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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064797
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】チューブステント
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20230502BHJP
   A61F 2/02 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A61M1/00 160
A61F2/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175142
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】品川 裕希
【テーマコード(参考)】
4C077
4C097
【Fターム(参考)】
4C077AA20
4C077EE04
4C077EE06
4C077FF04
4C077FF06
4C077GG10
4C077JJ05
4C077JJ13
4C077KK25
4C077PP08
4C097AA14
4C097CC06
4C097DD02
4C097EE02
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で適切な開通状態を実現し、特にチューブステントを留置する消化器組織壁が薄い場合に、優れたマイグレーション防止効果を有するチューブステントを提供する。
【解決手段】本発明に係るチューブステント1は、可撓性のチューブ部材からなるチューブステントであって、略直線形状を有する直胴部11と、直胴部11の両端にそれぞれ連通された、少なくとも一部が湾曲形状を有する一対のテール部21、31と、により構成されている。一対のテール部21、31は、消化器組織壁に接触する接触部22、23をそれぞれ有しており、接触部22、23同士の直胴部11の軸方向における離隔距離が3cm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のチューブ部材からなるチューブステントであって、
略直線形状を有する直胴部と、
前記直胴部の両端にそれぞれ連通された、少なくとも一部が湾曲形状を有する一対のテール部と、
により構成されており、
前記一対のテール部が消化器組織壁に接触する接触部をそれぞれ有しており、前記接触部同士の前記直胴部の軸方向における離隔距離が3cm以下であることを特徴とするチューブステント。
【請求項2】
前記一対のテール部は、前記接触部同士が前記直胴部の軸方向において対向するようにそれぞれ湾曲していることを特徴とする請求項1に記載のチューブステント。
【請求項3】
前記一対のテール部において湾曲形状によりそれぞれ形成される面が略同一面となることを特徴とする請求項1または2に記載のチューブステント。
【請求項4】
前記一対のテール部の少なくとも一方の側面に1つまたは複数の側孔が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のチューブステント。
【請求項5】
前記1つまたは複数の側孔が、当該チューブステント内を流動する流体の上流側に配置されるテール部の側面に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のチューブステント。
【請求項6】
前記一対のテール部の少なくとも一方の開放端側に、当該チューブステントのチューブ構造を延長させる延長部が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のチューブステント。
【請求項7】
前記延長部が、前記延長部の側面に1つまたは複数の側孔が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のチューブステント。
【請求項8】
前記一対のテール部の少なくとも一方の前記接触部が、消化器組織壁に沿って略直線状に延びていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のチューブステント。
【請求項9】
前記一対のテール部の両方の前記接触部が、消化器組織壁に沿って略直線状にそれぞれ延びていることを特徴とする請求項8に記載のチューブステント。
【請求項10】
前記一対のテール部の少なくとも一方が、前記直胴部の軸周りに湾曲していることを特徴とする請求項1または2に記載のチューブステント。
【請求項11】
前記一対のテール部の両方が、前記直胴部の軸周りにそれぞれ湾曲していることを特徴とする請求項10に記載のチューブステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化器組織壁を貫通して流体を流通させるために、消化管等の消化器組織内に留置されるチューブステントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、経内視鏡的にチューブステントを留置させて体腔から流体を排出するドレナージ(ステント留置術)が一般的に行われている。ステント留置術において用いられるチューブステントとしては、例えば下記の特許文献1および特許文献2に開示されているように、様々な形状に成形されたチューブステントが知られている。
【0003】
特許文献1には、ルーメンが貫通して画定されている略管状の本体を有するステントが開示されている。ステントの本体は、括約筋よりも近位に設置するように構成された湾曲部分を有する近位部分を有している。ステント本体は、さらに、保定部材を近位端から外向きに延ばしている遠位部分を含んでいる。保定部材は、括約筋よりも遠位に設置されて括約筋に係合するように構成されている。
【0004】
特許文献2には、少なくとも一端が円弧の少なくとも一部からなるステント円弧部を具える複数のチューブステントが開示されている。
【0005】
特許文献1および特許文献2に代表されているように、従来のチューブステントとして、ステント端部の少なくとも一方または両方が湾曲したピッグテール形状を有するピッグテール型ステントが知られている。従来の一般的なピッグテール型ステントは、ステント端部のピッグテール形状は、ステントの位置ずれや抜け落ちを防ぐマイグレーション(移動)防止効果を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2013-521868号公報
【特許文献2】特開2015-8862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のピッグテール型ステントは、ピッグテール形状のステント両端部の離隔距離が5~15cm程度に設定されている。従来のピッグテール型ステントは、ステント端部それぞれのずれや抜け落ちを防止する役割を有しているものの、特にチューブステントを留置する消化器組織壁が薄い場合には、チューブステントが貫通方向に移動したりステント端部が動揺したりする等、ステントの留置が不安定になるという問題があった。
【0008】
上記の課題に鑑みて、本発明は、簡易な構成で適切な開通状態を実現し、特にチューブステントを留置する消化器組織壁が薄い場合に、優れたマイグレーション防止効果を有するチューブステントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係るチューブステントは、可撓性のチューブ部材からなるチューブステントであって、略直線形状を有する直胴部と、前記直胴部の両端にそれぞれ連通された、少なくとも一部が湾曲形状を有する一対のテール部と、により構成されており、前記一対のテール部が消化器組織壁に接触する接触部をそれぞれ有しており、前記接触部同士の前記直胴部の軸方向における離隔距離が3cm以下である。
【0010】
この構成により、チューブステントの両端に位置する一対のテール部の接触部が消化器組織壁を挟み込むように接触するため、特にチューブステントを留置する消化器組織壁が薄い場合に、チューブステントの移動を規制してマイグレーション防止効果を向上させることができる。また、この構成により、一対のテール部が異なる消化器組織内に配置された際に、当該異なる消化器組織同士を近接させることができ、異なる消化器組織壁同士の癒着を促進させることもできる。
【0011】
本発明に係るチューブステントにおいて、前記一対のテール部は、前記接触部同士が前記直胴部の軸方向において対向するようにそれぞれ湾曲していてもよい。
【0012】
この構成により、接触部が消化器組織壁の同一箇所を挟み込むことができるため、マイグレーション防止効果をより向上させることができるとともに、異なる消化器組織同士を近接させる効果および癒着させる効果も向上させることができる。
【0013】
本発明に係るチューブステントは、前記一対のテール部において湾曲形状によりそれぞれ形成される面が略同一面となっていてもよい。
【0014】
この構成により、接触部が消化器組織壁の同一箇所を挟み込むことができるため、マイグレーション防止効果をより向上させることができるとともに、異なる消化器組織同士を近接させる効果および癒着させる効果も向上させることができる。
【0015】
本発明に係るチューブステントは、前記一対のテール部の少なくとも一方の側面に1つまたは複数の側孔が設けられていてもよい。
【0016】
この構成により、チューブステントにおいて流入および流出する流体量を増加させて、チューブステントによるドレナージ効果を向上させることができる。
【0017】
本発明に係るチューブステントは、前記1つまたは複数の側孔が、当該チューブステント内を流動する流体の上流側に配置されるテール部の側面に設けられていてもよい。
【0018】
この構成により、チューブステントへの流体の効率的な流入を実現することができ、チューブステントによるドレナージ効果を顕著に向上させることができる。
【0019】
本発明に係るチューブステントは、前記一対のテール部の少なくとも一方の開放端側に、当該チューブステントのチューブ構造を延長させる延長部が設けられていてもよい。
【0020】
この構成により、延長部を利用してチューブステントを安定させたり、延長部を利用してチューブステントによるドレナージ効果を向上させたりすることが可能となる。
【0021】
本発明に係るチューブステントは、前記延長部の側面に1つまたは複数の側孔が設けられていてもよい。
【0022】
この構成により、チューブステントにおける流体の流入および流出の効率化ならびに流体量の増加を実現することができ、チューブステントによるドレナージ効果を顕著に向上させることができる。
【0023】
本発明に係るチューブステントは、前記一対のテール部の少なくとも一方の前記接触部が、消化器組織壁に沿って略直線状に延びていてもよい。
【0024】
この構成により、一対のテール部の少なくとも一方の接触部が消化器組織壁に接触する面積を大きくすることができ、マイグレーション防止効果をより向上させることができるとともに、異なる消化器組織同士を近接させる効果および癒着させる効果も向上させることができる。
【0025】
本発明に係るチューブステントは、前記一対のテール部の両方の前記接触部が、消化器組織壁に沿って略直線状にそれぞれ延びていてもよい。
【0026】
この構成により、一対のテール部の両方の接触部が消化器組織壁に接触する面積を大きくすることができ、マイグレーション防止効果をより向上させることができるとともに、異なる消化器組織同士を近接させる効果および癒着させる効果も向上させることができる。
【0027】
本発明に係るチューブステントは、前記一対のテール部の少なくとも一方が、前記直胴部の軸周りに湾曲していてもよい。
【0028】
この構成により、一対のテール部の少なくとも一方の接触部が消化器組織壁に接触する面積を大きくすることができ、マイグレーション防止効果をより向上させることができるとともに、異なる消化器組織同士を近接させる効果および癒着させる効果も向上させることができる。
【0029】
本発明に係るチューブステントは、前記一対のテール部の両方が、前記直胴部の軸周りにそれぞれ湾曲していてもよい。
【0030】
この構成により、前記一対のテール部の両方の接触部が消化器組織壁に接触する面積を大きくすることができ、マイグレーション防止効果をより向上させることができるとともに、異なる消化器組織同士を近接させる効果および癒着させる効果も向上させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、簡易な構成で適切な開通状態を実現し、特にチューブステントを留置する消化器組織壁が薄い場合に、優れたマイグレーション防止効果を有するチューブステントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態におけるチューブステントの一例を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態におけるチューブステントを胆管に留置させるためのチューブステントデリバリ装置の一例を示す平面図である。
図3図2に示すチューブステントデリバリ装置のインナーカテーテルを示す平面図である。
図4図2に示すチューブステントデリバリ装置のアウターカテーテルを示す平面図である。
図5】本発明の実施形態におけるチューブステントが胆嚢と十二指腸とを繋ぐように留置された状態を示す模式図である。
図6】本発明の実施形態におけるチューブステントが胆嚢と十二指腸とを繋ぐように留置された状態をより詳細に示す模式図である。
図7図6に示すチューブステントを抜去した状態を示す模式図である。
図8】本発明の実施形態におけるチューブステントの第1派生例を示す斜視図である。
図9】本発明の実施形態におけるチューブステントの第2派生例を示す斜視図である。
図10】本発明の実施形態におけるチューブステントの第3派生例を示す斜視図である。
図11】本発明の実施形態におけるチューブステントの第4派生例を示す斜視図である。
図12】本発明の実施形態におけるチューブステントの第5派生例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態におけるチューブステントについて説明
する。
【0034】
本発明に係るチューブステントは、消化器組織壁を貫通して流体(液体または気体)を流通させるため、消化管等の消化器組織内に、比較的薄い消化器組織壁を貫通するように留置される。一例として、本発明に係るチューブステントは、胆管結石または胆嚢結石により胆管または胆嚢管に詰まりが生じた場合等に胆嚢と十二指腸とを繋いで胆汁を流通させるステント、膵臓にできた膵嚢胞と胃とを繋いで膵嚢胞内の流体を胃へ流通させるステント、腹腔と胃とを繋いで腹腔に溜まった腹水を胃へ排出させるステント、胃または十二指腸が閉塞または狭窄した場合等に胃と十二指腸とを繋いで胃を減圧させるとともに胃から十二指腸へ流体を流通させるステントとして用いることができる。本発明に係るチューブステントは、体内に貯留した液体の排出または減圧等を目的としたドレナージに適用することができる。
【0035】
図1は、本発明の実施形態におけるチューブステントの一例を示す斜視図である。図1に示すチューブステント1は、例えばポリエチレン等の樹脂を材料とした可撓性のチューブ部材からなる。チューブステント1は、チューブ部材を所定の形状に成形および加工することによって作製されており、直胴部11を介して一対のテール部21、31が接続された構成を有している。より詳細には、図1に示すチューブステント1は、略直線形状を有する直胴部11と、直胴部11の両端にそれぞれ連通された、少なくとも一部が湾曲形状を有する一対のテール部21、31と、を概略備えて構成されている。
【0036】
なお、以下では、直胴部11の軸方向をチューブステント1の長手方向と記載することがある。また、以下では、体内に留置された際にチューブステント1内を流動する流体の流動方向を基準として、テール部21が上流側に配置され、テール部31が下流側に配置されるものとする。例えば、チューブステント1が胆嚢と十二指腸とを繋いで胆汁を流通させるステントである場合、テール部21が胆嚢内(胆汁の上流側)に配置され、テール部31が十二指腸内(胆汁の下流側)に配置される。
【0037】
直胴部11は、チューブステント1を構成する可撓性のチューブ部材において長手方向に延在するチューブステント1の中央部である。直胴部11は略直線形状を有している。
【0038】
略直線形状とは、外部から負荷がかからない自然状態において略直線となることを表しており、より詳細には、例えば、チューブ部材内の管腔の略中心軸が略直線となることを表している。
【0039】
チューブステント1が体内に留置された際、直胴部11は消化器組織の壁面である消化器組織壁を貫通するように配置される。例えば、チューブステント1が胆嚢と十二指腸とを繋ぐステントの場合には、直胴部11は、胆嚢壁および十二指腸壁を貫通するように配置される。
【0040】
テール部21、31は、チューブステント1を構成する可撓性のチューブ部材の端部にそれぞれ位置している。テール部21、31は、少なくとも一部が湾曲した形状となるように成形されており、例えばピッグテール型またはαループ型と呼ばれる形状となるように成形されていてもよい。テール部21、31の大きさは特に限定されないが、テール部21、31により形成される輪環の外径は通常1cm程度である。
【0041】
湾曲形状とは、外部から負荷がかからない自然状態において湾曲していることを表しており、より詳細には、例えば、チューブ部材内の管腔の略中心軸が曲線となることを表している。
【0042】
テール部21、31は、略同一曲率で湾曲した形状(略真円形状)であってもよく、一部のみが湾曲した形状または部分的に異なる曲率で湾曲した形状であってもよい。また、図1に示すチューブステント1では、テール部21、31が直胴部11を挟んで対称となる同一の形状に成形されているが、テール部21、31は互いに異なる形状であってもよい。
【0043】
図1に示すチューブステント1では、テール部21、31において湾曲形状によりそれぞれ形成される面(テール部21、31の中間部が作る弧を含んだ面;以下、ループ面と記載)がそれぞれ略平面に含まれるように構成されている。ただし、チューブ部材がループ面に対して垂直方向に移動しながら湾曲した形状(螺旋状)であってもよい。また、図1に示すチューブステント1では、テール部21、31が直胴部11を挟んで対称な形状となるように巻回しており、テール部21、31のループ面が略同一面となるように構成されている。ただし、テール部21、31のループ面がそれぞれ異なる面となるように構成されていてもよい。
【0044】
テール部21、31は、直胴部11側へと戻るように湾曲している。テール部21の少なくとも一部は、直胴部11の軸方向に関して直胴部11との接続位置P1(直胴部11のテール部21側の端部)よりも直胴部11の中央側に位置していることが好ましい。同様に、テール部31の少なくとも一部は、直胴部11の軸方向に関して直胴部11との接続位置P2(直胴部11のテール部31側の端部)よりも直胴部11の中央側に位置していることが好ましい。
【0045】
テール部21、31は、テール部21、31の直胴部11の中央側に位置する領域(図1の網掛け領域)に接触部22、32をそれぞれ有している。チューブステント1が体内に留置された際、テール部21、31は消化器組織壁を挟んだ位置に配置され、テール部21、31の内側に位置する接触部22、32は、テール部21、31は消化器組織壁にそれぞれ接触するようになっている。
【0046】
接触部22、32は、外部から負荷がかからない自然状態において隣接するように構成されている。具体的には、直胴部11の軸方向における接触部22、32同士の離隔距離Dは、外部から負荷がかからない自然状態において3cm以下となるように設定される。
【0047】
なお、チューブステント1の用途に応じて接触部22、32同士の離隔距離Dは、適宜設定されてもよい。例えば本実施形態におけるチューブステント1を胆嚢と十二指腸とを繋ぐステントとして用いる場合には、テール部21、31は、胆嚢壁および十二指腸壁を挟んだ位置に配置される。胆嚢壁および十二指腸壁は比較的薄く、接触部22、32同士の離隔距離Dが2~3mm以下となるように設定されてもよい。また、例えば本実施形態におけるチューブステント1を膵嚢胞と胃とを繋ぐステント、腹腔と胃とを繋ぐステント、胃と十二指腸とを繋ぐステントとして用いる場合には、最大約1cm程度の胃壁の厚さに合わせて、接触部22、32同士の離隔距離Dが1cm以下となるように設定されてもよい。
【0048】
接触部22、32同士の離隔距離Dは、外部から負荷がかからない自然状態において接触するように(すなわち離隔距離Dがゼロとなるように)設定されてもよい。さらには、外部から負荷がかからない自然状態においてテール部21、31同士が交差し、テール部21の接触部22がテール部31の接触部32よりも接続位置P2(直胴部11のテール部31側の端部)に近い位置に配置され、テール部31の接触部32がテール部21の接触部22よりも接続位置P1(直胴部11のテール部21側の端部)に近い位置に配置されるようにしてもよい。テール部21、31同士が交差した状態では、接触部22と接触部32との離隔距離Dが1cm以下であることが好ましい。なお、テール部21、31同士が交差した状態を離隔距離Dがマイナスになると表現することができ、本実施形態における離隔距離Dの好適な範囲は、-1cm以上であり3cm以下であると表現することができる。
【0049】
テール部21およびテール部31は、少なくとも一部が湾曲した形状にくせ付けされている。外部から負荷がかからない自然状態において、テール部21の接触部22とテール部31の接触部32とは離隔距離Dだけ離れているが、この離隔距離Dが変化した場合には、離隔距離Dだけ離れた元の状態に戻ろうとする弾性力が働くようになっている。
【0050】
図1に示すチューブステント1では、テール部21、31がそれぞれ同一方向に湾曲(巻回)し、テール部21、31のループ面が略同一面となるように構成されている。これにより、テール部21、31の接触部22、32は、直胴部11の軸方向において互いに対向するように配置されている。接触部22、32同士が対向した位置に配置されることで、チューブステント1が体内に留置された際に接触部22、32が消化器組織壁の両面から同一箇所を挟み込むことができ、マイグレーション防止効果をより向上させ、さらに、異なる消化器組織同士を近接させる効果および消化器組織壁を癒着させる効果も向上させることができる。ただし、接触部22、32同士は、必ずしも対向した位置に配置されなくてもよく、この場合であっても、マイグレーション防止効果、異なる消化器組織同士を近接させる効果および消化器組織壁を癒着させる効果が得られる。
【0051】
テール部21、31の一端は、直胴部11の端部である接続位置P1、P2に接続されている一方、テール部21、31の一端はチューブ部材内の管腔が開口した開放端23、33となっている。チューブステント1が体内に留置された際には、テール部21、31のそれぞれの開放端23、33が流体の流入口および流出口となり、チューブ部材の管腔を通じて流体を流通させることができる。
【0052】
テール部21、31には、1つまたは複数の側孔24、34が設けられてもよい。テール部21、31に設けられた側孔24、34は、チューブ部材の管壁を貫通する貫通孔である。テール部21、31において、側孔24、34を設ける位置や個数は特に限定されるものではない。側孔24、34を設けた場合には、テール部21、31の開放端23、33だけではなく、側孔24、34からも流体の流入および流出が行われるので、チューブ部材内を流動する流体の量を増加させてドレナージ効果を向上させることができる。
【0053】
なお、側孔24、34はテール部21、31のいずれか一方にのみ設けられてもよく、両方に設けられてもよいが、特に、流体の上流側に配置されるテール部21の側面に設けられることが好ましい。これにより、チューブステント1への流体の流入量を増加させてドレナージ効果を顕著に向上させることができる。ただし、直胴部11から外部に流体が漏れることは望ましくなく、直胴部11には側孔を設けないようにすることが好ましい。
【0054】
さらに、チューブステント1には、内視鏡画像下で確認可能な内視鏡マーカーが設けられていてもよい。内視鏡マーカーは特に限定されないが、例えばチューブ部材の外周面の一部をリング状に着色することで形成される。
【0055】
次に、図2図4を参照しながら、本発明の実施形態におけるチューブステント1を胆管に留置させるためのチューブステントデリバリ装置100について説明する。図2は、本発明の実施形態におけるチューブステント1を胆管に留置させるためのチューブステントデリバリ装置100の一例を示す平面図である。また、図3は、図2に示すチューブステントデリバリ装置100のインナーカテーテルを示す平面図であり、図4は、図2に示すチューブステントデリバリ装置100のアウターカテーテルを示す平面図である。
【0056】
図2に示すチューブステントデリバリ装置100は、チューブステント1を体内に留置するために用いられる医療用処置具であり、内視鏡の処置具案内管を介して体内に挿入する経内視鏡方式の装置である。
【0057】
本実施形態におけるチューブステント1は、消化器組織壁を貫通して流体を流通させるために消化管等の消化器組織内に留置されるステントであり、上述したように、様々な留置位置および用途に用いることができる。ここでは、一例として、本実施形態におけるチューブステント1が胆嚢と十二指腸とを繋いで胆汁を流通させるステントであり、経内視鏡的に胆嚢壁と十二指腸壁とを貫通するようにステントを留置するためのチューブステントデリバリ装置100について説明する。なお、本実施形態におけるチューブステント1を体内に留置する際に用いられるチューブステントデリバリ装置100は一例にすぎず、これに限定されるものではない。内視鏡の処置具案内管を介して挿入する経内視鏡方式の装置ではなく、直接針を刺してアプローチする経皮方式の装置が用いられてもよい。
【0058】
図2に示すチューブステントデリバリ装置100は、不図示の内視鏡の処置具案内管内を通じて患者の体内(管腔)に挿入される細長いカテーテル部120と、カテーテル部120の近位端側に接続され、体外側から体内のカテーテル部120を操作するための操作部130と、ガイドワイヤ140と、留置対象としてのチューブステント1とを概略備えて構成されている。なお、本明細書では、チューブステントデリバリ装置100において患者の体内に挿入される先端側をチューブステントデリバリ装置100の遠位端側と定義し、オペレータが患者の体外でチューブステントデリバリ装置100を把持して操作を行う基端側をチューブステントデリバリ装置100の近位端側と定義して説明する。
【0059】
カテーテル部120は、遠位端および近位端を有するインナーシース(内管)121と、遠位端および近位端を有するアウターシース(外管)122とを備えている。また、インナーシース121およびアウターシース122の遠位端近傍には、造影マーカー(不図示)がそれぞれ取り付けられている。造影マーカーは、カテーテル部120が患者の体内に挿入された際に、X線透視によって確認することができる位置検出用標識であり、例えば金、白金、タングステン等の金属材料や、硫酸バリウムや酸化ビスマスがブレンドされたポリマー等により形成される。
【0060】
インナーシース121は可撓性を有する細長いチューブからなる。インナーシース121の内腔には、チューブステントデリバリ装置100を患者の体内に挿入するためのガイドとして用いられるガイドワイヤ140が挿通されている。ガイドワイヤ140を体内に挿入して体外と体内との経路を確保した後、ガイドワイヤ140に沿ってカテーテル部120を進行させることにより、カテーテル部120の遠位端側を体内の目的部位に挿入することができる。インナーシース121の外径は0.5mm~4.0mm程度である。
【0061】
インナーシース121の遠位端には、先端(遠位端)に行くに従って先細となるようにテーパ状に形成された先端テーパ部123が形成されている。なお、先端テーパ部123に代えて、同様のテーパ形状を有する先端チップをインナーシース121とは別体として準備し、インナーシース121の遠位端に取り付けるようにしてもよい。
【0062】
アウターシース122は可撓性を有する細長いチューブからなる。アウターシース122は、インナーシース121の外径よりも僅かに大きい内径を有しており、アウターシース122の内側にインナーシース121が相対的にスライド可能となるように挿通されている。例えば、アウターシース122の内径は0.5mm~4.5mm程度であり、アウターシース122の外径は1.0mm~5.0mm程度である。アウターシース122の近位端には、操作部130が接続されており、オペレータが操作部130のコネクタ131を操作することによって、インナーシース121は、アウターシース122に対して軸方向にスライド(相対移動)可能である。
【0063】
インナーシース121、アウターシース122の材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリエステルポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレンやテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系樹脂等の各種樹脂材料や、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の各種熱可塑性エラストマーを使用することができる。これらのうち2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0064】
操作部130は、コネクタ131およびコネクタ132を備えている。図3に示すように、コネクタ131はインナーシース121の近位端に接続固定されている。図4に示すように、コネクタ132はアウターシース122の近位端に接続固定されている。コネクタ131は軸方向に貫通する貫通孔を有し、この貫通孔はインナーシース121の内腔に連通されている。コネクタ132は軸方向に貫通する貫通孔を有し、この貫通孔はアウターシース122の内腔に連通されている。コネクタ131の遠位端部とコネクタ132の近位端部は、ルアーロック方式等により互いに結合または結合解除できるようになっている。
【0065】
ガイドワイヤ140は、インナーシース121の全長にわたって、その内腔に挿通されている。ガイドワイヤ140の遠位端はインナーシース121の先端テーパ部123から突出できるようになっており、ガイドワイヤ140の近位端はコネクタ131の貫通孔を介して外側に露出できるようになっている。
【0066】
チューブステントデリバリ装置100を患者の体内に挿入する際、図2に示すように、チューブステント1は、チューブステントデリバリ装置100の遠位端側に取り付けられる。具体的には、インナーシース121の遠位端側の部分がチューブステント1の内側に挿通されて、チューブステント1の近位端側の端面が、インナーシース121が挿通されたアウターシース122の遠位端側の端面に当接される。これにより、チューブステント1は、その内側にインナーシース121が挿通された状態で、アウターシース122に対して直列して配置される。
【0067】
なお、上述したように、チューブステント1のテール部21、31は少なくとも一部が湾曲した形状を有しているが、チューブステントデリバリ装置100の遠位端側にチューブステント1が取り付けられた際には、テール部21、31は、インナーシース121の形状に合わせて略直線形状に弾性変形した状態となる。
【0068】
チューブステント1を体内に留置する際には、まず、経鼻内視鏡または経口内視鏡の先端を十二指腸の上部(胆嚢との距離が最も近い位置)に進め、十二指腸内から胆嚢に向けて穿刺して、内視鏡の処置具案内管を通じて穿刺孔内にガイドワイヤ140を挿通させる。次に、コネクタ131とコネクタ132とを互いに結合し、チューブステント1がインナーシース121の遠位端側に取り付けられた状態で、ガイドワイヤ140に沿ってカテーテル部120を進行させる。
【0069】
X線透視によりインナーシース121およびアウターシース122の位置を確認しながらチューブステント1を胆管内の適切な位置まで挿入する。その後、コネクタ131とコネクタ132との結合を解除して、アウターシース122の位置はそのままの状態でインナーシース121およびガイドワイヤ140を近位端側にスライドさせて引き抜き、次いでアウターシース122を引き抜くことにより、例えば、図5に模式的に示すように、胆嚢と十二指腸との間にチューブステント1を留置することができる。
【0070】
図5は、本発明の実施形態におけるチューブステント1が胆嚢65と十二指腸67とを繋ぐように留置された状態を示す模式図である。図5には、体内の断面が模式的に示されており、肝臓61、胃62、膵臓63、総胆管64、胆嚢65、胆嚢管66、十二指腸67の各消化器官、十二指腸67上部に先端が配置された内視鏡200、胆嚢65と十二指腸67との間に留置されたチューブステント1が図示されている。
【0071】
例えば胆嚢結石が胆嚢管66に嵌り込んでしまった場合には、胆嚢管66に詰まりが生じて胆汁の流れを阻害することがある。このような場合に、図5に示すように胆嚢65と十二指腸67とを繋ぐようにチューブステント1を留置することで、チューブステント1により胆汁の流路を確保することができる。
【0072】
図6を参照しながら、胆嚢65と十二指腸67との間を繋ぐように留置されたチューブステント1について、より詳細に説明する。図6は、本発明の実施形態におけるチューブステント1が胆嚢65と十二指腸67とを繋ぐように留置された状態をより詳細に示す模式図である。図6には、図5に示すチューブステント1近傍が模式的に示されており、胆嚢65および胆嚢壁65a、十二指腸67および十二指腸壁67a、チューブステント1が図示されている。なお、胆嚢壁65aおよび十二指腸壁67aについては断面が図示されている。
【0073】
図6に示すように、チューブステント1は、直胴部11が、胆嚢壁65aおよび十二指腸壁67aを貫通するように配置されている。また、一方のテール部21が胆嚢65内に配置され、他方のテール部31が十二指腸67内に配置されている。このようにチューブステント1が留置されることで、胆嚢65の内側と十二指腸67の内側とがチューブステント1を通じて連通する。胆嚢65に貯留された胆汁は、上流側のテール部21の開放端23および側孔24から流入して、直胴部11を通って下流側のテール部31の開放端33および側孔34から流出するようになり、胆汁がスムーズに流れる流路が確保されるようになる。
【0074】
チューブステント1は、テール部21の接触部22とテール部31の接触部32とが離隔距離Dだけ離れている。テール部21およびテール部31は弾性を有しており、離隔距離Dが大きくなった場合には、元の離隔距離Dだけ離れた状態に戻ろうとする。この構成により、図6に示すように、テール部21の接触部22は胆嚢65の内側から胆嚢壁65aに接触して、胆嚢壁65aを押し込む方向に力F1が作用する。同様に、テール部31の接触部32は十二指腸67の内側から十二指腸壁67aに接触し、十二指腸壁67aを押し込む方向に力F2が作用する。すなわち、チューブステント1の両端に位置するテール部21、31の接触部22、32は、胆嚢壁65aおよび十二指腸壁67aにそれぞれ接触して両側から挟み込むように押圧した状態となる。これにより、チューブステント1が位置ずれを起こすことなく安定して留置され、チューブステント1のマイグレーション防止効果を向上させることができる。
【0075】
チューブステント1が体内に留置されている間、胆嚢壁65aおよび十二指腸壁67aは接触部22、32から押圧を受けた状態で維持される。これにより、胆嚢壁65aと十二指腸壁67aとが接触している領域の癒着が促進されるようになる。胆嚢壁65aおよび十二指腸壁67aが十分に癒着した後にチューブステント1を抜去すると、図7に示すように直胴部11の貫通箇所が貫通痕70となって残るとともに、当該貫通痕70の周囲の胆嚢壁65aおよび十二指腸壁67aが癒着した状態となる。これにより、チューブステント1を抜去した後も、貫通痕70を通じて胆汁の流路が確保されるようになる。また、貫通痕70を通じて十二指腸67から胆嚢65へアプローチできるようになるので、胆嚢65に対して更なる処置を行うことも容易となる。
【0076】
図6に示すように、チューブステント1は、テール部21、31の接触部22、32が直胴部11の軸方向において互いに対向するように配置されている。この構成により、接触部22、32は、胆嚢壁65aおよび十二指腸壁67aに対して略垂直方向から同一箇所を挟み込むことができるので、より優れたマイグレーション防止効果が得られるようになる。また、胆嚢壁65aと十二指腸壁67aとを癒着させる能力もより優れたものとなっている。
【0077】
以下、本発明の実施形態におけるチューブステントの派生例について説明する。
【0078】
図8は、本発明の実施形態におけるチューブステントの第1派生例を示す斜視図である。図8に示すチューブステント1Aは、略直線形状を有する直胴部11Aと、直胴部11Aの両端にそれぞれ連通された、少なくとも一部が湾曲形状を有する一対のテール部21A、31Aと、により構成されている。
【0079】
チューブステント1Aが体内に留置された際に消化器組織壁と接触するテール部21A、31Aの接触部22A、32A(図8の網掛け領域)は、外部から負荷がかからない自然状態において隣接しており、接触部22A、32Aの離隔距離Dは上述した好適な範囲となっている。
【0080】
チューブステント1Aが体内に留置された際には、テール部21A、31Aのそれぞれの開放端23A、33Aが流体の流入口および流出口となり、チューブ部材の管腔を通じて流体を流通させることができるようになっている。なお、図1に示すチューブステント1と同様に、テール部21A、31Aに側孔が設けられてもよい。
【0081】
図8に示すチューブステント1Aでは、テール部21A、31Aのループ面が所定の角度を有して交差した状態となっている、より詳細には、テール部21Aは図8の紙面手前側に向かって巻回し、テール部31Aは図8の紙面奥側に向かって巻回している。すなわち、テール部21Aの端部である開放端23Aは手前側に、テール部31Aの端部である開放端33Aは奥側に位置している。接触部22A、32A同士は対向した位置に配置されていないが、このような場合であっても、マイグレーション防止効果、異なる消化管同士を近接させる効果および消化器組織壁を癒着させる効果が得られる。
【0082】
図9は、本発明の実施形態におけるチューブステントの第2派生例を示す斜視図である。図9に示すチューブステント1Bは、略直線形状を有する直胴部11Bと、直胴部11Bの両端にそれぞれ連通された、少なくとも一部が湾曲形状を有する一対のテール部21B、31Bと、により構成されている。
【0083】
チューブステント1Bが体内に留置された際に消化器組織壁と接触するテール部21B、31Bの接触部22B、32B(図9の網掛け領域)は、外部から負荷がかからない自然状態において隣接しており、接触部22B、32Bの離隔距離Dは上述した好適な範囲となっている。
【0084】
チューブステント1Bが体内に留置された際には、テール部21B、31Bのそれぞれの開放端23B、33Bが流体の流入口および流出口となり、チューブ部材の管腔を通じて流体を流通させることができるようになっている。なお、図1に示すチューブステント1と同様に、テール部21B、31Bに側孔が設けられてもよい。
【0085】
図9に示すチューブステント1Bは、図1に示すチューブステント1と比較してテール部21B、31Bの巻きが甘くなっており、テール部21Bの開放端23B近傍に接触部22Bが存在し、テール部31Bの開放端33B近傍に接触部32Bが存在している。このようにテール部21B、31Bの巻きが甘い場合であっても、マイグレーション防止効果、異なる消化管同士を近接させる効果および消化器組織壁を癒着させる効果が得られる。
【0086】
図10は、本発明の実施形態におけるチューブステントの第3派生例を示す斜視図である。図10に示すチューブステント1Cは、略直線形状を有する直胴部11Cと、直胴部11Cの両端にそれぞれ連通された、少なくとも一部が湾曲形状を有する一対のテール部21C、31Cと、により構成されている。
【0087】
チューブステント1Cが体内に留置された際に消化器組織壁と接触するテール部21C、31Cの接触部22C、32C(図10の網掛け領域)は、外部から負荷がかからない自然状態において隣接しており、接触部22C、32Cの離隔距離Dは上述した好適な範囲となっている。
【0088】
図10に示すチューブステント1Cは、チューブステント1Cが体内に留置された際に上流側に配置されるテール部21Cの開放端側に、チューブ構造を延長させる延長部41Cが設けられている。延長部41Cはチューブ部材であり、延長部41Cの一端がテール部21Cの開放端側(接続位置P3)に接続され、延長部41Cの他端が開口した開放端43Cとなっている。図10には、延長部41Cが略直線形状に成形されている構成が図示されているが、延長部41Cは特に限定されず、湾曲していてもよい。例えば、延長部41Cの形状をチューブステント1Cの留置箇所である消化管内の形状に適合させることで、延長部41Cの留置を安定させることができる。
【0089】
図10に示すように、延長部41Cには、1つまたは複数の側孔44Cが設けられてもよい。延長部41Cに設けられた側孔44Cは、延長部41Cを構成するチューブ部材の管壁を貫通する貫通孔である。延長部41Cにおいて、側孔44Cを設ける位置や個数は特に限定されるものではない。
【0090】
チューブステント1Cが体内に留置された際には、延長部41Cの開放端43Cおよびテール部31Cの開放端33Cが流体の流入口および流出口となり、チューブ部材の管腔を通じて流体を流通させることができるようになっている。なお、図1に示すチューブステント1と同様に、テール部21C、31Cに側孔が設けられてもよい。
【0091】
また、延長部41Cに側孔44Cを設けることで、延長部41Cでは開放端43Cだけではなく、側孔44Cからも流体の流入が行われるので、チューブ部材内を流動する流体の量を増加させてドレナージ効果をより向上させることができる。
【0092】
なお、図10には、チューブステント1Cが体内に留置された際に上流側に配置されるテール部21Cに延長部41Cが設けられているが、下流側に配置されるテール部31Cに延長部が設けられてもよく、テール部21C、31Cの両方に延長部が設けられてもよい。
【0093】
図11は、本発明の実施形態におけるチューブステントの第4派生例を示す斜視図である。図11に示すチューブステント1Dは、略直線形状を有する直胴部11Dと、直胴部11Dの両端にそれぞれ連通された、少なくとも一部が湾曲形状を有する一対のテール部21D、31Dと、により構成されている。
【0094】
チューブステント1Dが体内に留置された際に消化器組織壁と接触するテール部21D、31Dの接触部22D、32D(図11の網掛け領域)は、外部から負荷がかからない自然状態において隣接しており、接触部22D、32Dの離隔距離Dは上述した好適な範囲となっている。
【0095】
チューブステント1Dが体内に留置された際には、テール部21D、31Dのそれぞれの開放端23D、33Dが流体の流入口および流出口となり、チューブ部材の管腔を通じて流体を流通させることができるようになっている。なお、図1に示すチューブステント1と同様に、テール部21D、31Dに側孔が設けられてもよい。
【0096】
図11に示すように、テール部21D、31Dは、テール部21D、31D同士が隣接する位置に、直胴部11Dの軸に対して略垂直方向に延在するストレート部材25D、35Dをそれぞれ有するように構成されている。また、接触部22D、32Dは、ストレート部材25D、35D上に略直線状に延びている。この構成により、チューブステント1Dが体内に留置された際には、略直線状に延びた接触部22D,32Dが消化器組織壁に接触するため、接触部22D,32Dと消化器組織壁との接触面積を大きくすることができ、マイグレーション防止効果をより向上させることができるとともに、異なる消化器組織同士を近接させる効果および癒着させる効果も向上させることができる。
【0097】
なお、図11には、テール部21D、31Dの両方にストレート部材25D、35Dが設けられているが、テール部21D、31Dのいずれか一方のみにストレート部材が設けられてもよい。
【0098】
図12は、本発明の実施形態におけるチューブステントの第5派生例を示す斜視図である。図12に示すチューブステント1Eは、略直線形状を有する直胴部11Eと、直胴部11Eの両端にそれぞれ連通された、少なくとも一部が湾曲形状を有する一対のテール部21E、31Eと、により構成されている。
【0099】
チューブステント1Eが体内に留置された際に消化器組織壁と接触するテール部21E、31Eの接触部22E、32E(図12の網掛け領域)は、外部から負荷がかからない自然状態において隣接しており、接触部22E、32Eの離隔距離Dは上述した好適な範囲となっている。
【0100】
チューブステント1Eが体内に留置された際には、テール部21E、31Eのそれぞれの開放端23E、33Eが流体の流入口および流出口となり、チューブ部材の管腔を通じて流体を流通させることができるようになっている。なお、図1に示すチューブステント1と同様に、テール部21E、31Eに側孔が設けられてもよい。
【0101】
図12に示すように、テール部21E、31Eは、直胴部11Eの軸周りにそれぞれ湾曲している。より詳細には、テール部21E、31Eは、直胴部11Eの軸の周りに巻回された螺旋状に成形されている。螺旋状のテール部21E、31Eは、直胴部11Eとの接続位置P4、P5(直胴部11Eのテール部21E、31E側の端部)の近傍では、直胴部11Eの軸方向に対して略垂直方向に延びており、接触部22E、32Eは、接続位置P4、P5近傍に広がっている。この構成により、この構成により、チューブステント1Eが体内に留置された際には、接触部22E、32Eが消化器組織壁に接触するため、接触部22D,32Dと消化器組織壁との接触面積を大きくすることができ、マイグレーション防止効果をより向上させることができるとともに、異なる消化器組織同士を近接させる効果および癒着させる効果も向上させることができる。
【0102】
なお、図12には、テール部21E、31Eの両方が螺旋状に成形されているが、テール部21E、31Eのいずれか一方のみが螺旋状に成形されていてもよい。
【0103】
以下、本発明に係る作用について説明する。
【0104】
本実施形態におけるチューブステント1、1A、1B、1C、1D、1Eは、可撓性のチューブ部材からなるチューブステントであり、略直線形状を有する直胴部11、11A、11B、11C、11D、11Eと、直胴部11、11A、11B、11C、11D、11Eの両端にそれぞれ連通された、少なくとも一部が湾曲形状を有する一対のテール部21、21A、21B、21C、21D、21E、31、31A、31B、31C、31D、31Eと、により構成されている。一対のテール部21、21A、21B、21C、21D、21E、31、31A、31B、31C、31D、31Eは、消化器組織壁に接触する接触部22、22A、22B、22C、22D、22E、32、32A、32B、32C、32D、32Eをそれぞれ有しており、接触部22、22A、22B、22C、22D、22E、32、32A、32B、32C、32D、32E同士の直胴部11、11A、11B、11C、11D、11Eの軸方向における離隔距離Dが3cm以下である。
【0105】
この構成により、チューブステントの両端に位置する一対のテール部の接触部が消化器組織壁を挟み込むように接触するため、特にチューブステントを留置する消化器組織壁が薄い場合に、チューブステントの移動を規制してマイグレーション防止効果を向上させることができる。また、この構成により、一対のテール部が異なる消化器組織内に配置された際に、当該異なる消化器組織同士を近接させることができ、異なる消化器組織壁同士の癒着を促進させることもできる。
【0106】
本実施形態におけるチューブステント1、1B、1C、1D、1Eにおいて、一対のテール部21、21B、21C、21D、21E、31、31B、31C、31D、31Eは、接触部22、22B、22C、22D、22E、32、32B、32C、32D、32E同士が直胴部11、11B、11C、11D、11Eの軸方向において対向するようにそれぞれ湾曲していてもよい。
【0107】
この構成により、接触部が消化器組織壁の同一箇所を挟み込むことができるため、マイグレーション防止効果をより向上させることができるとともに、異なる消化器組織同士を近接させる効果および癒着させる効果も向上させることができる。
【0108】
本実施形態におけるチューブステント1、1B、1C、1Dは、一対のテール部21、21B、21C、21D、31、31B、31C、31Dにおいて湾曲形状によりそれぞれ形成される面が略同一面となっていてもよい。
【0109】
この構成により、接触部が消化器組織壁の同一箇所を挟み込むことができるため、マイグレーション防止効果をより向上させることができるとともに、異なる消化器組織同士を近接させる効果および癒着させる効果も向上させることができる。
【0110】
本実施形態におけるチューブステント1、1A、1B、1C、1D、1Eは、一対のテール部21、21A、21B、21C、21D、21E、31、31A、31B、31C、31D、31Eの少なくとも一方の側面に1つまたは複数の側孔24、34が設けられていてもよい。
【0111】
この構成により、チューブステントにおいて流入および流出する流体量を増加させて、チューブステントによるドレナージ効果を向上させることができる。
【0112】
本実施形態におけるチューブステント1、1A、1B、1C、1D、1Eは、1つまたは複数の側孔24が、当該チューブステント内を流動する流体の上流側に配置されるテール部21、21A、21B、21C、21D、21Eの側面に設けられていてもよい。
【0113】
この構成により、チューブステントへの流体の効率的な流入を実現することができ、チューブステントによるドレナージ効果を顕著に向上させることができる。
【0114】
本実施形態におけるチューブステント1Cは、一対のテール部21C、31Cの少なくとも一方の開放端側に、当該チューブステントのチューブ構造を延長させる延長部41Cが設けられていてもよい。
【0115】
この構成により、延長部を利用してチューブステントを安定させたり、延長部を利用してチューブステントによるドレナージ効果を向上させたりすることが可能となる。
【0116】
本実施形態におけるチューブステント1Cは、延長部41Cの側面に1つまたは複数の側孔44Cが設けられていてもよい。
【0117】
この構成により、チューブステントにおける流体の流入および流出の効率化ならびに流体量の増加を実現することができ、チューブステントによるドレナージ効果を顕著に向上させることができる。
【0118】
本実施形態におけるチューブステント1Dは、一対のテール部21D、31Dの少なくとも一方または両方の接触部22D、32Dが、消化器組織壁に沿って略直線状に延びていてもよい。
【0119】
この構成により、一対のテール部の少なくとも一方または両方の接触部が消化器組織壁に接触する面積を大きくすることができ、マイグレーション防止効果をより向上させることができるとともに、異なる消化器組織同士を近接させる効果および癒着させる効果も向上させることができる。
【0120】
本実施形態におけるチューブステント1Eは、一対のテール部21E、31Eの少なくとも一方または両方が、直胴部11Eの軸周りに湾曲していてもよい。
【0121】
この構成により、一対のテール部の少なくとも一方または両方の接触部が消化器組織壁に接触する面積を大きくすることができ、マイグレーション防止効果をより向上させることができるとともに、異なる消化器組織同士を近接させる効果および癒着させる効果も向上させることができる。
【0122】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属するすべての設計変更や均等物をも含む趣旨である。例えば、上述した実施形態に開示されたチューブステントは、図1および図8図12に示す形状に限定されるものではなく、図1および図8図12に示すテール部の一方の形状と他方の形状とを任意に組み合わせることで得られるチューブステントも本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0123】
1、1A、1B、1C、1D、1E チューブステント
11、11A、11B、11C、11D、11E 直胴部
21、21A、21B、21C、21D、21E、31、31A、31B、31C、31D、31E テール部
22、22A、22B、22C、22D、22E、32、32A、32B、32C、32D、32E 接触部
23、23A、23B、23D、23E、33、33A、33B、33C、33D、33E、43C 開放端
24、34、44C 側孔
25D、35D ストレート部材
41C 延長部
61 肝臓
62 胃
63 膵臓
64 総胆管
65 胆嚢
65a 胆嚢壁
66 胆嚢管
67 十二指腸
67a 十二指腸壁
70 貫通痕
100 チューブステントデリバリ装置
120 カテーテル部
121 インナーシース(内管)
122 アウターシース(外管)
123 先端テーパ部
130 操作部
131、132 コネクタ
140 ガイドワイヤ
200 内視鏡
図1
図2
図3
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図5
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図12