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特開2023-6479金属酸化物膜形成性組成物、及びこれを用いた金属酸化物膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006479
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】金属酸化物膜形成性組成物、及びこれを用いた金属酸化物膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 1/00 20060101AFI20230111BHJP
   C01G 25/02 20060101ALI20230111BHJP
   C01G 23/04 20060101ALI20230111BHJP
   C01G 27/02 20060101ALI20230111BHJP
   C01G 19/00 20060101ALI20230111BHJP
   C01B 13/14 20060101ALI20230111BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230111BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20230111BHJP
【FI】
C09D1/00
C01G25/02
C01G23/04 B
C01G27/02
C01G19/00 Z
C01B13/14 A
C09D7/63
C09D7/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109098
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
(72)【発明者】
【氏名】山内 賢一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 道仁
(72)【発明者】
【氏名】山之内 篤史
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
【テーマコード(参考)】
4G042
4G047
4G048
4J038
【Fターム(参考)】
4G042DA01
4G042DB28
4G042DC03
4G042DD04
4G047CA02
4G047CB06
4G047CB08
4G047CD03
4G048AA02
4G048AB02
4G048AB04
4G048AD03
4G048AE08
4J038AA011
4J038HA061
4J038JA06
4J038JA55
4J038KA06
4J038KA07
4J038KA09
4J038MA09
4J038NA09
4J038NA17
4J038PA19
4J038PB09
4J038PC02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】400℃以上での焼成によるひび割れが抑制され、かつ、優れたドライエッチング耐性を有する金属酸化物膜を与える金属酸化物膜形成性組成物、及びこれを用いた金属酸化物膜の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物は、下記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と、キャッピング剤で表面処理された金属酸化物ナノ粒子と、溶剤と、を含有する。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と、
キャッピング剤で表面処理された金属酸化物ナノ粒子と、
溶剤と、
を含有する金属酸化物膜形成性組成物。
【化1】
(式(1)中、
環Zは、芳香族炭化水素環を表し、
1a及びR1bは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルキル基を表し、
2a及びR2bは、それぞれ独立に、アルキル基を表し、
3a、R3b、R4a、R4b、R5a、及びR5bは、それぞれ独立に、炭素原子数1~8のアルキル基を表し、
k1及びk2は、それぞれ独立に、0以上4以下の整数を表し、
m1及びm2は、それぞれ独立に、0以上6以下の整数を表す。)
【請求項2】
カルボキシ基又はヒドロキシ基の保護基を有する芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と、
キャッピング剤で表面処理された金属酸化物ナノ粒子と、
溶剤と、
を含有する金属酸化物膜形成性組成物。
【請求項3】
前記芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物が、下記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物及び/又は下記式(2)で表されるオルガノオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物である請求項2に記載の金属酸化物膜形成性組成物。
【化2】
(式(1)中、
環Zは、芳香族炭化水素環を表し、
1a及びR1bは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルキル基を表し、
2a及びR2bは、それぞれ独立に、アルキル基を表し、
3a、R3b、R4a、R4b、R5a、及びR5bは、それぞれ独立に、炭素原子数1~8のアルキル基を表し、
k1及びk2は、それぞれ独立に、0以上4以下の整数を表し、
m1及びm2は、それぞれ独立に、0以上6以下の整数を表す。)
【化3】
(式(2)中、
環Z、R1a、R1b、R2a、R2b、k1、k2、m1、及びm2は、前記の通りであり、
及びRは、それぞれ独立に、下記式(4)、(5)、又は(6)で表される基である。)
【化4】
(式中、Q1B~Q4Bは水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基であり、更にQ1B~Q4Bから任意に選ばれる2個の置換基が結合して環状置換基を形成してもよい。Q5B~Q7Bは炭素原子数1~20のアルキル基であり、更にQ5B~Q7Bから任意に選ばれる2個の置換基が結合して更に環状置換基を形成してもよい。Q8B、Q9Bは炭素原子数1~20のアルキル基であり、更にQ8B、Q9Bが互いに結合して環状置換基を形成してもよい。)
【請求項4】
3a、R3b、R4a、R4b、R5a、及びR5bは、いずれもメチル基である請求項1又は3に記載の金属酸化物膜形成性組成物。
【請求項5】
前記金属酸化物ナノ粒子に含まれる金属は、亜鉛、イットリウム、ハフニウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、ネオジム、ガドリニウム、ホルミウム、ルテチウム、タンタル、チタン、ケイ素、アルミニウム、アンチモン、錫、インジウム、タングステン、銅、バナジウム、クロム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1から4のいずれか1項に記載の金属酸化物膜形成性組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の金属酸化物膜形成性組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜を加熱する加熱工程と、
を含む、金属酸化物膜の製造方法。
【請求項7】
前記加熱工程における加熱温度が400℃以上である請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記金属酸化物膜がメタルハードマスクである請求項6又は7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物膜形成性組成物、及びこれを用いた金属酸化物膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイス製造等におけるエッチング加工では、フォトレジストや電子線レジスト等のレジスト材料を被エッチング基体表面に塗布し、リソグラフィー技術によってパターン形成したレジスト膜をエッチングマスクとしてエッチングを行うことにより、被エッチング基体に所定のパターンを形成している。
【0003】
ここで、被エッチング基体のエッチングレートによっては、被エッチング基体に対するレジスト膜のエッチング選択性の問題から、レジスト膜がエッチングマスクとして十分に機能しない場合がある。このため、そのような被エッチング基体をエッチングする場合には、ハードマスクと称されるエッチングマスクを設け、被エッチング基体に対するエッチングマスクのエッチング選択性を高く維持することが行われている。ハードマスクとしては、例えば、酸化ジルコニウムナノ粒子等の金属酸化物ナノ粒子を含む金属酸化物膜からなるハードマスクが公知である(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020-503409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属酸化物ナノ粒子を含む従来の金属酸化物膜は、金属酸化物ナノ粒子を含む組成物からなる塗膜を加熱して形成される。本発明者らが検討したところ、従来の金属酸化物膜は、400℃以上での焼成、例えば、450℃での焼成によりひび割れやすく、又は、ドライエッチング耐性が十分でないことが判明した。
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、400℃以上での焼成によるひび割れが抑制され、かつ、優れたドライエッチング耐性を有する金属酸化物膜を与える金属酸化物膜形成性組成物、及びこれを用いた金属酸化物膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、所定の第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物等の、加熱により脱保護してカルボキシ基又はヒドロキシ基を生じる保護基を有する化合物と、キャッピング剤で表面処理された金属酸化物ナノ粒子と、溶剤と、を含有する金属酸化物膜形成性組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
本発明の第一の態様は、下記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と、
キャッピング剤で表面処理された金属酸化物ナノ粒子と、
溶剤と、
を含有する金属酸化物膜形成性組成物である。
【0009】
【化1】
(式(1)中、
環Zは、芳香族炭化水素環を表し、
1a及びR1bは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルキル基を表し、
2a及びR2bは、それぞれ独立に、アルキル基を表し、
3a、R3b、R4a、R4b、R5a、及びR5bは、それぞれ独立に、炭素原子数1~8のアルキル基を表し、
k1及びk2は、それぞれ独立に、0以上4以下の整数を表し、
m1及びm2は、それぞれ独立に、0以上6以下の整数を表す。)
【0010】
本発明の第二の態様は、カルボキシ基又はヒドロキシ基の保護基を有する芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と、
キャッピング剤で表面処理された金属酸化物ナノ粒子と、
溶剤と、
を含有する金属酸化物膜形成性組成物である。
【0011】
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に係る金属酸化物膜形成性組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜を加熱する加熱工程と、
を含む、金属酸化物膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、400℃以上での焼成によるひび割れが抑制され、かつ、優れたドライエッチング耐性を有する金属酸化物膜を与える金属酸化物膜形成性組成物、及びこれを用いた金属酸化物膜の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<金属酸化物膜形成性組成物>
本発明の第一の態様に係る金属酸化物膜形成性組成物は、式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と、キャッピング剤で表面処理された金属酸化物ナノ粒子と、溶剤と、を含有する。本発明の第二の態様に係る金属酸化物膜形成性組成物は、カルボキシ基又はヒドロキシ基の保護基を有する芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と、キャッピング剤で表面処理された金属酸化物ナノ粒子と、溶剤と、を含有する。本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物は、400℃以上での焼成によるひび割れが抑制され、かつ、優れたドライエッチング耐性を有する金属酸化物膜を与えることができる。
【0014】
本発明の第二の態様に係る金属酸化物膜形成性組成物において、前記芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物は、式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物及び/又は後述の式(2)で表されるオルガノオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物であってもよい。カルボキシ基又はヒドロキシ基の保護基としては、例えば、加熱により脱保護してカルボキシ基又はヒドロキシ基を生じる保護基が挙げられる。
【0015】
[式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物]
上記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記式(1)中、環Zが表す芳香族炭化水素環としては、特に限定されず、例えば、ナフタレン環又はベンゼン環が挙げられる。
【0017】
上記式(1)中、R1a及びR1bとしてのハロゲン原子の具体例としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
上記式(1)中、R1a及びR1bとしてのアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、及びtert-ブチル基等の炭素原子数1以上6以下のアルキル基が挙げられる。
1a及びR1bは、同一でも異なっていてもよい。
k1が2以上である場合、2以上のR1aは同一でも異なっていてもよく、k2が2以上である場合、2以上のR1bは同一でも異なっていてもよい。
k1及びk2は、それぞれ独立に、0以上4以下の整数であり、0又は1であることが好ましく、0であることが好ましい。
k1及びk2は、同一でも異なっていてもよい。
【0018】
上記式(1)中、R2a及びR2bとしてのアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、及びtert-ヘキシル基等の炭素原子数1以上18以下のアルキル基が挙げられ、炭素原子数1以上8以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましい。
2a及びR2bは、同一でも異なっていてもよい。
m1が2である場合、2つのR2aは同一でも異なっていてもよく、m2が2である場合、2つのR2bは同一でも異なっていてもよい。
m1及びm2は、それぞれ独立に、0以上6以下の整数であり、0以上3以下の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
m1及びm2は、同一でも異なっていてもよい。
【0019】
上記式(1)中、R3a、R3b、R4a、R4b、R5a、及びR5bが表す炭素原子数1~8のアルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が挙げられ、合成容易性及び安定性等の点で、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基等の炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基が更により好ましい。
【0020】
式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物としては、例えば、下記式(1-1)で表される第三級アルキルオキシカルボニル基変性ビスナフトールフルオレン化合物、下記式(1-2)で表される第三級アルキルオキシカルボニル基変性ビスフェノールフルオレン化合物等が挙げられる。なお、式(1-1)において、ナフタレン環に結合しているR2a、R2b、-O-CO-O-C(R3a)(R4a)(R5a)や-O-CO-O-C(R3b)(R4b)(R5b)は、ナフタレン環を構成する2個の六員環のうちフルオレン環に結合していない六員環に結合している。
【0021】
【化2】
(式中、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、R5a、R5b、k1、k2、m1、及びm2は、前記の通りである。)
【0022】
式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物の具体例は、以下の通りであるが、これに限定されるものではない。
【化3】
【0023】
[式(2)で表されるオルガノオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物]
下記式(2)で表されるオルガノオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【化4】
(式(2)中、
環Z、R1a、R1b、R2a、R2b、k1、k2、m1、及びm2は、前記の通りであり、
及びRは、それぞれ独立に、下記式(4)、(5)、又は(6)で表される基である。)
【化5】
(式中、Q1B~Q4Bは水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基であり、更にQ1B~Q4Bから任意に選ばれる2個の置換基が結合して環状置換基を形成してもよい。Q5B~Q7Bは炭素原子数1~20のアルキル基であり、更にQ5B~Q7Bから任意に選ばれる2個の置換基が結合して更に環状置換基を形成してもよい。Q8B、Q9Bは炭素原子数1~20のアルキル基であり、更にQ8B、Q9Bが互いに結合して環状置換基を形成してもよい。)
【0024】
上記式(4)中、Q1B~Q4Bが表す炭素原子数1~20のアルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-オクタデシル基、n-イコシル基等が挙げられ、合成容易性及び安定性等の点で、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基等の炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基及びエチル基が更により好ましい。
【0025】
1B~Q4Bから任意に選ばれる2個の置換基が結合して形成される環状置換基としては、例えば、シクロアルカン環、シクロアルケン環、又は橋かけ炭素環から2個又は3個の水素原子を除いて形成される基、芳香族炭化水素環から2個の水素原子を除いて形成される基等が挙げられる。
【0026】
上記式(5)中、Q5B~Q7Bが表す炭素原子数1~20のアルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-オクタデシル基、n-イコシル基等が挙げられ、合成容易性及び安定性等の点で、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基等の炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基及びエチル基が更により好ましい。
【0027】
5B~Q7Bから任意に選ばれる2個の置換基が結合して形成される環状置換基としては、例えば、シクロアルカン環、シクロアルケン環、又は橋かけ炭素環から2個の水素原子を除いて形成される基等が挙げられる。
【0028】
上記式(6)中、Q8B及びQ9Bが表す炭素原子数1~20のアルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-オクタデシル基、n-イコシル基等が挙げられ、合成容易性及び安定性等の点で、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基等の炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基及びエチル基が更により好ましい。
【0029】
8B、Q9Bが互いに結合して形成される環状置換基としては、例えば、環状エーテル化合物から1個の水素原子を除いて形成される基等が挙げられる。
【0030】
式(2)で表されるオルガノオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物としては、例えば、下記式(2-1)で表されるオルガノオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物、下記式(2-2)で表されるオルガノオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物等が挙げられる。なお、式(2-1)において、ナフタレン環に結合しているR2a、R2b、-O-Rや-O-Rは、ナフタレン環を構成する2個の六員環のうちフルオレン環に結合していない六員環に結合している。
【0031】
【化6】
(式中、R1a、R1b、R2a、R2b、R、R、k1、k2、m1、及びm2は、前記の通りである。)
【0032】
式(2)で表されるオルガノオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物の具体例は、以下の通りであるが、これらに限定されるものではない。
【化7】
【0033】
上記式(1)又は式(2)で表される芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物の使用量は特に限定されず、金属酸化物膜形成性組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、好ましくは1~95質量%(例えば、1~50質量%、2~70質量%)であり、より好ましくは2~40質量%(例えば、3~40質量%)である。上記式(1)又は式(2)で表される芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物の使用量が上記の範囲内であると、得られる金属酸化物膜は、400℃以上での焼成によるひび割れが抑制されやすく、かつ、ドライエッチング耐性が向上しやすい。
【0034】
(式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物の製造方法)
上記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物は、例えば、下記式(7)で表されるヒドロキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と下記式(8)で表される二炭酸ジ(第三級アルキル)化合物とを反応させることにより製造される。この反応は、例えば、塩基(例えば、トリエチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン等の有機塩基)の存在下、溶剤(例えば、ジクロロメタン等のアルキルハライド系溶剤、テトラヒドロ(THF)等のエーテル系溶剤、メタノール等のアルコール系溶剤)中で行ってもよい。
【化8】
(式中、Z、R1a、R1b、R2a、R2b、k1、k2、m1、及びm2は、前記の通りである。)
【化9】
(式中、R3a、R3b、R4a、R4b、R5a、及びR5bは、前記の通りである。)
【0035】
(式(2)で表されるオルガノオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物の製造方法)
及びRが上記式(4)で表される基である場合、上記式(2)で表されるオルガノオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物は、例えば、上記式(7)で表されるヒドロキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と下記式(4-1)で表される化合物とを、塩基(例えば、炭酸カリウム等の無機塩基)の存在下、溶剤(例えば、アセトン等のケトン系溶剤)中で反応させることにより、製造することができる。
【化10】
(式中、Xは、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を表し、Q1B~Q4Bは、前記の通りである。)
【0036】
及びRが上記式(5)で表される基である場合、上記式(2)で表されるオルガノオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物は、例えば、上記式(9)で表される含酸素基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と下記式(5-1)で表される化合物とを、触媒(例えば、濃硫酸等の酸触媒)の存在下、溶剤(例えば、ジクロロメタン等のアルキルハライド系溶剤)中で反応させることにより、製造することができる。
【化11】
(式中、Z、R1a、R1b、R2a、R2b、k1、k2、m1、m2、及びQ7Bは、前記の通りである。)
【化12】
(式中、Q5B及びQ6Bは、前記の通りである。)
【0037】
及びRが上記式(6)で表される基である場合、上記式(2)で表されるオルガノオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物は、例えば、上記式(7)で表されるヒドロキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と下記式(6-1)で表される化合物とを、触媒(例えば、p-トルエンスルホン酸等の酸触媒)の存在下、溶剤(例えば、ジエチルエーテル等のエーテル系溶剤)中で反応させることにより、製造することができる。
【化13】
(式中、Q8B及びQ9Bは、前記の通りである。)
【0038】
[キャッピング剤で表面処理された金属酸化物ナノ粒子]
金属酸化物膜形成性組成物は、キャッピング剤で表面処理された金属酸化物ナノ粒子を含む。キャッピング剤で表面処理された金属酸化物ナノ粒子は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。金属酸化物膜形成性組成物が、キャッピング剤で表面処理された金属酸化物ナノ粒子を含有すると、得られる金属酸化物膜は、400℃以上での焼成によるひび割れが抑制されやすく、ドライエッチング耐性が向上しやすい。
【0039】
金属酸化物ナノ粒子の平均粒子径は、好ましくは5nm以下であり、より好ましくは4nm以下であり、更により好ましくは3nm以下である。金属酸化物ナノ粒子の平均粒子径の下限は、特に限定されず、例えば、0.5nm以上でよく、1nm以上でも2nm以上でもよい。金属酸化物ナノ粒子の平均粒子径が上記範囲内であると、得られる金属酸化物膜は、400℃以上での焼成によるひび割れがより抑制されやすく、ドライエッチング耐性がより向上しやすい。本明細書において、金属酸化物ナノ粒子の平均粒子径とは、Malvern Zetasizer Nano S等の動的光散乱(DLS)装置により測定された値をいう。
【0040】
金属酸化物ナノ粒子に含まれる金属としては、特に限定されず、例えば、亜鉛、イットリウム、ハフニウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、ネオジム、ガドリニウム、ホルミウム、ルテチウム、タンタル、チタン、ケイ素、アルミニウム、アンチモン、錫、インジウム、タングステン、銅、バナジウム、クロム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、マグネシウムが挙げられ、製膜性、安定性等の観点から、ハフニウム、ジルコニウム、チタン、及び錫が好ましく、ジルコニウムがより好ましい。上記金属は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
金属酸化物ナノ粒子は、金属原子と酸素原子とからなるものであってもよいし、金属原子と酸素原子と金属原子及び酸素原子以外の原子とからなるものであってもよい。金属原子及び酸素原子以外の原子としては、例えば、窒素原子が挙げられる。よって、金属酸化物ナノ粒子は、金属酸化物からなるものであっても、金属酸窒化物等からなるものであってもよい。
【0042】
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物において、金属酸化物ナノ粒子の表面の一部又は全部は、キャッピング剤に覆われているものと推測される。キャッピング剤は、アルコキシシラン、フェノール、アルコール、カルボン酸、及びカルボン酸ハライドからなる群から選択される少なくとも1種を含む。本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物において、金属酸化物ナノ粒子がキャッピング剤で表面処理されていると、金属酸化物ナノ粒子は、溶剤への分散性が安定しやすく、また、得られる金属酸化物膜は、400℃以下の低温での加熱において体積収縮が抑制されやすい。
【0043】
キャッピング剤の具体例としては、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリエトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリエトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェネチルフェニルトリメトキシシラン、フェネチルエチルトリエトキシシラン、3-{2-メトキシ[ポリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリメトキシシラン、3-{2-メトキシ[ポリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリエトキシシラン、3-{2-メトキシ[トリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリメトキシシラン、3-{2-メトキシ[トリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、1-ヘキセニルトリメトキシシラン,1-ヘキセニルトリエトキシシラン、1-オクテニルトリメトキシシラン、1-オクテニルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;フェノール等のフェノール類;エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、n-ヘプタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、n-ドデシルアルコール、n-オクタデカノール、ベンジルアルコール、及びトリエチレングリコールモノメチルエーテル等の不飽和基非含有アルコール類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、オレイルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、及び3-アリルオキシプロパノール等の不飽和基含有アルコール類;オクタン酸、酢酸、プロピオン酸、2-[2-(メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、オレイン酸、ラウリン酸、安息香酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸等の酸類;及びこれらの酸類の酸クロライド等の、これらの酸類の酸ハライド類が挙げられ、好ましくは、アルコキシシラン、不飽和基含有アルコール類、又は酸類として挙げた化合物である。
【0044】
金属酸化物ナノ粒子をキャッピング剤で表面処理する際のキャッピング剤の使用量は特に限定されない。好ましくは、金属酸化物ナノ粒子の表面のヒドロキシ基のほぼ全てと反応するのに十分な量のキャッピング剤が使用される。
【0045】
金属酸化物膜形成性組成物中の金属酸化物ナノ粒子の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、金属酸化物膜形成性組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、5質量%以上99質量%以下が好ましく、30質量%以上98質量%以下がより好ましく、60質量%以上97質量%以下が更により好ましい。当該含有量が上記の範囲内であると、得られる金属酸化物膜は、400℃以上での焼成によるひび割れがより抑制されやすく、ドライエッチング耐性がより向上しやすい。なお、金属酸化物ナノ粒子の上記含有量は、金属酸化物ナノ粒子の表面に存在するキャッピング剤の含有量を含む。
【0046】
[溶剤]
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物は、塗布性や粘度の調整の目的で、溶剤を含有する。溶剤としては、典型的には有機溶剤が用いられる。有機溶剤の種類は、金属酸化物膜形成性組成物に含まれる成分を均一に溶解又は分散させることができれば、特に限定されない。
【0047】
溶剤として使用し得る有機溶剤の好適な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチル部炭酸メチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0048】
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物における溶剤の使用量は特に限定されない。金属酸化物膜形成性組成物の塗布性の点等から、溶剤の使用量は、金属酸化物膜形成性組成物全体に対して、例えば、30~99.9質量%であり、好ましくは50~98質量%である。
【0049】
[界面活性剤]
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物は、塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させるため、更に界面活性剤(表面調整剤)を含有してもよい。界面活性剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0050】
シリコーン系界面活性剤としては、具体的には、BYK-077、BYK-085、BYK-140,BYK-145、BYK-180、BYK-161、BYK-162、BYK-164、BYK-167、BYK-300、BYK-301、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-335、BYK-341、BYK-344、BYK-345、BYK-346、BYK-348、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358、BYK-361、BYK-370、BYK-371、BYK-375、BYK-380、BYK-390、BYK-2050、BYK-2055、BYK-2015、BYK-9077(BYK Chemie社製)等が挙げられる。
【0051】
フッ素系界面活性剤としては、具体的には、F-114、F-177、F-410、F-411、F-450、F-493、F-494、F-443、F-444、F-445、F-446、F-470、F-471、F-472SF、F-474、F-475、F-477、F-478、F-479、F-480SF、F-482、F-483、F-484、F-486、F-487、F-172D、MCF-350SF、TF-1025SF、TF-1117SF、TF-1026SF、TF-1128、TF-1127、TF-1129、TF-1126、TF-1130、TF-1116SF、TF-1131、TF-1132、TF-1027SF、TF-1441、TF-1442(DIC社製);ポリフォックスシリーズのPF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520(オムノバ社製)等が挙げられる。
【0052】
界面活性剤の使用量は特に限定されず、金属酸化物膜形成性組成物の塗布性、消泡性、レベリング性の点等から、金属酸化物膜形成性組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、例えば、0.01~2質量%であり、好ましくは0.05~1質量%である。
【0053】
[その他の成分]
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物には、必要に応じて、分散剤、熱重合禁止剤、消泡剤、シランカップリング剤、着色剤(顔料、染料)、無機フィラー、有機フィラー、架橋剤、酸発生剤等の添加剤を含有させることができる。いずれの添加剤も、従来公知のものを用いることができる。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の化合物が挙げられ、熱重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル等が挙げられ、消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0054】
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と、キャッピング剤で表面処理された金属酸化物ナノ粒子と、溶剤と、任意に界面活性剤と、任意にその他の成分とを均一に混合する方法が挙げられる。
【0055】
<金属酸化物膜の製造方法>
本発明に係る金属酸化物膜の製造方法は、本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記塗膜を加熱する加熱工程と、を含む。
【0056】
前記塗膜は、例えば、半導体基板等の基板上に金属酸化物膜形成性組成物を塗布することにより、形成することができる。塗布方法としては、ロールコータ、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置、スピンコーター)、ディップコーター、スプレーコーター、スリットコーター、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いる方法が挙げられる。また、金属酸化物膜形成性組成物の粘度を適切な範囲に調整したうえで、インクジェット法、スクリーン印刷法等の印刷法によって金属酸化物膜形成性組成物の塗布を行って、所望の形状にパターニングされた塗膜を形成してもよい。
【0057】
基板としては、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、又は金属酸化窒化膜を含むものであることが好ましい。前記基板を構成する金属は、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、モリブデン、又はこれらの合金等が挙げられるが、ケイ素、ゲルマニウム、ガリウムを含むことが好ましい。また、基板表面は凹凸形状を有していてもよく、凹凸形状はパターン化された有機系材料であってもよい。
【0058】
次いで、必要に応じて、溶剤等の揮発成分を除去して塗膜を乾燥させる。乾燥方法は特に限定されず、例えば、ホットプレートにて80℃以上140℃以下、好ましくは90℃以上130℃以下の温度にて60秒以上150秒以下の範囲内の時間乾燥する方法が挙げられる。ホットプレートによる加熱の前に、真空乾燥装置(VCD)を用いて室温にて減圧乾燥を行ってもよい。
【0059】
このようにして塗膜を形成した後、塗膜を加熱する。加熱を行う際の温度は特に限定されず、400℃以上が好ましく、420℃以上がより好ましく、430℃以上が更により好ましい。上限は適宜設定すればよく、例えば、600℃以下でよく、ドライエッチングの際のエッチングレート制御の点又は面内均一性の点で、好ましくは550℃以下である。加熱時間は、典型的には、30秒以上150秒以下が好ましく、60秒以上120秒がより好ましい。加熱工程は、単一の加熱温度下で行うものであってもよいし、加熱温度の異なる複数段階からなるものであってもよい。
【0060】
加熱工程においては、以下のメカニズムにより、400℃以上での焼成によるひび割れが抑制された金属酸化物膜が形成されると推測される。加熱開始後、加熱温度が約180~約220℃に達した段階で、式(1)又は式(2)で表される芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物から、第三級アルキルオキシカルボニル基等の保護基に相当する部分が脱離して、式(7)で表されるヒドロキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物又は式(7)におけるヒドロキシ基がオキシカルボキシ基で置換された構造を有するカルボキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物が生成すると推測され、その結果、保護基脱離後の芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と金属酸化物ナノ粒子の表面との間に架橋等の相互作用が生じると推測される。よって、例えば、400℃以上の更なる加熱でキャッピング剤の脱離が生じても、上述の相互作用による影響で、ひび割れが抑制された金属酸化物膜が形成されると推測される。一方、加熱による脱保護を伴わないポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等の他の有機成分を用いた場合、加熱途中で上述の架橋等の相互作用が生じないまま当該有機成分が消失するため、400℃以上での焼成によるひび割れが観察されると推測される。
【0061】
以上のように形成される金属酸化物膜は、例えば、メタルハードマスク又はパターン反転用材料として好適に利用される。
【実施例0062】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
[金属酸化物膜形成性組成物の調製]
(有機成分)
・BNF-B:下記式1-Aで表される変性ビスナフトールフルオレン化合物
下記3-Aで表されるビスナフトールフルオレンと下記式4-Aで表される二炭酸ジ-tert-ブチルとを、N,N-ジメチル-4-アミノピリジンの存在下、ジクロロメタン中で反応させて、下記式1-Aで表される変性ビスナフトールフルオレン化合物を得た。
【0064】
・BPF-B:下記式1-Bで表される変性ビスフェノールフルオレン化合物
下記3-Bで表されるビスフェノールフルオレンと下記式4-Aで表される二炭酸ジ-tert-ブチルとを、N,N-ジメチル-4-アミノピリジンの存在下、ジクロロメタン中で反応させて、下記式1-Bで表される変性ビスフェノールフルオレン化合物を得た。
【0065】
・PMMA:ポリメタクリル酸メチル(重量平均分子量:10000)
・Pst:ポリスチレン(重量平均分子量:10000)
・PDA-TPA:p-フェニレンジアミンと-テレフタル酸との重縮合により得られる芳香族ポリアミド系樹脂(重量平均分子量:10000)
・BNF:下記式3-Aで表されるビスナフトールフルオレン
【0066】
【化14】
【0067】
(金属酸化物ナノ粒子)
・ZrO粒子1:キャッピング剤HOAで表面処理されたZrO粒子
特開2018-193481号公報の段落[0223]の記載に基づき、室温まで冷却して得たZrOのスラリーを遠心分離しウェットケーキAを得た。ウェットケーキAの質量の0.3倍の2-ヒドロキシエチルアクリレート(「共栄社化学(株)製、HOA(商品名);以下、単に「HOA」ともいう。)をキャッピング剤としてウェットケーキAに加えて撹拌した。再沈殿後、遠心分離によりウェットケーキBを得た。ウェットケーキBを一晩減圧乾燥し、粉末として、キャッピング剤HOAで表面処理されたZrO粒子(平均粒子径2.5nm)を得た。
【0068】
・ZrO粒子2:キャッピング剤A-SAで表面処理されたZrO粒子
キャッピング剤として、上記HOAの代わりに、ウェットケーキAの質量の0.2倍の2-アクリロイルオキシエチルコハク酸(下記式参照;以下、単に「A-SA」ともいう。)を用いた以外は、ZrO粒子1の場合と同様にして、粉末として、キャッピング剤A-SAで表面処理されたZrO粒子(平均粒子径2.5nm)を得た。
【0069】
【化15】
【0070】
・ZrO粒子3:シラン系化合物からなるキャッピング剤で表面処理されたZrO粒子
特開2018-193481号公報の段落[0223]の記載に基づき、シラン系化合物からなるキャッピング剤で表面処理されたナノ結晶をウェットケーキの形態で得た。このナノ結晶を一晩減圧乾燥し、粉末として、シラン系化合物からなるキャッピング剤で表面処理されたZrO粒子(平均粒子径8nm)を得た。
【0071】
・TiO粒子1:キャッピング剤HOAで表面処理されたTiO粒子
Ti(OiPr)を出発原料として用い、ZrO粒子1の場合と同様の手法で、ZrOのスラリーに代えて、TiOのスラリーを得た。このスラリーを遠心分離しウェットケーキCを得た。ウェットケーキCの質量の0.3倍のHOAをキャッピング剤としてウェットケーキCに加えて撹拌した。再沈殿後、遠心分離によりウェットケーキDを得た。ウェットケーキDを一晩減圧乾燥し、粉末として、キャッピング剤HOAで表面処理されたTiO粒子(平均粒子径3.0nm)を得た。
【0072】
・HfO粒子1:キャッピング剤HOAで表面処理されたHfO粒子
Hf(OiPr)を出発原料として用い、ZrO粒子1の場合と同様の手法で、ZrOのスラリーに代えて、HfOのスラリーを得た。このスラリーを遠心分離しウェットケーキEを得た。ウェットケーキEの質量の0.3倍のHOAをキャッピング剤としてウェットケーキEに加えて撹拌した。再沈殿後、遠心分離によりウェットケーキFを得た。ウェットケーキFを一晩減圧乾燥し、粉末として、キャッピング剤HOAで表面処理されたHfO粒子(平均粒子径3.0nm)を得た。
【0073】
・SnO粒子1:キャッピング剤HOAで表面処理されたSnO粒子
Sn(OBt)を出発原料として用い、ZrO粒子1の場合と同様の手法で、ZrOのスラリーに代えて、SnOのスラリーを得た。このスラリーを遠心分離しウェットケーキGを得た。ウェットケーキGの質量の0.3倍のHOAをキャッピング剤としてウェットケーキGに加えて撹拌した。再沈殿後、遠心分離によりウェットケーキHを得た。ウェットケーキHを一晩減圧乾燥し、粉末として、キャッピング剤HOAで表面処理されたSnO粒子(平均粒子径3.0nm)を得た。
【0074】
(溶剤)
・PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0075】
表1に示す種類及び割合(単位:質量部)で、有機成分、金属酸化物ナノ粒子、及び溶剤を混合及び撹拌し、Φ0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、組成物を得た。
【0076】
[金属酸化物膜の作製]
6インチのシリコンウェハ上に組成物を滴下し、スピンコートを行った。その後、ホットプレートを用い、100℃で120秒間、プリベークを行い、450℃で90秒間、ポストベークを行って、膜厚30nm程度の金属酸化物膜を得た。なお、膜厚は、金属酸化物膜の断面をSEMで観察することで測定した。
【0077】
[ひび割れの評価]
金属酸化物膜の表面をSEMで観察し、ひび割れに関し下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
+(良好):金属酸化物膜の表面にひび割れが発生しなかった。
-(不良):金属酸化物膜の表面にひび割れが発生した。
【0078】
[ドライエッチングレートの評価]
金属酸化物膜に対して、東京応化工業(株)製TCA-2400を用い、圧力:66.6Pa、出力:300W、Oガス:200mL/minにて3分エッチングを行って、ドライエッチングレートを測定し、ドライエッチングレートを下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
+(良好):ドライエッチングレートが25nm/分以下であった。
-(不良):ドライエッチングレートが25nm/分超であった。
【0079】
[成膜性の評価]
金属酸化物膜の表面をSEMで観察し、成膜性を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
+(良好):金属酸化物膜の表面に凹凸が発生しなかった。
-(不良):金属酸化物膜の表面に凹凸が発生した。
【0080】
【表1】
【0081】
表1から分かる通り、実施例の金属酸化物膜は、400℃以上での焼成によるひび割れが抑制され、かつ、優れたドライエッチング耐性を有するのに対し、比較例の金属酸化物膜は、400℃以上での焼成によるひび割れが抑制されず、又は、ドライエッチング耐性に劣ることが確認された。