(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064654
(43)【公開日】2023-05-11
(54)【発明の名称】液体吐出方法、活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、液体吐出装置、及び印刷物
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20230501BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230501BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20230501BHJP
B41J 2/015 20060101ALI20230501BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20230501BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41J2/01 129
B41J2/01 501
B41J2/205
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/015 101
C09D11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175055
(22)【出願日】2021-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊介
(72)【発明者】
【氏名】小島 智之
(72)【発明者】
【氏名】山口 竜輝
(72)【発明者】
【氏名】小林 広紀
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】石井 煕
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EC07
2C056EC12
2C056EC31
2C056EC42
2C056ED01
2C056FA04
2C056FC01
2C056HA44
2C057AF28
2C057AM21
2C057BA14
2C057CA01
2H186AA02
2H186AB11
2H186FA08
2H186FA16
2H186FB04
2H186FB29
2H186FB34
2H186FB35
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
4J039AC01
4J039AD10
4J039AE04
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE12
4J039BE15
4J039BE19
4J039BE23
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4J039BE27
4J039BE30
4J039BE32
4J039EA04
4J039EA42
4J039FA01
4J039FA02
4J039FA03
4J039FA04
4J039FA05
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】被記録媒体に形成される画像品質に優れた液体吐出方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様は、活性エネルギー線硬化型組成物からなる液体を吐出する吐出ヘッドと、活性エネルギー線を照射するための照射手段と、を有する液体吐出装置における液体吐出方法であって、相対移動手段により、前記吐出ヘッドを被記録媒体に対して1.5m/s以上の速度で相対移動させる工程と、前記吐出ヘッドにより、印加する信号の波形に応じて圧力発生手段が発生する圧力によって前記被記録媒体上に前記液体を吐出する工程と、前記照射手段により、前記被記録媒体上の前記液体に活性エネルギー線を照射する工程と、を含み、前記圧力発生手段に印加する信号の波形は、少なくとも、3つの引き込み駆動パルスと、前記3つの引き込み駆動パルスに続く押し込み駆動パルスとを含み、前記3つの引き込み駆動パルスそれぞれのパルス幅は、吐出速度が最も速くなるパルス幅に対して30%以上120%未満であり、前記吐出ヘッドの駆動周波数は、20kHz以上であり、前記活性エネルギー線硬化型組成物は、3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーと、多官能モノマーと、単官能モノマーと、を含み、前記多官能モノマーは、3官能モノマーと、2官能モノマーと、を含み、前記活性エネルギー線硬化型組成物の総質量に対し、前記3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマー、前記3官能モノマー及び前記2官能モノマーの合計含有量よりも前記単官能モノマーの合計含有量のほうが多いことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化型組成物からなる液体を吐出する吐出ヘッドと、
活性エネルギー線を照射するための照射手段と、を有する液体吐出装置における液体吐出方法であって、
相対移動手段により、前記吐出ヘッドを被記録媒体に対して1.5m/s以上の速度で相対移動させる工程と、
前記吐出ヘッドにより、印加する信号の波形に応じて圧力発生手段が発生する圧力によって前記被記録媒体上に前記液体を吐出する工程と、
前記照射手段により、前記被記録媒体上の前記液体に活性エネルギー線を照射する工程と、を含み、
前記圧力発生手段に印加する信号の波形は、少なくとも、3つの引き込み駆動パルスと、前記3つの引き込み駆動パルスに続く押し込み駆動パルスとを含み、
前記3つの引き込み駆動パルスそれぞれのパルス幅は、吐出速度が最も速くなるパルス幅に対して30%以上120%未満であり、
前記吐出ヘッドの駆動周波数は、20kHz以上であり、
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーと、多官能モノマーと、単官能モノマーと、を含み、
前記多官能モノマーは、3官能モノマーと、2官能モノマーと、を含み、
前記活性エネルギー線硬化型組成物の総質量に対し、前記3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマー、前記3官能モノマー及び前記2官能モノマーの合計含有量よりも前記単官能モノマーの合計含有量のほうが多いことを特徴とする液体吐出方法。
【請求項2】
前記圧力発生手段に印加する信号の波形は、大滴、中滴、及び小滴の3種類のサイズの液滴にそれぞれ対応する吐出パルスを含み、
前記小滴を吐出させる前記吐出パルスは、基準電位から所定のホールド電位まで立ち下がった電位を保持する時間が、前記吐出速度が最も早くなるパルス幅以下であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出方法。
【請求項3】
前記相対移動手段は、前記吐出ヘッドを前記被記録媒体に対して相対的に1.8m/s以上の速度で相対移動させることを特徴とする請求項1又2に記載の液体吐出方法。
【請求項4】
前記吐出ヘッドの駆動周波数は、25kHz以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の液体吐出方法。
【請求項5】
前記3官能モノマー及び前記2官能モノマーの合計含有量が、前記活性エネルギー線硬化型組成物の総質量に対して、10質量%以上15質量%以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の液体吐出方法。
【請求項6】
前記2官能モノマーと前記3官能モノマーとの質量比が1:0.3~0.8であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の液体吐出方法。
【請求項7】
前記3官能モノマー及び前記2官能モノマーの合計含有量が、前記活性エネルギー線硬化型組成物の総質量に対して、10質量%以上15質量%以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の液体吐出方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の液体吐出方法に用いられる活性エネルギー線硬化型組成物であって、
3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーと、多官能モノマーと、単官能モノマーと、を含み、
前記多官能モノマーは、3官能モノマーと、2官能モノマーと、を含み、
前記活性エネルギー線硬化型組成物の総質量に対し、前記3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマー、前記3官能モノマー及び前記2官能モノマーの合計含有量よりも前記単官能モノマーの合計含有量のほうが多いことを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の活性エネルギー線硬化型組成物を含む、活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項10】
印加する信号の波形に応じて圧力発生手段が発生する圧力によって、請求項8に記載の活性エネルギー線硬化型組成物からなる液体を、被記録媒体上に吐出する吐出ヘッドと、
前記被記録媒体上の前記液体に、活性エネルギー線を照射するための照射手段と、
前記吐出ヘッドを前記被記録媒体に対して相対的に1.5m/s以上の速度で相対移動させる相対移動手段と、
少なくとも、3つの引き込み駆動パルスと、前記3つの引き込み駆動パルスに続く押し込み駆動パルスとを含む、前記圧力発生手段に印加する信号の波形を生成する駆動波形生成部と、を有し、
前記3つの引き込み駆動パルスそれぞれのパルス幅は、吐出速度が最も速くなるパルス幅に対して30%以上120%未満であり、
前記吐出ヘッドの駆動周波数は、20kHz以上であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
請求項8に記載の活性エネルギー線硬化型組成物を用いて得られた印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出方法、活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、液体吐出装置、及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐出ヘッドから吐出された活性エネルギー線硬化型組成物の液滴を被記録媒体上に付着させて、文字や画像を形成する液体吐出方法が知られている。活性エネルギー線硬化型組成物は、溶剤系組成物と比べて被記録媒体への付着後の乾燥性に優れるため、生産性を向上させる点において有利である。
【0003】
活性エネルギー線硬化型組成物には、インク非吸収性材料からなる被記録媒体に形成した画像の密着性を向上させるために、色材、単官能アクリレートモノマー、3官能以上のウレタンアクリレートオリゴマーおよび光重合開始剤を含むものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物は、分子量が高く、高粘度な成分や多官能モノマーを多く含むため、高粘度になり、吐出直後の液滴であるリガメントが長くなりやすい。リガメントから発生したミストが被記録媒体の非画像部に付着することにより、被記録媒体に形成される画像の品質が低下する懸念がある。
【0005】
本発明の一態様は、被記録媒体に形成される画像品質に優れた液体吐出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、活性エネルギー線硬化型組成物からなる液体を吐出する吐出ヘッドと、活性エネルギー線を照射するための照射手段と、を有する液体吐出装置における液体吐出方法であって、相対移動手段により、前記吐出ヘッドを被記録媒体に対して1.5m/s以上の速度で相対移動させる工程と、前記吐出ヘッドにより、印加する信号の波形に応じて圧力発生手段が発生する圧力によって前記被記録媒体上に前記液体を吐出する工程と、前記照射手段により、前記被記録媒体上の前記液体に活性エネルギー線を照射する工程と、を含み、前記圧力発生手段に印加する信号の波形は、少なくとも、3つの引き込み駆動パルスと、前記3つの引き込み駆動パルスに続く押し込み駆動パルスとを含み、前記3つの引き込み駆動パルスそれぞれのパルス幅は、吐出速度が最も速くなるパルス幅に対して30%以上120%未満であり、前記吐出ヘッドの駆動周波数は、20kHz以上であり、前記活性エネルギー線硬化型組成物は、3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーと、多官能モノマーと、単官能モノマーと、を含み、前記多官能モノマーは、3官能モノマーと、2官能モノマーと、を含み、前記活性エネルギー線硬化型組成物の総質量に対し、前記3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマー、前記3官能モノマー及び前記2官能モノマーの合計含有量よりも前記単官能モノマーの合計含有量のほうが多いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によると、被記録媒体に形成される画像品質に優れた液体吐出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態における像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図2】一実施形態における別の像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図3A】一実施形態におけるさらに別の像形成装置の一例を示す概略図である(その1)。
【
図3B】一実施形態におけるさらに別の像形成装置の一例を示す概略図である(その2)。
【
図3C】一実施形態におけるさらに別の像形成装置の一例を示す概略図である(その3)。
【
図3D】一実施形態におけるさらに別の像形成装置の一例を示す概略図である(その4)。
【
図4A】一実施形態の圧力発生手段に印加する引き込み駆動パルスの波形の例を示す図である。
【
図4B】一実施形態の圧力発生手段に印加する押し込み駆動パルスの波形の例を示す図である。
【
図5】パルス幅Pw(Pulse width)特性を説明するための図である。
【
図6】1印字単位周期におけるドットの形成過程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、実施形態は以下の記述によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断りがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。実施形態の用語において、像形成、記録、印字、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0010】
<液体吐出方法>
本実施形態の液体吐出方法は、活性エネルギー線硬化型組成物からなる液体を吐出する吐出ヘッドと、活性エネルギー線を照射するための照射手段とを有する液体吐出装置における液体吐出方法である。液体吐出方法として、例えば、インクジェット記録方法が挙げられる。
【0011】
本実施形態における液体吐出方法は、活性エネルギー線硬化型組成物の液体を吐出するノズルを有するノズル板、ノズルが連通する液室、及び液室内に圧力を発生させる圧力発生手段を有する吐出ヘッドの該圧力発生手段に対して、少なくとも、
図4Aに示すような引き込み駆動パルス3つ(以下、順に、第1の引き込み駆動パルス、第2の引き込み駆動パルス、第3の引き込み駆動パルスとする)を印加し、前記3つの引き込み駆動パルスのパルス幅Pw(Pulse width)が、
図5に示すような吐出速度Vjが最も早くなるパルス幅Pwの第1ピークP1に対して30%(Pw1)以上120%(Pw2)未満であり、第3の引き込み駆動パルスの次に
図4Bに示すような押し込み駆動パルス(3つの引き込み駆動パルスに続く押し込み駆動パルス)を含む。
【0012】
ここで、「少なくとも、3つの引き込み駆動パルスと、3つの引き込み駆動パルスに続く押し込み駆動パルスとを含み」とは、インクジェットヘッドの駆動信号が、第1、第2、第3の引き込み駆動パルス以外の引き込み駆動パルスを含むことを許容することを意味する。したがて、インクジェットヘッドの駆動信号は、4つ以上の引き込み駆動パルスを含んでいてもよい。
【0013】
なお、
図5は、パルス幅Pw特性を説明するための図である。Pw特性においては、一般に、Pwを変化させたときにもっとも吐出速度Vjが速くなるPwを第1ピークP1と呼ぶ。Pwの第1ピークP1からPw幅を大きくしていくと、インク液滴が吐出しない、もしくは極端に遅くなる時間が存在し、さらにPw幅を大きくしていくと、再度、吐出速度Vjが速くなり吐出速度Vjのピーク値を持つPwが存在する。これをPwの第2ピークP2と呼ぶ。
【0014】
パルス幅Pwが30%以上120%未満の範囲であれば、活性エネルギー線硬化型組成物の液体の吐出時のリガメント長を比較的短くすることができ、サテライトによるミスト由来の画像汚染(非印字部への飛び散り)を改善することができる。押し込み駆動パルスにより、リガメント長をより短くすることができるほか、高粘度となる活性エネルギー線硬化型組成物においても、着弾位置ズレの原因となる曲がりなどが起きることなく吐出することができる。よって、画像品質に優れた吐出方法を提供することができる。
【0015】
本実施形態の液体吐出方法において、印刷制御部により活性エネルギー線硬化型組成物の液滴の大きさに応じた吐出パルスが発生される。吐出パルスは1以上の駆動パルスを時系列で含む駆動波形から駆動パルスを選択して構成される。なお、「駆動パルス」とは駆動波形を構成する要素としてのパルスを示す用語として、「吐出パルス」とは圧力発生手段を具備した吐出ヘッドに印加されて活性エネルギー線硬化型組成物の液体を吐出させるパルスを示す用語として用いる。
【0016】
駆動パルスとしては、基準電位から所定のホールド電位まで立ち下がって液室を膨張させる波形要素(膨張波形要素)と、立ち下がった電位(ホールド電位)を保持する波形要素(保持要素)と、ホールド電位から立ち上がって液室を収縮させる波形要素(収縮波形要素)とで構成される。
【0017】
本実施形態の液体吐出方法において、活性エネルギー線硬化型組成物の液滴の大きさに応じて、1以上の駆動パルスを時系列で含む駆動波形から駆動パルスを選択して吐出パルスが発生される。例えば、大滴、中滴、小滴の3種類のサイズの液滴を吐出させる駆動波形を選択することができる。即ち、吐出パルスの波形(圧力発生手段に印加する信号の波形)は、大滴、中滴、及び小滴の3種類のサイズの液滴にそれぞれ対応する吐出パルスを選択することができる。
【0018】
小滴を吐出させる吐出パルスは、基準電位から所定のホールド電位まで立ち下がった電位を保持する時間が、吐出速度Vjが最も早くなるパルス幅Pwである第1ピークP1以下であることが好ましい。
【0019】
本実施形態の液体吐出方法は、小滴を吐出させる吐出パルスの保持要素時間(パルス幅Pw)が、吐出速度Vjが最も早くなるパルス幅Pwである第1ピークP1に対して30%以上120%未満である駆動波形を使用することが好ましい。パルス幅Pwが30%以上120%未満の範囲であれば、活性エネルギー線硬化型組成物の液体の吐出時のリガメント長を比較的短くすることができ、サテライトによるミスト由来の画像汚染(非印字部への飛び散り)をより改善することができる。
【0020】
また、小滴を吐出させる吐出パルスは、第3の引き込み駆動パルスの次に押し込み駆動パルスを含むことが好ましい。押し込み駆動パルスにより、リガメント長をより短くすることができるほか、高粘度となる活性エネルギー線硬化型組成物においても、着弾位置ズレの原因となる曲がりなどが起きることなく吐出することが出来る。
【0021】
本実施形態の液体吐出方法は、相対移動手段により、吐出ヘッドを被記録媒体に対して1.5m/s以上の速度で相対移動させる工程を含む。換言すると、キャリッジを被記録媒体に対して相対的に1.5m/s以上での速度で走査する工程を含む。吐出ヘッドを被記録媒体に対して相対移動させる速度を1.5m/s以上とすることにより、液体吐出方法は、優れた生産性を発揮することができる。相対移動手段は、吐出ヘッドを被録媒体に対して相対的に1.8m/s以上の速度で相対移動させることが好ましい。
【0022】
本実施形態の液体吐出方法は、吐出ヘッドの駆動周波数が20kHz以上である。駆動周波数が20kHz以上であれば、吐出ヘッド(キャリッジ)を被記録媒体に対して相対的に1.5m/s以上での速度で走査する場合でも高解像度の画像を印刷することができる。吐出ヘッドを被記録媒体に対して相対的に1.8m/s以上での速度で走査する場合は、吐出ヘッドの駆動周波数は、25kHz以上の高周波数であればなお良い。
【0023】
本実施形態の液体吐出方法は、更に、吐出ヘッドにより、印加する信号の波形に応じて圧力発生手段が発生する圧力によって被記録媒体上に液体を吐出する工程と、照射手段により、被記録媒体上の液体に活性エネルギー線を照射する工程とを含む。
【0024】
液体吐出方法において、高い生産性を達成しようとすると、必然的に印刷速度を上げることなるため、吐出ヘッドを被記録媒体に対して相対移動させる速度、及び吐出ヘッドの駆動周波数を上げる必要がある。この駆動条件では、着弾位置ズレの原因となる曲がりがより発生しやすく、画像汚染につながる。
【0025】
また、活性エネルギー線硬化型組成物の着弾精度を維持するために、例えば、活性エネルギー線硬化型組成物の吐出速度を上げることが要求されるが、吐出速度を上げると、活性エネルギー線硬化型組成物のリガメント長が長くなることがある。リガメントが長くなると、サテライトによるミストが発生し、非画像部に着弾して画像汚染につながる。
【0026】
本実施形態の液体吐出方法では、上述の構成により、例えば、分子量が比較的高く、高粘度な成分や多官能モノマーを多く含む活性エネルギー線硬化型組成物を用いる場合であっても、優れた生産性及び画像品質を発揮することができる。
【0027】
次に、1印字単位周期におけるドットの形成過程について、
図6を用いて説明する。ここで、「1印字単位周期」とは、各アクチュエータが媒体に各ドットを形成するための時間間隔である。
【0028】
まず、相対移動手段により吐出ヘッド11と被記録媒体12とが相対移動されているときに、アクチュエータに対して1印字単位周期中に1又は2以上の複数の駆動パルス(吐出パルス)を供給し、ノズルから1又は2以上の活性エネルギー線硬化型組成物の液滴101、102、103を吐出させる。このようにして吐出された複数の液滴101、102、103は、空気中で一体化して一つの液滴100となり、被記録媒体12上に一つのドットを形成する。
【0029】
このようなドットが被記録媒体上に複数個整列することにより、被記録媒体に所定の画像が形成される。そして、1印字単位周期中に吐出する活性エネルギー線硬化型組成物の液滴の数を調整することにより、ドットの濃淡や大きさが調整され、いわゆる多階調印刷が可能となる。
【0030】
本実施形態においては、1印字単位周期に含まれる液滴を空中で一体化させた後、被記録媒体に付着させる構成、1印字単位周期に含まれる液滴を吐出順に被記録媒体上に付着させる構成、及び単一の液滴のみを付着させる構成のいずれも可能である。被記録媒体上に活性エネルギー線硬化型組成物が着弾した際に、活性エネルギー線硬化型組成物の形状が円形に近い、被記録媒体上に活性エネルギー線硬化型組成物が着弾する位置にずれが生じないなどの理由で、1印字単位周期に含まれる液滴を空中で一体化させた後、被記録媒体に付着される構成が好ましい。
【0031】
この時、1滴目を形成する吐出パルス(駆動パルス)の膨張波形要素(ノズルにおける活性エネルギー線硬化型組成物を引き込む電圧変化部分)を長い電圧変化時間とすることにより、ノズル板面上に堆積していた残留活性エネルギー線硬化型組成物を回収して1滴目のメニスカス形成を均一なものにできるとともに、直後に形成される2滴目以降(同一の1印字単位周期内)のメニスカス形成への影響も無くすことができる。
【0032】
長い電圧変化時間の膨張波形要素を印加するのは、1滴目を形成する吐出パルスのみで十分効果が得られるからである。2滴目以降の吐出パルスにも特定の膨張波形要素を入れることも可能であるが、ゆっくりと時間をかけてメニスカスを引き込むという特徴上、波形の速度を稼ぐことができず、あまり実用的とは言えない。
【0033】
<活性エネルギー線硬化型組成物>
本実施形態の液体吐出方法に用いる活性エネルギー線硬化型組成物は、3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーと、多官能モノマーと、単官能モノマーとを含み、多官能モノマーは、2官能モノマーと、3官能モノマーとを含む。
【0034】
また、本実施形態の液体吐出方法に用いる活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線硬化型組成物の総質量に対し、3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマー、3官能モノマー及び2官能モノマーの合計含有量よりも単官能モノマーの合計含有量のほうが多い。
【0035】
活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化するため、溶剤系インク組成物と比べてインク吐出後のインクの乾燥性に優れ、例えば、アクリルのようなプラスチック基材に対して好適に用いることできるため、基材への密着性が求められる。
【0036】
しかしながら、基材への密着性を達成しようとすると、塗膜強度が下がり、塗膜の耐ブロッキング性が低下する問題が生じることがある。一方で、耐ブロッキング性を向上させるために架橋成分を添加すると、塗膜の内部応力が増大し、基材への密着性や塗膜の割れ性が低下してしまうため、密着性と耐ブロッキング性とのトレードオフの問題が発生する。
【0037】
また、活性エネルギー線硬化型組成物を吐出ヘッドから吐出する際の吐出安定性は画像品質を左右し、重要なものとなっている。
【0038】
本実施形態では、上述の構成により、基材に対する優れた密着性及び耐ブロッキング性を両立し、基材上での塗膜の割れ性、及び被記録媒体への吐出安定性に優れた活性エネルギー線硬化型組成物が得られる。
【0039】
また、本実施形態の液体吐出方法は、優れた生産性及び画像品質、並びに、基材に対する優れた密着性及び耐ブロッキング性を両立することができ、基材上での塗膜の優れた割れ性、及び被記録媒体への優れた吐出安定性を発揮することができる。
【0040】
また、活性エネルギー線硬化型組成物は、必要に応じて、重合開始剤、色材、有機溶媒、その他の成分等を含んでいてよい。活性エネルギー線硬化型組成物として、具体的には、例えば、活性エネルギー線硬化型インク、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物等が挙げられる。
【0041】
(3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマー)
本実施形態の3官能ウレタンアクリレートオリゴマーは、アダクト体である。アダクト体は架橋点が立体障害の小さいC-C結合で構成されるため、化学架橋点としての効果が高く、基材への密着性に影響する柔軟性と耐ブロッキング性を両立した硬化物が得られる。
【0042】
3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーの含有量としては、活性エネルギー線硬化型組成物の総質量に対して、1.0質量%以上5.0質量%以下が好ましい。3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーの含有量が1.0質量%以上5.0質量%以下の範囲では、吐出安定性により優れた活性エネルギー線硬化型組成物が得られる。
【0043】
3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーは、例えば、特開2002-256053に記載の合成例1から3の方法で作製可能である。
【0044】
3官能アダクト体ウレタンアクリレートオリゴマーの分子量は、1000以上9000以下が好ましく、1000以上4000以下がより好ましい。分子量が、1000以上9000以下の範囲内であることにより、より優れた密着性及び耐ブロッキング性を両立することができ、基材上での塗膜の割れ性、及び被記録媒体への吐出安定性により優れた活性エネルギー線硬化型組成物、及び液体吐出方法を提供することができる。
【0045】
(多官能モノマー)
活性エネルギー線硬化型組成物は多官能モノマーを含む。多官能モノマーとしては、2官能モノマーと3官能モノマーとを含み、それ以上の官能基数のモノマーを含んでいてもよい。多官能モノマーを有すると、強固な架橋構造を有する塗膜が得られる。本実施形態の多官能モノマーは、官能基として(メタ)アクリロイル基由来の不飽和結合を含有していてよい。
【0046】
多官能モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルをいい、(メタ)アクリレート等についても同様の意味である。
【0047】
多官能モノマーは1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。例えば、2官能モノマー及び3官能モノマーを1種ずつ併用することができる。
【0048】
活性エネルギー線硬化型組成物における2官能モノマーと3官能モノマーとの質量比は、2官能モノマー:3官能モノマーが1:0.3~0.8になることが好ましい。また、2官能モノマーと3官能モノマーの合計含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物の総質量に対して、10質量%以上15質量%以下であることが好ましい。これらの質量比と合計含有量を満たしていれば、少ない含有量で架橋を延ばすことができ、基材に対するより優れた密着性と耐ブロッキング性を両立し、基材上での塗膜の割れ性により優れた活性エネルギー線硬化型組成物が得られる。
【0049】
(単官能モノマー)
単官能モノマーは、官能基数が1のモノマーである。活性エネルギー線硬化型組成物に含まれる単官能モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルフォホリン、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、t-ブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
<硬化手段>
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させる手段としては、活性エネルギー線による硬化が挙げられる。
【0051】
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。
【0052】
また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0053】
<重合開始剤>
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。
【0054】
このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。また、重合開始剤は、十分な硬化速度を得るために、組成物の総質量(100質量%)に対し、5~20質量%含まれることが好ましい。
【0055】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
【0056】
また、上記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。重合促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミンおよび4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン化合物が好ましく、その含有量は、使用する重合開始剤やその量に応じて適宜設定すればよい。
【0057】
<色材>
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、色材を含有していてもよい。色材としては、本実施形態における組成物の目的や要求特性に応じて、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色、などを付与する種々の顔料や染料を用いることができる。
【0058】
色材の含有量は、所望の色濃度や組成物中における分散性等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、活性エネルギー線硬化型組成物の総質量(100質量%)に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。なお、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、色材を含まず無色透明であってもよく、その場合には、例えば、画像を保護するためのオーバーコート層として好適である。
【0059】
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
【0061】
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0062】
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散物を調製する際に慣用されている分散剤が挙げられる。
【0063】
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
<有機溶媒>
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。
【0065】
なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0066】
<その他の成分>
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、必要に応じてその他の公知の成分を含んでもよい。その他成分としては、特に制限されないが、例えば、従来公知の、界面活性剤、重合禁止剤、レべリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤などが挙げられる。
【0067】
<活性エネルギー線硬化型組成物の調製>
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、重合性モノマー、顔料、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて顔料分散液を調製し、当該顔料分散液にさらに重合性モノマー、開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
【0068】
<粘度>
本実施形態における活性エネルギー線硬化型組成物の粘度は、用途や適用手段に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、当該組成物をノズルから吐出させるような吐出手段を適用する場合には、20℃から65℃の範囲における粘度、望ましくは25℃における粘度が3~40mPa・sが好ましく、5~15mPa・sがより好ましく、6~12mPa・sが特に好ましい。
【0069】
また当該粘度範囲を、上記有機溶媒を含まずに満たしていることが特に好ましい。なお、上記粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34'×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM-150IIIを用いることができる。
【0070】
<用途>
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物の用途は、一般に活性エネルギー線硬化型材料が用いられている分野であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成形用樹脂、塗料、接着剤、絶縁材、離型剤、コーティング材、シーリング材、各種レジスト、各種光学材料などが挙げられる。
【0071】
さらに、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物は、インクとして用いて2次元の文字や画像、各種基材への意匠塗膜を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
【0072】
この立体造形用材料は、例えば、粉体層の硬化と積層を繰り返して立体造形を行う粉体積層法において用いる粉体粒子同士のバインダーとして用いてもよく、また、
図2や
図3に示すような積層造形法(光造形法)において用いる立体構成材料(モデル材)や支持部材(サポート材)として用いてもよい。
【0073】
なお、
図2は、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物を所定領域に吐出し、活性エネルギー線を照射して硬化させたものを順次積層して立体造形を行う方法であり(詳細後述)、
図3は、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物5の貯留プール(収容部)1に活性エネルギー線4を照射して所定形状の硬化層6を可動ステージ3上に形成し、これを順次積層して立体造形を行う方法である。
【0074】
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物を用いて立体造形物を造形するための立体造形装置としては、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、該組成物の収容手段、供給手段、吐出手段や活性エネルギー線照射手段等を備えるものが挙げられる。
【0075】
また、本実施形態は、活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させて得られた硬化物や当該硬化物が基材上に形成された構造体を加工してなる成形加工品も含む。成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された硬化物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形することが必要な用途に好適に使用される。
【0076】
上記基材としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又はこれらの複合材料などが挙げられ、加工性の観点からはプラスチック基材が好ましい。
【0077】
<組成物収容容器>
本実施形態の組成物収容容器は、活性エネルギー線硬化型組成物が収容された状態の容器を意味し、上記のような用途に供する際に好適である。例えば、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物がインク用途である場合において、当該インクが収容された容器は、インクカートリッジやインクボトルとして使用することができ、これにより、インク搬送やインク交換等の作業において、インクに直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。
【0078】
また、インクへのごみ等の異物の混入を防止することができる。また、容器それ自体の形状や大きさ、材質等は、用途や使い方に適したものとすればよく、特に限定されないが、その材質は光を透過しない遮光性材料であるか、または容器が遮光性シート等で覆われていることが望ましい。
【0079】
<像の形成方法、形成装置>
本実施形態の像の形成方法は、活性エネルギー線を用いる。本実施形態の硬化型組成物を活性エネルギー線で硬化させるためには、活性エネルギー線を照射する照射工程を有し、本実施形態の像の形成装置は、活性エネルギー線を照射するための照射手段と、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物を収容するための収容部と、を備え、該収容部には容器を収容してもよい。
【0080】
さらに、本実施形態の像の形成方法及び形成装置は、ぞれぞれ、活性エネルギー線硬化型組成物を吐出する吐出工程、吐出手段を有していてもよい。吐出させる方法は特に限定されないが、連続噴射型、オンデマンド型等が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
【0081】
図1は、インクジェット吐出手段を備えた像形成装置の一例である。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色活性エネルギー線硬化型インクのインクカートリッジと吐出ヘッドを備える各印刷ユニット23a、23b、23c、23dにより、供給ロール21から供給された被記録媒体22に活性エネルギー線硬化型組成物が吐出される。
【0082】
その後、インクを硬化させるための光源24a、24b、24c、24dから、活性エネルギー線を照射して硬化させ、カラー画像を形成する。その後、被記録媒体22は、加工ユニット25、印刷物巻取りロール26へと搬送される。各印刷ユニット23a、23b、23c、23dには、インク吐出部でインクが液状化するように、加温機構を設けてもよい。
【0083】
また必要に応じて、接触又は非接触により被記録媒体を室温程度まで冷却する機構を設けてもよい。また、インクジェット記録方式としては、吐出ヘッド幅に応じて間欠的に移動する被記録媒体に対し、ヘッドを移動させて被記録媒体上にインクを吐出するシリアル方式や、連続的に被記録媒体を移動させ、一定の位置に保持されたヘッドから被記録媒体上に活性エネルギー線硬化型組成物を吐出するライン方式のいずれであっても適用することができる。
【0084】
被記録媒体22は、特に限定されないが、紙、フィルム、セラミックスやガラス、金属、これらの複合材料等が挙げられ、シート状であってもよい。また片面印刷のみを可能とする構成であっても、両面印刷も可能とする構成であってもよい。一般的な被記録媒体として用いられるものに限られず、ダンボール、壁紙や床材等の建材、コンクリート、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。
【0085】
更に、光源24a、24b、24cからの活性エネルギー線照射を微弱にするか又は省略し、複数色を印刷した後に、光源24dから活性エネルギー線を照射してもよい。これにより、省エネ、低コスト化を図ることができる。
【0086】
本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物により記録される記録物としては、通常の紙や樹脂フィルムなどの平滑面に印刷されたものだけでなく、凹凸を有する被印刷面に印刷されたものや、金属やセラミックなどの種々の材料からなる被印刷面に印刷されたものも含む。また、2次元の画像を積層することで、一部に立体感のある画像(2次元と3次元からなる像)や立体物を形成することもできる。
【0087】
図2は、本実施形態に係る別の像形成装置(3次元立体像の形成装置)の一例を示す概略図である。
図2の像形成装置39は、インクジェットヘッドを配列したヘッドユニット(AB方向に可動)を用いて、造形物用吐出ヘッドユニット30から第一の活性エネルギー線硬化型組成物を、支持体用吐出ヘッドユニット31、32から第一の活性エネルギー線硬化型組成物とは組成が異なる第二の活性エネルギー線硬化型組成物を吐出し、隣接した紫外線照射手段33、34でこれら各組成物を硬化しながら積層するものである。
【0088】
より具体的には、例えば、造形物支持基板37上に、第二の活性エネルギー線硬化型組成物を支持体用吐出ヘッドユニット31、32から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて溜部を有する第一の支持体層を形成した後、当該溜部に第一の活性エネルギー線硬化型組成物を造形物用吐出ヘッドユニット30から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて第一の造形物層を形成する工程を、積層回数に合わせて、上下方向に可動な可動ステージ38を下げながら複数回繰り返すことで、支持体層と造形物層を積層して立体造形物35を製作する。
【0089】
その後、必要に応じて支持体積層部36は除去される。なお、
図2では、造形物用吐出ヘッドユニット30は1つしか設けていないが、2つ以上設けることもできる。
【0090】
像形成装置は、活性エネルギー線硬化型組成物を収容する液室と液室に連通するノズルを有するノズル板と、圧電素子の圧電効果によってノズルから活性エネルギー線硬化型組成物の液滴を吐出させるように液室内の活性エネルギー線硬化型組成物に圧力を付与するアクチュエータ(圧力発生手段)とを有する吐出ヘッドと、駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動波形生成部と、駆動波形から駆動パルスを選択して吐出パルスを生成し、アクチュエータに印加するヘッドドライバと、吐出ヘッドを保持するキャリッジ(保持手段)と、吐出ヘッドと被記録媒体とを相対移動させる相対移動手段とを備えている。
【0091】
本実施形態の像形成装置は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるもの、三次元像を造形するものに限定されるものではない。像形成装置は、活性エネルギー線硬化型組成物を吐出する装置であればよく、液体吐出装置であってよい。像形成装置は、液体吐出装置の一例である。
【0092】
液体吐出装置は、印加する信号の波形に応じて圧力発生手段が発生する圧力によって活性エネルギー線硬化型組成物からなる液体(液滴)を、被記録媒体上に吐出する吐出ヘッドと、被記録媒体上の液体に、活性エネルギー線を照射するための照射手段と、吐出ヘッドを被記録媒体に対して相対的に1.5m/s以上の速度で相対移動させる相対移動手段と、少なくとも、3つの引き込み駆動パルスと、3つの引き込み駆動パルスに続く押し込み駆動パルスとを含む、圧力発生手段に印加する信号の波形を生成する駆動波形生成部とを有する。
【0093】
また、3つの引き込み駆動パルスそれぞれのパルス幅は、吐出速度が最も速くなるパルス幅に対して30%以上120%未満であり、吐出ヘッドの駆動周波数は、20kHz以上である。
【0094】
液体吐出装置は、例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するものも含まれる。液体が付着可能なものとは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。液体が付着可能なものの材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0095】
<硬化物>
本実施形態の硬化物は、本実施形態の活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、及び活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の少なくともいずれかに活性エネルギー線を照射することにより硬化させて形成される。
【0096】
活性エネルギー線硬化型組成物としては、上述の活性エネルギー線硬化型組成物と同様のものを用いることができ、活性エネルギー線硬化型インク組成物としては、上述の活性エネルギー線硬化型インク組成物と同様のものを用いることができ、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物としては、上述の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物と同様のものを用いることができる。
【0097】
<加飾体>
本実施形態の加飾体は、基材上に、硬化物からなる表面加飾が施されてなり、硬化物としては、上述の硬化物と同様のものを用いることができる。
【実施例0098】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0099】
<合成例1>
攪拌機、温度計及びコンデンサーを備えた500ml容のフラスコにトルエン33部、ステアリルアルコール(NAA-46)4.8部を仕込み40℃まで昇温した。その後ステアリルアルコールが完全に溶解したのを確認し、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト変性タイプ(バーノック(登録商標)DN-950;大日本インキ化学工業株式会社製、N.V.:75、NCO%:12)50部を仕込み70℃まで昇温させた。同温度で30分反応後、ジブチルスズラウレートを0.02部仕込み同温度で3時間保持した。その後、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(プラクセル(登録商標)FA3;ダイセル化学工業製、水酸基価:122)63.9部、ジブチルスズラウレート0.02部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02部を仕込み、70℃で3時間保持して反応を終了し、トルエン60.7部を加え固形分50重量%のウレタンアクリレートオリゴマーA(3官能アダクト体)を得た。
【0100】
<合成例2>
攪拌機、温度計及びコンデンサーを備えた500ml容のフラスコにトルエン60.8部、ステアリルアルコール(NAA-46)8.4部を仕込み40℃まで昇温した。その後ステアリルアルコールが完全に溶解したのを確認し、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(タケネート(登録商標)D-170N;武田薬品工業株式会社製、NCO%:20.9)50部を仕込み70℃まで昇温させた。同温度で30分反応後、ジブチルスズラウレートを0.02部仕込み同温度で3時間保持した。その後、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(プラクセルFA2D)83.5部、ジブチルスズラウレート0.02部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02部を仕込み、70℃で3時間保持して反応を終了し、トルエン81.1部を加え固形分50重量%のウレタンアクリレートオリゴマーB(3官能イソシアヌレート体)を得た。
【0101】
<合成例3>
攪拌機、温度計及びコンデンサーを備えた500ml容のフラスコにトルエン78.3部、ステアリルアルコール(NAA-46)8.5部を仕込み40℃まで昇温した。その後ステアリルアルコールが完全に溶解したのを確認し、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性タイプ(デュラネート(登録商標)24A-90CX;旭化成工業株式会社製、N.V.:90、NCO%:21.2)50部を仕込み70℃まで昇温させた。同温度で30分反応後、ジブチルスズラウレートを0.02部仕込み同温度で3時間保持した。その後、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(プラクセルFA4;ダイセル化学工業株式会社製、水酸基価:98)140.8部、ジブチルスズラウレート0.02部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02部を仕込み、70℃で3時間保持して反応を終了し、トルエン111部を加え固形分50重量%のウレタンアクリレートオリゴマーC(3官能ビウレット体)を得た。
【0102】
<使用材料>
ウレタンアクリレートオリゴマー以外の材料として、以下の材料を用いた。
(単官能モノマー)
・フェノキシエチルアクリレート(PEA) (製品名:ビスコート(登録商標)#192、大阪有機化学工業社製)
・ベンジルアクリレート(BZA) (製品名:ビスコート#160、大阪有機化学工業社製)
・3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(TMCHA) (製品名:ビスコート#196、大阪有機化学工業社製)
・4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート(TBCHA) (製品名:TBCHA、KJケミカルズ社製)
・イソボルニルアクリレート(IBXA) (製品名:IBXA、大阪有機化学工業社製)
【0103】
(2官能モノマー)
・ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA) (製品名:SR508、サートマー社製)
・トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアクリラート (製品名:KAYARAD(登録商標) R-684、日本化薬社製)
(3官能モノマー)
・トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA) (製品名:SR351S、サートマー社製)
【0104】
上記の材料以外に、重合開始剤としてTPO(製品名:Omnirad(登録商標) TPO、IGM社製)、重合禁止剤としてMEHQ(製品名:メトキノン、精工化学社製)を使用した。
【0105】
<活性エネルギー線硬化型組成物の作製>
表1から表6に示す材料と含有量(質量%)に基づき、常法により各実施例及び比較例の活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。各実施例及び比較例の活性エネルギー線硬化型組成物について、表1から表6に示す印刷条件によって印刷物を得た。
【0106】
次に、得られた印刷物について、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表1から表6に示す。
【0107】
<耐ブロッキング性>
耐ブロッキング性は、印字面とアクリル基材を重ね合わせた上からA4サイズあたり5kgの荷重かけて、室温で24時間放置した後の、塗膜と基材の貼り付きの有無および塗膜の変化度合いから下記の基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎:貼り付きがなく、塗膜の変化もない
〇:貼り付きはあるが、塗膜の変化はない
△:貼り付きがあり、塗膜の変化率が10%未満
×:貼り付きがあり、塗膜の変化率が10%以上
【0108】
<密着性>
密着性は、密着性試験JIS K5600-5-6のクロスカット法の評価方法に従い、下記の基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎:全く剥がれがない
〇:カッターの切込みに沿って剥がれがあるが、マスは剥がれていない
△:全体の50%未満のマスが剥がれている
×:全体の50%以上のマスが剥がれている
【0109】
<吐出安定性>
表1から表6に示す材料と含有量(質量%)に基づき作製した各インクジェット用インクを、インクジェット吐出装置(株式会社リコー製、ヘッド:リコープリンティングシステムズ社製GEN6)に装填し、1分間連続で吐出した後のノズルからの吐出状態をカメラで観察し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
〇:全てのノズルから吐出している
△:ノズル30個未満に不吐出がみられる
×:ノズル30個以上に不吐出がみられる
【0110】
<割れ性>
透明アクリル基材上に作成した硬化膜にカッターで格子状の切込みを入れて、下記基準により評価した。
〇:カッターによる切れ込みのみ
△:カッターによる切れ込み線がギザギザしている
×:カッターによる切れ込み線に沿って塗膜が割れる
【0111】
<生産性>
印刷時の被記録媒体に対しての相対速度(キャリッジ速度)で、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
〇:キャリッジ速度が1.8m/s以上
△:キャリッジ速度が1.5m/s以上1.8m/s未満
×:キャリッジ速度が1.5m/s未満
【0112】
<画像品質(画像汚染)>
表1から表6に示す印字条件で得られた印刷物の画質(画像汚染)を下記基準により、評価した。
〔評価基準〕
〇:非印字部への飛び散り発生なし
△:ベタ画像のエッジ部分から約35um以内への飛び散り着弾ありかつ、飛び散りの量が著しくない
×:ベタ画像エッジ部分から約35um超への飛び散り着弾ありないしは、飛び散りの量が著しい
【0113】
<画像品質(着弾位置精度)>
表1から表6に示す印字条件で得られた印刷物の着弾位置精度を下記基準により、評価した。
〔評価基準〕
〇:1dotライン画像において、ドット間のずれが0.5ドット以内
△:1dotライン画像において、ドット間のずれが1ドット以上2ドット以内
×:1dotライン画像において、ドット間のずれが2ドット以上
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
表1~5より、実施例1~49の液体吐出方法及び活性エネルギー線硬化型組成物は、密着性、耐ブロッキング性、基材上での塗膜の割れ性、吐出安定性、生産性、画像汚染、着弾位置精度のいずれも使用上の条件を満たしていることが確認された。
【0121】
これに対して、表6に示すように比較例1~10の液体吐出方法及び活性エネルギー線硬化型組成物は、密着性、耐ブロッキング性、基材上での塗膜の割れ性、吐出安定性、生産性、画像汚染、着弾位置精度の少なくともいずれかが使用上の条件を満たしておらず、許容できない品質の悪化が生じていた。そのため、比較例1~10で得られた活性エネルギー線硬化型組成物は、求められる特性の全てを両立できず、実用上問題を有することが確認された。
【0122】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。