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特開2023-64096結像光学製造システムの目標波面を再生する方法、およびその方法を実施する計測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064096
(43)【公開日】2023-05-10
(54)【発明の名称】結像光学製造システムの目標波面を再生する方法、およびその方法を実施する計測システム
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/84 20120101AFI20230428BHJP
   G02B 19/00 20060101ALI20230428BHJP
   G03F 1/24 20120101ALN20230428BHJP
   G03F 7/20 20060101ALN20230428BHJP
【FI】
G03F1/84
G02B19/00
G03F1/24
G03F7/20 503
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022170360
(22)【出願日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】10 2021 211 975.1
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス グウォッシュ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス コッホ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ レングル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル パゲル
【テーマコード(参考)】
2H052
2H195
2H197
【Fターム(参考)】
2H052BA01
2H052BA12
2H195BA10
2H195BD02
2H195BD14
2H195BD17
2H195BD19
2H195BD25
2H197AA09
2H197BA11
2H197CA10
2H197CC02
2H197DB10
2H197DB11
2H197DC16
2H197GA01
2H197GA18
2H197GA23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光学測定システムによって光学製造システムが目標波面を再生中に光学製造システムの対応する偏差に光学測定システムの波面偏差を適切に近づけられる方法を提供する。
【解決手段】光学測定システムは、アクチュエータ手段によって変位可能な物体ホルダとアクチュエータ手段によって変位可能な少なくとも1つの光学構成要素とを備え、各アクチュエータに開始アクチュエータ位置設定値(X0)が指定37され、設計波面(WD)が決定される。開始波面(W0)について、粗い測定が実施され、粗いアクチュエータ位置設定値(X1)に対して粗い目標波面(W1)が得られるまで、物体ホルダがアクチュエータ手段によって調整され、粗い目標波面が精密測定43され、光学構成要素は、実際の波面はめ込みと設計波面の間の偏差が最小の場合に、精密なアクチュエータ位置設定値(X2)に対して精密な目標波面(W2)が得られるまで変位される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学測定システム(6、7、10)を用いて、物体(5)が照明光(1)で照明されているときに結像光学製造システム(23、24、25)の目標波面(WT)を再生する方法であって、
- 前記光学測定システム(6、7、10)が、物体面(4)の前記物体(5)を像面(15)の像フィールドに結像させるように設計されており、
- 前記光学測定システム(6、7、10)が、前記物体(5)を保持するように機能するとともに、少なくとも1つのアクチュエータ(19)によって並進させることで変位させることができる、物体ホルダ(18)を備え、
- 前記光学測定システム(6、7、10)が、少なくとも1つのアクチュエータ(30、31、8a、12)によって変位させることができる少なくとも1つの光学構成要素(M1、M2、8、11a)を備え、
以下の、
- 開始アクチュエータ位置設定値(X0)を指定するステップ(37)であって、各アクチュエータ(30、31、8a、12)に開始アクチュエータ位置が割り当てられる、ステップ(37)と、
- 目標波面(WT)に近づく、かつ、前記光学測定システム(6、7、10)により設定波面として生成される、期待設計波面(WD)を決定するステップと、
- 前記光学測定システム(6、7、10)が、前記開始アクチュエータ位置設定値(X0)を実際に設定した後に実際の波面(W)として生成する開始波面(W0)について、粗い測定(40)を実施するステップと、
- 前記開始波面(W0)から現れる実際の波面(W)と前記設計波面(WD)の間の偏差を、前記物体ホルダ(18)を並進させることによって、および、波面偏差が最小である場合の粗いアクチュエータ位置設定値(X1)に対する粗い目標波面(W1)が得られるまで、それぞれの物体ホルダ位置でそれぞれ生じる前記実際の波面(W)を測定することによって、最小にするステップと、
- 前記光学測定システム(6、7、10)が、前記粗いアクチュエータ位置設定値(X1)を実際に設定した後に実際の波面(W)として生成する前記粗い目標波面(W1)について、精密測定(43)を実施するステップと、
- 前記粗い目標波面(W1)から現れる実際の波面(W)と前記設計波面(WD)の間の偏差を、前記少なくとも1つの光学構成要素(M1、M2)を変位させることによって、および、波面偏差が最小である場合の精密なアクチュエータ位置設定値(X2)に対する精密な目標波面(W2)が得られるまで、それぞれの構成要素位置でそれぞれ生じる前記実際の波面(W)を監視することによって、最小にするステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記波面が、前記粗い測定(40)中に関数集合に応じて拡張され、限界次数より小さい前記拡張の次数だけが、前記粗い測定(40)中に考慮に入れられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記精密測定(43)の前記ステップと、それに続く前記偏差を最小にする前記ステップとが反復して実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記精密測定(43)と、それに続く前記偏差を最小にする前記ステップとを実施するときに位相回復が実施されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
アナモルフィック光学製造システム(23~25)の前記目標波面(WT)が、同形の光学測定システム(6、7、10)を用いて再生されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
同形の光学製造システムの前記目標波面(WT)が、同形の光学測定システム(6、7、10)を用いて再生されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記波面が、前記目標波面(WT)を指定するときに関数集合に応じて拡張され、前記拡張の少なくとも1つの選択された次数だけが、前記目標波面を指定するときに考慮に入れられることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記光学測定システム(6、7、10)の少なくとも1つのアクチュエータ(8a、12)を作動させることによって前記物体(5)を照明するための照明設定値が、前記開始アクチュエータ位置設定値(X0)の指定(37)と、前記目標波面(WT)に近づけられた前記設計波面(WD)の決定との前に指定され、前記目標波面(WT)および前記設計波面(WD)が、前記照明設定値に基づいて指定されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法を実施する計測システム(2)であって、
- 前記物体(5)を照明するための照明光学ユニット(7)を備え、
- 前記目標波面(WT)を再生するための光学測定システム(6、7、10)を備え、
- 物体ホルダ(18)を、前記物体ホルダ(18)を変位させるための物体ホルダアクチュエータ(19)と共に備え、
- 前記光学測定システム(6、7、10)の少なくとも1つの光学構成要素(M1、M2、8、11a)であって、前記光学測定システムが前記光学構成要素(M1、M2、8、11a)を変位させるための構成要素アクチュエータ(30、31、8a、12)を有する、少なくとも1つの光学構成要素(M1、M2、8、11a)を備え、
- 前記光学測定システム(6、7、10)の像面(15)の領域に配置された、波面測定のための空間分解能検出デバイス(14)を備え、
- 前記アクチュエータ(30、31、8a、12、19)に信号接続された中央開ループ/閉ループ制御デバイス(20)を備える、計測システム(2)。
【請求項10】
照明光(1)を生成するための光源(6)を特徴とする、請求項9に記載の計測システム。
【請求項11】
物体(5)を照明するための照明設定値を指定するアクチュエータ(8a、12)を特徴とする、請求項9または10に記載の計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、ドイツ特許出願DE102021211975.1の優先権を主張し、同出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、光学測定システムを用いて、物体が照明光で照明されているときに結像光学製造システムの目標波面を再生する方法に関する。本発明はさらに、この方法を実施する計測システムに関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィマスクの空中像を3次元で測定する計測システムは、WO2016/012425A2およびWO2016/012426A1により知られている。リソグラフィマスクの空中像を3次元で決定する、対応する計測システムおよび方法はDE102019206651A1により知られている。DE102013219524A1には、光学システムの結像特性を決定するデバイスおよび方法、ならびに光学システムが記載されている。DE102013219524A1には、ピンホールの結像に基づいて波面を決定する位相回復方法が記載されている。DE102017210164B4には、投影レンズの結像挙動を調整する方法、および調整装置が記載されている。投影露光装置のレンズ加熱を補償する方法がUS9,746,784B2により知られている。DE102008042356A1には、画像欠陥判定デバイスを備える投影露光装置と、投影露光装置のレンズの少なくとも1つの光学素子を操作するためのマニピュレータのコントローラとが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/012425号
【特許文献2】国債公開第2016/012426号
【特許文献3】独国特許出願公開第102019206651号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102013219524号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第102017210164号明細書
【特許文献6】米国特許第9,746,784号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第102008042356号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、光学測定システムによって光学製造システムが目標波面を再生中に、光学製造システムの対応する偏差に、目標の心ずれによって発生する光学測定システムの波面偏差を適切に近づけられるようにすることである。
【0006】
この目的は、本発明により、請求項1に明記された特徴を有する再生方法によって達成される。
【0007】
この再生方法は、光学製造システムの目標波面の目標とする再生またはエミュレーションに使用することができるが、原理的には、光学測定システムを助けとして実施される測定方法の間に発生する波面収差を補正するために使用することもできる。
【0008】
特に言及されていない限り、アクチュエータ変位とは、前記アクチュエータによって変位したそれぞれの構成要素の並進および/または傾きを意味する。一般に、光学測定システムの決定された設計波面は、再生されるべき光学製造システムの目標波面とは異なる。物体はテスト構造体とすることができる。このテスト構造はリソグラフィマスクとすることができる。
【0009】
目標波面の最適で可能な接近再生のための光学測定システムの調整を最適化する範囲内で、この最適化が、最初に物体変位だけがある粗い接近と、次に粗い接近の結果から移る次の段階の完全な最適化がある精密な接近とに細分される場合に、有利であることが見出された。決定された粗い目標波面により、その後の精密な接近をより速く収束させることが可能になるので、従来技術と比較して、再生方法を迅速に実施することができる。
【0010】
請求項2に記載の関数集合展開は、その価値が実際に実証されている。関数集合の基底関数として以下のもの、すなわち、ゼルニケ多項式、バチア・ウルフ多項式、ベッセル関数、ラプラス方程式の解、直交化され局所的に分布する狭い指数関数および/またはガウス関数(任意選択で格子上に分布)、直交化され局所的に分布するスプライン多項式(任意選択で格子上に分布)および基底関数の直交化混合関数、を用いることができる。例として、このような直交化は、グラムシュミット直交化法(Korn and Korn, "Mathematical Handbook for Scientists and Engineers", McGraw-Hill, 1968; D. Malacara, "Optical Shop Testing", Wiley-Interscience, 1992; http://de.wikipedia.org/wiki/Schmidtsches_Orthonormalisierungsverfahren)を用いて実施することができる。例として、限界次数は5次とすることができる。ゼルニケ多項式が関数集合展開として使用される限り、次に、たとえば、次数<Z5のゼルニケ多項式を粗い測定中に考慮に入れることができる。
【0011】
請求項3に記載の反復手順は、実際にその価値が実証されている。最適化のために、投影法(誤差低減アルゴリズム、Gerchberg-Saxton法、IFTA法)および/または従来の反復最適化法(勾配降下、最小二乗、減衰最小二乗、遺伝子探索法、シンプレックス、Chambolle-Pock optimization、逆伝搬法)および/または直接逆転法(Extended Nijboer Zernike Decomposition (S. Van Haver, The Extended Nijboer-Zernike Diffraction Theory and its Applications, 2010, http://resolver.tudelft.nl/uuid:8d96ba75-24da-4e31-a750-1bc348155061)、データベースベース法、機械学習法)を利用することができる。使用することができる反復最適化アルゴリズムはまた、DE102013219524B4にも記載されている。
【0012】
請求項4に記載の精密な接近の間の位相回復は、同様に、偏差を最小にするためのその価値が実証されている。DE102013219524B4に開示されたアルゴリズムはまた、この目的のために使用することもできる。
【0013】
再生方法は、請求項5に記載の同形の光学測定システムを用いてアナモルフィック製造システムを再生するときに、その価値が特に実証されている。
【0014】
あるいは、再生方法はまた、請求項6に記載の同形の光学測定システムを用いて同形の光学製造システムを再生するのに用いることもできる。この状況では、次に、さらなる最適化の自由度を用いて、非常に正確な偏差最小化を得ることができる。
【0015】
請求項7に記載の方法の場合に利用できるのは、光学システムの特定のパラメータが、その動作条件が変化した場合に、関数集合展開の個々の関数または次数に関して非常に影響を受けやすいことが多いのに対し、他の関数または次数は、本質的にほとんど影響を受けないか、影響を受けないままであることである。この場合、目標波面を指定するために、影響を受けやすい関数または次数が用いられる。ここでは、影響を受けやすい厳密に1つの、使用される関数または次数とすることができる。例として、そのような2つの関数または次数を使用することもできる。照明方向が、たとえば変化する限り、このことを、波面のゼルニケ展開のゼルニケ多項式Z5および/またはZ6を考慮することによって、考慮に入れることができる。
【0016】
これらの利点は、請求項8に記載の方法において特に重要になる。特に、光学測定システムの少なくとも1つの絞りを変位させるためのアクチュエータを、照明設定値を指定するためのアクチュエータとして使用することができる。このような絞りは、光学測定システムの照明光学ユニットの構成部品、および/または光学測定システムの結像光学ユニットの構成部品とすることができる。
【0017】
請求項9に記載の計測システムの利点は、再生方法を参照して上で既に説明したものに合致する。
【0018】
この計測システムは、厳密に1つの構成要素アクチュエータ、さもなければ複数の構成要素アクチュエータを備えることができる。構成要素アクチュエータの数は通例、10個未満である。
【0019】
請求項10に記載の光源により、計測システムが完成する。あるいは、計測システムは、光学製造システムの光源を使用することもできる。すなわち、光源は、1つの販売可能な製品の形の専用の光源がなくても、埋め合わせることができる。光源は、EUV光源とすることができる。DUV光源またはUV光源を使用することもできる。
【0020】
請求項8に記載の方法は、特に、請求項11に記載の計測システムを用いて実施することができる。
【0021】
本発明の例示的な実施形態について、図面を参照して以下でさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】物体が照明光で照明されているときの結像光学製造システムの目標波面を再生する計測システムを視線方向が結像面と直交している状態で示す、非常に概略的な平面図であり、この計測システムは、物体を照明するための照明光学ユニットと、物体を結像するための結像光学ユニットを含む光学測定システムとを備え、照明光学ユニットおよび結像光学ユニットはそれぞれ、非常に概略的に表されている。
図2図1による計測システムをさらに概略的に示す図であり、結像光学ユニットの像フィールドにおける実際の波面のxy強度値が挿入図に描かれている。
図3図2と同様に光学製造システムを示す図であり、その目的は、像面の領域でその目標波面を再生することであり、この目標波面が図3の挿入図に同様に描かれている。
図4図2よりもいくらか詳細に計測システムを示す図であり、物体ホルダのアクチュエータおよび結像光学ユニットの2つのミラーのアクチュエータが初期開始アクチュエータ位置設定に設定されており、さらに、設定波面を表す、計測システムの結像光学ユニットの設計波面に近づけられる光学製造システムの目標波面と、実際の値としての開始アクチュエータ位置設定値におけるアクチュエータによって生成された開始波面との両方が、表示された拡大細部に示されている。
図5図4と同様に、実際の波面が設計波面に粗く近づけられるステップを実行した後の計測システムを示す図であり、計測システムの物体ホルダのアクチュエータが、粗い目標波面の粗アクチュエータ位置設定値が得られるように変位されている。
図6図4および図5と同様に、実際の波面が設計波面に精密に近づけられた後の計測システムを示す図であり、アクチュエータの精密なアクチュエータ位置設定値が設定されている。
図7】計測システムの助けによる結像光学製造システムの波面再生の結果を表形式で並置して示す図であり、上の列が、粗い接近および精密な接近を実施していない接近を示し、下の列が、粗い接近および精密な接近のステップを実施している再生を示している。
図8図4と同様に、同形の光学製造システムの目標波面を再生しているときの計測システムを示す図であり、目標波面および設計波面の追加仕様が、調整可能な照明設定値に基づいている。
図9図1図2図4図8による計測システムの光学測定システムを用いて、物体が照明光で照明されているときに結像光学製造システムの目標波面を再生する方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
位置関係を表示しやすくするために、以下では直交座標xyz座標系を使用する。図1で、x軸は、図面の平面に対して垂直に、平面から出て伸びている。y軸は、図1の右の方へ伸びている。図1で、z軸は上に向かって伸びている。
【0024】
子午線断面に対応する図として、図1は、物体が照明光1で照明されたときに結像光学製造システムの目標波面を再生する計測システム2の、EUV照明光または結像光1のビーム経路を示す。計測システム2の光学測定システムの結像光学ユニットでは、物体面4の物体フィールド3に配置されたレチクルまたはリソグラフィマスクの形のテスト構造体5(図2参照)が、EUV照明光1を用いて結像される。以下では、テスト構造体5を物体またはサンプルとも呼ぶ。
【0025】
計測システム2は、3次元(3D)空中像を解析するために使用される(空中像計測システム)。用途には、リソグラフィマスクの空中像の再生が、その空中像が製造投影露光装置、たとえばスキャナでも見えるので、含まれる。このタイプの計測システムは、WO2016/012426A1、US2013/0063716A1(同出願の図3参照)、DE10220815A1(同特許の図9参照)、DE10220816A1(同特許の図2参照)、およびUS2013/0083321A1により知られている。
【0026】
照明光1は、物体5で反射される。照明光1の入射面は、yz面に平行になっている。
【0027】
EUV照明光1は、EUV光源6によって生成される。光源6は、レーザプラズマ源(LPP、レーザ生成プラズマ)または放電源(DPP、放電生成プラズマ)とすることができる。原則として、シンクロトロンベースの光源、たとえば、自由電子レーザ(FEL)を使用することもできる。EUV光源の使用波長は、5nmから30nmまでの範囲とすることができる。原則として、計測システム2の一変形形態の場合では、光源6の代わりに別の使用光波長の光源、たとえば使用波長が193nmの光源を使用することもできる。
【0028】
計測システム2の実施形態に応じて、計測システムは、反射性あるいは透過性の物体5に対して使用することができる。透過性物体の1つの例は、ピンホールアパーチャである。
【0029】
計測システム2の照明光学ユニット7は、光源6と物体5の間に配置される。照明光学ユニット7は、物体フィールド3の上の画定された照明強度分布によって、また同時に、物体フィールド3のフィールド点を照明するための画定された照明角度分布によって、検査されるべき物体5を照明する機能を果たす。この照明角度分布を以下では、照明開口または照明設定とも呼ぶ。
【0030】
照明開口は、照明光学ユニット瞳面9に配置された照明光学ユニット7のシグマ開口絞り8によって範囲が定められる。別法として、または加えて、対応する開口絞りがまた、計測システム2の結像光学ユニットに存在することもでき、これについてはさらに後述する。シグマ開口絞り8は、入射する照明光1のビームを縁部で制限する。別法として、または加えて、シグマ開口絞り8および/または結像光学ユニットの絞りは、照明光ビームを内側から遮断すること、すなわち掩蔽絞りとして機能することもできる。対応する絞りは、それに応じてビームを内側で遮断する内側絞り本体を有することができ、前記絞り本体は、複数のウェブによって、たとえば4つのウェブによって外側絞り支持体に連結されている。シグマ開口絞り8は、変位駆動部8aによって照明光学ユニット瞳面9で、すなわちxy面に平行に、画定されたように変位可能である。絞り変位駆動部8aは、物体5を照明するときの照明設定を指定するためのアクチュエータである。
【0031】
物体5で反射した後、照明光または結像光1は、計測システム2の光学測定システムの結像光学ユニットまたは投影光学ユニット10に入る。照明開口と同様に、図1の投影光学ユニット10の入射瞳11には、NA開口絞り11aによって指定される投影光学ユニット開口がある。NA開口絞り11aは、変位駆動部12によって投影光学ユニット瞳面内で、すなわちxy面に平行に、画定されたように変位可能である。変位駆動部12はまた、照明設定を指定するためのアクチュエータでもある。通常、シグマ開口絞り8とNA開口絞り11aは、両絞りの中心に照明光1の中心光線と試験構造体5での反射とが当たるように、互いに相対的に位置合わせされる。シグマ開口絞り8とNA開口絞り11aは、互いに心合わせすることができる。
【0032】
測定される結像光学ユニット10は、計測システム2の空間分解能検出デバイス14に向けて物体5を結像する機能を果たす。検出デバイス14は、たとえば、CCD検出器として設計されている。CMOS検出器もまた使用することもできる。検出デバイス14は、投影光学ユニット10の像面15に配置されている。
【0033】
検出デバイス14は、デジタル画像処理デバイス17に信号接続されている。
【0034】
検出デバイス14のxy面における画素空間分解能は、測定されるべき入射瞳11の座標方向x、yにおける開口数(NAx、NAy)に反比例するように指定することができる。この画素空間分解能は、x座標の方向では通例λ/2NAx未満であり、y座標の方向では通例λ/2NAy未満である。この場合、λは照明光1の波長である。検出デバイス14の画素空間分解能はまた、NAx、NAyとは無関係に、正方形画素寸法で実現することもできる。
【0035】
検出デバイス14の空間分解能は、再サンプリングによって増大させることも減少させることもできる。x方向とy方向の寸法が異なる画素を有する検出デバイスもまた、実現可能である。
【0036】
物体5は、物体ホルダまたはホルダ18によって搬送される。ホルダ18は、変位駆動部またはアクチュエータ19によって、一方ではxy面に平行に、他方ではこの面に対して垂直に、すなわちz方向に変位させることができる。変位駆動部19は、計測システム2の動作全体と同様に中央制御デバイス20によって制御され、このデバイスは、これ以上詳細には示さない方法で、制御されるべき構成要素と信号接続している。
【0037】
計測システム2の光学構造体は、半導体構成要素の投影リソグラフィ製造中に、物体5の投影露光の範囲内で、照明および画像表現を最も正確に実現可能に再生またはエミュレーションする機能を果たす。計測システム2の光学測定システムは、この場合に使用される投影露光装置の結像光学製造システムの目標波面を再生するように機能する。
【0038】
図1は、物体面4の領域内の試験構造体5の様々な可能な配置面を、いずれの場合にも破線を用いて示している。計測システム2の動作中、試験構造体5は、サブ開口10iによってそれぞれ指定された照明角度分布を用いて、物体面4に対する試験構造体5の様々な距離位置zmで照明され、強度I(x,y,zm)が、それぞれの距離位置zmについて、空間的に分解されるようにして像面15に記録される。この測定結果I(x,y,zm)は、空中像とも呼ばれる。
【0039】
焦点面zmの数は、2から20までの間、たとえば10から15までの間とすることができる。この場合、z方向に、いくつかのレイリー単位(NA/λ2)にわたる総変位がある。
【0040】
図1には、円形または楕円形の試験構造体の形にできる試験構造体5のxy面の図が、挿入図として描かれている。
【0041】
入射瞳11に加えて、図1はまた、投影光学ユニット13の射出瞳21もやはり概略的に表している。結像光学ユニット10の入射瞳11および射出瞳21は、両方とも楕円形である。
【0042】
計測システム2の結像光学ユニット10は同形である。すなわち、結像スケールがx方向とy方向で同じである。
【0043】
図1の下部は、検出デバイス14の3つの測定結果を再びxy面の図で示しており、中央の測定結果は試験構造体5の、物体面4に配置された場合の画像表現を示し、他の2つの測定結果は、試験構造体5が物体面4のz座標と比較して一度は正のz方向に、一度は負のz方向に変位している画像表現を示している。試験構造体5の空中像は、それぞれのz座標に対応付けられた測定結果全体から生じる。
【0044】
図2は、計測システム2を図1よりもいくらか概略的に示している。
【0045】
図2の下部は、検出デバイス14の検出面における結像光1の実際の波面の強度を描いており、この検出面は像面15と一致することができる。すなわち、等高線図は、物体5の、物体面に対する所与の焦点zmの場合における、像面15内の強度分布I(x,y)を描いている。
【0046】
計測システム2の光学測定システムは、図2に計測システム2が描かれているように図3に同様に概略的に描かれている、投影露光装置22の光学製造システムをエミュレートしている。
【0047】
投影露光装置22は、EUV光源である製造用光源と、製造用照明光学ユニット23とを備える。リソグラフィマスクとも称される反射レチクル24が照明される。このようなレチクル24は、試験構造体5と同一とすることができるが、これは必須ではない。
【0048】
投影露光装置22の物体面の物体フィールドは、結像製造光学ユニット25によって像面26内の像フィールドに結像する。計測システム2の結像光学ユニット10とは異なり、投影露光装置22の結像製造光学ユニット25はアナモルフィックである。すなわち、結像スケールがx方向とy方向で異なる。
【0049】
結像製造光学ユニット25の入射瞳27は楕円形である。結像製造光学ユニット25の射出瞳28は円形である。
【0050】
図3の下部は、投影露光装置22内で導かれる結像光1の波面Wを像面26の領域で、再びI(x,y)等高線図として描いている。
【0051】
たとえば図3の下部の波面Wであることもある、投影露光装置22の目標波面WTをエミュレートする場合、物体5は、計測システム2内でz方向に段階的に変位し、その過程では、上で説明した距離位置zmが仮定されている。同形の結像製造光学ユニットのエミュレーションの場合とは異なり、計測システム2内でのこの試験構造体5のz変位は、製造光学ユニット25の像面26がz変位した場合と同じ波面変化にはならない。このことは、図2(計測システム2)の下部と図3(投影露光装置22)の下部との2つの波面を比較することにより明らかである。計測システム2の結像光学ユニット10の楕円瞳27、28は、試験構造体5がz変位した場合に波面Wの、対応する楕円形の歪みをもたらす。これによりまた、試験構造体5の像が像面15の領域に、一方ではx、他方ではyの2つの空間方向でレベルが異なる鮮鋭度で結像することになる。
【0052】
図4図6は、結像光学ユニット10を含む計測システム2からなる光学測定システムを用いて、結像製造光学ユニット25の目標波面WTを再生する方法を実施するときの瞬間的な状態を示しており、計測システム2は、図2よりもいくらか詳細に描かれている。指定の目標波面WTは、中央制御デバイス20のメモリに記憶されている。
【0053】
結像製造光学ユニット25の像面26のz変位をエミュレートするために、試験構造体5は、図4に破線で示されている物体面4に対してz方向に変位させる。この変位は、物体ホルダ18の変位駆動部19の助けにより実施される。図2および図3に関連して既に上で説明したことに対応して、この変位が実際の波面Wの変形をもたらし、波面Wは再び楕円形に歪む。
【0054】
計測システム2の結像光学ユニット10は、複数のミラーを備え、そのうちの2つのミラーM1、M2が図4に描かれている。これら2つのミラーM1、M2は、計測システム2の光学測定システムの光学構成要素である。2つのミラーM1、M2のそれぞれは、それぞれのミラーM1、M2を変位させるための構成要素アクチュエータ30、31を有している。この変位は、少なくとも1つの並進自由度および/または少なくとも1つの傾斜自由度を単位として実施することができる。アクチュエータ30、31は、ミラーM1、M2を変位させるときに最大5つ、さらには最大6つの変位自由度を使用できるように設計することができる。
【0055】
ミラーM1、M2の実際の位置は、図4に実線で描かれており、目標波面WTの焦点はずれの画像位置を再生するために、これらの位置は、図4に破線で描かれている理想的な結像ミラー位置からずれている。
【0056】
アクチュエータ30、31のそれぞれのアクチュエータ位置は、再生方法を実施するときに、開始アクチュエータ位置設定値(X0)を構成するように組み合わされる。このようなアクチュエータ位置設定値Xiは、レシピまたは変位レシピとも呼ばれる。この開始アクチュエータ位置設定値X0では、各アクチュエータ30、31に、図4の実際の位置として採用されている開始アクチュエータ位置が割り当てられる。
【0057】
図4の下部から明らかなように、計測システム2の目標波面WTと開始波面WO図4の下部右を参照)とは、互いに大きく逸脱している。
【0058】
開始アクチュエータ位置設定値X0から逸脱しているアクチュエータ位置設定値を決定することによって、結像光学ユニット10の構成要素の調整を行うことが可能であり、この調整の範囲内で、計測システム2の結像光学ユニット10の実際の波面は、図4による開始状態の場合よりもはるかに適切に目標波面WTに近づく。
【0059】
この再生方法では、目標波面WTに最適に近づくこのアクチュエータ位置設定値を見つけることが、一方では粗い接近に(図5参照)、他方では精密な接近に(図6参照)細分化される。
【0060】
最初に、目標波面WTに可能な限り最適に近づく、かつ、計測システム2の光学測定システムによって設定波面として生成されることが意図されている、期待設計波面WDが決定される。この設計波面WDは通例、結像光学ユニットが別々(一方は10、他方は25)のために避けられない残留差が残るので、目標波面WTに正確に対応していない。
【0061】
次に、開始波面W0の粗い測定が最初に、再生方法の粗い接近の範囲内で実施される。すなわち図4による状態での波面W0の測定であり、開始波面が、開始アクチュエータ位置設定値X0の実際の初期設定値に続く実際の波面として光学測定システムによって生成される。
【0062】
例として、実際の波面W0と設計波面WDの差は、設計波面WDのシミュレーションが、システムで用いられるそれぞれの作動構成要素の変位の影響の受けやすさに関連して偏差を生じさせるということ、および、設計波面WDを決定するときに、アクチュエータによって指定されるそれぞれの構成要素位置がシミュレーション値とは異なるということから生じる。さらに、様々なアクチュエータ19、30、31を設置することが公差を生み、この公差は、個々の変位自由度のスケール誤差、および/または異なる変位自由度間の不要な結合をもたらすことができる。
【0063】
次いで、この開始状態から現れる一方の、すなわち開始波面W0から現れる光学測定システムの実際の波面と、他方の設計波面WDの間の偏差は、粗い接近中に、変位駆動部19により光学ホルダを並進させることによってのみ最小化される。この並進は、図5に両頭矢印32で示されている。この最小化は、検出デバイス14によって、並進32のために試験構造体5のx、yおよびzの位置での実際の波面Wそれぞれのはめ込み(setting-in)を監視することによって実施される。変位駆動部19の助けによる物体ホルダの並進と、それぞれの物体ホルダ位置の場合の実際の波面Wはめ込みの対応する監視とは、波面偏差が最小の場合に、アクチュエータ30、31の粗いアクチュエータ位置設定値X1に対して粗い目標波面W1が得られるまで検出デバイス14によって実施される。この状態が図5に示されている。試験構造体5は、図4による位置と比較して、並進32によって変位している。実際の波面Wの像位置もまた、変位駆動部卯19の助けにより、x方向およびy方向において設計波面WDの像位置と一致している。
【0064】
図5による粗いアクチュエータ位置設定値X1の場合、ミラーM1およびM2は、図4による開始アクチュエータ位置設定値X0と比較して同じ位置にあり、すなわち変位していない。そのx/yの位置に関して、またそのサイズに関しても、さらに任意選択でそのx/yのアスペクト比に関しても、図5による粗い接近に応じた粗い目標波面W1はめ込みは、図4によるその開始位置の場合よりもかなり適切に目標波面WTに近づく。
【0065】
粗い接近では、画像位置の変位をもたらす、図4による開始アクチュエータ位置の収差を主に考慮する。
【0066】
画像再生方法において、ここで実施された粗い接近の後には、図6に基づいてさらに説明する精密な接近が続く。この状況では、粗い目標波面W1の精密測定が最初にあり、この粗い目標波面W1は、計測システム2の光学測定システムが、粗いアクチュエータ位置設定値X1を実際に設定した後に実際の波面Wとして生成する。続いて、粗い目標波面W1から現れる実際の波面Wと設計波面WDの間の偏差を、結像光学ユニット10の光学構成要素のうちの少なくとも1つ、すなわちたとえば少なくとも1つのミラーM1、M2、を変位させることによって最小にする。再び、それぞれの構成要素位置に対する実際の波面Wはめ込みは、ここでは検出デバイス14によって監視される。この監視は、最小波面偏差の場合の精密なアクチュエータ位置設定値X2に対して精密な目標波面W2が得られるまで実施され、前記精密な目標波面は設計波面WDに、指定の公差内で一致している。
【0067】
設計波面WDは、既定の測定法に基づいて最適化することができる。設計波面WDは、目標波面との差が特定の基準に対して最小となるように選択することができる。この基準は、L2基準、すなわち二乗可積分関数の空間における基準、さもなければ二乗可算可能な数列の空間における基準とすることができる。設計波面WDを指定するための他の考えられる方法は、対応する空中像に対する最小化で構成される。両方の場合で、それぞれの再生方法が実施可能であること、所与の時間内に実施できること、および悩まされる動的誤差が小さいこと、を確実にする制約を与えることが可能である。
【0068】
限界次数は、比較的複雑さが少ないアルゴリズムを用いて最適値が得られるように選ぶことができ、より精密な最適化には、より複雑なアルゴリズムを用いることができる。
【0069】
取り込まれた実際の波面Wは、粗い測定で設定された関数によって拡張される。粗い測定中は、限界次数よりも小さい次数の拡張だけが考慮される。
【0070】
ゼルニケ多項式は、そのような関数集合の一例である。粗い次数の場合には、特に、ゼルニケ次数Z2、Z3、Z4において検出された実際の波面Wと設計波面WDの間の偏差を考慮に入れることが可能である。すなわち、偏差ΔZ2、ΔZ3、ΔZ4を考慮することが可能である。したがって、限界次数Z5よりも小さい展開次数が考慮に入れられる。
【0071】
こうして、粗い測定の範囲内で、低次の像収差だけを決定し最小化することができる。Z4成分については、物体5をz方向に変位させることができ、最適化された最良の焦点までの距離を測定することができる。x方向およびy方向の像位置は、検出デバイス14によって直接測定することができ、対応する物体変位によって、特にx方向およびy方向の変位によって補正することができる。
【0072】
変位アクチュエータ19による絶対物体変位に対するそれぞれのゼルニケ寄与の影響の受けやすさによって、再生方法における粗い接近の範囲内で、様々なゼルニケ展開項の関連係数、たとえばZ4の係数を推定することも可能である。この係数は、粗いアクチュエータ位置設定値X1を決定するときに使用される。
【0073】
精密な接近では、DE102013219524B4により知られている方法を利用することができる。この場合、計測システム2の光学測定システムのモデルが、それぞれのアクチュエータ位置設定値Xiを考慮して、それぞれの場合で記述される。次に、光学的伝達関数がそのモデルに、シミュレーションされた像スタック、すなわち空中像を生成するために、それゆえに、モデル化された波面を生成するために、適用される。このモデル化された波面は、次に、それぞれのアクチュエータ位置設定値Xiについて検出された実際の波面Wと比較される。この比較を次に用いて、実際の波面Wと設計波面WDの間の偏差を低減するために、アクチュエータ位置設定値がどのように修正されるべきかを決定する。
【0074】
この過程で、DE102013219524B4で指定されている最適化アルゴリズムおよび誤差低減アルゴリズムを使用することが可能である。光学システムの波面を推定する場合、位相回復法を使用することができる。差の決定を最適化するには、投影法(誤差低減アルゴリズム、Gerchberg-Saxton法、IFTA法)および/または従来の反復最適化法(勾配降下、最小二乗、減衰最小二乗、遺伝子探索法、シンプレックス、Chambolle-Pock optimization、逆伝搬法)および/または直接逆転法(Extended Nijboer Zernike Decomposition (S. Van Haver, The Extended Nijboer-Zernike Diffraction Theory and its Applications, 2010, http://resolver.tudelft.nl/uuid:8d96ba75-24da-4e31-a750-1bc348155061)、データベースベース法、機械学習法)を利用することができる。
【0075】
関数集合展開の基底関数として以下のもの、すなわち、ゼルニケ多項式、バチア・ウルフ多項式、ベッセル関数、ラプラス方程式の解、直交化され局所的に分布する狭い指数関数および/またはガウス関数(任意選択で格子上に分布)、直交化され局所的に分布するスプライン多項式(任意選択で格子上に分布)および基底関数の直交化混合関数、を用いることができる。例として、このような直交化は、グラムシュミット直交化法(Korn and Korn, "Mathematical Handbook for Scientists and Engineers", McGraw-Hill, 1968; D. Malacara, "Optical Shop Testing", Wiley-Interscience, 1992; http://de.wikipedia.org/wiki/Schmidtsches_Orthonormalisierungsverfahren)を用いて実施することができる。
【0076】
精密な接近の範囲内の「精密測定」ステップと後続の偏差の最小化とは、反復して実施することができる。
【0077】
再生法が実施される場合、同形の光学測定システムを用いてアナモルフィック光学系製造システムの目標波面WTを再生することが特に可能である。
【0078】
図7は、再生方法を実施する前と後の計測システム2の光学測定システムの状態の概要を示す。
【0079】
図7の上列に、調整前の状態が示されている。左上は、試験構造体5を検出デバイス14の配置面に完全に結像させた場合の光学測定システムを描いている。この場合、試験構造体5は、例として円形で示されている。この場合、計測システム2の構成要素は、図4図6の破線の位置にある。開始アクチュエータ位置設定値X0を設定するときの、まだ調整されていない状態は図7の右上に描かれている。この状態では、検出デバイス14によって測定できる波面W0が得られる。この波面W0は、像位置と範囲の両方に関して、像面26の領域で検出面がz変位した場合に現れる光学製造システムの目標波面WTから逸脱している。
【0080】
図7の左下に、試験構造体の完全な像表現が試験構造体像35によって示されている。
【0081】
図7の右下に、精密なアクチュエータ位置設定値X2を調整するときの状態が示されている。得られた波面W2は、適切な接近に向かう設計波面WDに対応し、同様に、結像光学製造システムの、適切な接近に向かう目標波面WTに対応している。
【0082】
さらに、精密な目標波面W2と設計波面WDの間の偏差、および精密な目標波面W2と結像光学システム目標波面WTの間の偏差もまた、これらの偏差を再生方法の範囲内で提供される仕様に基づいて計算できるので、再生方法の結果として知られている。
【0083】
図8は、計測システム2の別の実施形態を図2と同様の図で示している。図1図7を参照して上記で既に説明した構成要素および機能には同じ参照符号が付されており、再び詳細に論じる。
【0084】
図8による計測システム2では、図1と併せて上で説明した2つの開口絞り8、11aの変位アクチュエータ8a、12のアクチュエータ位置もまた、再生方法の範囲内で使用されるアクチュエータ位置設定値に含まれる。
【0085】
特に、図8による計測システム2は、計測システム2の光学測定システムの同形の結像光学ユニット10を用いて同形の光学系生産システムの目標波面WTを再生するのに使用することができる。光学製造システムにおいてz方向に像位置を変位させることによって実施される波面再生は、計測システム2で試験構造体5をz変位させることによって実施することができる。様々な照明設定、すなわち、光学製造システムでリソグラフィマスクを照明するときの様々な照明方向は、アクチュエータ8a、12によって変位可能な絞り8、11を経由する照明光1の適切な照明角度によって設定することができる。計測システム2の光学測定システムの光学構成要素の様々な部分的領域が、照明角度設定に応じて効果的になる。この照明角度は、生成される実際の波面に影響を及ぼす。照明角度の実際の波面に対するこの影響を解明すると、たとえば、ゼルニケ展開の場合では、係数Z5、Z6が特に照明角度の影響を非常に受けやすいので、照明角度の変化があると、これらの係数の領域で大きい偏差が予想されることが判明した。これらの偏差は、以下で説明する再生方法を実施することによって補正することができる。
【0086】
この場合、波面は、目標波面WTまたは設計波面WDが指定されたときの関数集合に応じて拡張され、この指定では、その拡張の少なくとも1つの選択された次数、たとえば、水平・垂直非点収差を記述するゼルニケ係数Z5だけが考慮される。
【0087】
試験物体5を照明するための照明設定値、すなわち対応する照明角度分布は、開始アクチュエータ位置設定値X0が指定される前に、かつ設計波形WDが決定される前に、アクチュエータ8aおよび12を設定することによって指定される。次に、この選択された照明設定に基づいて、目標波面WTおよび設計波面WDが指定される。
【0088】
水平・垂直非点収差を生じる、すなわちゼルニケ係数Z5の影響を受けやすいアクチュエータ位置設定値Xiは、アクチュエータの、特にアクチュエータ30、31のシミュレーションされた、波面Wの位置および設計に関する影響の受けやすさに基づいて決定される。この場合、指定された設計波面WDは、ゼルニケ係数Z5だけに支配され、次式:WD≠WTが適用される。
【0089】
次に、この設計波面WDを用いて、図4図6と合わせて上で既に説明したように、粗い接近と精密な接近が実施される。粗い接近中に、低ゼルニケ次数ΔZ2、ΔZ3、ΔZ4の補正がある。高ゼルニケ次数は、精密な接近の間に再び補正される。
【0090】
図9は、再生方法のフローチャートである。開始アクチュエータ位置設定値X0および設計波面WDを含む処方レシピ37が初期化の範囲内で現れ、この初期化は、開始アクチュエータ設定値X0の指定と、設計波面WDの決定とを含む。この情報は、中央制御デバイス20のメモリ38に記憶される。
【0091】
粗い接近の範囲内で、以下が次に、距離位置zmによって与えられる支持点39ごとに実施される。波面データは、開始波面W0から移る次の段階の、実際の波面Wの粗い測定40によって、また、アクチュエータ補正ステップ41および後続の波面測定42を実施することによって、更新される。粗い接近により、粗いアクチュエータ位置設定値X1および粗い目標波面W1が得られる。
【0092】
次に、精密な接近が反復して実施される。ここで実施されるのは、それぞれのアクチュエータ位置設定値Xiと設計波面WDから移る次の段階の、それぞれの実際の波面の精密測定43と、比較ステップ44での実際の波面Wと設計波面WDの間の偏差の判定である。アクチュエータ位置設定値は、実際の波面Wと設計波面WDの間の偏差がまだ大きすぎる限り、すなわち所与の許容値よりも大きい限り、補正ステップ45の範囲内で補正される。この場合、このステップは再び、次の精密測定43を始める役割を果たす。この精密測定は、比較ステップ44で実際の波面Wと設計波面WDの間の偏差が所与の許容値よりも小さくなるまで実施される。この場合になお生じる、実際の波面W2と設計波面WDの間の偏差は、記憶ステップ43で記憶され、中央制御デバイス20に保存される。次に、特に関数集合展開の場合、この偏差は、関数集合の全ての次数について、すなわち特に全てのゼルニケ次数Ziについて得ることができる。この場合、この手順では、次の距離位置zmが継続される。
【0093】
物体ホルダ18の変位駆動部9に加えて、原則として、特に像位置を補正するために、粗い接近が実施されている間に、計測システム2の光学測定システムの他のアクチュエータ、特に結像光学ユニット10のアクチュエータもまた作動させることが可能である。
【0094】
説明したアクチュエータの波面Wに対する影響が直線的である限り、限定されたレシピXi、すなわちアクチュエータ位置設定値を、計測システム2によって実施される測定の間、結像偏差を小さくしておくために用いることが既に可能になっている。現在の測定状態とそれぞれのアクチュエータ位置設定値Xiの記憶波面との間の差を決定し、これを用いてレシピを改善することが可能である。
【0095】
次いで、様々な距離位置zmについて決定された精密なアクチュエータ位置設定値X2を用いて、たとえばDE102019206651A1による方法に基づいて空中像を決定することができる。
【0096】
マスクまたは他の光学構成要素(ミラー/レンズ要素)が加熱されることによって生じる光学システムの熱ドリフトを補正する場合(たとえば、US9,746,784B2参照)、用いられる変位範囲は、数マイクロメートルのオーダ、またはマニピュレータの使用可能移動距離の数パーセントの範囲である。スケール誤差はここでは重要ではなく、そのため、設定収差のさらなる限定は必須ではない。対照的に、アナモルフィックスキャナの焦点はずれをエミュレートするために、マニピュレータの範囲全体の最大30%が利用される。レシピXiの場合でこのようにして用いられる移動距離は、熱ドリフトだけを補償する補正の場合よりも1~2桁大きく、たとえば10μm~500μmの範囲にある。
【0097】
このようなレシピXiは、関連する適切な波面Wに対するアクチュエータ位置設定値Xiが、目標波面の再生のために既に使用可能になっているかどうかをそれぞれの場合に検証することが可能なように、ルックアップテーブルに記憶することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 結像光、照明光
2 計測システム
3 物体フィールド
4 物体面
5 物体
6 光学測定システム、光源
7 光学測定システム、照明光学ユニット
8 光学構成要素、シグマ開口絞り
8a アクチュエータ
9 照明光学ユニット瞳面
10 光学測定システム
11 入射瞳
11a 光学構成要素
12 アクチュエータ
13 投影光学ユニット
14 空間分解能検出デバイス
15 像面
17 デジタル画像処理デバイス
18 物体ホルダ
19 アクチュエータ
20 中央開ループ/閉ループ制御デバイス、中央制御デバイス
21 射出瞳
22 投影露光装置
23 結像光学製造システム
24 結像光学製造システム、反射レチクル
25 結像光学製造システム、結像製造光学ユニット
26 像面
27 入射瞳
28 射出瞳
30 アクチュエータ
31 アクチュエータ
32 並進
35 試験構造体像
37 開始アクチュエータ位置設定値の指定
38 メモリ
39 支持点
40 粗い測定
41 アクチュエータ補正ステップ
42 波面測定
43 精密測定
44 比較ステップ
45 補正ステップ
M1 光学構成要素
M2 光学構成要素
W 実際の波面
0 開始波面
1 粗い目標波面
2 精密な目標波面
D 設計波面
D 期待設計波面
T 目標波面
0 開始アクチュエータ位置設定値
1 粗いアクチュエータ位置設定値
2 精密なアクチュエータ位置設定値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学測定システム(6、7、10)を用いて、物体(5)が照明光(1)で照明されているときに結像光学製造システム(23、24、25)の目標波面(WT)を再生する方法であって、
- 前記光学測定システム(6、7、10)が、物体面(4)の前記物体(5)を像面(15)の像フィールドに結像させるように設計されており、
- 前記光学測定システム(6、7、10)が、前記物体(5)を保持するように機能するとともに、少なくとも1つのアクチュエータ(19)によって並進させることで変位させることができる、物体ホルダ(18)を備え、
- 前記光学測定システム(6、7、10)が、少なくとも1つのアクチュエータ(30、31、8a、12)によって変位させることができる少なくとも1つの光学構成要素(M1、M2、8、11a)を備え、
以下の、
- 開始アクチュエータ位置設定値(X0)を指定するステップ(37)であって、各アクチュエータ(30、31、8a、12)に開始アクチュエータ位置が割り当てられる、ステップ(37)と、
- 目標波面(WT)に近づく、かつ、前記光学測定システム(6、7、10)により設定波面として生成される、期待設計波面(WD)を決定するステップと、
- 前記光学測定システム(6、7、10)が、前記開始アクチュエータ位置設定値(X0)を実際に設定した後に実際の波面(W)として生成する開始波面(W0)について、粗い測定(40)を実施するステップと、
- 前記開始波面(W0)から現れる実際の波面(W)と前記設計波面(WD)の間の偏差を、前記物体ホルダ(18)を並進させることによって、および、波面偏差が最小である場合の粗いアクチュエータ位置設定値(X1)に対する粗い目標波面(W1)が得られるまで、それぞれの物体ホルダ位置でそれぞれ生じる前記実際の波面(W)を測定することによって、最小にするステップと、
- 前記光学測定システム(6、7、10)が、前記粗いアクチュエータ位置設定値(X1)を実際に設定した後に実際の波面(W)として生成する前記粗い目標波面(W1)について、精密測定(43)を実施するステップと、
- 前記粗い目標波面(W1)から現れる実際の波面(W)と前記設計波面(WD)の間の偏差を、前記少なくとも1つの光学構成要素(M1、M2)を変位させることによって、および、波面偏差が最小である場合の精密なアクチュエータ位置設定値(X2)に対する精密な目標波面(W2)が得られるまで、それぞれの構成要素位置でそれぞれ生じる前記実際の波面(W)を監視することによって、最小にするステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記波面が、前記粗い測定(40)中に関数集合に応じて拡張され、限界次数より小さい前記拡張の次数だけが、前記粗い測定(40)中に考慮に入れられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記精密測定(43)の前記ステップと、それに続く前記偏差を最小にする前記ステップとが反復して実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記精密測定(43)と、それに続く前記偏差を最小にする前記ステップとを実施するときに位相回復が実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
アナモルフィック光学製造システム(23~25)の前記目標波面(WT)が、同形の光学測定システム(6、7、10)を用いて再生されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
同形の光学製造システムの前記目標波面(WT)が、同形の光学測定システム(6、7、10)を用いて再生されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記波面が、前記目標波面(WT)を指定するときに関数集合に応じて拡張され、前記拡張の少なくとも1つの選択された次数だけが、前記目標波面を指定するときに考慮に入れられることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記光学測定システム(6、7、10)の少なくとも1つのアクチュエータ(8a、12)を作動させることによって前記物体(5)を照明するための照明設定値が、前記開始アクチュエータ位置設定値(X0)の指定(37)と、前記目標波面(WT)に近づけられた前記設計波面(WD)の決定との前に指定され、前記目標波面(WT)および前記設計波面(WD)が、前記照明設定値に基づいて指定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の方法を実施する計測システム(2)であって、
- 前記物体(5)を照明するための照明光学ユニット(7)を備え、
- 前記目標波面(WT)を再生するための光学測定システム(6、7、10)を備え、
- 物体ホルダ(18)を、前記物体ホルダ(18)を変位させるための物体ホルダアクチュエータ(19)と共に備え、
- 前記光学測定システム(6、7、10)の少なくとも1つの光学構成要素(M1、M2、8、11a)であって、前記光学測定システムが前記光学構成要素(M1、M2、8、11a)を変位させるための構成要素アクチュエータ(30、31、8a、12)を有する、少なくとも1つの光学構成要素(M1、M2、8、11a)を備え、
- 前記光学測定システム(6、7、10)の像面(15)の領域に配置された、波面測定のための空間分解能検出デバイス(14)を備え、
- 前記アクチュエータ(30、31、8a、12、19)に信号接続された中央開ループ/閉ループ制御デバイス(20)を備える、計測システム(2)。
【請求項10】
照明光(1)を生成するための光源(6)を特徴とする、請求項9に記載の計測システム。
【請求項11】
物体(5)を照明するための照明設定値を指定するアクチュエータ(8a、12)を特徴とする、請求項9に記載の計測システム。
【外国語明細書】