(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064469
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】導電性樹脂組成物、導電性接着剤、硬化物、半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230501BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20230501BHJP
C08K 9/00 20060101ALI20230501BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20230501BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230501BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230501BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230501BHJP
C09C 1/62 20060101ALI20230501BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/01
C08K9/00
C09J9/02
C09J201/00
C09J11/04
C09J11/06
C09C1/62
H01B1/22 A
H01B1/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174774
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大友 政義
【テーマコード(参考)】
4J002
4J037
4J040
5G301
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002BP011
4J002BP021
4J002BP031
4J002CF101
4J002CK031
4J002CK041
4J002CL081
4J002DA016
4J002DA026
4J002DA036
4J002DA076
4J002DA086
4J002DA096
4J002DA116
4J002DC006
4J002DE096
4J002DL006
4J002FA046
4J002FB086
4J002FB236
4J002FD116
4J002FD317
4J002GF00
4J002GJ01
4J002GQ02
4J002HA05
4J002HA06
4J037AA04
4J037CB09
4J037FF11
4J040DA041
4J040DA131
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4J040LA01
4J040NA19
5G301DA03
5G301DA51
5G301DA53
5G301DD01
5G301DD02
5G301DD03
5G301DE01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクス分野向けの導電性材料、特にウェアラブルアプリケーションや電子棚ラベル向けの導電性接続材料として有用な低温乾燥型で伸縮性が高い導電性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】導電性樹脂組成物は、(A)ハードセグメントとソフトセグメントの比率(ハードセグメント:ソフトセグメント)が1:99~50:50であり、かつ、重量平均分子量が25,000以上である熱可塑性樹脂、(B)沸点が155℃~205℃である有機溶剤、(C)導電性粒子、を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ハードセグメントとソフトセグメントの比率(ハードセグメント:ソフトセグメント)が1:99~50:50であり、かつ、重量平均分子量が25,000以上である熱可塑性樹脂、
(B)沸点が155℃~205℃である有機溶剤、
(C)導電性粒子、
を含む導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)熱可塑性樹脂が、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、これらの水素化物、水素化物を変性した変性共重合体水素化物から選択される少なくとも一つである請求項1に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)導電性粒子と前記(A)熱可塑性樹脂との質量比((C):(A))が95:5~80:20である請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)導電性粒子の平均粒子径(D50)が1μm~25μmである請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物
【請求項5】
前記(C)導電性粒子が表面処理された銀粒子を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物
【請求項6】
前記(C)導電性粒子のBET値に対するイグロス値の比(イグロス値/BET値)が1.2以上である請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、(D)分散剤を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項8】
回転式粘度計で、25℃、10rpmの粘度が40Pa・s~200Pa・sである請求項1~7のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項9】
前記導電性樹脂組成物を70℃30分間の加熱条件で乾燥硬化させたときの硬化物の常温時における伸び率が70%以上である請求項1~8のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項10】
前記導電性樹脂組成物を70℃30分間の加熱条件で乾燥硬化させたときの硬化物の比抵抗値が10×10-3Ω・cm以下である請求項1~8のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項11】
前記導電性樹脂組成物を70℃30分間の加熱条件で乾燥硬化させたときの硬化物の残留溶剤量が前記導電性樹脂組成物全量に対し25質量部以下である請求項1~8のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項12】
前記導電性樹脂組成物がフレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクス用である請求項1~11のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物を含む導電性接着剤。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物を硬化させた硬化物。
【請求項15】
請求項14に記載の硬化物を備えた半導体装置。
【請求項16】
請求項14に記載の硬化物を基材に積層した積層構造体。
【請求項17】
請求項16に記載の積層構造体を用いた電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクス(以下、FHEという)分野などで用いられる導電性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットを利用したウェアラブルアプリケーションへの注目が高まっており、スポーツやヘルスケア分野を中心に、生体センサーなどFHE分野のアプリケーションの開発が行なわれている。
【0003】
ウェアラブルアプリケーションとしては、リストバンドや衣服、メガネなどの人体への装着を目的とした開発が進められており、人体表面の屈曲や伸長に対応した材料が求められている。
【0004】
これらアプリケーションでは、あらゆるものに電気的機能を付与する際、配線の形成とともに、センサー、キャパシタ、プロセッサーやメモリー等の実装が必要となる。FHE分野において、これらフレキシブル配線板上に実装するプロセッサーやメモリー等の半導体には伸長性を持たせることができないため、これらの半導体をフレキシブル配線基板上に実装するための低弾性な導電性接着剤が求められている。
【0005】
導電性接着剤としては、例えば、下記特許文献1には『(A)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するポリイミドシリコーン樹脂、(B)エポキシ樹脂、および(C)導電性金属粉末を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物』が開示されている。
【0006】
下記特許文献2には、『(A)エポキシ樹脂、(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物、(C)フェノール樹脂系硬化剤、(D)ラジカル重合開始剤、並びに(E)導電性粒子を含有することを特徴とする導電性樹脂組成物』が開示されている。
【0007】
下記特許文献3には、『(A)式:-R1-O-[式中、R1は炭素数1~10の炭化水素基である。]で示される繰り返し単位を有する主鎖および加水分解性シリル基である末端基を有するポリエーテル重合体、ならびに(B)銀粒子を含む導電性接着剤』が開示されている。
【0008】
下記特許文献4には、『導電性粉末、熱硬化性シリコーン樹脂、および溶媒を含む導電性接着剤』が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005-113059号公報
【特許文献2】国際公開第2013/035685号公報
【特許文献3】特開2018-048286号公報
【特許文献4】特表2011-510139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1の硬化性樹脂組成物は、低弾性でなく、すなわち柔軟性がないため、接着剤にした場合に剥離、割れ等が生じるおそれがある。また、上記特許文献2の導電性樹脂組成物も、硬化物の弾性率が高く、FHE分野向けには適しているとはいえない。
このように従来の接続材料は硬化物の弾性率が高く、例えば、ウェアラブルアプリケーション等の人の動きに追従する必要があるアプリケーションに適用すると、人体の動きに追従できずに部品が脱落したり、人の動きそのものを阻害したりする場合がある。
【0011】
また、ウェアラブルアプリケーションに電気的機能を付与するとき、基材として使用されるのは、プラスチックや熱可塑性ポリウレタン(TPU)等の熱に弱い素材であるため、従来のはんだや熱硬化性のエポキシ樹脂系導電性接着剤を用いた接続方法では、はんだ融点の温度、導電性接着剤の硬化温度に耐えることができず、基材そのものがダメージを受けてしまう可能性がある。上記特許文献3の導電性接着剤は、柔軟性はあるものの、硬化温度が高く(185℃程度)、また、抵抗値が高いという問題がある。また、上記特許文献4の導電性接着剤は、硬化温度が高く(200℃×60分)、また、抵抗値が高いという問題がある。
【0012】
従ってFHE分野のアプリケーションのための導電性接続材料としては、フレキシブル/ストレッチャブル性(柔軟/伸縮性)を有し、低温プロセス可能であることの2点が重要である。
【0013】
特に、FHE分野のアプリケーションの一つであるウェアラブルアプリケーションには伸縮(ストレッチャブル)性が求められ、伸縮に追従するために伸縮性を有した導電性接続材料が求められる。
【0014】
一方、FHE分野のアプリケーションの一つとして、ESL(Electrical Shelf Label;電子棚ラベル)も挙げられる。ESLは、その使用態様の一つとして基材を湾曲させた使用態様も想定されることから、導電性接続材料にも柔軟性が求められる。
さらに、FHE分野、例えばESL向けの導電性接続材料としては、基材として使用されるのは、プラスチックや熱可塑性ポリウレタン(TPU)等の熱に弱い素材であるため、70℃以下という低温で乾燥硬化することが求められている。
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記課題に鑑み、FHE分野向けの導電性材料、特にウェアラブルアプリケーションやESL向けの導電性接続材料として有用な低温乾燥型で伸縮(ストレッチャブル)性が高い導電性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一形態の導電性樹脂組成物は、(A)ハードセグメントとソフトセグメントの比率(ハードセグメント:ソフトセグメント)が1:99~50:50であり、かつ、重量平均分子量が25,000以上である熱可塑性樹脂、(B)沸点が155℃~205℃である有機溶剤、(C)導電性粒子を含むことを特徴とする。
【0017】
上記形態の導電性樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂が、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、これらの水素化物、水素化物を変性した変性共重合体水素化物から選択される少なくとも一つであるのが好ましい。
【0018】
上記形態の導電性樹脂組成物は、(C)導電性粒子と(A)熱可塑性樹脂との質量比((C):(A))が95:5~80:20であるのが好ましい。
【0019】
上記形態の導電性樹脂組成物は、(C)導電性粒子の平均粒子径(D50)が1μm~25μmであるのが好ましい。
【0020】
上記形態の導電性樹脂組成物は、(C)導電性粒子が表面処理された銀粒子を含むのが好ましい。
【0021】
上記形態の導電性樹脂組成物は、(C)導電性粒子のBET値に対するイグロス値の比(イグロス値/BET値)が1.2以上であるのが好ましい。
【0022】
上記形態の導電性樹脂組成物は、さらに、(D)分散剤を含むのが好ましい。
【0023】
上記形態の導電性樹脂組成物は、回転式粘度計で、25℃、10rpmの粘度が40Pa・s~200Pa・sであるのが好ましい。
【0024】
上記形態の導電性樹脂組成物は、導電性樹脂組成物を70℃30分間の加熱条件で乾燥硬化させたとき、硬化物の常温時における伸び率が70%以上であるのが好ましく、硬化物の比抵抗値が10×10-3Ω・cm以下であるのが好ましく、硬化物の残留溶剤量が樹脂組成物全量に対し25質量部以下であるのが好ましい。
【0025】
上記形態の導電性樹脂組成物は、FHE用途に好適である。
【0026】
上記形態の導電性樹脂組成物は、導電性接着剤に含ませるのが好ましく、或いは、硬化させて硬化物にするのが好ましい。
【0027】
上記形態の導電性樹脂組成物の硬化物を半導体装置に備えるのが好ましい。また、この硬化物を基材に積層して積層構造体にすることもできる。この積層構造体は電子部品に用いるのが好ましい。
【0028】
本発明によれば、FHE分野向けの導電性材料、特にウェアラブルアプリケーションやESL向けの導電性材料として有用な低温乾燥型で伸縮(ストレッチャブル)性が高い導電性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】伸び率測定に使用する試験片形状を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態の導電性樹脂組成物について説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0031】
<導電性樹脂組成物>
本発明の一実施形態の導電性樹脂組成物(以下、本導電性樹脂組成物という。)は、(A)ハードセグメントとソフトセグメントの比率(ハードセグメント:ソフトセグメント)が1:99~50:50であり、かつ、重量平均分子量が25,000以上である熱可塑性樹脂、(B)沸点が155℃~205℃である有機溶剤、(C)導電性粒子を含むことを特徴とする。
【0032】
<(A)熱可塑性樹脂>
(A)熱可塑性樹脂は、ハードセグメントとソフトセグメントの比率(ハードセグメント:ソフトセグメント)が1:99~50:50であるのが好ましい。
この範囲にすることにより、本導電性樹脂組成物に適度な柔軟性を付与することができる。このような観点から、ハードセグメント:ソフトセグメントは、10:90~45:55であることがより好ましく、30:70~40:60であることがさらに好ましい。
【0033】
本発明において、ハードセグメントとは(A)熱可塑性樹脂中の剛直性がある部分であり、高ガラス転移温度(Tg)セグメントを示す。ソフトセグメントとは(A)熱可塑性樹脂中の柔軟性がある部分であり、低ガラス転移温度(Tg)セグメントを示す。特に、ガラス転移温度(Tg)が150℃未満のハードセグメントと、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満のソフトセグメントとのブロック共重合体がより好適である。なお、ガラス転移点Tgは示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
なお、(A)熱可塑性樹脂全体のガラス転移温度(Tg)は、-60℃~120℃が好ましく、-50℃~100℃がより好ましく、-40℃~80℃が更に好ましい。この範囲にすることにより、本導電性樹脂組成物に適度な柔軟性を付与することができる。
【0034】
(A)熱可塑性樹脂は、ハードセグメントとソフトセグメントとを有する限り、特に制限はなく、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、これらの水素化物、水素化物を変性した変性共重合体水素化物から選択される少なくとも1種を用いることができ、2種以上を併用してもよい。
【0035】
より具体的には、ポリスチレン系樹脂として、例えば、ソフトセグメントにポリブタジエン、ポリイソプレンなど、ハードセグメントにポリスチレンを用いたものを挙げることができる。
ポリオレフィン系樹脂として、例えば、ソフトセグメントにエチレンプロピレンゴム、ハードセグメントにポリプロピレンを用いたものを挙げることができる。
ポリ塩化ビニル系樹脂として、例えば、ソフトセグメントにポリ塩化ビニル、ハードセグメントにポリ塩化ビニルを用いたものを挙げることができる。
ポリウレタン系樹脂として、例えば、ソフトセグメントにポリエーテル又はポリエステル、ハードセグメントにポリウレタンを用いたものを挙げることができる。
ポリエステル系樹脂として、例えば、ソフトセグメントにポリエーテル、ハードセグメントにポリエステルを用いたものを挙げることができる。
ポリアミド系樹脂として、例えば、ソフトセグメントにポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステル又はポリエーテル、ハードセグメントにポリアミド(ナイロン樹脂)を用いたものを挙げることができる。
ポリブタジエン系樹脂として、例えば、ソフトセグメントに非晶性ブチルゴム、ハードセグメントにシンジオタクチック1,2-ポリブタジエン樹脂を用いたものを挙げることができる。
これらの水素化物、水素化物を変性した変性共重合体水素化物などを用いることもできる。
【0036】
(A)熱可塑性樹脂は、ポリウレタン系樹脂又はポリエステル系樹脂を主成分とすることが好ましい。
なお、主成分とは、(A)熱可塑性樹脂中に最大の割合で配合された成分をいい、具体的には、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上(100質量%を含む)をいう。
【0037】
(A)熱可塑性樹脂は、重量平均分子量が25,000以上であるのが好ましい。熱可塑樹脂の分子量が低すぎる場合には、本導電性樹脂組成物の柔軟性が低くなるという問題が生じるため、好ましくない。
一方、熱可塑性樹脂の分子量が高すぎる場合には、所定の粘度とするために溶剤の配合量を多くすることが必要になり、溶剤配合量が多くなると、塗膜の膜厚が薄くなるという問題が生じる場合がある。そのため、(A)熱可塑性樹脂の分子量が上記範囲であることにより、粘度、伸長特性及び硬化物の電気抵抗値を、バランス良く適切なものにすることができる。
このような観点から、(A)熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、25,000以上あることがより好ましく、30,000以上であることがさらに好ましく、34,000以上であることが特に好ましい。上限値は、特に限定するものではないが、300,000以下あることが好ましく、250,000以下であることがより好ましく、200,000以下であることがさらに好ましい。
【0038】
(A)熱可塑性樹脂の具体例としては、熱可塑性ポリウレタンエラストマー「ミラクトラン(登録商標)」(日本ミラクトラン株式会社製)、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)「タフテック(登録商標)」(旭化成株式会社製)、飽和共重合ポリエステル樹脂「エリーテル(登録商標)」(ユニチカ株式会社製)などを挙げることができる。
【0039】
(A)熱可塑性樹脂は、(A)熱可塑性樹脂と(C)導電性粒子との合計に対して(A)熱可塑性樹脂の比率が5質量部~20質量部であることが好ましく、7質量部~20質量部であることがより好ましく、7質量部~18質量部であることがさらに好ましい。この範囲にすることにより、柔軟/伸縮性を有し、かつ良好な比抵抗を有する硬化物を得ることができる。
【0040】
<(B)有機溶剤>
(B)有機溶剤は、(A)熱可塑性樹脂を溶解するものであり、沸点が155℃~205℃であることが好ましい。
155℃以上であることにより、作業性を維持しつつ、本導電性樹脂組成物の70℃以下での低温乾燥が可能になる。一方、205℃を超える場合には、乾燥のための加熱の際に、溶剤を十分に除去できず、塗膜の乾燥性が悪化する可能性がある。このような観点から、(B)有機溶剤の沸点は155℃~190℃であることがより好ましく、155℃~180℃であることが特に好ましい。
【0041】
(B)有機溶剤は、例えば、アミン系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤などを用いることができ、2種以上を併用してもよい。
【0042】
より具体的には、アミン系溶剤として、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、アリルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、ε-カプロラクタム、カルバミド酸エステル等を挙げることができる。
アルコール系溶剤として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ベンジルアルコール等を挙げることができる。
ケトン系溶剤として、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メシチルオキシド、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等を挙げることができる。
【0043】
沸点が155℃~205℃有機溶剤の具体例としては、アノン(シクロヘキサノン)(日本アルコール販売株式会社製)、DEDG(ジエチレングリコールジエチルエーテル)(東邦化学工業株式会社製)、アセトフェノン(東京化成工業株式会社製)、EC(オクサリスケミカルズ株式会社製)、DBE(INVISTA製)、EBA(富士フイルム和光純薬製)、シェルゾールMC311(オクサリスケミカルズ株式会社製)、DIBK(三協化学株式会社製)、ブチルセロソルブ(大伸化学株式会社製)、3-メトキシブチルアセテート(株式会社ダイセル製)、EEP(三協化学株式会社製)、ソルフィット(株式会社クラレ製)、オルソジクロルベンゼン(株式会社クレハ製)などを挙げることができる。
【0044】
(B)有機溶剤は、特に限定するものではないが、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、100質量部~700質量部が好ましく、150質量部~600質量部がより好ましく、200質量部~400質量部がさらに好ましい。この範囲であることにより、良好に熱可塑樹脂を溶解し、70℃以下での低温乾燥でも優れた塗膜を形成することができる。
(B)有機溶剤は、(A)熱可塑性樹脂の重量の4倍程度の重量を用いることにより、適切に溶解することができる。
なお、有機溶剤は、樹脂組成物の粘度の調整のために、樹脂組成物に対して、適宜、追加して添加することができる。
【0045】
<(C)導電性粒子>
(C)導電性粒子は、本導電性樹脂組成物に導電性及び/又は熱導電性を付与するために用いられる。特に限定するものではないが、電気伝導率が106S/m以上であるのが好ましい。(C)導電性粒子には、金属粉の他、コート粉も含まれる。コート粉とは、核(コア粒子)を導電性物質で被覆したものである。この核は非導電性物質でもよい。
【0046】
(C)導電性粒子は、例えば、金、銀、ニッケル、銅、パラジウム、白金、ビスマス、錫、これらの合金(特に、ビスマス-錫合金、はんだ等)、アルミニウム、インジウム錫酸化物、銀被覆銅、銀被覆アルミニウム、金属被覆ガラス球、銀被覆繊維、銀被覆樹脂、アンチモンドープ錫、酸化錫、炭素繊維、グラファイト、カーボンブラックおよびこれらの混合物が挙げられる。
中でも、導電性や熱導電性を考慮すると、好ましくは、銀、ニッケル、銅、錫、アルミニウム、銀合金、ニッケル合金、銅合金、錫合金およびアルミニウム合金からなる群から選択される少なくとも1種の金属、より好ましくは、銀、銅およびニッケルからなる群から選択される少なくとも1種の金属、更に好ましくは、銀または銅、最も好ましくは、銀である。
【0047】
(C)導電性粒子の形状は、特に限定するものではないが、球状、不定形、フレーク状(鱗片状)、フィラメント状(針状)および樹枝状などのいずれであってもよい。ここで、フレーク状とは、「長径/短径」の比(アスペクト比)が2以上の形状をいい、板状、鱗片状等の平板状の形状を含む。(C)導電性粒子を構成する粒子の長径および短径は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)から得られる画像に基づいて求めることができる(n=20)。「長径」とは、SEMにより得られた粒子画像内において、粒子の略重心を通過する線分のうち最も距離の長い径をいい、「短径」とは、SEMにより得られた粒子画像において、粒子の略重心を通過する線分のうち最も距離の短いものをいう。
なお、粒子の形状は、異なる形状を有する粒子の組み合わせであっても良い。
【0048】
(C)導電性粒子は、特に限定するものではないが、タップ密度が1.5g/cm 3以上が好ましく、2.0g/cm 3~6.0g/cm 3がより好ましい。ここで、タップ密度は、JIS Z 2512 金属粉-タップ密度測定法に準拠して測定することができる。
タップ密度が低すぎると、本導電性樹脂組成物の硬化物中に(C)導電性粒子を高密度に分散にさせることが難しく、硬化物の導電性が低下しやすい。一方、タップ密度が高すぎると、本導電性樹脂組成物中で(C)導電性粒子の分離、沈降が生じやすくなる。
【0049】
(C)導電性粒子は、平均粒子径(D50)が1μm~25μmであるのが好ましい。
この範囲であることにより、本導電性樹脂組成物中での(C)導電性粒子の分散性が良好になる。
このような観点から、1μm~20μmであることがより好ましく、2μm~20μmであることがさらに好ましい。
なお、平均粒子径(D50)は、レーザー回折法で測定した体積基準の粒度分布における累積頻度が50%の粒径(メジアン径)をいう。
【0050】
(C)導電性粒子は、表面処理された銀粒子を含むのが好ましい。表面処理された銀粒子を含むことにより本導電性樹脂組成物の電気抵抗を小さくすることができ、また、粒子の分散性を向上させることができる。
表面処理は、液状の脂肪酸、固形の脂肪酸又は脂肪族アミンを用いて行うことができる。
液状の脂肪酸としては、例えば、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸等の飽和脂肪酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、リシノール酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸を挙げることができる。これらの脂肪酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
固形の脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の炭素原子数10以上の飽和脂肪酸、クロトン酸、ソルビン酸等の不飽和脂肪酸を挙げることができる。
脂肪族アミンとしては、例えば、イソブチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、2-エチルヘキシルオキシプロピルアミンおよび3-ラウリルオキシプロピルアミン等を挙げることができる。
中でも、ステアリン酸、オレイン酸で表面処理されるのが好ましい。
【0051】
(C)導電性粒子は、特に限定するものではないが、BET値(比表面積)が4.0m 2/g以下であるのが好ましい。BET値(比表面積)が大き過ぎると、ペースト化する際に、粘度が高くなり、取り扱い性が低下しやすくなる。一方、BET値(比表面積)が小さ過ぎると、銀粒子同士の接触面積が小さくなり、導電性が低下する。
このような観点から、0.1m 2/g~3.0m 2/gであるのがより好ましく、0.1m 2/g~2.0m 2/gであるのがさらに好ましい。
なお、BET値(比表面積)は、BET法で測定することができる。
【0052】
(C)導電性粒子は、特に限定するものではないが、イグロス値(強熱減量)が0.1%~3.0%であるのが好ましい。イグロス値(強熱減量)が小さ過ぎると、導電性粒子の分散性が悪くなる。一方、イグロス値(強熱減量)が大き過ぎるとAgフィラー同士の接触が悪くなり、本導電性樹脂組成物の硬化物の比抵抗値が悪くなる。
このような観点から、イグロス値(強熱減量)が0.15%~2.0%であるのがより好ましく、0.15%~1.5%であるのがさらに好ましい。
なお、イグロス値(強熱減量)は、(C)導電性粒子の表面に存在する表面処理剤の量(質量%)を示し、(C)導電性粒子を800℃で30分間焼成した後の残分の質量から算出することができる。
【0053】
(C)導電性粒子は、BET値に対するイグロス値の比(イグロス値/BET値)が1.2~6.0であるのが好ましい。
(C)導電性粒子のBET値に対するイグロス値の比が小さい場合、比表面積に対する表面処理剤の量が小さく、(C)導電性粒子の分散性が悪くなる。分散性が悪くなると、低沸点の溶剤に分散する際に、分散時間が長くなってしまい、滞留時間が長くなり、(C)導電性粒子分散工程において溶剤の揮発量が多くなってしまう。一方、(C)導電性粒子のBET値に対するイグロス値の比が大きい場合、比表面積に対する表面処理剤の量が大きく、(C)導電性粒子のAgフィラー同士の接触が悪くなり、本導電性樹脂組成物の硬化物の比抵抗値が悪くなる。
このような観点から、BET値に対するイグロス値の比が1.2~5.0であるのがより好ましく、1.3~3.0であるのがさらに好ましい。
【0054】
(C)導電性粒子の具体例としては、フレーク状銀紛であるAGC-GS又はAGC-B2(いずれも福田金属箔紛株式会社製)、フレーク状銀紛であるFA618(DOWAエレクトロニクス株式会社製)などを挙げることができる。
【0055】
(C)導電性粒子は、本導電性樹脂組成物中で、(C)導電性粒子と(A)熱可塑性樹脂との質量比((C):(A))が80:20~95:5であるのが好ましい。
この範囲であることにより、本導電性樹脂組成物の導電性が良好になる。
このような観点から、質量比((C):(A))が80:20~92:8であるのがより好ましく、82:18~92:8であるのがさらに好ましい。
【0056】
<(D)分散剤>
本導電性樹脂組成物には、(D)分散剤を含ませてもよい。
(D)分散剤としては、例えば、酸性分散剤であるHYPERMER KD-57(商品名)(CRODA製)を用いることができる。
【0057】
<その他の成分>
本導電性樹脂組成物は、前記成分(A)~(C)のみからなる或いは前記成分(A)~(D)のみからなるものでもよいが、これら以外に、絶縁性粒子、カップリング剤等の界面処理剤、顔料、染料、可塑剤、消泡剤、破泡剤、酸化防止剤等の成分を必要に応じて含有させてもよい。
【0058】
<物性値>
本導電性樹脂組成物は、70℃30分間の加熱条件で乾燥硬化させたときの硬化物の常温時における伸び率が70%以上であるのが好ましい。硬化物の伸び率は75%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
伸び率は、例えば、(A)熱可塑性樹脂の重量平均分子量、ハードセグメントとソフトセグメントの比率、および(A)熱可塑性樹脂と(C)導電性粒子との質量比等で調整することができる。
本発明において、常温とは好ましくは0℃~30℃、より好ましくは10℃~25℃をいう。
【0059】
本導電性樹脂組成物は、70℃30分間の加熱条件で乾燥硬化させたときの硬化物の比抵抗値が10×10-3Ω・cm以下であるのが好ましい。硬化物の比抵抗値は5×10-3Ω・cm以下がより好ましく、1×10-3Ω・cm以下がより好ましい。
比抵抗値は、例えば、(C)導電性粒子の粒形、比表面積、および(A)熱可塑性樹脂と(C)導電性粒子との質量比等で調整することができる。
【0060】
本導電性樹脂組成物は、70℃30分間の加熱条件で乾燥硬化させたときの硬化物の残留溶剤量が樹脂組成物全量(100質量部)に対して25質量部以下であるのが好ましい。硬化物の残留溶剤量が樹脂組成物全量(100質量部)に対して20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。残留溶剤量をこの範囲であることにより本導電性樹脂組成物の硬化物の比抵抗値を良好にすることができる。残留溶剤量は、例えば、(B)有機溶剤の沸点等で調整することができる。
樹脂組成物の硬化物を、TGDTAを使用し、25~200℃まで10℃/minで昇温し200℃での質量減少量を残留溶剤量とする。
【0061】
本導電性樹脂組成物は、回転式粘度計で、25℃、10rpmの粘度が40Pa・s~200Pa・sであることが好ましい。このような範囲とすることにより、本導電性樹脂組成物の作業性を良好にすることができる。このような観点から、粘度は50Pa・s~190Pa・sがより好ましく、80Pa・s~180Pa・sが更に好ましい
【0062】
<製造方法>
本導電性樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂、(B)有機溶剤、(C)導電性粒子、必要に応じて(D)分散剤、その他の成分を配合して撹拌混合することにより製造することができる。
【0063】
これらを撹拌混合するには、公知の装置を用いることができる。例えば、ハイブリッドミキサー、ヘンシェルミキサー、ロールミル、三本ロールミルなどの公知の装置によって混合することができる。これら原料は、同時に混合してもよく、一部を先に混合し、残りを後から混合してもよい。
本導電性樹脂組成物の製法は、各材料が十分に混練されれば特に限定されるものではない。
【0064】
<供給方法>
本導電性樹脂組成物は、ジェットディスペンサー、エアーディスペンサー等を使用することにより供給することができる。また、公知のコーティング法(ディップ塗工、スプレー塗工、バーコーター塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工及びスピンコーター塗工等)及び公知の印刷方法(平版印刷、カルトン印刷、金属印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷及びインクジェット印刷等)を使用することもできる。
【0065】
<硬化条件>
本導電性樹脂組成物は、例えば、40℃~120℃の温度で加熱することで乾燥硬化させることができる。加熱温度は
、好ましくは50℃~120℃、より好ましくは70℃~100℃である。加熱時間は、例えば好ましくは0.1時間~3時間であり、より好ましくは0.5時間~2時間である。
【0066】
本明細書では、導電性樹脂組成物を所定のパターンとなるように供給し、例えば、70℃、30分で加熱乾燥させて得られたものを、「硬化物」という。
【0067】
<用途>
本導電性樹脂組成物は、伸縮性があり、70℃以下の低温硬化性に優れているものである。そのような観点から、例えば、FHE分野向けに用いることができ、ウェアラブルアプリケーションやESL等に有用である。
本導電性樹脂組成物を接着剤に含ませて導電性接着剤として用いることや本導電性樹脂組成物をそのまま或いは他の成分を含ませて硬化させた硬化物として用いることができる。硬化物には、導電性接着剤の硬化物も含む。
この硬化物を、センサー、キャパシタ、プロセッサーやメモリーなどの半導体装置に備えたり、電気回路基板などに用いる無機又は有機の基板などの基材に積層したりして積層構造体にすることができる。この積層構造体は、ESL等に用いることができる。
【実施例0068】
以下、本発明の一実施例の導電性樹脂組成物について説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0069】
実施例及び比較例の導電性樹脂組成物を製造するにあたり以下の材料を用いた。H/Sは、ハードセグメントとソフトセグメントとの比率(ハードセグメント/ソフトセグメント)を表す。
<材料>
1.(A)熱可塑性樹脂
(A1)ウレタン樹脂(品番:P22SRAT日本ミラクトラン株式会社)
H/S=34/66、重量平均分子量Mw120,000~180,000
ガラス転移温度(Tg):-40℃
(A2)SEBS(品番:H1221旭化成株式会社)
H/S=12/88、重量平均分子量Mw147,600
ガラス転移温度(Tg):-25℃
(A3)ポリエステル樹脂(品番:UE-3510ユニチカ株式会社)
H/S=50/50、重量平均分子量Mw34,000
ガラス転移温度(Tg):-25℃
(A4)ポリエステル樹脂(品番:UE-3400ユニチカ株式会社)
H/S=35/65、重量平均分子量Mw25,000
ガラス転移温度(Tg):-20℃
(A5)ポリエステル樹脂(品番:UE-3220ユニチカ株式会社)
H/S=35/65、重量平均分子量Mw25,000
ガラス転移温度(Tg):5℃
(A6)ポリアミド樹脂(品番:PA66-1旭化成株式会社)
H/S=77.45/22.55、重量平均分子量Mw26,000
ガラス転移温度(Tg):60℃
(A7)スチレン無水マレイン酸共重合体(品番:SMA1000 SARTOMER社)
H/S=50/50、重量平均分子量Mw5,500
ガラス転移温度(Tg):155℃
【0070】
(B)有機溶剤
(B1)アノン(シクロヘキサノン)(日本アルコール販売株式会社)
沸点156℃
(B2)ジエチレングリコールジエチルエーテル(東邦化学工業株式会社)
沸点180~190℃
(B3)アセトフェノン(メチルフェニルケトン)(東京化成工業株式会社)
沸点202℃
(B4)酢酸ブチル(富士フイルム和光純薬株式会社)
沸点126℃
(B5)3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
沸点215℃
【0071】
(C)導電性粒子
(C1)フレーク状銀粉/表面処理剤:ステアリン酸(品番:AGC-GS 福田金属箔紛株式会社)
平均粒子径(D50)12.48μm、タップ密度3.23g/cm3、BET値0.285g/m2、イグロス値0.52%、イグロス値/BET値1.825
(C2)フレーク状銀紛/表面処理剤:ステアリン酸(品番:FA618 DOWAエレクトロニクス株式会社)
平均粒子径(D50)7.25μm、タップ密度4.03g/cm3、BET値0.491g/m2、イグロス値0.79%、イグロス値/BET値1.609
(C3)フレーク状銀紛/表面処理剤:ステアリン酸(品番:AGC-B2 福田金属箔紛株式会社)
平均粒子径(D50)6.838μm、タップ密度4.29g/cm3、BET値0.788g/m2、イグロス値0.57%、イグロス値/BET値0.723
【0072】
(D)分散剤
(D1)酸性分散剤(CRODA社)
【0073】
<実施例及び比較例の製造>
下記表1又は2に示す質量割合になるように各材料を配合し、三本ロールミルを用いて撹拌混合して、実施例1~15及び比較例1~4の各導電性樹脂組成物を製造した。
【0074】
【0075】
【0076】
(物性値)
実施例及び比較例の各物性値の測定方法及び評価方法を以下に示す。
【0077】
(溶剤への溶解性)
それぞれの有機溶剤を60℃に加熱後、各熱可塑性樹脂を計量し、ラボスターラーで攪拌しながら溶解する。1時間おきに溶解するかどうかを目視にて確認し、合計3時間後攪拌後に溶解物が残っていなければ(残存物がなければ)「〇」、溶解物が残っていれば(残存物があれば)「×」と評価した。
【0078】
(乾燥性)
各導電性樹脂組成物を70℃30分間の加熱条件で乾燥硬化させた硬化物を、TGDTAを使用し、25~200℃まで10℃/minで昇温し200℃での質量減少量を残留溶剤量として、その値で乾燥性を確認した。
残留溶剤量が前記導電性樹脂組成物全量に対し25質量部以下であった試験片を「〇」、26質量部以上であった試験片を「×」、評価自体できなかったものを「-」と評価した。なお、70℃硬化できているかどうかは、後述するダイ剪断強度で表すことができる。
【0079】
(粘度)
各導電性樹脂組成物を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドル:SC4-14スピンドル、測定温度:25℃)を使用し、10rpmで粘度を測定した。なお、比較例3は測定不能であった。
200(Pa・s)以下を合格と評価した。
【0080】
(ダイ剪断強度)
基板にはガラス基板を、ダイには3mm□のSiダイを、準備した。φ2mmの孔が開いたポリイミドフィルム孔版(厚さ:120μm)を使用し、各導電性樹脂組成物をガラス基板上に印刷した。その後、3mm□のSiダイをマウントし、Airコンベンションオーブン中で、70℃で30分間硬化させ、ダイ剪断強度測定用試料を作製した。ノードソンDAGE製卓上強度試験器(型番:4000PLUS-CART-S200KG)を使用して、室温で、ダイ剪断強度を測定した。
各導電性樹脂組成物について、10個のダイ剪断強度測定試料を測定し、その算術平均値をダイ剪断強度とした。なお、比較例3は測定不能であった。
0.5(N/mm2)以上を合格と評価した。
【0081】
(分散性)
樹脂組成物の粒度をJIS規格K5400’-1990線条法に準拠し、グラインドゲージにより測定した際に、凝集物が存在しているか否かを目視で確認した。配合した(C)導電性粒子の平均粒子径(D50)の10倍以上の平均粒度を示した場合を「×」とし、4倍以上10倍未満を示した場合を「△」とし、4倍未満を示した場合を「〇」とした。
【0082】
(比抵抗)
ガラス基板上に、2枚の約85~95μm厚のテープを、3mm間隔で平行に貼り、この2枚のテープ間に、幅:3mm×長さ:50mm×厚さ:約90μmの各導電性樹脂組成物膜を印刷した後、Airコンベンションオーブン中で、70℃で30分間硬化させた。硬化後の各導電性樹脂組成物膜の膜厚を測定した後、4端子法で、抵抗値を測定し、比抵抗を求めた。なお、比較例3は測定不能であった。比較例4の「OverFlow」は抵抗値が大きすぎて、測定範囲を超えた状態であった。
20×10-4Ω・cm以下を合格と評価した。
【0083】
(伸び率)
伸び率は、INSTRON社製万能材料試験機Model 5566を用いて測定(測定条件:引張り速度=5mm/min)した。また、伸び率は、引張り試験機より得られたストレス-ストレインカーブ(以下、SSカーブと称す)において、試験片が破断するまでの歪量とした。
図1に、伸び率測定に使用する試験片形状を示す。例えば、実施例にて伸び率を「70%」と記載したものは、伸び率70%のときに試験片が破断したものである。また、実施例にて「>100%」と記載したものは、伸び率が100%を超えても破断しなかったものを示している。
【0084】
比較例1,2は、伸び率が合格基準を満たさなかった。比較例1は、(A)熱可塑性樹脂のハードセグメントの比率が高いものであった。比較例2は、(A)熱可塑性樹脂の重量平均分子量が低いものであった。
比較例3は、乾燥性、粘度、ダイ剪断強度、分散性、比抵抗、伸び率が測定不能であり合格基準を満たさなかった。比較例3は、(B)有機溶剤の沸点が126℃と低いものであり、乾燥性が速すぎてペースト化することができなかった。
比較例4は、乾燥性が合格基準を満たさず、また、比抵抗がOverflowであり測定できなかった。比較例4は、(B)有機溶剤の沸点が215℃と高いものであった。
【0085】
これらの結果から、(A)ハードセグメントとソフトセグメントの比率(ハードセグメント:ソフトセグメント)が1:99~50:50であり、かつ、重量平均分子量が25,000以上である熱可塑性樹脂、(B)沸点が155℃~205℃である有機溶剤、(C)導電性粒子、を含む導電性樹脂組成物が、低温乾燥型で伸縮(ストレッチャブル)性が高いことが見出せた。