(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064058
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】焼結材、金属焼結体、焼結材の製造方法、接合体の製造方法、及び接合体
(51)【国際特許分類】
C22C 1/04 20230101AFI20230428BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20230428BHJP
B22F 7/08 20060101ALI20230428BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20230428BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20230428BHJP
C22C 5/08 20060101ALN20230428BHJP
C22C 9/00 20060101ALN20230428BHJP
【FI】
C22C1/04 E
B22F1/00 L
B22F1/00 K
B22F7/08 C
B22F1/14 500
B22F1/14 450
B22F9/00 B
C22C5/08
C22C9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161807
(22)【出願日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2021173794
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】TOPPANエッジ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】関口 卓也
(72)【発明者】
【氏名】陳 伝▲トウ▼
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 克昭
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017AA06
4K017AA08
4K017BA02
4K017BA05
4K017CA01
4K017CA03
4K017CA07
4K017CA08
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4K017DA07
4K018AA02
4K018BA01
4K018BA02
4K018BB01
4K018BB03
4K018BB04
4K018BB05
4K018CA02
4K018CA33
4K018DA22
4K018EA01
4K018JA36
4K018KA62
(57)【要約】
【課題】銅粒子を含有し、大気下において、高圧での加圧を必要とせずに、導電性部品同士を焼成によって接合可能な焼結材の提供。
【解決手段】焼結材であって、前記焼結材は、銀粒子と、銅粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、を含有し、前記銀粒子の1次粒子径が200nm以下であり、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上である、焼結材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結材であって、
前記焼結材は、銀粒子と、銅粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、を含有し、
前記銀粒子の1次粒子径が200nm以下であり、
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上である、焼結材。
【請求項2】
前記焼結材が、さらに、常温下で液状の液状成分を含有し、
前記液状成分が、エーテル結合及び水酸基のいずれか一方又は両方を有する、請求項1に記載の焼結材。
【請求項3】
前記焼結材が、さらに、沸点が150℃以上の抗酸化性化合物を含有する、請求項1又は2に記載の焼結材。
【請求項4】
金属焼結体であって、
前記金属焼結体は、銀焼結層を有し、
前記銀焼結層は銅粒子を含有し、
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上であり、
前記銅粒子は、その表面に酸化層を有しない、金属焼結体。
【請求項5】
金属製部材同士が前記金属焼結体によって接合された金属接合体について、JIS C62137-1-2:2010に準拠して、横押しせん断強度試験を行ったとき、前記金属接合体の横押しせん断強度が20MPa以上である、請求項4に記載の金属焼結体。
【請求項6】
焼結材の製造方法であって、
前記製造方法は、式「-COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀と、含窒素化合物と、還元剤と、を配合して銀含有組成物を調製する工程と、前記銀含有組成物と、銅粒子と、を配合する工程と、を有し、
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上である、焼結材の製造方法。
【請求項7】
接合体の製造方法であって、
前記接合体は、導電性の第1部品と、導電性の第2部品とが、接合部を介して接合されて構成され、前記接合部が金属焼結体であり、
前記製造方法は、前記第1部品と、前記第2部品と、のいずれか一方又は両方の表面に付着している焼結材を、60℃以上の温度で固化させずに加熱することにより、前記焼結材の加熱物を得る工程と、大気下において、前記加熱物を介在させて、前記第1部品と前記第2部品とを接触させながら、前記加熱物を焼成することにより、前記第1部品と前記第2部品とを、前記加熱物から形成された前記金属焼結体によって接合する工程と、を有し、
前記焼結材が、銀粒子と、銅粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、を含有し、
前記銀粒子の1次粒子径が200nm以下であり、
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上である、接合体の製造方法。
【請求項8】
接合体であって、
前記接合体は、導電性の第1部品と、導電性の第2部品とが、接合部を介して接合されて構成され、前記接合部が金属焼結体であり、
前記金属焼結体は、銀焼結層を有し、
前記銀焼結層は銅粒子を含有し、
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上であり、
前記第1部品と、前記第2部品と、の両方の接合面の面積が、625mm2以上であり、
前記第1部品と前記第2部品が、銅製、銀製、アルミニウム製、金製又はニッケル製であり、
前記接合体を、前記第1部品と、前記第2部品と、前記接合部とを含む、大きさが5mm×5mmの小片に切断し、前記小片について、JIS C62137-1-2:2010に準拠して、横押しせん断強度試験を行ったとき、前記小片の横押しせん断強度が18MPa以上である、接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結材、金属焼結体、焼結材の製造方法、接合体の製造方法、及び接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンカーバイド(SiC)半導体、窒化ガリウム(GaN)半導体等のワイドバンドギャップ(WBG)半導体は、次世代のパワー半導体として期待されている。近年は、これらパワー半導体を用いてパワーエレクトロニクス技術を駆使することにより、地球環境対策を推進し、電力消費量を削減する技術が注目されている。
【0003】
例えば、パワーエレクトロニクス技術は、産業機器、鉄道車両等のモータコントロール;ハイブリッドカーや電気自動車における電力変換ロスの削減と、インバータの軽量化等による二酸化炭素の排出量の消減;太陽光や風力発電等の新エネルギーの電力変換;等の種々の分野で適用されるようになってきており、これら技術の高密度化及び高効率化が進んできている。
【0004】
次世代パワー半導体は250℃以上等の高温環境下でも動作可能な特長を有するが, このような高温環境下において、従来の素子接合材料である鉛フリーはんだ(鉛を使用しないはんだ)は、その融点が250℃程度で耐熱性が不十分であるため、使用できない。
【0005】
このような状況下、次世代のパワーエレクトロニクスを高温環境下で動作可能とする技術として、銀(Ag)系ナノ粒子を用いた焼結接合技術の活用が検討されている。銀は、その融点が約1000℃であるため、そのままでは通常の温度で、焼結材としては使用できないが、ナノ粒子化することで表面がより活性となるため、200~300℃程度の比較的低温でも、焼結材として使用可能となる。しかし、銀は貴金属で高価であるため、銀粒子を含有する焼結材を用いると高コストになってしまう。さらに、銀は高湿度条件下では配置位置が移動してしまう、所謂マイグレーション性が高く、また、大気中の硫黄成分によって硫化され、腐食してしまう可能性がある(非特許文献1参照)。
【0006】
このような問題点の解決策として、近年、比較的安価でマイグレーション性が低い銅(Cu)系のナノ粒子を含有する焼結材料が注目されている。しかし、銅は銀とは異なり、著しく酸化され易い金属である。そのため、銅系ナノ粒子を用いる場合には、還元雰囲気下や、少なくとも5.5MPa以上の高圧力条件下で加熱焼結させないと、十分な接合強度が得られない(非特許文献2参照)。そして、高圧力条件下での焼結では、単にコストが高くなるだけでなく、チップ及びデバイスが損傷し易く、パワーエレクトロニクスの不良の原因となってしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】D. Li, et.al, Reducing Migration of Sintered Ag for Power Devices Operating at High Temperature, IEEE Transactions on Power Electronics, vol. 35, no. 12, (2020) pp. 12646-12650
【非特許文献2】Jeong-Won Yoon,et.al; Effect of Sintering Conditions on the Mechanical Strength of Cu-Sintered Joints for High-Power Applications, Materials, 2018, 11, 2105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、銅粒子を含有し、大気下において、高圧での加圧を必要とせずに、導電性部品同士を焼成によって接合可能な焼結材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] 焼結材であって、前記焼結材は、銀粒子と、銅粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、を含有し、前記銀粒子の1次粒子径が200nm以下であり、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上である、焼結材。
[2] 前記焼結材が、さらに、常温下で液状の液状成分を含有し、前記液状成分が、エーテル結合及び水酸基のいずれか一方又は両方を有する、[1]に記載の焼結材。
[3] 前記焼結材が、さらに、沸点が150℃以上の抗酸化性化合物を含有する、[1]又は[2]に記載の焼結材。
【0010】
[4] 金属焼結体であって、前記金属焼結体は、銀焼結層を有し、前記銀焼結層は銅粒子を含有し、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上であり、前記銅粒子は、その表面に酸化層を有しない、金属焼結体。
[5] 金属製部材同士が前記金属焼結体によって接合された金属接合体について、JIS C62137-1-2:2010に準拠して、横押しせん断強度試験を行ったとき、前記金属接合体の横押しせん断強度が20MPa以上である、[4]に記載の金属焼結体。
【0011】
[6] 焼結材の製造方法であって、前記製造方法は、式「-COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀と、含窒素化合物と、還元剤と、を配合して銀含有組成物を調製する工程と、前記銀含有組成物と、銅粒子と、を配合する工程と、を有し、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上である、焼結材の製造方法。
【0012】
[7] 接合体の製造方法であって、前記接合体は、導電性の第1部品と、導電性の第2部品とが、接合部を介して接合されて構成され、前記接合部が金属焼結体であり、前記製造方法は、前記第1部品と、前記第2部品と、のいずれか一方又は両方の表面に付着している焼結材を、60℃以上の温度で固化させずに加熱することにより、前記焼結材の加熱物を得る工程と、大気下において、前記加熱物を介在させて、前記第1部品と前記第2部品とを接触させながら、前記加熱物を焼成することにより、前記第1部品と前記第2部品とを、前記加熱物から形成された前記金属焼結体によって接合する工程と、を有し、前記焼結材が、銀粒子と、銅粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、を含有し、前記銀粒子の1次粒子径が200nm以下であり、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上である、接合体の製造方法。
【0013】
[8] 接合体であって、前記接合体は、導電性の第1部品と、導電性の第2部品とが、接合部を介して接合されて構成され、前記接合部が金属焼結体であり、前記金属焼結体は、銀焼結層を有し、前記銀焼結層は銅粒子を含有し、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上であり、前記第1部品と、前記第2部品と、の両方の接合面の面積が、625mm2以上であり、前記第1部品と前記第2部品が、銅製、銀製、アルミニウム製、金製又はニッケル製であり、前記接合体を、前記第1部品と、前記第2部品と、前記接合部とを含む、大きさが5mm×5mmの小片に切断し、前記小片について、JIS C62137-1-2:2010に準拠して、横押しせん断強度試験を行ったとき、前記小片の横押しせん断強度が18MPa以上である、接合体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、銅粒子を含有し、大気下において、高圧での加圧を必要とせずに、導電性部品同士を焼成によって接合可能な焼結材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る焼結材を用いて製造された接合体の一例を、模式的に示す断面図である。
【
図2】接合部として、本発明の一実施形態に係る焼結材を用いて形成された金属焼結体を備えた、半導体装置の一例を、模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法の他の例を模式的に説明するための断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法のさらに他の例を模式的に説明するための断面図である。
【
図6】実施例9で製造した接合体の断面を、SEM-EDSにより観察したときに取得した撮像データである。
【
図7】実施例11で製造した接合体の断面を、SEM-EDSにより観察したときに取得した撮像データである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
◇焼結材
本発明の一実施形態に係る焼結材は、銀粒子と、銅粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、を含有し、前記銀粒子の1次粒子径が200nm以下であり、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径(本明細書においては、「D50」と称することがある)が、1μm以上である。
本実施形態の焼結材は、1次粒子径が小さい銀粒子と、D50が比較的大きい銅粒子と、をともに含有していることにより、その保存中と、その焼成中での、銅粒子の表面における酸化層の形成が抑制され、大気下において、その高圧での加圧を必要とせずに、導電性部品(例えば、金属製部材)同士を焼成によって、十分な強度で接合できる。
【0017】
<<銀粒子>>
前記銀粒子の1次粒子径は、200nm以下であり、例えば、150nm以下、100nm以下、及び50nm以下のいずれかであってもよい。銀粒子の1次粒子径が200nm以下であることで、大気下における前記焼結材の焼成時に、接合対象である導電性部品と前記焼結材を用いて得られた積層物に対して、高い圧力を加えなくても、金属焼結体(接合部)によって、導電性部品同士を十分な強度で接合できる。
【0018】
本明細書においては、特に断りのない限り、「銀粒子」とは、1次粒子径が200nm以下である上述の銀粒子を意味する。
【0019】
銀粒子の1次粒子径の下限値は、特に限定されない。例えば、前記1次粒子径が1nm以上であることで、金属焼結体の製造がより容易となる。
【0020】
銀粒子の平均2次粒子径は、2000nm以下であることが好ましく、例えば、1500nm以下、1000nm以下、及び500nm以下のいずれかであってもよい。銀粒子の平均2次粒子径が前記上限値以下であることで、大気下における焼結材の焼成時に、接合対象である導電性部品と前記焼結材を用いて得られた積層物に対して、高い圧力を加えなくても、金属焼結体(接合部)によって、導電性部品同士を十分な強度で接合できる。
【0021】
銀粒子の平均2次粒子径の下限値は、特に限定されない。例えば、前記平均2次粒子径が100nm以上であることで、金属焼結体でのクラックの発生がより抑制される。
【0022】
本明細書において、「銀粒子の平均2次粒子径」とは、特に断りのない限り、実施例で後述するように、焼結材の凍結破断を行い、これにより得られた凍結破断物の破断面を観察し、前記破断面における個々の銀粒子凝集体の最大径を測定したときの、前記最大径の合計値を、銀粒子凝集体の観測数(前記最大径を測定した個数)で除することにより得られた、前記最大径の平均値を意味する。
【0023】
銀粒子は、構成原子として銀原子を有する銀含有化合物の化学反応によって形成されたものであることが好ましい。
前記銀含有化合物は、銀原子を有する無機化合物(無機銀化合物)と、銀原子を有する有機化合物(有機銀化合物)と、のいずれであってもよい。
【0024】
焼結材の製造時に用いる前記銀含有化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0025】
前記銀含有化合物としては、例えば、その熱分解又は還元によって、銀を形成する化合物が挙げられる。
このような銀含有化合物としては、例えば、式「-COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀(カルボン酸の銀塩)が挙げられる。
【0026】
銀粒子が前記カルボン酸銀の化学反応によって形成されたものである場合、焼結材は、銀含有組成物と、前記銅粒子と、が配合(混合)されてなり、前記銀含有組成物が、前記カルボン酸銀と、前記含窒素化合物と、前記還元剤と、が配合(混合)されてなる組成物であることが好ましい。前記銀含有組成物においては、その加熱処理、又は前記還元剤の作用等によって、前記カルボン酸銀から前記銀粒子が生成する。そして、前記カルボン酸銀と、含窒素化合物と、還元剤と、の配合量(混合量)を調節することで、前記銀含有組成物と、前記銅粒子と、を配合すれば、別途、含窒素化合物と、還元剤と、を配合しなくても、銀粒子と、銅粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、を含有する焼結材が得られる。
【0027】
◎銀含有組成物
<カルボン酸銀>
前記カルボン酸銀は、式「-COOAg」で表される基を有していれば特に限定されない。例えば、式「-COOAg」で表される基の数は1個のみであってもよいし、2個以上であってもよい。また、カルボン酸銀中の式「-COOAg」で表される基の位置も特に限定されない。
【0028】
前記カルボン酸銀としては、例えば、式「-COOAg」で表される基のβ位に、カルボニル基(-C(=O)-)を有するβ-ケトカルボン酸銀と、前記β-ケトカルボン酸銀以外のカルボン酸銀と、が挙げられる。
【0029】
[β-ケトカルボン酸銀(1)]
前記β-ケトカルボン酸銀としては、例えば、下記一般式(1)で表わされるβ-ケトカルボン酸銀(本明細書においては、「β-ケトカルボン酸銀(1)」と略記することがある)が挙げられる。
【0030】
【化1】
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R
1-CY
1
2-」、「CY
1
3-」、「R
1-CHY
1-」、「R
2O-」、「R
5R
4N-」、「(R
3O)
2CY
1-」若しくは「R
6-C(=O)-CY
1
2-」で表される基であり;
Y
1はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;R
1は炭素数1~19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;R
2は炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり;R
3は炭素数1~16の脂肪族炭化水素基であり;R
4及びR
5はそれぞれ独立に炭素数1~18の脂肪族炭化水素基であり;R
6は炭素数1~19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO-」で表される基であり;
X
1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N-フタロイル-3-アミノプロピル基、2-エトキシビニル基、又は一般式「R
7O-」、「R
7S-」、「R
7-C(=O)-」若しくは「R
7-C(=O)-O-」で表される基であり;
R
7は、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
【0031】
式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R1-CY1
2-」、「CY1
3-」、「R1-CHY1-」、「R2O-」、「R5R4N-」、「(R3O)2CY1-」若しくは「R6-C(=O)-CY1
2-」で表される基である。
【0032】
Rにおける炭素数1~20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
【0033】
Rにおける直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、3-エチルブチル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1,1-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、4,4-ジメチルペンチル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、4-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、1-プロピルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、5-エチルヘキシル基、1,1-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、5,5-ジメチルヘキシル基、1,2,3-トリメチルペンチル基、1,2,4-トリメチルペンチル基、2,3,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、1,4,4-トリメチルペンチル基、3,4,4-トリメチルペンチル基、1,1,2-トリメチルペンチル基、1,1,3-トリメチルペンチル基、1,1,4-トリメチルペンチル基、1,2,2-トリメチルペンチル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、1,3,3-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、3,3,4-トリメチルペンチル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
【0034】
Rにおける前記アルケニル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C-C)が二重結合(C=C)に置換された基等が挙げられる。
このような前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基(エテニル基、-CH=CH2)、アリル基(2-プロペニル基、-CH2-CH=CH2)、1-プロペニル基(-CH=CH-CH3)、イソプロペニル基(-C(CH3)=CH2)、1-ブテニル基(-CH=CH-CH2-CH3)、2-ブテニル基(-CH2-CH=CH-CH3)、3-ブテニル基(-CH2-CH2-CH=CH2)、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基等が挙げられる。
【0035】
Rにおける前記アルキニル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C-C)が三重結合(C≡C)に置換された基等が挙げられる。
このような前記アルキニル基としては、例えば、エチニル基(-C≡CH)、プロパルギル基(-CH2-C≡CH)等が挙げられる。
【0036】
Rにおける炭素数1~20の脂肪族炭化水素基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。また、前記脂肪族炭化水素基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての置換基が同一であってもよいし、すべての置換基が異なっていてもよく、一部の置換基のみが異なっていてもよい。
【0037】
Rにおけるフェニル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、炭素数が1~16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、前記脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基(-OH)、シアノ基(-C≡N)、フェノキシ基(-O-C6H5)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0038】
RにおけるY1は、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子である。そして、一般式「R1-CY1
2-」、「CY1
3-」及び「R6-C(=O)-CY1
2-」においては、それぞれ複数個のY1は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0039】
RにおけるR1は、炭素数1~19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基(C6H5-)である。R1における前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるR2は、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、例えば、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるR3は、炭素数1~16の脂肪族炭化水素基である。R3における前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるR4及びR5は、それぞれ独立に炭素数1~18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R4及びR5は、互いに同一でも異なっていてもよく、R4及びR5における前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるR6は、炭素数1~19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO-」で表される基である。R6における前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0040】
Rは、上記の中でも、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、一般式「R6-C(=O)-CY1
2-」で表される基、水酸基又はフェニル基であることが好ましい。そして、R6は、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、水酸基又は式「AgO-」で表される基であることが好ましい。
【0041】
一般式(1)において、X1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基(C6H5-CH2-)、シアノ基、N-フタロイル-3-アミノプロピル基、2-エトキシビニル基(C2H5-O-CH=CH-)、又は一般式「R7O-」、「R7S-」、「R7-C(=O)-」若しくは「R7-C(=O)-O-」で表される基である。
X1における炭素数1~20の脂肪族炭化水素基としては、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0042】
X1におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
X1におけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(-NO2)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基及びベンジル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0043】
X1におけるR7は、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(C4H3S-)、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C6H5-C6H4-)である。R7における前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。また、R7におけるフェニル基及びジフェニル基が有する前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基及びジフェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R7がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、X1において隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2-チエニル基及び3-チエニル基のいずれでもよい。
【0044】
一般式(1)において、2個のX1は、2個のカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して1個の基として結合していてもよい。このようなX1としては、例えば、式「=CH-C6H4-NO2」で表される基等が挙げられる。
【0045】
X1は、上記の中でも、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、ベンジル基、又は一般式「R7-C(=O)-」で表される基であることが好ましく、少なくとも一方のX1が水素原子であることが好ましい。
【0046】
β-ケトカルボン酸銀(1)は、2-メチルアセト酢酸銀(CH3-C(=O)-CH(CH3)-C(=O)-OAg)、アセト酢酸銀(CH3-C(=O)-CH2-C(=O)-OAg)、2-エチルアセト酢酸銀(CH3-C(=O)-CH(CH2CH3)-C(=O)-OAg)、プロピオニル酢酸銀(CH3CH2-C(=O)-CH2-C(=O)-OAg)、イソブチリル酢酸銀((CH3)2CH-C(=O)-CH2-C(=O)-OAg)、ピバロイル酢酸銀((CH3)3C-C(=O)-CH2-C(=O)-OAg)、カプロイル酢酸銀(CH3(CH2)3CH2-C(=O)-CH2-C(=O)-OAg)、2-n-ブチルアセト酢酸銀(CH3-C(=O)-CH(CH2CH2CH2CH3)-C(=O)-OAg)、2-ベンジルアセト酢酸銀(CH3-C(=O)-CH(CH2C6H5)-C(=O)-OAg)、ベンゾイル酢酸銀(C6H5-C(=O)-CH2-C(=O)-OAg)、ピバロイルアセト酢酸銀((CH3)3C-C(=O)-CH2-C(=O)-CH2-C(=O)-OAg)、イソブチリルアセト酢酸銀((CH3)2CH-C(=O)-CH2-C(=O)-CH2-C(=O)-OAg)、2-アセチルピバロイル酢酸銀((CH3)3C-C(=O)-CH(-C(=O)-CH3)-C(=O)-OAg)、2-アセチルイソブチリル酢酸銀((CH3)2CH-C(=O)-CH(-C(=O)-CH3)-C(=O)-OAg)、又はアセトンジカルボン酸銀(AgO-C(=O)-CH2-C(=O)-CH2-C(=O)-OAg)であることが好ましい。
【0047】
銀含有組成物の製造時に用いるβ-ケトカルボン酸銀(1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0048】
[カルボン酸銀(4)]
前記β-ケトカルボン酸銀以外のカルボン酸銀としては、例えば、下記一般式(4)で表されるカルボン酸銀(本明細書においては、「カルボン酸銀(4)」と略記することがある)が挙げられる。
【0049】
【化2】
(式中、R
8は炭素数1~19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基又は式「-C(=O)-OAg」で表される基であり、前記脂肪族炭化水素基がメチレン基を有する場合、1個以上の前記メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。)
【0050】
式中、R8は炭素数1~19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基(-COOH)又は式「-C(=O)-OAg」で表される基である。
R8における前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1~19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。ただし、R8における前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~15であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
【0051】
R8における前記脂肪族炭化水素基がメチレン基(-CH2-)を有する場合、1個以上の前記メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。カルボニル基で置換されていてもよいメチレン基の数及び位置は特に限定されず、すべてのメチレン基がカルボニル基で置換されていてもよい。ここで「メチレン基」とは、単独の式「-CH2-」で表される基だけでなく、式「-CH2-」で表される基が複数個連なったアルキレン基中の1個の式「-CH2-」で表される基も含むものとする。
【0052】
カルボン酸銀(4)は、ピルビン酸銀(CH3-C(=O)-C(=O)-OAg)、酢酸銀(CH3-C(=O)-OAg)、酪酸銀(CH3-(CH2)2-C(=O)-OAg)、イソ酪酸銀((CH3)2CH-C(=O)-OAg)、2-エチルへキサン酸銀(CH3-(CH2)3-CH(CH2CH3)-C(=O)-OAg)、ネオデカン酸銀、シュウ酸銀(AgO-C(=O)-C(=O)-OAg)、又はマロン酸銀(AgO-C(=O)-CH2-C(=O)-OAg)であることが好ましい。また、上記のシュウ酸銀(AgO-C(=O)-C(=O)-OAg)及びマロン酸銀(AgO-C(=O)-CH2-C(=O)-OAg)の2個の式「-COOAg」で表される基のうち、1個が式「-COOH」で表される基となったもの(HO-C(=O)-C(=O)-OAg、HO-C(=O)-CH2-C(=O)-OAg)も好ましい。
【0053】
銀含有組成物の製造時に用いるカルボン酸銀(4)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0054】
銀含有組成物の製造時に用いる前記カルボン酸銀は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0055】
前記カルボン酸銀は、前記β-ケトカルボン酸銀又はシュウ酸銀であることが好ましく、前記β-ケトカルボン酸銀(1)又はシュウ酸銀であることがより好ましい。
すなわち、銀粒子は、前記β-ケトカルボン酸銀若しくはシュウ酸銀の熱分解又は還元によって得られたものであることが好ましく、前記β-ケトカルボン酸銀(1)若しくはシュウ酸銀の熱分解又は還元によって得られたものであることがより好ましい。
【0056】
銀含有組成物において、銀含有組成物の総質量に対する、銀含有組成物中の前記カルボン酸銀に由来する銀の合計質量の割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、上述のように、大気下における焼結材の焼成時に高い圧力を加えなくても、金属焼結体(接合部)によって、導電性部品同士をより高い強度で接合できる。前記割合の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。例えば、前記割合が85質量%以下である銀含有組成物は、その取り扱い性がより良好である。
本明細書において、「カルボン酸銀に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀含有組成物の製造時に配合されたカルボン酸銀中の銀と同義であり、配合後も引き続きカルボン酸銀を構成している銀と、配合後にカルボン酸銀の分解で生じた分解物中の銀と、配合後にカルボン酸銀の熱分解又は還元によって生じた銀(銀粒子)と、のすべてを含む概念である。
【0057】
<含窒素化合物>
前記含窒素化合物としては、例えば、炭素数25以下のアミン化合物が挙げられる。
【0058】
[アミン化合物]
前記アミン化合物は、炭素数が1~25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれであってもよい。
前記アミン化合物は、鎖状及び環状のいずれであってもよい。
前記アミン化合物において、アミン部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンの場合には、アミノ基(-NH2)を構成する窒素原子)の数は1個であってもよいし、2個以上であってもよい。また、アミン化合物中の、アミン部位を構成する窒素原子の位置も、特に限定されない。
【0059】
前記第1級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいモノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が挙げられる。
【0060】
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、このようなアルキル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基と同様のものが挙げられる。前記アルキル基は、炭素数が1~19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、例えば、n-ブチルアミン、n-へキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミン、n-オクタデシルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、3-アミノペンタン、3-メチルブチルアミン、2-ヘプチルアミン(2-アミノヘプタン)、2-アミノオクタン、2-エチルヘキシルアミン、1,2-ジメチル-n-プロピルアミン等が挙げられる。
【0061】
前記モノアリールアミンを構成するアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。前記アリール基の炭素数は、6~10であることが好ましい。
【0062】
前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、芳香族環骨格を構成する原子として、ヘテロ原子を有するものであり、前記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子等が挙げられる。また、芳香族環骨格を構成する前記へテロ原子の数は特に限定されず、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。2個以上である場合、これらへテロ原子は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これらへテロ原子は、すべて同じであってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけ異なっていてもよい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれであってもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3~12員環であることが好ましい。
【0063】
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1~4個有する単環状のものとしては、例えば、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、フラニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、チエニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する単環状のものとしては、例えば、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する単環状のものとしては、例えば、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1~5個有する多環状のものとしては、例えば、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1~3個有する多環状のものとしては、例えば、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
【0064】
前記ジアミンは、アミノ基を2個有していればよく、2個のアミノ基の位置関係は特に限定されない。好ましい前記ジアミンとしては、例えば、前記モノアルキルアミン、モノアリールアミン又はモノ(ヘテロアリール)アミンにおいて、アミノ基(-NH2)を構成する水素原子以外の1個の水素原子が、アミノ基で置換されたもの等が挙げられる。
前記ジアミンは炭素数が1~10であることが好ましく、より好ましいものとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン等が挙げられる。
【0065】
前記第2級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(ヘテロアリール)アミン等が挙げられる。
【0066】
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1~9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、例えば、N-メチル-n-ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2-エチルへキシル)アミン等が挙げられる。
【0067】
前記ジアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6~10であることが好ましい。また、ジアリールアミン一分子中の2個のアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0068】
前記ジ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基と同様であり、6~12員環であることが好ましい。また、ジ(ヘテロアリール)アミン一分子中の2個のヘテロアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0069】
前記第3級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいトリアルキルアミン、ジアルキルモノアリールアミン等が挙げられる。
【0070】
前記トリアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1~19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、トリアルキルアミン一分子中の3個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個のアルキル基は、すべて同じであってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ異なっていてもよい。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、例えば、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0071】
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルモノアリールアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6~10であることが好ましい。
【0072】
ここまでは、主に鎖状のアミン化合物について説明したが、前記アミン化合物は、アミン部位を構成する窒素原子が環骨格構造(複素環骨格構造)の一部であるようなヘテロ環化合物であってもよい。すなわち、前記アミン化合物は環状アミンであってもよい。この時の環(アミン部位を構成する窒素原子を含む環)構造は、単環状及び多環状のいずれであってもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されず、脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよい。
環状アミンで好ましいものとして、例えば、ピリジン等が挙げられる。
【0073】
前記第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミン及び第4級アンモニウム塩において、「置換基で置換されていてもよい水素原子」とは、アミン部位を構成する窒素原子に結合している水素原子以外の水素原子である。この時の置換基の数は特に限定されず、1個であってもよいし、2個以上であってもよく、前記水素原子のすべてが置換基で置換されていてもよい。置換基の数が複数の場合には、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数個の置換基はすべて同じであってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ異なっていてもよい。また、置換基の位置も特に限定されない。
【0074】
前記アミン化合物における前記置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、トリフルオロメチル基(-CF3)等が挙げられる。ここで、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0075】
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基としてアリール基を有する、炭素数が1~9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基として好ましくは炭素数が1~5のアルキル基を有する、炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。このような置換基を有するモノアルキルアミンとして、具体的には、例えば、2-フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、2,3-ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、例えば、2-ブロモベンジルアミン等が挙げられる。ここで、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0076】
前記モノアリールアミンを構成するアリール基が置換基を有する場合、前記アリール基は、置換基としてハロゲン原子を有する、炭素数が6~10のアリール基であることが好ましい。このような置換基を有するモノアリールアミンとして、具体的には、例えば、ブロモフェニルアミン等が挙げられる。ここで、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0077】
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基として水酸基又はアリール基を有する、炭素数が1~9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するジアルキルアミンとして、具体的には、例えば、ジエタノールアミン、N-メチルベンジルアミン等が挙げられる。
【0078】
銀含有組成物の製造時に用いる前記含窒素化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0079】
前記アミン化合物は、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-へキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミン、n-オクタデシルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、3-アミノペンタン、3-メチルブチルアミン、2-ヘプチルアミン、2-アミノオクタン、2-エチルヘキシルアミン、2-フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、N-メチル-n-ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、N-メチルベンジルアミン、ジ(2-エチルへキシル)アミン、1,2-ジメチル-n-プロピルアミン、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン又はN,N-ジメチルシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
【0080】
銀含有組成物において、前記含窒素化合物の配合量は、前記カルボン酸銀の配合量1モルあたり、0.1~5モルであることが好ましく、0.1~3モルであることがより好ましく、例えば、0.2~2モル、及び0.2~1モルのいずれかであってもよい。前記配合量が、このような範囲であることで、上述のように、大気下における焼結材の焼成時に高い圧力を加えなくても、金属焼結体(接合部)によって、導電性部品同士をより高い強度で接合できる。
【0081】
<還元剤>
前記還元剤は、特に限定されない。
【0082】
銀含有組成物の製造時に用いる還元剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0083】
前記還元剤で好ましいものとしては、例えば、ギ酸が挙げられる。
【0084】
銀含有組成物において、還元剤の配合量は、前記カルボン酸銀の配合量1モルあたり、0.2~5モルであることが好ましく、0.3~3モルであることがより好ましく、例えば、0.4~2モル、及び0.4~1モルのいずれかであってもよい。前記配合量が、このような範囲であることで、上述のように、大気下における焼結材の焼成時に高い圧力を加えなくても、金属焼結体(接合部)によって、導電性部品同士をより高い強度で接合できる。
【0085】
<他の成分>
銀含有組成物は、前記カルボン酸銀と、前記含窒素化合物と、前記還元剤と、のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(ii)」と称することがある)が配合されていてもよい。
【0086】
銀含有組成物の製造時に用いる前記他の成分(他の成分(ii))は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0087】
◎銀含有組成物の製造方法
前記銀含有組成物は、前記カルボン酸銀(式「-COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀)と、前記含窒素化合物と、前記還元剤と、を配合することで得られる。すなわち、前記銀含有組成物の製造方法は、前記カルボン酸銀と、前記含窒素化合物と、前記還元剤と、を配合して銀含有組成物を調製する工程を有する。
各成分の配合後は、得られたものをそのまま銀含有組成物としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の後処理操作又は精製操作を行って得られたものを銀含有組成物としてもよい。
【0088】
各成分の配合順序は、特に限定されない。各成分の好ましい配合方法の一例としては、前記含窒素化合物に前記カルボン酸銀を加えて混合し、次いで、得られた混合物に前記還元剤を加えて混合する配合方法が挙げられる。
前記他の成分(ii)を配合する場合には、前記他の成分(ii)を、その種類に応じて適したタイミングで、配合すればよい。
【0089】
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0090】
各成分の配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、-5~60℃であることが好ましい。そして、配合時の温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
また、各成分の配合時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、10分~36時間であることが好ましい。
【0091】
上述の製造方法により、上述の1次粒子径を有する銀粒子を含有する銀含有組成物が得られる。このとき、例えば、各工程での撹拌条件等、銀含有組成物の製造条件を調節することによって、銀粒子の1次粒子径を調節してもよい。
上述の製造方法によれば、上述の平均2次粒子径を有する銀粒子を含有する銀含有組成物も得られる。銀粒子の平均2次粒子径も、各工程での撹拌条件等、銀含有組成物の製造条件を調節することによって、調節できる。
【0092】
前記銀含有組成物の使用の有無によらず、焼結材における、焼結材の総質量に対する、銀粒子の含有量の割合(本明細書においては、「銀粒子の濃度」と称することがある)は、25~80質量%であることが好ましく、例えば、50~80質量%であってもよい。前記割合(銀粒子の濃度)がこのような範囲であることで、上述のように、大気下における焼結材の焼成時に高い圧力を加えなくても、金属焼結体(接合部)によって、導電性部品同士をより高い強度で接合できる。
【0093】
<<銅粒子>>
前記銅粒子の形状は特に限定されない。例えば、前記銅粒子は球形状(球形粒子)であってもよいし、フレーク状等の扁平形状(扁平粒子)であってもよい。
【0094】
前記銅粒子のD50は1μm以上であり、例えば、1.5μm以上、及び2μm以上のいずれかであってもよい。銅粒子のD50が前記下限値以上であることで、銅粒子の表面積が小さくなるため、焼結材の保存中と、その焼成中での、銅粒子の表面における酸化層の形成が抑制され、大気下において、焼結材の高圧での加圧を必要とせずに、導電性部品同士を焼成によって、十分な強度で接合できるという効果が高くなる。
【0095】
本明細書においては、特に断りのない限り、「銅粒子」とは、D50が1μm以上である上述の銅粒子を意味する。
【0096】
銅粒子のD50の上限値は、特に限定されない。例えば、D50が20μm以下であることで、金属焼結体の製造がより容易となる。
【0097】
前記銀含有組成物の使用の有無によらず、焼結材において、銅粒子の含有量は、銀粒子の含有量に対して、0.3~2.5質量倍であることが好ましく、0.5~2質量倍であることがより好ましい。銅粒子の前記含有量がこのような範囲であることで、上述のように、大気下における焼結材の焼成時に高い圧力を加えなくても、金属焼結体(接合部)によって、導電性部品同士をより高い強度で接合できる。
【0098】
前記銀含有組成物を用いる場合、焼結材において、前記銅粒子の配合量は、銀含有組成物の配合量に対して、0.3~1.5質量倍であることが好ましく、例えば、0.6~1.5質量倍、及び0.9~1.5質量倍のいずれであってもよいし、0.3~1.2質量倍、及び0.3~0.9質量倍のいずれであってもよい。
【0099】
<<他の成分>>
焼結材は、銀粒子と、銅粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、のいずれにも該当しない他の成分(本明細書においては、「他の成分(i)」と称することがある)を含有していてもよい。
【0100】
焼結材が含有する前記他の成分(他の成分(i))は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0101】
前記他の成分(他の成分(i))は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。例えば、前記銀含有組成物を用いた場合、他の成分(i)は、銀含有組成物の配合成分である他の成分(ii)であってもよい(銀含有組成物中の他の成分(ii)がそのまま焼結材に含有されていてもよい)し、銀含有組成物の配合成分ではない成分であってもよい。
【0102】
好ましい前記他の成分(他の成分(i))としては、例えば、エーテル結合及び水酸基のいずれか一方又は両方を有し、かつ常温下で液状の液状成分(本明細書においては、単に「液状成分」と称することがある);沸点が150℃以上の抗酸化性化合物(本明細書においては、単に「抗酸化性化合物」と称することがある)、溶媒等が挙げられる。
焼結材が前記液状成分を含有していることで、接合体の接合強度がより大きくなる。
焼結材が前記抗酸化性化合物を含有していることで、接合部の内部の銅粒子など、接合部とその接合対象物のうち、銅で構成された部位の表面において、酸化層の形成を抑制することが可能となる。
焼結材が前記溶媒を含有していることで、焼結材の取り扱い性が向上することがある。
【0103】
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0104】
<液状成分>
前記液状成分は、エーテル結合(-O-)及び水酸基(-OH)のいずれか一方又は両方を有し、かつ常温下で液状であれば、特に限定されない。
すなわち、液状成分としては、1個又は2個以上のエーテル結合を有し、水酸基を有しない液状成分(すなわちエーテル);1個又は2個以上の水酸基を有し、エーテル結合を有しない液状成分(すなわちアルコール);1個又は2個以上のエーテル結合及び1個又は2個以上の水酸基を共に有する液状成分(すなわちアルコールエーテル)が挙げられる。
【0105】
[エーテル]
液状成分である前記エーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0106】
焼結材が含有する、前記他の成分(他の成分(i))であるエーテルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0107】
[アルコール]
液状成分である前記アルコールとしては、例えば、エチレングリコール(EG)、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール等が挙げられる。
【0108】
焼結材が含有する、前記他の成分(他の成分(i))であるアルコールは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0109】
[アルコールエーテル]
液状成分である前記アルコールエーテルとしては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノへキシルエーテル等が挙げられる。
【0110】
焼結材が含有する、前記他の成分(他の成分(i))であるアルコールエーテルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0111】
焼結材が含有する、前記他の成分(他の成分(i))である液状成分は、エーテル、アルコール及びアルコールエーテルからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0112】
液状成分を用いる場合、焼結材において、液状成分の含有量は、前記銅粒子の含有量に対して、0.05~0.15質量倍であることが好ましく、例えば、0.07~0.13質量倍、及び0.09~0.11質量倍のいずれかであってもよい。液状成分の含有量がこのような範囲であることで、上述の接合強度がより大きくなる。
【0113】
<抗酸化性化合物>
焼結材が含有する、前記他の成分(他の成分(i))である抗酸化性化合物は、その沸点が150℃以上であれば、特に限定されない。
好ましい前記抗酸化性化合物としては、例えば、アスコルビン酸、トコフェロール、カテキン、イソフラボン、アントシアニン、フェルラ酸等が挙げられる。
【0114】
焼結材が含有する、前記他の成分(他の成分(i))である抗酸化性化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0115】
焼結材が含有する、前記他の成分(他の成分(i))である抗酸化性化合物は、アスコルビン酸、トコフェロール、カテキン、イソフラボン、アントシアニン及びフェルラ酸からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0116】
抗酸化性化合物を用いる場合、焼結材において、抗酸化性化合物の含有量は、前記銅粒子の含有量に対して、0.005~0.015質量倍であることが好ましく、例えば、0.007~0.013質量倍、及び0.009~0.011質量倍のいずれであってもよい。抗酸化性化合物の含有量がこのような範囲であることで、上述のように、銅で構成された部位の表面において、酸化層の形成が抑制される効果が、より高くなる。
【0117】
<溶媒>
前記溶媒は、本発明の効果を損なわない限り、前記液状成分(エーテル、アルコール、アルコールエーテル)と、前記抗酸化性化合物と、のいずれにも該当しない、常温で液状の成分であれば、特に限定されない。
【0118】
焼結材が含有する、前記他の成分(他の成分(i))である溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0119】
<<焼結材の一例>>
本実施形態の好ましい焼結材の一例としては、焼結材であって、前記焼結材は、銀粒子と、銅粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、を含有し、前記銀粒子の1次粒子径が200nm以下であり、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上であり、
前記焼結材において、前記銅粒子の含有量が、前記銀粒子の含有量に対して、好ましくは0.3~2.5質量倍、より好ましくは0.5~2質量倍である、焼結材が挙げられる。
【0120】
本実施形態の好ましい焼結材の他の例としては、焼結材であって、前記焼結材は、銀粒子と、銅粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、常温下で液状の液状成分と、を含有し、前記銀粒子の1次粒子径が200nm以下であり、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上であり、
前記液状成分が、エーテル結合及び水酸基のいずれか一方又は両方を有し、
前記焼結材において、前記銅粒子の含有量が、前記銀粒子の含有量に対して、好ましくは0.3~2.5質量倍、より好ましくは0.5~2質量倍であり、
前記焼結材において、前記液状成分の含有量が、前記銅粒子の含有量に対して、0.05~0.15質量倍、0.07~0.13質量倍、及び0.09~0.11質量倍のいずれかである、焼結材が挙げられる。
このような焼結材において、前記液状成分は、エーテル、アルコール及びアルコールエーテルからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0121】
本実施形態の好ましい焼結材のさらに他の例としては、焼結材であって、前記焼結材は、銀粒子と、銅粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、常温下で液状の液状成分と、抗酸化性化合物と、を含有し、前記銀粒子の1次粒子径が200nm以下であり、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上であり、
前記液状成分が、エーテル結合及び水酸基のいずれか一方又は両方を有し、
前記抗酸化性化合物の沸点が150℃以上であり、
前記焼結材において、前記銅粒子の含有量が、前記銀粒子の含有量に対して、好ましくは0.3~2.5質量倍、より好ましくは0.5~2質量倍であり、
前記焼結材において、前記液状成分の含有量が、前記銅粒子の含有量に対して、0.05~0.15質量倍、0.07~0.13質量倍、及び0.09~0.11質量倍のいずれかであり、
前記焼結材において、前記抗酸化性化合物の含有量が、前記銅粒子の含有量に対して、0.005~0.015質量倍、0.007~0.013質量倍、及び0.009~0.011質量倍のいずれかである、焼結材が挙げられる。
このような焼結材において、前記液状成分は、エーテル、アルコール及びアルコールエーテルからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
このような焼結材において、前記抗酸化性化合物は、アスコルビン酸、トコフェロール、カテキン、イソフラボン、アントシアニン及びフェルラ酸からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0122】
本実施形態の好ましい焼結材のさらに他の例としては、焼結材であって、前記焼結材は、銀粒子と、銅粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、を含有し、前記銀粒子の1次粒子径が200nm以下であり、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上であり、
前記焼結材が、銀含有組成物と、前記銅粒子と、が配合されてなり、
前記銀含有組成物が、カルボン酸銀と、含窒素化合物と、還元剤と、が配合されてなり、
前記銀含有組成物において、前記含窒素化合物の配合量が、前記カルボン酸銀の配合量1モルあたり、0.1~5モル、0.1~3モル、0.2~2モル、及び0.2~1モルのいずれかであり、
前記銀含有組成物において、前記還元剤の配合量が、前記カルボン酸銀の配合量1モルあたり、0.2~5モル、0.3~3モル、0.4~2モル、及び0.4~1モルのいずれかであり、
前記焼結材において、前記銅粒子の配合量が、前記銀含有組成物の配合量に対して、0.3~1.5質量倍、0.6~1.5質量倍、0.9~1.5質量倍、0.3~1.2質量倍、及び0.3~0.9質量倍のいずれである、焼結材が挙げられる。
【0123】
◇焼結材の製造方法
<<製造方法(1)>>
本実施形態の焼結材は、例えば、前記銀粒子と、前記銅粒子と、前記含窒素化合物と、前記還元剤と、必要に応じて前記他の成分(i)と、を配合することで得られる(本明細書においては、この製造方法を「製造方法(1)」と称することがある)。
すなわち、前記製造方法(1)は、銀粒子と、銅粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、必要に応じて前記他の成分(i)と、を配合する工程を有し、前記銀粒子の1次粒子径が200nm以下であり、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径(D50)が、1μm以上である。
【0124】
製造方法(1)は、配合成分の種類が異なる点を除けば、上述の銀含有組成物の製造方法と同じであってよい。
前記他の成分(i)を配合する場合には、前記他の成分(i)を、その種類に応じて適したタイミングで、配合すればよい。
【0125】
製造方法(1)において、各成分の配合後は、得られたものをそのまま焼結材としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の後処理操作又は精製操作を行って得られたものを焼結材としてもよい。
【0126】
製造方法(1)においては、例えば、各成分の配合(添加)時、又はすべての成分を配合後の、各工程での撹拌条件等、焼結材の製造条件を調節することによって、銀粒子の平均2次粒子径を調節してもよい。
【0127】
<<製造方法(2)>>
本実施形態の焼結材が前記銀含有組成物を用いたものである場合、焼結材は、先の説明のとおり、銀含有組成物と、前記銅粒子と、を配合することで得られる(本明細書においては、この製造方法を「製造方法(2)」と称することがある)。
すなわち、前記製造方法(2)は、前記カルボン酸銀(式「-COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀)と、含窒素化合物と、還元剤と、を配合して銀含有組成物を調製する工程と、前記銀含有組成物と、銅粒子と、を配合する工程と、を有し、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径(D50)は、1μm以上である。
製造方法(2)における「銀含有組成物を調製する工程」は、先に説明した「銀含有組成物を調製する工程」と同じである。
【0128】
製造方法(2)において、焼結材の製造時の、各成分の配合順序は、特に限定されない。
焼結材の製造時の混合方法は特に限定されず、例えば、上述の銀含有組成物の製造時の混合方法と同様であってよい。
前記他の成分(i)を配合する場合には、前記他の成分(i)を、その種類に応じて適したタイミングで、配合すればよい。
【0129】
製造方法(2)において、各成分の配合後は、得られたものをそのまま焼結材としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の後処理操作又は精製操作を行って得られたものを焼結材としてもよい。
【0130】
製造方法(2)における、焼結材の製造時の、各成分の配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、15~35℃であることが好ましい。そして、配合時の温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
各成分の配合時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、10~60分であることが好ましい。
【0131】
◇金属焼結体
本発明の一実施形態に係る金属焼結体は、銀焼結層を有し、前記銀焼結層は銅粒子を含有し、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径(D50)が、1μm以上であり、前記銅粒子は、その表面に酸化層を有しない。
本実施形態の金属焼結体は、上述の本発明の一実施形態に係る焼結材を焼成することにより、得られる。
前記金属焼結体は、導電性部品同士を接合する導電性の接合部として利用できる。そして、前記焼結材を用いることで、大気下において前記焼結材の焼成時に、導電性部品と前記焼結材を用いて得られた積層物に対して、高い圧力を加えなくても、金属焼結体(接合部)によって、導電性部品同士を十分な強度で接合できる。
例えば、前記金属焼結体は、後述するように、導電性の第1部品と、導電性の第2部品とが、接合部を介して接合された接合体における、前記接合部として用いるのに好適である。このような接合体においては、前記第1部品又は第2部品と、接合部と、の間における剥離が抑制される。前記金属焼結体は、特に、基板上の電極と、半導体素子と、の接合部として用いるのに好適であり、250℃以上の高温での動作が想定される半導体装置を構成するのに、特に好適である。
【0132】
前記金属焼結体中の前記銀焼結層は、前記焼結材の焼成によって、前記焼結材中の前記銀粒子同士が焼結することで、形成される。そして、前記焼結材が、前記銀粒子以外に、さらに前記銅粒子を含有していることで、前記銅粒子を含有する前記銀焼結層が形成される。このとき、焼成条件を調節することで、銅粒子の表面において酸化層の形成を抑制できる。
【0133】
前記導電性の第1部品及び前記導電性の第2部品等の前記導電性部品としては、例えば、金属製部品(金属製部材)等が挙げられる。前記金属製部品は、例えば、シリコンチップ等の半導体チップ又は半導体素子の表面に、スパッタリング法又はメッキ法等によって設けられた金属層であってもよいし、樹脂製基板又はセラミック製基板に設けられた電極等の金属層であってもよい。
【0134】
前記接合体の接合強度は、接合体のダイシェア強度の測定値で判定できる。
接合体のダイシェア強度は、JIS C62137-1-2:2010(横押しせん断強度試験、IEC 62137-1-2:2007)に準拠して、測定できる。
ダイシェア強度(横押しせん断強度)の測定時には、接合体の破断面が、前記金属焼結体からなる接合部において生じるが、前記破断面は、ダイシェア強度の測定時に接合体に加えられている力の向きに対して、平行又はほぼ平行となる。
【0135】
接合体のダイシェア強度(横押しせん断強度)によって、前記金属焼結体からなる接合部の接合力を比較するためには、例えば、第1部品が、大きさが10mm×10mmで、厚さが0.8mmの銅板であり、第2部品が、大きさが3mm×3mmで、厚さが0.8mmの銅チップであり、金属焼結体からなる接合部が、大きさが3mm×3mmのものである試験用接合体(金属接合体)を用い、この試験用接合体のダイシェア強度を測定して、その値を比較すればよい。
ただし、前記試験用接合体においては、前記銅チップの前記接合部側の面の全面を、接合部に接触させ、前記接合部の前記銅板側の面の全面を、銅板に接触させることが好ましい。
【0136】
前記試験用接合体における、前記金属焼結体からなる接合部の厚さは、1~300μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましく、20~120μmであることがさらに好ましい。前記厚さが前記下限値以上であることで、前記銅板又は銅チップに反りが生じていても、前記銅板及び銅チップを前記接合部によってより容易に接合できる。前記厚さが前記上限値以下であることで、ボイドが存在せず、均質な前記接合部をより容易に形成できる。
【0137】
前記試験用接合体において、ダイシェア強度(横押しせん断強度)は、例えば、9MPa以上であってよいが、20MPa以上であることが好ましく、例えば、30MPa以上、及び40MPa以上のいずれかであってもよい。
前記ダイシェア強度の上限値は、特に限定されない。金属焼結体をより容易に製造できる点では、前記ダイシェア強度は、60MPa以下であることが好ましい。
前記ダイシェア強度は、例えば、9~60MPa、20~60MPa、30~60MPa、及び40~60MPaのいずれかであってもよい。
【0138】
前記金属焼結体の厚さは、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、前記金属焼結体の厚さは、1μm以上であることが好ましく、例えば、10μm以上、20μm以上、65μm以上、及び80μm以上のいずれかであってもよい。
一方、厚さが400μm以下である前記金属焼結体は、より容易に製造でき、厚さは300μm以下、及び200μm以下のいずれかであってもよい。
【0139】
<<金属焼結体の製造方法>>
前記金属焼結体は、上述の本発明の一実施形態に係る焼結材を加熱(焼成)して、前記焼結材中の銀粒子同士を焼結させることにより、製造できる。
【0140】
前記金属焼結体の製造時における、前記焼結材の加熱時の昇温速度は、特に限定されないが、3~20℃/minであることが好ましく、例えば、3~15℃/minであってもよい。前記昇温速度がこのような範囲であることで、目的とする特性の金属焼結体をより効率的に製造できる。
【0141】
前記金属焼結体の製造時における、前記焼結材の焼成温度(焼結材を焼結させる温度)は、360℃以下であることが好ましく、例えば、310℃以下、及び260℃以下のいずれかであってもよい。前記焼成温度が前記上限値以下であることで、過剰な加熱が抑制され、良好な特性の金属焼結体が得られる。
前記焼結材の焼成温度(焼結材を焼結させる温度)は、175℃以上、及び190℃以上のいずれかであってもよいが、240℃以上であることが好ましく、例えば、290℃以上であってもよい。前記焼成温度が前記下限値以上であることで、より高純度の金属焼結体が得られる。
【0142】
金属焼結体(前記接合部)の接合強度がより高くなる点では、前記焼結材の前記液状成分の含有の有無によらず、前記焼結材の焼成温度(焼結材を焼結させる温度)は、240℃以上であることが好ましく、240~360℃、240~310℃、及び240~260℃のいずれかであってもよい。
【0143】
金属焼結体(前記接合部)の内部の銅粒子など、接合部とその接合対象物のうち、銅で構成された部位の表面において、酸化層の形成を抑制する効果がより高くなる点では、前記焼結材が前記抗酸化性化合物を含有しない場合には、前記焼結材の焼成温度(焼結材を焼結させる温度)は、260℃以下であることが好ましく、例えば、175~260℃、190~260℃、及び240~260℃のいずれかであってもよい。
上記と同様の理由で、前記焼結材が前記抗酸化性化合物を含有する場合には、前記焼結材の焼成温度(銀含有組成物を焼結させる温度)は、310℃以下であることが好ましく、例えば、175~310℃、190~310℃、及び240~310℃のいずれかであってもよい。
【0144】
なお、本明細書においては、前記焼結材の焼成(焼結)は、前記銀粒子同士の焼結と同義である。
【0145】
前記金属焼結体の製造時において、前記焼結材の焼成時間(焼結材を焼結させる時間)は、50~180分であることが好ましく、例えば、50~150分、90~180分、及び90~150分のいずれかであってもよい。前記焼成時間(焼結時間)がこのような範囲であることで、目的とする特性の金属焼結体をより効率的に製造できる。
【0146】
前記焼結材の焼成時に、接合対象である導電性部品と前記焼結材を用いて得られた積層物に対して加える圧力は、5.5MPa未満であることが好ましく、5.2MPa以下であることがより好ましく、3MPa以下であることがさらに好ましく、例えば、1.5MPa以下であってもよい。そして、前記圧力は0MPa以上であり、前記積層物には圧力を加えなくてもよい。このように、高い圧力を加えなくても、金属焼結体(接合部)によって、導電性部品同士を十分な強度で接合できる。そして、このように高い圧力を加えることなく焼成(焼結)することで、例えば、金属焼結体を、基板上の電極と、半導体素子と、の接合部として用いる場合など、金属焼結体の周辺部に破損し易い部材が配置されている場合に、これら部材の意図しない破損を抑制できる。
【0147】
本明細書において、接合対象である導電性部品と前記焼結材を用いて得られた積層物に対して加える圧力、とは、焼結材から形成された金属焼結体(接合部)による導電性部品同士の接合方向と同じ方向に加える圧力である。
【0148】
前記焼結材の焼成(前記銀粒子同士の焼結)は、大気下及び常圧下で行うことができる。本実施形態においては、前記焼結材を用いることで、大気下で焼結材を焼成しても、金属焼結体(前記接合部)の内部の銅粒子など、接合部とその接合対象物のうち、銅で構成された部位の表面において、酸化層の形成を抑制することが可能となる。
【0149】
好ましい前記金属焼結体の製造方法としては、例えば、前記焼結材を、前記金属焼結体の形成対象物上に付着させる工程と、付着後の前記焼結材を、360℃以下の温度で、前記焼結材を用いて得られた積層物に対して加える圧力を5.5MPa未満、5.2MPa以下、又は3MPa以下としながら、焼成することにより、前記金属焼結体を形成する工程と、を有する製造方法が挙げられる。
前記製造方法によれば、前記焼結材を用いることで、大気下において、焼結材の高圧での加圧を必要とせずに、導電性部品同士を焼成によって、十分な強度で接合できる。
【0150】
金属焼結体の製造時には、例えば、後述の接合体の製造方法で説明するように、焼結材を、60℃以上の温度で固化させずに加熱することにより、焼結材の加熱物を得た後、前記加熱物を焼成することにより、金属焼結体を製造してもよい。
この場合には、例えば、焼結材を、60℃以上の温度で固化させずに加熱することにより、焼結材の加熱物を得るときの加熱時間(後述する予備加熱時間)と、前記加熱物を焼成することにより、金属焼結体を得るときの焼成時間と、の合計時間が、先に説明した焼結材の焼成時間と、同様であってよい。また、前記加熱物を焼成することにより、金属焼結体を得るときの焼成温度が、先に説明した焼結材の焼成温度と、同様であってよい。また、前記加熱物を焼成することにより、金属焼結体を得るときに、接合対象である導電性部品と前記加熱物との積層物に対して加える圧力が、先に説明した焼結材の焼成時に、導電性部品と前記焼結材を用いて得られた積層物に対して加える圧力と、同様であってよい。また、大気下で焼結材から前記加熱物を得て、大気下で前記加熱物から金属焼結体を得てもよい。
【0151】
前記金属焼結体の製造時においては、前記焼結材を目的とする箇所に、目的とする形状で付着させて、次いで、焼成すればよい。
前記焼結材を目的とする箇所に付着させる方法としては、例えば、印刷法、塗布法等の公知の方法が挙げられる。
【0152】
前記印刷法としては、例えば、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、ジェットディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が挙げられる。
【0153】
前記塗布法としては、例えば、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターを用いる方法;ワイヤーバーを用いる方法;スロットダイ等のコーティング装置を用いる方法等が挙げられる。
【0154】
<<接合体>>
前記金属焼結体は、例えば、はんだの代わりとして用いるのに好適であり、導電性の部品同士の接合部として用いるのに好適である。前記金属焼結体は、例えば、半導体の接合材料としても好適である。
すなわち、このような接合部を備えた接合体としては、導電性の第1部品(本明細書においては、単に「第1部品」と略記することがある)と、導電性の第2部品(本明細書においては、単に「第2部品」と略記することがある)とが、接合部を介して接合されて構成され、前記接合部が、上述の本発明の一実施形態に係る焼結材から形成された金属焼結体である導電性接合体、が挙げられる。
【0155】
図1は、前記焼結材を用いて製造された接合体の一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す接合体101は、導電性の第1部品2と、導電性の第2部品3とが、接合部1を介して接合され、構成されている。
接合部1は、上述の本発明の一実施形態に係る金属焼結体からなる。
【0156】
第1部品2は、シート状、プレート状又はブロック状である。
第1部品2は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。第1部品2が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
なお、本明細書においては、第1部品の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0157】
第1部品2が複数層からなる場合には、例えば、第1部品2における、接合部1側の1層又は2層以上が、接合部1との密着性を向上させる層であってもよい。
【0158】
第1部品2の厚さは、接合体101の目的に応じて任意に設定でき、特に限定されない。
第1部品2の厚さは、例えば、10~10000μmであってもよい。
【0159】
第1部品2が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい第1部品2の厚さとなるようにするとよい。
【0160】
ここでは、第1部品2として、シート状、プレート状又はブロック状であるものを示しているが、第1部品2は、これら以外の他の形状であってもよく、第1部品2の形状は、目的に応じて任意に選択できる。
【0161】
第2部品3は、シート状、プレート状又はブロック状である。
第2部品3は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。第2部品3が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0162】
第2部品3が複数層からなる場合には、例えば、第2部品3における、接合部1側の1層又は2層以上が、接合部1との密着性を向上させる層であってもよい。
【0163】
第2部品3の厚さは、接合体101の目的に応じて任意に設定でき、特に限定されない。
第2部品3の厚さは、例えば、0.05~10000μmであることが好ましく、0.05~500μmであってもよいし、500μm超10000μm以下であってもよい。
【0164】
第2部品3が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい第2部品3の厚さとなるようにするとよい。
【0165】
ここでは、第2部品3として、シート状、プレート状又はブロック状であるものを示しているが、第2部品3は、これら以外の他の形状であってもよく、第2部品3の形状は、目的に応じて任意に選択できる。
【0166】
接合部1は、前記焼結材から形成された金属焼結体からなり、導電性であり、その詳細は、先に説明したとおりである。
接合部1は、シート状、プレート状又はブロック状である。
接合部1は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。接合部1が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0167】
接合部1の厚さは、先に説明した金属焼結体の厚さであってよい。
接合部1が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、先に説明した金属焼結体の厚さとなるようにするとよい。
【0168】
ここでは、接合部1として、シート状、プレート状又はブロック状であるものを示しているが、接合部1は、これら以外の他の形状であってもよく、接合部1の形状は、目的に応じて任意に選択できる。
【0169】
接合体101においては、1つの第1部品2と、1つの第2部品3とが、1つの接合部1によって接合されているが、接合形態は、これに限定されない。
前記接合体においては、例えば、1つの第1部品と、2つ以上の第2部品とが、1つの接合部によって接合されていてもよい。その場合、2つ以上の第2部品は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ異なっていてもよい。
また、前記接合体においては、例えば、1つの第1部品と、2つ以上の第2部品とが、2つ以上の接合部によって接合されていてもよい。その場合、第2部品の数と、接合部の数とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、2つ以上の第2部品は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ異なっていてもよい。
ここで例示した、第1部品の数と、第2部品の数とは、逆であってもよい。
【0170】
前記焼結材から形成された金属焼結体を備えた接合体は、
図1に示すものに限定されず、例えば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、
図1に示す接合体101において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
【0171】
好ましい前記接合体としては、例えば、金属製部材同士が前記金属焼結体によって接合された金属接合体であって、前記金属接合体について、JIS C62137-1-2:2010に準拠して、横押しせん断強度試験を行ったとき、前記金属接合体の横押しせん断強度(ダイシェア強度)が20MPa以上である接合体が挙げられる。金属製部材、及び接合体のダイシェア強度(横押しせん断強度)の測定方法は、先に説明したとおりである。
【0172】
前記金属接合体において、ダイシェア強度(横押しせん断強度)は、例えば、30MPa以上、及び40MPa以上のいずれかであってもよい。
前記ダイシェア強度の上限値は、特に限定されない。金属焼結体をより容易に製造できる点では、前記ダイシェア強度は、60MPa以下であることが好ましい。
前記ダイシェア強度は、例えば、20~60MPa、30~60MPa、及び40~60MPaのいずれかであってもよい。
【0173】
<半導体装置>
前記接合体で好ましいものとしては、例えば、基板と、前記基板に接合された半導体素子と、を備えた半導体装置であって、前記基板上に設けられた電極と、前記半導体素子とが、接合部(金属焼結体)によって接合されており、前記接合部が、上述の本発明の一実施形態に係る焼結材を用いて形成された金属焼結体である、半導体装置が挙げられる。
【0174】
図2は、前記半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す半導体装置102は、基板20と、基板20に接合された半導体素子31と、を備えて、構成されている。
基板20の一方の面には、電極21が設けられており、電極21と、半導体素子31とが、接合部11によって接合されている。
接合部11は、前記焼結材を用いて形成された金属焼結体からなる。
【0175】
基板20は、例えば、樹脂製基板等の、公知の基板でよく、特に限定されない。
基板20の厚さは、例えば、200~10000μmであってもよい。
【0176】
電極21は、前記第1部品に包含され、例えば、金属製電極等の、公知の電極であってよく、特に限定されない。
電極21の厚さは、例えば、10~5000μmであってもよい。
【0177】
半導体素子31は、前記第2部品に包含され、例えば、シリコン、シリコンカーバイド又は窒化ガリウム等の半導体を構成材料とする素子等の、公知の素子であってよい。
半導体素子31の厚さは、例えば、50~800μmであってもよい。
【0178】
接合部11は導電性であり、その詳細は、先に説明したとおりである。
接合部11の厚さは、例えば、10~200μmであってもよい。
【0179】
接合体102における、電極21と半導体素子31との、接合部11を介した接合形態は、接合体101における、第1部品2と第2部品3との、接合部1を介した接合形態と、同様であってよい。
【0180】
◇接合体の製造方法
前記接合体は、例えば、前記第1部品と、前記第2部品と、のいずれか一方又は両方の表面に付着している前記焼結材を、60℃以上の温度で固化させずに加熱することにより、前記焼結材の加熱物を得る工程(本明細書においては、「予備加熱工程」と称することがある)と、大気下において、前記加熱物を介在させて、前記第1部品と前記第2部品とを接触させながら、前記加熱物を焼成することにより、前記第1部品と前記第2部品とを、前記加熱物から形成された金属焼結体によって接合する工程(本明細書においては、「接合工程」と称することがある)と、を有する製造方法により、製造できる。
すなわち、本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法において、前記接合体は、導電性の第1部品と、導電性の第2部品とが、接合部を介して接合されて構成され、前記接合部が金属焼結体であり、前記製造方法は、前記第1部品と、前記第2部品と、のいずれか一方又は両方の表面に付着している焼結材を、60℃以上の温度で固化させずに加熱することにより、前記焼結材の加熱物を得る工程と、大気下において、前記加熱物を介在させて、前記第1部品と前記第2部品とを接触させながら、前記加熱物を焼成することにより、前記第1部品と前記第2部品とを、前記加熱物から形成された前記金属焼結体によって接合する工程と、を有し、前記焼結材が、銀粒子と、銅粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、を含有し、前記銀粒子の1次粒子径が200nm以下であり、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径(D50)が、1μm以上である。
【0181】
第1部品と、第2部品と、のいずれか一方又は両方の表面に、銀含有組成物を付着させる方法は、先に説明した、前記焼結材を目的とする箇所に付着させる方法、と同じである。
【0182】
本実施形態の製造方法において、前記予備加熱工程を行う理由は、前記金属焼結体(すなわち接合部)の接合強度が顕著に増大するためである。
予備加熱工程においては、加熱中の焼結材を介在させて、第1部品と第2部品とが接触(一体化)した状態とはしない。
【0183】
予備加熱工程における焼結材の加熱温度(本明細書においては、「予備加熱温度」と略記することがある)は、例えば、65℃以上、70℃以上、及び75℃以上のいずれかであってもよい。
【0184】
予備加熱工程における、焼結材の加熱温度(予備加熱温度)の上限値は、特に限定されない。例えば、焼結材の固化を容易に回避できる点では、前記加熱温度は、120℃以下であることが好ましい。
【0185】
予備加熱工程における、焼結材を60℃以上の温度で固化させずに加熱する時間(本明細書においては、「予備加熱時間」と略記することがある)は、0.1~30分であることが好ましく、例えば、0.5~10分、1.5~10分、及び3~10分のいずれかであってもよい。予備加熱時間がこのような範囲であることで、目的とする加熱物をより効率的に製造できる。
【0186】
予備加熱工程で得られた前記加熱物は、典型的には、銀に特有の光沢を有しておらず、このような外見上の特徴からも、前記加熱物は、目的とする金属焼結体との区別が可能である。
【0187】
前記接合工程における、前記加熱物の焼成時の昇温速度は、例えば、先に説明した、前記金属焼結体の製造時における、前記焼結材の加熱時の昇温速度と、同様であってよい。
【0188】
接合工程における、前記加熱物の焼成時の焼成温度(銀粒子同士の焼結温度)は、例えば、先に説明した、前記金属焼結体の製造時における、前記焼結材の焼成温度(焼結材を焼結させる温度)と、同様であってよい。
【0189】
本実施形態においては、接合工程における、前記加熱物の焼成時の焼成時間(銀粒子同士の焼結時間)と、前記予備加熱時間と、の合計時間は、例えば、先に説明した、前記金属焼結体の製造時における、前記焼結材の焼成時間(焼結材を焼結させる時間)と、同様であってよい。
【0190】
接合工程においては、先に説明した金属焼結体の製造方法の場合と同様に、前記焼結材の加熱物の焼成(銀粒子同士の焼結)は、大気下において、接合対象である導電性部品と前記加熱物との積層物に対して、高い圧力を加えることなく行うことができる。このように高い圧力を加えることなく焼成(焼結)することで、第1部品及び第2部品に高い圧力が加わることがなく、第1部品及び第2部品の意図しない破損を抑制できる。
【0191】
図3は、本実施形態の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。
図3以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図3においては、前記第1部品の表面のみに、前記焼結材を付着させて、前記予備加熱工程を行うことで、
図1に示す接合体101を製造する場合について、示している。
【0192】
すなわち、この場合には、前記予備加熱工程において、
図3(a)に示すように、導電性の第1部品2の一方の表面2aに付着している焼結材10を、60℃以上の温度で固化させずに加熱することにより、
図3(b)に示すように、焼結材の加熱物100を得る。
次いで、前記接合工程において、
図3(c)に示すように、大気下において、加熱物100を介在させて、第1部品2と第2部品3とを接触させながら、加熱物100を焼成する。このとき、第1部品2と、第2部品3と、加熱物100と、の積層物に対して加える圧力は、第1部品2側から加える圧力P
1と、第2部品3側から加える圧力P
2と、のいずれか一方又は両方とすることができるが、いずれの場合であっても、先の説明のとおり、前記積層物に対して高い圧力を加えなくても、第1部品2と第2部品3を十分な強度で接合できる。そして、このように加熱物100を焼成することにより、
図3(d)に示すように、第1部品2と第2部品3とを、加熱物100から形成された接合部(金属焼結体)1によって接合する。
以上により、
図1に示す接合体101が得られる。
【0193】
図4は、本実施形態の製造方法の他の例を模式的に説明するための断面図である。
図4においては、前記第2部品の表面のみに、前記焼結材を付着させて、前記予備加熱工程を行うことで、
図1に示す接合体101と同様の構成の接合体103を製造する場合について、示している。
【0194】
すなわち、この場合には、前記予備加熱工程において、
図4(a)に示すように、導電性の第2部品3の一方の表面3aに付着している焼結材10を、60℃以上の温度で固化させずに加熱することにより、
図4(b)に示すように、焼結材の加熱物100を得る。
次いで、前記接合工程において、
図4(c)に示すように、大気下において、加熱物100を介在させて、第1部品2と第2部品3とを接触させながら、加熱物100を焼成する。このとき、第1部品2と、第2部品3と、加熱物100と、の積層物に対して加える圧力は、第1部品2側から加える圧力P
1と、第2部品3側から加える圧力P
2と、のいずれか一方又は両方とすることができるが、いずれの場合であっても、先の説明のとおり、前記積層物に対して高い圧力を加えなくても、第1部品2と第2部品3を十分な強度で接合できる。そして、このように加熱物100を焼成することにより、
図4(d)に示すように、第1部品2と第2部品3とを、加熱物100から形成された接合部(金属焼結体)1によって接合する。
以上により、接合体103が得られる。接合体103は、接合部(金属焼結体)1の大きさが異なる点を除けば、
図1に示す接合体101と同じである。
【0195】
図5は、本実施形態の製造方法のさらに他の例を模式的に説明するための断面図である。
図5においては、第1部品と第2部品の両方の表面に、前記焼結材を付着させて、前記予備加熱工程を行うことで、
図1に示す接合体101と同様の構成の接合体104を製造する場合について、示している。
【0196】
すなわち、この場合には、前記予備加熱工程において、
図5(a)に示すように、導電性の第1部品2の一方の表面2aに付着している第1焼結材110と、導電性の第2部品3の一方の表面3aに付着している第2焼結材120を、それぞれ60℃以上の温度で固化させずに加熱する。これにより、
図5(b)に示すように、第1焼結材110からその加熱物である第1加熱物1100を得て、第2焼結材120からその加熱物である第2加熱物1200を得る。第1焼結材110と第2焼結材120は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
次いで、前記接合工程において、
図5(c)に示すように、第1加熱物1100と第2加熱物1200を接触させ、大気下において、第1加熱物1100と第2加熱物1200を介在させて、第1部品2と第2部品3とを接触させながら、第1加熱物1100と第2加熱物1200を焼成する。このとき、第1部品2と、第2部品3と、第1加熱物1100と、第2加熱物1200と、の積層物に対して加える圧力は、第1部品2側から加える圧力P
1と、第2部品3側から加える圧力P
2と、のいずれか一方又は両方とすることができる。そして、いずれの場合であっても、先の説明のとおり、前記積層物に対して高い圧力を加えなくても、第1部品2と第2部品3を十分な強度で接合できる。そして、このように第1加熱物1100と第2加熱物1200を焼成することにより、
図5(d)に示すように、第1部品2と第2部品3とを、第1加熱物1100と第2加熱物1200から形成された接合部(金属焼結体)12によって接合する。接合部12は、ここに示すように、第1加熱物1100から形成された第1接合部(第1金属焼結体)121と、第2加熱物1200から形成された第2接合部(第2金属焼結体)122と、の2層構造として認識できることもあるし、このような2層構造として認識できずに、
図4(d)に示すような単層構造として認識できることもある。
以上により、
図4(d)に示すものと同様の接合体104が得られる。
【0197】
<半導体装置の製造方法>
前記接合体のうち、前記半導体装置は、上述の接合体の製造方法において、第1部品として電極を用い、第2部品として半導体素子を用いることにより、製造できる。
【0198】
◇接合体
本発明の一実施形態に係る接合体は、導電性の第1部品と、導電性の第2部品とが、接合部を介して接合されて構成され、前記接合部が金属焼結体であり、前記金属焼結体は、銀焼結層を有し、前記銀焼結層は銅粒子を含有し、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、前記銅粒子の体積基準での50%累積時の粒子径が、1μm以上であり、前記第1部品と、前記第2部品と、の両方の接合面の面積が、625mm2以上であり、前記第1部品と前記第2部品が、銅製、銀製、アルミニウム製、金製又はニッケル製であり、前記接合体を、前記第1部品と、前記第2部品と、前記接合部とを含む、大きさが5mm×5mmの小片に切断し、前記小片について、JIS C62137-1-2:2010に準拠して、横押しせん断強度試験を行ったとき、前記小片の横押しせん断強度が18MPa以上である(本明細書においては、この接合体を「接合体(Z)」と称することがある)。
【0199】
本実施形態の接合体(接合体(Z))は、上述の本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法で製造可能な接合体のうち、第1部品と、第2部品と、の両方の接合面の面積が、625mm2以上に限定され、かつ、第1部品と第2部品が、銅製、銀製、アルミニウム製、金製又はニッケル製の部品に限定され、かつ、本実施形態の接合体(接合体(Z))から切り出された前記小片の横押しせん断強度(ダイシェア強度)が18MPa以上に変更された接合体である。すなわち、前記接合体(Z)は、これらが変更されていない点を除けば、上述の本発明の一実施形態に係る接合体の製造方法で製造可能な接合体と同じである。
例えば、前記接合体(Z)においては、前記銅粒子は、その表面に酸化層を有しないことが好ましい。
前記小片は、先に説明した本発明の一実施形態に係る接合体でもある。
【0200】
前記接合体(Z)の場合に限らず、接合体における第1部品の接合面とは、第1部品の接合部側の面であり、接合体における第2部品の接合面とは、第2部品の接合部側の面である。
【0201】
前記接合体(Z)において、第1部品と第2部品との組み合わせは、銅製部品同士の組み合わせ、銀製部品同士の組み合わせ、アルミニウム製部品同士の組み合わせ、金製部品同士の組み合わせ、ニッケル製部品同士の組み合わせ、銅製部品及び銀製部品の組み合わせ、銅製部品及びアルミニウム製部品の組み合わせ、銅製部品及び金製部品の組み合わせ、銅製部品及びニッケル製部品の組み合わせ、銀製部品及びアルミニウム製部品の組み合わせ、銀製部品及び金製部品の組み合わせ、銀製部品及びニッケル製部品の組み合わせ、アルミニウム製部品及び金製部品の組み合わせ、アルミニウム製部品及びニッケル製部品の組み合わせ、又は金製部品及びニッケル製部品の組み合わせである。
【0202】
前記小片を、その中の第1部品又は第2部品側の上方から見下ろして平面視したときの平面形状は、正方形であり、かつこの正方形の大きさは5mm×5mmである。
前記接合体(Z)においては、作製可能な最大数の30%以上の数の前記小片の前記ダイシェア強度(横押しせん断強度)が、18MPa以上であることが好ましく、作製可能な最大数の前記小片の前記ダイシェア強度が、18MPa以上であることがより好ましい。
【0203】
第1部品と、第2部品と、の両方の接合面の平面形状は、四角形であることが好ましく、正方形であってもよい。
【0204】
第1部品と、第2部品と、の両方の接合面の面積は、例えば、675mm2以上、725mm2以上、780mm2以上、及び840mm2以上のいずれかであってもよい。
前記接合体(Z)の製造がより容易である点では、前記接合面の面積は、例えば、1225mm2以下であってもよい。
前記接合面の面積は、例えば、625~1225mm2、675~1225mm2、725~1225mm2、780mm2~1225mm2、及び840~1225mm2のいずれかであってもよい。
【0205】
前記小片のダイシェア強度(横押しせん断強度)は、30MPa以上、及び40MPa以上のいずれかであってもよい。
前記小片のダイシェア強度の上限値は、特に限定されない。金属焼結体をより容易に製造できる点では、前記小片のダイシェア強度は、60MPa以下であることが好ましい。
前記小片のダイシェア強度は、例えば、18~60MPa、30~60MPa、及び40~60MPaのいずれかであってもよい。
前記小片のダイシェア強度(横押しせん断強度)は、上述の試験用接合体のダイシェア強度(横押しせん断強度)の場合と同じ方法で測定できる。
【実施例0206】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0207】
[実施例1]
<<焼結材の製造>>
<銀含有組成物の製造>
ビーカー中に2-エチルヘキシルアミン(後述する2-メチルアセト酢酸銀に対して0.4倍モル量)を加え、ここへ、液温が40℃以下となるように2-メチルアセト酢酸銀(52.9g)を加えて、得られたものを、メカニカルスターラーを回転させて、15分撹拌した。
次いで、得られた撹拌液に、液温が60℃以下となるように、ギ酸(2-メチルアセト酢酸銀に対して0.65倍モル量)を10分かけて滴下し、得られたものを、さらに26℃で1.5時間撹拌した。
以上により、銀含有組成物(A)を得た。
得られた銀含有組成物(A)をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、銀含有組成物(A)が2-エチルヘキシルアミン及びギ酸を含有していることを確認できた。また、銀含有組成物(A)が銀粒子を含有していることも確認できた。銀含有組成物(A)の総質量に対する、銀含有組成物(A)中の2-メチルアセト酢酸銀に由来する銀の合計質量の割合は、63質量%であった。
【0208】
<焼結材の製造>
常温下で、上記で得られた銀含有組成物(A)(10質量部)と、銅粒子(a)(福田金属箔粉工業社製、CU-HWQ Grade1.5μm、D50:1~2μm、タップ密度:3~4g/cm3、球状)(10質量部)と、を混合し、5分撹拌することで、焼結材を得た。
【0209】
上記で得られた焼結材を冷却し、凍結破断を行い、走査型電子顕微鏡(SEM、「Cryo FIC-SEM FEI, Helios NanoLab600」)を用いて、加速電圧1kV(反射電子像)の条件で、凍結破断物の破断面を観察した。そして、画像解析ソフト(「Image J.」)を用いて、倍率10000倍のSEM画像を画像処理することにより、銀粒子凝集体を識別した。その識別結果から、個々の銀粒子凝集体の最大径を測定した。銀粒子凝集体の観測数は、700以上とした。ここで、「最大径」とは、銀粒子凝集体の識別像において、輪郭線上に位置する任意の2点を結ぶ線分の長さの最大値を意味する。その結果、前記最大径の平均値、すなわち、銀粒子の平均2次粒子径は、294nmであった。
【0210】
透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)を用いて、前記凍結破断物の破断面を観察した結果、個々の銀粒子凝集体は、1次粒子径が200nm以下の銀粒子で構成されていた。焼結材における、焼結材の総質量に対する、銀粒子の含有量の割合(銀粒子の濃度)は、30質量%であった。
【0211】
<<接合体(金属焼結体)の製造>>
大きさが10mm×10mmで、厚さが0.8mmの銅板と、大きさが3mm×3mmで、厚さが0.8mmの、平面形状が正方形の銅チップと、を準備した。
前記銅板の一方の面上に、スクリーン印刷法によって、上記で得られた焼結材の、大きさが3mm×3mmで、厚さが0.1mmの印刷層を形成した。
次いで、プログラムホットプレート(AS ONE社製)を用いて、大気下、無加圧下(常圧下)の条件で、80℃で2分、前記印刷層の予備加熱を行った後、前記印刷層の加熱物(予備加熱物)上に、前記銅チップを載せた。このとき、これらを上方から見下ろして平面視した状態で、前記加熱物の中心と、銅チップの中心と、を一致させ、さらに、加熱物の外周と、銅チップの外周と、が平行となるように、銅チップを位置合わせした。
【0212】
次いで、大気下、得られた積層物に対して、その厚さ方向に1MPaの圧力を加えながら、昇温速度5℃/minで積層物を室温から120℃まで昇温し、そのまま120℃で5分保持し、さらに、昇温速度5℃/minで積層物を120℃から190℃まで昇温し、そのまま190℃で5分保持し、さらに、昇温速度5℃/minで積層物を190℃から200℃まで昇温し、そのまま200℃で60分保持することにより、前記加熱物を焼成した。この間、室温から昇温して、200℃での60分の保持が終了するまで、積層物に対しては、上述の1MPaの圧力を加え続けた。これにより、前記加熱物から、大きさが3mm×3mmの金属焼結体を形成した。
次いで、得られた焼成物を室温まで放冷した。
以上により、銅板と銅チップが、金属焼結体からなる接合部によって接合されて構成された、接合体を得た。
【0213】
<<接合体(金属焼結体)の評価>>
<ダイシェア強度の測定>
上記で得られた接合体について、試験機(Dage社製「ボンドテスター4000」)を用いて、JIS C62137-1-2:2010(横押しせん断強度試験、IEC 62137-1-2:2007)に準拠して、ダイシェア強度を測定した。より具体的には、前記試験機のせん断ツールを用いて、前記接合体を破断させ、破断時の最大荷重を測定した。この測定値を、前記接合体での接合箇所の面積(すなわち、3mm×3mm)で除して、得られた値を前記接合体のダイシェア強度として採用した。そして、前記接合体のダイシェア強度が40MPa以上である場合には「A」と判定し、20MPa以上40MPa未満である場合には「B」と判定し、0MPa超20MPa未満である場合には「C」と判定し、全く接合していない(ダイシェア強度が0MPaである)場合には「D」と判定した。その結果を、ダイシェア強度の算出値と共に表1に示す。
【0214】
表1中、「焼成時圧力(MPa)」とは、前記積層物に対して加える圧力を意味する。また、「最終焼成温度」とは、前記加熱物の焼成時における、主たる焼成温度である、最終段階での焼成温度を意味する。また、「最終焼成時間」とは、前記加熱物の焼成時における、最終焼成温度での焼成時間を意味する。これらは、以降の実施例及び比較例でも同様である。
【0215】
<酸化層の有無の確認>
イオンミリング装置(日立ハイテク社製「IM4000PLUS」)を用いて、上記で得られた3個の接合体において断面を作製し、SEM-EDS(走査型電子顕微鏡(SEM)中で行うエネルギー分散型X線分光法(EDS))、及びTEM-EDS(透過型電子顕微鏡(TEM)中で行うエネルギー分散型X線分光法(EDS))により、前記断面を観察した。そして、接合部の内部の銅粒子の表面と、銅板の表面における、酸素(換言すると酸化層)の有無を確認した。結果を表1に示す。
【0216】
上記の断面を作製した3個の接合体において酸化層の有無を確認したときに、同時に、金属焼結体の厚さを測定し、その最小値及び最大値から厚さの範囲を求めたところ、15~50μmであった。したがって、上記で得られた接合体において、金属焼結体の厚さは15~50μmの範囲内にあると推察された。
【0217】
<<焼結材の製造、接合体(金属焼結体)の製造、及び接合体(金属焼結体)の評価>>
[実施例2]
金属焼結体の形成時に、前記積層物を最後に200℃まで昇温し、そのまま200℃で60分保持するのに代えて、250℃まで昇温し、そのまま250℃で60分保持した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、焼結材及び接合体(金属焼結体)を製造し、接合体(金属焼結体)を評価した。結果を表1に示す。
【0218】
[実施例3]
金属焼結体の形成時に、前記積層物を最後に200℃まで昇温し、そのまま200℃で60分保持するのに代えて、300℃まで昇温し、そのまま300℃で60分保持した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、焼結材及び接合体(金属焼結体)を製造し、接合体(金属焼結体)を評価した。結果を表1に示す。
【0219】
[実施例4]
<<焼結材の製造>>
実施例1の場合と同じ方法で、前記銀含有組成物(A)を得た。
常温下で、上記で得られた銀含有組成物(A)(10質量部)と、銅粒子(a)(福田金属箔粉工業社製、CU-HWQ Grade1.5μm、D50:1~2μm、タップ密度:3~4g/cm3、球状)(10質量部)と、ポリエチレングリコール300(富士フイルム和光純薬社製、PEG300)(1質量部)と、を混合し、撹拌することで、焼結材を得た。
【0220】
実施例1の場合と同じ方法で、上記で得られた焼結材を冷却し、凍結破断を行い、凍結破断物の破断面を観察した結果、銀粒子の平均2次粒子径は、294nmであり、個々の銀粒子凝集体は、1次粒子径が200nm以下の銀粒子で構成されていた。焼結材における、焼結材の総質量に対する、銀粒子の含有量の割合(銀粒子の濃度)は、30質量%であった。
【0221】
<<接合体(金属焼結体)の製造及び評価>>
上記で得られた焼結材を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、接合体(金属焼結体)を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0222】
<<焼結材の製造、接合体(金属焼結体)の製造、及び接合体(金属焼結体)の評価>>
[実施例5]
金属焼結体の形成時に、前記積層物を最後に200℃まで昇温し、そのまま200℃で60分保持するのに代えて、250℃まで昇温し、そのまま250℃で60分保持した点以外は、実施例4の場合と同じ方法で、焼結材及び接合体(金属焼結体)を製造し、接合体(金属焼結体)を評価した。結果を表1に示す。
【0223】
[実施例6]
金属焼結体の形成時に、前記積層物を最後に200℃まで昇温し、そのまま200℃で60分保持するのに代えて、300℃まで昇温し、そのまま300℃で60分保持した点以外は、実施例4の場合と同じ方法で、焼結材及び接合体(金属焼結体)を製造し、接合体(金属焼結体)を評価した。結果を表1に示す。
【0224】
[実施例7]
<<焼結材の製造>>
実施例1の場合と同じ方法で、前記銀含有組成物(A)を得た。
常温下で、上記で得られた銀含有組成物(A)(10質量部)と、銅粒子(a)(福田金属箔粉工業社製、CU-HWQ Grade1.5μm、D50:1~2μm、タップ密度:3~4g/cm3、球状)(10質量部)と、ポリエチレングリコール300(富士フイルム和光純薬社製、PEG300)(1質量部)と、アスコルビン酸(富士フイルム和光純薬社製)(0.1質量部)と、を混合し、撹拌することで、焼結材を得た。
【0225】
実施例1の場合と同じ方法で、上記で得られた焼結材を冷却し、凍結破断を行い、凍結破断物の破断面を観察した結果、銀粒子の平均2次粒子径は、294nmであり、個々の銀粒子凝集体は、1次粒子径が200nm以下の銀粒子で構成されていた。焼結材における、焼結材の総質量に対する、銀粒子の含有量の割合(銀粒子の濃度)は、30質量%であった。
【0226】
<<接合体(金属焼結体)の製造及び評価>>
上記で得られた焼結材を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、接合体(金属焼結体)を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0227】
<<焼結材の製造、接合体(金属焼結体)の製造、及び接合体(金属焼結体)の評価>>
[実施例8]
金属焼結体の形成時に、前記積層物を最後に200℃まで昇温し、そのまま200℃で60分保持するのに代えて、250℃まで昇温し、そのまま250℃で60分保持した点以外は、実施例7の場合と同じ方法で、焼結材及び接合体(金属焼結体)を製造し、接合体(金属焼結体)を評価した。結果を表2に示す。
【0228】
[実施例9]
金属焼結体の形成時に、前記積層物を最後に200℃まで昇温し、そのまま200℃で60分保持するのに代えて、300℃まで昇温し、そのまま300℃で60分保持した点以外は、実施例7の場合と同じ方法で、焼結材及び接合体(金属焼結体)を製造し、接合体(金属焼結体)を評価した。結果を表2に示す。
また、接合体の断面をSEM-EDSにより観察したときに取得した撮像データを、
図6に示す。
【0229】
[実施例10]
金属焼結体の形成時に、前記積層物を最後に200℃まで昇温し、そのまま200℃で60分保持するのに代えて、350℃まで昇温し、そのまま350℃で60分保持した点以外は、実施例7の場合と同じ方法で、焼結材及び接合体(金属焼結体)を製造し、接合体(金属焼結体)を評価した。結果を表2に示す。
【0230】
[実施例11]
<<焼結材の製造>>
実施例1の場合と同じ方法で、前記銀含有組成物(A)を得た。
常温下で、上記で得られた銀含有組成物(A)(20質量部)と、銅粒子(b)(三井金属鉱業社製、MA-C08JF、D50:12μm、タップ密度:3g/cm3、フレーク状)(10質量部)と、ポリエチレングリコール300(富士フイルム和光純薬社製、PEG300)(1質量部)と、アスコルビン酸(富士フイルム和光純薬社製)(0.1質量部)と、を混合し、撹拌することで、焼結材を得た。
【0231】
<<接合体(金属焼結体)の製造>>
大きさが10mm×10mmで、厚さが0.8mmの銅板と、大きさが3mm×3mmで、厚さが0.5mmの、平面形状が正方形のシリコンチップと、を準備した。
シリコンチップの接合面となる表面に、厚さ100nmのチタン層と、厚さ1μmの銀層と、をシリコンチップ側からこの順に、スパッタリング法によって形成した。
前記銅板の一方の面上に、スクリーン印刷法によって、上記で得られた焼結材の、大きさが3mm×3mmで、厚さが0.1mmの印刷層を形成した。
次いで、プログラムホットプレート(AS ONE社製)を用いて、大気下、無加圧下(常圧下)の条件で、80℃で2分、前記印刷層の予備加熱を行った後、前記印刷層の加熱物(予備加熱物)上に、前記シリコンチップを載せた。このとき、シリコンチップが備えている前記銀層を、前記印刷層の加熱物(予備加熱物)に接触させた。また、これら(シリコンチップ及び前記加熱物)を上方から見下ろして平面視した状態で、前記加熱物の中心と、シリコンチップの中心と、を一致させ、さらに、加熱物の外周と、シリコンチップの外周と、が平行となるように、シリコンチップを位置合わせした。
【0232】
次いで、大気下、得られた積層物に対して、その厚さ方向に2MPaの圧力を加えながら、昇温速度5℃/minで積層物を室温から120℃まで昇温し、そのまま120℃で5分保持し、さらに、昇温速度5℃/minで積層物を120℃から190℃まで昇温し、そのまま190℃で5分保持し、さらに、昇温速度5℃/minで積層物を190℃から300℃まで昇温し、そのまま300℃で60分保持することにより、前記加熱物を焼成した。この間、室温から昇温して、300℃での60分の保持が終了するまで、積層物に対しては、上述の2MPaの圧力を加え続けた。これにより、前記加熱物から、大きさが3mm×3mmの金属焼結体を形成した。
次いで、得られた焼成物を室温まで放冷した。
以上により、銅板と、チタン層及び銀層を備えたシリコンチップとが、金属焼結体からなる接合部によって接合されて構成された、接合体を得た。
【0233】
<<接合体(金属焼結体)の評価>>
上記で得られた接合体(金属焼結体)を、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
また、接合体の断面をSEM-EDSにより観察したときに取得した撮像データを、
図7に示す。
【0234】
[実施例12]
<<焼結材の製造>>
実施例11の場合と同じ方法で、焼結材を得た。
【0235】
<<接合体(金属焼結体)の製造>>
前記印刷層の予備加熱を、80℃で2分行うのに代えて、80℃で1分行った点以外は、実施例11の場合と同じ方法で、銅板と、前記印刷層の加熱物(予備加熱物)と、チタン層及び銀層を備えたシリコンチップと、の積層物を得た。
次いで、大気下、得られた積層物に対して、その厚さ方向に2MPaの圧力を加えながら、昇温速度5℃/minで積層物を室温から120℃まで昇温し、そのまま120℃で5分保持し、さらに、昇温速度5℃/minで積層物を120℃から180℃まで昇温し、そのまま180℃で60分保持することにより、前記加熱物を焼成した。この間、室温から昇温して、180℃での60分の保持が終了するまで、積層物に対しては、上述の2MPaの圧力を加え続けた。これにより、前記加熱物から、大きさが3mm×3mmの金属焼結体を形成した。
次いで、得られた焼成物を室温まで放冷した。
以上により、銅板と、チタン層及び銀層を備えたシリコンチップとが、金属焼結体からなる接合部によって接合されて構成された、接合体を得た。
【0236】
<<接合体(金属焼結体)の評価>>
上記で得られた接合体(金属焼結体)を、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表3に示す。
【0237】
[実施例13]
<<焼結材の製造>>
実施例11の場合と同じ方法で、焼結材を得た。
【0238】
<<接合体(金属焼結体)の製造>>
前記印刷層の予備加熱を、80℃で2分行うのに代えて、80℃で1分行った点以外は、実施例11の場合と同じ方法で、銅板と、前記印刷層の加熱物(予備加熱物)と、チタン層及び銀層を備えたシリコンチップと、の積層物を得た。
次いで、大気下、得られた積層物に対して、その厚さ方向に2MPaの圧力を加えながら、昇温速度5℃/minで積層物を室温から120℃まで昇温し、そのまま120℃で5分保持し、さらに、昇温速度5℃/minで積層物を120℃から190℃まで昇温し、そのまま190℃で5分保持し、さらに、昇温速度5℃/minで積層物を190℃から200℃まで昇温し、そのまま200℃で60分保持することにより、前記加熱物を焼成した。この間、室温から昇温して、200℃での60分の保持が終了するまで、積層物に対しては、上述の2MPaの圧力を加え続けた。これにより、前記加熱物から、大きさが3mm×3mmの金属焼結体を形成した。
次いで、得られた焼成物を室温まで放冷した。
以上により、銅板と銅チップが、金属焼結体からなる接合部によって接合されて構成された、接合体を得た。
【0239】
<<接合体(金属焼結体)の評価>>
上記で得られた接合体(金属焼結体)を、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表3に示す。
【0240】
<<焼結材の製造、接合体(金属焼結体)の製造、及び接合体(金属焼結体)の評価>>
[実施例14]
金属焼結体の形成時に、前記積層物を最後に200℃まで昇温し、そのまま200℃で60分保持するのに代えて、250℃まで昇温し、そのまま250℃で60分保持した点以外は、実施例13の場合と同じ方法で、焼結材及び接合体(金属焼結体)を製造し、接合体(金属焼結体)を評価した。結果を表3に示す。
【0241】
[実施例15]
金属焼結体の形成時に、前記積層物を最後に200℃まで昇温し、そのまま200℃で60分保持するのに代えて、280℃まで昇温し、そのまま280℃で60分保持した点以外は、実施例13の場合と同じ方法で、焼結材及び接合体(金属焼結体)を製造し、接合体(金属焼結体)を評価した。結果を表3に示す。
【0242】
[実施例16]
金属焼結体の形成時に、前記積層物を最後に200℃まで昇温し、そのまま200℃で60分保持するのに代えて、300℃まで昇温し、そのまま300℃で60分保持した点以外は、実施例13の場合と同じ方法で、焼結材及び接合体(金属焼結体)を製造し、接合体(金属焼結体)を評価した。結果を表3に示す。
【0243】
[実施例17]
金属焼結体の形成時に、前記積層物を最後に200℃まで昇温し、そのまま200℃で60分保持するのに代えて、350℃まで昇温し、そのまま350℃で60分保持した点以外は、実施例13の場合と同じ方法で、焼結材及び接合体(金属焼結体)を製造し、接合体(金属焼結体)を評価した。結果を表3に示す。
【0244】
[実施例18]
<<焼結材の製造>>
実施例11の場合と同じ方法で、焼結材を得た。
【0245】
<<接合体(金属焼結体)の製造>>
大きさが50mm×50mmで、厚さが0.8mmの第1銅板を準備した。また、DBC(Direct Bonded Copper)基板として、大きさが32mm×32mmで、厚さが0.63mmの、平面形状が正方形の酸化アルミニウム(Al2O3)板と、その両面に設けられた、大きさが30mm×30mmで、厚さが0.3mmの、平面形状が正方形の第2銅板と、を備え、これら酸化アルミニウム板と第2銅板を、これらの上方から見下ろして平面視した状態で、酸化アルミニウム板の中心と、2枚の第2銅板の中心と、が一致し、さらに、酸化アルミニウム板の外周と、2枚の第2銅板の外周と、が平行となるように、酸化アルミニウム板と、2枚の第2銅板と、が位置合わせされたものを準備した。
前記第1銅板の一方の面上に、スクリーン印刷法によって、上記で得られた焼結材の、大きさが30mm×30mmで、厚さが0.1mmの印刷層を形成した。
次いで、プログラムホットプレート(AS ONE社製)を用いて、大気下、無加圧下(常圧下)の条件で、80℃で1分、前記印刷層の予備加熱を行った後、前記印刷層の加熱物(予備加熱物)上に、前記DBC基板を載せた。このとき、DBC基板中の一方の第2銅板を、前記印刷層の加熱物(予備加熱物)に接触させた。また、これら(DBC基板及び前記加熱物)を上方から見下ろして平面視した状態で、前記加熱物の中心と、DBC基板の中心と、を一致させ、さらに、加熱物の外周と、DBC基板の外周と、が平行となるように、DBC基板を位置合わせした。
【0246】
次いで、大気下、得られた積層物に対して、その厚さ方向に5MPaの圧力を加えながら、昇温速度10℃/minで積層物を室温から80℃まで昇温し、そのまま80℃で20分保持し、さらに、昇温速度10℃/minで積層物を80℃から120℃まで昇温し、そのまま120℃で20分保持し、さらに、昇温速度10℃/minで積層物を120℃から190℃まで昇温し、そのまま190℃で20分保持し、さらに、昇温速度10℃/minで積層物を190℃から300℃まで昇温し、そのまま300℃で90分保持することにより、前記加熱物を焼成した。この間、室温から昇温して、300℃での90分の保持が終了するまで、積層物に対しては、上述の5MPaの圧力を加え続けた。これにより、前記加熱物から、大きさが30mm×30mmの金属焼結体を形成した。
次いで、得られた焼成物を室温まで放冷した。
以上により、第1銅板と、DBC基板とが、金属焼結体からなる接合部によって接合されて構成された、接合体を得た。
【0247】
<<接合体(金属焼結体)の評価>>
<ダイシェア強度の測定>
上記で得られた接合体を、大きさが5mm×5mmの、平面形状が正方形の、36枚の小片に切断した。
これら36枚の小片から、無作為に14枚の小片を選別し、これら14枚の小片(接合体)について、実施例1における接合体の場合と同じ方法で、ダイシェア強度を算出し、それらの平均値を前記接合体のダイシェア強度として採用した。結果を表4に示す。
【0248】
[比較例1]
<<焼結材の製造>>
常温下で、銅粒子(a)(福田金属箔粉工業社製、CU-HWQ Grade1.5μm、D50:1~2μm、タップ密度:3~4g/cm3、球状)(10質量部)と、ポリエチレングリコール300(富士フイルム和光純薬社製、PEG300)(1質量部)と、アスコルビン酸(富士フイルム和光純薬社製)(0.1質量部)と、を混合し、撹拌することで、焼結材を得た。
【0249】
<<接合体(金属焼結体)の製造及び評価>>
上記で得られた焼結材を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、接合体(金属焼結体)を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0250】
<<焼結材の製造、接合体(金属焼結体)の製造、及び接合体(金属焼結体)の評価>>
[比較例2]
金属焼結体の形成時に、前記積層物を最後に200℃まで昇温し、そのまま200℃で60分保持するのに代えて、250℃まで昇温し、そのまま250℃で60分保持した点以外は、比較例1の場合と同じ方法で、焼結材及び接合体(金属焼結体)を製造し、接合体(金属焼結体)を評価した。結果を表4に示す。
【0251】
[比較例3]
金属焼結体の形成時に、前記積層物を最後に200℃まで昇温し、そのまま200℃で60分保持するのに代えて、300℃まで昇温し、そのまま300℃で60分保持した点以外は、比較例1の場合と同じ方法で、焼結材及び接合体(金属焼結体)を製造し、接合体(金属焼結体)を評価した。結果を表4に示す。
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
上記結果から明らかなように、実施例1~18においては、銅粒子を含有する焼結材を用いて、大気下において、高圧での加圧を必要とせずに、十分な接合強度で接合体を製造できた。
実施例1~18においては、焼結材が、銀粒子と、銅粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、を含有しており、銀粒子の1次粒子径が200nm以下であり、銅粒子のD50が1~12μmであった。
【0257】
実施例2~3と実施例5~6との比較から、焼結材が前記液状成分を含有していることで、接合体の接合強度(ダイシェア強度)が増大することを確認できた。ただし、実施例1~3と実施例4~6から、最終焼成温度が高いほど、接合部の内部の銅粒子の表面と、銅板の表面において、酸化層が形成され易い傾向にあることを確認できた。そして、実施例2と実施例5との比較から、前記液状成分(PEG300)を含有していることによって、接合部の内部の銅粒子の表面と、銅板の表面において、酸化層が形成され易い傾向にあることを確認できた。
【0258】
実施例5~6と実施例8~9との比較から、焼結材が前記抗酸化性化合物を含有していることで、接合体の接合強度を低下させることなく、接合部の内部の銅粒子の表面と、銅板の表面において、酸化層の形成を抑制できることを確認できた。さらに、実施例11と、実施例15~16の結果からも、最終焼成温度が高い場合であっても、焼結材が前記抗酸化性化合物を含有していることで、接合体の接合強度を低下させることなく、接合部の内部の銅粒子の表面と、銅板の表面において、酸化層の形成を抑制できることを確認できた。
【0259】
実施例7~10の比較と、実施例12~17の比較から、最終焼成温度が高い方が、接合体の接合強度が増大するが、最終接合温度が高過ぎると、接合体の接合強度が低下する傾向にあることを確認できた。
【0260】
実施例16と実施例18の結果から、金属製部材の接合面が広くなっても、銅粒子を含有する焼結材を用いて、大気下において、高圧での加圧を必要とせずに、十分な接合強度で接合体を製造できることを確認できた。
なお、実施例18においては、14枚のすべての小片の前記ダイシェア強度が、18MPa以上であった。
【0261】
図6より、実施例9で得られた接合体においては、接合部の内部の銅粒子は、粒子状のまま存在していること、銀粒子同士は互いに融着しており、この融着した状態の銀粒子が銅粒子の表面を被覆し、さらに銅板の表面と直接接触していること、を確認できた。
図6中、銅粒子は黒色の粒子として確認でき、融着した状態の銀粒子は、銅粒子を囲む白色の領域として確認できた。
【0262】
図7からも、同様の結果を確認できた。すなわち、実施例11で得られた接合体においても、接合部の内部の銅粒子は、粒子状のまま存在し、銀粒子同士は互いに融着しており、この融着した状態の銀粒子が銅粒子の表面を被覆し、さらに銅板の表面と直接接触していた。
図7中、銅粒子は薄灰色の粒子として確認でき、融着した状態の銀粒子は、銅粒子を囲む白色の領域として確認できた。
【0263】
これに対して、比較例1~3においては、銅粒子を含有する焼結材を用いて、大気下において、高圧での加圧を必要とせずに、十分な接合強度で接合体を製造できなかった。
比較例1~3においては、焼結材が、銀粒子と、含窒素化合物と、還元剤と、をいずれも含有していなかった。