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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064525
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】エッチング方法および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101B
H01L21/302 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174857
(22)【出願日】2021-10-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】新海 聡子
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BA04
5F004BB13
5F004BB18
5F004CA08
5F004DA18
5F004DA22
5F004DA23
5F004EA02
5F004EA04
5F004EA05
5F004EA07
5F004EB04
(57)【要約】
【課題】h-BN膜を所望とする形状にパターニングを可能とすることで、h-BN膜の効果が発揮できる半導体装置が得られるエッチング方法および半導体装置を提供する。
【解決手段】エッチング方法は、基板110に成膜されたh-BN膜111を所定形状にエッチングしてパターニングするためのマスク膜112を成膜するステップと、h-BN膜111をエッチングするエッチングガスとしてFガスを含むガスを導入して反応性イオンエッチングするステップとを含むものである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
h-BN膜をエッチングするエッチング方法であって、前記h-BN膜をエッチングするエッチングガスとしてFガスを含むガスを導入して反応性イオンエッチングするステップを含むエッチング方法。
【請求項2】
前記h-BN膜を所定形状にエッチングしてパターニングするためのマスク膜を成膜するステップを含む請求項1記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記h-BN膜以外に所定形状のマスク膜を成膜するステップを含む請求項1記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記エッチングガスは、Fガスと希ガスとの混合ガスである請求項1から3のいずれかの項に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記混合ガスの混合比率は、前記Fガスより前記希ガスが高い請求項4記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記希ガスは、Heガスである請求項4または5記載のエッチング方法。
【請求項7】
基板と、
前記基板に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜上に積層されたh-BN膜および前記h-BN膜に設けられたグラフェン膜を含む積層体により形成され、前記積層体をパターニングにより分割する隙間が形成された複数の半導体素子とを備えた半導体装置。
【請求項8】
前記半導体素子は、
前記絶縁膜に設けられたゲート膜と、
前記ゲート膜に設けられた、絶縁膜およびh-BN膜による、またはh-BN膜によるゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜に対応させてパターニングされた前記グラフェン膜と、
前記ゲート膜に設けられたゲート電極と、
前記グラフェン膜に設けられ、ソース電極およびドレイン電極として機能する一対の電極とを備えた請求項7記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、h-BN(六方晶窒化ホウ素)を含む半導体装置を製造するときに用いられるエッチング方法およびこのエッチング方法による半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
h-BNは、熱伝導性に優れているだけでなく、例えば、非特許文献1には、広いエネルギーバンドギャップ、大きな光吸収、中性子捕獲断面積などの独自の物理的特性により、基本的かつ技術的に重要な材料システムであると記載されている。
この非特許文献1には、h-BNをベースにしたアクティブデバイスを実現するためのデバイス処理技術を確立するために、誘導結合プラズマ(ICP)を用いたh-BNエピ層に基づくアクティブデバイスのドライエッチング技術について記載されている。
そして、非特許文献1には、SFがRFプラズマ環境でのh-BNエピ層のエッチングに非常に適しており、将来のh-BNデバイス処理のガイドとして役立つことを示していると記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Samuel Grenadier、外3名、“Dry etching techniques for active devices based on hexagonal boron nitride epilayers”、[online]、2013年10月22日、Journal of Vacuum Science & Technology A、[令和3年9月30日検索]、インターネット<URL:https://avs.scitation.org/doi/pdf/10.1116/1.4826363>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、発明者らの実験では、SFはh-BN膜に対し、早いエッチングレートを有するが、パターンの形成には適していないことが判明した。
エッチングモデルとなる図1(A)に示す積層体は、Siによる基板101に成膜したh-BN膜102上に、所定形状にパターニングされたアルミニウム製で、膜厚200nmのマスク膜103が成膜され、マスク膜103上にマスク膜103を所定形状にするためのレジスト膜104が成膜されている。このモデルに対して、SFガスをエッチングガスとして、RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)によるドライエッチングを行った。
【0005】
そうすると、図1(B)に示すように、SFガスの強い等方性によりh-BN膜102のエッチングが側部から進行して、最終的にマスク膜103を浮き上がらせ、図1(C)に示すように、剥離させてしまう。
【0006】
このように、エッチングガスをSFとした場合では、エッチングによりh-BN膜を削ることができても、所望とするパターニングを行うことは難しい。
また、同様に、エッチングガスをCHFとした場合には、エッチングによりh-BN膜を削ることができても、エッチング性能が十分ではなく、エッチングされずにh-BN膜が残存する部分が発生してしまう。
【0007】
そこで本発明は、h-BN膜を所望とする形状にパターニングを可能とすることで、h-BN膜の効果が発揮できる半導体装置が得られるエッチング方法および半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエッチング方法は、h-BN膜をエッチングするエッチング方法であって、前記h-BN膜をエッチングするエッチングガスとしてFガスを含むガスを導入して反応性イオンエッチングするステップを含む特徴とする。
【0009】
本発明のエッチング方法によれば、エッチングガスとしてのFガスはSFガスと同様に、h-BN膜のエッチングを行うことが可能だが、SFガスのような等方性ではなく、垂直異方性を有しているため、パターニング形状を変化させることなくh-BN膜をエッチングすることができる。
【0010】
前記h-BN膜を所定形状にエッチングしてパターニングするためのマスク膜を成膜するステップを含むことができる。そうすることで、h-BN膜を所定形状にパターニングすることができる。
【0011】
前記h-BN膜以外に所定形状のマスク膜を成膜するステップを含むことができる。そうすることで、h-BN膜のみをエッチングして除去することができる。
【0012】
前記エッチングガスは、Fガスと希ガスとの混合ガスとすることができる。エッチングガスを希ガスとの混合ガスとすることで、h-BN膜や基板への希ガスによる影響を抑えつつ、Fガスによるエッチングを行うことができる。
【0013】
前記混合ガスの混合比率は、前記Fガスより前記希ガスが高いものとすることできる。また、前記希ガスは、Heガスとすることできる。Arガスと比較して物理エッチング性が弱いHeガスとすることで、Fガスの効果をより正確に把握することができる。
【0014】
本発明の半導体装置は、基板と、前記基板に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜上に積層されたh-BN膜および前記h-BN膜に設けられたグラフェン膜を含む積層体により形成され、前記積層体をパターニングにより分割する隙間が形成された複数の半導体素子とを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の半導体装置によれば、基板に設けられた絶縁膜の上に、h-BN膜およびグラフェン膜を含む積層体をパターニングにより分割する隙間が形成されることで複数の半導体素子が形成されている。従って、グラフェン膜における移動度を高める半導体素子を基板上に複数形成できるため、集積度を高めることができる。
【0016】
前記半導体素子は、前記半導体素子は、前記絶縁膜に設けられたゲート膜と、前記ゲート膜に設けられた、絶縁膜およびh-BN膜による、またはh-BN膜によるゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜に対応させてパターニングされた前記グラフェン膜と、前記ゲート膜に設けられたゲート電極と、前記グラフェン膜に設けられ、ソース電極およびドレイン電極として機能する一対の電極とを備えたものとすることできる。
このように構成することで、FETとして機能する半導体素子を基板上に多数形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、h-BN膜を所望とする形状にパターニングを可能とすることで、h-BN膜の効果が発揮できる半導体装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来のエッチング方法を説明するための図であり、(A)は基板上にh―BN膜にマスクとレジストが成膜され、SFによりエッチングする状態を示す図、(B)はSFによりエッチングが進行して、基板が削れた状態を示す図、(C)はエッチングが更に進行してマスクとh-BN膜とが除去され、基板が更に削れた状態の図である。
図2】エッチングを行うエッチング装置の一例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係るエッチング方法の各工程を示す図であり、(A)は、基板にh―BN膜が成膜された状態の図、(B)はh―BN膜にマスク膜が成膜された状態の図、(C)はマスク膜にレジスト膜が成膜された状態の図、(D)はマスク膜をパターニングしてマスク膜をエッチングした状態の図である。
図4図3から続く、本実施の形態に係るエッチング方法の各工程を示す図であり、(A)はマスク膜によりh―BN膜をエッチングする状態を示す図、(B)はh―BN膜がエッチングされた状態の図、(C)はh―BN膜のエッチングが完了した状態の図、(D)は、h―BN膜に残留したマスク膜を除去した状態の図である。
図5】本実施例によるエッチング方法でエッチングされた状態を示す図であり、(A)はエッチングされた状態を説明するための図、(B)は(A)の走査電子顕微鏡写真、(C)は(B)を拡大した走査電子顕微鏡写真、(D)は(C)を更に拡大した電子顕微鏡写真である。
図6】従来の半導体装置を説明するための図であり、(A)は側面図、(B)は平面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る半導体装置を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のA-A線断面図、(C)は(A)のB-B線断面図である。
図8】(A)は絶縁膜が成膜された基板に、ゲート膜、絶縁膜、h-BN膜、グラフェン膜、マスク膜、レジスト膜を成膜した状態の図、(B)は図8からゲート膜、絶縁膜、h-BN膜、グラフェン膜をエッチングした状態の図である。
図9】(A)は図8に示す状態からAl膜による絶縁膜が成膜された状態の図、(B)はゲート電極形成領域に溝が形成された状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係る半導体装置のエッチング方法について、図面に基づいて説明する。まず、本発明の実施の形態に係るエッチング方法によるエッチングを行うためのエッチング装置の構成を、図面に基づいて説明する。
【0020】
(エッチング装置の説明)
図2に示すエッチング装置10は、プラズマエッチングを行う反応室11を備えている。反応室11には、処理ガスである導入ガス(エッチングガス)を導入するための導入口12が形成されている。また、反応室11には、室内を排気するための排気口13が形成されている。排気口13には、反応室11内を吸引するためのポンプ14が接続されている。
【0021】
反応室11の上部と下部とに、ターゲット(試料)を間に挟むように、アノード15およびカソード16が配置されている。アノード15はアースされており、カソード16には高周波電源17が接続されている。また、反応室11には、図示していないが、導入ガスをマイクロ波等の電磁波を照射することによりプラズマ化する電極および電源が設けられている。
【0022】
(エッチング方法の説明)
次に、このようなエッチング装置10を用いて行われる半導体装置のエッチング方法について、図面に基づいて説明する。
まず、図3(A)に示すように、h-BN膜111が転写された基板110を準備する。基板110は、Si基板とすることができる。
次に、図3(B)に示すように、h-BN膜111上に所定の手順によりマスク膜112を成膜する。
このマスク膜112は、Al、Ni、Crなどの金属膜とする以外に、SiNによる窒化膜やアルミナ(Al)等の酸化膜とすることができる。なお、マスク膜112は、単層でもよいが、例えば、異なる金属材料でできた金属膜を積層して形成してもよいし、金属膜と酸化膜を積層して構成してもよい。
【0023】
次に、図3(C)に示すように、マスク膜112上にレジスト膜113を成膜する。
次に、図3(D)に示すように、レジスト膜113を所定形状にパターニングした後に、マスク膜112をレジスト膜113の形状にエッチングする。
【0024】
次に、図4(A)に示すように、試料(ターゲット)をエッチング装置10(図2参照)に配置して、反応性イオンエッチングを行う。エッチングガスは、Fガスを含む。本実施の形態では、希ガスとの混合ガスとすることができる。この希ガスは、ヘリウムガス(He),ネオンガス(Ne),アルゴンガス(Ar),クリプトンガス(Kr),キセノンガス(Xe),ラドンガス(Rn)あるいは、これら2以上の希ガスの混合物とすることができるが、本実施の形態では、希ガスの中で最も軽いHeガスを採用している。
【0025】
例えば、希ガスとして、Arガスを採用することもできる。しかし、Arガスは物理エッチング性が強いので、Fガスの効果を正確に把握するために、Heガスを採用した。これにより試作段階にて、FガスとHeガスとによる混合ガスをコントロールしながらFガスによるエッチング効果を把握することで、正確にエッチングできることが確認できるので、スムーズに量産段階へ移行することができる。
【0026】
また、混合ガスの混合比率は、Fガスより希ガスが高ければ、Fガスを拡散させつつ、Fガスを希釈することができる。本実施の形態では、Fガス+Heガスの混合比率を1:9の割合とした混合ガスとすることができる。Fガスは特殊なガスであり、100%ではボンベ供給が不可である。そのため、1:9の割合とすることで、ボンベでの供給が可能となるため、調達を容易とすることができる。なお、基本的にFガス+Heガス(希ガス)混合比は、希ガスの割合を多くすることで、調達性を向上させることが考えられ、Fガス+Heガスの混合比は、4:6~1:9としてもよく、更には、0.5:9.5でもよいと思われる。
【0027】
このように反応性イオンエッチングすることにより、図4(B)に示すように、マスク膜112の形状にh-BN膜111がエッチングされる。
これは、エッチングガスであるFガスが垂直異方性を有するものであり、Fガス+Heガスは、同じ垂直異方性を有するCHFガスと比較して、エッチングの速さが、h-BN膜111に対しては早く、Siの基板110に対しては遅い。そのため、マスク膜112から露出したh-BN膜111をエッチングした後に、過度に基板110がエッチングされることが抑止できる。
【0028】
また、SFガスでは、強い等方性により、図1(B)および同図(C)に示すように基板101が側部から大きくエッチングされるが、図4(C)に示すように、Fガスを用いることにより、基板110が大きくエッチングされる前に、マスク膜112から露出したh-BN膜111がエッチングされる。
そのため、基板110上のh-BN膜111を所望とする形状にパターニングすることができる。よって、本実施の形態に係るエッチング方法は、h-BNの効果が発揮できる半導体装置を製造することができる。
【0029】
h-BN膜111がパターンニングできれば、次に、h-BN膜111上に残留したマスク膜112を従来の方法により除去することで、図4(D)に示すように、基板110上にパターンニングされたh-BN膜111が残る。
【0030】
なお、本実施の形態では、h-BN膜111を所定の形状とするために、マスク膜112上にレジスト膜113を形成するなどの手法を用いたが、マスク膜112やレジスト膜113の代わりに、薄い基板に孔を設けたマスクパターンなどを用いてもよい。更に、h-BN膜111を所定の形状に加工するのではなく、単にh-BN膜111を所定の薄さに加工したりする場合には、マスク膜112やレジスト膜113を設けず、基板上に一面に形成されたh-BN膜111を上記方法(Fガス+Heガスを用いた方法)でエッチングすることも可能である。更に、この様に所定の厚みに加工されたh-BN膜111を更にマスク膜112やレジスト膜113を用いて、所定のパターンに加工してもよい。
【0031】
更に、上記説明では、h-BN膜111を所定の形状とするために、h-BN膜111上に所定の形状のマスク膜112やレジスト膜113を成膜していたが、Fガスであればh-BN膜111をエッチングして除去することができるので、h-BN膜以外にマスク膜を成膜してh-BN膜111をエッチングして除去するようにしてもよい。
【0032】
(実施例)
図3および図4に示す本実施の形態に係るエッチング方法を行った。
まず、図3(A)に示すh-BN膜111が転写された基板110を洗浄した。
この洗浄は、有機ドラフトチャンバーとしてUNION社製のHSS-200を使用した。洗浄は超音波を印加した純水で1分間行った。
次に、図3(B)に示すように、マスク膜112としてアルミニウム膜を成膜した。このアルミニウム膜は、キヤノンアネルバ社製のスパッタリング装置E-200Sを使用して、200nmの膜厚とした。
【0033】
次に、成膜されたマスク膜112を洗浄した。この洗浄は、UNION社製のHSS-200を使用した。洗浄は、超音波を印加したアセトンで1分間と、超音波を印加したエタノールで1分間行った。
【0034】
次に、図3(D)に示すように、成膜されたレジスト膜113をマスクレス露光装置によりパターンニングする。
レジスト塗布処理では、レジスト膜を形成する感光性樹脂液として、東京応化工業社製のOFPR-8600を使用した。プリベーク処理は、90℃にて90秒の加熱を行った。露光処理を行うマスクレス露光装置は、ハイデルベルグ・インストルメンツ社製のMLA100を使用した。露光はDose1500mJ/cm、Deforces0で行った。現像処理では、TMAHアルカリ現像液として、東京応化工業社製のNMD-Wを使用した。リンス処理では、純水によりオーバーフロー状態で洗浄した。ポストベーク処理では、130℃にて5分の加熱を行った。
【0035】
次に、レジスト膜113から露出したアルミニウム膜であるマスク膜112をエッチングする。アルミニウムのエッチングは、ダン産業製のHSS-2000HSを使用した。エッチング液は、混酸Alエッチング液を使用し、処理時間は6分間で、変色してから1分間とした。リンス処理では、純水によりオーバーフロー状態で洗浄した。
【0036】
次に、マスク膜112から露出したh-BN膜111をエッチングする。エッチング処理は、サムコ社製のICP-RIE(Inductive Coupled Plasma-RIE:誘導結合型反応性イオンエッチング)であるRIE-101iPHを使用した。
エッチング条件は、エッチングガスとしてFガス+Heガスを1:9の割合とした混合ガスを使用した。そして、ICP電力を300W、バイアス電力を100W、ガス流量を20sccm、プロセス圧力を1Pa、エッチング時間を10分とした。
【0037】
次に、残留したレジスト膜113を除去する。この除去処理は、UNION社製のHSS-200を使用して、超音波を印加したアセトンで1分間と、超音波を印加したエタノールで1分間行った。
そして、マスク膜112を除去してh-BN膜111を露出させる。このマスク膜112の除去処理は、ダン産業製のHSS-2000HSを使用して、混酸Alエッチング液により6分間行った。リンス処理は、純水によりオーバーフロー状態で洗浄した。
【0038】
このようにしてエッチングされたh-BN膜を観察した。観察は、走査電子顕微鏡として日本電子社製のJIB-4600F(複合ビーム加工観察装置)を使用した。
図5(A)から同図(D)に示すように、Siによる基板上に、パターニングされたh-BN膜が微細加工されていることがわかる。
【0039】
このようにして、h-BN膜がパターニングできるので、h-BN膜を用いた半導体装置を構成することができる。
本実施の形態では、h-BN膜と、1個の炭素原子が六角形の格子状に並んだシート状物質であるグラフェンとを組み合わせた半導体装置を説明する。
【0040】
(従来の半導体装置の説明)
まず、h-BN膜とグラフェンとを組み合わせた、従来の半導体装置を図6に基づいて説明する。
図6(A)および同図(B)に示す従来の半導体装置120は、Siによる基板121(半導体基板)に、酸化膜、例えば、SiOによる絶縁膜122が設けられている。
絶縁膜122上には、h-BN膜123が転写により設けられている。更に、h-BN膜123上には、グラフェン膜124が転写により設けられている。グラフェン膜124には、一対の電極125が形成されている。
【0041】
このように、従来の半導体装置120が構成され、h-BN膜123上にグラフェン膜124が形成されていることで、Siによる基板にグラフェン膜が設けられたものと比較して10倍以上の移動度の電子特性を得ることができる。
【0042】
この従来の半導体装置120は、基板121をゲートとして機能させ、一対の電極125をソース電極とドレイン電極とすることで、FET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)として機能するものである。
【0043】
しかし、従来の半導体装置120では、h-BN膜123を所定形状にエッチングできなかったことから、基板121に成膜された絶縁膜122全体に、h-BN膜123およびグラフェン膜124が設けられているため、基板121ごとに半導体装置を構成するしかない。従って、h-BN膜123およびグラフェン膜124を含む半導体装置の集積化が難しい。
【0044】
(本実施の形態に係る半導体装置の説明)
本発明の実施の形態に係る半導体装置では、図4に示すエッチング方法を用いることで、h-BN膜123の他、それぞれの膜を所定形状にパターニングすることができるので、複数の半導体素子を基板上に構成することができる。
【0045】
(半導体装置の構成の説明)
図7(A)から同図(C)に示すように、半導体装置130は、図6に示す従来の半導体装置120と同様に、Siによる基板131に、SiOによる絶縁膜132が設けられている。
絶縁膜132上には、パターニングにより積層体を分割する隙間Sが形成されることで、複数の半導体素子140が設けられている。
【0046】
半導体素子140は、Siによるゲート膜141と、絶縁膜142と、h-BN膜143と、グラフェン膜144と、一対の電極145と、ゲート電極146とを備えている。
半導体素子140は、一対の電極145とゲート電極146とを露出させた状態で、絶縁膜132、ゲート膜141、絶縁膜142、h-BN膜143、グラフェン膜144が、絶縁膜133により覆われている。
【0047】
図7(C)に示すように、一対の電極145は、T字状に形成された半導体素子140の本体部140Aに形成され、グラフェン膜144に接続されている。また、図7(B)に示すように、ゲート電極146は、T字状に形成された半導体素子140の突出部140Bに形成され、絶縁膜142と、h-BN膜143と、グラフェン膜144とを貫通してゲート膜141に接続されている。また、一対の電極145と、h-BN膜143およびグラフェン膜144とが、絶縁膜142により絶縁されている。
【0048】
(半導体装置の製造方法の説明)
次に、この半導体装置130の製造方法について、図面に基づいて説明する。
図8(A)に示すように、まず、基板131に成膜された絶縁膜132に、導電膜として、例えば、高濃度の単結晶Si膜を成膜してゲート膜141とする。このゲート膜141(導電膜)は、h-BN膜143を形成する際、h-BN膜とファンデルワール力で接合する必要があり、またグラフェン膜の高移動度を確保するために2nm以下の平坦度が必要のため、単結晶Si膜が最適である。
【0049】
次に、例えば、熱酸化によりSi酸化膜を形成することで絶縁膜142を成膜する。この熱酸化は、絶縁膜142に2nm以下の平坦度が必要のためである。その他の例としては、CVD(chemical vapor deposition:化学気相成長)により成膜することができるが、そうした場合には、絶縁膜を堆積後にCMP(chemical mechanical polishing:化学機械研磨)により平坦度を2nm以下にする。なお、絶縁膜142としてのシリコン酸化膜は必ずとも必要としない。
【0050】
次に、h-BN膜143を転写する。そして、更にアクティブ層となるグラフェン膜144を転写する。
次に、ALD(Atomic layer deposition:原子層堆積)法により絶縁膜として、例えばAlを堆積して、図3(D)に示すマスク膜112(図3(C)参照)を成膜する。なお、ALD法により堆積した絶縁膜であれば種類を問わない。
更に、マスク膜112のエッチングのマスクとして、前記のALD法により堆積した絶縁膜と異なる材質の膜として例えばシリコン酸化膜を堆積して、図3(C)に示すレジスト膜113を成膜する。なお、マスクの堆積は必ずとも必要としない。
【0051】
そして、図4(A)から同図(D)を用いて説明したように、フォトリソグラフィにより、所定形状にエッチングされたレジスト膜113によりマスク膜112をパターニングした後に、グラフェン膜144、h-BN膜143、絶縁膜142およびゲート膜141を異方性エッチングとして、例えば、RIEで除去する。その後、レジスト膜113およびマスク膜112を除去する(図8(B)参照)。
【0052】
次に、図9(A)に示すように、段差被覆性が良好な膜としてALD法により絶縁膜133としてAl膜を堆積する。
次に、フォトリソグラフィによりゲート電極146(図7(A)および同図(B)参照)以外の領域にパターンを形成した後、図4に示す手順によるRIEにより所望の領域(ゲート電極形成領域G(図9(B)参照))のAl膜、グラフェン膜144、h-BN膜143、絶縁膜142をエッチングして、ゲート電極146のための溝を形成する。その後、フォトレジストを除去する。
【0053】
図9(A)に示す状態では、絶縁膜133(Al膜)を堆積しただけで加工していない。
なお、Al膜を堆積後に前記同様にマスク膜を堆積して、マスク膜を加工後にAl膜を加工するようにしてもよい。
【0054】
次に、ゲート電極形成領域Gに、段差被覆特性に優れたALD法によりAl膜を堆積し、RIEにより堆積した底部(平面部)のAl膜133aを除去し、溝の側壁部のみAl膜133bを残す。
【0055】
次に、フォトリソグラフィにより一対の電極145(図7参照)の形成領域以外の領域にレジスト膜を形成して、Al膜を除去する。そして、Al膜が除去された領域にTiを堆積させることにより一対の電極145を形成することで、図7に示す半導体装置130を製造することができる。
【0056】
(半導体装置の機能の説明)
以上のように製造される、図7(A)から同図(C)に示す半導体装置130は、半導体素子140が所定間隔を空けて配置されているため、それぞれの半導体素子140のゲート膜141は絶縁膜132により非導通状態である。
【0057】
そのため、それぞれの半導体素子140は、ゲートとして機能するゲート膜141と、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜142および絶縁膜142に成膜されたh-BN膜143と、およびh-BN膜143に成膜されたグラフェン膜144が形成され、ソース電極およびドレイン電極として機能する金属薄膜による一対の電極145と、ゲート膜141に接続されたゲート電極146とにより、独立したFETとして機能する。
従って、基板131上に多数の半導体素子140をパターニングすることで集積度の高い半導体装置130とすることができる。
【0058】
また、半導体素子140は、グラフェン膜144にh-BN膜143が重ねられているため、グラフェン膜144における移動度を高めることができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、半導体素子140は、ゲート膜141に絶縁膜143を介してh-BN膜144が設けられ、絶縁膜143とh-BN膜144とをゲート絶縁膜として機能させているが、前述したように、絶縁膜143を省略してh-BN膜144のみをゲート絶縁膜として機能させるようにしてもよい。
また、半導体素子140はFETとして機能するものであったが、他の素子として機能するものであっても、絶縁膜132上に形成されているため、他の素子をそれぞれ独立して動作させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、h-BN膜が含まれる半導体装置の製造に好適である。
【符号の説明】
【0061】
10 エッチング装置
11 反応室
12 導入口
13 排気口
14 ポンプ
15 アノード
16 カソード
17 高周波電源
101 基板
102 h-BN膜
103 マスク膜
104 レジスト膜
110 基板
111 h-BN膜
112 マスク膜
113 レジスト膜
120 従来の半導体装置
121 基板
122 絶縁膜
123 h-BN膜
124 グラフェン膜
125 電極
130 半導体装置
131 基板
132,133 絶縁膜
133a,133b Al
140 半導体素子
140A 本体部
140B 突出部
141 ゲート膜
142 絶縁膜
143 h-BN膜
144 グラフェン膜
145 電極
146 ゲート電極
S 隙間
G ゲート電極形成領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9