aの下部液体供給部3b1との連結外れを防止する第一外れ防止部37と下部液体供給部3b1と上部液体供給部3b2との連結外れを防止する第二外れ防止部38を設けるのが好ましい。第一外れ防止部37と、第二外れ防止部38は、流路部品3の図中左右両側に設けられている。
【0056】
第一外れ防止部37は、下部液体供給部3b1の下端から水平方向に延びる第一外れ防止突起37bと、ヘッド部3aの上端から上方に向けて延び出した第一フック部37aとで構成されている。そして、この第一フック部37aの先端の爪部が、上方から第一外れ防止突起37bと上下方向で対向している。
【0057】
第二外れ防止部38は、下部液体供給部3b1の上端から水平方向に延びる第二外れ防止突起38bと、上部液体供給部3b2の下端から下方に向けて延び出した第二フック部38aとで構成されている。そして、この第二フック部38aの先端の爪部が、下方から第二外れ防止突起38bと上下方向で対向している。
【0058】
第一外れ防止部37を設けることで、流路部品3を外装カバー2に組み付けるときなどに、ヘッド部3aが下部液体供給部3b1から外れてしまうのを防止でき、組み付けなおしが生じるのを防止できる。また、第二外れ防止部38を設けることで、流路部品3を外装カバー2に組み付けるときなどに、上部液体供給部3b2が下部液体供給部3b1から外れてしまうのを防止でき、組み付けなおしが生じるのを防止できる。
【0059】
また、ヘッド部3aと下部液体供給部3b1との隙間が狭い状態で、下部液体供給部3b1がヘッド部3aに組み付けられ、その組み付け状態で、上部液体供給部3b2を外装カバー2にネジ6で接合する際は、次のようになる。すなわち、ネジ6のネジ込みにより上部液体供給部3b2が上方へ移動していき、上部液体供給部3b2と下部液体供給部3b1との連結が外れる前に第二フック部38aの先端の爪部が第二外れ防止突起38bに当接する。そして、第二フック部38aの先端の爪部により下部液体供給部3b1を持ち上げ、下部液体供給部3b1が上部液体供給部3b2とともに上方へ移動する。これにより、上部液体供給部3b2と下部液体供給部3b1との連結が外れることなく、ネジ6によって上部液体供給部3b2を外装カバーに接合することができる。
【0060】
また、第一フック部37aの爪部以外の箇所は、左右方向外側から第一外れ防止突起37bと対向する。これにより、この第一フック部37aが、下部液体供給部3b1のヘッド部3aに対する相対的な上下方向の移動をガイドするガイド部として機能する。これにより、下部液体供給部3b1の連結凹部34の中心軸とヘッド部3aの連結挿入部35の中心軸との軸ずれを抑制でき、Oリング33により連結部のシール性を安定させることができる。
【0061】
また、同様に、第二外れ防止部38の第二フック部38aが、上部液体供給部3b2の下部液体供給部3b1に対する相対的な上下方向の移動をガイドするガイド部として機能する。これにより、上部液体供給部3b2の連結凹部34の中心軸と下部液体供給部3b1の連結挿入部35の中心軸との軸ずれを抑制でき、Oリング33により連結部のシール性を安定させることができる。
【0062】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について図13及び図14を参照して説明する。図13は同装置の要部平面説明図、図14は同装置の要部側面説明図である。
【0063】
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0064】
このキャリッジ403は、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0065】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0066】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0067】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0068】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0069】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0070】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0071】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0072】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0073】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0074】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0075】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0076】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について図15を参照して説明する。図15は同ユニットの要部平面説明図である。
【0077】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0078】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0079】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について図16を参照して説明する。図16は同ユニットの正面説明図である。
【0080】
この液体吐出ユニットは、液体吐出ヘッド404と、液体吐出ヘッド404の液体供給部444に接続されたチューブ456とで構成されている。
【0081】
なお、図16の符号442は、外装カバー442である。液体供給部444にヘッドタンク441を含むこともできる。また、図16の符号443は、電装基板と電気的接続するコネクタである。
【0082】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0083】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0084】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0085】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0086】
前記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0087】
前記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0088】
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。
【0089】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0090】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0091】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0092】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0093】
例えば、液体吐出ユニットとして、図14で示した液体吐出ユニット440のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0094】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0095】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、図15で示したように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0096】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0097】
また、液体吐出ユニットとして、図16で示したように、液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。
【0098】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0099】
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、前記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
【0100】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0101】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
流路部品3などの内部部品と、内部部品を覆う外装カバー2などの外装部品とを備え、内部部品は、外装部品の内部部品を介して対向する底面などの一方面と天井面などの他方の面とに接合されており、内部部品は、ヘッド部3aなどの第一部材と、内部部品の外装部品に接合された接合面と直交する方向に第一部材に対して相対的に移動可能に第一部材に連結される液体供給部3bなどの第二部材とを備える。
一般的に、外装部品は、箱型形状であり、液体吐出ヘッドの液体を吐出するためのノズルが露出するための開口が底面部に設けられ、外部タンクからの液体を供給するためのチューブが接続される供給ポートが貫通する開口が上面部に設けられている。そして、従来から、内装部品のノズル側の面を外装部品の底面部に接着剤などで接合し、ノズル側と反対側の上面を外装部品の上面部に接着剤などで接合して、これらの開口から液体が外装部品内に侵入しないようにしている。
しかし、内部部品の線膨張係数と外装部品の線膨張係数とが互いに異なり、熱膨張後の双方の部品に内部部品の外装部品に接合された接合面と直交する方向に寸法の差異が生じる場合や、製造誤差により双方の部品に上記接合面と直交する方向に寸法の差異が生じる場合がある。このように、双方の部品に上記接合面と直交する方向に寸法の差異が生じることで、接合箇所で接合面と直交する方向に応力が発生し、この応力によって、外装部品および内装部品の少なくとも一方に歪みが生じるおそれがあった。
これに対し、この態様1では、内部部品の第二部材が、内部部品の第一部材に対し上記接合面と直交する方向に相対的に移動可能に構成されている。これにより、内部部品と外装部品との間に接合面と直交する方向に寸法の差異が生じても、第二部材が第一部材に対して相対的に移動し、内部部品の上記接合面に直交する方向の寸法を、外装部品の上記接合面に直交する方向の寸法に習わせることができる。これにより、外装部品や内装部品に歪みが発生するのを抑制できる。
【0102】
(態様2)
態様1において、液体供給部3bなど第二部材は、接合面と直交する方向に隙間を有してヘッド部3aなどの第一部材に連結される。
これによれば、実施形態で説明したように、流路部品3などの内部部品の接合面間の寸法が、外装カバー2などの外部部品の被接合面間の寸法よりも長い場合や、内部部品の線膨張係数が外装カバーの線膨張係数よりも大きい場合は、この隙間が狭まるように、第二部材が第一部材に対して相対移動し、寸法差を吸収することができる。これにより、外装部品や内装部品に歪みが発生するのを抑制することができる。
【0103】
(態様3)
態様1または2において、外装カバー2などの外装部品の線膨張係数と、流路部品3などの内部部品の線膨張係数とが互いに異なる。
これによれば、実施形態で説明したように、外装カバー2などの外装部品と流路部品3などの内部部品との線膨張係数が異なることで、外装部品と内部部品とに熱膨張差が生じるが、第二部材が第一部材に対して相対的に移動して、この熱膨張差を吸収する。これにより、外装部品や内装部品に歪みが発生するのを抑制することができる。
【0104】
(態様4)
態様1乃至3いずれかにおいて、下部液体供給部3b1などの第二部材と、外装カバー2などの第二部材とは異なる部材とに固定される電装基板4などの第二内部部品を備え、内部部品は、接合面と直交する方向に第二部材に対して相対的に移動可能な上部液体供給部3b2などの第三部材を有する。
これによれば、変形例2で説明したように、下部液体供給部3b1などの第二部材を電装基板4などの第二内部部品の熱膨張による接合面と直交する方向の寸法変動や、製造誤差による接合面と直交する方向の寸法誤差に合わせて、ヘッド部3aなどの第一部材および上部液体供給部3b2などの第三部材に対して相対的に移動することができる。これにより、第二内部部品に歪みが発生するのを抑制することができる。また、外装カバーなどの外装部品と流路部品3などの内装部品の接合面と直交する方向の寸法差は、第三部材および第一部材が第二部材に対して相対的に移動することで、吸収することができ、外装部品や内装部品の歪みも抑制できる。
さらに、第二内部部品を複数の部材に固定することで、第二内部部品を外装部品内での姿勢を安定させることができる。
【0105】
(態様5)
態様1乃至3いずれかにおいて、流路部品3などの内部部品は、接合面と直交する方向に下部液体供給部3b1などの第二部材に対して相対的に移動可能な上部液体供給部3b2などの第三部材を有し、第二部材とヘッド部3aなどの第一部材との外れを防止する第一外れ防止部37と、第二部材と第三部材との外れを防止する第二外れ防止部38とを有する。
これによれば、図11図12を用いて説明したように、流路部品を外装カバーに組み付ける際に、ヘッド部3aなどの第一部材が、下部液体供給部3b1などの第二部材から外れたり、上部液体供給部3b2などの第三部材が第二部材から外れたりするのを防止することができる。
【0106】
(態様6)
態様4または5において、上部液体供給部3b2などの第三部材は、接合面と直交する方向に隙間を有して第二部材に連結される。
これによれば、変形例2で説明したように、下部液体供給部3b1などの第二部材が、ヘッド部3aなどの第一部材および上部液体供給部3b2などの第三部材に対して独立して接合面と直交する方向へ移動できる。これにより、第二部材は、電装基板4などの第二内部部品の熱膨張や寸法誤差に合わせて、移動することができる。
【0107】
(態様7)
態様1乃至6いずれかにおいて、内部部品は、インクなどの液体を流す流路部品3であって、連結部10などの内部部品を構成する部材間の連結箇所を介して一方の部材から他方の部材へ液体を流しており、連結箇所に液体をシールするOリング33などのシール部材を設けた。
これによれば、連結部などの連結箇所からインクなどの液体が漏れ出ないようにできる。
【0108】
(態様8)
態様7においては、流路部品3などの内部部品を構成する部材間の相対的な移動をガイドするガイド部36を備える。
これによれば、変形例1で説明したように、内部部品を構成する部材間の相対的な移動方向に直交する方向の位置ずれを抑制でき、Oリング33などのシール部材のシール性を維持することができる。
【0109】
(態様9)
態様1乃至8いずれかにおいて、流路部品3などの内部部品と外装カバー2などの外装部品との接合箇所にシール部材8などの封止材を設けた。
これによれば、図7を用いて説明したように、流路部品3などの内部部品と外装カバー2などの外装部品との接合箇所の隙間を完全に塞ぐことができ、接合箇所からの外装部品内への液体等の侵入を防止できる。
【0110】
(態様10)
液体吐出ユニットは、態様1乃至9いずれかの液体吐出ヘッドを含む。これによれば、液体吐出ヘッドの歪みを抑制することができ、液体の着弾位置が規定の位置に対してずれるなどの不具合の発生を抑制できる。
【0111】
(態様11)
画像形成装置としてのインクジェット記録装置などの液体を吐出する装置は、態様1乃至9いずれかの液体吐出ヘッド、又は、態様10の液体吐出ユニットを備える。
これによれば、液体を良好に吐出することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 :液体吐出ヘッド
2 :外装カバー
2a :第一カバー部材
2b :第二カバー部材
3 :流路部品
3a :ヘッド部
3b :液体供給部
3b1 :下部液体供給部
3b2 :上部液体供給部
4 :電装基板
6 :ネジ
7 :接着剤
8 :シール部材
10 :連結部
10a :第一連結部
10b :第二連結部
21a :開口部
21b :開口部
21c :開口部
31 :ノズル面
31a :ノズル
32 :供給ポート
33 :Oリング
34 :連結凹部
35 :連結挿入部
36 :ガイド部
37 :第一外れ防止部
37a :第一フック部
37b :第一外れ防止突起
38 :第二外れ防止部
38a :第二フック部
38b :第二外れ防止突起
401 :ガイド部材
403 :キャリッジ
404 :液体吐出ヘッド
405 :主走査モータ
420 :維持回復機構
440 :液体吐出ユニット
441 :ヘッドタンク
442 :外装カバー
444 :液体供給部
450 :液体カートリッジ
451 :カートリッジホルダ
452 :送液ユニット
456 :チューブ
491A :側板
491B :側板
491C :背板
493 :主走査移動機構
494 :供給機構
【先行技術文献】
【特許文献】
【0113】
【特許文献1】特開2021-146573号公報
図1
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図5
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